説明

熱分解システム及び熱分解オイルの製造方法

【課題】 少ないスペースで配置できなおかつ少ないエネルギ量で有機性成分と水とを分離し効率よく処理できる水処理システムを提供する。
【解決手段】 炭素質原料Mを熱分解によりオイルを製造する熱分解システムは、炭素原料をMを熱分解成分として所定の水分含有量まで乾燥する急速乾燥装置A1と、急速乾燥した熱分解成分を熱分解する熱分解炉B2と、熱分解により発生した粗製炭化水素ガスを過熱水蒸気の存在下で再度熱処理し、気体成分と、液体成分とに分離する分離塔B3と、分離塔B2に過熱水蒸気を送る過熱水蒸気発生装置B3と、分離した液体成分を精製する精製装置Cとから構成され、分離塔B2は、分離した気体を急速乾燥装置A1に送る配管を有しており、急速乾燥装置Aは、熱分解成分を乾燥した後の気体を浄化して系外に放出するためのガス浄化装置Eと配管を介して接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水熱分解システムに関する。より詳しく述べると熱分解装置からの排熱を利用して効率よく熱分解可能な熱分解システムに関する。
本発明は、特に目的とするオイルをFT合成を用いずに効率的に純度よく製造可能な熱分解システム及び熱分解オイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物又は一般廃棄物に含まれる使用済みの廃プラスチックは、容積が大きく、自然分解しないため、ごみ処分場での場所を確保する上で問題となっている。ごみ処理場では、通常、大部分が埋め立てや焼却により処理されている。しかし、その一部は、サーマルリサイクルの観点から粉砕し、該粉砕物を熱分解し、分解ガスを接触改質し、燃料として有用な油(灯油、ガソリン等)を製造することにより再利用されている。
【0003】
廃プラスチックの油化処理技術は、最近の十数年間にかなり進展し、様々な油化装置の開発もなされている。例えば、年間数万トンまで処理可能な大型油化装置から年間数百トン程度処理可能な小型油化装置まで処理量に応じた各種の油化装置が開発されている(特許文献1及び特許文献2)
また、高品位の燃料油を回収する目的で、これまでに触媒を利用した接触分解操作や複雑な蒸留操作を有する油化装置も開発されている(特許文献3)。しかし、そのような油化装置では、廃プラスチック類に紙、布、金属、熱硬化性樹脂、塩素系樹脂などの異物が混入している場合にはトラブルが生じ易くプラントがうまく稼働せず、また、一般に触媒として用いられているゼオライト、金属触媒等は寿命が短いため、油化装置を安定して稼動できない等の問題があった。
【0004】
そのため、特許文献4では、油化対象物を実用スケールで処理し、該油化対象物から高純度の燃料油を安全かつ安定して回収できる油化装置として、油化対象物を含む原料を密閉された熱分解釜内で加熱し、該熱分解釜内で分解生成された燃料油を主成分とする気体を冷却することにより燃料油を回収するための油化装置であって、前記熱分解釜が供給された前記原料を混練するための原料混練手段と、底部に堆積した残渣物を前記熱分解釜から排出するための残渣物排出手段とを有することを特徴とする油化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平9−13045号公報
【特許文献2】 特開平10−86153号公報
【特許文献3】 特開平11−61146号公報
【特許文献4】 特開2004−035851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの特許文献に記載の熱分解システムは、生ゴミ、廃プラスチック等の混合系の廃棄物から効率よく目的とするオイル成分を製造することができなかった。
【0007】
さらに、これらの特許文献に記載の熱分解システムは、処理物である廃棄物を効率よく乾燥することができなかった。
【0008】
したがって、本発明の課題は、生ゴミ、廃プラスチック等の混合系の廃棄物を効率よく乾燥し、そして効率よく高い終了で目的とするオイル成分を製造できる熱分解システムを提供することである。
【0009】
本発明の別の課題は、生ゴミを含む廃棄物から熱分解により目的とするオイルを高い純度で収率よく製造するオイルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、次の各項目に関する。
