説明

田植機における横送り駆動装置に対する潤滑装置

【課題】 横送り駆動軸よりも下位に位置する駆動軸を利用して該駆動軸に潤滑油を跳ね上げる部材を付加するだけの簡単な構造で横送り駆動軸を潤滑する潤滑装置を提供することにある。
【解決手段】 植付けミッションケース(24)内の上部に苗載せ台(32)を走行機体の左右方向に横送り駆動する横送り駆動軸(64)を設け、横送り駆動軸(64)よりも下位で植付けミッションケース(24)内に位置する出力軸(56)部分にスプロケット(57a)を固定し、前記出力軸(56)部分に嵌装した潤滑油掻き上げ装置(44)を出力軸(56)に連結したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載せ台を走行機体横方向に往復移動自在に設けた田植機の苗横送り装置の横送り駆動軸に対して潤滑をする潤滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記田植機において、従来、たとえば特許文献1に示されるように、苗載せ台を左右横方向に往復移動させる苗横送り装置の横送り駆動軸に対して潤滑を行なうように構成されたものがあった。
すなわち、特許文献1に示された潤滑装置は図10,図11に示されているように、コマ部材24を収容した状態で横送り駆動軸17に外囲する筒部材38の内部に螺旋溝23に対する潤滑油の溜り部39を形成するとともに、横送り駆動軸17に相対横スライド移動自在であり、かつ、一体回転する回転体40を筒部材38に内装し、回転体40の回転に伴って溜り部39に溜まっている潤滑油を撥ね上げ可能な舌片41を回転体40に装備するもので、苗載台16の横送り駆動中は、横送り駆動軸17に対して横スライドしながら常に舌片41が潤滑油を撥ね上げて、横送り駆動軸17の外面に供給できるように構成されたものである。
【0003】
【特許文献1】特開2000−270631号公報(第4頁の段落番号0033、段落0034、図10、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の苗横送り装置の横送り駆動軸に対する潤滑装置では、植付ミッションケースに入れられる潤滑油とは別に横送り駆動軸を潤滑するための溜り部形成用のケースが必要であり、構造面などで不利になっていた。
【0005】
本発明の目的は、別途横送り駆動軸の潤滑専用のケースを設けることなく、横送り駆動軸よりも下位に位置する駆動軸を利用して、簡単な構造の横送り駆動軸を潤滑する潤滑装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
本発明の第1の特徴(請求項1)は、植付けミッションケース内の上部に苗載せ台を走行機体の左右方向に横送り駆動する横送り駆動軸を設け、この横送り駆動軸よりも下位で前記植付けミッションケース内に位置する出力軸部分にスプロケットを固定し、前記出力軸部分に嵌装した潤滑油掻き上げ装置を該出力軸に連結した点にある。
【0007】
〔作用〕
上記第1の特徴によると、植付けミッションケース内の上部に設けた横送り駆動軸よりも下位に位置する出力軸に潤滑油掻き上げ装置を連結して、前記下位の出力軸を潤滑する潤滑油を該出力軸の回転に伴って潤滑油掻き上げ装置により上位に位置する横送り駆動軸に潤滑油を供給することができ、これによって横送り駆動軸に従来のように別途横送り駆動軸専用の潤滑油ケースを不要にできる。
【0008】
〔発明の効果〕
上記第1の発明では、横送り駆動軸よりも下位に位置する出力軸を潤滑する潤滑油を利用して横送り駆動軸に潤滑油を供給することができ、横送り駆動軸に別途横送り駆動軸専用の潤滑油ケースを不要にできたので横送り軸に対する潤滑構造を簡単にすることができた。
【0009】
〔第2発明の構成〕
本発明の第2の特徴(請求項2)は請求項1に係る発明において、前記掻き上げ装置は嵌合筒に複数枚の潤滑油すくい板を設けたものである。
【0010】
〔作用〕
上記第2の特徴によると、出力軸の1回転に対して複数回横送り駆動軸に潤滑を行なうことができるので、常時横送り駆動軸の全周に潤滑油をゆき亘らせることができるようになった。
【0011】
〔発明の効果〕
上記第2の発明では、出力軸の1回転に対して複数回横送り駆動軸に潤滑を行なうことができるので、横送り駆動軸の全周に潤滑油をゆき亘らせることができ、横送り駆動軸に対する潤滑を好適に行なうことできるようになった。
【0012】
〔第3発明の構成〕
本発明の第3の特徴(請求項3)は請求項2に係る発明において、前記潤滑油すくい板はすくい面側に曲率中心を有するアーチ状に形成した点にある。
【0013】
〔作用〕
