説明

田植機

【課題】植付けユニットの構造の簡単化及び低価格化を図るとともに,密植え及び疎植え時の植付け性能を向上する。
【解決手段】植付け回転体16に設けたステッピングモータ24にて,前記植付け爪体18を,植付け回転体16の一回転中に逆方向に一回転する構成であり,このステッピングモータは,植付け爪体18の回転速度を,その一回転中のうち前記植付け回転体16における下死点前後付近の位相において減速するように不等速に回転駆動する構成であるとともに,植付け爪体における一回転のうち前記植付け回転体の下死点前後付近の位相での減速した状態の回転速度を,前記植付け回転体の回転速度を速くしたときには遅くし,前記植付け回転体の回転速度を遅くしたときには速くする構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,田植機に係り,より詳しくは,走行機体に上下動可能に連結された植付け装置に,苗マットを支持する苗載台と,この苗載台の苗マットから一株分の苗を掻き取って圃場に植え付けるようにしたロータリー式の植付けユニットとを設けて成る田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるロータリー式植付けユニットは,従来から良く知られ,且つ,例えば,特許文献1及び特許文献2等に記載されているように,田植機における伝動ケースに横向きに軸支した植え付け軸に中空体に構成した植付け回転体を固着し,この植付け回転体に,植付け爪を,前記植付け軸線と平行な爪軸の回りに回転するように取付けられている植付け爪を取付ける一方,前記植付け回転体の内部のうち前記植え付け軸と前記爪軸との間に,当該植付け回転体における一回の公転中に前記植付け爪体を逆方向に一回転するようにした連動機構を設けて,前記植付け爪体,その分割爪が前方に位置する苗載台の方向を向いた姿勢で苗載台と圃場面との間を往復動する構成にする。
【0003】
そして,前記連動機構を,複数枚の非円形歯車を使用した不等速連動機構に構成して,前記植付け回転体における一回の公転に伴う前記植付け爪体における逆方向への一回の自転を,当該植付け爪体における一回転中のうち前記植付け回転体における下死点前後付近の位相において減速させることにより,前記植付け爪体における分割爪の先端が,上下に長い楕円状の閉ループの運動軌跡を描くように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−141323号公報
【特許文献2】特開2006−211948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,従来は,前記植え付け軸と爪軸との間に,複数枚の非円形歯車を使用した不等速連動機構を設けるという構成であることにより,構造が極めて複雑で,製造コストが大幅に嵩むのであり,その上,前記不等速連動機構における歯車に存在するバックラッシュのために,振動が発生するばかりか,苗載台からの苗取出し量が不安定になるという問題があった。
【0006】
ところで,前記したロータリー式植付けユニットを備えた田植機による田植え作業に際しては,圃場面に対して,3.3平方メートル当たりの植付け株数を50〜60株の「標準植え」にする場合と,3.3平方メートル当たりの植付け株数を前記「標準植え」よりも多くする「密植え」にする場合と,3.3平方メートル当たりの植付け株数を前記「標準植え」よりも少なくする「疎植え」にする場合とがある。
【0007】
この場合,前記した植付け株数の変更は,前記植付け回転体における回転速度を,株間変速機構によって,「密植え」の場合には「標準植え」の場合よりも速くし,「疎植え」の場合には「標準植え」の場合よりも遅くすることによって行うようにしている。
【0008】
しかし,従来の植付けユニットにおいて,植付け爪体の分割爪の先端における運動軌跡は,植付け回転体の回転に応じて植付け爪体を不等速回転するための不等速連動機構によって一定に設定されることにより,この運動軌跡を,前記「標準植え」に合わせて,この「標準植え」の場合に最適になるように,つまり,当該分割爪が圃場面から抜け上昇するときにおける泥土の後方へのはね上げ及び圃場面に差し込まれた状態での前方への引きずりを少なくするように設定すると,前記植付け回転体の回転速度を遅くすることで「疎植え」にした場合に,前記分割爪が圃場面からの抜け上昇が遅れるから,当該分割爪による泥土の後方へのはね上げはない反面,当該分割爪が圃場面に差し込まれた状態で前方への引きずられることになって,圃場面には,植付け苗の前側に大きな掘り起こし穴があいて,苗が前側に倒れる傾向を呈することになる。
