説明

田植機

【課題】植付作業時に使用する操作手段の操作がしやすく視認性を向上した田植機を提供する。
【解決手段】運転席19と、該運転席19の前方に配置されて操向ハンドル18を設けるダッシュボード17とを走行部10に備え、該走行部10に植付部40を昇降可能に連結した田植機1において、前記操向ハンドル18を前記ダッシュボード面17aから上方へ突出するハンドル軸9により支持するとともに、植付操作時に使用する植付用操作手段を配置する植付操作パネル51を前記ダッシュボード面17aに設けて、該植付操作パネル面51aを前記ハンドル軸9の軸心方向と直交する面である操向ハンドル面18aよりも大きく前記運転席19に向かって下り傾斜する傾斜面とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に関し、詳しくは、走行部の操作パネル上に配置される操作手段の配置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行部上に操向ハンドルや運転席等を配設し、走行部の後側に植付部を昇降自在に連結した乗用の田植機が公知となっている。このような田植機は、走行部上で運転席の前方にハンドルコラムを立設し、該ハンドルコラム上にダッシュボードを配置し、該ダッシュボード上面の後部からハンドル軸を上方へ突出させ、該ハンドル軸上に操向ハンドルを設けている。また、前記田植機は、前記ハンドル軸の前方のダッシュボード上面に表示パネルと条止めを行う複数のスイッチを含む各種の操作手段を配置している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−267754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の田植機では、運転席に着座した作業者がダッシュボードの上面を見たとき、ダッシュボードの上面に太陽の光等が反射して作業者の目に入るようなことがあり、植付作業時に使用する操作手段を視認しにくくなることがあった。
また、植付作業時に使用する操作手段の操作方向が運転席に着座した作業者にとって操作しやすい方向になっておらず、作業者が運転席に着座した状態で植付作業時に使用する操作手段を操作しにくいことがあった。
【0005】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、植付作業時に使用する操作手段の操作がしやすく視認性を向上した田植機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、運転席と、該運転席の前方に配置されて操向ハンドルを設けるダッシュボードとを走行部に備え、該走行部に植付部を昇降可能に連結した田植機において、前記操向ハンドルを前記ダッシュボードの上面から上方へ突出するハンドル軸により支持するとともに、植付作業時に使用する植付用操作手段を配置する植付操作パネルを前記ダッシュボードの上面に設けて、該植付操作パネルのパネル面を前記ハンドル軸の軸心方向と直交する面よりも大きく前記運転席に向かって下り傾斜する傾斜面としたものである。
【0008】
請求項2においては、前記植付操作パネルを前記操向ハンドルのハンドル軸よりも前記運転席側に配置したものである。
【0009】
請求項3においては、前記植付部における作業状況を表示する表示パネルを前記ダッシュボードの上面に設けて、この表示パネルのパネル面を前記運転席に向かって下り傾斜する傾斜面とし、前記植付操作パネルのパネル面を、前記表示パネルのパネル面と同一の勾配で、または該パネル面よりも小さな勾配で傾斜させたものである。
【0010】
請求項4においては、前記植付操作パネルのパネル面に配置される植付用操作手段は、条止め操作手段とするものである。
【0011】
請求項5においては、前記条止め操作手段は、前記植付操作パネルに対して着脱可能に構成するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1の発明によれば、植付操作パネルのパネル面がダッシュボードの上面より所定角度運転席側に起立するように傾斜して配置されることとなるため、植付操作パネルのパネル面が見やすくなり、植付用操作手段も容易に認識することが可能となる。したがって、植付用操作手段を容易に視認して操作することが可能となる。
