説明

熱硬化性樹脂複合体の製造方法及び製造用金型

【課題】複数の熱硬化性樹脂成型体を鉛直方向に沿って延びる複合面で複合させた熱硬化性樹脂複合体であっても、複合面に変形や亀裂が生じにくく、複合面を成形する複合面成形金型の取り外しが容易な熱硬化性樹脂複合体の製造方法及び製造用金型を提供する。
【解決手段】複数の熱硬化性樹脂成型体1,2を鉛直方向に沿って延びる複合面3で複合させた熱硬化性樹脂複合体Cの製造方法であって、第1金型10の第1キャビティ14に第1樹脂原料液を注入し、加熱硬化させて第1成型体1を成形する工程と、複合面成形金型131,132を、第1樹脂原料液のタックフリータイム経過後、複合面3に対して平行以外の方向に取り外す工程と、複合面3との間に第2キャビティ21が形成されるように第2金型20を配置する工程と、第2キャビティ21に第2樹脂原料液を注入し、加熱硬化させて第2成型体2を成形すると同時に第1成型体1と複合させる工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の熱硬化性樹脂成型体を鉛直方向に沿って延びる複合面で複合させた熱硬化性樹脂複合体の製造方法及び製造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる熱硬化性樹脂でそれぞれ成形された複数の熱硬化性樹脂成型体を複合させた熱硬化性樹脂複合体を製造する方法としては、予め複数の成型体を別々に成形し、複合面に接着剤を塗布して複合させる方法、予め成形した一方の成型体を金型に取り付けて、他方の樹脂原料液を注入し、他方の成型体を成形すると同時に一方の成型体と複合させる方法(インサート成形)などがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、樹脂発泡体からなる基材部の外周部に非発泡樹脂外層を備えるランフラットタイヤ用支持体の製造方法が記載されている。具体的には、予め成形された基材部及び非発泡樹脂外層を接着剤により接着する方法、予め成形された基材部の外周部に成形型により非発泡樹脂外層の成形キャビティを形成し、この成形キャビティに原料液を注入して非発泡樹脂外層を成形する方法などが記載されている。また、特許文献2には、予め成形されたシリコーンゴム弾性層の周りに、樹脂を成形すると同時にシリコーンゴム弾性層と複合させることで、シリコーンゴム弾性層の周囲に樹脂からなる表層を設けた導電性ローラの製造方法が記載されている。
【0004】
しかし、これらの製造方法の場合、接着剤を塗布する工程が増えたり、接着性を向上させるために複合面にバフがけなどの表面処理を行う工程が増えたりして、製造工程上不利となる。
【0005】
また、熱硬化性樹脂複合体を製造する方法として、一方の樹脂原料液を金型に注入し、これが未硬化の状態で他方の樹脂原料液を注入し、硬化成形と同時に複合する方法がある。
【0006】
例えば、特許文献3には、下型の周辺に異なる複数の上型をそれぞれヒンジ継ぎ手にて開閉自在に操作可能に構成した成形型において、異硬度のフォームの発泡性配合液を注入し、積層される各層のフォームを順次成形して異硬度の積層シートを成形する方法が記載されている。積層フォームは、被積層フォームのタックフリータイム終了直前又は経過後に次の層のフォームの発泡性配合液を注入して上型により成形しており、接着剤が不要であるとともに、複合面の接着性も良好にすることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献3の方法では、成形型の構造上、製造できる熱硬化性樹脂複合体の形状、構成、サイズなどに制約が多い。特に、鉛直方向に沿った複合面で複合させて熱硬化性樹脂複合体を製造しようとする場合、上型を取り外す方向もほぼ鉛直方向であるため、複合面には上型によってせん断力が加わって、変形や亀裂が生じて成形不良となりやすく、一方、上型は複合面からの抵抗で取り外しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−313736号公報
【特許文献2】特開2007−8970号公報
【特許文献3】特開昭62−240091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の熱硬化性樹脂成型体を鉛直方向に沿って延びる複合面で複合させた熱硬化性樹脂複合体であっても、複合面に変形や亀裂が生じにくく、複合面を成形する複合面成形金型の取り外しが容易な熱硬化性樹脂複合体の製造方法及び製造用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る熱硬化性樹脂複合体の製造方法は、複数の熱硬化性樹脂成型体を鉛直方向に沿って延びる複合面で複合させた熱硬化性樹脂複合体の製造方法において、第1金型の第1キャビティに第1樹脂原料液を注入し、加熱硬化させて第1成型体を成形する工程と、前記第1金型のうち少なくとも前記複合面を成形する複合面成形金型を、前記第1樹脂原料液のタックフリータイム経過後、前記複合面に対して平行以外の方向に取り外す工程と、前記複合面との間に第2キャビティが形成されるように第2金型を配置する工程と、前記第2キャビティに第2樹脂原料液を注入し、加熱硬化させて第2成型体を成形すると同時に前記第1成型体と複合させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1成型体の複合面を成形する複合面成形金型を、複合面に対して平行以外の方向に取り外すので、複合面に加わるせん断力は抑えられ、複合面に変形や亀裂が生じにくい。