【0009】
また,逆に,前記植付け回転体の回転速度を速くすることで「密植え」にした場合に,前記分割爪における圃場面からの抜け上昇が速くなるから,当該分割爪による前方への引きずりは少なくなる反面,当該分割爪による泥土の後方へのはね上げが増大することにより,圃場面には,植付け苗の後側に大きな掘り起こし穴があいて,苗が後側に倒れる傾向を呈することになる。
【0010】
つまり,前記従来のロータリー式苗植けユニットにおける構成では,これを「標準植え」に設定すると,「密植え」又は「疎植え」にした場合に正しい姿勢での適切な苗の植付けができず,「密植え」に設定すると,「標準植え」又は「疎植え」にした場合に正しい姿勢での適切な苗の植付けができず,また,「疎植え」に設定すると,「標準植え」又は「密植え」にした場合に正しい姿勢での適切な苗の植付けができないという問題があった。
【0011】
本発明は,この問題を解消することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「走行機体に上下動可能に連結された植付け装置に,苗マットを支持する苗載台と,この苗載台の苗マットから一株分の苗を掻き取って圃場に植え付けるようにした植付けユニットとが設けられており,
前記植付けユニットは,平面視で前記走行機体の走行方向と交差した左右方向に延びる植付け軸の回りに回転する植付け回転体と,この植付け回転体にその植付け軸と平行な爪軸の回りに回転するように取付けられている植付け爪体とを備えており,
前記植付け回転体には,当該植付け回転体の一回転中に前記植付け爪体を逆方向に一回転するようにしたステッピングモータが設けられ,このステッピングモータは,前記植付け爪体を,その一回転中のうち前記植付け回転体における下死点前後付近の位相において減速するように不等速に回転駆動する構成であり,更に,前記ステッピングモータは,前記植付け爪体における一回転のうち前記植付け回転体の下死点前後付近の位相での減速した状態の回転速度を,前記植付け回転体の回転速度を速くしたときには遅くし,前記植付け回転体の回転速度を遅くしたときには速くする構成である。」
ことを特徴としている。
【0013】
請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記ステッピングモータは,前記植付け回転体に形成した中空部に内蔵されている。」
ことを特徴としている。
【0014】
請求項3は,
「前記請求項1又は2の記載において,前記植付け回転体は,主動用の電気モータにて,その植付け軸の回りに回転駆動される構成である。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載した構成によると,植付け回転体に取付けた植付け爪体を,従来のように,複数枚の非円形歯車にて構成される不等速連動機構によることなく,ステッピングモータにて,この植付け爪体における分割爪の先端が上下に長い楕円状の閉ループの運動軌跡を描くように不等速回転することにより,従来のように複数枚の非円形歯車を使用した不等速連動機構を使用するものに比べて構造が極めて簡単になり,大幅な低価格化及び軽量化を達成できる。
【0016】
しかも,前記電動による植付け爪体の回転に,従来のような歯車におけるバックラッシュがないから,振動を大幅に低減できるとともに,苗載台からの苗取出し量を確実に安定にできる。
【0017】
特に,前記植付け回転体における回転速度を遅くすることによって「疎植え」にした場合,前記植付け爪体における一回転のうち前記植付け回転体の下死点前後付近の位相での減速した状態の回転速度が速くなることにより,この植付け爪体における分割爪が,圃場面から速く抜け上昇するから,この分割爪による圃場面の前方への引きずりが小さくなり,植付け苗の前側にできる掘り起こし穴を確実に小さくすることができる。
【0018】
