説明

炭化珪素単結晶の製造方法および炭化珪素ウエハ

【課題】 大口径で高品質のSiC単結晶を製造することができるSiC単結晶の製造方法とその方法により得られたSiC単結晶からなるSiCウエハを提供する。
【解決手段】 SiC基板1の周縁領域15の一部を切除または溝切りする工程と、切除または溝切り後の基板を種基板としてこの種基板の表面上にSiC単結晶を成長させる工程とを含むSiC単結晶の製造方法である。また、このSiC単結晶の製造方法により得られたSiC単結晶からなり、小傾角粒界の数が10本以下であるSiCウエハである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化珪素(SiC)単結晶の製造方法とSiCウエハに関し、特に大口径で高品質のSiC単結晶の製造方法とそのSiC単結晶からなるSiCウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
SiCは、シリコン(Si)に比べてバンドギャップが約3倍、絶縁破壊電圧が約10倍、電子飽和速度が約2倍、さらに熱伝導率が約3倍大きく、Siにない特徴を有している。また、SiCは熱的かつ化学的に安定な半導体材料であり、これらの特徴を生かして、近年ではSiデバイスの物理的な限界を打破するパワーデバイスや高温で動作する耐環境デバイスなどへの応用が期待されている。
【0003】
一方、光デバイス研究においては短波長化を目指した窒化ガリウム(GaN)系の材料開発がなされているが、SiCはGaNに対する格子不整合が他の化合物半導体に比べて格段に小さいので、SiCウエハはGaN層のエピタキシャル成長用の基板として注目されている。
【0004】
従来、SiC単結晶はアチソン法またはレーリー法において人工合成されていた。アチソン法は、無水珪酸と炭素を2000℃以上の高温に加熱して人造研磨剤を工業生産する方法であり、SiC単結晶は副産物として生成する。また、レーリー法は、純度の良い結晶成長方法として初めて試みられた昇華再結晶法であって、黒鉛坩堝内において原料のSiC粉末を2000℃以上の高温部で昇華させ、低温部でSiC単結晶を再結晶させる。
【0005】
しかしながら、これらの方法においては、最大でも10〜15mm程度のSiC単結晶しか得られず、半導体デバイス用途のSiCウエハの生産に適するものではなかった。
【0006】
そこで、近年、SiC単結晶は主に改良レーリー法を用いて製造されている。改良レーリー法においては、SiCからなる種基板を用い、さらに粉末状のSiC結晶が収納された黒鉛製の坩堝内を不活性ガス雰囲気とした後に、この坩堝内を加熱することによってSiC結晶を昇華させ、昇華させたSiとCとからなる蒸気を不活性ガス中で拡散させることによって種基板近傍まで輸送し、低温に設定されている種基板の表面近傍でこの蒸気を順次凝結させることにより種基板の表面上にSiC単結晶を成長させる。
【0007】
この改良レーリー法に用いられるSiCからなる種基板は、改良レーリー法によって成長させたSiC単結晶を切断して得られたものである。しかしながら、この種基板には、図10(A)の模式的上面図に示すように、種基板1aの端から中心に向かって小傾角粒界2が生じやすく、種基板1aに小傾角粒界2が存在すると種基板1aの表面上に成長するSiC単結晶にも小傾角粒界2が引き継がれてしまうという問題があった。SiC単結晶に小傾角粒界が存在する場合には、そのSiC単結晶を切断して得られるSiCウエハにも小傾角粒界が存在し、そのSiCウエハの表面上に半導体層を形成して得られる半導体デバイスの特性にも悪影響を及ぼしてしまうという問題があった。また、SiCウエハに反りや割れが生じる原因にもなっていた。
【0008】
そこで、図10(B)の模式的上面図に示すように、種基板1aの周縁領域15をすべて切除して小傾角粒界2を除去した後の種基板1bの表面上にSiC単結晶をバルク成長させる方法が考えられる。しかしながら、この方法においては、種基板1bの表面の面積が小さくなりすぎて、種基板1bの表面上に成長するSiC単結晶の口径が小さくなってしまうという問題があった。
【0009】
また、欠陥の少ない良質の大口径のSiC単結晶を製造する方法として、SiC単結晶の成長面に溝を有する種結晶を用いてSiC単結晶を成長させる方法が特許文献1に開示されている。しかしながら、この方法においては、図11の模式的断面図に示すように、種結晶21のSiC単結晶の成長面の全面に溝22が形成されているため、溝22が形成されていない成長面23からのc軸方向へのSiC単結晶の縦方向成長に、溝22の底部からの縦方向成長が追いつかないまま、c軸方向と垂直な成長面23からの横方向成長により溝22の下方の空間が閉じられてしまい、成長後のSiC単結晶に空洞などの欠陥が多数存在することがあった。したがって、この方法においては、欠陥の少ない高品質のSiC単結晶を製造することができないことがあった。
