説明

物品載置棚、棚板および調整板

【課題】書籍棚の棚板に組み込まれたアンテナによるICタグの読み取り性能を改善する。
【解決手段】書籍棚10は、第1棚板2を含む。第1棚板2にはICタグ12が取り付けられた書籍8が載置される。第1棚板2は、書籍8が載置される載置面2aと実質的に平行に形成される第1ループアンテナ14を含む。書籍棚10はブックエンド型ブースタ4を含む。ブックエンド型ブースタ4は、載置面2aと交差する面と実質的に平行に形成され、ICタグ12との通信が行われる際に第1ループアンテナ14と協働する第2ループアンテナ16を有する。第1ループアンテナ14は給電される。第2ループアンテナ16は第1ループアンテナ14から放出される電磁波を受けて電磁波を放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品載置棚、棚板および調整板に関し、特に物品に取り付けられたICタグを読み取る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図書館ではバーコードによる書籍類の管理を行ってきたが、最近では書籍の表紙面にIC(Integrated Circuit)タグを貼付し、そのタグを読み取ることで書籍類の管理を行うようになってきている。図書館でICタグによる管理を導入する場合、盗難防止用の出入口のゲート、貸出処理用の自動貸出機、蔵書点検用のハンディリーダが先ず導入されることが多い。
【0003】
一般的に、ICタグ同士が重なるように配置されると、ICタグの共振回路の共振周波数のズレにより、ICタグの応答性が低下する。しかしながら自動貸出機において利用者が複数の書籍を取り扱う場合、書籍の一端を揃える傾向にある。また、配架状態ではサイズの許す限り背表紙を揃える傾向にある。したがってICタグが書籍に貼付される位置は同軸状になりやすく、自動貸出機やハンディリーダ及び盗難防止用のゲートアンテナでの読取性能を向上させるために、ICタグの貼付位置を極力重ならないように配慮する傾向にある。
【0004】
一方最近では、上記の3種類の読取機器に加えて、棚にICタグ読取用のアンテナを敷設し、棚上の書籍の配架状況をリアルタイムに把握が可能な物品管理棚が利用されつつあり、本発明者が発明した平面タイプのアンテナ(特許文献1参照)も実際の図書館で利用されている。
【0005】
当該発明の平面アンテナは、書籍の表紙面に貼付しても、即ち棚板面に垂直なICタグを間口方向のどの位置に配置しても読取が可能なアンテナであるが、アンテナ面から離れた高い位置に貼付されたICタグに対して読取性能が低下する傾向にある。この棚板面に垂直なICタグに対する高さ方向のICタグに対する読取性能の傾向は、当該発明の平面アンテナに限らず、特許文献2や特許文献3に記載されているような同様の平面タイプのアンテナではいずれも同じような傾向にある。
【0006】
また棚板面ではなく、特許文献4〜13に記載されているようなブックエンド型の固定式アンテナを用いたアンテナを配置し、書籍の表紙面に貼付されたICタグと実質的に正対するような位置にアンテナを配置することによって、読取を可能にしたシステムも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−318720号公報
【特許文献2】特開2006−235946号公報
【特許文献3】特開2006−319563号公報
【特許文献4】特開平7−049879号公報
【特許文献5】特開2001−097510号公報
【特許文献6】特開2001−097511号公報
【特許文献7】特開2001−097512号公報
【特許文献8】特開2001−101285号公報
【特許文献9】特開2005−086419号公報
【特許文献10】特開2005−239366号公報
【特許文献11】特開2005−343608号公報
【特許文献12】国際公開第06/080300号パンフレット
【特許文献13】特開2007−221584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術について、本発明者は以下の課題を認識した。
(特許文献2、3の1素子で構成された平面アンテナに関して)
(課題1)
一般的に、書籍の表紙面に貼付されたICタグ(ICタグ面をyz軸面で形成)に対して、間口方向の複数箇所に存在する奥行き(y軸)方向に延びるエレメント間で、NULL点が存在する。
(その理由)
間口方向に複数存在する奥行き(y軸)方向に延びるエレメントに流れる電流は、隣接エレメント間で互いに逆向き(手前→奥側と奥側→手前)の関係にあり、その間においては、互いのエレメントで形成される磁界の間口方向成分の向きも逆向きの関係にあるから。たとえ隣接する奥行き(y軸)方向に延びるエレメント間を結ぶエレメントが、斜め方向に形成されていても(特許文献3の図1)、間口方向に形成されていても(特許文献2の図8)、NULL点が発生する。
【0009】
(特許文献1の2素子で構成され切替不要の平面アンテナに関して)
(課題2)
書籍の表紙面に貼付されたICタグが高い位置に貼付された場合、読取性能が低下する。そのため、最大限効果的に本システムを運用するためには、事前にICタグを低めの位置に貼付する必要があり、既に先行してICタグを貼付した図書館などでは、読取性能が十分発揮できない場合が起こり得る。
(その理由)
通常、ICタグが最も通信距離を得られるのは、ICタグ面とアンテナ面が正対する場合であり、ICタグがアンテナ面と直交する場合は、通信距離が短くなる。
棚板に敷設されたアンテナは、該棚板上に配架された静止状の、表紙面に貼付されたICタグ付き書籍に対してNULL点が無いように少なくとも2素子のアンテナが、相互のアンテナのNULL点を補うように近接配置されている。このため、相互のアンテナが相互干渉しあうため、アンテナ単独の場合より通信距離が短くなる。また、単純にアンテナの出力を上げることは電波法による制限から難しい。
【0010】
(特許文献4〜13のブックエンド型アンテナに関して)
