無線通信システム
【課題】 マルチホップ通信方式を用い、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる無線通信システムを提供する。
【解決手段】 基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力(低出力)により通信し、基地局からグループの端末局へ第2の空中線電力(高出力)によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた第2の空中線電力の出力期間で第2の空中線電力により信号を送受信し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力(最高出力)による広域ビーコンを送信し、広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームを含むようにした無線通信システムである。
【解決手段】 基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力(低出力)により通信し、基地局からグループの端末局へ第2の空中線電力(高出力)によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた第2の空中線電力の出力期間で第2の空中線電力により信号を送受信し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力(最高出力)による広域ビーコンを送信し、広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームを含むようにした無線通信システムである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関するものであり、特に、マルチホップ通信方式を用い、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
特定小電力無線局は、電波法に基づく無線局の免許を受けることなく, 屋外にて利用可能な無線設備である。社団法人電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Businesses)にて策定された標準規格ARIB STD−T96(非特許文献1)などでは、特定小電力無線局は、異なる無線システム間の干渉を低減する目的で、チャネルの割当て、キャリアセンス、電波の連続送信の制限などの干渉回避技術が必須となっている。
【0003】
また、平成23年3月現在、日本における電波法では、特定小電力無線局における空中線電力の上限は、最大0.01W(10mW)に制限されている。このため、従来の特定小電力無線局では、無線局間の通信距離が最大100m程度と短く、距離の離れた無線局間で無線通信を行うためには、いくつかの無線局を中継して無線通信を行うマルチホップ通信と呼ばれる方式を用いて無線通信を行うのが一般的であった。
【0004】
ところが昨今、日本国内において、特定小電力無線局(免許不要局)の空中線電力の上限が、最大1Wに引き上げるよう電波法が改正されることになった。今後、免許不要の無線通信システムにおいて、無線局間の通信距離が大きく伸び、システムの高度化、利用範囲の拡大が期待されている。
【0005】
[従来の無線通信システム]
従来の特定小電力無線局における無線通信システムについて説明すると、基地局と複数の端末局とから構成されており、基地局と隣接する端末局との間は、小電力の無線通信により接続されている。
また、基地局と末端の端末局との間の中間に位置する端末局は、マルチホップによる中継機能を備えており、基地局と末端の端末局との通信を可能にしている。
【0006】
[従来の無線通信装置]
従来の特定小電力無線局における無線通信装置は、主に、メディアアクセス制御層(MAC:Medium Access Control)、物理層(PHY:Physical Layer)、無線部(RF:Radio Frequency)から構成される。
【0007】
MACは、MAC制御部、送信バッファ、フレーム生成部、フレーム解析部、受信バッファなどから構成され、上位層とのデータ通信処理、PHYを介してのフレーム送受信、無線チャネルの制御等を行う。
【0008】
PHYは、PHY制御部、符号化部、変調部、復調部、復号部などから構成され、物理デバイスを介しての無線信号の変復調や、タイミング制御、周波数制御等を行う。
【0009】
無線部は、周波数シンセ、送信ミキサ、送信増幅器、送受切替器、アンテナ、受信増幅器、受信ミキサ等から構成され、無線信号の周波数変換や増幅、無線電波の送受信などの処理を行う。
【0010】
[従来の変調方式]
PHYにおける変調方式としては、二次変調(スペクトラム拡散)を行わない狭帯域無線通信方式や、二次変調としてスペクトラム拡散を行う方式など、様々な方式がある。
スペクトラム拡散としては、直接連鎖スペクトラム拡散(DSSS:Direct Sequence Spectrum Spread)方式や周波数ホッピングスペクトラム拡散(FHSS:Frequency Hopping Spectrum Spread)方式などが広く使われている。
【0011】
[チャネル構成例]
従来の狭帯域無線通信方式におけるチャネル構成例を説明すると、利用可能な周波数帯域内を規定された複数のチャネル幅に分割し、最初と最後の周波数には隣の周波数帯域との干渉を防ぐためにガードバンドを設け、その内側を規定されたチャネル幅でチャネルを割り当てる。
また、従来のスペクトラム拡散通信方式におけるチャネル構成例を説明すると、例えば、狭帯域無線通信方式の5つのチャネル幅を1つのチャネル幅として割り当てて使用するようになっており、最初と最後にはガードバンドが設けられている。
【0012】
[フレーム構成]
従来のフレーム構成例について説明すると、従来のフレーム構成例は、国際規格であるIEEE 802.15.4に基づくものである。
基準信号であるビーコンの後に、CAP(Contention Access Period)、CFP(Contention Free Period)、休止期間が続き、2つのビーコンに挟まれた期間をスーパフレームと呼ぶ。
CAPは、CSMA−CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)アルゴリズムによる衝突回避を前提とした、競合が発生し得る通信期間、CFPは、予め通信する領域を割り当てることにより、競合を発生させない通信期間である。
【0013】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2010−130028号公報「RFIDタグ通信装置、及びRFIDタグ通信システム」(株式会社日立製作所)[特許文献1]がある。
特許文献1には、RFIDタグ通信装置が送信信号を送出中に受信信号を監視し、自身の送信信号のレベル変動が小さい送出期間に大きいレベル変動を検出すると、パックスキャッタ信号の応答を返す期間に移行する前に送信信号を停止することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−130028号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「特定小電力無線局950MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備 標準規格」、ARIB STD−T96 1.1版、平成22年7月15日、社団法人 電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来の無線通信システムでは、空中線電力の上限が最大1Wとなった場合、従来の小電力無線を前提とした通信方式では、異なるシステム間の干渉が大きくなる他、同一システム内でもチャネル間の干渉が大きくなるという問題点がある。
【0017】
また、空中線電力が大きい場合、電波の経路として、直接波の他に建物や山などで反射していくつもの経路ができてしまう、マルチパスと呼ばれる現象も発生し易くなるという問題もある。
【0018】
特に、マルチホップ通信では、ホップ数が増えると、データが集約されるに従い、回線に負荷が集中する傾向にある。負荷が集中した場合、回線の無線送信時間が増えるため、干渉回避のための連続送信の制限が満たさなくなる可能性もある。
また、ホップする度に遅延が生じるため、ホップ数が多くなると、送信端末局から受信端末局までのデータ伝送時間が大きくなる問題もある。
【0019】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、マルチホップ通信方式を用い、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局との間では、第1の空中線電力により通信を行う無線通信システムであって、基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力により通信されると共に、基地局からグループの端末局へ第2の空中線電力によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた第2の空中線電力の出力期間で第2の空中線電力により信号を送受信することを特徴とする。
【0021】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力による広域ビーコンを送信するものであり、広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームが含まれることを特徴とする。