(1) 炭素質原料を熱分解によりオイルを製造する熱分解システムであって、
前記炭素原料を熱分解成分として所定の水分含有量まで乾燥する急速乾燥装置と、
急速乾燥した熱分解成分を熱分解する熱分解炉と、
熱分解により発生した粗製炭化水素ガスを過熱水蒸気の存在下で再度熱処理し、気体成分と、液体成分とに分離する分離塔と、
前記分離塔に過熱水蒸気を送る過熱水蒸気発生装置と、
分離した液体成分を精製する精製装置とから構成され、
前記分離塔は、分離した気体を前記熱分解炉を介してあるいは介さず前記急速乾燥装置に送る配管を有しており、
前記急速乾燥装置は、前記熱分解成分を乾燥した後の気体を浄化して系外に放出するためのガス浄化装置と配管を介して接続されていることを特徴とする熱分解システム。
【0011】
(2) 前記精製装置は、前記分離塔からの液体を熱時加圧して流速を増加させる復合調整装置と、
前記復合調整装置からのオイル成分からタール分を除去する復合分離装置と、
タール分を除去したオイル分を再度熱処理する再加熱装置と、
前記復合分離装置からのオイルの純度を上げるための前記再加熱装置との間でガスを循環させる復合調整タンクと、
前記オイルの純度を最終調整するコントロールタンクと、
前記再過熱装置からのオイル/水混合物から水分を除去するためのセパレータと、
精製したオイルを保存するオイルタンクと、
から構成される1に記載の熱分解システム。
【0012】
(3) 前記熱分解システムは、前記急速乾燥機の前段に更に 炭素質原料を所定のサイズに粉砕する粉砕装置と、粉砕した炭素質原料の水分含有量を所定レベルに脱水する脱水装置と、脱水した炭素質原料を熱分解成分と非熱分解成分に選別する選別装置と、の少なくとも1つを備えていることを特徴とする1または2に記載の熱分解システム。
【0013】
(4) 前記炭素質原料が、一般廃棄物、生ゴミ、木材、藻類、汚泥、食品由来残渣、廃プラスチックおよびこれらの混合物よりなる群より選択されたものであることを特徴とする1から3のいずれか1項に記載の熱分解システム。
【0014】
(5) 炭素質原料を熱分解によりオイルを製造するオイルの製造方法であって、
熱分解成分としての炭素質原料を所定の水分含有量まで乾燥する急速乾燥工程と、
急速乾燥した熱分解成分を熱分解する熱分解工程と、
熱分解により発生した粗製炭化水素ガスを過熱水蒸気の存在下で再度熱処理し、気体成分と、液体成分とに分離する分離工程、
分離した液体成分を精製する精製工程とを含み、
前記分離工程により分離した気体を前記急速乾燥工程に使用した後、前記熱分解成分を乾燥した後の気体をガス浄化装置により浄化することを特徴とするオイルの製造方法。
【0015】
(6) 前記精製工程は、分離工程により分離した液体成分を熱時加圧して流速を増加させた後にタール分を除去し、タール分を除去したオイル成分を再度加熱して循環しながら不純物を除去することを含むことを特徴とするに記載のオイルの製造方法。
【0016】
(7) 前記急速乾燥工程に先立って、炭素質原料を所定のサイズに粉砕する粉砕工程と、粉砕した炭素質原料の水分含有量を所定レベルに脱水する脱水工程と、脱水した炭素質原料を熱分解成分と非熱分解成分に選別する選別工程と、を行うことを特徴とする5または6に記載のオイルの製造方法。
【0017】
(8) 前記炭素質原料が、一般廃棄物、生ゴミ、木材、藻類、汚泥、食品由来残渣、廃プラスチックおよびこれらの混合物よりなる群より選択されたものであることを特徴とする5から7のいずれか1項に記載のオイルの製造方法。
【0018】
(9) 熱分解用の粉砕された炭素質原料を急速乾燥するための急速乾燥装置であって、粉砕された炭素質原料を導入する導入口と、乾燥した廃棄物を熱分解装置側に排出する排出口と、熱分解装置からの排ガスを熱源として導入する熱源導入口と、使用後の熱源を排出する排出口とを備えた容器から構成されることを特徴とする熱分解用の急速乾燥機。
【発明の効果】
【0019】