また、複合面から受ける抵抗も小さくなり、複合面成形金型の取り外しが容易となる。さらに、複合面成形金型を取り外すタイミングを、第1樹脂原料液のタックフリータイム経過後とすることで、複合面にタックが生じず、変形も生じないため複合面成形金型の取り外しが容易となる。ここで、タックフリータイムとは、所定温度(成型体を成形時の金型温度)に加温された金属板の上に樹脂原料液を垂らし、所定温度雰囲気下で、棒状のもの、例えば室温で保管した断面5mm角で長さ20cm程度の濡れていない木製のスティックなどで樹脂原料液の表面に触れ、その先端に樹脂原料液が付着しなくなった時間を指す。
【0012】
本発明に係る熱硬化性樹脂複合体の製造方法において、前記複合面成形金型を、前記複合面に対して垂直方向に取り外すことが好ましい。
【0013】
複合面成形金型の取り外し方向が複合面に対して垂直方向に近付くほど、複合面に加わるせん断力がより小さくなるとともに、複合面成形金型が複合面から受ける抵抗もより小さくなるため、複合面に変形や亀裂がさらに生じにくく、複合面成形金型の取り外しがさらに容易となる。
【0014】
本発明に係る熱硬化性樹脂複合体の製造方法において、前記複合面成形金型を、前記第1樹脂原料液を注入してから前記タックフリータイムの6倍の時間が経過するまでに取り外すことが好ましい。
【0015】
複合面成形金型を取り外すタイミングを、第1樹脂原料液を注入してからタックフリータイムの6倍の時間が経過するまでとすることで、複合面の変形を防ぎつつ、複合面の接着性を良好にできる。タックフリータイムの6倍以上が経過すると、熱硬化性樹脂が完全に硬化し、複合面の接着性が悪化する。
【0016】
また、本発明に係る熱硬化性樹脂複合体の製造用金型は、複数の熱硬化性樹脂成型体を鉛直方向に沿って延びる複合面で複合させた熱硬化性樹脂複合体を製造するための製造用金型であって、熱硬化性樹脂複合体の上面を成形するための上型と、熱硬化性樹脂複合体の下面を成形するための下型と、上型と下型との間に配置され、上型及び下型とともに第1キャビティを形成する中型とを有し、第1成型体を成形するための第1金型と、前記上型と前記下型との間に配置され、前記第1金型により成形された第1成型体の複合面との間に第2キャビティを形成し、第2成型体を成形するとともに前記第1成型体と複合させるための第2金型と、を備え、前記中型は、鉛直方向に沿った分割面で複数に分割されており、前記中型のうち少なくとも前記複合面を成形する複合面成形金型は、前記複合面に対して平行以外の方向に移動して上型及び下型から取り外されることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、第1成型体の複合面を成形する複合面成形金型を、複合面に対して平行以外の方向に取り外すことができるので、複合面に加わるせん断力は抑えられ、複合面に変形や亀裂が生じにくい。また、複合面から受ける抵抗も小さくなり、複合面成形金型の取り外しが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】熱硬化性樹脂複合体の製造方法の製造工程を説明するための説明図
【図2】熱硬化性樹脂複合体の平面図及び断面図
【図3】ウレタンタイヤの平面図及び断面図
【図4】別実施形態に係る熱硬化性樹脂複合体の製造工程を説明するための説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る熱硬化性樹脂複合体の製造方法の製造工程を説明するための説明図である。図2は、熱硬化性樹脂複合体の平面図及びI−I断面図である。
【0020】
本発明に係る熱硬化性樹脂複合体の製造方法は、複数の熱硬化性樹脂成型体を鉛直方向に沿って延びる複合面で複合させた熱硬化性樹脂複合体を製造するためのものである。本実施形態では、第1樹脂原料液を加熱硬化させて成形した円柱状の第1成型体1の周囲に、第2樹脂原料液を加熱硬化させて成形した円筒状の第2成型体2を複合させて、熱硬化性樹脂複合体Cを製造する例を示す。この例では、第1成型体1の外周面(第2成型体2の内周面)が複合面3となる。ここで、第1成型体1及び第2成型体2の軸心Oの方向を、本発明の鉛直方向VDとする。なお、複合面3は、鉛直方向VDに沿って延びていればよく、鉛直方向VDに対して傾斜していてもよい。
