説明

熱可塑性樹脂補強シート材及びその製造方法、並びに熱可塑性樹脂多層補強シート材

【課題】熱可塑性樹脂をマトリックスとした、高品質で、力学的特性及びドレープ性に優れる熱可塑性樹脂補強シート材、及びその製造方法、並びに当該熱可塑性樹脂補強シート材を用いて成型される高品質、ドレープ性が維持された熱可塑性樹脂多層補強シート材を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂補強シート材1は、複数の補強繊維2fがサイジング剤等により集束した補強繊維束2tを幅方向に複数本引き揃えシート状とした補強繊維シート材2と、補強繊維シート材に付着されたマトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂シート材3と、熱可塑性樹脂シート材3の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化する接着用熱可塑性樹脂材4とを備え、熱可塑性樹脂シート材3の両面に補強繊維シート材2を付着させて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状を有する熱可塑性樹脂複合材料成型品を得るに好適なシート材に関するものであり、詳しくは、炭素繊維等の補強繊維を引き揃えシート状に形成した補強繊維シート材に熱可塑性樹脂材シート材を付着させた熱可塑性樹脂補強シート材、及びその製造方法、並びに得られた熱可塑性樹脂補強シート材を複数枚積層し一体化させた熱可塑性樹脂多層補強シート材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維補強複合材料は、繊維材料とマトリックス材料を組み合せたもので、軽量で剛性が高く多様な機能設計が可能な材料であり、航空宇宙分野、輸送分野、土木建築分野、運動器具分野等の幅広い分野で用いられている。現在、炭素繊維又はガラス繊維といった補強繊維材料を熱硬化性樹脂材料と組み合せた繊維強化プラスチック(FRP)が主流となっている。しかし、リサイクル性、短時間成型性、成型品の耐衝撃特性の向上等の利点から、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂材料を用いた成型品開発が今後増加すると考えられている。
【0003】
一方、成型品を得る際、成型を容易にし、成型コストを削減するため、補強繊維材料の補強方向が多軸になるよう積層された多軸補強シート材を用いた成型品及び成型方法が注目されている。
【0004】
このことから、補強繊維材料と熱可塑性樹脂材料を組み合わせたシート材、特に、補強繊維材料が多軸に積層された多軸補強シート材と熱可塑性樹脂材料を組み合わせたシート材、そして、そのシート材による高品質、短時間そして低コストな成型品製造が期待されている。
【0005】
補強繊維材料と熱可塑性樹脂材料と組み合わせたシート材としては、例えば、特許文献1では、複数本の強化繊維束を一方向に引き揃えた強化繊維シートに熱可塑性樹脂繊維を不織状態で布帛とした熱可塑性樹脂不織布を重ね合わせて加熱しつつ加圧することにより、熱可塑性樹脂不織布を溶融させ強化繊維束中に熱可塑性樹脂を含浸もしくは半含浸させて、熱可塑性樹脂によるプリプレグシートもしくはセミプリプレグシートを得ることが記載されている。
【0006】
補強繊維材料の補強方向を多軸に配向させ熱可塑性樹脂材料と組み合わせたシート材としては、例えば、特許文献2では、多数本の強化繊維糸条が並行にシート状に配列して層構成をなし、前記層の少なくとも2層以上が交差積層されて積層体をなし、該積層体が低融点ポリマー糸でステッチされて一体化された補強用多軸ステッチ布帛が記載されている。そして、当該補強用多軸ステッチ布帛に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含浸させて、低融点ポリマー糸の融点以上に加熱成型することで、ステッチ糸の組織が消滅した表面平滑性に優れるFRP成型品を得ることが記載されている。
【0007】
特許文献3では、熱可塑性樹脂が含浸したプリプレグシートを長手方向に配し、当該熱可塑性樹脂プリプレグシートに別の熱可塑性樹脂プリプレグシートを螺旋状に巻き付けることにより補強方向が三方向となる繊維補強シート及びその製造方法が記載されている。また、三方向が補強された当該繊維補強シートに対し、当該シート長手方向の90度方向に熱可塑性樹脂プリプレグシートを配して四方向が補強された繊維補強シート及びその製造方法が記載されている。
【0008】
特許文献4では、強化フィラメントと有機材料フィラメントから成る混成糸から、結束性をもった一方向ラップを形成し、当該ラップを移動方向に関して横方向に折り畳んだ後、加熱もしくは加熱加圧することにより強化糸/有機材料を固定させて、多軸方向に繊維強化された複合シートを製造する方法及び装置が記載されている。有機材料とは母材として働く熱可塑性樹脂であり、当該複合シートは複雑な形状の複合材料成型品を製造できるようにするため提供されると記載されている。
【0009】
特許文献5では、単糸1000本当たりの幅が1.3mm以上になるよう開繊拡幅された強化繊維束から強化繊維シートを作成し、当該強化繊維シートから補強方向が傾斜する傾斜強化繊維シートを作成した後、当該傾斜強化繊維シートを積層して、熱接着剤による接合又は糸や強化効果のある繊維によるステッチング等により接合一体化された多軸積層強化繊維シート及びその作成方法が記載されている。そして、傾斜強化繊維シートを積層する際、層間に熱可塑性樹脂によるマトリックス層を含める方法が記載されている。
【0010】
特許文献6では、強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させたプリプレグテープを多軸に積層し、ステッチングを施して一体化した多軸積層シートを製造した後、当該多軸積層シートを裁断又は積層して繊維強化熱可塑性複合材料を成形する方法が記載されている。事前に強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸していることから比較的短時間で成形を行うことができ、成形サイクルを短時間にすることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−165851号公報
【特許文献2】特開2002−227066号公報
【特許文献3】特開2006−224543号公報
【特許文献4】特表2004−530053号公報
【特許文献5】特開2006―130698号公報
【特許文献6】特開2007―1089号公報
【特許文献7】国際公開第2005/002819号パンフレット
【特許文献8】特開2005−029912号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】川邊和正他、「熱可塑性樹脂プリプレグ装置を開発するための熱可塑性樹脂含浸シュミレーション」、福井県工業技術センター平成12年度研究報告書、No.17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献1では、不織布状態の熱可塑性樹脂を用いて繊維束中に熱可塑性樹脂を含浸させたプリプレグシートもしくは半含浸させたセミプリプレグシートを得ている。繊維束中に熱可塑性樹脂が溶融し含浸もしくは半含浸することにより、プリプレグシート厚みが薄くとも、そのドレープ性は悪くなり、当該プリプレグシートを三次元形状を有した成型金型に適合させることは難しい。また、当該プリプレグシートもしくはセミプリプレグシートを製造するとき、熱可塑性樹脂不織布を溶融させ繊維束中に含浸させるだけの加熱及び加圧が必要となり、成型装置が大型化すること、成型速度を速くできないことなどの課題がある。
【0014】
特許文献2では、補強用多軸ステッチ布帛に対して樹脂を含浸させFRP成型品を得るため、流動特性に優れる熱硬化性樹脂を含浸させる場合、当該補強用多軸ステッチ布帛を形成する強化繊維糸条の繊維間にまで樹脂を含浸させることが容易であるが、溶融時の樹脂粘度が高く流動特性の悪い熱可塑性樹脂を含浸させる場合、強化繊維糸条の繊維間にまで樹脂を含浸させることが大変難しくなる。このため、当該補強用多軸ステッチ布帛による熱可塑性樹脂複合材料成型品は、成型品を得るための樹脂含浸に要する時間が長くなり成型コストが高くなること、樹脂の未含浸部分つまりボイド(空隙)が多くでき力学的特性が悪くなることなどの課題がある。
【0015】
特許文献3及び特許文献6では、熱可塑性樹脂が含浸したプリプレグシート及びプリプレグテープを使用して多軸補強されたシートを得るが、熱可塑性樹脂材料が補強繊維束中に含浸したプリプレグシート及びプリプレグテープは剛性があるため、当該シート及びテープを多軸に配向させたシートはドレープ性に欠け、三次元形状を有した成型金型に適合させることが難しい課題がある。また、当該熱可塑性樹脂プリプレグシート及びテープを得るために補強繊維束中に熱可塑性樹脂を含浸させてプリプレグシートを製造する工程が必要となるが、補強繊維束中に熱可塑性樹脂を含浸させることは容易ではなく、製造時間を必要とするため、最終的にはFRP成型品を得るコストが高くなる課題もある。
【0016】
特許文献4では、強化フィラメントと有機材料フィラメントから成る混成糸を使用している。しかし、強化フィラメントと有機材料フィラメントを均一に混繊させることは難しく、得られる複合材料成型品は、繊維が均一に分散していない、ボイドのある成型品になる可能性が高い。また、混繊糸は1本ずつ製造されるため、混繊糸を製造するコストが高くなり、得られる複合材料成型品のコストが高くなる課題も生じる。
【0017】
特許文献5では、複数本の開繊拡幅された強化繊維束を接着機能をもった糸又は接着性繊維ウェブ又は多孔性接着剤層によって結合一体化して強化繊維シートを作成している。接着機能をもった糸又は接着性繊維ウェブ又は多孔性接着剤層のみで複数本の開繊拡幅された強化繊維束を結合一体化させるため、ある程度の糸量や接着剤量が必要になる。逆に、接着機能をもった糸又は接着性繊維ウェブ又は多孔性接着剤層の使用量が少ない場合、複数本の強化繊維束の結合一体化は難しく、仮に結合一体化できたとしても、複数本の強化繊維束はばらけ易く、また、開繊拡幅された強化繊維束が集束するなどして、強化繊維シートとしての形態が維持できないのである。なお、実施例では、31mmに開繊拡幅された炭素繊維束を引き揃え、ホットメルト接着剤繊維からなる目付け4g/mの繊維ウェブによって結合一体化された一軸強化繊維シートを作成している。炭素繊維使用量が約24.5g/mとなることから、ホットメルト接着剤の使用量は炭素繊維使用量の約16.3%になる。
【0018】
そして、特許文献5では、強化繊維シートから傾斜強化繊維シートを得た後、当該傾斜強化繊維シートと熱可塑性樹脂マトリックス層を積層し、熱接着剤による接合又は糸や強化効果のある繊維によるステッチング等により接合一体化して、熱可塑性樹脂複合材料成型品を得るための多軸積層強化繊維シートを得る。強化繊維シートを作成する段階で、ある程度の量の接着機能をもった糸又は接着性繊維ウェブ又は多孔性接着剤層を使用するため、これらの接着剤がマトリックスとなる熱可塑性樹脂と混合することとなり複合材料成型品における力学的特性の低下を生じる可能性がある。また、糸や強化効果のある繊維によるステッチングは、多軸積層強化繊維シートを加熱加圧成型して複合材料成型品を得る際、傾斜強化繊維シートと熱可塑性樹脂マトリックス層の積層により得られていた厚みが熱可塑性樹脂の補強繊維束中への含浸により減少し薄くなるため、糸や強化効果のある繊維がたるみ、補強繊維が真直になる状態を阻害する可能性がある。また、たるんだ状態の糸や繊維は複合材料成型品の厚み方向における補強とはならず、逆に異種の素材として存在して複合材料成型品における力学的特性の低下を招く原因になる。
【0019】
本発明者は、これまで鋭意研究開発を進めた結果、非特許文献1に記載されているように、繊維束の厚みが薄くなるに従い、高粘度の熱可塑性樹脂においても、短時間で繊維束中に樹脂を含浸させることができることを確認しており、また、特許文献7に記載されているように、材料コストが安い太繊度繊維束を幅広で薄い開繊糸シートに製造する開繊技術を開発している。さらに、特許文献8では、複数本の開繊糸を幅方向に隙間な
く引き揃えシート化して熱可塑性樹脂シートを使用して熱可塑性樹脂プリプレグシートを製造する方法及び装置について開発を行っている。
【0020】
そこで、本発明は、こうした知見や開繊技術に基づいて、リサイクル性、耐衝撃特性等に優れる熱可塑性樹脂をマトリックスとした、繊維の真直状態と分散状態そして成型品への加工特性に優れる熱可塑性樹脂補強シート材、及び当該熱可塑性樹脂補強シート材を短時間で効率よく低コストにて製造するための方法、並びに高品質で、力学的特性及びドレープ性に優れ、かつ低コストな熱可塑性樹脂多層補強シート材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る熱可塑性樹脂補強シート材は、複数の補強繊維が所定方向に引き揃えられてシート状に形成された補強繊維シート材と、当該補強繊維シート材に付着されたマトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂シート材と、当該熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化するとともに前記補強繊維シート材及び前記熱可塑性樹脂シート材の少なくともどちらか一方の片面又は両面に付着された接着用熱可塑性樹脂材とを備え、前記熱可塑性樹脂シート材の両面に前記補強繊維シート材が付着していることを特徴とする。さらに、前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材が前記接着用熱可塑性樹脂材により接着して、前記補強繊維シート材に前記熱可塑樹脂シート材が付着されていることを特徴とする。さらに、前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材が前記接着用熱可塑性樹脂材により接着されている熱可塑性樹脂補強シート材であって、かつ、当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に前記接着用熱可塑性樹脂材が付着されている熱可塑性樹脂補強シート材において、前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材を接着させる前記接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたりの付着量が、当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に付着されている前記接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたりの付着量と異なることを特徴とする。