また、植付操作パネルを他の操作手段と容易に区別することが可能になるとともに、植付用操作手段の操作方向が運転席に着座した作業者にとって操作しやすい方向になって、作業者が運転席に着座した状態で無理に手や指を曲げることなく容易に操作することが可能となる。したがって、植付用操作手段の操作性が向上する。
【0014】
請求項2の発明によれば、運転席に着座した作業者が操向ハンドル及びハンドル軸に遮られることなく植付用操作手段を見ることが可能となる。したがって、植付用操作手段の視認性が更に向上する。
また、運転席に着座した作業者が操向ハンドルを操作しながらでも、姿勢をほとんど変えずに植付用操作手段を操作することが可能となる。したがって、植付用操作手段の操作性が更に向上する。
【0015】
請求項3の発明によれば、運転席に着座した作業者が、表示パネルのパネル面を見て植付部の作業状況を把握しながら、植付操作パネルのパネル面に位置する植付用操作手段の操作を行う際、表示パネルのパネル面と植付用操作手段とが同時に見やすくなる。したがって、植付用操作手段の操作を適確かつ容易に行うことができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、条止め操作手段を植付部や運転席側方に設ける構成に比べて、条止め操作手段を容易に認識できて、操作しやすくなる。
【0017】
請求項5の発明によれば、条止め操作手段を植付操作パネルから外して、この条止め操作手段の代わりに、異なる仕様の条止め操作手段や別の部材を植付操作パネルに配置することが可能となる。したがって、植付操作パネル部分の仕様変更を容易に行うことができ、その仕様変更にかかるコストを削減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体構成を示す側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る田植機の全体構成を示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る田植機のダッシュボードを側面から見た概略図。(a)植付操作パネル面を表示パネル面と同一の勾配で傾斜させた場合の図。(b)植付操作パネル面を表示パネル面よりも小さな勾配で傾斜させた場合の図。
【図4】本発明の一実施形態に係る田植機のダッシュボードを運転席側から見た図。
【図5】本発明の一実施形態に係る田植機のダッシュボードを左後方から見た斜視図。
【図6】ダッシュボードの植付操作パネルを示す図。(a)異なる仕様の条止め操作ユニットを配置した場合の図。(b)条止め操作ユニットの代わりに蓋を配置した場合の図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の一実施例に係る田植機1の全体構成について、図1、図2を用いて説明する。なお、本実施形態においては、田植機は八条植えの田植機とするが、これは特に限定するものではなく、例えば六条植えや十条植えの田植機であってもよい。
【0020】
図1に示すように、田植機1は、走行部10と植付部40とを有し、走行部10により走行しながら、植付部40により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付部40は、走行部10の後方に配置されて、この走行部10の後部に昇降機構30を介して昇降可能に連結される。
【0021】
走行部10においては、エンジン14が車体フレーム11の前部に設けられて、ボンネット15により被覆される。図示しないミッションケースが車体フレーム11の前部に支持されて、エンジン14の下方に配置される。
【0022】
フロントアクスルケース6が車体フレーム11の前部に支持され、前車輪12が当該フロントアクスルケース6の左右両側に取り付けられる。リアアクスルケース7が車体フレーム11の後部に支持され、後車輪13が当該リアアクスルケース7の左右両側に取り付けられる。
【0023】
そして、エンジン14の動力が前記ミッションケースを介して左右の前車輪12と左右の後車輪13とにそれぞれ伝達されて、これらの前車輪12および後車輪13が回転駆動するように、動力伝達機構が構成される。これにより、走行部10が前進または後進走行可能とされる。
【0024】
また、走行部10においては、車体フレーム11の前後中途部に運転操作部21が設けられる。運転操作部21の前部には、操向操作用の環状の操向ハンドル18や、変速操作用の変速ペダルなどが配置される。運転操作部21の後部には、運転席19が操向ハンドル18の後方に位置するように配置される。
