説明

燃料電池システム

【課題】エア逃がし弁における周辺が汚れることを抑制させる燃料電池システムが提供される。
【解決手段】システムは、燃料電池1を有する発電系18と、発電系18から排出される排気ガスを通過させるための排気ガス通路75と、発電系18の作動に伴い発生した凝縮水を溜める改質水貯留系4Aと、貯湯槽77と、循環通路78と、水循環源79と、循環通路78に残留するエアを含み得る水を吐出させるエア逃がし弁9と、排気ガス通路75を流れる排気ガスと循環通路78を流れる水とを熱交換させる熱交換器76と、エア逃がし弁9から排出されるエアを含み得る水を排気ガス通路75および改質水貯留系4Aのうちの少なくとも一方に逃がすエア逃がし操作を行う逃がし通路96とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯槽から導出されている循環通路を流れる水に含まれているエアを水と共に循環通路の外部に吐出させるエア逃がし弁を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エア逃がし弁をもつ燃料電池システムを開示する。この燃料電池システムは、アノードガスおよびカソードガスが供給されて発電する燃料電池をもつ発電系と、発電系において発生した高温の排気ガスを発電系から外部に排出させるための排気ガス通路と、燃料電池の作動に伴い発生した凝縮水を溜める改質水貯留系と、温水を貯留する貯湯槽と、貯湯槽の外部において貯湯槽の吐水口と入水口とを繋ぐ循環通路と、貯湯槽の貯湯室の水を循環通路を介して循環させる循環ポンプと、排気ガス通路を流れる高温の排気ガスと循環通路を流れる低温の水とを熱交換させる熱交換器とを備える。
【0003】
このものによれば、循環通路には、循環通路に残留するエアを含む水を吐出させるためのエア逃がし口をもつエア逃がし弁が設けられている。この場合、循環通路に残留するエアを循環通路のエア逃がし弁から吐出させることができるため、循環通路にエアが残留するときであっても、エアはエア逃がし弁から吐出されて除去される。なお、循環通路に多量のエアが残留する場合には、熱交換器の熱交換機能が低下するおそれがある。具体的には、循環通路におけるエアの存在により、水の通過抵抗が増加し、循環通路における水の循環性が影響されるおそれがある。更には、排気ガス通路を流れる高温の排気ガスと、循環通路を流れる低温の水とを熱交換させる熱交換効率が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-228606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記した燃料電池システムによれば、循環通路に残留するエアを水と共に循環通路のエア逃がし弁から吐出させることができるものの、その水はエア逃がし弁の周辺に廃棄されるため、エア逃がし弁の周辺が汚れるおそれがある。この場合、他の部品も汚れ、耐久性および寿命が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、循環通路に残留するエアを逃がしエア逃がし操作において、エア逃がし弁から吐出されるエア逃がし水によりエア逃がし弁における周辺が汚れることを抑制させる燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の様相1に係る燃料電池システムは、(i)アノード流体およびカソード流体が供給されて発電するための燃料電池をもつ発電系と、(ii)発電系から排出される排気ガスを通過させるための排気ガス通路と、(iii)発電系の作動に伴い発生した凝縮水を溜める改質水貯留系と、(iv)温水を貯留する貯湯室と貯湯室に連通する吐水口および入水口をもつ貯湯槽と、(v)貯湯槽の外部において貯湯槽の吐水口と入水口とを繋ぐ循環通路と、(vi)循環通路に設けられ貯湯槽の貯湯室の水を循環通路を介して循環させる水循環源と、(vii)循環通路に設けられ循環通路に残留するエアを含み得るエア逃がし水を吐出させるためのエア逃がし口をもつエア逃がし弁と、(viii)排気ガス通路および循環通路に接続され排気ガス通路を流れる排気ガスと循環通路を流れると共に前記排気ガス通路の排気ガスよりも相対的に低温の水とを熱交換させる熱交換器と、(ix)排気ガス通路および改質水貯留系のうちの少なくとも一方とエア逃がし弁のエア逃がし口とを接続させ、エア逃がし弁のエア逃がし口から排出されるエアを含み得るエア逃がし水を少なくとも一方に逃がすエア逃がし操作を行う配管で形成された逃がし通路とを具備する。
【0008】
本様相によれば、逃がし通路は配管を構成しており、排気ガス通路および改質水貯留系のうちの少なくとも一方とエア逃がし弁のエア逃がし口とを接続させている。このため、エア逃がし操作が行われると、エア逃がし弁のエア逃がし口から排出されるエアを含み得るエア逃がし水を、排気ガス通路および改質水貯留系のうちの少なくとも一方に、逃がし通路を介して逃がす。このため燃料電池システムにおいて、エア逃がし弁の周辺にエア逃がし水が飛散して汚れることが抑制される。
【0009】
ここで、排気ガス通路および改質水貯留系は、エアおよび水の双方の排出を許容する部位であり、少なくとも一部を大気に開放させている。改質水貯留系は、改質水を溜める水タンク、および、凝縮水を精製させて浄化させる浄水部のうちの少なくとも一つを有することができる。
【0010】
(2)本発明の様相2に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、改質水貯留系は水を精製させる第1水精製材を有しており、エア逃がし水が逃がされる前記一方は改質水貯留系であり、エア逃がし弁のエア逃がし口から排出されるエア逃がし水を、逃がし通路を介して移送させて第1水精製材で精製させ、改質水として利用する。
【0011】
本様相によれば、エア逃がし水が改質水貯留系に移送されるため、エア逃がし水を第1水精製材で精製させて改質水貯留系の改質水(改質用の水)として利用できる。この場合、改質水貯留系は、エア逃がし水を精製して浄化できる第1水精製材を有する。第1水精製材はイオン交換樹脂を例示できる。
【0012】
(3)本発明の様相3に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、排気ガス通路は、排気ガスを外気に放出させるガス出口に連通しており、エア逃がし水が逃がされる一方は排気ガス通路であり、エア逃がし水は排気ガス通路のガス出口から外気に放出される。本様相によれば、エア逃がし操作においてエア逃がし弁から吐出されたエア逃がし水(循環通路の水)は、排気ガス通路に移送され、ガス出口から外気に放出される。エア逃がし水の純水度が低いときであっても、システムに影響を与えずに対処できる。
