説明

無線通信端末

【課題】従来のものより低消費電力で、かつ、他の無線通信端末の通信状況に影響されずに最適な待機アンテナを選択することができる無線通信端末を提供すること。
【解決手段】複数のアンテナ10、11から受信に用いるアンテナをパケット毎に選択するアンテナ選択部21と、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かを判断するパケット宛先判断部22と、アンテナ選択部21による選択結果およびパケット宛先判断部22による判断結果に基づいて、次のパケットを最初に受信するための待機アンテナを決定する待機アンテナ決定部23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末に関し、特に、複数のアンテナを用いてパケット毎にダイバーシティ方式で通信を行う無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network)に対応するものを初めとする無線通信端末は、自由に移動させることができる利便性から、企業だけでなく、一般家庭にまで急速に普及している。
【0003】
無線LANの規格のなかで、IEEE802.11bではDSSS(Direct Sequence Spread Spectrum)方式が規定され、IEEE802.11aではOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が規定され、IEEE802.11gではこれらのDSSS方式とOFDM方式の両方式に対応する内容が規定されている。現在では、さらにスループットの向上を目指すためのIEEE802.11nドラフト規格に準拠した製品が広まりつつある。
【0004】
また、近年、無線LAN機能は、ノートPC(Personal Computer)や携帯電話といった様々な携帯端末に内蔵されつつあるが、現在市販されているこれらの製品の多くは、2つ以上のアンテナが設けられ、信号の受信パワーが高いアンテナを用いて通信する、いわゆる選択ダイバーシティ方式が採用されている。この選択ダイバーシティ方式は、無線LANに限らず、携帯電話機等のような移動無線通信分野で広く使われている。
【0005】
移動無線通信分野における選択ダイバーシティ方式は、複数のアンテナのなかで、受信信号を最も強い受信パワーで受けたアンテナを選択して受信する。無線LANにおいては、2本のアンテナを用いて、各パケットのプリアンブル信号の受信パワーがそれぞれ測定され、測定結果に基づいて、当該パケットを受信するためのアンテナが選択される。
【0006】
図6には、インフラストラクチャモードの無線LANのアクセスポイント(以下、単に「AP」と記載する。)としてのAP1とAP2と、AP1に接続中の無線通信端末50とAP2に接続中の無線通信端末51とが示されている。
【0007】
なお、図6中の破線は、AP1のアンテナから送信された電波が届く範囲を示している。したがって、図6において、無線通信端末50は、AP1から送信されたパケットをアンテナ60では受信できるが、アンテナ61では受信できない。
【0008】
このとき、無線通信端末50は、アンテナ60でパケットを受信し続ければ、AP1から送信されたパケットを検出し、受信することができるが、アンテナ61でパケットを受信しようとすると、AP1から送信されたパケットが検出できず、受信に失敗してしまう。すなわち、AP1の電波が届く通信範囲の境界付近においては、受信待機中に選択される待機アンテナとして何れのアンテナが選択されているかによって、無線通信端末がパケットを検出できたり、できなかったりすることがある。
【0009】
例えば、無線通信端末50が、パケット受信中に、次のパケットを最初に受信するための待機アンテナを選択するものとする。また、図6に示すように、AP1からは、アンテナ61よりもアンテナ60を選択した方が、受信パワーが強くなり、逆に、無線通信端末51およびAP2からは、アンテナ60よりもアンテナ61を選択した方が、受信パワーが強くなるものとする。このような状態で、図7に示すように、無線LANを構成するAP1、2および無線通信端末50、51がパケットをそれぞれ送信するものとする。
【0010】
図7において、まず、AP1が無線通信端末50にDATAパケットを送信し、無線通信端末50は、AP1から送信されたDATAパケットを受信できたことをAP1へ知らせるためのACKパケットを送信する。その後、無線通信端末51からDATAパケットが送信され、AP2からACKパケットが送信され、AP1からDATAパケットが送信される。
【0011】
無線通信端末50は、AP2から送信されたACKパケットを受信すると、アンテナ61で受信した方が、アンテナ60で受信したときよりも受信パワーが強く、最適な受信アンテナであると判断するため、アンテナ61を選択し、待機アンテナとしても引き続きアンテナ61を選択する。
【0012】
このため、無線通信端末50は、次にAP1から送信されるDATAパケットを検出できず、受信に失敗してしまう。すなわち、上述したような従来の技術においては、他のAPや無線通信端末の通信状況によって、最適な待機アンテナを選択できなくなってしまう場合がある。
【0013】
