説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムの排気ガス中及び排気ガス凝縮物中のクロム含有量を少なくすることができる燃料電池システム、燃料電池システムのための装置、及び方法の提供。
【解決手段】電気化学反応を実行するための電池スタック2であって、酸化剤5及び燃料ガス6のための入口3a、3bと、排気ガス7a、7bのための出口4a、4bとを備えた電池スタック2を有する燃料電池システム1。燃料電池システム1には、さらに、ガス状クロム種と反応する物質を含むガス透過性構造体を有する装置10が含まれる。この装置は、排気ガスを導き、排気ガスによって運ばれるクロム種を分離するために、少なくとも一方の出口と連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の導入部分に記載された燃料電池システムに関するものである。また、本発明は、それぞれ請求項7および請求項12の導入部分に記載された燃料電池システムのための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
典型的な燃料電池システムは、欧州特許出願公開第1037296号から知ることができる。この燃料電池システムでは、電池は円筒状電池スタックを形成しており、その周囲で軸線方向に整列したチャンバ内でアフタバーニング(後燃焼)が実行され、約1000℃の排気ガスが発生する。入口の位置は、アフタバーニングチャンバの間に配置されており、電流を発生させる電気化学反応のための予熱されたプロセス空気(簡潔に空気と称する)がこの入口を通って電池に供給される。燃料ガスは、スタックの中央部分の軸線方向の通路を通って電池全体に分配される。
【0003】
燃料電池システムには、通常、平板状セルを有するスタックが含まれており、このスタックには、バイポーラ・プレートとも呼ばれるプレート形インタコネクタと、電気化学的に活性なディスクが交互に配置されている。電気化学的に活性なディスクの各々には、少なくとも3つの層、即ち正電極、電解質(例えば固体電解質)、及び負電極が含まれており、この電気化学的に活性なディスクは、PENエレメントとも呼ばれている。インタコネクタは、一方では隣接するPENエレメントの電極同士を接続させ、また、他方では、電気化学反応のための燃料ガス及び酸化剤をPENエレメントに供給する通路を有している。
【0004】
上記で説明した平板状セルの概念によれば、これらの電極、電解質及びバイポーラ・プレートをスタックの中で直列に接続することにより、抵抗の小さい短い接続が可能になる。したがって直列に接続されたこれらのエレメントの抵抗損失を小さい値に維持することができる。耐熱材料が、通常40000時間を超える必要な長期間安定性を達成できるバイポーラ・プレートのために使用される。600℃〜1000℃の温度での電池スタックの動作では、クロムの割合が少なくとも15%の導電金属材料が有用であることが分かっている。これらの材料は、作動中、空気雰囲気及びガス雰囲気中での熱力学に従って形成される圧縮酸化クロム層の形成によって動作ガスによる腐食から保護される。酸化クロムは十分な導電率を有しているため、スタックを通って流れる絶対に必要な電流が妨害されることはない。
【0005】
しかしながら、熱力学によれば、例えば
Cr(s)+3/2O(g)←→2CrO(g) (I)
Cr(s)+3/2O(g)+2HO(g)←→2CrO(OH)(g) (II)
の反応により、酸素及び/又は水蒸気を含んだ大気中でガス状クロム種(chromium species)が固体酸化クロム層上に形成され得ることも分かっている。
【0006】
これらのクロム種は、ひいては、長期間にわたる使用中に、酸素側におけるカソードとも呼ばれる(正)電極の機能を損ねることになる。しかしながら、このカソードの減損は、バイポーラ・プレートのカソード側に加えられる、水蒸気と酸化クロム層との接触を防止する保護層によって抑制することが可能である。
【0007】