【0013】
(4)本発明の様相4に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、貯湯槽の貯湯室に給水するための給水弁が設けられ、エア逃がし弁および水循環源を制御させる制御部が設けられており、施工者、ユーザ等により給水弁を開放させて貯湯槽の貯湯室に水を供給させる給水操作が実行され、給水操作の実行中または給水操作の終了後に、貯湯室に水を供給させた状態において、制御部は、水循環源を駆動させて貯湯室の水を吐水口から吐出させて入水口に帰還させることにより貯湯室の水を循環通路を介して循環させる循環操作と、循環操作の少なくとも一時期においてエア逃がし弁を開放させることによりエア逃がし操作と、を実行する。
【0014】
本様相によれば、給水弁を開放させて貯湯槽の貯湯室に水を供給させる給水操作の実行中または給水操作の終了後に、制御部は、貯湯室に水を供給させた状態において水循環源を駆動させて貯湯室の水を吐水口から吐出させて入水口に帰還させることにより、貯湯室の水を循環通路を介して循環させる循環操作を実行する。制御部は、循環操作の少なくとも一時期において、エア逃がし弁を開放させることにより、循環通路に対して水エア逃がし操作を実行する。この場合、水エア逃がし操作によりエア逃がし弁から吐出されたエア逃がし水を、排気ガス通路または改質水貯留系に逃がす。本様相によれば、貯湯槽への給水と併せてエア逃がし操作を行い得る。
【0015】
(5)本発明の様相5に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、エア逃がし操作においてエア逃がし弁から吐出されたエア逃がし水は、改質水貯留系に移送されて改質ユニットの水張りを行い、制御部は、改質水貯留系に貯留される水の水位が規定水位以上のとき、エア逃がし操作を終了すると共に改質水貯留系における水張りを終了する。水エア逃がし操作によりエア逃がし弁から吐出されたエア逃がし水を、改質水貯留系に逃がして移送させても改質水貯留系の水張りを行うことができる。この場合、改質水貯留系に貯留される水の水位が規定水位以上のとき、改質水貯留系における水張り動作が終了される。このように本様相によれば、循環通路のエア逃がし操作と改質水貯留系における水張り動作とが併行されて実施されるため、時間が節約される。
【0016】
(6)本発明の様相6に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、逃がし通路は、逃がし通路を流れる水を精製させる第2水精製材を有しており、改質水貯留系に接続されている。エア逃がし弁から逃がし通路を流れるエア逃がし水は、逃がし通路に設けられた第2水精製材により精製されて浄化され、浄化された状態で改質水貯留系に移送される。このため、改質水貯留系の汚れが抑制される。第2水精製材はイオン交換樹脂等を例示できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明に係る燃料電池システムによれば、循環通路に残留するエアを逃がすエア逃がし操作において、エア逃がし弁から吐出されるエア逃がし水によりエア逃がし弁における周辺が汚れることを抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係り、燃料電池システムを示す図である。
【図2】実施形態1に係り、制御部の入力および出力の関係を示すブロック図である。
【図3】実施形態3に係り、燃料電池システムを示す図である。
【図4】実施形態4に係り、制御部が実行するフローチャートである。
【図5】実施形態5に係り、燃料電池システムを示す図である。
【図6】実施形態6に係り、燃料電池システムを示す図である。
【図7】実施形態7に係り、燃料電池システムを示す図である。
【図8】実施形態8に係り、燃料電池システムを示す図である。
【図9】実施形態9に係り、燃料電池システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
エア逃がし弁は、改質水貯留系の上方に設けられていることが好ましい。重力を利用して、エア逃がし水をエア逃がし弁から改質水貯留系に流下させ得るためである。但し、水循環源によりエア逃がし水をエア逃がし弁から改質水貯留系に移送させ得るときには、エア逃がし弁は、改質水貯留系の下方に設けられていても良い。貯湯槽への水張り時において、エア逃がし操作を行い得る。改質水貯留系への水張り時に併せてエア逃がし操作を行い得る。水張りとは、規定水位まで水を供給させることをいう。
【0020】
以下、本発明の各実施形態について説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1および図2は実施形態1の概念を示す。図1に示すように、燃料電池システムは発電モジュール18(発電系)を有する。発電モジュール18は、燃料電池1と、液相状の水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部2と、蒸発部2で生成された水蒸気を用いて原料ガス(例えば都市ガス)を改質させて水素を主要成分(例えば30モル%以上)として含むアノードガス(アノード流体)を形成する改質部3とを有する。更に、燃料電池システムは、蒸発部2に供給される液相状の水を精製させて貯留する改質水貯留系4Aと、これらを収容する筐体として機能するケース5とを有する。燃料電池1は、イオン伝導体を挟むアノード10とカソード11とをもち、例えば、SOFCとも呼ばれる固体酸化物形燃料電池に適用できる。
【0022】
改質部3は、一般的には、セラミックス等の担体に改質触媒を担持させて形成されており、蒸発部2に隣設されている。改質部3および蒸発部2は改質器2Aを構成しており、燃料電池1と共に断熱壁19で包囲され、発電モジュール18(発電系)が形成される。発電運転時には、改質器2Aは改質反応に適するように断熱壁19内において加熱される。発電運転時には、蒸発部2は水を加熱させて水蒸気とさせ得るように加熱される。燃焼部105は改質部3および蒸発部2を加熱させる。燃料通路6は、都市ガス配管等の燃料源63からの燃料を改質器2Aに供給させるものであり、遮断弁69、脱硫器62、燃料ポンプ60および流量センサ64をもつ。配置順は特に限定されない。燃料電池1のカソード11には、カソードガス(空気、カソード流体)をカソード11に供給させるためのカソードガス通路70が繋がれている。カソードガス通路70には、カソードガス搬送用のガス搬送源として機能するカソードポンプ71、流量センサ72が設けられている。
