説明

田植機の植付け機構

【課題】 植付け爪を備えた爪ケースを二つ割り構造に構成された回転ケースの両端部に回動自在に軸支装着し、回転ケースに内装した不等速ギヤ伝動機構と爪ケースとを連動連結し、回転ケースの一定方向への回転に伴って爪ケースを回転ケース回転方向と逆向きに不等速で同期回転させるよう構成した田植機の植付け機構において、製造コストが高くなることなく回転ケースに所望の強度を付与することができるようにする。
【解決手段】 回転ケース10を回転駆動する植付け駆動軸が挿入連結される軸支連結部を回転ケース10に設けるとともに、この軸支連結部を囲繞する環状リブ49を回転ケース10の内面または外面に突設してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に装備される回転式の植付け機構に関する。
【背景技術】
【0002】
回転式の植付け機構は、植付け爪を備えた爪ケースを回転ケースの両端部に回動自在に軸支装着し、回転ケースに内装した不等速ギヤ伝動機構と爪ケースとを連動連結し、回転ケースの一定方向への回転に伴って前記爪ケースを回転ケース回転方向と逆向きに不等速で同期回転させることで、植付け爪を苗のせ台の下端部と田面とに亘る縦長の先端回動軌跡で循環作動させるよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−168925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記植付け機構において、回転ケースはアルミダイキャスト製の左右一対の分割ケース部分を接合連結して構成されており、この回転ケースの中心部を植付けケースから横向きに突設されて定速回転される植付け駆動軸に連結するとともに、回転ケースに内装された不等速ギヤ伝動機構の中心ギヤを植付けケース側に固定する構造になり、植付けケースから離れた外側の分割ケース部分を植付け駆動軸に連結することで回転ケースを植付け駆動軸と一体に回転駆動する。この場合、回転ケースと植付け駆動軸との連結部には植付け駆動負荷が大きく作用するので、回転ケースにおける外側の分割ケース部分に植付け駆動軸が挿入連結されるボス部を設けるとともに、このボス部と周壁に連なる直線リブをケース内面に設けて回転ケースと植付け駆動軸との軸支連結部の強度を高めている。
【0004】
しかし、直線リブがボス部に対して対角状に設けられたものであるために、回転ケースと植付け駆動軸との連結部位における周方向での応力の拡散特性に差異が生じやすく、回転ケースの強度を十分確保するためには直線リブの厚さや高さを大きくすることが望まれる。この場合、直線リブの厚さや高さを局部的に大きくすると、分割ケース部分をダイキャスト成型する際における冷却分布特性が低下して残留応力が発生しやすくなり、残留応力除去のために念入りな熱処理を行うなどの後処理が必要となって回転ケースの製造コストが高くつくことになる。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、回転ケースと植付け駆動軸との連結部位における補強構造を改善することで、製造コストが高くなることなく回転ケースに所望の強度を付与することができるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、植付け爪を備えた爪ケースを二つ割り構造に構成された回転ケースの両端部に回動自在に軸支装着し、前記回転ケースに内装した不等速ギヤ伝動機構と前記爪ケースとを連動連結し、前記回転ケースの一定方向への回転に伴って前記爪ケースを回転ケース回転方向と逆向きに不等速で同期回転させるよう構成した田植機の植付け機構において、
前記回転ケースを回転駆動する植付け駆動軸が挿入連結される軸支連結部を回転ケースに設けるとともに、この軸連結部を囲繞する環状リブを回転ケースの内面または外面に突設してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、負荷応力が集中する軸支連結部が環状リブで囲繞されることで、軸支連結部の全方向への応力拡散が略均一となり、特に環状リブを厚くしたり高くしなくても軸支連結部の強度を高めることができる。
