無線中継装置及び無線通信方法
【課題】走査受信(スキャン)や間欠受信中の無線通信端末を呼出す際に、スリープ中に送信すると送話の初めの部分が欠落する頭切れとなる。遅延送信(予備送信)により連続受信動作にした状態で変調信号を送信する方法では、車載型や固定型無線通信機を含む遅延送信の必要がない相手方に対しても相応の時間を要するので、迅速な通信が阻害される。それらの不具合を解消可能な無線中継装置及び方法を提供する。
【解決手段】無線中継装置に、相手方無線通信端末の受信モード情報を記憶したデータベースや通信履歴メモリを備え、通信履歴メモリやデータベースに基づき相手方が間欠受信中であることを判断した場合にのみ遅延送信を行うように構成する。
【解決手段】無線中継装置に、相手方無線通信端末の受信モード情報を記憶したデータベースや通信履歴メモリを備え、通信履歴メモリやデータベースに基づき相手方が間欠受信中であることを判断した場合にのみ遅延送信を行うように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線中継装置及び無線通信方法に関し、詳細には、種々異なるシーケンスの間欠受信を行う無線通信システムにおいて効率的運用が可能な無線中継装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線チャネル信号の着信を待受ける無線受信機、特に、携帯型移動無線受信機では、内蔵するバッテリー(蓄電池)の消耗を軽減し、一度の充電によって長時間の受信動作を行う手段として、短時間の受信動作(Wake:ウェイク)と、比較的長時間にわたって受信部への電力供給を遮断する非受信動作(Sleep:スリープ)と、を一定周期で繰返すバッテリーセーブ(以下、間欠受信とも云う)を行うことが多い。具体的には、短時間のウェイク期間に無線信号着信の有無を検出するキャリアセンスを行い、ウェイク期間に着信を検出すると以後しばらく連続受信を行って自局に対する発呼であるか否かを判断するが、自局に関連するものではない場合は再びスリープ状態に移行する。
このような間欠受信は、デジタル無線システムにおいても採用されており、受信されたデジタル信号の同期信号を捕捉した後に、音声/データなどの信号を受信することになるので、アナログ無線システムにおける間欠受信動作に比べて、その処理が複雑となる。
【0003】
特許文献1には、デジタル無線システムにおける間欠受信に対応する手段として、通信が失敗した際にリカバーが可能なように、プリアンブル信号を可変長とする技術が開示されている。即ち、特許文献1の技術は、プリアンブル信号可変手段を備え、ウェイク期間のキャリア判定時に「電波あり」と判断したが送信できなかった場合等において、初期同期合わせ動作を繰り返しても通信が正常に終了しなかったときは、プリアンブル信号可変手段により、制御手段が決めた長さにプリアンブル信号を変更するように構成したものである。しかし、この方法では、デジタル無線システムのように同期処理を必要とする場合、通信の初期部分の復調ができず、頭切れ(話頭切断)が生じることがあった。
例えば、同期信号を捕捉しなければデータを受信(復号化)することができないデジタル無線システムでは、一般的に送信開始時に同期タイミング検出用のプリアンブル信号が付され、それに続いてフレーム同期信号とともに伝送すべきデータが送信されるので、間欠受信動作の際、キャリアセンスによる着信検出が成功しても、タイミングによってはウェイク期間初期の同期ワード検出が出来ない場合は、その後に続く音声データや情報データを復調することができないので会話の初期部分が欠落する頭切れ(話頭切断)が生じ明瞭な通話が阻害される。
【0004】
このような不具合を解消する手段として、例えば、特許文献2には、通信相手方受信機が間欠受信を行っているか否かを判断する手段を備え、間欠受信中の相手方に対して送信する場合は、プリアンブルP、フレーム同期信号FS及び相手局側識別情報等の制御情報信号CCH(Control CHannel)
を含む同期シーケンスQの繰り返し周期を通常の場合に比べて長くする方法が提案されている。
図10乃至図15は、特許文献2に開示された図である。以下、これらの図面を使用して簡単に説明する。
図10は、特許文献2記載の従来の無線通信装置の構成例を示すブロック図であり、アンテナ110と、アンテナ接続を送信部/受信部に切替える送受信切替部111と、送信部112、送信用ベースバンド処理部113、アナログ・デジタル変換部(A/D)114、マイクロホン115を含む送信ブロックと、受信部116、受信用ベースバンド処理部117、デジタル・アナログ変換部(D/A)118、スピーカ119を含む受信ブロックとを備えている。更に、上記各ブロックを制御するために、コントローラ120を備え、その内部にはCPU121、入出力インターフェース(I/O)122、書換可能メモリ(RAM)123、書込専用メモリ(ROM)124を含んでいる。また、コントローラ120には、計時部125、表示部126、操作部127、電源制御部128、電源部129が付加されている。ここで、電源部129は例えばバッテリー(蓄電池)と充電用回路を含んでいる。その他、以下に説明する処理や動作を行うように、ROM124には各種のプログラムやデータが記憶され、RAM123には必要に応じて各種のデータが記憶され、且つ、読み出される。
【0005】
今、図11に示す無線通信装置100A乃至100E(構成は図10)のうち、少なくとも間欠受信機能を備えた無線通信装置100Aと100Bが通信を行う場合、他の無線通信装置C乃至Eは、その通信を傍受(受信)することができるとすれば、100A、100B両者の通信状況から間欠受信中か連続受信中であるかの判断が可能である。
一方、図12に示すようにプリアンブルPの長さが、間欠受信モードのスリープ期間より長い場合は、いずれかのウェイク期間においてプリアンブルを受信可能であり、後続するFSとCCHを復調して自局当ての通信であるか否かを判断できる。
そこで、特許文献2記載の発明では、無線通信装置の通信傍受等により通信相手が連続受信中であるか間欠受信中であるかを判断する手段と、相手方が間欠受信中であると判断した場合は、図13(a)乃至(d)に示すように、間欠受信のスリープ期間より長くなるように同期シーケンスQの長さを調整することによって、頭切れを防止している。
図14(a)、(b)、(c)は、特許文献2記載に示された、無線通信装置が間欠受信モードに移行するタイミング図で、通信終了後に予め設定された所定時間が経過したとき間欠受信モードに移行し、スリープとウェイクを所定周期で繰返す様子を示している。
図15は、その処理例を示すフローチャートであるが、上記図10乃至図14を含め、詳細は特許文献2に詳しいので、ここでの説明は省略する。なお、図10乃至図15は、特許文献2の図とは異なる符号を付したが、参照は容易であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−65464号公報
【特許文献2】特開2007−208442公報
【特許文献3】特開平6−152472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように特許文献2記載の方法では、通信相手方が送信終了信号を送信した後の所定時間内(間欠受信に移行するまでの期間)のように限られた期間が連続受信中であると判断できるに留まるので、それ以外においては間欠受信中であるものと仮定して同期シーケンスQを長く設定せざるを得ない。
更には、通信相手方の間欠受信周期が不明であるので、可能性のある最大長の周期にシーケンスQを設定する必要があり、通信効率を悪化させる可能性があった。このような不具合を回避するためには、全ての受信機の間欠受信周期を統一する必要があるが、それは極めて困難であろう。
なお、上述した間欠受信の他にも、周期的にチャネル受信を行うものとして、多数のチャネルを順次走査(スキャン)しながら着信信号の有無を検出する走査受信(スキャンモード)が知られている。このようなスキャンモード中の通信相手を呼出す場合にも、チャネル信号を受信するタイミングに合わせてプリアンブル信号やFS信号を送信する必要がある。更に、スキャンモードにおいても、特定のチャネルを優先的に受信するために、一回のスキャン中に(走査周期中に)優先度の高い特定チャネルを複数回受信するような複雑な走査受信も採用されている。このようなスキャンモード中の相手を呼出す場合にも、同様の問題が発生していた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、通信相手方が間欠受信中や、走査受信中であっても、頭切れ(話頭切断)が発生することなく、迅速に通信が開始できるようにした無線中継装置及び無線通信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の無線中継装置は、中継先無線通信端末を識別する識別情報を送信する機能と間欠受信機能を有する複数の無線通信端末における通信を中継する無線中継装置において、
上記無線通信端末夫々の間欠受信周期を含む受信モード情報をその無線通信端末の識別情報に対応付けて記憶した受信モード情報データベースと、
