説明

田植機の植付部

【課題】安定かつ強固に固定し得るセンターケースの取付構造とし、植付性能の維持と、作業性を向上させた田植機を提供する。
【解決手段】車両後部に植付部15を配設し、この植付部15を構成する苗載台16は、上部ガイドレール19および下部ガイドレール18に支持させて、車両左右往復摺動可能とし、苗積台16の前面下方には、PTO軸33からの動力を、植付部15のロータリーケース21に伝達するセンターケース31を備え、このセンターケース31は、上部ガイドレール19および下部ガイドレール18に挟持させるとともに、上部ガイドレール19にはステー101を介して着脱自在に取付け、このステー101は、上部ガイドレール19への取付側を分岐させて複数の取付部102を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部に植付部を配設し、植付部を構成する苗載台は、上部ガイドレールおよび下部ガイドレールに支持させて、車両左右往復摺動可能とし、苗積台の前面下方には、PTO軸からの動力を、植付部のロータリーケースに伝達するセンターケースを備える田植機に関し、より詳細には、センターケースは、上部ガイドレールおよび植付フレームに挟持させるとともに、上部ガイドレールにはステーを介して着脱自在に取付け、ステーは、上部ガイドレールへの取付側を分岐させて複数の取付部を設けた田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の田植機には、車両後部に配設した植付部は、苗載台や植付爪、センターフロートや複数のサイドフロートなどから構成されており、この苗載台は、前高後低に配設して、苗載台の下部を下ガイドレール、前面上部を上ガイドレールによって左右往復摺動自在に支持し、これら上下ガイドレールは、植付センターケースよりフレームなどを介して支持されている。さらに、この植付センターケースの前部は、トップリンクやロワーリンクなどにより構成される昇降リンク機構のローリング支点軸に連結されている(例えば特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−312517号公報
【特許文献2】特開平7−184426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような田植機では、センターケース(植付センターケース)を、上下ガイドレールに挟持させるものや、この上下ガイドレールへの挟持に加えて、昇降リンク機構のローリング支点軸に支持させているが、入出力軸やベベルギアなどを内設しているため重量を有し、動力の出入りにより大きな負荷がかかるこのセンターケースを、上下2点あるいは前部を加えた3点でしか支持しておらず、センターケースの固定が不十分という問題があった。
そこで、この発明の目的は、安定かつ強固に固定し得るセンターケースの取付構造とし、植付性能の維持と、作業性を向上させた田植機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、車両後部に植付部を配設し、前記植付部を構成する苗載台は、上部ガイドレールおよび下部ガイドレールに支持させて、車両左右往復摺動可能とし、前記苗積台の前面下方には、PTO軸からの動力を、前記植付部のロータリーケースに伝達するセンターケースを備える田植機において、前記センターケースは、前記上部ガイドレールおよび植付フレームに挟持させるとともに、前記上部ガイドレールにはステーを介して着脱自在に取付け、前記ステーは、前記上部ガイドレールへの取付側を分岐させて複数の取付部を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の田植機において、前記センターケースは、該ケースの前部を、前記植付部を左右傾動可能とするローリング支点軸に着脱自在に支持させたことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の田植機において、前記ステーには、前記上部ガイドレールの延長レールを固定する固定部を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1および3に記載の田植機において、前記上部ガイドレールは、前記植付部の植付条数に合わせて前記延長レールを着脱可能に備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の田植機において、前記下部ガイドレールは、前記苗積台を摺動させるレール部と、前記苗積台を覆設部材を介して支持する支持部とからなり、前記支持部に形成した溝内には、複数の板状部材を着脱自在に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、車両後部に植付部を配設し、植付部を構成する苗載台は、上部ガイドレールおよび下部ガイドレールに支持させて、車両左右往復摺動可能とし、苗積台の前面下方には、PTO軸からの動力を、植付部のロータリーケースに伝達するセンターケースを備える田植機において、センターケースは、上部ガイドレールおよび植付フレームに挟持させるとともに、上部ガイドレールにはステーを介して着脱自在に取付け、ステーは、上部ガイドレールへの取付側を分岐させて複数の取付部を設けたので、センターケース上部を支持する支持位置が増え、重量を有し、動力の出入りにより大きな負荷がかかるセンターケースを安定的に支持固定させることができる。