【0008】
また、環状リブはアルミダイキャスト成型する場合に軸支連結部付近における溶融素材の流動を円滑化する機能を発揮しやすく、冷却分布特性の不均一に起因する残留応力の発生を抑制することができ、残留応力除去用の熱処理などの後処理を特に念入りに行う必要はない。
【0009】
従って、第1の発明によると、軸支連結に関わる補強用リブのパターンを合理的に改善することで、製造コストを高めることなく所望の強度備えた回転ケースを得ることができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記回転ケースの内面と外面に振り分けて前記環状リブと交差する直線リブを回転ケースの外面または内面に突設してあるものである。
【0011】
上記構成によると、回転ケースの内面と外面に振り分けて形成した環状リブと直線リブとが交差することで、これらリブの厚さや高さを余り大きくすることなく回転ケースの強度を一層高いものにすることができ、上記第1の発明の上記効果を助長する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記植付け駆動軸が挿入連結される中心ボス部を前記回転ケースの外側方に張出し形成し、前記植付け駆動軸と回転ケースとを前記中心ボス部において相対回転不能に連結してあるものである。
【0013】
上記構成によると、回転ケースの回転軸心方向での幅を小さくしながら、回転ケースと植付け駆動軸を連結する軸支部としての中心ボス部の軸心方向長さを大きく確保して、回転ケースと植付け駆動軸を高い精度および強度で連結することができる。
【0014】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
前記回転ケースの両端部における爪ケース軸支部に前記不等速ギヤ伝動機構に対するバックラッシュ吸収機構を備え、回転ケースを構成する左右の分割ケース部分を、その外周辺に沿って配置した複数のボルトで接合連結し、前記バックラッシュ吸収機構の近傍でのボルト配列ピッチを他の箇所でのボルト配列ピッチよりも小さく設定してあるものである。
【0015】
上記構成によると、バックラッシュ吸収機構の近傍ではボルト配列ピッチが小さいので、分割ケース部分の接合強度が高いものとなって、長期間に亘ってバックラッシュ吸収機構を高い精度で作動させることができる。しかも、バックラッシュ吸収機構から外れた箇所ではボルト配列ピッチが大きいので、左右の分割ケース部分をその外周において接合連結するボルトの数は、全部のボルトの配列ピッチを小さくする場合に比べて少ないものとなり、回転ケースの軽量化に有効となる。
【0016】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか一つの発明において、
前記回転ケースを構成する左右の分割ケース部分における接合面近傍に、互いに小間隙をもって対向する舌片を突設してあるものである。
【0017】
上記構成によると、回転ケースを分解整備する場合、対向する舌片の間に形成された小間隙に、マイナスドライバーなどの工具を差し込んでこじることで、接合面を傷付けることなく分割ケース部分を分解することができ、整備の後、再び回転ケース組み上げる際に傷のない接合面を介して分割ケース部分を高いシール状態で接合連結することができる。つまり、回転ケースを組み付ける場合、両分割ケース部分の接合面に液状シール材を塗布して接合連結するので、液状シール材が固化して両分割ケース部分が強固に貼り合わされることになるが、舌片を有効に利用することで簡単に回転ケースを分解して再使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に、乗用田植機の後部に連結装備される6条植え仕様の苗植付け装置1の側面が、図2に、その要部の平面がそれぞれ示されている。この苗植付け装置1は、図1において図外左方の走行機体に備えられた昇降リンク機構2の後端下部にローリング自在に連結されており、マット状苗を載置して一定ストロークで往復横移動される苗のせ台3、この苗のせ台3の下端から1株分づつ苗を切り出して田面に植え付けてゆく回転式の植付け機構4、田面の植付け箇所を均平化するよう並列配備された複数の整地フロート5、等が備えられている。