中継元無線通信端末から送信され受信した信号に含まれる中継先無線通信端末の識別情報と上記受信モード情報データベースとから上記中継先無線通信端末の受信モード情報を取得する手段と、
上記中継元無線通信端末から送信された信号を受信後、上記中継先無線通信端末へ中継すべき情報を含まない信号の予備送信を開始する予備送信手段と、
上記取得した受信モード情報に基づいて、中継すべき情報の送信を上記予備送信の開始から所要時間遅らせる遅延送信手段と、を備えることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の無線中継装置において、無線通信端末の通信履歴を記憶する手段と、上記受信モード情報データベースと上記通信履歴を参照して中継先無線通信端末が間欠受信中であるか連続受信中であるかを判断する手段と、その判断結果に基づいて上記遅延送信手段を起動するか否かを決定する手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、無線通信方法であって、間欠受信機能を有する複数の無線通信端末が無線中継装置を介して通信する無線通信方法において、
中継元無線通信端末が中継先無線通信端末を識別する識別情報を上記無線中継装置に送信する識別情報送信ステップと、上記無線中継装置が上記中継元無線通信端末から送信され受信した信号から上記識別情報を検出する識別情報検出ステップと、上記無線中継装置が、上記無線通信端末夫々の間欠受信周期を含む受信モード情報と上記識別情報と共に記憶した受信モードデータベースと上記検出した識別情報とから、上記中継先無線通信端末の受信モード情報を取得する受信モード情報取得ステップと、上記中継元無線通信端末から送信された信号を受信後、上記中継先無線通信端末へ中継すべき情報を含まない信号の予備送信を開始する予備送信開始ステップと、上記取得した受信モード情報に基づいて、中継すべき情報の送信を上記予備送信の開始から所要時間遅らせる遅延送信開始ステップと、を含むことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の無線通信方法において、無線中継装置が、無線通信端末の通信履歴を記憶する通信履歴記憶ステップと、上記無線中継装置が、通信に際して上記受信モードデータベースと中継先無線通信端末の上記通信履歴とを参照して上記中継先無線通信端末が間欠受信中であるか連続受信中であるかを判断する受信判断ステップと、上記無線中継装置が、上記受信判断ステップの結果に基づいて上記遅延送信開始ステップを起動するか否かを決定するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述したように、無線中継装置及び無線通信方法において、無線中継対象や通信先となる無線通信端末夫々の受信モード情報と、その識別情報(ID)とを関連させて記憶した受信モード情報データベースと、無線通信端末の通信履歴を記憶するメモリと、遅延送信手段を備え、中継時や通信時に、相手方無線通信端末が間欠受信機能を有するか、間欠受信中であるか否かを判断し、間欠受信中であると判断した場合に遅延送信を行うように構成し、又は、制御したものである。
従って、固定局や車載無線通信機のようにバッテリーセービングが必要でないものを含め、通信相手が連続受信中であることが判断できる場合は、遅延送信することなく直ちに通信を開始することができるので、頭切れ(話頭切断)を防止しつつ迅速な運用が可能となる。また、通信相手方の間欠受信情報として、バッテリーセービングの間欠受信の他、走査受信(スキャンモード)、プライオリティスキャン等の間欠受信シーケンスの情報を記録しておき、夫々のシーケンスに対応して遅延送信の予備送信時間を調整するように構成し制御するので、複雑なシーケンスの間欠受信に対しても適宜予備送信時間を調整して、頭切れを防止しつつ、迅速で的確な通信が可能である。
なお、ここで遅延送信手段とは、中継元無線通信端末から送信された通話音声やデータ等の変調信号(中継すべき情報)を無線中継装置において受信した後、直ちに中継波に重畳して中継先無線通信端末に送信する代わりに、変調信号を録音(記録)する。無線中継装置は所要時間、無変調で変調した中継波を送信する予備送信を行う。そして、以下詳述する所定時間の予備送信経過後に、録音(記録)した音声やデータ等を最初から再生して送信する。
また、中継先無線通信端末の制御信号が必要な場合は、その制御信号を予備送信経過後に音声やデータ等に先立って送信を開始する。
即ち、本発明は、この予備送信の有無と、その時間(長さ)を中継先の無線通信端末の受信モードに応じて適切に制御することによって、効率的な運用を可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る無線中継装置の一実施例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例を説明するための無線通信システム図。
【図3】本発明に係る無線中継装置の制御例を示すフローチャート。
【図4】本発明の一実施例を示す図で、(a)は中継元無線通信端末の信号時系列図、(b)は無線中継装置の信号時系列図、(c)は中継先無線通信端末の信号時系列図。
【図5】本発明の他の実施例を示す図で、(a)は中継元無線通信端末の信号時系列図、(b)は無線中継装置の信号時系列図、(c)は中継先無線通信端末の信号時系列図。
【図6】本発明の他の実施例を示す図で、(a)は中継元無線通信端末の信号時系列図、(b)は無線中継装置の信号時系列図、(c)は中継先無線通信端末の信号時系列図。
【図7】本発明の他の実施例を示す図で、(a)は中継元無線通信端末の信号時系列図、(b)は無線中継装置の信号時系列図、(c)は中継先無線通信端末の信号時系列図。
【図8】本発明の変形実施例を示す無線システム図。
【図9】本発明の他の変形実施例を示す無線システム図。
【図10】従来の無線通信端末(無線通信装置)のブロック図。
【図11】従来の無線システムを説明するための無線システム図。
【図12】従来の間欠受信動作を説明するための信号時系列図。
【図13】従来の間欠受信動作を説明するための信号時系列図で(a)は送信信号構成図、(b)、(c)、(d)は夫々ウェイクとスリープ周期の例を示す信号時系列図。
【図14】(a)、(b)、(c)は夫々、従来の送信信号と間欠受信周期の関係を示す図。
【図15】従来の、間欠受信機の呼出し制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
先ず、本発明において使用する無線通信端末(無線通信機)のブロック構成は、基本的な機能としては従来技術の説明に用いた図10のものを利用することができるが、以下詳細に説明する機能を有するように、プログラムやデータがROM124、RAM123に記憶されているものとする。また、この例に限定するものではないが、無線通信端末は受信動作、あるいは送信動作が終了すると、一定時間経過後に間欠受信動作(セーブモード)に移行するようになっているが、その間欠受信におけるウェイクとスリープの時間や周期は、無線通信端末毎に任意に設定可能であっても構わない。
【0013】
また、一般的なことであるが、各無線通信端末は自局の識別情報(自局IDや呼出し符号等、以下IDと総称する)を送信電波中に含めて送信する機能を備えている。本発明の特徴的なことは、無線中継装置に、通信相手の無線通信端末の間欠受信における処理シーケンス、即ち、ウェイクとスリープの時間や周期、送受信終了後に間欠受信動作を開始するまでの時間(つまり、連続受信終了から間欠受信開始までの時間)に関する情報を、夫々の無線通信端末のIDに関連付けたデータを記録しておく機能を備えていることである。このようなデータ取得と記録は、無線中継装置が、各無線通信端末が他の無線通信端末と行う通信を傍受することによって取得すること、あるいは、各無線通信端末から無線中継装置に報告信号を送信するようにシステム構築を行うこと、又は、通信管理用基地局等にシーケンス情報を報告して、一括管理すること、等々が考えられるので、適宜選択することが出来る。
【0014】
図1は本発明に係る無線中継装置(レピータとも云う)の一実施例を示す概要ブロック図である。この例では、無線中継のために二系統の送受信装置を備えている。即ち、アンテナ1、2と、送信部及び受信部を含み必要に応じてどちらか一方を起動させる送受信切替部3、4と、夫々の系統のベースバンド信号の処理を行うベースバンド処理部5、6と、マイクロホン7から供給されるアナログ音声信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器(A/D)8と、ベースバンド処理部6のデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル・アナログ変換器(D/A)9と、その信号を音響に変換するスピーカ10とを備えている。なお、マイクロホン7とスピーカ10は、このレピータ(無線中継装置)を無線通信端末として機能させる場合に備えたものである。
更に、図1において11は、制御部であり、以下に説明する機能を果たすように、コントローラ12と、計時部13と、記憶部14を含んでいる。
【0015】
