説明

炭素繊維複合構造体および炭素繊維複合構造体の製造方法

【課題】複合材料を製造する際に炭素繊維に三次元的構造を付与するための工程を必要としない炭素繊維複合構造体を提供する。
【解決手段】炭素繊維複合構造体は、触媒および炭化水素の混合ガスを800℃〜1300℃の一定温度で加熱する際に、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させて、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を得る第1工程、得られた炭素繊維構造体の中間体を有機金属化合物の有機溶媒溶液または金属塩と界面活性剤の水溶液に浸漬させた後、使用した溶媒を乾燥させる第2工程、乾燥後に炭素繊維構造体の中間体を800℃〜1200℃に加熱し、次に1800℃〜3000℃でアニール処理する第3工程を付すことにより製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な炭素繊維構造体に関し、炭素繊維構造体の表面に金属微粒子および/または金属炭化物微粒子を有することによって、表面改質された炭素繊維構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は優れた力学特性や高い導電性などの特性を有するため、合成樹脂、ゴム、セラミック、金属等複合材料にフィラー材として用いられている。特に炭素繊維集合体を三次元的構造とすることによって、機械的強度や導電性や熱伝導性を向上させることが報告されている。例えば、炭素繊維を600℃以上で熱処理し、絡み合った繊維の接点がタール、ピッチなどの炭化物によって固着されて接着された炭素繊維集合体を、マトリックスに配合することによって導電性や熱伝導性を向上させた複合材料を得ている(例えば、特許文献1参照)。また、繊維状炭素系物質と熱硬化性樹脂と易黒鉛化物質を含む組成物を易黒鉛化物質が黒鉛化する温度よりも低い温度で加熱して成形体とし、さらに成形体を焼成して機械的強度を向上させた焼結体を得ている。この場合、焼成工程によって易黒鉛化物質が黒鉛化する際に、繊維状炭素系物質同士を接合している(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
さらに炭素繊維集合体の三次元的構造は、含浸材料として合成樹脂、ゴム、金属、カーボン系材料が選択可能で、応用範囲が広いナノカーボンコンポジット材が報告されている。カーボンナノチューブと熱硬化性樹脂を混練し、乾燥して、所定の圧力、所定の温度で成形し、この成形体を加熱して樹脂分を炭化させ、ナノカーボンが炭素で三次元的に繋がった多孔質体を得ている。炭化工程後に各種含浸材料を含浸させてナノカーボンコンポジット材を得ている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
以上の例では炭素繊維に三次元的構造を付与することによって、最終的に得られる複合材料の熱伝導性、導電性、機械的強度を向上させている。しかしこれらの報告では、例えば含浸材料である合成樹脂、ゴム、セラミックス、金属とカーボンナノチューブとの接着の重要性については言及されていない。
【0005】
カーボンナノチューブを含有する複合材料については、次のことが指摘されている(非特許文献1参照)。すなわち、機械的強度を発現させる際に重要なのがCNTとマトリックス材料との接着強度である。マトリックス材としては金属、セラミク、ポリマー、炭素などが考えられるが、CNTの欠陥の少ない表面構造が通常構造材料用複合材料に用いられるマトリックス金属などとのぬれ性を悪くする方向に働くと推定され、強度の高い複合材料を得るにはCNT表面を改質するか複合材料の調整法を工夫する必要がある。
【0006】
また、炭素繊維複合材料における界面構造は複合材料の性能への影響が重大であり、界面構造の制御が重要であることが一般的に知られている(非特許文献2参照)。
【0007】
炭素繊維の表面を金属で被覆する複合材料用炭素繊維の改質法が報告されている(例えば、特許文献4参照)。この文献において、マトリックス材料と炭素繊維の層間せん断強度を向上させる目的で、炭素繊維の表面にチタニウムアルコキシド類の溶液で皮膜を形成し、皮膜を130〜150℃、280〜300℃に加熱(実施例1)して、酸化チタニウム皮膜を形成している。この皮膜がマトリックス材料と炭素繊維の接着性を向上させ、層間せん断強度を向上させたとしている。
【0008】
また、カーボンナノチューブに化学反応させてチューブ表面に官能基を導入し、金属塩溶液と接触させてイオン交換等することにより、金属被覆カーボンナノチューブを得ていることも報告されている(例えば、特許文献5参照)。この金属被覆カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブと金属の複合材料の中間物質として利用できると記述され、特に高温での後処理も行われていないので、このままではカーボンナノチューブ表面への金属被覆は、強度面での不安が残る。
【0009】
また、複数のカーボンナノチューブと炭化物形成用金属およびマトリクス金属をマトリクス金属の融点以上の温度で加圧焼結することで、複数のカーボンナノチューブ表面に金属炭化物を形成して、マトリクス金属とカーボンナノチューブとの間に良好な密着性を得ることを可能にした、高熱伝導性放熱材料を製造することが報告されている(例えば、特許文献6参照)。この場合は金属炭化物がカーボンナノチューブ凝集体(複数のカーボンナノチューブ)を被覆し、さらに金属マトリクスとそれとは金属種の異なる金属炭化物源の双方の異種金属を同時に仕込まなければならず、マトリクス材料が金属だけにそれも一部の金属に限定されてしまう。
【0010】
以上報告されているように、炭素繊維に三次元的構造を付与することによって、焼結体やナノカーボンコンポジット材では、熱伝導性、導電性、機械的強度を向上させている。この炭素繊維の三次元的構造は後から付与して得られるもので、反応生成した三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体では無い。また、以上報告された炭素繊維の表面を金属で被覆する複合材料用炭素繊維も、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を採用している例は無い。
【0011】
一方、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体に関する報告もなされている(例えば、特許文献7参照)。外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体、というものであるが、その表面の加工技術についての報告はなされていない。
【特許文献1】特開2004−119386号公報
【特許文献2】特開2005−178151号公報
【特許文献3】特開2004−315297号公報
【特許文献4】特公昭63−60152号公報
【特許文献5】特許第2953996号公報
【特許文献6】特開2004−10978号公報
【特許文献7】特許第3776111号公報
【非特許文献1】「カーボンナノチューブ」化学同人、2001年、p.115
【非特許文献2】「複合材料と界面−素材の高機能化と制御」材料技術研究協会、1988年、p.251
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、最終的に得られる複合材料の熱伝導性、導電性、機械的強度を向上させるためには、炭素繊維に三次元的構造を付与することが求められているが、複合材料を製造していく段階で、炭素繊維に後から三次元的構造を付与するための工程が求められる場合には、複合材料を製造する上で各種の制約を受け、しかもその三次元的構造付与工程を付加する必要が生じてしまう。一方、カーボンナノチューブ表面への金属被覆の場合、高温での後処理が行われない方法では、物理的な結合力だけに依存するので金属被覆に強度面での不安が残る。また、カーボンナノチューブに化学反応させてチューブ表面に官能基を導入し、カーボンナノチューブの表面に金属被覆させる方法は、カーボンナノチューブの構造に不良な影響を起こす恐れがあるため、最終的に複合材料の性能を向上させる効果が十分に得られない。複数のカーボンナノチューブと炭化物形成用金属およびマトリクス金属をマトリクス金属の融点以上の温度で加圧焼結することで、複数のカーボンナノチューブ表面に金属炭化物を形成させ、マトリクス金属とカーボンナノチューブとの間に良好な密着性を得る方法では、金属マトリックスと金属炭化物源の異種金属を同時に仕込まなければならず、マトリックス材料が一部の金属に限定されてしまう。さらにカーボンナノチューブの凝集体を被覆することにおいては、カーボンナノチューブの表面構造が改質されず、マトリックス金属とのぬれ性を改善することがなく、マトリックス材料との接着に工夫が求められている。また、カーボンナノチューブの凝集体を被覆することで、マトリクス材中の分散が問題点になるため、金属以外の応用範囲例えば合成樹脂、ゴム、セラミック、カーボン系材料に広げることが困難である。
【0013】
本発明は、複合材料を製造する際に炭素繊維に三次元的構造を付与するための工程を必要とせず、欠陥の少ない表面構造を有するカーボンナノチューブの表面に金属微粒子および/または金属炭化物微粒子を有し、高温での後処理により金属微粒子および/または金属炭化物微粒子とカーボンナノチューブの間に強固な結合力を持つ三次元ネットワーク状の炭素繊維複合構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を続けた結果、特定の有機金属化合物が高温下で、カーボンナノチューブの表面に該当する金属の金属炭化物微粒子を形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体が、その表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有していることを特徴とする炭素繊維複合構造体である。
