説明

熱活性接着剤及び熱活性接着フィルム

【課題】部材にダメージを与えない、低温プレスでの接着性に優れた、熱活性接着剤及び熱活性接着フィルムを提供する。
【解決手段】数平均分子量:1万〜10万、ガラス転移点(Tg):−10〜50℃のポリエステルを50〜80質量%、スチレンブロック共重合体を5〜30質量%、フェノール樹脂を5〜30質量%含む、熱活性接着剤。フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂又はレゾール型フェノール樹脂であり、前記ノボラック型フェノール樹脂が、低分子量成分を1〜20質量%含む、前記の熱活性接着剤。低分子量成分の重量平均分子量が100〜300である、前記の熱活性接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱活性接着剤及び熱活性接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノートPC、携帯電話、SDカード等の部材固定用として、各種接着剤が使用されており、通常、フィルム状に形成した後、部材の形状に裁断(打ち抜く)され、仮プレス、セパレータ剥離、本プレス等の工程により部材に接着する。そのため、接着剤の特性としては、低粘着性、高接着性、打ち抜き加工性、貯蔵安定性等が求められている。
例えば、粘着性ポリマーを主成分とする接着剤は、感圧性接着剤(粘着剤)とも呼ばれ、圧力を加えるだけで容易かつ強力に接着することができる。
しかしながら、このような接着剤は、粘着性があるので、打ち抜き加工等の加工性が悪く、また部材との位置合わせが困難である。
【0003】
一方、接着剤としては、加熱により粘着性を発現または増大させる、いわゆる熱活性接着剤も知られている。熱活性接着剤は、ホットメルトフィルム接着剤や、感熱型接着剤とも呼ばれる。また、その接着力を高めるために、粘着性ポリマーと熱可塑性樹脂とを組み合わせることも知られている。
例えば、熱活性接着剤は、接着力を高めるために、分子内にヒドロキシル基とフェニル基とを有する粘着性ポリマーを使用する、熱活性接着剤組成物等が開示されている(例えば特許文献1参照)。
また、クレジットカード、IDカードまたはスマートカード等に使用するため、高い可撓性を有する熱活性化性接着剤等が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4601089号公報
【特許文献2】特表2006−522857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱活性接着剤は、プレス等により、電子部品等の部材を接着するが、低温プレス(80℃〜120℃)では十分な接着力が発現しない。また、高温プレス(120℃〜200℃)では、接着力は発現するが、部材の歪みや反りが発生したり、あるいは、部材の装飾が剥がれる等、部材にダメージを与えることがある。
本発明の目的は、上記課題を解決し、部材にダメージを与えない、低温プレスでの接着性に優れた、熱活性接着剤及び熱活性接着フィルムを提供することである。
なお、本明細書に記載する熱プレス温度は、一般的に、被着体A/熱活性接着フィルム/被着体Bの構成にて熱プレスを5秒間実施した際に、熱活性接着フィルムが到達する最大温度である。そのため、所定の熱プレス温度にて熱プレス作業を行う場合は、プレス機の設定温度よりも高い温度(+10℃〜+40℃)に設定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
(1) 数平均分子量:1万〜10万、ガラス転移点(Tg):−10〜50℃のポリエステルを50〜80質量%、スチレンブロック共重合体を5〜30質量%、フェノール樹脂を5〜30質量%含む、熱活性接着剤。
(2) フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂又はレゾール型フェノール樹脂であり、前記ノボラック型フェノール樹脂が、低分子量成分を1〜20質量%含む、(1)に記載の熱活性接着剤。
(3) 低分子量成分の重量平均分子量が100〜300である、(2)に記載の熱活性接着剤。
(4) ポリエステルの熱溶融温度が、100〜150℃である、(1)〜(3)いずれかに記載の熱活性接着剤。
(5) さらにイソシアネートを含む、(1)〜(4)いずれかに記載の熱活性接着剤。
(6) (1)〜(5)いずれかに記載の熱活性接着剤からなる熱活性接着フィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、部材にダメージを与えない、低温プレスでの接着性に優れた、熱活性接着剤及び熱活性接着フィルムを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、数平均分子量:1万〜10万、ガラス転移点(Tg):−10〜50℃のポリエステルを50〜80質量%、スチレンブロック共重合体を5〜30質量%、フェノール樹脂を5〜30質量%含む、熱活性接着剤である。