さらに、前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材が前記接着用熱可塑性樹脂材により接着されている熱可塑性樹脂補強シート材であって、かつ、当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に前記接着用熱可塑性樹脂材が付着されている熱可塑性樹脂補強シート材において、前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材を接着させる前記接着用熱可塑性樹脂材が、当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に付着されている前記接着用熱可塑性樹脂材とは異なる樹脂であることを特徴とする。さらに、前記熱可塑性樹脂補強シート材が前記接着用熱可塑性樹脂材によって離型用シート材に付着し、前記熱可塑性樹脂補強シート材に離型用シート材が一体化していることを特徴とする。さらに、前記補強繊維シート材が、前記補強繊維シート材の断面厚さが前記補強繊維の直径の10倍以内に設定されていることを特徴とする。さらに、前記接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたり付着量が、前記補強繊維シート材の単位面積あたり重量の3%以内であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る熱可塑性樹脂多層補強シート材は、上記の熱可塑性樹脂補強シート材が複数枚積層して形成され、一体化されていることを特徴とする。さらに、前記熱可塑性樹脂補強シート材は、前記補強繊維シート材の引き揃えられた方向がそれぞれ多軸となるように積層されていることを特徴とする。さらに、前記接着用熱可塑性樹脂材を加熱溶融又は加熱軟化させて、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を接着一体化していることを特徴とする。さらに、前記接着用熱可塑性樹脂材を部分的に加熱溶融又は加熱軟化させて、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を部分的に接着一体化していることを特徴とする。さらに、前記熱可塑性樹脂シート材と同一材料である一体化用熱可塑性樹脂繊維束により、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材をステッチして縫合一体化していることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法は、複数の補強繊維を所定方向に引き揃えてシート状の補強繊維シート材を作成するシート形成工程と、前記補強繊維シート材をマトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂シート材の両面に付着させた後、前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材とが付着した当該シート材の片面又は両面に、前記熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化する接着用熱可塑性樹脂材を付着させる付着工程と、を含むことを特徴とする。
本発明に係る別の熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法は、複数の補強繊維を所定方向に引き揃えてシート状の補強繊維シート材を作成するシート形成工程と、前記補強繊維シート材及びマトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂シート材の少なくともどちらか一方の片面又は両面に、前記熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化する接着用熱可塑性樹脂材を付着させる付着工程と、前記補強繊維シート材を前記熱可塑性樹脂シート材の両面に両シート材の層間に前記接着用熱可塑性樹脂材が存在するように重ね合わせて、前記熱可塑性樹脂シート材が溶融する温度より低い温度で加熱又は加熱加圧し、前記接着用熱可塑性樹脂材を溶融又は軟化させて前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材を付着させる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする。
上記の熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法において、さらに、前記シート形成工程では、前記補強繊維シート材として、複数の補強繊維を所定方向に引き揃えるとともにその断面厚さを前記補強繊維の直径の10倍以内としたシート状に形成することを特徴とする。さらに、前記シート形成工程では、前記補強繊維シート材として、長繊維系の補強繊維が複数本集束した補強繊維束を連続して幅方向に拡幅させ、幅広く薄い状態となった開繊糸を用いて形成することを特徴とする。さらに、前記補強繊維シート材及び離型用シート材の層間に前記接着用熱可塑性樹脂材が存在するように重ね合わせて、前記熱可塑性樹脂シート材が溶融する温度より低い温度で加熱又は加熱加圧し、前記接着用熱可塑性樹脂材を溶融又は軟化させて、前記補強繊維シート材及び離型用シート材を付着させることを特徴とする。さらに、前記熱可塑性樹脂補強シート材に離型用シート材を両シート材の層間に前記接着用熱可塑性樹脂材が存在するように重ね合わせて、前記熱可塑性樹脂シート材が溶融する温度より低い温度で加熱又は加熱加圧し、前記接着用熱可塑性樹脂材を溶融又は軟化させて前記熱可塑性樹脂補強シート材と前記離型用シート材を付着させることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造方法は、上記の熱可塑性樹脂補強シート材を厚さ方向に複数枚重ね合わせる積層工程と、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を一体化する一体化工程と、を含むことを特徴とする。さらに、前記積層工程では、前記熱可塑性樹脂補強シート材を、補強繊維の引き揃えられた方向が多軸となるよう複数枚重ね合わせ積層することを特徴とする。さらに、前記一体化工程では、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を、前記接着用熱可塑性樹脂材が溶融又は軟化する温度で加熱又は加熱加圧して、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材の各層間を前記接着用熱可塑性樹脂材によって接着して一体化することを特徴とする。さらに、前記一体化工程では、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を、前記接着用熱可塑性樹脂材が溶融又は軟化する温度で部分的に加熱又は加熱加圧して、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材の各層間を前記接着用熱可塑性樹脂材によって部分的に接着して一体化することを特徴とする。さらに、前記一体化工程では、前記熱可塑性樹脂シート材と同一材料である一体化用熱可塑性樹脂繊維束により、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材をステッチして縫合一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る熱可塑性樹脂補強シート材は、複数の補強繊維が所定方向に引き揃えられてシート状に形成された補強繊維シート材とマトリックス樹脂となるシート状の熱可塑性樹脂シート材が付着したシート材となっており、当該シート材の片面又は両面に、熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化する接着用熱可塑性樹脂材が付着した構成になっている。これより、熱可塑性樹脂補強シート材を切断して、所要の方向で積層を行った際、接着用熱可塑性樹脂材が溶融又は軟化する温度で加熱又は加熱加圧することにより、積層された熱可塑性樹脂補強シート材の各層間を接着用熱可塑性樹脂材によって接着して一体化することができる。つまり、積層された熱可塑性樹脂補強シート材の取り扱いが行い易くなり、成型のための成型用型内への設置に際し、補強繊維の補強方向、補強繊維の引き揃え状態等を維持したまま、積層された熱可塑性樹脂補強シート材を成型用型内に容易に設置することができる。
【0026】
また、マトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂シート材の両面に補強繊維シート材を付着させているので、両面に同じ材質のシート材が付着しているため、熱可塑性樹脂補強シート材がいずれかの片面にカールして変形することがなく平面状の形態を維持することができる。
【0027】
そして、両シート材の配合割合を所定の値に設定したとき、補強繊維シート材を半分ずつ熱可塑性樹脂シート材の両面に付着させるようになって補強繊維シート材の厚みが薄く設定でき、補強繊維シート材中を熱可塑性樹脂が含浸する際、含浸距離が短くなる。そのため、さらに短時間で、かつボイドなどの空隙がさらに少なくなった品質の良い成形品を得ることが可能となる。
【0028】
熱可塑性樹脂補強シート材を薄層化していく場合、熱可塑性樹脂シート材に比べて補強繊維シート材の厚さを薄くすることが容易なことから、熱可塑性樹脂シート材の両面に薄い補強繊維シート材を付着させるようにすることで、熱可塑性樹脂補強シート材をより薄層化することができる。
【0029】
さらに、本発明に係る熱可塑性樹脂補強シート材は、接着用熱可塑性樹脂材によって、補強繊維シート材の片面又は両面に、前記熱可塑性樹脂シート材を付着させている。このため、補強繊維シート材に熱可塑性樹脂シート材が確実に付着し、熱可塑性樹脂補強シート材としての形態が維持され、取り扱いが行い易い状態になる。また、補強繊維シート材を構成する補強繊維の引き揃え状態を保つことができる。
【0030】
さらに、熱可塑性樹脂補強シート材は、マトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂シート材に補強繊維シート材が付着していることから、補強繊維間に熱可塑性樹脂材料が含浸したプリプレグシートとは異なり、シートしてのドレープ性に優れている。そして、細幅の熱可塑性樹脂補強シート材を用いることによりシートとしてのドレープ性がさらに良くなり、立体形状への適応性が向上する。
【0031】
さらに、熱可塑性樹脂補強シート材は、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着させる接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたりの付着量と当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に付着されている接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたりの付着量が異なる、または、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着させる接着用熱可塑性樹脂材と熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に付着されている接着用熱可塑性樹脂材が異なることから、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材層間の付着力と熱可塑性樹脂補強シート材同士間の付着力を変えた熱可塑性樹脂多層補強シート材を得ることができる。これにより、補強繊維シート材を熱可塑性樹脂シート材に付着させて補強繊維の引き揃った状態や分散状態を維持したまま、熱可塑性樹脂補強シート材の各積層間のずれを実現できる。つまり、複数枚の熱可塑性樹脂補強シート材が接着一体化した取り扱いの行い易い熱可塑性樹脂多層補強シート材でありながら、成型のために当該熱可塑性樹脂多層補強シート材を成型用型内に設置したときは、型内の曲面形状部分等において、補強繊維の引き揃え状態、分散状態等を損なうことなく、熱可塑性樹脂補強シート材の各層間をずらしながら型形状に適応することができる、複雑な形状へのドレープ性をさらに向上させた熱可塑性樹脂多層補強シート材を得る。
【0032】
さらに、熱可塑性樹脂補強シート材は、離型用シート材と一体化していることから、熱可塑性樹脂補強シート材としての形態がより安定し、取り扱いがより優れた状態になる。また、補強繊維シート材を構成する補強繊維の引き揃え状態を保つことができる。さらに、熱可塑性樹脂補強シート材を切断する際、一体化された離型用シート材と共に切断することにより補強繊維シート材を構成する各繊維の配向乱れをさらに抑制した切断を行うことができる。これにより、切断された熱可塑性樹脂補強シート材の接合及び積層を切断部分の補強繊維乱れを極力抑えた状態で行うことができ、高品質な複合材料成型品を得ることが可能となる。
【0033】
さらに、前記熱可塑性樹脂補強シート材は、構成される前記補強繊維シート材の断面厚さが前記補強繊維の直径の10倍以内に設定されていることから、熱可塑性樹脂が補強繊維間を含浸のために流れる距離がより短くなり、短時間での成型加工を実現できるようになる。さらに、成形加工時において、樹脂流れによる補強繊維の配向乱れが抑制され、かつ、補強繊維の均一分散性が維持された成型が可能となる。そして、樹脂が流れ込まないボイド(空隙)部分をより少なくする成型が可能となる。
【0034】
さらに、前記熱可塑性樹脂補強シート材は、前記接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたり付着量が前記補強繊維シート材の単位面積あたり重量の3%以内であることから、前記接着用熱可塑性樹脂材が、得られる成型品の力学的特性、熱的特性に与える影響を大変少なく、または無くすることができる。
【0035】
本発明に係る熱可塑性樹脂多層補強シート材は、上記の熱可塑性樹脂補強シート材が複数枚積層して形成されている。このため、熱可塑性樹脂多層補強シート材を加熱加圧して複合材料成型品を得る際、各補強繊維シート材に隣接してマトリックス(母材)となる熱可塑性樹脂シート材が存在することから、補強繊維間への熱可塑性樹脂の含浸が行われ易くなる。つまり、各層に補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材が配置されることにより、熱可塑性樹脂が補強繊維間を含浸のために流れる距離が短くなり、よって、短時間でボイド(空隙)部分の少ない成型品を得ることができるようになる。