また、センターケース内のメンテナンスなどの際には、ステーなどとの固定部分を取外すだけで容易にセンターケースを着脱させることができる。従って、センターケース設置の安定性および作業性を向上させた田植機を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、センターケースは、このケースの前部を、植付部を左右傾動可能とするローリング支点軸に着脱自在に支持させたので、重量を有し、動力の出入りにより大きな負荷がかかるセンターケースを、ステーを介して上部ガイドレールに2点以上と、下部ガイドレールおよびローリング支点軸とで併せて少なくとも4点以上の支持構造とし、センターケースをより強固に支持固定させることができる。従って、センターケース設置の安定性を向上させた田植機を提供することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、ステーには、上部ガイドレールの延長レールを固定する固定部を設けたので、苗積台の前方であって、センターケースと、上部ガイドレールとの間のスペースに、両者を支持するステーを用いて延長レールを着脱可能に止着でき、スペースを有効利用できるとともに、ステーの強度を上昇させることができる。従って、センターケース設置の安定性および利便性を向上させた田植機を提供することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、上部ガイドレールは、植付部の植付条数に合わせて延長レールを着脱可能に備えるので、苗積台の条数に応じて、上部ガイドレールの延長レールを、上部ガイドレール左右端部に着脱自在に設置でき、特に条数を削減した際に、延長レールを取外すことで、車両の左右幅を縮小することができる。従って、利便性を向上させた田植機を提供することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、下部ガイドレールは、苗積台を摺動させるレール部と、苗積台を覆設部材を介して支持する支持部とからなり、支持部に形成した溝内には、複数の板状部材を着脱自在に備えるので、重量を有する苗載台が、下部ガイドレールのレール部上を左右に摺動する際、覆設部材を介して支持部に伝わる振動や衝撃、摩擦を、支持部の溝内に設けた板状部材によって緩和し、支持部の磨耗や損傷を防止し、下部ガイドレールの交換頻度を少なくすることができる。また、板状部材は着脱容易に備えられているため、この板状部材に磨耗や損傷を生じた場合には、板状部材を容易に交換することができる。従って、下部ガイドレールの耐久性および作業性を向上させた田植機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一例としての田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の植付部の側面図である。
【図3】同植付部の平面図である。
【図4】植付部におけるフレームの構成図である。
【図5】センターケースおよびヒッチの斜視図である。
【図6】ローリング支点軸およびセンターケースの正面図である。
【図7】センターケースの取付構造の説明図である。
【図8】延長上部ガイドレールを止着させたステーの斜視図である。
【図9】下部ガイドレールを示す苗載台下部の斜視図である。
【図10】覆設部材を取り外した下部ガイドレールを示す苗載台下部の斜視図である。
【図11】板状部材を設けた下部ガイドレールの一部を示す斜視図である。
【図12】板状部材の拡大斜視図である。
【図13】延長下部ガイドレールを延設した下部ガイドレールを示す苗積台右下端部の斜視図である。
【図14】延長下部ガイドレールの収納状態を示す苗積台右下端部の斜視図である。
【図15】サイドフレームに設けたサイドバンパーを示す苗載台下部側端の斜視図である。
【図16】苗載台を後方から見た斜視図である。
【図17】苗マット押さえの組立図である。
【図18】風車マーカの組立図である。
【図19】モーターユニットの配設位置を示す苗載台前面の斜視図である。
【図20】モーターユニットの内部説明図である。
【図21】苗載台を折り畳む動作の説明図である。
【図22】図21のA矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の一例として、田植機の全体側面図、図2は田植機の植付部の側面図、図3は植付部の平面図である。図4は植付部におけるフレームの構成図、図5はセンターケースおよびヒッチの斜視図、図6はローリング支点軸およびセンターケースの正面図である。