【0025】
そのうえ、運転操作部21の操向ハンドル18や運転席19の周りに、ダッシュボード17や、一部を乗降用ステップとする車体カバー16や、その他のレバーやスイッチ等の操作具が配置される。これらの操向ハンドル18、変速ペダル、およびその他の操作具によって、走行部10および植付部40に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。
【0026】
走行部10においては、また、予備苗載台24が車体フレーム10の前部の左右両側から立設された各取付フレーム23に取り付けられて、ボンネット15の左右両側方に配置される。そして、予備苗が予備苗載台24に載置されて、植付部40への苗補給が可能とされる。
【0027】
走行部10においては、また、施肥装置22が車体フレーム11の後部に支柱フレーム20などを介して支持されて、運転操作部21の運転席19の後方に配置される。施肥装置22は、エンジン14からの動力により駆動されて、圃場に施肥を行うことができるように構成される。
【0028】
植付部40においては、植付ミッションケースが植付フレーム49の下部中央付近に支持され、伝動軸ケースが当該植付ミッションケースから左右両側方に延設される。四つの植付伝動ケース46がそれぞれ前記伝動軸ケースから後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。
【0029】
ロータリケース44が各植付伝動ケース46の後端部左右両側に回動自在に支持される。ロータリケース44は植付条数と同数、即ち本実施形態では八つ備えられる。そして、二つの植付爪45が、ロータリケース44の回転支点を挟むように、このロータリケース44の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0030】
苗載台41が植付伝動ケース46の上方に前高後低の傾斜状態で配置されて、植付フレーム49の後部に上下のガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台41は植付条数と同数、即ち本実施形態では八つ備えられ、横送り機構により一斉に左右往復横送り可能とされる。
【0031】
複数の苗載台41は、それぞれの下端側が一つのロータリケース44と対向するように、左右方向に並べられる。そして、苗マットが各苗載台41に載置されて、ロータリケース44の回転時に植付爪45により苗が当該各苗載台41上の苗マットから取出可能とされる。
【0032】
苗縦送りベルト47が各苗載台41に設けられる。苗縦送りベルト47は、苗載台41が左右往復横送りのストローク端に到達するごとに、縦送り機構により苗載台41上の苗マットを下方へ向かって縦送りするように駆動可能とされる。
【0033】
そして、動力伝達機構が、エンジン14の動力が植付ミッションケースなどを介して各ロータリケース44に伝達されて、このロータリケース44が回転駆動するように構成される。これにより、ロータリケース44の回転駆動にともなって、二つの植付爪45が交互に苗を苗載台41上の苗マットから取り出して圃場に植付可能とされる。
【0034】
同時に、エンジン14の動力が植付ミッションケースなどを介して横送り機構および縦送り機構に伝達されて、苗載台41が横送り機構により左右往復横送りされ、苗載台41上の苗マットが載台の左右往復横送りに応じて縦送り機構により苗縦送りベルト47を介して下方へ向けて縦送りされるように、動力伝達機構が構成される。これにより、苗載台41上の苗マットが植付爪45に対して適切な位置に移動される。
【0035】
ここで、前記動力伝達機構は、植付クラッチを含み、植付クラッチの断接に応じて、エンジンの動力が苗縦送りベルト47とロータリケース44とに伝達される、または伝達されないように構成される。この植付クラッチの断接は、後述する条止め操作スイッチ62、63、64、65の操作により切り替えられる。
【0036】
植付部40においては、また、中央2条分ずつの圃場面を整地する左右のセンターフロート42と、左右2条分ずつの圃場面を整地する左右のサイドフロート43とが、それぞれの前部側が後部側を回動支点として上下動自在となるように植付フレーム49側に支持されて、植付伝動ケース46の下方に配置される。