【0016】
また本発明は、前記した炭素繊維構造体が、その表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有して炭素繊維複合構造体を形成し、当該炭素繊維複合構造体が熱間プレスと炭化処理工程を経て得られる炭素繊維複合構造体の予備成形体である。
【0017】
さらに本発明は、触媒および炭化水素の混合ガスを800℃〜1300℃の一定温度で加熱する際に、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させて、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を得る第1工程、得られた炭素繊維構造体の中間体を有機金属化合物の有機溶媒溶液または金属塩と界面活性剤の水溶液に浸漬させた後、使用した溶媒を乾燥させる第2工程、乾燥後に炭素繊維構造体の中間体を800℃〜1200℃に加熱し、次に1800℃〜3000℃でアニール処理する第3工程からなる、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体が、その表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有していることを特徴とする炭素繊維複合構造体の製造方法である(図1参照)。
【0018】
また、本発明の炭素繊維複合構造体の予備成形体の製造方法は、その表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有している炭素繊維複合構造体に対して、バインダーを添加し100℃〜200℃で熱間プレスして、次に800℃〜1200℃で炭化処理することにより、炭素繊維複合構造体の予備成形体を製造することを特徴とする(図1参照)。
【0019】
本発明の炭素繊維複合構造体の製造方法では、第3工程でアニール処理を行うが、必要に応じて第1工程と第2工程の間に、第1工程で得られた炭素繊維構造体の中間体を800℃〜1200℃に加熱する、予備的アニール処理工程を付加することができる。
【0020】
本発明はまた、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以下であることを特徴とする前記炭素繊維複合構造体を示すものである。
【0021】
本発明はさらに、金属および/または金属炭化物の微粒子の含有量が、当該炭素繊維構造体に対して金属換算で1〜200質量%である前記炭素繊維複合構造体を示すものである。
【0022】
本発明はさらに、前記した金属および/または金属炭化物の微粒子による当該炭素繊維構造体の表面被覆率が、1〜100%、好ましくは10〜100%である前記炭素繊維複合構造体を示すものである。なお、この表面被覆率は、得られた炭素繊維複合構造体表面の電子顕微鏡写真を画像解析することにより求めた値である。
【0023】
本発明はまた、金属および/または金属炭化物の微粒子の大きさが、1〜70nm、好ましくは1〜60nmである前記炭素繊維複合構造体を示すものである。この場合の金属および/または金属炭化物の微粒子の大きさは、微粒子が炭素繊維構造体に接している部位の水平方向長さで表している。
【0024】
さらに、本発明の炭素繊維構造体の表面に形成される金属および/または金属炭化物の微粒子に使用される金属種として、好ましいのはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Yから選択される1種または2種以上である。
【0025】
また、本発明は、炭素繊維複合構造体に対してホウ素換算で0.001〜30質量%、好ましくは0.01〜3.0質量%のホウ素化合物を含有する前記炭素繊維複合構造体を示すものである。
【0026】
本発明は、上記炭素繊維複合構造体の製造方法の第2工程で有機金属化合物を使用する場合において、当該有機金属化合物が、金属アルコキシド、金属アセチルアセトナート、または金属脂肪酸塩である炭素繊維複合構造体の製造方法を示すものである。
【0027】
さらに、本発明は、上記炭素繊維複合構造体の製造方法の第2工程の際に、有機金属化合物の有機溶媒溶液または金属塩と界面活性剤の水溶液に対して、ホウ素化合物の有機溶媒溶液もしくは水溶液を混合することにより、前記した炭素繊維複合構造体に対してホウ素換算で0.001〜30質量%のホウ素化合物を含有させることを特徴とする炭素繊維複合構造体の製造方法を示すものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の炭素繊維複合構造体は、三次元ネットワーク状に形成されているので、最終的に複合材料を製造した場合、その熱伝導性、導電性、機械的強度が良好なものとなる。また、三次元的構造を後から付与するための工程が不要である。本発明の炭素繊維複合構造体がその表面に有している金属および/または金属炭化物の微粒子は、カーボンナノチューブの構造に悪い影響が無いため、表面改質によってカーボンナノチューブの物性を劣化する恐れが無い。最終的に製造された複合材料において、炭素繊維複合構造体とマトリックスとの接着状況が改善され、それはアンカー効果によって強固なものとなる(図2参照)。炭素繊維複合構造体がその表面に有している金属の微粒子は、炭素化合物に対する黒鉛化触媒として作用するものである。本発明の炭素繊維複合構造体はマトリックスの材料として、金属および金属以外のセラミックス、ゴム、合成樹脂、カーボン系材料等が使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
(炭素繊維複合構造体)
まず、本発明に係る炭素繊維複合構造体に関して説明する。
【0030】
本発明に係る炭素繊維複合構造体は、炭素繊維複合構造体外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体が、その表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有していることを特徴とする炭素繊維複合構造体である。
【0031】
本発明に係る炭素繊維複合構造体において基本骨格を形成する三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を構成する炭素繊維の外径を、15〜100nmの範囲のものとするのは、外径が15nm未満であると、後述するように炭素繊維の断面が多角形状とならず、一方、炭素繊維の物性上直径が小さいほど単位量あたりの本数が増えるとともに、炭素繊維の軸方向への長さも長くなり、高い導電性が得られるため、100nmを越える外径を有することは、樹脂等のマトリックスへ改質剤、添加剤として配される炭素繊維構造体として適当でないためである。なお、炭素繊維の外径としては特に、20〜70nmの範囲内にあることが、より望ましい。この外径範囲のもので、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層したもの、すなわち多層であるものは、曲がりにくく、弾性、すなわち変形後も元の形状に戻ろうとする性質が付与されるため、炭素繊維構造体が一旦圧縮された後においても、樹脂等のマトリックスに配された後において、疎な構造を採りやすくなる。
【0032】
加えて、該微細炭素繊維は、その外径が軸方向に沿って変化するものであることが望ましい。このように炭素繊維の外径が軸方向に沿って一定でなく、変化するものであると、樹脂等のマトリックス中において当該炭素繊維に一種のアンカー効果が生じるものと思われ、マトリックス中における移動が生じにくく分散安定性が高まるものとなる。
【0033】
さらにこの炭素繊維構造体においては、このような所定外径を有する微細炭素繊維が三次元ネットワーク状に存在するが、これら炭素繊維は、当該炭素繊維の成長過程において形成された粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しているものである。このように、微細炭素繊維同士が単に絡合しているものではなく、粒状部において相互に強固に結合されているものであることから、樹脂等のマトリックス中に配した場合に当該構造体が炭素繊維単体として分散されることなく、嵩高な構造体のままマトリックス中に分散配合されることができる。また、本発明に係る炭素繊維構造体においては、当該炭素繊維の成長過程において形成された粒状部によって炭素繊維同士が互いに結合されていることから、その構造体自体の電気的特性等も非常に優れたものであり、例えば、一定圧縮密度において測定した電気抵抗値は、微細炭素繊維の単なる絡合体、あるいは微細炭素繊維同士の接合点を当該炭素繊維合成後に炭素質物質ないしその炭化物によって付着させてなる構造体等の値と比較して、非常に低い値を示し、マトリックス中に分散配合された場合に、良好な導電パスを形成できることができる。
【0034】
