説明

燃料電池スタック装置

【課題】スタックの積層方向の端に位置する端セルの過剰な温度降下を抑制し、セルの積層方向における発電むらの低減に貢献できる燃料電池スタック装置を提供する。
【解決手段】スタック1の冷媒通路構造7は、積層方向の中間に存在する中間セル2Cの中間冷媒通路70と、積層方向の端に存在する端セル2E,2Fの端冷媒通路72,73とを有する。冷媒供給通路5から入口に供給される冷媒を中間セル2Cの中間冷媒通路70に流して中間セル2Cを冷却し、中間冷媒通路70を流れて中間セル2Cから受熱して暖められた冷媒を端セル2E,2Fの端冷媒通路72,73に流して端セル2E,2Fを冷却させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のセルを積層した燃料電池スタック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタック装置は、膜電極接合体と膜電極接合体を厚み方向の両側を挟むセパレータとを有するセルを複数個厚み方向に積層して形成されると共に冷媒を流す冷媒通路構造を備えるスタックと、スタックの冷媒通路構造の入口に連通する冷媒供給通路と、スタックの冷媒通路構造の出口に連通する冷媒排出通路とを備える(特許文献1)。このようなスタック装置において、積層方向の端に位置する端セルでは、放熱性が高い傾向がある。このため端セルでは過剰に温度降下するおそれがある。これに対して、スタックの積層方向の中間側の中間セルでは、放熱性が少なく、熱こもり性が高い傾向がある。このため燃料電池スタック装置では、積層方向におけるセルの温度むらが大きく、積層方向において発電むらが発生するおそれがあった。殊に、固体高分子型の燃料電池の場合には、端セルにおいて、過剰な温度降下はフラッディングを発生させる要因となり、好ましくない。フラッディングとは、膜電極接合体などのガス流路面積を液相状の水で狭くして反応ガスの流れを制約させることをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−111231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、スタックのうち放熱性が高い端セルにおける過剰な温度降下を抑制し、セルの積層方向における発電むらの低減に貢献できる燃料電池スタック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)様相1の本発明に係る燃料電池スタック装置は、膜電極接合体と膜電極接合体の厚み方向の両側を挟むセパレータとを有するセルを複数個厚み方向に積層して形成されると共に冷媒を流す冷媒通路構造を備えるスタックと、スタックの冷媒通路構造の入口に連通する冷媒供給通路と、スタックの冷媒通路構造の出口に連通する冷媒排出通路とを具備しており、スタックの冷媒通路構造は、スタックの積層方向の中間に存在する中間セルの中間冷媒通路と、積層方向の端に存在する端セルの端冷媒通路とを有しており、且つ、冷媒供給通路から供給される冷媒を中間セルの中間冷媒通路に流して中間セルを冷却し、中間冷媒通路を流れて中間セルから受熱して暖められた冷媒を端セルの端冷媒通路に流して端セルと熱交換させる構造を有する。
【0006】
様相1によれば、冷媒供給通路から供給される冷媒を、端セルの端冷媒通路ではなく、熱こもりにより昇温しがちの中間セルの中間冷媒通路に優先的に流し、中間セルを優先的に冷却させる。その後、上記したように中間冷媒通路を流れて中間セルから受熱して暖められた冷媒を、端セルの端冷媒通路に流して端セルと熱交換させる。従って、放熱性が高い端セルにおける温度の過剰降下が抑制される。このためスタックの積層方向におけるセルの温度むらが軽減される。
【0007】
(2)様相2の本発明に係る燃料電池スタック装置は、冷媒供給通路から供給される冷媒を中間セルの中間冷媒通路に流して中間セルを冷却し、中間冷媒通路を流れて中間セルから受熱して暖められた冷媒を端セルの端冷媒通路に流して端セルと熱交換させる構造を有する点において、様相1と共通する技術的特徴をもつ。即ち、様相2の本発明に係る燃料電池スタック装置は、膜電極接合体と膜電極接合体を厚み方向の両側を挟むセパレータとを有するセルを複数個厚み方向に積層して形成されると共に冷媒を流す冷媒通路構造を備えるスタックと、スタックの冷媒通路構造の入口に連通する冷媒供給通路と、スタックの冷媒通路構造の出口に連通する冷媒排出通路とを具備しており、スタックの冷媒通路構造は、積層方向の中間に存在する中間セルの中間冷媒通路と、積層方向の端に存在する端セルの端冷媒通路と、中間冷媒通路を流れるものの端冷媒通路を流れないで冷媒排出通路に到達する冷媒流量α1と、中間冷媒通路および端冷媒通路を流れて冷媒排出通路に到達する冷媒流量α2との比率を調整する流量制御要素とを有しており、且つ、冷媒供給通路から供給される冷媒を中間セルの中間冷媒通路に流して中間セルを冷却し、中間冷媒通路を流れて中間セルから受熱して暖められた冷媒を端セルの端冷媒通路に流して端セルと熱交換させる構造を有する。
【0008】
様相2によれば、冷媒供給通路から供給される冷媒を、端セルの端冷媒通路ではなく、熱こもりにより昇温しがちの中間セルの中間冷媒通路に優先的に流して中間セルを冷却させる。その後、上記したように中間冷媒通路を流れて中間セルから受熱して暖められた冷媒を、端セルの端冷媒通路に流して端セルと熱交換させる。従って、放熱性が高い端セルにおける温度の過剰降下が抑制される。このためスタックの積層方向におけるセルの温度むらが軽減される。