【0021】
図1(a)に示すように、第1金型10は、鉛直方向VDの上下に配置される上型11と下型12、上型11と下型12との間に配置される中型13を備える。第1金型10を型閉めすることにより、内部に第1キャビティ14が形成されるようになっている。
【0022】
上型11及び下型12は、いずれも略円板状をしており、ほぼ同じ大きさである。中型13は、略円筒状であって、鉛直方向VDに沿った分割面13aで複数に分割されている。
【0023】
まず、図1(a)に示すように、上型11と下型12との間に、第1中型131と第2中型132を分割面13aで組み合わせた中型13を配置することで、第1キャビティ14を形成する。この第1金型10の第1キャビティ14に第1樹脂原料液を注入し、加熱硬化させて第1成型体1を成形する。第1樹脂原料液の注入は、上型11に設けられ、第1キャビティ14に連通する不図示の注入口などから行われる。
【0024】
次いで、図1(b)に示すように、第1金型10のうち少なくとも複合面3を成形する複合面成形金型を、第1樹脂原料液のタックフリータイムTFT経過後、複合面3に対して平行以外の方向に取り外す。本実施形態では、第1中型131及び第2中型132が複合面成形金型に相当する。第1中型131と第2中型132は、水平方向であって互いに離反する方向にそれぞれ取り外される。第1中型131と第2中型132を複合面3に対して平行以外の方向に取り外すことで、第1成型体1の複合面3に加わるせん断力は抑えられ、タックフリータイム経過後で第1成型体1のグリーン強度が十分でなくとも複合面3に変形や亀裂が生じにくい。また、複合面3から受ける抵抗も小さくなり、第1中型131及び第2中型132の取り外しが容易となる。タックフリータイムTFT経過前では、第1成型体1にタックが生じているため、第1中型131と第2中型132を取り外すことができない。
【0025】
本発明において、第1中型131及び第2中型132を、複合面3に対して垂直方向に取り外すことが好ましい。本実施形態のように複合面3が鉛直方向VDに延びている場合には、第1中型131及び第2中型132を水平方向に取り外す。第1中型131及び第2中型132の取り外し方向が複合面3に対して垂直方向に近付くほど、複合面3に加わるせん断力がより小さくなるとともに、第1中型131及び第2中型132が複合面3から受ける抵抗もより小さくなるため、複合面3に変形や亀裂がさらに生じにくく、第1中型131及び第2中型132の取り外しがさらに容易となる。
【0026】
本発明において、第1中型131と第2中型132を、第1樹脂原料液を注入してからタックフリータイムTFTの6倍の時間が経過するまでに取り外すことが好ましい。第1樹脂原料液を注入してからタックフリータイムTFTの6倍の時間が経過するまでとすることで、複合面3の接着性を良好にできる。タックフリータイムTFTの6倍の時間が経過した後では、第1成型体1の硬化反応が進み過ぎてしまい、第2成型体2との接着性が悪化してしまう。
【0027】
次いで、図1(c)に示すように、複合面3との間に第2キャビティ21が形成されるように第2金型20を配置する。第2金型20は、上型11と下型12との間に配置される。第2金型20は、中型13と同様、略円筒状であって、鉛直方向VDに沿った分割面20aで2分割されている。ここでは、第2金型20が第1外型201と第2外型202とに2分割されている例を示す。第2金型20の高さは、第1成型体1の高さと同じである。また、第2金型20の内周面は複合面3よりも大きく、第2金型20を第1成型体1の外周側に同心円状に配置することで、略円筒状の第2キャビティ21が形成される。
【0028】
次いで、図1(d)に示すように、第2キャビティ21に第2樹脂原料液を注入し、加熱硬化させて第2成型体2を成形すると同時に第1成型体1と複合させる。これにより、第1成型体1と第2成型体2が複合された熱硬化性樹脂複合体Cが成形される。第2樹脂原料液の注入は、上型11に設けられ、第2キャビティ21に連通する不図示の注入口などから行われる。
【0029】
次いで、図1(e)に示すように、熱硬化性樹脂複合体Cから上型11、下型12、及び第2金型20を取り外す。上型11は鉛直方向VDの上方へ、下型12は鉛直方向VDの下方へ取り外される。第2金型20を構成する第1外型201と第2外型202は、水平方向であって互いに離反する方向にそれぞれ取り外される。最後に図1(f)に示すように、脱型後、ポストキュアを行い、熱硬化性樹脂複合体Cの製造工程が終了する。
【0030】
なお、本発明に使用される熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。製造する熱硬化性樹脂複合体に必要とされる機能、特性などに応じて、適宜の熱硬化性樹脂を選択できる。
【0031】
<別実施形態>