このような状況に対処する無線通信端末として、パケットの待受け期間にはソフトウェア制御によってアンテナを順次切り替えることにより比較的小さな回路で最適な待機アンテナを選択するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
また、受信パケットの送信元アドレスが接続中のAPであり、かつ、宛先アドレスが自局でないパケットを受信中に待機アンテナを選択することで、最適な待機アンテナを選択するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、近年の無線LANの環境は、APや無線通信端末が密接して設置され、電波が混雑することがあるため、パケットの待受け期間が非常に短くなることがある。このとき、特許文献1に記載された従来の無線通信端末は、高速処理に適していないソフトウェアで待機アンテナを選択しているため、待機アンテナを選択する処理が追いつかなくなることがあった。言い換えれば、特許文献1に記載された従来の無線通信端末は、待機アンテナを選択するときに、他の無線通信端末の通信状況に影響されることがあるといった課題があった。
【0016】
また、特許文献2に記載された従来の無線通信端末は、自局が接続中のAPに他の無線通信端末が接続し、この他の無線通信端末がパケットの送受信を行っていないと最適な待機アンテナを選択できなくなる。すなわち、特許文献2に記載された従来の無線通信端末は、待機アンテナを選択するときに、他の無線通信端末の通信状況に影響されることがあるといった課題があった。
【0017】
さらに、特許文献2に記載された無線通信端末は、宛先アドレスが自局でないパケットが送信されている間にも受信処理等の信号処理を行うため、これらの信号処理に消費電力がかかるといった課題があった。
【0018】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、従来のものより低消費電力で、かつ、他の無線通信端末の通信状況に影響されずに最適な待機アンテナを選択することができる無線通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の無線通信端末は、複数のアンテナを用いてパケット毎にダイバーシティ方式で通信を行う無線通信端末において、前記複数のアンテナから受信に用いるアンテナをパケット毎に選択するアンテナ選択部と、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かを判断するパケット宛先判断部と、前記アンテナ選択部による選択結果および前記パケット宛先判断部による判断結果に基づいて、次のパケットを最初に受信するための待機アンテナを決定する待機アンテナ決定部と、を備えた構成を有している。
【0020】
この構成により、本発明の無線通信端末は、アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かに基づいて、アンテナ選択部によって選択されたアンテナを待機アンテナとするか否かを決定するため、従来のものより低消費電力で、かつ、他の無線通信端末の通信状況に影響されずに最適な待機アンテナを選択することができる。
【0021】
なお、前記待機アンテナ決定部は、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であると前記パケット宛先判断部によって判断された場合には、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナを前記待機アンテナとして決定し、該パケットが自局宛でないと前記パケット宛先判断部によって判断された場合には、前記待機アンテナを変更しないようにしてもよい。
【0022】
この構成により、本発明の無線通信端末は、他の無線通信端末によって送受信されるパケットによってアンテナ選択部によって受信に用いるアンテナが変更されたときに、待機アンテナを変更しないため、他の無線通信端末の通信状況に影響されずに待機アンテナを選択することができる。
【0023】
また、前記パケット宛先判断部は、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットのMACヘッダに含まれる宛先アドレスが自局のアドレスと一致するか否かに基づいて、該パケットが自局宛であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0024】
この構成により、本発明の無線通信端末は、アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットの宛先アドレスを参照することにより、当該パケットが自局宛であるか否かを判断することができる。
【0025】
また、前記パケット宛先判断部は、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号からパケットが復調されてから一定時間以内に自局から送信が行われるか否かに基づいて、該パケットが自局宛であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0026】
IEEE802.11a規格においては、自局宛のパケットを受信した局は、パケット受信後に、パケットの受信が成功したことを知らせるACKと呼ばれるパケットをSIFS(Short Inter Frame Space)と呼ばれる短い時間(10μsecまたは16μsec)が経過した後に送信するように規定されている。このような、MACヘッダ等のプロトコル解析は、上位レイヤで行われることが多い。