上記第3の特徴によると、植付け時の出力軸の回転は一定で、この出力軸の回転速度とすくい板の曲率を合わせることによって掻き上げる潤滑油のロスを少なくして有効に横送り駆動軸に潤滑をすることができる。
【0014】
〔発明の効果〕
上記第3の発明では、すくい板よる潤滑油の掻き上げロスを少なくして有効に横送り駆動軸に潤滑をすることができるようになった。
【0015】
〔第4発明の構成〕
本発明の第4の特徴(請求項4)は請求項1乃至3のいずれかに係る発明において、前記掻き上げ装置は前記出力軸周りに摺動回転しないように前記スプロケットを介して前記出力軸に連結した点にある。
【0016】
〔作用〕
上記第4の特徴によると、掻き上げ装置を、直接出力軸に連結するのではなく出力軸の回転によって駆動されるスプロケットを介して出力軸に連結してあるので、出力軸に取付けるスプロケットと掻き上げ装置に連結構造を施すだけで、出力軸に殊更掻き上げ装置を連結するための連結構造を施す必要がない。
【0017】
〔発明の効果〕
上記第4の発明では、掻き上げ装置を取付けるのに、出力軸に取付けるスプロケットと掻き上げ装置に連結構造を施すだけでよく、出力軸に殊更掻き上げ装置を連結するための連結構造を施す必要がないので、コスト削減に寄与することができた。
【0018】
〔第5発明の構成〕
本発明の第5の特徴(請求項5)は請求項4に係る発明において、前記スプロケットにピン嵌合用穴を形成するとともに、前記出力軸部分に嵌装した状態の掻き上げ装置の筒状部にピン嵌装用空間を形成し、前記スプロケットのピン嵌合用穴と掻き上げ装置のピン嵌装用空間とにピンを嵌合して両者が一体回転するように構成した点にある。
【0019】
〔作用〕
上記第5の特徴によると、スプロケットにピン嵌合用穴を形成し、掻き上げ装置の筒状部にピン嵌装用空間を形成し、スプロケットのピン嵌合用穴と掻き上げ装置のピン嵌装用空間とにピンを嵌合して両者が一体回転するように構成してあるので、スプロケットと掻き上げ装置とにピン連結構造を採用するだけでよい。
【0020】
〔発明の効果〕
上記第5の発明では、スプロケットのピン嵌合用穴と掻き上げ装置のピン嵌装用空間とにピンを嵌合して両者が一体回転するように構成してあるので、スプロケットと掻き上げ装置とにピン連結構造を採用するだけの簡単な構造とすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1,図2に示すように、左右一対の駆動自在な車輪1によって自走する走行機体の前端部に、前記車輪1などに動力伝達するエンジン2、エンジン用の燃料タンク3を備えた原動部を設け、前記走行機体の後部に、走行機体の機体フレーム20から後方に延出する操縦ハンドル4などを備えた操縦部A、及び、走行機体の横方向に並ぶ四つの苗植付け機構31などを備えた苗植え作業部30を設け、前記走行機体の下方に、左右車輪1,1の間に位置するセンター接地フロート5、左右車輪1,1の両横外側に分かれて位置する左右一対のサイド接地フロート6を設け、左右車輪1,1の上方に位置する予備苗載せ台7を支柱8を介して走行機体に支持させて、4条植え可能な歩行型田植機を構成してある。
【0022】
この田植機は、稲苗の植付け作業を行なうものであり、エンジン2の下方に位置する油圧式の昇降シリンダ9を伸縮操作すると、この昇降シリンダ9が左右車輪1の車輪支持体に兼用の車輪駆動ケース10を走行機体の機体フレーム20に対して上下に揺動操作して左右車輪1,1を機体フレーム20に対して昇降操作することにより、走行機体を各接地フロート5,6が田面に接地した下降作業状態と、各接地フロート5,6が田面から上昇して離れた上昇非作業状態とに昇降操作する。走行機体を前記下降作業状態にして走行させると、各接地フロート5,6が田面上を滑って整地していき、苗植え作業部30が前記四つの苗植付け機構31によって田面の接地フロート5,6による整地箇所に苗植付けを行なっていく。
【0023】
図2に示すように、走行機体の前部の前記エンジン2の後方近くに設けたミッションケース21、このミッションケース21の前部から前方に延出するエンジン搭載フレーム22、前記ミッションケース21の後部から後方に延出する角形鋼管材で成る伝動ケース23、この伝動ケース23の後端部に連結された植付けミッションケース24、この植付けミッションケース24の両横側部から走行機体横外向きに延出する円筒形の伝動ケース25、前記各伝動ケース25の延出端部に連結された植付け駆動ケース26のそれぞれによって前記機体フレーム20を構成し、前記エンジン搭載フレーム22の上面側に前記エンジン2を設け、前記ミッションケース21の両横側に前記車輪駆動ケース10を介して前記車輪1を支持させてある。
