説明

熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いたプリント配線基板の製造方法

【課題】プリント配線基板の穴部や凹部に充填し、熱硬化した後に行う不要部分の除去を、物理的ではなく化学的な処理により容易に除去可能な熱硬化性樹脂組成物、それを用いたプリント配線基板の製造方法及びプリント配線板を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物は、(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)酸化剤により分解され易いウレタン結合を有する樹脂、特にカルボキシル基又は酸無水物基を有し、かつ、数平均分子量700〜6,000の線状炭化水素構造を有するポリイミド樹脂、(C)エポキシ硬化剤、及び(D)フィラーを必須成分として含有する。この組成物をプリント配線基板1のめっきスルーホール2等の穴部及び導体回路層3間の凹部に充填し、加熱硬化した後、酸化剤処理を施して上記硬化した組成物層の表面部分を除去して導体回路パターンを露出させると共に基板の表面を平坦にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関し、特に、多層基板や両面基板等のプリント配線基板におけるスルーホールやバイアホール等の永久穴埋め用組成物等として有用な液状の熱硬化性樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、該組成物を用いてスルーホールやバイアホール等の永久穴埋めを行なったプリント配線基板及びその製造方法に関する。
なお、本明細書において、「穴部」とは、プリント配線板の製造過程で形成されるスルーホールやバイアホール等を総称する用語である。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板のパターンの細線化と実装面積の縮小化が進んでおり、さらにプリント配線板を備える機器の小型化・高機能化に対応すべく、プリント配線板のさらなる軽薄短小化が望まれている。そのため、プリント配線板は、コア基板の上下に樹脂絶縁層を形成し、必要な導体回路を形成してからさらに樹脂絶縁層を形成し、導体回路を形成していく方式のビルドアップ工法へ、また実装部品はBGA(ボール・グリッド・アレイ)、LGA(ランド・グリッド・アレイ)等のエリアアレイ型への進化が進んでいる。最近では、さらなる高密度化のために、樹脂を充填した穴部や凹部の上部にパッドを形成し、部品実装をしたり、樹脂を充填した穴部や凹部の上部にビアを形成する仕様へと移行している。このような状況下において、穴部や凹部に充填するための充填性、硬化物特性に加えて、樹脂を充填した穴部や凹部上に形成される蓋めっきの密着性に優れた永久穴埋め方法の開発が望まれている。
【0003】
一般に、プリント配線板の永久穴埋め用組成物としては、その硬化物が機械的、電気的、化学的性質に優れ、接着性も良好であることから、熱硬化型のエポキシ樹脂組成物が広く用いられている。また、かかるエポキシ樹脂組成物には、硬化物の熱膨張を低減するために無機フィラーが多く含まれている。
このようなエポキシ樹脂組成物を用いるプリント配線板の永久穴埋め加工は、一般に、エポキシ樹脂組成物をプリント配線板の穴部に充填する工程、該充填された組成物を加熱して研磨可能な状態に予備硬化する工程、予備硬化した組成物の穴部表面からはみ出している部分を研磨・除去する工程、及び予備硬化した組成物をさらに加熱して本硬化する工程からなる(特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特許第3261314号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】国際公開WO 02/44274A1(請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、従来のプリント配線板の永久穴埋め加工では、スルーホールやビアホール等の穴部や、導体回路間等の凹部に熱硬化性樹脂組成物を充填し、予備硬化後にベルトサンダーやバフ研磨等の物理研磨により不要部分の除去を行なっていた。そのため、研磨時に基板自体の伸びが起こり、基板設計時の仕様との不整合が生じ、位置合わせ精度に問題を生じるという不具合があった。また、物理研磨の場合には、導体回路間等の凹部やスルーホール等の穴部の硬化樹脂層が研磨され易いために、導体回路端縁において段差を生じ易く、基板表面を平坦にすることが困難である。このように基板表面の充分な平坦性が確保されない場合には、その後の工程で形成されるめっき層や樹脂絶縁層の剥離の原因となる恐れがあった。
【0005】
従って、本発明の目的は、プリント配線基板のスルーホールやビアホール等の穴部や、導体回路間等の凹部に熱硬化性樹脂組成物を充填し、熱硬化した後に行う不要部分の除去を、物理的ではなく化学的な処理、具体的には酸化剤処理により、容易に除去可能な熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、このような化学的な処理により不要部分の除去及び基板表面の平坦化を行うことができ、基板自体の伸びを発生することなく、位置合わせ精度の高い、高信頼性のプリント配線基板を作業性、生産性よく製造できる方法、及びそれによって製造された高信頼性のプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明によれば、プリント配線基板の穴部及び凹部に充填するための熱硬化性樹脂組成物であって、(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)酸化剤により分解され易いウレタン結合を有する樹脂、(C)エポキシ硬化剤、及び(D)フィラーを必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0007】