【0023】
図1に示すように、ケース5は、外気に連通する吸気口50と、排気ガスを外気に放出させるための排気口51と、吸気口50付近(外気)の温度を検知する温度センサ57とをもつ。温度センサ57は必要に応じて設ければ良い。ケース5には、改質部3で改質される液相状の水を溜める改質水貯留系4Aが配置されている。改質水貯留系4Aは、第1水精製材43aを有する浄水部43と、浄水部43で浄化された水を改質水として溜める水タンク4とを備えている。浄水部43と水タンク4とは水通路45で繋がれている。水タンク4の水位を検知するための水位センサ4sが、水タンク4に設けられている。
【0024】
図1に示すように、重力を利用して凝縮水を流すように、水タンク4および浄水部43を有する改質水貯留系4Aは、発電モジュール18(発電系)の下側に位置するように配置されている。水タンク4内の水を排出させる排水路40kおよび排水バルブ40mが改質水貯留系4Aの一部として水タンク4に設けられている。水タンク4からオーバーフローした水は、オーバーフロー通路47を介して図略の排水部に排出される。更に、電気ヒータ等の加熱機能をもつ加熱部40が設けられている。加熱部40は、水タンク4に貯留されている水を加熱させるものであり、電気ヒータ等で形成できる。加熱部40は必要に応じて搭載できる。なお、水タンク4内の余剰の水量は、オーバーフロー通路47を介して排出されるため、発電運転時において基本的にはほぼ同一となるようにされていることが好ましい。
【0025】
図1に示すように、水タンク4の吐出口4pと蒸発部2の入口ポートとを連通させる給水通路8が、配管としてケース5内に設けられている。図1に示すように、ケース5内において、水タンク4は蒸発部2の下側に配置されている。給水通路8は、水タンク4内に溜められている水を水タンク4の吐出口4pから蒸発部2の入口ポートに向けて蒸発部2に供給させる通路である。給水通路8には、水タンク4内の水を蒸発部2まで搬送させる水搬送源として改質水ポンプ80が設けられている。なお改質水ポンプ80は水タンク4の吐出口4pにおいて水タンク4と一体的に設けられていても良い。給水通路8において、改質水ポンプ80の下流で且つ蒸発部2の上流において水センサ87が設けられている。水センサ87は給水通路8において蒸発部2の入口ポートの直前に配置されていることが好ましい。
【0026】
図2に示すように、制御部100は、入力処理回路100a、出力処理回路100b、タイマー計測機能をもつCPU100c、メモリ100mとを有する。制御部100は、改質水ポンプ80、カソードポンプ71、燃料ポンプ60、遮断弁69、エア逃がし弁9を制御することができる。図2に示すように、水センサ87、温度センサ57、水張り開始スイッチ130、タンク4の水位センサ4sの検知信号が制御部100にそれぞれ入力される。水張り開始スイッチ130は、貯湯槽77または改質水貯留系4Aへの水張りを開始させる指令を出力するために、操作盤等に設けられている。
【0027】
本実施形態によれば、図1に示すように、貯湯槽77はケース5の外部に設けられており、槽ケース77d内に収容されている。貯湯槽77に、水道水等の水を供給させるための補充通路77kおよび給水弁77vが設けられている。貯湯槽77から循環通路78がケース5の内部に向けて導出されている。循環通路78は、貯湯槽77の下部の吐水口77pから熱交換器76に向かう往路78aと、熱交換器76から貯湯槽77の上部の入水口77iに向かう復路78cとを有する。往路78aに循環ポンプ79(水循環源)が設けられている。
【0028】
復路78cには、エア逃がし口90をもつエア逃がし弁9(逃がし弁)が設けられている。エア逃がし弁9は、電磁弁等のアクチュエータで開閉される弁が好ましいが、手動式の弁でも良い。エア逃がし弁9は、ケース5内において復路78cのうちのできるだけ上部に設けられていることが好ましい。循環通路78においてエアは上側に移行する傾向があるためである。但し、必要に応じて、エア逃がし弁9は往路78aに設けることにしても良い。図1に示すように、エア逃がし弁9はケース5内において、熱交換器76と入水口77iとの間に設けられている。ケース5内において、逃がし通路96の配管の一端部96eは、エア逃がし弁9のエア逃がし口90に接続されている。ケース5内において、逃がし通路96の配管の他端部96fは、排気ガス通路75のうち熱交換器76よりも下流の部位に接続されている。
【0029】
排気ガス通路75は、ケース5内において、発電モジュール18の出口18pからケース5に設けられたガス出口75pに向けて導出されている。排気ガスはガス出口75pからケース5の外気に放出される。排気ガス通路75は分岐部75mを介して凝縮水通路42に繋がれている。分岐部75mはエア逃がし弁9からの配管が接続される96fよりも下方に位置することが好ましい。それは、エア逃がし水を重力を利用して分岐部75mに移送させるためである。排気ガス通路75を流れる高温の排気ガスは、熱交換器76で冷却されるため、排気ガスに含まれる水蒸気は凝縮されて凝縮水を生成させる。生成された凝縮水は、凝縮水通路42を介して重力により浄水部43に至る。浄水部43に至った凝縮水は第1水精製材43aにより生成されて純水として浄化される。
【0030】
システムを起動させるときには、制御部100は、発電モードに先だって暖機モードを実行する。暖機モードでは、制御部100は、遮断弁69を開放させた状態で、燃料ポンプ60を駆動させて原料ガスを燃料通路6を介して発電モジュール18の蒸発部2、改質部3および燃料電池1を介して燃焼部105に供給させる。制御部100はカソードポンプ71も駆動させ、カソードガス通路70を介して空気(カソードガス、カソード流体)を発電モジュール18のカソード11を介して燃焼部105に供給させる。図略の着火部が着火すると、燃焼部105において原料ガスが空気により燃焼する。燃焼部105における燃焼熱により、改質部3、蒸発部2および燃料電池1が加熱される。さらに改質部3および蒸発部2が所定温度以上となると、改質水ポンプ80を駆動し改質部3での改質反応を開始し、改質ガスとカソードガスが燃焼部105で燃焼され、燃料電池1を加熱する。改質部3、蒸発部2および燃料電池1が所定の温度域に加熱されると、制御部100は暖機モードを終了させ、発電モードに移行させる。
【0031】
