説明

無指向性アンテナ及びその製造方法

【課題】 平面ループコイル及び2つの立体ループコイルの一部を積層パターンにより形成した2枚の基板と、各基板に夫々形成された積層パターン間を接続する接続手段と、を備えることにより、軸が直交した無指向性アンテナを容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】 この無指向性アンテナ300は、平面ループコイル31及び立体ループコイル32、34の一部を積層パターンにより形成した上面基板40と、立体ループコイル32、34の他の一部を積層パターンにより形成した下面基板54と、上面基板40及び下面基板54に夫々形成された積層パターン間を接続するコネクタ42、44、46、53と、上面基板40及び下面基板54との間に配置した磁心部材47と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無指向性アンテナ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、非接触情報記録媒体の向きや姿勢に関わりなく、非接触情報記録媒体に記録された記録データを電波として受信可能とする無指向性アンテナ及びこの無指向性アンテナの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードと呼ばれる新しい情報記録媒体が、市場に広く出回っている。ICカードとは、クレジットカード、銀行カード、ポイントカード等のカード状あるいはシート状の形状を備え、カード内、或いはカード上にICが組み込まれている読み書き可能な記録媒体を総称した名称である。特に、非接触型ICカードは、例えば、鉄道等の交通機関の駅構内への入退場時に使用される定期券、プリペイドカードとして多く使用されている。また、非接触型ICカードの一種として、構造的には非接触型ICカードと全く同様であり、且つ識別番号及び履歴情報等に関する管理情報を記録したRFタグ(Radio Frequency tag)があり、このRFタグの一種として郵便物あるいは荷物等を分類管理するために使用される非接触型RFタグ(以下、単にRFタグと記す)が知られている。
【0003】
従来例えばRFタグを取り付けた荷物をベルトコンベアにより搬送しながら、リーダライタにより管理情報を読み書きする場合、リーダライタのアンテナが決まった位置に固定されているときは、ベルトコンベアによる搬送開始前に荷物に取り付けられたRFタグの位置を確認してRFタグがリーダライタのアンテナ側に向くように、人手により予め荷物の向きを設定する必要があった。また、このような煩雑な事前操作を行わずに管理情報を読み書きすることを可能ならしめようとする場合には、RFタグに対する情報の読み書きに最も適すると予想される他の方向にもリーダライタのアンテナを複数設置する必要があった。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1の従来技術には、移動する応答器(ICカード)に対して複数の質問器(リーダライタ等)が同一信号を無線通信する質問器システムであって、複数の質問器をアンテナの通信可能領域を重複させて設けて通信可能領域を拡大し、各質問器のアンテナによる送受信を同期させることにより、質問器に他の質問器からの送信信号が受信されるといった干渉を防止する質問器システムについて開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術や、ベルトコンベアにより搬送しながらリーダライタにより管理情報を読み書きする従来方法にあっては、複数のアンテナを各方向に設置しなければならず、アンテナの設置個数の増大によるコスト増、広い設置スペースの確保という問題の他に、RFタグを取り付けた物品を全てのアンテナの位置まで必ず搬送しなければならないために搬送距離が長大化するといった問題がある。
【0005】
この問題を解決する一つの手段として、複数のアンテナを一体化して無指向性アンテナを構成することが考えられる。しかし、無指向性アンテナは複数のループコイルにより構成されており、夫々のループコイルを立体的に構成する必要がある。これを実現する一つの方法として、線材を人手によりコアに巻いてループコイルを製造することが考えられるが、熟練の技が必要となるばかりでなく、ループコイルの特性にばらつきが発生する虞があり、且つ大量生産に向かない。他の方法として、コイル巻き専用の機械によりコイルを高速に巻くことで大量生産が可能になり、特性の揃ったものを作ることができるが、設備投資に多大の資金が必要となる。
【0006】