好適な態様においては、前記樹脂(B)は、カルボキシル基又は酸無水物基を有し、かつ、数平均分子量700〜6,000の線状炭化水素構造を有するポリイミド樹脂であり、好ましくは、数平均分子量700〜4,500の線状炭化水素構造と、ウレタン結合と、イミド環と、イソシアヌレート環とを有するポリイミド樹脂である。特に、前記樹脂(B)は、後述する一般式(1)で示される構造単位と一般式(2)で示される構造単位を有し、かつ、後述する一般式(3)、(4)及び(5)で示される末端構造のいずれか1種以上を有するポリイミド樹脂であることが好ましい。
また、別の好適な態様においては、前記フィラー(D)は、酸可溶性の無機フィラーである。また、前記エポキシ硬化剤(C)は、イミダゾール系化合物である。
【0008】
また、本発明によれば、(a)穴部を含む導体回路パターンを形成した配線基板の表面に、前記熱硬化性樹脂組成物を塗布して上記穴部及び導体回路パターン間の凹部に充填する工程、(b)該充填された組成物を加熱して硬化する工程、(c)硬化した組成物の表面にアルカリ溶液による膨潤、酸化剤による処理及び酸処理の一連の化学的処理を施して上記硬化した組成物層の表面部分を除去して導体回路パターンを露出させると共に基板の表面を平坦にする工程を含むことを特徴とするプリント配線基板の製造方法が提供される。
さらに本発明によれば、基板上に、層間絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、かつ充填物が充填された穴部を有するプリント配線板において、上記穴部に充填された充填物が、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とするプリント配線板も提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物に、酸化剤により分解され易いウレタン結合を有する樹脂が添加されたものであるため、プリント配線基板のスルーホールやビアホール等の穴部や、導体回路間等の凹部に熱硬化性樹脂組成物を充填し、熱硬化した後に行う不要部分の除去を、物理的ではなく化学的な処理、具体的には酸化剤処理により、容易に除去可能である。そのため、このような化学的な処理により不要部分の除去及び基板表面の平坦化を行うことができ、基板自体の伸びを発生することなく、位置合わせ精度の高い、高信頼性のプリント配線基板を作業性、生産性よく製造でき、それによって高信頼性のプリント配線板を提供することができる。また、このような効果は、エポキシ樹脂組成物に、酸化剤により分解され易いウレタン結合を有する樹脂を少量添加することによって得られるため、従来のエポキシ樹脂組成物が本来有する効果も併せて奏することができ、即ちプリント配線板のバイアホールやスルーホール等の穴部への充填性(作業性)に優れ、しかもボイドの残留やクラックの発生がないと共に硬化収縮が少なく、得られる硬化物は、高温高湿下での体積膨張が少なく、絶縁信頼性や耐熱性、耐湿性、PCT耐性等に優れるという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、前記した課題を解決すべく鋭意研究した結果、エポキシ樹脂組成物に、酸化剤により分解され易いウレタン結合を有する樹脂が添加することにより、プリント配線基板のスルーホールやビアホール等の穴部や、導体回路間等の凹部に熱硬化性樹脂組成物を充填し、熱硬化した後に行う不要部分の除去を、物理的ではなく酸化剤処理により、容易に除去可能であり、そのため、このような化学的な処理により不要部分の除去及び基板表面の平坦化を行うことができ、基板自体の伸びを発生することなく、位置合わせ精度の高い、高信頼性のプリント配線基板を作業性、生産性よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物の各構成成分について詳細に説明する。
まず、前記エポキシ樹脂(A)としては、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する公知慣用の多官能エポキシ樹脂が使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジシロクペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂、ザイロック型エポキシ樹脂、アミノエポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、臭素原子含有エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ樹脂、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの中でも、二官能のエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの室温で液状のエポキシ樹脂が好ましい。室温で液状のエポキシ樹脂を用いることにより、硬化収縮やボイドの原因となる有機溶剤の添加を省くことができ、実質的に無溶剤化を達成することも可能となる。また、反応性希釈剤としての単官能エポキシ樹脂を含有していてもよい。