【0009】
様相2によれば、スタックの発電運転において流量制御要素の開度を調整すれば、中間冷媒通路を流れるものの端冷媒通路を流れないで冷媒排出通路に到達する単位時間あたりの冷媒流量α1と、中間冷媒通路および端冷媒通路を流れて冷媒排出通路に到達する単位時間あたりの冷媒流量α2との比率を調整することができる。換言すると、端冷媒通路を流れて端セルと熱交換する冷媒の単位時間あたりの流量を調整でき、この冷媒は、中間セルの中間冷媒通路を流れて暖められたものであるため、端セルの熱交換量を調整でき、端セルの温度を調整できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スタックのうち放熱量が中間セルよりも多い端セルにおける過剰な温度降下を抑制できる。従って、セルの積層方向における発電むらの低減に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1に係り、スタック装置の要部概念を模式的に示す斜視図である。
【図2】実施形態1に係り、スタック装置の要部概念を模式的に示す断面図である。
【図3】実施形態1に係り、中間セルに使用される中間セパレータの側面図である。
【図4】実施形態1に係り、端セルに使用される端セパレータの側面図である。
【図5】実施形態1に係り、集電板の側面図である。
【図6】実施形態1に係り、第1エンドプレートの側面図である。
【図7】実施形態2に係り、スタック装置の要部概念を模式的に示す斜視図である。
【図8】実施形態6に係り、スタック装置の要部概念を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
燃料電池は、パーフルオロスルホン酸ポリマー等の炭化フッ素系の電解質膜、炭化水素系の電解質膜を用いる固体高分子型燃料電池、リン酸を含浸させたポリベンズイミゾール等の電解質膜を用いる固体高分子型燃料電池が例示される。要するに、複数のセルを厚み方向に積層させると共にセルを冷媒で冷却させる方式であれば良い。冷媒としては、冷却水等の冷却液、冷却ガス、冷却ミスト等が挙げられる。中間冷媒通路は中間セルを冷却させるものであれば良く、隣接するセルを構成するセパレータを利用して形成できる。端冷媒通路は端セルを冷却させるものであれば良く、端セルを構成する端セパレータ、または、端セパレータに隣接する集電板を利用して形成しても良い。流量制御要素は、中間冷媒通路を流れるものの端冷媒通路を流れないで冷媒排出通路に到達する冷媒流量α1と、中間冷媒通路および端冷媒通路を流れて冷媒排出通路に到達する冷媒流量α2との比率を調整できるものであれば何でも良い。流量制御弁や可変オリファス等が例示される。
【0013】
好ましくは、スタックは、冷媒供給通路からスタックの冷媒通路構造の入口に冷媒を供給するための第1冷媒入口と、スタックの中間冷媒通路を流れて中間セルから受熱して暖められた冷媒を端セルの端冷媒通路に流すことなく冷媒排出通路に流す第1冷媒出口と、中間冷媒通路を流れて中間セルから受熱して暖められた冷媒を端セルの端冷媒通路を介して冷媒排出通路に流す第2冷媒出口とを備えている。この場合、第1冷媒入口の冷媒の入口温度Tinを検知する入口温度センサと、スタックの第1冷媒出口から排出される冷媒の第1出口温度Tout1を検知する第1出口温度センサと、スタックの第2冷媒出口から排出される冷媒の第2出口温度Tout2を検知する第2出口温度センサとを備えていることが好ましい。制御装置は、入口温度Tinに対して第2出口温度Tout2がプラスマイナスτ℃(τ=0〜7℃、または、0〜5℃)となるように、制御装置は流量制御要素の開度を調整することが好ましい。τは0〜3℃が好ましい。この場合、端セルのセル面内温度分布を中間セルのセル面内温度分布に近づけるのに有利となり、全部のセルのセル面内温度分布をできるだけ同様にできる。
【0014】
(実施形態1)
図1〜図6は実施形態1の概念を示す。燃料電池スタック装置は固体高分子型の燃料電池であり、スタック1と、冷媒供給通路5と、冷媒排出通路6とを有する。冷媒供給通路5は、スタック1を冷却して温度調整する冷媒を搬送する冷媒搬送源として機能するポンプ50を有する。冷媒としては、冷却水等の冷却液、冷却ガス、冷却ミスト等が挙げられ、要するに熱交換できる流体であれば良い。スタック1は多数のセル2を積層して形成されている。単数のセル2は、膜電極接合体3と、膜電極接合体3を厚み方向の両側を挟むセパレータ4とを有する。膜電極接合体3は、イオン伝導性(プロトン伝導性)を有する固体高分子型の電解質膜30と、電解質膜30をこれの厚み方向に挟むアノード31およびカソード32で形成されている。アノード31は、燃料をアノード発電反応させる触媒層と、触媒層に燃料を拡散させつつ供給する多孔質のガス拡散層とで形成されている。カソード32は、カソードガスを発電反応させる触媒層と、触媒層にカソードガスを拡散させつつ供給する多孔質のガス拡散層とで形成されている。
【0015】
