説明

焼き稲荷飯、焼き稲荷飯弁当及び焼き稲荷飯の製造方法

【課題】外観が美しく食欲を増進させ、いままでにない食感や風味を味わえる焼き稲荷飯、該焼き稲荷飯をプラスチック容器に収容した焼き稲荷飯弁当及び該焼き稲荷飯の製造方法を提供する。
【解決手段】糖類と塩を含有し、醤油を含有しない調味液で煮た油揚げ2と、この油揚げの皮の内部に充填されたご飯類とを備え、前記油揚げの表面に焦げ目3が形成されていることを特徴とする焼き稲荷飯1とする。前記ご飯類が、鮨飯、白飯、赤飯、おこわ、炊き込みご飯、ちらし鮨、混ぜご飯から選ばれた1種であることが好ましく。前記油揚げ表面の焦げ目3が、バーナーであぶって形成されたものであることが好ましい

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲荷飯の油揚げの表面に焦げ目を形成した焼き稲荷飯、該焼き稲荷飯をプラスチック容器に収容した焼き稲荷飯弁当及び該焼き稲荷飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、稲荷鮨は、だし汁、砂糖、塩、醤油、みりんなどで煮た油揚げの中に鮨飯を詰めて作られたものである。しかしながら、稲荷鮨は、使用する材料、調味料、製造方法が常識的に決まっており、新しい風味を有する食品を提供する試みはあまりなされていない。
【0003】
そのような試みとして、下記特許文献1には、昆布・鰹節・椎茸・日本酒・砂糖・化学調味料などの出し汁、醤油及び粉末唐辛子の混合物を十分に浸み込ませた油揚げに、鮨ご飯を詰めた稲荷寿司が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、油揚げ表面を火であぶり、焦げ目を付けた焼きいなり寿司が開示されている。
【特許文献1】実用新案登録第3111948号
【特許文献2】実用新案登録第3098494号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、従来の調味料に粉末唐辛子の混合物を加えて、油揚げを煮たものを稲荷鮨に使用しているだけで、従来の稲荷鮨と食感や風味がほとんど変わらない。
【0006】
また、特許文献2では、油揚げ表面を火であぶり、焦げ目を付けているが、油揚げを醤油を使用して煮ているため、焦げ目部分の色と油揚げ部分の色とが同色に近いため、焦げ目部分が目立たず、従来の稲荷鮨と外観がほとんど変わっていない。また、油揚げに醤油味が付いているため、焦げの風味を充分に味わえていない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、外観が美しく食欲を増進させ、いままでにない食感や風味を味わえる焼き稲荷飯、該焼き稲荷飯をプラスチック容器に収容した焼き稲荷飯弁当及び該焼き稲荷飯の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、糖類と塩を含有し、醤油を含有しない調味液で煮た油揚げと、この油揚げの皮の内部に充填されたご飯類とを備え、前記油揚げの表面に焦げ目が形成されていることを特徴とする焼き稲荷飯を提供するものである。
【0009】
上記発明によれば、醤油を含有しない調味液を使用することで、油揚げ表面の色が変色せず、油揚げ本来の色のまま使用することができるので、製造された稲荷飯は、焦げ目の黒い色と油揚げの薄い黄色とが対称的で外観的に美しく、食欲が増進される。
【0010】
また、醤油を含有していないので、醤油の味で焦げの風味が消されることなく、焦げの食感や風味が充分に得られ、いままでにない食感や風味を味わうことができる。
【0011】
本発明においては、前記ご飯類が、鮨飯、白飯、赤飯、おこわ、炊き込みご飯、ちらし鮨、混ぜご飯から選ばれた1種であることが好ましい。これによれば、油揚げに詰めるご飯類に多種多様なものを使用することができ、稲荷飯に様々な食感や風味を加えることができる。
【0012】