【特許文献1】特開2002−121099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、大口径で高品質のSiC単結晶を製造することができるSiC単結晶の製造方法とそのSiC単結晶からなるSiCウエハを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、SiC基板の周縁領域の一部を切除または溝切りする工程と、切除または溝切り後のSiC基板を種基板として種基板の表面上にSiC単結晶を成長させる工程とを含むSiC単結晶の製造方法である。ここで、「SiC基板の周縁領域」とは、SiC基板の端から中心に向けて生じている小傾角粒界の終点と、SiC基板の中心点と、を結んだ線分のうち最も短い線分の長さを半径とし、SiC基板の中心点を中心とした仮想円の外側の領域である。
【0012】
ここで、本発明のSiC単結晶の製造方法において、SiC基板の周縁領域の一部を切除または溝切りする工程は、小傾角粒界が存在している領域で行なわれることが好ましい。
【0013】
また、本発明のSiC単結晶の製造方法において、SiC基板の周縁領域の一部を切除または溝切りする工程は、SiC基板の中心から<1−100>方向に対して±10°の領域で行なわれることが好ましい。
【0014】
また、本発明のSiC単結晶の製造方法においては、SiC基板が円板状であって、SiC基板の端から中心に向けて形成されている切除部分または溝切り部分の長さが、SiC基板の直径の1/3以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のSiC単結晶の製造方法においては、SiC基板の端から中心に向けて形成されている切除部分または溝切り部分の幅が、SiC基板の厚さの2倍以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のSiC単結晶の製造方法においては、SiC基板の端から中心に向けて形成されている溝切り部分の厚さが、0.1mm以上であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、上記のSiC単結晶の製造方法により得られたSiC単結晶からなるSiCウエハであって、小傾角粒界が10本以下であるSiCウエハである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のSiC単結晶の製造方法によれば、大口径で高品質のSiC単結晶を製造することができ、このSiC単結晶からなるSiCウエハも大口径で高品質なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本願の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0020】
図1に、本発明に用いられるSiC基板の一例の模式的な上面図を示す。改良レーリー法によって得られた円板状のSiC基板1には、SiC基板1の端から中心向けて複数の小傾角粒界2が生じている。
【0021】
ここで、SiC基板1の周縁領域15は、小傾角粒界2の終点EpとSiC基板1の中心点Cpとを結んだ線分のうち最も短い線分16の長さを半径とし、SiC基板1の中心点Cpを中心とした仮想円17の外側にあるSiC基板1の領域である。
【0022】
このSiC基板1の周縁領域15の一部を切除または溝切りすることによって、SiC基板1に生じている小傾角粒界2を除去する。本発明において、切除とは、図2(A)の模式的上面図および図2(B)の模式的拡大側面図に示すように、SiC基板1の厚さ方向全体にわたってSiC基板1を切り取ってしまうことをいう。また、溝切りとは、図3(A)の模式的上面図および図3(B)の模式的拡大側面図に示すように、SiC基板1の厚さ方向の一部を残してSiC基板1を切り取ってしまうことをいう。また、小傾角粒界は、X線トポグラフ像を撮るX線トポグラフ法、または2枚の直交関係にある偏光版の間にSiC基板を挟んで光を当てて像を見る直交ニコル法などによって、その位置を把握することができる。
【0023】
そして、この切除または溝切り後のSiC基板を種基板として、改良レーリー法などを用いて、図4の模式的側面図に示すように種基板1aの表面上にSiC単結晶14を成長させる。ここで、本発明においては、種基板1aの周縁領域15のみに切除部分または溝切り部分が存在し、種基板1aの周縁領域15以外の中央領域18には切除部分または溝切り部分が存在していない。それゆえ、周縁領域15の切除部分または溝切り部分は、周縁領域15において成長するSiC単結晶14の切除部分方向または溝切り部分方向への成長と中央領域18において成長するSiC単結晶14の矢印19方向への成長によって上方から覆われて、SiC単結晶14中に埋められる。したがって、切除部分または溝切り部分が埋められた後には、切除部分または溝切り部分の影響がその後の成長結晶に引き継がれることがないことから、本発明においては、高品質のSiC単結晶を製造することができる。また、本発明においては、小傾角粒界のあるSiC基板の領域をすべてを切除するのではなく、小傾角粒界のある領域の一部のみを切除するものであることから、種基板1aの表面上におけるSiC単結晶14が成長する領域が広くなるため、大口径のSiC単結晶14を製造することもできる。