【0017】
本願の田植機1は作業者が搭乗する車両であり、6条植を例に説明する。まず、図1〜2に示すように、エンジン2を車体フレーム3に搭載させ、前後方向に長手状のミッションケース4前方にフロントアクスルケース5を介して水田走行用の前輪6を支持させるとともに、ミッションケース4後部のリヤアクスルケース7に水田走行用の後輪8を支持させる。
【0018】
そして、エンジン2などを覆うボンネット9の両側に予備苗載台10を取付けるとともに、作業者が搭乗する車体カバー11によってミッションケース4などを覆い、車体カバー11後側の運転台12上面に運転席13を取付け、その運転席13の前方でボンネット9後部に操向ハンドル14が設けられる。
【0019】
また、植付部15は、6条植え用の苗載台16並びに複数の苗植付爪17などを具備するものであり、前高後低の合成樹脂製の前傾式苗載台16を下部ガイドレール18および上部ガイドレール19を介して植付フレーム20に左右往復摺動自在に支持させるとともに、センターケース31を介して得られたPTO軸33からの動力を、一方向に等速回転させるロータリーケース21が植付フレーム20に支持され、このロータリーケース21の回転軸芯を中心とした対称位置に一対の爪ケース22を配設し、その爪ケース22先端に苗植付爪17が取付けられる。
【0020】
また、図4に示すように、植付部15は、植付フレーム20の左右両端側に左右サイドフレーム23を立設させるとともに、左右サイドフレーム23下部の左右サイドフレーム23間に上部ガイドレール19を架設したフレーム構造に苗載台16を支持させる。また、図5〜6に示すように、植付フレーム20中央部には、ブラケット31aを介してセンターケース31が取付けられ、前ヒッチ24a下端部に受筒50を一体固定させ、ローリング支点軸50aの前半部を受筒50に軸受ベアリングを介して回転自在に軸支させるとともに、後ヒッチ24bの下端部に受筒50を固定させ、この受筒50にローリング支点軸50aの後端部を貫挿固定させる。そして、前ヒッチ24a上端部に受枠24cを固定させ、受枠24cにボルトを介してローリング制御用の油圧シリンダ24dを着脱自在に取付け、油圧シリンダ24dの図示しないピストンロッドの進退動作制御によってローリング支点軸50a回りに後ヒッチ24bを左右に揺動させる。また、ヒッチ24をトップリンク25およびロワーリンク26を含む昇降機構27を介して車両に連結させ、この車両に設けた油圧式の昇降シリンダ28をロワーリンク26に連結させ、この昇降シリンダ28の駆動時に昇降機構27を介して植付部15を昇降させるとともに、植付部15の下降時には、左右に往復摺動させる苗載台16から一株分の苗を植付爪17によって取出し、連続的に苗植え作業が可能な構成とされる。
【0021】
また、センターケース31は、このセンターケース31周りの各ブラケット31aのボルト締結を解除することで、ヒッチ24などからセンターケース31を容易に分離し取外すことができる。なお、符号29は主変速レバー、30は苗継ぎレバー、32は主クラッチペダル、34はセンターフロート、35はサイドフロート、36は施肥機、37は後輪の外側に配備させる補助車輪、50はサイドバンパーである。
【0022】
また、施肥機36は、肥料を入れる肥料ホッパ38と、肥料を供給する肥料繰出部である肥料繰出ケース39と、フロート34,35の側条作溝器40にフレキシブル形搬送ホース41を介して肥料を排出させるターボブロワー型送風機42と、円筒形のエアタンク43とを備えるとともに、エアタンク43右側端に、この送風機42を取付け、肥料繰出ケース39をエアタンク43上側に配設させ、肥料ホッパ38の後側に苗載台16の上端を近接配備させている。
【0023】
次に、植付フレーム20はアルミ製の一体押出成形品であり、各2条分用のパイプ製縦フレーム44と、これら縦フレーム44の前端間を連結するパイプ製の図示しない横フレームとを備え、十字管継手46を各縦フレーム44後端に溶接固定させ、回転軸47を介してロータリケース21を十字管継手46に回転自在に支持させるとともに、十字管継手48a,48bを縦フレーム44と図示しない横フレームに溶接固定させて、これらフレームを一体連結させて構成される。
【0024】
また、十字管継手48bの前端部に植付入力軸49を設け、ミッションケース4のPTO軸33からの駆動力を、自在軸継手を介してセンターケース31内の入力軸49に伝達させ、前記横フレームに内設する植付駆動軸51にベベルギヤ49a,52を介して入力軸49を連動連結させるとともに、縦フレーム44に内設する植付爪駆動軸53をベベルギヤ52,54および安全クラッチ55を介して植付駆動軸51に連結させ、回転軸47にそれぞれ図示しないベベルギヤおよび植付爪ユニットクラッチを介して植付爪駆動軸53を連動連結させ、苗植付爪17の駆動を行う構成とされる。
