田植機
【課題】植付け作業時に設定面積あたりのマット状苗の消費率を確実に把握でき、苗残量の低下も確実に検知する田植機を構成する。
【解決手段】苗載台に載置されたマット状苗を検知するように、上部位置に上部存否センサS1を備え、下部位置に下部存否センサS2を備えた。上部存否センサS1で検知されるマット状苗の枚数をカウントし、走行距離計測手段51で計測した走行距離に基づいて苗消費率演算手段55が苗消費率を演算してモニタ31に表示する。下部存否センサS2でマット状苗Wを検知しない場合には報知処理手段61が警報ランプ43を点灯させる。
【解決手段】苗載台に載置されたマット状苗を検知するように、上部位置に上部存否センサS1を備え、下部位置に下部存否センサS2を備えた。上部存否センサS1で検知されるマット状苗の枚数をカウントし、走行距離計測手段51で計測した走行距離に基づいて苗消費率演算手段55が苗消費率を演算してモニタ31に表示する。下部存否センサS2でマット状苗Wを検知しない場合には報知処理手段61が警報ランプ43を点灯させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の走行に同期して苗載台に載置されたマット状苗の下端から苗を切り出して圃場面に植付ける植付機構を備え、植付け作業時において設定面積あたりのマット状苗の消費率を演算する苗消費率演算手段を備えている田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された田植機として特許文献1には、苗載台に載置されているマット状苗の残量を検出する苗残量検出器を備え、この苗残量検出器の検出に基づいて既に苗が植付られた面積、植付に使用された苗の量等に基づいて演算して演算結果を、操縦席近傍の表示装置に表示する構成が示されている。苗残量検出器は、マット状苗に接触する歯車と、この歯車の回転量を計測するロータリエンコーダとを備えており、歯車の回転量からマット状苗の消費率を検出する機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003‐304718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される苗残量検出器は、歯車の回転量からマット状苗の消費量を検知するため、消費量の高精度での検知が可能となる。しかしながら、マット状苗の移動に伴って歯車が回転する構成は、機構が複雑化しやすいだけではなく、回転系に泥土が付着した場合や、マット状苗が軟弱で歯車との接触が不充分である場合には、検知精度が低下する点において改善の余地がある。
【0005】
また、田植機では苗残量が低下した場合には、作業者に苗残量低下を認識させるための報知を必要とするものであり、苗残量の低下を確実に検知して作業者に認識させるための構成を必要とする。
【0006】
本発明の目的は、植付け作業時において設定面積あたりのマット状苗の消費率を確実に把握でき、苗残量の低下も確実に検知する田植機を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、走行機体の走行に同期して苗載台に載置されたマット状苗の下端から苗を切り出して圃場面に植付ける植付機構を備え、植付け作業時において設定面積あたりのマット状苗の消費率を演算する苗消費率演算手段を備えている田植機であって、前記苗載台の上部位置の前記マット状苗の存否を判別する上部存否センサと、前記苗載台の下部位置の前記マット状苗の存否を判別する下部存否センサと、前記走行機体の走行距離を計測する走行距離計測手段とを備え、前記苗消費率演算手段が、前記走行距離計測手段の計測結果と、前記上部存否センサの検知に基づくカウントにより得られたマット状苗の枚数とに基づいて演算を行い、演算結果を報知手段に出力する出力処理を行うように構成され、前記下部存否センサでマット状苗を検出しない場合に報知を行う報知処理手段を備えている点にある。
【0008】
この構成によると、植付け作業時には上部存否センサが苗を検出する回数をカウントすることにより得られたマット状苗の消費枚数と、走行距離計測手段が取得した走行距離との情報に基づいて苗消費率演算手段がマット状苗の消費率を演算して報知手段に出力する。また、下部存否センサでマット状苗を検出しない場合には報知処理手段が警報を出力する。つまり、上部存否センサではマット状苗の存否のみを判定するため、例えば、マット状苗の下方への移動に伴い回転する構造を有するセンサ類と比較して誤検出が少なく、苗残量が低下した場合の警報を発生させるために下部存否センサを備えているので、苗残量が大きく低下した状態を確実に検出することも可能となる。
従って、植付け作業時で設定面積あたりのマット状苗の消費率を確実に把握でき、苗残量の低下も確実に検知する田植機が構成された。
【0009】
本発明は、前記上部存否センサが、前記苗載台に1枚のマット状苗を載置した場合に、このマット状苗を検出しない位置に配置され、前記下部存否センサが、前記苗載台に1枚のマット状苗を載置した場合に、このマット状苗を検出する位置に配置されても良い。
【0010】