しかしながら、動作時間がもっと長くなると(1000時間を超えると)、かなりの量のクロム(総含有量の5mg/l)がシステムの排気ガス凝縮物中で検出されることがあることが分かっている。この総含有量の約50%は、六価クロムとして存在している。六価クロムは環境に有害であり、動作及びサービス中、複雑及び/又は高価な対策を講じなければならず、システムの廃棄物処理対策を講じなければならない。この場合の凝縮物は、人及び環境に対するあらゆる危険を回避するために、とりわけ慎重に処理しなければならない。クロムによる汚染源は、Crを含み且つバイポーラ・プレートに使用される金属材料に存在し、また、熱交換器、アフタバーナ及び配管システムなどの他の部分にも見出すことができる。ガス状クロム種の放出に対する、カソード側で試行され試験された保護層は、一般に認められているように明らかにクロム量の低減に寄与しているが、排気ガス中及び排気ガス凝縮物中の六価クロムによって生じる危険を防止するためには概して不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1037296号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、燃料電池システムの排気ガス中及び排気ガス凝縮物中のクロム含有量を少なくすることができる燃料電池システム、燃料電池システムのための装置、及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によれば、請求項1で定義される燃料電池システム、請求項7で定義される装置、及び請求項12で定義される方法によって達成される。
【0011】
本発明による燃料電池システムには、酸化剤及び/又はキャリア・ガスのための、並びに燃料ガス及び/又は水蒸気のための入口と、排気ガスのための出口とを備えた、電気化学反応を実行するための電池スタックが含まれる。燃料電池システムには、さらに、ガス状クロム種と反応する物質を含む、或いはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体などのガス透過性構造体を有する少なくとも1つの装置が含まれている。また、この装置は、この装置を介して排気ガスを導き、排気ガスによって運ばれるクロム種を分離するために、複数の出口のうちの少なくとも1つと連通している。
【0012】
「排気ガス」という用語は、以下では広義に解釈すべきであり、この用語には、電池スタックによって放出され或いは燃料電池システムの他の部材、例えばアフタバーナなどによって放出されるあらゆるガス状物質が含まれる。個々の用途に応じて、排気ガスには、電池スタックの中で実行される電気化学反応による反応生成物、例えばCO、CO、HO、H又はOが含まれていることがあり、或いは酸化剤、キャリア・ガス、燃料ガス又は供給された水蒸気の未変換部分が含まれることがある。
【0013】
装置のガス透過性構造体は、固体であることが有利であり、物質がコーティングされた金属表面から形成することができ、又は物質を含有した若しくは物質がコーティングされた不活性セラミック材料でできたセラミック・フォームから製造することができる。
【0014】
ガス状クロム種と反応する物質には、詳細には、典型的には400℃〜1000℃の反応温度でガス状クロム種と自然に反応する固体物質が含まれている。ガス状クロム種と反応する物質は、例えば元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La及びランタノイドのうちの1つの炭酸塩又は酸化物であってもよく、又は元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La及びランタノイドのうちの少なくとも2つの混合酸化物であってもよく、又は灰チタン石構造を有する酸化物セラミックであってもよい。
【0015】
この装置は、コネクタを除いて閉構造体の中に設けられることが有利である。この装置は、一般的には電池スタックの外側に配置される。
【0016】
有利な一実施例によれば、燃料電池システムには、排気ガス中に含まれている、燃料スタックの中で変換されなかった燃料ガスを燃焼させるためのアフタバーナがさらに含まれ、このアフタバーナの後段に装置を配置することができる。
【0017】
他の有利な一実施例では、未変換燃料ガスを含む排気ガスのための出口は、水蒸気及び未変換燃料ガスを再循環させるために、分岐及び追加装置を介して電池スタックの燃料ガス供給に接続されており、追加装置には、ガス透過性構造体、例えばガス状クロム種と反応する物質を含む、またはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体が含まれる。
【0018】
他の有利な一実施例によれば、燃料電池システムには、電池スタック及び任意選択でアフタバーナ及び/又は燃料電池システムの他のバーナを取り囲む熱絶縁体がさらに含まれており、単一又は複数の装置がこの熱絶縁体の中に便宜的に配置されている。
【0019】
