説明

物体検出装置

【課題】簡単な構成によって、実際に通行物などが存在しないにも関わらずシートシャッターなどが開放したままになる問題を極力回避して、シートシャッターなどの開閉を的確に制御可能な物体検出装置を提供する。
【解決手段】所定の位置関係で配置される複数の検出エリアに対して光を照射し、これらの検出エリア内からのそれぞれの反射光を受光する複数の能動型光センサ1〜4と、基準反射光量を記憶する記憶手段5と、少なくとも1つの検出エリアにおいてその検出エリア内からの反射光量と対応する前記基準反射光量との差が所定値以上である「検出認識状態」であれば、物体検出信号を出力するとともに、前記「検出認識状態」が前記検出エリアのうちの所定数未満の検出エリアにおいてのみ第1所定時間以上継続した場合は、前記検出エリアすべてについての前記基準反射光量を更新する制御手段6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部などに設けられる自動ドアやシートシャッターの開閉を制御するための物体検出装置に関し、特に、検出エリアから検出対象物体が存在しなくなったにも関わらず自動ドアやシートシャッターが開放されたままとなることを極力防止可能な物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートシャッターは可撓性を有する薄いシート体を使用して建物の開口部を開閉動作させるものである。金属製のスラットなどを使用した鋼製シャッターに比べて重量が軽いために高速な開閉動作が可能であり、トラック、フォークリフト等の通行物が頻繁に出入りする工場、倉庫等の出入口などに設置されることが多い。
【0003】
従来のシートシャッターは、例えば、開口部上方に設けられてシート体を巻き取る巻取シャフト、この巻取シャフトを回転駆動する開閉機、開口部両端に設けられたシート体を昇降案内するガイドレール、開閉機の回転量を検出して開閉機の駆動を停止してシート体を開口部の上下限位置で停止させるリミットスイッチ、これらを制御するコントローラなどを備えている。そして、通行物がシートシャッターの近傍に来たことを検出するセンサの検出信号に連動してシートシャッターが上限位置まで開放し、一定時間後にはシートシャッターが自動的に下限位置まで閉鎖するように構成されている。
【0004】
通行物を検出するためのセンサとしては、例えば、赤外線を検知エリア内に照射し、その検知エリア内から反射される赤外線の受光量を予め記憶している基準値と比較し、その比較結果に基づいて検知対象物体の有無を判定可能な赤外線式センサなどが挙げられる。また、シートシャッター閉鎖動作中にその下方の通行物や障害物を検出してシートシャッターの閉鎖中止および再開放を可能とするために、開口部の側方両端などに光電式の下降規制センサが併設されることも多い(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
一方、自動ドア用センサの技術分野では、自動ドアの軌道上における物体の有無を検知する自動ドアセンサに対し、軌道上の検知エリア内に存在する物体の検知を正確に行うことができ、自動ドアの開閉動作の信頼性の向上を図ることが可能な「自動ドアセンサ」も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−115761号公報
【特許文献2】特開2002−322872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、上述したような赤外線式センサが倉庫の出入口のシートシャッターの屋外側に設置されており、その屋外の地面が未舗装であったような場合などを想定すると、車重の重いトラックなどが部材搬入などのために長時間停車していたためにそのタイヤ痕などがくっきりと残り、それが原因でそのタイヤ痕などを含む検知エリア内からの赤外線の反射光量が大きく変化したままで元に戻らないということもあり得る。
【0007】
そうすると、実際には通行物が存在しなくなった後も、赤外線式センサ自体は通行物が存在しているものと誤検出することになり、結果としてシートシャッターが開放したままになるという事態が発生し得る。
【0008】