【0027】
したがって、本発明の無線通信端末は、アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号からパケットが復調されてからSIFSに規格や処理時間による遅延を考慮した若干のマージンを持たせた一定時間以内に自局から送信が行われるか否かに基づいて、当該パケットが自局宛であるか否かを判断することができる。
【0028】
また、前記待機アンテナ決定部は、アクセスポイントを経由して無線通信端末間で無線通信を行うインフラストラクチャモードで通信を行っている場合に、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0029】
この構成により、本発明の無線通信端末は、通信モードがインフラストラクチャモードの場合に、従来のものより他の無線通信端末の通信状況に影響されずに最適な待機アンテナを選択することができる。
【0030】
また、前記待機アンテナ決定部は、無線通信端末間で直接に無線通信を行うアドホックモードで通信を行っている場合であっても、自局と接続している無線通信端末が1つの場合には、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0031】
この構成により、本発明の無線通信端末は、通信モードがアドホックモードの場合であっても、自局と接続している無線通信端末が1つの場合には、従来のものより他の無線通信端末の通信状況に影響されずに最適な待機アンテナを選択することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、従来のものより低消費電力で、かつ、他の無線通信端末の通信状況に影響されずに最適な待機アンテナを選択することができる無線通信端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態としての無線通信端末のブロック図である。
【図2】IEEE802.11におけるMACフレームの基本フォーマットを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態としての無線通信端末のパケット受信時の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施の形態としての無線通信端末のパケット受信時の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施の形態としての無線通信端末のパケット受信時の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】インフラストラクチャモードの無線LANにおけるアクセスポイントと無線通信端末とを示す概念図である。
【図7】図6に示すアクセスポイントと無線通信端末との動作の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0035】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態としての無線通信端末1は、アンテナ10、11と、送受信に用いるアンテナをアンテナ10、11の間で切り替えるアンテナ切り替え部12と、アンテナ10、11を介してRF(Radio Frequency)信号を送受信するRF部13と、ベースバンド(以下、単に「BB」と記載する。)信号を処理するBB部14とを備えている。
【0036】
なお、図1は、無線通信端末1において、次のパケットを最初に受信するための待機アンテナを決定する構成のみを示しており、受信や送信に関するその他の機能については省略されている。また、図1には、2つのアンテナ10、11が示されているが、本発明に係る無線通信端末を構成するアンテナの数を限定するものではない。
【0037】
RF部13は、アンテナ10、11を介して受信したRF信号をBB信号にダウンコンバートし、ダウンコンバートしたBB信号をBB部14に出力する一方で、BB部14から入力されたBB信号をRF信号にアップコンバートし、アップコンバートしたRF信号をアンテナ10、11を介して送出するようになっている。
【0038】
BB部14は、パケットの変復調を行う変復調部20と、パケット毎にプリアンブル期間に最適な受信アンテナを選択するアンテナ選択部21と、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナで受信した信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かを判断するパケット宛先判断部22と、アンテナ選択部21による選択結果およびパケット宛先判断部22による判断結果に基づいて、待機アンテナを決定する待機アンテナ決定部23とを備えている。
【0039】
アンテナ選択部21、パケット宛先判断部22および待機アンテナ決定部23は、LSI(Large Scale Integration)等に実装された論理回路によって構成されている。なお、アンテナ選択部21、パケット宛先判断部22および待機アンテナ決定部23は、図3に示されるようにBB部14に設けてもよいし、プロトコル層等の上位レイヤを処理する部分に設けてもよい。
【0040】