【0025】
さらに、苗載台16の左右方向の横送りと、苗載台16上の苗の縦送りとを行う苗送り軸58を苗送りケース59を介して植付駆動軸51の左端に連動連結させ、十字管継手48aの左側フランジ部60に苗送りケース59の一端側フランジ部61をボルト締結させ、苗送りケース59の他端側に苗送り軸58の左端を挿入支持させ、苗送りケース59内の駆動軸51と苗送り軸58間に高低変速用の2組の図示しない切換ギヤで形成する変速機構64を介在させ、機体略中心に対し苗送り軸58の左半分を苗縦送りカム軸65および右半分を苗台横送りネジ軸66に設けて、苗送り軸58の高低2速の回転駆動時に苗載台16の横送りと、苗載台16上の苗の縦送りを行う構成とされる。
【0026】
次に、植付フレーム20の前端下側に、植付深さ調節支点軸67を回動自在に枢支させ、センターフロート34および左右サイドフロート35後端上面のブラケット68,69を、植付深さ調節リンク70,71を介して植付深さ調節支点軸67に連結させる。
【0027】
また、センターフロート34の前端に連結するリンク機構70によってフロート傾斜角度の変化を検出することで、図示しない連動部材を介し、圃場面の状態に応じて昇降機構27により植付部3が走行部2に対して昇降される。なお、図5に示す符号71は苗マット押さえ、72は風車マーカである。なお、図1〜2では、苗マット押さえ71や風車マーカ72は略して記載した。
【0028】
次に、本願発明である、田植機1におけるセンターケース31の取付構造について説明する。図7はセンターケースの取付構造の説明図である。
【0029】
上述したように、PTO軸33からの動力を、ロータリーケース21に伝達するセンターケース31は、苗載台16の前面下方に配設されている。そして、入力軸49や図示しない出力軸およびベベルギアなどを覆設しているセンターケース31の下端部は、図7に示すように、植付フレーム20に各ブラケット31aを介してボルト締結により着脱自在に取付けられる。なお、図7では、説明の便宜上、後ヒッチ24bなどを取外して示した。
【0030】
一方、センターケース31の上面には、上方に突設した平面視略コ字形状のブラケット31bが、ボルト締結などにより取付けられる。なお、ブラケット31bの形状は限定されるものではないが、平面視略コ字形状とすることで、軽量かつ高強度の効果を有するものである。
【0031】
また、ブラケット31bと、上部ガイドレール19とは、ステー101を介してセンターケース31の上部が上部ガイドレール19に支持固定されるが、このステー101は、上部ガイドレール19への取付側(上部)を分岐させた複数の取付部102(図例では二股)を設けた正面視略Y字形状(限定されない)を有するもので、この取付部102を上部ガイドレール19の下部に溶接など(限定されない)で固設する。
【0032】
そして、ステー101の下部と、ブラケット31bの後部とをボルト締結などにより着脱自在に締結される。
【0033】
さらに、センターケース31は、上述したように、ケース31前部を、植付部15を左右傾動可能とするローリング支点軸50にスペーサ56を介してボルト締結などにより着脱自在に支持する。
【0034】
従って、重量を有し、動力の出入りにより大きな負荷がかかるセンターケース31は、その上部をステー101を介して上部ガイドレール19に、この例において2点支持させるとともに、ケース31下部を下部ガイドレール18にブラケット31aを介して支持させ、かつケース31の前部をローリング支点軸50にスペーサ56を介して支持している。このため、ケース31を併せて上記4点支持構造とすることで、センターケース31をより強固に支持固定させることができる。
【0035】
なお、ステー101は、その上部の取付部102を二股形状で説明したが、この形状に限定せず、取付部102を三股以上の形状にしてもよく、その場合は、センターケース31の支持点数をさらに増やすことができ、いっそうより強固にセンターケース31を支持固定させることができる。
【0036】
次に、このステー101は、止着部材としても使用することができる。図8は延長上部ガイドレールを止着させたステーの斜視図である。
【0037】
上部ガイドレール19は、苗載台16の条数に応じて増減させることができる。本例では、6条植えの条数を、例えば8条植えにするために苗載台16の左右端部を増設する際、上部ガイドレール19(および後述する下部ガイドレール18)の左右端部を延長上部ガイドレール103で延設させる。
【0038】
そして、図7に示したように、苗載台16を増設させた場合には、上部ガイドレール19端部のブラケット19aに、上部ガイドレール19と同じ形状で左右長さの短い延長上部ガイドレール103端部のブラケット103aを当接させ、両者をボルト締結することにより、容易に上部ガイドレール19を着脱自在に延設することができる。
【0039】