これによると、上部存否センサと下部存否センサとの相対的な配置の設定により、植付け作業でマット状苗が消費され上部存否センサがマット状苗を検出する状態から検出しない状態へ切り換わった後に、マット状苗が補給された場合の検出が確実となり、マット状苗の計数を正確に行わせる。
【0011】
本発明は、前記植付機構の植付作動時におけるマット状苗の消費率を、アクチュエータの作動により調節する調節機構を備え、植付け作業時における設定面積に対するマット状苗の消費率を設定する目標設定手段を備え、前記苗消費率演算手段の演算結果に基づいて、前記目標設定手段で設定された消費率で前記マット状苗を消費するように前記調節機構を制御する調節機構制御手段を備えても良い。
【0012】
これによると、苗消費率演算手段の演算結果に基づいて得られた消費率と、目標設定手段で設定された消費率との偏差に基づいて、アクチュエータの作動により目標設定手段で設定された消費率で苗を消費するように調節機構制御手段が調節機構を制御する。これにより、作業者が消費率を調整しなくとも目標とする消費率での苗植付が実現する。
【0013】
本発明は、前記走行距離計測手段が、前記走行機体に備えた走行車輪の回転量から走行距離を計測するように処理形態が設定され、前記走行車輪のスリップ率を検出するスリップ率検出手段を備え、このスリップ率検出手段で検出されたスリップ率に基づいて前記走行距離計測手段で計測した走行距離を補正する補正手段を備えても良い。
【0014】
これによると、走行距離計測手段が、走行車輪の回転量から走行機体の走行距離を計測し、スリップ率検出手段が検出したスリップ率から補正手段が、計測された走行距離を補正することにより正確な走行距離を把握することが可能となり、結果として、設定面積あたりのマット状苗の消費率を正確な値にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】田植機の全体の側面図である。
【図2】田植機の全体の平面図である。
【図3】苗植付装置の側面図である。
【図4】上部存否センサと下部存否センサとの構成を示す断面図である。
【図5】上部存否センサと下部存否センサとの配置を示す後面図である。
【図6】マーカの構成を示す正面図である。
【図7】制御装置の構成を示すブロック回路図である。
【図8】苗消費率演算における信号の流れを示すブロック回路図である。
【図9】報知処理における信号の流れを示すブロック回路図である。
【図10】肥料消費率演算における信号の流れを示すブロック回路図である。
【図11】別実施形態(a)の構成と信号の流れを示すブロック回路図である。
【図12】別実施形態(b)の構成と信号の流れを示すブロック回路図である。
【図13】別実施形態(c)の構成と信号の流れを示すブロック回路図である。
【図14】別実施形態(d)の構成と信号の流れを示すブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、走行車輪として左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2とを有した走行機体Aの中央に運転座席3を備え、この走行機体Aの後端にリンク機構Lを介して昇降自在に苗植付装置Bを連結し、植付け作業時に圃場に肥料を供給する施肥装置Cを備えて乗用型の田植機が構成されている。
【0017】
この田植機は、走行機体Aの前部のボンネット4の内部にエンジンEと、燃料タンクTとが配置され、このエンジンEの下方にエンジンEからの動力が伝えられるミッションケース5を備え、このミッションケース5から左右の前車輪1と左右の後車輪2とに伝える走行駆動系を備えると共に、走行機体Aの走行速度と同期した駆動力を外部出力軸6により苗植付装置Bに伝える作業伝動系を備えている。
【0018】
運転座席3の前方位置には、左右の前車輪1を操向操作(操舵)するステアリングホイール7が配置され、このステアリングホイール7の左側部に主変速レバー8が配置され、運転座席3の近傍には、苗植付装置Bの昇降とミッションケース5に内蔵した植付クラッチDの断続を行う植付クラッチレバー9が配置されている。
【0019】
前記リンク機構Lは、複数のリンク部材11を有すると共に、油圧式の昇降シリンダ12を有しており、昇降シリンダ12の伸縮作動により苗植付装置Bを昇降させる。
【0020】
苗植付装置Bは、複数の整地フロート14と、マット状苗Wを載置する苗載台15と、苗載台15に載置されたマット状苗Wから苗を切り出して圃場面に植え付けるように複数のロータリ式の植付機構Bpとを備えている。
【0021】
植付機構Bpは、図3に示すように、外部出力軸6からの駆動力が伝えられる伝動ケース16の後端において、横向きの軸芯を中心に回転する回転ケース17と、この回転ケース17の端部に備えた2つの植付アーム18とを有し、植付アーム18にはマット状苗Wから苗を切り出す植付爪18Aを備えている。この植付機構Bpは、植付条数と等しい数の回転ケース17を備えており、回転ケース17の回転に伴い植付アーム18の植付爪18Aの先端が作動軌跡Mに沿って作動し、この作動軌跡Mに沿って作動する際に、苗載台15に載置されたマット状苗Wの下端から植付爪18Aが苗を切り出し、圃場面に植え付ける作動が行われる。
【0022】