【0022】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、基地局が、受信した広域ビーコンの周期のずれに基づいてグループフレームの周期を補正することを特徴とする。
【0023】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、第1の空中線電力の出力電力より、第2の空中線電力の出力電力を大きくし、前記第2の空中線電力の出力電力より、第3の空中線電力の出力電力を大きくしたことを特徴とする。
【0024】
本発明は、隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局との間では、第1の空中線電力により通信を行う無線通信システムであって、基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力により通信されると共に、基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力による広域ビーコンを送信し、当該広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に設けられた第3の空中線電力の出力期間で第3の空中線電力により信号を送受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局との間では、第1の空中線電力により通信を行う無線通信システムであって、基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力により通信されると共に、基地局からグループの端末局へ第2の空中線電力によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた第2の空中線電力の出力期間で第2の空中線電力により信号を送受信する無線通信システムとしているので、第1の空中線電力によるマルチホップ通信に加えて、グループ内の基地局と端末局が第2の空中線電力による信号の送受信も可能となるため、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる効果がある。
【0026】
本発明によれば、基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力による広域ビーコンを送信するものであり、広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームが含まれる上記無線通信システムとしているので、グループ内で基地局と端末局が通信を行うことができると共に、異なるグループの基地局間でも通信できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示す概略図である。
【図2】複数のグループの構成例を示す概略図である。
【図3】本無線通信システムの無線通信装置の構成ブロック図である。
【図4】無線チャネルの構成例を示す概略図である。
【図5】本実施の形態に係る無線フレームの構成例を示す概略図である。
【図6】本実施の形態に係る高出力期間の使用例を示す概略図である。
【図7】本実施の形態に係る低出力期間の使用例を示す概略図である。
【図8】本実施の形態に係るグループ間同期方法の動作を説明する概略図である。
【図9】本実施の形態に係るグループ内同期方法の動作を説明する概略図である。
【図10】本実施の形態に係る接続処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
【図11】本実施の形態に係る離脱処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
【図12】本実施の形態に係る基地局から端末局方向への通信処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
【図13】本実施の形態に係る端末局から基地局方向への通信処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムは、基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力(低出力)により通信し、基地局からグループの端末局へ第2の空中線電力(高出力)によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた第2の空中線電力の出力期間で第2の空中線電力により信号を送受信するようにしているので、第1の空中線電力によるマルチホップ通信に加えて、グループ内の基地局と端末局が第2の空中線電力による信号の送受信も可能となるため、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできるものである。
【0029】
また、本発明の実施の形態に係る無線通信システムは、基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力(最高出力)による広域ビーコンを送信し、広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームを含むようにしているので、グループ内で基地局と端末局が通信を行うことができると共に、異なるグループの基地局間で通信が可能となるものである。
【0030】
[無線通信システムの構成例:図1]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成例について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示す概略図である。
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、図1に示すように、基地局1と複数の端末局2とから構成されている。
【0031】
一つ基地局1と、基地局1から一定の範囲内にある複数の端末局2-1〜2-8によりグループを構成する。グループ内の各端末局は、小電力の空中線電力(第1の空中線電力)で無線接続している。
また、グループ内の基地局1と特定の端末局2-3,2-8は、高出力の空中線電力(第2の空中線電力)で無線接続することができるようになっている。
【0032】
[グループ構成例:図2]
次に、本無線通信システムにおける複数グループの構成例について図2を参照しながら説明する。図2は、複数のグループの構成例を示す概略図である。
図2では、小さい黒い点が端末局を示しており、その中心に黒い点を丸で囲んだ記号が基地局を示している。そして、小さい波線の楕円がグループの通信エリアを示し、大きい波線の楕円が基地局が最大出力の空中線電力(第3の空中線電力)で信号を到達する到達範囲を示している。
異なるグループの基地局間の距離は、基地局がグループを構成する範囲より離れている。
【0033】
[無線通信の空中線電力]
隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局間は、小電力の第1の空中線電力で無線通信を行う。
基地局とそのグループに所属する複数の端末局は、高出力の第2の空中線電力で無線通信を行う。
異なるグループの基地局間は、最高出力の第3の空中線電力で無線通信を行う。
【0034】
ここで、第1の空中線電力、第2の空中線電力、第3の空中線電力の送信電力の関係は、
第1の空中線電力<第2の空中線電力<第3の空中線電力
のようになる。
以下、第1の空中線電力を低出力、第2の空中線電力を高出力、第3の空中線電力を最大出力と称する。
【0035】
[無線通信装置:図3]
次に、本無線通信システムにおける無線通信装置(本無線通信装置)について図3を参照しながら説明する。図3は、本無線通信システムの無線通信装置の構成ブロック図である。
本無線通信装置は、図3に示すように、メディアアクセス制御層(MAC)3、物理層(PHY)4、無線部(RF)5から構成される。
【0036】
[MAC3]
MAC3は、MAC制御部3-1と、送信バッファ3-2と、フレーム生成部3-3と、フレーム解析部3-4と、受信バッファ3-5などから構成され、上位層とのデータ通信処理、PHYを介してのフレーム送受信、無線チャネルの制御等を行う。
【0037】
送信バッファ3-2は、入力された送信データを一時的に記憶するバッファであり、MAC制御部3-1からの指示により送信データをフレーム生成部3-3に出力する。
フレーム生成部3-3は、送信バッファ3-2から入力される送信データについて送信フレームを生成し、PHY4に出力する。
送信フレームでは、後述する広域ビーコン、クループビーコンが組み込まれ、広域ビーコンに続く最高出力期間、クループフレームにおける高出力期間、低出力期間、休止期間が設定される。
【0038】
フレーム解析部3-4は、PHY4から入力された復号された受信データについてフレームの解析を行い、解析結果をMAC制御部3-1に出力すると共に、受信データを取り出して受信バッファ3-5に出力する。
受信バッファ3-5は、フレーム解析部3-4から入力された受信信号を一時的に記憶するバッファであり、MAC制御部3-1からの指示により受信データを出力する。
【0039】
そして、MAC制御部3-1は、MAC3内の各部を制御するものであり、特に、フレーム解析部3-4でのフレーム解析の結果から、フレームの位置によって最高出力期間、高出力期間、低出力期間等を判別し、PHY4のPHY制御部4-1に通知する。
【0040】
[PHY4]
PHY4は、PHY制御部4-1と、符号化部4-2と、変調部4-6と、復調部4-7と、復号部4-5などから構成され、物理デバイスを介しての無線信号の変復調や、タイミング制御、周波数制御等を行う。
【0041】
