説明

無線端末及び無線システム

【課題】ネットワークを構成する無線端末の全てに中継能力を持たせた上で、周辺の無線端末と情報を交換し、一部の無線端末のみが実際に中継処理を行うように制御することができるようにする。
【解決手段】本発明の無線端末は、自端末が中継処理を行うか否かに応じて、自端末の電源制御を行う電源制御手段と、電源制御手段の制御の下、自端末が中継処理を行うか否かの動作状態を示す状態情報を、定期的に周辺端末に向けて送信する送信手段と、電源制御手段の制御の下、周辺端末が送信した状態情報を受信する受信手段と、受信手段が受信した周辺端末の状態情報を保持する状態情報保持手段と、状態情報保持手段に保持される状態情報に基づき、中継処理を行う周辺端末の存在の有無に応じて、自端末が中継処理を行う否かの決定を行う状態決定手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末及び無線システムに関し、例えば、センサネットワークをはじめとするマルチホップ無線ネットワーク及びこれを構成する無線端末に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の無線端末でネットワークを構成し、隣接した無線端末間でパケットの送受信を繰り返すことで直接接続していない無線端末間の通信を実現する様々な方式が開発されている。
【0003】
このような無線ネットワークにおいては、有線ネットワークとは異なり追加の配線コストを使うことなく、信号が周辺の全ての無線端末に到達するため、全ての無線端末が周辺の全ての無線端末と通信可能であることを前提として転送経路を設定するのが一般的であった。
【0004】
しかしながら、全ての無線端末との通信を前提とすると、各無線端末の消費電力が大きくなるという問題がある。これは通信を行うと言うことは周辺の無線端末からの信号を受信することを期待されることによる。信号を受信するためには常に受信機を動作させておく必要があり、無線端末の消費電力が大きくなる。
【0005】
そこで、中継処理をするノードとしないノードに役割を分ける(この場合、中継をするノードだけが中継を行うものとしてルーティング処理が行われる)方法が開発されている。
【0006】
例えば特許文献1には、エンドデバイスと名付けた端末は中継処理をせずに、受信機の電源を切ることで消費電力を削減する技術が記載されている。中継処理をしない無線端末は周辺の無線端末から特定の1つを選択し、選択した無線端末としか通信をしないことで消費電力の削減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−55301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の方法では中継処理を行わない無線端末の消費電力が削減されるだけであり、中継処理を行う無線端末の消費電力の削減はなされない。さらに利用可能な通信経路の一部(例えば、中継機能を動作させない無線端末間のリンクなど)を用いないことになるので、通信経路を変更することによって信頼性を確保することができなくなる問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、ネットワークを構成する無線端末の全てに中継能力を持たせた上で、周辺の無線端末と情報を交換し、一部の無線端末のみが実際に中継処理を行うように制御することができる無線端末及び無線システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の無線端末は、無線ネットワークを構成する無線端末において、(1)自端末が中継処理を行うか否かに応じて、自端末の電源制御を行う電源制御手段と、(2)電源制御手段の制御の下、自端末が中継処理を行うか否かの動作状態を示す状態情報を、定期的に周辺端末に向けて送信する送信手段と、(3)電源制御手段の制御の下、周辺端末が送信した状態情報を受信する受信手段と、(4)受信手段が受信した周辺端末の状態情報を保持する状態情報保持手段と、(5)状態情報保持手段に保持される状態情報に基づき、中継処理を行う周辺端末の存在の有無に応じて、自端末が中継処理を行う否かの決定を行う状態決定手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2の本発明の無線システムは、第1の本発明の無線端末を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、中継処理を行う無線端末は周辺の状況の変化や端末自体の状態の変化に応じて変更し、特定の無線端末が常時中継処理を行わないように制御することによって、全ての無線端末の消費電力の削減を実現する。またこのようにすることで利用可能な通信経路が従来の方法よりも多くなり、より信頼性の高い通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態のネットワークの構成を示す構成図である。