(課題3)
読取用のアンテナが内蔵されたブックエンドは、ある程度離れた略固定位置に設置されているため書籍が倒れてしまう。また完全に書籍が倒れてしまった場合、読取ができない。
(その理由)
読取用のアンテナが内蔵されたブックエンド型アンテナでは、ICタグの該ブックエンド型アンテナからの距離が遠くなると読取性能が低下する。一方で、該ブックエンド型アンテナ同士を近づけすぎると相互干渉により読取性能が低下する。そのため、平行に隣接するブックエンド型アンテナ同士間の距離を制御する必要がある。
実運用上、移動できない該ブックエンド型アンテナが多く存在すると、書籍の配架の自由度が悪くなるため、3から4個程度のブックスタンド型アンテナが現実的である。しかしながらこの場合も、既に該ブックエンド型アンテナの存在のため、アンテナを備えない単なるブックエンドを設置する余裕が無くなる。これによりある程度の間隔のあるブックエンド型アンテナ間では、文庫本などの比較的小さな書籍や薄い書籍は倒れてしまう。
ブックエンド型アンテナでは、その数が多くなると上記の問題や別で示す他の問題(通信速度問題)があるので、その通信距離を確保するためにアンテナサイズが大きくなる。これにより上下段でこのブックエンド型アンテナ間の距離が近くなるため、上下段での誘導磁界による隣接アンテナによる読取ミスが発生しうる。これを防ぐため、上下段に金属板等の遮蔽材を設置することが考えられる。しかしながら、倒れた書籍がこの金属板に近づくことにより読み取り難い、もしくは読めない状況が発生しうる。
【0011】
(課題4)
ブックエンド型アンテナのサイズが大きく、文庫本等比較的小さな書籍を管理する場合に、1書架当たりの上下の段数が抑制されてしまう。
(その理由)
ブックエンド型アンテナの通信距離を長くして棚当たりのブックエンド型アンテナ数を減らすために、ブックエンド型アンテナのサイズはかなり大きく設計される。そのため、文庫本コーナー等の小さな書籍のみが配架される場合、書籍(文庫本)の倍程度の高さの空間が必要となり、収納能力が低減されるし、上下方向の高さ調整が不可能となる。
【0012】
(課題5)
低い位置に貼付されたICタグに対する読取性能が低い。
(その理由)
アンテナを形成するエレメントの延長上は、ICタグ面と水平の電磁波が形成されるため、通信性能が低くなりうる。このため下方及び奥側の位置に貼付されたICタグの読取性能は低くなる。また、書籍の下方及び背面付近は、隣接する下段側の棚や背面板越しの棚に設置されたアンテナ間の干渉を防止するために金属板が必要であり、より下方及び背面側付近に貼付されたICタグの読取性能が低下する原因ともなる。
【0013】
(課題6)
左右両サイドにデッドスペースの設置が必要であり、収納スペースが低くなる。
(その理由)
棚板の両サイドにアンテナを設置する場合、隣接棚エリアにも電磁波を放出するため、鉄板等の電磁波遮蔽材が必要となる。しかし、電磁波遮蔽材とブックエンド型アンテナは、平行位置関係にあるため読取性能への影響が大きく、この電磁波遮蔽材とブックエンド型アンテナとの間に一定のスペースを設ける必要がある。そのため、収納スペースが少なくなる。
一方、左右両端にブックエンド型アンテナを用いない場合、左右端は、ブックエンド型アンテナからの距離が遠くなるため、この左右端で読取条件が厳しい場合、読取性能が低下する。
【0014】
(課題7)
一般に書棚は間口方向に長い棚板であって、このような場合、複数のブックエンド型アンテナからなるシステムは、応答処理速度に時間を要することに加えてコストが高い。
(その理由)
1棚に設置される複数のアンテナを順次切替える必要があり、この切替えるアンテナ数が多いほど、応答処理速度が遅くなる。一つのブックエンド型アンテナは左右端に設置される場合を除いて、該ブックエンド型アンテナの両サイドの書籍のICタグと通信を行うため、アンテナ間に挟まれたICタグは、複数のアンテナと通信を行うことになる。そのため、棚上に実際に配置された書籍の数よりも多く(ICタグを貼付された書籍の数の倍近く)のICタグと通信するため、応答処理速度が低下しうる。
また一つのリーダと接続できるアンテナ数には限りがあるため、一棚当たりのアンテナ数が多くなるほど、一棚当たりのコストが大きくなる。
【0015】
(課題8)
新刊本等の紹介を兼ねた展示方法としては、タイトルが見えるように表紙面を手前に書籍を配置させることが一般的で、ブックエンド型のアンテナでは、このような書籍の展示方法において書籍のサイズの制限が必要となる。
(その理由)
書籍のサイズは様々であるのに対して、ブックエンド型アンテナ間の距離がほぼ固定されているため、アンテナ間距離よりも大きな書籍は展示が不可能となる。
【0016】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は物品の配置の自由度を維持しつつ、ICタグの読み取り性能を改善する物品管理技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のある態様は、物品載置棚に関する。この物品載置棚は、ICタグが取り付けられた略矩形の物品が載置される棚板であって物品が載置される載置面と実質的に平行に形成される第1のアンテナが設けられた棚板と、載置面と交差する面と実質的に平行に形成され、ICタグとの通信が行われる際に第1のアンテナと協働する第2のアンテナと、を備える。
【0018】
この態様によると、第1のアンテナから放出される電磁波と第2のアンテナから放出される電磁波とを合成した電磁波により、より遠くのICタグと通信できる。
【0019】
