説明

無線通信装置及び通信制御プログラム

【課題】近距離無線通信用の複数のICチップを備えた無線通信装置において通信障害が発生するのを抑制する。
【解決手段】携帯電話機は、複数のICチップのうちの一つのICチップを、リーダライタ(R/W)との間で無線通信の実行を行えるロック解除状態に設定する初期設定部180aを備える。また、携帯電話機は、ロック解除状態に設定されたICチップとR/Wとの間で無線通信が実行されたら、この無線通信が正常に行われたか否かを判定する通信判定部182を備える。また、携帯電話機は、無線通信が正常に行われなかったと判定された場合に、ロック解除状態に設定されたICチップを、R/Wとの間で無線通信の実行を行えないロック状態に設定するとともに、このロック状態に設定されたICチップとは異なる他の一つのICチップをロック解除状態に設定する変更設定部180bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置及び通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リーダライタ(R/W:Reader/Writer)との間で近距離の無線通信によってID(IDentification)情報のやりとりを行うRFID(Radio Frequency Identification)技術が知られている。最近では、RFID用のIC(Integrated Circuit)チップを例えば携帯電話機などの無線通信装置に搭載して、無線通信装置の外部に配設されたリーダライタなどの対向装置との間で無線通信を行うことにより、料金の支払いなどの決済が行われている。また、リーダライタとの間の無線通信に限らず、RFID用のICチップを搭載した他の無線通信装置との間で無線通信を行うことも多くなっている。
【0003】
このようなRFID技術を用いた近距離無線通信方式の標準規格としては、ISO(International Organization for Standardization)14443が世界的に広く知られているが、日本国内では例えばFeliCa(登録商標)などの独自規格が用いられている。
【0004】
一方で、近年のスマートフォンの市場拡大に伴い、ISO14443に準拠するNFC(Near Field Communication)チップベースの機能(例えばMifare(登録商標)カード通信)がスマートフォンに搭載されるようになっている。
【0005】
このような状況の中、従来、海外向けNFCチップに対して、日本国内のFeliCa通信にも対応するため、FeliCa Application Program InterfaceをNFCチップに追加することが知られている。
【0006】
また、携帯電話機に搭載されたICチップに、複数の電子マネーアプリケーションを組み込み、リーダライタは、複数の電子マネーアプリケーションの中から優先順位に従って決済処理を行うことも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−252613号公報
【特許文献2】特開2009−176065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記先行技術文献に開示されている技術は、近距離無線通信用の複数のICチップを備えた無線通信装置における通信障害の発生については考慮されていない。
【0009】
すなわち、日本国内で用いられるスマートフォンなどの無線通信装置には、FeliCaチップが搭載されており、FeliCaチップによる無線通信を用いて決済処理が行われている。これに対して近年では、日本国内だけではなく世界中で近距離無線通信方式を利用した決済処理を行うことができる無線通信装置が求められている。
【0010】
この点、例えばFeliCaチップが搭載された無線通信装置に、NFCチップを追加搭載することで、日本と海外の両方で近距離無線通信を利用した決済処理を行うことが考えられる。しかしながら、無線通信装置に近距離無線通信用の複数のICチップを搭載すると、例えばカード型の近距離無線通信用のICカードを複数枚重ねて利用したときと同様に、複数のICチップの同時通信によって通信電波が干渉し、通信障害が発生するおそれがある。
【0011】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、近距離無線通信用の複数のICチップを備えた無線通信装置において通信障害が発生するのを抑制することができる無線通信装置及び通信制御プログラムを実現することを目的とする。なお、ここでいう「近距離無線通信」とは、赤外線、Bluetooth、FeliCa等の無線通信技術を指し、これらは非接触型無線通信技術と呼ばれることもある。また、近距離無線通信の近距離とは、例えば周波数帯によって数センチ〜数メートルの通信距離を有するものを指す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の開示する無線通信装置は、一つの態様において、リーダライタとの間で無線通信を行う複数のICチップを備える。また、無線通信装置は、前記複数のICチップのうちの一つのICチップを、前記リーダライタとの間で無線通信の実行を行えるロック解除状態に設定する第1の設定部を備える。また、無線通信装置は、前記ロック解除状態に設定されたICチップと前記リーダライタとの間で無線通信が実行されたら、該無線通信が正常に行われたか否かを判定する判定部を備える。また、無線通信装置は、前記判定部によって前記無線通信が正常に行われなかったと判定された場合に、前記ロック解除状態に設定されたICチップを、前記リーダライタとの間で無線通信の実行を行えないロック状態に設定するとともに、該ロック状態に設定されたICチップとは異なる他の一つのICチップを前記ロック解除状態に設定する第2の設定部を備える。