【図2】第1の実施形態の無線端末の内部構成を示す内部構成図である。
【図3】第1の実施形態の状態管理部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態の状態情報保持部の構成を示す構成図である。
【図5】第1の実施形態のネットワークの構成を示す構成図である。
【図6】第1の実施形態の無線端末におけるネットワーク構成処理を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態の無線端末の送信タイミング及び受信タイミングを説明する説明図である。
【図8】第1の実施形態の無線端末の状態決定処理を示すフローチャートである。
【図9】図5に示す無線端末108の状態情報を示す図である。
【図10】図5に示す無線端末103の状態情報を示す図である。
【図11】実際に動作させた場合のネットワーク構成を示す構成図である。
【図12】第1の実施形態の遷移要求信号送信処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(A)実施形態
以下では、本発明の無線端末及び無線システムの実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
この実施形態は、センサネットワークをはじめとするマルチホップ無線ネットワークに本発明を適用した実施形態を例示し、無線端末間の消費電力の均等化、各無線端末の消費電力の削減、無線端末の故障若しくは無線端末間の無線リンクの切断による通信途絶の回避を実現する方式に関するものである。
【0016】
(A−1)実施形態の構成
図1は、実施形態のマルチホップ無線ネットワークの構成例を示す無線端末の配置図である。
【0017】
図1において、101〜125は無線端末(ノード)を示す。「R」を付した端末は中継処理を行う無線端末(以下「マスター」又は「マスターノード」ともいう)であり、何も付していない端末は中継処理行っていない無線端末(以下、「スレーブ」又は「スレーブノード」ともいう)である。また、無線端末間を結ぶ点線及び実線は、2個の無線端末が直接通信可能であることを意味しており、実線は、マスター間のリンクを示している。
【0018】
図1(b)は、図1(a)に示す構成からマスターが変化した例を示している。図1(a)、(b)の双方で、スレーブは直接どこかのマスターと通信可能になっており、マスターを介して任意の2個の無線端末が通信可能となっている。また、図1(a)、(b)の双方で、常時マスターになっている無線端末が存在していない。本発明が理想的に動作した場合には、常時マスター動作をする無線端末がなくなり、各無線端末の消費電力が削減される。
【0019】
図2は、無線端末101〜125の内部構成を示す内部構成図である。全ての無線端末101〜125は同じ内部構成を有するので、図2では無線端末200と表記する。
【0020】
図2において、無線端末200は、アンテナ201、受信回路202、送信回路203、受信データ処理部204、送信データ生成部205、状態管理部206を少なくとも有する。
【0021】
アンテナ201は、捕捉した無線信号を受信回路202に与えたり、送信回路203からの無線信号を送波したりするものである。
【0022】
受信回路202は、アンテナ201からの無線信号に対して復調処理を行い、デジタル情報に変換して、受信データとして受信データ処理部204に与えるものである。
【0023】
受信データ処理部204は、受信回路202からの受信データに対して所定の処理を行った後、状態管理部206に必要なデータを与えるものである。受信データ処理部204は、自端末宛のデータ信号を受信した場合には、受信処理を行う。他の無線端末宛のデータ信号を受信した場合には、状態管理部206から与えられた情報を用いて転送先を決定し、送信データ生成部205に与えるものである。
【0024】
送信回路203は、送信データ生成部205が生成した送信データを無線信号に変換してアンテナ201に与えるものである。
【0025】
送信データ生成部205は、状態管理部206から得られる隣接端末の情報を利用して、周辺の無線端末に送信する送信データの生成や、受信データ処理部204から受け取った転送すべき転送データの生成を行い、送信データや転送データを送信回路203に与えるものである。
【0026】
送信データ生成部205は、自端末が中継処理を行うマスターであるか又は中継処理を行わないスレーブであるかの動作状態を示す状態情報を状態管理部206から受け取り、この状態情報を含む送信データを生成し、定期的に送信するものである。ここでは、状態情報を含む信号を通知信号という。通知信号は、定期的に周辺の無線端末に向けて送信される。