また、前記油揚げ表面の焦げ目が、バーナーであぶって形成されたものであることが好ましい。これによれば、表面をバーナーであぶることで、油揚げの表面だけが焦げて焦げ目の香ばしい風味が付与される一方、油揚げの内部は柔らかく、しっとりとした食感を維持することができ、良好な食感、風味を得ることができる。
【0013】
また、本発明の焼き稲荷飯弁当は、前記焼き稲荷飯と、ねぎと味噌とを含有する味付け材とが容器に充填されていることを特徴とするものである。上記発明によれば、焦げの風味にあった、ねぎと味噌とを含有する味付け材に稲荷飯を付けて食することで、従来の稲荷飯とは異なった新しい風味、食感を有する焼き稲荷飯弁当を提供することができる。
【0014】
また、本発明の焼き稲荷飯の製造方法は、糖類と塩を含有し、醤油を含有しない調味液で油揚げを煮て、この油揚げの皮を開いて内部にご飯類を充填し、油揚げの皮の表面をバーナーであぶって焦げ目を付与することを特徴とするものである。
【0015】
上記発明によれば、醤油を含有しない調味液で油揚げを煮ているので、焦げ目の黒い色と油揚げの薄い黄色とが対称的で外観的に美しく、食欲増進につながる焼き稲荷飯を製造することができる。
【0016】
また、油揚げの皮の表面をバーナーであぶって焦げ目を付与しているので、油揚げの表面だけが焦げて、焦げ目の部分は香ばしくカリカリとした食感であり、焦げ目以外の部分は、しっとりとした食感であり、いままでにない新しい食感、風味を有する焼き稲荷飯を製造することができる。
【0017】
また、本発明の焼き稲荷飯の製造方法においては、前記ご飯類として、鮨飯、白飯、赤飯、おこわ、炊き込みご飯、ちらし鮨、混ぜご飯から選ばれた1種を用いることが好ましい。これによれば、稲荷飯のご飯部分に多種多様なものを使用することができ、いままでにない様々な食感や風味の焼き稲荷飯を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の焼き稲荷飯、焼き稲荷飯弁当及び焼き稲荷飯の製造方法によれば、醤油を含有しない調味液を使用することで、油揚げ表面の色が変色せず、油揚げ本来の色のまま使用することができるので、製造された稲荷飯は、焦げ目の黒い色と油揚げの薄い黄色とが対称的で外観的に美しく、食欲が増進される。また、醤油を含有していないので、醤油の味に焦げの香りが消されることなく、焦げの風味を充分味わうことができ、今までにない食感や風味を味わうことができる。また、焦げの風味にあったねぎと味噌とを含有した味付け材に稲荷飯を付けて食することで、従来の稲荷飯とは異なった新しい風味、食感を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明においては、稲荷飯の中に詰めるご飯類としては、鮨飯、白飯、赤飯、おこわ、炊き込みご飯、ちらし鮨、混ぜご飯のいずれを用いてもよい。これらは、常法に従って製造すればよく、原料である米は市販されているものを用いる。このようなご飯類を油揚げの中に詰めることで、稲荷飯に様々な食感や風味を加えることができる。
【0020】
また、前記米飯の原料米は、もち米又はうるち米のどちらを用いてもよい。原料米としてもち米を用いた場合には、炊いたときに米飯に粘り気があり、モチモチした食感を得ることができる。また、原料米としてうるち米を用いた場合には、もち米よりも全体として食感が硬く、シャリシャリした稲荷飯を得ることができる。また、稲荷飯の中に詰めるご飯類の原料米は、白米、玄米、胚芽米、発芽玄米のいずれも用いることができる。好みの食感や風味に合わせて様々な原料米を用いることができる。
【0021】
本発明に用いる油揚げとしては、糖類と塩を含有し、醤油を含有しない調味液で煮たものが使用される。油揚げとしては、市販されているものでよく、中を袋状にはがしやすいものが好ましい。ここで、油揚げを味付けする調味液は、糖類と塩だけに水を加えただけのものでもよく、糖類と塩以外に、だし汁、みりん等を加えたものでもよい。前記糖類としては、市販されている砂糖等を使用することができる。
【0022】
次に、本発明の焼き稲荷飯の製造方法の一実施形態について説明する。