【0012】
前記したようなエポキシ樹脂は、単独で使用してもよいが、2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、例えば室温で液状のエポキシ樹脂と固体のエポキシ樹脂を併用した場合、低分子量の液状のエポキシ樹脂が、得られる硬化皮膜の可撓性及び密着性向上に寄与し、固体のエポキシ樹脂が、ガラス転移点を上昇させるのに寄与するので、これらの比率を調整することにより上記特性のバランスを調整することが可能となる。また、他の方法としては、エポキシ当量が200以下のエポキシ樹脂と200を超えるエポキシ樹脂を併用することも好ましい。エポキシ当量が200を超えるエポキシ樹脂は、硬化収縮が少なく、基材のそり防止と硬化物への柔軟性付与に効果的である。一方、エポキシ当量が200以下のエポキシ樹脂は、反応性が高く、硬化物に機械的強度を与える。また、加熱時の溶融粘度が低いため、スルーホール等の穴部や導体回路間の凹部への樹脂組成物の充填性に寄与する。
【0013】
次に、酸化剤により分解され易いウレタン結合を有する樹脂(B)としては、ポリイミド樹脂やポリウレタン樹脂などを用いることができるが、それらの中でも、カルボキシル基又は酸無水物基を有し、かつ、数平均分子量700〜6,000の線状炭化水素構造を有するポリイミド樹脂、特に数平均分子量700〜4,500の線状炭化水素構造と、ウレタン結合と、イミド環と、イソシアヌレート環とを有するポリイミド樹脂が好ましい。このような樹脂(B)の配合量は、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、50〜200質量部の割合が好ましい。50質量部未満では前記したような本発明の効果が得られ難く、不要な硬化皮膜表面部の除去をコントロールし難くなる。一方、200質量部を超えて多量に配合すると、硬化皮膜のはんだ耐熱性、耐薬品性等の特性が悪くなり易いので好ましくない。
【0014】
本発明で用いるポリイミド樹脂(B)は、カルボキシル基又は酸無水物基と、数平均分子量700〜6,000の線状炭化水素構造とを有するポリイミド樹脂であればよいが、その中でも、汎用溶剤、例えばケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤等の非プロトン系極性有機溶剤に対する溶解性と耐熱性に優れることから、カルボキシル基又は酸無水物基と、数平均分子量700〜4,500の線状炭化水素構造と、ウレタン結合と、イミド環と、イソシアヌレート環を有し、好ましくはさらに環式脂肪族構造を有するポリイミド樹脂(B1)が好ましい。前記線状炭化水素構造としては、硬化物の柔軟性と誘電特性のバランスが良好なポリイミド樹脂が得られることから、数平均分子量800〜4,200の線状炭化水素構造であることが特に好ましい。
【0015】
前記ポリイミド樹脂(B1)としては、例えば、下記一般式(1)で示される構造単位と下記一般式(2)で示される構造単位を有し、かつ、下記一般式(3)、(4)及び(5)で示される末端構造のいずれか1種以上を有するポリイミド樹脂(B2)が挙げられ、その中でも、酸価が20〜150mgKOH/gであり、かつ、数平均分子量700〜4,500の線状炭化水素構造の含有率が20〜40質量%、イソシアヌレート環の濃度が0.3〜1.2ミリモル/g、数平均分子量が2,000〜30,000であり、しかも、重量平均分子量が3,000〜100,000のポリイミド樹脂がより好ましい。
【0016】
【化1】


(式中、Rは炭素原子数6〜13の環式脂肪族構造を有する有機基を示し、Rは数平均分子量700〜4,500の線状炭化水素構造を示す。)
【0017】
【化2】

【0018】
なお、ポリイミド樹脂(B)中における線状炭化水素構造の含有率は、ポリイミド樹脂(B)が後記する製造方法で製造したポリイミド樹脂である場合、合成原料中におけるポリオール化合物(a2)の使用質量割合から求めることができ、前記線状炭化水素構造の数平均分子量は前記ポリオール化合物(a2)の数平均分子量から求めることができる。
【0019】
また、製造方法が不明のポリイミド樹脂中における線状炭化水素構造の含有率と数平均分子量は、ポリイミド樹脂を通常の加水分解法、例えば有機アミンの存在下で熱処理してウレタン結合を分解し、線状炭化水素構造部分を前記ポリイミド樹脂から切り離し、線状炭化水素構造部分がイミド構造部分に比較して低極性であることを利用して、ジクロロメタン等の低極性有機溶剤で線状炭化水素構造部分を抽出し、抽出量の測定とGPC分析とを行なうことで求めることができる。
【0020】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いる前記ポリイミド樹脂の製造方法は、特に限定されないが、ポリイソシアネート化合物(a1)と線状炭化水素構造を有するポリオール化合物であって、線状炭化水素構造部分の数平均分子量が700〜6,000のポリオール化合物(a2)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の酸無水物(b)と有機溶剤中で反応させる方法が好ましい。