【0024】
図1,図2に示すように、操縦ハンドル4は、前記植付けミッションケース24の両横側から走行機体後方上方向きに延出された角形鋼管材で成る基部側ハンドル杆4aと、この左右一対の基部側ハンドル杆4aの延出端部に固定されるとともに左右一対の握り部4cを備えた円形鋼管材で成る先端側ハンドル杆4bと、左右の先端側ハンドル杆4b、4bに渡って連結した逆U字状の連結杆4dとによって構成してある。前記連結杆4dは握り部4cよりも握りやすく長時間作業するときに利用すると疲れが少なく楽である。
【0025】
苗植え作業部30について詳述すると、図2,図3,図4に示すように、苗植え作業部30は、走行機体の横方向での中心部に位置する前記植付けミッションケース24、この植付けミッションケース24の下部ケース部24aの両横側に位置する前記植付け駆動ケース26、前記植付けミッションケース24の両横側に駆動自在に装着した前記苗植付け機構31、前記各植付け駆動ケース26の走行機体内方側の横側に駆動自在に装着した前記苗植付け機構31、前記植付けミッションケース24及び前記各植付け駆動ケース26よりも走行機体後方側で、前記操縦ハンドル4の基部側ハンドル杆4aの上端側の前方側近くに設けた一つの苗載せ台32を備えて構成してある。
【0026】
図3,図4に示すように、各苗植付け機構31は、植付けミッションケース24や植付け駆動ケース26が駆動回動自在に支持する駆動アーム33に中間部が相対回動自在に連結され、植付けミッションケース24や植付け駆動ケース26が往復揺動自在に支持する揺動アーム34に一端側が相対回動自在に連結された植付けアーム35、この植付けアーム35の他端側に位置する植付け爪36に沿って往復摺動するように植え付けアーム35に摺動自在に支持されるとともに植え付けアーム35の内部に位置する押し出し駆動機構(図示せず)によって摺動駆動されるように構成した苗押し出し具37を備えて構成してある。
【0027】
これにより、各苗植付け機構31は、植付けアーム35が揺動アーム34によって支持される一端側を揺動支点にした状態で走行機体上下方向に往復揺動するように駆動アーム33によって駆動されて、植付け爪36の先端側が苗載せ台32の下端側に位置するガイドレール38に設けてある苗取り出し口38aと、田面との間を回動軌跡Tを描きながら上下に往復移動し、苗取り出し口38aにおいて苗載せ台上のマット状苗から一株分のブロック苗を切断するとともに取り出して下降搬送し、田面に下降すると、そのブロック苗を苗押し出し具37によって植付け爪36から田面の泥土に押し出して植え付け、この苗植付けの後、田面から上昇して苗取り出し口38aに戻るという苗植え運動を行なう。
【0028】
苗載せ台32は、前記複数の苗植付け機構31に各別に供給する複数枚のマット状苗を走行機体横方向に並べて載置するように構成して、かつ、苗載せ台32の上端側ほど走行機体後方側に位置する状態の傾斜姿勢にして、前記各植付け駆動ケース26から走行機体後方向きに延出する支持フレーム11(図4参照)によって支持される前記ガイドレール38などに走行機体横方向に摺動自在に支持されている。図4などに示すように、苗載せ台32の走行機体横方向に沿うところの苗載せ台横方向に並ぶ複数の苗載置部それぞれの裏面側の苗載せ台縦方向での二箇所に苗縦送り輪体39を設けてある。苗載せ台縦方向での上方側に位置する全ての苗縦送り輪体39も、苗載せ台縦方向での下方側に位置する全ての苗縦送り輪体39もそれぞれ一本の回転支軸39aによって一体回転自在に支持されている。上方側の苗縦送り輪体39と下方側の苗縦送り輪体39が連動して回転するように、上方側の苗縦送り輪体39の回転支軸39aと、下方側の苗縦送り輪体39の回転支軸39aとが無端チェーン(図示せず)によって連動されている。
【0029】
図3,図4に示すように、前記植付けミッションケース24は、前記伝動ケース23,25及び前記苗植付け機構31が連結している下部ケース部24aと、この下部ケース部24aとは別体のケースに製作して前記下部ケース部24aの上端面上に載置して連結ボルトによって脱着自在に連結した上部ケース部24bとによって構成してある。前記植付けミッションケース24に、前記上部ケース部24bを走行機体横方向に摺動自在に貫通した苗送り軸40を設けるとともに、この苗送り軸40を、苗載せ台32の下端側の両端部に連結部構成部材を付設して苗載せ台32から前方向きに延出する状態に設けた連結部41に走行機体横方向に一体移動するように連結してある。