説明

漏洩検出支援装置

【課題】少ない個数の漏洩検出センサーで漏洩系統または漏洩機器を短時間で特定できる漏洩検出支援装置を提供する。
【解決手段】溶液移送系統のプラントの圧力、流量、物質特性、移送機器の運転状態などのプロセス情報から溶液の移送系統を特定すると共に、複数のブロック毎に設置した漏洩検出センサーの検出値を警報判定手段2に入力して警報の有無を判定し、表示装置5に警報を表示する漏洩検出支援装置20であって、漏洩検出信号と漏洩検出センサーが検出した温度、物質特性と前記プロセス情報及び移送系統を移送判定手段D1により比較判断し、さらに漏洩機器特定手段D2で漏洩発生の可能性のある移送系統および移送機器を特定できるので、少ない漏洩検出センサーで漏洩系統または漏洩機器を短時間で特定でき、かつ漏洩検出センサーが少なくなった分、スペースやコストを削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学プラント等において溶液の漏洩を検出するに好適な漏洩検出支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラント等においては溶液の漏洩を検出する漏洩検出システムが用いられている。
従来の漏洩検出システムは、ポンプやバルブなどの移送機器に漏洩検出用の専用センサーを設置して漏洩を検出していたが、このような漏洩検出システムでは、漏洩を検出するためのセンサー数が増加する傾向にあるため、センサーを少なくした場合、プラント構成機器のどの機器からどのような溶液が漏洩したのかを特定するのに時間がかかっており、また、漏洩量が少ない場合はセンサーが作動せず、漏洩を検知できない場合があるなどの問題が生じていた(特許文献1)。
【0003】
従来のプロセス監視装置による漏洩検出を図7のブロック図を参照して説明する。
図7に示すように、従来のプロセス監視装置10は、プロセス入力手段1と警報判定手段2と警報表示手段3と画面表示手段4と表示装置5とから構成されており、図示しない漏洩検出センサーによる検出値はプロセス入力手段1を介して警報判定手段2に入力され、警報判定手段2で警報か否かを判定し、警報状態であれば警報表示手段3で警報データを作成し、画面表示手段4で表示装置5に警報表示していた。
【0004】
通常、プロセス入力手段に検出値を入力する漏洩検出センサーは、移送機器毎または複数の移送機器毎に設置される場合が多くその個数も多くなるため、漏洩機器の特定に時間がかかっていた。そこで、少ない漏洩検出センサーで短時間に漏洩系統または漏洩機器が特定できる漏洩検出支援装置が求められており、また、漏洩発生後の処置についても、プラントが大規模化するに従って、移送機器数が増加し系統が複雑化する傾向になるため、速やかに漏洩停止操作が実施可能で、漏洩の影響を最小限に抑え、漏洩復旧時間の短縮が可能な漏洩検出支援装置が求められていた。
【特許文献1】特開平3−148031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、従来の漏洩検出方法によれば、漏洩の検出と漏洩機器の特定のために機器毎に漏洩検出センサーを設ける必要があるが、それでは設置スペースやコストが増加するという課題が生じる。また、漏洩検出センサーの設置状況によっては漏洩系統または漏洩機器の特定に時間がかかるという課題も生じる。
【0006】
漏洩の検出は漏洩検出センサーの作動情報が警報として提供されることが一般的であり、漏洩検出センサーが作動した場合で複数の機器毎に漏洩検出センサーが設置されている場合では、漏洩の可能性のある系統や、機器を特定する作業は、オペレータが系統の運転画面等で機器の運転状態を確認し、現場の確認が可能であれば、これらの情報を併せて漏洩発生系統および漏洩機器を総合判断して決定していたが、情報収集と判断に時間がかかるという課題があった。
【0007】
また、漏洩検出センサーが作動した場合に、上流系統の機器停止操作を含めた漏洩停止操作が必要となる場合があるが、漏洩停止手順を確認し漏洩を停止操作するまでに時間がかかり、さらに、漏洩系統の溶液保有量を算出するために溶液の移送量や機器への残量並びに機器の形状などの情報を収集する必要があり、これらの情報収集と判断、および溶液保有量の計算にも時間がかかるという課題があった。
【0008】