【0021】
例えば、前記製造方法によりポリイミド樹脂(B)を製造するには、炭素原子数が6〜13の環式脂肪族構造を有するジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートと、線状炭化水素構造を有するポリオール化合物であって、線状炭化水素構造部分の数平均分子量が700〜4,500のポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを、トリカルボン酸の酸無水物と有機溶剤中で反応させればよい。
前記したようなポリイミド樹脂及びその製造方法については、国際公開WO 2005/006826A1に詳しく記載されているので参照されたい。
【0022】
前記エポキシ硬化剤(C)としては、従来公知の各種エポキシ樹脂硬化剤もしくはエポキシ樹脂硬化促進剤を配合することができる。例えば、フェノール樹脂、イミダゾール化合物、酸無水物、脂肪族アミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、第3級アミン、ジシアンジアミド、グアニジン類、又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもののほか、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム、テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物、DBUもしくはその誘導体など、硬化剤もしくは硬化促進剤の如何に拘らず、公知慣用のものを単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのエポキシ硬化剤は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜70質量部の範囲で配合することが好ましい。その配合量が上記範囲よりも少ないと硬化不足となり、一方、上記範囲を超えて多量に配合しても硬化促進効果を増大させることはなく、却って耐熱性や機械強度を損なう問題が生じ易いので好ましくない。
【0023】
前記したエポキシ硬化剤の中でも、フェノール樹脂やイミダゾール化合物が好ましい。フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類など公知慣用のものを、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
また、イミダゾール化合物は、組成物中の溶剤を乾燥するときの温度域(80℃〜130℃)では反応が緩やかで、硬化時の温度域(150℃〜200℃)では充分に反応を進めることができ、硬化物の物性を充分発現させる点で好ましい。また、イミダゾール化合物は、銅回路及び銅箔との密着性に優れている点でも好ましい。特に好ましいものの具体例としては、2−エチル4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、ビス(2−エチル−4−メチル−イミダゾール)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4 ,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、トリアジン付加型イミダゾール等が挙げられ、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
次に、前記フィラー(D)としては従来公知の全ての無機充填剤及び有機充填剤が使用でき、特定のものに限定されない。無機フィラーとしては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の体質顔料や、銅、錫、亜鉛、ニッケル、銀、パラジウム、アルミニウム、鉄、コバルト、金、白金等の金属粉体が挙げられる。これらの無機フィラーは、塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させるのにも寄与する。これらの中でも、酸に可溶性の炭酸カルシウムや硫酸カルシウムなどが好ましく、酸化剤処理により不要な硬化皮膜表面の除去が容易となり、次の工程で積層される導体層や樹脂絶縁層が密着性に優れたものとなる。尚、酸に不溶性の無機フィラーでも、硬化皮膜表面の平滑性の点では酸に可溶性のフィラーを用いた場合に比べて劣るが、粗化処理により粗化液が硬化皮膜とフィラーの界面に浸透し、硬化皮膜表面のフィラーが抜け落ちることにより、硬化皮膜表面に微細な凹凸状の粗化面が形成され、これが次の工程で積層される導体層や樹脂絶縁層に対するアンカー効果による密着性向上を期待できる。この点から、粗化液との親和性が良好な無機フィラーが好ましい。また、フィラーの平均粒径は3μm以下であることが好ましい。
【0026】
フィラー(D)の配合量は、前記エポキシ樹脂(A)と樹脂(B)(ポリイミド樹脂)とエポキシ硬化剤(C)の合計100質量部に対して、30〜160質量部、好ましくは50〜150質量部の割合が適当である。フィラーの配合量が上記範囲よりも少なくなると、スルーホール等の穴部に充填した樹脂組成物が加熱硬化時に収縮し易くなり、一方、上記範囲を超えると、組成物の流動性が悪くなるので好ましくない。