【0024】
このようにして得られたSiC単結晶をワイヤソーなどで所望の厚さ、結晶方位に切断した後に、所望の表面、厚さになるまで研磨することによって、本発明によって得られたSiC単結晶からなるSiCウエハが得られる。
【0025】
ここで、図2(A)および図3(A)に示すSiC基板1の切除部分または溝切り部分の長さL1は、SiC基板1の直径の1/3以下であることが好ましく、2/5以下であることがより好ましい。SiC基板1に生じる小傾角粒界の長さは一般的にはSiC基板1の直径の1/3以下、特に2/5以下であることから、SiC基板1の直径の1/3よりも長く、特に2/5よりも長く切除または溝切りした場合には、SiC基板1の切除部分または溝切り部分が長すぎて大口径のSiC単結晶を製造することができない傾向にあり、また、SiC単結晶の成長過程において切除部分または溝切り部分をSiC基板1の外側へ逃がすことができず、切除部分または溝切り部分を十分に埋めることができない傾向にある。
【0026】
また、図2(B)および図3(B)に示すSiC基板1の切除部分または溝切り部分の幅W1は、SiC基板1の厚さの2倍以下であることが好ましい。SiC基板1の切除部分または溝切り部分の幅W1がSiC基板1の厚さの2倍よりも広い場合には切除部分または溝切り部分の幅が広すぎて、成長するSiC単結晶によってSiC基板1の切除部分または溝切り部分を埋めにくい傾向にある。ここで、SiC基板1の切除部分または溝切り部分の幅W1は、切除部分または溝切り部分の両端部を結んだ線分の長さを測定することによって求められる。
【0027】
また、図3(B)に示すSiC基板1の溝切り部分の厚さT1は、0.1mm以上であることが好ましい。SiC基板1の溝切り部分の厚さT1が0.1mm未満である場合には、SiC基板1に生じている小傾角粒界を十分に除去することができない傾向にある。ここで、SiC基板1の溝切り部分の厚さT1は、SiC基板1の表面と溝切り部分の表面との最短距離を測定することによって求められる。
【0028】
また、SiC基板の周縁領域の一部を切除または溝切りする工程は、小傾角粒界が存在している領域で行なわれることが好ましい。この場合には、SiC基板の周縁領域の一部を残して小傾角粒界を除去することができるため、小傾角粒界の除去後のSiC基板を種基板としてSiC単結晶を成長させると、大口径で高品質のSiC単結晶を製造することができる傾向にある。ここで、小傾角粒界が存在している領域とは、小傾角粒界が含まれるSiC基板の領域のことをいい、この領域中には小傾角粒界が1本のみ含まれていてもよく、複数本含まれていてもよい。したがって、SiC基板に小傾角粒界が複数本生じている場合には、小傾角粒界が存在している領域はSiC基板に複数存在することがある。
【0029】
また、SiC基板の周縁領域の一部を切除または溝切りする工程は、SiC基板の中心から<1−100>方向に対して±10°の領域で行なわれることが好ましい。小傾角粒界はSiC基板の中心から<1−100>方向に対して±10°の領域で特に発生しやすいので、この領域を切除または溝切りすることによって、より効率的に小傾角粒界を除去することができる傾向にある。
【0030】
また、本発明のSiCウエハに生じている小傾角粒界は10本以下であることが好ましい。本発明のSiCウエハに生じている小傾角粒界が10本以下である場合には、高品質の半導体デバイスを製造することができる傾向にあるためである。
【0031】
(実施の形態1)
まず、図5(A)の模式的上面図に示すように、SiC基板1の周縁領域15において、ワイヤソーを用いて、SiC基板1の端から中心に向けて小傾角粒界2に沿って長さL1だけ1本目の切れ込み3を入れる。次いで、図5(B)の模式的上面図に示すように、1本目の切れ込み3の終点から1本目の切れ込み3の方向と略直交する方向にさらに小傾角粒界2に沿って幅W1だけ2本目の切れ込み4を入れる。そして、図5(C)の模式的上面図に示すように、SiC基板1の端から2本目の切れ込み4の終点に向けて、2本目の切れ込み4の方向と直交する方向に長さL1だけ3本目の切れ込み5を入れる。これにより、SiC基板1の端から中心に向けてSiC基板1の周縁領域15の一部が切除されてSiC基板1から小傾角粒界2が除去される。
【0032】
ここで、3本目の切れ込み5はSiC基板1の端と2本目の切れ込み4の終点との間に入っていればよいので、3本目の切れ込み5を2本目の切れ込み4の終点からSiC基板1の端に向けて入れることもできる。
【0033】
この作業をSiC基板1に存在する小傾角粒界すべてについて行なうことにより、図6の模式的上面図に示すように、SiC基板1からすべての小傾角粒界が除去されて、SiC基板1の端に複数の切除部分6が形成される。
【0034】