一方,前記植付け回転体における回転速度を速くすることによって「密植え」にした場合,前記植付け爪体における一回転のうち前記植付け回転体の下死点前後付近の位相での減速した状態の回転速度が遅くなることにより,この植付け爪体における分割爪の圃場面から抜け上昇が遅れることになるから,この分割爪による泥土の後方へのはね上げが小さくなり,植付け苗の後側にできる掘り起こし穴を確実に小さくすることができる。
【0019】
つまり,請求項1によると,「標準植え」した場合は勿論こと,「疎植え」にした場合及び「密植え」にした場合のいずれにおいても,圃場面に対する苗の植付けを,前側及び後側への倒れることの少ない正しい姿勢に適切に行うことができる。
【0020】
また,請求項2に記載した構成によると,前記した効果に加えて,前記ステッピングモータが植付け回転体に内蔵されていることにより,このステッピングモータにおける耐久性及び安全性を確実に向上できる。
【0021】
そして,請求項3に記載した構成によると,前記した効果に加えて,植付け装置における植付けユニットを,主動用の電動モータにて,走行機体とは無関係に独立して回転駆動できるから,走行機体からの動力伝達機構が不要になり,構造を著しく簡単にできるとともに大幅な軽量化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】乗用型田植機の平面図である。
【図3】第1の実施の形態における植付け装置を示す側面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図3のV−V視拡大断面図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】ステッピングモータの制御のフローチャートを示す。
【図8】第2の実施の形態における植付け装置を示す一部切欠平面図側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下,本発明の実施の形態を,乗用型の多条植え田植機に適用した場合の図面について説明する。
【0024】
図1及び図2は,6条植えの乗用型田植機1を示す。図3〜図6は,第1の実施の形態を示す。
【0025】
前記乗用型田植機1は,左右一対の前輪3及び後輪4にて支持された走行機体2と,この走行機体2の後部に昇降可能に装着した植付け装置5とを備えて,前記走行機体2には,エンジン6が搭載されるとともに,操縦座席7が設けられ,更に,前記エンジン6からの動力を適宜変速して前記各車輪3,4に伝達するための走行ミッション8が搭載され,矢印Aで示す方向に適宜速度で前進走行するように構成されている。
【0026】
前記植付け装置5は,前記走行機体1の走行方向と交差した左右方向に延びるメインフレーム9と,このメインフレーム9に左右方向に適宜の条間隔で後方に延びるように設けた三つのサブフレーム10と,この各サブフレーム10の各々における左右両側に設けたロータリー式の植付けユニット11と,左右往復移動するように後方下向き傾斜配設された苗載台12と,前記各植付けユニット11の間において圃場面13の表面を滑走するように配設した複数個のフロート14とによって構成されており,前記苗載台12及び前記各フロート14は,前記メインフレーム9及び前記サブフレーム10にて支持されている。
【0027】
前記各植付けユニット11は,前記各サブフレーム10の後端に左右方向に延びるようにして回転自在に軸支した植付け軸15と,この植付け軸15の一端に着脱可能に取付けられた中空状の植付け回転体16と,この植付け回転体16の両端に前記植付け軸15と平行に延びるようにして回転自在に軸支した爪軸17と,この各爪軸17のうち前記植付け回転体16からの突出端に前記苗載台12の方向に向かうようにして着脱可能に取付けられた植付け爪体18とを備えている。
【0028】
前記前記植付け爪体18には,箸状に構成した分割爪19が前記苗載台12に向かって突出するようにして取付けられ,この分割爪19には,苗押し出し具20が設けられている。
【0029】
前記走行機体2における走行ミッション8からの動力を,前記走行機体2に設けた株間変速機構(図示せず)に伝達し,この株間変速機構からPTO軸21を介して前記メインフレーム9に設けた動力伝達機構(図示せず)に伝達し,次いで,この動力伝達機構から前記サブフレーム10の内部に設けた伝動軸22及び傘歯車機構23を介して前記植付けユニット11における植付け軸15に伝達することにより,前記植付けユニット11における植付け回転体16を,図に矢印Bで示すように,反時計方向に回転(公転)するように構成されている。