当該粒状部は、上述するように炭素繊維の成長過程において形成されるものであるため、当該粒状部における炭素間結合は十分に発達したものとなり、sp結合およびsp結合の混合状態を含むと思われる。そして、生成後(後述する中間体および第一中間体)においては、粒状部と繊維部とが、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合せたような構造をもって連続しており、その後の高温熱処理後においては、粒状部を構成するグラフェン層の少なくとも一部は、当該粒状部より延出する微細炭素繊維を構成するグラフェン層に連続するものとなる。当該炭素繊維構造体において、粒状部と微細炭素繊維との間は、上記したような粒状部を構成するグラフェン層が微細炭素繊維を構成するグラフェン層と連続していることに象徴されるように、炭素結晶構造的な結合によって(少なくともその一部が)繋がっているものであって、これによって粒状部と微細炭素繊維との間の強固な結合が形成されているものである。
【0035】
なお、本願明細書において、粒状部から炭素繊維が「延出する」するとは、粒状部と炭素繊維とが他の結着剤(炭素質のものを含む)によって、単に見かけ上で繋がっているような状態をさすものではなく、上記したように炭素結晶構造的な結合によって繋がっている状態を主として意味するものである。
【0036】
この粒状部の粒径は、前記微細炭素繊維の外径よりも大きいことが望ましい。具体的には、例えば、前記微細炭素繊維の外径の1.3〜250倍、より好ましくは1.5〜100倍、さらに好ましくは2.0〜25倍である。なお、前記値は平均値である。このように炭素繊維相互の結合点である粒状部の粒径が微細炭素繊維外径の1.3倍以上と十分に大きなものであると、当該粒状部より延出する炭素繊維に対して高い結合力がもたらされ、樹脂等のマトリックス中に当該炭素繊維構造体を配した場合に、ある程度のせん弾力を加えた場合であっても、三次元ネットワーク構造を保持したままマトリックス中に分散させることができる。一方、粒状部の大きさが微細炭素繊維の外径の250倍を超える極端に大きなものとなると、炭素繊維構造体の繊維状の特性が損なわれる虞れがあり、例えば、各種マトリックス中への添加剤、配合剤として適当なものとならない虞れがあるために望ましくない。なお、本明細書でいう「粒状部の粒径」とは、炭素繊維相互の結合点である粒状部を1つの粒子とみなして測定した値である。
【0037】
その粒状部の具体的な粒径は、炭素繊維構造体の大きさ、炭素繊維構造体中の微細炭素繊維の外径にも左右されるが、例えば、平均値で20〜5000nm、より好ましくは25〜2000nm、さらに好ましくは30〜500nm程度である。
【0038】
さらにこの粒状部は、前記したように炭素繊維の成長過程において形成されるものであるため、比較的球状に近い形状を有しており、その円形度は、平均値で0.2〜<1、好ましくは0.5〜0.99、より好ましくは0.7〜0.98程度である。
【0039】
加えて、この粒状部は、前記したように炭素繊維の成長過程において形成されるものであって、例えば、微細炭素繊維同士の接合点を当該炭素繊維合成後に炭素質物質ないしその炭化物によって付着させてなる構造体等と比較して、当該粒状部における、炭素繊維同士の結合は非常に強固なものであり、炭素繊維構造体における炭素繊維の破断が生じるような条件下においても、この粒状部(結合部)は安定に保持される。
【0040】
また、本発明に係る炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜1000μm、好ましくは50〜500μm、より好ましくは60〜250μm程度であることが望ましい。ここで面積基準の円相当平均径とは、炭素繊維構造体の外形を電子顕微鏡などを用いて撮影し、この撮影画像において、各炭素繊維構造体の輪郭を、適当な画像解析ソフトウェア、例えばWinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化したものである。
【0041】
複合化される樹脂等のマトリックス材の種類によっても左右されるため、全ての場合において適用されるわけではないが、予備成形体に適用する場合は、円相当平均径が大きい方が導電性、機械特性、熱特性にとって好ましいが、1000μmを超えると予備成形体中の炭素繊維構造体の分布が不均質になり、上記特性が得られなくなるためであり、また、この円相当平均径は、樹脂等のマトリックス中に配合する場合において当該炭素繊維構造体の最長の長さを決める要因となるものであり、概して、円相当平均径が50μm未満であると、導電性が十分に発揮されない虞れがある。
【0042】
また本発明に係る炭素繊維構造体は、上記したように、本発明に係る炭素繊維構造体は、三次元ネットワーク状に存在する炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しているが、1つの炭素繊維構造体において、炭素繊維を結合する粒状部が複数個存在して三次元ネットワークを形成している場合、隣接する粒状部間の平均距離は、例えば、0.5μm〜300μm、より好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜50μm程度となる。なお、この隣接する粒状部間の距離は、1つの粒状体の中心部からこれに隣接する粒状部の中心部までの距離を測定したものである。粒状体間の平均距離が、0.5μm未満であると、炭素繊維が三次元ネットワーク状に十分に発展した形態とならないため、例えば、マトリックス中に分散配合された場合に、良好な導電パスを形成し得ないものとなる虞れがあり、一方、平均距離が300μmを越えるものであると、マトリックス中に分散配合させる際に、粘性を高くさせる要因となり、炭素繊維構造体のマトリックスに対する分散性が低下する虞れがあるためである。
【0043】
さらに、本発明に係る炭素繊維構造体は、上記したように、三次元ネットワーク状に存在する炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しており、このため当該構造体は炭素繊維が疎に存在した嵩高な構造を有するが、具体的には、例えば、その嵩密度が0.0001〜0.05g/cm、より好ましくは0.001〜0.02g/cmであることが望ましい。嵩密度が0.05g/cmを超えるものであると、少量添加によって、樹脂等のマトリックスの物性を改善することが難しくなるためである。
【0044】
しかして、本発明の炭素繊維複合構造体は、上記したような基本骨格を構成する炭素繊維構造体の表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有してなるものである。
【0045】
本発明の炭素繊維複合構造体における、金属および/または金属炭化物の微粒子の含有量は、特に限定されるものではないが、前記炭素繊維構造体に対して金属換算で、例えば、1〜200質量%、より好ましくは2〜100質量%である。金属および/または金属炭化物の微粒子の含有量が1質量%未満であると、このような金属および/または金属炭化物の微粒子を含有させることによる、例えば、炭素繊維とマトリックスとの濡れ性、界面接着状況等といった特性の改質効果が十分なものとならない虞れがあり、一方、その含有量が200質量%を超えるものであると、金属および/または金属炭化物の微粒子を炭素繊維構造体の表面に微粒子の付着量が増えることにより、炭素繊維の物性を利用できなくなる虞れがあるためである。また、必要以上の金属を添加することは、コストの面からも望ましくない。
【0046】
金属および/または金属炭化物の微粒子の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば、1〜70nm、好ましくは1〜60nmである。なお、この場合の金属および/または金属炭化物の微粒子の大きさは、微粒子が炭素繊維構造体に接している部位の水平方向長さで表している。微粒子の大きさが70nmを超えるものであると、炭素繊維構造体の表面に微粒子を安定に固着させることが困難となり脱落しやすくなるという虞れがある。
【0047】
さらに、特に限定されるものではないが、前記した金属および/または金属炭化物の微粒子による当該炭素繊維構造体の表面被覆率が、例えば、1〜100%、好ましくは2〜100%であることが望ましい。なお、表面被覆率は、得られた炭素繊維複合構造体表面の電子顕微鏡写真を画像解析することにより求められる。本明細書において示す値は、具体的には、後述する実施例において示した測定方法により得られた値である。金属および/または金属炭化物の微粒子による当該炭素繊維構造体の表面被覆率が、1%未満であると、このような金属および/または金属炭化物の微粒子を含有させることによる、例えば、炭素繊維とマトリックスとの濡れ性、界面接着状況等といった特性の改質効果が十分なものとならない虞れがあり、一方、表面被覆率は100%を超えることはない。
【0048】
さらに、当該炭素繊維複合構造体をマトリックス中に配した場合に、より高いアンカー効果等を付与し力学的特性の面から特に優れた複合材料を得る上からは、上記炭素繊維構造体の表面被覆率が1〜70%程度、特に2〜50%程度であることが望ましい。一方、当該炭素繊維複合構造体をマトリックス中に配した場合により高い熱伝導特性等の面から特に優れた複合材料を得る上からは、上記炭素繊維構造体の表面被覆率が50〜100%程度、特に70〜100%程度であることが望ましい。
【0049】
本発明の炭素繊維構造体の表面に形成される金属および/または金属炭化物の微粒子に使用される金属種としては、付加しようとする特性に応じて各種のものを用いることができるが、好ましい金属種としては、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Yから選択される1種または2種以上である。
【0050】
