説明

滑り止めソール付き靴

本発明は、路面に対するグリップが向上すると共に介在異物を含む場合のあるインターフェイスを備えたエラストマー製のソールを有する靴に関し、ソールは、溝(35)によって互いに隔てられたブロック(31)を有する。溝(35)の壁は、エラストマー材料の本体中を延びてブロック(31)の輪郭に急角度パターンを構成し、これら急角度パターンは、2つの表面相互間の直接的な乾き接触関係を確立するためにエラストマー材料に入り込むことができる。各ブロック(31)は、上述の輪郭周りに分布して配置されたステム(32)の形状をした少なくとも5つの枝部を備えた星形パターンを構成し、各ステム(32)は、外部に向かって半径方向に差し向けられて先端部で終端している。各ステム(32)は、ブロック輪郭に設けられた凹部(38)によって隣りのステムから隔てられている。最後に、各ブロック(31)は、第1のブロックの隣りに位置した第2のブロックの輪郭中に隣り合うステム相互間に設けられた凹部(38)によって構成された隣りの溝の空間中に挿入されたステム(32)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソールを備えた履物に関し、ソールは、液体又は固体の異物により滑り易くなっている場合のある作業面との良好な滑り止め接触手段を備えた履物を提供する。本発明は、例えば、本来的に滑り易い路面や非常に滑らかな天然又は合成の覆い、例えばリノレウム(Linoleum(登録商標))、ワニスタイル、磨き石及び金属製表面材に対し、特にこれら表面が液体(例えば、水、油又は血液)で濡れ又は湿っている場合、又は液体の溜まりによって覆われ、又は他の異物、例えば泥、氷が付着している場合等に、良好なグリップ性を必要とする作業用又はスポーツ用の履物に利用できる。
【背景技術】
【0002】
意図せず滑ることによって引き起こされる転倒は、現在における事故の最も頻発し且つ深刻な原因のうちの1つである。これは、特に作業中の事故に当てはまり、この分野における専門家は、これら事故の頻度及び深刻さを減少させる手法をかなり長い期間にわたって研究している。特に、多くの安全履物又は安全靴の製造業者は、良好な滑り止め特性を与えるよう設計されたソールを備える履物を市場に既に出し始めた。履物のグリップ特性は又、多くの種類のスポーツにおいて非常に高く評価されている。
【0003】
先行技術は又、同一の目的を持つ多くの実施形態を記載している。米国意匠特許第446912(S)号により米国において出願されたモデルは、歩行者によって利用されるようになった表面を覆う場合のある液体の膜を切り裂き又は破壊するためのエッジを備えた彫刻状パターンを有する比較的柔軟な又は可撓性のソールを有する履物のソールのグリップを増大させる提案装置の良好な一例を図1に示した状態で提供している。これらパターンは、典型的には、例えば足の前側部分を支持する部分の全体及び場合によっては踵の表面全体を更に覆うようソールの表面に並置されたエラストマー材料、例えばゴムのラグ(突出部)を有する。これらブロックは、正方形であり、対角線方向に配置され、即ち、各ブロックは、ソールの長手方向に延びる対角線を有する。ブロックは、一様幅の細い溝によって隔てられた列を形成するよう位置合わせされ又は整列しており、溝は、直角に交差したチャネルの網状組織(ネットワーク)を形成する。各ラグは又、直角に且つラグの縁に平行に位置決めされた2つのスリット(又は通称されている用語としては「サイプ」)によって4つの部分に分割され、4つの要素ブロックが形成されている。これらスリットは、彫刻状パターン又は彫刻状物の各ラグ及びソール全体の横方向柔軟性又は可撓性を増大させるようになっており、これは、液体膜の破壊に寄与する。好ましくは、各スリットの深さは、溝の深さよりも小さく、より好ましくは、各スリットの深さは、溝の深さの20%〜80%である。
【0004】
米国特許第7146752号明細書は、ソールベースの表面から路面に向かって突き出たエラストマーラグの規則的な整列体を更に有する履物用ソールを記載している。各ラグは、一方の方向に実質的に長手方向に差し向けられると共に他方の方向に横方向に差し向けられた4つのアームを備えた星の形をしているパターンによって形成されている。これらラグは、長手方向に対して約45°の角度をなす対角線列の状態に位置合わせされ又は整列し、このような対角線列の間には、路面に沿う履物の移動中にラグによって変位した液体及び異物の排出のための溝が画定されている。路面を覆う物質中へのラグの縁部のエッジの侵入度を増大させるため、各星のアーム及びソールのベース面の端の先端部の末端相互間の距離は、このベース面の上方の各ラグの中央表面の高さよりも大きく設定されており、この特許文献において記載された別のオプションは、各ラグの縁部が鋭角を形成する断面を備えたエッジで終端する凹部をこの表面に提供することである。
【0005】
また、米国特許第7310894号明細書は、シャワーの際に(又はシャワー室で)用いられる滑り止め履物を示しており、この履物のソールには、水がソールを通って流れることができるようにする孔が設けられているが、このソールは、溝によって隔てられると共に更にスリットによって分割された接触ラグを備えている。これらスリット又は切り込みは、ラグ材料が路面と接触状態にあるときにラグ材料の変形を増大させる場合がある。一実施形態では、各ラグは、多角形であり、ラグの中心から多角形の頂点に向かって放射状に延びる排出スリットにより扇形に分割されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国意匠特許第446912(S)号明細書
【特許文献2】米国特許第7146752号明細書
【特許文献3】米国特許第7310894号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グリップの点で感知できるほどの結果が、これら種々の先行技術の彫刻状パターンによって達成される。しかしながら、本出願人による滑り止め履物の系統的な研究結果の示すところによれば、ソールの滑り止め特性は、種々の滑り危険性及び予測することが困難な場合のある、滑りを生じさせることがある環境の面で一段と向上させることができる。したがって、行われるべき技術改良が依然として存在する。
【0008】
本発明は、滑りの予防を向上させると共にユーザが専用の履物を履いている場合であってもユーザが滑り易い路面上で受ける場合のある滑りを制限するようになっている。更に、物品の使用が種々の性能相互間の妥協点を見出すようになっているあらゆる場合のように、この安全性の向上は、他の種類の性能、例えば使用に起因する摩耗度、快適さ及び履物が接触状態にある表面の健全性の保護を維持した状態で達成されなければならない。特に、接触表面の健全性の保護を行うにあたっては、小さな物体(例えば、小石)がソールの彫刻状パターンの設計の際に形成される溝又は中空部内に捕捉されたり(取り込まれたり)保持されたりするのをできるだけ阻止することが必要である。