また、制御部11の記憶部14には、予め、中継サービスを行う無線通信端末の受信モード情報を記憶している。受信モード情報とは、上述したように、間欠受信や走査受信(プライオリティスキャンを含む)における処理シーケンスに関する情報等を云い、これらの情報を夫々の無線通信端末のIDに関連付けてデータベースとして記録している。無線通信端末には、バッテリーを内蔵した携帯型のみならず、車載搭載用や、固定局無線通信端末のようにバッテリーセービングが必要ないものも含まれるので、端末毎に、間欠受信機能の有無をデータ化して記憶しておくことにより、効率的な中継や通信が可能である。
レピータが受信モード情報のデータベースを記憶する方法としては、既に説明したように、予めメモリに収集したデータを記憶する方法や、実際の無線システム運用中に無線通信端末からの報告を受けて記録する方法、又は、データベース管理機関から送信されるデータを記憶する方法、あるいはそれらを併用し、予め記憶したデータの更新情報をデータベース管理機関から送信するものであってもよい。
更に、この例に示すレピータでは管轄内の無線通信端末の通信履歴を記憶する通信履歴記憶手段と、遅延送信機能を備えている。通信履歴記憶手段は、比較的短期間(例えば、数分乃至数十分程度でもよい)における各無線通信端末の送信履歴や無線中継履歴を記憶しておくもので、特許文献2に開示されているように、送信動作等の終了後の一定時間「τ」内の連続受信期間中であることを検知する上で有用である。また、遅延送信機能とは、既に説明したように、中継送信の開始時は、所定時間無変調のままで予備送信しながら、中継元無線通信端末から送信された音声やデータ情報を録音(保存)し、所要時間の予備送信後に、録音した音声やデータ信号を再生して中継波に重畳して送信する機能である。遅延送信機能については例えば、特許文献3に記載されているので参照することができる。
【0016】
図2は、本発明に係るレピータと無線通信端末の動作を説明するためのシステム図である。図2において、20A乃至20Eは同一ゾーン内に位置する無線通信端末であって、走査受信(スキャンモード)機能を含む間欠受信機能を備えている。走査受信には上述したプライオリティスキャン(優先走査受信)を含んだものであってもよい。
図2に示すシステムにおいて、各無線通信端末は例えば、通信動作(送信動作又は受信動作)、連続受信待受け、間欠受信(セーブモード、走査受信)を順次繰返す動作を行っている状況で、無線通信端末20Aが、中継元無線通信端末20Bを中継先無線通信端末として、レピータ(無線中継装置)21を介して通信を行う場合を想定する。
【0017】
図3は、本発明に係るレピータ(無線中継装置)の制御例を示すフローチャートである。フローがスタートすると、先ず、中継元無線端末20Aからの信号を受信し、その中に含まれる情報から中継先無線通信端末が20Bであることを検出し特定する(S1)。レピータでは、記憶部14に格納してある受信モード情報データベースから中継先無線通信端末20Bについての受信モード情報、例えば、間欠受信、走査受信機能の有無、それらの断続受信の周期、「τ」時間等の情報を取得する(S2)。次に、記憶部14に通信履歴が記憶されている場合は、そのなかに通信先無線通信端末20Bに関する情報の有無を確認し、連続受信中(「τ」期間である場合)であるか否かを判断する(S4)。この判断の結果、間欠受信(断続受信)中である、即ち、「τ」期間中でない場合は(S4、Yes)、中継元の無線通信端末20Aから送信された音声やデータ等の中継すべき受信信号を復調し、遅延送信のために録音(メモリに記録)する(S5)。次に、送信先無線通信端末20Bに対し、その待受け周波数(チャネル)で予備送信を開始する(S6)。
ここで行う予備送信は、後述するように中継先無線通信端末20Bの間欠受信のウェイク期間に一致して伝送すべき情報が受信され、頭切れが発生しないように予備送信によってタイミング調整を行うための待ち時間調整を行うものであり(S7)、予備送信として必要な時間が経過したら、録音された中継すべき情報を初めから再生し送信する(S8)。このとき、中継先無線通信端末にCTCSS、DTMF等のシグナリングやデジタル通信のネットワークアクセスコードが設定されている場合は、これらを付加する。
このような制御によれば、中継すべき信号が一定時間遅延して中継されるので、受信側では間欠受信を中止し、連続受信状態になった状態でメッセージ等のデータが送信され、頭切れを防止することができる。
【0018】
この処理中に中継元無線通信端末20Aからの送信電波が無くなる(終了する)と、受信終了であると判断し(S9)、録音を停止する(S10)。
このような処理を繰返し、互いに送受信を行うが、上記処理S4において中継先が断続受信中ではないと判断した場合は(S4、No)、従来通りの通常の中継処理を行う。また、中継処理を行う毎に、中継元、中継先の無線通信端末の識別情報(ID)、送信終了時刻等を通信履歴として記録する(S11)。特定の無線通信端末同士の通信が終了すると、それを傍受していた他の無線通信端末が、通信終了した端末の一方を呼出す(コールする)ことは頻繁に発生するが、その場合は記録した通信履歴に基づき、「τ」期間であることが判明すれば遅延送信を行うことなく即時中継処理を行うことができるので迅速な中継処理が可能となる。
【0019】
図4は、本発明の処理の例を示す信号時系列図であり、無線中継装置が中継動作を終了後、再び、中継先無線通信端末に対して中継要求があった場合に、遅延送信を行うか否かを判断する処理を説明するものである。即ち、図4(a)は中継元無線通信端末の送信動作を示し、図4(b)は無線中継装置(レピータ)の送受信動作、図4(c)は中継先無線通信端末の間欠受信動作を示している。
送信元無線通信端末が送信動作を終了すると、無線中継装置の送受信動作も同様に動作を終了する(T1)。中継先無線通信端末は一定期間「τ2」経過後に間欠受信(周期τ1)に移行する(図c)。その状態において、送信元無線通信端末(他の無線通信端末であってもよい)から新たな中継要求が発生すると(T2)、無線中継装置(レピータ)では中継動作を開始し、受信情報も復調する。無線中継装置では、上述した受信モード情報データベースを参照して中継先が間欠受信機能を有すること、及び、通信履歴情報から送受信終了後の経過時間(τ3)が中継先端末の「τ2」の期間を過ぎているので、現在間欠受信中であること、及び、間欠受信の周期が「τ1」であることを判断すると、遅延送信機能を起動して予備送信を行う。予備送信により遅延する時間は「τ1」、若しくは「τ1」より長くする。この処理によれば、中継先無線通信端末がウェイク期間のタイミングにおいて予備送信電波を受信して連続受信動作に移行した後に、録音しておいた音声信号等を変調信号として中継波に重畳して送信するので、頭切れを防止することができる。なお、図4において「※1」がウェイク期間となって中継チャネルを受信するタイミング、「※2」はスリープ状態で省電力状態を示している。
【0020】
図5は本発明の無線中継装置における他の処理例を示す信号時系列図であり、中継先が走査受信を行う場合に、予備送信処理を行うか否かを判断する様子を示している。即ち、図5(a)は中継元無線通信端末の送信動作を示し、図5(b)は無線中継装置(レピータ)の送受信動作、図5(c)は中継先無線通信端末が一定期間「τ1」周期で走査受信(スキャンモード)動作を示していることを示している。
送信元無線通信端末が送信を開始すると、無線中継装置の送受部も同様に動作を開始する(T1)。無線中継装置(レピータ)では中継動作を開始するが、上述した受信モード情報を記録してあるデータベースを参照して中継先が走査受信機能を有すること、過去の通信履歴等から現在走査受信中であること、及び、走査受信により中継チャネルを受信する周期が「τ1」であることを判断すると、遅延送信機能を起動して予備送信を行う。予備送信により受信信号を中継するまでの遅延時間は「τ1」、若しくは「τ1」より長くする。この処理によれば、中継先無線通信端末が中継チャネルを受信するタイミング以前に連続受信動作に移行するので、頭切れを防止することができる。なお、図5において「※1」が中継チャネルを受信するタイミング、「※2」はそれ以外のチャネルを受信するタイミングである。
【0021】
図6は、本発明の更に他の処理例を示す信号時系列図であり、この例では、中継先無線通信端末に走査受信(スキャンモード)が設定されている場合であって、中継処理が終了した後に、再び中継先無線通信端末に対して中継要求が発生した場合の処理例を示したものである。即ち、図6(a)は中継元無線通信端末の送信動作を示し、図6(b)は無線中継装置(レピータ)の送受信動作、図6(c)は中継先の無線通信端末の走査受信動作を示している。
送信元無線通信端末が送信動作を終了すると、無線中継装置の送受信動作も同様に動作を終了する(T1)。中継先無線通信端末は一定期間「τ2」経過後に走査受信(スキャンモード)に移行する(図c)。その状態において、送信元無線通信端末(他の無線通信端末であってもよい)から新たな中継要求が発生すると(T2)、無線中継装置(レピータ)では中継動作を開始するが、上述した受信モード情報データベースを参照して中継先が走査受信機能を有すること、及び、通信履歴情報から送受信終了後の経過時間(τ3)が中継先端末の「τ2」の期間を過ぎているので、現在走査受信中であること、及び、走査受信により中継チャネルを受信する周期が「τ1」であることを判断すると、遅延送信機能を起動して中継すべき変調信号を重畳することなく搬送波を必要な制御信号で変調し送信する予備送信を行う。予備送信により遅延する時間は「τ1」、もしくは「τ1」より長くし、予備送信が終了すれば遅延させた変調信号を最初から再生して送信する。この処理によれば、中継先無線通信端末が中継チャネルを受信するタイミング以前に連続受信動作に移行し、その後に変調信号が送信されるので、頭切れを防止することができる。なお、図6において「※1」が中継チャネルを受信するタイミング、「※2」はそれ以外のチャネルを受信するタイミングである。