【0027】
状態管理部206は、受信データ処理部204から受信データを受け取り、周辺の無線端末の状態情報や自端末の動作状態を決定するために必要な情報の保持を行ったり、自端末がマスターとして動作するか又はスレーブとして動作するかの動作状態を決定したり、自端末の動作状態を示す状態情報を送信データ生成部205に与えたり、送信回路203や受信回路202の電源制御を行ったりするものである。
【0028】
図3は、状態管理部206の内部構成を説明するブロック図である。図3において、状態管理部206は、状態情報保持部301、状態決定部302、電源制御部303、遷移要求信号送信制御部304を少なくとも有する。
【0029】
状態情報保持部301は、他の無線端末の状態情報を保持するものである。この実施形態では、状態情報保持部301が、周辺の無線端末からの通知信号に基づき、自端末の隣接端末(以下、1hopノード)と、隣接端末の隣接端末(以下、2hopノード)の識別情報と各無線端末の状態情報とを保持する場合を示す。
【0030】
図4は、状態情報保持部301の状態情報の保持内容を説明する説明図である。図4では、例えば図1(a)に示す無線端末108が有する状態情報保持部301の保持内容の一部を例示する。
【0031】
図4において、状態情報保持部301は、「隣接端末」、「種別」、「2hopノード」を項目とする。「隣接端末」は、1hopノードの識別情報を保持する。例えば、図4の第1行目の「102」は、図1(a)の無線端末102が無線端末108の隣接端末であることを示す。「種別」は、隣接端末の状態情報を保持する。図4では、「M」はマスターを示し、「S」はスレーブを示す。隣接端末の状態情報は、通知信号に含まれる送信元端末及び状態情報から取得することができる。「2hopノード」は、隣接端末の隣接端末の識別情報を保持する。例えば、図4の第1行目の「101、103、106、107、108」を保持する。2hopノードの状態情報は、例えば、通知信号を送信する際に、自端末の隣接端末の状態情報を通知信号に含めて送信する等の方法を適用することで取得することができる。
【0032】
状態決定部302は、状態情報保持部301に保持される各無線端末の状態情報に基づき、マスターとして動作する周辺端末の存在の有無に応じて、自端末をマスターとして動作するか又はスレーブとして動作するかの決定を行うものである。なお、状態決定部302による状態決定処理については動作の項で詳細に説明する。
【0033】
電源制御部303は、自端末がマスターとして動作するか又はスレーブとして動作するか否かに応じて、自端末の送信回路及び受信回路の電源制御を行うものである。自端末がマスターの場合、電源制御部303は、状態情報を含む通知信号及び自端末が生成した送信データの送信期間を送信動作させ、それ以外の期間を受信待機状態となるよう電源制御する。また、自端末がスレーブの場合、電源制御部303は、状態情報を含む通知信号及び自端末が生成した送信データの送信期間を送信動作させ、通知信号の受信期間以外の期間をスリープ状態とするよう電源制御する。
【0034】
遷移要求信号送信制御部304は、自端末がマスターの場合に、周辺に存在するスレーブに対して、マスターになることを要求する遷移要求信号を送信するよう制御するものである。
【0035】
(A−2)実施形態の動作
次に、実施形態のマルチホップ無線ネットワークを構成する無線端末の通信処理の動作を図面を参照しながら説明する。
【0036】
実施形態に係るネットワークは、上述した条件を満たすネットワークであればネットワークを構成する方法に依存するものではない。また、図1では、常時マスターノードとなる無線端末が存在しない場合を例示した。しかし、これは必須ではなく、一部の無線端末が常時マスターノードとなっていても良い。例えば、電源が確保されている無線端末や、外部ネットワークへの接続機能を持つノード等が存在する場合には、その無線端末が常時マスターノードとなっていることが望ましいからである。
【0037】
以下では、図5のネットワーク構成を用いてネットワークを構成する動作を説明する。図5は、図1と同じ無線端末101〜125の配置において構成され得るネットワーク構成である。
【0038】
(A−2−1)ネットワーク構成処理
図6は、各無線端末200(101〜125)によるネットワークを構成する処理の動作を示すフローチャートである。また図7は、各無線端末の通信タイミングの様子を説明する説明図である。
【0039】
まず、各無線端末200は、自端末の識別情報及び自端末の状態情報を含む通知信号を、周辺の無線端末に向けて送信する(ステップS101)。
【0040】
ここで、各無線端末200は、自端末の隣接端末の識別情報及び各隣接端末の状態情報も、通知信号に含むようにする。
【0041】