本発明による、酸化剤及び/又はキャリア・ガスのための、並びに燃料ガス及び/又は水蒸気のための入口と、排気ガスのための出口とを備えた、電気化学反応を実行するための電池スタックを含む燃料電池システムのための装置には、ガス透過性構造体、例えばガス状クロム種と反応する物質を含む、或いはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体が含まれている。この装置は、この装置を介して排気ガスを導き、排気ガスによって運ばれるクロム種を分離するために、電池スタックの複数の出口のうちの少なくとも1つ、又は燃料電池システムのアフタバーナに結合することができる。
【0020】
この装置のガス透過性構造体は、固体であることが有利であり、例えばハニカムの形態で配置され、物質がコーティングされた金属表面から形成することができ、又は物質を含有した若しくは物質がコーティングされたAlなどの不活性セラミック材料でできたセラミック・フォームから製造することができる。
【0021】
ガス透過性構造体は、多孔性であることが有利であり、2.54cm(1インチ)当たり10〜20細孔の細孔分布(ppi)を有している。細孔の数は、この点に関し、直線軸線上で示されている。対応する分類については、例えばASTM規格D 3576−77を参照されたい。
【0022】
ガス状クロム種と反応する物質は、例えば元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La及びランタノイドのうちの1つの炭酸塩又は酸化物であってもよく、又は元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La及びランタノイドのうちの少なくとも2つの混合酸化物であってもよく、又は灰チタン石構造を有する酸化物セラミックであってもよい。灰チタン石構造を有する酸化物セラミックは、組成ABOを有している。この構造におけるA位置は、元素Mg、Ca、Sr、Ba及びSc、Y、La並びにランタノイドが占有することができる。B位置には、約50個の異なる元素が知られている。B位置は、通常、例えばTi、Zr、V、Nb、Mn、Fe又はCoによって占有される。また、A位置もB位置も、それぞれ2つの異なる元素によって占有できる。このような結晶は、混晶と呼ばれる。
【0023】
装置は、コネクタを除いて閉構造体の中に設けられることが有利である。ガス透過性構造体は、この目的のためには、例えば管の中又は燃料電池システムのリードスルー又は開口中に配置することができる。
【0024】
本発明による、酸化剤及び/又はキャリア・ガスのための、並びに燃料ガス及び/又は水蒸気のための入口と、排気ガスのための出口とを備えた、電気化学反応を実行するための電池スタックを含む燃料電池システムのための方法では、電池スタックで電気化学反応が実行され、排気ガスが生成される。この方法は、排気ガスが、装置を介して、詳細には上記で説明した装置であって、ガス透過性構造体、例えばガス状クロム種と反応する物質を含む、或いはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体を含む装置のうちの1つを介して電池スタックから導かれることを特徴とし、また、排気ガスによって運ばれるクロム種がこの装置の中で分離されることを特徴としている。分離されるクロム種には、便宜的に六価クロム化合物が含まれている。
【0025】
この方法の有利な一実施例では、電気化学反応は電流生成反応であり、燃料ガス及び酸化剤が電池スタックに供給され、電池スタックからの排気ガスが直接又はアフタバーナを介して装置に供給される。
【0026】
この方法の他の有利な一実施例では、電気化学反応は加水分解反応であり、水蒸気及びキャリア・ガス並びに電流が電池スタックに供給される。
【0027】
本発明による燃料電池システム及び燃料電池システムのための装置並びに方法は、排気ガスから分離されるクロムが、安全に廃棄することができる固体物質に結合された形態で存在するという利点を有している。
【0028】
実施例及び実施例の変形形態についての上記説明は、単に一実例として示したものにすぎない。他の有利な実施例については、従属請求項及び図面を参照されたい。さらに、説明されている、或いは図に示されているこれらの実施例及び変形形態の個々の特徴は、本発明の枠組の中で組み合わせることも可能であり、それにより新しい実施例を形成することができる。
【0029】
以下、本発明について、実施例及び図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による燃料電池システムの一実施例の図。
【図2】本発明による燃料電池システムの第2の実施例の図。