【発明の効果】
【0013】
本願の開示する無線通信装置の一つの態様によれば、近距離無線通信用の複数のICチップを備えた無線通信装置において通信障害が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、携帯電話機の排他ロック制御の概要を示す図である。
【図2】図2は、携帯電話機のハードウェア構成を示す図である。
【図3】図3は、ICカードチップ内のメモリに格納された情報の一例を示す図である。
【図4】図4は、携帯電話機の機能ブロックを示す図である。
【図5】図5は、携帯電話機の処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、携帯電話機の処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、携帯電話機の処理を示すフローチャートである。
【図8】図8は、携帯電話機のハードウェア構成の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願の開示する無線通信装置及び通信制御プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。例えば、以下の実施形態では、無線通信装置の一例として携帯電話機を挙げて説明するが、これに限らず、リーダライタと無線通信を行う複数のICカードチップを備えた無線通信装置であればよい。無線通信装置は、例えば携帯電話機の他、PDA(Personal Digital Assistance)や可搬型PC(Personal Computer)などである。
【0016】
図1は、携帯電話機の排他ロック制御の概要を示す図である。図1は、携帯電話機100とICカードR/W200との間で無線通信が行われる様子を図面に向かって左側から右側へ時系列に示した図である。携帯電話機100は、ICカードチップA120及びICカードチップB130を備えている。ICカードチップA120は例えばFeliCaチップであり、ICカードチップB130は例えばNFCチップである。図1の例では、ICカードR/W200はICカードチップB130との間で無線通信を行うことができるR/Wであり、ICカードチップA120とは無線通信を行えないものとする。なお、図1の例では、説明の簡略化のために、携帯電話機100の構成のうち、ICカードチップA120、ICカードチップB130、及び排他ロック制御部180のみを示している。携帯電話機100の詳細は後述する。
【0017】
図1のロック状態マップ122は、ICカードチップA120のロック状態を示すものである。また、ロック状態マップ132は、ICカードチップB130のロック状態を示すものである。ロック状態マップ122,132に示すように、まず、携帯電話機100は、初期状態として、排他ロック制御部180によって、ICカードチップA120をICカードR/W200との間で無線通信の実行を行えるロック解除状態122a(ロックOFF)に設定する。また、携帯電話機100は、初期状態として、排他ロック制御部180によって、ICカードチップB130をICカードR/W200との間で無線通信の実行を行えないロック状態132a(ロックON)に設定する。
【0018】
この状態で、携帯電話機100はICカードR/W200から送信された搬送波202を受信する。ここで、ICカードチップB130はロック状態132bであり、ICカードチップA120はロック解除状態122bであるので、ICカードチップA120とICカードR/W200との間で無線通信が実行される。しかしながら、ICカードR/W200は、ICカードチップB130との間で無線通信を行うR/Wであるので、ICカードチップA120との無線通信は正常に行われない。
【0019】
そこで、携帯電話機100は、排他ロック制御部180によって、ICカードチップA120をロック状態122cに設定し、ICカードチップB130をロック解除状態132cに設定する。つまり、ICカードチップA120とICカードチップB130のロック状態を入れ替える。すると、ICカードチップB130はロック解除状態になるので、ICカードチップB130とICカードR/W200との間で無線通信が実行される。ICカードR/W200は、ICカードチップB130との間で無線通信を行うR/Wであるので、ICカードチップB130との無線通信は正常に行われる。
【0020】