【0022】
図7は、本発明の更に他の処理例を示す信号時系列図であり、この例では、中継先無線通信端末がプライオリティスキャン受信機能を備えている場合であって、中継処理が終了した後に再び中継先無線通信端末に対して中継要求が発生した場合の処理例を示したものである。即ち、図7(a)は中継元無線通信端末の送信動作、図7(b)は無線中継装置(レピータ)の送受信動作、図7(c)は中継先の無線通信端末のプライオリティ受信(プライオリティ走査受信)動作を示している。
送信元無線通信端末が送信動作を終了すると、無線中継装置の送受信動作も同様に動作を終了する(T1)。中継先無線通信端末は一定期間「τ2」経過後にプライオリティ走査受信(優先走査受信)に移行する(図c)。図中「※1」が中継チャネルを受信するタイミング、「※2」はそれ以外のチャネルを受信するタイミングである。
【0023】
この状態において、送信元無線通信端末(他の無線通信端末であってもよい)から新たな中継要求が発生すると(T2)、無線中継装置(レピータ)は、上述した受信モード情報データベースを参照して中継先がプライオリティ受信機能を有すること、及び、通信履歴情報から送受信終了後の経過時間「τ3」が中継先端末の「τ2」の期間を過ぎている(τ3>τ2)ので、現在プライオリティ受信中であること、及び、プライオリティ受信により中継チャネルを受信する周期が「τ1」であることを判断し、遅延送信機能を起動して予備送信を行う。予備送信は、既に説明したように、中継元無線通信端末から送信された変調信号を、直ちに中継波に重畳せず、搬送波で変調した電波を送信するもので、中継元無線通信端末からの変調信号は無線中継装置において録音し、予備送信期間として所要時間遅延させて中継波に重畳する。
また、中継先無線通信端末への制御信号が必要な場合は、その制御信号を所要時間遅延後に音声やデータ等に先立って重畳する。
予備送信により遅延する時間は「τ1」、若しくは「τ1」より長い予備送信を終了した後、遅延させた変調信号を最初から再生して送信する。この処理によれば、中継先無線通信端末が中継チャネルを受信するタイミングで連続受信動作に移行し、その後送信される変調信号を受信できるので、頭切れを防止することができる。なお、プライオリティ受信の一例として、図7(c)に示すように、中継チャネルに対してウェイクとなるタイミング(※1)を、その他のチャネルを受信するタイミング(※2)より多くの回数ウェイクにすれば、他の無線通信端末からの呼出しに迅速に対応することが可能である。
【0024】
図8は本発明の他の実施例を示す無線システム概要図である。この例では、無線中継装置22を介して、無線通信端末23Aが複数の無線通信端末23B、23Cを呼出す場合を示している。この場合であっても、同様に無線中継装置22に備えた受信モード情報のデータベースを参照して遅延送信の要否や遅延時間等を決定するが、複数の中継先無線通信端末の受信モードが異なる場合は、両者に適合できるような長めの予備送信時間や遅延時間を設定すればよい。なお、この例の場合において、通信相手方の受信モード情報のデータベースを各無線通信端末に備えるように構成し、無線通信端末23において判断した結果を無線中継装置22に必要な制御情報を送付して中継制御を行うことも出来るであろう。あるいは、無線通信端末と無線中継装置の両者に備え、無線通信端末から中継要求する信号中に、どちらのデータベースを使用するかを通知するように構成すること、又は、無線中継装置側にデータがない場合、無線通信端末から必要なデータを送信するように制御することもできる。
【0025】
図9は更に本発明の変形実施例を示す無線システム概要図である。この例では、無線中継装置を介することなく無線通信端末24Aと24Bが直接通信する場合を例示している。この場合は、通信相手方の受信モード情報のデータベースを各無線通信端末に備える必要がある(図8の例においても使用可能である)。
例えば、図10に示した無線通信端末100の制御部120中のROM、RAMに通信相手方の受信モード情報のデータベースを記憶できるようにしておき、呼出す際に、上述したようにデータベースを参照して予備送信(遅延送信)の要否と、相手方の走査受信や間欠受信の周期等の情報を取得した上で、所要の送信を行う。このときの受信モード情報の取得方法は、本発明においては無線中継装置に受信モード情報データベースを保有しているので、それらのデータの中から必要なものを転送してもらうように制御すれば、無線通信端末側に全てのデータを保有する必要がない。
【0026】
本発明は以上説明した例に限定する必要はなく種々変形が可能である。例えば、無線システムとして中継装置が一つの例を示したが、複数でも構わないし、変調方式も特定のものに限定する必要はない。また、その変調にCTCSSやCDCSS等のスケルチ信号が重畳される場合にも、本発明を適用することができる。更に、受信モード情報データベースに記憶する情報は、例示したものの一部でも良いし、更に、他のものを含めてもよい。
また、遅延送信を行う際に、会話に関する変調信号の一部又は全体を、適宜圧縮、あるいは間引きして、遅延して送信開始した分を補正する処理を加えることによって、実際の通話の終了時刻が、遅延再生した変調信号の通話終了時刻が出来る限り近づくように制御すれば、相互の会話がスムーズに行われるようになるであろう。更に、近年、CPUやDSP、メモリを備えたデジタル無線機が一般的であるので、上述した本発明の処理機能を実行するように構成したプログラムやデータをインストールすることによって、本発明を実施することも可能であろう。
【符号の説明】
【0027】
1、2 アンテナ、3、4 送受信切替部、5、6 ベースバンド処理部、7 マイク、8 A/D(アナログ・デジタル変換器)、9 D/A(デジタル・アナログ変換器)、11 制御部、12 コントローラ、13 計時部、14 記憶部、20、23、24 無線通信端末、21、22 無線中継装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線中継装置及び無線通信方法に関し、詳細には、種々異なるシーケンスの間欠受信を行う無線通信システムにおいて効率的運用が可能な無線中継装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線チャネル信号の着信を待受ける無線受信機、特に、携帯型移動無線受信機では、内蔵するバッテリー(蓄電池)の消耗を軽減し、一度の充電によって長時間の受信動作を行う手段として、短時間の受信動作(Wake:ウェイク)と、比較的長時間にわたって受信部への電力供給を遮断する非受信動作(Sleep:スリープ)と、を一定周期で繰返すバッテリーセーブ(以下、間欠受信とも云う)を行うことが多い。具体的には、短時間のウェイク期間に無線信号着信の有無を検出するキャリアセンスを行い、ウェイク期間に着信を検出すると以後しばらく連続受信を行って自局に対する発呼であるか否かを判断するが、自局に関連するものではない場合は再びスリープ状態に移行する。
このような間欠受信は、デジタル無線システムにおいても採用されており、受信されたデジタル信号の同期信号を捕捉した後に、音声/データなどの信号を受信することになるので、アナログ無線システムにおける間欠受信動作に比べて、その処理が複雑となる。
【0003】
特許文献1には、デジタル無線システムにおける間欠受信に対応する手段として、通信が失敗した際にリカバーが可能なように、プリアンブル信号を可変長とする技術が開示されている。即ち、特許文献1の技術は、プリアンブル信号可変手段を備え、ウェイク期間のキャリア判定時に「電波あり」と判断したが送信できなかった場合等において、初期同期合わせ動作を繰り返しても通信が正常に終了しなかったときは、プリアンブル信号可変手段により、制御手段が決めた長さにプリアンブル信号を変更するように構成したものである。しかし、この方法では、デジタル無線システムのように同期処理を必要とする場合、通信の初期部分の復調ができず、頭切れ(話頭切断)が生じることがあった。
例えば、同期信号を捕捉しなければデータを受信(復号化)することができないデジタル無線システムでは、一般的に送信開始時に同期タイミング検出用のプリアンブル信号が付され、それに続いてフレーム同期信号とともに伝送すべきデータが送信されるので、間欠受信動作の際、キャリアセンスによる着信検出が成功しても、タイミングによってはウェイク期間初期の同期ワード検出が出来ない場合は、その後に続く音声データや情報データを復調することができないので会話の初期部分が欠落する頭切れ(話頭切断)が生じ明瞭な通話が阻害される。
【0004】