図1に示すように、スタック1は、複数個のセル2を厚み方向(矢印A方向)に積層して形成された発電機能を有する積層体10と、積層体10の積層方向の一端側に設けられた導電材料で形成された集電板11rと、集電板11rの外側に図略の電気絶縁板を介して設けられた第1エンドプレート11と、積層体10の積層方向の他端側に設けられた導電材料で形成された集電板11tと、集電板11tの外側に図略の電気絶縁板を介して設けられた第2エンドプレート12とを有する。図1に示すように、第1エンドプレート11は、冷媒供給通路5から流れる冷媒が供給される単数の冷媒入口13と、冷媒排出通路6に連通する第1冷媒出口14および第2冷媒出口15とを有する。冷媒入口13はスタック1の上部側に設けられている。スタック1のうちの後述する中間冷媒通路70において冷媒を下向きに流すためである。図1に示すように、第1冷媒出口14はスタック1の下部側に設けられている。第2冷媒出口15は、高さ方向において第1冷媒出口14と反対側に位置するようにスタック1の上部側に設けられている。
【0016】
図1に示すように、スタック1を構成する積層体10は、積層方向(矢印A方向)の中間に存在する発電用の中間セル2Cと、積層方向の一端側に存在する発電用の端セル2Eと、積層方向の他端側に存在する発電用の端セル2Fとに区分けされている。端セル2Eは、スタック1の積層体10のうち積層方向(矢印A方向)の一端側に配置されている端のセルを意味する。端セル2Fは、スタック1の積層体10のうち積層方向(矢印A方向)の他端側に配置されている端のセルを意味する。ここで、一端側の端セル2Eは、積層体10のうち積層方向(矢印A方向)の一端側における最端の1個のセル2とすることができる。他端側の端セル2Fは、積層体10のうち積層方向(矢印A方向)の他端側における最端の1個のセル2とすることができる。スタック1の積層体10のうち、端セル2E,2F以外の残りのセル2が中間セル2Cに相当する。例えば40個のセル2が積層されているときには、積層方向(矢印A方向)の一端側のセル2および他端側のセル2は、高い放熱性をもつため、端セル2E,2Fに相当する。残部の38個のセル2が中間セル2Cに相当する。
【0017】
図2に示すように、スタック1は、発電運転時において、冷媒を流してスタック1と熱交換してスタック1の温度調整を行うための冷媒通路構造7を備える。図2に示すように、冷媒通路構造7は、中間セル2Cを冷却させる中間冷媒通路70と、端セル2Eを熱交換させる端冷媒通路72と、端セル2Fを熱交換させる端冷媒通路73と、端冷媒通路72,73に流れる単位時間あたり冷媒の流量を調整するための流量制御要素として機能する流量制御弁78とを有する。
【0018】
すなわち、中間冷媒通路70は、積層方向(矢印A方向)の中間に存在する中間セル2Cに存在しており、中間セル2Cを冷却させる。端冷媒通路72は、積層方向(矢印A方向)の端に存在する端セル2Eに存在しており、端セル2Eと熱交換する。端冷媒通路73は、積層方向(矢印A方向)の端に存在する端セル2Fに存在しており、端セル2Fと熱交換する。
【0019】
図1および図2に示すように、冷媒排出通路6は、スタック1の第1冷媒出口14と流量制御弁78の入口ポート78iとを連通させる第1排出通路61と、スタック1の第2冷媒出口15と流量制御弁78の出口ポート78p側とを連通させる第2排出通路62と、第1排出通路61および第2排出通路62が合流する本排出通路63とを有する。本排出通路63の先端はラジエータ等の冷媒冷却要素65に繋がるため、本排出通路63を流れた冷媒は、冷媒冷却要素65により冷却される。冷媒冷却要素65は、冷媒を冷却できる機能をもつものであれば、何でも良い。スタック1から排出された暖かい冷媒の熱を熱交換器で熱交換させて暖かい貯湯水として溜める貯湯槽が設けられている場合には、冷媒冷却要素65は、当該冷媒と貯湯水とを互いに熱交換させる熱交換器で形成しても良い。
【0020】
流量制御弁78の入口ポート78iは、第1排出通路61を介してスタック1の第1冷媒出口14に連通する。第1冷媒出口14は、中間セル2Cにおける中間冷媒通路70を流れて暖められたものの、端セル2E,2Fにおける端冷媒通路72,73を流れなかった冷媒を排出させる出口を意味する。流量制御弁78の出口ポート78pは、第2排出通路62を介してスタック1の第2冷媒出口15に連通する。第2冷媒出口15は、中間セル2Cにおける中間冷媒通路70を流れ、その後、端セル2E,2Fにおける端冷媒通路72,73を流れた冷媒を排出させる出口を意味する。
【0021】
図3は中間セル2Cを構成する中間セパレータ4Cの側面視を示す。中間セパレータ4Cは位置合わせ用のマーク89を有する。中間セパレータ4Cは炭素や合金鋼等の導電材料で形成されており、第1マニホルド孔81と、第2マニホルド孔82と、第3マニホルド孔83と、アノードに燃料を供給するための燃料供給孔84と、カソードに空気(カソードガス)を供給するための空気供給孔86と、アノードから燃料を排出させるための燃料排出孔85と、カソードから空気を排出するための空気排出孔87と、第1マニホルド孔81および第2マニホルド孔82を中間セパレータ4Cの面方向に沿って連通させる表面通路88とを有する。この表面通路88には、冷媒を曲走させる案内突起(図示せず)が形成されている。図3に示すように、中間セパレータ4Cにおいて、第1マニホルド孔81と、第2マニホルド孔82と、第3マニホルド孔83と、燃料供給孔84と、空気供給孔86と、燃料排出孔85と、空気排出孔87とは、中間セパレータ4Cの厚み方向に貫通する。中間セパレータ4Cの表面通路88は、中間セパレータ4Cの表面に沿って冷媒を流すように形成されており、第3マニホルド孔83には連通していないものの、第1マニホルド孔81および第2マニホルド孔82に連通する。この場合、図3に示すように、中間セパレータ4Cにおいて、第1マニホルド孔81から供給された冷媒は、表面通路88を矢印B1方向(下向き)に通過して中間セパレータ4C(中間セル2C)から受熱して暖められつつ中間セパレータ4C(中間セル2C)を冷却させ、第2マニホルド孔82から排出される。従って、中間冷媒通路70は、中間セパレータ4Cを有する中間セル2Cと熱交換してこれを冷却させるものであり、中間セパレータ4Cに形成されている第1マニホルド孔81、表面通路88、第2マニホルド孔82を利用して形成されている。