ここで、苗載台16の条数が、例えば6条のままで、条数を増設させない場合には、図8に示すように、左右延長上部ガイドレール103を、ステー101前面の上下に2つ形成した、側面視略コ字状で金属製のホルダー104(図例では上部のホルダー104は、取付部102の二股形状に合わせて左右に設置)に挟持させ、例えば、ホルダー104前方から、ホルダー104に形成した穴部を介して延長上部ガイドレール103の表面に形成した穴部をボルト締結(限定せず、適宜方法を用いることができる)などして延長上部ガイドレール103をホルダー104に止着させることができる。
【0040】
そして、苗載台16の条数を増設する場合には、ボルト締結を解除して、ステー101から延長上部ガイドレール103を取外し、上述したように上部ガイドレール19に延長上部ガイドレール103を接続して上部ガイドレール19を延設する。なお、上部ガイドレール19への延長上部ガイドレール103の接続は、6〜8条の条数増減に限定されず、6条より少ない条数または8条より多い条数に適宜適用させることができる。
【0041】
このような構成にすることで、苗載台16の条数増設の際に必要な延長上部ガイドレール103を、苗載台16前面のスペースを有効利用して苗載台16近傍に着脱自在に備えることができるとともに、ステー101に延長上部ガイドレール103を止着させることで、センターケース31を支持するステー101の強度を向上させることができる。なお、延長上部ガイドレール103のステー101への止着方法は、上述したホルダー104に限定されず適宜方法を用いてよい。
【0042】
なお、この場合の延長上部ガイドレール103をステー101に止着するボルトは、延長上部ガイドレール103を上部ガイドレール19端部に延設固定するボルトを兼用させることが好ましい。
【0043】
次に、苗載台16を支持する下部ガイドレール18の磨耗防止について説明する。図9は下部ガイドレールを示す苗載台下部の斜視図、図10は覆設部材を取り外した下部ガイドレールを示す苗載台下部の斜視図、図11は板状部材を設けた下部ガイドレールの一部を示す斜視図、図12は板状部材の拡大斜視図である。
【0044】
図9に示すように、下部ガイドレール18は、側面視略L字形状を組み合わせた、苗載台16を左右に摺動させる前後幅の広いレール部18aと、苗載台16を支持する前後幅の狭い支持部18bとからなるもので、この支持部18bには、苗載台16を前面で支持する支持板に取付けた、側面視略L字および略コ字形状からなる覆設部材105がボルト締結などにより着脱自在に設置されている。
【0045】
この覆設部材105を取外した下部ガイドレール18は、図10〜12に示すようになり、この下部ガイドレール18の支持部18bに形成された溝18c内には、等間隔に複数の側面視略L字形状を有し、SUS(Steel Use Stainless)板からなる板状部材106が、支持部18bの形状に沿って、ボルト締結などにより着脱自在に取付けられる。なお、この板状部材106の材質は限定するものではないが、SUS板を用いることで軽量かつ高強度を得ることができる。
【0046】
このような構成にすることで、重量を有する苗載台16が、下部ガイドレール18のレール部18a上を左右に摺動する際、覆設部材105を介して支持部18bに伝わる振動や衝撃、摩擦を、支持部18bの溝18c内に設けた板状部材106によって緩和し、支持部18bの磨耗や損傷を防止し、下部ガイドレール18の交換頻度を少なくすることができる。なお、板状部材106は着脱容易に備えられているため、この板状部材106に磨耗や損傷を生じた場合には、板状部材106を容易に交換することができる。
【0047】
次に、上述した、苗載台16の条数増設に対応し、下部ガイドレール18を着脱自在に延設可能とする際の、延長下部ガイドレールの収納方法について説明する。図13は延長下部ガイドレールを延設した下部ガイドレールを示す苗積台右下端部の斜視図、図14は延長下部ガイドレールの収納状態を示す苗積台右下端部の斜視図である。
【0048】
下部ガイドレール18は、苗載台16の条数増設(例えば、6条植えから8条植えに増設するなど)に応じて、図13〜14に示すように、その左右端部の取付部18dに、下部ガイドレール18と同じ形状で左右長さの短い延長下部ガイドレール107が、支持部18bの溝18c内に形成したボルト穴と、取付部18dに形成したボルト穴とを合致させ、両者をボルト締結などさせて着脱自在に延設される。なお、下部ガイドレール18への延長下部ガイドレール107の接続は、6〜8条の条数増減に限定されず、6条より少ない条数または8条より多い条数に適宜適用させることができる。
【0049】
そして、上述とは逆に、苗載台16の条数削減に伴い、下部ガイドレール18端部から取外した延長下部ガイドレール107は、この苗載台16側面に止着する。この場合、例えば、延長下部ガイドレール107を、苗載台16側面から背面の形状に沿って取付け、溝18c内に形成したボルト穴と、苗載台16側面に形成したボルト穴とを合致させ、両者をボルト締結などさせて延長下部ガイドレール107を苗載台16に止着する。
