説明

物品把持装置及びそれを備えたロボット

【課題】一台で外形形状が大きく異なる二種類以上のワークを把持可能な物品把持装置を提供する。
【解決手段】ハンド本体1に設けられ、互いに近接、離間動作が可能な一対の外爪2a、2bと、ハンド本体1に設けられたガイド5a、5bによって案内され、外爪2と同方向に動作可能な一対の内爪6と、を備え、一対の外爪2a、2bの先端と一対の内爪6の先端とが互いに異なる方向に向くよう形成され、一対の外爪2に、一対の外爪2a、2bが互いに近接したとき一対の内爪6a、6bに当接してこれらを互いに近接させる突起部2c、2dが設けられた物品把持装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の加工・組立等に使用されるロボットにおいて、物品を把持する把持装置(ハンド)に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、生産効率向上のため工場の高操業が求められていることから、ロボットによる作業の自動化が進められている。特に組立作業に使用されるロボットには物品把持動作は欠かせず、様々な物品を安定して把持することが必要とされる。ところが、把持を必要とする組立作業への適用はあまり十分とは言えず、この作業の自動化が求められている。
ロボットのアーム先端に装着されてワークを把持する物品把持装置は、従来、爪を平行に案内するガイドを備え、物品の大きさが変わっても安定した把持を実現するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この従来例を図7及び図8を用いて説明する。図7は従来の物品把持装置の要部切欠斜視図、図8は同装置の断面図である。101はハンド本体で、内部に圧力流体を流通させる流路102と、この流路102に連通し、中心軸を略同一にして相対向して配線されたシリンダ103、104が形成されている。上記シリンダ103の内径はシリンダ104のものより大きく形成され、各シリンダ103、104内にはピストン105、106が摺動自在に配置されている。107、108は略コ字状に形成された爪保持体で、略平行に配された第1部材107a、108aならびに第2部材107b、108bと、各第1部材と第2部材に対し略直角で、両部材の、同じ側の一端部と連結する第3部材107c、108cを有している。109、110は互いに平行に位置されるよう、両端部をハンド本体101に保持されたガイドで、上記爪保持部107、108の第1部材107a、108aならびに第2部材107b、108bを貫通して、上記爪保持体107、108をガイド109、110に沿って摺動自在に保持している。そして上記爪保持体107、108は、爪保持体107の第1ならびに第2部材107a、107bの間に爪保持体8の第1部材108aが位置し、第3部材107c、108cがガイド109、110をはさんで対向するように配置されている。111、112は爪保持体107、108に取付けられた爪、113は爪保持体107、108に各端部を係止し両爪保持体107、108を互いに近づく方向に付勢するスプリングである。107d、108dは、上記爪保持体107、108に一体に形成した突起部で、上記ピストン105、106が、この突起部に当接して、爪保持体107、108を作動させる。114はハンド本体101に設けられ、爪保持体107の移動を規制するストッパで、上記爪保持107の停止位置を微調整できるよう構成されている。115は爪保持体108の突起部118dに設けた遮光板でハンド本体101に設けたフォトカプラー116を遮光して、物品の把持不良の状態を検出するよう構成されている。117は爪111、112に設けた小物品用の吸着孔である。
上記構成において、ハンド本体101の流路102に圧力流体が作用し、ピストン105、106が相反する方向に移動すると、このピストン105、106により爪保持体107、108が各ピストン105、106と同方向に移動し、爪保持体107、108が各ピストン105、106と同方向に移動し、爪保持体107、108に固着された爪111、112が互いに接近し、物品を把持することができる。この際、爪把持体7を作動させるピストン105はピストン106より大きい受圧面積を有するため、ピストン106よりも作動力が大きく、かつ爪保持体107側に同爪保持体107のストッパ114が設けられているため、物品の保持において、爪111の位置が確実に定まり、この位置を基準にして他の爪112の位置が決まることになる。
このように、従来の物品把持装置は、物品の把持位置が一元的に定まることから、位置精度が向上するものである。また、爪は平行移動によって把持するため、物品の大きさが変わっても何ら把持状態が変化することなく、安定した把持が実現できる。さらに、ピストン105、106とシリンダ103、104からなるアクチェータとは別に、爪111、112の移動を安定化させるため、爪保持体107、108をガイド109、110で案内して把持の際に爪の姿勢が変化するよう構成しており、爪に強い把持力を持たせることが可能であることから、把持精度、把持安定性ともに向上した装置である。