【0022】
図4は端セル2Eを構成する端セパレータ4Eの側面視を示す。端セパレータ4Eは位置合わせ用のマーク89を有する。端セパレータ4Eは、炭素や合金鋼等の導電材料で形成されており、第1マニホルド孔81と、第2マニホルド孔82と、第3マニホルド孔83と、アノードに燃料を供給するための燃料供給孔84と、カソードに空気を供給するための空気供給孔86と、アノードから燃料を排出するための燃料排出孔85と、カソードから空気を排出するための空気排出孔87と、第2マニホルド孔82および第3マニホルド孔83をセパレータ4Eの面方向に沿って連通させるための表面通路88とを有する。この表面通路88には、冷媒を曲走させる案内突起(図示せず)が形成されている。
【0023】
図4に示すように、端セパレータ4Eにおいて、第1マニホルド孔81と、第2マニホルド孔82と、第3マニホルド孔83と、燃料供給孔84と、空気供給孔86と、燃料排出孔85と、空気排出孔87とは、端セパレータ4Eの厚み方向に貫通する。端セパレータ4Eの表面通路88は、第1マニホルド孔81に連通していないものの、第2マニホルド孔82および第3マニホルド孔83に連通する。この場合、図4に示すように、端セパレータ4Eにおいて、第2マニホルド孔82から表面通路88に供給された冷媒は、端セパレータ4Eの表面通路88を矢印B2方向(上向き)に通過して端セパレータ4Eと接触しつつ端セパレータ4Eと熱交換し、第3マニホルド孔83から排出される。この場合、冷媒は重力に抗して上向き(矢印B2方向)に流れるため、冷媒を端セパレータ4Eの表面通路88に満たすのに有利となり、従って、中間セル2C(中間セパレータ4C)から受熱して暖められた冷媒と端セパレータ4Eとの熱交換時間を確保できる利点が得られる。このように端冷媒通路72は、端セパレータ4Eを有するセル2Eを冷却させるものであるため、端セパレータ4Eに形成されている第2マニホルド孔82、表面通路88、第3マニホルド孔83、集電板11rの表面11rs(図2参照)を利用して形成されている。
【0024】
図5は他端側の集電板11tの側面視を示す。集電板11tにおいて、第1マニホルド孔81に重なって対面する冷媒口13tと、第2マニホルド孔82に重なって連通する冷媒口14tと、第3マニホルド孔83に連通する冷媒口15tと、冷媒口14t,15tを集電板11tの面方向に沿って連通させる連通路88tとが、集電板11tを厚み方向に貫通しないように形成されている。この場合、図5に示すように、集電板11tにおいて、第2マニホルド孔82を経て冷媒口14tに供給された冷媒は、集電板11tの表面通路88tを矢印B3方向(上向き)に通過して端セパレータ4F(集電板11tと隣接している)と接触することにより、端セパレータ4F(端セル2F)と熱交換し、冷媒口15tを介して第3マニホルド孔83に排出される。この場合、冷媒は重力に抗して上向き(図5に示す矢印B3方向)に流れる。この場合、中間セル2C(中間セパレータ4C)から受熱した暖かい冷媒と端セパレータ4F(端セル2F)との熱交換時間を確保できる利点が得られる。このように端冷媒通路73は、他方の端セパレータ4Fを有する端セル2Fと熱交換するものであり、集電板11tに形成されている冷媒口14t、表面通路88t、冷媒口15t、端セル2Fの端セパレータ4Fの表面4Fs(図2参照)を利用して形成されている。
【0025】
図6は一端側の第1エンドプレート11の側面視を示す。図6に示すように、第1エンドプレート11において、第1マニホルド孔81に重なった対面する冷媒入口13、第2マニホルド孔82に重なって連通する第1冷媒出口14、第3マニホルド孔83に連通する第2冷媒出口15が第1エンドプレート11を厚み方向に貫通するようにそれぞれ形成されている。更に、燃料供給孔84、空気供給孔86、燃料排出孔85、空気排出孔87が第1エンドプレート11の厚み方向に貫通するようにそれぞれ形成されている。組付時には、中間セパレータ4C、端セパレータ4E,4F、集電板11r,11tがこれらのマーク89を揃えた状態で、エンドプレート11,12と共に、厚み方向に積層され、セパレータ4の積層体10が構成される。図1に示すように、積層体10は、集電板11r,11tを介して第1エンドプレート11および第2エンドプレートプレート12で挟持される。この場合、中間セパレータ4Cの第1マニホルド孔81と、端セパレータ4Eの第1マニホルド孔81と、第1エンドプレート11の冷媒入口13と、集電板11tの冷媒口13tが重なりあって連通する。同様に、中間セパレータ4Cの第2マニホルド孔82と、端セパレータ4Eの第2マニホルド孔82と、第1エンドプレート11の第1冷媒出口14と、集電板11tの冷媒口14tとが重なりあって連通する。同様に、中間セパレータ4Cの第3マニホルド孔83と、端セパレータ4Eの第3マニホルド孔83と、第1エンドプレート11の第2冷媒出口15と、集電板11tの冷媒口15tとが重なりあって連通する。なお、燃料供給孔84についても同様である。燃料排出孔85についても同様である。空気供給孔86についても同様である。空気排出孔87についても同様である。