また、漏洩検出センサーが作動した場合、例えば漏洩液を何も処理しない状態のまま回収することが難しく、中和処理等が必要な場合、中和に必要な処理溶液の液性・液量や供給槽および移送機器などの処理溶液情報と、漏洩液を回収するための回収手順や回収槽・移送機器・移送能力の確認などのために多くの情報を収集する必要があり、これら情報の収集と判断に時間がかかり、漏洩液の回収までに時間がかかるという課題があった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その課題は少ない個数の漏洩検出センサーで漏洩の検出と漏洩の特定が可能で、漏洩系統または漏洩機器を短時間で特定できる漏洩検出支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を達成するために溶液の移送系統のプラントのプロセス情報から溶液の移送系統を特定すると共に、漏洩検出センサーを複数のブロック毎に設置し、前記漏洩検出センサーの検出値を警報判定手段に入力して警報か否かを判定し、警報状態であれば表示装置に警報を表示する漏洩検出支援装置であって、前記漏洩検出センサーからの漏洩検出信号および前記漏洩検出センサーが検出した温度、物質特性と前記プロセス情報及び移送系統を比較判断する移送判定手段と、前記移送判定手段により漏洩の発生している可能性のある移送系統およびその移送系統下にある移送機器および漏洩液を特定する漏洩機器特定手段とを有する漏洩検出判断部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少ない漏洩検出センサーで漏洩の検出と機器の特定が可能となるので、漏洩系統または漏洩機器を短時間で特定することができる。また、漏洩検出センサーが少なくなった分設置スペースやコストが削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態である漏洩検出支援装置のブロック構成図である。
本実施形態の漏洩検出支援装置20が図7の従来のプロセス監視装置と異なる構成は、移送情報F1及び機器情報F2と移送判定手段D1及び漏洩機器特定手段D2を有する漏洩判断部D10が追加された構成となっている点であり、その他の構成は図7の従来のプロセス監視装置と同一であるので、同一構成部分には同一符号を付して説明する。
【0013】
図1において、本実施形態の漏洩判断部D10は、プロセス入力手段1から入力される溶液の移送系統のプラントの圧力、流量、密度、温度、物質特性、移送機器の運転状態などのプロセス情報と移送情報F1に予め記憶された溶液の移送開始、完了の条件を比較することにより溶液の移送系統を選択し、選択した移送系統内の移送機器間の収支量を払い出し側、受け入れ側それぞれに機器情報F2に記憶するとともに、画面表示手段4に通知する移送判定手段D1と、プロセス入力手段1から入力される前記プロセス情報と漏洩検出センサーからの漏洩検出信号および漏洩検出センサーが検出した温度、物質特性と警報判定手段2から入力される漏洩警報と、移送判定手段D1で特定した移送系統と、機器情報F2に記憶されている移送系統およびその移送系統下にある移送機器に関する移送溶液の温度、物質特性を比較することにより、漏洩液の漏洩の発生している可能性のある移送系統およびその移送系統下にある移送機器および漏洩液を特定する漏洩機器特定手段D2とから構成されている。なお、図1は本発明の最も基本的な漏洩検出支援装置のブロック構成図を示すものである。
【0014】
次に、本実施形態の漏洩検出支援装置の漏洩検出支援の処理の流れを図1、図2及び図3を参照して説明する。
図2に示すように、溶液の移送系統上の機器をB1〜B5のようなブロックに分割し、ブロックB4に漏洩検出センサー1SKと漏洩検出センサー2SXを設置する。例えば、ブロックB2のタンクTP2の溶液をブロックB4のタンクT1に移送する場合、送液側のバルブTV2が“開”で、受け入れ側のバルブV1が“開”でポンプP1が運転中という条件で溶液の移送中と判断する。移送に伴って、送液側のセンサーTS2の温度、圧力、流量、液位、密度、液性などの情報と、受け入れ側センサーS1の温度、圧力、流量、液位、密度、液性が変化し、ポンプP1が停止、バルブTV2およびV1が“閉”することにより、溶液移送が完了する。
移送完了時は、これらの物質移動に関する収支を図1の機器情報F2に記憶する。
【0015】