【0009】
この目的のため、本発明は、特に高い滑り度が存在している場合、特に、介在異物が存在している場合、ソールと路面との間のインターフェイスの場合に向上した滑り止め特性を備えた安全履物を提案する。この履物は、エラストマー材料のベースを備えたソールを有し、このソールは、上面及び下面を有し、上面は、履物のユーザの足を支持するようになっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、履物は、エラストマー材料のベースを備えたソールを有し、ベースの少なくとも1つの領域は、路面に接触するようその下面から突き出ている接触ラグを備え、接触ラグは、各接触ラグ中に75°未満の角度をなしてステムを画定する溝によって互いに隔てられている。各ラグの接触面は、接触面の輪郭形状全体にわたって分布して配置された少なくとも5つのアームを備えた星の形をしており、各ステムは、星形状の中心の方に向いた凹部によってラグ上のその隣りのステムから隔てられている。ソールは、領域の複数個の第1の接触ラグに関し、第1の接触ラグの各々が第1のステムと上記領域中の第1のラグの隣りに位置する第2の接触ラグの輪郭形状中の2つの隣り合うステムを隔てる凹部との結合部の形態をした少なくとも1つのステム‐凹部結合部を有することを特徴とする。この場合、「ステム‐凹部結合」という用語は、第1の接触ラグの1つのステムの端が隣りの第2のラグの2つのステム相互間の凹部の付近に且つ第2のラグを包囲した円内に位置決めされることを意味する。第1のステムの端は、2つの面相互間の交差部によって形成される先端部の形態をしていても良く、或いは切頭形態のものであっても良い。
【0011】
2つのラグが上述の文章において記載された状態にある場合、これらラグは、第1の歯車の歯が第1の歯車に結合された隣りの第2の歯車の2つの歯相互間の凹部によって形成されている空間内に嵌まり込んでいる歯車装置の場合から類推した場合の「結合」の状態にある。
【0012】
補足的な変形例では、第1のラグは、ラグの輪郭形状中の2つの隣り合うステムを隔てる少なくとも1つの凹部を有し、これらステムは、隣りの第2のラグのステムが上述の領域内に嵌まり込む対応の溝の空間を画定する。
【0013】
更に、一実施形態では、各第1のラグは、(i)隣り合うラグの輪郭形状中の隣り合うステムを隔てる凹部(88‐2)に対するそのステムの少なくとも2つの結合部、及び(ii)隣り合うラグのステムに対するその輪郭形状中の隣り合うステム相互間のその凹部の少なくとも2つの結合部を有する。
【0014】
本発明の星形パターンの相互配置は、彫刻状物の溝中のステム‐凹部結合位置におけるアーム又はステムが頭と尾を突き合わせた配置状態にあるので、彫刻状物の溝内における異物、例えば小石の保持に対して良好な抵抗をソールに与えるという利点を更に提供する。ステムの屈曲により、異物(例えば小石)の放出が促進される。
【0015】
上述した本発明の特性により、ソールの一領域におけるステムの先端又は端部の分布密度は、溝に沿ってラグを境界付けるエッジの密度の場合と同様に増大させることができ、それによってグリップが促進される一方で、ソールのこの部分に配置されている彫刻状物の凹み率が減少することが明らかである。以下の説明において、「凹み率(rate of indentation )」という表現は、パターンを表面上に作り、中空部により互いに隔てられたゴム固体を有する彫刻状物に関して用いられて彫刻領域の中空部の単位表面積とこの彫刻状物の試料の平面図で見た場合の全単位表面積の比を表わしている。凹み率の減少は、支持面と接触状態にあるラグ材料の面積を増大させる。この接触面が増大すると共に材料の係合圧力が減少すると、ソールの耐摩耗性と同様にグリップが向上する。
【0016】
更に、本発明の補完的特徴によれば、異物の耐保持性を増大させるには、ステムを画定する側壁をこれらがソールのベースに厳密に垂直に位置するのではなく、これら側壁と接触し、溝の各側に位置した2つの互いに反対側の壁相互間に捕捉される傾向のある異物をソールの外側に向かって追い出す傾向のあるテーパ角を備えた状態でソールの外側に向かって僅かに変向するよう側壁を配置するのが良い。改良型構成例では、このテーパ角度を各ラグのステムに沿って変化させて捕捉作用の不安定性を際立たせ、異物の放出を促進することも可能である。また、溝の交差部で溝の底部から突き出た状態で石取り除き装置として働くボスを形成することが可能である。
【0017】
一実施形態では、問題のソールの領域は、複数の第1のラグを備え、各第1のラグは、その周囲に沿って分布して配置された少なくとも4つの第2のラグによって包囲され、各第2のラグは、第1のラグとの結合位置にある。これら第2のラグの各々はそれ自体、上述の第1のラグを含む1組の少なくとも4つのラグによって包囲され、これらラグに結合される。これにより、良好なグリップ及び低い凹み率を達成するためにソールへの彫刻ラグの高い実装密度が提供される。問題の領域のラグは、路面とソールとの間に介在して位置する物質中に多くの方向で切り込むことができる先端部を備えたソールを密に覆う。推奨される構成に鑑みて、この結果は、所望の用途における履物から期待される他の種類の性能の劣化なしに達成される。
【0018】
極めて満足のゆく結果は、特に、上述の領域中の各第1のラグが6つのステムを有し、その周囲に沿って分布して配置された1組の少なくとも6つの隣り合うラグによって包囲されているソールを備えた履物で達成された。好ましくは、この組に属するラグの各々は、これらが包囲している第1のラグと相互のステム‐凹部結合状態にあり、即ち、各結合では、第1のラグのステムが第2のラグの凹部内に嵌まり込み、この第2のラグのステムは、第1のラグの凹部内に嵌まっている。本出願人は、この形態の特定の幾何学的特性がソールの使用中、ソールに対する種々の制約相互間の効果的な妥協点を見出すための研究中に多くの利点を提供することを発見した。
【0019】
本発明の構成を用いることにより、履物のソールがソールと路面との間に介在して位置し、グリップの低下を招く場合のある異物に入り込むことができる突起又はエッジを有する方向を増やすことが可能である。この特性は、各ラグのアームの数が増えるにつれて補強される。改良例では、彫刻ラグのステムが隣り合うラグの星の向きを互いに対して角度的にずらす構成によって向く方向の数を増やすことも可能である。
【0020】
ソール中の彫刻ラグの配置の別の観点では、第1のラグを上述したようにステム‐凹部結合によりソール中の全体として平行な線の第1の網状組織に属する整列体中の第2の隣りのラグに関連させる。好ましくは、第1のラグの輪郭形状をステム‐凹部結合により上記領域中の第1の網状組織の方向とは別の方向に平行な線の第2の網状組織に属する彫刻状物中の第2の別のラグに関連させる。