本発明の熱分解システムは、炭素質原料を熱分解によりオイルを製造する熱分解システムであって、前記炭素原料を廃棄物を熱分解成分として所定の水分含有量まで乾燥する急速乾燥装置と、急速乾燥した熱分解成分を熱分解する熱分解炉と、熱分解により発生した粗製炭化水素ガスを過熱水蒸気の存在下で再度熱処理し、気体成分と、液体成分とに分離する分離塔と、前記分離塔に過熱水蒸気を送る過熱水蒸気発生装置と、分離した液体成分を精製する精製装置とから構成されおり、前記分離塔は、分離した気体を前記急速乾燥装置に送る配管を有しており、前記急速乾燥装置は、前記熱分解成分を乾燥した後の気体を浄化して系外に放出するためのガス浄化装置と配管を介して接続されていることを特徴とする。
【0020】
そのため、炭素質原料を熱分解により発生した熱により乾燥するのでエネルギ消費量を削減できるとともに、FT合成等のエネルギを多量に使用することなしに高純度で目的とするオイルを製造することができる。
【0021】
同様にして、本発明のオイルの製造方法は、炭素質原料を熱分解によりオイルを製造するオイルの製造方法であって、熱分解成分としての炭素質原料を所定の水分含有量まで乾燥する急速乾燥工程と、急速乾燥した熱分解成分を熱分解する熱分解工程と、熱分解により発生した粗製炭化水素ガスを過熱水蒸気の存在下で再度熱処理し、気体成分と、液体成分とに分離する分離工程、分離した液体成分を精製する精製工程とを含み、前記分離工程により分離した気体を前記急速乾燥工程に使用した後、前記熱分解成分を乾燥した後の気体をガス浄化装置により浄化することを特徴とするので、炭素質原料を熱分解により発生した熱により乾燥するのでエネルギ消費量を削減できるとともに、FT合成等のエネルギを多量に使用することなしに高純度で目的とするオイルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】 (a)、(b)は本発明の熱分解システムの構成を示す図面。
【図2】 (a)から(d)は本発明の熱分解システムにおける前処理を示す図面。
【図3】 本発明の熱分解システムにおける急速乾燥機の構成を示す図面。
【図4】 本発明の熱分解システムにおける主要部の構成を示す図面。
【図5】 本発明の熱分解システムにおける他の実施形態の主要部を示す図面。
【図6】 本発明の熱分解システムにおけるオイルの精製を示す図面。
【図7】 本発明におけるオイル製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
図1(a)に示す通り、本発明の熱分解システムは、炭素質原料Mを急速乾燥する急速乾燥機A1と、急速乾燥した炭素質原料を熱分解する熱分解炉B1と熱分解により発生した気体をオイル成分と非オイル成分に分離するための分離塔B2と、熱分解炉B1にキャリヤガスとして過熱水蒸気を送るとともに分離塔B2に分離ガスとして過熱水蒸気を送る過熱水蒸気発生装置B3と過熱水蒸気と分離塔B2により分離されたオイル成分を精製する精製装置Cとから主として構成されておいる。
【0025】
そして、本発明の熱分解装置は、更に分離塔B2からの熱時気体を急速乾燥機A1に熱媒として送り炭素質原料を乾燥した後にガス浄化装置Eにより浄化して大気へ放出する構成を有している。
また、図1(b)に示す通り、熱分解炉B1で発生した熱を直接熱源として急速乾燥機A1へ送る構成としてもよい。
【0026】
なお、本発明において、符号Aを付した部材は、前処理に関する部材を意味し、符号Bを付した部材は、原料をオイル化するための部材を意味し、そして符号Cを付した部材は、粗製オイルを精製するための部材を意味する。
【0027】
このような構成を有する本発明の熱分解システムは、種々の炭素質原料を適用可能であるが、炭素質原料の由来に応じて本発明では適切な前処理を行う。例えば図2(a)に示す前処理装置は、急速乾燥機A1の前段に粗粉砕装置A2、脱水機A3、粉砕機A4、選別機A5を備えており、例えば生ゴミ、不燃物(セラミック、ガラス、金属等)、紙、木材、プラスチック類等が混合した混合型の廃棄物を処理するのに適している。
【0028】
すなわち、例えば混合型廃棄物を予め所定のサイズに粗粉砕装置A2で粗粉砕した後、脱水機A3により所定の水分含有量まで予め脱水し、粉砕機A4により目的とするサイズ(例えば、15mm以下、好ましくは10mm以下)に粉砕した後に選別機A5により不燃物などの熱分解に適用しない物質を除去し、そして本発明の急速乾燥機A1により目的とする水分含有量まで乾燥する。
【0029】
これらの前処理装置A2からA5は、当該技術分野に周知のものから適宜選択できる。そして、これらの前処理装置A2からA5に加えて本発明の急速乾燥機A1で処理された原料は、所定のサイズおよび所定の水分含有量を含む炭素質原料となる。