【図3】本発明による燃料電池システムの第3の実施例の図。
【図4】本発明による、燃料電池システムのための装置の一実施例の図。
【実施例】
【0031】
図1は、本発明による燃料電池システムの一実施例を示したものである。図に示されている燃料電池システム1には電気化学反応を実行するための電池スタック2が含まれ、例えば空気などの酸化剤5及び炭化水素などの燃料ガス6のための入口3a、3bと、排気ガス7a、7bのための出口4a、4bとを備えている。燃料電池システム1には、ガス状クロム種と反応する物質を含んだ、或いはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体などのガス透過性構造体を有する少なくとも1つの装置10がさらに含まれている。この装置は、排気ガス7、7a、7bを導き、排気ガスによって運ばれるクロム種を分離するために、出口4a、4bのうちの少なくとも一つと連通している。
【0032】
有利な一実施例では、燃料電池システム1には、排気ガス中に含まれる電池スタック2で変換されなかった燃料ガスを燃焼させるためのアフタバーナ11がさらに含まれる。便宜的に、動作中、燃料ガスを含む排気ガスは出口4bから供給され、酸化剤を含む排気ガスは出口4aから供給される。装置10は、アフタバーナ11の前段に配置することもできる。或いは、図1に示されているようにアフタバーナ11の後段に配置することもでき、その場合、電池スタック2からのガス状クロム種と、任意選択で、排気ガス7中に含まれるアフタバーナからの他のガス状クロム種の両方が装置10を介して導かれる。
【0033】
他の有利な一実施例では、燃料電池システム1には電池スタック2及び任意選択でアフタバーナ11及び/又は燃料電池システムの他のバーナを取り囲む熱絶縁体12がさらに含まれており、装置10は、この熱絶縁体の中に配置されることが有利である。
【0034】
この実施例の場合、電池スタック2には、典型的には600℃〜1000℃の温度で動作するいわゆる高温燃料電池、例えば固体酸化物型燃料電池(SOFC)が含まれる。アフタバーナ11の出力部分の排気ガス7は、動作中、1000℃の温度に達することがある。熱絶縁体12が使用される場合、熱絶縁体の内部12’の温度は、通常500℃である。
【0035】
排気ガスの廃熱を利用するために、必要に応じて1つ又は複数の熱交換器9.1、9.2を燃料電池システム1に設けることができる。例えば、熱交換器9.1が熱絶縁体の内部12’に配置され、この熱交換器9.1を介して、例えば電池スタック2への供給に先立って装置10からの排気ガス7.1が導かれ、それにより酸化剤5が加熱される。しかし、熱交換器9.1は、装置10の前段に配置することも可能であり、アフタバーナ11に直接接続することも可能である。
【0036】
さらに、図1に示されるように、第2の熱交換器9.2を燃料電池システム1に設けることができ、この第2の熱交換器9.2を介して排気ガス7.2が第1の熱交換器から導かれる。第2の熱交換器は、熱絶縁体の外側に配置されることが有利であり、例えば加熱回路16に接続することができる。第2の熱交換器からの排気ガス7.3は環境中に放出することができるように、ここで十分に冷却され、必要に応じて排気ガスからの凝縮物を収集するための凝縮物タブ13を設けることができる。
【0037】
高い効率を達成するために、燃料ガスの戻りを使用して燃料電池システムを動作させることができる。この点に関して、より良好な発熱量の利用を達成し、供給される燃料ガスの改質、すなわち処理のために存在している水を使用するために、未消費燃料ガス及び水蒸気を含むアノード側の電池スタックの排気ガスの一部が、燃料ガスの流れに直接に導かれる。しかしながら、排気ガスの流れでは、バイポーラ・プレートのアノード側からガス状クロム種が同時に運ばれるため、リフォーマの触媒材料が危険にさらされ、燃料ガス中のクロム濃度が高いためにアノードが損傷することがある。
【0038】
図2は、本発明による、燃料ガスの戻りを使用した燃料電池システムの第2の実施例を示したものである。図2に示されている燃料電池システム1には電気化学反応を実行するための電池スタック2が含まれ、例えば空気などの酸化剤5及び例えば炭化水素などの燃料ガス6のための入口3a、3bと、排気ガス7a、7bのための出口4a、4bとを備えている。燃料電池システム1には、さらに、ガス状クロム種と反応する物質を含む、或いはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体などのガス透過性構造体を有する少なくとも1つの装置10.1、10.2が含まれる。これらの装置10.1、10.2は、排気ガス7、7a、7bを導き、排気ガスによって運ばれるクロム種を分離するために、出口4a、4bのうちの少なくとも一つと連通している。