制御部100は改質水ポンプ80を駆動させると、水タンク4内の液相状の改質水は、水タンク4の吐出口4pから給水通路8を搬送され、水センサ87を介して蒸発部2に供給される。改質水は、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は、燃料通路6から供給される燃料(ガス状が好ましいが、場合によっては液相状としても良い)と共に改質部3に移動する。改質部3において原料ガスは、水蒸気で改質されてアノードガス(水素含有ガス、アノード流体)となる(吸熱反応)。アノードガスはアノードガス通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソードポンプ71が駆動してカソードガス(酸素含有ガス、ケース5内の空気、カソード流体)がカソードガス通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。
【0032】
暖機モードおよび発電モードにおいて、発電モジュール18で発生した高温の排気ガスは、排気ガス通路75を介してケース5の外方に排気される。排気ガス通路75の途中には、凝縮機能をもつ熱交換器76が設けられている。図1に示すように、貯湯槽77に繋がる循環通路78および循環ポンプ79(水循環源)が設けられている。循環通路78は往路78aおよび復路78cをもつ。貯湯槽77の低温の水は、循環ポンプ79の駆動により、貯湯槽77の下側に設けられている吐水口77pから吐出されて往路78aを通過し、熱交換器76に至り、熱交換器76で排気ガスにより加熱される。熱交換器76で加熱された水は、復路78cを介して入水口77iから貯湯槽77に帰還する。このようにして貯湯槽77の水が循環するため、温水となる。前記した高温の排気ガスに含まれていた水蒸気は、熱交換器76で冷却されるため、凝縮されて凝縮水となる。凝縮水は、熱交換器76から延設された凝縮水通路42を介して重力により浄水部43に流下される。従って、浄水部43および水タンク4は発電モジュール18の下側に位置する。
【0033】
浄水部43はイオン交換樹脂等の水精製剤43aを有するため、凝縮水の不純物は除去される。即ち、凝縮水は精製させて浄化されて純水化される。不純物が除去された水は浄水部43から水通路45を通過し、水タンク4に移動し、水タンク4に改質水(改質水用の水)として溜められる。ここで、改質水ポンプ80が駆動すると、水タンク4内の改質水は給水通路8を介して高温の蒸発部2に供給され、蒸発部2で水蒸気とされて改質部3に供給され、改質部3において燃料を改質させる改質反応として消費される。ここで、発電運転において、蒸発部2に供給させる単位時間あたりの改質水は、改質反応におけるS/C値の適正範囲に基づいて決定されることが好ましい。S/C値は、水蒸気改質において水蒸気(steam)と、炭素成分を含む原料ガスである原料ガス(carbon)とのモル比の比率を意味する。水蒸気改質の一般的は式(1)とされている。
(1)…C+nHO→nCO+[(m/2)+n]H
n=1、m=4の場合には、メタンを水蒸気改質させる。上記式において、S/C値=nHO/C=2n/n=2が基準となる。発電モジュール18の保護性を考慮すると、一般的には、S/C値は2.5〜3.0が好ましい範囲とされている。但しこれに限定されるものではない。
【0034】
本実施形態に係る燃料電池システムによれば、発電運転中においては、発電モジュール18の出口18pから排気ガス通路75に排出される排気ガスは高温であり、改質器2Aで発生した水蒸気を含む。このように水蒸気を含む高温の排気ガスは、熱交換器76で冷却されるため、水蒸気は冷却されて凝縮水となり、凝縮水通路42を経て浄水部43に重力により流下する。ここで、熱交換器76で生成される凝縮水の単位時間あたりの流量をW1とし、水タンク4から蒸発部2に移行して水蒸気として消費される改質水の単位時間あたりの流量をW2とするとき、W1≧W2の関係となる。このため、発電運転中において、本実施形態に係る燃料電池システムは、基本的には、外部から水を改質水貯留系4Aに補給せずとも良い水自立システムである。但し、燃料電池システムを設置場所に新しく設置するとき、長あるいは、期間使用時には改質水貯留系4Aの水タンク4および浄水部43に水を新しく補給することが好ましい。
【0035】
本実施形態によれば、逃がし通路96はパイプ状の配管で形成されている。図1に示すように、逃がし通路96の一端部96eは、エア逃がし弁9のエア逃がし口90に接続されている。逃がし通路96の他端部96fは排気ガス通路75の中間部75xに接続されている。中間部75xは排気ガス通路75のうちガス出口75pと熱交換器76との間に位置する。このため、エア逃がし弁9を開放させてエア逃がし操作が行われるとき、エア逃がし弁9のエア逃がし口90から排出されるエアを含み得るエア逃がし水を、逃がし通路96を介して排気ガス通路75の中間部75xに逃がす。このため燃料電池システムにおいて、エア逃がし弁9の周辺にエア逃がし水が飛散することが抑制される。従って、飛散したエア逃がし水によりケース5内が汚れることが回避され、ケース5内の他の部品の耐久性および長寿命化に貢献できる。
【0036】
エア逃がし水に含まれる液相状の水は、排気ガス通路75の中間部75xから重力により分岐部75mを介して凝縮水通路42に至り、更に重力により浄水部43に移送され、浄水部43の第1水精製材43aにより精製されて浄化されて純水化され、水通路45を介して水タンク4に向けて改質水として浄水部43の水圧(大気圧及び水頭差)により移送される。従って、排気ガス通路75において、中間部75xと分岐部75mとの間の通路部分75hは、重力を利用して流水できるように、中間部75xから分岐部75mに向けて下降するように傾斜していることが好ましい。
【0037】
本実施形態によれば、上記したようにエア逃がし水は、改質器2Aに供給される改質水として使用できる。このようにエア逃がし操作においてエア逃がし弁9のエア逃がし口90から吐出された水は、改質水として再利用される。この場合、ランニングコストの低減化に有利である。従って、改質水貯留系4Aはエア逃がし弁9からの合流点75xよりも下方に位置することが好ましい。エア逃がし弁9からのエア逃がし水を重力を利用して改質水貯留系4Aに移送させるためである。
【0038】
エア逃がし水に含まれていた気相状のエアは、排気ガス通路75をガス出口75pに向けて流れ、ガス出口75pからケース5の外部に放出される。あるいは、水と共に分岐部75mを介して凝縮水通路42に至り、更に浄水部43に移送されても良い。浄水部43は大気連通口43wを介してケース5内の大気に連通されているため、ケース5内に放出される。