【0026】
次に、流量制御弁78の作用について説明を加える。流量制御弁78の開度を0とし流路断面積を0とすれば、第1冷媒出口14および第1排出通路61から流量制御弁78の入口ポート78iに流れる冷媒の流量α1を無しにでき、理論的には、中間冷却通路70を流れた全部の冷媒を端セル2E,2Fの端冷媒通路72,73に流し、第2排出通路62から本排出通路63に流せる。従って、流量制御弁78の開度を小さくしてこれのポート78i,78pを連通させる流路横断面積を小さくすると、第1冷媒出口14および第1排出通路61から流量制御弁78の入口ポート78iに流れる冷媒の単位時間あたりの流量α1を減少できる。これにより端冷媒通路72,73、第2冷媒出口15および第2排出通路63を流れて本排出通路63に到達する冷媒の単位時間あたりの流量α2を増加できる。この場合、中間冷媒通路70から受熱して暖められた冷媒と端冷媒通路72,73(端セパレータ4E,4F、端セル2E,2F)とが熱交換する熱交換量を増加できる。換言すると、端冷媒通路72,73を流れないで、第1冷媒出口14および第1排出通路61から流量制御弁78の入口ポート78i,出口ポート78pを介して流れて冷媒排出通路6の本排出通路63に到達する冷媒流量α1を減少できる。
【0027】
逆に、流量制御弁78の開度を大きくしてこれの流路横断面積を大きくすると、第1排出通路61から流量制御弁78の入口ポート78iおよび出口ポート78pを経て本排出通路63に流れる冷媒の流量α1を増加できる。すなわち、端冷媒通路72,73を流れないで流量制御弁78を流れて冷媒排出通路6に到達する冷媒流量α1を増加できる。これにより端冷媒通路72,73を流れて本排出通路63に到達する冷媒流量α2を減少できる。この場合、端冷媒通路72,73を流れる冷媒と端セパレータ4E,4F(端セル2E,2F)とが熱交換する熱交換量を減少できる。換言すると、流量制御弁78の開度が調整されてこれの流路横断面積が調整されると、端冷媒通路72,73を流れないで冷媒排出通路6の本排出通路63に到達する冷媒流量α1と、端冷媒通路72,73を流れて冷媒排出通路6の本排出通路63に到達する冷媒流量α2との比率を調整することができる。すなわち、流量制御弁78はα1/α2を調整できる。ひいては、中間セル2Cを流れて暖められて端冷媒通路72,73の冷媒と端セパレータ4E,4F(端セル2E,2F)との熱交換量を調整でき、端セパレータ4E,4F(端セル2E,2F)の温度を調整できる。
【0028】
本実施形態によれば、図2から理解できるように、流量制御弁78が閉鎖(開度0)されているとき、ポンプ50が作動すると、冷媒供給通路5の冷媒は、第1エンドプレート11の冷媒入口13、端セル2Eの端セパレータ4Eの第1マニホルド孔81を介して、複数の中間セパレータ4Cの第1マニホルド孔81に至る。更に、その冷媒は、複数の中間セパレータ4Cの表面通路88を下向き(矢印B1方向)に流れて中間セパレータ4Cを冷却し、ひいては全部の中間セル2Cを優先的に冷却するため、冷媒はこれらから暖められる。このように暖められた冷媒は、複数の中間セパレータ4Cの第2マニホルド孔82を介して、一端側の端セパレータ4Eの第2マニホルド孔82に至り、更に、端セパレータ4Eの表面通路88を流れて端セパレータ4E(端セル2E)と熱交換し、更に、端セパレータ4Eの第3マニホルド孔83の順に流れ、更には、第1エンドプレート11の第2冷媒出口15、第2排出通路62、本排出通路63の順に流れる。更に、中間セル2Cから暖められた冷媒は、他端側の集電板11tの冷媒口14t(中間セパレータ4Cの第2マニホルド孔82に対面)に至ると、更に、集電板11tの表面通路88tを上向き(矢印B3方向)に流れて端セパレータ4F(端セル2F)と熱交換し、更に、集電板11tの冷媒口15tに流れ、その後、中間セル2Cの第3マニホルド孔83に流れ、更に、第1エンドプレート11の第2冷媒出口15、第2排出通路62、本排出通路63の順に流れる。換言すると、図3から理解できるように、中間セル2Cにおける中間冷媒通路70を流れる冷媒は、中間セパレータ4Cの第1マニホルド孔81→中間セパレータ4Cの表面通路88→中間セパレータ4Cの第2マニホルド孔82の順に流れる。従って、中間冷媒通路70は、中間セパレータ4Cの第1マニホルド孔81、中間セパレータ4Cの表面通路88、中間セパレータ4Cの第2マニホルド孔82を利用して形成されている。
【0029】
また、図4から理解できるように、端セル2Eにおける端冷媒通路72を流れる冷媒は、端セパレータ4Eの第2マニホルド孔82→端セパレータ4Eの表面通路88→端セパレータ4Eの第3マニホルド孔83の順に流れる。従って、端冷媒通路72は、端セパレータ4Eの第2マニホルド孔82、端セパレータ4Eの表面通路88、端セパレータ4Eの第3マニホルド孔83、集電板11rで形成されている。また、図5から理解できるように、集電板11tにおける端冷媒通路73を流れる冷媒は、冷媒口14t→表面通路88t→冷媒口15tの順に流れる。従って、端冷媒通路73は、集電板11tの冷媒口14t、表面通路88t、冷媒口11tを利用して形成されている。