このような不具合を解消する手段として、例えば、特許文献2には、通信相手方受信機が間欠受信を行っているか否かを判断する手段を備え、間欠受信中の相手方に対して送信する場合は、プリアンブルP、フレーム同期信号FS及び相手局側識別情報等の制御情報信号CCH(Control CHannel)
を含む同期シーケンスQの繰り返し周期を通常の場合に比べて長くする方法が提案されている。
図10乃至図15は、特許文献2に開示された図である。以下、これらの図面を使用して簡単に説明する。
図10は、特許文献2記載の従来の無線通信装置の構成例を示すブロック図であり、アンテナ110と、アンテナ接続を送信部/受信部に切替える送受信切替部111と、送信部112、送信用ベースバンド処理部113、アナログ・デジタル変換部(A/D)114、マイクロホン115を含む送信ブロックと、受信部116、受信用ベースバンド処理部117、デジタル・アナログ変換部(D/A)118、スピーカ119を含む受信ブロックとを備えている。更に、上記各ブロックを制御するために、コントローラ120を備え、その内部にはCPU121、入出力インターフェース(I/O)122、書換可能メモリ(RAM)123、書込専用メモリ(ROM)124を含んでいる。また、コントローラ120には、計時部125、表示部126、操作部127、電源制御部128、電源部129が付加されている。ここで、電源部129は例えばバッテリー(蓄電池)と充電用回路を含んでいる。その他、以下に説明する処理や動作を行うように、ROM124には各種のプログラムやデータが記憶され、RAM123には必要に応じて各種のデータが記憶され、且つ、読み出される。
【0005】
今、図11に示す無線通信装置100A乃至100E(構成は図10)のうち、少なくとも間欠受信機能を備えた無線通信装置100Aと100Bが通信を行う場合、他の無線通信装置C乃至Eは、その通信を傍受(受信)することができるとすれば、100A、100B両者の通信状況から間欠受信中か連続受信中であるかの判断が可能である。
一方、図12に示すようにプリアンブルPの長さが、間欠受信モードのスリープ期間より長い場合は、いずれかのウェイク期間においてプリアンブルを受信可能であり、後続するFSとCCHを復調して自局当ての通信であるか否かを判断できる。
そこで、特許文献2記載の発明では、無線通信装置の通信傍受等により通信相手が連続受信中であるか間欠受信中であるかを判断する手段と、相手方が間欠受信中であると判断した場合は、図13(a)乃至(d)に示すように、間欠受信のスリープ期間より長くなるように同期シーケンスQの長さを調整することによって、頭切れを防止している。
図14(a)、(b)、(c)は、特許文献2記載に示された、無線通信装置が間欠受信モードに移行するタイミング図で、通信終了後に予め設定された所定時間が経過したとき間欠受信モードに移行し、スリープとウェイクを所定周期で繰返す様子を示している。
図15は、その処理例を示すフローチャートであるが、上記図10乃至図14を含め、詳細は特許文献2に詳しいので、ここでの説明は省略する。なお、図10乃至図15は、特許文献2の図とは異なる符号を付したが、参照は容易であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−65464号公報
【特許文献2】特開2007−208442公報
【特許文献3】特開平6−152472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように特許文献2記載の方法では、通信相手方が送信終了信号を送信した後の所定時間内(間欠受信に移行するまでの期間)のように限られた期間が連続受信中であると判断できるに留まるので、それ以外においては間欠受信中であるものと仮定して同期シーケンスQを長く設定せざるを得ない。
更には、通信相手方の間欠受信周期が不明であるので、可能性のある最大長の周期にシーケンスQを設定する必要があり、通信効率を悪化させる可能性があった。このような不具合を回避するためには、全ての受信機の間欠受信周期を統一する必要があるが、それは極めて困難であろう。
なお、上述した間欠受信の他にも、周期的にチャネル受信を行うものとして、多数のチャネルを順次走査(スキャン)しながら着信信号の有無を検出する走査受信(スキャンモード)が知られている。このようなスキャンモード中の通信相手を呼出す場合にも、チャネル信号を受信するタイミングに合わせてプリアンブル信号やFS信号を送信する必要がある。更に、スキャンモードにおいても、特定のチャネルを優先的に受信するために、一回のスキャン中に(走査周期中に)優先度の高い特定チャネルを複数回受信するような複雑な走査受信も採用されている。このようなスキャンモード中の相手を呼出す場合にも、同様の問題が発生していた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、通信相手方が間欠受信中や、走査受信中であっても、頭切れ(話頭切断)が発生することなく、迅速に通信が開始できるようにした無線中継装置及び無線通信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の無線中継装置は、中継先無線通信端末を識別する識別情報を送信する機能と間欠受信機能を有する複数の無線通信端末における通信を中継する無線中継装置において、
上記無線通信端末夫々の間欠受信周期を含む受信モード情報をその無線通信端末の識別情報に対応付けて記憶した受信モード情報データベースと、
中継元無線通信端末から送信され受信した信号に含まれる中継先無線通信端末の識別情報と上記受信モード情報データベースとから上記中継先無線通信端末の受信モード情報を取得する手段と、
上記中継元無線通信端末から送信された信号を受信後、上記中継先無線通信端末へ中継すべき情報を含まない信号の予備送信を開始する予備送信手段と、
上記取得した受信モード情報に基づいて、中継すべき情報の送信を上記予備送信の開始から所要時間遅らせる遅延送信手段と、を備えることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の無線中継装置において、無線通信端末の通信履歴を記憶する手段と、上記受信モード情報データベースと上記通信履歴を参照して中継先無線通信端末が間欠受信中であるか連続受信中であるかを判断する手段と、その判断結果に基づいて上記遅延送信手段を起動するか否かを決定する手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、無線通信方法であって、間欠受信機能を有する複数の無線通信端末が無線中継装置を介して通信する無線通信方法において、
中継元無線通信端末が中継先無線通信端末を識別する識別情報を上記無線中継装置に送信する識別情報送信ステップと、上記無線中継装置が上記中継元無線通信端末から送信され受信した信号から上記識別情報を検出する識別情報検出ステップと、上記無線中継装置が、上記無線通信端末夫々の間欠受信周期を含む受信モード情報と上記識別情報と共に記憶した受信モードデータベースと上記検出した識別情報とから、上記中継先無線通信端末の受信モード情報を取得する受信モード情報取得ステップと、上記中継元無線通信端末から送信された信号を受信後、上記中継先無線通信端末へ中継すべき情報を含まない信号の予備送信を開始する予備送信開始ステップと、上記取得した受信モード情報に基づいて、中継すべき情報の送信を上記予備送信の開始から所要時間遅らせる遅延送信開始ステップと、を含むことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の無線通信方法において、無線中継装置が、無線通信端末の通信履歴を記憶する通信履歴記憶ステップと、上記無線中継装置が、通信に際して上記受信モードデータベースと中継先無線通信端末の上記通信履歴とを参照して上記中継先無線通信端末が間欠受信中であるか連続受信中であるかを判断する受信判断ステップと、上記無線中継装置が、上記受信判断ステップの結果に基づいて上記遅延送信開始ステップを起動するか否かを決定するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述したように、無線中継装置及び無線通信方法において、無線中継対象や通信先となる無線通信端末夫々の受信モード情報と、その識別情報(ID)とを関連させて記憶した受信モード情報データベースと、無線通信端末の通信履歴を記憶するメモリと、遅延送信手段を備え、中継時や通信時に、相手方無線通信端末が間欠受信機能を有するか、間欠受信中であるか否かを判断し、間欠受信中であると判断した場合に遅延送信を行うように構成し、又は、制御したものである。
従って、固定局や車載無線通信機のようにバッテリーセービングが必要でないものを含め、通信相手が連続受信中であることが判断できる場合は、遅延送信することなく直ちに通信を開始することができるので、頭切れ(話頭切断)を防止しつつ迅速な運用が可能となる。また、通信相手方の間欠受信情報として、バッテリーセービングの間欠受信の他、走査受信(スキャンモード)、プライオリティスキャン等の間欠受信シーケンスの情報を記録しておき、夫々のシーケンスに対応して遅延送信の予備送信時間を調整するように構成し制御するので、複雑なシーケンスの間欠受信に対しても適宜予備送信時間を調整して、頭切れを防止しつつ、迅速で的確な通信が可能である。
