説明

田植機

【課題】 走行機体2に連結の植付け装置5に,苗載台12と,この苗載台の苗マットから一株分の苗を掻き取って圃場面13に植え付けるようにした植付けユニット11とが設けられ,この植付けユニットが,植付け軸の回りに回転する植付け回転体16と,この植付け回転体にその植付け軸と平行な爪軸17の回りに回転するように取付けられている植付け爪体18とを備えて成る田植機において,その構造の簡単化及び低価格化を図るとともに植付け性能の向上を図る。
【解決手段】 前記植付けユニット11における植付け回転体16を,前記植付け装置5に設けた可変速式の電動モータ22にて駆動回転し,この電動モータ22による前記植付け回転体16の回転は,等速度に回転する場合と,不等速度に回転する場合とに変更可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,田植機に係り,より詳しくは,走行機体に上下動可能に連結された植付け装置に,苗マットを支持する苗載台と,この苗載台の苗マットから一株分の苗を掻き取って圃場に植え付けるようにしたロータリー式の植付けユニットとを設けて成る田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるロータリー式植付けユニットは,従来から良く知られ,且つ,例えば,特許文献1及び特許文献2等に記載されているように,田植機における伝動ケースに横向きに軸支した植え付け軸に中空体に構成した植付け回転体を固着し,この植付け回転体に,植付け爪を,前記植付け軸線と平行な爪軸の回りに回転するように取付けられている植付け爪を取付ける一方,前記植付け回転体の内部のうち前記植え付け軸と前記爪軸との間に,当該植付け回転体における一回の公転中に前記植付け爪体を逆方向に一回転するようにした連動機構を設けて,前記植付け爪体,その分割爪が前方に位置する苗載台の方向を向いた姿勢で苗載台と圃場面との間を往復動する構成にする。
【0003】
そして,前記連動機構を,複数枚の非円形歯車を使用した不等速連動機構に構成して,前記植付け回転体における一回の公転に伴う前記植付け爪体における逆方向への一回の自転を,当該植付け爪体における一回転中のうち前記植付け回転体における下死点前後付近の位相において減速させることにより,前記植付け爪体における分割爪の先端が,上下に長い楕円状の閉ループの運動軌跡を描くように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−141323号公報
【特許文献2】特開2006−211948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,従来は,前記植付け装置における植付けユニットを,前記走行機体に搭載したエンジンからのPTO軸等による動力伝達にて回転駆動するという構成にしているから,動力伝達の構造が著しく複雑で,且つ,長いことにより,製造コストのアップ及び重量のアップを招来するばかりか,前記PTO軸における捩れ等のような変形及び歯車のバックラッシュ等のようなガタ付きのために,前記植付けユニットにおける回転に大きな回転変動が発生するから,植付け不良の発生が増大するほか,振動が増大するという問題があった。
【0006】
ところで,前記したロータリー式植付けユニットを備えた田植機による田植え作業に際しては,圃場面に対して,3.3平方メートル当たりの植付け株数を50〜60株の「標準植え」にする場合と,3.3平方メートル当たりの植付け株数を前記「標準植え」よりも多くする「密植え」にする場合と,3.3平方メートル当たりの植付け株数を前記「標準植え」よりも少なくする「疎植え」にする場合とがある。
【0007】
この場合,前記した植付け株数の変更は,前記植付け回転体における回転速度を,株間変速機構によって,田植機における前進走行速度に対して相対的に,密植えの場合に速くすることによって,疎植えの場合に遅くすることによって行うようにしている。
【0008】
