説明

田植機

【課題】肥料の補給作業中に、肥料貯留ホッパー31内の肥料が雨水によって濡れないようにすることと、肥料の補給作業を簡単に行なえるようにした田植機を提供することを目的とするものである。
【解決手段】苗植装置14を後方に備えた走行機体1の後部に配置する施肥装置30を、走行機体1の幅方向に長い肥料貯留ホッパー31の下部において、前記苗植装置14の植付け部箇所ごとに肥料を繰り出すための繰出し部32を走行機体1の幅方向に適宜間隔にて備えるように構成し、前記肥料貯留ホッパー31の上端開口部を横長の上下開閉可能な主蓋45にて覆うようにする一方、この主蓋45には1条分ごと又は複数条分ごとの収納ケース31aの上方に開口する補助入口45a,45bを形成し、この補助入口45a,45bに対して補助蓋46,46aが着脱自在に設けられているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に施肥装置を設け、その後方に苗植装置を配置した田植機の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の施肥装置は、走行機体の運転席よりも後部のステップ部から肥料を補充できるようにした、横長の肥料貯留ホッパーと、該肥料貯留ホッパーから粒粉状の肥料を繰り出す繰出し部と、該繰出された肥料を送風機からの圧風により、苗植装置の植付条の側方に導く供給管とにより構成されていた。
【0003】
例えば、特開平9−107756号公報や、特開平10−215622号公報では、平面視において、走行機体の後部に、田植機の進行方向と直角方向に沿って配置される横長形状の前記肥料貯留ホッパーの下部には、各苗植付条に対応する箇所毎に繰出し部を連設し、該繰出し部の下端には、前記進行方向の前後に向かうホースジョイントを連結し、該ホースジョイントの後端には、前記供給管を繋ぐ一方、各ホースジョイントの前端を、走行機体の幅方向(進行方向と直角方向)に沿って長く配置した丸パイプ状のエアタンクの側面に所定間隔にて連結して、前記繰出し部から落下した粒粉状の肥料を圧風と共に供給管側に送るように構成されていた。
【0004】
そして、圃場への苗植え作業と同時に各苗植付条の側方の土中に施肥するのであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圃場への苗植え作業は、雨天であっても実行されるから、前記作業前もしくは作業途中で、前記肥料貯留ホッパーに粒粉状の肥料を補給する場合、当該肥料貯留ホッパーの上面の蓋を開いて、肥料袋から肥料を補充するとき、雨水が前記肥料貯留ホッパー内に入ることがある。前記肥料貯留ホッパー内の肥料が濡れて吸水した場合、肥料が塊になりやすく、前記肥料貯留ホッパー内の肥料が苗植装置の植付条の側方に移動する間(前記繰出し部または供給管等の内部)で詰まるという問題があった。
【0006】
これを防止するため、前記肥料貯留ホッパーの上面側を大きな防水シート等で覆い、その防水シート等の下側に作業者が入り込み、肥料貯留ホッパーの上面の蓋を開いて、肥料袋から肥料を補充できるが、肥料の補給作業が困難になるという問題があった。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであって、肥料の補給作業中に、前記肥料貯留ホッパー内の肥料が雨水によって濡れないようにすることと、肥料の補給作業を簡単に行なえるようにした田植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明の田植機は、苗植装置を後方に備えた走行機体の後部に配置する施肥装置を、前記走行機体の幅方向に長い肥料貯留ホッパーの下部において、前記苗植装置の植付け部箇所ごとに肥料を繰り出すための繰出し部を前記走行機体の幅方向に適宜間隔にて備えるように構成し、前記肥料貯留ホッパーの上端開口部を横長の上下開閉可能な主蓋にて覆うようにする一方、この主蓋には1条分ごと又は複数条分ごとの収納ケースの上方に開口する補助入口を形成し、この補助入口に対して補助蓋が着脱自在に設けられているものである。