また、各無線端末200は周辺の無線端末との間で自端末の送信タイミングを有しており、送信データ生成部205は、自端末の送信タイミングに、状態管理部206から取得した、自端末の識別情報及び自端末の状態情報と、自端末の隣接端末の識別情報及び各隣接端末の状態情報とを含む通知信号を生成し、周辺の無線端末に向けて送出する。なお、通知信号の宛先は指定せずに、「周辺に存在する全無線端末」に向けて送信する。
【0042】
各無線端末200は、周辺の無線端末が送信した信号を受信する(ステップS102)。周辺の無線端末から通知信号を受信した場合、受信データ処理部204は、当該通知信号を状態管理部206に与える。状態管理部206は、受信した通知信号に含まれる情報から、1hopノードと2hopノードとの識別情報及び状態情報を取得し、状態情報保持部301に保持する。
【0043】
そして、状態決定部302は、状態情報保持部301に保持される状態情報に基づいて、自端末をマスターとするか又はスレーブとするかの状態決定処理を行う(ステップS103)。具体的な決定方法は後述する。
【0044】
自端末がスレーブノードの場合、中継処理は行わない。そのため、電源制御部302は、データ送信時と通信信号の送信時以外はスリープ動作を行い、受信回路(受信機)202の電源を切る(ステップS104)。ここで、各無線端末200は、通知信号の送信期間直後、所定期間を通知信号の受信期間とするため、この所定期間だけ受信待機を行う。
【0045】
自端末がマスターノードの場合、中継処理を行う。そのため、電源制御部302は、送信データの送信時及び通知信号の送信時以外の期間を受信待機状態とし、受信回路(受信機)202の電源を入れている(ステップS105)。
【0046】
このとき、他のマスターノードに対して送信データを転送する場合、送信データ生成部205は、受信データ処理部204から転送データを受け取ると、その転送先のマスターノード宛の送信データを生成して送信する。
【0047】
これに対して、スレーブノードに対して送信データを送信する場合、送信先のスレーブノードは通知信号の送信時以外はスリープ状態であるから、送信データ生成部205は、当該スリープノードから通知信号を受信すると速やかに、当該スリープノード宛の送信データを生成して送信する。
【0048】
例えば、図7において、3台の無線端末が相互に通信可能であり、送信ノード(マスター)11と受信ノード(マスター)12とが無線リンクを張っているとする。斜線部は通知信号の送信、黒塗部分はデータの送信、白抜き部分は受信待機及び受信を示し、何もない部分はスリープ状態にあることを示す。
【0049】
送信ノード(マスター)11において、受信ノード(マスター)12及び受信ノード(スレーブ)13に送信すべき送信データが発生する(S201)。
【0050】
この場合、受信ノード(マスター)12は送信期間以外でも受信回路202の電源を入れているから受信待機状態にあるから、送信ノード(マスター)11は、受信ノード(マスター)12からの通知信号の受信を待たずに随時、受信ノード(マスター)12に送信データを送信する(ステップS202)。
【0051】
これに対して、受信ノード(スレーブ)は通知信号の所定の受信期間だけ電源を入れておりそれ以外の期間はスリープ状態になっているから、受信ノード(スレーブ)13から通知信号の受信をした直後に、送信ノード(マスター)11は、受信ノード(スレーブ)13に送信データを送信する(ステップS204)。
【0052】
また、自端末がマスターノードの場合、必要に応じて、周辺に存在するスレーブノードに対して、遷移要求信号の送信処理を行う(ステップS106)。このようにすることで、スレーブノードは大部分の時間をスリープ状態にすることができ、消費電力を削減することができる。
【0053】
遷移要求信号の送信の手順は、送信データを送信する場合と同様である。つまり、スレーブノードから通知信号を受信した直後に送信する。また、遷移要求信号を受信したスレーブノードは、マスターノードに遷移する。なお、遷移要求信号を送信する基準は後述する。
【0054】
(A−2−2)状態決定処理
次に、各無線端末200がマスターとして動作するか又はスレーブとして動作するかの動作状態の決定処理について図面を参照しながら説明する。
【0055】
図8は、状態決定処理の動作を説明するフローチャートである。各無線端末200は、現在の自端末の状態に照らして、図8に示す規則の一部若しくは全部に従って動作する。
【0056】
初期状態においては、各無線端末200はスレーブノードである(ステップS301)。
【0057】
周辺端末から通知信号を受信すると、状態管理部206は、自端末の隣接端末(1hopノード)と隣接端末の隣接端末(2hopノード)との識別情報と、各端末(1hopノード、2hopノード)の状態情報を状態情報保持部301に保持する。状態決定部302は、状態情報保持部301を参照しながら自端末をマスター又はスレーブとして動作するか否かを決定する(ステップS302)。