【0039】
(実施形態2)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を奏する。本実施形態においても実施形態1と同様に、エア逃がし弁9の周辺にエア逃がし水が飛散することが抑制される。従って、飛散したエア逃がし水によりケース5内が汚れることが回避され、ケース5内の他の部品の耐久性および長寿命化に貢献できる。
【0040】
また本実施形態によれば、燃料電池システムが設置場所に新しく設置されるとき、あるいは、長期放置後で貯湯槽77の水が抜かれているときには、貯湯槽77の貯湯室77rが空状態である。このため貯湯槽77の貯湯室77rの水張りが行われる。貯湯槽77の水張り時において、循環通路78の水にエアが残留するおそれがある。循環通路78の水に残留するエアを逃がさないと、熱交換器76において、排気ガス通路75を流れる高温の排気ガスの熱が循環通路78の水に効率よく熱交換されないおそれがある。この場合、熱交換器76が過熱され、過熱に起因して熱交換器76が故障したりする。更に、残留するエアの影響で、循環通路78において単位時間あたりの水搬送量が少なくなるおそれがある。
【0041】
そこで本実施形態によれば、循環通路78のエアを流すエア逃がし操作を貯湯槽77の水張り時において行う。即ち、貯湯槽77の水張りにおいて、給水弁77vを開放させて貯湯槽77の貯湯室77rに補充通路77kから水を供給させる給水操作が行われる。給水操作により貯湯室77rの水量が次第に増加する。給水操作の実行中または給水操作の終了後において、貯湯室77rに規定量以上の水が供給されている状態で、制御部100は、循環ポンプ79(水循環源)を規定回転数(rpm)で駆動させ、貯湯室77rの水を吐水口77pから吐出させて循環通路78を通過させて入水口77iに帰還させることにより、貯湯室77rの水を循環通路78を介して複数回にわたり循環させる循環操作を行う。このような循環操作の少なくとも一時期において、エア逃がし弁9のエア逃がし口90を開放作動させるエア逃がし操作が行なわれる。この結果、貯湯室77rまたは循環通路78に残留するエアは、エア逃がし弁9のエア逃がし口90から逃がし通路96を介して排気ガス通路75に排出される。
【0042】
更に、前述した実施形態のように、排気ガス通路75に排出されたエア逃がし水に含まれる液相状の水は、分岐部75mを介して凝縮水通路42に至り、更に重力により浄水部43に移送され、浄水部43の第1水精製材43aにより精製されて浄化されて純水化され、水通路45を介して水タンク4に移送される。従って、エア逃がし操作が経過するにつれて、改質水貯留系4Aを構成する浄水部43および水タンク4の水位が次第に上昇する。水タンク4の水位センサ4sが水タンク4の規定水位(ほぼ満水状態)を検知したら、エア逃がし弁9のエア逃がし口90が閉鎖される。
【0043】
上記したように本実施形態によれば、エア逃がし操作においてエア逃がし弁9のエア逃がし口90から吐出されたエア逃がし水は、改質水貯留系4Aに貯留されて改質水として再利用される。このように循環通路78に残留するエアを逃がしエア逃がし操作と併せて、改質水貯留系4Aを構成する浄水部43および水タンク4の水張り操作も同様に行い得る。これにより燃料電池システムの施工時間の短縮、施工操作性の向上を図り得る。
【0044】
(実施形態3)
図3は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を奏する。本実施形態においても実施形態1と同様に、エア逃がし弁9の周辺にエア逃がし水が飛散することが抑制される。従って、飛散したエア逃がし水によりケース5内が汚れることが回避され、ケース5内の他の部品の耐久性および長寿命化に貢献できる。但し、エア逃がし弁9はケース5内に設けられているものの、手動で開閉される手動弁とされている。施工業者やメンテナンス者などがケース5の扉5rを開放させてエア逃がし弁9を手動で操作することができる。
【0045】
(実施形態4)
図4は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1〜3と基本的には同様の構成および同様の作用効果を奏するため、図1および図2を準用する。本実施形態においても実施形態1と同様に、エア逃がし弁9の周辺にエア逃がし水が飛散することが抑制される。従って、飛散したエア逃がし水によりケース5内が汚れることが回避され、ケース5内の他の部品の耐久性および長寿命化に貢献できる。エア逃がし弁9は、制御部100からの指令で開閉する電磁弁とされている。
【0046】
本実施形態によれば、燃料電池システムが設置場所に設置されるとき、あるいは、長期放置後で貯湯槽77の水が抜かれているときには、貯湯槽77の貯湯室77rが空状態である。このため貯湯槽77の貯湯室77rの水張りが行われる。水張りは次のように行うことができる。施工者、ユーザ等により給水弁77vを開放させて貯湯槽77の貯湯室77rに補充通路77kを介して新しい水(水道水等の原水)を供給させる給水操作が行われる。制御部100は、(i)給水操作の実行中または給水操作の終了後に、貯湯室77rに水が供給されている状態において、循環ポンプ79(水循環源)を回転駆動させて、貯湯室77rの水を吐水口77pから循環通路78に吐出させて入水口77iに帰還させることにより、貯湯室77rの水を循環通路78を介して複数回循環させる循環操作と、(ii)循環操作の少なくとも一時期において、エア逃がし弁9を開放させるエア逃がし操作と、を実行する。この結果、エア逃がし弁9から吐出されたエア逃がし水は、前述したように浄水部43を介して水タンク4に移送され、水タンク4の水位を上昇させる。水タンク4の水位が規定水位以上になれば、制御部100はエア逃がし弁9を閉鎖させてエア逃がし操作を終了させることが好ましい。水タンク4の水位が規定水位以上になることは、エア逃がし弁9が開放している時間を、タイマー機能を有する制御部100が計測すること、あるいは、水タンク4の水位センサ4sの検知信号に基づいて検知することができる。上記したように本実施形態によれば、循環通路78のエア逃がし操作と、改質水貯留系4Aの水張り操作とを併行させて行うことができ、施工業者などが行う操作を簡素化できる。
【0047】
