説明

照明光通信システム用の送信装置

【課題】照明としての性能が高く、かつ通信速度が速い新規な照明光通信システムおよびこの照明光通信用システムに好適に適用可能な送信装置。
【解決手段】送信データに基づいて変調された変調光を出射する照明用光源を備える送信装置であって、照明用光源は、光透過性を示す基板51と、基板に接して設けられる有機エレクトロルミネッセンス素子26とを備え、有機エレクトロルミネッセンス素子は、光透過性を示すとともに基板に接して配置される第1電極52と、第2電極58と、第1電極および第2電極の間に設けられた発光層56とを含み、第1電極の屈折率をn1、基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)


を満たす、照明光通信システム用の送信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光を利用してデータを伝送する照明光通信システムおよびこの照明光通信用システムに好適に適用可能な送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速通信技術の進展とともに、光を伝送媒体として用いた屋内無線通信技術が利用されるようになってきた。特に、伝送媒体として赤外線を用いたLAN(Local Area Network)が、オフィスや家庭に普及してきている。
【0003】
しかしながら、赤外線を用いた無線データ通信では、送信装置と受信装置との間に存在する遮蔽物によって通信に支障が生じるという問題がある。また、信号電力が小さいため、データ通信、すなわち信号の送受信が不安定になり易いという問題がある。
【0004】
前述した赤外線通信にかかる問題を解決する通信方式として、照明用光源からの光をデータの伝送媒体に用いた通信方式(以下、照明光通信という場合がある)が考えられている。照明用光源としては、化合物半導体系の白色発光ダイオード(以下、白色LED(LED:Light Emitting Diode)という場合がある)が用いられている。
白色LEDを用いた照明は、蛍光灯といった従来の照明と比較して、長寿命、小型、低消費電力といった優れた特長を有している。非特許文献1および特許文献1には、このような白色LEDの特長に着目した照明光通信システムが開示されている。
【0005】
【非特許文献1】「可視光通信に適した変調方式の実験的検討」(信学技報IEICE Technical Report OCS2005-19(2005-5)第43〜48頁 社団法人 電子情報通信学会)
【特許文献1】特開2003−318836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
照明光通信には、通信に求められる特性と照明に求められる特性とを両立させることが要求される。通信としては高い伝送速度が求められており、照明としては低消費電力が求められており、従ってその光源には、例えば高い応答速度と高い発光効率とが求められている。
前述したように、蛍光灯などの照明と比較すると白色LEDは照明として優れた特徴を有しているが、しかしながら、上記照明光通信に用いられる白色LEDは、例えば半導体レーザと比較するとその応答速度が低い。特に照明に利用される白色LEDには、蛍光体を使用するタイプのものが主に用いられているが、蛍光体を使用するタイプの白色LEDは、蛍光体不使用のものと比較すると応答速度が低い。従って白色LEDを用いた従来の照明光通信では、伝送速度が必ずしも十分とはいえない。
そこで発光効率と応答速度との両方を勘案したときに、照明光通信用の光源として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という場合がある)を用いることを本出願人は考案し、これにさらに検討を加えた。有機EL素子は一対の電極とこれら一対の電極間に配置される発光層とを有している。一対の電極のうちの一方の電極には、光透過性を示す電極(以下、光透過性電極という場合がある。)が用いられており、この光透過性電極から光が取出される。このような光透過性電極としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)などの金属酸化物からなる薄膜、および不規則な網目状に配置された導電性物質を備える網目状導電体などが用いられている。有機EL素子は、通常、光透過性を示す基板(以下、光透過性基板という場合がある)に設けられるが、光透過性電極と光透過性基板との界面において有機EL素子からの出射光が反射されることがある。これにより有機EL素子の光取り出し効率が低下するので、有機EL素子の発光効率は照明という観点からすると必ずしも十分とはいえない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、伝送速度が速く、かつ発光効率が高い新規な照明光通信システムおよびこの照明光通信用システムに好適に適用可能な送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するために、本発明では、下記の構成を採用した。
〔1〕 送信データに基づいて変調された変調光を出射する照明用光源を備える送信装置であって、前記照明用光源は、光透過性を示す基板と、該基板に接して設けられる有機エレクトロルミネッセンス素子とを備え、該有機エレクトロルミネッセンス素子は、光透過性を示すとともに前記基板に接して配置される第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた発光層とを含み、前記第1電極の屈折率をn1、前記基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)
【数1】

を満たす、照明光通信システム用の送信装置。
〔2〕 前記第1電極の可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下である、〔1〕に記載の送信装置。
〔3〕 前記照明用光源は、それぞれの発光面積が10−8cmから10−1cmである複数の前記有機エレクトロルミネッセンス素子を備える、〔1〕または〔2〕に記載の送信装置。
〔4〕 前記照明用光源が、前記変調光を出射する通信用の有機エレクトロルミネッセンス素子と、非変調光を出射する照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の送信装置。
〔5〕 前記通信用の有機エレクトロルミネッセンス素子の前記発光層が、蛍光を発光する発光材料を用いて形成され、かつ前記照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層が、リン光を発光する発光材料を用いて形成されてなる〔4〕に記載の送信装置。
〔6〕 前記第1電極が、光透過性の膜本体、および該膜本体中に配置され、導電性を有するワイヤ状導電体を含む、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の送信装置。
〔7〕 前記ワイヤ状導電体の径が200nm以下である、〔6〕に記載の送信装置。
〔8〕 前記ワイヤ状導電体が前記膜本体中において網目構造を構成している、〔7〕に記載の送信装置。
〔9〕 前記膜本体が導電性を有する樹脂を含んでいる、〔6〕から〔8〕のいずれかに記載の送信装置。
〔10〕 前記第1電極が塗布法により形成されてなる、〔1〕から〔9〕のいずれかに記載の送信装置。
〔11〕 変調光を出射する照明用光源を備える〔1〕から〔10〕のいずれかに記載の送信装置と、前記照明用光源から出射された前記変調光を受光して電気信号に変換し、該電気信号を復調して受信データを生成する受信装置とを具備する、照明光通信システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の照明光通信システムにおいては、照明用光源として、高速応答性を特長とする有機EL素子を用いることにより、従来の白色LEDを用いる場合と比較して、伝送速度を顕著に高めることができる。また照明用光源が備える有機EL素子は、光透過性の第1電極が光透過性を示す基板に接して設けられるので、有機EL素子から出射される光は、第1電極、基板を通って外に取り出される。第1電極と基板とは前述の式(1)に示される光学的な条件を満たすため、第1電極と基板との界面における反射を効果的に抑制することができる。したがって有機EL素子の光取り出し効率をさらに向上させることができ、ひいては発光効率が高い照明用光源を実現することができる。これによって伝送速度が速く、かつ発光効率が高い新規な照明光通信システムおよびこの照明光通信用システムに好適に適用可能な送信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図を参照して、本発明の実施形態につき説明する。なお、各図は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさおよび配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお、以下の説明に用いる各図において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。また、有機EL素子を備える装置においては電極のリード線等の部材も存在するが、本発明の説明にあっては直接的に要しないため記載を省略している。層構造等の説明の便宜上、下記に示す例においては基板を下に配置した図と共に説明がなされるが、本発明の有機EL素子およびこれを搭載した有機EL装置は、必ずしもこの配置で、製造または使用等がなされるわけではない。なお以下の説明において基板の厚み方向の一方を上または上方といい、厚み方向の他方を下または下方という場合がある。
【0011】
〈照明光通信システムの構成例(1)〉
図1を参照して、本発明の照明光通信システムの構成例につき説明する。図1は、照明通信システムの構成を概略的に説明するブロック図である。
【0012】
図1に示すように、照明通信システム10は、送信装置20と受信装置30とを備えている。送信装置20は、照明用光源22を備えている。照明用光源22は、送信されるべき送信データに基づいて変調された変調光を出射する。変調光とは、点滅制御された光または光量制御された光をいい、変調方式としては、アナログ変調方式(AM、FMなど)、デジタル変調方式、パルス変調方式、およびスペクトラム拡散方式などが用いられる。
【0013】
送信装置20は、有機EL素子26を備え、また該有機EL素子26に接続され、かつ当該有機EL素子26の動作を制御する制御回路28をさらに備える。以下有機EL素子26と制御回路28とを含む構成を発光ユニット24という。図示例は、照明用光源22が、1つの発光ユニット24からなる例である。制御回路28と有機EL素子26とは電気的に接続されている。
【0014】
有機EL素子26は、照明光のみ、または照明光および信号光の双方を生成して出射する。有機EL素子26および制御回路28の具体的な構成については後述する。
【0015】
受信装置30は、受光部32と復調部34とを備える。受信装置30は、照明用光源22から出射された変調光を受光して、受信データを生成する。
【0016】
受光部32は、図示しない光電変換装置を内蔵しており、受光した変調光を電気信号に変換する。復調部34は、受光部32によって光電変換された電気信号から、元のデータ(送信データ)を復調して受信データを生成する。
【0017】
送信装置20がデータを送信する場合には、送信すべきデータ、すなわち送信データが制御回路28に供給される。送信データの供給を受けた制御回路28は、供給されたデータに基づいて有機EL素子26の動作を制御する。