(1)本発明の製造方法及び製造用金型は、複数のポリウレタン樹脂成型体を複合させたウレタンタイヤの製造に好適である。ウレタンタイヤTは、図3に示すように、車両からの荷重を支持するトロイダル状の支持構造体SSと、支持構造体SSの外周側に隣接して設けられるトレッドTRとを備える。ここでは、支持構造体SSが、内側環状部S1と、その外側に同心円状に設けられた中間環状部S2と、その外側に同心円状に設けられた外側環状部S3と、内側環状部S1と中間環状部S2とを連結しタイヤ周方向に各々が独立する複数の内側連結部S4と、外側環状部S3と中間環状部S2とを連結しタイヤ周方向に各々が独立する複数の外側連結部S5とを備えている例を示している。支持構造体SSは本発明の第1成型体に相当し、トレッドTRは本発明の第2成型体に相当し、ウレタンタイヤTは本発明の熱硬化性樹脂複合体に相当する。本発明によれば、支持構造体SSとトレッドTRを複合面で複合させたウレタンタイヤTを製造する際、接着工程を省きつつ、複合面の接着性を良好にできるため、耐久性を向上させたウレタンタイヤTを簡素な工程により製造することができる。なお、図3のようなウレタンタイヤTを成形する場合には、内側環状部S1の内周側を成形するための内型や、内側連結部S4及び外側連結部S5を成形するための中子が更に用いられる。
【0032】
熱硬化性樹脂としてポリウレタン樹脂を用いる場合、第1樹脂原料液及び第2樹脂原料液の混合物のNCO/OHインデックスの和及び差を、それぞれ2.05〜2.35、−0.20〜0.20とする。より好ましくは、それぞれ2.10〜2.30、−0.10〜0.10、更に好ましくは、2.05〜2.25、−0,05〜0.05とする。第1樹脂原料液と第2樹脂原料液のNCO/OHインデックスの和及び差を、それぞれ2.05〜2.35、−0.20〜0.20とすることで、支持構造体SS及びトレッドTRの必要特性を維持しつつ、複合面の接着性は良好となる。なお、NCO/OHインデックスとは、使用する原料中のイソシアネート当量とポリオール当量との比(イソシアネート当量をポリオール当量で除する値)のことである。
【0033】
(2)前述の実施形態では、中型13が第1中型131と第2中型132とに2分割されているが、3分割以上が好ましく、4分割が特に好ましい。中型13が2分割されている場合、第1中型131と第2中型132は、複合面3に対して分割面13a近傍では略水平方向に取り外すことになり、複合面3にせん断力が加わってしまうからである。
【0034】
(3)本発明の製造方法及び製造用金型により製造する第1成型体1、第2成型体2、熱硬化性樹脂複合体Cの形状は、前述のものに限られない。例えば、図4(f)に示すような形状を有する熱硬化性樹脂複合体Cであってもよい。この熱硬化性樹脂複合体Cは、直方体状の第1成型体1と直方体状の第2成型体2を鉛直方向に沿って延びる複合面3で複合させている。図4はこの熱硬化性樹脂複合体Cの製造工程を示しているが、基本的には前述の実施形態と同様であるため、相違点を中心に説明する。上型11及び下型12は、いずれも略矩形板状をしており、ほぼ同じ大きさである。中型13は、四角筒状であって、分割面13aで鉛直方向VDに見てコの字状の第1中型131と直線状の第2中型132に分割されている。この実施形態では、第2中型132が複合面成形金型に相当する。また、第2金型20は、第1中型131と同様の形状をしている。
【0035】
(4)前述の実施形態では、第1成型体1を成形した後、第2成型体2を成形しているが、第2成型体2を成形した後、第1成型体1を成形してもよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。尚、実施例等における評価項目は、下記のようにして測定を行った。
【0037】
(1)成形性及び脱型性
ウレタンタイヤを作製する際に、第1成型体の複合面での変形や亀裂の発生の有無と、複合面成形金型の取り外しの可否を調べた。
【0038】
(2)接着性
所定のホイールにタイヤを装着して、ドラム試験機にて、時速6km/h、荷重50kgの条件で走行させ、トレッドのセパレーション等の故障が生じるまでの走行距離を測定した。実施例5の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど走行耐久性に優れており、接着性が良好である。
【0039】
実施例1
