説明

無垢床材を表面材に持つ床暖房構造

【課題】無垢材である床材30を小根太付き温水マット10の表面に固定した床暖房構造において、施工を簡素化しながら、床暖房の使用における無垢材である床材30の反り、収縮等の動きを抑制できるようにする。
【解決手段】床下地20の上に配置した小根太付き温水マット10の表面に無垢材である床材30を固定した構造の床暖房構造であって、温水マット10の表面に積層した均熱シート16における小根太13の表面部分に相当する領域が除去されており、均熱シート16が除去されることにより露出した小根太13の表面部分に対して無垢材である床材30の裏面を接着剤31により貼着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床暖房構造に関し、特に、床下地の上に配置した小根太付き温水マットの表面に無垢の床材を固定した構造の床暖房構造に関する。
【背景技術】
【0002】
床下地の上に、例えば特許文献1に示されるような小根太付き温水マットを配置し、配置した温水マットの表面に床材を、接着剤によりあるいは小根太を利用して釘打ちなどにより固定するようにした床暖房構造は知られている。
【0003】
通常、小根太付き温水マットは、合成樹脂発泡体からなる断熱性を備えたマット本体と、マット本体に形成した凹溝内に配設した温水パイプと、マット本体に形成した切り欠き内に埋め込まれたマット本体と同じ厚さの小根太とを備えており、床面上を歩行するときに生じがちなマット本体の沈み込みを小根太の存在によって抑制するようにしている。そして、前記のように、小根太は床材を小根太付き温水マットに対して釘やステープル等で固定するときの固定具支持材としても用いられる。
【0004】
特許文献1にも記載のように、温水パイプを流れる温水の熱を均等に床材側に伝達するために、小根太付き温水マットの表面全面に、アルミ箔、銅箔など熱伝導性に優れた均熱シートが積層され、積層した均熱シートの上から床材を温水マットの上に配置した後、前記のように、床材は、その実部から小根太に対して釘打ち固定されるか、接着剤により固定されるか、その双方により固定される。
【0005】
一方、アルミ箔のような均熱シートに対して床材を接着剤により貼着すると、十分な接着力が得られないことから、小根太付き温水マットにおいて、小根太の部分における均熱シートを除去できるようにしたものが特許文献2に記載されており、小根太の露出している部分に接着剤を塗布してフローリング材を接着することにより、強固な接着を得るようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−245967号公報
【特許文献2】特開平7−217920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したような床暖房構造においては、室温状態と加熱状態のサイクルが反復して床材に作用する。そのために、床材に熱収縮や反り等の問題が生じる場合がある。床材が合板基材に化粧材を接着積層したものである場合には、水分や熱に対する所要の寸法安定性を備えており、格別の問題は生じない。
【0008】
近年、高級感や無垢材独特の深み・味わい・木の温かさを求めて、オーク、バーチ、ビーチ等の樹種の無垢材からなる床材が用いられるようになってきている。しかし、無垢材はそれ自体が合板と比較して湿度変化や温度変化に対する寸法変化率が大きいことに加え、無垢材から床材を切り出す場合、均質性を確保するために大幅のものを切り出すことができず、70〜80mm(幅)×800〜1900mm(長さ)という、合板基材の床材と比較して、幅の狭いものとならざるを得ないことから、無垢材からなる床材を、上記した小根太付き温水マットを用いた床暖房構造の床材として用いる場合、均熱シートの上から床材を固定する従来の施工方法では、床材に無視できない寸法変化(曲がり)が生じて、床材間に隙間が生じる恐れがある。
【0009】
そのために、現状では、無垢材からなる床材(通常、9〜12mm(厚)×70〜80mm(幅)×800〜1900mm(長さ)程度のもの)を表面材として使用する場合には、小根太付き温水マットの表面に積層した均熱マットの上に、さらに捨て貼り合板(通常、9〜12mm厚程度)を施工し、その上に無垢材である床材を敷設して固定することが行われる。
【0010】
しかし、温水マットの上に捨て貼り合板を施工することは、材料費が高くなると共に施工工数も多くなり、コスト高を招いている。また、熱源である温水マットの上に捨て貼り合板が位置することにより、温水マット領域以外の領域との間に段差が生じるので、その不陸を是正するための手当が必要となっている。さらに、捨て貼り合板が位置することにより、温度の伝わりが悪くなり立ち上がりの昇温時間が長くなる不都合もある。また、温水マットが直接目視できないことから、温水パイプに傷を付けないよう、床材を釘打ち固定するときに慎重さが求められる。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、無垢材である床材を小根太付き温水マットの表面に固定することにより、施工を簡素化しながら、床暖房の使用における無垢材である床材の反り、収縮等の動きを抑制できるようにした無垢床材を表面材に持つ床暖房構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による無垢床材を表面材に持つ床暖房構造は、床下地の上に配置した小根太付き温水マットの表面に床材を固定した構造の床暖房構造であって、前記小根太付き温水マットは、断熱材であるマット本体と、マット本体に形成した凹溝内に配設した温水パイプと、マット本体に形成した切り欠き内に埋め込まれた小根太と、温水マットの表面に積層した均熱シートとを含み、該均熱シートは小根太の表面部分の全部または一部で除去されている小根太付き温水マットであり、前記床材は無垢材であり、かつ、床材の裏面が小根太付き温水マットの均熱シートが除去されることにより露出している小根太の表面部分に対して接着剤により貼着されていることを特徴とする。