【0018】
こうして、送信データに対応して変調された変調光が有機EL素子26、すなわち発光ユニット24から出射される。前述したように有機EL素子26を高速に点滅させたり、その光量を高速に変化させたりしても、視覚的には感知されないので、通信用に使用したとしても有機EL素子26はほぼ一定の光量で光っているように見える。したがって、有機EL素子26から出射された変調光は、人に違和感を与えることなく、そのまま照明光としても利用することができる。
【0019】
〈照明光通信システムの構成例(2)〉
図2および図3を参照して、本発明の照明光通信システムの他の構成例につき説明する。
【0020】
1Gbps程度以上の大容量の伝送を行なうためには、送信装置20において多数の発光ユニット24を二次元的に配列し、これらを互いに並列的に動作させればよい。このような並列システムを従来のLEDを用いて実現するためには、多数のLEDを二次元的に配列し、分割器との配線接続を行なう必要があり、システムとして大型にならざるを得なかった。
【0021】
白色LEDに代えて有機EL素子を用いると、完成した個々の発光ユニット24を配線ボード上に後付けして配列するのではなく、例えば制御回路28が形成されたTFT(Thin Film Transistor)基板上に複数の有機EL素子26を直接的に作りこむことができ、発光ユニット24を二次元的に配置された集積デバイスを基板上に最初から製造できる。したがって分割器などの他の素子を加えても非常にコンパクトな送信装置20を実現できる。
【0022】
図2および図3は、本発明の照明通信システムの構成例を概略的に説明するブロック図である。
【0023】
図2に示すように、この照明光通信システム10は、図1を参照して既に説明した構成を基本として、有機EL素子26および制御回路28からなる発光ユニット24並びに受光部32の組を複数組備えている。送信装置20の照明用光源22において、複数の発光ユニット24は、二次元的に配置されている。また、制御回路28は、直列/並列変換回路29をさらに含み、受信装置30は、レンズ36と並列/直列変換回路38とをさらに含んでいる。
【0024】
なお、図示例の送信装置20および受信装置30において、直列/並列変換回路29を制御回路28に組み込む構成としたが、直列/並列変換回路29を、制御回路28の外部に設ける構成とすることもできる。この場合、直列/並列変換回路29から生成されるパラレル信号に基づいて、制御回路28が各有機EL素子26を制御してもよい。
【0025】
送信装置20の直列/並列変換回路29は、送信データであるシリアルデータを複数のパラレルデータに分割し、分割されたパラレルデータを個々の有機EL素子26にそれぞれに供給する。この送信装置20の直列/並列変換回路29の動作を含めた制御回路28の制御によって、各有機EL素子26は、各々に与えられるパラレルデータに基づいて、変調された変調光を出射する。出射された変調光は、レンズ36によって空間的に分離され、対応する各受光部32の光電変換装置において光電変換され、さらに変換された電子信号は図示しないA/Dコンバータによってデジタル化され、受信装置30の並列/直列変換回路38によってシリアルデータに変換される。復調部34は、このシリアルデータを復調することにより受信データを生成して出力する。
【0026】
このように、複数の有機EL素子26を並列的に駆動することによって、大容量のデータを高速で伝送することができる。
【0027】
図2に示した送信装置20において、有機EL素子26の制御(変調制御を含む)は、外部駆動回路としてのドライバICを用いて行ってもよい。図2に示した送信装置20においては、複数の有機EL素子26を単一の制御回路28で動作制御している。
【0028】
図3に示すように、複数の有機EL素子26それぞれを個別に制御する複数の制御回路28を、各有機EL26素子に対応させて接続する構成とすることもできる。この場合には、照明用光源22は、1つの有機EL素子26および1つの制御回路28を1組として一体的に形成した発光ユニット24を複数組備える。なお、複数の有機EL素子26を1つの構成単位とする素子群に、各有機EL素子26をグループ分けしたときに、同じ素子群に含まれる複数の有機EL素子26と該有機EL素子26に接続される制御回路28とからなる発光ユニット24群を、サブ光源23という場合がある。後述するように、サブ光源23ごとに発光を制御することにより、各有機EL素子26を素子群ごとに駆動することができる。このように1つの素子群に含まれる複数の有機EL素子26を単位として駆動することにより、素子群単位としての光強度(信号強度)が大きくなるので、例えばノイズの多い環境で使用する場合や各有機EL素子26の光量が少ない場合であっても、正確に信号を伝送することができ、エラービットレートの小さい照明用光通信システムを実現することができる。
【0029】
有機EL素子26と一体的に作り込まれる制御回路28の構成要素の一例としていわゆる薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を用いることができる。薄膜トランジスタとしては、ポリシリコントランジスタ、アモルファスシリコントランジスタ、有機半導体材料を用いた有機トランジスタ等が知られている。こうした薄膜トランジスタから構成される制御回路28と有機EL素子26とを一体的に形成することで、送信装置20の一層の小型化が可能になる。
【0030】
次に、図4を参照して、前述した照明光通信システム10の送信装置20の構成例として、いわゆるアクティブマトリクス型として構成された照明用光源22について説明する。
【0031】
アクティブマトリクス型とは、有機EL素子26および制御回路28を一体的に構成した発光ユニット24をマトリクス状に配列し、複数の有機EL素子26それぞれの駆動制御を有機EL素子26の近傍にそれぞれ作り込まれた制御回路28によって行うタイプをいう。
【0032】
有機EL素子26を用いてアクティブマトリクス型の照明用光源22を構成した場合には、有機EL素子の駆動方法は、電流プログラム方式および電圧プログラム方式の二種類に大別される。「電流プログラム方式」とは、データ線に対するデータの供給を電流レベルで行う方式をいい、「電圧プログラム方式」とは、データ線に対するデータの供給を電圧レベルで行う方法をいう。
【0033】
図4は、本発明のアクティブマトリクス型の照明用光源を用いた照明光通信システムの概略的な説明図である。
【0034】
送信装置20が備える照明用光源22は、前述したように例えばTFTを構成要素とする制御回路28により有機EL素子26を駆動する、いわゆるアクティブマトリクス型の装置である。
【0035】
この照明用光源22には、m×n(記号「m」、「n」はそれぞれ自然数を表す)個の発光ユニット24が平面上においてm行n列のマトリクス状に配列される。すなわち格子縞の交点上に各発光ユニット24がそれぞれ配置される。
【0036】
照明用光源22は、それぞれが図4において行方向に延在するとともに、互いに列方向に間隔をあけて配置されるn本の走査線Yからなる走査線群Y1〜Ynを有する。
【0037】
また、照明用光源22は、列方向に延在するとともに、互いに行方向に間隔をあけて配置されるm本のデータ線Xからなるデータ線群X1〜Xmを有する。走査線群Y1〜Ynとデータ線群X1〜Xmとは、基板の厚み方向の一方から見て、格子縞を形成している。
【0038】
基板の厚み方向の一方からみて、走査線Yとデータ線Xとにより形成される格子縞の複数の交点近傍には、画素領域59が設けられており、各画素領域59に1つの発光ユニット24が配置されている。換言すると、複数の発光ユニット24が、画素領域59ごとにマトリクス状に配置されている。
【0039】
図4においては、それぞれの有機EL素子26に対して所定の電圧Vdd,Vssを供給する電源線等が省略されている。
【0040】
図5および図6を参照して、発光ユニット24が備える制御回路28の好適な構成例につき説明する。
【0041】
図5は電流プログラム方式における発光ユニット24が備える制御回路28を示す回路図である。図6は電圧プログラム方式における発光ユニット24が備える制御回路28を示す回路図である。
【0042】
図5および図6に示すように、発光ユニット24は、有機EL素子26と、この有機EL素子26を除く回路部分である制御回路28とを備えている。
【0043】
〈電流プログラム方式〉
図5に示すように、制御回路28は、4つのトランジスタT1、T2、T3およびT4、送信データを保持するデータ保持手段であるキャパシタC、電源電圧(供給手段)Vdd、基準電圧(供給手段)Vss並びにこれらを互いに接続する信号線を含んでいる。
【0044】
図5では、トランジスタT1、T2、およびT4をnチャネル型トランジスタとし、トランジスタT3をpチャネル型トランジスタとした例を示してある。
【0045】
トランジスタT1のゲート電極は、走査信号SELが供給される所定の1本の走査線Yに電気的に接続されている。トランジスタT1のソース電極は、データ電流Idataが供給される所定の1本のデータ線Xに電気的に接続されている。トランジスタT1のドレイン電極は、トランジスタT2のソース電極に電気的に接続されている。
【0046】
トランジスタT1のドレイン電極およびトランジスタT2のソース電極は、プログラミングトランジスタであるトランジスタT3のドレイン電極およびトランジスタT4のドレイン電極に電気的に共通接続されている。
【0047】
トランジスタT2のゲート電極は、トランジスタT1のゲート電極と同じく、走査信号SELが供給される走査線Yに電気的に共通接続されている。トランジスタT2のドレイン電極は、キャパシタCの一方の電極と、トランジスタT3のゲート電極とに電気的に共通接続されている。
【0048】
キャパシタCの他方の電極には電源電圧Vddが印加される。また、トランジスタT3のソース電極には、電源電圧Vddが印加される。キャパシタCの他方の電極とトランジスタT3のソース電極とには、電源電圧Vddが印加されている。
【0049】
トランジスタT4のゲート電極には駆動信号GPが入力される。トランジスタT4のドレイン電極には有機EL素子26のアノード(陽極)が電気的に接続されている。また、有機EL素子26のカソード(陰極)には、電源電圧Vddよりも低電圧である基準電圧Vssが印加されている。
【0050】
〈電圧プログラム方式〉
電圧プログラム方式についても、送信装置の全体的な構成については既に説明した通りである。しかしながら、この場合には、データ電圧(信号)Vdataをデータ線Xにそのまま出力するため、データ線Xに電気的に接続されているデータ線駆動回路44(図4)の可変電流源が不要になる。ここでは、いわゆるCC(Conductance Control)法と称される構成例につき説明する。
【0051】
図6に示すように、発光ユニット24は、有機EL素子26、トランジスタT1、T4およびT5、データ保持手段であるキャパシタC、電源電圧(供給手段)Vdd、基準電圧(供給手段)Vss並びにこれらを互いに接続する信号線を含んでいる。図6にはトランジスタT1、T4およびT5を、すべてnチャネル型とした例を示してある。
【0052】
いわゆるスイッチングトランジスタであるトランジスタT1のゲート電極は、走査信号SELを供給する所定の走査線Yに電気的に接続されている。トランジスタT1のドレイン電極は、データ電圧(信号)Vdataを供給する所定のデータ線Xに電気的に接続されている。トランジスタT1のソース電極は、データ保持手段であるキャパシタCの一方の電極に電気的に接続されている。