【0036】
さらに、熱可塑性樹脂多層補強シート材は、上記の熱可塑性樹脂補強シート材を複数枚積層して形成されているが、このとき、熱可塑性樹脂補強シート材の補強方向を同方向にして積層した熱可塑性樹脂多層補強シート材の場合、一方向補強された厚みのあるシート材又は成型品を短時間で品質良く得ることができる。そして、上記の熱可塑性樹脂補強シート材の補強方向を異方向にして積層した熱可塑性樹脂多層補強シート材の場合、多方向補強された厚みのあるシート材又は成型品を短時間で品質良く得ることができる。
【0037】
さらに、熱可塑性樹脂多層補強シート材は、複数枚積層された上記の熱可塑性樹脂補強シート材を、接着用熱可塑性樹脂材によって接着一体化させていることから、従来技術のように一体化のために使用する糸等が無くなる。よって、熱可塑性樹脂多層補強シート材により成型された複合材料成型品は、表面平滑性及び力学的特性が維持された成型品になる。
【0038】
また、熱可塑性樹脂多層補強シート材は、複数枚積層された上記の熱可塑性樹脂補強シート材を熱可塑性樹脂材料と同一材料である一体化用熱可塑性樹脂繊維束により縫合一体化していることから、熱可塑性樹脂多層補強シート材を加熱加圧して複合材料成型品を得る際、一体化用熱可塑性樹脂繊維束も溶融し熱可塑性樹脂材料と一体化して、母材(マトリックス)として存在することになる。さらに、一体化用熱可塑性樹脂繊維束が溶融することにより、補強繊維がばらけ易くなり繊維が均一に分散されることになる。つまり、従来技術のように一体化のために使用した糸や補強効果のある繊維が母材(マトリックス)中に存在して複合材料成型品としての力学的特性低下及び表面平滑性を招くことや、補強繊維のばらけを阻害することがない。
【0039】
本発明に係る熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法は、熱可塑性樹脂シート材が溶融する温度より低い温度で加熱又は加熱加圧し、補強シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着用熱可塑性樹脂材によって付着させる。熱可塑性樹脂シート材が溶融する温度より低い温度で加熱するため、加熱により生じる場合がある熱可塑性樹脂シート材の収縮が生じなくなる、または生じても大変小さくなる。このため、補強繊維の真直な状態、熱可塑性樹脂シート材の品質等を保持した熱可塑性樹脂補強シート材を得ることができる。
【0040】
また、熱可塑性樹脂シート材に接着用熱可塑性樹脂材を付着させる方法により、熱可塑性樹脂シート材の表面が平滑なことから、少量の接着用熱可塑性樹脂材をシート全面に均一に付着させることが容易となり、また、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材との付着力を向上させることができる。
【0041】
さらに、熱可塑性樹脂シート材が溶融する温度より低い温度で加熱又は加熱加圧を行い、補強シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着用熱可塑性樹脂材によって付着させる。補強繊維シート材を構成する補強繊維間に熱可塑性樹脂シート材を溶融させ含浸させる必要がないため、加熱又は加熱加圧を行うための設備が小型化でき、さらには、幅広な熱可塑性樹脂補強シート材を連続して高速加工する設備も比較的容易に、かつ低コストで導入が可能となる。また、補強シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着用熱可塑性樹脂材によって付着させるための加熱又は加熱加圧において、離型用シート材が必要になる場合がある。この場合においても、加熱温度が低いため離型用シート材として離型紙等が使用可能となり、ランニングコストを抑えた、かつ幅広な熱可塑性樹脂補強シート材を得ることが可能となる。
【0042】
さらに、熱可塑性樹脂補強シート材を製造する際、補強繊維シート材として補強繊維束の開繊糸を用いることにより、複数の補強繊維を所定方向に引き揃えるとともにその断面厚さを前記補強繊維の直径の10倍以内としたシート状に形成することが効率良く行える。そして、材料価格が安い太繊度繊維束を使用することができるため、低コスト生産を可能とする。
【0043】
本発明に係る熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造方法では、熱可塑性樹脂補強シート材を厚さ方向に複数枚重ね合わせる。これにより、各層に補強繊維と熱可塑性樹脂材料を製造効率良く配置させることができる。また、熱可塑性樹脂補強シート材はある程度の幅を有しているため、熱可塑性樹脂多層補強シート材における各層の熱可塑性樹脂補強シート材を生産性良く形成することができる。
【0044】
さらに、熱可塑性樹脂多層補強シート材は、接着用熱可塑性樹脂材を加熱溶融させて、複数枚積層された熱可塑性樹脂補強シート材を接着一体化する、または、熱可塑性樹脂シート材と同一材料である一体化用熱可塑性樹脂繊維束により、複数枚積層された熱可塑性樹脂補強シート材をステッチして縫合一体化する方法により得られる。これにより、積層された熱可塑性樹脂補強シート材の一体化を高速に行うことができる。特に、接着用熱可塑性樹脂材による接着一体化は、熱可塑性樹脂シート材を溶融させて補強繊維間に含浸させるわけでは無いので、短時間で各層を接着一体化させることが可能となる。
【0045】
さらに、本発明に係る熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造方法では、補強繊維シート材中に熱可塑性樹脂シート材を含浸させないので、熱可塑性樹脂補強シート材のドレープ性が維持され、立体形状への適応性が優れた多層又は多軸多層シート材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る熱可塑性樹脂補強シート材を示す模式図である。
【図2】本発明に係る別の熱可塑性樹脂補強シート材を示す模式図である。
【図3】本発明に係る別の熱可塑性樹脂補強シート材を示す模式図である。
【図4】細幅熱可塑性樹脂補強シート材を幅方向に引き揃え並べることによって得られた熱可塑性樹脂補強シート材を示す模式図である。
【図5】熱可塑性樹脂補強シート材を積層して接着一体化した熱可塑性樹脂多層補強シート材を示す模式図である。
【図6】熱可塑性樹脂補強シート材を積層して一体化用熱可塑性樹脂繊維束により縫合一体化した熱可塑性樹脂多層補強シート材を示す模式図である。
【図7】熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法に関する説明図である。
【図8】別の熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法に関する説明図である。
【図9】別の熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法に関する説明図である。
【図10】別の熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法に関する説明図である。
【図11】別の熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法に関する説明図である。
【図12】熱可塑性樹脂補強シート材による熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造方法に関する説明図である。
【図13】熱可塑性樹脂補強シート材を複数本の細幅熱可塑性樹脂補強シート材を製造して引き出す方法に関する説明図である。
【図14】細幅熱可塑性樹脂補強シート材による熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造方法に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0048】
図1及び図2は、本発明に係る実施形態に関する熱可塑性樹脂補強シート材1の一部を示す模式図である。図1における熱可塑性樹脂補強シート材1は、複数の補強繊維2fがサイジング剤等により集束した補強繊維束2tを幅方向に複数本引き揃えシート状の補強繊維シート材2に形成した片面に、熱可塑性樹脂シート材3を付着し、当該熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化する接着用熱可塑性樹脂材4が熱可塑性樹脂シート材3の補強繊維シート材2が付着していない面の表面に付着した構成になっている。なお、接着用熱可塑性樹脂材4は補強繊維シート材2の熱可塑性樹脂シート材3が付着していない面の表面に付着しても良い。図2における熱可塑性樹脂補強シート材1は、補強繊維シート材2及び熱可塑性樹脂シート材3のいずれか一方のシート材の両面に他方のシート材が付着した構成となっている。図2(a)では、熱可塑性樹脂シート材3の両面に補強繊維シート材2が付着した構成になっており、一方もしくは両方の補強繊維シート材の熱可塑性樹脂シート材が付着していない面の表面に接着用熱可塑性樹脂材を付着させている。図2(b)では、補強繊維シート材2の両面に熱可塑性樹脂シート材3が付着した構成となっており、一方もしくは両方の熱可塑性樹脂シート材の補強繊維シート材が付着していない面の表面に接着用熱可塑性樹脂材を付着させている。
【0049】
接着用熱可塑性樹脂材4が表面に付着した構成となっているため、前記熱可塑性樹脂補強シート材を切断して、所要の方向で積層を行った際、前記接着用熱可塑性樹脂材が溶融又は軟化する温度で加熱又は加熱加圧することにより、積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材の各層間を前記接着用熱可塑性樹脂材によって接着して一体化することができる。つまり、積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材の取り扱いが行い易くなり、成型のための金型内への設置に際し、補強繊維の補強方向、補強繊維の引き揃え状態を維持したまま、積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を金型内に容易に設置することが可能となる。
【0050】
なお、当該熱可塑性樹脂補強シート材を構成する補強繊維シート材は、複数の補強繊維がサイジング剤等によりばらけないように集束している補強繊維束を使用して形成されることが多い。この場合、母材(マトリックス)樹脂が熱可塑性樹脂であることから、補強繊維束を集束させるサイジング剤は母材樹脂との接着性等を考慮したサイジング剤が使用されていることが望ましい。そして、サイジング剤等が付着している効果により、各補強繊維のばらけ、配向乱れ、そして、毛羽の生じ難い状態を得ながら、各補強繊維の移動や各補強繊維同士のずれ等を可能としてドレープ性に優れた補強繊維シート材を得ることができる。
【0051】
補強繊維と母材樹脂との接着性を考慮して、サイジング剤が付着していない、もしくは付着量の大変少ない補強繊維束を使用する場合、または、補強繊維束に付着するサイジング剤を除去して補強繊維シート材にする場合等がある。この場合においても、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を付着させることにより、補強繊維がばらけることを抑えることができる。特に、補強繊維束を開繊等して厚み方向に並ぶ補強繊維本数を減らすと、補強繊維のばらけをより抑えることが可能となる。
【0052】
図1及び図2における補強繊維シート材2と熱可塑性樹脂シート材3の付着とは、補強繊維シート材の片面又は両面の全面又は複数部分に熱可塑性樹脂シート材を熱融着させた形態、または、成型品になった際に力学的特性等に影響を与えない接着剤を薄く塗布して補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着させた形態等がある。なお、補強繊維シート材に熱可塑性樹脂シート材を熱融着させる場合、補強繊維シート材の表層部分に熱可塑性樹脂シート材がわずかに含浸することもあるが、その場合においてもシートとしてのドレープ性は十分にあり、付着の形態にあるといえる。
【0053】
また、図2に示す熱可塑性樹脂シート材では、熱可塑性樹脂シート材又は補強繊維シート材のいずれか一方のシート材の両面に他方のシート材を付着させた構成となっているので、両面に同じ材質のシート材が付着することで熱可塑性補強シート材がいずれの片面にもカールすることがない。熱可塑性樹脂補強シート材を薄層化していくと、カール等の変形が生じやすくなるが、図2に示す構成にすることによりシート材の平面状の形態を維持することができる。
【0054】
そして、図2(a)に示すように、熱可塑性樹脂シート材の両面に補強繊維シート材が付着した熱可塑性樹脂補強シート材の場合には、両シート材の配合割合を所定の値に設定した際に、補強繊維シート材を半分ずつ熱可塑性樹脂シート材の両面に付着させるようになって補強繊維シート材の厚みが薄く設定できる。そのため、補強繊維シート材中を熱可塑性樹脂が含浸する際、含浸距離が短くなる。
【0055】
熱可塑性樹脂補強シート材を薄層化していく場合、熱可塑性樹脂シート材及び補強繊維シート材の厚さを薄くする必要があるが、熱可塑性樹脂シート材に比べて補強繊維シート材の厚さを薄くすることが容易であることから、熱可塑性樹脂シート材の両面に薄い補強繊維シート材を付着させるようにすることで、熱可塑性樹脂補強シート材をより薄層化して含浸距離を短くすることができる。そのため、さらに短時間で、かつボイドなどの空隙がさらに少なくなった品質の良い成形品を得ることが可能となる。
【0056】
図3は、本発明に係る実施形態に関する別の熱可塑性樹脂補強シート材1の一部を示す模式図である。熱可塑性樹脂補強シート材1は、複数の補強繊維2fがサイジング剤等により集束した補強繊維束2tを幅方向に複数本引き揃えシート状とした補強繊維シート材2の片面に、熱可塑性樹脂シート材3を、当該熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化する接着用熱可塑性樹脂材4によって付着させて構成されている。なお、熱可塑性樹脂シート材3は補強繊維シート材2の両面に付着させても良い。さらに、熱可塑性樹脂シート材3の両面に補強繊維シート材2を付着させて構成しても良い。
【0057】
図3では、補強繊維シート材2と熱可塑性樹脂シート材3を接着用熱可塑性樹脂材4によって接着して、ばらけないように一体化させることにより、補強繊維シート材2と熱可塑性樹脂シート材3を付着させている。つまり、熱可塑性樹脂シート材の溶融温度まで加熱せず、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を付着させているため、補強繊維シート材の形態及び熱可塑性樹脂シート材の形態が維持されている。よって、当該熱可塑性樹脂補強シート材のドレープ性、補強繊維の真直な状態及び均一な分散状態等が優れたシート材となる。