そして、図7の模式的断面図に示す成長装置7を用い、上記小傾角粒界除去後のSiC基板を種基板1aとして改良レーリー法により種基板1aの表面上にSiC単結晶を成長させる。
【0035】
ここで、複数の切除部分6を有する種基板1aは、成長装置7の石英管8の内部に設置された黒鉛製の坩堝9の蓋10の下面に取り付けられる。また、坩堝9と蓋10の周囲には熱シールドのための黒鉛製のフェルト11が設置され、石英管8の外周にはワークコイル12が設置されている。
【0036】
そして、坩堝9の内部に粉末状のSiC結晶13を充填し、坩堝9の内部をアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気とした後に、ワークコイル12に高周波電流を流すことによって、SiC結晶13を加熱して昇華させる。ここで、坩堝9の内部は例えば2200℃〜2800℃に加熱され、SiC結晶13が充填されている坩堝9の下部側から蓋10がある坩堝9の上部側にかけて次第に低温となるように温度勾配がつけられている。したがって、種基板1aの近傍に到達したSiC結晶13の昇華ガスは、種基板1aの表面で過飽和状態となって種基板1aの表面近傍で凝結し、種基板1aの表面上にSiC単結晶14が成長する。このようにしてSiC単結晶14が製造される。ここで、SiC単結晶14の成長時においては、種基板1aの温度は2000℃以上の高温となるため種基板1aは膨張するが、種基板1aは切除部分を有することから、熱歪みによる小傾角粒界の発生を抑え、種基板1a自体が有する歪みも緩和することができる。
【0037】
本実施の形態に従って、50本の小傾角粒界が生じているSiC基板の小傾角粒界をすべて切除し、この切除後のSiC基板を種基板として種基板の表面上にSiC単結晶を成長させた後に所定の厚さに切断して得られたSiCウエハの小傾角粒界の数を調べたところ8本に減少していた。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1よりも少ない回数の切れ込みを入れることによって小傾角粒界を切除することに特徴がある。
【0039】
図8(A)の模式的上面図に示すように、本実施の形態に用いられるSiC基板1の周縁領域15に複数の小傾角粒界2が生じている。
【0040】
そして、図8(B)の模式的上面図に示すように、ワイヤソーを用いて、SiC基板1の端から小傾角粒界2の終点EBに向けて1本目の切れ込み3を入れる。次いで、図8(C)の模式的上面図に示すように、SiC基板1の端から小傾角粒界2の終点EBに向けて2本目の切れ込み4を入れる。これにより、SiC基板1の端から中心に向けてSiC基板1の周縁領域15の一部が切除されてSiC基板1から小傾角粒界2が除去される。
【0041】
この作業をSiC基板1の周縁領域に存在する小傾角粒界2すべてについて行なうことにより、図9の模式的上面図に示すように、SiC基板1からすべての小傾角粒界2が除去されて、SiC基板1の端に複数の切除部分6が形成される。
【0042】
そして、実施の形態1と同様に、小傾角粒界2除去後のSiC基板1を種基板1aとして、図7の模式的断面図に示す成長装置7の坩堝9の蓋10の下面に取り付けて、種基板1aの表面上に改良レーリー法によりSiC単結晶14を成長させる。このようにしてSiC単結晶14が製造される。
【0043】
本実施の形態においては、実施の形態1とは異なり、SiC基板に切れ込みを2本入れるだけで小傾角粒界を除去することができるため、本実施の形態においては、効率的に小傾角粒界を除去することができる。
【0044】
ここで、本実施の形態においては、2本目の切れ込み4はSiC基板1の端と小傾角粒界2の終点EBとの間に入っていればよいので、2本目の切れ込み4を小傾角粒界2の終点EBから基板1の端に向けて入れることもできる。
【0045】
なお、上記実施の形態1〜2においては、1本の小傾角粒界ごとに周縁領域を切除したが、複数の小傾角粒界が存在する周縁領域をまとめて切除することもできる。
【0046】
また、上記実施の形態1〜2においては、SiC基板の厚さ方向すべてについて切れ込みを入れることによってSiC基板の周縁領域の一部を除去したが、SiC基板の厚さ方向の一部を残して切除することによりSiC基板の溝切りをすることもできる。
【0047】
また、上記実施の形態1〜2においては、SiC基板の周縁領域の切除のみが行なわれているが、SiC基板の周縁領域の切除と溝切りとを併せて行なってもよい。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のSiC単結晶の製造方法によれば、大口径で高品質のSiC単結晶を製造することができるため、本発明を用いて得られたSiC単結晶からなるSiCウエハの表面上に半導体層を形成することによって高性能の半導体デバイスを得ることができる。したがって、本発明は半導体デバイス分野に好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に用いられるSiC基板の一例の模式的な上面図である。