本実施形態によれば、前述したように、貯湯槽77の貯湯室77rに供給されている水(例えば水道水等の原水)を循環通路78および逃がし通路96を介して浄水部43に移送させ、浄水部43の第1水精製材43aで精製させることができる。そして、第1水精製材43aで精製させた水を改質水として水タンク4に供給させて改質水貯留系4Aの水張りを行う。このため、施工、メンテナンス等にあたり、施工業者、メンテナンス者等は、改質水貯留系4Aに補給するための重量物でもある純水を貯蔵させた純水タンクを設置場所やメンテナンス場所に逐一持ち運ばなくても良い利点が得られる。
【0048】
図4は実施形態4に係る制御則の一例を示す。制御則は図4に限定されるものではない。図4に示すように、施工者、ユーザ等が給水弁77vを開放させて、貯湯槽77の貯湯室77rに水(例えば水道水)を供給させる給水操作が行われる(ステップS2)。
【0049】
ここで、貯湯室77rの水位が所定水位になったか否かは、給水弁77vを開放している時間、あるいは、貯湯室77rに水位センサが搭載されているときには、水位センサの検知信号に基づいて判定される(ステップS4)。また、貯湯槽内の圧力を検出する圧力スウィッチ等で水道水圧がかかったことを検知しても良い。
【0050】
このように貯湯室77rに水が供給されている状態において、制御部100は循環ポンプ79(水循環源)をオンさせて(ステップS6)、貯湯室77rの水を吐水口77pから吐出させて入水口77iに帰還させることにより、貯湯室77rの水を循環通路78を介して循環させる循環操作を行う。循環通路78の水に残留するエアの状態の安定化を図る等のため、制御部100は、循環ポンプ79の開始後において規定時間待機する(ステップS8)。その後、制御部100は、エア逃がし弁9を開放させてエア逃がし操作を実行する(ステップS10)。水タンク4の水位が規定水位未満であれば(ステップS12のNO)、制御部100はエア逃がし操作を継続させる。水タンク4の水位が規定水位(例えば、ほぼ満水状態)以上になれば(ステップS12のYES)、制御部100は循環ポンプ79をオフさせ(ステップS14)、エア逃がし弁9を閉鎖させて(ステップS16)、エア逃がし操作を終了させる。ここで、水タンク4の水位が所定水位になったか否かは、エア逃がし弁9を開放している時間、あるいは、水タンク4に水位センサ4sが搭載されているときには、水位センサ4sの検知信号に基づいて判定される。上記したように、給水操作が行われれば、エア逃がし操作と併せて、貯湯槽77の水張り、改質水貯留系4Aの水張りの双方をほぼ同時時期に行い得る。この場合、システムの設置時間の短縮、メンテナンス時間の短縮、メンテナンスコストの低減に有利である。なお、給水弁77vを開放させつつ、エア逃がし操作を実行させても良い。また給水操作(給水弁77vの開弁)を制御部100が実行するようにしても良い。この場合、例えば水張り開始スイッチが操作されれば、エア逃がし操作と併せて、貯湯槽77の水張り、改質水貯留系4Aの水張りの双方をほぼ同時時期に自動的に行い得る。給水弁77vの閉鎖は、施工者、ユーザ等または制御部100が行えば良い。
【0051】
(実施形態5)
図5は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1〜3と基本的には同様の構成および同様の作用効果を奏する。本実施形態においても実施形態1と同様に、エア逃がし弁9の周辺にエア逃がし水が飛散することが抑制される。従って、飛散したエア逃がし水によりケース5内が汚れることが回避され、ケース5内の他の部品の耐久性および長寿命化に貢献できる。
【0052】
本実施形態によれば、図5に示すように、逃がし通路96の他端部96fは排気ガス通路75ではなく、浄水部43、特に浄水部43の上部に直接的に接続されている。エア逃がし弁9を開放作動させるエア逃がし操作が行なわれると、循環通路78に残留するエアを含むエア逃がし水は、エア逃がし弁9のエア逃がし口90から逃がし通路96を介して浄水部43に直接的に排出される。エア逃がし水は、浄水部43の第1水精製材43aにより精製されて浄化されて純水化され、更に、水通路45を介して水タンク4に移送され、改質器2Aに供給される改質水として使用される。このようにエア逃がし操作においてエア逃がし弁9のエア逃がし口90から吐出されたエア逃がし水は、改質水として再利用される。
【0053】
(実施形態6)
図6は実施形態6を示す。本実施形態は実施形態1〜3と基本的には同様の構成および同様の作用効果を奏する。図6に示すように、逃がし通路96の他端部96fは排気ガス通路75ではなく、浄水部43、特に浄水部43の上部に直接的に接続されている。エア逃がし弁9を開放作動させるエア逃がし操作が行なわれると、循環通路78に残留するエアを含むエア逃がし水は、エア逃がし弁9のエア逃がし口90から逃がし通路96を介して浄水部43に直接的に排出される。エア逃がし水は、浄水部43の第1水精製材43aにより精製されて浄化されて純水化され、水通路45を介して水タンク4に移送され、改質器2Aに供給される改質水として使用される。図6に示すように、逃がし通路96には、逃がし通路96を流れるエア逃がし水を精製させて浄化させるための第2水精製材97を有する副浄水部97sが設けられている。第2水精製材97はエア逃がし水を精製させるため、使用されるのは施工時等の限られた場合のみのため、水精製材43aよりも使用量を減少させることが可能である。また、水精製材43aが後段にあるため、精製仕様を低下させることも可能である。
【0054】
貯湯槽77の貯湯室77r内の水は、補充通路77kから補充されるものであり、純水に比較すると、純度が低下している。従って、循環通路78を流れる水、エア逃がし弁96のエア逃がし口90から吐出されて逃がし通路96を流れるエア逃がし水も純度が低下しているおそれがある。そこで、逃がし通路96を流れるエア逃がし水が第2水精製材97で精製されて浄化された後、その水は、浄水部43および水タンク4に移送される。この場合、水タンク4の上流に位置する浄水部43の第1水精製材43aの汚れが抑制される。図6から理解できるように、副浄水部97sが熱交換器76に、特に、熱交換器76のうち循環通路78の反対側に取り付けられており、副浄水部97sの取付性の確保に有利である。
【0055】
(実施形態7)
図7は実施形態7を示す。本実施形態は実施形態1〜3と基本的には同様の構成および同様の作用効果を奏する。すなわち、エア逃がし弁9の周辺にエア逃がし水が飛散することが抑制される。従って、飛散したエア逃がし水によりケース5内が汚れることが回避され、ケース5内の他の部品の耐久性および長寿命化に貢献できる。
【0056】