【0030】
前記植付け回転体16における反時計方向への回転速度は,前記株間変速機構により,圃場面13に対する苗の植付けを「疎植え」にする場合には遅くし,圃場面13に対する苗の植付けを「密植え」にする場合には速くように変速するように構成されている。
【0031】
一方,前記植付けユニット11における植付け回転体16の内部には,爪軸17を回転するようにしたステッピングモータ24が設けられている。
【0032】
前記ステッピングモータ24は,パルス信号を与えることによって決められたステップ単位(ステップ角度)で回転するという構成であり,前記植付け爪体18を,前記植付け回転体16における反時計方向への一回転中に,矢印Cで示すように時計方向に一回転(自転)するというように制御されている。
【0033】
しかも,前記ステッピングモータ24は,当該ステッピングモータ24に付与するパルス信号を,前記植付け回転体16及び前記植付け爪体18の各々に対する位相センサー(図せず)に加えて,前記「標準植え」,「疎植え」及び「密植え」を検出するセンサー(図示せず)における検出信号に基づいて以下に述べるように回転制御されている。
【0034】
すなわち,ステッピングモータ24は,前記植付け爪体18における時計方向への回転速度を,当該植付け爪体18における一回転中のうち前記植付け回転体16における下死点より前の適宜角度の位相から下死点後における適宜角度の位相までの間,つまり,下死点前後付近の位相において,減速するというように不等速度に回転制御されており,この不等速度の回転制御により,図3に示すように,前記植付け爪体18における分割爪19の先端が,上下に長い楕円状の閉ループの運動軌跡25を描くように構成している。
【0035】
その上,前記ステッピングモータ24は,前記植付け爪体18における時計方向への一回転のうち前記植付け回転体18の下死点前後付近の位相での回転速度(減速時の回転速度)を,前記植付け回転体18における回転速度を「疎植え」に遅くしたときには,前記「標準植え」にした場合よりも速くし,前記植付け回転体18の回転速度を「密植え」に速くしたときには,前記「標準植え」にした場合よりも遅くするというように回転制御されている。
【0036】
図7は,この回転制御のフローチャートを示している。
【0037】
すなわち,ステップS1において,前記植付け回転体16が下死点前後付近の位相にあるか否かを検出し,YESのときには,ステップS2に移行して,前記植付け爪体18における時計方向への回転速度を減速するように制御する。
【0038】
次いで,ステップS3において,「標準植え」であるか否かを検出し,「標準植え」である場合には,前記した制御を繰り返すが,「標準植え」でない場合には,ステップS4に移行して,ここで「疎植え」であるか否かを検出し,「疎植え」である場合には,ステップS5において,前記植付け爪体18における減速時の回転速度を速くする。
【0039】
また,前記ステップS3において「標準植え」でない場合には,ステップS6に移行して,ここで「密植え」であるか否かを検出し,「密植え」である場合には,ステップS7において,前記植付け爪体18における減速時の回転速度を遅くするというように制御する。
【0040】
なお,前記植付け回転体18の内部に設けたステッピングモータ24に対する通電は,例えば,前記爪軸17のうち前記サブフレーム10内の部分に設けた複数本のリング状電気導体26の各々に対して,前記サブフレーム10に非回転に支持したブラシ27を摺動自在に接触する一方,前記ステッピングモータ24と前記リング状電気導体26との間を,前記爪軸17の内部に挿通した配線28を介して電気的に接続することによって行うように構成されている。
【0041】
また,前記植付け爪体18における分割爪19に設けた苗押し出し具20は,常には,前記分割爪19の先端から後退した部位に位置しているが,前記分割爪19が前記植付け回転体16の下死点において圃場面13に最も深く進入した位置から上昇するときにおいて,前記分割爪19の先端に向かって前進作動するように構成されている。
【0042】