通常、計算機を用いて、移送の開始、完了および送液側、受け入れ側のプロセスを監視し、その収支を運転情報として提供することは一般的であるが、移送中に漏洩検出センサー1SKと漏洩検出センサー2SXが漏洩を検出し、漏洩警報が発生した場合、例えば、図2において、ブロックB2のタンクTP2には、10℃の揮発性溶液E2が入っており、ブロックB3のタンクTP3には50℃の不揮発性溶液E3が入っている場合、ポンプP1が運転中で、バルブTV2、V1が“開”であり、ポンプP2が停止中で、バルブTV3、V2が“閉”の状態であり、漏洩検出センサー1SKが揮発性物質を検出し、漏洩検出センサー2SXが漏洩液の温度を検出し10℃近傍であった場合は、ブロックB4のポンプP1、またはバルブV1、またはタンクS1、またはブロックB4内の該当する系統配管での漏洩の可能性が高いと判断し、これらの情報を漏洩警報と併せて画面に表示する(図3ケース3)。前記ケース3において、例えば漏洩検出センサー1SKが揮発性物質を検出しない場合でも、漏洩検出センサー2SXが漏洩液の温度を検出し10℃近傍であった場合は、ブロックB4のポンプP1、またはバルブV1、またはタンクS1、またはブロックB4内の該当する系統配管での漏洩の可能性が高いと判断し、これらの情報を漏洩警報と併せて画面に表示する(図3ケース1)。
【0016】
また、ブロックB4のポンプP1が停止中で、バルブTV2、V1が“閉”であり、ブロックB4のポンプP2も停止中で、バルブTV3、V2が“閉”であり、移送の条件が成立しない場合において、漏洩検出センサー1SKが揮発性物質を検出し漏洩検出センサー2SXが漏洩液の温度を検出した場合は、貯蔵中の溶液漏洩が考えられる。この場合は、タンクT1のセンサーS1およびタンクT2のセンサーS2から入力される液位の変化、タンクT1のセンサーS1から入力される温度と漏洩検出センサー2SXが検出した温度、タンクT2のセンサーS2から入力される温度と漏洩検出センサー2SXが検出した温度、および図1の機器情報F2に記憶されているブロックB4のタンクT1、T2の液性と漏洩検出センサー1SKが検出した液性を比較し、温度差が一定範囲内にあり、かつ、揮発性のある液体という2つの条件が一致するため、ブロックB4のポンプP1、またはバルブV1、またはタンクS1、またはブロックB4内の該当する系統配管での漏洩の可能性が高いと判断し、これらの情報を漏洩警報と併せて画面に表示する(図3ケース4)。
【0017】
通常、1つのブロックには、異なった液性をもった系統を配置し、2重化された系統などは、別のブロックに分けてブロック化すると良い。また、漏洩の判断条件は、通常、運転員がプロセスのパラメータを見て漏洩系統を特定する際に用いる、パラメータをできる限り条件として計算機に記憶させておき、判断条件とする方が検出精度を高めることができる。これにより1つのブロックに複数の移送系統がある場合でも、漏洩の発生している可能性のある系統を計算機で判断し、漏洩警報発生時の情報として提供する。
【0018】
本実施形態によると、複数のプロセス情報から溶液の移送系統を特定し、前記プロセス情報、漏洩検出センサーからの漏洩検出信号および漏洩検出センサーが検出した温度、物質特性、漏洩警報および前記移送系統と、予め記憶されている移送系統およびその移送系統下にある移送機器に関する移送溶液の温度、物質特性を比較することにより、前記移送系統の中から漏洩の発生している可能性のある移送系統を特定することができる。したがって、少ない漏洩検出センサーで漏洩の検出と機器の特定が可能となるので、漏洩系統または漏洩機器を短時間で特定することができる。また、漏洩検出センサーが少なくなった分設置スペースやコストが削減できる。
【0019】
図4は、本発明の第2の実施形態である漏洩検出支援装置のブロック構成図である。
本実施形態の漏洩検出支援装置20が図1の第1の実施形態の漏洩検出支援装置と異なる構成は、漏洩表示確定手段D3と物質情報F3を有する漏洩情報確定部D20が追加された構成となっている点であり、その他の構成は図1の第1の実施形態と同一であるので、同一構成部分には同一符号を付して説明する。
【0020】
図4において、本実施形態の漏洩情報確定部D20は、プロセス入力手段1からの溶液の移送系統のプラントの圧力、流量、密度、温度、物質特性、移送機器の運転状態などのプロセス情報と、漏洩機器特定手段D2からの移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液の情報と、物質情報F3に予め記憶されている移送系統および移送機器を比較することにより一致する移送機器および溶液の情報を物質情報F3から取り出し同時に確認できるように配置して画面表示手段4を介して表示装置5に表示し、前記情報を運転員が確認し、その正否を表示装置5から入力することにより移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液を確定する漏洩表示確定手段D3を備えている。
【0021】
次に、本実施形態の漏洩検出支援装置の漏洩検出支援の処理の流れを図2及び図4を参照して説明する。