【0058】
図4における熱可塑性樹脂補強シート材1は、補強繊維2fが複数本引き揃えられた細幅形状の補強繊維シート材2の片面に細幅形状の熱可塑性樹脂シート材3が当該熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化する接着用熱可塑性樹脂材4によって付着して構成されている細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hを用いて、当該細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hを幅方向に複数本シート状に引き揃えて構成されている。このようにして、細幅熱可塑性樹脂補シート材1Hを幅方向及び厚み方向に複数本引き揃えることにより、一方向補強された熱可塑性樹脂補強シート材1を得る。また、細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hを織糸に用い製織することにより、例えば、0度と90度方向の二方向があらかじめ補強された熱可塑性樹脂補強シート材を得ることもできる。
【0059】
図4における細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hにおいても、細幅形状の補強繊維シート材2の片面に細幅形状の熱可塑性樹脂シート材3を接着用熱可塑性樹脂材4によって付着させているが、細幅形状の補強繊維シート材の両面に細幅形状の熱可塑性樹脂シート材を接着用熱可塑性樹脂材によって付着させても良い。さらに、細幅形状の熱可塑性樹脂シート材の両面に細幅形状の補強繊維シート材を接着用熱可塑性樹脂材によって付着させても良い。
【0060】
なお、図3及び図4では、熱可塑性樹脂補強シート材1の表面には接着用熱可塑性樹脂材が付着していない図となっているが、熱可塑性樹脂補強シート材1の片面もしくは両面の表面に接着用熱可塑性樹脂材を分布させて付着させても良い。
【0061】
当該熱可塑性樹脂補強シート材は、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着させる接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたりの付着量と当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に付着されている接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたりの付着量を異ならせることや、また、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着させる接着用熱可塑性樹脂材と熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に付着されている接着用熱可塑性樹脂材を異ならせたりすることができる。
【0062】
補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着させる接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたりの付着量を、当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に付着されている接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたりの付着量より多くすること、または、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着させる接着用熱可塑性樹脂材の付着力が熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に付着されている接着用熱可塑性樹脂材の付着力より大きいものを選択することにより、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材層間の付着力を熱可塑性樹脂補強シート材同士間の付着力よりも大きくした熱可塑性樹脂多層補強シート材を得ることができる。
【0063】
これにより、補強繊維シート材を熱可塑性樹脂シート材に付着させたまま、熱可塑性樹脂補強シート材の各積層間のずれを実現できる。つまり、複数枚の熱可塑性樹脂補強シート材が接着一体化した取り扱いの行い易い熱可塑性樹脂多層補強シート材でありながら、成型のために当該熱可塑性樹脂多層補強シート材を成型用型内に設置したときは、型内の曲面形状部分等において、補強繊維の引き揃え状態、分散状態等を損なうことなく、熱可塑性樹脂補強シート材の各層間の付着を局部的にはずし、熱可塑性樹脂補強シート材の各層間をずらしながら型形状に適応することができる、ドレープ性がさらに優れた熱可塑性樹脂多層補強シート材となる。つまり、複雑な形状の積層成型品を品質良く得ることが可能となる。
【0064】
ここでの付着力と
は、接着用熱可塑性樹脂材によって補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材が、または補強繊維シート材と補強繊維シート材が、または熱可塑性樹脂シート材と熱可塑性樹脂シート材が接着する力のことを表し、付着力が大きいとは接着する力が強いことを表す。なお、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材が付着するとは、通常の取り扱い、例えば、シート材を搬送する、持ち上げる、シート材を切断する等の扱いにおいて補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材が剥離しばらけない状態をいう。
【0065】
補強繊維シート材2に付着させる熱可塑性樹脂シート材3の厚み又は重量は、補強繊維シート材の目付け(単位面積あたりの繊維重量)、及び成型品にしたときの繊維体積含有率等と関係して決められる。
【0066】
補強繊維シート材2は、例えば、複数の補強繊維2fがサイジング剤等によりばらけないように集束している補強繊維束2tを複数本、シート状に引き揃えて形成されている。そして、補強繊維2fとしては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、金属繊維等のFRPに用いられる高強度・高弾性率の無機繊維や有機繊維等が挙げられる。また、これらの繊維が集束した繊維束を複数組み合せてもよい。なお、繊度については特に限定されない。
【0067】
補強繊維シート材2の厚みを補強繊維2fの直径の10倍以内にすることにより、成型品にする際、熱可塑性樹脂シート材が補強繊維間を含浸のために流れる距離がより短くなる。複合材料の補強繊維として代表的な炭素繊維は単糸直径が0.005〜0.007mmである。よって、補強繊維シート材3の厚さは0.05〜0.07mm以下となる。非特許文献1のモデル計算を参考にすれば、数秒程度で熱可塑性樹脂シート材が補強繊維束中に含浸することが期待され、短時間での成型加工が実現できるようになる。また、熱可塑性樹脂シート材の補強繊維間を流れる距離をより短くすることにより、樹脂流れによる補強繊維の配向乱れが抑制され、補強繊維の均一分散性が向上した、ボイド(空隙)の少ない状態を得ることができる。
【0068】
補強繊維シート材2の厚さを補強繊維2fの直径の10倍以内の状態にするためには、集束本数の少ない繊維束を用いる方法、又は繊維束を開繊させる方法等がある。開繊による方法は、集束本数の多い繊維束(太繊度繊維束)を幅広く薄い状態にすることができる。太繊度繊維束は、比較的材料コストが安いため、低コスト成型品を得ることを可能とする。なお、原糸の状態で使用されているサイジング剤等の効果により、開繊糸の形態は安定する。
【0069】
熱可塑性樹脂シート材3は母材(マトリックス)樹脂となるもので、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等)、ポリアセタール、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が使用される。また、これらの熱可塑性樹脂を2種類以上混合して、ポリマーアロイにして母材(マトリックス)樹脂として使用してもよい。
【0070】
接着用熱可塑性樹脂材4は、補強繊維シート材2と熱可塑性樹脂シート材3を接着させ一体化させるもので、構成される熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化して、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材、及び補強繊維シート材又は熱可塑性樹脂シート材と離型用シート材を接着させることができる熱可塑性樹脂が用いられる。接着用熱可塑性樹脂材4は、補強繊維シート材2及び熱可塑性樹脂シート材3の少なくともどちらか一方の片面又は両面に付着する。好ましくは、補強繊維シート材2及び熱可塑性樹脂シート材3の少なくともどちらか一方の片面又は両面の表面に付着し、さらには、均一にばらけていることが望ましい。これにより、補強繊維シート材2と熱可塑性樹脂シート材3を確実に接着して、補強繊維シート材に熱可塑性樹脂シート材を付着させた状態、または熱可塑性樹脂補強シート材を複数枚積層して接着一体化させた状態にする。
【0071】
接着用熱可塑性樹脂材4は、粉体形状、繊維形状のどちらの形状を用いても良い。さらに、繊維形状の場合、長繊維又は短繊維がばらけた状態及び織物、編物、不織布等の布帛状態等の形態を用いることができる。
【0072】
さらに、接着用熱可塑性樹脂材4として、融点が80〜250度の範囲にある樹脂が好ましく、例えば、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリウレタン等が選択される。特に、共重合ポリアミドは、融点が低く、かつ母材となる熱可塑性樹脂シート材との接着性が良好であり接着用熱可塑性樹脂材として好ましい。さらに、接着用熱可塑性樹脂材は、構成される熱可塑性樹脂シート材と相溶性が良いものを選択することが望ましい。これにより、母材となる熱可塑性樹脂材料に接着用熱可塑性樹脂材が溶融した際、母材となる熱可塑性樹脂材料に接着用熱可塑性樹脂材がなじみよく存在することができる。
【0073】
接着用熱可塑性樹脂材4の単位面積あたり付着量は、前記補強繊維シート材の単位面積あたり重量の3%以内にすることが望ましく、さらには、0.5〜2%の範囲にすることがより好ましい。接着用熱可塑性樹脂材4の使用量を少なくすることにより、接着用熱可塑性樹脂材が得られる複合材料成型品の力学的特性、熱的特性に与える影響を少なくすることができる。
【0074】
接着用熱可塑性樹脂材4は、補強繊維シート材2及び熱可塑性樹脂シート材3の少なくともどちらか一方の片面又は両面の表面に分布していることが望ましく、さらには、表面に均一に分布していることがより望ましい。これにより、接着用熱可塑性樹脂材が3%以下、より好ましくは0.5〜2%の範囲であっても補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を確実に接着つまり付着させることができる。補強繊維シート材が熱可塑性樹脂シート材に付着することにより、補強繊維シート材を構成する各繊維束の形態、つまり補強繊維の真直に引き揃った状態や均一に分散した状態等を維持することができるとともに、熱可塑性樹脂シート材の形態もシートとしての形態を維持し、取り扱いに優れたシート材となる。
【0075】
図1から図4において、図示されていないが、離型用シート材を接着用熱可塑性樹脂材4によって熱可塑性樹脂補強シート材に接着一体化させることができる。特に、熱可塑性樹脂補強シート材の補強繊維シート材側に離型用シート材を接着させることにより、補強繊維シート材の形態を維持し、かつ、補強繊維シート材を構成する各補強繊維の真直に引き揃った状態や均一に分散した状態等をさらに安定して維持することが可能となる。
【0076】
なお、離型用シート材として、ポリオレフィン系樹脂シート、熱硬化性ポリイミド樹脂シート、フッ素樹脂シート等の離型用フィルム、または離型紙等を選択することができる。
【0077】
図5は、本発明に係る実施形態に関する熱可塑性樹脂多層補強シート材5の一部を示す模式図である。熱可塑性樹脂多層補強シート材5は、図1から図3に示される熱可塑性樹脂補強シート材1A、1B、1Cそして1Dの4枚を積層して接着用熱可塑性樹脂材によって接着一体化された構成になっている。図5では、熱可塑性樹脂補強シート材1A、1B、1Cそして1Dが、各熱可塑性樹脂補強シート材の補強繊維が異なる軸方向に配列するように積層されている。
【0078】
図6は、本発明に係る実施形態に関する別の熱可塑性樹脂多層補強シート材5の一部を示す模式図である。熱可塑性樹脂多層補強シート材5は、図1から図3に示される熱可塑性樹脂補強シート材1A、1B、1Cそして1Dの4枚を積層した状態に、前記熱可塑性樹脂シート材と同一材料の一体化用熱可塑性樹脂繊維束6により一体化されている。図6では、熱可塑性樹脂補強シート材1A、1B、1Cそして1Dが、各熱可塑性樹脂補強シート材の補強繊維が異なる軸方向に配列するように積層されている。そして、一体化用熱可塑性樹脂繊維束6を使用して各熱可塑性樹脂補強シート材を一体化している。
【0079】
一体化用熱可塑性樹脂繊維束6は、使用されたマトリックス樹脂と同一材料から成る熱可塑性樹脂繊維を用いる。同一材料とは主たる高分子の化学組成が同じであるものでよく、その分子量、結晶化度及び配合物の種類等については異なっていてもよい。成型品を得る際に樹脂を加熱溶融するため、主たる高分子の化学組成が同じであれば、熱可塑性樹脂シート材と一体化用熱可塑性樹脂繊維束は溶融混合され、母材(マトリックス)となるのである。
【0080】
さらに、熱可塑性樹脂シート材がポリマーアロイされたものであるとき、当該ポリマーアロイ樹脂による一体化用熱可塑性樹脂繊維束を使用することが望ましいが、当該ポリマーアロイ樹脂を得るために混合されたどれか一種類の熱可塑性樹脂による一体化用熱可塑性樹脂繊維束を使用しても良い。成型品を得るための加熱溶融によって、ポリマーアロイを構成する熱可塑性樹脂の混合比率が局部的には若干変化するが、母材(マトリックス)となる熱可塑性樹脂シート材と一体化用熱可塑性樹脂繊維束は溶融混合して繊維としての形状は消滅するため、力学的特性の低下がない、補強繊維の均一分散性と表面平滑性が向上した成型品を得ることが可能となる。
【0081】