しかし,従来の植付けユニットにおいて,植付け爪体の分割爪の先端における運動軌跡は,植付け回転体の回転に応じて植付け爪体を不等速回転するための不等速連動機構によって一定に設定されることにより,この運動軌跡を,前記標準植えに合わせて,この標準植えの場合に最適になるように,つまり,当該分割爪が圃場面から抜け上昇するときにおける泥土の後方へのはね上げ及び圃場面に差し込まれた状態での前方への引きずりを少なくするように設定すると,前記植付け回転体の回転速度を遅くすることで疎植えにした場合に,前記分割爪が圃場面からの抜け上昇が遅れるから,当該分割爪による泥土の後方へのはね上げはない反面,当該分割爪が圃場面に差し込まれた状態で前方への引きずられることになって,圃場面には,植付け苗の前側に大きな掘り起こし穴があいて,苗が前側に倒れる傾向を呈することになる。
【0009】
また,逆に,前記植付け回転体の回転速度を速くすることで密植えにした場合に,前記分割爪における圃場面からの抜け上昇が速くなるから,当該分割爪による前方への引きずりは少なくなる反面,当該分割爪による泥土の後方へのはね上げが増大することにより,圃場面には,植付け苗の後側に大きな掘り起こし穴があいて,苗が後側に倒れる傾向を呈することになる。
【0010】
つまり,前記従来のロータリー式苗植けユニットにおける構成では,これを標準植えに設定すると,密植え又は疎植えにした場合に正しい姿勢での適切な苗の植付けができず,密植えに設定すると,標準植え又は疎植えにした場合に正しい姿勢での適切な苗の植付けができず,また,疎植えに設定すると,標準植え又は密植えにした場合に正しい姿勢での適切な苗の植付けができないという問題があった。
【0011】
本発明は,この問題を解消することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「走行機体に上下動可能に連結された植付け装置に,苗マットを支持する苗載台と,この苗載台の苗マットから一株分の苗を掻き取って圃場に植え付けるようにした植付けユニットとが設けられており,
前記植付けユニットは,平面視で前記走行機体の走行方向と交差した左右方向に延びる植付け軸の回りに回転する植付け回転体と,この植付け回転体に取付けられていて前記植付け軸と平行な爪軸の回りに回転する植付け爪体と,この植付け爪体に取付けられている分割爪とを備え,前記植付け回転体には,当該植付け回転体の一回転中に前記植付け爪体を逆方向に一回転だけ不等速に回転することにより,前記分割爪が上下方向に長い楕円状に運動軌跡を描くように構成した手段を備えており,
更に,前記植付けユニットには,前記植付け回転体を駆動回転するようにした可変速式の電動モータを備えており,この電動モータは,当該電動モータにおける回転数に応じて,前記植付け回転体を等速度に回転する場合と,前記植付け回転体をその一回転のうち少なくとも前記分割爪の下死点前後付近で回転速度を加速又は減速するように不等速に回転する場合とに変更できるように構成されている。」
ことを特徴としている。
【0013】
請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記電動モータは,ステッピングモータである。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載した構成によると,走行機体に連結した植付け装置の植付けユニットにおける植付け回転体を,前記植付け装置に設けた電動モータにて駆動回転することにより,前記走行機構に搭載したエンジンから前記植付け装置の植付けユニットに至る長い距離の動力伝達機構を省略できるのであり,しかも,前記電動モータは可変速式で前記植付けユニットの回転数を任意に変更できることにより,前記従来における株間変速機構を省略できるから,その構造が著しく簡単になり,製造コストの低減及び重量の低減を図ることができる。
【0015】
特に,請求項1によると,前記植付け回転体における回転速度を遅くすることによって「疎植え」にした場合,前記植付け爪体における一回転のうち前記植付け回転体の下死点前後付近の位相での逆方向への回転速度を速くすることにより,この植付け爪体における分割爪が,圃場面から速く抜け上昇するから,この分割爪による圃場面の前方への引きずりが小さくなり,植付け苗の前側にできる掘り起こし穴を確実に小さくすることができ,また,前記植付け回転体における回転速度を速くすることによって「密植え」にした場合,前記植付け爪体における一回転のうち前記植付け回転体の下死点前後付近の位相での逆方向への回転速度を遅くすることにより,この植付け爪体における分割爪の圃場面から抜け上昇が遅れることになるから,この分割爪による泥土の後方へのはね上げが小さくなり,植付け苗の後側にできる掘り起こし穴を確実に小さくすることができる。