このような事態が発生した場合であっても、設置されている赤外線式センサが、検知エリア内から反射される赤外線の受光量の比較対象となる基準値をその電源投入時に自動的に記憶するように構成されていれば、電源を一旦切断してから再投入することによって基準値が更新されるから、シートシャッターが開放したままになるという事態の解消を図ることができる。
【0009】
しかし、例えば、そのような赤外線式センサが高所に設置されていたり、電源の切断や投入が容易にできないように設置されていたりする場合には、対応策は困難となる。
【0010】
従来技術のこのような課題に鑑み、本発明の目的は、簡単な構成によって、実際に通行物などが存在しないにも関わらずシートシャッターなどが開放したままになる問題を極力回避して、シートシャッターなどの開閉を的確に制御可能な物体検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシートシャッター用物体検出装置は、自動ドアまたはシートシャッターの開閉制御のための物体検出装置であって、所定の位置関係で配置される複数の検出エリアに対して光を照射し、これらの検出エリア内からのそれぞれの反射光を受光する複数の能動型光センサと、前記検出エリア内からのそれぞれの反射光量の基準を基準反射光量として記憶する記憶手段と、前記検出エリアの少なくとも1つの検出エリアにおいて、その検出エリア内からの反射光量と対応する前記基準反射光量との差が所定値以上である「検出認識状態」であれば、物体検出信号を出力するとともに、前記「検出認識状態」が前記検出エリアのうちの所定数未満の検出エリアにおいてのみ第1所定時間以上継続した場合は、前記記憶手段に記憶されている前記検出エリアすべてについての前記基準反射光量を更新する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
このような構成の物体検出装置によれば、実際に通行物などが存在しないにも関わらずシートシャッターなどが開放したままになる問題が極力回避される。
【0013】
また、本発明の物体検出装置において、前記制御手段は、前記「検出認識状態」が前記検出エリアのうちの所定数以上の検出エリアにおいて前記第1所定時間よりも長い第2所定時間以上継続した場合には、前記記憶手段に記憶されている前記検出エリアすべてについての前記基準反射光量を更新することを特徴としてもよい。
【0014】
このような構成の物体検出装置によれば、実際に通行物が存在しないにも関わらず、存在しているものと誤って判定したときであっても、シートシャッターなどがあまりの長時間にわたって開放され続けることを防止することが可能となる。
【0015】
あるいは、本発明のシートシャッター用物体検出装置は、自動ドアまたはシートシャッターの開閉制御のための物体検出装置であって、前記自動ドアまたは前記シートシャッターの面に平行な方向について少なくとも2以上、および前記自動ドアまたは前記シートシャッターの面と直交する方向について少なくとも2以上の行列状に配置される複数の検出エリアに対して光を照射し、これらの検出エリア内からのそれぞれの反射光を受光する複数の能動型光センサと、前記検出エリア内からのそれぞれの反射光量の基準を基準反射光量として記憶する記憶手段と、前記検出エリアの少なくとも1つの検出エリアにおいて、その検出エリア内からの反射光量と対応する前記基準反射光量との差が所定値以上である「検出認識状態」であれば、物体検出信号を出力するとともに、前記「検出認識状態」が「前記検出エリアのうちで特定の位置関係にある所定数以上の検出エリア」以外の検出エリアにおいてのみ第1所定時間以上継続した場合は、前記記憶手段に記憶されている前記検出エリアすべてについての前記基準反射光量を更新する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
ここで、「前記検出エリアのうちで特定の位置関係にある所定数以上の検出エリア」とは、例えば、前記検出エリアのうちの任意の2以上の検出エリアの組み合わせ、前記検出エリアのうちで前記自動ドアまたは前記シートシャッターの面に平行な方向に隣接する任意の2つの検出エリアの組み合わせ、前記検出エリアのすべて、などが考えられるが、これらに限られない。
【0017】