図5及び図6の熱可塑性樹脂多層補強シート材5は、熱可塑性樹脂補強シート材1A、1B、1Cそして1Dの4枚を積層して形成されているが、積層枚数は4枚に限定されるものではなく、2枚以上の積層枚数であれば良い。そして、このとき、前記熱可塑性樹脂補強シート材の補強方向は同方向、または異方向、どの方向に積層しても良い。図5及び図6の場合、熱可塑性樹脂補強シート材1Aは0度方向、熱可塑性樹脂補強シート材1Bは45度方向、熱可塑性樹脂補強シート材1Cは90度方向そして熱可塑性樹脂補強シート材1Dは−45度方向に繊維補強している。
【0082】
図7は、熱可塑性樹脂補強シート材の製造工程に関する説明図である。補強繊維束2tを開繊した補強繊維開繊糸Sを幅方向に引き揃えた補強繊維シート材2の片面に、熱可塑性樹脂シート材3を貼り合わせ熱融着させた後、熱可塑性樹脂シート材3の表面に粉体状の接着用熱可塑性樹脂材4を散布して熱融着により付着させて、熱可塑性樹脂補強シート材1を製造する工程に関する説明図である。なお、図7(a)は上面図、図7(b)は正面図である。
【0083】
図7の熱可塑性樹脂補強シート材製造装置600は、多数本繊維束供給機構601、多数本繊維束開繊機構602、縦方向振動付与機構603、幅方向振動付与機構604、加熱機構605、冷却機構606、熱可塑性樹脂シート材供給機構607、離型用シート材供給機構608、離型用シート材巻き取り機構609、そして、補強シート材巻き取り機構610から構成される。
【0084】
多数本繊維束供給機構601により、補強繊維束2tが巻かれた補強繊維束ボビン2bを複数本設置し、各補強繊維束2tをほぼ一定の張力で送り出すことができる。
【0085】
供給された複数本の補強繊維束2tは、多数本繊維束開繊機構602により幅広く薄い状態に開繊される。本開繊機構は、風洞管を用いて各繊維束に一方向から流れる流体(図7では吸引空気流)を作用させる空気開繊方式、つまり、特許文献7に記載されている公知技術を採用している。なお、各補強繊維束2tを開繊させる方式であれば、どのような開繊方式を採用しても良い。
【0086】
風洞管の内部には、ある間隔で2本以上の複数本の固定もしくは回転ロールが設置され、各補強繊維束2tは設置された当該ロールの上部、下部、上部、下部、…、上部に接触して走行する。各補強繊維束2tは、縦方向振動付与機構603により、緊張状態・弛緩状態・緊張状態・弛緩状態…が交互に与えられるため、風洞管内において、補強繊維束2tが弛緩状態になった時、ロール下部を走行する補強繊維束2tが空気の流れる方向に
瞬間的にたわみ、各繊維が幅方向に移動して開繊が行われる。そして、補強繊維束2tが緊張状態になった時、開繊した状態でロール上部及び下部に押し付けられて接触走行するため、開繊幅を維持しながら繊維を真直させる。この状態を繰り返しながら補強繊維束2tは走行し、風洞管の直後において補強繊維開繊糸Sの状態になる。
【0087】
この方法の採用により、補強繊維束2tを、構成する補強繊維2fが分散した幅広く薄い状態の補強繊維開繊糸Sに生産性良く加工することができる。無撚状態の炭素繊維束の場合、加工速度5m/分以上で、原糸状態での幅の約2〜7倍に補強繊維の分散性良く開繊を行うことができる。
【0088】
幅方向に複数本並んだ補強繊維開繊糸Sは、幅方向振動付与機構604により、幅方向に振動して各補強繊維開繊糸S間に隙間の無い開繊糸シート、つまり、補強繊維が分散し幅広く薄い状態となった補強繊維シート材2となる。
【0089】
その後、補強繊維シート材2は、当該補強繊維シート材2の片面に熱可塑性樹脂シート材3を貼り合わせ、加熱機構605の加熱ロール9を走行することにより、補強繊維シート材2の片面に熱可塑性樹脂材3が熱融着により付着した状態になる。なお、補強繊維シート材2と加熱ロール9の間には、離型用シート材供給機構608から離型用シート材7が供給される。そして、反転ロール11を経た後、次の加熱ロール9上で、補強繊維シート材2に付着した熱可塑性樹脂シート材3の表面に粉体散布装置8により粉体状の接着用熱可塑性樹脂材4が散布され、熱融着により、接着用熱可塑性樹脂材4が熱可塑性樹脂シート材3に付着した状態になる。そして、冷却機構606の冷却ロール10を走行して、補強繊維シート材2の片面に熱可塑性樹脂シート材3が付着し、その表面に接着用熱可塑性樹脂材4が付着した熱可塑性樹脂補強シート材1を得る。得られた熱可塑性樹脂補強シート材1は補強シート材巻き取り機構610により熱可塑性樹脂補強シート材巻体1bに巻き取られる。また、離型用シート材7は離型用シート材巻き取り機構609に巻き取られる。
【0090】
本機構では、補強繊維シート材に熱可塑性樹脂シート材を貼り合わせ、加熱することで熱可塑性樹脂シート材を溶融又は軟化させ、補強繊維シート材に熱融着、つまり付着させる。加熱条件等により、補強繊維シート材の表層部分に熱可塑性樹脂シート材が含浸することもあるが、その量はわずかであり、熱可塑性樹脂補強シート材のドレープ性は十分に得られる。なお、補強繊維シート材に熱可塑性樹脂シート材を含浸させることが目的ではないため、加工速度を速く設定することができ、かつ、高めの加圧力を設定する必要もない。つまり、熱可塑性樹脂補強シート材を生産性良く製造することができる。
【0091】
なお、図7では、補強繊維シート材2の上側からの片面に熱可塑性樹脂シート材3を貼り合わせているが、下側から熱可塑性樹脂シート材2を貼り合わせても良く、上下の両面から貼り合わせることも可能である。さらに、図8に示すように、機構601〜604を加熱機構605の反対側にもう一組を用意し、熱可塑性樹脂シート材3の両側に補強繊維シート材2を貼り合わせることもできる。
【0092】
図7では、補強繊維シート材に熱可塑性樹脂シート材を付着させた後、次の加熱ロール上で粉体状の接着用熱可塑性樹脂材を散布して熱可塑性樹脂シート材表面に熱融着させるが、加熱ロールの温度は熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低く設定できる。また、熱融着が目的であるため加熱だけでもよいが、必要によっては、押圧ロール等を用いた加熱加圧を行うこともよい。さらに、熱可塑性樹脂シート材の片面のみに接着用熱可塑性樹脂材を散布しているが、補強繊維シート材の片面にも接着用熱可塑性樹脂材を散布してもよい。
【0093】
熱可塑性樹脂シート材3としては、熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性樹脂不織布等のシート形状のものを用いることができる。また、押出機構を用意して、熱可塑性樹脂ペレット又は熱可塑性樹脂粉体を押出機にて混練溶融させ、Tダイ等を用いてフィルム状にて押出し、当該フィルムを直接に補強繊維シート材2に貼り合わせも良い。さらに、熱可塑性樹脂繊維が複数本集束した熱可塑性樹脂繊維束を幅方向に引き揃えシート状にしたシート材、または、当該熱可塑性樹脂繊維束を開繊させてシート状にしたシート材等を用いることもできる。
【0094】
特に、熱可塑性樹脂のフィルムは表面が平滑であるため、熱可塑性樹脂フィルムへの接着用熱可塑性樹脂材の付着がシート全面で均一に行われ易く、よって、少量の接着用熱可塑性樹脂材であっても補強繊維シート材と熱可塑性樹脂フィルムの付着等が良好に行われる。
【0095】
接着用熱可塑性樹脂材4の付着としては、粉体状の接着用熱可塑性樹脂材を用いて粉体散布装置8にて補強繊維シート材又は熱可塑性樹脂シート材の表面に定量を均一に散布し付着させる方法、不織布状の接着用熱可塑性樹脂材を用いて補強繊維シート材又は熱可塑性樹脂シート材の表面に貼り合わせて付着させる方法を用いることができる。また、接着用熱可塑性樹脂材を溶剤等で溶かして溶液状にして、当該溶液を補強繊維シート材又は熱可塑性樹脂シート材の表面に塗布し、溶剤を揮発させて補強繊維シート材又は熱可塑性樹脂シート材の表面に接着用熱可塑性樹脂材を付着させる方法等を用いることができる。なお、接着用熱可塑性樹脂材4はシート材に均一に付着させることが好ましく、さらには、接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたり付着量が、補強繊維シート材の単位面積あたり重量の3%以内にあるとよい。
【0096】
図9は、熱可塑性樹脂補強シート材の別の製造工程に関する説明図である。補強繊維束2tから補強繊維開繊糸Sを得た後、補強繊維シート材2を得る工程までは、図7と同様である。その後、補強繊維シート材2の片面に粉体状の接着用熱可塑性樹脂材4を散布して、その面に熱可塑性樹脂シート材3を貼り合わせ熱融着させて、熱可塑性樹脂補強シート材1を製造する工程に関する説明図である。なお、図9(a)は上面図、図9(b)は正面図である。
【0097】
図10及び図11も、熱可塑性樹脂補強シート材の別の製造工程に関する説明図である。図10は、熱可塑性樹脂シート材3に接着用熱可塑性樹脂材4を散布して、その面に補強繊維シート材2を貼り合わせ熱融着させて、熱可塑性樹脂補強シート材1を製造する工程に関する説明図である。そして、図11は、図10で得られた熱可塑性樹脂補強シート材の熱可塑性樹脂シート材2の片面に接着用熱可塑性樹脂材4を散布して熱融着により付着させて、熱可塑性樹脂補強シート材1を製造する工程に関する説明図である。なお、図10及び図11は正面図である。
【0098】
図9、図10及び図11では、接着用熱可塑性樹脂材4により補強繊維シート材2と熱可塑性樹脂シート材3を付着させる。このとき、補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材を接着させることができる機能を発現する接着用熱可塑性樹脂材4の溶融又は軟化温度は、熱可塑性樹脂シート材3の溶融温度より低いため、加熱ロール9の設定温度を熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度に設定することができる。よって、加熱により生じる場合がある熱可塑性樹脂シート材の収縮を生じなくする又は大変小さくすることができ、繊維蛇行等のない品質の良い熱可塑性樹脂補強シート材を得ることが可能となる。
【0099】
図11では、接着用熱可塑性樹脂材4が、熱可塑性樹脂シート材の両面に付着することになる。この場合、熱可塑性樹脂シート材の両面に付着する接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたり総付着量が、補強繊維シート材の単位面積あたり重量の3%以内にあるとよい。つまり、熱可塑性樹脂補強シート材に使用される接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたり総付着量が、補強繊維シート材の単位面積あたり重量の3%以内、好ましくは0.5〜2%の範囲になるようにして、接着用熱可塑性樹脂材を使用する。
【0100】
また、図11において、補強繊維シート材2と熱可塑性樹脂シート材3を貼り合わせ熱融着させるために熱可塑性樹脂シート材3の表面に散布する接着用熱可塑性樹脂材4の散布量又は樹脂種類を、その後の工程で熱可塑性樹脂補強シート材1の片面に散布する接着用熱可塑性樹脂材4の散布量又は樹脂種類と異なる量又は種類を用いても良い。
【0101】
図7から図11では、複数本の補強繊維束を開繊して開繊糸シートにした直後に同一ラインで熱可塑性樹脂シート材を付着させている。これにより、補強繊維の分散性が良い状態になった直後に熱可塑性樹脂シート材を付着させることができる。
【0102】
図7から図11では、冷却機構606として複数本の冷却ロール10を設けている。冷却ロール10の設定温度は加熱ロール9より低い設定温度となるが、急冷したい場合には、空冷や水冷等を行っても良い。逆に、徐冷を行いたい場合には、複数本の冷却ロールに温度勾配を設け、徐々に冷却を行うと良い。急冷を行うか、徐冷を行うかは、製造される熱可塑性樹脂補強シート材の形態をみて判断すると良い。
【0103】
また、図7から図11等の装置において、溶融又は軟化した接着用熱可塑性樹脂材が冷却ロールに付着する場合には、接着用熱可塑性樹脂材を散布後、もう一方の片面にも離型用シート材を重ね合わせ熱可塑性樹脂補強シート材を離型用シート材で挟み込んだ状態にして走行し、冷却ロールからの排出後、離型用シート材を巻き取る方法を行っても良い。
【0104】
接着用熱可塑性樹脂材は加熱により溶融又は軟化して冷却により固化するが、このとき、接着用熱可塑性樹脂材が収縮して補強繊維の蛇行、熱可塑性樹脂シート材の収縮等を発生させ、熱可塑性樹脂補強シート材の品質を損なう場合がある。このような場合は、熱可塑性樹脂シート材に接着用熱可塑性樹脂材を散布後、加圧を行いながら加熱及び冷却を行うと良い。例えば、図7から図11等の装置においては、熱可塑性樹脂補強シート材が加熱ロール及び冷却ロールに接して走行するとき、熱可塑性樹脂補強シート材及び離型用シート材に張力を負荷することで、熱可塑性樹脂補強シート材が各ロールに押し付けられ、連続した加圧を受けながら加熱ロール及び冷却ロールを走行することができる。さらに、加圧のための押圧ロール等を用いても良い。
【0105】
図7から図11の装置において、図示されていないが、離型用シート材7の表面に、接着用熱可塑性樹脂材4を散布し付着させることもできる。これにより、熱可塑性樹脂補強シート材1と離型用シート材7が接着して一体化した状態を得ることができる。そして、離型用シート材7と一体化された熱可塑性樹脂補強シート材1を、補強シート材巻き取り機構610により巻き取る。なお、この場合、離型用シート材巻き取り機構609は必要がない。
【0106】
図9から図11の装置において、前記熱可塑性樹脂シート材3が溶融する温度より低い温度で加熱又は加熱加圧を行い、前記補強シート材2と前記熱可塑性樹脂シート材3を前記接着用熱可塑性樹脂材4によって付着させ熱可塑性樹脂補強シート材1を製造している。よって、加熱ロール9を低温仕様の加熱ロールにすることができ、比較的に低コストなロールを導入することができる。特に、幅広な加熱ロールについても導入が容易となる。
【0107】
また、使用する離型用シート材7は加熱温度が低いため離型紙等を使用することができる。離型用シート材7として熱硬化性ポリイミド樹脂シートやフッ素樹脂シート等を使用することもできるが、離型用シート材としてのコストは高くなる。よって、離型用シート材7として離型紙を使用できることは低コストな生産を可能とする。さらに、離型紙は種々の幅、長さのものが用意されており、幅広かつ長さのある熱可塑性樹脂補強シート材1を容易に製造することができる。つまり、幅2m以上の熱可塑性樹脂補強シート材を製造することも可能となる。
【0108】
特に、熱可塑性樹脂シート材3としてPPS樹脂、PEI樹脂、PEEK樹脂等の耐熱性熱可塑性樹脂による耐熱性熱可塑性樹脂シート材を用いる場合、補強繊維シート材に耐熱性熱可塑性樹脂シート材を熱融着によって直接付着