【0021】
第1及び/又は第2の網状組織の2つの隣り合うラインのラグは、この第1及び/又は第2の網状組織の全体的方向において互いに接触状態にある正面相互間のインターフェイスから脱落した異物を排出させることができるうねった溝を画定する。有利には、ラグ相互間の溝の幅は、ソールの下に捕捉された滑り易い粒子の外方への放出を容易にするチャネルを形成するために実質的に一様である。上述したステムが交互に配置されているので、これら溝は、うねった形状をとることができる。例えば、先端部が所望に応じて切頭され、とがった状態にならないようにされ或いは丸形にされたステムを用いることによって溝の幅の規則性を向上させることが可能である。というのは、ユーザのソールが路面に当たった時点でエッジの非常に狭い表面に生じる圧力が依然として相当高いからである。
【0022】
一実施形態では、各ラグは又、ラグの厚み中の少なくとも1つのスリット又はサイプによって分割される。このスリットのこの経路はこれがラグの中央に一端を有し、その他端がこのラグの輪郭形状中の2つのステム相互間の凹部内に開口するようなものであるのが良い。したがって、スリットは、ラグの中央と2つのステム相互間のラグのエッジのうちの1つとの間の最小距離を表わす経路を辿る。6つのステムを有するラグでは、3つのスリットが設けられるのが良く、各スリットは、上述の経路を辿り、上述のエッジと反対側のこれらの端は、放射状形態においてラグの中心の近くの共通点で出会う。これらスリットは、好ましくは、各ラグを複数個の扇形又は要素ラグに分割し、これら要素ラグの各々は、6つのアームを備えた星の場合にシェブロン(∧)の形をしているのが良い。この構成の利点は、これにより、介在異物の粒子がラグの下の各点からソールの構造中の中空部に向かって放出されなければならない距離が減少するということにある。また、スリットにより、ソールをその厚さに垂直に柔軟に作ることができる一方で、局所過剰圧力を増大させる切れ刃を提供すると共にこのように放出された介在不純物の放出を可能にする。この目的のため、ラグの表面上のこれらラグの放射状パターンの向きも又、1つのラグから次のラグまで角度的にずらされるのが良い。
【0023】
滑り止め履物の動作に関し、エラストマーラグのエッジが路面に及ぼす圧力により、このエッジの材料中に圧縮応力の集中が生じ、このような集中は、ラグのエッジからの距離につれて減少する。星のアームの端及び彫刻ラグのエッジによって路面に及ぼされる圧力は、ラグの表面と路面との間の液体又は他の介在物質の膜に侵入し、そしてその破壊を開始させることができる。これにより、ラグの材料と路面との間の直接的な局所接触が回復される。氷の場合、滑りは、水の膜が氷の表面上に形成されることによって生じ、従って、問題は同じである。
【0024】
各ステムは、次第に圧縮され、ステムの端から始まって液体又は他の不純物の介在膜を破壊する力の伝搬が促進される。急角度をなすステムは、これが液体の膜を破壊するのに有効であるので好ましい。更に、各エッジは、ラグが路面に当たった時点で路面に厳密に言って平行ではないので、ラグの材料を路面に接触させるために膜の破壊を容易にする接触点に応力の集中が常時存在する。
【0025】
介在膜が穿孔されると、ステムのエッジは、これの切り裂きを続け、他方、路面とラグの表面との間に存在する液体又は他の不純物を中空部分(溝及びサイプ)に向かって駆動する。地面の平面内においてソールにより及ぼされる力の成分は、エッジに加わる増大した圧力を生じさせ、それにより、フロントガラスワイパのように液体又は他の表面汚染物(例えば、埃と液体の混合物)を追い払う。この結果として生じる乾き接触状態により、局所グリップの強力な増大が生じる。
【0026】
ソールのラグの下の乾き接触状態が延長されることにより、ソールの下の力の良好な分布及び拡散が促進される。グリップの向上により、滑りが大幅に減少する。また、これにより、摩耗が減少し、有効寿命が延びる。また、ラグの推奨される星の形により、ラグ材料と路面との間の表面接触度を増大させるために表面の凹み率(彫刻状物の中空部の面積とその総面積の比)を調整するようラグを配置することができる。上述したように、考えられる限り最も広い乾き接触表面は、グリップ及び耐摩耗性の観点で有利である。
【0027】
本発明の実施形態では、各ステムの先端部の角度は、少なくとも40°である。同様に、各星のステムを形成するアームの数は、好ましくは、少なくとも6つである。
【0028】
本発明は、特に小石の保持具合の減少により路面と履物のソールとの間の非常に高い品質の滑り止め作用が提供される。このソールの表面上における彫刻状物の配置により、グリップ係数を低下させると共に接触領域中に介在して位置する物質、特に、膜(水分)又は溜まり(湿り気)の形態をした液体に侵入してこれを追い払うことができる。したがって、この仕組みに鑑みて、十分に広い乾き接触表面がユーザの一歩一歩の歩み時点で作られ、それによりグリップが向上する。しかしながら、この点に関し、本出願人の研究結果の示すところによれば、上述した形状及び角度の固有の特性を有するだけでなく、介在滑り物質中の係合箇所を増やすのに十分小さなパターンを用いることが好ましい。上述したパターンは、これらパターンが20ミリメートル又は好ましくは10ミリメートル以下の最大直径及び4ミリメートルの最小直径を持つ円に内接可能であるような寸法のものであれば、特に効果的である。
【0029】
本発明によれば、これらの特性は又、彫刻ソール中のラグの密な分布状態と組み合わせられる。この目的のため、55パーセント未満、好ましくは50パーセント以下の比較的小さな凹み率が指定され、それにより乾きグリップ接触領域の潜在的な延長が促進される。
【0030】
驚くべきことに、この種の特性を備えた状態で製造された履物用ソールの彫刻状物は、接地時に、他の全ての要因が等しいとすると、例えば図1に示されている先行技術のソールとは異なる非常に特有の感触を備えた表面を有する。ラグのステムの終端部となる多数の先端部は、粗さと組み合わされた柔らかさ及び「ベルベット」のまとわりつきという、変わった且つ思いがけない感覚を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】先行技術としての滑り止め履物のソールの彫刻状物の平面図である。
【図2】滑り止めソール用の本発明の彫刻状物の第1の実施例の平面図である。
【図3A】図2の配置とは異なる配置状態に整然と並べられた本発明の彫刻状パターンの平面図である。
【図3B】図2の配置とは異なる配置状態に整然と並べられた本発明の彫刻状パターンの斜視図である。
【図4A】図3の彫刻状物のラグの詳細平面図である。
【図4B】このラグの概略輪郭図である。
【図4C】滑り止めソール中のこのラグの考えられる位置を示す図である。
【図4D】ソールの3つの彫刻ラグを示す図であり、ステム‐凹部結合状態を示す図である。
