説明

漏れ流量計及び漏れ流量計を用いた漏れ測定方法

【課題】複数の測定対象について一度に漏れを測定できるようにすること。
【解決手段】流量計積層体10は、複数の流量計本体100を積層化することにより、一体的に構成される。各流量計本体100は、大径部121及び小径部122を備えたピストン120と、ピストン120を摺動可能に収容するシリンダケース110と、ストロークセンサ160等を備える。切替弁40が位置(a)になると、ポンプ20からの圧油が第1室140に流入し、ピストン120が上方に変位する。これにより、第2室150で加圧された圧油は、測定対象ポート91に供給される。ストロークセンサ160は、測定対象ポート91での漏れ量に応じて移動するピストン120の変位を検出し、制御部50に出力する。積層体10を構成する複数の流量計本体100により、一度に複数の測定対象を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、油圧機器等の漏れ測定に使用可能な漏れ流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧弁等の油圧機器の性能を測定したり、油圧系統のポンプロスを測定等するために、漏れ流量計が使用される。漏れ流量計としては、油圧モータ式やシリンダ式のものが知られている。油圧モータ式の漏れ流量計は、測定対象物に存在する微少な圧油の漏れによって油圧モータを回転させ、この回転量に基づいて漏れ量を測定する。シリンダ式の漏れ流量計は、シリンダによって測定対象物に液体を送り込み、漏れに応じたピストンの変位に基づいて漏れ量を測定する(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−132895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記文献に記載の従来技術では、装置にワークをセットした後、空圧によって液体を加圧し、この加圧した液体をワーク内に送り込む。そして、ワーク内の圧力が所定値を維持するように液体の加圧を続けて、ピストンロッドの変位量を検出し、ワークからの漏れ量を検出する。そして、他のワークの漏れ測定を行う場合は、測定済のワーク内から液体を抜いてから取り外し、新たなワークを装置にセットして前記のプロセスを繰り返す。
【0004】
このように、前記文献に記載の従来技術では、装置構造が複雑であるため、小型化するのが難しい。また、この従来技術では、一回の測定作業で一つの測定対象物のみを検査可能であるため、測定対象物が多い場合や、一つの測定対象物内に多数の測定ポイントが存在するような場合、あるいは、複数の測定ポイントのそれぞれに対して異なる圧力をかける必要がある場合には、測定作業の効率が大幅に低下する。
【0005】
そこで、本発明の目的は、測定作業の効率を改善できるようにした漏れ流量計を提供することにある。本発明の他の目的は、高精度の測定を効率的に行うことができるようにした漏れ流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従う漏れ流量計は、複数の流量計本体と、各流量計本体へ圧油を供給する油圧源と、油圧源から各流量計本体に供給される圧油を所定圧に調整するための圧力調整手段と、圧力調整手段によって所定圧に調整された圧油を、各流量計本体内にそれぞれ設けられた第1室または第2室のいずれか一方に供給させるための切替弁と、切替弁と各第2室との間に設けられ、切替弁から各第2室への圧油の流入を許可し、逆向きの流れを遮断するチェック弁とを備える。そして、各流量計本体は、第1室及び該第1室よりも小径に形成される第2室が設けられたシリンダケースと、第1室に配置される大径部及び第2室に配置される小径部を備え、シリンダケース内に摺動可能に設けられたピストンと、ピストンの摺動方向の変位を計測して出力する変位量検出手段と、第2室を油漏れの測定対象物に連通させる油路と、を備えている。切替弁は、測定対象物の漏れを測定する場合には、油圧源と各第1室とを連通させ、漏れ測定が終了した場合には、各第1室をタンクに連通させると共に各第2室と油圧源とを連通させるように動作する。さらに、複数の流量計本体を積層して構成する。
【0007】
これにより、流量計本体を積層化して構成するため、一回の測定作業で複数の測定点について漏れを測定することができ、作業効率が向上する。また、第1室と第2室の面積比を調整するだけで、複数種類の圧力を得ることができるため、流量計本体を積層化することにより、一回の測定作業で種々の圧力による漏れ測定を行うことができる。