また、本発明の物体検出装置において、前記制御手段は、前記「検出認識状態」が「前記検出エリアのうちで特定の位置関係にある所定数以上の検出エリア」において前記第1所定時間よりも長い第2所定時間以上継続した場合には、前記記憶手段に記憶されている前記検出エリアすべてについての前記基準反射光量を更新することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の物体検出装置によれば、実際に通行物などが存在しないにも関わらずシートシャッターなどが開放したままになる問題が極力回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る物体検出装置10の構成を示すブロック図である。この図に示すように、物体検出装置10は、シートシャッターの開閉を制御するシートシャッター・コントローラ20と接続されている。
【0021】
物体検出装置10がトラック、フォークリフト等の通行物を検出すると物体検出信号S1が出力され、その物体検出信号S1がシートシャッター・コントローラ20に入力されるように接続されている。シートシャッター・コントローラ20は、物体検出信号S1の出力に応じてシートシャッターの開放を開始する。物体検出信号S1の出力が停止されると、シートシャッター・コントローラ20はシートシャッターの閉鎖を開始するが、その途中で物体検出信号S1が再び出力された場合にはシートシャッターの閉鎖を中止して開放を再開する。
【0022】
物体検出装置10は、シートシャッターに最も近い検出エリアA1を形成する第1センサ1と、この検出エリアA1よりもシートシャッターから遠い側に検出エリアA2を形成する第2センサ2と、この検出エリアA2よりもシートシャッターから遠い側に検出エリアA3を形成する第3センサ3と、この検出エリアA3よりもシートシャッターから遠い側に検出エリアA4を形成する第4センサ4と、記憶回路5と、これらを制御する制御回路6とを備えている。
【0023】
第1センサ1〜第4センサ4は、例えば、近赤外線を投光し、物体から反射された近赤外線を受光して物体を検出するようなAIR方式のセンサであり、既存のものが利用できる。第1センサ1は2系統の受光素子1a、1bを有するとともに、分割レンズなどを含む光学系(不図示)を組み合わせることで検出エリアA1内に系統毎の複数の小検出エリアが交互に隣接して並ぶように形成させており(図3参照)、系統毎に物体の検出を可能としている。第2センサ2〜第4センサ4についても同様に、検出エリアA2〜A4内のそれぞれにおいて2系統での物体の検出を可能としている。
【0024】
記憶回路5は、第1センサ1〜第4センサ4のそれぞれについて系統毎の受光量の基準値を記憶する。この基準値とは、対応する検出エリア内に通行物などが存在しない状態での受光量であり、例えば、物体検出装置10の電源投入時の受光量を自動的に記憶させるようにしてもよいし、物体検出装置10の設置作業時において受光量を記憶させるようにしてもよい。
【0025】
また、特に屋外などに設置された場合には、物体を検出していない状態での受光量が、周囲の環境変化や経時的変化などに起因して少しずつ変化することもあり得るため、必要に応じて基準値を更新してそれらの変化に追従させるようにしてもよい。
【0026】
記憶回路5の具体例としては、EEPROMやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどが挙げられるが、これらに限られない。
【0027】
制御回路6は、第1センサ1〜第4センサ4の動作を制御するとともに、これらの第1センサ1〜第4センサ4からの系統毎の受光量を得る。それらの受光量を記憶回路5に記憶されているそれぞれの基準値と比較して、その差が規定値以上であれば「検出認識状態(物体を検出したと認識している状態)」と判定するとともに、少なくとも1つの検出エリアにおいて「検出認識状態」であれば物体検出信号S1の出力を行う。
【0028】
また、実際に通行物などが存在しないにも関わらずシートシャッターなどが開放したままになるような問題を回避するために、少なくとも1つの検出エリアについて「検出認識状態」が長時間継続した場合には、原則として記憶回路5に記憶されている基準値の更新を自動的に行わせるようにする。
【0029】
ただし、実際に通行物が存在しているにも関わらず基準値の更新が自動的に行われ、その直後にシートシャッターが閉鎖を開始してしまうことが起こり得るので、「検出認識状態」と判定された検出エリアの数、位置関係やパターン、およびそのような状態の継続時間などに基づいて、実際に通行物が存在している可能性が高いと判断されるときは、記憶回路5に記憶されている基準値の更新は行わない。この詳細については、図8を参照して後述する。