【0030】
図2(b)に示す前処理装置は、例えば分別された都市ゴミ(図2(a)で説明した混合型廃棄物から不燃物を除外したもの)であり、選別機A5を省略している。
【0031】
図2(c)に示す前処理装置は、図2(b)で示す前処理装置から更に粗粉砕装置を省略したものであり、例えば食品加工残渣などの前処理に適用するものであり、そして図2(d)に示す前処理装置は、汚泥、藻類を多量に含む水、オカラ、焼酎粕等の炭素質原料と水分とから構成された原料であり、固液分離後に直接急速乾燥することにより本発明の炭素質原料とするための装置である。
【0032】
このように炭素質原料の由来に応じて適切な前処理を行うことにより各種由来から本発明の熱分解システムによりオイルを製造することが可能である。したがって、本発明は、これらの原料からオイルを製造する製造システムと言い換えることができる。
【0033】
また、本発明の急速乾燥機A1は、図3に示す通り、前処理(A2からA5)した原料を投入する原料投入口2と、所定の水分量まで乾燥した原料を排出する原料排出口3と、熱媒である熱分解側からの熱を導入する熱媒導入口4と原料を乾燥した後の気体を排出する排出口5を有する乾燥機本体1から構成されている。
【0034】
乾燥機本体1は、投入する原料、熱媒の温度などに応じて適宜選択されるが一般には鋼製である。原料投入口2は、乾燥機本体内1の温度をできる限り低減しないように二重構造を有していることが好ましい。
【0035】
原料排出口3も原料投入口2と同様に乾燥機本体内1の温度をできる限り低減しないように二重構造を有していることが好ましく、そして所定の水分含有量まで水分調整された炭素質原料は、図示しない原料搬送機構(例えばコンベア)により熱分解炉B1の原料投入口へと搬送される。
【0036】
熱媒入口4は、熱分解側(以下の実施形態では分離塔B2)からの高熱の気体を導入する導入口であり、気体排出口5は、原料の急速乾燥後の気体を乾燥機本体1から排出するための排出口である。気体排出口5は、図1に示すガス浄化装置Eと気密に配管で接続されており、ガス浄化装置Eにより排出基準をクリアした状態でシステムから大気へと排出される。
【0037】
このようなガス浄化装置Eは、当該技術分野に周知な装置であり、一般にはスクラバ、好ましくはイオン交換スクラバである。
【0038】
次に、図4に基づいて前処理した炭素質原料を油化する機構について説明する(熱分解ソーン)。この熱分解ゾーンは、炭素質原料を高温熱分解炉B1により熱分解し、熱分解により発生した気体を分離塔B2により粗製ケロシングレードオイルに転化するゾーンである。
【0039】
熱分解炉B1は、当該技術分野に周知の熱分解炉から適宜選択されるが本発明では700℃以上、好ましくは900℃程度の温度で熱分解する熱分解炉、特に連続式熱分解炉が好ましい。
【0040】
この熱分解炉B1と分離塔B2は、ともに過熱水蒸気発生装置B3から発生した高温(例えば600℃程度の)過熱水蒸気をキャリヤガスとして使用する。
【0041】
熱分解炉B1において高温熱付与された炭素質原料は熱分解して粗製オイルとなり、過熱水蒸気に同伴されて分離塔B2へと搬送される。
【0042】
分離塔B2では粗製ガスを液体・気体・水分分離の3工程の分離処理により精製ケロシン級オイルを得て後段の精製装置Cで精製するとともに、分離されたガスを急速乾燥機A1に戻して熱の有効利用と収率の向上を図り、その後ガス浄化装置Eを介して大気に放出する。なお、熱分解炉B1は図示しないエアシリンダを備え、エアシリンダを介して熱分解により発生した残渣を炉外に排出する。
【0043】
なお、本発明の別の実施形態では、図5に示す通り分離塔B2からのガスを熱分解炉B1に戻してから急速乾燥機A1へ熱として利用することも可能である。また、このような熱分解炉からのガスは、本発明の熱分解システム以外の熱分解システムにも適用可能である。例えば、炭化用の熱分解炉からのガスを急速乾燥機に戻すことも本発明の範囲内である。
【0044】
次に、図6に基づいて、分離塔からのガスを精製する機構について説明する。精製処理ゾーンは、分離塔B2で分離した液体を精製して最終生成物である精製油とするゾーンである。この精製は、例えば図6に示す通り、オイルの精製を多段階で実施し、非常に精製度の高い目的としたオイルを回収することが可能となる。