【0008】
一つの実施形態では、各流量計本体のシリンダケースには、隣接する他の流量計本体と積層するための連結部が設けられている。この連結部により、比較的容易な組み立て作業で、各流量計本体を連結させて一体的に連設することができ、この結果、全体サイズを小型化することができる。
【0009】
一つの実施形態では、小径部の外周側と第2室の周面との間に、第2室内の圧油が第1室内に流入するのを防止するためのシール部材を設けている。これにより、第2室内の圧油が第1室内に漏れるのを防止することができる。従って、チェック弁と相まって、測定誤差の原因となる漏れを抑制し、より高精度に漏れ測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、漏れ流量計の全体構成を示す説明図である。漏れ流量計は、例えば、複数の流量計本体100等を連設してなる流量計積層体10と、油圧ポンプ20と、圧力調節弁30と、切替弁40と、制御部50と、タンク60等を備えて構成される。
【0011】
流量計積層体10は、複数の流量計本体100を一体的に連結することにより、構成される。各流量計本体100は、例えば、シリンダケース110と、ピストン120と、ピストン120によってシリンダケース110内に画成される第1室140及び第2室150と、ピストン120の軸方向の変位を検出するストロークセンサ160と、各油路72,83等をそれぞれ備えて構成される。流量計本体100の具体例は、図2,図7と共に後述する。
図1では、第1の流量計本体100(1)は、第1の測定対象ポート91(1)に対応し、第2の流量計本体100(2)は、第2の測定対象ポート91(2)に対応する。なお、流量計積層体10を構成する流量計本体100の数は2個に限られない。
【0012】
ピストン120は、図中下側に位置する大径部121と、大径部121の上側に一体的に設けられ、大径部121よりも小径に形成された小径部122とから、段付円柱状(または段付円筒状)に形成されている。
【0013】
シリンダケース110には、その下側に位置する大径な第1室140と、第1室140の上側に位置して第1室140よりも小径に形成された第2室150とが、それぞれ形成されている。ピストン120は、大径部121が第1室140内に位置し、小径部122が第2室150内に位置するようにして、シリンダケース110内に摺動可能に設けられている。
【0014】
第1室140には、第1内部油路72が連通している。また、第2室150には、第2内部油路83及び測定用油路82がそれぞれ連通している。そして、第2内部油路83の途中には、チェック弁84が設けられている。第1内部油路72は、切替弁40を介して、第1室140と油圧ポンプ20とを連通させるものである。第2内部油路83は、チェック弁84及び切替弁40を介して、第2室150と油圧ポンプ20とを連通させるものである。これら各内部油路72,83は、例えば、各シリンダケース110に形成された穴部を油路として連結することにより構成される。
【0015】
測定用油路82は、その一部がシリンダケース110内に形成され、他の一部は、別体の配管として構成されている。測定用油路82は、第2室150と測定対象物90の測定対象ポート91とを連通させる。
【0016】
チェック弁84は、油圧ポンプ20から第2室150に向かう圧油の流れを許可し、その逆向きの流れ、即ち、第2室150からタンク60側へ向かう圧油の流れを遮断させるものである。チェック弁84は、図示のように、各内部油路83毎にそれぞれ設けることもできるし、あるいは、第2内部油路83と切替弁40とを連通させる第2配管81に1個だけ設けることもできる。
【0017】
ピストン120の小径部122の上端側には、小径な棒状のロッド130の下端側が固定されており、このロッド130の上端側は、ストロークセンサ160に取り付けられている。ピストン120がシリンダケース110内を軸方向(図中の上下方向)に移動すると、ピストン120に取り付けられたロッド130も軸方向に移動する。ストロークセンサ160は、ロッド130を介して、ピストン120の軸方向変位を検出し、この検出した変位量を電気信号として制御部50に出力する。
【0018】
油圧ポンプ20の吐出口は、吐出管路70を介して、例えば、リリーフ弁として構成される圧力調節弁30に接続されている。圧力調節弁30は、油圧ポンプ20の吐出圧を所定圧に維持させる。
【0019】