【0030】
制御回路6の具体例としては、ワンチップマイコン、PLD、FPGAなどが挙げられるが、これらには限られない。
【0031】
図2(a)および図2(b)は物体検出装置10によって形成される検出エリアA1〜A4の概略説明図であり、図2(a)は側面図、図2(b)は平面図である。
【0032】
図2(a)に示すように、シートシャッターの閉鎖状態では、建物などの開口部上部の壁面などに設置される箱形のシート巻取部21の下部から、可撓性を有する薄いシート部22が垂れ下がっている。このシート部22の下端22aには重りが包み込まれており、シート部22は通常時にはほぼ鉛直下方に垂れ下がる。
【0033】
物体検出装置10は、シート巻取部21の側面に設置され、設置位置のほぼ鉛直下方向に検出エリアA1が形成されている。さらに、検出エリアA1よりシャッターから遠い側へ順に、検出エリアA2、検出エリアA3、検出エリアA4が形成されている。
【0034】
シートシャッター・コントローラ20は、シート巻取部21の内部に組み込まれており、不図示の配線によって物体検出装置10と接続されている。
【0035】
図2(b)は上方から見た平面図であり、各検出エリアの地面30上での位置関係を示している。このように地面30上では、細長い矩形状の検出エリアA1がシートシャッター近傍にシートシャッターと平行に形成され、さらにほぼ同形状の検出エリアA2〜A4がシートシャッターと平行に順に形成されている。
【0036】
図3は、図2(b)に示した検出エリアA1〜A4内の系統毎の小検出エリアの配置説明図である。なお、図3では、以後の説明の都合上、図示の向きを図2(b)から90度回転させており、図2(b)では左側に存在するシートシャッターは、図3では下側に存在することになる。
【0037】
上述したように、第1センサ1は2系統の受光素子1a、1bを有するとともに、分割レンズなどを含む光学系(不図示)を組み合わせることで検出エリアA1内に系統毎の複数の小検出エリアが交互に隣接して並ぶように形成させている。具体的には、受光素子1aに対応する小検出エリア(図中では「A」で示し、以後の説明では「Aグループ」と記す。)と、受光素子1bに対応する小検出エリア(図中では「B」で示し、以後の説明では「Bグループ」と記す。)とが交互に並ぶ。
【0038】
なお、各グループともに4つずつの小検出エリアが存在することになるが、受光素子自体は1グループにつき1つのみで、検出エリアを光学的に分割しているだけである。このため、通行物などがこれらのいずれかの小検出エリアの内部に侵入すると、その侵入自体は検出できるものの、4つの小検出エリアのいずれに侵入したかということまでが識別できるわけではない。
【0039】
検出エリアA1に平行に隣接する検出エリアA2内にも同様に、受光素子2aに対応する小検出エリア(図中では「C」で示し、以後の説明では「Cグループ」と記す。)と、受光素子2bに対応する小検出エリア(図中では「D」で示し、以後の説明では「Dグループ」と記す。)とが交互に並ぶ。
【0040】
検出エリアA2に平行に隣接する検出エリアA3内にも同様に、受光素子3aに対応する小検出エリア(図中では「E」で示し、以後の説明では「Eグループ」と記す。)と、受光素子3bに対応する小検出エリア(図中では「F」で示し、以後の説明では「Fグループ」と記す。)とが交互に並ぶ。
【0041】
検出エリアA3に平行に隣接する検出エリアA4内にも同様に、受光素子4aに対応する小検出エリア(図中では「G」で示し、以後の説明では「Gグループ」と記す。)と、受光素子4bに対応する小検出エリア(図中では「H」で示し、以後の説明では「Hグループ」と記す。)とが交互に並ぶ。
【0042】
このように、シートシャッター付近に、4×8の行列状の小検出エリアが形成されることになり、Aグループ〜Hグループ毎の検出認識状態の判定結果を組み合わせることで、的確な制御が可能となる。
【0043】
図4(a)〜図4(c)は、Aグループ〜Hグループのいずれか2つの小検出エリアで検出認識状態となる場合の例の説明図である。図5(a)〜図5(c)は、Aグループ〜Hグループのいずれか4つの小検出エリアで検出認識状態となる場合の例の説明図である。
【0044】
通行物などを実際に検出しているか否かの判定を行う比較的単純な方法としては、例えば、検出認識状態と判定された小検出エリアが属するグループ数による判定が挙げられる。