【特許文献1】特開昭58-196991号公報(図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の物品把持装置は一つのハンドで一つの爪しか作動できず、機器の組立を自動化させようとする場合、把持するワークの種類の数だけハンドを用意するか、またはハンドの爪を付け換える交換器等が必要となっていた。そのため多数のハンドを設置するために広い空間が必要となる問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、一台のハンドで外形形状が大きく異なる二種類以上のワークを把持可能とすることで、従来のハンドに比しハンドの必要総数と設置空間を省くことを課題とする。そして、例えばコネクタと基板の嵌合やプラスチックケースと金属ヒートシンクの組付け等の必要なサーボユニットなどの機器の組立において一台のハンドで機器の組立の自動化をさらに進めることができる物品把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、ハンド本体に備えた一対の爪を互いに近接させてワークを把持する物品把持装置において、前記ハンド本体に設けられ、互いに近接、離間動作が可能な一対の外爪と、前記ハンド本体に設けられたガイドによって案内され、前記外爪と同方向に動作可能な一対の内爪と、を備え、前記一対の外爪の先端と前記一対の内爪の先端とが互いに異なる方向に向くよう形成され、前記一対の外爪に、前記一対の外爪が互いに近接したとき前記一対の内爪に当接してこれらを互いに近接させる突起部が設けられたことを特徴とする物品把持装置とするものである。
請求項2に記載の発明は、前記一対の内爪に、これらが互いに離間する方向に付勢する離間用バネが設けられたことを特徴とする請求項1記載の物品把持装置とするものである。
請求項3に記載の発明は、前記一対の内爪が前記離間用バネによって離間したときに前記一対の内爪と当接するストッパが前記ハンド本体に設けられたことを特徴とする請求項2記載の物品把持装置とするものである。
請求項4に記載の発明は、前記ストッパが前記ハンド本体に交換可能に形成され、前記ストッパの交換によって前記一対の内爪が互いに離間する長さを調整可能に構成されたことを特徴とする請求項3記載の物品把持装置とするものである。
請求項5に記載の発明は、前記一対の内爪及び前記一対の外爪の先端に弾性体を備えたことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の物品把持装置とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5いずれかに記載の物品把持装置をアームの先端に備えたことを特徴とするロボットとするものである。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように本発明に係わる物品把持装置は、一つの駆動源に対し、二つの爪を同時に作動させることができため、機器の組立を自動化するのに必要なハンドの数とハンドの設置空間を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
前記問題を解決するため、本発明は次のように構成したものであり、これを図1および図2を用いて説明する。図1は本発明の物品把持装置の正面図で、図2は側面図である。図のカッコで囲んだ部材は、手前の部材に隠れ見えないが、紙面の反対側に存在する同じ機能を持った部材を指すものとして併記している。
1はハンド本体で、その内部に圧力流体を流通させる流路をもち、流路に圧力流体を流入させ、図示しないピストンを作動させると、ハンド作動部1a、1bを一元的方向に接近または離間する機構を有している。あるいは、サーボモータのようなモータを収容していて、ハンド作動部を一元的方向に接近または離間させる。
ハンド作動部1a、1bは四角板の形状で、この先端に外爪2a、2bが取付けられる。外爪2a、2bの位置決めのため、外爪2a、2bが有する位置決めノックにハンド作動部1a、1bが嵌められ位置決めされる。ハンド作動部1a、1bは外爪2a、2bとの取付け部寸法を公差管理している。
ハンド作動部1a、1bに取付けられる外爪2a、2bは、後述する内爪6a、6bの被把持物との干渉を防ぐため、図2のようにくの字形の形状である。また、外爪2a、2bの被把持物の保護のため、先端の把持部にゴムシート3a,3bを有している。また、外爪2a、2bが互いに近接するよう動作したとき、後述する内爪6a、6bのそれぞれの背面と当接してこれらを押すため、外爪2a、2bの互いが対向する内面には、突起部2c、2dを有している。また、外爪2a、2bは、ハンド作動部1a、1bを嵌めることで位置決めするため、断面を凹状とした位置決めノック2e、2fを有している。本実施例では外爪2a、2bに凹状の位置決めノック2e、2fを設け、ハンド作動部1a、1bが嵌り込むことで位置決めする関係となっているが、逆にハンド作動部1a、1bに凹状の位置決めノックを設け、外爪2a、2bが嵌り込むことで位置決めする関係としても良い。
一方、ハンド本体1にはガイドササエ4a、4b、4c、4dが設けられている。ガイドササエ4a、4b、4c、4dは、後述する内爪6a、6bを外爪2a、2bの動作方向に平行な動作となるよう案内するガイド5a、5bを備えている。また、ガイドササエ4a、4b、4c、4dが互いに対向する面にストッパ8a、8bを有する。なお、ストッパ8a、8bはガイドササエに対して取替可能となっている。
ガイド5a、5bに摺動自在に保持される内爪6a、6bは、外爪2a、2bの被把持物との干渉を防ぐため、図2のように外爪2a、2bとは逆くの字形の形状となっている。また、内爪6a、6bの間にはこれらが離間するように付勢する離間用バネ7が設けられている。また、外爪2a、2b同様、被把持物の保護のため先端の把持部にゴムシート3c、3dを有する。上記外爪2a、2bが互いに近接しておらず、上記突起部2c、2dが内爪6a、6bの背面に当接していないとき、離間用バネ7の作用によって内爪6a、6bが離間し、内爪6a、6bの背面にストッパ8a、8bが当接して、内爪6a、6bの互いの間に一定の隙間ができるようになっている。