また、油圧ポンプ20の吐出口は、吐出管路70を介して、切替弁40の一方の入力ポートに接続されている。従って、油圧ポンプ20からの圧油は、圧力調節弁30によって調圧された状態で、切替弁40に流入する。
【0020】
切替弁40は、例えば、4ポート2位置の方向切替弁として構成される。ここでは、油圧ポンプ20から第1室140への圧油の流れを基準として、図中下側の各ポートを入力ポートと、図中上側の各ポートを出力ポートと呼ぶことにする。
【0021】
切替弁40の有する2つの入力ポートのうち、一方の入力ポートは、吐出管路70を介して油圧ポンプ20に接続されており、他方の入力ポートには、タンク60に接続されている。切替弁40の有する2つの出力ポートのうち、一方の出力ポートは、第1接続管路71から第1内部油路72を介して、第1室140に接続されており、他方の出力ポートは、第2接続管路81から第2内部油路83及びチェック弁84を介して、第2室150に接続されている。
【0022】
切替弁40が第1切替位置(a)に切り替わっている場合、吐出管路70と第1接続管路71とが連通される。これにより、油圧ポンプ20から吐出され調圧された圧油は、吐出管路70から第1接続管路71及び第1内部油路72を介して、第1室140に供給される。これにより、ピストン120の大径部121の受ける圧力は、小径部122の受ける圧力よりも高くなり、ピストン120は上方に変位する。ピストン120の上方への変位によって第2室150の容積が低下し、第2室150内の圧油が加圧される。この加圧された圧油は、測定用油路82を介して、測定対象ポート91に供給される。このとき、チェック弁84の弁体は弁座に着座し、第2内部油路83の途中を遮断する。
【0023】
測定が終了すると、切替弁40は、制御部50からの制御信号によって、第1切替位置(a)から第2切替位置(b)に切り替えられる。この制御信号は、電気信号でもよいし、パイロット圧信号でもよい。切替弁40が第2切替位置(b)に切り替わると、第1接続管路71とタンク60とが接続される一方、第2接続管路81と油圧ポンプ20とが接続される。これにより、油圧ポンプ20からの圧油は、吐出管路70から第2接続管路81と第2内部油路83とチェック弁84とを介して、第2室150に供給される。一方、第1室140は、第1内部油路72から第1接続管路71を介して、タンク60に連通される。従って、ピストン120の小径部122の受ける圧力は、大径部121の受ける圧力よりも高くなり、ピストン120は下方に変位する。この下方への変位により、第1室150内の圧油は、タンク60に戻される。
【0024】
制御部50は、例えば、マイクロコンピュータやディスプレイ装置等を備えた電子制御装置として構成される。制御部50は、切替弁40及び油圧ポンプ20に制御信号をそれぞれ出力することにより、切替弁40の切替と油圧ポンプ20の作動を制御する。そして、制御部50は、各ストロークセンサ160からの検出信号をそれぞれ取得し、漏れの測定値を出力する。
【0025】
図2は、流量計本体100の一つの具体例を示す断面図である。上述のように、流量計本体100は、例えば、シリンダケース110と、ピストン120と、ロッド130と、第1室140と、第2室150と、ストロークセンサ160と、シール部材170,171とを備えて構成される。
【0026】
シリンダケース110には、連結ボルト181(図3参照)を挿通するためのボルト通し穴112が複数設けられている。また、シリンダケース110の下側の開口部は、略平板状の蓋部111によって液密に施蓋されている。
【0027】
ピストン120の大径部121は、第1室140内に位置して、摺動可能に設けられている。大径部121の外周面側には、シール部材170が設けられている。このシール部材170は、大径部121の外周側と第1室140の周面との間の隙間を介して、油が漏れないようにシールするものである。
【0028】
ピストン120の小径部122は、小径に形成された第2室150内に位置して、摺動可能に設けられている。ピストン120の位置状況によっては、小径部122が第1室140内に侵入する場合もある。小径部122の外周面側には、別のシール部材171が設けられている。このシール部材171は、第2室150内の圧油が小径部122の外周面と第2室150の周面との間の隙間を介して、第1室140側に漏れるのを防止するものである。これにより、測定対象のポート91から、測定用油路82及び第2室150を介して、圧油が漏れるのを防止することができる。従って、チェック弁84との相乗効果により、より高精度に測定対象ポート91の漏れ量を測定することができる。