【0053】
トランジスタT1のソース電極とキャパシタCの一方の電極とは、いわゆる駆動トランジスタであるトランジスタT4のゲート電極に、電気的に共通接続されている。
【0054】
キャパシタCの他方の電極には基準電位Vssが印加されている。また、トランジスタT4のドレイン電極には電源電圧Vddが印加されている。トランジスタT4のソース電極は、いわゆる制御トランジスタであるトランジスタT5のドレイン電極に電気的に接続されている。
【0055】
トランジスタT5には、駆動信号GPが入力される。トランジスタT5は、駆動信号GPによって導通制御される。トランジスタT5のソース電極は、有機EL素子26のアノードに電気的に接続されている。この有機EL素子26のカソードには、基準電圧Vssが印加されている。
【0056】
前述した構成例では、データを保持する回路要素、すなわちデータ保持手段の好適例として、キャパシタを用いる例を説明したが、キャパシタの代わりに、多ビットのデータを記憶可能なメモリ装置(SRAM等)を用いることもできる。
【0057】
図7を参照して、図5および図6を参照して説明した発光ユニット24の動作につき説明する。図7は、発光ユニット24の動作タイミングチャートである。
【0058】
ここで、走査線駆動回路42(図4)による走査線Y1から走査線Ynの線順次走査によって、所定の発光ユニット24の選択が開始されるタイミングをt0とする。また、発光ユニット24の選択が次に開始されるタイミングをt2とする。期間t0〜t2は、前半のプログラミング期間t0〜t1と、後半の駆動期間t1〜t2とに分けられる。
【0059】
〈電流プログラム方式(図5に示した回路構成)における動作〉
前半のプログラミング期間t0〜t1では、キャパシタCに対する送信データの書き込みが行われる。まず、タイミングt0において、走査信号SELが走査線Yに入力される。これにより、走査線Yが高レベル(以下、Hレベルという場合がある)に立ち上がる。スイッチング素子として機能するトランジスタT1およびT2が共にオン(導通)する。すると、データ線XとトランジスタT3のドレイン電極とが電気的に接続される。これにより、トランジスタT3は、自己のゲート電極と自己のドレイン電極とが電気的に接続されたダイオード接続となる。
【0060】
トランジスタT3は、データ線Xより供給されたデータ電流Idataを自己のチャネルに流す。これにより、データ電流Idataに応じた電圧がゲート電圧Vgとして発生する。トランジスタT3のゲート電極に接続されたキャパシタCには、発生したゲート電圧Vgに応じた電荷が蓄積される。これにより、キャパシタCには、蓄積された電荷量に相当するデータ(送信データ)が書き込まれる。
【0061】
プログラミング期間t0〜t1において、トランジスタT3は、自己のチャネルを流れるデータ信号に基づいて、キャパシタCに対するデータの書き込みを行うプログラミングトランジスタとして機能する。また、この期間中、駆動信号GPが低レベル(以下、Lレベルという場合がある)に維持されているため、トランジスタT4はオフ(非導通)のままである。したがって、有機EL素子26に対する駆動電流の経路はトランジスタT4により遮断される。よって、有機EL素子26は発光しない。
【0062】
続く駆動期間t1〜t2では、駆動電流が有機EL素子26を流れ、有機EL素子26の輝度の設定が行われる。まず、タイミングt1において、走査信号SELがLレベルに立ち下がり、トランジスタT1およびT2がいずれもオフする。これにより、データ電流Idataが供給されるデータ線XとトランジスタT3のドレイン電極とが電気的に分離され、トランジスタT3のゲート電極とドレイン電極との間も電気的に分離される。
トランジスタT3のゲート電極には、キャパシタCの蓄積電荷に応じたゲート電圧Vgが印加され続ける。タイミングt1における走査信号SELの立ち下がりと同期(同一タイミングであるとは限らない)して、それ以前はLレベルだった駆動信号GPがHレベルに立ち上がる。
【0063】
これにより、電源電圧Vddから基準電圧Vssに向かって、トランジスタT3およびT4と有機EL素子26とに連なる駆動電流の経路が形成される。有機EL素子26を流れる駆動電流は、トランジスタT3のチャネル電流に相当し、その電流レベルは、キャパシタCの蓄積電荷に基づくゲート電圧Vgによって制御される。
【0064】
駆動期間t1〜t2において、トランジスタT3は、有機EL素子26に駆動電流を供給する駆動トランジスタとして機能する。結果として、有機EL素子26は、この駆動電流に応じて、換言すれば、キャパシタCに保持されたデータに基づいて変調された発光強度で発光する。
【0065】
〈電圧プログラム方式(図6に示した回路構成)における動作〉
まず、タイミングt0において、所定の走査線Yに、走査線信号SELが入力される。すると、走査線Yは、Hレベルに立ち上がり、トランジスタT1がオンする。よって、データ線Xに供給されたデータ電圧Vdataが、トランジスタT1を介して、キャパシタCの一方の電極に印加される。
【0066】
これにより、データ電圧Vdata相当の電荷がキャパシタCに蓄積される(送信データが書き込まれる。)。なお、タイミングt0からタイミングt1までの期間において、駆動信号GPはLレベルに維持される。よって、制御トランジスタT5はオフのままである。したがって、有機EL素子26に対する駆動電流の電流経路が遮断されるため、前半の期間t0〜t1において、有機EL素子26は発光しない。
【0067】
前半の期間t0〜t1に続く後半の期間t1〜t2では、キャパシタCに蓄積された電荷に応じた駆動電流が有機EL素子26を流れる。これにより、有機EL素子26が発光する。タイミングt1では、走査信号SELがLレベルに立ち下がる。
【0068】
これにより、トランジスタT1がオフする。よって、キャパシタCの一方の電極に対するデータ電圧Vdataの印加が停止するが、キャパシタCの蓄積電荷によって、トランジスタT4のゲート電極にはゲート電圧Vg相当が印加される。タイミングt1における走査信号SELの立ち下がりと同期して、それ以前はLレベルだった駆動信号GPは、Hレベルに立ち上がる。
【0069】
これにより、発光ユニット24の選択が開始されるタイミングt2に至るまでHレベルが維持される。よって、駆動電流の電流経路が形成される。これにより、有機EL素子26は、キャパシタCに保持されたデータに基づいて変調された発光強度で発光する。
【0070】
図4を参照して既に説明したように、照明用光源22を駆動するための駆動回路は、走査線駆動回路42とデータ線駆動回路44とによって構成されており、両者は、図示しない上位装置による同期制御下、互いに協働して動作する。
【0071】
走査線駆動回路42は、シフトレジスタ、出力回路等を主体に構成されており、走査線Y1〜Ynに走査信号SELを出力することによって、走査線Y1〜Ynを所定の選択順序で順番に選択する線順次走査を行う。走査信号SELは、HレベルまたはLレベルの2値的な信号レベルをとり、データの書込対象となる行(走査線Yの1ラインに接続される複数の発光ユニット24)に対応する走査線YはHレベルとされ、これ以外の走査線YそれぞれはLレベルとされる。
【0072】
そして、1垂直走査期間(1F)において、所定の選択順序で、それぞれの行が順番に選択されていく。なお、走査線駆動回路42は、走査信号SEL以外に、トランジスタを導通制御する駆動信号GP(またはそのベース信号)も出力する。この駆動信号GPによって、駆動期間、すなわち、発光ユニット24に含まれる有機EL素子26の輝度設定を行う期間が設定される。
【0073】
データ線駆動回路44は、走査線駆動回路42による線順次走査と同期して、データ線X1〜Xmそれぞれに対するデータ信号の供給を電流ベースで行う。前述した電流プログラム方式の場合には、データ線駆動回路44は、発光ユニット24より出射される変調光の変調度合いを規定するデータ(データ電圧Vdata)をデータ電流Idataへと変換する可変電流源を含む。データ線駆動回路44は、1水平走査期間(1H)において、今回データを書き込む行に対するデータ電流Idataの一斉出力と、次の水平走査期間で書き込みを行う行に関するデータの点順次的なラッチとを同時に行う。
【0074】
ある水平走査期間において、データ線Xの本数に相当するm個のデータが順次ラッチされる。そして、次の水平走査期間において、ラッチされたm個のデータは、データ電流Idataに変換された上で、それぞれのデータ線X1〜Xmに対して一斉に出力される。
【0075】
図8を参照して、サブ光源23の構成につき説明する。図8は、サブ光源の構成例を説明する照明光通信システムの概略的な説明図である。
【0076】
送信装置20のサブ光源23は、照明用光源22に含まれる複数の発光ユニット24が複数のグループに区分けされることにより規定される。図示例では、複数の発光ユニット24が4つに区分けされて、第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23D(以下、それぞれサブ光源A、サブ光源B、サブ光源Cおよびサブ光源Dという場合がある)とされている。なお、iおよびjは1以上の任意の正数であり、かつmおよびnは2以上の任意の正数である。第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源24Dに含まれる発光ユニット24の数は、互いに同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、サブ光源23同士の発光ユニット24の数が同数である場合において、発光ユニット24の配置形態は、サブ光源23単位で同一であっても、異なっていてもよい。また離散的に離れて配置されている発光ユニット24を同一の発光ユニット24に属する発光ユニット24とするグループ分けをしてもよく、このようなグループ分けを行うことにより、たとえサブ光源23単位で明滅などしたとしても、局所的な光量の低下を抑制することができ、照明としての性能の低下を抑えることができる。
【0077】
第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源24Dに含まれる発光ユニット24の数を、ここではi=j=4かつm=n=8、すなわち互いに同数である16とした例を説明する。第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dそれぞれが含む発光ユニット24は、この例では4×4のマトリクス状に配置されている。
【0078】
第1サブ光源23Aおよび第2サブ光源23Bの発光ユニット24は、走査線Y1〜Yj(Y4)(走査線群Yabという場合がある)に電気的に接続される。また、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの発光ユニット24は、走査線Yj+1〜Yn(Y5〜Y8)(走査線群Ycdという場合がある)に電気的に接続される。
【0079】
また、第1サブ光源23Aおよび第3サブ光源23Cの発光ユニット24は、データ線X1〜Xi(X4)(データ線群Xacという場合がある)に電気的に接続される。また、第2サブ光源23Bおよび第4サブ光源23Dの発光ユニット24は、データ線Xi+1〜Xm(X5〜X8)(データ線群Xbdという場合がある)に電気的に接続される。
【0080】
次に、図4、図8および図9を参照して、複数のサブ光源にグループ分けされた照明用光源を備える照明光通信システムの動作につき説明する。
【0081】