なお、ここで遅延送信手段とは、中継元無線通信端末から送信された通話音声やデータ等の変調信号(中継すべき情報)を無線中継装置において受信した後、直ちに中継波に重畳して中継先無線通信端末に送信する代わりに、変調信号を録音(記録)する。無線中継装置は所要時間、無変調で変調した中継波を送信する予備送信を行う。そして、以下詳述する所定時間の予備送信経過後に、録音(記録)した音声やデータ等を最初から再生して送信する。
また、中継先無線通信端末の制御信号が必要な場合は、その制御信号を予備送信経過後に音声やデータ等に先立って送信を開始する。
即ち、本発明は、この予備送信の有無と、その時間(長さ)を中継先の無線通信端末の受信モードに応じて適切に制御することによって、効率的な運用を可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る無線中継装置の一実施例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例を説明するための無線通信システム図。
【図3】本発明に係る無線中継装置の制御例を示すフローチャート。
【図4】本発明の一実施例を示す図で、(a)は中継元無線通信端末の信号時系列図、(b)は無線中継装置の信号時系列図、(c)は中継先無線通信端末の信号時系列図。
【図5】本発明の他の実施例を示す図で、(a)は中継元無線通信端末の信号時系列図、(b)は無線中継装置の信号時系列図、(c)は中継先無線通信端末の信号時系列図。
【図6】本発明の他の実施例を示す図で、(a)は中継元無線通信端末の信号時系列図、(b)は無線中継装置の信号時系列図、(c)は中継先無線通信端末の信号時系列図。
【図7】本発明の他の実施例を示す図で、(a)は中継元無線通信端末の信号時系列図、(b)は無線中継装置の信号時系列図、(c)は中継先無線通信端末の信号時系列図。
【図8】本発明の変形実施例を示す無線システム図。
【図9】本発明の他の変形実施例を示す無線システム図。
【図10】従来の無線通信端末(無線通信装置)のブロック図。
【図11】従来の無線システムを説明するための無線システム図。
【図12】従来の間欠受信動作を説明するための信号時系列図。
【図13】従来の間欠受信動作を説明するための信号時系列図で(a)は送信信号構成図、(b)、(c)、(d)は夫々ウェイクとスリープ周期の例を示す信号時系列図。
【図14】(a)、(b)、(c)は夫々、従来の送信信号と間欠受信周期の関係を示す図。
【図15】従来の、間欠受信機の呼出し制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
先ず、本発明において使用する無線通信端末(無線通信機)のブロック構成は、基本的な機能としては従来技術の説明に用いた図10のものを利用することができるが、以下詳細に説明する機能を有するように、プログラムやデータがROM124、RAM123に記憶されているものとする。また、この例に限定するものではないが、無線通信端末は受信動作、あるいは送信動作が終了すると、一定時間経過後に間欠受信動作(セーブモード)に移行するようになっているが、その間欠受信におけるウェイクとスリープの時間や周期は、無線通信端末毎に任意に設定可能であっても構わない。
【0013】
また、一般的なことであるが、各無線通信端末は自局の識別情報(自局IDや呼出し符号等、以下IDと総称する)を送信電波中に含めて送信する機能を備えている。本発明の特徴的なことは、無線中継装置に、通信相手の無線通信端末の間欠受信における処理シーケンス、即ち、ウェイクとスリープの時間や周期、送受信終了後に間欠受信動作を開始するまでの時間(つまり、連続受信終了から間欠受信開始までの時間)に関する情報を、夫々の無線通信端末のIDに関連付けたデータを記録しておく機能を備えていることである。このようなデータ取得と記録は、無線中継装置が、各無線通信端末が他の無線通信端末と行う通信を傍受することによって取得すること、あるいは、各無線通信端末から無線中継装置に報告信号を送信するようにシステム構築を行うこと、又は、通信管理用基地局等にシーケンス情報を報告して、一括管理すること、等々が考えられるので、適宜選択することが出来る。
【0014】
図1は本発明に係る無線中継装置(レピータとも云う)の一実施例を示す概要ブロック図である。この例では、無線中継のために二系統の送受信装置を備えている。即ち、アンテナ1、2と、送信部及び受信部を含み必要に応じてどちらか一方を起動させる送受信切替部3、4と、夫々の系統のベースバンド信号の処理を行うベースバンド処理部5、6と、マイクロホン7から供給されるアナログ音声信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器(A/D)8と、ベースバンド処理部6のデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル・アナログ変換器(D/A)9と、その信号を音響に変換するスピーカ10とを備えている。なお、マイクロホン7とスピーカ10は、このレピータ(無線中継装置)を無線通信端末として機能させる場合に備えたものである。
更に、図1において11は、制御部であり、以下に説明する機能を果たすように、コントローラ12と、計時部13と、記憶部14を含んでいる。
【0015】
また、制御部11の記憶部14には、予め、中継サービスを行う無線通信端末の受信モード情報を記憶している。受信モード情報とは、上述したように、間欠受信や走査受信(プライオリティスキャンを含む)における処理シーケンスに関する情報等を云い、これらの情報を夫々の無線通信端末のIDに関連付けてデータベースとして記録している。無線通信端末には、バッテリーを内蔵した携帯型のみならず、車載搭載用や、固定局無線通信端末のようにバッテリーセービングが必要ないものも含まれるので、端末毎に、間欠受信機能の有無をデータ化して記憶しておくことにより、効率的な中継や通信が可能である。
レピータが受信モード情報のデータベースを記憶する方法としては、既に説明したように、予めメモリに収集したデータを記憶する方法や、実際の無線システム運用中に無線通信端末からの報告を受けて記録する方法、又は、データベース管理機関から送信されるデータを記憶する方法、あるいはそれらを併用し、予め記憶したデータの更新情報をデータベース管理機関から送信するものであってもよい。
更に、この例に示すレピータでは管轄内の無線通信端末の通信履歴を記憶する通信履歴記憶手段と、遅延送信機能を備えている。通信履歴記憶手段は、比較的短期間(例えば、数分乃至数十分程度でもよい)における各無線通信端末の送信履歴や無線中継履歴を記憶しておくもので、特許文献2に開示されているように、送信動作等の終了後の一定時間「τ」内の連続受信期間中であることを検知する上で有用である。また、遅延送信機能とは、既に説明したように、中継送信の開始時は、所定時間無変調のままで予備送信しながら、中継元無線通信端末から送信された音声やデータ情報を録音(保存)し、所要時間の予備送信後に、録音した音声やデータ信号を再生して中継波に重畳して送信する機能である。遅延送信機能については例えば、特許文献3に記載されているので参照することができる。
【0016】
図2は、本発明に係るレピータと無線通信端末の動作を説明するためのシステム図である。図2において、20A乃至20Eは同一ゾーン内に位置する無線通信端末であって、走査受信(スキャンモード)機能を含む間欠受信機能を備えている。走査受信には上述したプライオリティスキャン(優先走査受信)を含んだものであってもよい。
図2に示すシステムにおいて、各無線通信端末は例えば、通信動作(送信動作又は受信動作)、連続受信待受け、間欠受信(セーブモード、走査受信)を順次繰返す動作を行っている状況で、無線通信端末20Aが、中継元無線通信端末20Bを中継先無線通信端末として、レピータ(無線中継装置)21を介して通信を行う場合を想定する。
【0017】
図3は、本発明に係るレピータ(無線中継装置)の制御例を示すフローチャートである。フローがスタートすると、先ず、中継元無線端末20Aからの信号を受信し、その中に含まれる情報から中継先無線通信端末が20Bであることを検出し特定する(S1)。レピータでは、記憶部14に格納してある受信モード情報データベースから中継先無線通信端末20Bについての受信モード情報、例えば、間欠受信、走査受信機能の有無、それらの断続受信の周期、「τ」時間等の情報を取得する(S2)。次に、記憶部14に通信履歴が記憶されている場合は、そのなかに通信先無線通信端末20Bに関する情報の有無を確認し、連続受信中(「τ」期間である場合)であるか否かを判断する(S4)。この判断の結果、間欠受信(断続受信)中である、即ち、「τ」期間中でない場合は(S4、Yes)、中継元の無線通信端末20Aから送信された音声やデータ等の中継すべき受信信号を復調し、遅延送信のために録音(メモリに記録)する(S5)。次に、送信先無線通信端末20Bに対し、その待受け周波数(チャネル)で予備送信を開始する(S6)。
