説明

潜熱蓄熱天井材

【課題】蓄熱天井材Aのへたりや垂れが生じることなく、低コストで単位重量当たりの大きな潜熱量の潜熱蓄熱材11を使用して高い蓄放熱特性を保持できるようにする。
【解決手段】蓄熱天井材Aは、上面に凹部6が形成されかつ凹部6以外の部分で天井下地Bに固定具13,13,…で固定される天井材本体1と、この天井材本体1の凹部6内に凹部6の内底面6aと伝熱可能に接触した状態で収容され、潜熱蓄熱材11が充填された伝熱材料からなる容器8とを備えたものとし、容器8に、容器8を天井材本体1とは独立して天井下地Bに固定するための支持部9,9を設け、この支持部9,9は凹部6以外の天井材本体1と天井下地Bとの間に挟まれて天井材本体1と共に天井下地Bに固定されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潜熱蓄熱天井材に関し、特に低コストで潜熱蓄熱量が大きくて蓄放熱特性が良く、施工性も良くて施工後の垂れ等の問題のない潜熱蓄熱天井材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、天井、壁、床の潜熱蓄熱建材としては、特許文献1に示されているように、金属板や石膏ボード等の基材裏面に断熱芯材を一体に設けた複合板において、断熱芯材に形成した凹条に蓄熱材を植設したもの、或いは特許文献2に示されているように、室内側に潜熱蓄熱材を、また室外側に断熱材をそれぞれ配置したものが知られている。
【0003】
しかし、これらの潜熱蓄熱建材は熱伝導性が悪く、蓄放熱特性が低下していて、効率よく潜熱を使い切っていないという欠点があった。
【0004】
そこで、従来、例えば特許文献3や特許文献4に示されるように、潜熱蓄熱材をカプセル化して基材中に分散させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−117931号公報
【特許文献2】特公平2−29824号公報
【特許文献3】特公平6−33633号公報
【特許文献4】特開平11−264561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の特許文献3や特許文献4のものでは、潜熱蓄熱材のカプセル化により単位重量当たりの潜熱量が小さくなったり、コストアップしたりするという問題があった。
【0007】
他方、上記蓄放熱特性を向上させるための手段として、蓄熱材と室内との間にある天井材の熱伝導率を高くしたり、その天井材を薄くしたりすることが考えられる。しかし、蓄熱材は重量物であるため、天井材を薄くし、或いは天井材に凹部を形成してそこに蓄熱材を収容するだけでは、施工後に天井材のへたり等が生じるのは避けられない。
【0008】
また、天井材の潜熱容量を大きくするためには、潜熱蓄熱材を厚くし、又はその密度を上げる等の必要があるが、潜熱蓄熱材を厚くすると、天井材の裏面側に近付くに連れて蓄放熱特性が低下する。また、重量物は施工上の問題が多く、蓄放熱特性を向上させるために室内側の表面材を薄くすると、表面材が垂れるという問題が生じる。
【0009】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄熱天井材における潜熱蓄熱材の配置構造及びその支持構造に工夫を凝らすことにより、蓄熱天井材のへたりや垂れが生じることなく、低コストで単位重量当たりの大きな潜熱量の潜熱蓄熱材を使用して高い蓄放熱特性を保持できるようにすることにある。
【0010】
また、比重が低く、断熱性の高いロックウール吸音板を用いた場合も、蓄放熱特性を低下させず、へたりやタレの少ない潜熱蓄熱天井材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的の達成のため、この発明では、潜熱蓄熱材をそのまま伝熱材料からなる容器に収容して、天井材本体上面の凹部内に収容するとともに、その容器に専用の支持部を形成して、その支持部で容器を天井下地に吊り下げ支持するようにした。
【0012】
具体的には、請求項1の発明では、室内の天井下地に施工される潜熱蓄熱天井材であって、施工時に室内空間と反対側の面となる上面に凹部が形成され、該凹部以外の部分で天井下地に固定される天井材本体と、この天井材本体の凹部内に該凹部の内底面と伝熱可能に接触した状態で収容され、潜熱蓄熱材が充填された伝熱材料からなる容器(例えば包袋状容器)を備え、上記容器には、該容器を天井下地に固定するための支持部が設けられ、該支持部は凹部以外の天井材本体と天井下地との間に挟まれて天井材本体と共に天井下地に固定されるようになっていることを特徴とする。