【0045】
この判定は、実際の通行物など以外の偶発的な要因によって誤って検出認識状態のままとなることがあり得るとしても、それが複数のグループに属する小検出エリアで同時に発生して、しかも長時間継続する確率は低いという事実や経験則などに基づく。
【0046】
例えば、2つ以上のグループに属する小検出エリアで検出認識状態が継続している場合は実際に通行物などが存在している可能性が高く、一方、1つのグループに属する小検出エリアのみで検出認識状態が継続している場合は誤検出の可能性が高いと判定できることになる。このような判定方法を採用したとすると、図4(a)〜図4(c)、図5(a)〜図5(c)のいずれの場合も通行物などが存在していると判定されることになる。
【0047】
また、より多くのグループに属する小検出エリアで検出認識状態が継続している場合にのみ、通行物などが存在していると判定するようにすれば、この判定の正確性を高めることができる。
【0048】
例えば4グループ以上に属する小検出エリアで検出認識状態が継続している場合にのみ、通行物などが存在していると判定するのであれば、図5(a)〜図5(c)の場合は通行物などが存在していると判定されるが、図4(a)〜図4(c)の場合は通行物などが存在していないと判定されることになる。
【0049】
図6(a)〜図6(c)は、検出エリアA1〜A4いずれかにおいて、その検出エリアに属する2グループの小検出エリアでともに検出認識状態となる場合の例の説明図である。
【0050】
検出認識状態となっている小検出エリアが属するグループの数に加えて、それらの小検出エリアの位置関係などについても着目することによって、さらに的確な判定が可能となる。通行物などがトラック、フォークリフトなどであれば、これらの車幅が広いことにより、シートシャッターに平行に隣接する複数の小検出エリアで同時に検出される可能性が高いと考えられるからである。
【0051】
例えば、検出エリアA1〜A4いずれかの2グループの小検出エリアがともに検出認識状態である場合に通行物などが存在していると判定するようにしてもよい。
【0052】
このような判定を採用すると、図6(a)〜図6(c)のいずれの場合も通行物などが存在していると判定されることになる。なお、上述した図4(c)、図5(a)、図5(b)の場合についても、同様に通行物などが存在していると判定されることになる。
【0053】
図7は、Aグループ〜Hグループのすべての小検出エリアで検出認識状態となる場合の例の説明図である。
【0054】
検知すべき通行物などが大型のトラックなどに限られるような状況下であれば、その車幅は広くて車体の長さも大きいことから、多くのグループに属する小検出エリアで同時に検出される可能性が高いと考えられる。
【0055】
そこで、例えば、Aグループ〜Hグループのすべての小検出エリアが検出認識状態である場合にのみ通行物などが存在していると判定するようにしてもよい。
【0056】
このような判定を採用すると、図7の場合は通行物などが存在していると判定されるが、上述した図4(a)〜図6(c)のいずれの場合も通行物などが存在していないと判定されることになる。
【0057】
図8は物体検出装置10の概略動作を示すフローチャートである。この動作を実現するための処理は制御回路6によって実行される。
【0058】
まず、第1センサ1〜第4センサ4の各2系統(Aグループ〜Hグループ)の受光量データを順次取得する(ステップS101)。なお、ステップS101〜S109は有限回数のループを形成しており、このステップS101の処理は計8回(=4×2)行われる。受光量データを各回に1つずつ、8回にわたって取得することにより、すべての受光量データを取得できる。
【0059】
次に、取得した受光量データと記憶回路5に記憶されている対応する基準値との差を求め、その差と予め定められている規定値との比較を行い(ステップS102)、規定値よりも大きい場合はステップS103へ進み、そうでない場合はステップS107へ進む。なお、電源投入時や設置作業時などに取得した受光量データを基準値として記憶回路5に予め記憶しておく。
【0060】
差が規定値よりも大きい場合は、さらに「タイマー設定済フラグ」を参照し(ステップS103)、0であればステップS104の処理を行い、1であればステップS104をスキップして、いずれにしてもステップS105へ進む。