【0016】
つまり,「標準植え」した場合は勿論こと,「疎植え」にした場合又は「密植え」にした場合のいずれにおいても,圃場面に対する苗の植付けを,前側及び後側への倒れることの少ない正しい姿勢で適切に行うことができる。
【0017】
また,請求項2に記載した構成によると,前記した植付け回転体における回転制御を,前記ステッピングモータにて,的確に行うことができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】乗用型田植機の平面図である。
【図3】植付け装置を示す平面図である。
【図4】植付け装置の要部を示す側面図である。
【図5】図4のV−V視平面図である。
【図6】図4のVI−VI視断面図である。
【図7】別の実施の形態における植付け装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下,本発明の実施の形態を,乗用型の多条植え田植機に適用した場合の図面について説明する。
【0020】
図1及び図2は,6条植えの乗用型田植機1を示す。
【0021】
前記乗用型田植機1は,左右一対の前輪3及び後輪4にて支持された走行機体2と,この走行機体2の後部に昇降可能に装着した植付け装置5とを備えて,前記走行機体2には,エンジン6が搭載されるとともに,操縦座席7が設けられ,更に,前記エンジン6からの動力を適宜変速して前記各車輪3,4に伝達するための走行ミッション8が搭載され,矢印Aで示す方向に適宜速度で前進走行するように構成されている。
【0022】
前記植付け装置5は,図3及び図4に示すように,前記走行機体1の走行方向と交差した左右方向に延びるメインフレーム9と,このメインフレーム9に左右方向に適宜の条間隔で後方に延びるように設けた三つのサブフレーム10と,この各サブフレーム10の各々における左右両側に設けたロータリー式の植付けユニット11と,左右往復移動するように後方下向き傾斜配設された苗載台12と,前記各植付けユニット11の間において圃場面13の表面を滑走するように配設した複数個のフロート14とによって構成されており,前記苗載台12及び前記各フロート14は,前記メインフレーム9及び前記サブフレーム10にて支持されている。
【0023】
前記各植付けユニット11は,図4及び図5に示すように,前記各サブフレーム10の後端に左右方向に延びるようにして回転自在に軸支した植付け軸15と,この植付け軸15の一端に着脱可能に取付けられた中空状の植付け回転体16と,この植付け回転体16の両端に前記植付け軸15と平行に延びるようにして回転自在に軸支した爪軸17と,この各爪軸17のうち前記植付け回転体16からの突出端に前記苗載台12の方向に向かうようにして着脱可能に取付けられた植付け爪体18とを備えており,この植付け爪体18には,分割爪19が取付けられている。
【0024】
前記植付け回転体16の内部には,図6に示すように,歯車式の連動機構20が設けられ,この連動機構20によって,前記植付け軸15,ひいては前記植付け回転体16における図4に矢印Bで示す反時計方向への回転(公転)に連動して,前記爪軸17,ひいては前記植付け爪体18を,前記植付け回転体16の一回転中に図に矢印Cで示す時計方向に一回転(自転)するように構成されている。
【0025】
この連動機構20は,前記植付け軸15に被嵌した状態で前記サブフレーム10に非回転に連結した太陽歯車20aと,前記爪軸17上に非回転に固着した遊星歯車20bと,前記太陽歯車20a及び遊星歯車20bの中間でこれらの両方に噛合する中間歯車20cとによって構成されている。
【0026】
この場合,前記太陽歯車20a,遊星歯車20b及び中間歯車20cは,特公昭63−20486号公報又は特開昭63−74413号公報等に記載されているように,偏芯歯車等の非円形歯車に構成されており,これにより,前記植付けユニット11の植付け爪体18における分割爪19の先端が,図4に図示したように,上下方向に長い楕円状閉ループの運動軌跡21を描くように構成している。
【0027】