本発明の別の態様もまた、物品載置棚である。この物品載置棚は、ICタグが取り付けられた略矩形の物品が載置される複数の棚板であって各棚板に物品が載置される載置面と実質的に平行に形成される第1のアンテナが設けられた複数の棚板と、各棚板に対応して設けられる少なくともひとつの第2のアンテナであって、対応する棚板の載置面と交差する面と実質的に平行に形成され、ICタグとの通信が行われる際に対応する棚板の第1のアンテナと協働する少なくともひとつの第2のアンテナと、を備える。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、棚板である。この棚板は、ICタグが取り付けられた略矩形の物品が載置される棚板であって、物品が載置される載置面と、載置面と実質的に平行に形成され、ICタグとの通信が行われる際に載置面と交差する面と実質的に平行に形成される第2のアンテナと協働する第1のアンテナと、を備える。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、調整板である。この調整板は、棚板上でICタグが取り付けられた略矩形の物品の配置を調整する筐体と、棚板の物品が載置される載置面と交差する面と実質的に平行に形成され、ICタグとの通信が行われる際に棚板に設けられ載置面と実質的に平行に形成される第1のアンテナと協働する第2のアンテナと、を備える。
【0022】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ICタグの読み取り性能を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図書館で利用する場合の第1の実施の形態に係る書籍棚を示す斜視図である。
【図2】書籍棚に収納される書籍の一例を示す斜視図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、書籍にICタグをずらして貼付する場合を示す説明図である。
【図4】書籍に貼付するICタグを示す説明図である。
【図5】図5(a)〜(e)は、図1の第1ループアンテナを説明するための説明図である。
【図6】図6(a)、(b)は、図1の第1棚板にブックエンド型ブースタが設けられた状態を説明するための説明図である。
【図7】図7(a)〜(e)は、変形例に係る第3棚板に含まれる第1ループアンテナおよび第4ループアンテナを説明するための説明図である。
【図8】図8(a)、(b)は、第2の実施の形態に係る書籍棚に含まれる第4棚板および背面板を説明するための説明図である。
【図9】第2変形例に係る第4棚板を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0026】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る書籍棚では、棚板に設けられる給電ループアンテナとブックエンド型の非給電ブースタアンテナとを併用することにより、書籍のICタグを容易に読み取れる領域を拡大する。
【0027】
図1は、図書館で利用する場合の第1の実施の形態に係る書籍棚10を示す斜視図である。書籍棚10は、2つの第1棚板2と、第2棚板18と、各棚板にひとつ設けられた移動可能な板状のブックエンド型ブースタ4と、略矩形の枠体6と、を備える。書籍棚10は書籍8を収納する。書籍8は第1棚板2の載置面2aおよび第2棚板18の載置面18a上に間口方向(第1棚板2の間口が延在する方向、図1のx方向)に沿って並べて載置される。板状のブックエンド型ブースタ4は載置面2a、載置面18a上で書籍8の配置を調整する。例えばブックエンド型ブースタ4は書籍間の任意の位置に挿入されて書籍8の種類ごとに区分けしたり、端の書籍を押さえることで書籍8が倒れないように支える役割を果たす。書籍8にはICタグ12が貼付される。
【0028】
枠体6は、2枚の側板6a、6bと、第2棚板18である底板6cと、天板6dと、背面板6eと、を含む。枠体6は金属や合成樹脂やガラスや木材などの材料から形成されてもよい。
【0029】
第1棚板2はガラスや合成樹脂や木材などの非金属材料から形成され、枠体6の2枚の側板6a、6bに支持される。第1棚板2の寸法は例えば間口が約900mm、奥行きが約350mm、厚さが約10mmである。第1棚板2はその載置面2aと実質的に平行に形成される第1ループアンテナ14(図5で後述)を含む。第1ループアンテナ14は、導電性塗料(例えば、銀ペースト)を例えば10mmの幅で印刷および焼成することによって構成した導電パターンであり、第1棚板2に埋め込まれている。
【0030】
第1ループアンテナ14の端子はICタグリーダ(不図示)に接続される。ICタグリーダは第1ループアンテナ14を介して書籍8のICタグ12と通信する。例えばICタグリーダは第1ループアンテナ14に給電し、第1ループアンテナ14に電磁波を生じさせる。ICタグ12はそれに内蔵されるタグアンテナ(図1では不図示)を使用してその電磁波を捉えて応答する。
書籍棚10はICタグリーダと合わせて書籍管理システムを構成する。
【0031】
ブックエンド型ブースタ4は縦横200mm、厚さ10mm程度の直方体形状を有する。ブックエンド型ブースタ4は、書籍8と接すべき側面4bと実質的に平行に形成される第2ループアンテナ16であって直方体形状に略沿った略矩形のループ形状からなる第2ループアンテナ16を含む。第2ループアンテナ16は非給電とされる。第2ループアンテナ16は例えば、線径5mmの銅箔から形成されてもよい。ブックエンド型ブースタ4は実用上縦置きで使用されるので、第2ループアンテナ16は載置面2aと交差する面と実質的に平行に形成されていると言える。図1の場合、第2ループアンテナ16が形成される面は間口方向と実質的に垂直とされている。
ICタグリーダとICタグ12との間の通信の際、第1ループアンテナ14と第2ループアンテナ16とは協働する。すなわちICタグリーダが第1ループアンテナ14に給電して第1ループアンテナ14から電磁波が放出されると、第2ループアンテナ16はその電磁波を受け第2ループアンテナ16に誘導電流が流れる。その誘導電流によって第2ループアンテナ16から電磁波が放出される。第2ループアンテナ16が放出する電磁波は第1棚板2の間口方向の成分を相対的に多く有する。したがって第1ループアンテナ14による電磁波のみの場合と比べて第1棚板2の載置面2a上における特に上層の電磁波の間口方向の成分が強まる。