コロネート4362(日本ポリウレタン工業社製)366重量部、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(BHEB)(三井化学社製)24重量部、及び1,4ブタンジオール(1,4−BD)(BASF出光社製)8重量部をそれぞれ予め減圧脱泡しておき、液温をそれぞれ100℃、140℃、70℃に調整後、これらに触媒(花王社製、商品名:カオーライザーNo.31)を所定量加えて攪拌、混合し(NCO/OHインデックス1.10)、この混合物(第1ポリウレタン原料液)を予め100℃に温調した所定の第1金型の第1キャビティに注入し、120℃のオーブン内で10分間(この例では第1ポリウレタン原料液のタックフリータイムは10分)キュアを行い、その後第1金型のうち2分割された中型を複合面に対して垂直方向(上型及び下型の成形面に対しては水平方向)に取り外し、直ぐに予め100℃で温調しておいた所定の第2金型をセットし、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)(三菱化学社製、分子量3000)166.6重量部、1,4ブタンジオール(1,4−BD)(BASF出光社製)3.4重量部、及びミリオネートMTL(日本ポリウレタン工業社製)29.2重量部をそれぞれ予め減圧脱泡しておき、液温を全て70℃に調整後、これらに触媒(花王社製、商品名:カオーライザーNo.31)を所定量加えて攪拌、混合し(NCO/OHインデックス1.05)、この混合物(第2ポリウレタン原料液)を100℃に温調された第1成型体と第2金型とで形成された第2キャビティに注入し、120℃のオーブン内で1時間キュアを行い、さらに70℃のオーブン内で16時間ポストキュアを行い、ポリウレタン複合体のウレタンタイヤを作製した。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0040】
実施例2
第1金型の中型を4分割としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0041】
実施例3
第1ポリウレタン原料液を第1キャビティに注入し、120℃のオーブンで20分間キュアを行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0042】
実施例4
第1ポリウレタン原料液を第1キャビティに注入し、120℃のオーブンで40分間キュアを行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0043】
実施例5
第1ポリウレタン原料液を第1キャビティに注入し、120℃のオーブンで60分間キュアを行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0044】
実施例6
第1ポリウレタン原料液と第2ポリウレタン原料液の配合量を、以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。第1ポリウレタン原料液の配合は、コロネート4362を368重量部、BHEBを22重量部、1,4−BDを7.4重量部とした(NCO/OHインデックス1.20)。第2ポリウレタン原料液の配合は、PTMGを165.4重量部、1,4−BDを3.4重量部、ミリオネートMTLを30.4重量部とした(NCO/OHインデックス1.10)。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0045】
実施例7
第1ポリウレタン原料液と第2ポリウレタン原料液の配合量を、以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。第1ポリウレタン原料液の配合は、コロネート4362を364重量部、BHEBを25重量部、1,4−BDを8.3重量部とした(NCO/OHインデックス1.05)。第2ポリウレタン原料液の配合は、PTMGを167.3重量部、1,4−BDを3.4重量部、ミリオネートMTL28.5重量部とした(NCO/OHインデックス1.02)。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0046】
実施例8
第1ポリウレタン原料液と第2ポリウレタン原料液の配合量を、以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。第1ポリウレタン原料液の配合は、コロネート4362を368重量部、BHEBを22重量部、1,4−BDを7.4重量部とした(NCO/OHインデックス1.18)。第2ポリウレタン原料液の配合は、PTMGを167.5重量部、1,4−BDを3.4重量部、ミリオネートMTLを28.3重量部とした(NCO/OHインデックス1.01)。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0047】
実施例9
第1ポリウレタン原料液と第2ポリウレタン原料液の配合量を、以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。第1ポリウレタン原料液の配合は、コロネート4362を364重量部、BHEBを25重量部、1,4−BDを8.3重量部とした(NCO/OHインデックス1.05)。第2ポリウレタン原料液の配合は、PTMG165.4を重量部、1,4−BDを3.4重量部、ミリオネートMTL30.4重量部とした(NCO/OHインデックス1.10)。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0048】