アンテナ選択部21は、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)を測定することにより、アンテナ10、11を介して受信された信号の受信パワーを測定するようになっている。
【0041】
また、アンテナ選択部21は、変復調部20によってパケットが復調されると、このパケットのプリアンブル期間に、アンテナ切り替え部12に受信アンテナを順番に切り替えさせ、RSSIが最も高い信号を受信したアンテナを最適な受信アンテナとして選択するようになっている。
【0042】
パケット宛先判断部22は、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナで受信された信号から復調されたパケットのMAC(Media Access Control)ヘッダに含まれる宛先アドレスが自局のアドレスと一致するか否かに基づいて、各パケットが自局宛であるか否かを判断するようになっている。
【0043】
ここで、IEEE802.11におけるMACフレームの基本フォーマットを図2に示す。図2に示すMACフレームは、MACヘッダと、データ(Frame Body)と、データの整合性をチェックするためのシーケンス(FCS、Frame Chack Sequence)とからなる。
【0044】
MACヘッダは、プロトコルのバージョン等を規定するフレームコントロール(Frame Control)と、無線回線を使用する予定期間を示すデュレーション(Duration/ID)と、通信モードや送信局がアクセスポイントか端末かで異なるアドレス(Address 1、Address 2、Address 3、Address 4)と、シーケンス制御用のフィールド(Sequence Duration)からなる。
【0045】
ここで、通信モードがインフラストラクチャモードで、かつ送信局がアクセスポイントである場合には、Address 1は宛先のMACアドレス、Address 2はアクセスポイントのMACアドレスを表すBSSID(Basic Service Set Identifier)、Address 3は送信元のMACアドレス、Address 4は使用されない。
【0046】
また、通信モードがアドホックモードの場合には、Address 1は宛先のMACアドレス、Address 2は送信元のMACアドレス、Address 3は任意の値であるBSSID、Address 4は使用されない。
【0047】
通信モードがインフラストラクチャモードで、かつ送信局がアクセスポイントである場合、または、通信モードがアドホックモードの場合には、図2に示す例において、パケット宛先判断部22は、MACフレームのMACヘッダに含まれる宛先のMACアドレス(Address 1)が、自局のMACアドレスと一致するか否かに基づいて、各パケットが自局宛であるか否かを判断する。
【0048】
図1において、待機アンテナ決定部23は、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるとパケット宛先判断部22によって判断された場合には、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナを待機アンテナとして決定し、当該パケットが自局宛でないと判断された場合には、待機アンテナを変更しない、すなわち、当該パケットを受信したときの待機アンテナを次のパケットを最初に受信するための待機アンテナとして決定するようになっている。
【0049】
このように構成された無線通信端末1のパケット受信時の動作について、図3を参照して説明する。
【0050】
まず、待機アンテナで受信され、変復調部20によって復調されたパケットがアンテナ選択部21によって検出されると(ステップS1)、このパケットのプリアンブル期間に、RSSIが最も高い信号を受信したアンテナが最適な受信アンテナとしてアンテナ選択部21によって選択される(ステップS2)。
【0051】
当該パケットが受信されている間、当該パケットのMACヘッダに基づいて当該パケットが自局宛であるか否かがパケット宛先判断部22によって判断される(ステップS3)。ここで、当該パケットが自局宛であると判断された場合には、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナが待機アンテナ決定部23によって待機アンテナとして決定される(ステップS4)。すなわち、当該パケットの受信が完了した後に、アンテナ切り替え部12によるアンテナの切り替えは行われない。
【0052】
一方、当該パケットが自局宛でないと判断された場合には、待機アンテナは、変更されない(ステップS5)。すなわち、当該パケットの受信が完了した後に、当該パケットを受信したときの待機アンテナとアンテナ選択部21によって選択された受信アンテナとが異なる場合には、アンテナ切り替え部12によるアンテナの切り替えが行われ、当該パケットを受信したときの待機アンテナとアンテナ選択部21によって選択された受信アンテナとが同じである場合には、アンテナ切り替え部12によるアンテナの切り替えが行われない。