走査線駆動回路42およびデータ線駆動回路44(図4)は、照明用光源22に設定された第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dにおいて、各サブ光源23単位で、複数のサブ光源23を独立的に駆動する。
【0082】
同一のサブ光源23に属する複数の発光ユニット24は、本実施形態では、すべて同一の発光状態になるように制御される。異なるサブ光源23同士については互いに独立的に制御され得る。よって、この場合には、照明用光源22に、4つの独立した伝送チャネルが形成されることになる。
【0083】
走査線Y1〜Yj、すなわち走査線群Yabが選択されている状態でデータ線X1〜Xi、すなわちデータ線群Xacに供給されたデータ(すべて同一の電流レベルである)は、第1サブ光源23Aの各発光ユニット24に共通して供給される。
【0084】
これによって、第1サブ光源23Aの発光状態が制御される。また、この状態でデータ線Xi+1〜Xm、すなわちデータ線群Xbdに供給されたデータは、第2サブ光源23Bの各発光ユニット24に共通に供給される。これによって、第2サブ光源23Bの発光状態が制御される。
【0085】
走査線Yj+1〜Yn、すなわち走査線群Ycdが選択されている状態でデータ線X1〜Xi、すなわちデータ線群Xacに供給されたデータは、第3サブ光源23Cの各発光ユニット24に共通に供給される。
【0086】
これによって、第3サブ光源23Cの発光状態が制御される。また、この状態でデータ線Xi+1〜Xm、すなわちデータ線群Xbdに供給されたデータは、第4サブ光源23Dの各発光ユニット24に共通に供給される。これによって、第4サブ光源23Dの発光状態が制御される。
【0087】
図9は、照明光通信システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【0088】
図8に示す構成において、最上段に配置されている走査線Y1から最下段に配置されている走査線Ynに向かって、n本の走査線Yが順次選択されていくものとする。
【0089】
この場合には、照明用光源22全体に対して、送信データのデータ書き込みを行うのに要する1フレーム期間t0〜t2は、前半の第1サブ光源23Aおよび第2サブ光源23Bの選択期間t0〜t1と、後半の第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの選択期間t1〜t2とに分けられる。
【0090】
第1サブ光源23Aおよび第2サブ光源23Bの選択期間t0〜t1は、走査線群Yabに属する走査線Y1の選択が開始されてから走査線Yjの選択が終了するまでの期間に相当する。
【0091】
この期間t0〜t1において、データ線群Xacには第1サブ光源23A用の送信データDaが共通して供給され、この送信データDaに応じたレベルにデータ線群Xacが維持される。
【0092】
データ線群Xacには、第1サブ光源23Aのみならず第3サブ光源23Cも接続されているが、走査線群Ycdが非選択のため、第3サブ光源23Cは電気的に分離されている。したがって、データ線群Xacに供給された送信データDaは、第1サブ光源23Aにのみ供給され、これに応じた書き込みが第1サブ光源23Aにおいて行われる。
【0093】
また、この期間t0〜t1において、データ線群Xbdには第2サブ光源23B用の送信データDbが共通して供給され、この送信データDbに応じたレベルにデータ線群Xbdが維持される。
【0094】
データ線群Xbdには、第2サブ光源23Bのみならず第4サブ光源23Dも接続されているが、走査線群Ycdが非選択のため、第4サブ光源23Dは電気的に分離されている。したがって、データ線群Xbdに供給された送信データDbは、第2サブ光源23Bにのみ供給され、これに応じた書き込みが第2サブ光源23Bにおいて行われる。
【0095】
第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの選択期間t1〜t2は、走査線群Ycdに属する走査線Yj+1の選択が開始されてから走査線Ynの選択が終了するまでの期間に相当する。この期間t1〜t2において、データ線群Xacには第3サブ光源23C用の送信データDcが共通して供給され、この送信データDcに応じたレベルにデータ線群Xacが維持される。
【0096】
ここで、データ線群Xacに接続された第1サブ光源23Aは、走査線群Yabが非選択のため電気的に分離されている。したがって、データ線群Xacに供給された送信データDcは、第3サブ光源23Cにのみ供給され、これに応じた書き込みが第3サブ光源23Cにおいて行われる。
【0097】
また、期間t1〜t2において、データ線群Xbdには第4サブ光源23D用の送信データDdが共通して供給され、この送信データDdに応じたレベルにデータ線群Xbdが維持される。このとき、データ線群Xbdに接続された第2サブ光源23Bは、走査線群Yabが非選択のため電気的に分離されている。したがって、データ線群Xbdに供給された送信データDdは、第4サブ光源23Dにのみ供給され、これに応じた書き込みが第4サブ光源23Dにおいて行われる。
【0098】
なお、図9においては、同一のサブ光源23に対応する走査線群を順次走査するケースを例示したが、駆動回路の駆動能力を十分に確保できることを条件として、サブ光源23ごとに対応する走査線群を同時に一括選択することもできる。
【0099】
ここで、前述した図5および図6に示すように制御回路28を構成しておけば、電流プログラム方式および電圧プログラム方式のいずれにおいても、第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの独立的な駆動を実現することができる。
【0100】
〈有機EL素子〉
有機EL素子は、自由なサイズ設計が可能、超小型化が可能、高速応答が可能といった優れた特長を有する。有機EL素子を、照明光通信に利用する場合には、個々の素子面積はより小さいものが好適である。個々の素子面積が小さいほど、有機EL素子の静電容量は、小さくなる傾向にあるので、応答速度を規定する素子のRC時定数も同様に小さくなり、ひいては有機EL素子の面積が小さくなるほどその応答速度が速くなるからである。
【0101】
素子面積(発光面積)は、好ましくは10-8cm2以上1cm2以下とするのがよく、より好ましくは10-8cm2以上10-1cm2以下とするのがよく、さらに好ましくは10-8cm2以上10-2cm2以下とするのがよい。
【0102】
従来のLEDでは、半導体基板にLEDを形成した後、半導体基板を分割して個々のチップとし、配線が形成された回路基板にチップを取り付けて使用する。チップにはLEDを回路基板に接続する際に必要となる接続部位が設けられるので、チップの大きさはLEDよりも大きくなる。またLEDのチップとしては、台座および樹脂レンズなどが必要となるため、実際に発光する部分よりも大きな素子となる。さらにそのチップを回路基板に実装するためには、基板側にも接続部位を設ける必要があるので、チップよりも大きい実装面積が必要となり、LED自体が小さいものであったとしても、送信装置の小型化には自ずと限界がある。
【0103】
これに対して、有機EL素子の場合には、例えば素子の動作を制御する制御回路および配線などが形成された基板上に素子を直接的かつ配線と一体的に形成することができる。すなわち、従来のLEDのようには有機EL素子自体の大きさよりも大きな実装面積を必要とせず、発光ユニットの高集積化が容易であり、送信装置の小型化を実現することができる。そして、基板に作り込まれた有機EL素子をそのまま動作させて利用できるので、設計上の自由度が高く、素子の小型化が比較的容易である。以上のような理由から、有機EL素子は、照明光通信用の発光素子として極めて好適である。
【0104】
大容量データの高速通信を可能にするためには、複数の発光ユニットからデータを並列的に送信することが好ましく、そのためには、複数の発光ユニットを配列する必要がある。
【0105】
従来のLEDでは、個々のLEDチップ、または、チップに台座と樹脂レンズとからなる素子を配列する必要があるために、実際に発光する部分よりも大きな面積が必要であった。
【0106】
これに対して、有機EL素子では、配線および制御回路などを形成した基板上に素子を直接形成し、素子をそのまま動作させて利用できるので、発光ユニットの高集積化が容易であり、全体として小さな通信向け照明用光源(送信装置)が実現できる。
【0107】
また、従来のLEDの場合には、送信装置における照明用光源の強度変調は、ドライバIC(IC:Integrated Circuit)といった外部制御回路を用いて行う必要があった。そのため、送信装置を構成するユニットの小型化が困難であった。
【0108】
これに対して、有機EL素子の場合には、発光層を含む発光部の近傍に薄膜トランジスタ等の変調素子からなる制御回路を一体的に形成することができる。制御回路と有機EL素子とを、例えば積層して一体化すれば、発光ユニットの小型化が容易である。
【0109】
このように、有機EL素子を用いることにより、発光ユニットのさらなる小型化や集積化が可能であり、有機EL素子と制御回路との積層構造も容易に製造できるので、高速大容量の照明光通信に対応した送信装置の小型化を実現することができる。
【0110】
有機EL素子としては、蛍光発光型(一重項遷移)とリン光発光型(三重項遷移)が知られているが、本実施形態では、どちらを使用してもよい。有機EL素子を小さくし、RC時定数を小さくして応答速度を上げても、発光の減衰時間で規定される速度以上に応答速度を上げることはできない。
【0111】
有機EL素子は、その発光のメカニズムによって、蛍光発光(一重項励起状態からの発光)型とリン光発光(三重項励起状態からの発光)型とに分けられる。一般に、蛍光発光型はリン光発光型よりも発光の減衰時間が短く、室温(20℃程度)では蛍光発光型で約10ns程度、リン光発光型で約1μs程度である。したがって、どちらを用いても、素子単体で1Mbps程度の伝送速度までの信号通信に対応可能である。
【0112】
また、本発明の実施形態において、蛍光発光型の有機EL素子およびリン光発光型の有機EL素子の双方を混載した集積デバイスを照明用光源として用いてもよい。蛍光発光型は、リン光発光型よりも応答速度をより速くできるので、高速な通信用途に適しているといえる。リン光発光型は、蛍光発光型よりも発光効率をより高くできるので、照明用途に適している。
【0113】
有機EL素子は発光層材料を素子ごとに選択的に分けて形成できる。よって、照明用光源において、例えば照明用の有機EL素子をリン光発光型とし、通信用の有機EL素子を蛍光発光型とするというように、照明用光源が、送信データに基づいて変調された変調光を出射する通信用の有機EL素子と、非変調光を出射する照明用の有機EL素子とを含んで構成されてもよい。
【0114】
この場合には、蛍光発光型の有機EL素子には、照明機能および通信機能の双方を担わせて、送信すべき送信データに基づいて変調された変調光を出射する通信用の有機EL素子としてこれを用いるのがよい。また、リン光発光型の有機EL素子には、照明機能のみを担わせて、一定の非変調光を出射する照明用の有機EL素子としてこれを用いるのがよい。
【0115】
これら照明用の有機EL素子および通信用の有機EL素子は、前述したサブ光源ごとにいずれかの有機EL素子を選択して設ける構成としてもよい。また、単一のサブ光源内に照明用の有機EL素子および通信用の有機EL素子を混在させてもよい。
【0116】