図2において、例えば送液側のブロックB2のタンクTP2には10℃の揮発溶液E2が入いっており、ブロックB3の送液側タンクTP3には50℃の不揮発性溶液E3が入っている場合、各溶液は事前のサンプリング分析により、その溶液特性が詳細に分析され、計算機内に図4の物質情報F3として蓄積されている場合が多い。漏洩が発生した場合、漏洩した液体の特性を早急に把握することが重要であり、これらの情報と漏洩表示確定手段D3で確定した移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液と図4の物質情報F3に予め記憶されている移送系統および移送機器を比較することにより一致する溶液特性を選択し、前記系統の送液側のセンサーTS2の温度、圧力、流量、液位、密度、液性などの情報と受け入れ側センサーS1の温度、圧力、流量、液位、密度、液性、およびセンサーTS3の温度、圧力、流量、液位、密度、液性などの情報と受け入れ側センサーS2の温度、圧力、流量、液位、密度、液性漏洩検出センサー1SKと漏洩検出センサー2SX、ポンプP1,P2の運転状態、バルブTV2,TV3とV1,V2の開閉状態などのプロセス情報を図4の画面表示手段4を介して表示装置5上に同時に表示し、計算機の特定結果の正否判断を運転員に促すと良い。通常、現場確認が可能な場合は、現場からの情報と漏洩液受け皿U1の漏洩液の分析が可能な場合はこの分析結果などと併せて最終的に漏洩の発生している系統と漏洩液を運転員に確定させる。この時、温度、圧力、流量、液位、密度、液性、液性漏洩検出センサー1SKと漏洩検出センサー2SXのプロセス情報は一定周期で最新値に更新すると判断がしやすい。
【0022】
本実施形態によると、第1の実施形態で漏洩の発生している可能性のある移送系統を特定した際のプロセス情報と特定した移送系統、漏洩検出センサーの情報と特定した移送系統下にある移送機器、漏洩液の液性の情報を同時に確認できるように配置して表示し、前記情報を運転員が確認することにより漏洩の発生している移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液を確定することができる。したがって、予め漏洩系統を特定し、特定した際の情報を表示することにより、運転員に総合判断を促すことで漏洩系統を確定することが可能となり、漏洩の情報収集と判断を短時間で実施することができる。
【0023】
図5は、本発明の第3の実施形態である漏洩検出支援装置のブロック構成図である。
本実施形態の漏洩検出支援装置20が図4の第2の実施形態の漏洩検出支援装置と異なる構成は、漏洩停止手順表示手段D4を有する漏洩停止情報表示部D30が追加された構成となっている点であり、その他の構成は図2の第4の実施形態と同一であるので、同一構成部分には同一符号を付して説明する。
【0024】
図5において、本実施形態の漏洩停止情報表示部D30は、漏洩表示確定手段D3で確定された移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液に対し、機器情報F2に予め記憶されている移送系統及び移送機器を比較することにより、一致する移送系統の漏洩停止手順を画面表示手段4を介して表示装置5に表示するとともに、確定された移送系統内の溶液保有量を機器情報F2に記憶されている移送機器の配置・形状、プロセス入力手段1からの移送機器の運転状態・流量、移送液の供給槽及び受け入れ槽の液位から計算して求め、漏洩停止手順と同時に確認できるように表示する漏洩停止手順表示手段D4とから構成されている。
【0025】
次に、本実施形態の漏洩検出支援装置の漏洩検出支援の処理の流れを図2及び図5を参照して説明する。
図2において、例えば、ブロックB4のポンプP1、またはバルブV1、またはタンクS1、またはブロックB4内の該当する系統配管での漏洩の可能性が高いと図5の漏洩表示確定手段D3において判断された場合、ポンプP1の停止、およびバルブTV2、V1の“閉”の操作手順を画面表示手段4を介して表示装置5に表示する。また、図5の漏洩表示確定手段D3で確定した移送系統および移送系統下にある移送機器、漏洩液と図5の機器情報F2に記憶されている移送系統および移送機器を比較し、例えばタンクT1を含む、配管などの移送機器の配置・形状とタンクT1の液位から、移送系統内の溶液保有量を算出し、図5の画面表示手段4を介して表示装置5に表示する。機器により配置・形状が大きく異なる場合は、図5の機器情報F2に予め計算式を記憶させておき一定周期毎に計算し表示更新すると良い。通常、漏洩受け皿U1に設置される漏洩検出センサー2SXには、液位計までは設置されない場合があり、どの程度の量の漏洩が考えられるのかを予め把握することにより、漏洩液回収の方法や漏洩の停止操作、漏洩液の回収のタイミングを判断する情報の提供が可能となる。