本発明の炭素繊維複合構造体において、炭素繊維複合構造体がその表面に有している金属および/または金属炭化物の微粒子は、炭素繊維の表面に一部が入り込んで、結晶構造が一体化しているので、炭素繊維との結び付きが強固である。例えば、後述する実施例において示すように、当該炭素繊維複合構造体を液状媒体中に分散させ、これに一定出力で所定周波数の超音波をかけて、付着した金属および/または金属炭化物の微粒子の脱落を調べたところ、処理後における金属および/または金属炭化物の微粒子の脱落率は、10%未満、より好ましくは5%未満であって、金属および/または金属炭化物の微粒子は、炭素繊維構造体に安定して固着されていることが判る。
【0051】
また、当該微粒子は炭素繊維の表面に凸部を形成しているので、本発明に係る炭素繊維複合構造体を用いて最終的に製造された複合材料において、炭素繊維複合構造体とマトリックスとの接着状況が改善され、それは、アンカー効果により強固なものになる。図2は、この作用を模式的に示す図面である。図2(a)に示すように、一般的な炭素繊維をフィラーとしてマトリックスに配合した場合、当該フィラー表面が比較的平滑であるため、マトリックスとの界面方向に歪み応力が加わった場合、マトリックスとフィラーとの間で比較的容易にずれが生じてしまう。一方、本発明に係る炭素繊維複合構造体を用いた場合、前記したように、フィラー表面が当該微粒子による凸部を有するため、図2(b)に示すように、これがマトリックスとの界面においてマトリックス中に楔状に打ち込まれたような様相を呈し、マトリックスとの界面方向に歪み応力が加わった場合においても、マトリックスとフィラーとの間でずれが生じにくいというものである。
【0052】
なお、本発明の炭素繊維複合構造体がその表面に有している金属および/または金属炭化物の微粒子は、炭素繊維の構造に悪い影響が無いため、表面改質によって炭素繊維の物性を劣化する恐れが無い。また、炭素繊維複合構造体がその表面に有している金属の微粒子は、炭素化合物に対する黒鉛化触媒として作用するものである。
【0053】
本発明の炭素繊維複合構造体は、上記したような基本骨格を構成する炭素繊維構造体の表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有してなるものであり、基本骨格を構成する炭素繊維構造体が三次元ネットワーク構造を有し、しかもそのネットワーク構造は微細炭素繊維同士が単に絡合しているものでは無く、微細炭素繊維同士を強固に結合する粒状部を有しているので、最終的に複合材料を製造した場合には、その複合材料の熱伝導性、導電性、機械的強度が良好なものとなる。また、三次元的構造を付与するための工程を付加する必要が無い。
【0054】
また、本発明に係る炭素繊維複合構造体は、ラマン分光分析法で測定されるI/I比が、0.2以下、より好ましくは0.1以下であることが望ましい。ここで、ラマン分光分析では、大きな単結晶の黒鉛では1580cm−1付近のピーク(Gバンド)しか現れない。結晶が有限の微小サイズであることや格子欠陥により、1360cm−1付近にピーク(Dバンド)が出現する。このため、DバンドとGバンドの強度比(R=I1360/I1580=I/I)が小さい程、炭素繊維複合構造体を構成するグラフェンシート中における欠陥量が少ないことを意味し、I/I比が上記所定の値のものであると、本発明に係る炭素繊維複合構造体が、より高い強度および導電性を発揮し得るためである。
【0055】
本発明に係る炭素繊維複合構造体はまた、空気中での燃焼開始温度が700℃以上、好ましくは750℃以上、より好ましくは800〜900℃であることが望ましい。前記したように炭素繊維構造体が欠陥が少ないものであることから、このような高い熱的安定性を有するものとなる。
【0056】
さらに、本発明の炭素繊維複合構造体の好ましい一実施形態においては、炭素繊維複合構造体に対してホウ素換算で0.001〜30質量%、好ましくは0.01〜3.0質量%のホウ素化合物を含有することもできる。この場合、炭素繊維複合構造体中のホウ素化合物の存在する部位、ホウ素化合物の化合物種については特に限定されない。炭素繊維複合構造体中にホウ素化合物が存在することによって、構造に多少の欠陥を含んでいる場合であっても、高い導電性を得ることができる。
【0057】
(炭素繊維複合構造体の製造方法)
次に上記したような本発明に係る炭素繊維複合構造体の製造方法について説明する。
図1は、本発明に係る炭素繊維複合構造体の製造方法および炭素繊維複合構造体の予備成形体の製造方法における各工程順を概略示すチャート図である。
【0058】
本発明に係る炭素繊維複合構造体は、特に限定されるものではないが、基本的には、触媒および炭化水素の混合ガスを800℃〜1300℃の一定温度で加熱する際に、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させて、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を得る第1工程、得られた炭素繊維構造体の中間体を有機金属化合物の有機溶媒溶液または金属塩と界面活性剤の水溶液に浸漬させた後、使用した溶媒を乾燥させる第2工程、乾燥後に炭素繊維構造体の中間体を800℃〜1200℃に加熱し、次に1800℃〜3000℃でアニール処理する第3工程を経ることにより、製造することができる。図1中において、図中左側の矢印順、すなわち、「炭素繊維構造体生成」、「金属溶媒液に浸漬後乾燥」、「アニール処理」、および「炭素繊維複合構造体の粉体」という流れが、本発明に係る炭素繊維複合構造体の製造方法の基本的な手順である。
【0059】
まず、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を得る第1工程について説明する。この第1工程においては、基本的には、遷移金属超微粒子を触媒として炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解して炭素繊維構造体(中間体)を形成する。
【0060】
原料有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素、エタノール等のアルコール類などが使用できる。特に限定されるわけではないが、炭素繊維構造体の中間体を得る上においては、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書において述べる「少なくとも2つ以上の炭素化合物」とは、必ずしも原料有機化合物として2種以上のものを使用するというものではなく、原料有機化合物としては1種のものを使用した場合であっても、繊維構造体の合成反応過程において、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化(hydrodealkylation)などのような反応を生じて、その後の熱分解反応系においては分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物となっているような態様も含むものである。
【0061】
なお、熱分解反応系において炭素源としてこのように2種以上の炭素化合物を存在させた場合、それぞれの炭素化合物の分解温度は、炭素化合物の種類のみでなく、原料ガス中の各炭素化合物のガス分圧ないしモル比によっても変動するものであるため、原料ガス中における2種以上の炭素化合物の組成比を調整することにより、炭素化合物として比較的多くの組み合わせを用いることができる。
【0062】
例えば、メタン、エタン、プロパン類、ブタン類、ペンタン類、へキサン類、ヘプタン類、シクロプロパン、シクロヘキサンなどといったアルカンないしシクロアルカン、特に炭素数1〜7程度のアルカン;エチレン、プロピレン、ブチレン類、ペンテン類、ヘプテン類、シクロペンテンなどといったアルケンないしシクロオレフィン、特に炭素数1〜7程度のアルケン;アセチレン、プロピン等のアルキン、特に炭素数1〜7程度のアルキン;ベンゼン、トルエン、スチレン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、インデン、フェナントレン等の芳香族ないし複素芳香族炭化水素、特に炭素数6~18程度の芳香族ないし複素芳香族炭化水素、メタノール、エタノール等のアルコール類、特に炭素数1〜7程度のアルコール類;その他、一酸化炭素、ケトン類、エーテル類等の中から選択した2種以上の炭素化合物を、所期の熱分解反応温度域において異なる分解温度を発揮できるようにガス分圧を調整し、組み合わせて用いること、および/または、所定の温度領域における滞留時間を調整することで可能であり、その混合比を最適化することで効率よく本発明に係る炭素繊維構造体を製造することができる。
【0063】
このような2種以上の炭素化合物の組み合わせのうち、例えば、メタンとベンゼンとの組み合わせにおいては、メタン/ベンゼンのモル比が、>1〜600、より好ましくは1.1〜200、さらに好ましくは3〜100とすることが望ましい。なお、この値は、反応炉の入り口におけるガス組成比であり、例えば、炭素源の1つとしてトルエンを使用する場合には、反応炉内でトルエンが100%分解して、メタンおよびベンゼンが1:1で生じることを考慮して、不足分のメタンを別途供給するようにすれば良い。例えば、メタン/ベンゼンのモル比を3とする場合には、トルエン1モルに対し、メタン2モルを添加すれば良い。なお、このようなトルエンに対して添加するメタンとしては、必ずしも新鮮なメタンを別途用意する方法のみならず、当該反応炉より排出される排ガス中に含まれる未反応のメタンを循環使用することにより用いることも可能である。
【0064】
このような範囲内の組成比とすることで、炭素繊維部および粒状部のいずれもが十分に発達した構造を有する炭素繊維構造体を得ることが可能となる。
【0065】
なお、雰囲気ガスには、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用いることができる。