この苗植付装置Bでは、伝動ケース16の下側で後方に延出した支持アーム19の端部に対して横向き姿勢の軸芯Xを中心にして整地フロート14の後端側が揺動自在に支持されている。複数の整地フロート14の1つが感知フロートとして構成され、回転型のポテンショメータで構成される感知センサRの感知軸に連結する感知リンク20を、整地フロート14の前部位置に連結する縦向き姿勢の縦リンク21の上端に枢支連結し、感知リンク20に対して下方に向けて付勢力を作用させる感知バネ22を備えている。
【0023】
この構成から、昇降シリンダ12に作動油を給排する制御バルブ(図示せず)を、感知センサRからの信号に基づいて操作するように制御系を構成すると共に、感知センサRの感知リンク20の揺動姿勢を目標とする姿勢に維持する制御を行うことで、苗植付装置Bの対圃場面高さを目標とする高さに維持する昇降制御が実現する。
【0024】
また、感知バネ22の付勢力が整地フロート14(感知フロート)の前部を下方に押し下げる付勢力を作用させている。このような構成から、整地フロート14(感知フロート)の目標姿勢を水平姿勢から少し上向きに設定することで接地面積が小さくなると同時に感知バネ22から整地フロート14に作用する付勢力が上昇するため昇降制御感度が低下する(鈍感となる)。これとは逆に、整地フロート14(感知フロート)の目標姿勢を水平姿勢から少し下向きに設定することで接地面積が大きくなると同時に感知バネ22から整地フロート14に作用する付勢力が上昇するため昇降制御感度が高まる(敏感となる)。
【0025】
この苗植付装置Bで植付け作業を行う際には、苗植付装置Bを下降させて整地フロート14の底面を圃場面に接触させる状態で、植付クラッチDを入り状態に設定する。これにより、走行機体Aの走行に伴い複数の整地フロート14が苗植付け箇所の圃場面を整地する一方で、外部出力軸6から伝えられる駆動力により苗載台15を左右方向に一定ストロークで往復作動させる。この往復作動時に苗載台15に載置されているマット状苗Wの下端から植付アーム18の植付爪18Aが苗を所定量ずつ切り出して圃場面に植え付ける植え付け作動が行われる。
【0026】
また、図1及び図6に示すように、苗植付装置Bの両側部位置には、マーカーアーム45の先端に回転型のマーカー46を備えた指標形成機構を備えている。この指標形成機構は、マーカー46を圃場面から離間させるようにマーカーアーム45を起立させる格納姿勢と、マーカー46を圃場面に接触させて圃場面に指標を形成する作用姿勢とに切換自在に構成されている。このマーカー46を作用姿勢に設定することで走行機体Aの走行に伴い、圃場面に追従して回転し、この回転により外周の突出部が圃場面に連続した指標を形成する。この後には、走行機体Aが畦際に達し、走行方向を反転して走行する場合に、圃場面に形成された指標に沿って走行機体Aを走行させることにより、既植苗と平行な領域に対する苗の植付が実現する。
【0027】
施肥装置Cは、運転座席3の後方に配備された肥料ホッパー24と、肥料ホッパー24に貯留された粒状肥料を所定量ずつ繰り出す繰出機構25と、繰出された肥料を風力搬送するための電動ブロワ26と、風力搬送される肥料を送る施肥ホース27と、この施肥ホース27で肥料が供給される作溝器28とを備えている。繰出機構25と施肥ホース27と作溝器と28は、苗の植付条数と等しい数を備えており、作溝器28は整地フロート14に備えられている。
【0028】
繰出機構25は、苗植付装置Bの作動と同期(走行速度と同期)して駆動され、苗植付装置Bによる苗の植付タイミングと同期したタイミングで肥料を繰出し、施肥ホース27を介して作溝器28に送り、この作溝器28により各条の植付け苗の横側近くに形成した施肥溝に肥料を送り込んで圃場面下に肥料を供給できるように構成されている。
【0029】
〔存否センサ〕
苗植付装置Bは、植付爪18Aでマット状苗Wの下端から苗を切り出して植付を行うため、マット状苗Wは下端から消費され、上下方向の寸法が短くなる。このマット状苗Wの存否を判別するため苗載台15の上部位置に上部存否センサS1を備え、下部位置に下部存否センサS2を備えている。
【0030】
下部存否センサS2はマット状苗Wの残量が低下した際に対応する警報ランプ43を発光させる制御を行うために用いられるため、苗載台15の下部でマット状苗Wが載置される複数条の全てに備えられる。また、上部存否センサS1は苗載台15に載置されたマット状苗Wの枚数を計測するために使用されるため、苗載台15の上部位置で設定条にだけ備えられている(苗載置面の全てに備えても良い)。
【0031】
上部存否センサS1と下部存否センサS2とは、図4及び図5に示すように光源部38と受光部39とを備え、光源部38からの光線を苗載台15のマット状苗Wが遮断したことを、受光部39で検出できる非接触型に構成されている。尚、本発明では、上部存否センサS1と下部存否センサS2としてマット状苗Wの重量により押圧部が変位し、この変位をリミットスイッチにより検出する接触式の構成のものを使用しても良い。
【0032】
〔苗消費量処理装置〕