【0061】
ステップS104では、静止時間カウンタとしてのタイマーに第1所定時間T1を設定するとともに、「タイマー設定済フラグ」を1にセットする。
【0062】
次に、タイマーに設定した時間がすでに経過したか否かの判定を行い(ステップS105)、設定時間がすでに経過していればステップS106へ進み、そうでなければステップS108へ進む。
【0063】
処理がステップS106へ進んできたのは、いずれかの小検出エリアにおいて物体検出状態が長時間継続していることを意味している。それがごく一部の小検出エリアに限られるのであれば、何らかの偶発的な要因によりその小検出エリアでの受光量データが大きく変化しただけであって実際に物体が存在し続けているわけではない可能性が高いと考えられる。そこで、その物体検出状態を解除するために、記憶回路5に記憶されているそれぞれの基準値をその時点の受光量データに基づく値に更新する(ステップS106)。さらに、実際に存在している物体を検出中であるとの認識を記憶している「検出認識フラグ」を0にクリアするとともに「タイマー設定済フラグ」も0にクリアしてから(ステップS107)、ステップS109へ進む。
【0064】
一方、ステップS108では「検出認識フラグ」を1にセットしてから、ステップS109へ進む。
【0065】
そして、以上の処理が第1センサ1〜第4センサ4の各2系統(Aグループ〜Hグループ)のすべてについて完了したか否かを判定し(ステップS109)、まだ完了していなければステップS101へ戻って上記の処理を繰り返し、すでに完了していればステップS110へ進む。
【0066】
次に、「検出認識フラグ」を参照し(ステップS110)、「検出認識フラグ」が1であれば物体検出信号S1を出力し(ステップS111)、「検出認識フラグ」が0であれば物体検出信号S1の出力を停止し(ステップS112)、いずれにしてもステップS113へ進む。
【0067】
次に、上述した有限回数のループ内で取得した受光量データと基準値との差が規定値より大きいことにより物体検出状態と認識した数と、予め定められている規定数との比較を行い(ステップS113)、認識した数が規定数より大きかった場合のみ、静止時間カウンタとしてのタイマーに第1所定時間T1を設定するとともに、「タイマー設定済フラグ」を1にセットする(ステップS114)。
【0068】
制御回路6では、以上の一連の処理が周期的に繰り返される。その1周分の所要時間は、ステップS104またはステップS114でタイマーへ設定する時間に対しては十分短いものとする。
【0069】
以上のような処理によれば、ステップS113において、物体検出状態と認識した数が規定数より大きいと判定されている間は、常にステップS114を経由することでタイマーへの時間設定がその都度更新されるから、ステップS105の判定が「はい」となることはなく、物体検出信号S1の出力がずっと継続されることになる。しかし、物体検出状態と認識した数が規定数以下になると、ステップS114を経由しなくなるので、タイマーへの時間設定が更新されることはなくなり、やがてステップS105の判定が「はい」に変わることになって、物体検出信号S1の出力が停止されることになる。
【0070】
このような構成により、実際に通行物などが存在しないにも関わらずシートシャッターなどが開放したままになる問題が極力回避される。
【0071】
<第1実施形態の変形例1>
図9は本発明の第1実施形態の変形例1に係る物体検出装置の概略動作を示すフローチャートである。第1実施形態との相違点は、ステップS107とステップS113以降の処理のみである。
【0072】
ステップS107の代わりとなるステップS107aでは、ステップS107で行われる処理に加えて、後述する「タイマー延長設定済フラグ」も0にクリアする。
【0073】
ステップS113で、上述した有限回数のループ内で取得した受光量データと基準値との差が規定値より大きいことにより物体検出状態と認識した数と、予め定められている規定数との比較を行うのは第1実施形態と同様である。
【0074】
そして、認識した数が規定数より大きかった場合は、さらに「タイマー延長設定済フラグ」を参照し(ステップS113a)、「タイマー延長設定済フラグ」が0のときのみ、静止時間カウンタとしてのタイマーにステップS104で設定するよりも長い第2所定時間T2を設定するとともに「タイマー延長設定済フラグ」を1にセットし(ステップS114a)、いずれにしてもステップS101へ戻る。