このような課題を解決するために特許文献2には、渦巻状の導体パターンを有する平板状のプリントコイルを複数積層し、これらのプリントコイルの導体パターンの中心部を貫通するコアを有すると共に、各プリントコイルの導体パターンを電気的に接続するプリントコイル形ラインフィルタであって、この平板状のプリントコイルを上部部品実装板と下部部品実装板で挟むと共に、これら上部部品実装板と下部部品実装板にフィルタ回路用の電子部品を実装したプリントコイルの製造方法について開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示されている従来技術は、ループコイルをプリントパターンにより形成することで、線材を巻きつける手間は省けるが、複数のプリントコイルをコアに貫通して積層しなければならず、組み立てに多くの時間を必要とし、製造コストが高くなるといった問題がある。
【特許文献1】特開2003−283367公報
【特許文献2】特開平6−349647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑み、X,Y及びZ軸平面のうちの2つの軸平面にそれぞれ配置された立体ループコイルと、1つの軸平面に沿って配置された平面ループコイルを一体形成して1つのアンテナブロックを構成することにより、少ない面積で全方位のRFタグの電波を受信可能とした無指向性アンテナを提供することを目的とする。
また、他の目的は、平面ループコイル及び2つの立体ループコイルの一部を積層パターンにより形成した2枚の基板と、各基板に夫々形成された積層パターン間を接続する接続手段と、を備えることにより、軸が直交した無指向性アンテナを容易に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、互いに直交し合うX軸平面、Y軸平面及びZ軸平面のうちの2つの軸平面に対して夫々直交する軸を有した2つの立体ループコイルと、他の1つの軸平面と平行に配置された平面ループコイルと、を備えた無指向性アンテナであって、前記2つの立体ループコイルの各一部分及び前記平面ループコイルの全部を形成する第1の積層パターンを備えた第1の基板と、前記2つの立体ループコイルの他の各一部分を形成する第2の積層パターンを備えた第2の基板と、前記第1の積層パターンと第2の積層パターンとの間を接続する接続手段と、を備え、前記接続手段により前記第1の積層パターンと前記第2の積層パターンとの間を接続することにより、前記2つの立体ループコイルが構成されることを特徴とする。
本発明の無指向性アンテナの特徴は、X,Y,Z軸平面のうちの2つの軸平面に立体ループコイルを配置し、残りの一つの軸平面に沿って平面ループコイルを配置して、各立体ループコイルの軸が互いに直交するように構成し、平面ループコイルをその軸に対して平行に配置するために、2枚の基板に各軸平面の立体ループコイルのパターンを形成し、その2枚の基板を接続手段により接続することにより、軸が直交した立体ループコイルを構成するものである。
【0009】
請求項2は、前記第1の基板と前記第2の基板とは、対向配置された状態で前記接続手段により接続されることを特徴とする。
本発明の無指向性アンテナを構成するためには、2枚の基板にループコイルのパターンが形成されているので、可能な限り基板を対向させて配置する必要がある。その状態で接続手段により接続することにより、より完全な立体ループコイルを構成することができる。
【0010】
請求項3は、前記接続手段は、コネクタ又は線材により構成されていることを特徴とする。
2枚の基板間を接続するためには、コネクタと線材による方法がある。コネクタの場合は、2枚の基板を組み立てることが容易であり、線材による方法は、組み立てには手間がかかるが、接続の信頼性の点で優れている。
【0011】
請求項4は、前記第1の基板と前記第2の基板との間に磁心部材を配置したことを特徴とする。
空芯のループコイルに電流を流すと磁界が発生する。この磁界は電流とループコイルの巻き数により一義的に決定される。電流と巻き数が決定されている場合、できるだけ磁界を強めるためには、磁界内に磁界を強める磁心部材を配置する必要がある。
【0012】
請求項5は、前記磁心部材は、フェライト、純鉄、珪素鋼、鉄・ニッケル合金又はダストコアであることを特徴とする。
磁界を強める磁心部材は、比透磁率が大きくヒステリシス現象の小さいものが良い。フェライトは高周波における鉄損が少なく、最大比透磁率や飽和特性が良い。また純鉄は、安価で比透磁率が大きい。また珪素鋼は、純鉄に比べて抵抗率、比透磁率が共に増加する。また鉄・ニッケル合金は、できるだけ大きい透磁率の磁心が必要なときに使用される。またダストコアは、高周波における比透磁率の減少を防ぐ。