本実施形態によれば、図7に示すように、逃がし通路96の他端部96fは排気ガス通路75ではなく、浄水部43ではなく、水タンク4、特に水タンク4の上部に直接的に接続されている。逃がし通路96を流れるエア逃がし水を精製させて浄化させるイオン交換樹脂等で形成された第2水精製材97をもつ副浄水部97sが逃がし通路96に設けられている。エア逃がし弁9を開放作動させるエア逃がし操作が行なわれると、循環通路78に残留するエアを含むエア逃がし水は、エア逃がし弁9のエア逃がし口90から逃がし通路96を流れ、第2水精製材97で浄化された後に、水タンク4に直接的に排出される。このようにエア逃がし水は、第2水精製材97で浄化されて純水化され、改質器2Aに供給される改質水として使用される。このように逃がし通路96を流れるエア逃がし水を精製させて浄化させる第2水精製材97をもつ副浄水部97sが、逃がし通路96に設けられている。このため浄水部43の第1水精製材43aの使用量の増加を抑制させることができる。また、水タンクにエア逃がし水を供給することで、エア逃がし水が水精製器43に急激に流入することによる水精製材43aの巻上げ等を抑制することができる。なお、本作業後の運転において、凝縮水が水精製器43に溜まり45を通じ水タンクに回収できる容量分以上の容量を改質水タンク4が有することが望ましい。それにより、本構成においても、水タンク4が水枯れとなる前に回収した凝縮水で水自立運転が可能となる。
【0057】
(実施形態8)
図8は実施形態8を示す。本実施形態は実施形態1〜3と基本的には同様の構成および同様の作用効果を奏する。図8に示すように、水タンク4の底部には、水タンク4内の水を空にするための排水バルブ40mおよび排水路40kが、改質水貯留系4Aの構成要素の一部として設けられている。逃がし通路96の他端部96fは、排水路40kのうち排水バルブ40mよりも下流に接続されている。循環通路78に残留するエアを含むエア逃がし水は、エア逃がし弁9のエア逃がし口90から逃がし通路96を流れ、排水路40kから直接的に排出される。この場合、エア逃がし水が浄化部43の第1水精製材43aと接触しないため、第1水精製材43aの汚れが抑制され、第1水精製材43aの長寿命化に有利である。
【0058】
(実施形態9)
図9は実施形態9を示す。本実施形態は実施形態1〜3と基本的には同様の構成および同様の作用効果を奏する。図9に示すように、水タンク4のオーバーフロー水を流出させるオーバーフロー通路47が改質水貯留系4Aの構成要素の一部として水タンク4の上部に形成されている。逃がし通路96の他端部96fはオーバーフロー通路47に接続されている。具体的には、他端部96fは、オーバーフロー通路47のうち水タンク4からオーバーフローする部位47rよりも低い位置に接続されている。これにより逃がし通路96の他端部96fから吐出されるエア逃がし水は、水タンク4側に逆流しないようにされている。この場合、エア逃がし水が浄化部43の第1水精製材43aと接触しないため、第1水精製材43aの汚れが抑制され、第1水精製材43aの長寿命化に有利である。
【0059】
(実施形態10)
本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成および同様の作用効果を奏するため、図1および図2を準用できる。発電運転では、循環ポンプ79が回転して、貯湯槽77の水を循環通路78を介して循環させ、発電モジュール18から排出された排気ガスの排熱を熱交換76において循環通路78の温水として回収する。発電運転中において、循環ポンプ79について、単位時間あたりの指示回転数に対して、単位時間あたりの実回転数が過剰に増加する場合には、循環通路78にエアが残留しており、循環ポンプ79のポンプ負荷が過剰に軽減されていることが予測される。そこで、制御部100は、循環ポンプ79について、単位時間あたりの指示回転数Nsetに対して、単位時間あたりの実回転数Nrealが回転数ΔN以上過剰に増加する場合には、制御部100は、循環通路78にエアが残留していると推定し、エア逃がし弁9のエア逃がし口90を規定時間ΔTset開放させ、循環通路78を流れる水をエア逃がし弁9のエア逃がし口90から逃がし通路96を介して逃がす。あるいは、循環ポンプ79について、単位時間あたりの実回転数Nrealが単位時間あたりの指示回転数Nsetに接近または同一となるまで、制御部100はエア逃がし弁9のエア逃がし口90を開放させ、循環通路78を流れる水をエア逃がし弁9のエア逃がし口90から逃がし通路96を介して逃がす。実回転数Nrealは、循環ポンプ79に設けた回転数センサにより検知できる。接近とは、Nreal/Nsetが例えば1.3〜1.0の範囲内が好ましい。なお、エアの残留を検出する手段として、熱交換器75の温度、もしくは配管78c内の水温を用いて所定温度に戻るまで上記制御をしても良い。エアが残留した場合、熱交換器75内部等において、水が流れない部分が発生するため、熱交換器や湯温が高温となることを検出するものである。
【0060】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実行できる。燃料電池は固体酸化物形燃料電池(SOFC)に限定されず、場合によっては、固体高分子形燃料電池でも良いし、リン酸形燃料電池でも良く、アルカリ水溶液形燃料電池でも良く、他のタイプの燃料電池でも良い。エア逃がし弁9は、ケース5内において復路78cに設けられているが、往路78aに設けることにしても良い。またエア逃がし弁9は、循環通路78の経路内の上下方向の上部等、エアが溜まりやすい部位に設けることが望ましい。加熱部40は水タンク4に設けられているが、廃止されていても良い。燃料としては、都市ガスに限定されず、プロパンガス、ブタンガス、バイオガス、メタノール、ガソリン、灯油等を例示できる。逃がし通路96の他端部96fは凝縮水通路42に接続させても良い。改質水貯留系4Aでは、第1水精製材43aを有する浄水部43が上流に、水タンク4が下流に設けられているが、これに限らず、水タンク4が上流で、浄水部43が下流に設けられていても良い。各本実施形態においても、循環通路78のエア逃がし操作と、改質水貯留系4Aの水張り操作とを併行させて行うことができる。すなわち、各実施形態においても、前述したように、貯湯槽77の貯湯室77rに供給されている水を循環通路78、逃がし通路96を介して浄水部43に移送させ、浄水部43の第1水精製材43aで精製させることにしても良い。この場合、精製させた水を改質水として水タンク4に供給させて改質水貯留系4Aの水張りを行うことができる。この場合、施工業者、メンテナンス者等は、改質水貯留系4Aに補給たるための純水を貯蔵させた純水タンクを設置場所やメンテナンス場所に逐一持ち運ばなくても良い利点が得られる。前述したように、貯湯槽77の貯湯室77rに供給されている水(例えば水道水等の原水)を循環通路78および逃がし通路96を介して浄水部43に移送させ、浄水部43の第1水精製材43aで精製させる。この場合、浄水部43を複数に分割し、水精製性能を増加させることができる。なお、流量センサ64、72は必要に応じて設ければ良い。