【0013】
本発明による無垢床材を表面材に持つ床暖房構造では、無垢材である床材の裏面は、小根太付き温水マットの均熱シートが除去されることにより露出している小根太の表面部分に対して、接着剤により直接貼着される。それにより、無垢材である床材の水分および熱による寸法変化を抑えることができ、長時間にわたって床暖房の使用をしても、床材の寸法変化により床材間に隙間が生じるのを確実に抑制することができる。後の実施例に示すよう、均熱シートを介して無垢材である床材を固定する場合と比較して、その平均寸法変化量は小さくなる。
【0014】
そのために、本発明による無垢床材を表面材に持つ床暖房構造では、これまでのように、温水マットの上に捨て貼り合板を施工する作業を省略することができ、コスト的にも施工的にも、改善される。
【0015】
本発明において、小根太付き温水マットは、従来から用いられている均熱シートを備えた小根太付き温水マットをそのまま用いることができる。ただし、施工現場で無垢材である床材を配置する前に、均熱シートの小根太の上面に位置する部分の全部または一部を除去する作業を行う。予め小根太の部分において均熱シートが除去されている小根太付き温水マットを用いることもできる。
【0016】
そして、少なくとも均熱シートを除去されることにより露出した小根太の表面領域に接着剤を塗布して、無垢材である床材を貼着する。接着剤による固定に加えて、床材の実部から小根太に向けて釘やステープルのような固定具を打ち込むこともできる。
【0017】
なお、本発明において、小根太の材料には、無垢材、合板、木質繊維板等が挙げられる。また、小根太の表面側、すなわち無垢材である床材の裏面に接着接合する面は、無垢材と同等の木材面であることが望ましく、それにより、接着剤による両者間の接着力を一層高めることができ、床材に寸法変化が生じるのを確実に抑制することができる。
【0018】
断熱材であるマット本体の材料には、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピリン樹脂等の一般に断熱材または保温材として用いられている合成樹脂発泡体が挙げられる。これらは単層で使用してもよく、適宜組み合わせて使用してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無垢材である床材を小根太付き温水マットの表面に固定するようにした床暖房構造において、施工を簡素化しながら、床暖房の使用における床材の反り、収縮等の動きを抑制できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態により説明する。図1は本発明による無垢床材を表面材に持つ床断熱構造をその施工手順と共に説明する図であり、図2は小根太付き温水マットの一例を均熱シートの除去態様と共に示す図である。
【0021】
図1aに示すように、小根太付き温水マット10は、例えば発泡樹脂製である断熱材からなるマット本体11を備え、その一部には切り欠き12が形成され、そこにマット本体11と同じ厚さの木製の小根太13が所定の間隔で埋め込まれている。小根太13は、小根太付き温水マット10の上に荷重がかかったときに、局所的に沈み込むのを防止すると共に、表面材である床材を固定するのにも用いられる。
【0022】
マット本体11は表面には蛇行しながら連続する凹溝14が形成されており、該凹溝14内には、温水パイプ15が埋め込まれている。図示しない温水供給源から温水パイプ15に温水が送給され、その温水が温水パイプ15を循環する。さらに、マット本体11と小根太13の全面を覆うようにして、アルミ箔のような均熱シート16が一体に積層されており、温水パイプ15を循環する温水からの熱が小根太付き温水マット10の全表面に伝達するようにしている。均熱シート16がアルミ箔の場合、厚さは通常80〜100μm程度である。
【0023】
無垢床材を表面材に持つ床暖房構造を施工するに当たっては、図1bに示すように、最初に、適宜の床下地20の上に前記した小根太付き温水マット10を固定する。図示の例では、床下地20は、根太21とその間に配置した発泡樹脂製の断熱材22で構成されており、該床下地20の上に捨て貼り合板23を敷き詰め、その上に、小根太付き温水マット10を釘打ち等により固定している。
【0024】
小根太付き温水マット10を固定した後、小根太付き温水マット10の表面に積層した均熱マット16のうち、小根太13の表面に接している部分を除去する。それにより、小根太13の表面領域13Aは露出した状態となる。その状態で、小根太付き温水マット10の表面に接着剤を塗布する。それにより、小根太13の露出した表面領域13Aには接着剤が直接塗布された状態となる。
【0025】
その状態で、作業者は、図1cに示すように、小根太付き温水マット10の上から、オーク、バーチ、ビーチ等の樹種の無垢材からなる床材30を、小根太13の方向に直交するようにして貼り付ける。小根太13の間隔は通常303mmとなっているので、無垢床材30の長さ寸法は、そのほぼ整数倍に設定するのが好ましい。