また、数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、測定することができ、ガラス転移点(Tg)は、動的粘弾性測定(DMA)、示差走査熱量測定(DSC)、熱機械分析(TMA)等により、測定することができる。
本発明に使用される、ポリエステルの数平均分子量は、1万〜10万であり、好ましくは1万〜7万であり、より好ましくは2万〜5万である。数平均分子量が、1万未満では、接着性や耐熱性が低下するおそれがあり、また、10万を超えると、低温プレス後の接着性が低下したり、他の成分との相溶性が低下するおそれがある。
【0009】
また、Tgは、−10〜50℃であり、好ましくは−5〜35℃であり、より好ましくは0〜30℃である。Tgが、−10〜50℃に範囲にあることにより、常温(25℃)において高い接着力が得られる。前記ポリエステルの含有量は、50〜80質量%であり、好ましくは50〜75質量%であり、より好ましくは55〜75質量%である。含有量が、50質量%未満では、耐熱性が低下するおそれがあり、また、80質量%を超えると、接着性が低下するおそれがある。
なお、Tgは、示差走査熱量測定(DSC)、熱機械分析(TMA)、動的粘弾性測定(DMA)により測定することができるが、サンプルがポリエステルを含んだ熱活性接着剤及び熱活性接着フィルムの場合、それらから単離したポリエステルのDSC分析等を行うことにより測定することができる。
【0010】
前記ポリエステルの熱溶融温度が、100〜150℃であることが好ましい。熱溶融温度が、100〜150℃に範囲にあることにより、熱活性接着剤の熱活性温度の調整が容易であり、低温活性である接着剤を作製できる。なお、熱活性接着剤の溶融温度は、100〜150℃が好ましい。熱活性接着剤の溶融温度が、150℃を超えると、低温プレスの場合、接着性が低下するおそれがある。また、ポリエステルの熱溶融温度は、動的粘弾性測定(DMA)等により測定することができる。具体的には、ポリエステルの熱溶融温度は、昇温(昇温スピード;5℃/分)に伴い減少する貯蔵弾性率が1kPaに達した際の温度と定義することができる。
市販の前記ポリエステルとしては、例えば、バイロン300、バイロン600、バイロン670(以上、東洋紡績株式会社製商品名)、エリエーテルUE3230、エリエーテル3231、エリエーテルUE3500(以上、ユニチカ株式会社製商品名)等が挙げられる。
また、前記ポリエステルは1種類でも、あるいは、2種類以上併用してもよい。なお、2種類以上併用する場合、例えば、Tgが30〜50℃のポリエステルAと、Tgが0〜20℃のポリエステルBとを、質量比で、ポリエステルA/ポリエステルB=10/90〜50/50で配合することが、接着性と耐熱性の両方を維持する点で好ましい。
【0011】
本発明の熱活性接着剤は、スチレンブロック共重合体を5〜30質量%含む。また、前記スチレンブロック共重合体の含有量は、好ましくは10〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。スチレンブロック共重合体の含有量が、5〜30質量%の範囲にある熱活性接着剤を使用し作製した熱活性接着フィルムは、打ち抜き刃に対する接着フィルムの付着等が少なく、打ち抜き加工性に優れている。
本発明で用いるスチレンブロック共重合体は、特に限定されないが、例えば、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。
【0012】
また、前記スチレンブロック共重合体のMFR(メルトフローレート)は、3〜10g/10分が好ましい。MFRが、3g/10分未満の場合、他の成分との相溶性が低下するおそれがある。なお、スチレンブロック共重合体において、スチレン/ゴムの質量比率は、スチレン/ゴム=20/80〜50/50であることが好ましい。スチレンの比率が20質量%未満の場合、耐熱性が低下するおそれがある。なお、MFRは押出し形プラストメータ(JIS K6760、JIS K7210に準拠)により測定できる。
市販の前記スチレンブロック共重合体としては、例えば、クレイトンD−1102、クレイトンD−KX408、クレイトンD−1107、クレイトンG1652(以上、クレイトンポリマージャパン株式会社商品名)、セプトン2007、セプトン8004(以上、株式会社クラレ製商品名)等が挙げられる。
【0013】
また、本発明の熱活性接着剤は、粘着付与剤としてフェノール樹脂を5〜30質量%含む。また、前記フェノール樹脂の含有量は、好ましくは5〜25質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。含有量が、5〜30質量%に範囲にあることにより、各種プラスチック(ABS、PC−ABS、PC、PMMA)や各種金属(SUS、AL)への接着性向上の効果がある。