【0029】
ストロークセンサ160は、例えば、センサ本体161と、アーム162と、スリーブ163と、信号線164とを備えて構成される。センサ本体161は、例えば、ポテンショメータとして構成される。アーム162は、センサ本体161をロッド130に連結し、ロッド130の変位を回転運動に変換して伝達する。センサ本体161は、アーム162の回転位置に応じた電気信号を出力する。この電気信号は、信号線164を介して、制御部50に入力される。
【0030】
ストロークセンサ160は、スリーブ部材163を介して、シリンダケース110の上側に取り付けられている。スリーブ部材163は、円筒状に形成されており、その内部には、ロッド130が摺動可能に挿通されている。また、スリーブ部材163は、シリンダケース110に形成されたネジ穴に締着されており、液密に取り付けられている。なお、ストロークセンサ160の構造は、図示のものに限られず、後述のように、別のセンサを用いることもできる。要するに、ピストン120の軸方向の変位量を検出することができる構造であればよい。
【0031】
図3は、流量計積層体10の側面図である。流量計積層体10は、例えば、複数の流量計本体100を一直線に並べて配置し、その両端部にエンドプレート180をそれぞれ配置し、各ボルト通し穴112に連結ボルト181をそれぞれ挿通して連結することにより、これら100,180を一体化して構成される。図4は、流量計積層体10の上面図である。
【0032】
図3,図4に示すように、流量計積層体10は、その目的に応じた数の流量計本体100から構成可能である。例えば、n(nは2以上の自然数)個の測定対象ポート91について漏れ検査を行う場合、少なくともn個の流量計本体100を連結して流量計積層体10を構成すればよい。
【0033】
n+1個やn+2個等のように、さらに多数の測定対象ポート91について漏れ検査を行う場合、1個または2個の新たな流量計本体100をさらに追加して連結することにより、流量計積層体10の構成を変更させて、対応することができる。逆に、n−1個やn−2個等のように、少数の測定対象ポート91について漏れ検査を行う場合、組み立て済の流量計積層体10から1個または2個の流量計本体100を取り外すことにより、流量計積層体10の構成を変更させて対応することができる。
【0034】
次に、漏れ流量計の動作について説明する。まず最初に、図5の説明図を参照し、各流量計本体100の動作を説明する。図5(a)は、測定開始前の状態を示す。第1室140と油圧ポンプ20、第2室150と測定対象物90の測定対象ポート91は、それぞれ接続されている。
【0035】
ここで、大径部121の横断面積A1と、小径部122の横断面積A2(より正確には、小径部122の横断面積からロッド130の横断面積を差し引いた値)との比α(α=A1/A2)が、流量計本体100における加圧倍率となる。例えば、調圧後のポンプ圧をPpとすると、第2室150から出力される圧油の圧力Pr2は、Pp×A1/A2となる。従って、大径部121と小径部122の寸法を適宜設定することにより、所望の測定用圧力を得ることができる。
【0036】
そして、第1室140を取り囲むシリンダケース110の壁厚d1は、主として油圧ポンプ20からの最大吐出圧によって定まる。第2室150を取り囲むシリンダケース110の壁厚d2は、上述の通り、加圧倍率αによって定まる。測定用圧力を小さく設定する場合は、加圧倍率αが小さくなるため、A2の値が大きくなる。従って、第2室150の壁厚d2も小さくなり、薄肉となる。これとは逆に、測定用圧力を大きく設定する場合は、加圧倍率αも大きくなり、A2の値が小さくなる。従って、第2室150の壁厚d2は大きくなり、厚肉となる。このように、本実施例では、より高い測定用圧力を得ようとするほど、高圧となる第2室150の壁厚d2は必然的に厚くなり、高圧測定の安全性を向上させることができる。
【0037】
図5(b)は、漏れ測定を行っている状態を示す。油圧ポンプ20からの圧油が第1室140に供給されると、ピストン120が上方に変位し、機械的に定まる加圧倍率αに従って、第2室150内の圧力が上昇する。この加圧された測定用の圧力は、測定対象ポート91に入力される。測定対象ポート91に漏れが生じていない場合、ピストン120の上昇は所定位置で停止する。測定対象ポート91に漏れが生じている場合、漏れの分量に応じて、ピストン120は所定位置から徐々に上昇する。従って、所定位置からの上昇分ΔLをストロークセンサ160で測定することにより、漏れた圧油の流量を測定することができる。この漏れ流量ΔQは、A2と上昇変位量ΔLとの積として算出される(ΔQ=A2×ΔL)。