【0061】
本明細書から次の技術的思想が把握される。
[付記項1]アノード流体およびカソード流体が供給されて発電するための燃料電池をもつ発電系と、前記発電系から排出される排気ガスを通過させるための排気ガス通路と、前記発電系の作動に伴い発生した凝縮水を溜める改質水貯留系と、温水を貯留する貯湯室と前記貯湯室に連通する吐水口および入水口をもつ貯湯槽と、前記貯湯槽の外部において前記貯湯槽の前記吐水口と前記入水口とを繋ぐ循環通路と、前記循環通路に設けられ前記貯湯槽の前記貯湯室の水を前記循環通路を介して循環させる水循環源と、前記循環通路に設けられ前記循環通路に存在する水を吐出させるための逃がし口をもつ逃がし弁と、前記排気ガス通路および前記循環通路に接続され前記排気ガス通路を流れる排気ガスと前記循環通路を流れると共に前記排気ガス通路の排気ガスよりも相対的に低温の水とを熱交換させる熱交換器と、前記改質水貯留系と前記逃がし弁の前記逃がし口とを直接的または他の通路を介して間接的に接続させ、前記逃がし弁の前記逃がし口から排出される水を前記改質水貯留系に逃がす逃がし操作を行う逃がし通路とを具備する燃料電池システム。循環通路を流れる水を逃がし弁から逃がし通路を介して改質水貯留系に供給させ、改質水貯留系における水位を高めることができる。
【符号の説明】
【0062】
1は燃料電池、10はアノード、105は燃焼部、11はカソード、18は発電モジュール(発電系)、19は断熱壁、2Aは改質器、2は蒸発部、3は改質部、4Aは改質水貯留系、4は水タンク、43は浄水部、43aは第1水精製材、5はケース、6は燃料通路、60は燃料ポンプ、62は脱硫器、70はカソードガス通路、71はカソードポンプ、73はアノードガス通路、75は排気ガス通路、75pはガス出口、77は貯湯槽、77kは補充通路、77vは給水弁、78aは往路、78cは復路、79は循環ポンプ(水循環源)、8は給水通路、80は改質水ポンプ、87は水センサ、9はエア逃がし弁、90はエア逃がし口、96は逃がし通路、96eは一端部、96fは他端部、97は第2水精製材、97sは副浄水部、100は制御部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード流体およびカソード流体が供給されて発電するための燃料電池をもつ発電系と、前記発電系から排出される排気ガスを通過させるための排気ガス通路と、前記発電系の作動に伴い発生した凝縮水を溜める改質水貯留系と、温水を貯留する貯湯室と前記貯湯室に連通する吐水口および入水口をもつ貯湯槽と、前記貯湯槽の外部において前記貯湯槽の前記吐水口と前記入水口とを繋ぐ循環通路と、前記循環通路に設けられ前記貯湯槽の前記貯湯室の水を前記循環通路を介して循環させる水循環源と、前記循環通路に設けられ前記循環通路に残留するエアを含み得るエア逃がし水を吐出させるためのエア逃がし口をもつエア逃がし弁と、前記排気ガス通路および前記循環通路に接続され前記排気ガス通路を流れる排気ガスと前記循環通路を流れると共に前記排気ガス通路の排気ガスよりも相対的に低温の水とを熱交換させる熱交換器と、前記排気ガス通路および前記改質水貯留系のうちの少なくとも一方と前記エア逃がし弁の前記エア逃がし口とを接続させ、前記エア逃がし弁の前記エア逃がし口から排出されるエアを含み得るエア逃がし水を前記少なくとも一方に逃がすエア逃がし操作を行う配管で形成された逃がし通路とを具備する燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、前記改質水貯留系は水を精製させる第1水精製材を有しており、前記エア逃がし水が逃がされる前記一方は改質水貯留系であり、前記エア逃がし弁の前記エア逃がし口から排出される前記エア逃がし水を、前記逃がし通路を介して前記改質水貯留系に移送させて前記第1水精製材で精製させ、改質水として利用する燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1において、前記排気ガス通路は、前記排気ガスを外気に放出させるガス出口に連通しており、前記エア逃がし水が逃がされる前記一方は前記排気ガス通路であり、前記エア逃がし水は前記排気ガス通路の前記ガス出口から外気に放出される燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記貯湯槽の前記貯湯室に給水するための給水弁が設けられ、前記エア逃がし弁および前記水循環源を制御させる制御部が設けられており、
前記制御部は、前記給水弁を開放させて前記貯湯槽の前記貯湯室に水を供給させる給水操作の実行中または前記給水操作の終了後に、前記貯湯室に水を供給させた状態において前記水循環源を駆動させて前記貯湯室の水を前記吐水口から吐出させて前記入水口に帰還させることにより前記貯湯室の水を前記循環通路を介して循環させる循環操作と、前記循環操作の少なくとも一時期において前記エア逃がし弁を開放させるエア逃がし操作とを実行する燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記エア逃がし操作において前記エア逃がし弁から吐出されたエア逃がし水は、前記改質水貯留系に移送されて前記改質水貯留系の水張りを行い、前記制御部は、前記改質水貯留系に貯留される水の水位が規定水位以上のとき、前記エア逃がし操作を終了すると共に前記改質水貯留系における水張りを終了する燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの一項において、前記逃がし通路は、前記逃がし通路を流れる水を精製させる第2水精製材を有しており、前記改質水貯留系に接続されている燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114849(P2013−114849A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258975(P2011−258975)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】