【0026】
貼り付けた無垢の床材30の裏面は、均熱シート16との間の接着に加えて、小根太13の露出した表面と接着剤層31を介して直接接着接合することになり、強固な接着が得られる。そのために、床暖房として使用するときに生じる無垢材である床材30の水分および熱による寸法変化を確実に抑制することが可能となり、長時間にわたって温水床暖房の使用をしても、無垢床材30の寸法変化により床材間に隙間が生じるのを確実に抑制することができる。接着剤による固定に加えて、釘やステープルを用いて無垢床材30の実部分を小根太13に留め付けるようにしてもよい。
【0027】
小根太13の表面領域から断熱シート16を除去する態様に制限はなく、必要な接着強度が得られることを条件に任意である。図2は小根太付き温水マット10の一例を断熱シート16の異なった除去態様と共に示している。この小根太付き温水マット10では、マット本体11に多数本の小根太13・・が互い違いとなるように埋め込まれており、マット本体11の表面には、その間を蛇行しながら温水パイプ15が走っている。表面側の全面に均熱シート16が貼着されており、図で一番上の小根太13aの場合には、その表面領域のほぼすべてにおいて均熱シート16が除去された領域13Aとされている。
【0028】
次の段の小根太13bの場合には、小根太13bの幅方向の中央部においてのみ小根太13bの全長にわたって均熱シート16が除去された領域13Aとされている。その下の2つの小根太13cおよび13dの場合には、長手方向に断続的に均熱シート16のされた領域13Aが形成されている。
【0029】
施工する無垢床材を表面材に持つ床断熱構造において、上記した除去態様のいずれか1種でもって小根太13の表面側の均熱シート16の除去を行ってもよく、床暖房としての使用時間が長い領域と、比較して短い領域とで、異なった除去形態を選択することもできる。
【0030】
次ぎに、本発明者らが行った試験結果を示す。試験には、当初含水率10〜13%のナラ無垢材から切り出した無垢床材を用いた。無垢床材の寸法は、厚さ9mm×幅75mm×長さ900mmである。図1で説明した構成の小根太付き温水マットを床下地の上に敷設した試験場を2つ用意した。試験場1は本発明による床暖房構造に相当する場であり、小根太の表面に位置する均熱シートをすべて除去した。試験場2は比較例としての床暖房構造であり、そのような均熱シートの除去を行わない場である。
【0031】
双方の試験場1,2において、小根太付き温水マットの全面にウレタン系接着剤を15g/尺の量で塗布した後、長手方向と短手方向とを密着させて多数本の前記無垢床材を貼り付け固定した。
【0032】
接着剤の硬化後に、温水パイプに1100時間の連続通湯を行い、無垢床材間に発生する隙間の変化量をサイド側とエンド側で測定した。試験場1での無垢床材のサイド側での隙間の変化量は初期0mmに対して0.7〜1.6mmの範囲、エンド側での隙間の変化量は初期0mmに対して0〜0.4mmの範囲でのバラツキであった。一方、試験場2での無垢床材のサイド側での隙間の変化量は初期0mmに対して0.2〜2.4mmの範囲、エンド側での隙間の変化量は初期0mmに対して0.1〜1.3mmの範囲でのバラツキであった。
【0033】
このことから、本発明による無垢床材を表面材に持つ床暖房構造では、各無垢床材の寸法変化が抑制されて曲がりが少なく、そのために、均熱シートの除去を行わない場合と比較して、長時間使用後の無垢床材間に生じる隙間が発生するのを効果的に抑制できることが示される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による無垢床材を表面材に持つ床断熱構造をその施工手順と共に説明する図。
【図2】小根太付き温水マットの一例を均熱シートの除去態様と共に示す図。
【符号の説明】
【0035】
10…小根太付き温水マット、11…マット本体、12…切り欠き、13…小根太、13A…小根太の表面が露出している部分、14…凹溝、15…温水パイプ、16…均熱シート、20…床下地、21…根太、22…断熱材、23…捨て貼り合板、30…無垢材である床材、31…接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地の上に配置した小根太付き温水マットの表面に床材を固定した構造の床暖房構造であって、
前記小根太付き温水マットは、断熱材であるマット本体と、マット本体に形成した凹溝内に配設した温水パイプと、マット本体に形成した切り欠き内に埋め込まれた小根太と、温水マットの表面に積層した均熱シートとを含み、該均熱シートは小根太の表面部分の全部または一部で除去されている小根太付き温水マットであり、
前記床材は無垢材であり、かつ、床材の裏面が小根太付き温水マットの均熱シートが除去されることにより露出している小根太の表面部分に対して接着剤により貼着されていることを特徴とする無垢床材を表面材に持つ床暖房構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−204986(P2007−204986A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23458(P2006−23458)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】