また,前記植付けユニット11における分割爪19は,前記運動軌跡21における上死点から下降動するときの途中で前記苗載台12を通過することにより,前記苗載台12上に苗マットから一株分の苗を切り出し,この苗を前記運動軌跡21の下死点付近において圃場面13に植付けるという構成である。
【0028】
そして,前記各サブフレーム10における内部のうち前記植付け軸15に近い部分には,図5に示すように,直流による電動モータ22が設けられ,この電動モータ22は,その回転数が任意に変更できる可変速式であり,その出力軸22aを,傘歯車機構22b等を介して前記植付け軸15に連結することにより,前記植付け軸15に取付く植付け回転体16を,前記電動モータ22により,図4に矢印Bで示す反時計方向への回転(公転)するように構成している。
【0029】
この場合,前記各植付けユニット11における電動モータ22は,その回転数が自在に変更可能な構成であり,前記各植付けユニットにおける植付け回転体16を互いに同期するようにして回転駆動する構成になっている。
【0030】
なお,前記電動モータ22には,パルス信号を与えることによって決められたステップ単位(ステップ角度)で回転するというステッピングモータが使用され,この電動モータ22には,図示していないが,当該電動モータ22への通電を遮断したときに連動して,これを非回転の状態に保持するブレーキ等の非回転保持機構が設けられており,この非回転保持機構は,前記電動モータ22に設けることに代えて,前記植付け軸15に設けることができる。
【0031】
前記各サブフレーム10における前記電動モータ22は,図3に示すように,コントローラ23にて回転制御されるという構成である。
【0032】
すなわち,このコントローラ23は,前記走行機体2のうち操縦座席7の付近に設けた植付け操作手段24及び株間変更操作手段25並びに植付け条数変更操作手段26からの信号を入力とするほか,前記各植付ユニット11における植付け回転体16のサブフレーム10に対する回転位相センサー27及び前記植付け軸15の前記植付け回転体16に対する回転位相センサー28からの信号を入力とし,更には,前記各植付けユニット11における植付け回転体16に対する回転負荷センサー29からの信号を入力として,前記各電動モータ22を,以下に述べるように,[植付け開始及び停止操作],[株間変更操作],[条数変更操作]及び[過負荷防止]に,回転制御するものである。
[植付け開始及び停止操作]
前記植付け操作手段24をONに操作することで,前記各植付けユニット11が,その各々における電動モータ22への通電にて回転駆動することにより,田植え作業を開始できる。
,また,前記植付け操作手段24をOFFに操作することで,前記各植付けユニット11が,その各々における電動モータ22への通電遮断にて回転停止することにより,田植え作業を停止するように構成している。
[株間変更操作]
前記株間変更操作手段25を標準植えに操作したときには,前記各植付けユニット11の各々における電動モータ22の回転数が標準植えの回転数にされることにより,田植え作業を,圃場面13に対する苗の植付けを「標準植え」にして行い,前記株間変更操作手段25を「密植え」に操作したときには,前記各植付けユニット11の各々における電動モータ22の回転数が,前記「標準植え」の回転数よりも速くなることにより,田植え作業を,走行機体2の走行方向に沿った苗の植付け間隔が前記標準植えの場合によりも狭い「密植え」にして行い,そして,前記株間変更操作手段25を「疎植え」に操作したときには,前記各植付けユニット11の各々における電動モータ22の回転数が,前記「標準植え」の回転数よりも遅くなることにより,田植え作業を,走行機体2の走行方向に沿った苗の植付け間隔が前記「標準植え」の場合によりも広い「疎植え」にして行うように構成している。
【0033】
この場合において,前記電動モータ22による前記植付け回転体16の回転が等速度のままである場合には,植付け爪体18の分割爪19の先端における運動軌跡21を,前記「標準植え」に合わせて,この標準植えの場合に最適になるように,つまり,当該分割爪が圃場面面から抜け上昇するときにおける泥土の後方へのはね上げ及び圃場面13に差し込まれた状態での前方への引きずりを少なくするように設定すると,前記植付け回転体16の回転速度を遅くすることで「疎植え」にした場合に,前記分割爪19における圃場面13からの抜け上昇が遅れるから,当該分割爪19による泥土の後方へのはね上げはない反面,当該分割爪19が圃場面13に差し込まれた状態で前方への引きずられることになって,圃場面13には,植付け苗の前側に大きな掘り起こし穴があいて,苗が前側に倒れる傾向を呈することになる。