【0019】
苗植付け装置1の下部には左右に長い角筒状の植付けフレーム6が装備されており、この植付けフレーム6の左右中間部に走行機体からの動力を受けるフィードケース7が連結されるとともに、3個の植付けケース8が左右に並列配置されて植付けフレーム6に後向き片持ち状に連結されている。植付けケース8の後部には一定方向に回転駆動される植付け駆動軸9が貫通横架されており、この植付け駆動軸9に前記植付け機構4が装着されている。
【0020】
植付け機構4には、前記植付け駆動軸9の端部に連結固定されて植付け駆動軸9と一体回転する回転ケース10と、この回転ケース10における両端部の横外側に横軸心回りに自転可能に軸支された爪ケース11とが備えられており、各爪ケース11には植付け爪12と苗押し出し具13が装備されている。
【0021】
回転ケース10が植付け駆動軸9によって前進回転方向(図1において反時計方向)に定速で1回転されるのに連動して、爪ケース11が回転ケース10に内装された不等速ギヤ伝動機構14によって逆方向に不等速で1回転自転し、これによって、植付け爪12が、苗のせ台3下端の苗取出し口と田面とに亘る縦長の先端回動軌跡Sを描いて循環移動するようになっている。植付け爪12が苗のせ台下端から切り出し保持した苗を田面に持ち込む時点で苗押し出し具13が爪先側に突出作動して保持した苗を植付け爪12から分離して地中に押込むように構成されており、その詳細な構成および作動を以下に説明する。
【0022】
図3に示すように、植付けケース8の後部における植付け駆動軸9の軸支部には、固定ボス部材15が同芯状にフランジ連結されるとともに、回転ケース10の回転中心部には植付け駆動軸9に遊嵌支持された中心ギヤG0が配備され、この中心ギヤG0が前記固定ボス部材15の先端爪部15aに咬合されて回転阻止されている。また、回転ケース10の両端部には爪ケース11をフランジ連結した爪支軸16が回転自在に支承されるとともに、回転ケース10の半径方向中間部位には中間支軸17が装備されている。中間支軸17には中間ギヤG1が遊嵌支持されて前記中心ギヤG0と前記爪支軸16に連結した最終ギヤG2とにそれぞれ咬合されている。回転ケース10に組み込まれた上記不等速ギヤ伝動機構14を構成する各ギヤG0,G1,G2はすべて同形状の楕円ギヤで構成されている。
【0023】
上記構成によると、回転ケース10が前進回転方向に定速で回転されると、固定の中心ギヤG0に咬合された状態で回転ケース10と共に植付け駆動軸9の軸芯a周りに公転移動する中間ギヤG1が回転ケース10に対して相対的に公転方向と同方向に不等速で自転する。この中間ギヤG1の不等速回転が最終ギヤG2に不等速で逆転伝達され、最終ギヤG2と一体化された爪支軸16が回転ケース10の回転方向と逆方向に不等速で自転駆動されるのである。このように、回転ケース10が前進回転方向に定速で1回転すると、これに同調して爪ケース11が逆方向に不等速で1回自転し、回転ケース10の両端に備えられた一対の植付け爪12がそれぞれ縦長の先端回動軌跡Sをもって循環回動する。これによって、回転ケース10の1回転に対してして、回転ケース10両端の植付け爪12によって2回の植付けが行われることになるのである。
【0024】
前記爪ケース11には、前記爪支軸16に対して相対回転可能なカム軸21が同芯に突き合わされて軸受け支持されるとともに、両爪ケース11の各カム軸21の外端部がステー22の両端に連結固定されている。これによって、爪ケース11が爪支軸16と一体に自転回動するのに対して各カム軸21は回転ケース10に対して一定の姿勢に維持されるようになっている。
【0025】
図7に示すように、前記苗押し出し具13は、爪ケース11に出退スライド自在、かつ、内装したバネ23によって突出付勢状態に装着された押し出しロッド24の先端に取り付けられており、前記カム軸21によって以下のように出退駆動されるようになっている。
【0026】