【図5】図6に示されたソールの円形部分V‐Vにおける図3及び図4のラグの配置状態の詳細図である。
【図6】履物のソール中における図3〜図5のラグによって形成された彫刻状物の全体的外観の平面図である。
【図7A】図4A及び図4Bのラグに類似したラグを用いた彫刻状物の4つの変形実施形態のうちの1つを示す図である。
【図7B】図4A及び図4Bのラグに類似したラグを用いた彫刻状物の4つの変形実施形態のうちの1つを示す図である。
【図7C】図4A及び図4Bのラグに類似したラグを用いた彫刻状物の4つの変形実施形態のうちの1つを示す図である。
【図7D】図4A及び図4Bのラグに類似したラグを用いた彫刻状物の4つの変形実施形態のうちの1つを示す図である。
【図8A】図2の彫刻状パターンを用いた履物用ソールの実施形態の詳細図であり、上から見た4分の3の図である。
【図8B】図2の彫刻状パターンを用いた履物用ソールの実施形態の詳細図であり、線引きによる斜視図である。
【図9】本発明の彫刻状物の変形例を備えた滑り止め特性を提供する表面の別の実施形態を示す図である。
【図10A】履物用ソールのラグ相互間の溝の中への異物の捕捉に関する問題の説明図である。
【図10B】履物用ソールのラグ相互間の溝の中への異物の捕捉に関する問題の説明図である。
【図10C】履物用ソールのラグ相互間の溝の中への異物の捕捉に関する問題の説明図である。
【図10D】履物用ソールのラグ相互間の溝の中への異物の捕捉に関する問題の説明図である。
【図10E】履物用ソールのラグ相互間の溝の中への異物の捕捉に関する問題の説明図である。
【図10F】履物用ソールのラグ相互間の溝の中への異物の捕捉に関する問題の説明図である。
【図11】異物捕捉の問題に対する本発明の1つの解決策を概略的に示す図である。
【図12】異物捕捉の問題に対する本発明の別の解決策を概略的に示す図である。
【図13A】本発明のステムを備えたラグの配置状態における3つの捕捉防止解決策の具体化例のうちの1つの平面図である。
【図13B】本発明のステムを備えたラグの配置状態における3つの捕捉防止解決策の具体化例のうちの1つの平面図である。
【図13C】本発明のステムを備えたラグの配置状態における3つの捕捉防止解決策の具体化例のうちの1つの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ソール彫刻状物又は彫刻状パターンが図1に示されており、このソール彫刻状物は、先行技術の説明として本明細書の冒頭で言及した米国意匠特許第446912(S)号で米国に出願されたモデル文献のソール彫刻状物を少なくとも近似的に再現している。ソール彫刻状物は、正方形のゴムラグ(突起部)11で構成され、これら正方形ゴムラグは、基部又は支持体12からソールの下面に向かって突き出ており、基部12は、ソールの意図した使用に適した厚さ及び柔軟性を有する。ラグ11の各々は、直角に互いに交差する2つのスリット又はサイプ若しくは凹み15によって4つの要素ブロック14に分割されている。ラグ11は、スリット15に平行な2つの組をなす直交溝16によって互いに隔てられており、これら溝は、路面と接触状態にあるソールによって変位された液体の良好な流れを可能にするのに適した寸法を有している。これら溝の幅は、通常、各ラグ11の内部スリット15の幅の数倍である。
【0033】
図1では、履物の長手方向は、この紙面の下から上に向けられている。したがって、ブロックの各々は、履物の長手方向Lに対角線を有している。ブロック11は、この方向に互いに平行なラインを形成している。各ラインの対角線は、整列している。各ブロックは、この対角線上のその前端及び後端の各々にゴム先端部を有し、これら先端部の各々は、ユーザの体重を受けて路面に垂直な応力の集中箇所を形成し、この応力の集中は、路面を覆っている液体の膜を壊すことができる。同様な先端部は、長手方向Lに垂直な方向lに整列している。上述の構成は、幾つかの利点を有するが、場合によってはグリップが依然として不十分である。これは、彫刻状物のラグによる液体の膜の侵入がいつでも有効であるというわけではなく、その後に、問題のラグによって覆われている表面の液体を追い払い、良好なグリップを達成すると共に滑りを阻止するために必要な路面との乾き接触関係を確立するのに十分な路面の拭き取りが行われないからである。
【0034】
図2は、本発明の原理を用いた彫刻状物の一実施形態を示しており、この実施形態では、ソール基部から突き出た各ゴムラグ21は、6つのアームを備えた星の形をしており、アームの各々は、ラグ21の外側の方に向けられたステム22で終端している。これらラグの実施形態について以下に詳細に説明する。履物の長手方向(矢印Lで示されている)がこのページの下から上に延びている場合、ラグは、この方向に整列体を形成する。各整列体は、うねりのある輪郭形状を備えた溝24によって隣りの整列体から隔てられている。ラグ21は又、長手方向Lに垂直な方向(矢印lによって示されている)に整列し、この方向に1組のうねり溝25により互いに隔てられた列を形成している。
【0035】
この実施例では、各うねり溝の幅は、かなり幅広くまちまちである。各々が隣りのラグの2つのステム相互間のステム先端部22及び凹部28を隔てる幅の狭いチャネル、例えばチャネル25‐1では、幅は、辛うじて1ミリメートルを超える。これとは逆に、この幅は、隣り合う星相互間の最大間隔が存在する領域においてアーム25‐2中で約5ミリメートルまで広がっている。この配列は、本発明の利用にとって最適であると考えられないことが示されている。この時点において、この実施例において溝により形成されるチャネルの平均幅は、1ミリメートルから5ミリメートルまで様々であり、平均幅は、3ミリメートルである。各ラグは、直径が8ミリメートルの円に内接可能である。これらの数値は、彫刻状物の凹み率が45%以下である場合に彫刻状物の表面中におけるゴムラグのエッジの分布密度が高いという全体的印象を与えている。これにより、依然として、路面を覆っている液体がユーザの連続した一歩一歩の作用を受けてゴムラグによって変位された後、路面と効果的なグリップ接触関係を確立するために相当広いゴムの領域が後に残される。エッジ密度に関し、各ラグ21は、全てがパターンの中心から延び、各々がラグ21の輪郭形状の隣り合うエッジ相互間の凹部28で終端する1つの組をなす3つの(3つで1組の)スリット、凹み又はサイプ23により3つの要素ブロック26に分割されている。
【0036】
また、2つおきのラグは各々、長手方向Lに向けられた2つのスリット、例えばスリット22及び横方向lに向いているたった1つのスリットを有する。更に、各ラグ21に続き、長手方向Lと横方向lの両方向において、ステムの向きがラグ21の向きに対して30°だけ角度的にずらされたラグが続き、このラグは、この場合、基準ラグであると見なされる。その結果、この彫刻状物のラグは、ステムが12の互いに異なる方向に向いた1組を形成し、この彫刻状物を備えたソールにユーザが滑り易い路面上を歩くことによる滑りの危険性に対して多方向抵抗性を与える。