前記苗送り軸40を、植付けミッションケース24の上部ケース部24bに対して回動するように構成するとともに苗載せ台32の前記左右一対の連結部41に回動自在に支持させ、前記苗送り軸40の一端側に一体回動自在に設けた苗縦送りアーム42を、苗載せ台32の前記上方側の苗縦送り輪体39の回転支軸39aに一方向回転クラッチ(図示せず)を介して連結された輪体駆動アーム39bに連動ロッド43を介して連動させてある。植付けミッションケース24の前記下部ケース部24aの内部に、前記伝動ケース23及び前記ミッションケース21を介してエンジン2から伝達される駆動力を入力して駆動されて前記苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動する植付け機構用駆動機構50(図5参照)を設け、前記各植付け駆動ケース26の内部に、前記植付けミッションケース内の植付け機構用駆動機構50から前記伝動ケース25を介して伝達される駆動力を前記苗植付け機構31の駆動アーム33に伝達してこの駆動アーム33を駆動するチェーン利用の伝動機構(図示せず)を設け、植付けミッションケース24の前記上部ケース部24bの内部に、前記下部ケース部内の植付け機構用駆動機構50から駆動力を入力して駆動されて前記苗送り軸40を往復摺動するように駆動し、かつ、苗載せ台32が左右の横送りストロークエンドに到達する都度に苗送り軸40を設定回転だけ回転駆動して苗縦送りアーム42を駆動する苗載せ台用駆動機構60(図5参照)を設けてある。
【0030】
これにより、植付けミッションケース24は、下部ケース部24aの内部に位置する植付け機構用駆動機構50によって植付けミッションケース24の両横側に位置する苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動することによってその両苗植付け機構31,31を前記苗植え運動を行なうように駆動し、各植付け駆動ケース26は、植付け駆動ケース26の内部に位置する伝動機構によって植え付け駆動ケース26の内側に位置する苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動することによってその苗植付け機構31を前記苗植え運動を行なうように駆動する。また、植付けミッションケース24は、上部ケース部24bの内部に位置する苗載せ台用駆動機構60によって苗送り軸40を摺動駆動することにより、苗載せ台32を前記各苗植付け機構31の駆動に連動させて前記ガイドレール38に沿って走行機体横方向に往復移動するように横送り移送する。さらに、植付けミッションケース24は、苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達する都度、上部ケース部24bの内部に位置する苗載せ台用駆動機構60によって苗送り軸40を回転駆動して苗縦送りアーム42を揺動操作することにより、苗載せ台32の全ての苗縦送り輪体39を苗縦送り方向に回動駆動する。
【0031】
つまり、苗植え作業部30は、植付けミッションケース24の両横側に装着されている苗植付け機構31を植付けミッションケース24による駆動アーム33の駆動によって前記苗植え運動を行なうように駆動し、各植付け駆動ケース26に装着されている苗植付け機構31を植付け駆動ケース26による駆動アーム33の駆動によって前記苗植え運動を行なうように駆動し、各苗植付け機構31によって苗載せ台32に載置されたマット状苗から一株分のブロック苗を切断して取り出し、田面に下降搬送して泥土部に植え付けるようになっている。
【0032】
そして、植付けミッションケース24による苗送り軸40の往復摺動駆動によって苗載せ台32を苗植付け機構31の苗植え運動に連動させて走行機体横方向に往復移送し、各苗植付け機構31が苗植付け機構31に供給するべきマット状苗の下端部の横一端側から他端側に向けて順次に一株分のブロック苗を切断して取り出していくように各マット状苗をこのマット状苗に対応する前記苗取り出し口38aに対して走行機体横方向に往復移送するようになっている。また、苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達すると、植え付けミッションケース24による苗送り軸40の設定回転角だけの回転駆動によって苗載せ台32の全ての苗縦送り輪体39を回動駆動して、苗載せ台32に載置されている全てのマット状苗を苗植付け機構31による苗載せ台縦方向での取り出し長さに対応した分だけ苗取り出し口38aに向けて縦送りするようになっている。
【0033】