【0066】
また、触媒としては、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を使用する。
【0067】
中間体の合成は、通常行われている炭化水素等のCVD法を用い、原料となる炭化水素および触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして反応炉内に導入し、800〜1300℃の温度で熱分解する。これにより、外径が15〜100nmの繊維相互が、前記触媒の粒子を核として成長した粒状体によって結合した疎な三次元構造を有する炭素繊維構造体(中間体)が複数集まった数cm〜数十cmの大きさの集合体を合成する。
【0068】
原料となる炭化水素の熱分解反応は、主として触媒粒子ないしこれを核として成長した粒状体表面において生じ、分解によって生じた炭素の再結晶化が当該触媒粒子ないし粒状体より一定方向に進むことで、繊維状に成長する。しかしながら、本発明に係る炭素繊維構造体を得る上においては、このような熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させる、例えば上記したように炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることで、一次元的方向にのみ炭素物質を成長させることなく、粒状体を中心として三次元的に炭素物質を成長させる。このような三次元的な炭素繊維の成長は、熱分解速度と成長速度とのバランスにのみ依存するものではなく、触媒粒子の結晶面選択性、反応炉内における滞留時間、炉内温度分布等によっても影響を受け、また、前記熱分解反応と成長速度とのバランスは、上記したような炭素源の種類のみならず、反応温度およびガス温度等によっても影響受ける。概して、上記したような熱分解速度よりも成長速度の方が速いと、炭素物質は繊維状に成長し、一方、成長速度よりも熱分解速度の方が速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向に成長する。従って、熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させ制御することにより、炭素物質の成長方向を一定方向ではなく多方向とし、本発明に係る三次元構造を形成することができる。この中間体において、繊維相互が粒状体により結合された三次元構造を容易に形成する上では、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度、およびガス温度等を最適化することが望ましい。
【0069】
以上のようにして得られた中間体は、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合わせたような不完全な構造を有し、欠陥が多い。この中間体は、未反応原料、非繊維状炭化物、タール分および触媒金属を含んでいる。
【0070】
本発明の炭素繊維構造体の製造方法では、必要に応じて予備的アニール処理工程を付加することができる。具体的には第1工程と第2工程の間に、第1工程で得られた炭素繊維構造体の中間体を800℃〜1200℃で5〜20分間加熱する。この予備的アニール処理工程により、第1工程で得られた中間体が含んでいる未反応原料、非繊維状炭化物、タール分および触媒金属の一部または全部が除去される。
【0071】
次いで、本発明の製造方法の第2工程においては、第1工程で得られた炭素繊維構造体の中間体を有機金属化合物の有機溶媒溶液か、または金属塩と界面活性剤の水溶液に浸漬させた後、使用した溶媒を乾燥除去する。
【0072】
本発明の第2工程の具体的な例を以下に記述する。
【0073】
第1工程で製造した炭素繊維に対して、有機金属化合物の有機溶媒溶液か、または金属塩と界面活性剤の水溶液を、スプレー等で塗布するか、またはバッチ式あるいは連続的に浸漬処理する。
【0074】
カーボンナノチューブは水との親和性が低いので有機金属化合物の有機溶媒溶液の方が使用し易い。有機金属化合物としては、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Y等の金属のアルコキシド、アセチルアセトナート、脂肪酸塩等を用いることができる。またこれらの金属と無機酸との塩と、界面活性剤を含有する水溶液等も用いることができる。これらの金属は炭素と強い結合力を持ち炭化物を形成するものである。
【0075】
使用した溶媒を乾燥除去する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、自然乾燥あるいは100℃以下、より好ましくは70〜80℃程度の温度での加熱乾燥を行うことができ、例えば、8〜24時間程度、代表的には、約12時間程度加熱乾燥させる。
【0076】
その後、第3工程として、第2工程で有機金属化合物の有機溶媒溶液か、または金属塩と界面活性剤の水溶液に浸漬し、乾燥した炭素繊維構造体の中間体を、800℃〜1200℃、より好ましくは900〜1000℃で加熱し、さらに1800℃〜3000℃で、より好ましくは2000〜2600℃アニール処理する。
【0077】
アニール処理を1800℃よりも低い温度で行うと、炭素繊維複合構造体の結晶性が低くなり、電気伝導性、熱伝導性、機械的強度等において十分な性能を発揮できず好ましくない。また3000℃よりも高い温度で行っても、炭素繊維複合構造体の結晶性の発展にはこれ以上の効果が無く、高温処理コストの面で好ましくない。
【0078】
それぞれの温度域における処理時間としては、特に限定されるものではないが、、800℃〜1200℃で5〜20分間程度、次に1800℃〜3000℃で5〜20分間程度とすることができる。
【0079】
なお、この際、物質構造を保護するために不活性ガス雰囲気中に還元ガスや微量の一酸化炭素ガスを添加してもよい。
【0080】
上記したような製造方法で製造された本発明の炭素繊維複合構造体は、第3工程において1800℃〜3000℃でアニール処理されるため高温に対する耐久性が高い。またアニール処理されたことにより、炭素繊維複合構造体の欠陥が少ないので、空気中においても燃焼開始温度が700℃以上と、熱的安定性が高いものとなる。
【0081】
なお、2400℃以上でアニール処理すると、積層したグラフェンシートの面間隔が狭まり真密度が1.89g/cmから2.1g/cmに増加するとともに、炭素繊維の軸直交断面が多角形状となり、この構造の炭素繊維は、積層方向および炭素繊維を構成する筒状のグラフェンシートの面方向の両方において緻密で欠陥の少ないものとなるため、曲げ剛性(EI)が向上する。
【0082】
本発明の炭素繊維複合構造体の製造方法で製造された炭素繊維複合構造体は、第1工程の段階で三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体が形成されており、しかもそのネットワークは微細炭素繊維同士が単に絡合しているものでは無く、微細炭素繊維同士を強固に結合する粒状部を有しているので、前記したように、最終的に複合材料を製造した場合には、その複合材料の熱伝導性、導電性、機械的強度が良好なものとなる。また、三次元的構造を付与するための工程を付加する必要が無いものである。
【0083】
本発明の炭素繊維複合構造体として、上記したようにホウ素化合物を含有した炭素繊維複合構造体を得ようとする実施形態においては、このホウ素化合物を含有させるための工程として、例えば、上記したような第1〜第3工程を有する製造プロセスに次のような工程を付加することにより行うことができる。
【0084】
すなわち、前記した第2工程の際に、有機金属化合物の有機溶媒溶液または金属塩と界面活性剤の水溶液に対して、ホウ素化合物の有機溶媒溶液もしくは水溶液を混合する。
【0085】
ここで使用するホウ素化合物としては、第3工程で1800℃に到達する前に、分解等で蒸発しない物性を有しているところの、単体ホウ素、B、HBO、BC、BN等が挙げられる。ホウ素化合物の含有量は、炭素繊維複合構造体に対してホウ素換算で0.001〜30質量%、好ましくは0.01〜3.0質量%である。炭素繊維複合構造体中にホウ素化合物の存在する部位は、炭素繊維複合構造体を構成する炭素原子の一部がホウ素に置換されている状態、炭素繊維複合構造体の表面にホウ素が付着した状態、炭素繊維複合構造体の表面に含有されている金属微粒子の中に取り込まれた状態がある。この時にホウ素化合物は種々の化合物種を採り得る。上述したように、炭素繊維複合構造体中にホウ素化合物が存在することによって、構造に多少の欠陥を含んでいる場合であっても、高い導電性を得ることができる。
【0086】
(炭素繊維複合構造体の予備成形体)
次に本発明に係る炭素繊維複合構造体の予備成形体につき説明する。
本発明の炭素繊維複合構造体の予備成形体は、上記したように、特定の三次元ネットワーク構造を有する炭素繊維構造体の表面に、金属および/または金属炭化物の微粒子を含有してなる炭素繊維複合構造体を形成し、当該炭素繊維複合構造体を熱間プレスと炭化処理工程を経て得られるものである。
【0087】
このような本発明に係る炭素繊維複合構造体の予備成形体の形状、大きさは、この予備成形体を使用して最終的に形成される複合材の形状、大きさに基づいて決められる。こうして得られる炭素繊維複合構造体の予備成形体は、前記したような本発明に係る炭素繊維複合構造体の有する特性を有しつつ、ハンドリング性が向上し、かつさらに先の段階で複合材の成形体を作製する際に使用するマトリックスとの接触性が良好になる。その結果最終的に作製された複合材の成形加工を容易とすると共に、得られる成形体を強固なものにすることができる。
(炭素繊維複合構造体の予備成形体の製造方法)