一般的に、フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂又はレゾール型フェノール樹脂である。また、前記ノボラック型フェノール樹脂は、低分子量成分を、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは10〜20質量%含む。また、前記低分子量成分の重量平均分子量は、好ましくは100〜300である。また、フェノール樹脂は1種類でも、あるいは、2種類以上使用してもよい。前記ノボラック型フェノール樹脂は、低分子量成分を、1〜20質量%含むことにより、接着性向上や貯蔵安定性向上等の効果がある。特に、低温プレスでの接着性に優れており、例えば、80〜120℃、0.05〜2.0MPa、2〜10秒のプレス条件でも、接着性が低下しない。なお、ノボラック型フェノール樹脂中の低分子量成分の重量平均分子量及び含有量は、GPC等により、測定することができる。
【0014】
市販の前記フェノール樹脂としては、例えば、レジトップPS2768、レジトップPS2980(レゾール型フェノール樹脂、群栄化学工業株式会社製商品名)、ショウノールBRG557、ショウノールBRG555、ショウノールBRP5904(以上、ノボラック型フェノール樹脂、昭和電工株式会社製商品名)等が挙げられる。特に、低分子量成分を含む、BRG555(重量平均分子量100〜300の低分子量成分を15質量%含む)、BRG557(重量平均分子量100〜300の低分子量成分を5質量%含む)が好ましい。前記ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量100〜300の低分子量成分の含有量は、例えば、ノボラック型フェノール樹脂のGPCのチャートの面積から積算して求めることができる。
【0015】
また、本発明の熱活性接着剤は、粘着付与剤として、エポキシ樹脂、ロジンおよびロジン誘導体、ポリテルペン、クマロンインデン、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、水素添加樹脂および炭化水素樹脂、例えば、α−ピネン系樹脂、β−ピネン系樹脂、リモネン系樹脂、ピペリレン系炭化水素樹脂、ロジンのエステル、ポリテルペン、スチレン−無水マレイン酸等を含んでいてもよい。
【0016】
また、本発明の熱活性接着剤は、架橋剤及び鎖延長剤としてイソシアネートを含むことが好ましい。また、イソシアネートの含有量は、前記ポリエステル100質量部に対し、0.5〜3質量部が好ましく、1〜2.5質量部がより好ましい。含有量が、0.5〜3質量部の範囲内にあることにより、接着性(割裂接着強さ、せん断接着強さ)や耐熱性(割裂クリープ、せん断クリープ)の向上等の効果がある。
本発明に使用されるイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものが好ましい。また、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、またはこれらの混合物が好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられる。また、脂肪族イソシアネートとしては、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。なお、架橋剤として、さらに、他のイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、ポリ(メタ)アクリレート化合物等を配合してもよい。
【0017】
また、本発明の熱活性接着フィルムにおいて、残留溶剤率は、0.2〜1.5質量%であることが好ましく、0.5〜1.3質量%であることがより好ましい。残留溶剤率が、0.2〜1.5質量%の範囲内にあることにより、接着性(割裂接着強さ、せん断接着強さ)や耐熱性(割裂クリープ、せん断クリープ)の向上等の効果がある。
【0018】
本発明の熱活性接着剤は、必要に応じ、従来公知の添加剤を加えることができる。たとえば、粘度調製剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、防黴剤、ガラスビーズ等の無機粒子、粘着性ポリマーまたは非粘着性のゴム系ポリマーからなる弾性微小球等である。
本発明の熱活性接着剤は、各成分を、通常の混合操作により、例えば、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等の混合装置で混合し、各成分を均一に溶解または分散させ、調製する。
【0019】