この田植機では、運転座席3の前方位置のメータパネルPの上部位置に報知手段として液晶型のモニタ31が配置されている。また、作業時において設定面積に対するマット状苗Wの消費枚数を演算する苗消費量演算処理を行い、この処理結果等をモニタ31に表示する表示処理を行うと共に、設定面積に対するマット状苗Wの消費枚数を設定枚数に維持する取量調節制御を行い、施肥装置Cにおいて設定面積に対する肥料の消費量を目標量に維持する繰出量調節制御を行う制御装置30を走行機体Aに備えている。図7には制御装置30の入力系と出力系とを含む制御系の構成の概要を示しており、以下に制御系の構成と処理形態とを説明する。
【0033】
制御装置30は、走行車輪としての前車輪1と後車輪2との少なくとも一方の回転量を計測する車軸回転センサ32と、マーカー46の回転量を計測するマーカー回転センサ33と、植付クラッチDの状態を検知する植付クラッチセンサ35と、上部存否センサS1と、下部存否センサS2と、肥料ホッパー24の重量から肥料の残量を検知する肥料残量センサ36とからの信号が入力する。また、モニタ31の表示面に形成されたタッチパネル31Tからの情報も入力する。
【0034】
制御装置30は、前述するモニタ31に信号を出力すると共に、苗植付装置Bにおいて植付爪18Aがマット状苗Wから一度に切り出す苗の量を調節する取量調節機構41と、施肥装置Cにおいて繰出機構25が単位時間内の肥料の繰出量を調節する繰出量調節機構42と、メータパネルPの警報ランプ43とに信号を出力する。また、警報ランプ43は苗載台15においてマット状苗Wが載置される複数条の苗載面に対応する数だけメータパネルPに備えられている。
【0035】
取量調節機構41は、図3に示すように、電動モータ等のアクチュエータの駆動力により苗載台15を上下方向に移動させる機械的な作動系(作動系は図示せず)を有しており、この作動により、植付爪18Aの作動軌跡Mが苗載台15の下部を通過する面積を変更するため、植付アーム18の1度の作動時における苗の消費量(取量)の変更を実現している。尚、取量調節機構41に代えて、走行方向での苗の付け間隔を変更する株間調節機構を苗植付装置Bに備え、この株間調節機構による株間の調節により、単位走行距離あたりの苗の消費量を変更する構成を採用しても良い。
【0036】
繰出機構25は、外周に軸芯方向に沿う姿勢となる複数の溝を形成した繰出ロール(図示せず)を肥料ホッパー24の下側で植付条数と等しい数だけ回転自在に備え、走行機体Aが所定距離走行する毎に1往復作動する駆動系からの駆動力を夫々の繰出ロールに伝えることにより軸芯を中心にして設定方向に回転させ、肥料を繰り出す構成を有している。この構成から、繰出ロールの回転時に肥料ホッパー24からの肥料は繰出ロールの溝内に入り込み、繰出ロールの回転に伴い、自重により下方に脱落する形態での繰出が実現する。
【0037】
繰出量調節機構42は、繰出機構25の一度の作動時における肥料の繰出量を変更するため、前述した駆動系の1往復作動時における繰出ロールの回転量(回転角度)を変更するため機械的な連係関係を変更するように電動モータ等のアクチュエータと、機械的な操作系を備えている。この繰出量調節機構42により走行機体Aが単位距離走行した際における施肥装置Cの施肥量の変更を実現している。
【0038】
制御装置30は、マイクロプロセッサやDSPのように取得した情報を所定のルールに従って処理を行い、処理結果を出力する機能を有する処理系を有すると共に、情報の処理を実現する走行距離計測手段51と、スリップ率検出手段52と、走行距離補正手段53と、苗枚数カウント手段54と、苗消費率演算手段55と、苗消費率目標設定手段56と、苗取量制御手段57(調節機構制御手段の一例)と、肥料消費率演算手段58と、肥料消費率目標設定手段59と、繰出量制御手段60と、報知処理手段61とを備えている。
【0039】
この制御装置を構成する各手段は、ソフトウエアで構成されるものであるが、これらの手段をロジック等のハードウエアで構成することや、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせによって構成しても良い。
【0040】
走行距離計測手段51は、車軸回転センサ32からの回転量を積算することで走行機体Aの走行距離を計測する。スリップ率検出手段52は、走行機体Aの走行時に走行距離計測手段51での計測値と、この走行時におけるマーカー回転センサ33の回転量で計測される計測値との差からスリップ率を取得する処理を行う。走行距離補正手段53は走行距離計測手段51で計測した走行距離の値を、スリップ率で補正することで実走行距離(以下、走行距離情報と称する)を算出する。
【0041】
苗枚数カウント手段54は、上部存否センサS1でマット状苗Wを検出する毎にマット状苗Wの枚数を積算する処理を行う。苗消費率演算手段55は、植付け作業時に走行距離情報と、苗枚数カウント手段54で取得されている枚数とに基づいて単位面積あたりのマット状苗Wの消費枚数を示す苗消費率を演算する。苗消費率目標設定手段56は、タッチパネル31Tに入力画面を表示し、この入力画面を作業者が操作することにより単位面積あたりのマット状苗Wの消費枚数を消費目標値として取得し、これを苗消費目標として設定する。苗取量制御手段57は取量調節機構41を制御して1度の植付作動における苗の取量を調節する。
【0042】