【0037】
植付部40においては、また、線引きマーカ48が植付フレーム49の下部の左右両側に回動可能に支持される。左右の各線引きマーカ48は、その基端側を回動支点として、上方へ向かって回動されることにより収納され、この収納状態から下方へ向かって回動されることにより先端側を左または右側方へ突出させて、圃場に線引きを行うことができるように構成される。
【0038】
また、前述の昇降機構30が走行部10と植付部40との間に設けられる。具体的には、トップリンク31とロワリンク32とが走行部10と植付部40との間に架設され、昇降用シリンダがロワリンク32と走行部10との間に連結される。そして、この昇降用シリンダの伸縮動作によって、植付部40が走行部10に対して上下方向に回動可能、即ち昇降可能とされる。
【0039】
次に、ダッシュボード17およびその周囲の構成について、図3、図4、図5を用いて説明する。
【0040】
なお、以下の説明では、ダッシュボード17の上面が形成する面をダッシュボード面17aとし、操向ハンドル18の上面が形成する面をハンドル面18aとし、植付操作パネル51の上面が形成する面を植付操作パネル面51aとし、表示パネル50の上面が形成する面を表示パネル面50aとする。
【0041】
図1、図3に示すように、コラム8がボンネット15の後部付近に立設されて、ダッシュボード17が当該コラム8の上部に張設されている。そして、環状の操向ハンドル18がダッシュボード17の上方に配置されて、ダッシュボード面17aから上方に向かって突出されたハンドル軸9の突出端部に連結されている。
【0042】
ダッシュボード面17aは、側面視で前高後低となるように後下がりに傾斜した状態に形成されて、運転席19に向かって下り傾斜する傾斜面とされる。このダッシュボード面17aの略左右中央であって前後中央よりもやや後側に、ハンドル軸9が軸心方向を当該ダッシュボード面17aと直交させるように配置されている。また、ダッシュボード面17aには、植付操作パネル51と表示パネル50とが配設されている。
【0043】
操向ハンドル18は、そのハンドル面18aが後下がりに傾斜するように配置されている。操向ハンドル18の中心部にハンドル軸9の突出端部が連結されて、このハンドル軸9がハンドル面18aかつダッシュボード面17aと直交するように配置されている。
【0044】
ここで、ハンドル面18aの水平面に対する角度を傾斜角θ1とし、ダッシュボード面17aの水平面に対する角度を傾斜角θ2とした場合、傾斜角θ1と傾斜角θ2は略同じ傾斜角(θ1=θ2)となる。すなわち、ハンドル面18aとダッシュボード面17aとは略平行とされている。
【0045】
図3、図4、図5に示すように、ダッシュボード17において、ハンドル軸9の前方であって、ダッシュボード17の左右方向略中央部に、表示パネル50が配置されている。表示パネル50は、長手方向を左右に向けた略長方形状の画面で構成されており、植付部40における作業状況を表示可能に構成される。
【0046】
また、ダッシュボード17において、ハンドル軸9の後方には、略長方形状の植付操作パネル51が設けられている。植付操作パネル51には、植付作業時に使用する植付用操作手段が設けられている。好ましくは、植付用操作手段には、植付作業時に使用頻度が高い操作手段が設けられる。
【0047】
本実施形態においては、植付操作パネル51に、植付用操作手段として、条止め操作ユニット60、感度ボリューム55、ブザー停止スイッチ56が配置されている。また、植付操作パネル51には、エンジンキー差込口57が配置されている。なお、植付操作パネル51に配置される植付用操作手段は、これらに限定されるものではない。
【0048】
図3に示すように、植付操作パネル51の植付操作パネル面51aは、側面視で前高後低となるように後下がりに傾斜した状態に形成されて、運転席19に向かって下り傾斜する傾斜面とされる。この植付操作パネル面51aは、ダッシュボード面17a(ハンドル面18a)よりも大きく運転席19に向かって下り傾斜する傾斜面とされている。
すなわち、植付操作パネル面51aの水平面に対する角度を傾斜角θ3とした場合、傾斜角θ3はダッシュボード面17a(ハンドル面18a)の水平面に対する角度である傾斜角θ2(θ1)よりも大きく(θ3>θ2(θ1))なっている。
【0049】