爪ケース11には支点b周りに揺動可能に駆動レバー25が装着され、この駆動レバー25の先端と押し出しロッド24の後端とがリンク26を介して連動連結され、駆動レバー25の揺動によって押し出しロッド24が出退することで、苗押し出し具13が爪根元側に位置する苗切り出し用の後退位置と、爪先端に位置する押し出し作用位置との間で往復移動するよう構成されている。カム軸21には駆動レバー25の基端部を操作するカム21aが一体形成されており、爪ケース10が自転することで、駆動レバー25の基端部に対してカム軸21が相対回転し、植付け爪12が苗のせ台3の下端から苗を切り出して田面に持ち込む作動域では駆動レバー25の基端部がカム21aに乗り上げられて、押し出しロッド24がバ23ネに抗して後退された位置に維持され、植付け爪12が植付け位置まで下降移動してきた時点で、駆動レバー25の基端部がカム21aの落ち込み位相に到達し、駆動レバー25のカム21aへの乗り上げが一挙に解除されることで押し出しロッド24がバネ23によって急速に突出作動し、植付け爪12に保持された苗が苗押し出し具13によって一挙に押し出されて圃場内に残し置かれるのである。
【0027】
苗植付けを完了した植付け爪12は上昇作動して苗取り出し位置に移動するが、この上昇作動の間に、カム21aに乗り上がった駆動レバー25がバネ23に抗して復帰揺動され、押し出しロッド24が出退復帰されることになる。このように、苗押し出し具13が後退作動する際には、駆動レバー25をバネ23に抗して復帰揺動させるために大きい負荷が作用することになり、条数の多い苗植付け装置1では、全条の植付け機構4における苗押し出し具13が同時に後退作動する際のピーク負荷が相当大きいものとなって、植付け作動サイクルにおける負荷の脈動が大きくなって苗植付け装置1が動揺する、いわゆる「シャクリ作動」が発生し、植付け苗の姿勢乱れの一因となる。そこで、各植付け機構4における苗押し出し具13の押し出し作動タイミングを同じにするとともに、苗押し出し具13の後退復帰タイミングをずらすように各条においてカム21aの形状を異ならせることで、ピーク負荷の分散を図って「シャクリ作動」を抑制した植付け作動を行わせることができる。なお、複数条の植付け機構4の全てにおいて苗押し出し具13の後退復帰タイミングがずれていることが望ましいが、生産性を考慮すると、一つの植付けケース8における左右の植付け機構4の苗押し出し具後退復帰タイミングをずらしたものにとし、同仕様の植付けケース8を複数並列配備した形態で実施するとよい。
【0028】
図3,図4に示すように、回転ケース10の両端部には、不等速ギヤ伝動機構14に対するバックラッシュ吸収機構30が装備されている。このバックラッシュ吸収機構30は、最終ギヤG2の爪ケース11側に隣接して爪支軸16にスプライン連結されたカム部31と、支点c周りに揺動可能に支持されて前記カム部31に外周から押圧される押圧レバー32と、この押圧レバー32をカム部31に向けて弾性押圧する圧縮コイルバネ33とで構成されており、爪支軸16が公転移動して苗のせ台下端の苗切り出し位置に近づくと、押圧レバー32によってカム部31に与えられる弾性押圧力で爪支軸16および爪ケース11が公転移動方向と逆方向に付勢回動されて、不等速ギヤ伝動機構14のバックラッシュが吸収されるようになっている。このように構成することで、苗のせ台3の下端において植付け爪12がマット状苗に突入する時点では爪ケース11が突入抵抗でバックラッシュ分だけ押し戻される現象が防止される。
【0029】
以上のように構成された植付け機構4における前記回転ケース10は、アルミダイキャスト成型された左右の分割ケース部分10A,10Bを接合して、その周辺部を複数のボルトで締付け連結した分割構造に構成されており、各分割ケース部分10A,10Bの詳細な構造を以下に説明する。なお、説明の便宜上、植付けケース8から遠い側の分割ケース部分10Aを外側分割ケース部分、植付けケース8に近い側の分割ケース部分10Bを内側分割ケース部分と呼称する。
【0030】
図5に示すように、外側分割ケース部分10Aの中心部には軸受け金具41をインサート成型によって埋設固定した中心ボス部42が設けられており、この軸受け金具41に植付け駆動軸9が挿入されるとともに、ケース外方から打ち込まれた連結ピン43が植付け駆動軸9の扁平切除部9aに圧接されることで、回転ケース10が植付け駆動軸9に固定されるようになっている。
【0031】