【0023】
図1、2には、本発明による焼き稲荷飯の一実施形態が示されている。
【0024】
この実施形態は、糖類と塩を含有し、醤油を含有しない調味液で煮た油揚げの皮2に、適量のご飯類4を充填し、その稲荷飯の油揚げ表面を焼いて焦げ目3を付けた焼き稲荷飯1である。
【0025】
ここで、稲荷飯の油揚げ表面を焼いて焦げ目3を付ける方法としては、鉄板上に油をひき、その鉄板上に稲荷飯を載せて焼き、焦げ目を付ける方法、熱した金網の上に稲荷飯を載せ、稲荷飯を焼いて焦げ目を付ける方法、バーナーであぶる方法などがある。
【0026】
このように、醤油を含有しない調味液で油揚げを煮ているので、油揚げ本来の薄い黄色の部分と焦げの黒い部分とが対称的で外観的に美しく、食欲の増進につながる。また、油揚げの調味液に醤油を含有していないので、醤油の風味で焦げの風味が消されることなく、焦げの食感や風味が充分に得られ、いままでにない食感や風味を味わうことができる。
【0027】
また、図3には、本発明の製造方法により稲荷飯の表面をバーナー40であぶり、焦げ目3を付けた焼き稲荷飯1が示されている。稲荷飯の油揚げ表面をバーナーであぶることによって、油揚げの表面にだけ焦げ目がついて、内部は柔らかく、しっとりとした食感が維持されるので、焦げ目部分は、カリカリとした食感で香ばしく、焦げ目以外の部分は、しっとりとした食感で、いままでにない新しい食感、風味を得ることができる。
【0028】
ここで、稲荷飯の油揚げ表面をあぶるバーナーとしては、市販のガスボンベを連結して使用するノズルタイプのガスバーナー等が好ましく使用される。
【0029】
図4は、前記のようにして得られた焼き稲荷飯1と、その焼き稲荷飯に付けて食する味付け材20と、それらを収容するプラスチック容器30によって構成された焼き稲荷飯弁当10が示されている。
【0030】
焼き稲荷飯1に付ける味付け材20としては、ねぎとみそを含有したもの(以下、ねぎ味噌という)を用いることができる。また、好みに合わせて、塩、砂糖、からし、わさび、マヨネーズ等をねぎ味噌に添加してもよい。
【0031】
また、図4では、焼き稲荷飯だけをプラスチック容器30に収容しているが、巻き寿司、おにぎり等の主食やたくわん、からあげ等の副食を焼き稲荷飯1と共にプラスチック容器30に収容してもよい。
【0032】
このように、ねぎ味噌に焼き稲荷飯を付けて食することで、従来の焼き稲荷飯とは異なった新しい風味、食感を有する焼き稲荷飯弁当を提供することができる。また、焼き稲荷飯と味付け材を収容して弁当にすることで、持ち運びが容易で、手軽に焼き稲荷飯を味わうことができる。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
使用する油揚げは、一般的な稲荷鮨に使用されている油揚げを用いた。まず、油揚げを半分に切り、お湯で油抜きし、塩、砂糖、だし汁で煮て、味付けした。これを約40分煮てざるに上げて自然に煮汁をきった。次に、酢、塩、砂糖、昆布茶で調味したすし酢とご飯を合わせ鮨飯を作り、油揚げを開いて鮨飯を詰め稲荷飯とした。そして、稲荷飯を熱した鉄板上に載せ、稲荷飯の油揚げ表面に焦げ目が付くまで焼き、焼き稲荷飯を製造した。食してみると、全体的にカリカリとした食感で、油揚げ表面の焦げ目の焦げた香ばしい風味があり、非常においしかった。また、焼き稲荷飯の油揚げ表面は、醤油を使用していないので、薄い黄色の油揚げ本来の色のままであり、焦げ目の付いた部分と油揚げの色とが対称的で外観的にも美しく、風味が良好で美味しい焼き稲荷飯であった。
【0034】
(実施例2)
使用する油揚げは、一般的な稲荷鮨に使用されている油揚げを用いた。まず、油揚げを半分に切り、お湯で油抜きし、塩、砂糖、だし汁で煮て、味付けした。これを約40分煮てざるに上げて自然に煮汁をきった。次に、酢、塩、砂糖、昆布茶で調味したすし酢とご飯を合わせ鮨飯を作り、油揚げを開いて鮨飯を詰め稲荷飯とした。そして、稲荷飯表面に図3に示したガスバーナーの火を当て、稲荷飯の油揚げ表面にだけ焦げ目が付くように焼き、焼き稲荷飯を製造した。食してみると、焦げ目が付いたところはカリカリとした食感で香ばしく、焦げ目のないところはしっとりとした食感で、非常においしかった。また、焼き稲荷飯の油揚げ表面は、醤油で味付けをしていないので、油揚げ本来の薄い黄色のままであり、焦げ目の付いた部分と油揚げの色とが対称的で、外観的にも美しく、風味が良好で美味しい焼き稲荷飯であった。