肥料消費率演算手段58は、肥料残量センサ36で計測される肥料の重量と、施肥が行われる際の走行機体Aの走行距離に基づいて単位面積あたりの肥料の消費率を演算する。肥料消費率目標設定手段59は、タッチパネル31Tに入力画面を表示し、この入力画面を作業者が操作することにより単位面積あたりの肥料の消費率を肥料消費率目標情報として取得し、これを肥料消費率目標として設定する。繰出量制御手段60は、繰出量調節機構42を制御して駆動系の1往復作動に対する肥料の繰出量を調節する。
【0043】
〔苗消費量の制御形態〕
図8に示すように、走行距離計測手段51は、植付クラッチセンサ35からの信号により植付クラッチDが入り状態にある場合における車軸回転センサ32の信号を取得して計測値を出力する。スリップ率検出手段52はマーカー回転センサ33からの計測値と、走行距離計測手段51からの計測値との差に基づいてスリップ率を演算して出力する。尚、スリップ率検出手段52は、スリップ率を常に演算する必要はなく、例えば、マーカー46が圃場面に接触する状態で設定時間だけスリップ率を演算するように処理形態を設定しても良い。尚、走行距離計測手段51として、例えば、GPSを用いて走行機体Aの走行距離を計測しても良い。
【0044】
走行距離補正手段53は、走行距離計測手段51からの計測値をスリップ率で補正することで走行距離情報(実走行距離情報)を演算して出力する。苗枚数カウント手段54は上部存否センサS1でマット状苗Wを検出する毎にマット状苗Wの数を積算する処理を行い、枚数情報を出力する。苗消費率演算手段55は、走行距離情報と枚数情報とに基づいて苗消費率を演算し、苗消費率情報として出力する。苗消費率情報は、単位面積あたりのマット状苗Wの消費枚数を示す数値としてモニタ31に表示されると共に、苗取量制御手段57に出力される。
【0045】
苗消費率目標設定手段56は、モニタ31に設定画面情報を表示し、この表示に基づいて作業者が入力した値を苗消費目標情報として出力する。苗取量制御手段57は苗消費率情報と苗消費率目標情報との偏差に基づいて、苗消費率情報を苗消費率目標情報に合致させるように取量調節機構41を制御して取量を調節する。
【0046】
この制御では、走行機体Aが予め設定された距離を走行する毎(設定インターバルでも良い)に走行距離(実質的な苗植付面積・設定面積)に対する苗消費率情報が苗消費率演算手段55での演算により求められる。この苗消費率情報と、苗消費率目標設定手段56で設定された苗消費率目標情報とはモニタ31に数値として常時表示される。苗消費率目標情報と苗消費率情報とは苗取量制御手段57で比較され、偏差が設定値を超える場合には、取量調節機構41を制御して植付アーム18が1度に切出す苗の量が調節される。その結果として、マット状苗Wの消費率が調整される。また、偏差が設定値を超えない場合には取量調節機構41は制御されず設定状態での植付け作業が継続的に行われる。特に、偏差が設定値を越えない場合にはマット状苗Wの消費率が適正であるので、適正であることを認識させる情報をメッセージやアイコン等でモニタ31に表示することや、適正であることを認識させる音声を出力するように制御形態を設定しても良い。
【0047】
〔苗残量低下時の処理形態〕
図9に示すように報知処理手段61は、複数の下部存否センサS2からの信号を取得して、その情報をモニタ31に表示する。この表示では苗載台15の各条にマット状苗Wが存在することを下部存否センサS2で検知する場合には警報ランプ43を消灯状態に維持すると共に、モニタ31にマット状苗Wが存在することを示す情報を表示する。
【0048】
そして、下部存否センサS2で検知できない場合にはマット状苗Wを検出できない条に対応する警報ランプ43を点灯し(点滅でも良い)、マット状苗Wを補給する必要があることを示す情報を表示する。また、下部存否センサS2でマット状苗Wを検出できない場合には警報ランプ43の点灯と共にブザー等の警報音を発生させるように構成しても良い。モニタ31に表示される情報は苗の存否を表すアイコンやイメージであるが、苗が消費された条を特定するメッセージと、苗補給を必要とするメッセージとを含むものであっても良い。
【0049】
〔肥料消費量の制御形態〕
図10に示すように、肥料消費率演算手段58は、走行距離情報と、肥料残量センサ36とからの情報に基づいて肥料消費率情報を演算して出力する。肥料消費率目標設定手段59は、モニタ31に設定画面情報を表示し、この表示に基づいて作業者が入力した値を肥料消費率目標情報として出力する。繰出量制御手段60は、肥料消費率情報と肥料消費率目標情報との偏差に基づいて、肥料消費率情報を肥料消費率目標に合致されるように繰出量調節機構42を制御して繰出量を調節する。
【0050】
この制御では、走行機体Aが予め設定された距離を走行する毎(設定インターバルでも良い)に走行距離(実質的な苗植付面積・設定面積)に対する肥料消費率情報が肥料消費率演算手段58で演算される。この肥料消費率情報と、肥料消費率目標設定手段59で設定された肥料消費率目標情報とはモニタ31に数値として常時表示される。肥料消費率目標情報と肥料消費率情報とは繰出量制御手段60で比較され、偏差が設定値を超える場合には、繰出量調節機構42を制御して、駆動系の1往復作動に対する繰出機構25での肥料の繰出量が調節される。その結果として、肥料の消費率が調整される。また、偏差が設定値を超えない場合には繰出量調節機構42は制御されずに設定状態での施肥が継続的に行われる。