させる方法では、補強繊維と熱可塑性樹脂を熱融着させるため補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材が付着する瞬間に耐熱性熱可塑性樹脂シート材が溶融または軟化する温度にまで加熱する必要があり、その温度は高温になるため、設備、離型用シート材等を高温用仕様にする必要がある。しかし、接着用熱可塑性樹脂材により補強繊維シート材と耐熱性熱可塑性樹脂シート材を付着する方法では、加熱温度を低温にすることができ、低温用仕様の設備、離型用シート材等を用いることができ、イニシャルコスト、ランニングコストをさらに抑えた耐熱性熱可塑性樹脂による熱可塑性樹脂補強シート材を得ることができる。
【0109】
図12は、熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造工程に関する説明図である。図12は、広幅な熱可塑性樹脂補強シート材を用いて、繊維補強方向が異なる順に4枚積層した後、加熱加圧して、熱可塑性樹脂多層補強シート材を製造する工程に関する説明図である。
【0110】
図12のシート方式熱可塑性樹脂多層補強シート材製造装置1000は、α度方向シート材供給機構1001、90度方向シート材供給機構1002、−α度方向シート材供給機構1003、0度方向シート材供給機構1004、加熱接着式一体化機構1005、離型用シート材供給機構1006、離型用シート材巻き取り機構1007、そして、多層補強シート材巻き取り機構1008ら構成される。
【0111】
機構1001〜1004における各方向のシート材供給機構は、熱可塑性樹脂補強シート材巻体1bから熱可塑性樹脂補強シート材1を引き出し、供給する機構になっている。機構1001〜1003は、熱可塑性樹脂補強シート材1を設定された方向に、熱可塑性樹脂多層補強シート材5の幅長さ以上に引き出し、そして、切断機構(図示されない)により熱可塑性樹脂補強シート材巻体1bから切り離した後、熱可塑性樹脂多層補強シート材5を走行させる両端部の走行レール12に貼り付ける。このとき、貼り付けようとする熱可塑性樹脂補強シート材の走行方向側端部を、先に貼り付け走行している熱可塑性樹脂補強シート材の走行方向反対側端部に接触させるようにして貼り付けると、熱可塑性樹脂多層補強シート材の各層において、隙間及び重なりがない、設定方向を繊維補強するシートを形成することができる。なお、走行レール12にはピン(図示されない)等が埋め込まれ、貼り付けられた熱可塑性樹脂補強シート材を固定することができるようになっている。機構1004は、熱可塑性樹脂多層補強シート材5の幅長さが得られるようにして、1つ、もしくは複数の熱可塑性樹脂補強シート材巻体1b(図示されない)を設置し、熱可塑性樹脂補強シート材1を0度方向に連続して供給する。
【0112】
図12では、機構1001〜1004における各方向のシート材供給機構は、熱可塑性樹脂補強シート材巻体1bから熱可塑性樹脂補強シート材1を引き出し、供給する機構になっているが、このとき、熱可塑性樹脂補強シート材1に離型用シート材が付着している場合は、シート材供給機構において、熱可塑性樹脂補強シート材巻体1bから引き出された熱可塑性樹脂補強シート材1から離型用シート材を剥離する機構を採用する。これにより、熱可塑性樹脂補強シート材1のみを供給するようにする。
【0113】
機構1001及び1003は熱可塑性樹脂補強シート材をα度及び−α度方向に供給する機構である。このとき、α度は、0度<α度<90度の範囲に設定ができるが、装置の大きさ、取り扱い易さ等から、30〜60度の範囲にあることが好ましい。また、熱可塑性樹脂補強シート材の供給方向、供給数、そして供給順序等は、自在に設定を行うことができるが、成型品の設計に対応して定めるのが望ましい。例えば、擬似等方性材料を得る場合には、[45度/0度/−45度/90度]もしくは[45度/−45度/0度/90度]等に熱可塑性樹脂補強シート材を積層すると良い。
【0114】
加熱接着式一体化機構1005は、熱可塑性樹脂補強シート材が多層に積層された後、離型用シート材7をその上下両面に当接させて走行させ、その上下から加熱ロール9により加熱又は加熱加圧を行い、各層の接着用熱可塑性樹脂材を溶融又は軟化させて上下層にある熱可塑性樹脂補強シート材を熱融着させる。そして、冷却ロール12により、溶融又は軟化した接着用熱可塑性樹脂材を固化させ、各層の熱可塑性樹脂補強シート材を接着一体化させた後、上下両面の離型用シート材を剥離して、熱可塑性樹脂多層補強シート材5を得る。図12では、加熱ロール9を2連にして、より高速で加熱又は加熱加圧できるようにしている。なお、加熱ロール9及び冷却ロール10の本数は加熱温度及び加工速度に応じて決めればよい。
【0115】
なお、各層の熱可塑性樹脂補強シート材が接着用熱可塑性樹脂材によって熱融着するよう、各層の層間に接着用熱可塑性樹脂材が存在するようにして各層を積層し加熱又は加熱加圧を行う。
【0116】
また、上下両面の離型用シート材のうち少なくともどちらか一方の離型用シート材と熱可塑性樹脂多層補強シート材を接着用熱可塑性樹脂材によって接着させ一体化させても良い。これにより、熱可塑性樹脂多層補強シート材をさらに形態良く、シートとして安定させ、取り扱いを向上させることができる。
【0117】
複数枚積層された熱可塑性樹脂補強シート材を加熱する温度は、接着用熱可塑性樹脂材4が溶融又は軟化する温度で行われるため、熱可塑性樹脂シート材3の溶融温度よりも低い温度で行われる、このため、加熱により生じる場合がある熱可塑性樹脂シート材の収縮を生じなくする又は小さくすることができ、繊維蛇行等が生じない品質の良い熱可塑性樹脂多層補強シート材を得ることが可能となる。また、熱可塑性樹脂シート材3が補強繊維シート材中に溶融含浸しないため、ドレープ性に優れた熱可塑性樹脂多層補強シート材を得ることが可能となる。
【0118】
加熱ロール9として、図に示すような表面が平面である加熱ロールを用いた場合、シート全面を加熱又は加熱加圧することができる。この場合、複数枚積層された熱可塑性樹脂補強シート材の全面にわたって接着一体化された熱可塑性樹脂多層補強シート材を得ることができる。そして、例えばロール表面が凹凸である加熱ロールを用いた場合、複数枚積層された熱可塑性樹脂補強シート材の全面ではなく部分的に接着一体化された熱可塑性樹脂多層補強シート材を得ることができる。
【0119】
複数枚積層された熱可塑性樹脂補強シート材を部分的に加熱又は加熱加圧して、部分的に接着一体化した熱可塑性樹脂多層補強シート材は、各層間での熱可塑性樹脂補強シート材の若干の移動及びずれを可能とするため、よりドレープ性に優れたシート材となることができる。
【0120】
なお、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を加熱又は加熱加圧する方法として、図12に示すような加熱ロールを用いる方法を説明したが、その他の方法でも良く、例えば、加熱プレス板を用いる方法、金属ベルトによるダブルプレス方式を用いる方法等がある。
【0121】
図13は、図12のシート材供給機構1001〜1003において、細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hを製造しながら幅方向に引き揃えて供給する機構に関する説明図である。
【0122】
広幅形状の熱可塑性樹脂補強シート材1が巻かれている熱可塑性樹脂補強シート材巻体1bから、当該熱可塑性樹脂補強シート材1を引き出しながら、当該熱可塑性樹脂補強シート材1の幅方向に所要の間隔で並んだ複数枚のカッター刃13及びカッター刃受けロール14により、当該熱可塑性樹脂補強シート材1を幅方向に所要の間隔でシート長さ方向に連続して切断し、複数本の細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hを製造しながら供給する。なお、細幅熱可塑性樹脂補強シート材の幅は、得られる熱可塑性樹脂多層補強シート材の設計に応じて決められる。シートとしてのドレープ性向上を考慮した場合、幅は細いほど良いが、幅が細すぎた場合、細幅熱可塑性樹脂補強シート材が切断され連続性を失う可能性がある。従って、その幅は1mm〜20mmの範囲にあるのが好ましく、さらには2mm〜10mmの範囲にあるのがより好ましい。
【0123】
本機構を採用することにより、効率よく、細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hを幅方向に複数本引き揃えて供給することができる。なお、カッター刃13は回転又は固定のどちらでもよいが、熱可塑性樹脂補強シート材1の走行に応じて自由回転する丸刃状のカッター刃13と、カッター刃の下側に受けロール14を設置して、その間に熱可塑性樹脂補強シート材1を走行させて切断する方法が、熱可塑性樹脂補強シート材2を補強繊維の毛羽立ちなく切断することができる1つの方法である。なお、広幅形状の熱可塑性樹脂補強シート材1を幅方向に所要の間隔で切断する方法として、レーザで切断する方法等を採用しても良い。
【0124】
図14は、細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hを用いて、熱可塑性樹脂補強シート材1を形成しながら、繊維補強方向が異なる順に4枚積層した後、一体化用熱可塑性樹脂繊維束6でステッチし、熱可塑性樹脂多層補強シート材5を製造する工程に関する説明図である。図14の細幅シート方式熱可塑性樹脂多層補強シート材製造装置1200は、α度方向細幅シート材供給機構1201、90度方向細幅シート材供給機構1202、−α度方向細幅シート材供給機構1203、0度方向細幅シート材供給機構1204、ステッチ式一体化機構1205、そして、多層補強シート材巻き取り機構1206から構成される。
【0125】
機構1201〜1204における各方向の細幅シート材供給機構は、複数の細幅熱可塑性樹脂補強シート材ボビン1Hbから細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hを引き出し、シート状に引き揃えて供給する機構になっている。機構1201〜1203は、複数の細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hをシート状に引き揃えて、熱可塑性樹脂多層補強シート材5を走行させる両端部の走行レール12の一方端部に引っ掛けて、次に他方端部に向かって走らせ、他方端部に引っ掛けるという動作を繰り返して、各層における、熱可塑性樹脂補強シート材を形成する。このとき、細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hは切断されることなく連続しており、かつ、複数の細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hが隙間及び重なりの少ない状態で引き揃えられ、設定方向を繊維補強するシート状態として形成される。なお、走行レール12にはピン(図示されない)等が埋め込まれ、複数の細幅熱可塑性樹脂補強シート材を引っ掛けて固定することができるようになっている。機構1204は、熱可塑性樹脂多層補強シート材5の幅長さが得られるようにして、複数の細幅熱可塑性樹脂補強シート材がシート状に引き揃えられ、当該シート状の細幅熱可塑性樹脂補強シート材を0度方向に連続して供給する。
【0126】
細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hが巻かれたボビン1Hbは、図13に示されるような方法、つまり、広幅形状の熱可塑性樹脂補強シート材1を幅方向に所要の間隔でシート長さ方向に連続して切断した後、各細幅熱可塑性樹脂補強シート材を、各ボビン等に巻き上げて製作してもよい。また、図7〜図11に示すような装置を用いて、細幅形状の補強繊維シート材の片面に細幅形状の熱可塑性樹脂補強シート材を付着させて細幅熱可塑性樹脂補強シート材を製造して、当該細幅熱可塑性樹脂補強シート材1をボビン等に巻き上げて製作しても良い。
【0127】
機構1201及び1203は細幅熱可塑性樹脂補強シート材をα度及び−α度方向に供給する機構である。図12のシート方式熱可塑性樹脂多層補強シート材製造装置1000の場合に同様、α度は、0度<α度<90度の範囲に設定ができるが、装置の大きさ、取り扱い易さ等から、30〜60度の範囲にあることが好ましい。また、細幅熱可塑性樹脂補強シート材の供給方向、供給数、そして供給順序等は、自在に設定を行うことができるが、成型品の設計に対応して定めるのが望ましい。
【0128】
そして、複数の細幅熱可塑性樹脂補強シート材1Hにより形成された各層の熱可塑性樹脂補強シート材を多層に積層した状態に、一体化用熱可塑
性樹脂繊維束6をステッチ式一体化機構1205にて、経編方式等によりステッチして、各層を縫合一体化させた熱可塑性樹脂多層補強シート材5を得る。一体化用熱可塑性樹脂繊維束6のステッチ間隔は成型品の設計等に応じて定めると良い。得られた熱可塑性樹脂多層補強シート材5は多層補強シート材巻き取り機構1206にて熱可塑性樹脂多層補強シート材巻体5bに巻かれる。
【0129】
このとき、一体化用熱可塑性樹脂繊維束6によるステッチングは、熱可塑性樹脂多層補強シート材5の幅方向に、ある間隔をもって行う。当該間隔が細かくなると、一体化用熱可塑性樹脂繊維束6の量が増え、最終成型品を得る際に、母材(マトリックス)の量が増えて繊維体積含有率が減少する。逆に、この間隔が広くなると、熱可塑性樹脂多層補強シート材5のシートとしての取り扱いが難しくなり、熱可塑性樹脂多層補強シート材5の切断、積層が困難になる。成型品の設計に応じて、一体化用熱可塑性樹脂繊維束6のステッチ間隔を定めると良い。
【0130】
得られた熱可塑性樹脂多層補強シート材5を、所要の大きさ、所要の角度にて切断し、成型用の型に積層後、加熱加圧成型を行うことにより、熱可塑性樹脂シート材及び一体化用熱可塑性樹脂繊維束が補強繊維間中に含浸した熱可塑性樹脂多層補強成型品を製造することができる。
【0131】
また、当該熱可塑性樹脂多層補強シート材から熱可塑性樹脂多層補強成型品を製造する別の方法として、まず、得られた熱可塑性樹脂多層補強シート材5を、所要の大きさ、所要の角度にて切断し、平板成型用の型に積層後、加熱加圧を行うことにより、熱可塑性樹脂シート材及び一体化用熱可塑性樹脂繊維束が補強繊維間中に含浸した平板形状の予備成型積層材を製造する。そして、当該予備成型積層材を遠赤外線方式等の加熱方式により母材(マトリックス)である熱可塑性樹脂が軟化さらには溶融するまで加熱を行い、その後、その状態の予備成型積層材を成型用の型にセットしてプレス成型装置等で加圧成型を行うと、所要の形状に成型された熱可塑性樹脂多層補強成型品を得る。
【0132】
熱可塑性樹脂多層補強シート材は各層に補強繊維シート材と熱可塑性樹脂シート材が存在するため、補強繊維束中への熱可塑性樹脂の含浸が良好に行われた、ボイド(空隙)の少ない成型品となる。また、熱可塑性樹脂の含浸距離が短くなることから、補強繊維の真直な状態や均一な分散状態が維持され、かつ表面平滑性に優れた成型品になる。