PHY制御部4-1は、PHY4内の各部を制御するものであり、特に、変調部4-6に対して変調方式を指示し、また、復調部4-7に対して復調方式を指示し、変復調方式を制御する。
また、PHY制御部4-1は、MAC制御部3-1からの送信フレームの生成情報を入力し、RF5の出力電力制御部5-8に低出力、高出力、最高出力の増幅情報を出力する。
符号化部4-2は、MAC3のフレーム生成部3-3から入力されたフレーム信号を符号化し、変調部4-6に出力する。
【0042】
変調部4-6は、PHY制御部4-1で指示された変調方式に従い、符号化部4-2から入力された符号化されたデータを変調してRF5の送信ミキサ5-2に出力する。
復調部4-7は、PHY制御部4-1で指示された復調方式に従い、RF5の受信ミキサ5-7から入力された受信信号を復調し、復号部4-5に出力する。
復号部4-5は、復調部4-7から入力された復調された信号を復号化してMAC3のフレーム解析部3-4に出力する。
【0043】
[無線部5]
無線部5は、周波数シンセ5-1と、送信ミキサ5-2と、送信増幅器5-3と、送受切替器5-4と、アンテナ5-5と、受信増幅器5-6と、受信ミキサ5-7と、出力電力制御部5-8などから構成され、無線信号の周波数変換や増幅、無線電波の送受信などの処理を行う。
【0044】
周波数シンセ5-1は、送受信用の特定周波数の搬送波信号を生成し、送信ミキサ5-2と受信ミキサ5-7に出力する。
送信ミキサ5-2は、PHY4の変調部4-6から入力された変調された信号と周波数シンセ5-1からの搬送波とを合成し、送信増幅器5-3に出力する。
送信増幅器5-3は、出力電力制御部5-8からの指示(低出力、高出力、最高出力の指示)に従い、低出力、高出力又は最高出力の電力増幅を行い、送受信切替器5-4に出力する。
【0045】
送受切替器5-4は、送信の場合に、送信増幅器5-3から入力された増幅信号をアンテナ5-5に出力し、受信の場合に、アンテナ5-5から入力された信号を受信増幅部5-6に出力する。
アンテナ5-5は、送受切替器5-4からの送信信号を空間に電波として出力し、空間からの電波を取り込み、送受切替器5-4に受信信号として出力する。
【0046】
受信増幅器5-6は、送受切替器5-4から入力された受信信号を増幅して受信ミキサ5-7に出力する。特に、受信増幅器5-6は、低出力、高出力、最高出力の受信信号に対応した増幅を行うことができるようになっている。
受信ミキサ5-7は、受信増幅器5-8からの増幅された受信信号と周波数シンセ5-1からの搬送波とを合成し、PHY4の復調部4-7に出力する。
【0047】
出力電力制御部5-8は、PHY制御部4-1からの増幅情報を入力し、送信増幅器5-3に低出力、高出力、最高出力の電力増幅の指示を出力する。
本無線通信装置では、送信増幅器5-3での出力電力を低出力、高出力、最高出力と制御する出力電力制御部5-8を設けたことが特徴の一つである。
【0048】
[無線チャネルの構成例:図4]
次に、無線チャネルの構成例について図4を参照しながら説明する。図4は、無線チャネルの構成例を示す概略図である。尚、図4の横軸が周波数であり、縦軸が出力電力の強さである。
本実施の形態に係る無線チャネルの構成例は、図4に示すように、無線通信システムで使用される周波数帯の前後にガードバンドを設け、当該使用される周波数帯を複数の無線チャネル6に分割する。無線チャネル6は、低出力の無線信号で送受信され、チャネル数はnとなっている。
【0049】
複数の無線チャネルの中からいくつか(図4の例では5つ)の無線チャネル6をグループとして束ねてグループチャネル7とする。グループチャネル7は、高出力の無線信号で送受信される。
また、グループ間の無線信号は、グループチャネル7の範囲内で、最高出力の無線信号8で送受信される。
【0050】
[無線フレームの構成例:図5]
次に、無線フレームの構成例について図5を参照しながら説明する。図5は、本実施の形態に係る無線フレームの構成例を示す概略図である。尚、図5の横軸が時間であり、縦軸が出力電力の強さである。
本実施の形態に係る無線フレームの構成例は、図5に示すように、基地局が、高出力で、一定周期の第1の基準信号(グループビーコン9)を送信し、更に、基地局が、最高出力で、一定周期の第2の基準信号(広域ビーコン10)を送信する。
【0051】
ここで、グループビーコンの周期と広域ビーコンの周期の関係は、
グループビーコンの周期=広域ビーコンの周期×n(nは2以上の整数)
(nは最高出力の電波が届く範囲にあるグループ数以上)
のようになる。
【0052】
そして、2つの隣り合うグループビーコンの期間を「グループフレーム」と呼ぶ。また、2つの隣り合う広域ビーコンの期間を「広域フレーム」と呼ぶ。グループビーコン及び広域ビーコンは、全グループチャネルを使用する。
【0053】
グループフレームは、低出力で無線通信を行う第1の期間(低出力期間12)と、高出力で無線通信を行う第2の期間(高出力期間11)と、最大出力で無線通信を行う第3の期間(休止期間13)とを有する。
最大出力は、異なるグループの基地局間の通信に用いられるが、緊急のデータを送受するのに用いられるため、通常、使用されないことが多い(休止期間)。また、最大出力の期間を広域ビーコンの直後(グループビーコンの前)に設けるようにしてもよい。
【0054】
グループビーコンは、グループフレームの周期[時間]と、低出力期間、高出力期間、休止期間、それぞれの開始・終了を示す情報[時間]を有する。尚、各期間の期間及び前後関係は、特に限定されるものではない。
広域ビーコンは、広域フレームの周期[グループフレーム数]と、グループフレームの周期[時間]と、グループビーコンと広域ビーコンとのオフセット[時間]を示す情報を有する。
【0055】
[高出力期間の使用例:図6]
次に、高出力期間の使用例について図6を参照しながら説明する。図6は、本実施の形態に係る高出力期間の使用例を示す概略図である。
高出力期間の使用例は、図6に示すように、高出力期間をUL(Up-Link:端末局→基地局方向)方向のREQ(Request)期間、DL(Down-Link:基地局→端末局)方向のRSP(Response)期間、UL/DL共用のデータ通信期間に分けている。
【0056】
REQ期間及びRSP期間は、それぞれ、REQフレーム、RSPフレームによる通信が行われ、主に、端末局が基地局との接続や、データ通信を要求するために使用される。
データ通信期間は、データフレーム、ACK(Acknowledgement)フレームによる通信が行われ、基地局と端末局との間でデータやメッセージを送受信するために使用される。
高出力による無線通信では、干渉やマルチパスの影響が大きくなるので、高出力期間はスペクトラム拡散方式による無線通信を行う。また、上記各フレームは、グループチャネル内の全てのチャネルを用いる。
【0057】
[低出力期間の使用例:図7]
次に、低出力期間の使用例について図7を参照しながら説明する。図7は、本実施の形態に係る低出力期間の使用例を示す概略図である。
低出力期間の使用例は、図7に示すように、低出力期間が、隣接する端末局間及び隣接する基地局と端末局間において、従来の小電力のCAPと同様に、CSMA−CAアルゴリズムによるデータ、ACKやメッセージ(MSG:Message)通信を行う。データ等のフレームは、グループチャネル内の個別のチャネルを用いる。
【0058】
[グループ間同期方法:図8]
本無線通信振システムにおけるグループ間同期方法について図8を参照しながら説明する。図8は、本実施の形態に係るグループ間同期方法の動作を説明する概略図である。
グループ間同期方法の動作は、図8に示すように、異なるグループの基地局が、他の基地局から広域ビーコンを受信した場合に、広域ビーコンに同期する。
【0059】
具体的には、グループBの基地局は、先に動作を開始しているグループAの基地局から送信される広域ビーコンを受信する。最初はグループBの基地局自身の時間で、広域ビーコン内の情報であるグループフレームの周期に従いグループフレームのタイミングを生成する。
【0060】
次に、グループAの基地局から受信した広域ビーコン内の情報である広域ビーコンの周期と、自身の時間から生成した広域ビーコン周期のタイミングとの時間的なずれに基づき、グループフレームの周期を補正する。
【0061】
[グループ内同期方法:図9]
本無線通信振システムにおけるグループ内同期方法について図9を参照しながら説明する。図9は、本実施の形態に係るグループ内同期方法の動作を説明する概略図である。
グループ内同期方法の動作は、図9に示すように、グループビーコンを受信した複数の端末局が、グループビーコンと同期する。
【0062】
具体的には、基地局から送信されてくるグループビーコンを受信した後、受信したグループビーコン内のグループビーコン周期を基に端末局自身の時間で生成したグループフレーム周期を生成する。基地局から次に送信されてくるグループビーコンとの時間的なずれを基に、グループフレーム周期を補正する。
【0063】
[接続処理シーケンス:図10]
本無線通信振システムにおける接続処理シーケンスについて図10を参照しながら説明する。図10は、本実施の形態に係る接続処理シーケンスを示すタイミングチャートである。尚、基地局上位層と基地局MACは同じ基地局内にある機能であり、同様に、端末局上位層と端末局MACも同じ端末局内にある機能である。
接続処理シーケンスは、図10に示すように、グループビーコンを送信している基地局に端末局が接続し、グループを構成する。
【0064】
具体的には、端末局上位層4bは、端末局MAC3bに「参加要求」の制御信号を出力し、基地局MAC3aからのグループビーコンを端末局MAC3bが受信した後、接続要求信号を、高出力期間のREQフレームで基地局MAC3aに送信する。