【0051】
〔実施形態の作用・効果〕
このように本発明の田植機では、苗の植付けを行う際に、作業者がモニタ31のタッチパネル31Tに指を接触させる等簡単な操作により、圃場の単位面積あたりのマット状苗Wの消費枚数(苗消費率目標情報)と、単位面積あたりの肥料の消費量(重量・肥料消費率目標情報)との設定が可能である。この設定の後にはモニタ31に対してマット状苗Wの消費率(苗消費率情報)と目標とする消費率(消費率目標情報)とが数値として表示されるため、マット状苗Wの消費状況を視覚により確認できる。
【0052】
また、植付け作業では、自動的に取量調節機構41と繰出量調節機構42とが制御されることにより圃場の単位面積あたりのマット状苗Wの消費枚数が目標とした値に維持され、これと同様に、圃場の単位面積あたりの肥料の消費量が目標とした値に維持される。これによりマット状苗Wに過不足を招くことなく作業を行え、これと同様に肥料に過不足を招くことのない作業を行える。
【0053】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0054】
(a)図11に示すように、燃料タンクTの燃料の残量を計測する燃料残量センサ71を備え、この燃料残量センサ71の計測値と、走行距離情報とに基づいて作業可能な面積を演算する燃料消費率演算手段72を備え、この演算に基づく燃料の残量情報と作業可能面積情報とをモニタ31に数値やインジケータとして表示するように構成する。
【0055】
この構成により、植付け作業を継続して行う場合に燃料タンクTに対して燃料の補給が必要であるか否かの判断を容易に行える。
【0056】
(b)図12に示すように、走行速度情報を取得する昇降制御感度調節手段74を備え、この昇降制御感度調節手段74から目標制御感度情報を取得して苗植付装置Bの昇降制御感度を調節する感度調節機構75を備える。この感度調節機構75は、感知バネ22(図3を参照)の付勢力が作用する整地フロート14(感知フロート)の目標姿勢を変更することで制御感度の変更を実現する。
【0057】
昇降制御感度調節手段74は、走行機体Aの走行速度が高速であるほど、感知バネ22の付勢力を高めて昇降制御感度を低減する制御を実行する。このような制御を行うため、高速での走行時に圃場面の土塊に整地フロート14(感知フロート)が乗り上げた場合にも整地フロート14(感知フロート)の揺動を抑制して苗植付装置Bの急激な上昇を抑制する。尚、感度調節機構75として、感知バネ22の付勢力を調節するように電動モータ等のアクチュエータと機械的な作動系とを備え構成しても良い。
【0058】
(c)図13に示すように、植付クラッチレバー9の操作位置を示す植付クラッチレバー操作情報と、走行速度情報とを取得する植付クラッチ制御手段77を備え、この植付クラッチ制御手段77からクラッチ操作情報を取得して電動モータ等のアクチュエータの作動により植付クラッチDの断続を行うクラッチ操作機構78を備える。植付クラッチ制御手段77は走行機体Aが設定速度未満で走行する場合に植付クラッチDの入り操作を許し、設定速度以上で走行する場合に植付クラッチDの入り操作を阻止するクラッチ操作情報を出力し、クラッチ操作機構78は現在の植付クラッチDの位置情報を植付クラッチ制御手段77にフィードバックする。
【0059】
この構成から、走行機体Aが設定速度を超えて走行している状態で、植付クラッチDを入り操作する位置に植付クラッチレバー9が操作された場合でも、走行速度が設定値を越える場合には植付クラッチDの入り操作が阻止され、走行速度が設定値未満まで低下した場合に自動的に植付クラッチDが入り操作される。
【0060】
(d)図14に示すように、植付クラッチレバー9の操作により苗植付装置Bを下降させる下降制御情報を取得する下降制御手段80を備え、下降制御情報を取得する旋回判定手段81を備え、この旋回判定手段81からの制御信号により苗植付装置Bの下降を行わせるように制御バルブを操作する下降制御機構82を備え、旋回判定手段81からの制御信号により作動するブザーやランプ等の警報装置84を備える。
【0061】
下降制御機構82は、左車輪の回転速度情報と右車輪の回転速度情報との速度差から走行機体Aの旋回の可否の判定を行うと共に、下降制御手段80から下降制御情報を取得している状況において、旋回中であることを判定した場合には、警報装置84を制御して警報を行わせ、下降制御機構82による苗植付装置Bの下降を阻止する作動を実現する。つまり、走行機体Aの旋回が継続している場合には左右の車輪には速度差を生じていることから、この速度差から旋回状態の判定を行っている。
【0062】
これにより、例えば、植付作業時に走行機体Aが畦際に達し、苗植付装置Bを上昇させて走行機体Aの旋回を行い、この旋回が終了する以前に苗植付装置Bを下降させるために植付クラッチレバー9を操作した場合でも、旋回判定手段81において旋回が終了していないと判定した場合には、警報装置84で警報が発生すると共に苗植付装置Bは下降せず、旋回が終了した後に苗植付装置Bの下降が実現する。