【0058】
状態決定部302は、状態情報保持部301を参照して、周辺にマスターノードが存在するか否かを判断し(ステップS303)、周辺にマスターノードが存在しない場合、自端末をマスターノードへ遷移する(ステップS304)。
【0059】
自端末がマスターノードの場合、状態決定部302は、隣接端末の状態を見てマスターノードとして動作する隣接端末の数を確認する(ステップS305)。
【0060】
そして、自端末がマスターノードであり、マスターノードとして動作する隣接端末が0台の場合、状態決定部302は、自端末がマスターノードとして動作することを継続する(ステップS306)。
【0061】
また、自端末がマスターノードであり、マスターノードとして動作する隣接端末1台の場合、状態決定部302は、隣接端末のうちスレーブノードの全てが2hopノードに自端末以外のマスターノードを含んでいるか否かを判断し(ステップS307)、この場合、自端末をスレーブノードに遷移し(ステップS308)、そうでない場合、自端末のマスターノードを継続する(ステップS309)。または、状態決定部302は、スリープ制御を行うマスターノードとして動作するようにしても良い。例えば、状態決定部302は自端末をマスターと決定するが、周辺の無線端末から受信する情報に一定期間以上変化がない場合には、電源制御部303が、自端末をマスターとしたまま、スリープ制御を行うようにしても良い。
【0062】
ステップS305において、自端末がマスターノードであり、マスターノードとして動作する隣接端末が2台以上の場合、状態決定部302は、状態情報保持部301を参照して、「1hopノードのうちマスターノードが相互に直接若しくは自端末以外のマスターノードを経由して通信することが可能かどうか」を判定する(ステップS310)。
【0063】
そして、自端末以外のマスターノードを経由して通信することが可能な場合は自端末をスレーブノードに遷移し(ステップS311)、可能でない場合は自端末のマスターノードを継続する(ステップS306)。
【0064】
また、自端末がスレーブノードの場合(ステップS312)、状態決定部302は、状態情報保持部301を参照して、「1hopノードの内マスターノードが相互に直接若しくは他のマスターノードを経由して通信することが可能かどうか」を判定し(ステップS310)、通信可能な場合は自端末のスレーブノードを継続し(ステップS311)、不可能な場合には自端末をマスターノードに遷移する(ステップS306)。
【0065】
状態決定処理の具体的な例を図5(a)を参照しながら詳述する。図9は、図5(a)に示す無線端末108が保持している状態情報の内容を示す。無線端末108は、マスターノード102、104、112、114と接続しているが、いずれも無線端末108を介してのみ接続している。
【0066】
例えば、マスターノード102を例にとると、2hopノードのマスターノードは無線端末108のみであることから明らかである。また、マスターノード114を例に取ると、2hopノードのマスターノードは無線端末108以外に無線端末119が存在するが、無線端末114の隣接端末のマスターノードで、2hopノードに無線端末119を持つノードが存在しないことから、マスターノード114とマスターノード102、104、112は、無線端末108を経由せずに接続することが不可能であることがわかる。従って、無線端末108はマスターノードを継続する。
【0067】
また、無線端末116、119、102、104は、隣接端末のうちマスターノードが1台しか存在しないためマスターノードを継続する。例えば、無線端末116は、無線端末121にとっては直接通信が可能な唯一のマスターノードであり、ネットワークを構成する上で必要なマスターノードであることがわかる。従って、無線端末116はマスターノードを継続する。
【0068】
また、図10は、図5(a)に示す無線端末103が保持している状態情報の内容を示す。
【0069】
図10において、隣接しているマスターノード102、104、108のうち、無線端末102と無線端末108とは直接通信可能であり、無線端末104と無線端末108とは直接通信可能であることが保持している情報からわかる。つまり無線端末102と無線端末104は、無線端末108を介して通信可能である。従って無線端末103はマスターノードになる必要はないから、自端末をスレーブノードに遷移する。
【0070】
図1及び図5において同様の演算を全ての無線端末が行った場合、ネットワークの構成は変化しない。すなわち、図1及び図5で示した状態でネットワークは安定している。
【0071】
ここで、隣接ノードの定義は、以下のようにして行う。
【0072】
自端末がマスターノードの場合、周辺端末の通知信号を一定時間受信しなかった場合、当該周知端末は隣接端末から削除する。