【0039】
第2の実施例は、アノード・ガスの戻りが提供されている点でのみ第1の実施例と異なっている。したがって、実施可能な変形形態及び実施例についての説明の反復は以下では省略し、実施可能な変形形態及び実施例については上記説明を参照する。
【0040】
図2に示されている実施例では、未変換燃料ガスを含む排気ガス7b、すなわちアノード側の排気ガスのための出口4bは、水蒸気及び未変換燃料ガスを再循環させるために、分岐及び追加装置10.2を介して電池スタック2の燃料ガス供給部6に接続されている。追加装置10.2には、未変換燃料ガスを含む排気ガス7bを、装置を介して導き、排気ガス7bによって運ばれるクロム種を分離するために、ガス透過性構造体、例えばガス状クロム種と反応する物質を含む、或いはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体が含まれる。このようにして処理された排気ガス7bが、引き続いて、新鮮な燃料ガスと共に燃料ガス供給部6に供給される。
【0041】
また、燃料電池システムは、加水分解システム、例えば高温加水分解システム(逆SOFC)として動作させることも可能である。加水分解動作の場合、電気化学電池は電流を使用して充電される。H及びO2−への水蒸気の分解はアノード側で起こる。H及び未消費HOは、出口を通って電池から排出される。イオンは、固体電解質を介してカソード側へ移動し、そこで反応してOが形成され、キャリア・ガスによって電池から運ばれる。アノード側には水分が大量に含まれているため、高温燃料電池システムの通常の動作の場合と同様、凝縮物中に高濃度の六価クロムをもたらすガス状クロム種が、クロムを含有した合金上に形成される。空気がキャリア・ガスとして使用される場合、Oが豊富な質量の流れにもガス状クロム種が含まれる。
【0042】
図3は、本発明による、加水分解動作のための燃料電池システムの第3の実施例を示したものである。図3に示されている燃料電池システム1には電気化学反応を実行するための電池スタック2が含まれ、例えば空気などのキャリア・ガス5’及び水蒸気6’のための入口3a、3bと、排気ガス7a、7bのための出口4a、4bとを備えている。好ましいことには、動作中、排気ガス7a、7bには、キャリア・ガス+O又はH+水蒸気が含まれている。燃料電池システム1には、さらに、ガス透過性構造体、例えばガス状クロム種と反応する物質を含む、或いはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体を有する少なくとも1つの装置10.1が含まれている。この少なくとも1つの装置10.1は、H及び水蒸気を含む排気ガス7bを導き、排気ガスによって運ばれるクロム種を分離するために、出口4bと連通している。
【0043】
第3の実施例の電池スタック2は、通常、電流を使用して電池スタックを充電するために、電線8a、8bを介して電流源8に接続することができる。
【0044】
燃料電池システム1は、必要に応じて、ガス透過性構造体、例えばガス状クロム種と反応する物質を含む、或いはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体を有する第2の装置10.2をさらに含むことができる。この第2の装置10.2は、Oを含む排気ガスを導き、排気ガスによって運ばれるクロム種を分離するために、出口4aと連通している。
【0045】
他の有利な一実施例では、燃料電池システム1には、電池スタック2を取り囲む熱絶縁体12がさらに含まれる。装置10.1、10.2が、この熱絶縁体の内部12’に配置されることが有利である。
【0046】
排気ガス7a、7bの廃熱を利用するために、必要に応じて1つ又は複数の熱交換器9を燃料電池システム1に設けることができる。例えば、熱交換器9を介して、例えば電池スタック2への供給に先立って、H及び水蒸気を含む排気ガス7bが装置10.1から導かれ、それによりキャリア・ガス5’が加熱される。場合によっては、図3に示されているように、第2の熱交換器又は蒸発器15を燃料電池システム1に設けることも可能である。この第2の熱交換器又は蒸発器15を介して、Oを含む排気ガス7aが導かれ、それにより電池スタック2への供給に先立って水6’が蒸発及び/又は加熱される。Oを含む排気ガス7a’は、引き続いて、産業的に危険を伴うことなく再使用することができ、或いは環境中に排出することができる。