【実施例】
【0133】
[参考例1] 以下の材料を用いて熱可塑性樹脂補強シート材を製造した。<使用材料>(補強繊維束に使用した繊維束)三菱レイヨン株式会社製;TR50S―15K、繊維直径約7μm、繊維本数15000本(熱可塑性樹脂シート材に使用した樹脂)三菱樹脂株式会社製;ナイロン6樹脂ペレット(接着用熱可塑性樹脂材に使用した樹脂)東レ株式会社製;共重合ポリアミド樹脂パウダー、CM842P48、低融点(115℃)樹脂<製造工程>(1)図7に示すような製造装置にて、補強繊維束TR50S―15Kを13本、24mm間隔でセットし、多数本を同時に空気開繊する多数本繊維束開繊機構及び縦方向振動付与機構にて、各々の補強繊維束を幅20mmの補強繊維開繊糸に開繊し、その後、補強繊維開繊糸を幅方向振動付与機構にて幅方向に振動させて、補強繊維開繊糸間に隙間がない補強繊維シート材を得た。得られた補強繊維シート材は、幅310mm、繊維目付け(単位面積あたりの繊維重量)約42g/mであった。(2)図7に示す熱可塑性樹脂シート材供給機構にかわり、押出装置とTダイが組み合わさった装置を設置し、当該装置にナイロン6ペレットを投入して、幅320mm、厚さ15μmのナイロン6フィルムを作成しながら、補強繊維シート材の片面に熱融着によりナイロン6樹脂フィルムを付着させた。なお、離型用シート材は用いなかった。また、補強繊維シート材とナイロン6樹脂フィルムが貼り合わさるための加熱ロール9の加熱温度は150度に制御した。(3)補強繊維シート材の片面にナイロン6樹脂フィルムが付着した当該シートを走行させながら、当該シートのナイロン6樹脂フィルム側表面に、粉体散布装置8を用いて、接着用熱可塑性樹脂材である共重合ポリアミド樹脂パウダーを均一に分散付着させた。分散量は約0.3g/mで、補強繊維束重量の約0.7%の量を付着させた。なお、加熱ロール9の加熱温度は120度に制御した。また、補強繊維シート材の製造速度、ナイロン6樹脂フィルムを押出成型により製造する速度、そして、共重合ポリアミド樹脂パウダーを分散し付着させる速度は約8m/分で行った。<評価> 得られた熱可塑性樹脂補強シート材は、まず、補強繊維シート材を構成する各補強繊維が真直な状態で均一に分散されていた。また、ナイロン6樹脂フィルムは補強繊維シート全面に付着し、補強繊維開繊糸の形態を安定させていた。補強繊維シート材に隙間、繊維集束は生じていなかった。また、当該熱可塑性樹脂補強シート材のナイロン6樹脂フィルム側片面には、接着用熱可塑性樹脂材である共重合ポリアミド樹脂パウダーが均一に分散して付着していた。
【0134】
[参考例2] 以下の材料を用いて熱可塑性樹脂補強シート材を製造した。<使用材料> 補強繊維束、接着用熱可塑性樹脂材は参考例1に同じ。(熱可塑性樹脂シート材に使用した樹脂)三菱樹脂株式会社製;PEI(ポリエーテルイミド)樹脂フィルム、フィルム厚み15μm<製造工程>(1)図10に示すような製造装置にて、参考例1の(1)の方法にて、幅310mm、繊維目付け約42g/mの補強繊維シート材を得た。(2)熱可塑性樹脂シート材であるPEI樹脂フィルムを走行させながら、その片側表面に、粉体散布装置8を用いて、接着用熱可塑性樹脂材である共重合ポリアミド樹脂パウダーを均一に分散付着させた。分散量は約0.3g/mで、補強繊維束重量の約0.7%の量であった。(3)補強繊維シート材に、共重合ポリアミド樹脂パウダーを分散させたPEI樹脂フィルムを貼り合わせた後、離型用シート材とともに加熱ロールと冷却ロールに走行させた。これにより、共重合ポリアミド樹脂パウダーを溶融させ、補強繊維シート材にPEI樹脂フィルムを付着させた熱可塑性樹脂補強シート材を得た。このとき、加熱ロールの温度は約120度に制御した。また、離型用シート材には離型紙を供給した。なお、補強繊維シート材の製造速度、PEI樹脂フィルムに共重合ポリアミド樹脂パウダーを分散付着させた速度、そして補強繊維シート材に熱可塑性樹脂補強シート材を付着させ熱可塑性樹脂補強シート材を製造する速度は約10m/分で行った。<評価> 得られた熱可塑性樹脂補強シート材は、まず、補強繊維シート材を構成する各補強繊維が真直な状態で均一に分散されていた。また、PEI樹脂フィルムに付着することにより補強繊維開繊糸の形態が安定し、補強繊維シート材に隙間、繊維集束を生じなかった。そして、PEI樹脂フィルムは加熱による収縮がほとんど生じておらず、シート形態を安定させて補強シート材に付着していた。
【0135】
[参考例3] 以下の材料を用いて熱可塑性樹脂補強シート材を製造した。<使用材料> 補強繊維束は参考例1に同じ。(熱可塑性樹脂シート材に使用した樹脂)東レ株式会社製;PPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂フィルム、フィルム厚み15μm(接着用熱可塑性樹脂材に使用した樹脂)東レ株式会社製;ポリアミド樹脂パウダー、SP―500、融点165℃<製造工程>(1)参考例2の(1)により、幅310mm、繊維目付け約42g/mの補強繊維シート材を得た。(2)熱可塑性樹脂シート材であるPPS樹脂フィルムを走行させながら、その片側表面に、粉体散布装置を用いて、接着用熱可塑性樹脂材であるポリアミド樹脂パウダーを均一に分散付着させた。分散量は約0.5g/mで、補強繊維束重量の約0.12%の量であった。(3)補強繊維シート材に、ポリアミド樹脂パウダーを分散させたPPS樹脂フィルムを貼り合わせた後、離型用シート材とともに加熱ロールと冷却ロールに走行させた。これにより、ポリアミド樹脂パウダーを溶融させ、補強繊維シート材にPPS樹脂フィルムを付着させた熱可塑性樹脂補強シート材を得た。このとき、加熱ロールの温度は約200度に制御した。また、離型用シート材には離型紙を供給した。なお、補強繊維シート材の製造速度、PPS樹脂フィルムにポリアミド樹脂パウダーを分散付着させた速度、そして補強繊維シート材に熱可塑性樹脂補強シート材を付着させ熱可塑性樹脂補強シート材を製造する速度は約10m/分で行った。<評価>得られた熱可塑性樹脂補強シート材は、参考例2と同様、補強繊維シート材を構成する各補強繊維が真直な状態で均一に分散されていた。また、PPS樹脂フィルムに付着することにより補強繊維開繊糸の形態が安定し、補強繊維シート材に隙間、繊維集束を生じていなかった。そして、PPS樹脂フィルムはシート形態が安定しており、取り扱いの行い易い熱可塑性樹脂補強シート材を得た。
【0136】
[実施例1] 以下の材料を用いて熱可塑性樹脂補強シート材を製造した。<使用材料> 補強繊維束、熱可塑性樹脂シート材は参考例1に同じ。(熱可塑性樹脂シート材に使用した樹脂)三菱樹脂株式会社製;ナイロン6樹脂フィルム、フィルム厚み20μm<製造工程>(1)図8に示すような製造装置にて、加熱機構605の左右両側に設置されたそれぞれの多数本繊維束供給機構601に、補強繊維束TR50S―15Kを8本、40mm間隔でそれぞれにセットし、それぞれの縦方向振動付与機構603により各補強繊維束に縦方向の振動を与えながら、それぞれの多数本繊維束開繊機構602にて各補強繊維束を幅約40mmに開繊した補強繊維開繊糸を得て、それぞれの幅方向振動付与機構604により各補強繊維開繊糸を幅方向に振動させて、補強繊維開繊糸間に隙間がない、幅約320mm、繊維目付け(単位面積あたりの繊維重量)約25g/mの補強繊維シート材をそれぞれに連続して得た。(2)その後、連続して、加熱機構605の最初に設置された加熱ロール9にそれぞれの補強繊維シート材を供給すると同時に、熱可塑性樹脂シート材供給機構607により熱可塑性樹脂シート材を補強繊維シート材の間に連続して挿入し、加熱ロール9により、熱可塑性樹脂シート材の両面に補強繊維シート材を貼り合わせた。このとき、加熱ロール9の温度は約270度に制御を行った。また、補強繊維シート材とともに熱硬化性ポリイミド樹脂フィルム(製品名;ユーピレックスS、厚み;25μm、製造会社;宇部興産株式会社)を離型フィルムとして供給した。(3)ナイロン6樹脂フィルムの両側に補強繊維シート材が付着した当該シートを走行させながら、当該シート材の片面側、つまり片側の補強繊維シート材の表面に、粉体散布装置8を用いて、接着用熱可塑性樹脂材である共重合ポリアミド樹脂パウダーを均一に分散付着させた。分散量は約0.25g/mで、補強繊維束重量の約0.5%の量を付着させた。接着用熱可塑性樹脂材が付着した当該シート材の接触する加熱ロール9‘の加熱温度は120度に制御した。なお、各補強繊維束を開繊し補強繊維シート材に加工する速度、並びに熱可塑性樹脂シート材の両面に補強繊維シート材を貼り合わせる加工速度、そして、共重合ポリアミド樹脂パウダーを分散し付着させる速度は約10m/分で行った。(4)冷却機構606から排出された基材から、離型フィルムを剥がすことにより、熱可塑性樹脂シート材の両面に補強繊維シート材が付着した、図2(a)に示すような熱可塑性樹脂補強シート材を得た。<評価>得られた熱可塑性樹脂補強シート材は、まず、補強繊維シート材を構成する各補強繊維が真直な状態で均一に分散されていた。また、補強繊維シート材はナイロン6樹脂フィルムの両側全面に付着し、補強繊維開繊糸の形態を安定させていた。補強繊維シート材に隙間、繊維集束は生じていなかった。また、当該熱可塑性樹脂補強シート材の補強繊維シート材表面には、接着用熱可塑性樹
脂材である共重合ポリアミド樹脂パウダーが均一に分散して付着していた。さらに、当該熱可塑性樹脂補強シート材は、その端部がカールするなどの現象は全くなく、シートとしての平面性が維持された状態となっていた。
【0137】
[参考例4]参考例2の方法により得られた熱可塑性樹脂補強シート材から、熱可塑性樹脂多層補強シート材を製造した。<使用材料> 補強繊維束、熱可塑性樹脂シート材、そして接着用熱可塑性樹脂材とも参考例2に同じ。<製造工程>(1)参考例2の(1)から(3)の方法により幅310mmの熱可塑性樹脂補強シート材を得た。なお、接着用熱可塑性樹脂材の分散量を約0.4g/mとし、補強繊維束重量の約1%の量を付着させた。(2)図7に示すような製造装置にて、得られた熱可塑性樹脂補強シート材のPEI樹脂フィルム側表面に、粉体散布装置を用いて、接着用熱可塑性樹脂材である共重合ポリアミド樹脂パウダーを均一に分散付着させた。分散量は約0.2g/mで、補強繊維束重量の約0.5%の量であった。(3)得られた熱可塑性樹脂補強シート材を、図12に示すような製造装置にて、45度方向、0度方向、−45度方向、そして90度方向に積層して、幅310mmの積層シート状態にした後、加熱機構にて、共重合ポリアミド樹脂パウダーを溶融させ、積層された熱可塑性樹脂補強シート材を接着一体化させて熱可塑性樹脂多層補強シート材を得た。このとき、加熱ロールの温度は約120度に制御した。また、離型用シート材には離型紙を供給した。<評価> 得られた熱可塑性樹脂多層補強シート材は、[45度/0度/−45度/90度]に繊維補強された多軸補強シート材となり、各層に、補強繊維がシート状に形成され、その片面にPEI樹脂フィルムが付着した状態となっていた。各層の熱可塑性樹脂補強シート材は、補強繊維が真直な状態で均一に分散され、かつ、PEI樹脂フィルムは加熱による収縮がほとんど生じておらず、シート形態を安定させていた。そして、各層の熱可塑性樹脂補強シート材が、共重合ポリアミド樹脂パウダーにより接着一体化しており、ドレープ性及び品質に優れた熱可塑性樹脂多層補強シート材を得た。なお、各熱可塑性樹脂補強シート材に使用された共重合ポリアミド樹脂の量は炭素繊維使用量の約1.5%となった。
【0138】
[参考例5] 参考例4(1)と(2)の方法により得られた熱可塑性樹脂補強シート材から、複数の細幅熱可塑性樹脂補強シート材を得て、熱可塑性樹脂多層補強シート材を製造した。<使用材料> 補強繊維束、熱可塑性樹脂シート材、そして接着用熱可塑性樹脂材とも参考例2に同じ。<製造工程>(1)参考例4(1)と(2)により幅310mmの熱可塑性樹脂補強シート材を得る。(2)得られた熱可塑性樹脂補強シート材を、図13に示すような製造装置にて、幅10mmで連続して切断を行い、31本の細幅熱可塑性樹脂補強シート材を得た。このとき、カッター刃及び切断方式として、熱可塑性樹脂補強シート材の走行に応じて自由回転する丸刃状のカッター刃を設け、カッター刃受けロールとの間で熱可塑性樹脂補強シート材を押し切りする方式を採用した。そして、得られた細幅熱可塑性樹脂補強シート材はテープ状に巻き上げた。なお、広幅形状の熱可塑性樹脂補強シート材を切断する速度は10m/分で行った。(3)テープ状に巻き上げられた細幅熱可塑性樹脂補強シート材31本を、幅方向に隙間が生じないように並べ広幅のシート状態にしながら、図12に示すような製造装置にて、45度方向、0度方向、−45度方向、そして90度方向に積層して、幅310mmの積層シート状態にした後、加熱機構にて、共重合ポリアミド樹脂パウダーを溶融させ、積層された熱可塑性樹脂補強シート材を接着一体化させて熱可塑性樹脂多層補強シート材を得た。このとき、加熱ロールの温度は約120度に制御した。また、離型用シート材には離型紙を供給した。<評価> 得られた熱可塑性樹脂多層補強シート材は、[45度/0度/−45度/90度]に繊維補強された多軸補強シート材となり、各層に、補強繊維がシート状に形成され、その片面にPEI樹脂フィルムが付着した状態となっていた。各層の細幅熱可塑性樹脂補強シート材は、補強繊維が真直な状態で均一に分散され、かつ、PEI樹脂フィルムは加熱による収縮がほとんど生じておらず、シート形態を安定させていた。また、切断された細幅熱可塑性樹脂補強シート材の端部における補強繊維の毛羽立ちも非常に少なく、取り扱いが行い易かった。そして、各層が細幅熱可塑性樹脂補強シート材であるため、ドレープ性が大変優れた熱可塑性樹脂多層補強シート材となった。
【0139】
[参考例6] 参考例4で作成した熱可塑性樹脂多層補強シート材を用いて、凹型の熱可塑性樹脂多層補強成型品を製造した。<製造工程>(1)参考例4で得られた熱可塑性樹脂多層補強シート材、及び参考例4と同様の方法にて作成した積層順序[90度/―45度/0度/45度]の熱可塑性樹脂多層補強シート材から、長手方向(0度方向)に長さ310mmで、それぞれ、3枚切断した後、凹型の成型用金型に、[45度/0度/−45度/90度]、[45度/0度/−45度/90度]、[45度/0度/−45度/90度]、[90度/―45度/0度/45度]、[90度/―45度/0度/45度]、[90度/―45度/0度/45度]の順になるよう積層した。なお、成型用金型は、幅250mm、長さ250mm、そして、深さ20mmの凹型で、曲がり部及び角部にはR加工が成されている。(2)凹型の成型用金型を加熱プレス成型装置にセットした後、凸型の成型用金型を下降させて、0.1MPaで加圧を行いながら、60分の時間をかけて、成型用金型の温度を380度まで昇温させた。(3)昇温後、凸型の成型用金型を下降させ、1MPaの圧力で基材に対し加熱加圧成型を60秒行い、その後、加圧を行った状態にて、成型用金型を徐冷した。冷却時間は、約120分であった。冷却後、凸型の成型用金型を上昇させ、熱可塑性樹脂多層補強成型品を得た。<評価> 厚み約1mm、繊維体積含有率約60%の凹型の熱可塑性樹脂多層補強成型品を得た。成型品表面は、平滑性に優れていた。また、表面における補強繊維の状態は、真直な状態が維持された、均一分散に優れた状態であった。なお、成型品を切断して断面観察を行った結果、補強繊維の真直な状態及び均一な分散状態に優れ、かつ空隙(ボイド)の少ない状態の成型品を得ていることが確認できた。さらに、曲がり部及び角部においても層間剥離がない品質の良い状態にて成型品を得ていることが確認できた。