【0053】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態としての無線通信端末1は、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かに基づいて、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナを待機アンテナとするか否かを決定するため、従来のものより低消費電力で、かつ、他の無線通信端末の通信状況に影響されずに最適な待機アンテナを選択することができる。
【0054】
なお、本実施の形態において、待機アンテナ決定部23は、パケットの受信中に待機アンテナを決定するものとして説明したが、パケットの受信後に待機アンテナを決定するようにしてもよい。
【0055】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、本発明の第1の実施の形態における無線通信端末1のパケット宛先判断部22を変更することによって実現され、本発明の第1の実施の形態における無線通信端末1と機能ブロックも同様に分類されるため、本発明の第2の実施の形態については、図1に示した無線通信端末1を用いて説明する。
【0056】
本実施の形態において、パケット宛先判断部22は、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナで受信された信号が変復調部20によってパケットに復調されてから一定時間以内に自局から送信が行われるか否かに基づいて、このパケットが自局宛であるか否かを判断するようになっている。
【0057】
IEEE802.11a規格においては、自局宛のパケットを受信した局は、パケット受信後に、パケットの受信が成功したことを知らせるACKと呼ばれるパケットをSIFSと呼ばれる短い時間が経過した後に送信するように規定されている。このような、MACヘッダ等のプロトコル解析は、上位レイヤで行われることが多い。
【0058】
このため、パケット宛先判断部22は、タイマを有し、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナで受信された信号が変復調部20によってパケットに復調されてからSIFSに規格や処理時間による遅延を考慮した若干のマージンを持たせた一定時間以内に自局の上位レイヤからACKの送信が要求された場合には、当該パケットが自局宛であると判断し、一定時間以内に自局の上位レイヤからACKが要求されなかった場合には、当該パケットが自局宛でないと判断するようになっている。
【0059】
なお、パケット宛先判断部22は、自局の上位レイヤからACKの送信が要求されたか否かにより、当該パケットが自局宛であるか否かを判断するのに代えて、変復調部20によって変調処理が開始されたか否かにより、当該パケットが自局宛であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0060】
このように構成された無線通信端末1のパケット受信時の動作について、図4を参照して説明する。
【0061】
まず、待機アンテナで受信され、変復調部20によって復調されたパケットがアンテナ選択部21によって検出されると(ステップS11)、このパケットのプリアンブル期間に、RSSIが最も高い信号を受信したアンテナが最適な受信アンテナとしてアンテナ選択部21によって選択される(ステップS12)。
【0062】
当該パケットの受信が完了すると(ステップS13)、一定時間以内に自局の上位レイヤからACKの送信が要求されたか否かがパケット宛先判断部22によって判断される(ステップS14)。
【0063】
ここで、一定時間以内に自局の上位レイヤからACKの送信が要求されたと判断された場合には、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナが待機アンテナ決定部23によって待機アンテナとして決定される(ステップS15)。すなわち、当該パケットの受信が完了した後に、アンテナ切り替え部12によるアンテナの切り替えは行われない。
【0064】
一方、一定時間以内に自局の上位レイヤからACKの送信が要求さなかったと判断された場合には、待機アンテナは、変更されない(ステップS16)。すなわち、当該パケットの受信が完了した後に、当該パケットを受信したときの待機アンテナとアンテナ選択部21によって選択された受信アンテナとが異なる場合には、アンテナ切り替え部12によるアンテナの切り替えが行われ、当該パケットを受信したときの待機アンテナとアンテナ選択部21によって選択された受信アンテナとが同じである場合には、アンテナ切り替え部12によるアンテナの切り替えが行われない。
【0065】
以上に説明したように、本発明の第2の実施の形態としての無線通信端末1は、パケットの受信が完了してから一定時間以内に自局の上位レイヤからACKの送信が要求されたか否かに基づいて、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かを判断するため、上位レイヤとのインターフェース信号を追加せずに、比較的簡単な回路で、本発明の第1の実施の形態と同様な作用効果が得られる。
【0066】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態は、本発明の第1の実施の形態における無線通信端末1のパケット宛先判断部22を変更することによって実現され、本発明の第1の実施の形態における無線通信端末1と機能ブロックも同様に分類されるため、本発明の第3の実施の形態については、図1に示した無線通信端末1を用いて説明する。