【0009】
また、請求項2に係る発明の田植機は、苗植装置を後方に備えた走行機体の後部に配置する施肥装置を、前記走行機体の幅方向に長い肥料貯留ホッパーの下部において、前記苗植装置の植付け部箇所ごとに肥料を繰り出すための繰出し部を前記走行機体の幅方向に適宜間隔にて備えるように構成し、前記肥料貯留ホッパーの上端開口部を上下開閉可能な蓋にて覆うようにする一方、雨よけカバーは、前記肥料貯留ホッパーの収納ケースの後端側にて蝶番を介して上向きに開く蓋の自由端側に補助蝶番を介して雨よけカバーの基端を取り付け、前記雨よけカバーの平面視形状は前記蓋の平面視形状とほぼ同じ大きさ・形状とし、前記補助蝶番にて前記雨よけカバーは回動可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、苗植装置を後方に備えた走行機体の後部に配置する施肥装置を、前記走行機体の幅方向に長い肥料貯留ホッパーの下部において、前記苗植装置の植付け部箇所ごとに肥料を繰り出すための繰出し部を前記走行機体の幅方向に適宜間隔にて備えるように構成し、前記肥料貯留ホッパーの上端開口部を横長の上下開閉可能な主蓋にて覆うようにする一方、この主蓋には1条分ごと又は複数条分ごとの収納ケースの上方に開口する補助入口を形成し、この補助入口に対して補助蓋が着脱自在に設けられているものであるから、雨降り時において前記主蓋を開くと、前記肥料貯留ホッパー内の肥料が雨に濡れて吸水する不都合等のある場合、前記補助蓋を開けて1条分ごと又は複数条分ごとに前記補助入口を開口させ、前記肥料貯留ホッパー内の肥料が雨に濡れるのを防止しながら、前記肥料貯留ホッパー内に肥料を入れることができる。雨天の際の肥料の補充作業を簡単に実行できるものである。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、苗植装置を後方に備えた走行機体の後部に配置する施肥装置を、前記走行機体の幅方向に長い肥料貯留ホッパーの下部において、前記苗植装置の植付け部箇所ごとに肥料を繰り出すための繰出し部を前記走行機体の幅方向に適宜間隔にて備えるように構成し、前記肥料貯留ホッパーの上端開口部を上下開閉可能な蓋にて覆うようにする一方、雨よけカバーは、前記肥料貯留ホッパーの収納ケースの後端側にて蝶番を介して上向きに開く蓋の自由端側に補助蝶番を介して雨よけカバーの基端を取り付け、前記雨よけカバーの平面視形状は前記蓋の平面視形状とほぼ同じ大きさ・形状とし、前記補助蝶番にて前記雨よけカバーは回動可能に構成したものであるから、開いた前記肥料貯留ホッパーの上面は大きい空間をもって前記雨よけカバーにて保護でき、肥料袋の開口部を前記肥料貯留ホッパーの上面の開口部にあてがってから肥料の補充作業を実行すれば良く、雨降り時であっても、前記肥料貯留ホッパーの上面の開口部から雨が振り込まないので、内部の肥料が湿らず、塊になることを防止できる。雨天の際の肥料の補充作業を簡単に実行できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明を具体化した実施の形態について説明する。図1は乗用型田植機の側面図、図4は施肥装置及びカバー体の配置状態を示す背面図、図7は施肥装置の要部側断面図、図10は施肥装置及びカバー体の配置状態を示す前面図、図10は施肥装置及びカバー体の配置状態を示す斜視図である。
【0013】
本実施形態における田植機は、6条植え式の乗用型田植機であって、走行機体1の車体フレーム2の前部のボンネットカバー3内にエンジン4が搭載されている。該エンジン4の動力は、後部側のミッションケース5に動力伝達された後、車体フレーム2の前部のフロントアクスルケース6を介して前車輪7及び後部のリヤアクスルケース8を介して後車輪9にそれぞれ伝達される。
【0014】
車体フレーム2の上面等を覆う車体カバー10の上面には、運転座席11が設けられ、これに座る作業者は、前記ボンネットカバー3の後端から立設する丸ハンドル12を操作して、前記前車輪7の操向を行なう。