これにより、照明効率の向上と通信の高速化とを両立した照明システムが構築できる。ただし、このような構成では、照明からの全光量に対して、通信情報が重畳された光、すなわち信号光の割合が小さくなる。したがって、受信装置として、光の強度変化に敏感なシステムが必要になる。全光量に対する蛍光、すなわち信号光の割合としては、1%以上50%以下であることが望ましい。
【0117】
一般照明を用いて照明光通信を行う場合には、照明用光源は白色であることが望ましい。有機EL素子で白色光を得るためには、大きくわけて以下の2つの方法がある。
【0118】
一方は、複数の光源から放射される光を重ね合わせることにより、白色光を得る方法である。この方法には、(1)赤色光を発光する有機EL素子(R素子)、緑色光を発光する有機EL素子(G素子)および青色光を発光する有機EL素子(B素子)を基板面内にタイル状に配列させ、これら3つの素子を同時に発光させる方法と、(2)マルチフォトン型の有機EL素子において、互いに異なる発光波長で発光する発光層を備える素子を積層する方法と、(3)マルチフォトン型ではない有機EL素子において、互いに異なる発光波長で発光する複数の発光層を積層する方法とに分けられる。
【0119】
他方は、発光層自体が白色のスペクトルで発光するものを利用することにより白色発光を得る方法である。
【0120】
これらの白色光を発光する有機EL素子は、従来の蛍光体を用いた、いわゆる白色LEDのような電流注入による青色発光→蛍光体励起→黄色発光というプロセス非経由で、電流注入直接再結合により白色光を出射する。そのため、従来の蛍光体を用いた白色LEDよりも応答速度がより速いという特長があり、照明光通信システムに好適である。
〈構成例1〉
【0121】
図10を参照して、送信装置に好適に適用可能な有機EL素子26の構成例(構成例1)につき説明する。
【0122】
図10は、有機EL素子の概略的な断面図である。構成例1の有機EL素子26は、基板51上に設けられている。ここでは、いわゆるアクティブマトリクス方式の光源として基板51上に形成された1つの有機EL素子26の構成について説明する。
【0123】
基板51には、マトリクス状に複数の画素領域59が設定されている。各画素領域59は、隔壁60により区画されている。隔壁60は、格子状に設けられ、隔壁60により電気的に区分けされる各画素領域51に、各有機EL素子26がそれぞれ配置される。隔壁60は、第1電極52および発光層56の積層構造を有機EL素子26ごとに分離している。
この隔壁60は、後述する第1電極52が形成された基板51上の画素領域59を区画する領域に、例えば感光性レジスト液をスピン塗布し、これを露光および現像することで、感光性樹脂よりなる隔壁60を形成することができる。
【0124】
なお、本明細書において、「光」とは、1nmから1mm程度の範囲の波長の電磁波を意味する。「光透過性」とは、前述の「光」から照明光および信号光として使用できることを条件として選択された範囲内に含まれる波長の光が吸収および散乱されることなく透過するか、または入射した照明光および信号光が許容される程度の割合で透過することをいう。照明光および信号光は、好ましくは「可視光」とするのがよい。「可視光」とはヒトの目で感知することができる範囲の波長を有する電磁波をいう。可視光は、一般に短波長側が360nmから400nm程度、長波長側が760nmから830nm程度の波長を有している。本実施形態では、可視光透過率が25%程度以上であれば「光透過性」であるものとする。
【0125】
基板51に設定された画素領域59上には、有機EL素子26が設けられる。有機EL素子26は、発光層56と、陽極52と発光層56との間に必要に応じて設けられる第1機能層53と、発光層56と陰極58との間に必要に応じて設けられる第2機能層57とから構成されている。基板51上にはこの例では陽極である光透過性の第1電極52(以下、陽極52という場合がある)が配置されている。
【0126】
この陽極52の上には、所望により第1機能層53を挟んで、発光層56が配置される。発光部56の上には、所望により第2機能層57を挟んで、この例では複数の画素領域59にわたって、陰極である第2電極58(陰極58という場合がある)が配置されている。陰極58を保護するために保護層(上部封止膜という場合もある)70が設けられている。
【0127】
なお、本実施形態では、光透過性の第1電極52が陽極であり、第2電極58が陰極であるが、積層順を逆順として、第1電極52が陰極であり、第2電極58が陽極である有機EL素子26を構成してもよい。
【0128】
(基板)
基板51は、可視光領域の光の透過率が高く、また有機EL素子を形成する工程において変化しないものが好適に用いられ、リジッド基板でも、フレキシブル基板でもよく、例えばガラス板、プラスチック板、高分子フィルムおよびシリコン板、およびこれらを積層した積層板などが好適に用いられる。また、基板51は、その厚み内に不図示の薄膜トランジスタ、キャパシタ、配線層などを含む前述の制御回路(28)といった構成を含む、いわゆるTFT基板であってもよい。
【0129】
なお、基板51としては、例示したもののうち、光透過性の第1電極52との屈折率の差が、0.3未満である屈折率を示すものが適宜用いられる。
【0130】
(第1電極)
第1電極52は、光透過性である膜本体と、膜本体中に配置され、導電性を有する不図示のワイヤ状導電体とを含んで構成される。光透過性の膜本体は、特に可視光領域の光の透過率が高いものが好適に用いられる。膜本体は、樹脂や無機ポリマー、無機−有機ハイブリッド化合物などを含んで構成される。
【0131】
光透過性の膜本体としては、樹脂の中でも導電性を有する樹脂が好適に用いられる。このようにワイヤ状導電体に加えて、導電性を有する膜本体を用いることによって、第1電極52のさらなる低電気抵抗化(以下、電気抵抗を抵抗という場合がある)を図ることができる。このような低抵抗の第1電極52を用いることによって、第1電極52での電圧降下を抑制し、有機EL素子26の低電圧駆動を実現するとともに、輝度ムラを抑制することができる。
【0132】
第1電極52の膜厚は、電気抵抗および可視光の透過率などによって適宜設定され、例えば、0.03μmから10μmであり、好ましくは0.05μm〜1μmである。
【0133】
ワイヤ状導電体は、径の小さいものが好ましく、例えば、径が400nm以下のものが用いられ、好ましくは径が200nm以下のものであり、さらに好ましくは径が100nm以下のものである。膜本体に配置されるワイヤ状導電体は、第1電極52を透過する有機EL素子26からの出射光を回折または散乱するので、第1電極52のヘイズ値を高めるとともに出射光の透過率を低下させるが、可視光の波長程度または可視光の波長よりも小さい径のワイヤ状の導電体を用いることによって、出射光、すなわち可視光に対するヘイズ値を低く抑えるとともに、透過率を向上させることができる。また、ワイヤ状導電体の径は、小さすぎると抵抗が大きくなるので、径が10nm以上のものが好ましい。なお、本発明の有機EL素子は照明装置に用いられるため、第1電極52のヘイズ値がある程度大きければ出射光の拡散機能を併せて付与することも可能となるので、第1電極52は、ヘイズ値の大きいものが好適に用いられる場合もある。
【0134】
膜本体中に配置されるワイヤ状導電体は、1本でも、複数本でもよく、膜本体中において、網目状構造を形成していることが好ましい。例えば膜本体中において、1本または複数本のワイヤ状導電体は、膜本体の全体に渡って複雑に絡み合って配置され、網目状構造を形成している。具体的には、1本のワイヤ状導電体が複雑に絡み合ったり、複数本のワイヤ状導電体が互いに接触し合って配置されたりする構造が2次元的または3次元的に広がって網目構造を形成している。ワイヤ状導電体を網目状構造を有するものとして形成することにより、第1電極52の体積抵抗率を下げることができる。
【0135】
またワイヤ状導電体は、少なくともその一部分が第1電極52の基板51とは反対側の表面寄りに、露出するように配置することが好ましい。このようにワイヤ状導電体を配置することによって、第1電極52の表面部の抵抗を下げることができる。
【0136】
ワイヤ状導電体の形状は、例えば曲線状でも、針状でもよい。曲線状および/または針状の導電体が膜本体中で互いに接触し合って網目状構造を形成することによって、体積抵抗率の低い第1電極52を実現することができる。
【0137】
(ワイヤ状導電体の材料)
ワイヤ状導電体の材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Alおよびこれらの合金などの抵抗の低い金属が好適に用いられる。ワイヤ状導電体は、例えばN.R.Jana, L.Gearheart and C.J.Murphyによる方法(Chm.Commun.,2001, p617-p618)や、C.Ducamp-Sanguesa, R.Herrera-Urbina, and M.Figlarz等による方法(J. Solid State Chem.,Vol.100, 1992, p272〜p280)によって製造することができる。
【0138】
(第1電極の形成方法)
第1電極52を成膜する方法としては、例えば、前述したワイヤ状導電体を樹脂に練り込むことによって、樹脂に分散させ、この樹脂を塗布する方法、ワイヤ状導電体と、樹脂とを分散媒に分散させた分散液を用いる塗布法によって成膜化する方法、およびワイヤ状導電体を樹脂からなる膜の表面にコーティングし、ワイヤ状導電体を膜中に分散させる方法などを挙げることができる。
【0139】
なお、第1電極52には、必要に応じて界面活性剤や酸化防止剤などの各種添加剤を加えてもよい。樹脂の種類は、屈折率、透光率および電気抵抗などの第1電極52に求められる特性に応じて適宜選ばれる。
【0140】
また、ワイヤ状導電体を分散させる量は、第1電極52の電気抵抗、ヘイズ値および透光率などに影響するので、第1電極52の特性に応じて適宜設定される。
【0141】
本実施形態の第1電極52は、導電性を有するワイヤ状導電体を分散媒に分散させた分散液を、基板51の表面に塗布し、さらにこの塗膜を硬化することによって得られる。
【0142】
分散液は、ワイヤ状導電体と樹脂とを分散媒に分散させることによって調合される。分散媒としては、たとえば樹脂を溶解させるものであればよく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒を挙げることができる。
【0143】
また、樹脂としては、透光率の高いものが好ましく、また第1電極52上に設けられる層を塗布法により形成する場合には、第1電極52の一部を構成する樹脂が塗布液に溶解しないものである必要がある。このような樹脂としては例えば、低密度または高密度のポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ドモン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体;ポリメチルメタクリルイミドなどのアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン−アクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロースなどの疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体などの水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶樹脂などのエンジニアリングプラスチック系樹脂などが挙げられる。
【0144】