同様に、表示パネル50の表示パネル面50aは、側面視で前高後低となるように後下がりに傾斜した状態に形成されて、運転席19に向かって下り傾斜する傾斜面とされる。この表示パネル面50aは、ダッシュボード面17a(ハンドル面18a)よりも大きく運転席19に向かって下り傾斜する傾斜面とされている。
すなわち、表示パネル面50aの水平面に対する角度を傾斜角θ4とした場合、傾斜角θ4はダッシュボード面17a(ハンドル面18a)の水平面に対する角度である傾斜角θ2(θ1)よりも大きく(θ4>θ2(θ1))なっている。
【0050】
表示パネル50の表示パネル面50aと植付操作パネル51の植付操作パネル面51aとは、ダッシュボード面17aにおいて、ハンドル軸9を挟んで前後に配置されている。本実施形態においては、図3(a)に示すように、表示パネル50の表示パネル面50aは、植付操作パネル51の植付操作パネル面51aと平行な傾斜面とされている。
すなわち、表示パネル面50aの水平面に対する角度を傾斜角θ4とした場合、傾斜角θ4は、植付操作パネル面51aの水平面に対する角度である傾斜角θ3と同じ(θ4=θ3)になっている。
【0051】
なお、図3(b)に示すように、表示パネル50の表示パネル面50aは、前記植付操作パネル51の植付操作パネル面51aよりも大きく運転席19に向かって下り傾斜する傾斜面としてもよい。
すなわち、表示パネル面50aの水平面に対する角度を傾斜角θ4とした場合、傾斜角θ4は、植付操作パネル面51aの水平面に対する角度である傾斜角θ3よりも大きく(θ4>θ3)してもよい。
【0052】
言い換えれば、植付操作パネル51の植付操作パネル面51aが、表示パネル50の表示パネル面50aと同一の勾配で、または、この表示パネル面50aよりも緩やかに運転席19に向かって下り傾斜する一方、ダッシュボード面17aよりも大きく運転席19に向かって下り傾斜することとなっている。
このように、植付操作パネル面51aと表示パネル面50aとが同一の勾配で傾斜する場合を除いて、ダッシュボード面17aと表示パネル面50aと植付操作パネル面51aとはそれぞれ異なる勾配で傾斜することとなっている。
【0053】
そして、運転席19に着座した作業者から見て、表示パネル面50aが環状の走行ハンドル18の内周側に位置し、植付操作パネル面51aが走行ハンドル18の後部付近に位置するように配置されている。
【0054】
図4、図5に示すように、条止め操作手段である条止め操作ユニット60は、自動マーカスイッチ61、条止めスイッチ62、63、64、65を有する。自動マーカスイッチ61、条止めスイッチ62、63、64、65は、それぞれ隣り合うスイッチと左右方向に所定間隔を開けて、左方から順に配置されている。
【0055】
自動マーカスイッチ61は、植付作業時に適切な隣接条間を保ち、直進の目標となるように圃場上面に線を引く線引きマーカ48の出し入れ(突出または収納)を、田植機1の旋回操作に伴い、左右交互に自動的に切り替えるように設定するスイッチである。
【0056】
条止めスイッチ62、63、64、65は、上述の植付クラッチを操作するスイッチである。条止めスイッチ62、63、64、65を一度操作することによって、植付クラッチが作動して断となり、操作されたスイッチに対応した条の苗縦送りベルト47とロータリケース44とに動力が伝達されなくなって、苗縦送りベルト47とロータリケース44が停止する。この状態で、条止めスイッチ62、63、64、65を再度操作することによって、植付クラッチが作動して接となり、操作されたスイッチに対応した条の苗縦送りベルト47とロータリケース44とに動力が伝達されて、苗縦送りベルト47とロータリケース44が駆動する。
【0057】
本実施形態においては、苗縦送りベルト47とロータリケース44とが次のように各スイッチの操作に応じて駆動または停止する。すなわち、条止めスイッチ62の操作によって、左側2条分の苗縦送りベルト47とロータリケース44が駆動または停止する。条止めスイッチ63の操作によって、中央左側2条分の苗縦送りベルト47とロータリケース44が駆動または停止する。条止めスイッチ64の操作によって、中央右側2条分の苗縦送りベルト47とロータリケース44が駆動または停止する。条止めスイッチ65の操作によって、右側2条分の苗縦送りベルト47とロータリケース44が駆動または停止する。
【0058】