図5,図6及び図7に示すように、植付けミッションケース24の下部ケース部24aの内部に位置する前記植付け機構用駆動機構50は、前記伝動ケース23の伝動軸23aに入力部材51aが連結されたトルクリミッター51、このトルクリミッター51の出力軸51bが一体回転自在に備えている伝動ギヤ52に入力ギヤ53aが噛合った植付けクラッチ53、この植付けクラッチ53の筒軸形の出力部材53bを挿通しているとともにこの出力部材53bに一体回動自在に連結されている植付け駆動軸54、この植付け駆動軸54が一体回転自在に備えている出力スプロケット54aに巻回された伝動チェーン55、この伝動チェーン55に入力スプロケット56aが噛合っている爪側出力軸56、前記伝動チェーン55に入力スプロケット57aが噛合っている苗載せ台側出力軸57を備えて構成してある。
【0034】
すなわち、植付け機構用駆動機構50は、エンジン2から伝動ケース23に伝達された
駆動力をトルクリミッター51に入力し、このトルクリミッター51の出力を植え付けクラッチ53を介して植付け駆動軸54に伝達してこの植付け駆動軸54によって植付けミッションケース24の両横側に位置する前記苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動し、前記植付け駆動軸54の駆動力を伝動チェーン55を介して爪側出力軸56に伝達し、この爪側出力軸56の駆動力を爪側出力軸56の一端側から前記伝動ケース25を介して前記一方の植付け駆動ケース26に、爪側出力軸56の他端側から前記伝動ケース25を介して前記他方の植付け駆動ケース26にそれぞれ伝達する。
【0035】
図5,図7に示すように、植付けミッションケース24の上部ケース部24bの内部に位置する前記苗載せ台用駆動機構60は、下部ケース部24aの前記苗載せ台側出力軸57と一体軸になっている入力軸61、この入力軸61が一体回転自在に備えている伝動ギヤ62に受動ギヤ63で連動している横送り駆動軸64、この横送り駆動軸64に係合筒部65bが相対回転自在に外嵌している横送り体65、前記横送り駆動軸64の両端部に設けた駆動爪66を備えた苗送り軸駆動手段69を備えて構成してある。
【0036】
横送り体65の係合筒部65bに設けてある爪体65aが横送り駆動軸64の周面に設けられた螺旋溝64aに係入していることにより、横送り体65は、横送り駆動軸64によってこの横送り駆動軸64に沿って往復移送されるように横送り駆動軸64に対して係合している。横送り体65は、この横送り体65の前記係合筒部65bとは反対側の端部に位置する一対の連結部65cで前記横送り軸40と共に植付けミッションケース24の上部ケース部24bに対して摺動するように横送り軸40に対して係合されている。
【0037】
符号Fは潤滑油の液面である。前記爪側出力軸56には、横送り駆動軸64に潤滑油をすくい上げて飛散させる掻き上げ装置44を設けてある。この掻き上げ装置44は嵌合筒45の外周に油すくい板46を周方向に対称に2箇所に設けてある。筒状体45にはこれを爪側出力軸56に嵌装した状態で連結部材としてのピン47を挿入するピン嵌装用空間48を形成してある。
前記入力スプロケット56aは爪側出力軸56にスプライン嵌合してあり、嵌合用のボス部56bにピン47を嵌め込む溝56cを形成してある。そして連結用の前記ピン47を溝56c内に嵌め込んだ状態で掻き上げ装置44の嵌合筒45の空間48内にピン47が嵌装するようにセットすることにより、爪側出力軸56の回転で掻き上げ装置44が空回りすることなく、入力スプロケット56aと一体回転し、液面F下の潤滑油を掻き上げ装置44ですくい上げて横送り駆動軸64に飛散供給される。
【0038】
前記苗送り軸駆動手段69は、横送り駆動軸64の両端部に一体回動自在に連結された前記駆動爪66、前記横送り体65の両横側で横送り軸40に一体回動及び一体移動自在に設けた操作アーム67、各操作アーム67に作用するリターンばね68などを備えて構成してある。
【0039】
苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達すると、その横移動ストロークエンドに対応した方の操作アーム67が駆動爪66の回動範囲に入り込み、駆動爪66が回動するに伴って操作アーム67に当接して操作アーム67を揺動操作することによって苗送り軸40を回動駆動する。駆動爪66が操作アーム67から外れると、操作アーム67がリターンばね68の復元操作のために待機位置に復帰するようになっている。
【0040】