【0008】
以上で構成された本発明の物品把持装置の動作を、図3、図4、図5および図6を用いて説明する。図3は本発明の物品把持装置の把持動作時の正面図で、図4は流れ図である。
まず、ハンド本体1に圧力流体を流入し作動させるとハンド作動部1a、1bは一定の範囲で互いに接近または、離間するように作動する。図に示すようにハンド作動部1a、1bが互いに接近する方向に作動すると、ハンド作動部1a、1bに取付けられた外爪2a、2bも作動しワークAを把持する。このとき、外爪2a、2bの突起部2c、2dが内爪6a、6bの背面とそれぞれ当接し、離間用バネ7の付勢力に打ち勝って内爪6a、6bが互いに近接する。従って、内爪6a、6bはワークAよりも小さいワークBを把持可能であるので、ワークBのように内爪6a、6bによって把持したほうが適切なワークに対しては、内爪6a、6bによって把持する。
次に図5は本発明の物品把持装置の離間動作時の正面図で、図6はその流れ図である。図に示すようにハンド作動部1a、1bが互いに離間する方向に作動すると、ハンド作動部1a、1bに取付けられた外爪2a、2bも作動し、ワークAから離間する。外爪6a、6bはハンド作動部1a、1bが止まるまで離れる。またハンド作動部1a、1bが互いに離間する方向に作動し始めると離間用バネ7の反発力によって内爪6a、6bはワークBからガイド5a、5bに沿って互いに離間し始め、ガイドササエのストッパ8a、8bにあたるまで離間する。内爪6a、6bの離間する長さは、ストッパ8a、8bを長さが異なるものに取替えることで調整できる。
【0009】
このように、内爪6a、6bで把持する場合は外爪の突起部2c、2dで内爪6a、6bを押すことで作動させ、そして逆に内爪6a、6bがワークより離間する場合は内爪6a、6bに取付けられた離間用バネ7の弾性力で離間させる。またストッパ8a、8bを長さの異なるものに取替えることで内爪6a、6bの離間する長さを調整する機構を備えているので、外爪2a、2bと内爪6a、6bとで二種類以上のワークを把持することができ、且つ把持精度、把持安定性が高い装置である。
また、本発明は一つのハンドに対し、形状の異なるワークを把持することができる、くの字形の外爪2a、2bと、外爪2a、2bに対し角度を有する、逆くの字形の内爪6a、6bと、を備え、外爪2a、2bを動作させたと同時に、外爪2a、2bの突起部によって内爪6a、6bを駆動するよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例を示す物品把持装置の正面図
【図2】本発明の第1実施例を示す物品把持装置の側面図
【図3】本発明の第1実施例を示す物品把持装置の把持動作のときの正面図
【図4】本発明の第1実施例を示す物品把持装置の把持動作の流れ図
【図5】本発明の第1実施例を示す物品把持装置の離間動作を示す正面図
【図6】本発明の第1実施例を示す物品把持装置の離間動作の流れ図
【図7】従来の物品把持装置の要部切欠斜視図
【図8】従来の物品把持装置の断面図
【符号の説明】
【0011】
1 ハンド本体
1a、1b ハンド作動部
2a、2b 外爪
2c、2d 外爪の突起部
2e、2f 外爪の位置決めノック
3a、3b 、3c、3d ゴムシート
4a、4b、4c、4d ガイドササエ
5a、5b ガイド
6a、6b 内爪
7 離間用バネ
8a、8b ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンド本体に備えた一対の爪を互いに近接させてワークを把持する物品把持装置において、
前記ハンド本体に設けられ、互いに近接、離間動作が可能な一対の外爪と、
前記ハンド本体に設けられたガイドによって案内され、前記外爪と同方向に動作可能な一対の内爪と、を備え、
前記一対の外爪の先端と前記一対の内爪の先端とが互いに異なる方向に向くよう形成され、
前記一対の外爪に、前記一対の外爪が互いに近接したとき前記一対の内爪に当接してこれらを互いに近接させる突起部が設けられたことを特徴とする物品把持装置。
【請求項2】
前記一対の内爪に、これらが互いに離間する方向に付勢する離間用バネが設けられたことを特徴とする請求項1記載の物品把持装置。
【請求項3】
前記一対の内爪が前記離間用バネによって離間したときに前記一対の内爪と当接するストッパが前記ハンド本体に設けられたことを特徴とする請求項2記載の物品把持装置。
【請求項4】
前記ストッパが前記ハンド本体に交換可能に形成され、前記ストッパの交換によって前記一対の内爪が互いに離間する長さを調整可能に構成されたことを特徴とする請求項3記載の物品把持装置。
【請求項5】
前記一対の内爪及び前記一対の外爪の先端に弾性体を備えたことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の物品把持装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の物品把持装置をアームの先端に備えたことを特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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