ブックエンド型ブースタ4は第2ループアンテナ16に誘導電流を検出すると点灯されるLED4aを含んでもよい。このLED4aの状態を見ることで一目でどの棚(棚板)が現在読まれているかが分かる。また、誘導電流の検出しきい値を適切に設定することでブックエンド型ブースタ4が有効に動作しているか否かを知ることができる。
【0032】
第2棚板18は、その載置面18a上に可動ホルダ22とレール24とを備える点を除いては第1棚板2と同様の構成を有する。すなわち、第2棚板18は第1ループアンテナ14に相当する第3ループアンテナ20を含む。
可動ホルダ22はレール24に沿って第2棚板18の間口方向に移動する。可動ホルダ22は第2ループアンテナ16が形成される面が載置面18aと交差するようにブックエンド型ブースタ4を支える。特に可動ホルダ22はブックエンド型ブースタ4の側面4bが間口方向と実質的に垂直とされるようにブックエンド型ブースタ4を支える。
この第2棚板18によると、ブックエンド型ブースタ4が倒れて第2ループアンテナ16が載置面18aと平行となる可能性を低減できる。また、可動ホルダ22に取り付けられたブックエンド型ブースタ4はレール24に沿って移動可能なので書籍8保管上の利便性も高まる。
【0033】
図2は、書籍棚10に収納される書籍8の一例を示す斜視図である。ICタグ12は書籍8の任意の箇所、例えば表紙面や内側の見開き面や最終ページなどに貼付される。ICタグ12は書籍情報等を記憶する。
【0034】
図3(a)〜(c)は、書籍8にICタグ12をずらして貼付する場合を示す説明図である。図3(a)〜(c)はそれぞれ書籍8の表紙面に貼付されたICタグ12の貼付位置の一例で、ICタグ12の背表紙及び棚板からの貼付距離が互いに異なる例を示す。
【0035】
RFID(Radio frequency identification)の導入を検討する図書館の場合、先ず、基本の検知システムとして、盗難防止用の出入口ゲート、蔵書点検用端末(ハンディリーダー)、自動貸出機が導入されることが多い。
図書館では、利用者の書籍の検出し易さを考慮して、書架に配架された際の書籍のタイトル面(背表紙)を揃える傾向にある。また利用者が複数の書籍を取り扱う場合、書籍を整えて書籍の一端を揃える傾向があり、これらの傾向から書籍の同じ位置に規則正しくICタグを貼付すると、複数の書籍を取り扱う場合、ICタグが略同一軸方向に重なるような状態になる。一方で、前記の盗難防止用の出入口ゲート、蔵書点検用端末、自動貸出機は、このような状態のICタグの検出を苦手とする。これは略同一軸上に重ねられたICタグの共振周波数のズレの発生による通信性能の低下が要因であることが知られている。その対策として図書館では、図3に示されるようにICタグを適度にばらつくように配置している。ただし、あまり大きくばらつくように貼付すると小型の蔵書点検用ハンディリーダでは、蔵書点検時に読み落しが発生する可能性があるため、一般的には書籍の高さの半分以下の高さに貼付されている。
【0036】
図4は、書籍8に貼付するICタグ12を示す説明図である。ICタグ12は、タグアンテナ12aと、ICチップ12bと、を含む。タグアンテナ12aは少なくとも1回巻回されたループ状のアンテナである。ICチップ12bはタグアンテナ12aの両端と接続される。ICチップ12bは書籍情報等を記憶する。
【0037】
図5(a)〜(e)は、第1ループアンテナ14を説明するための説明図である。図5(a)は、第1ループアンテナ14を示す上面図である。図5(a)では説明のため第1棚板2の輪郭も示す。第1ループアンテナ14は載置面2aのほぼ全面に亘って形成されるひとつのループ状アンテナである。第1ループアンテナ14は、間口方向に直線状に延びる直線部分14aと、ミアンダ形状に形成されたミアンダ部分14bと、を含む。ミアンダ部分14bは、間口方向に沿って配列された、奥行き方向(載置面2aと平行で間口方向と垂直な方向、図1のy方向)に沿ってに延びる複数のアンテナエレメント14cを有する。
図5(b)は、第1ループアンテナ14を有する第1棚板2と載置面2a上に載置された書籍8のICタグ12との間の位置関係を示す説明図である。
【0038】
図5(c)は、第1ループアンテナ14だけではICタグ12の読み取りが困難となる位置を示す説明図である。隣接するアンテナエレメント14cには逆極性の電流が流れるので、隣接するアンテナエレメント14cの間にはそれらの隣接するアンテナエレメント14cから放出される磁界の間口方向の成分が合成されて小さくなるNULL領域26が存在する。書籍8は第1棚板2上で図5(b)に示されるようにほぼ垂直に立てられることが多い。このような状況では、書籍8のICタグ12がNULL領域26に入った場合、そこでの第1ループアンテナ14からの磁界のうちタグアンテナ12aの面と垂直な方向の成分は小さい。したがって、第1ループアンテナ14から放出される磁界だけを考えた場合、NULL領域26ではICタグ12の読み取りが困難となる。
【0039】
図5(d)は、第1棚板2の上部における仮想可読領域28を模式的に示す説明図である。図5(d)では、図5(a)のA−A線断面図と仮想可読領域28とが示される。仮想可読領域28は第1ループアンテナ14のみでICタグ12を容易に読み取れる領域であり、例えば第1ループアンテナ14からの磁界の間口方向の成分がICタグ12と通信するのに十分な強度を有する領域である。仮想可読領域28の大きさは第1ループアンテナ14に供給する電流の大きさなどにより変化する。
図5(e)は、図5(d)の第1棚板2に2冊の書籍8が載置された場合を示す説明図である。仮想可読領域28は比較的上方に延びており書籍8の比較的上側に貼付されたICタグ12にも届きうる。しかしながらNULL領域26では依然としてICタグ12の読み取りは困難である。
【0040】