【0013】
請求項6は、互いに直交し合うX軸平面、Y軸平面及びZ軸平面のうちの2つの軸平面に対して夫々直交する軸を有した2つの立体ループコイルの各一部分及び他の1つの軸平面と平行に配置された平面ループコイルの全部を形成する第1の積層パターンを備えた第1の基板と、前記2つの立体ループコイルの他の各一部分を形成する第2の積層パターンを備えた第2の基板と、前記第1の積層パターンと前記第2の積層パターンとの間を接続するコネクタと、を備えた無指向性アンテナの製造方法であって、前記第1の基板と前記第2の基板に前記コネクタを取り付け、前記第1の基板と前記第2の基板とは、対向配置された状態で前記コネクタにより嵌合されることを特徴とする。
本発明の無指向性アンテナの製造方法は、立体ループコイルの一部のパターン及び平面ループコイルを形成した第1の基板と、立体ループコイルの他の一部のパターンを形成した第2の基板と、コネクタを備え、このコネクタを各基板に半田付けして、基板同士が対向配置されるようにコネクタを嵌合することにより実現することができる。
【0014】
請求項7は、互いに直交し合うX軸平面、Y軸平面及びZ軸平面のうちの2つの軸平面に対して夫々直交する軸を有した2つの立体ループコイルの各一部分及び他の1つの軸平面と平行に配置された平面ループコイルの全部を形成する第1の積層パターンを備えた第1の基板と、前記2つの立体ループコイルの他の各一部分を形成する第2の積層パターンを備えた第2の基板と、前記第1の積層パターンと前記第2の積層パターンとの間を接続する線材と、前記第1の基板と前記第2の基板間の間隔を保持する保持部材と、を備えた無指向性アンテナの製造方法であって、前記第1の基板と前記第2の基板同士が対向配置されるように前記保持部材により保持し、前記第1の基板と前記第2の基板間とは、対向配置された状態で前記線材により接続されることを特徴とする。
本発明の無指向性アンテナの製造方法は、請求項6のコネクタに代えて線材により第1の基板と第2の基板間を接続するものである。
【0015】
請求項8は、前記コネクタを嵌合する前、又は前記線材を接続する前に、磁心部材を前記第1の基板と前記第2の基板間に配置することを特徴とする。
コネクタを備えた基板の場合は、コネクタを嵌合する前に磁心部材を配置しておき、その状態でコネクタを嵌合する。線材により接続する基板の場合は、線材を接続する前に磁心部材を配置しておき、その状態で線材を半田付けする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、X,Y,Z軸平面のうちの2つの軸平面に立体ループコイルを配置し、残りの軸平面に沿って平面ループコイルを配置して、各立体ループコイルの軸が互いに直交するように構成し、平面ループコイルをその軸に対して平行に配置するために、2枚の基板に各軸平面の立体ループコイルのパターンを形成し、その2枚の基板を接続手段により接続するので、簡単な構成で容易に立体ループコイルを構成することができると共に、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、一般的なリーダライタの構成を示すブロック図である。このリーダライタ100は、リーダライタ100との間でデータの授受を行ってシステム全体を制御するPC50によって制御される。リーダライタ100は、外部のPC50とのデータの通信プロトコルを司る送受信装置1と、リーダライタ100全体の動作を制御する制御装置2と、制御装置2を動作させる手順を記録したファームウェアと読み取ったデータを格納するメモリ装置3と、制御装置2からのデータを搬送波に乗せて変調する変調器4と、操作コマンドを入力する入力装置5と、制御装置2により制御された情報を表示する表示装置6と、制御装置2からの交流信号である電力供給用信号と変調器4からの書き込みコマンドを電力増幅する電力増幅器7と、ループアンテナ9から受信した搬送波から2値化データに変換する検波復調器8と、図示しないICカード(RFタグ)との電力用搬送波とデータの授受をするループアンテナ9とを備えて構成されている。
【0018】