【0073】
自端末がスレーブノードの場合、定期的に通知信号を受信するために一定時間(通知信号の送信間隔以上の時間)受信を行い、当該時間に通知信号を受信した端末を隣接端末とする。
【0074】
図1及び図3に示した安定した状態から他の状態に遷移する原因としては以下に示す状況が発生した場合である。
【0075】
無線端末間の接続関係に変化が生じた場合がある。この場合、図1及び図3中実線で示したリンクに限らず、点線で示したリンクに変化があった場合も含む。また、今まで利用可能であったリンクが利用できなくなった場合だけではなく、今まで存在しなかったリンクが利用できるようになった場合も含む。
【0076】
また、例えば消費電力の問題などでマスターノードがスレーブノードに遷移した場合、周辺端末が連動して状態を遷移させる場合がある。
【0077】
また、例えば電池切れなどで無線端末が動作を停止した場合がある。
【0078】
また、何らかの理由で新しい無線端末(ノード)がネットワークに参加した場合がある。
【0079】
図11は、実際のネットワークが想定して無線端末の密度を上げて、ネットワークを構成した例を示す。図11において、丸(この丸付近に1と記載)がスレーブノードを示し、四角(この四角付近に2と記載)がマスターノードを示す。細線は無線端末間が直接通信することが可能であることを示す。太実線はマスターノード間の接続を示しており、このリンクを介して全ての無線端末間の通信が可能となっている。
【0080】
図11に示すネットワークは、上述した各無線端末の状態遷移が発生しない限り、図11に示す状態でネットワークは安定している。ルーティングに関しては、従来から存在する手法、例えばAODV(Adhoc On−demand Distance Vector)を用いることで任意の無線端末間で通信を行うことが可能である。
【0081】
ただし、この実施形態を用いると場合によっては頻繁にマスターノードとスレーブノードとの間の状態変更が発生し、ネットワークの構成に変化が生じることとなる。従ってルーティング方式に例えば以下のような機能を加えることで安定したルーティングを実現する。
【0082】
例えば、ネットワーク構成に変化が生じた無線端末からルーティング情報をネットワーク全体に送信する機能を加える。
【0083】
また例えば、定期的に全ての無線端末がルーティング情報を送信し、常時ルーティング情報を最新の状態に保つ機能を加える。
【0084】
上記のようなルーティングを行うことで、各無線端末の状態遷移を他の無線端末に迅速に知らせることができ、ネットワーク構成も迅速に変化させることできるので安定したルーティングを実現できる。
【0085】
(A−2−3)遷移要求信号の送信処理
図12は、遷移要求信号の送信処理の動作を示すフローチャートである。
【0086】
図12において、遷移要求信号送信制御部304は、自端末がマスターノードであり(ステップS401)、自端末の周辺にマスターノードが1台も存在しない場合に、遷移要求信号を送信する。
【0087】
遷移要求信号送信制御部304は、状態情報保持部301を参照して、自端末以外のマスターノードが1台もない隣接スレーブノードがあるか否かを判断する(ステップS402)。なお、このような隣接スレーブノードが存在しない場合には、遷移要求を送信しない。
【0088】
そして、自端末以外のマスターノードが周辺に存在する隣接スレーブノードが1台の場合(ステップS403)、当該隣接スレーブノードを送信先とする(ステップS404)。
【0089】
また、複数の隣接スレーブノードがある場合には(ステップS403)、その要求を受信する端末の周辺に存在するマスターノードが多い端末を選択する(ステップS405)。なお、遷移要求信号の送信先はスレーブノードであるため、当該スレーブノードからの通知信号を受信した直後に遷移要求信号を送信する。
【0090】
遷移要求信号を受信したスレーブノードはマスターノードに遷移し、周辺端末へ遷移したことを通知するために通知信号を送信する。
【0091】
(A−3)実施形態の効果
以上のように、実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0092】
全ての無線端末が中継処理をせず、ネットワークを構成するために必要なだけの無線端末が中継処理を行う。中継処理を行わない無線端末はスリープ制御を行うことでネットワーク全体の消費電力が削減される。
【0093】
例えば、特定のリンクの切断、端末の電池切れ、故障などといった状況の変化に応じてネットワークの形状を変化させてネットワークの機能を維持することが可能となり、より信柳生の高いネットワークを構築することができる。
【0094】
(B)他の実施形態
上述した実施形態のほかにも、以下のような実施形態の動作を組み合わせることができる。
【0095】