また、条止め操作ユニット60は、植付操作パネル51の植付操作パネル面51aに対して着脱可能に構成されている。こうして、植付操作パネル51の植付操作パネル面51aには、条止め操作ユニット60の代わりに、例えば、図6(a)に示すように、植付条数が10条に変更された場合には、一つの自動マーカスイッチ161と五つの条止めスイッチ162、163、164、165、166とを有する条止め操作ユニット160が配置可能とされる。また、図6(b)に示すように、条止め操作ユニット自体が不要な場合には、蓋260が配置可能とされる。
【0059】
感度ボリューム55は、圃場の硬軟に応じて感度を調節するものであり、フロートセンサからの信号に対する昇降アクチュエータの昇降駆動を、硬い場合には鈍感とし、柔らかい場合には敏感となるように調節するものである。
【0060】
ブザー停止スイッチ56は、植付クラッチ警報、苗つぎ警報、肥料補給警報、肥料詰り警報等のために、走行部10または植付部40に設けられた警報ブザーが鳴ったとき、作業者100が認識すれば手動で警報ブザーの鳴動を停止させるためのスイッチである。
【0061】
エンジンキー差込口57は、電源をONとし、エンジン14を始動させるためにキーを差し込む穴である。作業者がキーを差し込み、電源をON位置から始動位置まで回すと、セルモータが回転し、エンジン14が始動する。
【0062】
このように、条止め操作ユニット60、感度ボリューム55、ブザー停止スイッチ56からなる植付用操作手段が植付操作パネル面51aに配置される一方、この植付用操作手段以外の操作手段がダッシュボード面17aに配置されている。
【0063】
操向ハンドル18及び植付操作パネル51の左方には、主変速レバー52が配置されている。主変速レバー52は、田植機1の走行モードを「移動走行」、「植付」、「後進」、「苗つぎ」、「中立」の各走行モードに切り替える操作手段である。
【0064】
また、操向ハンドル18のハンドル軸9には、速度固定レバー53が設けられている。速度固定レバー53は、変速ペダルの操作により走行部10が所望の走行速度に達したときに操作されて、走行部10がその走行速度を維持しながら走行できるようにするための操作手段である。
【0065】
また、操向ハンドル18の右方には、油圧植付レバー54が設けられている。油圧植付レバー54は、植付部の昇降、植付の入切、植付時の変速の操作を行う操作手段である。
【0066】
なお、ダッシュボード面17aに配置されるものは以上の操作手段に限定されず、操作手段の配置も図4、図5に示す配置に限定されない。他にダッシュボード面17aに配置される操作手段としては、例えば、速度選択スイッチ71、コンビネーションスイッチ72、油圧ストップスイッチ73、植付部傾斜設定器74、圃場条件スイッチ75、シーソスイッチ76がある。
【0067】
速度選択スイッチ71は、田植機1の速度を「低速」、「中速」、「標準」の各速度モードに切り替える操作手段である。速度選択スイッチ71は、表示パネル50と植付操作パネル51との間かつハンドル軸9の左側方で、表示パネル50寄りに配置されている。
【0068】
コンビネーションスイッチ72は、ホーンボタン、フラッシャスイッチ、ライトスイッチを有する操作手段である。コンビネーションスイッチ72は、表示パネル50と植付操作パネル51との間かつハンドル軸9の左側方で、植付操作パネル51寄りに配置されている。
【0069】
コンビネーションスイッチ72において、中央部のホーンボタンを押すと警報(ホーン)が鳴る。ホーンボタンの下方に位置する略直方体形状のフラッシャスイッチを左右に回転させると、回転させた側のフラッシャランプ(方向指示器)が点滅する。このフラッシャランプの点滅により、田植機1の旋回方向を知らせることが可能となる。ホーンボタンの左方に位置する略直方体形状のライトスイッチを前方に回転させると、前照灯が点灯する。
【0070】
油圧ストップスイッチ73は、植付部40の上昇・下降用の油圧をストップし、植付部40を固定するのに使用する操作手段である。油圧ストップスイッチ73は、表示パネル50と植付操作パネル51との間かつハンドル軸9の右側方で、植付操作パネル51寄りに配置されている。
【0071】
植付部傾斜設定器74は、油圧の制御により植付部40を左右水平に保つための操作手段である。植付部傾斜設定器74は、表示パネル50と植付操作パネル51との間かつハンドル軸9の右側方で、表示パネル50寄りに配置されている。
【0072】