図6(a)、(b)は、第1棚板2にブックエンド型ブースタ4が設けられた状態を説明するための説明図である。図6(a)は、第1棚板2にブックエンド型ブースタ4が設けられた状態を示す斜視図である。図6(b)は、第1棚板2の上部における合成可読領域30を模式的に示す説明図である。図6(b)では、図6(a)のB−B線断面図と合成可読領域30とが示される。
合成可読領域30は第1ループアンテナ14と第2ループアンテナ16とを併用することでICタグ12を容易に読み取れる領域であり、例えば第1ループアンテナ14からの磁界と第2ループアンテナ16からの磁界とを合成した合成磁界の間口方向の成分が、ICタグ12と通信するのに十分な強度を有する領域である。
【0041】
ブックエンド型ブースタ4の第2ループアンテナ16が第1ループアンテナ14から放出される磁界を受けることによって、第2ループアンテナ16から間口方向に反対方向の磁界が放出される。このように放出された磁界と第1ループアンテナ14からの磁界とが載置面2a上で合成され、図6(b)に示されるように通信エリアが拡大される。特にNULL領域26もカバーされ、載置面2a上のほぼ全体で通信容易となる。
【0042】
なお、図6(a)、(b)ではブックエンド型ブースタ4を第1棚板2の間口方向ほぼ中央に配置する場合を示しているが、ブックエンド型ブースタ4は任意の場所に設置してもよい。特に間口方向に広い第1棚板2の場合、ブックエンド型ブースタ4を複数用いてもよい。
【0043】
本実施の形態に係る書籍棚10によると、第1棚板2の第1ループアンテナ14とブックエンド型ブースタ4の第2ループアンテナ16とを併用することで、第2ループアンテナ16から間口方向へ放出される磁界によりNULL領域26が解消され間口方向の連続的な磁界が形成される。したがって、上記の課題1が解決され、書籍8に貼付されるICタグ12をより確実に読み取ることができる。
【0044】
また言い換えると第2ループアンテナ16を第1ループアンテナ14と使用することにより、上記の課題5が解決され、より低い位置に貼付されたICタグ12を読み取ることができる。第1ループアンテナ14は図5(d)に示されるように低い位置に広い読み取り可能領域を有しているからである。
【0045】
なお、正確にNULL領域26の位置にブックエンド型ブースタ4を配置した場合、第2ループアンテナ16を通過する磁束が少なくなるため、ブックエンド型ブースタ4はNULL領域26を回避して設けられることが好ましい。しかしながら、低層ではその幅は非常に狭いため、殆どが自由な位置に設置が可能である。
【0046】
また、ICタグ12自体が反磁界を生成するので、第1棚板2の上に数多くの書籍8が載置されている場合にはNULL領域26は広がる傾向にある。そこで第2ループアンテナ16を併用することでこのような場合でも十分な広さの合成可読領域30を確保できる。
【0047】
間口方向に長い第1棚板2の場合について、より現実的に述べるなら、一般的には書籍8は棚の端の方から配架される。したがって例えば左端から書籍8を配架する場合、書籍数が少ないときは、右端の書籍8にブックエンド型ブースタ4を配置する。書籍数が順に多くなる場合、配架された書架の中央部付近に書籍8を配置する。より冊数が配架される場合、最も右端の書籍8の右側に2枚目のブックエンド型ブースタ4を配置することによって対応が可能である。このように第1ループアンテナ14が取り付けられた第1棚板2との併用により、ブックエンド型ブースタ4の位置を自由に変更することができ、上層のICタグ12の読取性能も改善し、本来のブックエンドの機能も得ることができる。したがって、上記の課題3が解決され、書籍8が倒れることが無いし、例え倒れても第1ループアンテナ14により通信が可能となる。
【0048】
また、上述の課題7で説明した通り、従来のブックエンド型の切替アンテナの場合は、複数のポートで接続された別々のアンテナが1つのICタグを読み取ってしまうので処理時間がかかる。これに対して本実施の形態に係る書籍棚10によると、より広い可読領域を有する1ポートのアンテナでより多くのICタグ12と一括して通信できるので、処理時間が短縮される。また、干渉発生の可能性を低減できる。さらに、1棚当たりに必要なアンテナの数を低減してコストを削減できる。加えて、上記の課題8が解決され、アンテナ配置の要請による書籍の展示方法に対する制限が緩和される。その結果利用者にとってより魅力的な展示が可能となる。また、アンテナの切替数を少なくして通信速度を維持できる。
【0049】
ブックエンド型ブースタの第2ループアンテナを給電とする場合、該アンテナとその正対するICタグとの距離の問題があるので、長い棚板の場合(短い場合は問題ではない)、1個のブックエンド型アンテナでは棚全体を読み取り難い。そこで複数のアンテナを切替給電する必要性が生じうる。これに対して、第1棚板2の第1ループアンテナ14に給電する場合、誘導されるブースタの位置に制限が少なく、また第1ループアンテナ14の1回路に給電するだけで対応できるため、コスト的にも応答処理的にも、利点が大きい。ただし、第1棚板2に設けられる第1ループアンテナ14の間口方向長さが短い場合は、どちらに給電してもよい。
【0050】
また、ブックエンド型ブースタ4の第2ループアンテナ16を非給電としたことにより、第2ループアンテナ16ひいてはブックエンド型ブースタ4のサイズを低減できる。したがって、上記の課題4が解決され、1書架当たりの上下の段数を増やすことができる。
また、第2ループアンテナ16は非給電なので左右両サイドにデッドスペースを設けなくてもよく、収納スペースを広くとれる。これにより上記の課題6が解決される。
また、ブックエンド型ブースタの第2ループアンテナに給電する場合と比べて1棚板当たりの給電すべきアンテナの数も少なくて済む。これはコストの削減に寄与する。
また、基本的に回路数の増加が無いため、通信速度を維持することができる。
【0051】
また、第2ループアンテナ16が形成される面は間口方向と実質的に垂直であることが好ましい。この場合第2ループアンテナ16が放出する磁界の間口方向の成分をより強めることができる。