接続要求信号を受信した基地局MAC3aは、「参加要求」の制御信号を基地局上位層4aに出力し、基地局上位層4aが、接続要求した端末局が接続可能か否かを判断し、「参加応答」の制御信号を基地局MAC3aに出力する。
【0065】
そして、基地局MAC3aは、グループビーコンを端末局MAC3bに送信してから、接続応答信号を、高出力期間のRSPフレームで端末局MAC3bに送信する。端末局MAC3bは、グループビーコンを受信した後、高出力期間のRSPフレームで接続応答信号を受信し、端末局上位層4bに「参加応答」の制御信号を出力する。
接続可能かの判断として、接続可能な端末局数の上限を越えていないか、無線チャネルに空きがあるか、などが考えられる。
【0066】
[離脱処理シーケンス:図11]
本無線通信振システムにおける離脱処理シーケンスについて図11を参照しながら説明する。図11は、本実施の形態に係る離脱処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
離脱処理シーケンスは、図11に示すように、具体的には、端末局上位層4bは、「離脱要求」の制御信号を端末局MAC3bに出力し、基地局MAC3aからのグループビーコンを端末局MAC3bが受信すると、「離脱要求」を高出力期間のREQフレームで基地局MAC3aに送信する。
【0067】
REQフレームを受信した基地局MAC3aは、「離脱要求」の制御信号を基地局上位層4aに送信し、基地局上位層4aは「離脱応答」の制御信号を基地局MAC3aに出力し、基地局MAC3aは、グループビーコンを端末局MAC3bに送信した後に、「離脱応答」の制御信号を、高出力期間のRSPフレームで端末局MAC3bに送信する。
端末局MAC3bは、基地局MAC3aからグループビーコンを受信した後、高出力期間のRSPフレームで離脱応答信号を受信する。そして、端末局MAC3bは、端末局上位層4bに「離脱応答」の制御信号を出力する。
【0068】
[基地局→端末局方向の通信処理シーケンス:図12]
本無線通信振システムにおける基地局から端末局方向への通信処理シーケンスについて図12を参照しながら説明する。図12は、本実施の形態に係る基地局から端末局方向への通信処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
基地局→端末局方向の通信処理シーケンスは、図12に示すように、基地局上位層4aがデータを基地局MAC3aに出力し、基地局MAC3aがグループビーコンを端末MAC3bに送信してから、高出力期間のデータフレームでデータを送信する。
【0069】
端末局MAC3bは、グループビーコンを受信した後、高出力期間のデータフレームでデータを受信する。そして、端末局MAC3bは、データを端末局上位層4bに出力し、データの受信確認応答が必要な場合は、端末局上位層4bがACKを端末局MAC3bに出力し、端末局MAC3bは、高出力期間のACKフレームにてACK信号を基地局MAC3aに送信する。
【0070】
[端末局→基地局方向の通信処理シーケンス:図13]
本無線通信振システムにおける端末局から基地局方向への通信処理シーケンスについて図13を参照しながら説明する。図13は、本実施の形態に係る端末局から基地局方向への通信処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
端末局→基地局方向の通信処理シーケンスは、図13に示すように、端末局上位層4bがデータを端末局MAC3bに出力する。端末局MAC3bは、グループビーコンを受信した後、高出力期間のREQフレームでデータ通信要求信号を送信する。
【0071】
基地局MAC3aは、受信したデータ通信要求信号で、データ送信可能かを判断し、データ通信応答信号を、高出力期間のRSPフレームで端末局MAC3bに送信する。
端末局MAC3bは、データ通信応答を受信した後、高出力のデータフレームでデータを送信する。
基地局MAC3bは、受信したデータを基地局上位層4aに出力し、データの受信確認応答が必要な場合は、基地局上位層4aはACKを基地局MAC3aに出力し、基地局MAC3aは高出力期間のACKフレームにてACK信号を端末局MAC3bへ送信する。端末局MAC3bは、ACK信号を端末局上位層4bに出力する。
データ通信可能かの判断としては、他に優先度の高いデータ通信、制御信号の通信が行われていないか、などが考えられる。
【0072】
[実施の形態の効果]
本無線通信システムによれば、基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力(低出力)により通信し、基地局からグループの端末局へ第2の空中線電力(高出力)によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた第2の空中線電力の出力期間で第2の空中線電力により信号を送受信するようにしているので、第1の空中線電力によるマルチホップ通信に加えて、グループ内の基地局と端末局が第2の空中線電力による信号の送受信も可能となるため、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる効果がある。
【0073】
また、本無線通信システムによれば、基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力(最高出力)による広域ビーコンを送信し、広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームを含むようにしているので、グループ内で基地局と端末局が通信を行うことができると共に、異なるグループの基地局間でも通信できる効果がある。
【0074】
また、本無線通信システムによれば、空中線電力が大きい場合でも、電波の送信を時間方向(高出力期間11、低出力期間12,休止期間13などの期間)及び周波数方向で管理することにより、チャネル間の干渉を減らすことができる。
また、本無線通信システムによれば、空中線電力が大きい場合、無線チャネル6に加えてグループチャネル7や最高出力の無縁信号8のように、割り当てるチャネル数を増やし、スペクトラム拡散方式により電波を送受信することにより、マルチパスの影響を低減することができる。
【0075】
本無線通信システムによれば、基地局とそのグループに属する端末局が直接通信できる期間を設け、その期間において基地局と端末局間で直接無線通信することにより、ホップ数を少なくし、電波の送信時間を短くすることができる効果がある。
また、ホップ数が少なくなるため、マルチホップ通信で生じる遅延時間を短縮することができ、通信品質の向上や優先制御などが実現可能となる。
基地局からグループ内の全端末局へ無線通信が可能であるため、マルチホップ通信に必要となるルーティング情報を基地局から各端末局へ通知することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、マルチホップ通信方式を用い、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる無線通信システムに好適である。
【符号の説明】
【0077】
1...基地局、 2...端末局、 3...メディアアクセス制御層(MAC)、 3-1...MAC制御部、 3-2...送信バッファ、 3-3...フレーム生成部、 3-4...フレーム解析部、 3-5...受信バッファ、 4...物理層(PHY)、 4-1...PHY制御部、 4-2...符号化部、 4-6...変調部、 4-7...復調部、 4-5...復号部、 5...無線部(RF)、 5-1...周波数シンセ、 5-2...送信ミキサ、 5-3...送信増幅器、 5-4...送受切替器、 5-5...アンテナ、 5-6...受信増幅器、 5-7...受信ミキサ、 5-8...出力電力制御部、 6...無線チャネル、 7...グループチャネル、 8...最高出力の無線信号、 9...グループビーコン、 10...広域ビーコン、 11...高出力期間、 12...低出力期間、 13...休止期間
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関するものであり、特に、マルチホップ通信方式を用い、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
特定小電力無線局は、電波法に基づく無線局の免許を受けることなく, 屋外にて利用可能な無線設備である。社団法人電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Businesses)にて策定された標準規格ARIB STD−T96(非特許文献1)などでは、特定小電力無線局は、異なる無線システム間の干渉を低減する目的で、チャネルの割当て、キャリアセンス、電波の連続送信の制限などの干渉回避技術が必須となっている。
【0003】
また、平成23年3月現在、日本における電波法では、特定小電力無線局における空中線電力の上限は、最大0.01W(10mW)に制限されている。このため、従来の特定小電力無線局では、無線局間の通信距離が最大100m程度と短く、距離の離れた無線局間で無線通信を行うためには、いくつかの無線局を中継して無線通信を行うマルチホップ通信と呼ばれる方式を用いて無線通信を行うのが一般的であった。
【0004】
ところが昨今、日本国内において、特定小電力無線局(免許不要局)の空中線電力の上限が、最大1Wに引き上げるよう電波法が改正されることになった。今後、免許不要の無線通信システムにおいて、無線局間の通信距離が大きく伸び、システムの高度化、利用範囲の拡大が期待されている。
【0005】
[従来の無線通信システム]