【0027】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、前記した各成分に加えて、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤を添加することができる。これらのカップリング剤の添加方法は、組成物中に直に添加する方法、あるいは前記のようなフィラー(D)を予めカップリング剤で前処理したものを加える方法のいずれの方法でもよい。これらのカップリング剤の中でも、チタネート系カップリング剤を用いることが好ましい。
【0028】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない量的割合で、エピクロルヒドリンと各種2官能フェノール化合物の縮合物であるフェノキシ樹脂或いはその骨格に存在するヒドロキシエーテル部の水酸基を各種酸無水物や酸クロリドを使用してエステル化したフェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂や、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェノール樹脂、ポリシアネート樹脂、ポリエステル樹脂、熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂などを添加することもできる。
【0029】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知慣用の着色剤、アスベスト、オルベン、ベントン、微紛シリカ等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤及び/又はレベリング剤、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤、チタネート系、アルミニウム系の公知慣用の添加剤類を用いることができる。また、本発明の液状熱硬化性樹脂組成物では、粘度が1500dPa・s以下となるようにエポキシ樹脂を適宜選定して用いることにより、必ずしも希釈溶剤を用いる必要はないが、組成物の粘度を調整するために、ボイドが発生しない程度に有機溶剤を添加することもできる。但し、有機溶剤は前記したように硬化収縮やボイドの原因となり易いために、添加する場合には、できるだけ少量とすることが望ましい。
【0030】
かくして得られる本発明の熱硬化性樹脂組成物は、従来より使用されている方法、例えばスクリーン印刷法、ロールコーティング法、ダイコーティング法等を利用してプリント配線板のスルーホールやバイアホール等の穴部及び導体回路間の凹部に容易に塗布・充填することができる。
【0031】
次いで、例えば約110〜180℃で約30〜90分程度加熱して硬化させる。硬化した組成物の表面に水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ溶液による膨潤、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤を含有する液による処理、及び硫酸水溶液、塩酸水溶液等による酸処理の一連の化学的処理(酸化剤処理)を施し、上記硬化した組成物層の表面部分を除去して導体回路パターンを露出させると共に、基板の表面を平坦にする。この際、市販のデスミヤ液(粗化剤)、例えば後述する実施例で用いたアトテック(ATOTECH)社製の酸化剤処理液や、ローム・アンド・ハス(ROHM & HASS)社製の酸化剤処理液(膨潤液MLB−211、粗化液MLB−213、還元液MLB−216)を好適に用いることができる。尚、硬化した組成物表面が膨潤し易いように、前記加熱工程を、例えば約90〜130℃で約30〜90分程度加熱して予備硬化させ、その後前記酸化剤処理を行った後、再度約140〜180℃で約30〜90分程度加熱して本硬化(仕上げ硬化)する二段加熱とすることもできる。。この際、本発明の液状熱硬化性樹脂組成物は低膨張性のために硬化物は殆ど膨張も収縮もせず、寸法安定性良く低吸湿性、密着性、電気絶縁性等に優れた最終硬化物となる。これにより得られる硬化物は、熱的信頼性や耐熱性、耐湿性に優れ、また高温高湿下においても体積膨張がほとんどなくPCT耐性に優れる。なお、上記硬化物の硬度は、加熱時間、加熱温度を変えることによってコントロールすることができる。
【0032】
このように本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いたプリント配線基板の永久穴埋め加工によれば、作業性及び生産性よくプリント配線基板の穴部及び凹部の充填を行なうことができ、しかも穴埋め後の硬化物の特性・物性にも優れるものとなる。なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線基板の永久穴埋め用組成物としてのみでなく、上記のような優れた特性の故に、ソルダーレジストや層間絶縁材、ICパッケージの封止材等、他の用途にも好適に用いることができる。
【0033】
以下、本発明のプリント配線基板を製造する方法について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
(1)プリント配線基板の穴埋め工程