【0013】
この請求項1の発明では、天井材本体上面に凹部が形成され、その内部に、潜熱蓄熱材を充填した伝熱材料からなる包袋状容器が凹部の内底面と伝熱可能に接触して収容されているので、潜熱蓄熱材をマイクロカプセル化する必要がなくてそのまま使用することができ、低コストで単位重量当たり大きな潜熱量が得られ、天井材を薄くて軽いものとすることができる。
【0014】
また、天井材本体の凹部に潜熱蓄熱材充填の包袋状容器が収容され、その凹部での天井材本体の厚さは他の部分よりも薄いので、天井材本体の熱伝導率を向上させて、潜熱蓄熱材と室内空間との間で熱を伝わり易くすることができ、高い蓄放熱特性が得られる。
【0015】
さらに、重量物である潜熱蓄熱材充填の包袋状容器は天井材の凹部内に収容されているものの、その容器の支持部が凹部以外の天井材本体と天井下地との間に挟まれて、その状態で天井材本体と共に天井下地に固定されるため、包袋状容器の荷重は殆どを天井下地が受けることとなり、天井材本体への荷重は小さくなる。そのため、上記のように凹部底側の天井材本体を薄くしても、そのへたりや垂れが生じることはない。
【0016】
また、潜熱蓄熱材を充填した容器は天井材本体の凹部内に収容されているので、両者を一体化して施工することができ、その施工が通常一般の天井材と同様となって容易となる。
【0017】
請求項2の発明では、上記天井材本体が比重0.05〜0.4のロックウール吸音板からなり、その天井材本体の下面(室内側の表面)から凹部に連通する孔加工が施されたことを特徴とする。
【0018】
この請求項2の発明では、比重が低いロックウール吸音板を天井材本体に用いた場合、吸音板自体が断熱材の働きを持つため、本発明のように天井材本体下面から凹部に連通する孔加工が施されることにより、吸音効果を高めるとともに、潜熱蓄熱材の効果を最大限に活かすことができる。孔加工としては、ピン孔加工、丸孔加工、スリット孔加工等孔形状は問わない。
【0019】
また、強度の弱いロックウール吸音板を天井材本体に使用した場合も、本発明によると、蓄熱材の重量によるタレや落下がない。
【0020】
請求項3の発明では、上記潜熱蓄熱材は容器内面に接着されていることを特徴とする。
【0021】
この請求項3の発明では、潜熱蓄熱材を容器に常時密着させて蓄放熱特性を最大限に発揮することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1の発明によると、天井材本体の上面に凹部を形成して、その内部に、潜熱蓄熱材が充填された伝熱材料からなる容器を収容するとともに、その容器を支持部において天井材本体と天井下地との間に挟持して支持するようにしたことにより、低コストで単位重量当たり大きな潜熱量が得られ、天井材を薄くて軽いものとすることができる。また、凹部での天井材本体の厚さを薄くして天井材本体の熱伝導率を向上させ、高い蓄放熱特性が得られる。
【0023】
さらに、重量物である潜熱蓄熱材充填の包袋状容器の荷重を天井下地で受けることができ、凹部底側が薄い天井材本体のへたりや垂れが生じることはない。また、潜熱蓄熱材を充填した容器と天井材本体とを一体化して施工して、その施工を容易に行うことができる。
【0024】
請求項2の発明によると、さらに、天井材本体の下面から凹部に連通する孔加工が施されることにより、吸音効果を高めるとともに、潜熱蓄熱材の効果を最大限に活かすことができる。
【0025】
請求項3の発明によると、潜熱蓄熱材を容器内面に接着したことにより、潜熱蓄熱材を容器に常時密着させて蓄放熱特性を最大限に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る潜熱蓄熱天井材の一部を分解して示す斜視図である。
【図2】図2は潜熱蓄熱天井材の施工状態を示す断面図である。
【図3】図3は天井材本体の性能の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0028】