すなわち、苗載せ台用駆動機構60は、下部ケース部24aの苗載せ台側出力軸57の駆動力を入力軸61によって入力して受動ギヤ63に伝達して横送り駆動軸64を常に回動するように駆動し、この横送り駆動軸64によって横送り体65を横送り駆動軸64に沿って走行機体横方向に往復移動するように横送り駆動してこの横送り体65によって苗送り軸40を走行機体横方向に往復移送し、これにより、苗載せ台32を走行機体横方向に往復移送する。そして、苗送り軸40が左右の横移動ストロークエンドに到達して苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達した際、苗送り軸駆動手段69のそのストロークエンドに対応した側の駆動爪66と操作アーム67とによって苗送り軸40を必要な苗縦送り量に対応したものとして設定された設定回転角だけ回動操作し、これにより、前記苗縦送りアーム42を所定角度だけ揺動駆動して各苗縦送り輪体39を回動駆動し、苗載せ台32上のマット状苗を苗縦送り輪体39によって苗植付け機構31に向けて苗植付け機構31の苗載せ台縦方向での苗取り量に対応する分を縦送りする。
【0041】
図2,図5に示すように、前記苗送り軸40の植付けミッションケース24から両横側に突出する部分に、苗送り軸40への泥土付着を防止するようにゴム製のカバー70を外嵌してある。
【0042】
各カバー70は、苗送り軸40の軸芯方向に伸縮するように蛇腹形に構成してある。各カバー70の苗送り軸40の端側に位置する方の端部71に突条71aを設け、この突条71aが苗送り軸40の環状溝に入り込んでいることにより、かつ、カバー70がゴム製のために備える弾性復元力によってカバー70の端部71が苗送り軸40に嵌着していることにより、各カバー70の苗送り軸40の端側に位置する方の端部71が苗送り軸40に一体移動及び一体回転自在に連結されている。各カバー70の植付けミッションケース24の方に位置する端部72に突条72aを設け、この突条72aが上部ケース部24bの筒部24cの環状溝に入り込んでいることにより、かつ、カバー70がゴム製のために備える弾性復元力によってカバー70の端部72が上部ケース部24bの筒部24cに嵌着していることにより、各カバー70の植付けミッションケース24の方に位置する端部72が上部ケース部24bに回転不能に連結されている。
【0043】
つまり、各カバー70は、苗送り軸40の摺動に伴って伸縮しながら、苗送り軸40の回動に伴ってカバー端部71の方で苗送り軸40と共に回動しながら苗送り軸40をカバーするようになっている。
【0044】
図2などに示すように、前記苗送り軸40と平行又はほぼ平行に位置して苗送り軸40を補強するように配置した金属製の補強杆75を苗載せ台32の前記左右一対の連結部41にわたって連結してある。図3に示すように、前記補強杆75に苗支持面75aを備えさせるとともに、この苗支持面75aは、苗載せ台32の下端部に位置した苗の苗葉を植付け爪36の回動軌跡Tから上方に退避した位置に受け止め支持して苗葉が苗植付け機構31の植付け爪36に干渉することを防止するようになっている。
【0045】
図3などに示すように、苗載せ台32の下端側の上方に苗ステー76を設けてある。図2などに示すように、この苗ステー76は、前記苗送り軸40と平行又はほぼ平行に位置するように配置して苗載せ台32の前記左右一対の連結部41に支持させた連結杆76aと、この連結杆76aの複数箇所から苗載せ台32の上端側に向けて延出された支持杆76bとを備えて構成してある。
【0046】
すなわち、苗ステー76の各支持杆76bは、苗載せ台32上のマット状苗の床土部に支持作用してマット状苗が苗載せ台32から浮き上がることを抑制する。また、苗ステー76の連結杆76aは、苗載せ台32の連結部41に撓みが発生しにくくなるように左右一対の連結部41を連結し、これにより、苗送り軸40が歪みにくい状態で連結部41に支持されるように連結部41による苗縦送り軸40の支持強度を向上させている。
【0047】
次にチェーンケースのオイル潤滑構造について説明する。
チェーンケースの上部のベアリング12をオイル潤滑させるため、従来は潤滑油の量を上部ベアリング12近くまで多量に入れる必要があった。チェーンケース内の潤滑油の量が少なくなると上部のスプロケット13及びベアリング12にオイル潤滑ができなくなりオイル切れを起して磨耗破損の原因となっていた。この実施例では、チェーン14の側面に潤滑油掻き上げすくい板片15をかしめてチェーン14と一体構造にするものである。
【0048】