【0015】
走行機体1の後端に連結した平行リンク機構13を介して苗植装置14が上下動可能に連結されている。苗植装置14は、前記ミッションケース5の後端に突出するPTO軸15から自在継手伝動軸16を介して動力伝達される中央伝動ケース17と、この中央伝動ケース17の左右両側にて伝動軸を内装した連結パイプ(図示せず)を介して適宜間隔で連結された左右伝動ケース18,18と、上端が走行機体1の後部に接近するように前傾配置された苗載台19と、前記各伝動ケース17,18,18の下面に設けて圃場の泥面を滑走するフロート20等からなり、この苗載台19の裏面上部の上レール21を、左右両側の伝動ケース18,18に立設した支柱22の上端のコロ部に左右両側摺動移動自在に支持させる一方、前記3つの伝動ケース17,18,18の上面間に装架した下レール23に苗載台19の下端を左右摺動自在に載置している。
【0016】
また、各伝動ケース17,18,18の後部の左右両側面には上下回転するロータリ式の苗植付機構24が配置され、各苗植付機構24のおける植付杆26は、苗載台19の下端と圃場面との間を上下昇降しながら、当該各植付杆26の先端の植付爪にて苗載台19の苗マットを1株ずつに分割して圃場に植え付けする(図1及び図2参照)。
【0017】
なお、苗植装置14は昇降用油圧シリンダ25により、昇降可能に構成されている。
【0018】
次に、図1、図3〜図12を参照しながら、施肥装置30の構成について説明する。6条用の施肥装置30の本実施形態は、平面視において、走行機体1の後部に、田植機の進行方向と直角方向に沿って配置される横長形状の肥料貯留ホッパー31と、該肥料貯留ホッパー31の下部に、各苗植付条に対応する箇所毎に連設される(6つの)繰出し部32と、該各繰出し部32の下端に連通接続されるホースジョイント33と、走行機体1の横幅方向(進行方向と直角方向)に沿って長く配置され、前記各ホースジョイント33の前端に接続される丸パイプ状のエアタンク34と、各ホースジョイント33の後端に接続され、前記苗植装置24における3つのフロート20の左右両側部に設けた穿溝器35まで延びる屈曲自在な軟質合成樹脂製のホース状の供給管36等から構成されている。
【0019】
前記車体フレーム2の後端には、後車輪9の上端より上側にて、前記施肥装置30を支持するための支持フレーム枠を固定連結する。即ち、車体フレーム2の後端に支柱フレーム43等を介して左右一対の前後長手の連結フレーム37,37を接続し、この一対の連結フレーム37,37の上面間を跨いで走行機体の横幅方向に延びる下横フレーム39と、それより上方に配置する前後一対の上横フレーム40,41とが、前記各連結フレーム37,37に立設する支持板38,38を横方向に貫通するようにして溶接接合され、且つ前記下横フレーム39、前後一対の上横フレーム40,41の左右両端は補助支持板42,42に溶接接合されて、支持フレーム枠を構成している(図3及び図5参照)。なお、下横フレーム39と後の上横フレーム41とは断面がL字状であり、前の上横フレーム40は断面丸パイプ状である。また、前記車体カバー10における運転座席11より後部側の平坦なステップ部27は作業者が歩行して、肥料貯留ホッパー31に肥料を補給したり、後述するように零れた肥料の清掃作業ができる作業場(足場)となる。
【0020】
前記エアタンク34の基端(走行機体1の進行方向右端)には、ターボブロワー型の送風機44が接続され、エアタンク34の先端(走行機体1の進行方向右端)は図示しない蓋片が開閉可能に閉止している。
【0021】