本実施形態の携帯電話機100によれば、ICカードチップA120及びICカードチップB130が同時にICカードR/W200と無線通信を実行することを防止することができる。したがって、本実施形態の携帯電話機100によれば、複数のICカードチップによる無線通信が同時に実行されることによって電波が混同(干渉)して通信障害が発生するのを抑制することができる。以下、携帯電話機100の詳細について説明する。
【0021】
図2は、携帯電話機のハードウェア構成を示す図である。図2に示すように、本実施形態の携帯電話機100は、アンテナ102、無線部104、スピーカ108、マイク110、及びオーディオ入出力部112を備える。また、携帯電話機100は、ICカードチップA120、ICカードチップB130、指示保持部A142、指示保持部B144、記憶部150、表示部156、キー入力部158、及びプロセッサ160を備える。
【0022】
無線部104は、アンテナ102を介して音声や文字などの各種データの無線通信を行う。また、オーディオ入出力部112は、マイク110を介して音声を入力するとともにスピーカ108を介して音声を出力する入出力インターフェースである。
【0023】
ICカードチップA120は、例えばFeliCaチップであり、携帯電話機100の外部に配設されたR/Wとの間で無線通信を行ったり、FeliCaチップ等を備えた他の無線通信装置との間で無線通信を行ったりする。ICカードチップB130は、例えばNFCチップであり、携帯電話機100の外部に配設されたR/Wとの間で無線通信を行ったり、NFCチップ等を備えた他の無線通信装置との間で無線通信を行ったりする。ICカードチップA120及びICカードチップB130は、例えばプロセッサ160のUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)ポートに接続され、UARTポートを介してプロセッサ160との間で各種データの送受信を実行する。以下の説明では、携帯電話機100の外部に配設されたR/Wと、FeliCaチップ又はNFCチップ等のICカードチップを備えた他の無線通信装置とをまとめて「ICカードR/W200」という。また、ICカードチップA120及びICカードチップB130はいずれも、使用可否端子(Enable/Disableピン)を有しており、この端子への入力信号がHighであれば無線通信が可能な状態となり、Lowであれば無線通信が不可能な状態となる。
【0024】
ここで、ICカードチップA120内のメモリに格納された情報の一例について説明する。図3は、ICカードチップ内のメモリに格納された情報の一例を示す図である。図3は、例えば、ICカードチップA120がFeliCaチップである場合の、ICカードチップA120内のメモリに格納された情報の一例を示すものである。図3に示すように、ICカードチップA120の格納領域123には、決済サービスA(例えばEdy:登録商標)に関する情報124、決済サービスB(例えばSuica:登録商標)に関する情報126、及び空き領域128が含まれる。例えば、携帯電話機100がICカードR/W200との間で無線通信を行うことにより決済サービスAの決済が行われた場合には、情報124が書き換えられ、決済サービスBの決済が行われた場合には、情報126が書き換えられる。このように、ICカードチップA120の格納領域123には、一つの決済サービスに関する情報だけではなく、複数の決済サービスに関する情報を格納することができ、ICカードチップA120は複数の決済サービスに対応することができる。
【0025】
図2の説明に戻って、指示保持部A142及び指示保持部B144は、例えばフリップフロップ回路であり、プロセッサ160からの入力に応じてICカードチップA120またはICカードチップB130の使用可否端子への信号をHighまたはLowとすることで、ICカードチップA120またはICカードチップB130の無線通信の可/不可を指示する。なお、指示保持部A142はICカードチップA120に対して指示をし、指示保持部B144はICカードチップB130に対して指示をするものとする。
【0026】
記憶部150は、携帯電話機100の各種機能を実行するためのデータを格納するROM(Read Only Memory)152と、各種機能を実行するための各種プログラムを格納するRAM(Random Access Memory)154とを有する。記憶部150には、例えばICカードR/W200との間で無線通信が実行された一つのICチップの無線通信の実行の前のICチップ内の情報が格納される。表示部156には、文字や画像などの各種情報を表示する液晶パネルなどの出力インターフェースである。キー入力部158は、携帯電話機100に設けられた各種の操作キーであり、ユーザから入力された操作を受け付ける入力インターフェースである。
【0027】