ここで行う予備送信は、後述するように中継先無線通信端末20Bの間欠受信のウェイク期間に一致して伝送すべき情報が受信され、頭切れが発生しないように予備送信によってタイミング調整を行うための待ち時間調整を行うものであり(S7)、予備送信として必要な時間が経過したら、録音された中継すべき情報を初めから再生し送信する(S8)。このとき、中継先無線通信端末にCTCSS、DTMF等のシグナリングやデジタル通信のネットワークアクセスコードが設定されている場合は、これらを付加する。
このような制御によれば、中継すべき信号が一定時間遅延して中継されるので、受信側では間欠受信を中止し、連続受信状態になった状態でメッセージ等のデータが送信され、頭切れを防止することができる。
【0018】
この処理中に中継元無線通信端末20Aからの送信電波が無くなる(終了する)と、受信終了であると判断し(S9)、録音を停止する(S10)。
このような処理を繰返し、互いに送受信を行うが、上記処理S4において中継先が断続受信中ではないと判断した場合は(S4、No)、従来通りの通常の中継処理を行う。また、中継処理を行う毎に、中継元、中継先の無線通信端末の識別情報(ID)、送信終了時刻等を通信履歴として記録する(S11)。特定の無線通信端末同士の通信が終了すると、それを傍受していた他の無線通信端末が、通信終了した端末の一方を呼出す(コールする)ことは頻繁に発生するが、その場合は記録した通信履歴に基づき、「τ」期間であることが判明すれば遅延送信を行うことなく即時中継処理を行うことができるので迅速な中継処理が可能となる。
【0019】
図4は、本発明の処理の例を示す信号時系列図であり、無線中継装置が中継動作を終了後、再び、中継先無線通信端末に対して中継要求があった場合に、遅延送信を行うか否かを判断する処理を説明するものである。即ち、図4(a)は中継元無線通信端末の送信動作を示し、図4(b)は無線中継装置(レピータ)の送受信動作、図4(c)は中継先無線通信端末の間欠受信動作を示している。
送信元無線通信端末が送信動作を終了すると、無線中継装置の送受信動作も同様に動作を終了する(T1)。中継先無線通信端末は一定期間「τ2」経過後に間欠受信(周期τ1)に移行する(図c)。その状態において、送信元無線通信端末(他の無線通信端末であってもよい)から新たな中継要求が発生すると(T2)、無線中継装置(レピータ)では中継動作を開始し、受信情報も復調する。無線中継装置では、上述した受信モード情報データベースを参照して中継先が間欠受信機能を有すること、及び、通信履歴情報から送受信終了後の経過時間(τ3)が中継先端末の「τ2」の期間を過ぎているので、現在間欠受信中であること、及び、間欠受信の周期が「τ1」であることを判断すると、遅延送信機能を起動して予備送信を行う。予備送信により遅延する時間は「τ1」、若しくは「τ1」より長くする。この処理によれば、中継先無線通信端末がウェイク期間のタイミングにおいて予備送信電波を受信して連続受信動作に移行した後に、録音しておいた音声信号等を変調信号として中継波に重畳して送信するので、頭切れを防止することができる。なお、図4において「※1」がウェイク期間となって中継チャネルを受信するタイミング、「※2」はスリープ状態で省電力状態を示している。
【0020】
図5は本発明の無線中継装置における他の処理例を示す信号時系列図であり、中継先が走査受信を行う場合に、予備送信処理を行うか否かを判断する様子を示している。即ち、図5(a)は中継元無線通信端末の送信動作を示し、図5(b)は無線中継装置(レピータ)の送受信動作、図5(c)は中継先無線通信端末が一定期間「τ1」周期で走査受信(スキャンモード)動作を示していることを示している。
送信元無線通信端末が送信を開始すると、無線中継装置の送受部も同様に動作を開始する(T1)。無線中継装置(レピータ)では中継動作を開始するが、上述した受信モード情報を記録してあるデータベースを参照して中継先が走査受信機能を有すること、過去の通信履歴等から現在走査受信中であること、及び、走査受信により中継チャネルを受信する周期が「τ1」であることを判断すると、遅延送信機能を起動して予備送信を行う。予備送信により受信信号を中継するまでの遅延時間は「τ1」、若しくは「τ1」より長くする。この処理によれば、中継先無線通信端末が中継チャネルを受信するタイミング以前に連続受信動作に移行するので、頭切れを防止することができる。なお、図5において「※1」が中継チャネルを受信するタイミング、「※2」はそれ以外のチャネルを受信するタイミングである。
【0021】
図6は、本発明の更に他の処理例を示す信号時系列図であり、この例では、中継先無線通信端末に走査受信(スキャンモード)が設定されている場合であって、中継処理が終了した後に、再び中継先無線通信端末に対して中継要求が発生した場合の処理例を示したものである。即ち、図6(a)は中継元無線通信端末の送信動作を示し、図6(b)は無線中継装置(レピータ)の送受信動作、図6(c)は中継先の無線通信端末の走査受信動作を示している。
送信元無線通信端末が送信動作を終了すると、無線中継装置の送受信動作も同様に動作を終了する(T1)。中継先無線通信端末は一定期間「τ2」経過後に走査受信(スキャンモード)に移行する(図c)。その状態において、送信元無線通信端末(他の無線通信端末であってもよい)から新たな中継要求が発生すると(T2)、無線中継装置(レピータ)では中継動作を開始するが、上述した受信モード情報データベースを参照して中継先が走査受信機能を有すること、及び、通信履歴情報から送受信終了後の経過時間(τ3)が中継先端末の「τ2」の期間を過ぎているので、現在走査受信中であること、及び、走査受信により中継チャネルを受信する周期が「τ1」であることを判断すると、遅延送信機能を起動して中継すべき変調信号を重畳することなく搬送波を必要な制御信号で変調し送信する予備送信を行う。予備送信により遅延する時間は「τ1」、もしくは「τ1」より長くし、予備送信が終了すれば遅延させた変調信号を最初から再生して送信する。この処理によれば、中継先無線通信端末が中継チャネルを受信するタイミング以前に連続受信動作に移行し、その後に変調信号が送信されるので、頭切れを防止することができる。なお、図6において「※1」が中継チャネルを受信するタイミング、「※2」はそれ以外のチャネルを受信するタイミングである。
【0022】
図7は、本発明の更に他の処理例を示す信号時系列図であり、この例では、中継先無線通信端末がプライオリティスキャン受信機能を備えている場合であって、中継処理が終了した後に再び中継先無線通信端末に対して中継要求が発生した場合の処理例を示したものである。即ち、図7(a)は中継元無線通信端末の送信動作、図7(b)は無線中継装置(レピータ)の送受信動作、図7(c)は中継先の無線通信端末のプライオリティ受信(プライオリティ走査受信)動作を示している。
送信元無線通信端末が送信動作を終了すると、無線中継装置の送受信動作も同様に動作を終了する(T1)。中継先無線通信端末は一定期間「τ2」経過後にプライオリティ走査受信(優先走査受信)に移行する(図c)。図中「※1」が中継チャネルを受信するタイミング、「※2」はそれ以外のチャネルを受信するタイミングである。
【0023】
この状態において、送信元無線通信端末(他の無線通信端末であってもよい)から新たな中継要求が発生すると(T2)、無線中継装置(レピータ)は、上述した受信モード情報データベースを参照して中継先がプライオリティ受信機能を有すること、及び、通信履歴情報から送受信終了後の経過時間「τ3」が中継先端末の「τ2」の期間を過ぎている(τ3>τ2)ので、現在プライオリティ受信中であること、及び、プライオリティ受信により中継チャネルを受信する周期が「τ1」であることを判断し、遅延送信機能を起動して予備送信を行う。予備送信は、既に説明したように、中継元無線通信端末から送信された変調信号を、直ちに中継波に重畳せず、搬送波で変調した電波を送信するもので、中継元無線通信端末からの変調信号は無線中継装置において録音し、予備送信期間として所要時間遅延させて中継波に重畳する。
また、中継先無線通信端末への制御信号が必要な場合は、その制御信号を所要時間遅延後に音声やデータ等に先立って重畳する。
予備送信により遅延する時間は「τ1」、若しくは「τ1」より長い予備送信を終了した後、遅延させた変調信号を最初から再生して送信する。この処理によれば、中継先無線通信端末が中継チャネルを受信するタイミングで連続受信動作に移行し、その後送信される変調信号を受信できるので、頭切れを防止することができる。なお、プライオリティ受信の一例として、図7(c)に示すように、中継チャネルに対してウェイクとなるタイミング(※1)を、その他のチャネルを受信するタイミング(※2)より多くの回数ウェイクにすれば、他の無線通信端末からの呼出しに迅速に対応することが可能である。
【0024】