【0052】
また、第2ループアンテナ16はブックエンド型ブースタ4に含まれているので、ブックエンド型ブースタ4ひとつでブックエンドとブースタの両方の機能を実現できる。
【0053】
第1棚板2の第1変形例を説明する。第1変形例に係る第3棚板36は、第1ループアンテナ14に加えて、載置面36a側から見て第1ループアンテナ14と少なくとも部分的に重畳する第4ループアンテナ32を含む。
図7(a)〜(e)は、第1変形例に係る第3棚板36に含まれる第1ループアンテナ14および第4ループアンテナ32を説明するための説明図である。図7(a)は、第1ループアンテナ14および第4ループアンテナ32を示す上面図である。図7(a)では説明のため第3棚板36の輪郭も示す。第4ループアンテナ32は第1ループアンテナ14と絶縁層を介して配列される。第4ループアンテナ32は、載置面36aのほぼ全面に亘って形成されるひとつのループ状アンテナである。第4ループアンテナ32は、第3棚板36の背面側で間口方向に直線状に延びる直線部分32aと、ミアンダ形状に形成されたミアンダ部分32bと、を含む。ミアンダ部分32bは、間口方向に沿って配列された、奥行き方向に沿ってに延びる複数のアンテナエレメント32cを有する。
【0054】
第1ループアンテナ14のミアンダ部分14bにおける隣り合うアンテナエレメント14c間の距離は第4ループアンテナ32のミアンダ部分32bにおける隣り合うアンテナエレメント32c間の距離と実質的に等しく設定される。その距離を距離L1と呼ぶ。第4ループアンテナ32のミアンダ部分32bは、第1ループアンテナ14のミアンダ部分14bに対して間口方向に距離L2だけずらして配置される。ここで載置面36a上の可読領域の大きさの観点から、距離L2は0.25L1〜0.65L1の範囲にあるのが好ましく、0.3L1〜0.5L1の範囲にあるのがより好ましい。
【0055】
第4ループアンテナ32の両端子間には第4ループアンテナ32の周波数特性を調整するためのキャパシタなどの周波数調整手段が接続される。不図示のICタグリーダは第3棚板36の第1ループアンテナ14に給電する。第4ループアンテナ32には第1ループアンテナ14が放出する電磁波を受けることで誘導電流が流れる。この誘導電流によって第4ループアンテナ32から電磁波が放出される。つまり第3棚板36に形成されるアンテナは、2素子のアンテナ(第4ループアンテナ32、第1ループアンテナ14)から形成されているが、1素子へのみ給電される(換言して切替無し)。
【0056】
図7(b)は、第1ループアンテナ14および第4ループアンテナ32を有する第3棚板36と載置面36a上に載置された書籍8のICタグ12との間の位置関係を示す説明図である。
【0057】
図7(c)は、図5(c)に対応した説明図である。第3棚板36では第1ループアンテナ14と第4ループアンテナ32とが間口方向にずらして配置されるので、ブックエンド型ブースタ4を併用しなくても図5(c)に示されるようなNULL領域26は存在しない。
【0058】
図7(d)は、第3棚板36の上部における仮想可読領域38を模式的に示す説明図である。図7(d)では、図7(a)のC−C線断面図と仮想可読領域38とが示される。仮想可読領域38は、第1ループアンテナ14からの磁界と第4ループアンテナ32からの磁界とを合成した合成磁界の間口方向の成分が、ICタグ12と通信するのに十分な強度を有する領域である。
第3棚板36は、第1アンテナ層40と、絶縁層42と、第2アンテナ層44と、を含む。第1アンテナ層40は、絶縁材料の層に第1ループアンテナ14が埋設された層である。絶縁層42は、第1ループアンテナ14と第4ループアンテナ32とを電気的に絶縁する。第2アンテナ層44は、絶縁材料の層に第4ループアンテナ32が埋設された層である。
【0059】
図7(e)は、図7(d)の第3棚板36に2冊の書籍8が載置された場合を示す説明図である。図7(d)および図7(e)に示されるように、第3棚板36に含まれる第1ループアンテナ14および第4ループアンテナ32によると、図5(c)に示される1素子のアンテナの場合と比べてNULL領域26は無くなる。しかしながら、図7(e)に示されるように第3棚板36では2素子のアンテナ同士が一部重なるように近接して配置されているため、2素子のアンテナ同士の相互干渉により高さ方向(図のz方向)について通信距離が小さく、比較的低層(同軸上に配置された場合において数cmの高さ)にICタグ12を貼付する必要がある。
その他の盗難防止用の出入口ゲート、蔵書点検用端末(ハンディリーダ)、自動貸出機の読取改善のために図3に示されるようにICタグ12をばらつくように貼付した場合、高い位置に貼付されたICタグ12に対して読取性能の改善が求められる。
【0060】
本変形例では第3棚板36の載置面36a上にブックエンド型ブースタ4が設けられている。このブックエンド型ブースタ4に含まれる第2ループアンテナ16が第1ループアンテナ14からの磁界と第4ループアンテナ32からの磁界とを合成した合成磁界を受けることにより、第2ループアンテナ16に誘導電流が流れる。この誘導電流によって第2ループアンテナ16から磁界が放出され、図6(b)に示される合成可読領域30と同様の合成可読領域が生成される。
【0061】
本変形例によると、2素子のアンテナを有する第3棚板36の載置面36a上にブックエンド型ブースタ4を設け、ブックエンド型ブースタ4の第2ループアンテナ16は2素子のアンテナから放出される低層の磁界を受ける。これにより第2ループアンテナ16から間口方向に反対方向の磁界が放出される。この放出磁界によって、第3棚板36上では磁界が合成され通信エリアが拡大される。したがって、上記の課題2が解決され、第3棚板36からより上方のエリアでも通信容易となる。
【0062】