従来の特定小電力無線局における無線通信システムについて説明すると、基地局と複数の端末局とから構成されており、基地局と隣接する端末局との間は、小電力の無線通信により接続されている。
また、基地局と末端の端末局との間の中間に位置する端末局は、マルチホップによる中継機能を備えており、基地局と末端の端末局との通信を可能にしている。
【0006】
[従来の無線通信装置]
従来の特定小電力無線局における無線通信装置は、主に、メディアアクセス制御層(MAC:Medium Access Control)、物理層(PHY:Physical Layer)、無線部(RF:Radio Frequency)から構成される。
【0007】
MACは、MAC制御部、送信バッファ、フレーム生成部、フレーム解析部、受信バッファなどから構成され、上位層とのデータ通信処理、PHYを介してのフレーム送受信、無線チャネルの制御等を行う。
【0008】
PHYは、PHY制御部、符号化部、変調部、復調部、復号部などから構成され、物理デバイスを介しての無線信号の変復調や、タイミング制御、周波数制御等を行う。
【0009】
無線部は、周波数シンセ、送信ミキサ、送信増幅器、送受切替器、アンテナ、受信増幅器、受信ミキサ等から構成され、無線信号の周波数変換や増幅、無線電波の送受信などの処理を行う。
【0010】
[従来の変調方式]
PHYにおける変調方式としては、二次変調(スペクトラム拡散)を行わない狭帯域無線通信方式や、二次変調としてスペクトラム拡散を行う方式など、様々な方式がある。
スペクトラム拡散としては、直接連鎖スペクトラム拡散(DSSS:Direct Sequence Spectrum Spread)方式や周波数ホッピングスペクトラム拡散(FHSS:Frequency Hopping Spectrum Spread)方式などが広く使われている。
【0011】
[チャネル構成例]
従来の狭帯域無線通信方式におけるチャネル構成例を説明すると、利用可能な周波数帯域内を規定された複数のチャネル幅に分割し、最初と最後の周波数には隣の周波数帯域との干渉を防ぐためにガードバンドを設け、その内側を規定されたチャネル幅でチャネルを割り当てる。
また、従来のスペクトラム拡散通信方式におけるチャネル構成例を説明すると、例えば、狭帯域無線通信方式の5つのチャネル幅を1つのチャネル幅として割り当てて使用するようになっており、最初と最後にはガードバンドが設けられている。
【0012】
[フレーム構成]
従来のフレーム構成例について説明すると、従来のフレーム構成例は、国際規格であるIEEE 802.15.4に基づくものである。
基準信号であるビーコンの後に、CAP(Contention Access Period)、CFP(Contention Free Period)、休止期間が続き、2つのビーコンに挟まれた期間をスーパフレームと呼ぶ。
CAPは、CSMA−CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)アルゴリズムによる衝突回避を前提とした、競合が発生し得る通信期間、CFPは、予め通信する領域を割り当てることにより、競合を発生させない通信期間である。
【0013】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2010−130028号公報「RFIDタグ通信装置、及びRFIDタグ通信システム」(株式会社日立製作所)[特許文献1]がある。
特許文献1には、RFIDタグ通信装置が送信信号を送出中に受信信号を監視し、自身の送信信号のレベル変動が小さい送出期間に大きいレベル変動を検出すると、パックスキャッタ信号の応答を返す期間に移行する前に送信信号を停止することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−130028号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「特定小電力無線局950MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備 標準規格」、ARIB STD−T96 1.1版、平成22年7月15日、社団法人 電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来の無線通信システムでは、空中線電力の上限が最大1Wとなった場合、従来の小電力無線を前提とした通信方式では、異なるシステム間の干渉が大きくなる他、同一システム内でもチャネル間の干渉が大きくなるという問題点がある。
【0017】
また、空中線電力が大きい場合、電波の経路として、直接波の他に建物や山などで反射していくつもの経路ができてしまう、マルチパスと呼ばれる現象も発生し易くなるという問題もある。
【0018】
特に、マルチホップ通信では、ホップ数が増えると、データが集約されるに従い、回線に負荷が集中する傾向にある。負荷が集中した場合、回線の無線送信時間が増えるため、干渉回避のための連続送信の制限が満たさなくなる可能性もある。
また、ホップする度に遅延が生じるため、ホップ数が多くなると、送信端末局から受信端末局までのデータ伝送時間が大きくなる問題もある。
【0019】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、マルチホップ通信方式を用い、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局との間では、第1の空中線電力により通信を行う無線通信システムであって、基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力により通信されると共に、基地局からグループの端末局へ第2の空中線電力によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた第2の空中線電力の出力期間で第2の空中線電力により信号を送受信することを特徴とする。
【0021】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力による広域ビーコンを送信するものであり、広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームが含まれることを特徴とする。
【0022】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、基地局が、受信した広域ビーコンの周期のずれに基づいてグループフレームの周期を補正することを特徴とする。
【0023】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、第1の空中線電力の出力電力より、第2の空中線電力の出力電力を大きくし、前記第2の空中線電力の出力電力より、第3の空中線電力の出力電力を大きくしたことを特徴とする。
【0024】
本発明は、隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局との間では、第1の空中線電力により通信を行う無線通信システムであって、基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力により通信されると共に、基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力による広域ビーコンを送信し、当該広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に設けられた第3の空中線電力の出力期間で第3の空中線電力により信号を送受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局との間では、第1の空中線電力により通信を行う無線通信システムであって、基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力により通信されると共に、基地局からグループの端末局へ第2の空中線電力によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた第2の空中線電力の出力期間で第2の空中線電力により信号を送受信する無線通信システムとしているので、第1の空中線電力によるマルチホップ通信に加えて、グループ内の基地局と端末局が第2の空中線電力による信号の送受信も可能となるため、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる効果がある。
【0026】
本発明によれば、基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力による広域ビーコンを送信するものであり、広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームが含まれる上記無線通信システムとしているので、グループ内で基地局と端末局が通信を行うことができると共に、異なるグループの基地局間でも通信できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示す概略図である。
【図2】複数のグループの構成例を示す概略図である。
【図3】本無線通信システムの無線通信装置の構成ブロック図である。
【図4】無線チャネルの構成例を示す概略図である。
【図5】本実施の形態に係る無線フレームの構成例を示す概略図である。
【図6】本実施の形態に係る高出力期間の使用例を示す概略図である。
【図7】本実施の形態に係る低出力期間の使用例を示す概略図である。
【図8】本実施の形態に係るグループ間同期方法の動作を説明する概略図である。
【図9】本実施の形態に係るグループ内同期方法の動作を説明する概略図である。