【0030】
さて使用の際には、膜電極接合体3のアノード31に燃料(例えば水素ガス等)を供給すると共に、カソード32に酸化剤ガスとしての空気を供給する。これにより発電反応によりスタック1は発電する。発電に伴いスタック1は発熱して昇温する。なお、燃料ガスおよび空気の流れ経路は、基本的には従来技術と同様であり、本実施形態の要旨ではないため省略する。スタック1が昇温して高温になると、発電性能の劣化、スタック1の耐久性が低下するため、冷却水等の冷媒によりスタック1を冷却させる必要がある。冷媒としては、高い電気絶縁性をもつ純水が好ましい。本来的には、スタック1において中間セル2Cは端セル2E,2Fよりも熱こもり性が高いため、中間セル2Cの温度は端セル2E,2Fの温度よりも高温となり易い。これに対して、端セル2E,2Fは中間セル2Cよりも放熱性が高いため、端セル2E,2Fの温度は中間セル2Cの温度よりも低温となり易い。低温になると、発電出力を低下させる要因となるフラッディングが発生するおそれがある。
【0031】
そこで本実施形態によれば、ポンプ50により冷媒供給通路5から冷媒入口13に供給される冷媒(温度:T1)を、まず、放熱性が高いため相対的に低温の端セル2E,2Fではなく、熱こもりしやすい相対的に高温の中間セル2Cの中間冷媒通路70に優先的に流す。このように端セル2E,2Fではなく、スタック1の積層方向における中間セル2Cを優先的に冷却させる。このようにスタック1から受熱されていない比較的低温の冷媒で中間セル2Cを優先的に冷却させるため、熱こもりしやすい中間セル2Cを効果的に冷却でき、中間セル2Cの過剰昇温を抑制できる。この意味でスタック1の出力向上に有利である。ここで、中間冷媒通路70を流れて中間セル2Cから受熱されて暖められた冷媒は、受熱によりβぶん昇温し、その温度はT2(T2>T1)とされる。その後、中間セル2Cからの受熱で暖められた冷媒を、スタック1の端セル2E,2Fの端冷媒通路72,73に流し、端セル2E,2Fと熱交換させる。ここで、冷媒の温度が端セル2E,2Fよりも低温であれば、端セル2E,2Fは熱交換により冷却される。冷媒の温度が端セル2E,2Fよりも高温であれば、端セル2E,2Fは熱交換により加熱される。
【0032】
以上説明したように本実施形態によれば、ポンプ50により冷媒供給通路5から冷媒入口13に供給される冷媒(温度:T1)を、まず、中間セル2Cの中間冷媒通路70に優先的に流すため、昇温しがちの中間セル2Cを効果的に冷却できる。その後、中間セル2Cからの受熱で暖められた冷媒を、スタック1の端セル2E,2Fの端冷媒通路72,73に流し、端セル2E,2Fと熱交換するため、高い放熱性を有する端セル2E,2Fの過剰な温度降下が抑制されている。このため積層方向(矢印A方向)においてスタック1の積層体10における温度むらが抑制される。従って、スタック1を構成する全部のセル2において、積層体10における温度むらが抑制される。ひいては積層方向(矢印A方向)においてスタック1を構成するタスの発電むらが抑制される。よってスタック1の発電出力の向上、スタック1の長寿命化に貢献できる。上記したように放熱性が高い端セル2E,2Fにおける過剰な温度降下が抑制されるため、端セル2E,2Fにおけるフラッディングの抑制に有利であり、スタック1の発電性能の向上に貢献できる。
【0033】
(実施形態2)
図7は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1,図3〜図6を準用する。図7に示すように、第1エンドプレート11の冷媒入口13に供給される冷媒の入口温度Tinを検知する入口温度センサ100が設けられている。第1エンドプレート11の第1冷媒出口14から排出される冷媒の第1出口温度Tout1を検知する第1出口温度センサ101が設けられている。第1エンドプレート11の第2冷媒出口15から排出される冷媒の第2出口温度Tout2を検知する第2出口温度センサ102が設けられている。入口温度センサ100および出口温度センサ101,102の温度信号は制御装置110に入力される。温度信号等に応じて、制御装置110は流量制御弁78の開度を調整する制御信号を出力する。
【0034】
冷媒の入口温度Tinに対して冷媒の第2出口温度Tout2がプラスマイナスτ℃(例えばτ=0〜7℃、0〜3℃)となるように、制御装置110は流量制御弁78の開度を調整する。この場合、第2出口温度Tout2が入口温度Tinよりも過剰に高温になると、流量制御弁78の開度を増加させ、中間セル2Cで暖められた冷媒が端セル2E,2Fに向かう流量を減少させることが好ましい。また、第2出口温度Tout2が入口温度Tinよりも過剰に低温になると、流量制御弁78の開度を減少させ、中間セル2Cで暖められた冷媒が端セル2E,2Fに向かう流量を増加させ、ひいては端セル2E,2Fを昇温させることが好ましい。このように流量制御弁78の開度を制御すれば、冷媒の入口温度Tinに対して冷媒の第2出口温度Tout2を同一またはできるだけ近づけることができる。この場合、Tin≒Tout2とすることができる。
【0035】