前記肥料貯留ホッパー31は、1条分ごとの透明合成樹脂製の収納ケース31aを横1列状に連結し、その左右両側部の上端側の凹所31bの箇所で隣接する収納ケース同士が連通しており、収納した肥料の量を左右に均らすことができるように形成されている。そして、前記6条分の収納ケース31aの上端開口部を横長の上下開閉可能な主蓋45にて一体的に覆うようにする一方、この主蓋45には1条分ごとの収納ケース31aの上方に開口する補助入口45aを形成し、この補助入口45aに対して補助蓋46が着脱自在に設けられている(図4、図7、図10及び図11参照)。これにより、大量の肥料を6条箇所の肥料貯留ホッパー31内に入れるときには、主蓋45を開いて、肥料貯留ホッパーの31の上面全体を大きく開口させれば良く、各1条分ごとの収納ケース31a内に肥料を補充するときや、雨降り時において主蓋45を開くと、肥料貯留ホッパー31内の肥料が雨に濡れて湿気る不都合等のある場合、補助蓋46を開けて1条分ごとに肥料入れを実行すれば良い。なお、図11に示すように、主蓋45の上面に、2〜3条分の箇所に連通する補助入口45bを開口させ、その部分を塞ぐ補助蓋46aを着脱自在に備えるようにしても良い。
【0022】
上記の記載及び図11から明らかなように、苗植装置14を後方に備えた走行機体1の後部に配置する施肥装置30を、走行機体1の幅方向に長い肥料貯留ホッパー31の下部において、前記苗植装置14の植付け部箇所ごとに肥料を繰り出すための繰出し部32を走行機体1の幅方向に適宜間隔にて備えるように構成し、前記肥料貯留ホッパー31の上端開口部を横長の上下開閉可能な主蓋45にて覆うようにする一方、この主蓋45には1条分ごと又は複数条分ごとの収納ケース31aの上方に開口する補助入口45a,45bを形成し、この補助入口45a,45bに対して補助蓋46,46aが着脱自在に設けられている。したがって、雨降り時において主蓋45を開くと、肥料貯留ホッパー31内の肥料が雨に濡れて吸水する不都合等のある場合、補助蓋46,46aを開けて1条分ごと又は複数条分ごとに補助入口45a,45bを開口させ、肥料貯留ホッパー31内の肥料が雨に濡れるのを防止しながら、肥料貯留ホッパー31内に肥料を入れることができる。雨天の際の肥料の補充作業を簡単に実行できる。
【0023】
前記各収納ケース31aの下端箇所に連通接続させる繰出し部32は、図6〜図9に示すごとく、肥料貯留ホッパー31内の肥料を導入するための導入室47を有する上ケース48と、該上ケース48の下面に対して着脱自在な下窄まり状(漏斗状)の下ケース49とにより繰出しケースが構成される。そして、導入室47に連通する連通溝孔50が上下に貫通するように穿設され、且つ上ケース48下面に対して固定された固定板51と、該固定板51の下面に隣接して回転し、前記連通溝孔50に対して連通可能なように同じ回転半径位置に上下方向に貫通された多数個の目皿52を有する目皿板53と、該目皿板53の下面に隣接させて配置され、前記導入室47の下方の位相位置では、前記目皿52の下面を塞ぐ大半径を有し、前記導入室47から回転前方向の位相位置では、前記目皿52の下面を開放するような切欠き部(小半径部)を有して、下ケース49内に回転不能に嵌合された底板54と、前記目皿板53を回転駆動するための縦駆動軸55等を備える。下ケース49の下端には、前記供給管36と、前記パイプ状のエアタンク34への連設管56とを連結するためのホースジョイント33を連結する。
【0024】
前記導入室47は、上ケース48の上面のうち走行機体1における運転座席11に近い側(以下前側と称する)に設けられている。また、前記上ケース48の上面には、後述する横伝動軸58が貫通する軸受部61と、該横伝動軸58に固定した傘歯車59及びこれに噛み合う前記縦駆動軸55の上端の傘歯車60とを収納する収納部62とが前記導入室47の後ろに隣接して形成されており、縦駆動軸55は、図7に示すごとく、下方に行くに従って後方(苗植装置14に近づく方向)位置するように前傾配置されている。従って、前記固定板51は前側が低く、後側が高い位置となるように前傾しており、この固定板51における連通溝孔50及び該連通溝孔50に対する導入室47下端の開口部63は、斜め後下向きに開口していることになる。
【0025】