【0037】
図3の構成では、ソールの長手方向Lと横方向lに対するパターンの向きに関する同一の慣例を用いた場合、本発明者は、この実施例では、6つのアームを備えた星形の各ラグ31がその方向の両方において主として長手方向に差し向けられた2つのステム32及びこれ又その方向のうちの両方において横方向に差し向けられた1つのステム33を有するということに気づいている。しかしながら、ラグ31が以下に説明するように整列するような場合、これらラグが形成する2つの整列体網状組織は、長手方向でもなく横方向でもない。上述したように、ステム32は、路面上に且つこれを覆う不純物、例えば水、油又は血液の膜上に応力の集中をもたらすことができる。この構成では、主として長手方向の力に応答する路面を覆う滑り易い被膜又は膜の穿孔を開始させることができるステム先端部の密度は、ラグの向きが異なっている先行する構成の場合よりも高い。この構成の利点は、これにより、比較的一定の断面を有する溝が作られるということにある。低い表面凹み率の場合、この構成は、汚染物の流れが容易になるという理由で好ましい(汚染物は、実質的に流体である)。図3Bは、本発明に従って構成された滑り止め表面の外観に関する明確な技術的思想を提供している。
【0038】
図4Aを参照すると、6つのステム、例えばステム32,33を有する図3の彫刻状物のラグ31は、ラグ31の中心37から半径方向外方に延びる3つのスリット34によって3つの要素ブロック36に分割されていることが解る。これらスリット34の各々は、ラグ31をラグ31の輪郭形状上の2つの隣り合うステム32又は33の接合部に位置する凹み箇所38でその隣りのラグから隔てる溝35中に開口している。各要素ブロック36は、シェブロンパターンで位置決めされた2つの隣り合うステム32又は33を有している。図4Bは、図4Aのラグ31の断面図であり、このラグは、履物用ソールの基部又は支持体30から突き出ている。ラグ31を分割するスリット34は、図4Bで符号37に見える単一スリット中でその中心37で出会っている。また、スリット、例えばスリット34の深さhは、溝35の深さHよりも小さい。
【0039】
本発明の履物用ソール41の輪郭形状が図4Cに示されており、この図では、上述したラグパターン31は、長手方向L及び横方向lに対するステム32,33の向きを強調するよう注意深く拡大されている。
【0040】
図5は、先の実施例で説明した形式の6つのステム付きラグの相互配置状態を示している。図5のラグ31‐Aを参照する場合、方向Lに平行な1つのエッジを有するそのステム32‐1は、方向Lにおいてラグ31‐Aの隣りのラグ31‐Bの2つのステム32‐3,32‐4相互間に形成された中空部又は凹部中に「侵入」する。これとは逆に、このラグ31‐Bのステム32‐4は、方向Lに向いているが、逆方向に向いており、そしてラグ31‐Aの2つのステム32‐1,32‐2相互間に形成された中空部中に「侵入」している。ラグ31‐A,31‐B相互間には一種の不完全な嵌合状態が存在し、これは、この方向における彫刻状物の他のラグの全てについて繰り返されている。同じ配置構成が横方向lにおけるステム33に関して採用されるのが良い。
【0041】
また、この構造体中において一方又は他方の方向に互いに続くステムの対向側相互間の溝35は、比較的一様な幅を有し、このような溝は、ラグと路面との間の接触面から追い出された液体又は他の不純物を流してソールから放出することができるうねった又はジグザグのチャネルの網状組織を形成することによって互いに連通する。上述した構成は、比較的一様な、しかしながら完全に一様ではない幅を持つチャネルの形成を促進する。広い領域、例えば領域43が側部が互いに平行な溝、例えば溝35‐Bの各端で3つの互いに異なるラグによって境界付けられた三角形の形態で生じている。試験結果の示すところによれば、この不規則性は、チャネルの網状組織の汚染物及び放出能力が路面に沿って連続して配置されたラグによって追い出された液体又は他の物質の全てを収集して放出するのに十分であることを条件として、重要ではない。
【0042】
図5は、図6のV‐Vで示された円形部分に含まれている彫刻状物の拡大図であり、図6は、同一パターンを備えたソールの一部分の全体図である。図6は又、ラグ31が事実上厳密に整列しており、即ち、各ラグのパターンが同一ライン中の別のラグの簡単な変位又は並進によって得ることができるということを示している。図6の場合、彫刻状物のラグは、矢印45‐45及び矢印46‐46により示されている2つの方向に整列している。方向45‐45は、方向46‐46に対して60°の角度をなして位置し、これら2つの方向は、ソールの主要方向L,lのいずれにも一致していない。これにより、パターン相互間の中空部又は溝の幅の規則性を或る程度まで最適化することができる。各パターンに関する溝の一様性の最適化の他の例について互いに対する星の向きの調節と一緒に以下に説明する(図7A及び図7B)。各星内における各彫刻ラグ中のスリットの数及びこれらの向きの選択は、彫刻状物の性能を調節する要因ともなる。
【0043】
図4A、図4B及び図4Cに戻ってこれらを参照すると、ユーザが一歩前へ踏み出した例を考慮することにより本明細書において説明する彫刻状物の作用を説明することができる。ラグ31は、後ろから前に路面に接触し、ソールの2つの後ろ向きステム32は、歩行者の体重を受けて圧縮され始める。圧縮は、ステムの幅の広い部分に向かって進む。図4Aのラグ31の後部寄りに位置したステム32の先端部41が不純物の膜を突き刺して乾いた路面に接触した場合、ステムのエッジ42,43は、ステムが圧縮されると膜を切り裂く。図4Aのステム41は、要素ブロック36‐1に属しており、この要素ブロックは、第2のステムを有し、シェブロン形スリット34によりラグ31の他の要素ブロック36から隔てられている。このラグのゴムの圧縮により伝えられる圧力を受けて、ステム41の下に位置する膜の異物は、前方に、そして又側に押し出されて周囲の溝に向かって進められ、ラグのゴムは、路面と乾いた接触関係を次第に確立する。この結果、グリップが増大する。また、ゴムの圧縮がラグ31の中心に向かって進むと、スリット又はサイプ34を縁取っているゴムが膨張してこのサイプを閉じる。要素ブロック45は、このラグの他の2つの隣り合う要素ブロックの壁に当接し、ラグの変形を制限すると共にこのように得られた乾き接触関係を十分な接触圧力で維持することができる。上述の作用は、あらゆる方向において同じである。
【0044】