例えば、冷媒の入口温度Tinが70℃の場合には、中間セル2Cの冷却により冷媒が5℃ぶん暖められると仮定すると、中間セル2Cを冷却して暖められた冷媒の温度は75℃付近となる。このとき、第2冷媒出口15から排出される冷媒の出口温度Tout2を、冷媒入口13の入口温度Tinに適合させるように(Tin≒Tout2、つまり70℃となるように)、流量制御弁78の開度を制御すれば、基本的には、スタック1の各セル2(中間セル2C,端セル2E,2F)における上部の温度を70℃付近とし、各セル2(中間セル2C,端セル2E,2F)の下部における温度を75℃付近とするセル面方向におけるセル面内温度分布が得られる。なお、第1冷媒出口14から排出される冷媒の温度は温度センサ101で検知されるが、この冷媒は両端の端セル2E,2Fを通過しないため、この冷媒の温度は基本的には75℃付近であると考えられる。上記したように流量制御弁78の開度を調整すれば、スタック1の全部の中間セル2Cおよび端セル2E,2Fにおけるセル温度分布を上記温度分布に近づけることができる。なお、70℃、75℃はあくまでも例示であり、この温度に限定されるものではなく,75℃,80℃でも良い。更に80℃,85℃でも良い。
【0036】
(実施形態3)
本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。上記した実施形態1では、他端側の端セル2Fを冷却させる端冷媒通路73は、集電板11tを利用して形成されているが、これに限らず、他端側の端セル2Fの端セパレータ4Fに凹状の端冷媒通路73を形成しても良い。要するに、端冷媒通路73は他端側の端セル2Fを熱交換できるものであれば良い。また実施形態1では、一端側の端セル2Eを冷却させる端冷媒通路72は、端セパレータ4Eを利用して形成されているが、これに限らず、一端側の端セパレータ4Eに隣接する集電板11rに端冷媒通路72を形成しても良い。要するに、端冷媒通路72は一端側の端セル2Eを熱交換できるものであれば良い。
【0037】
(実施形態4)
本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。上記した実施形態1では、一端側の端セル2Eは、積層方向の一端側における最端の1個のセル2を意味する。他端側の端セル2Fは、積層方向の他端側における最端の1個のセル2を意味する。残りのセル2が中間セル2Cに相当する。しかし本実施形態では、セル2の積層数が例えば40〜300個と多いため、一端側の端セル2Eは、積層方向の一端側における複数個(1〜6個のうちの任意値)のセル2を意味する。他端側の端セル2Fは、積層方向の他端側における複数個(1〜6個のうちの任意値)のセルを意味する。残りのセル2が中間セル2Cに相当する。なお、セル2の積層数をNとするとき、一端側の端セル2Eの上限の個数は、{N−(0.6×N)}/2にできる。他端側の端セル2Fについても同様である。
【0038】
(実施形態5)
本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。但し、流量制御弁78は第1冷媒出口14側ではなく、第2冷媒出口15側に設けられている。本実施形態においても、中間セル2Cから受熱して暖められた冷媒を端セル2E,2Fに流すため、端セル2E,2Fにおける過剰な温度降下は抑制される。更に、流量制御弁78の開度を調整すれば、端冷媒通路72,73を流れないで冷媒排出通路6の本排出通路63に到達する冷媒流量α1と、端冷媒通路72,73を流れて流量制御弁78を介して冷媒排出通路6の本排出通路63に到達する冷媒流量α2との比率を調整することができる。このため端セル2E,2Fの温度を調整できる。
【0039】
(実施形態6)
図8は実施形態6を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。但し流量制御弁78、第1排出通路61および第1冷媒出口14が装備されていない。本来的には、端セル2E,2Fは中間セル2Cよりも放熱性が高いため、端セル2E,2Fの温度は中間セル2Cの温度よりも低温となり易い。低温になると、フラッディングが発生するおそれがある。そこで本実施形態によれば、実施形態1と同様に、冷媒供給通路5から入口に供給される冷媒(温度:T1)を、スタック1の端セル2E,2Fに流さないで、まず、中間セル2Cの中間冷媒通路70に優先的に流し、中間セル2Cを優先的に冷却させる。中間冷媒通路70を流れて中間セル2Cから受熱して暖められた冷媒は、受熱によりβぶん昇温して温度T2(T2>T1)とされている。次に、中間セル2Cからの受熱で暖められた冷媒を、スタック1の端セル2E,2Fの端冷媒通路72,73に流し、端セル2E,2Fを熱交換させ、第1エンドプレート11の第2冷媒出口15から冷媒排出通路6に排出させる。本実施形態においても、中間セル2Cから受熱して暖められた冷媒を端セル2E,2Fに流すため、端セル2E,2Fにおける過剰な温度降下は抑制される。
【0040】
(その他)