【0050】
なお、この場合の延長下部ガイドレール107を苗載台16に止着するボルトは、延長下部ガイドレール107を下部ガイドレール18端部に延設固定するボルトと兼用させることが好ましい。
【0051】
このような構成にすることで、苗載台16の条数増設の際に必要な延長下部ガイドレール107を、苗載台16側面のスペースを有効利用して苗載台16に着脱自在に備えることができ、苗載台16の条数増減に伴う延長下部ガイドレール107の着脱作業を迅速に行うことができる。
【0052】
次に、本願発明の田植機1では、苗載台16のサイドバンパーをスタンドに兼用させることができる。図15はサイドフレームに設けたサイドバンパーを示す苗載台下部側端の斜視図である。
【0053】
苗載台16のサイドバンパー50は、図2で示したように、苗載台16前方の左右サイドフレーム23下部から左右側方に向けて略水平に突設した、例えば平面視略L字形状に折曲させた棒状部材であり、このサイドバンパー50によって車両の作業時や走行時などに、周囲の障害物から苗載台16の側部など植付部15を保護している。
【0054】
このサイドバンパー50は、図15に示すように、回動支軸50bを貫設した基端部50aを、サイドフレーム23の下端部にブラケット108を介してボルト締結などで取付けられる。そして、この回動支軸50bは、車両前後方向に向けて設置されており、サイドバンパー50は、この回動支軸50bを中心として、後部の直線部分が地面に対して略水平方向から略鉛直方向に回動可能とされる。
【0055】
従って、サイドバンパー50は、車両の作業時や走行時などにおいては、サイドフレーム23の下部から左右側方に向けて略水平に設置し、上述した植付部15のバンパーとして用いられる。また、車両から苗載台16を分離などする場合には、サイドバンパー50を、回動支軸50bを中心として、後部の直線部分が地面に対して略鉛直方向に回動し固定することで、地面上に苗載台16を縦立させるスタンドとして用いることができる。
【0056】
なお、サイドバンパー50は、サイドフレーム23下部から、バンパーとして用いる地面に対して略水平位置および、スタンドとして用いる地面に対して略鉛直位置での固定方法は、図示しないノッチなど適宜周知の方法で行うことができる。また、サイドバンパー50は、左右サイドフレーム23の両方もしくは一方だけに取付けてもよい。
【0057】
次に、本願発明の田植機1では、苗マットを、苗載台16上に効率よく押止することができる。図16は苗載台を後方から見た斜視図、図17は苗マット押さえの組立図である。なお、図17では説明の便宜上4条植えの苗載台を例示しているが、条数に関係なく全ての苗載台に適用することができる。
【0058】
この苗マット押さえ71は、図16〜17に示すように、苗マットの位置ずれおよび浮き上がりなどを防止するために、苗載台16の載置面に沿って常時付勢して苗マットを押止するものであり、複数の平行に配列した、各条の苗マットを抑えるための縦押さえ棒109およびこれら縦押さえ棒109の上下端部を中途部に固着させ、両端部を曲折した係止部112とする支持シャフト110,111などから構成される。
【0059】
本願では、苗載台16の左右端部および略中央部などに位置するリブ113の上下の複数箇所(図例では6箇所)に、係止溝114aを備える苗押さえ支持114がボルト締結などして取付けられる。
【0060】
従って、苗マット押さえ71を苗載台16の載置面に取付ける際には、先に苗マット押さえ71上部の支持シャフト110における係止部112を、リブ113上部の苗押さえ支持114の係止溝114a内に嵌入させた後、苗マット押さえ71下部の支持シャフト111における係止部112を、リブ113下部の苗押さえ支持114の係止溝114a内に嵌入させる、あるいは先に苗マット押さえ71下部の支持シャフト111における係止部112を、リブ113下部の苗押さえ支持114の係止溝114a内に嵌入させた後、苗マット押さえ71上部の支持シャフト110における係止部112を、リブ113上部の苗押さえ支持114の係止溝114a内に嵌入させて、苗マットを、苗載台16上に押止させることができる。
【0061】
このような構成により、苗マット押さえ71を苗載台16の載置面に取付ける際には、苗マット押さえ71の上部(支持シャフト110)あるいは下部(支持シャフト111)のどちらからでも取付けることができる。従って、従来のように、苗マット押さえ71の押止/解除を下部(上下一方)のみで行う機構から、苗マット押さえ71を上下いずれからでも押止/解除できるため、作業効率を向上させることができる。
【0062】
次に、本願発明の田植機1では、風車マーカ72を、確実に回転可能なものとすることができる。図18は風車マーカの組立図である。
【0063】