図4Dを参照して、この場合における「ステム‐凹部結合」の意味について説明する必要がある。この図4Dは、3つのラグ211,212,213を示しており、各ラグは、6つのアーム又はステムを備えた規則正しい星の形をしており、ラグの幾何学的中心P1,P2,P3から見て半径方向最も遠くに位置する端は、各ラグを包囲した円(それぞれ、C1,C2,C3)上に位置している。ラグ212は、ラグ211と結合関係をなしていることが解る。というのは、そのステム212Eのうちの1つは、ラグ211の2つのステム211E相互間に形成された凹部211Rの近くに位置すると共にこのラグ211を包囲した円C1の内側に位置しているからである。同様に、ラグ213は、ラグ211と結合関係をなしている。というのは、そのステム213Eのうちの1つは、凹部212R内に位置決めされると共にラグ212を包囲した円C2内に位置しているからである。限定的な場合には、ラグ211は、端がラグ212を包囲した円C2上に位置したステム211E′を有する。
【0045】
互いに交互に配置された彫刻ラグの配置は、異物が彫刻状物の溝の壁相互間に捕捉状態になる状況においてソールの安全性の点において別の利点を有することが判明した。図10Aは、溝90Aによって隔てられた2つのラグ88A,89Aを有するソールの断面を示している。この溝のその深さに対する幅は、異物、例えば石が長時間にわたり溝の中に捕捉状態のままでいることができないようなものである。図10Bは、溝90Bが溝90Aよりも深く且つ幅の狭い逆の場合を示している。明らかなこととして、小石93Bは、場合によっては長期間にわたり容易に捕捉状態のままである場合があり、その後、この小石は、最終的には、ソールが使用中における種々の力の結果として放出される。後者の場合、小石の存在は、滑り易い路面上における滑り止め性能に悪影響を及ぼす。図10Cは、図10Bのソールの一部を上から見た図であり、溝90Cがバランスのとれた力を溝の中に捕捉されている小石93Cの両側に及ぼす2つの厚手の互いに平行なラグのエッジに沿って延びている。これとは対照的に、図10Dは、本発明の構成において、実質的に頭と尾の形態で位置決めされた2つのステム88B,89Dによって境界付けられた溝に関して同一の状況を示している。この図から明らかであるように、図10Dの上方部分内に捕捉された小石、例えば小石93Dは、歩行中、溝90Dの壁からアンバランスな状態の側方力を受ける。このアンバランスにより、小石93Dは、溝90Dから迅速に追い出される。これは、小石93′Dが図10Dにおいて溝90Dの下方部分内に捕捉状態になった他の図示の場合においても当てはまり、小石の位置では厚手のステム89Dにより及ぼされた応力は、薄手のステム88Dの応力よりも高く、遅かれ早かれ小石が放出されることになる。
【0046】
図10Eは、小石の保持を阻止するのに役立つ本発明の変形例としての構成を示している。溝90Eの壁91E,92Eは、図面の上方部分に向かって見てテーパ角度で傾けられており、ラグの接触面に垂直な線に対して測定されたテーパ角度は、0°を超える。これらの壁は、ベース80Eに対して鈍角をなす。漏斗形状内に捕捉された小石93Eは、傾斜壁によって溝から出口に向かって追い遣られる傾向がある。同様な結果が図10Fの場合に得られ、この場合、溝のベースは、エラストマーボス94Fを備え、このエラストマーボスは、壁91F,92F相互間に捕捉される場合のある物体、例えば物体93Fに対する石除去装置として働く。この最後の構成例は、例えば以下に説明するように溝の交差部にテーパを作るのが容易ではない空間に特に適している。
【0047】
図11は、一定のテーパ角で傾斜した壁95‐1により境界付けられたステム96‐1及びこれ又一定のテーパ角で傾斜した溝壁95‐2により境界付けられたステム96‐2から成る組の概略斜視図である。2つのステムは、本発明の構成に従って頭と尾を突き合わせた配置状態で位置決めされており、溝によって互いに隔てられている。図12は、壁99を形成することが容易であると共にこのようにすることが有利であることを平面図で概略的に示しており、壁99のテーパ角度は、これら壁が境界付ける溝97に沿って変化している。図示の場合、壁のテーパ角度は、ステムの端まで溝に沿って増大している。
【0048】
図13A、図13B及び図13Cは、例えば図2、図3、図6及び図7の平面図と類似しており、ラグ相互間の溝の壁は、図13A及び図13Cに示されている変形例では一定のテーパ角度を有し、図13Bでは可変テーパ角度を有している。各溝のベースを構成するソールのベースの壁のレイアウトは、図13Aではラグ182,183相互間で符号180,181に見えると共に図13Bではラグ192,193相互間の符号190,191に見える。図13Cは、ソールのベース上の相当広い空間が溝の傾斜壁によって覆われていない状態のままに残されている溝の交差部に形成された石除去装置195のレイアウトを示している。
【0049】
図7A、図7B、図7C及び図7Dは、特に本発明の彫刻状物の凹み率を適合させる目的で提供されている先の図面を参照して説明した好ましい形態の考えられる幾つかの変形実施形態を示している。図7Aでは、図3〜図6のラグパターンと同一の6つのアーム51を備えた星を形成するラグパターンは、各星が軸線Lに沿って向いた1つのステム52及び軸線lの方向に主要コンポーネントを有する2つのステム53を有するので異なった仕方で処理されている。3つの隣り合うラグ31の各群の中心57は、正三角形58の頂点上に位置している。これは、隣り合うラグ31の中心37が一点鎖線で示されている正三角形48上に位置し、辺が長手方向Lに対してそれぞれ45°、105°、165°をなして差し向けられている図5の場合と同様である。図7Aの構成例では、正三角形58の三辺は、三角形48の三辺と同一の向きを有している。しかしながら、ラグの中心間距離とこれらのステムの長さ(即ち、ラグの中心からのステムの端の距離)は、互いに異なっている。その結果、溝の各側における隣り合う平行なステムのエッジ相互間には大きな離隔距離が存在すると共にステムの先端部の位置には溝により形成されたチャネルの所与の度合いの幅の狭まりが存在することが解る。
【0050】
図7Bを参照すると、この場合も又同一のラグパターン61に関し、これらの中心67が正三角形68の頂点に位置し、この正三角形の三辺は、長手方向Lに対してそれぞれ15°、75°、135°の角度をなして位置している。ラグ61及び三角形68の寸法は図7Aのラグ51及び三角形58の寸法と同一なので、図7Bの構成により、明らかに図7Aの凹み率よりも大きな凹み率において彫刻状物の溝の幅の事実上完全な一様性を達成することができることは明らかである。したがって、ラグの互いに噛み合った三角形の向きは、溝の一様性及び凹み率を調節するための有用なパラメータである。
【0051】