【0063】
(e)上部存否センサS1を苗載台15においてマット状苗Wが載置される全ての複数の苗載面の全てに備える。このように構成した場合には、複数の上部存否センサS1で検知されるマット状苗Wの枚数に多少の誤差を生ずるものであるが、例えば、平均値に基づいて処理を行うことで誤差を小さくすることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、マット状苗から植付アームで苗を切り出して圃場に植え付ける作動を行う田植機全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1,2 走行車輪(前車輪,後車輪)
15 苗載台
31 報知手段(モニタ)
41 調節機構(取量調節機構)
51 走行距離計測手段
52 スリップ率検出手段
53 補正手段(走行距離補正手段)
55 苗消費率演算手段
56 目標設定手段(苗消費率目標設定手段)
57 調節機構制御手段(苗取量制御手段)
61 報知処理手段
A 走行機体
Bp 植付機構
S1 上部存否センサ
S2 下部存否センサ
W マット状苗
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の走行に同期して苗載台に載置されたマット状苗の下端から苗を切り出して圃場面に植付ける植付機構を備え、植付け作業時において設定面積あたりのマット状苗の消費率を演算する苗消費率演算手段を備えている田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された田植機として特許文献1には、苗載台に載置されているマット状苗の残量を検出する苗残量検出器を備え、この苗残量検出器の検出に基づいて既に苗が植付られた面積、植付に使用された苗の量等に基づいて演算して演算結果を、操縦席近傍の表示装置に表示する構成が示されている。苗残量検出器は、マット状苗に接触する歯車と、この歯車の回転量を計測するロータリエンコーダとを備えており、歯車の回転量からマット状苗の消費率を検出する機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003‐304718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される苗残量検出器は、歯車の回転量からマット状苗の消費量を検知するため、消費量の高精度での検知が可能となる。しかしながら、マット状苗の移動に伴って歯車が回転する構成は、機構が複雑化しやすいだけではなく、回転系に泥土が付着した場合や、マット状苗が軟弱で歯車との接触が不充分である場合には、検知精度が低下する点において改善の余地がある。
【0005】
また、田植機では苗残量が低下した場合には、作業者に苗残量低下を認識させるための報知を必要とするものであり、苗残量の低下を確実に検知して作業者に認識させるための構成を必要とする。
【0006】
本発明の目的は、植付け作業時において設定面積あたりのマット状苗の消費率を確実に把握でき、苗残量の低下も確実に検知する田植機を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、走行機体の走行に同期して苗載台に載置されたマット状苗の下端から苗を切り出して圃場面に植付ける植付機構を備え、植付け作業時において設定面積あたりのマット状苗の消費率を演算する苗消費率演算手段を備えている田植機であって、前記苗載台の上部位置の前記マット状苗の存否を判別する上部存否センサと、前記苗載台の下部位置の前記マット状苗の存否を判別する下部存否センサと、前記走行機体の走行距離を計測する走行距離計測手段とを備え、前記苗消費率演算手段が、前記走行距離計測手段の計測結果と、前記上部存否センサの検知に基づくカウントにより得られたマット状苗の枚数とに基づいて演算を行い、演算結果を報知手段に出力する出力処理を行うように構成され、前記下部存否センサでマット状苗を検出しない場合に報知を行う報知処理手段を備えている点にある。
【0008】
この構成によると、植付け作業時には上部存否センサが苗を検出する回数をカウントすることにより得られたマット状苗の消費枚数と、走行距離計測手段が取得した走行距離との情報に基づいて苗消費率演算手段がマット状苗の消費率を演算して報知手段に出力する。また、下部存否センサでマット状苗を検出しない場合には報知処理手段が警報を出力する。つまり、上部存否センサではマット状苗の存否のみを判定するため、例えば、マット状苗の下方への移動に伴い回転する構造を有するセンサ類と比較して誤検出が少なく、苗残量が低下した場合の警報を発生させるために下部存否センサを備えているので、苗残量が大きく低下した状態を確実に検出することも可能となる。
従って、植付け作業時で設定面積あたりのマット状苗の消費率を確実に把握でき、苗残量の低下も確実に検知する田植機が構成された。
【0009】
本発明は、前記上部存否センサが、前記苗載台に1枚のマット状苗を載置した場合に、このマット状苗を検出しない位置に配置され、前記下部存否センサが、前記苗載台に1枚のマット状苗を載置した場合に、このマット状苗を検出する位置に配置されても良い。