【0034】
また,逆に,前記植付け回転体16の回転速度を速くすることで「密植え」にした場合に,前記分割爪19における圃場面13からの抜け上昇が速くなるから,当該分割爪19による前方への引きずりは少なくなる反面,当該分割爪19による泥土の後方へのはね上げが増大することにより,圃場面13には,植付け苗の後側に大きな掘り起こし穴があいて,苗が後側に倒れる傾向を呈することになる。
【0035】
そこで,本発明は,これに対しては,以下に述べるように構成している。
【0036】
すなわち,前記各植付けユニット11の各々における電動モータ22は,前記株間変更操作手段25を「標準植え」に操作したときには,前記各植付けユニット11における植付け回転体16を,その回転速度を全ての回転位相において等しくするように等速度で回転している。
【0037】
そして,前記各植付けユニット11の各々における電動モータ22は,前記株間変更操作手段25を「密植え」に操作したときには,前記各植付けユニット11における植付け回転体16を,前記回転位相センサー27,28からの信号に基づいて,当該植付け回転体16の一回転のうち少なくとも前記分割爪19の下死点前後付近の回転位相において減速するように不等速に回転する一方,前記株間変更操作手段25を「疎植え」に操作したときには,前記各植付けユニット11における植付け回転体16を,前記回転位相センサー27,28からの信号に基づいて,当該植付け回転体16の一回転のうち少なくとも前記分割爪19の下死点前後付近の回転位相において加速するように不等速に回転するという構成にしている。
【0038】
この構成にしたことにより,前記植付け回転体16の回転速度を,「標準植え」の場合よりも速くして「密植え」にしたとき,前記植付け回転16における一回転のうち前記分割爪19の下死点前後付近の位相での回転速度が,前記電動モータ22による不等速回転にて遅くなることにより,前記分割爪19における圃場面13からの抜け上昇が,前記「標準植え」の場合よりも遅くなり,この分割爪19の圃場面13からの抜け上昇が遅れることになるから,前記分割爪19による泥土の後方へのはね上げが小さくなり,「密植え」による苗の植付けを,植付け苗の前後における掘り起こし穴を可及的に小さくできる状態で行うことができる。
【0039】
また,前記「標準植え」から「疎植え」した場合には,前記植付け回転体16における一回転のうち前記分割爪19の下死点前後付近の位相での回転速度が,前記電動モータ22による不等速回転にて速くなることにより,前記分割爪19における圃場面13からの抜け上昇が,前記「標準植え」の場合よりも速くなり,この分割爪19が圃場面13から速く抜け上昇することになるから,前記分割爪19による圃場面13の前方への引きずりが小さくなり,「疎植え」による苗の植付けを,植付け苗の前後における掘り起こし穴を可及的に小さくできる状態で行うことができる。
【0040】
なお,前記実施の形態は,「標準植え」を挟んで,「密植え」と「疎植え」とに切り換えする場合であったが,前記植付け回転体16を等速度で回転する状態を「疎植え」に設定し,この「疎植え」から前記植付け回転体16を不等速度で回転する「密植え」に切り換えるように構成したり,或いは,前記植付け回転体16を等速度で回転する状態を「標準植え」に設定し,この「標準植え」から前記植付け回転体16を不等速度で回転する「密植え」又は「疎植え」に切り換えるように構成することができる。
[条数変更操作]
圃場面13に対する苗の植付け条数の変更は,前記条数変更操作手段26の操作に基づいて,前記各植付ユニット11のうち任意の植付ユニット11における植付け回転体16を,当該植付け回転体16に対する電動モータ22への通電遮断により,回転停止することによって行う。
【0041】
この植付け条数変更に際における前記植付け回転体16の回転停止は,前記回転位相センサー27,28からの信号に基づいて,分割爪19が圃場面13から離れるように上昇した位相で行うように構成している。