プロセッサ160は、ROM152又はRAM154に格納された各種プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算処理部である。プロセッサ160は、ROM152又はRAM154に格納された各種プログラムを実行することにより、上述した無線部104、オーディオ入出力部112、ICカードチップA120、ICカードチップB130、指示保持部A142、指示保持部B144、表示部156、及びキー入力部158を制御する。なお、プロセッサ160で実行されるプログラムは、ROM152又はRAM154に格納されるだけではなく、CD(Compact Disc)−ROMやメモリ媒体等の頒布できる記憶媒体に記録しておき、記憶媒体から読み出して実行することができる。また、ネットワークを介して接続されたサーバにプログラムを格納し、サーバ上でプログラムが動作するようにしておいて、ネットワークを介して接続される携帯電話機100からの要求に応じてサービスを要求元の携帯電話機100に提供することもできる。
【0028】
次に、携帯電話機100の機能ブロックについて説明する。図4は、携帯電話機の機能ブロックを示す図である。図4に示すように、携帯電話機100は、機能ブロックとして、無線制御部172、表示制御部174、入力制御部176、タイマ制御部178、排他ロック制御部180、及び通信判定部182を備える。無線制御部172、表示制御部174、入力制御部176、タイマ制御部178、排他ロック制御部180、及び通信判定部182は、プロセッサ160がROM152又はRAM154から各種プログラムを読み出して実行することによって実現される。また、無線制御部172、表示制御部174、入力制御部176、タイマ制御部178、排他ロック制御部180、及び通信判定部182は、データバス190を介して相互に接続される。
【0029】
無線制御部172は、無線部104を制御することにより、基地局を介して通信相手の携帯電話機等と音声や文字などの各種データの無線通信の制御を行う。表示制御部174は、記憶部150に格納された文字や画像などの各種情報を表示部156に表示するための制御を行う。入力制御部176は、キー入力部158を介して入力されたユーザの入力操作を受け付ける制御を行う。
【0030】
タイマ制御部178は、排他ロック制御部180によってロック解除状態に設定されたICカードチップがICカードR/W200から送信された無線信号を受信してからあらかじめ設定された時間が経過したか否かを判定する。
【0031】
排他ロック制御部180は、初期設定部180aと変更設定部180bとを備える。初期設定部180aは、ICカードチップA120及びICカードチップB130のうちの一つのICカードチップをロック解除状態に設定する。例えば、初期設定部180aは、携帯電話機100の初期状態として、ICカードチップA120をロック解除状態に設定する。また、初期設定部180aは、携帯電話機100の初期状態として、ICカードチップB130を、ICカードR/W200との間で無線通信の実行を行えないロック状態に設定する。また、初期設定部180aは、例えば携帯電話機100の電源をONして携帯電話機100を起動した際の初期化処理において、ICカードチップA120をロック解除状態に設定する。
【0032】
変更設定部180bは、ロック解除状態に設定されたICカードチップとICカードR/W200との間で無線通信が正常に行われなかったと通信判定部182によって判定された場合に、ロック解除状態に設定されたICカードチップをロック状態に設定する。加えて、変更設定部180bは、変更設定部180bによってロック状態に設定されたICカードチップとは異なる他の一つのICチップをロック解除状態に設定する。例えば、変更設定部180bは、ロック解除状態に設定されたICカードチップA120とICカードR/W200との間で無線通信が正常に行われなかったと判定されたら、ICカードチップA120をロック状態に設定する。併せて、変更設定部180bは、ICカードチップB130をロック解除状態に設定する。
【0033】
また、変更設定部180bは、初期化処理においてICカードチップA120内の情報の読み出し及び保存が終了したら、ICカードチップA120をロック状態に設定するとともに、ICカードチップB130をロック解除状態に設定する。
【0034】
初期設定部180a及び変更設定部180bは、ICカードチップA120及びICカードチップB130のうちロック解除状態に設定されたICカードチップに対応する指示保持部に対して無線通信可を指示する。指示保持部がフリップフロップ回路の場合であれば、D入力にHigh信号を入力するとともにCLKを1発入力する。これによって、当該指示保持部が、対応するICカードチップの使用可否端子へHigh信号を入力してこれを保持し、ICカードチップの無線通信が可能な状態となる。このようにして、初期設定部180a及び変更設定部180bは、ICカードチップA120及びICカードチップB130のロック状態/ロック解除状態を制御する。
【0035】
通信判定部182は、初期設定部180a又は変更設定部180bによってロック解除状態に設定されたICカードチップとICカードR/W200との間で無線通信が実行されたら、この無線通信が正常に行われたか否かを判定する。例えば、通信判定部182は、ロック解除状態に設定されたICカードチップ内に格納された情報が無線通信の実行の前後で変化したか否かに応じてICカードR/W200との間で無線通信が正常に行われたか否かを判定する。すなわち、ICカードチップ内に記載されている情報は、例えばICカードR/W200との間の無線通信によって決済処理が正常に行われたら変化し、決済処理が正常に行われなかった場合は変化しないという特性を利用するものである。