前記縦駆動軸55は、前記固定板51、目皿板53及び底板54を貫通して斜め下方に延び、縦駆動軸55と目皿板53とが係合しており、両者は一体的に回転する。下ケース49の内周面から突出する複数の支柱部67に固定した支持板65は、縦駆動軸55の下部を貫通させると共に、該縦駆動軸55の外周に被嵌された押さえコイルバネ66の下端を支持する。この押さえコイルバネ66の上端にて底板54を目皿板53方向に押圧付勢する。
【0026】
また、前記支持板65より下方の縦駆動軸55の下端にはホルダ64を脱落不能に連結し、前記ホルダ64の下端には、螺旋状バネ体等からなる肥料詰まり防止部材68を下向きに突出させ、肥料詰まり防止部材68の下端をホースジョイント33における入口筒部78の下部まで臨ませる。そして、縦駆動軸55の回転に応じて肥料詰まり防止部材68を回転させて、下ケース49の下端内周面やホースジョイント33の入口筒部78の内周面に付着した肥料を払い落とし、ホースジョイント33への肥料の繰出しの詰まりを防止できるように構成されている。
【0027】
前記繰出しケースとしての上ケース48における前記導入室47より下側に位置させる下ケース49の前面壁49aを、下に行くに従って前記前傾状の縦駆動軸の下端に接近するように前傾させることにより、この前面壁49aの下方と前記ホースジョイント33の前端との間に大きな空間を形成し、該空間内に前記エアタンク34が配置できるように構成するのである(図7及び図9参照)。前記繰出しケースにおける上ケース48、下ケース49及びホースジョイント33、は各々合成樹脂材にて形成されたものである。
【0028】
また、この繰出しケースとしての上ケース48における前記導入室47の前面の下部には、図7に示すように、前方下向き傾斜状に排出案内筒70を一体的に突出させる。この排出案内筒70は例えば断面角筒状であって、その底部に、平面視略矩形状の残余肥料排出口71が穿設される。この残余肥料排出口71は前記エアタンク34の前端よりも前側の上方に開口される。
【0029】
前記排出案内筒70内にて前後移動自在に嵌挿された開閉栓72の基端には操作体73を前下向きに突出させ、作業者が前記操作体73を介して前記開閉栓72を押し込んだとき、その表面が導入室47の前面壁とほぼ同じ面となるように傾斜形成されており、且つ当該開閉栓72の底面にて残余肥料排出口71を閉止する位置となる。
【0030】
排出案内筒70の外面に被嵌固定したストッパー筒74の係止位置まで開閉栓72を後退させると、残余肥料排出口71を全開し、且つ当該開閉栓72の表面(傾斜面)に沿って残余肥料を円滑に残余肥料排出口71に導くことができるように構成されている。なお、前記排出案内筒70とストッパー筒74と開閉栓72とに穿設された係止孔に係止ピン75を差し替えることにより、開閉栓72の閉止位置と開放位置とに位置固定できる(図7参照)。そして、前記排出案内筒70の下面側には前記残余肥料排出口71から下方延長線上に延びるように排出案内部としての軟質合成樹脂製の放出筒76を取り付ける。
【0031】
これらの放出筒76は図10及び図11に示すように、走行機体1の横幅方向に屈曲させ、左右両側の後車輪9より外側に配置した回収袋(もしくは肥料袋)77に、前記各収納ケース31a内に残った残余肥料を取出しできるように構成するものである。なお、各上ケース48は、前記前後横フレーム40,41にブラケット等を介してボルト連結固定され、下ケース49の下端はホースジョイント33の上面の入口筒部78に被嵌するゴム製の嵌合キャップ79を介して着脱自在に連結されている(図9参照)。
【0032】
前記下窄まり状(漏斗状)の下ケース49は前記縦駆動軸55の前傾と同じく前傾しているので、縦駆動軸55の下端の延長部(肥料詰まり防止部材68の延長下端部等)をホースジョイント33における前記入口筒部78に直線的に臨ませることができるように、当該入口筒部78の軸線を前記縦駆動軸55の前傾角度と同じく前傾させる。
【0033】