すなわち,前記植付け爪体18を,図5及び図6に示すように,中空にして,その内部に,前記植付け回転体16に固着したカム29を設けるとともに,中程部をピン30にて枢着した押し出しレバー31を設け,この押し出しレバー31における一端を前記カム29に接当する一方,前記押し出しレバー31における他端を前記苗押し出し具20の上端に連結することにより,前記苗押し出し具20を,前記植付け爪体18における矢印Cで示す時計方向への一回転のうち,前記分割爪19が前記植付け回転体16の下死点において圃場面13に最も深く進入した位置においてのみ,前記押し出しレバー31に対して設けたばね32にて前進作動するという構成である。
【0043】
この構成において,植付け回転体16における植付け爪体18は,前記植付け回転体16の矢印B方向への回転(公転)に伴って,その公転の回転角度と同じ回転角度だけ矢印B方向とは逆向きのC方向に爪軸17を中心として自転することにより,この植付け爪体18は,その分割爪19が苗載台12の方向を向いた状態で上下方向に往復動するように旋回運動する。
【0044】
この植付け爪体18の旋回運動に際して,当該植付け爪体18における時計方向への回転速度は,前記植付け回転体16の下死点前後付近の位相において減速されることにより,その分割爪19の先端は,上下に長い楕円状の閉ループの運動軌跡25を描くことになる。
【0045】
そして,前記植付け爪体18の旋回運動中において,苗載台12の上面に面する側において上から下に下降するときの位相において,その分割爪17にて苗載台12上の苗マットから苗を一株だけ分割したのち,この一株の苗を,前記植付け回転体16における下降下限の下死点近傍において分割爪19の先端が圃場面13中に進入する。
【0046】
このとき,前記植付け爪体18における押し出しレバー31が,ばね32のばね力にてカム29の形状に追従してピン30を中心にして下向きに回動することにより,押し出し具20が分割爪19の先端に向かって前進動するから,前記分割爪19の先端における一株の苗は,押し出されるようにして圃場面13に植付けられる。
【0047】
この苗の植付けが終わると,前記押し出し具20が後退動すると同時に,分割爪19は,圃場面13より抜けるように上昇動する。
【0048】
そして,この田植え作業を,3.3平方メートル当たりの植付け株数を「標準植え」にして行う場合には,前記植付け回転体16における回転速度を,前記株間変更機構における変速操作にて当該「標準植え」のときにおける回転速度にすることで,この植付け回転体16における植付け爪体18の分割爪19の先端は,図3に二点鎖線で示す走行運動軌跡33を描くことにより,「標準植え」による苗の植付けを,植付け苗の前後における掘り起こし穴を可及的に小さくした状態で行うことができる。
【0049】
前記「標準植え」の状態から,3.3平方メートル当たりの植付け株数を前記「標準植え」よりも多い「密植え」にして行う場合には,前記植付け回転体16における回転速度を,前記株間変更機構における変速操作にて前記「標準植え」のときにおける回転速度よりも速くする一方,前記植付け爪体18における逆方向への一回転のうち前記植付け回転体16の下死点前後付近の位相での減速した状態における回転速度を,前記ステッピングモータ24における回転制御によって,前記「標準植え」のときにおける回転速度よりも遅くする。
【0050】
これにより,前記分割爪19における圃場面13からの抜け上昇が,前記「標準植え」の場合よりも遅くなり,前記分割爪19の先端が描く走行運動軌跡は,前記「標準植え」の場合における走行運動軌跡33に近似するようになって,この分割爪19の圃場面13からの抜け上昇が遅れることにより,前記分割爪19による泥土の後方へのはね上げが小さくなるから,「密植え」による苗の植付けを,植付け苗の前後における掘り起こし穴を可及的に小さくできる状態で行うことができる。
【0051】
また,前記「標準植え」の状態から,3.3平方メートル当たりの植付け株数を前記「標準植え」よりも少ない疎植えにして行う場合には,前記植付け回転体16における回転速度を,前記株間変更機構における変速操作にて前記「標準植え」のときにおける回転速度よりも遅くする一方,前記植付け爪体18における逆方向への一回転のうち前記植付け回転体16の下死点前後付近の位相での減速した状態における回転速度を,前記ステッピングモータ24における回転制御によって,前記「標準植え」のときにおける回転速度よりも速くする。