図10、図11に示すように、前記爪側出力軸56と一体の筒状出力軸16を覆う伝動ケース25の端部にチェーンケースである植付駆動ケース26を設けてある。この植付駆動ケース26には、前記筒状出力軸16に連結された端部爪側出力軸17が上部ベアリング12により支承されていると共に下部に側部植付け駆動軸18が下部のベアリング19により支承され、端部爪側出力軸17と側部植付け駆動軸18に嵌合させたスプロケット13,27に渡ってチェーン14を巻回した端部植付伝動装置が内装されている。そして、チェーン14の外側部には、断面コ字状、又はL字状の潤滑油掻き上げすくい板片15を、ほぼ等間隔で2箇所にかしめて潤滑油チェーン掻き上げ装置を形成している。この潤滑油掻き上げすくい板片15は、チェーン14の両外側部に対してそれぞれ3箇所以上の複数個設けてもよい。
【0049】
上下のスプロケット13,27の中間箇所には、チェーン14が緩まないように緊張具77を設けてある。この緊張具77は、支軸78又はピンに薄くてチェーン14の巻回方向に長い鉄板79を枢支し、遊端側にボルト80により押圧位置調整自在に設けてある。
【0050】
端部爪側出力軸17の回転により、潤滑油の液面F1の下方から掻き上げすくい板片15ですくい上げられた潤滑油が、上方のスプロケット13を通って向きを変えるときに上部スプロケット13や上部ベアリング12に供給される。これにより、潤滑油の液面レベルを低くして潤滑油の貯留量を減らすことができながらも、潤滑油が所定の液面レベルよりも低下してもオイル切れを生じさせることがなく、植付け伝動ケース26の上部のスプロケット及びベアリングの耐久性を向上させることができる。
【0051】
次に予備苗載せ台の変形例を示す。
図12は左右の植付駆動ケース26から左右外方に張出した位置で第2予備苗載せ台81を枢支支持する支持杆82を枢支し、第2予備苗載せ台81の後部下面を左右の操縦ハンドル4より鳥居形に取付けた支持杆83に逆U字状の留め金具にて上から嵌合させるべく着脱自在に止着してある。
このように、歩行型田植機の苗載せ台32の上方に予備苗載せ台81を設けておけば、苗切れが生じても、予備苗が手元にあるので作業機を停止させずに、又一時停止させたとしても僅かな時間で苗補給ができ、作業能率が向上する。
【0052】
図13、図14は、更に別の予備苗載せ台の変形例を示す。
この第3予備苗載せ台84は、4条植え用の苗載せ台32に対して16本のくし杆85を備えたもので、くし杆85を取付けた基部杆86の中央にハンドル87を取付け、苗載せ台32の仕切り部材88に取りけたフック89をハンドル87に引掛けて予備苗載置部が略水平となるように保持するようにしてある。
符号91は、苗載せ台32の各仕切り部材88に支持させ、上端にくし杆85を先端から挿通する保持リング92を備えたくし杆保持部材である。
【0053】
苗載せ台32には、各条毎にくし杆85を挿入できる長溝93を備えている。
この長溝93には、長溝93の長さに相当する切溝を入れたゴム材で、当該ゴム材の上面が苗載せ台32の上面と面一となるように覆うとよい。このようにすれば常時は長溝93が閉塞されるので好適である。
【0054】
第3予備苗載せ台84を利用するときは、くし杆保持部材91の保持リング92にくし杆85を挿通し、基部杆86で位置決めされた状態で、仕切り部材88に取付けてあるフック89をハンドル87に係止する。この状態で4条分の予備苗をくし杆85の上方に載置する。
苗植付作業の途中で苗載せ台32上の苗が少なくなって苗補給をするときは、ハンドル87を少し押し下げた状態でフック89を外し、その後ハンドル87を持ち上げていくとくし杆85が苗載せ台に形成した長孔93内に入り込む。これによって予備苗が自然と苗載せ台の苗載せ面上に移り変わる。そして、その状態からハンドル87を引上げると、予備苗全体が苗載せ台に移し変えることができる。このときハンドル87を更にそのまま引上げればくし杆85が保持リング92から引き抜かれて第3予備苗載せ台84を取外すことも可能である。
【0055】
図15、図16は歩行型仕様の田植機に補助車輪及び座席を備えた乗用向きに仕様変更した実施例を示す。
上下揺動自在な車輪支持アーム94の後部にキャスター輪95を取付けてある。車輪支持アーム94の基端部は操縦ハンドル4の基端側ハンドル杆4a,4aを連悦下連結部に左右横軸芯周りで上下自在に枢支してあり、基端側ハンドル杆4a,4aの上部側を連結した連結部と車輪支持アーム94の前後中間部との間にクッションバネを内装したダンパー96を枢着してある。そして車輪支持アーム94の後端に対して着脱自在な座席支持部材97を介して、座席98を設けてある。
符号99は座席98を取り付けた場合に使用する延長ハンドルで、操縦ハンドル4の左右の握り部4cの内側のハンドル杆4bに接続してある。延長ハンドル99の高さはバネ付き係止ピン100により3つの筒状体を伸縮固定することで3段に高さ変更可能にしてある。
【0056】