次に、前記横一列状に配置された繰出し部32に対する、動力伝達機構について、図4〜図6を参照しながら説明する。前記ミッションケース5の後端から後向きに突出するPTO軸15の中途部に固定したチェンスプロケット81と車体フレーム2の後部支柱86に固定した軸受ケース83内のチェンスプロケット82とにチェン84巻掛けして動力伝達し、さらに軸受ケース83内の外横位置の伝動軸85にチェン伝動する。該伝動軸85の端部の傘歯車87と噛み合う従動傘歯車88を介して下縦伝動軸89に動力伝達した後、その上端に設けたリングコーン式無段変速機構90を介して上縦伝動軸91に伝達する。リングコーン式無段変速機構90は、図5に示すごとく、入力側の下縦伝動軸89と一体的に回転する入力円板92と、出力側の上縦伝動軸91に回転可能に設けられた出力円板93と、両円板92,93の間で相対的に回転可能に配置された複数の遊星コーン94(この遊星コーン94群は上縦伝動軸91と一体的に公転する)と、これら遊星コーン94の円錐面に位置移動可能に摺接する非回転の変速リング95等からなり、これらは変速機ケース96内に収納されている。変速機ケース96の後端のガイド部に、回転数(ひいては単位時間当たりの肥料の繰出し量)の調節ノブ97を有する調節ネジ98を配置し、該調節ネジ98にシフタ99の後端を螺合させ、該シフタ99は前記変速リング95に係合連結しており、調節ネジ98の正回転、逆回転に応じてシフタ99を図5において昇降させて変速リング95が押圧当接する遊星コーン94の円錐面の位置を変化させて変速するものである。
【0034】
なお、前記複数の繰出し部32を通過する横伝動軸58の中途部を分断してピン連結された歯車軸100は軸受ケース101内に配置され、歯車軸100に設けた傘歯車102に前記出力側の上縦伝動軸91の上端の傘歯車103とを噛み合わせて動力伝達する(図6参照)。
【0035】
また、各繰出し部32における収納部62内には、前記傘歯車60の下面側にて縦駆動軸55に上下摺動可能に被嵌する条止めクラッチ104を設け、該条止めクラッチ104は下降するとき、傘歯車60の下面側のクラッチ爪との係合が外れて動力伝達は遮断される。付勢バネ106に抗して条止めクラッチ104を下降させるクラッチシフタ105は、上ケース48の外側にてレバー107に連結されている。そして、苗載台19の裏面上端に植付条ごとに設けて、苗植付機構24の駆動を植付条ごとにON・OFFするユニットクラッチレバー109(図1参照)と前記対応する植付条の位置のレバー107とをワイヤ108にて連結し、畦際の苗植作業時のように植付条の駆動を停止させると、その条の施肥作業も中断されるように構成されている。
【0036】
上記の構成により、苗植作業に際して、予め、肥料貯留ホッパー31内に肥料を入れておき、走行機体1を圃場内で前進させながら、苗植装置14の各フロート20を泥面に滑走させるようして、PTO軸15を駆動して苗植装置14に動力伝達し、植付機構24を駆動して苗マットを苗載台19の下端から分割して圃場に植付する。このとき、前記PTO軸15からリングコーン式無段変速機構90等を介して上縦伝動軸91に回転力が伝達され、横伝動軸58を介して全て(6条分)の繰出し部32の縦駆動軸55が所定の速度で回転するので、各ケース31a内の粒粉状の肥料は、導入室47から目皿板53を介して下ケース49の下方には単位時間当たり適宜量ずつ落下し、ホースジョイント33の上面の内前後中途部に開口した入口筒部78に放出される。他方、送風機44からの圧風はエアタンク34、連設管56を介してホースジョイント33内の後方に向かって吹き込まれるので、前記入口筒部78に放出された肥料が、圧風と共に供給管36を介して穿溝器35から植付条の側部に放出される。
【0037】
作業後、肥料貯留ホッパー31における各ケース31a内に肥料が残った場合には、図10に示すように、後車輪9,9の外側に回収袋77を置き、各係止ピン75を外して、排出案内筒70の開閉栓72を前に引き出し、残余肥料排出口71を開放させると、ケース31a内及び導入室47に溜まった肥料はその自重により、放出管76の略垂直状の入口へ迅速に排出され、回収袋77に放出できる。
【0038】