【0047】
有利な一実施例によれば、図3に示されているように、燃料電池システムには、H及び水蒸気を含んだ排気ガス7bのためのコンデンサ14がさらに含まれる。図3には、符号7b’により示されたHを水蒸気から分離するためのコンデンサ14が含まれている。この過程で生じる液体水7b’は、蒸発器15に供給されることが有利である。
【0048】
図4は、本発明による装置10であって、電気化学反応を実行するための電池スタックを含む燃料電池システムのための装置10の一実施例を示す。装置10は、酸化剤及び/又はキャリア・ガスのため並びに燃料ガス及び/又は水蒸気のための入口と、排気ガスのための出口とを備える。この実施例では、装置には、ガス透過性構造体10a、例えばガス状クロム種と反応する物質を含む、或いはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体が含まれており、この装置は、この装置を介して排気ガス7を導き、排気ガスによって運ばれるクロム種を分離するために、電池スタックの複数の出口のうちの少なくとも1つ、又は燃料電池システムのアフタバーナに結合することができる。
【0049】
装置のガス透過性構造体は固体であることが有利であり、例えばハニカムの形態で配置され、物質がコーティングされた金属表面から形成することができ、又は物質を含有した若しくは物質がコーティングされたAlなどの不活性セラミック材料でできたセラミック・フォームから、例えば真空濾過を使用して製造することができる。セラミック・フォームは、例えば、いわゆるレプリカ・プロセスに従って製造することができる。このプロセスでは、PUフォームにセラミック・スラリを浸潤させ、過剰セラミック・スラリが絞り出される。引き続いてセラミック・スラリが乾燥され、熱処理が施される。熱処理の間、PUフォームが燃焼し、セラミック・スラリからのセラミックのかたまりが焼結され、PUフォームのポジ型イメージが形成される。
【0050】
ガス透過性構造体は多孔性であることが有利であり、2.54cm(1インチ)当たり10〜20細孔の細孔分布(ppi)を有している。この点に関し、細孔の数は、直線軸線上で示されている。相当分類については、例えばASTM規格D 3576−77を参照されたい。
【0051】
有利な一実施例変形形態では、ガス状クロム種と反応する物質は、例えば元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La及びランタノイドのうちの1つの炭酸塩又は酸化物であってもよく、元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La及びランタノイドのうちの少なくとも2つの混合酸化物であってもよく、灰チタン石構造を有する酸化物セラミックであってもよい。灰チタン石構造を有する酸化物セラミックは、組成ABOを有している。この構造におけるA位置は、元素Mg、Ca、Sr、Ba及びSc、Y、La並びにランタノイドが占有することができる。B位置に対して約50個の異なる元素が知られている。B位置は、通常、例えばTi、Zr、V、Nb、Mn、Fe又はCoによって占有される。また、A位置又はB位置も、それぞれ2つの異なる元素によって占有することができる。このような結晶は、混晶と呼ばれている。灰チタン石構造を有する典型的な酸化物セラミックは、例えば、ガス状クロム種と良好に反応するLa0.6Sr0.4CoOである。
【0052】
装置は、コネクタを除いて閉構造体の中に設けられることが有利である。この目的のためには、ガス透過性構造体は、例えば管の中又は燃料電池システムのリードスルー又は開口中に配置することができる。ガス透過性構造体の設置体積は、電池スタックのサイズに応じて例えば50cmまでの体積、80cmまでの体積、或いはそれを超える体積にすることができる。
【0053】
次に、図1、図2及び図3を参照して、本発明による、酸化剤及び/又はキャリア・ガスのため並びに燃料ガス及び/又は水蒸気のための入口と、排気ガスのための出口とを備えた、電気化学反応を実行するための電池スタックを含む燃料電池システムのための方法の一実施例について説明する。この方法によれば、電池スタック2で電気反応が実行され、排気ガスが生成される。この方法は、排気ガス7、7a、7bが、ガス透過性構造体、例えばガス状クロム種と反応する物質を含む、或いはそうした物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体を含む装置10、10.1、10.2を介して電池スタック2から導かれることを特徴とし、また、排気ガス7、7a、7bによって運ばれるクロム種がこの装置の中で分離されることを特徴としている。装置10、10.1、10.2でのクロム種の分離は、通常、450℃又は500℃の温度、或いはそれよりも高い温度で生じる。分離されるクロム種には、便宜的に六価クロム化合物が含まれている。