【0067】
本実施の形態におけるパケット宛先判断部22は、通信モードがインフラストラクチャモードであるか、アドホックモードであるかに基づいて、受信されたパケットが自局宛であるか否かの判断を行うか否かを決定するようになっている。
【0068】
なお、インフラストラクチャモードは、アクセスポイントを経由して無線通信端末間で無線通信を行う通信モードであり、アドホックモードは、無線通信端末間で直接に無線通信を行う通信モードである。
【0069】
通信モードがインフラストラクチャモードである場合には、無線通信端末1は、必ずアクセスポイントを経由してデータのやりとりを行うため、待機アンテナとしては、接続中のアクセスポイントからの送信パケットが最適に受信できるアンテナを選択すればよい。
【0070】
このため、本実施の形態におけるパケット宛先判断部22は、通信モードがインフラストラクチャモードである場合には、本発明の第1の実施の形態におけるパケット宛先判断部22と同様に、各パケットが自局宛であるか否かを判断するようになっている。
【0071】
一方、通信モードがアドホックモードである場合には、接続中の各無線通信端末がパケットを送受信する。このため、同じ周波数帯で自局と接続している無線通信端末が複数ある場合には、どの無線通信端末から送信されるパケットを受信するかを予期できないので待機アンテナをどのアンテナにするか決定できない。
【0072】
このため、本実施の形態におけるパケット宛先判断部22は、通信モードがアドホックモードであり、同じ周波数帯で自局と接続している無線通信端末が1つでない場合には、各パケットが自局宛であるか否かを判断しないようになっている。
【0073】
この場合には、待機アンテナ決定部23は、パケット宛先判断部22による判断結果が得られないため、待機アンテナを決定しない。この結果、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナが待機アンテナとなり、アンテナ切り替え部12によるアンテナの不要な切り替えが抑制される。
【0074】
一方、通信モードがアドホックモードである場合であっても、同じ周波数帯で自局と接続している無線通信端末が1つの場合には、パケットの送信元である無線通信端末が1つしかないため、待機アンテナを決定することができる。
【0075】
このため、本実施の形態におけるパケット宛先判断部22は、通信モードがアドホックモードであり、同じ周波数帯で自局と接続している無線通信端末が1つの場合には、本発明の第1の実施の形態におけるパケット宛先判断部22と同様に、各パケットが自局宛であるか否かを判断するようになっている。
【0076】
なお、パケット宛先判断部22は、上位レイヤでセションが確立している無線通信端末の数を上位レイヤの処理部から受けることにより、同じ周波数帯で自局と接続している無線通信端末が1つであるか否かを判断する。
【0077】
このように構成された無線通信端末1のパケット受信時の動作について、図5を参照して説明する。
【0078】
まず、待機アンテナで受信され、変復調部20によって復調されたパケットがアンテナ選択部21によって検出されると(ステップS21)、このパケットのプリアンブル期間に、RSSIが最も高い信号を受信したアンテナが最適な受信アンテナとしてアンテナ選択部21によって選択される(ステップS22)。
【0079】
ここで、通信モードがインフラストラクチャモードでない場合(ステップS23)、すなわち、アドホックモードである場合には、同じ周波数帯で自局と接続している無線通信端末が1つであるか否かがパケット宛先判断部22によって判断される(ステップS24)。
【0080】
ステップS24において、同じ周波数帯で自局と接続している無線通信端末が1つであると判断された場合、または、ステップS23において、通信モードがインフラストラクチャモードである場合には、当該パケットが受信されている間、当該パケットのMACヘッダに基づいて当該パケットが自局宛であるか否かがパケット宛先判断部22によって判断される(ステップS25)。
【0081】
ここで、当該パケットが自局宛であると判断された場合には、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナが待機アンテナ決定部23によって待機アンテナとして決定される(ステップS26)。すなわち、当該パケットの受信が完了した後に、アンテナ切り替え部12によるアンテナの切り替えは行われない。
【0082】
一方、当該パケットが自局宛でないと判断された場合には、待機アンテナは、変更されない(ステップS27)。すなわち、当該パケットの受信が完了した後に、当該パケットを受信したときの待機アンテナとアンテナ選択部21によって選択された受信アンテナとが異なる場合には、アンテナ切り替え部12によるアンテナの切り替えが行われ、当該パケットを受信したときの待機アンテナとアンテナ選択部21によって選択された受信アンテナとが同じである場合には、アンテナ切り替え部12によるアンテナの切り替えが行われない。
【0083】
また、ステップS24において、同じ周波数帯で自局と接続している無線通信端末が1つでないと判断された場合には、待機アンテナ決定部23による待機アンテナの決定が行われないため、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナが待機アンテナとなる(ステップS26)。すなわち、当該パケットの受信が完了した後に、アンテナ切り替え部12によるアンテナの切り替えは行われない。