上記したような炭素繊維複合構造体の予備成形体は、前記した「炭素繊維複合構造体の製造方法」に関して説明したような第1〜第3工程を経て、その表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有している炭素繊維複合構造体を形成し、その後、当該炭素繊維複合構造体に対して、バインダーを添加し100℃〜200℃で熱間プレスし、次に800℃〜1200℃で炭化処理することにより、調製することができる。図1中において、図中右側の矢印順、すなわち、「炭素繊維構造体生成」、「金属溶媒液に浸漬後乾燥」、「アニール処理」、「熱硬化樹脂等の有機溶剤に浸漬後乾燥」、「熱間プレスで成形体作製」、「アニール炭化処理」および「炭素繊維複合構造体の予備成形体」という流れが、本発明に係る炭素繊維複合構造体の予備成形体の製造方法の代表的かつ基本的な手順である。
【0088】
第1〜第3工程については、前述したものと同様であり、説明が重複するために省略するが、この場合も当然に、前記したような予備的アニール処理、ホウ素化合物を含有させるための工程といった付加工程を追加したり、あるいは前記したような様々な変更形態を採択することはもちろん可能である。
【0089】
そして、第3工程を経た得られた炭素繊維複合構造体に対し、バインダーとの混合、混練を行う。バインダーとしては、熱硬化性樹脂、あるいはピッチ等が使用可能であるが、これらに限定されるわけではない。熱硬化性樹脂としては、100〜200℃程度の加熱による硬化工程により架橋、重合して固化する性質を有し、加熱時には流動状態とならずに、分解して炭素化するという性質のものが好ましい。具体的には、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、アニリン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等が挙げられる。また、ピッチとしては、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ等が使用できる。
【0090】
炭素繊維複合構造体とバインダーとの混合、混練には、双腕型ニーダー、ミキサー型混練機等が使用できる。混合、混練の条件としては、前記特定の三次元構造を有する炭素繊維構造体に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有してなる炭素繊維複合構造体が、実質的にその構造を破壊しない程度のせん断力および時間にて行う限り、特に限定されない。また、その条件は使用するバインダーの種類、使用する混合ないし混練装置等によっても左右されるため、一概には規定できないが、一例を挙げると、例えば、バインダーの粘度が0.3〜1000mPa・s程度において、10秒〜10分といった処理を例示できる。なお、単純に浸漬等の処理のみで、炭素繊維複合構造体にバインダーを均一に混合できる場合には、特段の混練ないし撹拌等の処理は不要である。また、必要に応じて、バインダーは溶剤で希釈したり、加熱したりして、混合時の粘度を調整することが可能である。
【0091】
混合、混練に次いで、熱間プレスによる成形を行う。成形には金型を使用して上下からプレスする方法、ゴム型を使用して静水圧にて等方的にプレスする方法等が好ましい。プレス時における成形圧力は、1×10〜2×10Pである。
【0092】
バインダーとして熱硬化性樹脂を使用した場合、プレス時には熱硬化性樹脂の硬化温度、例えば100〜200℃に加熱して、成形と同時に熱硬化性樹脂を硬化させることができる。
【0093】
熱間プレスによる成形後、脱酸素雰囲気または不活性ガス雰囲気中で、例えば、800〜1200℃に加熱して熱硬化性樹脂を分解して炭素化し、さらに黒鉛化させる。これら一連の工程により、炭素繊維複合構造体の予備成形体を製造することができる。
【0094】
なお、炭素繊維複合構造体の予備成形体の形状、大きさは、この予備成形体を使用して最終的に形成される複合材の形状、大きさに基づいて決められる。こうして得られる炭素繊維複合構造体の予備成形体は、内部に空隙部を有しているが、さらに先の段階でこの空隙部にマトリックス材料を含浸させて、複合材の成形体が作製される。含浸の際には、炭素繊維複合構造体の予備成形体とマトリックスとの接触が良好になり、炭素繊維複合構造体とマトリックスとの接着がアンカー効果により強固なものになる。その結果最終的に作製された複合材の成形体をより強固なものにすることができる。
(炭素繊維複合構造体および炭素繊維複合構造体の予備成形体の用途)
上述したような本発明に係る炭素繊維複合構造体および炭素繊維複合構造体の予備成形体、あるいは上述したような本発明に係る炭素繊維複合構造体の製造方法および炭素繊維複合構造体の予備成形体の製造方法により得られた炭素繊維複合構造体および炭素繊維複合構造体の予備成形体は、前記したように、導電性、熱伝導性、マトリックスに対する分散性が良好かつ安定であるなどの特性があり、これらを活かして樹脂、セラミックス、金属等の固体材料に対する複合材料用フィラーとして広い範囲に好適に利用できる。
【0095】
次に、本発明の係る炭素繊維複合構造体および炭素繊維複合構造体の予備成形体を用いた複合材料において、前述のごとき炭素繊維複合構造体を分散させるマトリックスとしては、有機ポリマー、無機材料、金属等が好ましく使用することができる。
【0096】
有機ポリマーとして、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリフェニレンエーテル、ポリ(メタ)アクリレート及び液晶ポリマー等の各種熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂およびユリア樹脂等の各種熱硬化性樹脂、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム、エチレンアクリルゴム、ノルボルネンゴム及び熱可塑性エラストマー等の各種エラストマーが挙げられる。
【0097】
また、有機ポリマーは、接着剤、繊維、塗料、インキ等の各種組成物の形態であってもよい。
【0098】
すなわち、マトリックスが、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、フェノール系接着剤、ポリエステル系接着剤、塩化ビニル系接着剤、ユリア系接着剤、メラミン系接着剤、オレフィン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ホットメルト系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ゴム系接着剤及びセルロース系接着剤等の接着剤、アクリル繊維、アセテート繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ノボロイド繊維、セルロース繊維、ビスコースレーヨン繊維、ビニリデン繊維、ビニロン繊維、フッ素繊維、ポリアセタール繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維及びポリプロピレン繊維等の繊維、さらにフェノール樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料エポキシ樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、不飽和ポリエステル系塗料、ポリウレタン系塗料、シリコーン系塗料、フッ素樹脂系塗料、合成樹脂エマルジョン系塗料等の塗料であってよい。
【0099】
無機材料としては、例えば、セラミック材料、無機酸化物ポリマー、カーボン系材料などが挙げられる。具体低に、は例えば、カーボンカーボンコンポジットなどの炭素材料、ガラス、ガラス繊維、板ガラス及び他の成形ガラス、ケイ酸塩セラミクス並びに他の耐火性セラミクス、例えば酸化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、窒化ケイ素及び窒化ホウ素が挙げられる。
【0100】
また、マトリクスが金属である場合、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛、クロム、銅、銀、鉛、銅等の金属、またはこれらの金属の2種以上の合金及び混合物が挙げられる。
【0101】
さらに複合材料には、上述した炭素繊維構造体に加えて他の充填剤を含んでいてもよく、そのような充填剤としては例えば、金属微粒子、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられ、これらを一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0102】
なお、複合材料は、前記のようなマトリックスに本発明に係る炭素繊維複合構造体ないし炭素繊維複合構造体の予備成形体を有効量含む。その量は、複合材料の用途やマトリックスによって異なるが、例えば、0.1%〜98%程度とすることができる。0.1%未満では、構造材としての強度の補強効果が小さかったり、電気導電性も十分でない。98%より多くなると、マトリックス材料の特性を十分発揮できなくなる。本発明の炭素繊維複合構造体ないし炭素繊維複合構造体の予備成形体を用いた複合材料においては、マトリックス中に、微細な炭素繊維を均一な広がりをもって配置することができ、またその表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を有することから、電気伝導性、熱伝導性、電波遮蔽性等に優れた機能材料、強度の高い構造材料等として有用な複合材料となるものである。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例に基づき、更に具体的に説明する。なお、以下において、各物性値は次のようにして測定した。