圃場条件スイッチ75は、「深水」、「標準」、「枕地」の各圃場の状態に応じて植付深さを設定する操作手段である。圃場条件スイッチ75は、表示パネル50の右側方かつ油圧植付レバー54の前方に配置されている。
【0073】
シーソスイッチ76は、モータの制御により植付部40を前後水平に保つための操作手段である。シーソスイッチ76は、表示パネル50の右側方かつ油圧植付レバー54の前方で圃場条件スイッチ75と並べて配置されている。
【0074】
このような構成により、植付操作パネル面51aに配置されている植付用操作手段、即ち条止め操作ユニット60や感度ボリューム55などが、ダッシュボード面17aに配置されている他の操作手段、即ち主変速レバー52や油圧植付レバー54と比べて、異なる角度でダッシュボード面17a側から突出した状態に配置されることになる。
その結果、植付操作パネル面51aに配置されている植付用操作手段が、他の操作手段と明確に区別されることになり、運転席19に着座した作業者がダッシュボード17のダッシュボード面17aを見たとき、操作系ごとに必要な操作手段を容易に判別可能となっている。
【0075】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る田植機1は、運転席19と、該運転席19の前方に配置されて操向ハンドル18を設けるダッシュボード17とを走行部10に備え、該走行部10に植付部40を昇降可能に連結した田植機1において、前記操向ハンドル18を前記ダッシュボード17の上面、即ちダッシュボード面17aから上方へ突出するハンドル軸9により支持するとともに、植付作業時に使用する植付用操作手段、即ち条止め操作ユニット60や感度ボリューム55などを配置する植付操作パネル51を前記ダッシュボード17のダッシュボード面17aに設けて、該植付操作パネル51の植付操作パネル面51aを前記ハンドル軸9の軸心方向と直交する面、即ち操向ハンドル面18aよりも大きく前記運転席19に向かって下り傾斜する傾斜面としたものである。
【0076】
このように構成することにより、植付操作パネル面51aがダッシュボード面17aより所定角度運転席19側に起立するように傾斜して配置されることとなるため、運転席19に着座した作業者100がダッシュボード面17aを見た時、太陽の光等が植付操作パネル面51aに反射して作業者100の目に入るようなこともなくなって、植付操作パネル面51aが見やすくなり、植付用操作手段も容易に認識することが可能となる。したがって、植付用操作手段を容易に視認して操作することが可能となる。
また、植付操作パネル51を他の操作手段と容易に区別することが可能になるとともに、植付用操作手段の操作方向が運転席19に着座した作業者100にとって操作しやすい方向になって、作業者100が運転席19に着座した状態で無理に手や指を曲げることなく容易に操作することが可能となる。したがって、植付用操作手段の操作性が向上する。
【0077】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る田植機1は、前記植付操作パネル51を前記操向ハンドル18のハンドル軸9よりも前記運転席19側に配置したものである。すなわち、植付操作パネル51は、運転席19に着座した作業者100にとってハンドル軸9よりも手前に配置されている。
【0078】
このように構成することにより、運転席19に着座した作業者100が操向ハンドル18及びハンドル軸9に遮られることなく植付用操作手段を見ることが可能となる。したがって、植付用操作手段の視認性が更に向上する。
また、運転席19に着座した作業者100が操向ハンドル18を操作しながらでも、姿勢をほとんど変えずに植付用操作手段を操作することが可能となる。したがって、植付用操作手段の操作性が更に向上する。
【0079】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る田植機1は、前記植付部40における作業状況を表示する表示パネル50を前記ダッシュボード17のダッシュボード面17aに設けて、この表示パネル50の表示パネル面50aを前記運転席19に向かって下り傾斜する傾斜面とし、前記植付操作パネル51の植付操作パネル面51aを、前記表示パネル50の表示パネル面50aと同一の勾配で、または該パネル面50aよりも小さな勾配で傾斜させたものである。
【0080】