図8は本発明の他の実施例を示す無線システム概要図である。この例では、無線中継装置22を介して、無線通信端末23Aが複数の無線通信端末23B、23Cを呼出す場合を示している。この場合であっても、同様に無線中継装置22に備えた受信モード情報のデータベースを参照して遅延送信の要否や遅延時間等を決定するが、複数の中継先無線通信端末の受信モードが異なる場合は、両者に適合できるような長めの予備送信時間や遅延時間を設定すればよい。なお、この例の場合において、通信相手方の受信モード情報のデータベースを各無線通信端末に備えるように構成し、無線通信端末23において判断した結果を無線中継装置22に必要な制御情報を送付して中継制御を行うことも出来るであろう。あるいは、無線通信端末と無線中継装置の両者に備え、無線通信端末から中継要求する信号中に、どちらのデータベースを使用するかを通知するように構成すること、又は、無線中継装置側にデータがない場合、無線通信端末から必要なデータを送信するように制御することもできる。
【0025】
図9は更に本発明の変形実施例を示す無線システム概要図である。この例では、無線中継装置を介することなく無線通信端末24Aと24Bが直接通信する場合を例示している。この場合は、通信相手方の受信モード情報のデータベースを各無線通信端末に備える必要がある(図8の例においても使用可能である)。
例えば、図10に示した無線通信端末100の制御部120中のROM、RAMに通信相手方の受信モード情報のデータベースを記憶できるようにしておき、呼出す際に、上述したようにデータベースを参照して予備送信(遅延送信)の要否と、相手方の走査受信や間欠受信の周期等の情報を取得した上で、所要の送信を行う。このときの受信モード情報の取得方法は、本発明においては無線中継装置に受信モード情報データベースを保有しているので、それらのデータの中から必要なものを転送してもらうように制御すれば、無線通信端末側に全てのデータを保有する必要がない。
【0026】
本発明は以上説明した例に限定する必要はなく種々変形が可能である。例えば、無線システムとして中継装置が一つの例を示したが、複数でも構わないし、変調方式も特定のものに限定する必要はない。また、その変調にCTCSSやCDCSS等のスケルチ信号が重畳される場合にも、本発明を適用することができる。更に、受信モード情報データベースに記憶する情報は、例示したものの一部でも良いし、更に、他のものを含めてもよい。
また、遅延送信を行う際に、会話に関する変調信号の一部又は全体を、適宜圧縮、あるいは間引きして、遅延して送信開始した分を補正する処理を加えることによって、実際の通話の終了時刻が、遅延再生した変調信号の通話終了時刻が出来る限り近づくように制御すれば、相互の会話がスムーズに行われるようになるであろう。更に、近年、CPUやDSP、メモリを備えたデジタル無線機が一般的であるので、上述した本発明の処理機能を実行するように構成したプログラムやデータをインストールすることによって、本発明を実施することも可能であろう。
【符号の説明】
【0027】
1、2 アンテナ、3、4 送受信切替部、5、6 ベースバンド処理部、7 マイク、8 A/D(アナログ・デジタル変換器)、9 D/A(デジタル・アナログ変換器)、11 制御部、12 コントローラ、13 計時部、14 記憶部、20、23、24 無線通信端末、21、22 無線中継装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継先無線通信端末を識別する識別情報を送信する機能と間欠受信機能を有する複数の無線通信端末における通信を中継する無線中継装置において、
前記無線通信端末夫々の間欠受信周期を含む受信モード情報をその無線通信端末の識別情報に対応付けて記憶した受信モード情報データベースと、
中継元無線通信端末から送信され受信した信号に含まれる中継先無線通信端末の識別情報と前記受信モード情報データベースとから前記中継先無線通信端末の受信モード情報を取得する手段と、
前記中継元無線通信端末から送信された信号を受信後、前記中継先無線通信端末へ中継すべき情報を含まない信号の予備送信を開始する予備送信手段と、
前記取得した受信モード情報に基づいて、中継すべき情報の送信を前記予備送信の開始から所要時間遅らせる遅延送信手段と、
を備えることを特徴とする無線中継装置。
【請求項2】
無線通信端末の通信履歴を記憶する手段と、
前記受信モード情報データベースと前記通信履歴を参照して前記中継先無線通信端末が間欠受信中であるか連続受信中であるかを判断する手段と、
その判断結果に基づいて前記遅延送信手段を起動するか否かを決定する手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線中継装置。
【請求項3】
間欠受信機能を有する複数の無線通信端末が無線中継装置を介して通信する無線通信方法において、
中継元無線通信端末が中継先無線通信端末を識別する識別情報を前記無線中継装置に送信する識別情報送信ステップと、
前記無線中継装置が前記中継元無線通信端末から送信され受信した信号から前記識別情報を検出する識別情報検出ステップと、
前記無線中継装置が、前記無線通信端末夫々の間欠受信周期を含む受信モード情報と前記識別情報と共に記憶した受信モードデータベースと前記検出した識別情報とから、前記中継先無線通信端末の受信モード情報を取得する受信モード情報取得ステップと、
前記中継元無線通信端末から送信された信号を受信後、前記中継先無線通信端末へ中継すべき情報を含まない信号の予備送信を開始する予備送信開始ステップと、
前記取得した受信モード情報に基づいて、中継すべき情報の送信を前記予備送信の開始から所要時間遅らせる遅延送信開始ステップと、
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
無線中継装置が、無線通信端末の通信履歴を記憶する通信履歴記憶ステップと、
前記無線中継装置が、通信に際して前記受信モードデータベースと中継先無線通信端末の前記通信履歴とを参照して前記中継先無線通信端末が間欠受信中であるか連続受信中であるかを判断する受信判断ステップと、
前記無線中継装置が、前記受信判断ステップの結果に基づいて前記遅延送信開始ステップを起動するか否かを決定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の無線通信方法。
【請求項1】
中継先無線通信端末を識別する識別情報を送信する機能と間欠受信機能を有する複数の無線通信端末における通信を中継する無線中継装置において、
前記無線通信端末夫々の間欠受信周期を含む受信モード情報をその無線通信端末の識別情報に対応付けて記憶した受信モード情報データベースと、
中継元無線通信端末から送信され受信した信号に含まれる中継先無線通信端末の識別情報と前記受信モード情報データベースとから前記中継先無線通信端末の受信モード情報を取得する手段と、
前記中継元無線通信端末から送信された信号を受信後、前記中継先無線通信端末へ中継すべき情報を含まない信号の予備送信を開始する予備送信手段と、
前記取得した受信モード情報に基づいて、中継すべき情報の送信を前記予備送信の開始から所要時間遅らせる遅延送信手段と、
を備えることを特徴とする無線中継装置。
【請求項2】
無線通信端末の通信履歴を記憶する手段と、
前記受信モード情報データベースと前記通信履歴を参照して前記中継先無線通信端末が間欠受信中であるか連続受信中であるかを判断する手段と、
その判断結果に基づいて前記遅延送信手段を起動するか否かを決定する手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線中継装置。
【請求項3】
間欠受信機能を有する複数の無線通信端末が無線中継装置を介して通信する無線通信方法において、
中継元無線通信端末が中継先無線通信端末を識別する識別情報を前記無線中継装置に送信する識別情報送信ステップと、
前記無線中継装置が前記中継元無線通信端末から送信され受信した信号から前記識別情報を検出する識別情報検出ステップと、
前記無線中継装置が、前記無線通信端末夫々の間欠受信周期を含む受信モード情報と前記識別情報と共に記憶した受信モードデータベースと前記検出した識別情報とから、前記中継先無線通信端末の受信モード情報を取得する受信モード情報取得ステップと、
前記中継元無線通信端末から送信された信号を受信後、前記中継先無線通信端末へ中継すべき情報を含まない信号の予備送信を開始する予備送信開始ステップと、
前記取得した受信モード情報に基づいて、中継すべき情報の送信を前記予備送信の開始から所要時間遅らせる遅延送信開始ステップと、
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
無線中継装置が、無線通信端末の通信履歴を記憶する通信履歴記憶ステップと、
前記無線中継装置が、通信に際して前記受信モードデータベースと中継先無線通信端末の前記通信履歴とを参照して前記中継先無線通信端末が間欠受信中であるか連続受信中であるかを判断する受信判断ステップと、
前記無線中継装置が、前記受信判断ステップの結果に基づいて前記遅延送信開始ステップを起動するか否かを決定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−9825(P2011−9825A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148456(P2009−148456)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
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