本発明の熱活性接着剤を、基材上に塗布、乾燥し、熱活性接着剤からなる熱活性接着フィルムを形成することができる。塗布手段には、コンマコーター、ナイフコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の公知の手段が使用できる。上記基材としては、ライナー等の剥離性を有するもの、接着すべき被着体、熱活性接着フィルムの支持体等が使用できる。ライナー等の剥離性を有するものを用いた場合、熱活性接着剤からなる熱活性接着フィルムを容易に単離して得ることができる。
また、熱活性接着フィルムを形成する際の乾燥は、通常60〜180℃の温度にて行われる。乾燥時間は、通常、数十秒から数分である。熱活性接着フィルムの厚みは、通常、10〜1000μm、好ましくは20〜500μm、より好ましくは50〜100μmである。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の好適な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
(実施例1)
最初に、メチルエチルケトンとトルエンの50/50質量比の混合溶剤中に、バイロン300(ポリエステル樹脂;東洋紡績株式会社製商品名、数平均分子量:2.3万、Tg:7℃、熱溶融温度:130℃)を70質量部加え溶解した。次に、上記溶液にショウノールBRG555(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名、重量平均分子量100〜300の低分子量成分を15質量%含む)を15質量部、クレイトンD1102(スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体;クレイトンポリマージャパン株式会社製商品名、MFR;6g/10分、スチレン/ゴム=30/70(質量比))を15質量部加え、溶解させた。さらに、上記溶液にミリオネートMT(ジフェニルメタンジイソシアネート;日本ポリウレタン工業株式会社製商品名)を、1質量部加え、攪拌し、樹脂固形分が45質量%の熱活性接着剤を作製した。
バーコータを用いて、PETフィルムにシリコン離型剤を処方したセパレータに、乾燥後の接着剤層の厚みが100μmとなるように、前記熱活性接着剤を塗工、乾燥し、熱活性接着フィルムを作製した。
【0022】
(実施例2)
最初に、メチルエチルケトンとトルエンの50/50質量比の混合溶剤中に、バイロン300(ポリエステル樹脂;東洋紡績株式会社製商品名)を50質量部、バイロン600(ポリエステル樹脂;東洋紡績株式会社製商品名、数平均分子量:1.6万、Tg:47℃、熱溶融温度:100℃)を20質量部加え溶解した。次に、上記溶液にショウノールBRG555(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を5質量部、ショウノールBRP5904(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を5質量部、ショウノールCKM937(レゾール型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を5質量部、クレイトンD−KX408(SBS;クレイトンポリマージャパン株式会社製商品名、MFR;4.5g/10分、スチレン/ゴム=43/57(質量比))を15質量部加え、溶解させた。さらに、上記溶液にミリオネートMT(ジフェニルメタンジイソシアネート;日本ポリウレタン工業株式会社製商品名)を、1質量部加え、攪拌し、樹脂固形分が45質量%の熱活性接着剤を作製した。
実施例1と同じようにして熱活性接着フィルムを作製した。
【0023】
(実施例3)
最初に、メチルエチルケトンとトルエンの50/50質量比の混合溶剤中に、エリエーテル3230(ポリエステル樹脂;ユニチカ株式会社製商品名、数平均分子量:2万、Tg:3℃、熱溶融温度:125℃)を60質量部加え溶解した。次に、上記溶液にショウノールBRG555(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を15質量部、ショウノールCKM937(レゾール型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を5質量部、クレイトンG1652(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体;クレイトンポリマージャパン株式会社製商品名、MFR;10g/10分、スチレン/ゴム=29/71(質量比))を20質量部加え、溶解させた。さらに、上記溶液にコロネート−100(トルイレンジイソシアネート;日本ポリウレタン工業株式会社製商品名)を1質量部加え、攪拌し、樹脂固形分が45質量%の熱活性接着剤を作製した。
実施例1と同じようにして熱活性接着フィルムを作製した。