【0054】
排気ガス7、7a、7bは、これまでの節で説明した装置のうちの1つを介して導かれることが有利である。
【0055】
この方法の有利な一実施例では、電気化学反応は電流生成反応であり、燃料ガス6及び酸化剤5が電池スタック2に供給され、電池スタック2からの排気ガスが直接又はアフタバーナ11を介して装置10、10.1、10.2に供給される。
【0056】
この方法の他の有利な一実施例では、電気化学反応は加水分解反応であり、水蒸気6’及びキャリア・ガス5’並びに電流が電池スタック2に供給される。
【0057】
以上の説明によれば、燃料電池システム及び燃料電池システムのための装置並びに方法は、凝縮物中のクロム含有量を従来の燃料電池システムに対して50%以上少なくすることができる利点を有している。さらに、上で説明した装置を使用することにより、補外法に基づいて40000時間の耐用年数に到達することが可能であると思われ、したがって装置のための余計な保全は不要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤(5)及び/又はキャリア・ガス(5’)のための、並びに燃料ガス(6)及び/又は水蒸気(6’)のための入口(3a、3b)と、
排気ガス(7a、7b)のための出口(4a、4b)と
を備えた、電気化学反応を実行するための電池スタック(2)を有する燃料電池システム(1)において、
前記燃料電池システム(1)が、ガス透過性構造体、とりわけ、ガス状クロム種と反応する物質を含む、或いはガス状クロム種と反応する物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体(10a)を有する少なくとも1つの装置(10、10.1、10.2)を含み、
前記装置が、前記装置を介して排気ガス(7、7a、7b)を導き、且つ、前記排気ガスによって運ばれるクロム種を分離するために、前記出口(4a、4b)のうちの少なくとも一つと連通していることを特徴とする燃料電池システム(1)。
【請求項2】
前記ガス透過性構造体(10a)は、前記物質がコーティングされた金属表面から形成されているか、又は前記物質を含有した若しくは前記物質がコーティングされた不活性セラミック材料でできたセラミック発泡体から製造されている、請求項1に記載された燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池システムが、前記排気ガス(7b)に含まれる、前記電池スタック(2)の中で変換されなかった燃料ガスを燃焼させるためのアフタバーナ(11)をさらに含み、前記装置(10、10.1、10.2)が前記アフタバーナの後ろに配置される、請求項1又は請求項2に記載された燃料電池システム。
【請求項4】
変換されなかった燃料ガスを含む排気ガス(7b)のための前記出口(4b)が、水蒸気及び変換されなかった燃料ガスを再循環させるために、分岐および追加装置(10.2)を介して前記電池スタック(2)の燃料ガス供給部に接続され、
前記追加装置(10.2)が、ガス透過性構造体、とりわけ、ガス状クロム種と反応する物質を含む、又はガス状クロム種と反応する物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体(10a)を含む、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された燃料電池システム。
【請求項5】
前記装置(10、10.1、10.2)が、コネクタを除いて閉構造体内に設けられ、及び/又は前記装置(10、10.1、10.2)が前記電池スタック(2)の外側に配置される、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載された燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池システムが、前記電池スタック(2)を取り囲む熱絶縁体(12)をさらに含み、単一又は複数の前記装置(10、10.1、10.2)が前記熱絶縁体(12)の中に配置される、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載された燃料電池システム。