【0036】
また、例えば、通信判定部182は、ロック解除状態に設定されたICカードチップの無線通信の実行の前のICカードチップ内の情報を記憶部150に格納しておく。そして、通信判定部182は、ロック解除状態に設定されたICカードチップとICカードR/W200との間で無線通信が実行されたら、ロック解除状態に設定されたICカードチップに対応する情報を記憶部150から読み出す。そして、通信判定部182は、記憶部150から読み出された情報とロック解除状態に設定されたICカードチップ内に格納された情報とを比較することによって無線通信の実行の前後のICチップ内の情報の変化の有無を判定する。また、通信判定部182は、ロック解除状態に設定されたICカードチップの無線通信の実行の前後のICチップ内の情報の変化が有ると判定されたら、ロック解除状態に設定されたICチップ内に格納された情報を記憶部150に格納する。このように、通信判定部182は、複数のICカードチップのうちICカードR/W200との間で正常に無線通信を行うことができる有効なICカードチップを判断するための判断材料として、複数のICカードチップのカード情報を記憶部150に格納しておく。
【0037】
また、例えば、通信判定部182は、タイマ制御部178によってあらかじめ設定された時間が経過したと判定されたら、ロック解除状態に設定されたICカードチップとICカードR/W200との間で無線通信が正常に行われたか否かを判定する。これは、例えばICカードチップとICカードR/W200との間の無線通信によって決済処理が行われている場合に、決済処理の完了の契機はICカードチップからは得られないため、タイマ制御部178を使用してタイムアウト後に判定を行うものである。
【0038】
また、通信判定部182は、例えば携帯電話機100の電源をONして携帯電話機100を起動した際の初期化処理において、ロック解除状態に設定されたICカードチップ内の情報を読み出して記憶部150に格納する。
【0039】
次に、携帯電話機100の処理について説明する。図5は、携帯電話機の処理を示すフローチャートである。図5のフローチャートは、例えば携帯電話機100の電源をONにして携帯電話機100を起動したときに実行される初期化処理のフローチャートである。なお、図5では、説明の便宜上、排他ロック制御部180及び通信判定部182によって実行される処理を「排他ロック制御」と表記している。また、携帯電話機100には、ICカードチップA120とICカードチップB130のうち、ICカードR/W200との間で無線通信を優先的に実行するICカードチップとして、ICカードチップA120が設定されているものとする。
【0040】
まず、初期設定部180aは、ICカードチップA120をロック解除状態に設定する(ステップS101)。続いて、通信判定部182は、ICカードチップA120内に格納されているカード情報Aを読み出して(ステップS102)、読み出したカード情報Aを記憶部150に保存する(ステップS103)。これにより、ICカードチップA120がICカードR/W200との間で無線通信を実行する前のカード情報Aが記憶部150に格納される。
【0041】
続いて、変更設定部180bは、ICカードチップA120をロック状態に設定する(ステップS104)とともに、ICカードチップB130をロック解除状態に設定する(ステップS105)。続いて、通信判定部182は、ICカードチップB130内に格納されているカード情報Bを読み出して(ステップS106)、読み出したカード情報Bを記憶部150に保存する(ステップS107)。これにより、ICカードチップB130がICカードR/W200との間で無線通信を実行する前のカード情報Bが記憶部150に格納される。
【0042】
続いて、初期設定部180aは、ICカードチップB130をロック状態に設定する(ステップS108)とともに、ICカードチップA120をロック解除状態に設定する(ステップS109)。すなわち、初期設定部180aは、ICカードチップA120がICカードR/W200との間で無線通信を優先的に実行するよう設定されているため、ICカードチップA120をロック解除状態に設定しておく。
【0043】
次に、携帯電話機100がICカードR/W200との間で無線通信を行う場合の携帯電話機100の処理を説明する。図6,図7は、携帯電話機の処理を示すフローチャートである。なお、図6,図7では、説明の便宜上、タイマ制御部178、排他ロック制御部180、及び通信判定部182によって実行される処理を「排他ロック制御」と表記している。
【0044】
まず、例えばユーザが携帯電話機100をICカードR/W200にかざすと、ICカードチップA120のみがロック解除状態に設定されているので、ICカードチップA120は、ICカードR/W200から送信された搬送波を受信する(ステップS201)。ICカードチップA120は、ICカードR/W200から送信された搬送波を受信したことをタイマ制御部178に通知する(ステップS202)。
【0045】