前記中心ボス部42は、回転ケース10の側壁10aから外方に角形に大きく張出し形成されるとともに、ケース内方にも少し突出されている。外側分割ケース部分10Aの内面には、前記中心ボス部42の他に、前記中間支軸17を内嵌支持する中間ボス部44と、前記爪支軸を軸受け支承する外端ボス部45が突設されており、中心ボス部42および中間ボス部44と周壁10bとが直線リブ46,47で接続されるとともに、中心ボス部42、中間ボス部44、および、外端ボス部45とが直線リブ48で接続されている。
【0032】
外側分割ケース部分10Aの内面には中心ボス部42を同芯状に囲繞して、縦横の直線リブ46,48と直交するように環状リブ49が突設され、中心ボス部42に作用する負荷応力がこれら直線リブ46,48および環状リブ49を介して全方向に略均一に拡散されるようになっている。
【0033】
外側分割ケース部分10Aの外面には中心ボス部42と外端ボス部45とを回転ケース長手方向につなぐ直線リブ50が突設されている。この直線リブ50とケース内の直線リブ48とは略重複合致するとともに、ケース外面の直線リブ50とケース内面の環状リブ49とが回転ケース10の内外に振り分けられて互いに交差されており、中心ボス部42に作用する負荷応力がこれら直線リブ50および環状リブ49を介して側壁10aに拡散されることで、回転ケース10の植付け駆動軸9に対する軸支連結部の強度が高いものとなる。
【0034】
図3に示すように、外側分割ケース部分10Aにおける外端ボス部45には、爪支軸16の外周面に摺接するリップ付きのオイルシール52が打ち込み装着されている。外端ボス部45の先端が爪支軸16に備えられたフランジ16aの側面に近接されるとともに、オイルシール52の外向きリップ52aがフランジ16aの側面に接触され、爪支軸16の軸支部から回転ケース10内への泥水の浸入、および、回転ケース10内に充填したグリースの流出が阻止されている。
【0035】
内側分割ケース部分10Bの中心部には外方に突出する中心ボス部53が設けられ、この中心ボス部53に、前記固定ボス部材15の外周面に摺接されるリップ付きのオイルシール54が打ち込み装着されている。固定ボス部材15に備えられたフランジ15bの外側には、植付けケース8に共締め連結される筒部材55が配備されており、この筒部材55の先端がオイルシール54に近接して配備されるとともに、オイルシール54の外向きリップ54aが筒部55の内周面に摺接され、内側分割ケース部分10Bの中心軸支部から回転ケース10内への泥水の浸入、および、回転ケース10内に充填したグリースの流出が阻止されている。
【0036】
固定ボス部材15における先端側の軸受け支承部位15cはオイルシール54が摺接作用する中間シール部位15dより小径に形成されており、図6に示すように、オイルシール54を装着した回転ケース10を植付け駆動軸9に外嵌装着する際に、オイルシール54の内径リップが固定ボス部材15における軸受け支承部位15cに強く接触して傷つくことが未然に回避されるようになっている。
【0037】
この例においては外側分割ケース部分10Aと内側分割ケース部分10Bとが、その周辺において8本のボルト56の締付けによって接合連結されており、バックラッシュ吸収機構30の近傍でのボルト配列ピッチP1が他の箇所でのボルト配列ピッチP2よりも小さく設定されている。このようなボルト配列を採用することで、バックラッシュ吸収機構30の近傍でのケース接合強度を高めて、バックラッシュ吸収機構30を長期間高い精度で作動させることができ、かつ、回転ケース全体としてのボルト本数を少なくしながら、グリース洩れのない分割型の回転ケース10が構成されている。
【0038】
図3に示すように、外側分割ケース部分10Aと内側分割ケース部分10Bとの接合部における内周角部が欠如されてケース全周に亘る環状溝57が形成されている。ケース接合面に塗布された液状シールがケース接合によって押し出されて環状溝57に貯留し、シール性能が更に高められるようになっている。
【0039】