【請求項7】
酸化剤(5)及び/又はキャリア・ガス(5’)のため、並びに燃料ガス(6)及び/又は水蒸気(6’)のための入口(3a、3b)と、
排気ガス(7a、7b)のための出口(4a、4b)と
を備えた、電気化学反応を実行するための電池スタック(2)を含む燃料電池システムのための装置(10、10.1、10.2)において、
前記装置(10、10.1、10.2)が、ガス透過性構造体、とりわけ、ガス状クロム種と反応する物質を含む、又はガス状クロム種と反応する物質を備えた多孔性構造体或いはハニカム構造体(10a)を含み、
前記装置を介して排気ガス(7a、7b)を導き、前記排気ガスによって運ばれるクロム種を分離するために、前記装置を前記電池スタックの前記出口の少なくとも一つ、又は前記燃料電池システムのアフタバーナ(11)に結合することができることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記ガス透過性構造体(10a)は、前記物質がコーティングされた金属表面から形成されるか、又は前記物質を含有した若しくは前記物質がコーティングされた不活性セラミック材料でできたセラミック・フォームから製造されている、請求項7に記載された装置。
【請求項9】
前記ガス透過性構造体(10a)が多孔性であり、2.54cm当たり10〜20個の細孔を有する細孔分布を有する、請求項7又は請求項8に記載された装置。
【請求項10】
前記物質が、元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La及びランタノイドのうちの1つの炭酸塩若しくは酸化物であるか、又は元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La及びランタノイドのうちの少なくとも2つの混合酸化物であるか、又は灰チタン石構造を有する酸化物セラミックである、請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項11】
前記装置(10、10.1、10.2)が、コネクタを除いて閉構造体の中に設けられる、請求項7から請求項10までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項12】
酸化剤(5)及び/又はキャリア・ガス(5’)のための並びに燃料ガス(6)及び/又は水蒸気(6’)のための入口(3a、3b)と、
排気ガス(7a、7b)のための出口(4a、4b)と
を備えた、電気化学反応を実行するための電池スタック(2)を含む燃料電池システムのための方法であって、前記電池スタックで電気化学反応が実行されて排気ガスが生成される、前記方法において、
前記電池スタック(2)からの排気ガス(7a、7b)が、装置(10、10.1、10.2)を介して、とりわけ、ガス透過性構造体、とりわけガス状クロム種と反応する物質を含む或いはガス状クロム種と反応する物質を備えた多孔性構造体又はハニカム構造体(10a)を含む請求項7から請求項11までのいずれか一項に記載されている装置を介して導かれること、および
前記排気ガスによって運ばれるクロム種が前記装置の中で分離されることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記分離されるクロム種が六価クロム化合物を含む、請求項12に記載された方法。
【請求項14】
前記電気化学反応が電流生成反応であり、燃料ガス(6)及び酸化剤(5)が前記電池スタック(2)に供給され、前記電池スタックからの前記排気ガス(7a、7b)が、直接又はアフタバーナ(11)を介して、前記装置(10、10.1、10.2)に供給される、請求項12又は請求項13に記載された方法。
【請求項15】
前記電気化学反応が加水分解反応であり、水蒸気(6’)及びキャリア・ガス(5’)並びに電流が前記電池スタック(2)に供給される、請求項12又は請求項13に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−165666(P2011−165666A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27470(P2011−27470)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(597087033)ヘクシス アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】