図1は本発明の実施形態に係る潜熱蓄熱天井材Aを示し、この天井材Aは室内の天井下地B(図2参照)に施工されるもので、天井材本体1を有する。この天井材本体1は、例えば幅303mm、長さ606mm、厚さ12mmの矩形板状のものであり、例えばMDFやロックウール等、通常に天井材として用いられる材料が用いられる。比重0.35のロックウール吸音板からなる天井材本体1の熱伝導率及び熱抵抗を図3に例示する。
【0029】
天井材本体1の幅方向に対向する両端部の一方には、天井材本体1の下端角部を断面矩形状に切り欠いてなる上側合決り部2が、また他方には、天井材本体1の上端角部を断面矩形状に切り欠いてなる下側合決り部3がそれぞれ形成されている。
【0030】
また、天井材本体1の長さ方向に対向する両端部の一方にも、上記と同様の上側合決り部2が、また他方には下側合決り部3がそれぞれ形成されており、これら合決り部2,3同士を嵌合することで、隣接する天井材A,Aが連結されるようになっている。
【0031】
天井材本体1の上面、つまり施工時に室内空間と反対側の面の中央には、上記上側及び下側の合決り部2,3を除いた部分に、一定深さ(例えば6mm)の矩形状の凹部6が形成されている。この凹部6は、天井材本体1の上側及び下側の合決り部2,3からそれぞれ例えば10mmずつ残すように内側に形成されている。このとき、好ましくは、室内空間と凹部6を連通する孔加工が施される。孔加工としては、ピン孔加工、丸孔加工、スリット孔加工等孔形状は問わない。
【0032】
上記凹部6内には包袋状容器8が収容されている。この包袋状容器8は、凹部6よりも少し小さい矩形状の大きさで厚さの薄い可撓性のあるパック(袋)であり、例えばアルミニウム等の伝熱材料からなり、その内部には潜熱蓄熱材11が充填されている。パックに封入されるため、マイクロカプセル化されていない潜熱蓄熱材11やゲル化された潜熱蓄熱材等も使用することができる。この容器8の伝熱材料としては、アルミニウムの他に例えばポリエチレンやポリオレフィン等を用いることができるが、充填する潜熱蓄熱材11と反応しないものを用いる必要がある(潜熱蓄熱材11としてのパラフィンはオレフィン等と反応する)。また、PET及びポリエチレンの複合体にアルミニウムを蒸着したものを用いることができる。
【0033】
上記容器8は、天井材本体1の凹部6内に該凹部6の内底面6aと伝熱可能に接触した状態で収容されている。
【0034】
上記潜熱蓄熱材11としては、例えばn−オクタデカン、n−ヘキサデカンが主原料のノルマルパラフィンが用いられる。このノルマルパラフィンは、融点が23〜28℃のもので、基本的に融点よりも低い温度で固体となり、融点よりも高い温度で液体となる。この潜熱蓄熱材11としてのノルマルパラフィンは略そのまま容器8としてのアルミニウムパックに詰められて使用され、温度変化に応じて固体・液体と相変化する。ノルマルパラフィンの比重は約0.8である。
【0035】
ノルマルパラフィン以外の潜熱蓄熱材11としては、無機水和塩(塩化カルシウム六水和塩、硫酸ナトリウム十水和塩等)、脂肪酸類(パルミチン酸、ミリスチン酸等)、芳香族炭化水素化合物(ベンゼン、p−キシレン等)、エステル化合物(パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等)、アルコール類(ステアリルアルコール等)、ポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0036】
このような潜熱蓄熱材11は容器8内面に接着されていることが望ましい。
【0037】
さらに、上記容器8の四周のうち隣接する2辺には、潜熱蓄熱材11の充填されていない支持部9,9(耳部)が形成されており、この支持部9,9は、容器8が凹部6内に収納されたときに天井材本体1の上側合決り部2,2の上面に位置するようになっている。
【0038】
そして、図2に示すように、天井材本体1は天井下地Bに対し、上記凹部6以外の上面で、例えば酢ビエマルルジョン系の接着剤により固定されるとともに、上側合決り部2,2においてビス、釘やステイプル等の固定具13,13,…により固定され、その状態で容器8の支持部9,9は上側合決り部2,2、つまり凹部6以外の天井材本体1と天井下地Bとの間に挟まれて天井材本体1と共に天井下地Bに固定されるようになっている(図1のPは天井材本体1における固定具13,13,…の固定位置を、またP′は容器8の支持部9における固定具13,13,…の固定位置をそれぞれ表している)。