キャスター輪95を設けた場合は、広大な圃場での作業に楽である。又、キャスター輪95に座席98を備え、延長ハンドル99の高さを調節することにより、本来歩行型仕様でありながら、座席98に搭乗した状態で運転できるので、長い広大な圃場での作業が頗る楽に行なえる。
キャスター輪95は、車輪支持アーム94の後方を二又に分かれるようにして、或いは車輪支持アーム94の後端をT字状に分岐させて左右に設けてもよい。
【0057】
上記実施例では、入力スプロケット56aにピン47を嵌め込む溝56cを形成してこの溝56c内にピン47を嵌め込むようにしたが、それに加えて入力スプロケット56a自体にもピン47の先端が一部嵌り込む径の溝孔又は貫通孔を空けてピン47をこれらの孔に挟圧嵌着させてもよい。又、入力スプロケット56aの掻き上げ装置側にボス部56bが形成されていない場合はスプロケット56aに穿設した孔にピンを直接嵌着させるとよい。上記のスプロケット56aのボス部に形成した溝56c、溝56c及び溝孔又は貫通孔等をピン嵌合用穴と総称する。
【0058】
又、ピン47をスプロケット56aに直接形成したかしめ孔に嵌合してピンがスプロケットから容易に抜けないようにしてある場合は、掻き上げ装置44の嵌合筒45を真円筒形に形成して、その端部ピンが嵌合する切り溝を形成したものでもよい。
【0059】
掻き上げ装置板44の油すくい板46は、周方向に1個又は3個以上設けてもよい。
【0060】
本発明は、歩行型田植機の他、乗用型田植機にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】歩行型田植機全体の側面図
【図2】歩行型田植機全体の平面図
【図3】苗植え作業部の機体中央部での側面図
【図4】苗植え作業部の機体横外側部での側面図
【図5】植付け機構用駆動機構、苗載せ台用駆動機構の正面図
【図6】植付け機構用駆動機構の側面図
【図7】植付け機構用駆動機構、苗載せ台用駆動機構の側面図
【図8】潤滑油掻き上げ装置の拡大縦断正面図
【図9】潤滑油掻き上げ装置の拡大縦断側面図
【図10】外側チェーンケースの縦断正面図
【図11】外側チェーンケースの縦断側面図
【図12】予備苗載せ台の第1の別実施例を示す歩行型田植機の後部側面図
【図13】予備苗載せ台の第2の別実施例を示す歩行型田植機の後部側面図
【図14】第2の別実施例の歩行型田植機の後部平面図
【図15】補助車輪及び座席を備えた田植機後部の側面図
【図16】補助車輪及び座席を備えた田植機後部の平面図
【符号の説明】
【0062】
24 植付けミッションケース
32 苗載せ台
44 潤滑油掻き上げ装置
45 嵌合筒
46 潤滑油すくい板
47 ピン
48 ピン嵌合用空間
56 出力軸
56a スプロケット
56c ピン嵌合用穴
64 苗送り駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付けミッションケース内の上部に苗載せ台を走行機体の左右方向に横送り駆動する横送り駆動軸を設け、この横送り駆動軸よりも下位で前記植付けミッションケース内に位置する出力軸部分にスプロケットを固定し、前記出力軸部分に嵌装した潤滑油掻き上げ装置を該出力軸に連結してあることを特徴とする田植機における横送り駆動装置に対する潤滑装置。
【請求項2】
前記掻き上げ装置は嵌合筒に複数枚の潤滑油すくい板を設けたものであることを特徴とする請求項1記載の田植機における横送り駆動装置に対する潤滑装置。
【請求項3】
前記潤滑油すくい板はすくい面側に曲率中心を有するアーチ状に形成してあることを特徴とする請求項2記載の田植機における横送り駆動装置に対する潤滑装置。
【請求項4】
前記掻き上げ装置は前記出力軸周りに摺動回転しないように前記スプロケットを介して前記出力軸に連結してあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の田植機における横送り駆動装置に対する潤滑装置。
【請求項5】
前記スプロケットにピン嵌合用穴を形成するとともに、前記出力軸部分に嵌装した状態の掻き上げ装置の筒状部にピン嵌装用空間を形成し、前記スプロケットのピン嵌合用穴と掻き上げ装置のピン嵌装用空間とにピンを嵌合して両者が一体回転するように構成してあることを特徴とする請求項4記載の田植機における横送り駆動装置に対する潤滑装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−68422(P2007−68422A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256409(P2005−256409)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】