タイマ制御部178は、ICカードチップA120から、ICカードR/W200から送信された搬送波を受信した旨が通知されたら、タイマを起動する(ステップS203)。一方、ICカードチップA120とICカードR/W200との間では無線通信の実行による決済処理が行われる(ステップS204)。タイマ制御部178は、ICカードチップA120とICカードR/W200との間で決済処理が行われている際に、タイマ起動後あらかじめ設定された時間(例えば2秒)が経過してタイムアウトしたか否かを判定する(ステップS205)。なお、あらかじめ設定された時間は、ICカードチップとICカードR/W200との間の無線通信による決済が確実に終わる時間を適宜設定することができる。タイマ制御部178は、タイマ起動後あらかじめ設定された時間が経過していない場合は(ステップS205,No)、ステップS205の処理を繰り返す。
【0046】
一方、通信判定部182は、タイマ起動後あらかじめ設定された時間が経過したと判定されたら(ステップS205,Yes)、ICカードチップA120内に格納されているカード情報A´を読み出す(ステップS206)。また、通信判定部182は、記憶部150内に格納されているカード情報Aを読み出す(ステップS207)。
【0047】
通信判定部182は、読み出されたカード情報Aとカード情報A´とを比較し(ステップS208)、カード情報Aとカード情報A´との間に相違があるか否かを判定する(ステップS209)。通信判定部182は、カード情報Aとカード情報A´との間に相違があると判定されたら(ステップS209,Yes)、カード情報A´を記憶部150に保存して(ステップS210)、処理を終了する。つまり、カード情報Aとカード情報A´との間に相違があるということは、ICカードチップA120とICカードR/W200との間で正常に無線通信が行われており、ICカードチップA120は有効なICカードチップであることを示している。そこで、通信判定部182は、次回の判定に用いるために、ICカードチップA120内で更新されたカード情報A´を記憶部150に保存する。
【0048】
一方、変更設定部180bは、カード情報Aとカード情報A´との間に相違がないと判定されたら(ステップS209,No)、図7のフローチャートへ遷移する。変更設定部180bは、図7に示すように、変更設定部180bは、ICカードチップA120をロック状態に設定する(ステップS301)とともに、ICカードチップB130をロック解除状態に設定する(ステップS302)。つまり、カード情報Aとカード情報A´との間に相違がないということは、ICカードチップA120とICカードR/W200との間で正常に無線通信が行われておらず、ICカードチップA120は無効なICカードチップであることを示している。そこで、変更設定部180bは、ICカードチップA120をロック状態に設定し、ICカードチップA120とは異なるICカードチップB130をロック解除状態に設定する。これにより、ICカードR/W200との間の通信対象が自動的にICカードチップB130に切り替えられる。
【0049】
続いて、ICカードチップB130のみがロック解除状態に設定されているので、ICカードチップB130は、ICカードR/W200から送信された搬送波を受信する(ステップS303)。ICカードチップB130は、ICカードR/W200から送信された搬送波を受信したことをタイマ制御部178に通知する(ステップS304)。
【0050】
タイマ制御部178は、ICカードチップB130から、ICカードR/W200から送信された搬送波を受信した旨が通知されたら、タイマを起動する(ステップS305)。一方、ICカードチップB130とICカードR/W200との間では無線通信の実行による決済処理が行われる(ステップS306)。タイマ制御部178は、ICカードチップB130とICカードR/W200との間で決済処理が行われている際に、タイマ起動後あらかじめ設定された時間(例えば2秒)が経過してタイムアウトしたか否かを判定する(ステップS307)。タイマ制御部178は、タイマ起動後あらかじめ設定された時間が経過していない場合は(ステップS307,No)、ステップS307の処理を繰り返す。
【0051】
一方、通信判定部182は、タイマ起動後あらかじめ設定された時間が経過したと判定されたら(ステップS307,Yes)、ICカードチップB130内に格納されているカード情報B´を読み出す(ステップS308)。また、通信判定部182は、記憶部150内に格納されているカード情報Bを読み出す(ステップS309)。
【0052】
通信判定部182は、読み出されたカード情報Bとカード情報B´とを比較し(ステップS310)、カード情報Bとカード情報B´との間に相違があるか否かを判定する(ステップS311)。通信判定部182は、カード情報Bとカード情報B´との間に相違があると判定されたら(ステップS311,Yes)、カード情報B´を記憶部150に保存して(ステップS312)、処理を終了する。つまり、カード情報Bとカード情報B´との間に相違があるということは、ICカードチップB130とICカードR/W200との間で正常に無線通信が行われたことを示しているので、次回の判定用に、更新されたカード情報B´を記憶部150に保存する。また、この場合には、ICカードチップB130が有効なICカードチップB130であると判定されるので、引き続きICカードチップB130をロック解除状態のままとし、ICカードチップA120をロック状態のままとする。