【図10】本実施の形態に係る接続処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
【図11】本実施の形態に係る離脱処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
【図12】本実施の形態に係る基地局から端末局方向への通信処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
【図13】本実施の形態に係る端末局から基地局方向への通信処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムは、基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力(低出力)により通信し、基地局からグループの端末局へ第2の空中線電力(高出力)によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた第2の空中線電力の出力期間で第2の空中線電力により信号を送受信するようにしているので、第1の空中線電力によるマルチホップ通信に加えて、グループ内の基地局と端末局が第2の空中線電力による信号の送受信も可能となるため、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできるものである。
【0029】
また、本発明の実施の形態に係る無線通信システムは、基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力(最高出力)による広域ビーコンを送信し、広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームを含むようにしているので、グループ内で基地局と端末局が通信を行うことができると共に、異なるグループの基地局間で通信が可能となるものである。
【0030】
[無線通信システムの構成例:図1]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成例について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示す概略図である。
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、図1に示すように、基地局1と複数の端末局2とから構成されている。
【0031】
一つ基地局1と、基地局1から一定の範囲内にある複数の端末局2-1〜2-8によりグループを構成する。グループ内の各端末局は、小電力の空中線電力(第1の空中線電力)で無線接続している。
また、グループ内の基地局1と特定の端末局2-3,2-8は、高出力の空中線電力(第2の空中線電力)で無線接続することができるようになっている。
【0032】
[グループ構成例:図2]
次に、本無線通信システムにおける複数グループの構成例について図2を参照しながら説明する。図2は、複数のグループの構成例を示す概略図である。
図2では、小さい黒い点が端末局を示しており、その中心に黒い点を丸で囲んだ記号が基地局を示している。そして、小さい波線の楕円がグループの通信エリアを示し、大きい波線の楕円が基地局が最大出力の空中線電力(第3の空中線電力)で信号を到達する到達範囲を示している。
異なるグループの基地局間の距離は、基地局がグループを構成する範囲より離れている。
【0033】
[無線通信の空中線電力]
隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局間は、小電力の第1の空中線電力で無線通信を行う。
基地局とそのグループに所属する複数の端末局は、高出力の第2の空中線電力で無線通信を行う。
異なるグループの基地局間は、最高出力の第3の空中線電力で無線通信を行う。
【0034】
ここで、第1の空中線電力、第2の空中線電力、第3の空中線電力の送信電力の関係は、
第1の空中線電力<第2の空中線電力<第3の空中線電力
のようになる。
以下、第1の空中線電力を低出力、第2の空中線電力を高出力、第3の空中線電力を最大出力と称する。
【0035】
[無線通信装置:図3]
次に、本無線通信システムにおける無線通信装置(本無線通信装置)について図3を参照しながら説明する。図3は、本無線通信システムの無線通信装置の構成ブロック図である。
本無線通信装置は、図3に示すように、メディアアクセス制御層(MAC)3、物理層(PHY)4、無線部(RF)5から構成される。
【0036】
[MAC3]
MAC3は、MAC制御部3-1と、送信バッファ3-2と、フレーム生成部3-3と、フレーム解析部3-4と、受信バッファ3-5などから構成され、上位層とのデータ通信処理、PHYを介してのフレーム送受信、無線チャネルの制御等を行う。
【0037】
送信バッファ3-2は、入力された送信データを一時的に記憶するバッファであり、MAC制御部3-1からの指示により送信データをフレーム生成部3-3に出力する。
フレーム生成部3-3は、送信バッファ3-2から入力される送信データについて送信フレームを生成し、PHY4に出力する。
送信フレームでは、後述する広域ビーコン、クループビーコンが組み込まれ、広域ビーコンに続く最高出力期間、クループフレームにおける高出力期間、低出力期間、休止期間が設定される。
【0038】
フレーム解析部3-4は、PHY4から入力された復号された受信データについてフレームの解析を行い、解析結果をMAC制御部3-1に出力すると共に、受信データを取り出して受信バッファ3-5に出力する。
受信バッファ3-5は、フレーム解析部3-4から入力された受信信号を一時的に記憶するバッファであり、MAC制御部3-1からの指示により受信データを出力する。
【0039】
そして、MAC制御部3-1は、MAC3内の各部を制御するものであり、特に、フレーム解析部3-4でのフレーム解析の結果から、フレームの位置によって最高出力期間、高出力期間、低出力期間等を判別し、PHY4のPHY制御部4-1に通知する。
【0040】
[PHY4]
PHY4は、PHY制御部4-1と、符号化部4-2と、変調部4-6と、復調部4-7と、復号部4-5などから構成され、物理デバイスを介しての無線信号の変復調や、タイミング制御、周波数制御等を行う。
【0041】
PHY制御部4-1は、PHY4内の各部を制御するものであり、特に、変調部4-6に対して変調方式を指示し、また、復調部4-7に対して復調方式を指示し、変復調方式を制御する。
また、PHY制御部4-1は、MAC制御部3-1からの送信フレームの生成情報を入力し、RF5の出力電力制御部5-8に低出力、高出力、最高出力の増幅情報を出力する。
符号化部4-2は、MAC3のフレーム生成部3-3から入力されたフレーム信号を符号化し、変調部4-6に出力する。
【0042】
変調部4-6は、PHY制御部4-1で指示された変調方式に従い、符号化部4-2から入力された符号化されたデータを変調してRF5の送信ミキサ5-2に出力する。
復調部4-7は、PHY制御部4-1で指示された復調方式に従い、RF5の受信ミキサ5-7から入力された受信信号を復調し、復号部4-5に出力する。
復号部4-5は、復調部4-7から入力された復調された信号を復号化してMAC3のフレーム解析部3-4に出力する。
【0043】
[無線部5]
無線部5は、周波数シンセ5-1と、送信ミキサ5-2と、送信増幅器5-3と、送受切替器5-4と、アンテナ5-5と、受信増幅器5-6と、受信ミキサ5-7と、出力電力制御部5-8などから構成され、無線信号の周波数変換や増幅、無線電波の送受信などの処理を行う。
【0044】
周波数シンセ5-1は、送受信用の特定周波数の搬送波信号を生成し、送信ミキサ5-2と受信ミキサ5-7に出力する。
送信ミキサ5-2は、PHY4の変調部4-6から入力された変調された信号と周波数シンセ5-1からの搬送波とを合成し、送信増幅器5-3に出力する。
送信増幅器5-3は、出力電力制御部5-8からの指示(低出力、高出力、最高出力の指示)に従い、低出力、高出力又は最高出力の電力増幅を行い、送受信切替器5-4に出力する。
【0045】
送受切替器5-4は、送信の場合に、送信増幅器5-3から入力された増幅信号をアンテナ5-5に出力し、受信の場合に、アンテナ5-5から入力された信号を受信増幅部5-6に出力する。
アンテナ5-5は、送受切替器5-4からの送信信号を空間に電波として出力し、空間からの電波を取り込み、送受切替器5-4に受信信号として出力する。
【0046】
受信増幅器5-6は、送受切替器5-4から入力された受信信号を増幅して受信ミキサ5-7に出力する。特に、受信増幅器5-6は、低出力、高出力、最高出力の受信信号に対応した増幅を行うことができるようになっている。
受信ミキサ5-7は、受信増幅器5-8からの増幅された受信信号と周波数シンセ5-1からの搬送波とを合成し、PHY4の復調部4-7に出力する。
【0047】
出力電力制御部5-8は、PHY制御部4-1からの増幅情報を入力し、送信増幅器5-3に低出力、高出力、最高出力の電力増幅の指示を出力する。
本無線通信装置では、送信増幅器5-3での出力電力を低出力、高出力、最高出力と制御する出力電力制御部5-8を設けたことが特徴の一つである。
【0048】
[無線チャネルの構成例:図4]
次に、無線チャネルの構成例について図4を参照しながら説明する。図4は、無線チャネルの構成例を示す概略図である。尚、図4の横軸が周波数であり、縦軸が出力電力の強さである。
本実施の形態に係る無線チャネルの構成例は、図4に示すように、無線通信システムで使用される周波数帯の前後にガードバンドを設け、当該使用される周波数帯を複数の無線チャネル6に分割する。無線チャネル6は、低出力の無線信号で送受信され、チャネル数はnとなっている。
【0049】