図4,図6に示すように、外側分割ケース部分10Aと内側分割ケース部分10Bとの接合面近傍には、互いに小間隙dをもって対向する舌片58が突設されており、回転ケース10を分解整備する場合に、ボルト56を取外した後、小間隙dにマイナスドライバーなどの工具を挿入してこじることで、固化した液状シールで強く接合された回転ケース10を、ケース接合面を傷つけることなく容易に分解することができるようになっている。
【0040】
回転ケース10の回転方向と逆方向に自転作動する前記爪ケース11の軸受けボス部59にも、カム軸21の外周面に摺接するリップ付きのオイルシー60が打ち込み装着されている。カム軸21には、軸受けボス部59の先端に近接して囲繞する皿状のシールカバー61が外嵌固定されるとともに、オイルシール60の外向きリップ60aがシールカバー61に内側面に接触され、爪ケース11内への泥水の浸入、および、爪ケース11内に充填したグリースの流出が阻止されている。
【0041】
〔他の実施例〕
【0042】
図8に示すように、前記環状リブ49をケース外面に形成してケース内面の直線リブ48と交差させることによっても負荷応力の分散を図って回転ケース10の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】苗植付け装置の側面図
【図2】苗植付け装置の要部を示す平面図
【図3】植付け機構の縦断正面図
【図4】回転ケースの内部構造を示す側面図
【図5】外側分割ケース部分の(イ)内側面図、(ロ)断面図、および、(ハ)外側面図
【図6】植付け駆動軸への回転ケースの組付け途中状態を示す断面図
【図7】爪ケースの内部構造を示す側面図
【図8】別実施例の外側分割ケース部分を示す断面図
【符号の説明】
【0044】
9 植付け駆動軸
10 回転ケース
11 爪ケース
12 植付け爪
14 不等速ギヤ伝動機構
30 バックラッシュ吸収機構
42 中心ボス部
49 環状リブ
50 直線リブ
56 ボルト
58 舌片
d 小間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付け爪を備えた爪ケースを二つ割り構造に構成された回転ケースの両端部に回動自在に軸支装着し、前記回転ケースに内装した不等速ギヤ伝動機構と前記爪ケースとを連動連結し、前記回転ケースの一定方向への回転に伴って前記爪ケースを回転ケース回転方向と逆向きに不等速で同期回転させるよう構成した田植機の植付け機構において、
前記回転ケースを回転駆動する植付け駆動軸が挿入連結される軸支連結部を回転ケースに設けるとともに、この軸支連結部を囲繞する環状リブを回転ケースの内面または外面に突設してあることを特徴とする田植機の植付け機構。
【請求項2】
前記回転ケースの内面と外面に振り分けて前記環状リブと交差する直線リブを回転ケースの外面または内面に突設してある請求項1記載の田植機の植付け機構。
【請求項3】
前記植付け駆動軸が挿入連結される軸支連結部として中心ボス部を前記回転ケースの外側方に張出し形成し、前記植付け駆動軸と回転ケースとを前記中心ボス部において相対回転不能に連結してある請求項1または2記載の田植機の植付け機構。
【請求項4】
前記回転ケースの両端部における爪ケース軸支部に前記不等速ギヤ伝動機構に対するバックラッシュ吸収機構を備え、回転ケースを構成する左右の分割ケース部分を、その外周辺に沿って配置した複数のボルトで接合連結し、前記バックラッシュ吸収機構の近傍でのボルト配列ピッチを他の箇所でのボルト配列ピッチよりも小さく設定してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の田植機の植付け機構。
【請求項5】
前記回転ケースを構成する左右の分割ケース部分における接合面近傍に、互いに小間隙をもって対向する舌片を突設してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の田植機の植付け機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−68468(P2007−68468A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259258(P2005−259258)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】