【0053】
一方、初期設定部180aは、カード情報Bとカード情報B´との間に相違がないと判定されたら(ステップS311,No)、ICカードチップB130をロック状態に設定する(ステップS313)。そして、初期設定部180aは、ICカードチップA120をロック解除状態に設定して(ステップS314)、処理を終了する。つまり、カード情報Bとカード情報B´との間に相違がないと判定されるということは、ICカードチップA120とICカードチップB130のいずれもがICカードR/W200との間で正常に無線通信が行われなかったことを示している。そこで、初期設定部180aは、初期状態に戻すために、ICカードチップB130をロック状態に設定するとともに、ICカードチップA120をロック解除状態に設定する。
【0054】
以上のように、本実施形態の携帯電話機100によれば、近距離無線通信用の複数のICカードチップを備えた無線通信装置において通信障害が発生するのを抑制することができる。つまり、携帯電話機100は、ICカードチップA120とICカードチップB130のロック状態を(ロック状態,ロック状態)、(ロック状態、ロック解除状態)、(ロック解除状態、ロック状態)というように排他的に切り替える。また、携帯電話機100は、ICカードチップ内の情報の変化の有無をチェックすることにより、ICカードR/W200との間で正常に無線通信を行うことができる有効なICカードチップであるか否かを判断してロック状態を切り替える。したがって、携帯電話機100によれば、自動的に有効なICカードチップを選択することができる。また、携帯電話機100によれば、複数のICカードチップによる無線通信が同時に実行されることによって電波が混同(干渉)して通信障害が発生するのを抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態は、携帯電話機100にICカードチップA120とICカードチップB130という2つのICカードチップが搭載される例を示した。しかしながら、これには限られず、例えば3以上の複数のICカードチップが搭載される携帯電話機に対しても同様に適用することができる。例えば3以上の複数のICカードチップが搭載された携帯電話機であっても、初期設定部180aは、複数のICカードチップのうちの一つのICカードチップをロック解除状態に設定する。通信判定部182は、ロック解除状態に設定されたICカードチップとICカードR/W200との間で無線通信が実行されたら、この無線通信が正常に行われたか否かを判定する。そして、変更設定部180bは、通信判定部182によって無線通信が正常に行われなかったと判定された場合に、ロック解除状態に設定されたICカードチップをロック状態に設定する。併せて、変更設定部180bは、このロック状態に設定されたICカードチップとは異なる他の一つのICカードチップをロック解除状態に設定する。これにより、たとえ3以上の複数のICカードチップが搭載された携帯電話機であっても、上記の実施形態と同様に複数ICカードチップの同時通信に起因する通信障害が発生するのを抑制することができる。
【0056】
また、上述の実施形態においては、ICカードチップが使用可否端子を有しており、この端子への入力信号によって無線通信の可否を制御する例を説明したが、制御方法はこれに限られない。例えば、ICカードチップへの電源供給の有無によって当該ICカードチップの無線通信の可否を制御することも考えられる。ICカードチップのタイプによっては、R/Wからの搬送波だけの給電では動作せず、携帯電話機100の電池等からの給電があって初めて動作可能となるものもある。図8は、携帯電話機のハードウェア構成の他の例を示す図である。図8に示すように、携帯電話機100の電源140からの給電があって初めて動作可能となるようなタイプのICカードチップを利用する場合には、プロセッサ160からの指示に基づいて給電を制御する給電制御部146を設け、当該給電制御部146を用いてICカードチップA120またはICカードチップB130への給電を制御することとなる。
【0057】
なお、本実施形態は、主に携帯電話機を中心に説明したが、これに限らず、あらかじめ用意された通信制御制御プログラムをコンピュータで実行することによって、上述の実施形態と同様の機能を実現することができる。すなわち、通信制御プログラムは、リーダライタとの間で無線通信を行う複数のICチップを備えた無線通信装置に、前記複数のICチップのうちの一つのICチップを、前記リーダライタとの間で無線通信の実行を行えるロック解除状態に設定する処理を実行させる。また、通信制御プログラムは、リーダライタとの間で無線通信を行う複数のICチップを備えた無線通信装置に、前記ロック解除状態に設定されたICチップと前記リーダライタとの間で無線通信が実行されたら、該無線通信が正常に行われたか否かを判定する処理を実行させる。また、通信制御プログラムは、リーダライタとの間で無線通信を行う複数のICチップを備えた無線通信装置に、前記無線通信が正常に行われなかったと判定された場合に、前記ロック解除状態に設定されたICチップを、前記リーダライタとの間で無線通信の実行を行えないロック状態に設定するとともに、該ロック状態に設定されたICチップとは異なる他の一つのICチップを前記ロック解除状態に設定する処理を実行させる。なお、通信制御制御プログラムは、インターネットなどの通信ネットワークを介してコンピュータに配布することができる。また、通信制御プログラムは、無線通信装置に設けられたメモリ、ハードディスク、その他のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【符号の説明】