まず、従来公知の方法に従って、図1(a)に示すように基板1にめっきスルーホール2及び導体(通常、銅)回路層3を形成したプリント配線基板を準備する。基板としては、ガラスエポキシ基板やポリイミド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板、フッ素樹脂基板などの樹脂基板、あるいはこれらの樹脂基板の銅張積層板、セラミック基板、金属基板などを用いることができる。
【0034】
次に、前記基板のめっきスルーホール2内及び導体回路層3間の凹部に、スクリーン印刷法、ロールコーター法など適宜の方法で、図1(b)に示すように本発明の液状熱硬化性樹脂組成物を充填する。次いで、充填物を硬化した後、先に説明したような酸化剤処理により、めっきスルーホール2や導体回路層3間の凹部からはみ出した硬化物5表面の不要部分を除去して、図1(c)に示すように平坦化する。硬化物中に、粗化処理液又は酸に可溶のフィラー粒子が分散している場合、この粗化処理により溶解除去され、アンカー効果に優れた微細な凹凸状の平坦面が形成されるので、その後施されるめっき膜との密着性に優れたものとなる。
【0035】
次に、多層プリント配線板の製造方法の一例を図2を参照して説明する。
(2)導体回路層の形成
前記のように基板1のめっきスルーホール2及び導体回路層3間の凹部に硬化物5を充填して平坦化したプリント配線基板は、従来公知の方法に従って、その表面に触媒核を付与した後、無電解めっき、電解めっきを施し、めっき膜を形成する。その後、エッチングレジストを形成し、レジスト非形成部分をエッチングし、次いで、エッチングレジストを剥離することにより、図2(a)に示すように、導体回路層8を形成することができる。エッチング液としては、硫酸一酸化水素の水溶液、過硫酸アンモニウムや過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩水溶液、塩化第二鉄や塩化第二銅の水溶液など、従来公知のものを使用できる。
【0036】
(3)層間樹脂絶縁層の形成
その後、導体回路層の表面を必要に応じて黒化(酸化)一還元処理等の方法により処理した後、図2(a)に示すように、層間樹脂絶縁層10を形成する。層間樹脂絶縁層としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいはこれらの樹脂の複合体や混合物、ガラスクロス含浸樹脂複合体、無電解めっき用接着剤を用いることができる。層間樹脂絶縁層10は、これらの樹脂組成物の未硬化液を塗布したり、フィルム状の樹脂を熱圧着してラミネートすることにより形成される。
【0037】
(4)バイアホールの形成
次に、図2(a)に示されるように層間樹脂絶縁層10に開口11を設ける。この開口11の穿孔は、層間樹脂絶縁層10が感光性樹脂からなる場合は、露光、現像処理にて行ない、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂からなる場合は、レーザ光にて行なう。このとき使用されるレーザ光としては、炭酸ガスレーザ、紫外線レーザ、エキシマレーザなどがある。レーザ光にて孔明けした場合は、デスミア処理を行なってもよい。このデスミア処理は、クロム酸、過マンガン酸塩などの水溶液からなる酸化剤を使用して行なうことができ、また酸素プラズマなどで処理してもよい。開口11を形成した後、必要に応じて層間樹脂絶縁層10の表面を粗化処理する。
【0038】
次に、層間樹脂絶縁層10の表面に無電解めっき用の触媒核を付与した後、無電解めっきを施し、図2(b)に示すように、全面にめっき膜12を形成する。
そして、図2(c)に示すように、めっき膜12上にめっきレジスト層13を形成する。めっきレジスト層は、好適には感光性ドライフィルムをラミネートして露光、現像処理して形成される。
さらに、電解めっきを行ない、導体回路部分を厚付けし、図2(c)に示すように電解めっき膜14を形成する。
【0039】
次いで、めっきレジスト層13を剥離した後、そのめっきレジスト下の無電解めっき膜12をエッチングにて溶解除去し、図2(d)に示すように、独立した導体回路(バイアホール15を含む)を形成する。エッチング液としては、硫酸一過酸化水素の水溶液、過硫酸アンモニウムや過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩水溶液、塩化第二鉄や塩化第二銅の水溶液などを好適に用いることができる。
【0040】
図3は、プリント配線板の製造方法の他の例の概略工程を示しており、図3(a)は、前記図1(c)に示すような配線基板作製工程まで終えた状態を示している。即ち、コア基板20の両面に所定パターンを有する第1の導体回路層21が形成されていると共に、めっきスルーホール22に接続する導体回路層の一部にはランド23が形成されている。
【0041】
次いで、基板20の上下両面の上に、図3(b)に示すように、層間樹脂絶縁層24を形成する。この際、前記硬化物5の酸化剤処理工程により、基板表面の硬化物層5と導体回路層21及びランド23の厚みが均一で平坦性を有しているため、均一な厚みの層間樹脂絶縁層24を形成することができる。さらに、上記ランド23の真上に位置する樹脂絶縁層に対し、図3(c)に示すように、公知のフォトリソグラフィー技術によりバイアホール25を形成する。次いで、バイアホール内と層間樹脂絶縁層の上に銅めっきにより銅めっき層を形成し、これらの上にエッチングレジストを形成した後で、エッチングを施す。これにより、図3(c)に示すように、層間樹脂絶縁層24の上に第2の導体回路層26が形成される。第1、第2の各導体回路層21、26はバイアホール25を介して互いに導通すると共に、基板両面の各導体回路層21、21もスルーホール22を介して互いに導通する。