【0045】
図6に示す精製ゾーンは、復合調整装置C1、復合分離装置C2、再加熱処理装置C3、復合調整タンクC4、コントロールタンクC5、セパレータC6,C7およびオイルタンクDから構成される。
【0046】
復合調整装置C1(Condensation/Controller)は、分離塔B2からの液体を加圧・加熱により流速を増加させて急速ろ過を行って不純物を除去する機能を有している(第一段精製)。
【0047】
復合分離装置C2(Condensate Separator)は、復合調整装置C1からの油化成分から加熱下でタール分を除去する装置(第二段精製)機能を有している。復合分離装置C2は、タールを除去した油成分液体をコントロールタンクC5または復合調整タンクC4へバルブを切り替えて送るとともに(図示外)、気体分を再熱分解装置C3に送る機能を有している。
【0048】
再加熱処理装置C3は、タールを除去した油化成分を熱源として過熱水蒸気発生装置B3により再度熱処理して油化効率を上昇させるための装置(第三段精製)であり、再加熱処理装置C3と復合調整タンクC4との間で気体を循環させてオイル分の精製度を高める機能を有している。
【0049】
復合調整タンク(Condensate Control tank)C4は、復合分離装置C2からのオイルを復合調整タンクとの間で循環することによりオイルの精製度を上昇するための装置(第四段精製)である。
【0050】
コントロールタンク(control tankC5 純度を上げるための最終調整タンクであり、最終調整されたオイルは、オイルタンクDへ送られて保存される。
【0051】
セパレータC6,C7は、再熱分解装置C3からのオイル/水混合物から水分を除去する装置である。セパレータC6で水分除去されたオイルはセパレータC7で更に水分除去してオイルタンクDへと輸送される。
【0052】
オイルタンクDは、最終調整されたオイルを保管するためのタンクである。このように、本発明の熱分解システムは、分離塔B2からのオイルを多段階精製することで高純度の目的とするオイルを連続的に製造することが可能である。しかも、FT合成のように高温高圧下で炭化水素オイルを合成しないので、構成する装置も安価でありエネルギ消費量も少ない。
【0053】
次に、図7に基づいて、本発明の炭素質原料の熱分解によりオイルの製造方法について説明する。
【0054】
図7に示す通り、本発明のオイルの製造方法は、前処理した炭素質原料を急速乾燥により水分調整して所定の原料基準となる炭素質原料とする。この際の炭素質原料は、図2で説明した通り種々の原料から選択することが可能である。
【0055】
このようにして前処理された炭素質原料を所定条件下(例えば900℃程度、過熱水蒸気キャリヤ)で熱分解して粗製オイルとする。そして粗製オイルを過熱水蒸気により過熱して、水蒸気(不純物)からなるガス部分と粗製オイルからなる液体部分に分離する。この際の高温のガス部分を急速乾燥に用いる。そして、液体部分は再加熱によるタール部分の除去(不純物除去)、水蒸気蒸留による精製により精製オイルとする。
【0056】
このように構成することにより各種炭素質原料から高い収率で目的とする精製オイルを連続して製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
A1 急速乾燥機
B1 熱分解炉
B2 分離塔
B3 過熱水蒸気発生装置
C 精製装置
D オイルタンク
E ガス浄化装置
1 乾燥機本体
2 原料投入口
3 原料排出口
4 熱媒入口
5 気体排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質原料を熱分解によりオイルを製造する熱分解システムであって、
前記炭素原料を熱分解成分として所定の水分含有量まで乾燥する急速乾燥装置と、
急速乾燥した熱分解成分を熱分解する熱分解炉と、
熱分解により発生した粗製炭化水素ガスを過熱水蒸気の存在下で再度熱処理し、気体成分と、液体成分とに分離する分離塔と、
前記分離塔に過熱水蒸気を送る過熱水蒸気発生装置と、
分離した液体成分を精製する精製装置とから構成され、
前記分離塔は、分離した気体を前記熱分解炉を介してあるいは介さず前記急速乾燥装置に送る配管を有しており、