【0058】
100 携帯電話機
120 ICカードチップA
130 ICカードチップB
140 電源
150 記憶部
178 タイマ制御部
180a 初期設定部
180 排他ロック制御部
180b 変更設定部
182 通信判定部
200 ICカードR/W
202 搬送波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダライタとの間で無線通信を行う複数のICチップと、
前記複数のICチップのうちの一つのICチップを、前記リーダライタとの間で無線通信の実行を行えるロック解除状態に設定する第1の設定部と、
前記ロック解除状態に設定されたICチップと前記リーダライタとの間で無線通信が実行されたら、該無線通信が正常に行われたか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記無線通信が正常に行われなかったと判定された場合に、前記ロック解除状態に設定されたICチップを、前記リーダライタとの間で無線通信の実行を行えないロック状態に設定するとともに、該ロック状態に設定されたICチップとは異なる他の一つのICチップを前記ロック解除状態に設定する第2の設定部と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記ロック解除状態に設定されたICチップ内に格納された情報が前記無線通信の実行の前後で変化したか否かに応じて前記リーダライタとの間で無線通信が正常に行われたか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記ロック解除状態に設定されたICチップの前記無線通信の実行の前のICチップ内の情報が格納される記憶部をさらに備え、
前記判定部は、前記ロック解除状態に設定されたICチップと前記リーダライタとの間で無線通信が実行されたら、前記記憶部に格納された情報と前記ロック解除状態に設定されたICチップ内に格納された情報とを比較することによって前記無線通信の実行の前後のICチップ内の情報の変化の有無を判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記記憶部に格納された情報と前記ロック解除状態に設定されたICチップ内に格納された情報とを比較することによって前記無線通信の実行の前後のICチップ内の情報の変化が有ると判定されたら、前記ロック解除状態に設定されたICチップ内に格納された情報を前記記憶部に格納する
ことを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記複数のICチップに電力を供給する電力供給部をさらに備え、
前記第1又は第2の設定部は、前記複数のICチップのうち前記ロック解除状態に設定されたICチップにのみ電力を供給するよう前記電力供給部を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記ロック解除状態に設定されたICチップが前記リーダライタから送信された無線信号を受信した後あらかじめ設定された時間が経過したか否かを判定するタイマ制御部をさらに備え、
前記判定部は、前記タイマ制御部によって前記あらかじめ設定された時間が経過したと判定されたら、前記ロック解除状態に設定されたICチップと前記リーダライタとの間で無線通信が正常に行われたか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
リーダライタとの間で無線通信を行う複数のICチップを備えた無線通信装置に、
前記複数のICチップのうちの一つのICチップを、前記リーダライタとの間で無線通信の実行を行えるロック解除状態に設定し、
前記ロック解除状態に設定されたICチップと前記リーダライタとの間で無線通信が実行されたら、該無線通信が正常に行われたか否かを判定し、
前記無線通信が正常に行われなかったと判定された場合に、前記ロック解除状態に設定されたICチップを、前記リーダライタとの間で無線通信の実行を行えないロック状態に設定するとともに、該ロック状態に設定されたICチップとは異なる他の一つのICチップを前記ロック解除状態に設定する
処理を実行させることを特徴とする通信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−243139(P2012−243139A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113671(P2011−113671)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】