【図2】(A)は図1に示すSiC基板の周縁領域の一部を切除したときの模式的な上面図であり、(B)は図1に示すSiC基板の周縁領域の一部を切除したときの模式的な拡大側面図である。
【図3】(A)は図1に示すSiC基板の周縁領域の一部を溝切りしたときの模式的な上面図であり、(B)は図1に示すSiC基板の周縁領域の一部を溝切りしたときの模式的な拡大側面図である。
【図4】本発明に用いられる種基板の表面上にSiC単結晶を成長させたときの模式的な側面図である。
【図5】(A)は本発明の実施の形態1において1本目の切れ込みを入れた後のSiC基板の模式的な上面図であり、(B)は本発明の実施の形態1において2本目の切れ込みを入れた後のSiC基板の模式的な上面図であり、(C)は本発明の実施の形態1において3本目の切れ込みを入れた後のSiC基板の模式的な上面図である。
【図6】実施の形態1においてすべての小傾角粒界が除去された後のSiC基板の模式的な上面図である。
【図7】本発明に用いられる成長装置の好ましい一例の模式的な断面図である。
【図8】(A)は実施の形態2において切れ込みを入れる前のSiC基板の模式的な上面図であり、(B)は本発明の実施の形態2において1本目の切れ込みを入れた後のSiC基板の模式的な上面図であり、(C)は本発明の実施の形態2において2本目の切れ込みを入れた後のSiC基板の模式的な上面図である。
【図9】実施の形態2においてすべての小傾角粒界が除去された後のSiC基板の模式的な上面図である。
【図10】(A)は従来のSiC単結晶の製造方法において用いられるSiCからなる種基板の一例の模式的な上面図であり、(B)は従来のSiC単結晶の製造方法において種基板の周縁領域をすべて切除して小傾角粒界を除去した後の種基板の一例の模式的な上面図である。
【図11】従来のSiC単結晶の製造方法において用いられる種結晶の一例の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 SiC基板、1a,1b 種基板、2 小傾角粒界、3 1本目の切れ込み、4 2本目の切れ込み、5 3本目の切れ込み、6 切除部分、7 成長装置、8 石英管、9 坩堝、10 蓋、11 フェルト、12 ワークコイル、13 SiC結晶、14 SiC単結晶、15 周縁領域、16 線分、17 仮想円、18 中央領域、19 矢印、21 種結晶、22 溝、23 成長面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素基板の周縁領域の一部を切除または溝切りする工程と、前記切除または前記溝切り後の前記炭化珪素基板を種基板として前記種基板の表面上に炭化珪素単結晶を成長させる工程と、を含む、炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記炭化珪素基板の周縁領域の一部を切除または溝切りする工程は、小傾角粒界が存在している領域で行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記炭化珪素基板の周縁領域の一部を切除または溝切りする工程は、前記炭化珪素基板の中心から<1−100>方向に対して±10°の領域で行なわれることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記炭化珪素基板が円板状であって、前記炭化珪素基板の端から中心に向けて形成されている切除部分または溝切り部分の長さが、前記炭化珪素基板の直径の1/3以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記炭化珪素基板の端から中心に向けて形成されている切除部分または溝切り部分の幅が、前記炭化珪素基板の厚さの2倍以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項6】
前記炭化珪素基板の端から中心に向けて形成されている溝切り部分の厚さが、0.1mm以上であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造方法により得られた炭化珪素単結晶からなる炭化珪素ウエハであって、小傾角粒界が10本以下であることを特徴とする、炭化珪素ウエハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−124244(P2006−124244A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316457(P2004−316457)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(599012835)株式会社シクスオン (10)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000005979)三菱商事株式会社 (56)
【Fターム(参考)】