【0084】
以上に説明したように、本発明の第3の実施の形態としての無線通信端末1は、通信モードがインフラストラクチャモードの場合に、従来のものより他の無線通信端末の通信状況に影響されずに最適な待機アンテナを選択することができる。
【0085】
また、本発明の第3の実施の形態としての無線通信端末1は、通信モードがアドホックモードの場合であっても、同じ周波数帯で自局と接続している無線通信端末が1つの場合には、従来のものより他の無線通信端末の通信状況に影響されずに最適な待機アンテナを選択することができる。
【0086】
なお、本実施の形態において、待機アンテナ決定部23は、パケットの受信中に待機アンテナを決定するものとして説明したが、パケットの受信後に待機アンテナを決定するようにしてもよい。
【0087】
また、本実施の形態においては、通信モードに基づいて、受信されたパケットが自局宛であるか否かの判断を行うか否かを決定するように、本発明の第1の実施の形態におけるパケット宛先判断部22を構成した例について説明したが、本発明の第2の実施の形態におけるパケット宛先判断部22も、通信モードに基づいて、受信されたパケットが自局宛であるか否かの判断を行うか否かを決定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1、50、51 無線通信端末
10、11、60、61 アンテナ
12 アンテナ切り替え部
13 RF部
14 BB部
20 変復調部
21 アンテナ選択部
22 パケット宛先判断部
23 待機アンテナ決定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特開2005−252825号公報
【特許文献2】特開2007−143090号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを用いてパケット毎にダイバーシティ方式で通信を行う無線通信端末において、
前記複数のアンテナから受信に用いるアンテナを前記パケット毎に選択するアンテナ選択部と、
前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かを判断するパケット宛先判断部と、
前記アンテナ選択部による選択結果および前記パケット宛先判断部による判断結果に基づいて、次のパケットを最初に受信するための待機アンテナを決定する待機アンテナ決定部と、を備えたことを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記待機アンテナ決定部は、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であると前記パケット宛先判断部によって判断された場合には、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナを前記待機アンテナとして決定し、該パケットが自局宛でないと前記パケット宛先判断部によって判断された場合には、前記待機アンテナを変更しないことを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記パケット宛先判断部は、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットのMACヘッダに含まれる宛先アドレスが自局のアドレスと一致するか否かに基づいて、該パケットが自局宛であるか否かを判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記パケット宛先判断部は、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号からパケットが復調されてから一定時間以内に自局から送信が行われるか否かに基づいて、該パケットが自局宛であるか否かを判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記待機アンテナ決定部は、アクセスポイントを経由して無線通信端末間で無線通信を行うインフラストラクチャモードで通信を行っている場合に、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かを判断することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記待機アンテナ決定部は、無線通信端末間で直接に無線通信を行うアドホックモードで通信を行っている場合であっても、自局と接続している無線通信端末が1つの場合には、前記アンテナ選択部によって選択されたアンテナで受信された信号から復調されたパケットが自局宛であるか否かを判断することを特徴とする請求項5に記載の無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−263547(P2010−263547A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114433(P2009−114433)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】