【0024】
(実施例4)
最初に、メチルエチルケトンとトルエンの50/50質量比の混合溶剤中に、バイロン300(ポリエステル樹脂;東洋紡績株式会社製商品名)を70質量部加え溶解した。次に、上記溶液にショウノールBRG555(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を10質量部、ショウノールBRP5904(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を5質量部、クレイトンD1102(SBS;クレイトンポリマージャパン株式会社製商品名)を15質量部加え、溶解させた。さらに、上記溶液にコロネートL55E(多官能イソシアネート;日本ポリウレタン工業株式会社製商品名)を、2質量部加え、攪拌し、樹脂固形分が45質量%の熱活性接着剤を作製した。
実施例1と同じようにして熱活性接着フィルムを作製した。
【0025】
(比較例1)
最初に、メチルエチルケトンとトルエンの50/50質量比の混合溶剤中に、バイロン220(ポリエステル樹脂;東洋紡績株式会社製商品名、数平均分子量:3000、Tg:53℃)を70質量部加え溶解した。次に、上記溶液にショウノールBRG555(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を15質量部、クレイトンD1102(SBS;クレイトンポリマージャパン株式会社製商品名)を15質量部加え、溶解させた。さらに、上記溶液にミリオネートMT(MDI;日本ポリウレタン工業株式会社製商品名)を、1質量部加え、攪拌し、樹脂固形分が45質量%の熱活性接着剤を作製した。
実施例1と同じようにして熱活性接着フィルムを作製した。
【0026】
(比較例2)
最初に、メチルエチルケトンとトルエンの50/50質量比の混合溶剤中に、バイロン300(ポリエステル樹脂;東洋紡績株式会社製商品名)を45質量部加え溶解した。次に、上記溶液にショウノールBRG555(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を40質量部、クレイトンD1102(SBS;クレイトンポリマージャパン株式会社製商品名)を15質量部加え、溶解させた。さらに、上記溶液にミリオネートMT(MDI;日本ポリウレタン工業株式会社製商品名)を、1質量部加え、攪拌し、樹脂固形分が45質量%の熱活性接着剤を作製した。
実施例1と同じようにして熱活性接着フィルムを作製した。
【0027】
(比較例3)
最初に、メチルエチルケトンとトルエンの50/50質量比の混合溶剤中に、バイロン300(ポリエステル樹脂;東洋紡績株式会社製商品名)を45質量部加え溶解した。次に、上記溶液にショウノールBRG555(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を5質量部、ショウノールBRP5904(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を5質量部、ショウノールCKM937(レゾール型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を5質量部、クレイトンD1102(SBS;クレイトンポリマージャパン株式会社製商品名)を40質量部加え、溶解させた。さらに、上記溶液にミリオネートMT(MDI;日本ポリウレタン工業株式会社製商品名)を1質量部加え、攪拌し、樹脂固形分が45質量%の熱活性接着剤を作製した。
実施例1と同じようにして熱活性接着フィルムを作製した。
【0028】
(比較例4)
最初に、メチルエチルケトンとトルエンの50/50質量比の混合溶剤中に、バイロン300(ポリエステル樹脂;東洋紡績株式会社製商品名)を85質量部加え溶解した。次に、上記溶液にショウノールBRG555(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)を15質量部加え、溶解させた。さらに、上記溶液にコロネート−100(TDI;日本ポリウレタン工業株式会社製商品名)を、1質量部加え、攪拌し、樹脂固形分が45質量%の熱活性接着剤を作製した。
実施例1と同じようにして熱活性接着フィルムを作製した。
【0029】
(1)接着剤液の相容性
作製した熱活性接着剤を常温(25℃)にて5時間放置し、放置した接着剤液の相分離状態を確認した。目視確認において、相分離が確認されなかった場合「○」、相分離が確認された場合「×」と表記した。
(2)割裂接着強さ
25mm×40mmサイズにカットした熱活性接着フィルム(セパレータ付きの状態)を、ステンレス板(SUS430、厚み;0.4mm)の上に接着面を重ねるように置き、100℃、98kPa、5秒の条件にて熱プレスを行った。その後セパレータを剥がし、熱活性接着フィルムの付いたステンレス板を、ABS板(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂板、厚み;2mm)の上に接着面を重ねるように置き、100℃、98kPa、5秒の条件にて熱プレスを行った。