また第1電極52上に設けられる層を塗布法により形成する場合には、第1電極52の一部を構成する樹脂が塗布液に溶解し難いという観点から、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、フォトレジスト材料が好適に用いられる。
【0145】
例示した樹脂の中でも、導電性を有する樹脂が好適に用いられ、導電性を有する樹脂としては例えばポリアニリン、ポリチオフェンの誘導体などが挙げられる。
【0146】
第1電極52の屈折率は、樹脂などによって構成される膜本体の屈折率によって主に決まる。この膜本体の屈折率は、例えば、用いる樹脂の種類によって主に決まるので、用いる樹脂を選択することによって、意図する屈折率を示す第1電極52を容易に形成することができる。
【0147】
なお、感光性フォトレジストに用いられる感光性材料および光硬化性モノマーに、ワイヤ状導電体を分散させた分散液を用いれば、塗布法による塗布工程、およびフォトリソグラフィ工程によって所定のパターン形状を有する第1電極52を容易に形成することができる。
【0148】
第1電極52としては、有機EL素子26の形成工程において加熱される温度で変形しないものが好ましく、第1電極52を構成する樹脂としては、ガラス転移点Tgが、150℃以上のものが好ましく、180℃以上のものがより好ましく、200℃以上のものがさらに好ましい。このような樹脂としては、例えばガラス転移点Tgが230℃のポリエーテルサルホンや高耐熱性フォトレジスト材料などを挙げることができる。
【0149】
ワイヤ状導電体の分散量、並びに必要に応じて分散液に混入されるバインダーおよび添加剤などは、成膜の容易さ、および第1電極52に求められる特性などの条件に応じて適宜設定および選択することができる。
【0150】
ワイヤ状導電体を分散した分散液の塗布方法としては、ディッピング法、バーコータによるコーティング法、スピンコータによるコーティング法、ドクターブレード法、噴霧塗布法、スクリーンメッシュ印刷法、刷毛塗り、吹き付け、ロールコーティング等の工業的に通常用いられている方法を挙げることができる。なお、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂を用いる場合には、分散液を塗布した後に、加熱または光照射によって塗膜を硬化させることができる。
【0151】
(発光層)
発光層56は、第1電極52と第2電極58との間に設けられる。発光層56は、複数の層から構成されていてもよく、発光する層を少なくとも1層含んでいればよい。陽極(本実施の形態では第1電極52)と発光層56との間には、必要に応じて所定の1層または複数層からなる第1機能層53が設けられる。また発光層56と陰極(本実施の形態では第2電極58)との間には、必要に応じて所定の1層または複数層からなる第2機能層57が設けられる。
【0152】
(第1機能層)
陽極(第1電極52)と発光層56との間に設けられる第1機能層53としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層等が挙げられる。なお正孔注入層、および/または正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する層である。電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0153】
(第2機能層)
発光層56と陰極(第2電極58)との間に設けられる第2機能層57としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等が挙げられる。陰極58と発光層56との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合には、陰極58に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という。なお電子注入層、および/または電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する層である。正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0154】
本実施形態の有機EL素子26における、陽極52Aから陰極58までの層構成の組み合わせ例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
g)陽極/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0155】
また、本実施の形態の有機EL素子26は、2層以上の発光層56を有していてもよく、2層の発光層56を有する有機EL素子としては、以下のi)に示す層構成を挙げることができる。
i)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
また、3層以上の発光層を有する有機EL素子としては、具体的には、(電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層)を1つの繰り返し単位として、以下のj)に示す繰り返し単位を2つ以上含む層構成を挙げることができる。
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/(繰り返し単位)/(繰り返し単位)/・・・/陰極
【0156】
上記層構成において、陽極、陰極、発光層以外の各層は必要に応じて非形成とすることができる。
【0157】
ここで、電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどからなる薄膜を挙げることができる。
【0158】
有機EL素子26において、本実施形態のように基板51側に陽極52Aが配置されるのが通常であるが、基板51側に陰極58を配置するようにしてもよい。
【0159】
本実施形態の有機EL素子26は、さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入性の改善のために、電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよい。また界面での密着性向上や混合の防止などのために、前述した各層間に薄いバッファー層を挿入してもよい。
【0160】
以下、各層の構成についてさらに詳細に説明する。
(正孔注入層)
正孔注入層は、陽極(第1電極)52Aからの正孔注入効率を改善する機能を有する層である。正孔注入層を構成する材料としては、公知の材料を適宜用いることができ、特に制限はない。例えば、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
【0161】
正孔注入層の成膜方法としては、例えば、正孔注入層となる材料(正孔注入材料)を含む溶液からの成膜を挙げることができる。溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば、特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
【0162】
溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができる。
【0163】
また、正孔注入層の厚みとしては、5nmから300nm程度であることが好ましい。この厚みが5nm未満では、製造が困難になる傾向があり、他方、300nmを超えると、駆動電圧、および正孔注入層に印加される電圧が大きくなる傾向となる。
【0164】
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、陽極、正孔注入層または陽極により近い正孔輸送層からの正孔注入を改善する機能を有する層である。正孔輸送層を構成する材料としては、特に制限はないが、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)4,4’−ジアミノビフェニル(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)等の芳香族アミン誘導体、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体などが例示される。
【0165】
これらの中でも、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0166】
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
【0167】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば、特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
溶液からの成膜方法としては、前述した正孔注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができる。
【0168】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0169】
正孔輸送層の厚みは、特に制限されないが、目的とする設計に応じて適宜変更することができ、1〜1000nm程度であることが好ましい。この厚みが下限値未満となると、製造が困難になる、または正孔輸送の効果が十分に得られないなどの傾向があり、他方、上限値を超えると、駆動電圧および正孔輸送層に印加される電圧が大きくなる傾向がある。したがって正孔輸送層の厚みは、上述のように、好ましくは、1〜1000nmであるが、より好ましくは、2nm〜500nmであり、さらに好ましくは、5nm〜200nmである。
【0170】
(発光層)
発光層56は、通常、主として蛍光またはリン光を発光する有機物を有し、さらにドーパント材料を含んでいてもよい。有機物としては低分子化合物、および/または高分子化合物が用いられ、好ましくは高分子化合物が用いられる。発光層56は、ポリスチレン換算の数平均分子量が、10から10である高分子化合物を含むことが好ましい。この実施形態において用いることができる発光層56を構成する発光材料としては、例えば以下のものが挙げられる。なお、第1電極52と第2電極58との間には、一層の発光層に限らず、複数の発光層が配置されてもよい。
【0171】
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー(誘導体)、ピラゾリンダイマーなどが挙げられる。
【0172】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えば、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体など、中心金属に、Al、Zn、BeなどまたはTb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを有する金属錯体などを挙げることができる。
【0173】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、前述の色素体や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどが挙げられる。
【0174】
発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0175】
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0176】
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0177】