【0042】
これにより,前記各植付けユニット11のうち任意の植付けユニットの回転を,当該植付けユニットにおける分割爪19が圃場面13から離れるように上昇した位相で停止できるから,苗植付け条数の変更が,従来のように各植付けユニットごとに設けた上部停止用クラッチ機構によることなく,簡単な構成で容易にできる。
[過負荷防止]
前記各植付けユニット11における電動モータ22は,前記各植付けユニット11における植付け回転体16に対する回転負荷センサー29からの信号に基づき,前記植付け回転体16の回転負荷が,その分割爪19等が圃場面における石等に当たることで所定値を越えた場合には,当該電動モータ22による前記植付け回転体16の回転を停止する。
【0043】
この回転停止は,電動モータ22への通電停止,又は電動モータ22における滑り回転等にて行うように構成している。
【0044】
これにより,従来のように,前記各植付けユニット11に安全クラッチ機構を設けることを省略できる。
【0045】
前記した実施の形態は,二つの植付けユニット11を一対とし,この一対の植付けユニット11を一つの電動モータ22にて回転駆動する場合であったが,本発明は,これに限らず,図7に示す別の実施の形態のように,前記各植付けユニット11を,その各々に対する電動モータ22にて,互いに同期するように回転駆動するという構成にすることができる。
【0046】
この構成によると,前記条数変更操作を,一対の植付けユニットごとではなく,各植付けユニットごとに行うことができる。
【0047】
請求項2のうち「前記各植付けユニットごとの電動モータ」とは,一つの植付けユニット11を一つの電動モータにて回転駆動する場合と,二つ一対の植付けユニット11を一つの電動モータにて回転駆動する場合との両方を含むものである。
【0048】
また,前記電動モータ22は,サブフレーム10の内部に設けていることにより,この電動モータ22における耐久性及び安全性を確実に向上できる。
【符号の説明】
【0049】
1 田植機
2 走行機体
3,4 車輪
5 植付け装置
9 メインフレーム
10 サブフレーム
11 植付けユニット
12 苗載台
13 圃場面
14 フロート
15 植付け軸
16 植付け回転体
17 爪軸
18 植付け爪体
19 分割爪
22 電動モータ
21 運動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に上下動可能に連結された植付け装置に,苗マットを支持する苗載台と,この苗載台の苗マットから一株分の苗を掻き取って圃場に植え付けるようにした植付けユニットとが設けられており,
前記植付けユニットは,平面視で前記走行機体の走行方向と交差した左右方向に延びる植付け軸の回りに回転する植付け回転体と,この植付け回転体に取付けられていて前記植付け軸と平行な爪軸の回りに回転する植付け爪体と,この植付け爪体に取付けられている分割爪とを備え,前記植付け回転体には,当該植付け回転体の一回転中に前記植付け爪体を逆方向に一回転だけ不等速に回転することにより,前記分割爪が上下方向に長い楕円状に運動軌跡を描くように構成した手段を備えており,
更に,前記植付けユニットには,前記植付け回転体を駆動回転するようにした可変速式の電動モータを備えており,この電動モータは,当該電動モータにおける回転数に応じて,前記植付け回転体を等速度に回転する場合と,前記植付け回転体をその一回転のうち少なくとも前記分割爪の下死点前後付近で回転速度を加速又は減速するように不等速に回転する場合とに変更できるように構成されていることを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記電動モータは,ステッピングモータであることを特徴とする田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−161936(P2010−161936A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4438(P2009−4438)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】