【0104】
<面積基準の円相当平均径>
まず、炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。対象とされた各炭素繊維構造体の輪郭を、画像解析ソフトウェア WinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化した。
【0105】
<嵩密度の測定>
内径70mmで分散板付透明円筒に1g粉体を充填し、圧力0.1Mpa、容量1.3リットルの空気を分散板下部から送り粉体を吹出し、自然沈降させる。5回吹出した時点で沈降後の粉体層の高さを測定する。このとき測定箇所は6箇所とることとし、6箇所の平均を求めた後、嵩密度を算出した。
【0106】
<ラマン分光分析>
堀場ジョバンイボン製Jobin Yvon LabRam HR−800−Horibaを用い、アルゴンレーザーの514nmの波長を用いて測定した。
【0107】
<TG燃焼温度>
マックサイエンス製TG−DTAを用い、空気を0.1リットル/分の流速で流通させながら、10℃/分の速度で昇温し、燃焼挙動を測定した。燃焼時にTGは減量を示し、DTAは発熱ピークを示すので、発熱ピークのトップ位置を燃焼開始温度と定義した。
【0108】
<X線回折>
粉末X線回折装置(JEOL−JDX−3532、日本電子製)を用いて、アニール処理後の炭素繊維複合構造体ないし炭素繊維構造体を調べた。Cu管球で40kV、30mAで発生させたKα線を用いることとし、面間隔の測定は学振法(最新の炭素材料実験技術(分析・解析編)、炭素材料学会編)に従い、シリコン粉末を内部標準として用いた。
【0109】
<粒状部の平均粒径、円形度、微細炭素繊維との比>
面積基準の円相当平均径の測定と同様に、まず、炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。
【0110】
対象とされた各炭素繊維構造体において、炭素繊維相互の結合点である粒状部を1つの粒子とみなして、その輪郭を、画像解析ソフトウェア WinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各粒状部の円相当径を計算し、これを平均化して粒状部の平均粒径とした。また、円形度(R)は、前記画像解析ソフトウェアを用いて測定した輪郭内の面積(A)と、各粒状部の実測の輪郭長さ(L)より、次式により各粒状部の円形度を求めこれを平均化した。
【0111】
[化1]
R=A*4π/L2
さらに、対象とされた各炭素繊維構造体における微細炭素繊維の外径を求め、これと前記各炭素繊維構造体の粒状部の円相当径から、各炭素繊維構造体における粒状部の大きさを微細炭素繊維との比として求め、これを平均化した。
【0112】
<炭素繊維複合構造体における微粒子の含有量>
蛍光X線測定装置(RigakuZSXmini、理学電機工業株式会社製)を使用して金属元素の分析を行った。なお、確認のために、別途、X線回折測定装置JEOL−JDX−3532(日本電子株式会社製)を使用して、金属炭化物を検出した。
【0113】
<微粒子による炭素繊維構造体の表面被覆率>
TEMにて炭素繊維複合構造体を観察し、炭素繊維複合構造体表面の代表的な部分の500nm長さで観察される金属及び/又は金属炭化物微粒子の数を数え、個々の微粒子サイズを画像解析ソフトで求め、円相当面積(SPA)に換算する。炭素繊維複合構造体の直径も測定し、円筒と仮定した側面の表面積(S)を計算する。得られたこれらの値から、以下の式により表面被覆率を求めた。
【0114】
[化2]
表面被覆率=ΣSPA/S×100(%)
【0115】
<炭素繊維複合構造体の表面微粒子脱離試験>
蓋付バイアル瓶中に入れられたトルエン100mlに、10〜100μg/mlの割合で炭素繊維複合構造体を添加し、炭素繊維複合構造体の分散液試料を調製した。
【0116】
このようにして得られた炭素繊維複合構造体の分散液試料に対し、発信周波数38kHz、出力150wの超音波洗浄器((株)エスエヌディ製、商品名:USK-3)を用いて、超音波をかけ、超音波を負荷してから60分経過後において、分散液試料中より、炭素繊維複合構造体をサンプリング、メッシュ上に滴下して試料調製後、TEMにて脱落の有無を観察した。
【0117】
[実施例1] 炭素繊維構造体の中間体の製造(第1工程)
トルエンを原料としてCVD法で合成した。触媒としてフェロセンおよびチオフェンの混合物を使用し、水素ガスの還元雰囲気下で実施した。トルエン、触媒を水素ガスとともに380℃に加熱し、生成炉に供給し、1250℃で熱分解して、炭素繊維構造体の中間体を得た。この中間体のTEM写真を図3に示す。
【0118】
[実施例2] 予備的アニール処理
実施例1で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を、窒素中で900℃にて焼成して、タールなどの炭化水素を分離し、予備的アニール処理を行った。ここで得られた中間体のラマン分光測定のR値(I/I)は0.98であった。この中間体のTEM写真を図4に示す。
【0119】
[実施例3] 有機金属化合物の付与(第2工程)
チタンテトライソプロポキシド(関東化学株式会社製)2.3gをエタノール50mlで希釈し浸漬液とした。実施例2で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体10gを室温で30分間浸漬した後、100℃で12時間乾燥した。
【0120】
[実施例4] アニール処理(第3工程)
実施例3で得られた浸漬、乾燥後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体10gを、2500℃で20分間アニール処理した。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して金属元素の分析を行った。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維複合構造体は、Tiを3.5%含有していた。この金属炭化物の微粒子を被覆された炭素繊維複合構造体のTEM写真を図5(a)および(b)に示す。なお、炭素繊維構造体の表面に付着した金属炭化物の微粒子の大きさは、微粒子15個の平均値で約50nmであった。また別に、X線回折測定装置JEOL−JDX−3532(日本電子株式会社製)を使用して、TiCを検出した。このX線回折測定結果を図6に示す。
【0121】
比較用に実施例2で得られた中間体を2500℃で20分間アニール処理したものについて、X線回折測定した結果も図6に示す。
【0122】
さらに、本実施例で得られた炭素繊維複合構造体における微粒子による当該炭素繊維構造体の表面被覆率を調べたところ、15%であると測定された。
【0123】
また、ラマン分光分析法(使用機器Jobin Yvon LabRam HR−800−Horiba製)で測定されるR値(I/I)は0.11であった。
【0124】
さらに得られた炭素繊維複合構造体の円相当平均径は、180μm、嵩密度は0。0031g/cm、TG燃焼温度は800℃、面間隔は3.392オングストロームであった。
【0125】
さらに炭素繊維構造体における粒状部の粒径は平均で、350nm(SD180nm)であり、炭素繊維構造体における微細炭素繊維の外径の5.8倍となる大きさであった。また粒状部の円形度は、平均値で0.69(SD0.15)であった。
【0126】
また、前記した手順によって炭素繊維複合構造体の表面微粒子脱離試験を行ったところ、微粒子の脱落は観察されず、金属炭化物の微粒子は炭素繊維構造体表面に安定に固着していることが明らかとなった。
【0127】
[実施例5] 第2工程+ホウ素化合物、第3工程
2.0gのB(高純度化学研究所株式会社製)を200mlのエタノールに溶解させた後、チタンテトライソプロポキシド(関東化学株式会社製)10gを滴下して混合し、浸漬液とした。実施例2で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体10gを、浸漬液に室温で30分間浸漬した後、100℃で12時間乾燥した。この浸漬、乾燥後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体10gを、900℃に20分間加熱し、次に2400℃で20分間アニール処理した。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して金属元素の分析を行った。分析の結果、炭素繊維構造体はTiを8.0%含有していた。また別に、X線回折測定装置JEOLJDX−3532(日本電子株式会社製)を使用して、TiCおよびTiB(TiB)を検出した。X線回折測定結果を図7に示す。
【0128】
[実施例6] 成形体作製例
実施例5で得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体8.0gを、60質量%のフェノール樹脂レジトップ(群栄化学工業株式会社製)をメタノール150mlに希釈して得た浸漬液に、30分間浸漬した。100℃のホットプレート上で12時間乾燥した。乾燥後の混練物を、ホットプレス機を使用して、150℃で30分間熱間プレスし、成形体を得た。得られた成形体は質量7.85g、直径40mm、高さ7.5mm、密度0.83g/cmであった。
【0129】
[実施例7] 予備成形体作製例