風車マーカ72(サイドマーカ)は、図18に示すように、苗載台16の最外側部をガードする左右サイドフレーム23に、車両外側方に向けて張出伸長および折り畳み自在に設けられた、基端部115と、支柱116と、回転体117とから構成された圃場に線引きを行う周知のものであり、詳細な説明は省略する。
【0064】
回転体117は、支柱116の上端に回転体117の軸芯部118を回転自在に枢結するが、本願では、支柱116の上端を、ベアリング119を介して回転体117の軸芯部118に枢結する。つまり、軸芯部118の凹部に、ベアリング119が嵌合され、このベアリング119の軸芯に支柱116の上端が挿通される。
【0065】
このような構成にすることで、軸芯部118の凹部と、支柱116の上端との間に、雑草や藁屑、泥土などの異物が挟まれることなく、回転体117がベアリング119を回転軸として円滑に回転させることができ、確実に圃場に線引きを行うことができる。
【0066】
次に、本願発明の田植機1では、苗植付爪17の駆動を入切させるユニットクラッチのワイヤを略均等長さに配設することができる。図19はモーターユニットの配設位置を示す苗載台前面の斜視図、図20はモーターユニットの内部説明図である。
である。
【0067】
上述の図3に示したように、各ロータリーケース21の回転軸47は、図示しないユニットクラッチを介して植付爪駆動軸53に連動連結されており、これらユニットクラッチにより、植付爪駆動軸53から回転軸47への動力伝達が入切される。
【0068】
前記ユニットクラッチのそれぞれは、図19に示すように、ワイヤー120を介して電気モーターユニット121に接続されており、この電気モーターユニット121のモータ駆動によりワイヤー120の摺動を介して前記ユニットクラッチが作動するが、本願では、電気モーターユニット121を、苗載台16前面の略中央上部における上部横フレーム122にブラケットを介してボルト締結などして取付けられる。
【0069】
図20に示すように、6条田植機の植付部を、各2条毎にクラッチを入り切りして田植機1が圃場の端などで苗を植え付ける際に、不要な植え付けを防ぐための条止めクラッチ電気モーターユニット121である。この電気モーターユニット121によって、条止めクラッチに連結したワイヤー120a,120b,120cを押し引き操作し、条止めクラッチ入り切りを操作する。カム120dは、ステー部材120eにボルトによって取り付けられた電気モータ装置120fにより制御駆動される。リンク部材120g,120h,120iを介して条止めクラッチは、カム120dによるリフトでワイヤー120a,120b,120cを押し引きして操作される。カム120dとギヤ120jは一体にボルトで固着され中心回動軸中心に回転する。中心回動軸はケース14とステー部材120e,120kなどを介して苗載台16と固着されている。
【0070】
このような構成にすることで、電動モーターユニット121と、前記各ユニットクラッチとを接続する各ワイヤー120の接続長さが略等しくなるため、いずれかのワイヤー120の接続を、突出した長さで設ける必要がなく、ワイヤーの捩れや損傷を防ぐとともに、メンテナンス性を向上でき、さらには前記各ユニットクラッチへの応答性を略均等にすることができる。
【0071】
以上述べた田植機1の苗載台16は、折り畳み収納可能に備えることができる。図21は苗載台を折り畳む動作の説明図、図22は図20のA矢視図である。
【0072】
この図21〜22に示すように、例えば、8条植えで説明する苗載台16であって、各苗載台16a〜16hを4つのユニットにグループ分けする。すなわち、苗載台16a,16bは第1ユニット、苗載台16c,16dは第2ユニット、苗載台16e,16fは第3ユニット、苗載台16g,16hは第4ユニットである。
【0073】
なお、苗載台16a〜16hは、それぞれの縁部に2つずつ備える図示しない連結レバー(ロックレバー)をロック状態にすることで連結されている。また、苗載台16eの左縁部と苗載台16fの右縁部には後述するパイプ状のスタンドSを固設する。さらに、苗載台16aの左側端部裏面と、苗載台16bの右側端部裏面にはスタンドSの先端に嵌合するピン(突起部)Rをそれぞれ備える。このピンRとスタンドSの先端にはさらに図示しないパッチン錠を備え、このパッチン錠にてロックされるようになっている。
【0074】
なお、苗載台16の苗マット床土上に防虫剤などを施薬する散布ユニット131を構成する散布ユニット131a〜131dを設置する場合には、一連のフレーム132上に各散布ユニット131a〜131dが載置され、図示しないパッチン錠などで固定されている。このフレーム132は、ロータリケース21から立ち上がって設けられたブラケットに支持される。このフレーム132には保持部132aを備える。この保持部132aは、一時的に各散布ユニット131a〜131dを載置するためのものである。
【0075】