このように構成することにより、運転席19に着座した作業者100が、表示パネル面50aを見て植付部40の作業状況を把握しながら、植付操作パネル面51aに位置する植付用操作手段の操作を行う際、表示パネル面50aと植付用操作手段とが同時に見やすくなる。したがって、植付用操作手段の操作を適確かつ容易に行うことができる。
【0081】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る田植機1は、前記植付操作パネルの植付操作パネル面51aに配置される植付用操作手段は、条止め操作手段、即ち条止め操作ユニット60(条止めスイッチ62、63、64、65)とするものである。
【0082】
このように構成することにより、条止め操作ユニット60(条止めスイッチ62、63、64、65)を植付部40や運転席19側方に設ける構成に比べて、条止め操作ユニット60(条止めスイッチ62、63、64、65)を容易に認識できて、操作しやすくなる。
【0083】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る田植機1は、前記条止め操作ユニット60は、前記植付操作パネル51に対して着脱可能に構成するものである。
【0084】
このように構成することにより、条止め操作ユニット60を植付操作パネル51から外して、この条止め操作ユニット60の代わりに、条止め操作ユニット160などの異なる仕様の条止め操作手段や蓋260などの別の部材を植付操作パネル51に配置することが可能となる。したがって、植付操作パネル51部分の仕様変更を容易に行うことができ、その仕様変更にかかるコストを削減することもできる。
【符号の説明】
【0085】
1 田植機
9 ハンドル軸
10 走行部
17 ダッシュボード
17a ダッシュボード面(ダッシュボード17の上面)
18 操向ハンドル
18a 操向ハンドル面(ハンドル軸9の軸心方向と直交する面)
19 運転席
40 植付部
50 表示パネル
50a 表示パネル面(表示パネル50のパネル面)
51 植付操作パネル
51a 植付操作パネル面(植付操作パネル51のパネル面)
60 条止め操作ユニット
62、63、64、65 条止め操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席と、該運転席の前方に配置されて操向ハンドルを設けるダッシュボードとを走行部に備え、該走行部に植付部を昇降可能に連結した田植機において、
前記操向ハンドルを前記ダッシュボードの上面から上方へ突出するハンドル軸により支持するとともに、植付作業時に使用する植付用操作手段を配置する植付操作パネルを前記ダッシュボードの上面に設けて、該植付操作パネルのパネル面を前記ハンドル軸の軸心方向と直交する面よりも大きく前記運転席に向かって下り傾斜する傾斜面としたことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記植付操作パネルを前記操向ハンドルのハンドル軸よりも前記運転席側に配置したことを特徴とする、請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記植付部における作業状況を表示する表示パネルを前記ダッシュボードの上面に設けて、この表示パネルのパネル面を前記運転席に向かって下り傾斜する傾斜面とし、前記植付操作パネルのパネル面を、前記表示パネルのパネル面と同一の勾配で、または該パネル面よりも小さな勾配で傾斜させたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記植付操作パネルのパネル面に配置される植付用操作手段は、条止め操作手段とすることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の田植機。
【請求項5】
前記条止め操作手段は、前記植付操作パネルに対して着脱可能に構成することを特徴とする、請求項4に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−55800(P2011−55800A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211705(P2009−211705)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】