次に、本構成によるリーダライタ100の動作を説明する前に、ICカード(RFタグ)(非接触情報記録媒体)の構成を先に説明しておく。図2は、ICカード(RFタグ)の構成を示すブロック図である。このICカード(RFタグ)200は、リーダライタ100からの電力用搬送波によりデータの授受をするアンテナ20と、書き込みコマンド読み出しコマンドを生成する送受信回路21と、アンテナ20からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する電力生成回路22と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置23と、制御回路26からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器24と、送受信回路21からの搬送波データから2値化データに変換する検波器25と、ICカード(RFタグ)200の全体の動作を制御する制御回路26から構成されている。
【0019】
次に、図1と図2を併せて参照してそれぞれ単独の動作について説明する。リーダライタ100は、図示しない電源が入れられると制御装置2のイニシャル動作後、メモリ装置3に記憶されたプログラムに従い動作を開始する。まず、初期化が行われる。次に、制御装置2は、ICカード(RFタグ)200に供給する電力供給用信号と、ポーリング信号を交互に電力増幅器7から送信する。その信号は、ループアンテナ9から電磁波として外部に放射される。次に、ICカード(RFタグ)200がリーダライタ100に近接すると、アンテナ20が電力供給用信号を受信し、電力生成回路22によりその搬送波を整流して直流電力に変換して、RFタグ内の全ての回路に供給する。電力を供給されて制御回路26が駆動すると、メモリ装置23に格納されたプログラムに従って、制御を開始する。
【0020】
次に、制御回路26は、まず送受信回路21からコマンドを検波器25で復調して2値化信号に変換し、そのコマンドを解析する。その結果自分が呼び出されていることを認識すると、レスポンスを変調器24により変調して送受信回路21を介してアンテナ20から送信する。このレスポンスをリーダライタ100がループアンテナ9で受信して、検波復調器8で2値化コードに変換し、制御回路2により解析してICカード(RFタグ)200が規格に合致したICカード(RFタグ)であると認識する。それにより、以後リーダライタ100とICカード(RFタグ)200の間でポーリングが行われる。
【0021】
図3は本発明の無指向性アンテナの各軸平面のループコイルを分解し、ICカードの向きと磁力線の関係を説明する図である。尚、説明の都合上、図3(a)の向きをZ軸平面、図3(b)の向きをY軸平面、図3(c)の向きをX軸平面と呼ぶ。まずZ軸平面では、ループコイル31が平面上に構成されていると仮定すると、ループコイル31に対して平行に配置されたICカード200aに対して磁力線30が略直角に交差するようになる。またY軸平面では、ループコイル32はZ軸平面に対して直交しているので、ICカード200aに対して直交して配置されたICカード200bに対して磁力線33が略直角に交差するようになる。またX軸平面では、ループコイル34はZ軸平面に対して直交して構成され、且つY軸平面に対して90度回転しているので、ICカード200bに対して90度回転したICカード200cに対して磁力線35が略直角に交差するようになる。即ち、図3(d)のように、X,Y,Z軸平面のX,Y軸平面に立体ループコイル34、32を配置し、残りのZ軸平面に沿って平面ループコイル31を配置する。そして各立体ループコイル34、32の軸が互いに直交するように構成し、平面ループコイル31をその軸に対して平行に配置するので、ICカード200の向きに関わらず、このICカード200に記録された情報を電波として受信することができる。
【0022】
即ち、X,Y及びZ軸平面のループコイル34、32、31を一体に構成して無指向性アンテナ300を構成すると、例えば、ICカード200aに対してはループコイル31により電波の授受が行なわれ、ICカード200bに対してはループコイル32により電波の授受が行なわれ、ICカード200cに対してはループコイル34により電波の授受が行なわれことになる。従って、ICカード200がどのような方向に配置されても、無指向性アンテナ40により電波を授受することができる。尚、各ICカードに磁力線が直角に交差した場合が、最も起磁力が大きくなり、効率よく電波の授受が行なわれるが、所定の角度になっても電波の授受は可能である。また、ICカードが傾いた場合、異なる2つの軸平面のループコイルからの磁力線がICカードと交差することがあるが、この場合は、双方のループコイルから情報を受信してOR処理することが行われる。
【0023】