(ドーパント材料)
発光層中に発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的で、ドーパントを添加することができる。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、このような発光層の厚さは、通常約2nmから200nm(20〜2000Å)である。
【0178】
(発光層の成膜方法)
有機物を含む発光層の成膜方法としては、発光材料を含む溶液を画素領域59に直接的に塗布する方法、画素領域に真空蒸着法を用いて堆積させる方法、転写用の基体の上に発光材料を含む溶液を一旦塗布し、この塗膜を成膜化し、得られた膜を画素領域59に転写して間接的に成膜する方法などを用いることができる。溶液からの成膜に用いる溶媒の具体例としては、前述の溶液から正孔輸送層を成膜する際に正孔輸送材料を溶解させる溶媒と同様の溶媒が挙げられる。
【0179】
発光材料を含む溶液を画素領域59に塗布する方法、もしくは転写用の膜を形成するために基体の上に塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成や多色の色分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法が好ましい。また、昇華性の低分子化合物の場合は、真空蒸着法を用いることができる。さらには、レーザによる転写や熱転写により、所望の領域のみに発光層を形成する方法も用いることができる。
【0180】
(電子注入層)
電子注入層は、陰極58からの電子注入効率を改善する機能を有する層である。電子注入層は、先に述べたように、電子輸送層と陰極58との間、または発光層56と陰極58との間に設けられる。電子注入層としては、発光層56の種類に応じて、アルカリ金属やアルカリ土類金属、あるいは前述の金属を一種類以上含む合金、あるいは前述の金属の酸化物、ハロゲン化物および炭酸化物、あるいは前述の物質の混合物などが挙げられる。
【0181】
アルカリ金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム等が挙げられる。
【0182】
アルカリ土類金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0183】
さらに、金属、金属酸化物、金属塩をドーピングした有機金属化合物、および有機金属錯体化合物、またはこれらの混合物も、電子注入層の材料として用いることができる。
【0184】
この電子注入層は、2層以上を積層した積層構造を有していてもよい。具体的には、Li/Caなどが挙げられる。この電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。
この電子注入層の膜厚としては、1nmから1μm程度が好ましい。
【0185】
(電子輸送層)
電子輸送層は、陰極58、電子注入層または陰極58により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層である。電子輸送層を形成する材料としては、公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体等が例示される。
【0186】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0187】
なお、電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層という場合があり、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層という場合がある。
【0188】
(第2電極)
第1の実施形態における第2電極58は、第1電極52に対向して配置される電極であって、有機EL素子26の陰極となるものであるが、本発明においては、後述の第2の実施形態に示すように、第2電極58を陽極とすることもできる。このような陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易な材料が好ましい。また陰極の材料としては電気伝導度が高く、可視光反射率の高い材料が好ましい。かかる陰極材料としては、具体的には、金属、金属酸化物、合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物、酸化亜鉛(ZnO)等の無機半導体などを挙げることができる。
【0189】
前述の金属としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属や周期表の第13族金属等を用いることができる。これら金属の具体的例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等を挙げることができる。
【0190】
また、合金としては、上記金属の少なくとも一種を含む合金を挙げることができ、具体的には、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0191】
陰極58は、必要に応じて光透過性の電極とされるが、材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZOなどの導電性酸化物;ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの導電性有機物を挙げることができる。
【0192】
なお、陰極である第2電極58を2層以上の積層構造としてもよい。また、電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0193】
陰極である第2電極58の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nmから1μmであり、さらに好ましくは50nmから500nmである。
【0194】
陰極である第2電極58を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。なお、この第2電極58を2層以上の積層構造としてもよい。
【0195】
(保護層)
上述のように陰極である第2電極58が形成された後、基本構造である第1電極(陽極)52−発光層56−第2電極(陰極)58を保護するために、これらを封止する保護層70が形成されることが好ましい。なお、保護層70は、既に説明した基板51と同様の基板または出射光の光取り出し側ではない場合には不透明である従来公知の任意好適な基板により構成することもできる(保護層70を保護基板70とする場合がある)。
【0196】
保護層70は、通常、少なくとも一層の無機層と少なくとも一層の有機層を有する。積層数は、必要に応じて決定され、基本的には、無機層と有機層とは交互に積層される。
【0197】
なお、ガラス基板に比べると、プラスチック基板は酸素および水などのガスの透過性が高い。発光層56などの発光物質は酸化されやすく、酸素および水などと接触することにより劣化しやすいので、基板51としてプラスチック基板が用いられる場合には、ガスバリア性を高めるための処理を基板に予め施すことが好ましい。例えばプラスチック基板上にガスなどに対するバリア性の高い下部封止膜を積層し、その後、この下部封止膜の上に有機EL素子26を積層することが好ましい。この下部封止膜は、通常、保護層70と同様の構成、同様の材料にて形成される。
【0198】
本実施形態の有機EL素子26では、陽極である第1電極52に接する位置に配置される層としては、上述のように、正孔注入層、正孔輸送層、および発光層56などが挙げられる。正孔注入層、正孔輸送層、および発光層56の屈折率は、それぞれ通常1.5から1.8程度である。第1電極52の屈折率(n1)は、前述した式(1)を満たし、好ましくは、第1電極52に接する層の屈折率(n3)以下になるように設定される。
【0199】
従来のボトムエミッション型の有機EL素子26では、ガラス基板上に形成されたITOが陽極(第1電極)として用いられてきた。ITOの屈折率(n1’)は、2程度であり、ガラス基板の屈折率(n2’)は、1.5程度であり、正孔注入層、正孔輸送層、および発光層などのうちでITOに接する部分の屈折率(n3’)は、1.7程度なので、従来のボトムエミッション型の有機EL素子は、屈折率の低いガラス基板と発光層との間に、屈折率の高いITOが挟まれた構成であった。したがって、発光層からの光の一部が、全反射などによってITOで反射されるので、発光層からの光を効率的に取り出すことができなかった。
【0200】
それに対して、本実施形態では、前述の式(1)の関係を満たす基板51と第1電極52とを用いることによって、従来の有機EL素子に比べて、基板51と、第1電極52と、正孔注入層、正孔輸送層、および発光層などのうちで第1電極52に接する部分との各屈折率の差が小さい有機EL素子26を構成することができる。これによって、発光層56からの光が第1電極52で反射することを抑制し、有機EL素子26の光取り出し効率を向上することができる。特に、n2≦n1≦n3の関係を満たす第1電極52および基板51を用いれば、基板51と、第1電極52と、正孔注入層、正孔輸送層、および発光層などのうちで第1電極52に接する部分との各屈折率の差をさらに小さくすることができ、発光層56からの出射光が第1電極52で反射することを抑制し、有機EL素子26の光取り出し効率をさらに向上することができる。これによって発光効率が高い有機EL素子を実現することができる。
【0201】
また、表面粗さRaが、100nm以下の平坦な第1電極52に発光層56を成膜すれば、各層における膜厚のばらつきを抑制することができる。これによって、第1電極52の突起による短絡をなくすことができる。
【0202】
また、第1電極52を塗布法によって形成することができるので、真空蒸着およびスパッタ法などのように真空装置を用いて光透過性の第1電極52を形成する場合や、特殊な工程で第1電極52を形成する場合に比べて、簡易に第1電極52を形成することができ、低コスト化を図ることができる。さらに、第1電極52の特性は、樹脂およびワイヤ状導電体の種類、並びにワイヤ状導電体の形状などによって決まるので、これらを適宜選択するだけで、意図する光学特性および電気的特性などを示す第1電極52を容易に得ることができる。
本実施形態の有機EL素子の製造は、上述の各層の材料説明のところで、それぞれ説明した形成工程を組み合わせることによって、実現することができる。
【0203】
〈構成例2〉
次に、有機EL素子26の構成例2を、図11を参照して説明する。なお、図10を参照して既に説明した構成例1と同一の符号が付された構成要素については、同一の構成および製造方法とすることができるため、詳細な説明は省略する。
構成例2では、有機EL素子の各構成要素の積層順序を構成例1のそれとは逆にしたものであり、構成例2と、前述の構成例1との違いは、構成例1の有機EL素子26が、発光層56からの光を光透過性の陽極(第1電極52)を通して基板51側から外部環境へ出射するいわゆるボトムエミッション型であったのに対し、構成例2の有機EL素子26では発光層56からの光を光透過性の陽極である第1電極52を通して基板51側から外部環境へ出射するいわゆるトップエミッション型である点にある。なお構成例2の基板51は、構成例1において保護基板として説明した部材に相当する。また構成例2において、第2電極58が設けられる基板80は、構成例1においてTFT基板などの第1電極52が設けられる基板として説明した基板に相当する。
【0204】