次に、前記肥料貯留ホッパー31の前後面、即ち、横1列状に連結された透明合成樹脂製の収納ケース31aの前後面には、可撓性乃至は弾性を有する合成樹脂製の板状もしくはシート状のカバー体130a,13bを、側面視において、下に行くに従って末広がりとなるように装着する(図1及び図7参照)。その場合、各カバー体130a,13bの基端(上端)を収納ケース31aの前後壁外面にネジ止めもしくは面ファスナー等により着脱可能に装着する。そして、各カバー体130a,13bは横長の前記肥料貯留ホッパー31のほぼ全長にわたるように走行機体1の幅方向に沿った横長部材とし、各カバー体130a,13bの下端には、その全長にわたって上向き開口した円弧状等の樋部131を一体的に形成する。
【0039】
このように構成することより、走行機体1の側面視において、前後両カバー体130a,13bにて、肥料貯留ホッパー31の下方に配置される上ケース48及び下ケース49、導入室47等からなる繰出し部32や横伝動軸58、PTO軸15からの動力伝達機構、ホースジョイント33、横長のエアタンク34の上方等を前後方向に広い範囲にわたって覆うことができるから、前記各収納ケース31a内に肥料袋から粒粉状の肥料を補充するときに、肥料が外に零れても、前記各部品の表面に付着しないのであり、零れた肥料は各カバー体a,13bの外面に沿って下に落ち、且つ各樋部131にて受けられる。
【0040】
さらに、この各樋部131が、走行機体1の幅中央部で高い位置で幅方向の外側に行くに従って下がるように、各カバー体130a,13bの下端を傾斜状に形成することにより(図4、図10、図11及び図12参照)、各樋部131にて受けられた粒粉状の肥料を図示しないブラシ等で樋部131の長手方向に沿って清掃すれば、至極簡単に零れた肥料を樋部131の下端に集めて回収するように清掃できる。
【0041】
また、肥料貯留ホッパー31の前面側に装着したカバー体130aの左右両側端の下端(樋部131の左右両側端)は、前記運転座席11の後ろ側にて左右両側に延びるステップ部27よりも左右外側に位置するように構成することにより、樋部131の長手方向に沿ってブラシで清掃すると、樋部131の下端に集まった肥料はステップ部27より外側にて図示しない回収箱等にて簡単に受け止めることができ、走行機体1のいずれの箇所も汚すことがないのである。
【0042】
なお、肥料貯留ホッパー131の上面の主蓋45が後方に上向きに回動して開くときには、当該肥料貯留ホッパー31の前面側にのみ前記カバー体131aを装着すれば良く、逆に主蓋45を前方上向きに開くときには、肥料貯留ホッパー31の後面側にのみカバー体131bを設けても良い。
【0043】
図13に示すのは、前記肥料貯留ホッパー31の主蓋45を開いたとき、傘代わりになるようにする雨よけカバー133であって、該雨よけカバー133は、剛性を有する薄板からなり、収納ケース31aの後端側にて主蝶番134を介して上向きに開く主蓋45の自由端側(前側端)に補助蝶番135を介して雨よけカバー133の基端を取り付ける。また、雨よけカバー133の平面視形状は主蓋45の平面視形状とほぼ同じ大きさ・形状とし、補助蝶番135にて雨よけカバー133は略270度回動可能とする。
【0044】
主蓋45を閉じているときには、当該主蓋45の上面に略平行状になるように、雨よけカバー133を折り畳んで載置しておく。雨降り時に肥料を補充するに際しては、まず、運転座席11を前方向に倒し、次いで、雨よけカバー133を図13の左方の下向きとなるように手動にて開いた後、主蓋45を上向きに開き、当該主蓋45を略垂直に立てると、図13の実線で示すように、雨よけカバー133の基端側の下面が主蓋45の前縁に当接してそれ以上下がらず、この雨よけカバー133は、開いた肥料貯留ホッパー31の上面は大きい空間をもって前記雨よけカバー133にて保護されるので、肥料袋136の開口部を肥料貯留ホッパー31の上面の開口部にあてがってから肥料の補充作業を実行すれば良く、雨降り時であっても、肥料貯留ホッパー31の上面の開口部から雨が振り込まないので、内部の肥料が湿らず、塊になることを防止できるのである。