次に、田植作業などが終了した後、苗載台16a〜16hの第1ユニット(苗載台16a,16b)を折り畳んで苗載台16の幅を狭くする方法を説明する。第3ユニット(苗載台16e,16f)の前にある散布ユニット131cをフレーム132から外して、そのフレーム132の保持部132aに載置して、パッチン錠で固定する。
【0076】
そして、苗載台16aと苗載台16bとが連結された状態で、苗載台16bと苗載台16cとの連結を解除する。詳しくは、苗載台16bの縁部に備える2つの連結レバーを解除する方向に回動させ、苗載台16bと苗載台16cとの連結を解除する。次に、第1ユニットの両端にある図示しないハンドルを把持して第1ユニットを移動させる。
【0077】
次に、第1ユニットを第3ユニット上に重ねる。詳しくは、第3ユニットに設けられた1対のスタンドSの先端に、第1ユニットに備える2つのピンRをそれぞれ嵌めこむ。そして、不図示のパッチン錠にてロックする。さらに、第3ユニットの左側端部に備えるかぎ状の固定ピンの先端を、第1ユニットの裏面に形成された孔に掛け止める。次に、第1ユニットを載置していた部分の苗取出板を折り畳む。このようにすることで、田植機1の幅が車体の車幅以下となり、トラックなどへの積込作業や、狭い畔道または路地での釐毫を容易とすることができる。なお、上述の手順を逆に行うことで第1ユニットを折りたたみ状態から広げることができる。従って、詳細な説明は省略する。
【0078】
以上詳述したように、この例の田植機1は、車両後部に植付部15を配設し、この植付部15を構成する苗載台16は、上部ガイドレール19および下部ガイドレール18に支持させて、車両左右往復摺動可能とし、苗積台16の前面下方には、PTO軸33からの動力を、植付部15のロータリーケース21に伝達するセンターケース31を備え、このセンターケース31は、上部ガイドレール19および下部ガイドレール18に挟持させるとともに、上部ガイドレール19にはステー101を介して着脱自在に取付け、このステー101は、上部ガイドレール19への取付側を分岐させて複数の取付部102を設けたものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
なお、この発明は、苗積台の前面下方に、PTO軸からの動力を、植付部のロータリーケースに伝達するセンターケースを、上部ガイドレールおよび下部ガイドレールに挟持させて備える、あらゆる田植機に適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
15 植付部
16 苗載台
18 下部ガイドレール
19 上部ガイドレール
31 センターケース
31a,31b ブラケット
51 ローリング支点軸
56 スペーサ
101 ステー
102 取付部
103 延長上部ガイドレール
104 ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に植付部を配設し、
前記植付部を構成する苗載台は、上部ガイドレールおよび下部ガイドレールに支持させて、車両左右往復摺動可能とし、
前記苗積台の前面下方には、PTO軸からの動力を、前記植付部のロータリーケースに伝達するセンターケースを備える田植機において、
前記センターケースは、前記上部ガイドレールおよび植付フレームに挟持させるとともに、前記上部ガイドレールにはステーを介して着脱自在に取付け、
前記ステーは、前記上部ガイドレールへの取付側を分岐させて複数の取付部を設けたことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記センターケースは、該ケースの前部を、前記植付部を左右傾動可能とするローリング支点軸に着脱自在に支持させたことを特徴とする、請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記ステーには、前記上部ガイドレールの延長レールを固定する固定部を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の田植機。
【請求項4】
前記上部ガイドレールは、前記植付部の植付条数に合わせて前記延長レールを着脱可能に備えることを特徴とする、請求項1および3に記載の田植機。
【請求項5】
前記下部ガイドレールは、前記苗積台を摺動させるレール部と、前記苗積台を覆設部材を介して支持する支持部とからなり、前記支持部に形成した溝内には、複数の板状部材を着脱自在に備えることを特徴とする、請求項1に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−235698(P2012−235698A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104662(P2011−104662)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】