上記した図面は実施形態の概念を示すものであり、端冷媒通路72は、冷媒が流れる通路を端セパレータ4Eに形成することにより形成されているが、端セパレータ4Eおよび集電板11rのうち互いに対向する表面同士に、冷媒が流れる通路を形成して端冷媒通路72としても良い。要するに、端冷媒通路72は、一端側の端セル2Eを冷媒で熱交換できればよい。端冷媒通路73は、冷媒が流れる通路を集電板11tに形成することにより形成されているが、端セパレータ4Fおよび集電板11tのうち互いに対向する表面同士に、冷媒が流れる通路を形成して端冷媒通路73としても良い。要するに端冷媒通路73は、他端側の端セル2Fを冷媒で熱交換できればよい。流量制御弁78としては、第1排出通路61、第2排出通路62および本排出通路63に繋がる三方弁としても良い。中間冷媒通路70は冷媒を下向きに流し、端冷媒通路72,73は冷媒を上向きに流すが、これに限定されず、中間冷媒通路70は冷媒を上向きに流し、端冷媒通路72,73は冷媒を下向きに流すことにしても良い。更に、スタック1において、燃料は下向きに流しても良いし、上向きに流しても良い。同様に空気は下向きに流しても良いし、上向きに流しても良い。従って、第1冷媒出口14はスタック1の下部側に設けられているが、上部側に設けられていても良い。冷媒入口13,第2冷媒出口15はスタック1の上部側に設けられているが、下部側に設けられていても良い。上記した実施形態では、スタック1では、セル2を水平方向に沿って並設して積層しているが、これに限らず、セル2を高さ方向に沿って並設して積層しても良い。スタック1は、冷却水等の冷媒によりセル2を冷却させるものであれば良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実行できる。
【符号の説明】
【0041】
1はスタック、10は積層体、11は第1エンドプレート、12は第2エンドプレート、13は冷媒入口、14は第1冷媒出口、15は第2冷媒出口、2はセル、2Cは中間セル、2E,2Fは端セル、4はセパレータ、5は冷媒供給通路、50はポンプ、6は冷媒排出通路、7は冷媒通路構造、70は中間冷媒通路、72,73は端冷媒通路、78は流量制御弁(流量制御要素)、81は第1マニホルド孔、82は第2マニホルド孔、83は第3マニホルド孔、88は表面通路、100は入口温度センサ、101は第1出口温度センサ、102は第2出口温度センサ、110は制御装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体と前記膜電極接合体の厚み方向の両側を挟むセパレータとを有するセルを複数個厚み方向に積層して形成されると共に冷媒を流す冷媒通路構造を備えるスタックと、
前記スタックの前記冷媒通路構造の入口に連通する冷媒供給通路と、
前記スタックの前記冷媒通路構造の出口に連通する冷媒排出通路とを具備しており、
前記スタックの前記冷媒通路構造は、
前記スタックの積層方向の中間に存在する中間セルの中間冷媒通路と、前記積層方向の端に存在する端セルの端冷媒通路とを有しており、且つ、
前記冷媒供給通路から供給される冷媒を前記中間冷媒通路に流して前記中間セルを冷却し、前記中間冷媒通路を流れて前記中間セルから受熱して暖められた冷媒を前記端セルの前記端冷媒通路に流して前記端セルと熱交換させる構造を有する燃料電池スタック装置。
【請求項2】
膜電極接合体と前記膜電極接合体を厚み方向の両側を挟むセパレータとを有するセルを複数個厚み方向に積層して形成されると共に冷媒を流す冷媒通路構造を備えるスタックと、
前記スタックの前記冷媒通路構造の入口に連通する冷媒供給通路と、
前記スタックの前記冷媒通路構造の出口に連通する冷媒排出通路とを具備しており、
前記スタックの前記冷媒通路構造は、
前記スタックの積層方向の中間に存在する中間セルの中間冷媒通路と、前記積層方向の端に存在する端セルの端冷媒通路と、前記中間冷媒通路を流れるものの前記端冷媒通路を流れないで前記冷媒排出通路に到達する冷媒流量α1と、前記中間冷媒通路および前記端冷媒通路を流れて前記冷媒排出通路に到達する冷媒流量α2との比率を調整する流量制御要素とを有しており、且つ、
前記冷媒供給通路から供給される冷媒を前記中間冷媒通路に流して前記中間セルを冷却し、前記中間冷媒通路を流れて前記中間セルから受熱して暖められた冷媒を前記端冷媒通路に流して前記端セルと熱交換させる構造を有する燃料電池スタック装置。
【請求項3】
請求項2において、前記スタックは、前記冷媒供給通路から前記スタックの前記冷媒通路構造の入口に冷媒を供給するための第1冷媒入口と、前記スタックの前記中間冷媒通路を流れて前記中間セルから受熱して暖められた冷媒を前記端セルの前記端冷媒通路に流すことなく前記冷媒排出通路に流す第1冷媒出口と、前記中間冷媒通路を流れて前記中間セルから受熱して暖められた冷媒を前記端セルの前記端冷媒通路を介して前記冷媒排出通路に流す第2冷媒出口とを備えている燃料電池スタック装置。
【請求項4】
請求項3において、前記第1冷媒入口の冷媒の入口温度Tinを検知する入口温度センサと、前記第1冷媒出口から排出される冷媒の出口温度Tout1を検知する第1出口温度センサと、前記第2冷媒出口から排出される冷媒の出口温度Tout2を検知する第2出口温度センサと、前記入口温度Tinに対して前記出口温度Tout2がプラスマイナスτ℃(τ=0〜5℃)となるように前記流量制御要素の開度を調整する制御装置とを備えている燃料電池スタック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−249010(P2011−249010A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117518(P2010−117518)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】