【0035】
(実施例3)
使用する油揚げは、一般的な稲荷鮨に使用されている油揚げを用いた。まず、油揚げを半分に切り、お湯で油抜きし、塩、砂糖、だし汁で煮て、味付けした。これを約40分煮てざるに上げて自然に煮汁をきった。ご飯類として、(1)味付けした鶏肉、ごぼう、にんじんを入れ常法で炊いた炊き込みごはんと、(2)常法で炊いた白飯と、(3)酢、塩、砂糖、昆布茶で調味したすし酢とご飯を合わせ鮨飯にごぼう(ささがき)、かまぼこ、にんじん、かんぴょう、錦糸卵を添加したちらし鮨を作った。次に油揚げを開いて上記三種類のご飯類を詰め三種類の稲荷飯とした。次に、各稲荷飯を図3に示したガスバーナーで油揚げの表面に焦げ目が付くまで加熱して、焼き稲荷飯を得た。次に、細かく切ったねぎと味噌を混合し、ねぎ味噌を得た。そして、図4のようにプラスチック容器に前記三種類の稲荷飯とねぎ味噌を収容して焼き稲荷飯弁当を製造した。ねぎ味噌に製造した三種類の焼き稲荷飯を付けて食してみると、いずれも焦げのカリカリとした食感が味わえ、焦げの風味とねぎ味噌の風味が合っていて、非常においしかった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の焼き稲荷飯の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同焼き稲荷飯の断面図である。
【図3】本発明の焼き稲荷飯の製造方法の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明の焼き稲荷飯を容器に入れてパックした焼き稲荷飯弁当を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 焼き稲荷飯
2 油揚げの皮
3 焦げ目
4 ご飯類
10 焼き稲荷飯弁当
20 味付け材
30 プラスチック容器
40 バーナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類と塩を含有し、醤油を含有しない調味液で煮た油揚げと、この油揚げの皮の内部に充填されたご飯類とを備え、前記油揚げの表面に焦げ目が形成されていることを特徴とする焼き稲荷飯。
【請求項2】
前記ご飯類が、鮨飯、白飯、赤飯、おこわ、炊き込みご飯、ちらし鮨、混ぜご飯から選ばれた1種である請求項1記載の焼き稲荷飯。
【請求項3】
前記油揚げ表面の焦げ目が、バーナーであぶって形成されたものである請求項1又は2記載の焼き稲荷飯。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の焼き稲荷飯と、ねぎと味噌とを含有する味付け材とが容器に充填されていることを特徴とする焼き稲荷飯弁当。
【請求項5】
糖類と塩を含有し、醤油を含有しない調味液で油揚げを煮て、この油揚げの皮を開いて内部にご飯類を充填し、油揚げの皮の表面をバーナーであぶって焦げ目を付与することを特徴とする焼き稲荷飯の製造方法。
【請求項6】
前記ご飯類として、鮨飯、白飯、赤飯、おこわ、炊き込みご飯、ちらし鮨、混ぜご飯から選ばれた1種を用いる請求項5記載の焼き稲荷飯の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−35754(P2008−35754A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212565(P2006−212565)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(500465488)株式会社有明のり (8)
【Fターム(参考)】