複数の無線チャネルの中からいくつか(図4の例では5つ)の無線チャネル6をグループとして束ねてグループチャネル7とする。グループチャネル7は、高出力の無線信号で送受信される。
また、グループ間の無線信号は、グループチャネル7の範囲内で、最高出力の無線信号8で送受信される。
【0050】
[無線フレームの構成例:図5]
次に、無線フレームの構成例について図5を参照しながら説明する。図5は、本実施の形態に係る無線フレームの構成例を示す概略図である。尚、図5の横軸が時間であり、縦軸が出力電力の強さである。
本実施の形態に係る無線フレームの構成例は、図5に示すように、基地局が、高出力で、一定周期の第1の基準信号(グループビーコン9)を送信し、更に、基地局が、最高出力で、一定周期の第2の基準信号(広域ビーコン10)を送信する。
【0051】
ここで、グループビーコンの周期と広域ビーコンの周期の関係は、
グループビーコンの周期=広域ビーコンの周期×n(nは2以上の整数)
(nは最高出力の電波が届く範囲にあるグループ数以上)
のようになる。
【0052】
そして、2つの隣り合うグループビーコンの期間を「グループフレーム」と呼ぶ。また、2つの隣り合う広域ビーコンの期間を「広域フレーム」と呼ぶ。グループビーコン及び広域ビーコンは、全グループチャネルを使用する。
【0053】
グループフレームは、低出力で無線通信を行う第1の期間(低出力期間12)と、高出力で無線通信を行う第2の期間(高出力期間11)と、最大出力で無線通信を行う第3の期間(休止期間13)とを有する。
最大出力は、異なるグループの基地局間の通信に用いられるが、緊急のデータを送受するのに用いられるため、通常、使用されないことが多い(休止期間)。また、最大出力の期間を広域ビーコンの直後(グループビーコンの前)に設けるようにしてもよい。
【0054】
グループビーコンは、グループフレームの周期[時間]と、低出力期間、高出力期間、休止期間、それぞれの開始・終了を示す情報[時間]を有する。尚、各期間の期間及び前後関係は、特に限定されるものではない。
広域ビーコンは、広域フレームの周期[グループフレーム数]と、グループフレームの周期[時間]と、グループビーコンと広域ビーコンとのオフセット[時間]を示す情報を有する。
【0055】
[高出力期間の使用例:図6]
次に、高出力期間の使用例について図6を参照しながら説明する。図6は、本実施の形態に係る高出力期間の使用例を示す概略図である。
高出力期間の使用例は、図6に示すように、高出力期間をUL(Up-Link:端末局→基地局方向)方向のREQ(Request)期間、DL(Down-Link:基地局→端末局)方向のRSP(Response)期間、UL/DL共用のデータ通信期間に分けている。
【0056】
REQ期間及びRSP期間は、それぞれ、REQフレーム、RSPフレームによる通信が行われ、主に、端末局が基地局との接続や、データ通信を要求するために使用される。
データ通信期間は、データフレーム、ACK(Acknowledgement)フレームによる通信が行われ、基地局と端末局との間でデータやメッセージを送受信するために使用される。
高出力による無線通信では、干渉やマルチパスの影響が大きくなるので、高出力期間はスペクトラム拡散方式による無線通信を行う。また、上記各フレームは、グループチャネル内の全てのチャネルを用いる。
【0057】
[低出力期間の使用例:図7]
次に、低出力期間の使用例について図7を参照しながら説明する。図7は、本実施の形態に係る低出力期間の使用例を示す概略図である。
低出力期間の使用例は、図7に示すように、低出力期間が、隣接する端末局間及び隣接する基地局と端末局間において、従来の小電力のCAPと同様に、CSMA−CAアルゴリズムによるデータ、ACKやメッセージ(MSG:Message)通信を行う。データ等のフレームは、グループチャネル内の個別のチャネルを用いる。
【0058】
[グループ間同期方法:図8]
本無線通信振システムにおけるグループ間同期方法について図8を参照しながら説明する。図8は、本実施の形態に係るグループ間同期方法の動作を説明する概略図である。
グループ間同期方法の動作は、図8に示すように、異なるグループの基地局が、他の基地局から広域ビーコンを受信した場合に、広域ビーコンに同期する。
【0059】
具体的には、グループBの基地局は、先に動作を開始しているグループAの基地局から送信される広域ビーコンを受信する。最初はグループBの基地局自身の時間で、広域ビーコン内の情報であるグループフレームの周期に従いグループフレームのタイミングを生成する。
【0060】
次に、グループAの基地局から受信した広域ビーコン内の情報である広域ビーコンの周期と、自身の時間から生成した広域ビーコン周期のタイミングとの時間的なずれに基づき、グループフレームの周期を補正する。
【0061】
[グループ内同期方法:図9]
本無線通信振システムにおけるグループ内同期方法について図9を参照しながら説明する。図9は、本実施の形態に係るグループ内同期方法の動作を説明する概略図である。
グループ内同期方法の動作は、図9に示すように、グループビーコンを受信した複数の端末局が、グループビーコンと同期する。
【0062】
具体的には、基地局から送信されてくるグループビーコンを受信した後、受信したグループビーコン内のグループビーコン周期を基に端末局自身の時間で生成したグループフレーム周期を生成する。基地局から次に送信されてくるグループビーコンとの時間的なずれを基に、グループフレーム周期を補正する。
【0063】
[接続処理シーケンス:図10]
本無線通信振システムにおける接続処理シーケンスについて図10を参照しながら説明する。図10は、本実施の形態に係る接続処理シーケンスを示すタイミングチャートである。尚、基地局上位層と基地局MACは同じ基地局内にある機能であり、同様に、端末局上位層と端末局MACも同じ端末局内にある機能である。
接続処理シーケンスは、図10に示すように、グループビーコンを送信している基地局に端末局が接続し、グループを構成する。
【0064】
具体的には、端末局上位層4bは、端末局MAC3bに「参加要求」の制御信号を出力し、基地局MAC3aからのグループビーコンを端末局MAC3bが受信した後、接続要求信号を、高出力期間のREQフレームで基地局MAC3aに送信する。
接続要求信号を受信した基地局MAC3aは、「参加要求」の制御信号を基地局上位層4aに出力し、基地局上位層4aが、接続要求した端末局が接続可能か否かを判断し、「参加応答」の制御信号を基地局MAC3aに出力する。
【0065】
そして、基地局MAC3aは、グループビーコンを端末局MAC3bに送信してから、接続応答信号を、高出力期間のRSPフレームで端末局MAC3bに送信する。端末局MAC3bは、グループビーコンを受信した後、高出力期間のRSPフレームで接続応答信号を受信し、端末局上位層4bに「参加応答」の制御信号を出力する。
接続可能かの判断として、接続可能な端末局数の上限を越えていないか、無線チャネルに空きがあるか、などが考えられる。
【0066】
[離脱処理シーケンス:図11]
本無線通信振システムにおける離脱処理シーケンスについて図11を参照しながら説明する。図11は、本実施の形態に係る離脱処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
離脱処理シーケンスは、図11に示すように、具体的には、端末局上位層4bは、「離脱要求」の制御信号を端末局MAC3bに出力し、基地局MAC3aからのグループビーコンを端末局MAC3bが受信すると、「離脱要求」を高出力期間のREQフレームで基地局MAC3aに送信する。
【0067】
REQフレームを受信した基地局MAC3aは、「離脱要求」の制御信号を基地局上位層4aに送信し、基地局上位層4aは「離脱応答」の制御信号を基地局MAC3aに出力し、基地局MAC3aは、グループビーコンを端末局MAC3bに送信した後に、「離脱応答」の制御信号を、高出力期間のRSPフレームで端末局MAC3bに送信する。
端末局MAC3bは、基地局MAC3aからグループビーコンを受信した後、高出力期間のRSPフレームで離脱応答信号を受信する。そして、端末局MAC3bは、端末局上位層4bに「離脱応答」の制御信号を出力する。
【0068】
[基地局→端末局方向の通信処理シーケンス:図12]
本無線通信振システムにおける基地局から端末局方向への通信処理シーケンスについて図12を参照しながら説明する。図12は、本実施の形態に係る基地局から端末局方向への通信処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
基地局→端末局方向の通信処理シーケンスは、図12に示すように、基地局上位層4aがデータを基地局MAC3aに出力し、基地局MAC3aがグループビーコンを端末MAC3bに送信してから、高出力期間のデータフレームでデータを送信する。
【0069】
端末局MAC3bは、グループビーコンを受信した後、高出力期間のデータフレームでデータを受信する。そして、端末局MAC3bは、データを端末局上位層4bに出力し、データの受信確認応答が必要な場合は、端末局上位層4bがACKを端末局MAC3bに出力し、端末局MAC3bは、高出力期間のACKフレームにてACK信号を基地局MAC3aに送信する。
【0070】
[端末局→基地局方向の通信処理シーケンス:図13]
本無線通信振システムにおける端末局から基地局方向への通信処理シーケンスについて図13を参照しながら説明する。図13は、本実施の形態に係る端末局から基地局方向への通信処理シーケンスを示すタイミングチャートである。
端末局→基地局方向の通信処理シーケンスは、図13に示すように、端末局上位層4bがデータを端末局MAC3bに出力する。端末局MAC3bは、グループビーコンを受信した後、高出力期間のREQフレームでデータ通信要求信号を送信する。