第1の実施の形態とその第1変形例について、本発明者の検討によると、棚板に1つのループアンテナのみが設けられている場合もしくは複数のループアンテナが実質的に重ならずに設けられている場合、各ループアンテナ上には磁界の載置面と平行な方向の成分が非常に小さくなる領域(以下読取困難領域と呼ぶ)が存在する。第1の実施の形態の図5(c)に示されるNULL領域26は読取困難領域の例である。この読取困難領域ではICタグ12の読み取りは困難となる。しかしながら第1の実施の形態ではブックエンド型ブースタ4を導入することにより読取困難領域をなくしてICタグ12の読み取り性能を改善している。一方第1変形例ではすでに読取困難領域の課題は解消されているが、仮想可読領域38の高さの課題がある。そこでブックエンド型ブースタ4を導入することによりICタグ12がより高い位置に貼付されていても読み取り容易としている。したがって、棚板に1つのループアンテナのみが設けられている場合もしくは複数のループアンテナが実質的に重ならずに設けられている場合にその棚板とブックエンド型ブースタ4とを併用するほうが、少なくとも部分的に重なり合う2素子のアンテナを有する棚板の上にブックエンド型ブースタ4を設けるよりも改善の程度は大きいと言える。
【0063】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では第1棚板2の第1ループアンテナ14とブックエンド型ブースタ4の第2ループアンテナ16とを併用する場合について説明した。第2の実施の形態ではブックエンド型ブースタ4の代わりに枠体6の背面板にループアンテナを設ける。以下、第2の実施の形態に係る書籍棚を第1の実施の形態に係る書籍棚10との差異を中心に説明する。
【0064】
図8(a)、(b)は、第2の実施の形態に係る書籍棚に含まれる第4棚板52および背面板50を説明するための説明図である。図8(a)は、第5ループアンテナ54を示す上面図である。図8(a)では説明のため第4棚板52の輪郭も示す。第4棚板52は、第5ループアンテナ54を含む。第5ループアンテナ54は第4棚板52の載置面52aのほぼ全面に亘って形成されるひとつのループ状アンテナである。第5ループアンテナ54は、背面板50側で間口方向に直線状に延びる直線部分54aと、ミアンダ形状に形成されたミアンダ部分54bと、を含む。第5ループアンテナ54は基本的には図5(a)に示される第1ループアンテナ14を奥行き方向に反転したループアンテナである。つまり図5(a)に示される第1ループアンテナ14と図8(a)に示される第5ループアンテナ54との主な違いは、間口方向に直線状に延びるエレメントが第1ループアンテナ14では間口側に設けられている(直線部分14a)が、第5ループアンテナ54では背面板50側に設けられている(直線部分54a)ことである。
【0065】
図8(b)は、背面板50と第4棚板52とを示す斜視図である。第4棚板52は、載置面52aが背面板50に対して実質的に垂直となるように書籍棚の枠体に取り付けられる。背面板50は、背面板50の間口側の面50aと実質的に平行に形成されるループ形状の第6ループアンテナ56を含む。第6ループアンテナ56は非給電とされる。第4棚板52の載置面52aと背面板50の間口側の面50aとは実質的に垂直とされるので、第6ループアンテナ56は載置面52aと交差する面と実質的に平行に形成されていると言える。図8(b)の場合、第6ループアンテナ56が形成される面は奥行き方向と実質的に垂直とされている。
【0066】
本実施の形態に係る書籍棚によると、ブックエンド型ブースタではなく、背板側の間口方向に直線状に延びるエレメント(直線部分54a)付近に第6ループアンテナ56を有した背面板50を設けている。背面板50に設けられた第6ループアンテナ56は、第4棚板52の第5ループアンテナ54の背面板50側の直線部分54aから放出される奥行き方向の磁界を受けて、奥行き(y軸)方向の磁界を放出する。この奥行き(Y軸)方向の磁界と、第5ループアンテナ54の奥行き方向に延びるエレメントから放出される間口(x軸)方向の磁界が合成され、間口方向に連続した磁界が形成される。その結果NULL領域を無くし、載置面52a上でICタグ12の読み取りが容易な領域を拡大できる。
また、本実施の形態ではブックエンド型ブースタを用いなくてもよいので、その分第4棚板52の容量が増えると共に書籍配置の自由度がより高い。
また、タイトルが見えるように表紙面を手前にして書籍を配置させる場合、ICタグ12のICチップ12bと第6ループアンテナ56とが対向するのでそのようなICタグ12をより容易に読み取ることができる。
なお、第6ループアンテナ56を非給電とすることによる作用効果は第1の実施の形態と同様である。
【0067】
第1の実施の形態において図5(a)に示される第1ループアンテナ14の代わりに図8(a)に示される形状のループアンテナを使用しても第1の実施の形態が有する作用効果と同様の作用効果が得られる。
第1の実施の形態の第1変形例において、ブックエンド型ブースタ4の代わりに背面板50を図7(a)に示される第3棚板36と併用しても第2の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0068】
以上、実施の形態に係る書籍棚の構成と動作について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
例えば第1ループアンテナ14を有する第1棚板2と第2ループアンテナ16を有するブックエンド型ブースタ4と第6ループアンテナ56を有する背面板50とを併用してもよい。
【0069】
第1の実施の形態ではブックエンド型ブースタ4が非給電とされ、第2の実施の形態では第6ループアンテナ56が非給電とされたが、これに限られない。例えば第1の実施の形態に関して、ブックエンド型ブースタ4が給電され第1ループアンテナ14が非給電とされてもよい。また第2の実施の形態に関して、第6ループアンテナ56が給電され第5ループアンテナ54が非給電とされてもよい。
【0070】