なお、第1室140の上部には、大径部121の上面とシリンダケース110との間に画成される室141が形成されている。この室141は、ピストン120が上方に変位すると容積が減少し、ピストン120が下方に変位すると容積が増大する。
【0038】
図5(c)は、漏れ測定を終了した状態を示す。この場合は、切替弁40を位置(a)から位置(b)に切り替えることにより、第2室150に油圧ポンプ20からの圧油を導くと共に、第1室140をタンク60に連通させる。これにより、第1室140内の圧油はタンク60に戻され、ピストン120は初期位置に復帰する。以上が各流量計本体100の個別動作である。
【0039】
図6は、漏れ流量計の全体動作を示す模式図である。まず、ユーザは、流量計積層体10と測定対象物90の各測定対象ポート91とを、測定用油路82を介してそれぞれ接続させる。これで、漏れ測定のためのセット作業が完了する。ここで、流量計積層体10は、測定用圧力がP1〜P10にそれぞれ予め設定された複数の流量計本体100を積層化することにより構成されている。即ち、各流量計本体100の加圧倍率α1〜α10は、それぞれに対応する測定対象ポート91の漏れ測定用に事前に設定されている。そして、ユーザは、例えば、制御部50に接続された手動ボタン等を操作することにより、測定開始を制御部50に指示する。
【0040】
制御部50は、ユーザからの測定開始指示を確認すると(S1)、油圧ポンプ20を作動させて(測定開始指示を受領する前から作動させてもよい)、油圧ポンプ20からの圧油を各流量計本体100にそれぞれ供給させる(S2)。これにより、図5と共に述べたように、各ピストン120は、測定対象ポート91の漏れ量に応じて、それぞれ上方に変位する。各ストロークセンサ160は、ピストン120の変位量を電気的に検出し、この検出した変位量を信号線164を介して、制御部50にそれぞれ出力する。
【0041】
制御部50は、各ストロークセンサ160から出力された検出信号を取得すると(S3)、各測定対象ポート91毎に、及び/または、測定対象物90の全体として、漏れ量を解析する(S4)。制御部50は、この解析結果をディスプレイ51に画面表示させたり、記憶部52に保存させる(S5)。そして、制御部50は、次の測定に備えてリセットを指示する(S6)。即ち、切替弁40の位置を切り替えさせて、第1室140内の圧油を排出させ、ピストン120を初期位置に復帰させる。
【0042】
同一の測定対象物90について、上述のステップS1〜S6を繰り返すことにより、漏れ測定を複数回連続的に行うことができる。また、別の測定対象物90について漏れ測定を行う場合は、前回の測定対象物90を取り外した後、別の測定対象物90を流量計積層体10に接続し、S1〜S6のステップを実行させる。
【0043】
図7は、ストロークセンサの別の例を示す断面図である。この例では、ポテンショメータに代えて、高精度のストロークセンサ200を用いることもできる。このストロークセンサ200は、例えば、ホール素子等のような磁力を電気信号に変換する磁電変換素子を用い、ロッド130に取り付けられた永久磁石の位置を検出する。検出された位置は、電気信号として、信号線201から出力される。
【0044】
本実施例は、上述のように構成されるため、以下の効果を奏する。本実施例では、複数の流量計本体100を積層化して流量計積層体10を構成する。従って、全体サイズを小型化することができ、また、複数の測定対象について同時に漏れを測定することができ、測定作業の効率が向上する。
【0045】
本実施例では、ピストン120の段差形状を設定することにより、所望の測定用圧力を得られる構成とした。従って、複数の測定対象の測定用圧力がそれぞれ異なる場合でも、対応することができる。このため、高圧の油圧ポンプ20を用いずに、比較的広い圧力範囲で漏れ測定を行うことができ、使い勝手が向上し、流量計のコストも低減する。
【0046】
本実施例では、シリンダケース110にボルト通し穴112を形成し、ボルト181によって各流量計本体100を一体化する構成とした。従って、流量計積層体10を比較的簡単に組み立てることができ、その構成を簡単に変更することができる。
【0047】