実施例10
第1ポリウレタン原料液と第2ポリウレタン原料液の配合量を、以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。第1ポリウレタン原料液の配合は、コロネート4362を363重量部、BHEBを26重量部、1,4−BDを8.6重量部とした(NCO/OHインデックス1.01)。第2ポリウレタン原料液の配合は、PTMG163.6を重量部、1,4−BDを3.3重量部、ミリオネートMTL32.2重量部とした(NCO/OHインデックス1.18)。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0049】
比較例1
中型が分割されていないこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0050】
比較例2
中型を取り外すタイミングをタックフリータイム経過前としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ウレタンタイヤを作製した。上記評価項目の測定結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1〜10は、成形性及び脱型性に問題なく、ウレタンタイヤを適切に作製することができた。比較例1は、中型を上型とともに取り外した際、第1成型体の複合面に亀裂が生じた。比較例2は、中型を取り外す際、第1成型体の複合面が中型に引っ張られるような形で変形が生じたため、タイヤの作製を中止した。
【0053】
また、中型を取り外すタイミングは、TFT経過後であれば脱型可能であるが、TFT経過後からの時間が長くなるほど、接着性は悪化し、TFTの6倍を経過すると接着性が不十分となる。
【符号の説明】
【0054】
1 第1成型体
2 第2成型体
3 複合面
10 第1金型
11 上型
12 下型
13 中型
13a 分割面
14 第1キャビティ
20 第2金型
20a 分割面
21 第2キャビティ
131 第1中型
132 第2中型
201 第1外型
202 第2外型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱硬化性樹脂成型体を鉛直方向に沿って延びる複合面で複合させた熱硬化性樹脂複合体の製造方法であって、
第1金型の第1キャビティに第1樹脂原料液を注入し、加熱硬化させて第1成型体を成形する工程と、
前記第1金型のうち少なくとも前記複合面を成形する複合面成形金型を、前記第1樹脂原料液のタックフリータイム経過後、前記複合面に対して平行以外の方向に取り外す工程と、
前記複合面との間に第2キャビティが形成されるように第2金型を配置する工程と、
前記第2キャビティに第2樹脂原料液を注入し、加熱硬化させて第2成型体を成形すると同時に前記第1成型体と複合させる工程と、を備えることを特徴とする熱硬化性樹脂複合体の製造方法。
【請求項2】
前記複合面成形金型を、前記複合面に対して垂直方向に取り外すことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合体の製造方法。
【請求項3】
前記複合面成形金型を、前記第1樹脂原料液を注入してから前記タックフリータイムの6倍の時間が経過するまでに取り外すことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂複合体の製造方法。
【請求項4】
複数の熱硬化性樹脂成型体を鉛直方向に沿って延びる複合面で複合させた熱硬化性樹脂複合体を製造するための製造用金型であって、
熱硬化性樹脂複合体の上面を成形するための上型と、熱硬化性樹脂複合体の下面を成形するための下型と、上型と下型との間に配置され、上型及び下型とともに第1キャビティを形成する中型とを有し、第1成型体を成形するための第1金型と、
前記上型と前記下型との間に配置され、前記第1金型により成形された第1成型体の複合面との間に第2キャビティを形成し、第2成型体を成形するとともに前記第1成型体と複合させるための第2金型と、を備え、
前記中型は、鉛直方向に沿った分割面で複数に分割されており、前記中型のうち少なくとも前記複合面を成形する複合面成形金型は、前記複合面に対して平行以外の方向に移動して上型及び下型から取り外されることを特徴とする熱硬化性樹脂複合体の製造用金型。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6279(P2013−6279A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138456(P2011−138456)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】