前記急速乾燥装置は、前記熱分解成分を乾燥した後の気体を浄化して系外に放出するためのガス浄化装置と配管を介して接続されていることを特徴とする熱分解システム。
【請求項2】
前記精製装置は、前記分離塔からの液体を熱時加圧して流速を増加させる復合調整装置と、
前記復合調整装置からのオイル成分からタール分を除去する復合分離装置と、
タール分を除去したオイル分を再度熱処理する再加熱装置と、
前記復合分離装置からのオイルの純度を上げるための前記再加熱装置との間でガスを循環させる復合調整タンクと、
前記オイルの純度を最終調整するコントロールタンクと、
前記再過熱装置からのオイル/水混合物から水分を除去するためのセパレータと、
精製したオイルを保存するオイルタンクと、
から構成される請求項1に記載の熱分解システム。
【請求項3】
前記熱分解システムは、前記急速乾燥機の前段に更に
炭素質原料を所定のサイズに粉砕する粉砕装置と、
粉砕した炭素質原料の水分含有量を所定レベルに脱水する脱水装置と、
脱水した炭素質原料を熱分解成分と非熱分解成分に選別する選別装置と、の少なくとも1つを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱分解システム。
【請求項4】
前記炭素質原料が、一般廃棄物、生ゴミ、木材、藻類、汚泥、食品由来残渣、廃プラスチックおよびこれらの混合物よりなる群より選択されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱分解システム。
【請求項5】
炭素質原料を熱分解によりオイルを製造するオイルの製造方法であって、熱分解成分としての炭素質原料を所定の水分含有量まで乾燥する急速乾燥工程と、
急速乾燥した熱分解成分を熱分解する熱分解工程と、
熱分解により発生した粗製炭化水素ガスを過熱水蒸気の存在下で再度熱処理し、気体成分と、液体成分とに分離する分離工程、
分離した液体成分を精製する精製工程とを含み、
前記分離工程により分離した気体を前記急速乾燥工程に使用した後、前記熱分解成分を乾燥した後の気体をガス浄化装置により浄化することを特徴とするオイルの製造方法。
【請求項6】
前記精製工程は、分離工程により分離した液体成分を熱時加圧して流速を増加させた後にタール分を除去し、
タール分を除去したオイル成分を再度加熱して循環しながら不純物を除去することを含むことを特徴とする請求項5に記載のオイルの製造方法。
【請求項7】
前記急速乾燥工程に先立って、炭素質原料を所定のサイズに粉砕する粉砕工程と、
粉砕した炭素質原料の水分含有量を所定レベルに脱水する脱水工程と、
脱水した炭素質原料を熱分解成分と非熱分解成分に選別する選別工程と、
を行うことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のオイルの製造方法。
【請求項8】
前記炭素質原料が、一般廃棄物、生ゴミ、木材、藻類、汚泥、食品由来残渣、廃プラスチックおよびこれらの混合物よりなる群より選択されたものであることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のオイルの製造方法。
【請求項9】
熱分解用の粉砕された炭素質原料を急速乾燥するための急速乾燥装置であって、粉砕された炭素質原料を導入する導入口と、乾燥した廃棄物を熱分解装置側に排出する排出口と、熱分解装置からの排ガスを熱源として導入する熱源導入口と、使用後の熱源を排出する排出口とを備えた容器から構成されることを特徴とする熱分解用の急速乾燥機。
【請求項10】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱分解システムから構成されたオイル製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−224829(P2012−224829A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105670(P2011−105670)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(510120540)GGIジャパン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】