【0042】
そして、図3(c)に示すように、各樹脂絶縁層24と第2の導体回路層26の上にソルダーレジスト層27を形成し、上方のレジスト層には、これを貫通し且つ導体回路層の表面から立設するはんだバンプ28を形成する。また、下方のレジスト層の間に形成した開口部29から露出する導体回路層30には、その表面にAu及びNiめっきを施して、接続端子として用いる多層の配線基板を得ることができる。上記はんだバンプ28は、配線基板の主表面上に配置されるIC素子等の電子部品との接続に使用される。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例等を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0044】
合成例1
攪拌装置、温度計、コンデンサーを取り付けた20リットルのフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、EDGAと略記する)4300部と、イソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート(イソシアネート基含有率18.2%、イソシアヌレート環含有トリイソシアネート含有率85%)2070部(イソシアネート基として9モル)と、1,6−ヘキサンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート(イソシアネート基の含有率22.9%、イソシアヌレート環含有トリイソシアネート含有率63.3%)550部(イソシアネート基として3モル)を仕込み、混合して均一とした後、ポリテールHA(三菱化学(株)製の両末端に水酸基を有する水素添加液状ポリブタジエン、数平均分子量2,100、水酸基価51.2mgKOH/g)2191部(水酸基として2モル)を加えて攪拌を行ないながら発熱に注意して80℃に昇温した後、3時間反応を行なった。次いで、無水トリメリット酸1536部(8モル)を仕込み、160℃まで昇温した後、4時間反応させた。この際の反応は、発泡とともに進行し、粘度が高くなり、系内が攪拌しにくくなったときに、さらにEDGA2000部を加えて行なった。系内は薄茶色のクリアな液体となり、ポリイミド樹脂の溶液を得た。
【0045】
得られたポリイミド樹脂溶液を用いて赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、725cm−1と1780cm−1と1720cm−1にイミド環の吸収、1690cm−1と1460cm−1にイソシアヌレート環の特性吸収、1550cm−1にウレタン結合の特性吸収が確認された。さらに、また、ポリイミド樹脂の酸価は固形分換算で85mgKOH/g、イソシアヌレート環の濃度は0.68ミリモル/g、数平均分子量Mnは5,500、重量平均分子量Mwは22,000であった。
なお、ポリイミド樹脂の酸価、イソシアヌレート環の濃度、数平均分子量及び重量平均分子量は、以下の方法で測定したものである。
【0046】
(1)酸価:JIS K−5601−2−1に準じて測定する。なお、試料の希釈溶剤としては、無水酸の酸価も測定できるようにアセトン/水(9/1体積比)の混合溶剤で酸価0のものを使用する。
(2)イソシアヌレート環の濃度:13C−NMR分析[溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d)]を行ない、149ppmにあるイソシアヌレート環に起因する炭素原子のスペクトル強度から検量線を用いてポリイミド樹脂(B)1g当たりのイソシアヌレート環の濃度(ミリモル)を求める。なお、13C−NMR分析により、169ppmにあるイミド環に起因する炭素原子のスペクトル強度から同様にイミド環の濃度を求めることもできる。
(3)数平均分子量と重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量と重量平均分子量を求める。
【0047】
実施例1〜3及び比較例1〜4
下記表1に列挙した各成分を表1に示す割合で配合し、予備混合した後、3本ロールミルで練肉分散させて熱硬化性樹脂組成物を得た。
次に、導体(銅)回路パターン及びめっきスルーホールが形成された基板(板厚0.8mm、めっきスルーホール径0.25mm、BGAパターン)を予め前処理として酸洗を行った後、その表面に、各熱硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷法により塗布し、スルーホール内に充填した。これを熱風循環式乾燥炉に入れ、150℃で60分間加熱して硬化させた。次いで、アトテック(ATOTECH)社製の酸化剤処理液を用い、Swelling Dip Securiganth P(NaOH含有)により80℃で10〜20分間の膨潤処理、Concentrate Compact CP(KMnO含有)により80℃で10〜20分間の粗化処理、及びReduction Solution Securiganth P500(HSO含有)により40℃で5分間の還元処理を行った。
その後、スルーホール部を電子顕微鏡にて観察し、導体回路上の残渣の状態を以下の基準で評価した。得られた結果を表1に併せて示す。