上記貼り合わせ品(ABS/接着フィルム/SUS)のABSを固定した状態で、ステンレス板を90°のはく離角度で、50mm/分の速度で引き剥がした際の強度を測定した。割裂接着強さが50N/25mm以上である場合、手動による剥れが不可となるため、電子部材固定用途として使用する場合、50N/25mm以上が必要となる。
(3)割裂クリープ
25mm×40mmサイズにカットした熱活性接着フィルム(セパレータ付きの状態)を、ステンレス板(SUS430、厚み;0.4mm)の上に接着面を重ねるように置き、120℃、98kPa、5秒の条件にて熱プレスを行った。その後セパレータを剥がし、熱活性接着フィルムの付いたステンレス板を、ABS板(厚み;2mm)の上に接着面を重ねるように置き、150℃、98kPa、5秒の条件にて熱プレスを行った。
上記貼り合わせ品(ABS/接着フィルム/SUS)を、80℃の乾燥機中で、ABSを固定した状態で、ステンレス板に500gのおもりを付着させ、落下時間を測定した。電子部材固定用途として使用する場合、落下時間10分以上が必要となる。
(4)貯蔵安定性
熱活性接着フィルムを40℃の乾燥機中で1ヶ月間保管した後、前記(2)の試験を実施した。40℃乾燥機中で1ヶ月保管した熱活性接着フィルムについて、得られた割裂接着強さが、前記(2)で得られた割裂接着強さ(40℃の乾燥機中で1ヶ月間保管前)の、80%以上であった場合「○」、80%未満であった場合「×」と表記した。
(5)打抜加工性
熱活性接着フィルムに対して、1号ダンベルにて打抜きを行った。打ち抜き後の外観を観測した。ダンベルの刃に接着フィルムが付着せず、1号ダンベルの形に切り離せた場合「○」、ダンベルの刃に接着フィルムが付着する等の問題が起こり、1号ダンベルの形に切り離せなかった場合「×」と表記した。
【0030】
上記の実施例1〜4、比較例1〜4で得られた熱活性接着フィルムの割裂接着強さ、割裂クリープ、貯蔵安定性、打抜加工性の評価結果を、配合とまとめて表1及び表2に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
表2に示すように、数平均分子量が1万未満(3000)、ガラス転移点(Tg)が50℃を超える(53℃)、ポリエステルを使用した、比較例1は、低温プレス(100℃)による割裂接着強さが小さく、また、ポリエステルの含有量が50質量%未満(45質量%)の比較例2は、割裂接着強さが小さく、割裂クリープに劣り、また、ポリエステルの含有量が50質量%未満(45質量%)であり、かつ、スチレンブロック共重合体の含有量が30質量%を超える(45質量%)、比較例3は、割裂接着強さが小さく、接着剤液の相容性に劣ることがわかる。また、ポリエステルの含有量が80質量%を超え(85質量%)、かつ、スチレンブロック共重合体を含まない、比較例4は、割裂クリープと打抜加工性に劣ることがわかる。
それに対し、表1に示すように、本発明の実施例1〜4は、いずれも、低温プレス(100℃)において割裂接着強さが大きく(50N/25mm以上)、打抜加工性に優れ、また、割裂クリープにおいても特に問題ないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量:1万〜10万、ガラス転移点(Tg):−10〜50℃のポリエステルを50〜80質量%、スチレンブロック共重合体を5〜30質量%、フェノール樹脂を5〜30質量%含む、熱活性接着剤。
【請求項2】
フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂又はレゾール型フェノール樹脂であり、前記ノボラック型フェノール樹脂が、低分子量成分を1〜20質量%含む、請求項1に記載の熱活性接着剤。
【請求項3】
低分子量成分の重量平均分子量が、100〜300である、請求項2に記載の熱活性接着剤。
【請求項4】
ポリエステルの熱溶融温度が、100〜150℃である、請求項1〜3いずれかに記載の熱活性接着剤。
【請求項5】
さらにイソシアネートを含む、請求項1〜4いずれかに記載の熱活性接着剤。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の熱活性接着剤からなる熱活性接着フィルム。

【公開番号】特開2012−207076(P2012−207076A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72138(P2011−72138)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】