図4は本発明の第1の実施形態に係る無指向性アンテナの組み立て完成図を三角法により表示した図である。同じ構成要素には図3と同じ参照番号を付して説明する。図4(a)は上面図、図4(b)は平面図、図4(c)は側面図である。この無指向性アンテナ300は、平面ループコイル31及び立体ループコイル32、34の各一部を積層パターンにより形成した上面基板(第1の基板)40と、立体ループコイル32、34の他の各一部分を積層パターンにより形成した下面基板(第2の基板)54と、上面基板40及び下面基板54に夫々形成された積層パターン間を接続するコネクタ(接続手段)42、44、46、53と、上面基板40及び下面基板54との間に配置した磁心部材47と、を備えて構成される。尚、コネクタ42、44、46、53は上面基板40(符号a)及び下面基板54(符号b)に半田付けされて分離する構成である。また、磁心部材としてフェライト、純鉄、珪素鋼、鉄・ニッケル合金又はダストコアが使用される。
【0024】
次に、本実施形態の無指向性アンテナ300の構成について、更に詳細に説明する。この例では、上面基板40に平面ループコイル31及び立体ループコイル32、34のパターンが形成されている。即ち、平面ループコイル31はパターン41が上面基板40の周囲を周回するように形成されている。また、立体ループコイル32は、パターン45(実線)とパターン49(破線)により構成され、夫々のパターンは例えば2層基板の各層に個別に形成される。上面基板40と下面基板54はコネクタ46と44により接続される。また、立体ループコイル34は、パターン48(一点鎖線)とパターン52(二点鎖線)により構成され、夫々のパターンは例えば2層基板の各層に個別に形成される。上面基板40と下面基板54はコネクタ42と53により接続される。例えば、立体ループコイル34のパターンの回路は、まず、始点を上面基板40のコネクタ46のaとすると、「上面基板40のコネクタ46のa」−「パターン45」−「コネクタ44のb」−「コネクタ44の接点」−「下面基板54のb」−「パターン49」−「コネクタ46のc」−「コネクタ46の接点」−「上面基板40のc」により、立体ループコイル34の1ターンが構成される。以下、同様にしてこの例ではコネクタ46のaからコネクタ44のfまでで、3ターンの立体ループコイルが構成される。同様にして、立体ループコイル32もコネクタ42のAからコネクタ53のFまでで、3ターンの立体ループコイルが構成される。また、磁心部材47は、フェライト、純鉄、珪素鋼、鉄・ニッケル合金又はダストコア等で構成される。
【0025】
以上のように、本発明では、上面基板40にコネクタ41a、44a、46a、53aが半田接続され、下面基板54にコネクタ41b、44b、46b、53bを半田接続することにより、上面基板40と下面基板54を対向配置するように各コネクタを接続するだけで、立体ループコイル32、34が電気的に接続されて3ターンの立体ループコイルを簡単に実現することができる。そして予め基板を製作しておき、汎用のコネクタを実装することにより、大量生産を容易に行うことができ、部品コストを低減することができる。また、上面基板40と下面基板54の間に挟むように磁心部材47を配置することにより、立体ループコイルから発生する磁界を強めて、効率よくICタグ200との交信を行うことができる。尚、この磁心部材47は必ず必要なものではなく、無くても構わない。
【0026】
図5は本発明の第1の実施形態に係る無指向性アンテナを上下に分離したときの斜視図である。同じ構成要素には図4と同じ参照番号を付して説明する。尚、磁心部材47と一部のコネクタは図示を省略している。この図では、コネクタ46はプラグ側46aとソケット側46bに分離する構成である。即ち、プラグ側46aには接続ピン60があり、その端部が上面基板40のスルーホール57に挿入されて半田付けされる。また、ソケット側46bには、ソケットピン61があり、その端部が下面基板54の図示しないスルーホールに挿入されて半田付けされる。従って、図示しない磁心部材47を交換する場合は、コネクタの嵌合を解除するだけで容易に行うことができる。
【0027】
図6は本発明の第2の実施形態に係る無指向性アンテナの組み立て完成図を三角法により表示した図である。同じ構成要素には図4と同じ参照番号を付して説明する。図6(a)は上面図、図6(b)は平面図、図6(c)は側面図である。この無指向性アンテナ310が図4と異なる点は、コネクタの代わりに線材66を使用した点である。そして、上面基板40と下面基板54の間隔を保持するためにスペーサ(保持部材)64を4隅に備えた点である。尚、スペーサ64はネジ62とナット65により上面基板40と下面基板54の間隔を保持しながら固定する構成である。また、線材66は図4のコネクタのスルーホールを利用して半田付けされる。これにより、基板を共通化することができる。
【0028】