ネットワークを安定させるために、スレーブノードとなった端末も周辺端末の状態に変化がないことを確認するまではスリープ制御を行わない動作を加えるようにしても良い。
【0096】
また、ネットワークを安定させるために、スレーブノードとなった端末も一定時間が経過した後に一定時間(例えば通知信号の送信周期時間)受信待機を行い、周辺端末の通知信号を受信し、周辺端末の情報を更新し、中継機能を動作させるか否かを決定する動作を加えるようにしても良い。
【0097】
また逆に、自端末がマスターノードの場合、周辺端末のとの間で、通知信号の送受信時間に、送信データの送受信や転送処理がない場合には、電源制御部303は、スリープ制御を行うようにしても良い。
【0098】
例えば、電源の接続の有無、電池残量などの端末の属性によって、周辺の端末の状態に依らず、常に中継機能を動作させる。
【0099】
例えば、電池の残量など端末の属性によって、自端末が中継機能を動作させないとネットワークが成立しない場合を除いて、中継機能を動作させない機能を追加する。
【0100】
上述した実施形態では、隣接端末の基準を説明したが、その他に隣接端末の基準として、過去の一定期間に一定回数以上の通知信号を受信していることを用いる。
【符号の説明】
【0101】
101〜125…無線端末、
200…無線端末、201…アンテナ、202…受信回路、203…送信回路、
204…受信データ処理部、205…送信データ生成部、206…状態管理部、
301…状態情報保持部、302…状態決定部、302…電源制御部、
304…遷移要求信号送信制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークを構成する無線端末において、
自端末が中継処理を行うか否かに応じて、自端末の電源制御を行う電源制御手段と、
上記電源制御手段の制御の下、自端末が中継処理を行うか否かの動作状態を示す状態情報を、定期的に周辺端末に向けて送信する送信手段と、
上記電源制御手段の制御の下、周辺端末が送信した上記状態情報を受信する受信手段と、
上記受信手段が受信した周辺端末の上記状態情報を保持する状態情報保持手段と、
上記状態情報保持手段に保持される上記状態情報に基づき、中継処理を行う周辺端末の存在の有無に応じて、自端末が中継処理を行う否かの決定を行う状態決定手段と
を備えることを特徴とする無線端末。
【請求項2】
上記状態決定手段が、上記状態情報に基づき、中継処理を行う端末が周辺に存在しない場合に自端末を中継処理を行うものとし、存在する場合には自端末を中継処理を行わないものと決定することを特徴とする請求項1に記載の無線端末。
【請求項3】
上記状態決定手段が、上記状態情報に基づきネットワークの構成から周辺端末が通信可能か否かを判定し、その判定結果に応じて自端末が中継処理を行うか否かを決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線端末。
【請求項4】
自端末が中継処理を行う場合であって、上記状態情報に基づき中継処理を行わない周辺端末のうち、自端末以外に中継処理を行う端末を隣接に持たない周辺端末に対して、中継処理を行うことを要求する遷移要求信号を送信する遷移要求信号送信手段を備え、
上記状態決定手段は、他の無線端末から上記遷移要求信号を受信すると、自端末を中継処理を行うよう決定することを特徴とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無線端末。
【請求項5】
上記電源制御手段は、
自端末が中継処理を行う場合、上記状態情報及び自端末からの送信データの送信期間を送信動作させ、それ以外の期間を受信待機とし、
自端末が中継処理を行わない場合、上記状態情報及び自端末からの送信データの送信期間を送信動作させ、上記状態情報の受信期間以外の期間をスリープ状態とする
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無線端末。
【請求項6】
上記電源制御手段が、自端末が中継処理を行わない場合、上記送信機間の直後に、上記状態情報の受信期間となるように制御することを特徴とする請求項5に記載の無線端末。
【請求項7】
上記電源制御手段が、上記状態情報の送信期間又は受信期間以外で、所定期間以上周辺端末との間で信号の送受信がなければスリープ制御を行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の無線端末。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の無線端末を有する無線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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