図7C及び図7Dは、先の図3〜図6の彫刻状物の凹み率を減少させ、取り除かれるべき介在膜の物質の放出のための相当な溝幅を保持しながらステムの先端部をカットバックすることによってラグの密度を増大させる方法を示している。また、図示の結果を達成するためにステム先端部を丸くし又は尖っていない状態にすることが可能である。この構成は、図7Bの構成と同一である構成の場合、星の寸法(即ち、上述したステムEの長さ)を図7Cに示すように増大させることができ、それどころか、溝内に必要な放出能力の重要性が小さい場合には図7Dに示されているように一段と増大させることができるようなものである。他の全ての要因が変わらないことを条件として、凹み率の減少は、支持面に加わる接触圧力を減少させることができる要因である。路面上で用いられるソールの場合、これにより、グリップを乾き接触状態で増大させることができると同時に摩耗を減少させることができる。性能のこれらの観点は、一般に、滑り止め用途の設計にあたって優先的な観点であると見なされる。
【0052】
特に路面とユーザの足との滑り止め接触への利用に関する本発明によれば、その目的は、路面とユーザとの間のグリップ係数を減少させる介在物質に効果的に侵入してこれらを追い払うと共に第1の目的がユーザの各一歩で達成される場合最大の乾き接触表面を保持する彫刻状物を製作することにある。この点に関して本出願人の研究結果の実証するところによれば、上述した固有の特性を有するだけでなく、介在物質との係合箇所を増加させるのに十分な小さなパターンを、比較的低い凹み率、即ち、60パーセント(60%)未満且つせいぜい30パーセント(30%)に等しい凹み率と組み合わせて用いることが有用である。上述したパターンは、これらが10ミリメートルの最大直径を用い、好ましくは2〜8ミリメートルの直径を持つ円に内接するようサイズにおいて特に有効であることが判明した。最後に、これらパターンは、滑りの追加の恐れの要因となる場合があるソール中への小石又は他の物体の保持を阻止するのに特に適している。
【0053】
驚くべきこととして、この種の特性を備えて製造された履物用ソールの彫刻状物は、触れると非常に特有の感触を持つ表面を有し、これは、他の全ての要因が等しい場合、例えば図1に示されている先行技術のソールの感触とは異なっている。ラグのステムの終端部となる多数の先端部は、粗さと組み合わされた柔らかさ及び「ベルベット」のまとわりつきという変わった且つ思いがけない感覚を提供する。
【0054】
このような印象は、例えば、10%伸び率における剪断弾性率(剛性率)が2.7MPaのゴム又は他のエラストマー材料で作られた作業用履物のソールについて図5を参照して説明した彫刻状物で得られる。2つの互いに反対側に位置するステムの先端部相互間の距離は、8ミリメートルであり、ステムの開き角は、60°である。各ステムの端部は、僅かに丸くなっている。この例では、スリット34の幅は、0.3ミリメートルであり、これらの長さは、約2ミリメートルである。図5の同一の溝を境界付ける2つのラグステムの2つの互いに平行なエッジ相互間の距離は、0.9mmである。彫刻状物の高さ(又は溝の深さ)は、3ミリメートルであり、スリット34の深さは、2ミリメートルである。この例における表面凹み率は、40パーセントである。
【0055】
図8A及び図8Bは、図4A及び図4Bの6つのアームを備えた星の形態をしたパターンの構成例を示しており、この構成例は、彫刻状物のグリップ特性の等方性を向上させるのに適している。各ラグ81は、ステムの形態で終端する6つのアームを有する。ラグのうちの1つのラグ81‐1を参照すると、このラグ81‐1の2つの別々の要素ブロック86‐A,86‐Bに属する2つの隣り合うステム82‐1,83‐1を見てとることができる。次に、図8Aの左側の隣り合うラグのうちの1つのラグ81‐2を吟味すると共にラグ81‐2の対応の2つの要素ブロック86‐A,86‐Bのステム82‐2,83‐2を見ると、これらは、図面の左上側に向かうこれらのレイアウトの並進及び30°の角度のラグの軸線回りの回転を含むラグ81‐1のレイアウトの変位によって形成されていることが解る。同様に、図8Aは、ラグ81‐3を同一方向におけるラグ81‐2のレイアウトの並進及びその軸線回りの30°の回転により形成することができるということを示している。したがって、右側から左上への整列体上に位置する隣り合うラグ81‐1〜81‐3は、互いに異なる方向に差し向けられたステムを有する。同じ構造は、図8Aにおいて直ぐ下及び直ぐ上に配置された整列体に見受けられる。この構造は、ラグがソールと路面との間に介在して位置する材料のスキン又は膜中に食い込むよう最大有効性で作用することができる力の向きを増加させるために使用できる。
【0056】
図8Bは、ソール80の基部から突き出ていて、そのステム82‐1,83‐1並びに溝85‐1ほど深くはないスリット84‐1を備えたラグ81‐1の組成の詳細図である。各ラグ、例えばラグ81‐1は、同一の整列体中のラグ81‐1の各側に1つずつ2つの隣り合うラグに属する2つの凹部88‐1,88‐2に向いた(この場合、右から左上側に)2つの互いに反対側のステムを有している。これとは逆に、ラグ81‐1は、第2の整列体中のラグ81‐1の各側で隣り合うラグの2つのステムにより向けられた(この場合、図8A及び図8Bの右下から上に)2つの互いに反対側の凹部88‐3,88‐4を有している。
【0057】
本発明の彫刻状物を、彫刻状物の等方性を向上させるため、即ち、あらゆる方向における彫刻状物の一様な性能又は互いに異なる方向における応力への一様な応答を達成するために、各ラグ中のスリットの向き又は数に関しスリット又はサイプ、例えばスリット34の配列体中で互いに異なるラグを備えた状態で製作することが可能である。また、或る特定の方向、例えば履物に関して前方運動方向において彫刻状物の或る特定の特性を差別化し又は優先順位を優先的に扱うために慎重な選択を行うことが可能である。図7C及び図7Dにおいて、各星形ラグ71は、図3〜図5のスリット34に類似していて、各ラグ71の中心75で出会う6つの半径方向スリット74を有していることが解る。
【0058】
星形パターンの向きを1つのラグと次のラグとで変化させるだけでなく、所望の性能に従って彫刻状物に種々のサイズのラグを並置することが可能である。図9は、先の図3〜図5に示された形式の6つのアームを備えた星の形態のラグを備えた彫刻状物の実施形態を示しており、これらラグ相互間には、正三角形の輪郭形状を有すると共に彫刻状物中に挿入されたラグ92が交互に配置されている。したがって、これらラグ92の各々は、ラグ91のステム相互間の凹部98により形成された空間に嵌まり込んでいる3つの頂点96を有し、これらラグの各々も又、ラグ94の中心で出会う3つのスリット又はサイプを備えている。
【0059】
明らかなこととして、彫刻状物を構成する隣り合うラグのパターンが互いに異なる形状のものであり、例えば、種々の数のアームを有し又は彫刻状物のラグ相互間で変化するサイズ、向き及びスリットシステムを有する彫刻状物を設計すると共に配置するための他のシステムを案出することが可能である。
【0060】
本発明は、例えば5つ、6つ又は7つのアーム(或いはそれ以上の数のアーム)を有する星形ラグに利用できる。