実施例6で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の成形体7.85gを、1200℃で20分間加熱して炭化処理し、炭素繊維複合構造体の予備成形体を得た。得られた予備成形体は質量5.97g、高さ8mm、密度0.59g/cmであった。最終的に得られた炭化処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維複合構造体の予備成形体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して金属元素の分析を行った。分析の結果、炭素繊維複合構造体の予備成形体はTiを8.0%含有していた。また別に、X線回折測定装置JEOLJDX−3532(日本電子株式会社製)を使用して、TiCを検出した。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の炭素繊維複合構造体は、三次元ネットワーク状に形成されているので、最終的に複合材料を製造した場合、その熱伝導性、導電性、機械的強度が良好なものとなる。また、三次元的構造を後から付与するための工程が不要である。本発明の炭素繊維複合構造体は、高温に対する耐久性が高い。さらに、炭素繊維複合構造体がその表面に有している金属および/または金属炭化物の微粒子は、カーボンナノチューブとの結び付きが強固であり、最終的に製造された複合材料において、炭素繊維複合構造体とマトリックスとの接着が強固になる。加えて、本発明の炭素繊維複合構造体がその表面に有している金属の微粒子は、炭素化合物に対する黒鉛化触媒として作用するものである。従って、本発明の炭素繊維複合構造体は、例えば、金属および金属以外のセラミックス、ゴム、合成樹脂、カーボン系材料等の各種マトリックス材料と好適に組み合わされて、優れた特性を有する複合体となるものである。
【0131】
本発明の炭素繊維複合構造体の利用用途の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば、次のようなものを挙げることができる。(1)導電性、熱伝導性を利用するものとして、導電性樹脂、導電性成形体、熱伝導性樹脂、熱伝導性樹脂成形体、包装材、ガスケット、容器、抵抗体、電線等。(2)電磁波遮蔽材、(3)物理的特性を利用するものとして、家電、車両、航空機等のボディ、機械のハウジング、電池の極材等。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の炭素繊維複合構造体の製造方法におけるプロセス概略図である。
【図2】本発明の炭素繊維複合構造体を用いた場合の効果の概念図である。
【図3】本発明の実施例において得られた、未被覆処理の炭素繊維構造体のTEM写真である。
【図4】本発明の実施例において得られた、未被覆処理の炭素繊維構造体のTEM写真である。
【図5】(a)および(b)は本発明の実施例において得られた、表面にTiC粒子を被覆された炭素繊維複合構造体のTEM写真である。
【図6】本発明の実施例において得られたTiC化合物を被覆処理した炭素繊維複合構造体、及び被覆処理しない比較例のXRD結果を示すチャートである。
【図7】本発明の別の実施例においてホウ素化合物を含有する炭素繊維複合構造体のXRD結果を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体が、その表面部位に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有していることを特徴とする炭素繊維複合構造体。
【請求項2】
前記した炭素繊維複合構造体は、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以下であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維複合構造体。
【請求項3】
前記した金属および/または金属炭化物の微粒子の含有量が、当該炭素繊維構造体に対して金属換算で1〜200質量%である、請求項1または請求項2に記載の炭素繊維複合構造体。
【請求項4】
前記した金属および/または金属炭化物の微粒子の大きさが、1〜70nmである、請求項1〜3のいずれかの1つの項に記載の炭素繊維複合構造体。
【請求項5】
前記した金属および/または金属炭化物の微粒子による当該炭素繊維構造体の表面被覆率が1〜100%である請求項1〜4のいずれかの1つの項に記載の炭素繊維複合構造体。
【請求項6】
前記した金属および/または金属炭化物の金属種が、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Yから選択される1種または2種以上である、請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の炭素繊維複合構造体。
【請求項7】
前記した炭素繊維複合構造体が、炭素繊維複合構造体に対してホウ素換算で0.001〜30質量%のホウ素化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の炭素繊維複合構造体。
【請求項8】
外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体が、その表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有して炭素繊維複合構造体を形成し、当該炭素繊維複合構造体が熱間プレスと炭化処理工程を経て得られる炭素繊維複合構造体の予備成形体。
【請求項9】
触媒および炭化水素の混合ガスを800℃〜1300℃の一定温度で加熱する際に、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させて、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を得る第1工程、得られた炭素繊維構造体の中間体を有機金属化合物の有機溶媒溶液または金属塩と界面活性剤の水溶液に浸漬させた後、使用した溶媒を乾燥させる第2工程、乾燥後に炭素繊維構造体の中間体を800℃〜1200℃に加熱し、次に1800℃〜3000℃でアニール処理する第3工程からなる、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体が、その表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有していることを特徴とする炭素繊維複合構造体の製造方法。
【請求項10】
前記した炭素繊維複合構造体は、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以下であることを特徴とする、請求項9に記載の炭素繊維複合構造体の製造方法。
【請求項11】
前記した金属および/または金属炭化物の微粒子の含有量が、当該炭素繊維構造体に対して金属換算で1〜200質量%である、請求項9または請求項10に記載の炭素繊維複合構造体の製造方法。
【請求項12】
前記した金属および/または金属炭化物の微粒子の大きさが、1〜70nmである、請求項9〜11のいずれか1つの項に記載の炭素繊維複合構造体の製造方法。
【請求項13】
前記した金属および/または金属炭化物の微粒子による当該炭素繊維構造体の表面被覆率が1〜100%である請求項9〜12のいずれかの1つの項に記載の炭素繊維複合構造体の製造方法。
【請求項14】
前記した第1工程と前記した第2工程の間に、第1工程で得られた炭素繊維構造体の中間体を800℃〜1200℃に加熱する予備的アニール処理工程を付加することを特徴とする請求項9〜13のいずれかの1つの項記載の炭素繊維複合構造体の製造方法。
【請求項15】
前記した有機金属化合物の金属種が、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Yから選択される1種または2種以上である、請求項9〜14のいずれか1つの項に記載の炭素繊維複合構造体の製造方法。
【請求項16】
前記した有機金属化合物が、金属アルコキシド、金属アセチルアセトナート、または金属脂肪酸塩である請求項9〜15のいずれか1つの項に記載の炭素繊維複合構造体の製造方法。
【請求項17】
前記した第2工程の際に、有機金属化合物の有機溶媒溶液または金属塩と界面活性剤の水溶液に対して、ホウ素化合物の有機溶媒溶液もしくは水溶液を混合することにより、前記した炭素繊維複合構造体に対してホウ素換算で0.001〜30質量%のホウ素化合物を含有させることを特徴とする、請求項9〜16いずれか1つの項に記載の炭素繊維複合構造体の製造方法。
【請求項18】
請求項9記載の炭素繊維複合構造体の製造方法において、第3工程を経た外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体が、その表面に金属および/または金属炭化物の微粒子を含有して炭素繊維複合構造体を形成し、当該炭素繊維複合構造体に対して、バインダーを添加し100℃〜200℃で熱間プレスして、次に800℃〜1200℃で炭化処理することを特徴とする炭素繊維複合構造体の予備成形体の製造方法。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−163535(P2008−163535A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−635(P2007−635)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(306030116)ナノカーボンテクノロジーズ株式会社 (6)
【出願人】(000005913)三井物産株式会社 (37)
【Fターム(参考)】