【0039】
この実施形態においては、潜熱蓄熱天井材Aは、天井材本体1上面の凹部6に包袋状容器8が収容されたものであり、その容器8の支持部9,9は天井材本体1の上側合決り部2,2の上面に位置している。そして、図2に示すように、このような天井材Aを天井下地Bに施工する場合、天井材本体1を天井下地Bに対し、凹部6以外の上面で接着剤により固定するとともに、2つの上側合決り部2,2においてビス等の固定具13,13,…により天井下地Bに固定する。すると、上側合決り部2,2の上面に位置している容器支持部9,9は上側合決り部2,2(凹部6以外の天井材本体1)と天井下地Bとの間に挟まれるようになり、その状態で天井材本体1と共に天井下地Bに固定される。
【0040】
したがって、このように潜熱蓄熱天井材Aは潜熱蓄熱材11を充填した包袋状容器8が天井材本体1の凹部6内に収容されて略一体化されたものであるので、この潜熱蓄熱天井材Aを通常の天井材と同様に天井下地Bに施工でき、施工が容易である。
【0041】
また、潜熱蓄熱材11はそのまま包袋状容器8に充填され、マイクロカプセルとする必要がないので、低コストで単位重量当たり大きな潜熱量を見込むことができ、潜熱蓄熱天井材Aを薄くて軽いものとすることができる。
【0042】
さらに、潜熱蓄熱材11がそのまま充填されているために包袋状容器8が重いものとなっていても、その包袋状容器8の隣接2辺の支持部9,9が天井材本体1の上側合決り部2,2と共に固定具13,13,…により天井下地Bに固定されるので、その容器8の荷重は支持部9,9及び固定具13,13,…を介して直接天井下地Bに加わり、その天井材本体1に加わる荷重は小さくなる。そのため、強度低下を避けるために通常は行わない、凹部6底側の天井材本体1の厚さを薄くして熱伝導率を高めたり或いは上記のように孔加工して開口をあけたりすることが可能となり、容器8内の潜熱蓄熱材11と室内空間との間の熱の伝導性を良くすることができ、天井材Aの高い蓄放熱特性を維持することができる。
【0043】
しかも、包袋状容器8の天井材本体1に加わる荷重が小さいので、施工後に天井材Aの垂れやへたりを防止して、見映えの良い蓄熱天井を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、低コストで潜熱蓄熱量が大きくて蓄放熱特性が良く、施工性も良くて施工後の垂れ等の問題のない潜熱蓄熱天井材が得られるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0045】
A 天井材
B 天井下地
1 天井材本体
2 上側合決り部
6 凹部
6a 内底面
8 容器
9 支持部
11 潜熱蓄熱材
13 固定具
P 天井材本体における固定具の固定位置
P′ 容器における固定具の固定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の天井下地に施工される潜熱蓄熱天井材であって、
施工時に室内空間と反対側の面となる上面に凹部が形成され、該凹部以外の部分で天井下地に固定される天井材本体と、
上記天井材本体の凹部内に該凹部の内底面と伝熱可能に接触した状態で収容され、潜熱蓄熱材が充填された伝熱材料からなる容器とを備え、
上記容器には、該容器を天井下地に固定するための支持部が設けられ、該支持部は凹部以外の天井材本体と天井下地との間に挟まれて天井材本体と共に天井下地に固定されるようになっていることを特徴とする潜熱蓄熱天井材。
【請求項2】
請求項1において、
天井材本体が比重0.05〜0.4のロックウール吸音板からなり、
上記天井材本体下面から凹部に連通する孔加工が施されたことを特徴とする潜熱蓄熱天井材。
【請求項3】
請求項1又は2において、
潜熱蓄熱材は容器内面に接着されていることを特徴とする潜熱蓄熱天井材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−77491(P2012−77491A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222263(P2010−222263)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】