【0061】
経験の示すところによれば、上述の構成例は、湿っている若しくは濡れた路面又は液体、例えば水、油若しくは血液又は路面及び/又は履物用ソールの通常の構成材料相互間の滑り接触状態を生じさせる場合のある任意他の不純物によって覆われた路面に対する履物用ソールのグリップの著しい向上を提供する傾向がある。本発明は、作業用履物及び/又はスポーツ用履物のための滑り止めソールの製造に特に適している。
【0062】
明らかなこととして、本発明は、上述の実施例には限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく本発明の種々の改造例を想到できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー材料のベースを備えたソールを有する履物であって、前記ベースの少なくとも1つの領域は、路面に接触するようその下面から突き出ている接触ラグを備え、前記接触ラグは、各接触ラグ中に75°未満の角度をなしてステム(32)を画定する溝によって互いに隔てられ、各ラグの接触面は、前記接触面の輪郭形状全体にわたって分布して配置された少なくとも5つのアームを備えた星の形をしており、各ステムは、前記星形状の中心の方に向いた凹部(38)によって前記ラグ上のその隣りのステムから隔てられ、前記ソールは、前記領域の複数個の第1の接触ラグ(81)に関し、前記第1の接触ラグの各々が前記領域中の前記第1のラグの隣りに位置する第2の接触ラグの輪郭形状中の2つの隣り合うステムを隔てる凹部(88‐1)への第1のステム(83‐1)の少なくとも1つのステム‐凹部結合部を有し、即ち、前記第1のステムの端は、前記第2のラグを包囲する円内に位置決めされていることを特徴とする、履物。
【請求項2】
前記領域中の各第1のラグは、
(i)隣り合うラグの輪郭形状中の隣り合うステムを隔てる凹部(88‐2)に対するそのステムの少なくとも2つの結合部、及び
(ii)隣り合うラグのステムに対するその輪郭形状中の隣り合うステム相互間のその凹部の少なくとも2つの結合部を有する、請求項1記載の履物。
【請求項3】
前記領域中の各第1のラグは、その周囲全体にわたって分布して配置された1つの組をなす少なくとも4つのラグによって包囲され、前記ラグの各々は、ステム‐凹部結合部によって前記組によって包囲されている前記ラグと関連している、請求項1又は2のうちいずれか一に記載の履物。
【請求項4】
前記領域中の各ラグは、6つのステムを有し、各ラグは、その周囲全体にわたって分布して配置された1つの組をなす少なくとも6つの隣り合うラグによって包囲され、前記ラグの各々は、前記組によって包囲された前記ラグへのステム‐凹部結合部を有する、請求項1記載の履物。
【請求項5】
各ラグ(31)は、前記ソールの少なくとも1つの領域に関して、直径20ミリメートル未満の円に内接可能である、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の履物。
【請求項6】
各ラグ(31)は、直径10ミリメートル以下且つ4ミリメートル以上の円に内接可能である、請求項5記載の履物。
【請求項7】
彫刻状物の凹み率は、前記ソールの少なくとも1つの領域に関して、60%以下且つ30%以上である、請求項1〜6のうちいずれか一に記載の履物。
【請求項8】
各ステムの頂点の角度は、少なくとも40°である、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の履物。
【請求項9】
前記ステム相互間の前記溝(35)の幅は、ソールの一領域の実際の接触面を最大にするために実質的に一定である、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の履物。
【請求項10】
隣り合うラグ(81‐1,81‐2,81‐3)の星形の向きは、前記ソールの少なくとも一部分に関して互いに角度的にずらされている、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の履物。
【請求項11】
各ラグは、該ラグの厚み中に設けられていて、その接触面に開口している少なくとも1つのスリット(34)を有する、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の履物。
【請求項12】
各スリットは、2つの端を有し、前記端のうちの一方は、凹部中に開口している、請求項11記載の履物。
【請求項13】
各ラグは、複数のスリットを有し、前記スリットは、前記ラグ内に位置する共通の端(37)を有する、請求項11又は12記載の履物。
【請求項14】
各スリット(34)の深さは、前記ラグを互いに隔てる前記溝(35)の深さの20%〜80%である、請求項11〜13のうちいずれか一に記載の履物。
【請求項15】
1つのラグ(81‐1,81‐2,81‐3)の前記スリット(84‐1,84‐2,84‐3)の向きは、前記ソールの少なくとも一部分に関して、隣り合うラグのうちの少なくとも1つの前記スリットに対して角度的にずらされている、請求項11〜14のうちいずれか一に記載の履物。
【請求項16】
各ステムは、2つの溝(35)の壁によって画定され、第1のラグ(81)のステム(83‐1)が第2のラグの凹部(88‐1)に嵌まり込んでいる状態におけるこのステム(83‐1)を隔てる少なくとも1つの溝の壁は、0°を超えるテーパ角度をなして前記ソールのベースに対して傾けられており、前記テーパ角度は、前記ラグの前記接触面に垂直な線に対して測定される、請求項1〜15のうちいずれか一に記載の履物。
【請求項17】
前記壁の前記テーパ角度は、前記溝に沿って前記ステムの前記端まで増大している、請求項16記載の履物。
【請求項18】
前記ソールは、石除去装置として働く少なくとも1つのボスを有し、前記ボスは、2つのステムの端を画定する少なくとも2つの溝の交差部で前記ベースから突き出ている、請求項1〜17のうちいずれか一に記載の履物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図10D】
image rotate

【図10E】
image rotate

【図10F】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate


【公表番号】特表2012−504480(P2012−504480A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530473(P2011−530473)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062985
【国際公開番号】WO2010/040755
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】