本実施例では、各シリンダケース110に各油路72,83,82を構成するための流路をそれぞれ設け、流量計本体100を積層化したときに、流量計積層体10の内部に各油路72,83,82を形成させる構成とした。従って、別体の配管等で各流量計本体100を接続する必要がなく、組立作業や構成変更作業を簡単に行うことができる。
【0048】
本実施例では、第2室150と切替弁40との間にチェック弁84を設け、第2室150側(測定対象側)からの漏れを防止する構成とした。これにより、スプール弁等を用いる場合に比べて、より確実に漏れを防止でき、測定精度を高めることができる。
【0049】
本実施例では、小径部122の外周側にシール部材171を設ける構成とした。従って、チェック弁84及びシール部材171の相乗効果により、第2室150側(測定対象側)の圧油漏れを防止して、測定精度を高めることができる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係る漏れ流量計の全体構成説明図。
【図2】流量計本体の断面図。
【図3】流量計積層体の側面図。
【図4】流量計積層体の上面図。
【図5】流量計本体の作動を示す模式図。
【図6】一度に複数の測定対象について漏れを測定する様子を示すブロック図。
【図7】他の方式のストロークセンサを備えた流量計本体の断面図。
【符号の説明】
【0052】
10…流量計積層体、20…油圧ポンプ、30…圧力調節弁、40…切替弁、50…制御部、51…ディスプレイ、52…記憶部、60…タンク、70…吐出管路、71…第1接続管路、72…第1内部油路、81…第2接続管路、82…測定用油路、83第2内部油路、84…チェック弁、90…測定対象物、91…測定対象ポート、100…流量計本体、110…シリンダケース、111…蓋部、112…ボルト通し穴、120…ピストン、121…大径部、122…小径部、130…ロッド、140…第1室、150…第2室、160…ストロークセンサ、161…センサ本体、162…アーム、163…スリーブ部材、164…信号線、170,171…シール部材、180…エンドプレート、181…連結ボルト、200…ストロークセンサ、201…信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流量計本体(100)と、
前記各流量計本体へ圧油を供給する油圧源(20)と、
前記油圧源から前記各流量計本体に供給される圧油を所定圧に調整するための圧力調整手段(30)と、
前記圧力調整手段によって所定圧に調整された圧油を、前記各流量計本体内にそれぞれ設けられた第1室(140)または第2室(150)のいずれか一方に供給させるための切替弁(40)と、
前記切替弁と前記各第2室との間に設けられ、前記切替弁から前記各第2室への圧油の流入を許可し、逆向きの流れを遮断するチェック弁(84)と、
を備え、
前記各流量計本体(100)は、
前記第1室(140)及び該第1室よりも小径に形成される前記第2室(150)が設けられたシリンダケース(110)と、
前記第1室に配置される大径部(121)及び前記第2室に配置される小径部(122)を備え、前記シリンダケース(110)内に摺動可能に設けられたピストン(120)と、
前記ピストンの摺動方向の変位を計測して出力する変位量検出手段(160)と、
前記第2室を漏れの測定対象物(90)に連通させる油路(82)と、
を備えており、
前記切替弁は、前記測定対象物の漏れを測定する場合には、前記油圧源と前記各第1室とを連通させ、前記漏れ測定が終了した場合には、前記各第1室をタンク(60)に連通させると共に前記各第2室と前記油圧源とを連通させるように動作し、かつ、
前記複数の流量計本体を積層して構成することを特徴とする漏れ流量計。
【請求項2】
前記各流量計本体のシリンダケース(110)には、隣接する他の流量計本体と積層するための連結部(112)が設けられている請求項1に記載の漏れ流量計。
【請求項3】
前記小径部の外周側と前記第2室の周面との間に、前記第2室内の圧油が前記第1室内に流入するのを防止するためのシール部材を設けた請求項1に記載の漏れ流量計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−171076(P2007−171076A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371509(P2005−371509)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】