【0026】
本実施形態によると、第2の実施形態で確定された漏洩の発生している移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液と前記移送系統に関する漏洩停止手順を表示するとともに漏洩停止後の予想漏洩量を移送機器の配置・形状・運転状態・流量、移送液の供給槽及び受け入れ槽の液位・密度・温度から計算して求め、漏洩停止手順と確定された移送系統の溶液保有量を同時に確認できるように表示することができる。したがって、確定した漏洩系統の漏洩停止手段を表示することにより短時間で漏洩の停止操作が実施できる。また、漏洩系統の保有液量を算出し表示することにより短時間で漏洩回収のための、情報収集と判断ができる。
【0027】
図6は、本発明の第4の実施形態である漏洩検出支援装置のブロック構成図である。
本実施形態の漏洩検出支援装置20が図5の第3の実施形態の漏洩検出支援装置と異なる構成は、復旧情報F4と漏洩復旧判定手段D5と漏洩復旧手順表示手段D6を有する漏洩復旧手順表示部D40が追加された構成となっている点であり、その他の構成は図5の第3の実施形態と同一であるので、同一構成部分には同一符号を付して説明する。
【0028】
図6において、本実施形態の漏洩復旧手順表示部D40は、漏洩表示確定手段D3により確定された移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液と、復旧情報F4に記憶されている、移送系統および移送機器、漏洩液を比較し、一致する漏洩液、漏洩液の処理に必要な処理溶液の液性・液量、供給槽、移送機器などの処理溶液情報と漏洩液を回収するための回収手順、回収槽・移送機器・移送能力を選択する漏洩復旧判定手段D5と、漏洩表示確定手段D3により確定された移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液に関するプロセス入力手段1からの液位等のプロセス情報と前記処溶液情報、回収手順、回収槽・移送機器・移送能力、など漏洩液の回収に必要な情報を同時に確認できるように画面表示手段4を介して、表示装置5に表示する漏洩復旧手順表示手段D6とから構成されている。
【0029】
次に、本実施形態の漏洩検出支援装置の漏洩検出支援の処理の流れを図2及び図6を参照して説明する。
図2において、漏洩受け皿U1に漏洩した漏洩液は、例えばブロックB1のタンクTP1からの中和溶E1の注入により中和などの処理を行った上で、回収先のブロックB5のタンクT4に回収する場合と、そのまま最終移送先のブロックB5のタンクT3に回収する場合が考えられる。これらは、漏洩した溶液の液性や量などにより異なるため、図6の漏洩表示確定手段D3により確定した、移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液と、図6の復旧情報F4に記憶されている、移送系統、漏洩液を比較することにより、一致した漏洩液の処理に必要な処理溶液の液性・液量、供給槽、移送機器などの処理溶液情報を選択し、図6の漏洩復旧手順表示手段D6に通知する。図6の漏洩復旧手順表示手段D6では、例えば、ブロックB2のタンクTP2からブロックB4のタンクT1へ揮発性溶液E2を移送中に漏洩が発生した場合、中和に使用する溶液がブロックB1のタンクTP1内の溶液E1であること、およびその液性、保有量、移送方法、例えば、バルブVS1“開“、およびプロセス入力手段1から入力されるセンサーTS1からのタンクTP1の液位、注入のためのバルブTV1の状態などのプロセス情報を図6の画面表示手段4を介して、表示装置5に表示すると良い。また、中和後の漏洩液の回収先であるブロックB5のタンクT4へ移送するための手順としてバルブV6の“開”操作と、ポンプP4の“運転”などの手順およびバルブV6ポンプP4、センサーS3、センサーS4等のプロセス情報を同時に図4の表示装置5に表示すると良い。直接回収が可能な場合として、例えばブロックB5のタンクTP3からタンクT2へ不揮発性溶液E3を移送中に漏洩が発生した場合、処理溶液情報は表示せず、タンクT4への回収手順として、バルブV6の“開”とポンプP4の“運転”を図6の表示装置5に表示すると良い。
【0030】