図7は本発明の無指向性アンテナの各軸平面を模式的に表した図である。図7(a)は模式図であり、図7(b)は斜視図である。図7(a)では、平面ループコイル31と、磁心部材47に巻回されたY軸平面の立体ループコイル32と、磁心部材47に巻回されたX軸平面の立体ループコイル34と、を備えて無指向性アンテナ300を構成する。図7(a)のような無指向性アンテナ300を一体的に構成すると、図7(b)のようになる。磁心部材47の断面が矩形になるように構成し、この磁心部材47に表面が絶縁された線材を図のように巻回することにより、図7(a)の機能を一体的に構成して実現することができる。
【0029】
図8は本発明の無指向性アンテナを構成する上面基板と下面基板のパターンの一例を示す透視図である。図8(a)は上面基板40のパターン図であり、図8(b)は下面基板54のパターン図である。同じ構成要素には図4と同じ参照番号を付して説明する。図8(a)のパターンから解るとおり、パターン48aは接続部AからBに形成され、パターン48bは接続部CからDに形成され、パターン48cは接続部EからFに形成されている。また、パターン45aはパターン48a、b、cと直交するように接続部aからbに形成され、パターン45bはパターン48a、b、cと直交するように接続部cからdに形成され、パターン45cはパターン48a、b、cと直交するように接続部eからfに形成される。尚、パターン45と48は例えばパターン45を基板の表層に形成し、パターン48を基板の2層目に形成することにより、交差するパターンを同一の基板に形成することができる。
また図8(b)のパターンから解るとおり、パターン52aは接続部BからCに斜めに形成され、パターン52bは接続部DからEに斜めに形成されている。また、パターン49aはパターン52a、bと交差するように接続部bからcに斜めに形成され、パターン49bはパターン52a、bと交差するように接続部dからeに形成される。尚、パターン49と52は例えばパターン49を基板の表層に形成し、パターン52を基板の2層目に形成することにより、交差するパターンを同一の基板に形成することができる。
【0030】
以上の通り本発明によれば、X,Y,Z軸平面のX,Y軸平面に立体ループコイル34、32を配置し、残りのZ軸平面に沿って平面ループコイル31を配置して、各立体ループコイル34、32の軸が互いに直交するように構成し、平面ループコイル31をその軸に対して平行に配置するために、上面基板40と下面基板54に各軸平面の立体ループコイルのパターンを形成し、その2枚の基板を接続手段により接続するので、簡単な構成で容易に立体ループコイルを構成することができる。
また、上面基板40と下面基板54は、各基板同士が対向配置されるように接続手段により接続されるので、より完全な立体ループコイルを構成することができる。
また、接続手段は、コネクタ又は線材により構成されているので、組み立て性を重視するか接続の信頼性を重視するかで選択することができる。
また、上面基板40と下面基板54との間に磁心部材47を配置したので、弱い電流でも磁界を強めることができる。
【0031】
また、磁心部材47は、フェライト、純鉄、珪素鋼、鉄・ニッケル合金又はダストコアであるので、使用目的により選択することができる。
また、立体ループコイルの一部のパターン及び平面ループコイル31を形成した上面基板40と、立体ループコイルの他の一部のパターンを形成した下面基板54と、コネクタとを備え、このコネクタを各基板に半田付けして、基板同士が対向配置されるようにコネクタを嵌合するので、製造方法が簡単で製造コストを安くすることができる。
また、コネクタに代えて線材により上面基板40と下面基板54間を接続するので、接続の信頼性を高めることができる。
また、コネクタを嵌合する前、又は線材を接続する前に、磁心部材47を上面基板40と下面基板54間に配置するので、磁心部材47を配置することを忘れる不具合を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一般的なリーダライタの構成を示すブロック図である。
【図2】ICカード(RFタグ)の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の無指向性アンテナの各軸平面のループコイルを分解し、ICカードの向きと磁力線の関係を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る無指向性アンテナの組み立て完成図を三角法により表示した図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る無指向性アンテナを上下に分離したときの斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る無指向性アンテナの組み立て完成図を三角法により表示した図である。