【0075】
以上のような処理によれば、ステップS113において、物体検出状態と認識した数が規定数より大きいと判定されても、ステップS114aを経由することでタイマーへの延長時間設定が行われるのは、その時点でタイマーへの延長時間設定がされていなかった場合に限られる。したがって、やがてステップS105の判定が「はい」に変わることになって物体検出信号S1の出力が停止されることになるが、それまでに要する時間は第1実施形態と比較すると長いことになる。
【0076】
このような構成により、実際に通行物が存在しないにも関わらず、存在しているものと誤って判定したときであっても、シートシャッターなどがあまりの長時間にわたって開放され続けることを防止することが可能となる。
【0077】
<第1実施形態の変形例2>
図10は本発明の第1実施形態の変形例2に係る物体検出装置の概略動作を示すフローチャートである。第1実施形態との相違点は、ステップS113以降の処理のみである。
【0078】
ステップS113で、上述した有限回数のループ内で取得した受光量データと基準値との差が規定値より大きいことにより物体検出状態と認識した数と、予め定められている規定数との比較を行うのは第1実施形態と同様である。
【0079】
そして、認識した数が規定数より大きかった場合は、さらに物体検出状態とされた検出エリアの位置関係を確認する(ステップS113b)。具体的には、例えば、図5(a)〜図7のような位置関係であるか否かを確認する。そして、そのような特定の位置関係であれば、静止時間カウンタとしてのタイマーに第1所定時間T1を設定するとともに「タイマー設定済フラグ」を1にセットし(ステップS114)、いずれにしてもステップS101へ戻る。
【0080】
以上のような処理によれば、ステップS113において、物体検出状態と認識した数が規定数より大きいと判定されても、ステップS114を経由することでタイマーへの時間設定が更新されるのは、特定の位置関係にある検出エリアで物体検出状態となっている場合に限られる。このような構成により、通行物などが実際に存在しているか否かをより的確に判定できるので、実際に通行物などが存在しないにも関わらずシートシャッターなどが開放したままになる問題と、実際に通行物などが存在しているにも関わらずシートシャッターが閉鎖を始めてしまうような問題とをいずれも極力回避することが可能となる。
【0081】
<その他の変形例>
上記の各実施形態や変形例で使用している方法は、適宜組み合わせたり、一部を置き換えたりすることなども可能である。例えば、第1実施形態の変形例1と変形例2の両方を組み合わせるような制御を行ってもよい。
【0082】
なお、本発明は、その主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係る物体検出装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】物体検出装置10によって形成される検出エリアA1〜A4の概略説明図であり、図2(a)は側面図、図2(b)は平面図である。
【図3】図2(b)に示した検出エリアA1〜A4内の系統毎の小検出エリアの配置説明図である。
【図4】Aグループ〜Hグループのいずれか2つの小検出エリアで検出認識状態となる場合の例の説明図である。
【図5】Aグループ〜Hグループのいずれか4つの小検出エリアで検出認識状態となる場合の例の説明図である。
【図6】検出エリアA1〜A4いずれかにおいて、その検出エリアに属する2グループの小検出エリアでともに検出認識状態となる場合の例の説明図である。
【図7】Aグループ〜Hグループのすべての小検出エリアで検出認識状態となる場合の例の説明図である。
【図8】物体検出装置10の概略動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態の変形例1に係る物体検出装置の概略動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1実施形態の変形例2に係る物体検出装置の概略動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
1 第1センサ
2 第2センサ
3 第3センサ
4 第4センサ
5 記憶回路
6 制御回路(制御手段)