【0052】
これにより,前記分割爪19における圃場面13からの抜け上昇が,前記「標準植え」の場合よりも速くなり,前記分割爪19の先端が描く走行運動軌跡は,前記「標準植え」の場合における走行運動軌跡33に近似するようになって,前記分割爪19が圃場面13から速く抜け上昇することにより,前記分割爪36による圃場面13の前方への引きずりが小さくなるから,「疎植え」による苗の植付けを,植付け苗の前後における掘り起こし穴を可及的に小さくできる状態で行うことができる。
【0053】
なお,前記実施の形態は,「標準植え」を挟んで,「密植え」と「疎植え」とに切り換えする場合であったが,前記「疎植え」から「密植え」に切り換えるように構成したり,或いは,前記「標準植え」から「密植え」又は「疎植え」に切り換えるように構成することができる。
【0054】
次に,図8は,第2の実施の形態を示す。
【0055】
この図8に示す第2の実施の形態は,前記植付け装置5における植付けユニット11の回転を,前記走行機体2に搭載したエンジン6からの動力伝達によって行うことに代えて,前記植付け装置5におけるメインフレーム9又はサブフレーム10の内部に設けた主動用の電動モータ34によって行うように構成したものである。
【0056】
この第2の実施の形態によると,前記走行機体2に搭載したエンジン6から前記植付け装置5へのPTO軸21等の動力伝達機構を省略できることができるから,前記植付け装置5における大幅な軽量化及び低価格化を図ることができる。
【0057】
また,この第2の実施の形態においては,前記主動用の電動モータ34を,メインフレーム9又はサブフレーム10の内部に設けたことにより,この電動モータ34における耐久性及び安全性を確実に向上できる。
【符号の説明】
【0058】
1 田植機
2 走行機体
3,4 車輪
5 植付け装置
9 メインフレーム
10 サブフレーム
11 植付けユニット
12 苗載台
13 圃場面
14 フロート
15 植付け軸
16 植付け回転体
17 爪軸
18 植付け爪体
19 分割爪
24 ステッピングモータ
25 運動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に上下動可能に連結された植付け装置に,苗マットを支持する苗載台と,この苗載台の苗マットから一株分の苗を掻き取って圃場に植え付けるようにした植付けユニットとが設けられており,
前記植付けユニットは,平面視で前記走行機体の走行方向と交差した左右方向に延びる植付け軸の回りに回転する植付け回転体と,この植付け回転体にその植付け軸と平行な爪軸の回りに回転するように取付けられている植付け爪体とを備えており,
前記植付け回転体には,当該植付け回転体の一回転中に前記植付け爪体を逆方向に一回転するようにしたステッピングモータが設けられ,このステッピングモータは,前記植付け爪体を,その一回転中のうち前記植付け回転体における下死点前後付近の位相において減速するように不等速に回転駆動する構成であり,更に,前記ステッピングモータは,前記植付け爪体における一回転のうち前記植付け回転体の下死点前後付近の位相での減速した状態の回転速度を,前記植付け回転体の回転速度を速くしたときには遅くし,前記植付け回転体の回転速度を遅くしたときには速くする構成であることを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記ステッピングモータは,前記植付け回転体に形成した中空部に内蔵されていることを特徴とする田植機。
【請求項3】
前記請求項1又は2の記載において,前記植付け回転体は,主動用の電気モータにて,その植付け軸の回りに回転駆動される構成であることを特徴とする田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−161937(P2010−161937A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4439(P2009−4439)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】