【図7】本発明の無指向性アンテナの各軸平面を模式的に表した模式図及び斜視図である。
【図8】本発明の無指向性アンテナを構成する上面基板と下面基板のパターンの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
31 平面ループコイル、32、34 立体ループコイル、40 上面基板、42、44、46、53 コネクタ、47 磁心部材、54 下面基板、66 線材、300 無指向性アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交し合うX軸平面、Y軸平面及びZ軸平面のうちの2つの軸平面に対して夫々直交する軸を有した2つの立体ループコイルと、他の1つの軸平面と平行に配置された平面ループコイルと、を備えた無指向性アンテナであって、
前記2つの立体ループコイルの各一部分及び前記平面ループコイルの全部を形成する第1の積層パターンを備えた第1の基板と、前記2つの立体ループコイルの他の各一部分を形成する第2の積層パターンを備えた第2の基板と、前記第1の積層パターンと第2の積層パターンとの間を接続する接続手段と、を備え、
前記接続手段により前記第1の積層パターンと前記第2の積層パターンとの間を接続することにより、前記2つの立体ループコイルが構成されることを特徴とする無指向性アンテナ。
【請求項2】
前記第1の基板と前記第2の基板とは、対向配置された状態で前記接続手段により接続されることを特徴とする請求項1に記載の無指向性アンテナ。
【請求項3】
前記接続手段は、コネクタ又は線材により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無指向性アンテナ。
【請求項4】
前記第1の基板と前記第2の基板との間に磁心部材を配置したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の無指向性アンテナ。
【請求項5】
前記磁心部材は、フェライト、純鉄、珪素鋼、鉄・ニッケル合金又はダストコアであることを特徴とする請求項4に記載の無指向性アンテナ。
【請求項6】
互いに直交し合うX軸平面、Y軸平面及びZ軸平面のうちの2つの軸平面に対して夫々直交する軸を有した2つの立体ループコイルの各一部分及び他の1つの軸平面と平行に配置された平面ループコイルの全部を形成する第1の積層パターンを備えた第1の基板と、前記2つの立体ループコイルの他の各一部分を形成する第2の積層パターンを備えた第2の基板と、前記第1の積層パターンと前記第2の積層パターンとの間を接続するコネクタと、を備えた無指向性アンテナの製造方法であって、
前記第1の基板と前記第2の基板に前記コネクタを取り付け、前記第1の基板と前記第2の基板とは、対向配置された状態で前記コネクタにより嵌合されることを特徴とする無指向性アンテナの製造方法。
【請求項7】
互いに直交し合うX軸平面、Y軸平面及びZ軸平面のうちの2つの軸平面に対して夫々直交する軸を有した2つの立体ループコイルの各一部分及び他の1つの軸平面と平行に配置された平面ループコイルの全部を形成する第1の積層パターンを備えた第1の基板と、前記2つの立体ループコイルの他の各一部分を形成する第2の積層パターンを備えた第2の基板と、前記第1の積層パターンと前記第2の積層パターンとの間を接続する線材と、前記第1の基板と前記第2の基板間の間隔を保持する保持部材と、を備えた無指向性アンテナの製造方法であって、
前記第1の基板と前記第2の基板同士が対向配置されるように前記保持部材により保持し、前記第1の基板と前記第2の基板間とは、対向配置された状態で前記線材により接続されることを特徴とする無指向性アンテナの製造方法。
【請求項8】
前記コネクタを嵌合する前、又は前記線材を接続する前に、磁心部材を前記第1の基板と前記第2の基板間に配置することを特徴とする請求項6又は7に記載の無指向性アンテナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−214927(P2007−214927A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33088(P2006−33088)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】