10 物体検出装置
20 シートシャッター・コントローラ
21 シート巻取部
22 シート部
30 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドアまたはシートシャッターの開閉制御のための物体検出装置であって、
所定の位置関係で配置される複数の検出エリアに対して光を照射し、これらの検出エリア内からのそれぞれの反射光を受光する複数の能動型光センサと、
前記検出エリア内からのそれぞれの反射光量の基準を基準反射光量として記憶する記憶手段と、
前記検出エリアの少なくとも1つの検出エリアにおいて、その検出エリア内からの反射光量と対応する前記基準反射光量との差が所定値以上である「検出認識状態」であれば、物体検出信号を出力するとともに、前記「検出認識状態」が前記検出エリアのうちの所定数未満の検出エリアにおいてのみ第1所定時間以上継続した場合は、前記記憶手段に記憶されている前記検出エリアすべてについての前記基準反射光量を更新する制御手段と
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検出装置において、
前記制御手段は、前記「検出認識状態」が前記検出エリアのうちの所定数以上の検出エリアにおいて前記第1所定時間よりも長い第2所定時間以上継続した場合には、前記記憶手段に記憶されている前記検出エリアすべてについての前記基準反射光量を更新することを特徴とする物体検出装置。
【請求項3】
自動ドアまたはシートシャッターの開閉制御のための物体検出装置であって、
前記自動ドアまたは前記シートシャッターの面に平行な方向について少なくとも2以上、および前記自動ドアまたは前記シートシャッターの面と直交する方向について少なくとも2以上の行列状に配置される複数の検出エリアに対して光を照射し、これらの検出エリア内からのそれぞれの反射光を受光する複数の能動型光センサと、
前記検出エリア内からのそれぞれの反射光量の基準を基準反射光量として記憶する記憶手段と、
前記検出エリアの少なくとも1つの検出エリアにおいて、その検出エリア内からの反射光量と対応する前記基準反射光量との差が所定値以上である「検出認識状態」であれば、物体検出信号を出力するとともに、前記「検出認識状態」が「前記検出エリアのうちで特定の位置関係にある所定数以上の検出エリア」以外の検出エリアにおいてのみ第1所定時間以上継続した場合は、前記記憶手段に記憶されている前記検出エリアすべてについての前記基準反射光量を更新する制御手段と
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の物体検出装置において、
前記制御手段は、前記「検出認識状態」が「前記検出エリアのうちで特定の位置関係にある所定数以上の検出エリア」において前記第1所定時間よりも長い第2所定時間以上継続した場合には、前記記憶手段に記憶されている前記検出エリアすべてについての前記基準反射光量を更新することを特徴とする物体検出装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の物体検出装置において、
「前記検出エリアのうちで特定の位置関係にある所定数以上の検出エリア」は、前記検出エリアのうちの任意の2以上の検出エリアの組み合わせであることを特徴とする物体検出装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載の物体検出装置において、
「前記検出エリアのうちで特定の位置関係にある所定数以上の検出エリア」は、前記検出エリアのうちで前記自動ドアまたは前記シートシャッターの面に平行な方向に隣接する任意の2つの検出エリアの組み合わせであることを特徴とする物体検出装置。
【請求項7】
請求項3または4に記載の物体検出装置において、
「前記検出エリアのうちで特定の位置関係にある所定数以上の検出エリア」は、前記検出エリアのすべてであることを特徴とする物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−8004(P2008−8004A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178154(P2006−178154)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】