構成例2においても、基板51と第1電極52とは、前述した式(1)の関係を満たす。したがって本発明にかかる有機EL素子を、構成例2のように構成しても、既に説明した構成例1と同様の作用、効果を得ることができる。
【0205】
図10に示される構成例1の有機EL素子26は、発光層56からの光を光透過性の陽極である第1電極52を透過させて光透過性である基板51から外部環境に出射するボトムエミッション型の構造を有している。この構成例1の有機EL素子の構造を第1の構造と仮称すると、ボトムエミッション型の構造であって、第1電極52を陰極とし、保護層70側に陽極である第2電極58を設けた構造(第2の構造という場合がある)の有機EL素子も作製可能である。なお、必要ならば、第1機能層53と第2機能層57との配置を入れ替えるといった設計変更を行ってもよい。このような第2の構造の有機EL素子に対しても、本発明は適用可能である。
【0206】
また、図11に示される構成例2の有機EL素子26は、発光層56からの出射光を光透過性の陽極である第1電極52を透過させて基板51から外部環境に出射するトップエミッション型の構造を有している。この構成例2の有機EL素子の構造を第3の構造と仮称すると、トップエミッション型の構造であって、第1電極52を陰極とし、基板80側に陽極である第2電極58を設けた構造(第4の構造という場合がある)の有機EL素子も作製可能である。なお、この場合にも、必要ならば、第1機能層53と第2機能層57との配置を入れ替えるといった設計変更を行ってもよい。このような第4の構造の有機EL素子に対しても、本発明は適用可能である。
また、発光層56からの出射光を、例えば、陽極である第1電極52を透過させて基板51から外部環境に出射すると同時に、光透過性の陰極である第2電極53を透過させて光透過性の保護層70から外部環境に出射するダブルエミッション型の構造も作製可能であり、このようなダブルエミッション型の有機EL素子に対しても、本発明は適用可能である。
【実施例】
【0207】
以下、作製例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
作製例1から3では、基板と基板上に設けられる電極の屈折率を特定の範囲に制御するとともに、電極内にワイヤ状導電体を備える電極を有する有機EL素子を製造する。
【0208】
(作製例1)
ワイヤ状導電体として、アミノ基含有高分子系分散剤(アイ・シー・アイ・ジャパン社製、商品名「ソルスパース24000SC」)で表面を保護した銀ナノワイヤー(長軸平均長さ1μm、短軸平均長さ10nm)を用いる。この銀ナノワイヤーのトルエン分散液2g(銀ナノワイヤー1.0g含有)と、膜本体となる光硬化性モノマーであるトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製、商品名「NKエステル−TMPT」)0.25gとを混合し、さらに重合開始剤(日本チバ・ガイギー社製、商品名「イルガキュア907」)0.0025gを添加する。この混合溶液を厚さ0.7mmのガラス基板(光透過性基板本体)に塗布し、ホットプレート上で110℃20分加熱して溶媒を乾燥し、さらにUVランプで光照射(6000mW/cm2)することによって硬化して、膜厚が150nmの第1電極を得る。このように成膜することによって、透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下である第1電極が得られる。
【0209】
光硬化樹脂の屈折率は1.47であり、得られる第1電極の屈折率も1.47となる。このような基板と第1電極を用いることにより前述の実施形態にかかる有機EL素子を得ることができる。得られた有機EL素子では出射光の光取り出し効率が向上する。
【0210】
(作製例2)
ワイヤ状導電体として、アミノ基含有高分子系分散剤(アイ・シー・アイ・ジャパン社製、商品名「ソルスパース24000SC」)で表面を保護した銀ナノワイヤー(長軸平均長さ1μm、短軸平均長さ10nm)を用いる。この銀ナノワイヤーのトルエン分散液2g(銀ナノワイヤー1.0g含有)と、膜本体となるポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(スタルク社製、商品名「BaytronP」)2.5gとを混合する。この混合溶液を厚さ0.7mmのガラス基板(光透過性基板本体)に塗布し、ホットプレート上で200℃20分加熱し、溶媒を乾燥すると膜厚が150nmの第1電極を得る。このように成膜することによって、透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下である第1電極が得られる。
【0211】
「BaytronP」の屈折率は1.7であり、得られる第1電極の屈折率も1.7となる。このような基板と第1電極を用いることにより前述の実施形態にかかる有機EL素子を得ることができる。得られた有機EL素子では、出射光の光取り出し効率が向上する。
【0212】
(作製例3)
ワイヤ状導電体として、アミノ基含有高分子系分散剤(アイ・シー・アイ・ジャパン社製、商品名「ソルスパース24000SC」)で表面を保護した銀ナノワイヤー(長軸平均長さ1μm、短軸平均長さ10nm)を用いる。膜本体となるポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(スタルク社製、商品名「BaytronP」)2.5gに、ジメチルスルホキシド0.125gを混合した混合液と、銀ナノワイヤーのトルエン分散液2g(銀ナノワイヤー1.0g含有)とを混合する。この混合溶液を0.7mm厚のガラス基板に塗布し、ホットプレート上で200℃20分加熱し、溶媒を乾燥すると膜厚が150nmの導電膜を得る。このように成膜することによって透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下である光透過性導電膜が得られる。
【0213】
「BaytronP」の屈折率は1.7であり、得られる光透過性導電膜の屈折率も1.7となる。このような基板と第1電極を用いることにより前述の実施形態にかかる有機EL素子を得ることができる。得られた有機EL素子では光取り出し効率が向上する。
【0214】
なお、前述の作製例1から3では、基板と光透過性の第1電極との屈折率を特定の範囲に制御するとともに、第1電極内にワイヤ状導電体を設けた有機EL素子を製造し、光透過性基板本体と第1電極との屈折率を既に説明した式(1)で定義される範囲に制御している。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】照明光通信システムの概略的説明図(1)である。
【図2】照明光通信システムの概略的説明図(2)である。
【図3】照明光通信システムの概略的説明図(3)である。
【図4】照明光通信システムの概略的説明図(4)である。
【図5】電流プログラム方式の発光ユニットの回路図である。
【図6】電圧プログラム方式の発光素子の回路図である。
【図7】発光ユニットの動作説明図である。
【図8】照明光通信システムの概略的説明図(5)である。
【図9】照明用光源の動作説明図である。
【図10】有機EL素子の概略的な断面図(1)である。
【図11】有機EL素子の概略的な断面図(2)である。
【符号の説明】
【0216】
10:照明光通信システム
20:送信装置
22:照明用光源
24:発光ユニット
23:サブ光源
23A:第1サブ光源
23B:第2サブ光源
23C:第3サブ光源
23D:第4サブ光源
26:有機EL素子
28:制御回路
29:直列/並列変換回路
30:受信装置
32:受光部
34:復調部
36:レンズ
38:並列/直列変換回路
42:走査線駆動回路
44:データ線駆動回路
51:基板
52:第1電極
53:第1機能層
56:発光層
57:第2機能層
58:第2電極
59:画素領域
70:保護層(保護基板)
80:基板
X:データ線
Y:走査線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信データに基づいて変調された変調光を出射する照明用光源を備える送信装置であって、
前記照明用光源は、光透過性を示す基板と、該基板に接して設けられる有機エレクトロルミネッセンス素子とを備え、
該有機エレクトロルミネッセンス素子は、光透過性を示すとともに前記基板に接して配置される第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた発光層とを含み、
前記第1電極の屈折率をn1、前記基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)
【数1】

を満たす、照明光通信システム用の送信装置。
【請求項2】
前記第1電極の可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下である、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記照明用光源は、それぞれの発光面積が10−8cmから10−1cmである複数の前記有機エレクトロルミネッセンス素子を備える、請求項1または2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記照明用光源が、変調光を出射する通信用の有機エレクトロルミネッセンス素子と、非変調光を出射する照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える請求項1から3のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項5】
前記通信用の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層が、蛍光を発光する発光材料を用いて形成され、かつ照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層が、リン光を発光する発光材料を用いて形成されてなる請求項4に記載の送信装置。
【請求項6】
前記第1電極が、光透過性の膜本体、および該膜本体中に配置され、導電性を有するワイヤ状導電体を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項7】
前記ワイヤ状導電体の径が200nm以下である、請求項6に記載の送信装置。
【請求項8】
前記ワイヤ状導電体が前記膜本体中において網目構造を構成している、請求項7に記載の送信装置。
【請求項9】
前記膜本体が導電性を有する樹脂を含んでいる、請求項6から8のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項10】
前記第1電極が塗布法により形成されてなる、請求項1から9のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項11】
変調光を出射する照明用光源を備える請求項1から10のいずれか一項に記載の送信装置と、前記照明用光源から出射された前記変調光を受光して電気信号に変換し、該電気信号を復調して受信データを生成する受信装置とを具備する、照明光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−102969(P2010−102969A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273625(P2008−273625)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】