【0071】
基地局MAC3aは、受信したデータ通信要求信号で、データ送信可能かを判断し、データ通信応答信号を、高出力期間のRSPフレームで端末局MAC3bに送信する。
端末局MAC3bは、データ通信応答を受信した後、高出力のデータフレームでデータを送信する。
基地局MAC3bは、受信したデータを基地局上位層4aに出力し、データの受信確認応答が必要な場合は、基地局上位層4aはACKを基地局MAC3aに出力し、基地局MAC3aは高出力期間のACKフレームにてACK信号を端末局MAC3bへ送信する。端末局MAC3bは、ACK信号を端末局上位層4bに出力する。
データ通信可能かの判断としては、他に優先度の高いデータ通信、制御信号の通信が行われていないか、などが考えられる。
【0072】
[実施の形態の効果]
本無線通信システムによれば、基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で第1の空中線電力(低出力)により通信し、基地局からグループの端末局へ第2の空中線電力(高出力)によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた第2の空中線電力の出力期間で第2の空中線電力により信号を送受信するようにしているので、第1の空中線電力によるマルチホップ通信に加えて、グループ内の基地局と端末局が第2の空中線電力による信号の送受信も可能となるため、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる効果がある。
【0073】
また、本無線通信システムによれば、基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力(最高出力)による広域ビーコンを送信し、広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームを含むようにしているので、グループ内で基地局と端末局が通信を行うことができると共に、異なるグループの基地局間でも通信できる効果がある。
【0074】
また、本無線通信システムによれば、空中線電力が大きい場合でも、電波の送信を時間方向(高出力期間11、低出力期間12,休止期間13などの期間)及び周波数方向で管理することにより、チャネル間の干渉を減らすことができる。
また、本無線通信システムによれば、空中線電力が大きい場合、無線チャネル6に加えてグループチャネル7や最高出力の無縁信号8のように、割り当てるチャネル数を増やし、スペクトラム拡散方式により電波を送受信することにより、マルチパスの影響を低減することができる。
【0075】
本無線通信システムによれば、基地局とそのグループに属する端末局が直接通信できる期間を設け、その期間において基地局と端末局間で直接無線通信することにより、ホップ数を少なくし、電波の送信時間を短くすることができる効果がある。
また、ホップ数が少なくなるため、マルチホップ通信で生じる遅延時間を短縮することができ、通信品質の向上や優先制御などが実現可能となる。
基地局からグループ内の全端末局へ無線通信が可能であるため、マルチホップ通信に必要となるルーティング情報を基地局から各端末局へ通知することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、マルチホップ通信方式を用い、チャネル間の干渉を減らし、マルチパスの影響を低減し、電波の送信時間を短くできる無線通信システムに好適である。
【符号の説明】
【0077】
1...基地局、 2...端末局、 3...メディアアクセス制御層(MAC)、 3-1...MAC制御部、 3-2...送信バッファ、 3-3...フレーム生成部、 3-4...フレーム解析部、 3-5...受信バッファ、 4...物理層(PHY)、 4-1...PHY制御部、 4-2...符号化部、 4-6...変調部、 4-7...復調部、 4-5...復号部、 5...無線部(RF)、 5-1...周波数シンセ、 5-2...送信ミキサ、 5-3...送信増幅器、 5-4...送受切替器、 5-5...アンテナ、 5-6...受信増幅器、 5-7...受信ミキサ、 5-8...出力電力制御部、 6...無線チャネル、 7...グループチャネル、 8...最高出力の無線信号、 9...グループビーコン、 10...広域ビーコン、 11...高出力期間、 12...低出力期間、 13...休止期間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局との間では、第1の空中線電力により通信を行う無線通信システムであって、
前記基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で前記第1の空中線電力により通信されると共に、
前記基地局から前記グループの端末局へ第2の空中線電力によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた前記第2の空中線電力の出力期間で前記第2の空中線電力により信号を送受信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、
異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力による広域ビーコンを送信するものであり、
前記広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームが含まれることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
基地局は、受信した広域ビーコンの周期のずれに基づいてグループフレームの周期を補正することを特徴とする請求項2記載の無線通信システム。
【請求項4】
第1の空中線電力の出力電力より、第2の空中線電力の出力電力を大きくし、前記第2の空中線電力の出力電力より、第3の空中線電力の出力電力を大きくしたことを特徴とする請求項2又は3記載の無線通信システム。
【請求項5】
隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局との間では、第1の空中線電力により通信を行う無線通信システムであって、
前記基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で前記第1の空中線電力により通信されると共に、
基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、
異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力による広域ビーコンを送信し、当該広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に設けられた前記第3の空中線電力の出力期間で前記第3の空中線電力により信号を送受信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項1】
隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局との間では、第1の空中線電力により通信を行う無線通信システムであって、
前記基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で前記第1の空中線電力により通信されると共に、
前記基地局から前記グループの端末局へ第2の空中線電力によるグループビーコンを送信し、当該グループビーコンによって開始されるグループフレーム内に設けられた前記第2の空中線電力の出力期間で前記第2の空中線電力により信号を送受信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、
異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力による広域ビーコンを送信するものであり、
前記広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に複数のグループフレームが含まれることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
基地局は、受信した広域ビーコンの周期のずれに基づいてグループフレームの周期を補正することを特徴とする請求項2記載の無線通信システム。
【請求項4】
第1の空中線電力の出力電力より、第2の空中線電力の出力電力を大きくし、前記第2の空中線電力の出力電力より、第3の空中線電力の出力電力を大きくしたことを特徴とする請求項2又は3記載の無線通信システム。
【請求項5】
隣接する端末局間又は隣接する基地局と端末局との間では、第1の空中線電力により通信を行う無線通信システムであって、
前記基地局が管理するグループの端末局へはマルチホップの中継方式で前記第1の空中線電力により通信されると共に、
基地局及び当該基地局が管理するグループを複数有し、
異なるグループの基地局間の通信には第3の空中線電力による広域ビーコンを送信し、当該広域ビーコンによって開始される広域フレーム内に設けられた前記第3の空中線電力の出力期間で前記第3の空中線電力により信号を送受信することを特徴とする無線通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−90236(P2013−90236A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230733(P2011−230733)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]