本実施形態によると、第2の実施形態の漏洩情報表示部おいて確定された移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液と、予め記憶された移送系統、移送機器または漏洩液を比較することにより、一致する漏洩液の処理に必要な処理溶液の液性・液量、供給槽、移送機器などの処理溶液情報と漏洩液を回収するための回収手順、回収槽・移送機器・移送能力及び、漏洩液の回収槽・移送機器・移送能力、など漏洩液の回収に必要な情報を同時に確認できるように表示する漏洩復旧手順表示手段を備えた漏洩復旧手順表示部を有する。したがって、漏洩発生後の中和などの漏洩液の処理に必要な処理溶液の液性・液量、供給槽、移送機器などの処理溶液情報と漏洩液を回収するための回収手順、回収槽・移送機器・移送能力などを表示することにより、短時間で漏洩液の回収に関する情報収集と判断が可能となり、漏洩液の回収時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態である漏洩検出支援装置のブロック構成図。
【図2】本発明による漏洩検出支援の処理の流れを示す概略図。
【図3】図2における移送中の系統の有無と漏洩検出センサーの検出の組み合わせで判断するケースを示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態である漏洩検出支援装置のブロック構成図。
【図5】本発明の第3の実施形態である漏洩検出支援装置のブロック構成図。
【図6】本発明の第4の実施形態である漏洩検出支援装置のブロック構成図。
【図7】従来の漏洩検出支援装置のブロック構成図。
【符号の説明】
【0032】
1…プロセス入力手段、2…警報判定手段、3…警報表示手段、4…画面表示手段、5…表示装置、10…プロセス監視装置、20…漏洩検出支援装置、D1…移送判定手段、D2…漏洩機器特定手段、D3…漏洩表示確定手段、D4…漏洩停止手順表示手段、D5…漏洩復旧判定手段、D6…漏洩復旧手順表示手段、F1…移送情報、F2…機器情報、F3…物質情報、F4…復旧情報、D10…漏洩判断部、D20…漏洩情報確定部、D30…漏洩停止情報表示部、D40…漏洩復旧手順表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液の移送系統のプラントのプロセス情報から溶液の移送系統を特定すると共に、漏洩検出センサーを複数のブロック毎に設置し、前記漏洩検出センサーの検出値を警報判定手段に入力して警報か否かを判定し、警報状態であれば表示装置に警報を表示する漏洩検出支援装置であって、前記漏洩検出センサーからの漏洩検出信号および前記漏洩検出センサーが検出した温度、物質特性と前記プロセス情報及び移送系統を比較判断する移送判定手段と、前記移送判定手段により漏洩の発生している可能性のある移送系統およびその移送系統下にある移送機器および漏洩液を特定する漏洩機器特定手段を有する漏洩検出判断部とを備えたことを特徴とする漏洩検出支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の漏洩検出支援装置において、溶液の移送系統のプラントのプロセス情報と漏洩の発生している可能性のある移送系統およびその移送系統下にある移送機器、漏洩液の液性の情報を同時に確認できるように表示し、容易に移送系統およびその移送系統下にある移送機器あるいは漏洩液を特定する漏洩情報確定部とを備えたことを特徴とする漏洩検出支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の漏洩検出支援装置において、漏洩液が特定された移送系統およびその移送系統下にある移送機器の漏洩停止手順を表示するとともに特定された移送系統の溶液保有量を移送機器の配置・形状・運転状態・流量、移送液の供給槽及び受け入れ槽の液位から算出し、確認できるように表示する漏洩停止情報表示部を備えたことを特徴とする漏洩検出支援装置。
【請求項4】
請求項2に記載の漏洩検出支援装置において、漏洩液が特定された移送系統およびその移送系統下にある移送機器の漏洩液の処理に必要な処理溶液の液性・液量、供給槽、移送機器などの処理溶液情報と漏洩液を回収するための回収手順、回収槽・移送機器・移送能力など漏洩液を回収に必要な情報を確認できるように表示する漏洩液復旧手順表示部とを備えたことを特徴とする漏洩検出支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−139093(P2008−139093A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323930(P2006−323930)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】