【符号の説明】
【0140】
1、1A、1B、1C、1D 熱可塑性樹脂補強シート材1b 熱可塑性樹脂補強シート材巻体1H 細幅熱可塑性樹脂補強シート材1HB 細幅熱可塑性樹脂補強シート材ボビン2 補強繊維シート材2f 補強繊維2t 補強繊維束2b 補強繊維束ボビン3 熱可塑性樹脂シート材4 接着用熱可塑性樹脂材料5 熱可塑性樹脂多層補強シート材5b 熱可塑性樹脂多層補強シート材巻体6 一体化用熱可塑性樹脂繊維束7 離型用シート材8 粉体散布装置9、9’ 加熱ロール10 冷却ロール11 反転ロール12 走行レール13 カッター刃13 カッター刃受けロールS 補強繊維開繊糸600 熱可塑性樹脂補強シート材製造装置601 多数本繊維束供給機構602 多数本繊維束開繊機構603 縦方向振動付与機構604 幅方向振動付与機構605 加熱機構606 冷却機構607 熱可塑性樹脂シート材供給機構608 離型用シート材供給機構609 離型用シート材巻き取り機構610 補強シート材巻き取り機構1000 シート方式熱可塑性樹脂多層補強シート材製造装置1001 α度方向シート材供給機構1002 90度方向シート材供給機構1003 ―α度方向シート材供給機構1004 0度方向シート材供給機構1005 加熱接着式一体化機構1006 離型用シート材供給機構1007 離型用シート材巻き取り機構1008 多層補強シート材巻き取り機構1200 細幅シート方式熱可塑性樹脂多層補強シート材製造装置1201 α度方向繊維束供給機構1202 90度方向繊維束供給機構1203 ―α度方向繊維束供給機構1204 0度方向繊維束供給機構1205 ステッチ式一体化機構1206 多層補強シート材巻き取り機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の補強繊維が所定方向に引き揃えられてシート状に形成された補強繊維シート材と、当該補強繊維シート材に付着されたマトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂シート材と、当該熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化するとともに前記補強繊維シート材及び前記熱可塑性樹脂シート材の少なくともどちらか一方の片面又は両面に付着された接着用熱可塑性樹脂材とを備え、前記熱可塑性樹脂シート材の両面に前記補強繊維シート材が付着していることを特徴とする熱可塑性樹脂補強シート材。
【請求項2】
前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材が前記接着用熱可塑性樹脂材により接着して、前記補強繊維シート材に前記熱可塑樹脂シート材が付着されていることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂補強シート材。
【請求項3】
前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材が前記接着用熱可塑性樹脂材により接着されている熱可塑性樹脂補強シート材であって、かつ、当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に前記接着用熱可塑性樹脂材が付着されている熱可塑性樹脂補強シート材において、前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材を接着させる前記接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたりの付着量が、当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に付着されている前記接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたりの付着量と異なることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性樹脂補強シート材。
【請求項4】
前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材が前記接着用熱可塑性樹脂材により接着されている熱可塑性樹脂補強シート材であって、かつ、当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に前記接着用熱可塑性樹脂材が付着されている熱可塑性樹脂補強シート材において、前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材を接着させる前記接着用熱可塑性樹脂材が、当該熱可塑性樹脂補強シート材の片面又は両面に付着されている前記接着用熱可塑性樹脂材とは異なる樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性樹脂補強シート材。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂補強シート材が前記接着用熱可塑性樹脂材によって離型用シート材に付着し、前記熱可塑性樹脂補強シート材に離型用シート材が一体化していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂補強シート材。
【請求項6】
前記補強繊維シート材が、前記補強繊維シート材の断面厚さが前記補強繊維の直径の10倍以内に設定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂補強シート材。
【請求項7】
前記接着用熱可塑性樹脂材の単位面積あたり付着量が、前記補強繊維シート材の単位面積あたり重量の3%以内であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂補強シート材。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂補強シート材が複数枚積層して形成され、一体化されていることを特徴とする熱可塑性樹脂多層補強シート材。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂補強シート材は、前記補強繊維シート材の引き揃えられた方向がそれぞれ多軸となるように積層されていることを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性樹脂多層補強シート材。
【請求項10】
前記接着用熱可塑性樹脂材を加熱溶融又は加熱軟化させて、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を接着一体化していることを特徴とする請求項8又は9に記載の熱可塑性樹脂多層補強シート材。
【請求項11】
前記接着用熱可塑性樹脂材を部分的に加熱溶融又は加熱軟化させて、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を部分的に接着一体化していることを特徴とする請求項8又は9に記載の熱可塑性樹脂多層補強シート材。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂シート材と同一材料である一体化用熱可塑性樹脂繊維束により、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材をステッチして縫合一体化していることを特徴とする請求項8又は9に記載の熱可塑性樹脂多層補強シート材。
【請求項13】
複数の補強繊維を所定方向に引き揃えてシート状の補強繊維シート材を作成するシート形成工程と、
前記補強繊維シート材をマトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂シート材の両面に付着させた後、前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材とが付着した当該シート材の片面又は両面に、前記熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化する接着用熱可塑性樹脂材を付着させる付着工程と、
を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法。
【請求項14】
複数の補強繊維を所定方向に引き揃えてシート状の補強繊維シート材を作成するシート形成工程と、
前記補強繊維シート材及びマトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂シート材の少なくともどちらか一方の片面又は両面に、前記熱可塑性樹脂シート材の溶融温度より低い温度で溶融又は軟化する接着用熱可塑性樹脂材を付着させる付着工程と、
前記補強繊維シート材を前記熱可塑性樹脂シート材の両面に両シート材の層間に前記接着用熱可塑性樹脂材が存在するように重ね合わせて、前記熱可塑性樹脂シート材が溶融する温度より低い温度で加熱又は加熱加圧し、前記接着用熱可塑性樹脂材を溶融又は軟化させて前記補強繊維シート材と前記熱可塑性樹脂シート材を付着させる貼り合わせ工程と、
を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法。
【請求項15】
前記シート形成工程では、前記補強繊維シート材として、複数の補強繊維を所定方向に引き揃えるとともにその断面厚さを前記補強繊維の直径の10倍以内としたシート状に形成することを特徴とする請求項13又は14に記載の熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法。
【請求項16】
前記シート形成工程では、前記補強繊維シート材として、長繊維系の補強繊維が複数本集束した補強繊維束を連続して幅方向に拡幅させ、幅広く薄い状態となった開繊糸を用いて形成することを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載の熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法。
【請求項17】
前記補強繊維シート材及び離型用シート材の層間に前記接着用熱可塑性樹脂材が存在するように重ね合わせて、前記熱可塑性樹脂シート材が溶融する温度より低い温度で加熱又は加熱加圧し、前記接着用熱可塑性樹脂材を溶融又は軟化させて、前記補強繊維シート材及び離型用シート材を付着させることを特徴とする請求項13から16のいずれかに記載の熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法。
【請求項18】
前記熱可塑性樹脂補強シート材に離型用シート材を両シート材の層間に前記接着用熱可塑性樹脂材が存在するように重ね合わせて、前記熱可塑性樹脂シート材が溶融する温度より低い温度で加熱又は加熱加圧し、前記接着用熱可塑性樹脂材を溶融又は軟化させて前記熱可塑性樹脂補強シート材と前記離型用シート材を付着させることを特徴とする請求項13から16のいずれかに記載の熱可塑性樹脂補強シート材の製造方法。
【請求項19】
請求項1から7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂補強シート材を厚さ方向に複数枚重ね合わせる積層工程と、
複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を一体化する一体化工程と、
を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造方法。
【請求項20】
前記積層工程では、前記熱可塑性樹脂補強シート材を、補強繊維の引き揃えられた方向が多軸となるよう複数枚重ね合わせ積層することを特徴とする請求項19に記載の熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造方法。
【請求項21】
前記一体化工程では、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を、前記接着用熱可塑性樹脂材が溶融又は軟化する温度で加熱又は加熱加圧して、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材の各層間を前記接着用熱可塑性樹脂材によって接着して一体化することを特徴とする請求項19又は20に記載の熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造方法。
【請求項22】
前記一体化工程では、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材を、前記接着用熱可塑性樹脂材が溶融又は軟化する温度で部分的に加熱又は加熱加圧して、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材の各層間を前記接着用熱可塑性樹脂材によって部分的に接着して一体化することを特徴とする請求項19又は20に記載の熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造方法。
【請求項23】
前記一体化工程では、前記熱可塑性樹脂シート材と同一材料である一体化用熱可塑性樹脂繊維束により、複数枚積層された前記熱可塑性樹脂補強シート材をステッチして縫合一体化することを特徴とする請求項19又は20に記載の熱可塑性樹脂多層補強シート材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−254632(P2012−254632A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156049(P2012−156049)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【分割の表示】特願2008−30058(P2008−30058)の分割
【原出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【Fターム(参考)】