第1の実施の形態では第1棚板2とブックエンド型ブースタ4とが別体の場合について説明したが、これに限られない。例えば、第1棚板2の載置面2a上に第1棚板2と一体に仕切り板を設け、この仕切り板に第2ループアンテナ16を組み込んでもよい。
【0071】
第1の実施の形態の図1では各棚板にブックエンド型ブースタ4をひとつ設ける場合について説明したが、これに限られない。棚板ごとのブックエンド型ブースタ4の数に制限はない。
【0072】
第1および第2の実施の形態では書籍棚を説明したが、これに限られず、ICタグが取り付けられる略矩形の物品を載置するための物品載置棚であればよい。例えば、倉庫に設けられる棚に実施の形態の技術的思想を適用してもよい。また、アパレル用のBOX型什器に実施の形態の技術的思想を適用してもよい。
【0073】
第1の実施の形態では、第2棚板18は可動ホルダ22とレール24とを備える場合について説明したが、これに限られず、棚板は、第2ループアンテナ16が形成される面が棚板の載置面と交差するように第2ループアンテナ16を支える支持機構を備えると好適である。例えば、上段側の棚板の下面側に設置されるブックエンドレールを利用してブックエンド型ブースタ4を移動させてもよい。
図9は、第2変形例に係る第4棚板60を示す下面図である。第4棚板60は、その下面60aにブックエンドレール62と、下段用ホルダ64と、を有する点を除いては第1棚板2と同様の構成を有する。
【0074】
ブックエンドレール62は間口方向に沿って延びる直線状のレールである。下段用ホルダ64はブックエンドレール62に沿って間口方向に移動する。下段用ホルダ64は、第4棚板60の下段の棚板上に設けられるブックエンド型ブースタ4の第2ループアンテナ16が形成される面が、下段の棚板の載置面と交差するように、ブックエンド型ブースタ4を支える。特に下段用ホルダ64はブックエンド型ブースタ4の側面4bが間口方向と実質的に垂直となるようにブックエンド型ブースタ4を支える。
本変形例は、第2棚板18の可動ホルダ22およびレール24と同様の作用効果を有する。
【0075】
以上、実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0076】
2 第1棚板、 4 ブックエンド型ブースタ、 6 枠体、 8 書籍、 10 書籍棚、 12 ICタグ、 14 第1ループアンテナ、 16 第2ループアンテナ、 26 NULL領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグが取り付けられた略矩形の物品が載置される棚板であって前記物品が載置される載置面と実質的に平行に形成される第1のアンテナが設けられた棚板と、
前記載置面と交差する面と実質的に平行に形成され、前記ICタグとの通信が行われる際に前記第1のアンテナと協働する第2のアンテナと、を備えることを特徴とする物品載置棚。
【請求項2】
前記第1のアンテナは給電され、
前記第2のアンテナは、前記第1のアンテナから放出される電磁波を受けて電磁波を放出することを特徴とする請求項1に記載の物品載置棚。
【請求項3】
前記第1のアンテナは、前記載置面に亘って形成されるループ形状のアンテナであってミアンダ形状に形成された部分を含み、
前記第2のアンテナはループ形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の物品載置棚。
【請求項4】
前記第2のアンテナが形成される面は、前記棚板の間口方向と実質的に垂直であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の物品載置棚。
【請求項5】
前記第2のアンテナが形成される面は、前記棚板の奥行き方向と実質的に垂直であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の物品載置棚。
【請求項6】
前記第2のアンテナは、前記物品の前記載置面上での配置を調整する調整板に取り付けられることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の物品載置棚。
【請求項7】
前記第2のアンテナが形成される面が前記載置面と交差するように前記第2のアンテナを支える支持機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の物品載置棚。
【請求項8】
ICタグが取り付けられた略矩形の物品が載置される複数の棚板であって各棚板に前記物品が載置される載置面と実質的に平行に形成される第1のアンテナが設けられた複数の棚板と、
各棚板に対応して設けられる少なくともひとつの第2のアンテナであって、対応する棚板の載置面と交差する面と実質的に平行に形成され、前記ICタグとの通信が行われる際に対応する棚板の第1のアンテナと協働する少なくともひとつの第2のアンテナと、を備えることを特徴とする物品載置棚。
【請求項9】
ICタグが取り付けられた略矩形の物品が載置される棚板であって、
前記物品が載置される載置面と、
前記載置面と実質的に平行に形成され、前記ICタグとの通信が行われる際に前記載置面と交差する面と実質的に平行に形成される第2のアンテナと協働する第1のアンテナと、を備えることを特徴とする棚板。
【請求項10】
棚板上でICタグが取り付けられた略矩形の物品の配置を調整する筐体と、
前記棚板の前記物品が載置される載置面と交差する面と実質的に平行に形成され、前記ICタグとの通信が行われる際に前記棚板に設けられ前記載置面と実質的に平行に形成される第1のアンテナと協働する第2のアンテナと、を備えることを特徴とする調整板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−165133(P2011−165133A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30321(P2010−30321)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】