◎:導体回路上に残渣は全く無し
○:導体回路上にほんの僅かに残渣あり
×:導体回路上に残渣あり
【0048】
【表1】

【0049】
上記表1に示される結果から明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた場合には、スルーホール部及び導体回路間の凹部への熱硬化性樹脂組成物の充填、熱硬化後に、アルカリ溶液による膨潤、酸化剤による処理及び酸処理の一連の化学的処理により、硬化皮膜の表面部分を除去して導体回路を露出させると共に基板の表面を平滑化することができた。これに対し、ポリイミド樹脂を含有しない熱硬化性樹脂組成物を用いた比較例1〜4の場合、導体回路上に硬化皮膜の残渣があり、基板の表面を平滑化することができなかった。また、実施例1、2と実施例3との対比から、シリカ等の酸に不溶性のフィラーを用いた場合には、酸化剤処理によっても残渣として残る可能性があることから、フィラーとしては酸に可溶性の炭酸カルシウム等が特に好ましいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明によるプリント配線基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明による図1に示す工程の後に実施する多層プリント配線板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明による多層プリント配線板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1,20 基板
2,22 めっきスルーホール
3,8,21,26 導体回路層
4 液状熱硬化性樹脂組成物
5 液状熱硬化性樹脂組成物の硬化物
10,24 層間樹脂絶縁層
12,14 めっき膜
13 めっきレジスト層
15,25 バイアホール
23 ランド
27 ソルダーレジスト層
28 はんだバンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板の穴部及び凹部に充填するための熱硬化性樹脂組成物であって、(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)酸化剤により分解され易いウレタン結合を有する樹脂、(C)エポキシ硬化剤、及び(D)フィラーを必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂(B)が、カルボキシル基又は酸無水物基を有し、かつ、数平均分子量700〜6,000の線状炭化水素構造を有するポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリイミド樹脂(B)が、カルボキシル基又は酸無水物基と、数平均分子量700〜4,500の線状炭化水素構造と、ウレタン結合と、イミド環と、イソシアヌレート環とを有するポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイミド樹脂(B)が、下記一般式(1)で示される構造単位と下記一般式(2)で示される構造単位を有し、かつ、下記一般式(3)、(4)及び(5)で示される末端構造のいずれか1種以上を有するポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項2又は3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】


(式中、Rは炭素原子数6〜13の環式脂肪族構造を有する有機基を示し、Rは数平均分子量700〜4,500の線状炭化水素構造を示す。)
【化2】

【請求項5】
前記フィラー(D)が、酸可溶性の無機フィラーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ硬化剤(C)がイミダゾール系化合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
(a)穴部を含む導体回路パターンを形成した配線基板の表面に、前記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を塗布して上記穴部及び導体回路パターン間の凹部に充填する工程、(b)該充填された組成物を加熱して硬化する工程、(c)硬化した組成物の表面にアルカリ溶液による膨潤、酸化剤による処理及び酸処理の一連の化学的処理を施して上記硬化した組成物層の表面部分を除去して導体回路パターンを露出させると共に基板の表面を平坦にする工程を含むことを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項8】
基板上に、層間絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、かつ充填物が充填された穴部を有するプリント配線板において、上記穴部に充填された充填物が、前記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−189852(P2008−189852A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27252(P2007−27252)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】