【0045】
なお、前記雨よけカバー133を使用しないときには、当該雨よけカバー133が主蓋45の上にある状態で、当該主蓋45を開けば良い。
【0046】
前記各実施形態において、肥料貯留ホッパー31の各ケース31a内には、肥料の有無を感知するための肥料センサ120及び、上から入れた肥料の塊のものを受け、細かい粒粉状にするための合成樹脂製の受け網体121が設けられている。さらに、繰出しケースとしての上ケース48と下ケース49とは、クランプ係止金具122にて着脱自在可能に連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】田植機の概略側面図である。
【図2】田植機の概略平面図である。
【図3】施肥装置を支持するための支持枠の概略平面図である。
【図4】施肥装置の配置背面図である。
【図5】施肥装置に対する動力伝達機構の側面図である。
【図6】施肥装置に対する動力伝達機構の背面要部断面図である。
【図7】施肥装置及びカバー体の側断面図である。
【図8】繰出し部の部品分解斜視図である。
【図9】繰出し部の要部拡大断面図である。
【図10】肥料貯留ホッパーの前面側のカバー体を示す、走行機体の前方から見た説明図である。
【図11】肥料貯留ホッパー及びカバー体の斜視図である。
【図12】肥料貯留ホッパーの前面側のカバー体を示す、走行機体の右側方から見た斜視図である。
【図13】雨よけカバーの使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 走行機体
14 苗植装置
30 施肥装置
31 肥料貯留ホッパー
31a 収納ケース
32 繰出し部
45 主蓋
45a,45b補助入口
46,46a 補助蓋
133 雨よけカバー
134 主蝶番
135 補助蝶番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗植装置を後方に備えた走行機体の後部に配置する施肥装置を、前記走行機体の幅方向に長い肥料貯留ホッパーの下部において、前記苗植装置の植付け部箇所ごとに肥料を繰り出すための繰出し部を前記走行機体の幅方向に適宜間隔にて備えるように構成し、
前記肥料貯留ホッパーの上端開口部を横長の上下開閉可能な主蓋にて覆うようにする一方、
この主蓋には1条分ごと又は複数条分ごとの収納ケースの上方に開口する補助入口を形成し、この補助入口に対して補助蓋が着脱自在に設けられていることを特徴とする田植機。
【請求項2】
苗植装置を後方に備えた走行機体の後部に配置する施肥装置を、前記走行機体の幅方向に長い肥料貯留ホッパーの下部において、前記苗植装置の植付け部箇所ごとに肥料を繰り出すための繰出し部を前記走行機体の幅方向に適宜間隔にて備えるように構成し、
前記肥料貯留ホッパーの上端開口部を上下開閉可能な蓋にて覆うようにする一方、
雨よけカバーは、前記肥料貯留ホッパーの収納ケースの後端側にて蝶番を介して上向きに開く前記蓋の自由端側に補助蝶番を介して雨よけカバーの基端を取り付け、
前記雨よけカバーの平面視形状は前記蓋の平面視形状とほぼ同じ大きさ・形状とし、前記補助蝶番にて前記雨よけカバーは回動可能に構成したことを特徴とする田植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2006−217920(P2006−217920A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109905(P2006−109905)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【分割の表示】特願平11−168069の分割
【原出願日】平成11年6月15日(1999.6.15)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【Fターム(参考)】