【0010】
これによると、上部存否センサと下部存否センサとの相対的な配置の設定により、植付け作業でマット状苗が消費され上部存否センサがマット状苗を検出する状態から検出しない状態へ切り換わった後に、マット状苗が補給された場合の検出が確実となり、マット状苗の計数を正確に行わせる。
【0011】
本発明は、前記植付機構の植付作動時におけるマット状苗の消費率を、アクチュエータの作動により調節する調節機構を備え、植付け作業時における設定面積に対するマット状苗の消費率を設定する目標設定手段を備え、前記苗消費率演算手段の演算結果に基づいて、前記目標設定手段で設定された消費率で前記マット状苗を消費するように前記調節機構を制御する調節機構制御手段を備えても良い。
【0012】
これによると、苗消費率演算手段の演算結果に基づいて得られた消費率と、目標設定手段で設定された消費率との偏差に基づいて、アクチュエータの作動により目標設定手段で設定された消費率で苗を消費するように調節機構制御手段が調節機構を制御する。これにより、作業者が消費率を調整しなくとも目標とする消費率での苗植付が実現する。
【0013】
本発明は、前記走行距離計測手段が、前記走行機体に備えた走行車輪の回転量から走行距離を計測するように処理形態が設定され、前記走行車輪のスリップ率を検出するスリップ率検出手段を備え、このスリップ率検出手段で検出されたスリップ率に基づいて前記走行距離計測手段で計測した走行距離を補正する補正手段を備えても良い。
【0014】
これによると、走行距離計測手段が、走行車輪の回転量から走行機体の走行距離を計測し、スリップ率検出手段が検出したスリップ率から補正手段が、計測された走行距離を補正することにより正確な走行距離を把握することが可能となり、結果として、設定面積あたりのマット状苗の消費率を正確な値にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】田植機の全体の側面図である。
【図2】田植機の全体の平面図である。
【図3】苗植付装置の側面図である。
【図4】上部存否センサと下部存否センサとの構成を示す断面図である。
【図5】上部存否センサと下部存否センサとの配置を示す後面図である。
【図6】マーカの構成を示す正面図である。
【図7】制御装置の構成を示すブロック回路図である。
【図8】苗消費率演算における信号の流れを示すブロック回路図である。
【図9】報知処理における信号の流れを示すブロック回路図である。
【図10】肥料消費率演算における信号の流れを示すブロック回路図である。
【図11】別実施形態(a)の構成と信号の流れを示すブロック回路図である。
【図12】別実施形態(b)の構成と信号の流れを示すブロック回路図である。
【図13】別実施形態(c)の構成と信号の流れを示すブロック回路図である。
【図14】別実施形態(d)の構成と信号の流れを示すブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、走行車輪として左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2とを有した走行機体Aの中央に運転座席3を備え、この走行機体Aの後端にリンク機構Lを介して昇降自在に苗植付装置Bを連結し、植付け作業時に圃場に肥料を供給する施肥装置Cを備えて乗用型の田植機が構成されている。
【0017】
この田植機は、走行機体Aの前部のボンネット4の内部にエンジンEと、燃料タンクTとが配置され、このエンジンEの下方にエンジンEからの動力が伝えられるミッションケース5を備え、このミッションケース5から左右の前車輪1と左右の後車輪2とに伝える走行駆動系を備えると共に、走行機体Aの走行速度と同期した駆動力を外部出力軸6により苗植付装置Bに伝える作業伝動系を備えている。
【0018】
運転座席3の前方位置には、左右の前車輪1を操向操作(操舵)するステアリングホイール7が配置され、このステアリングホイール7の左側部に主変速レバー8が配置され、運転座席3の近傍には、苗植付装置Bの昇降とミッションケース5に内蔵した植付クラッチDの断続を行う植付クラッチレバー9が配置されている。
【0019】
前記リンク機構Lは、複数のリンク部材11を有すると共に、油圧式の昇降シリンダ12を有しており、昇降シリンダ12の伸縮作動により苗植付装置Bを昇降させる。
【0020】
苗植付装置Bは、複数の整地フロート14と、マット状苗Wを載置する苗載台15と、苗載台15に載置されたマット状苗Wから苗を切り出して圃場面に植え付けるように複数のロータリ式の植付機構Bpとを備えている。
【0021】
植付機構Bpは、図3に示すように、外部出力軸6からの駆動力が伝えられる伝動ケース16の後端において、横向きの軸芯を中心に回転する回転ケース17と、この回転ケース17の端部に備えた2つの植付アーム18とを有し、植付アーム18にはマット状苗Wから苗を切り出す植付爪18Aを備えている。この植付機構Bpは、植付条数と等しい数の回転ケース17を備えており、回転ケース17の回転に伴い植付アーム18の植付爪18Aの先端が作動軌跡Mに沿って作動し、この作動軌跡Mに沿って作動する際に、苗載台15に載置されたマット状苗Wの下端から植付爪18Aが苗を切り出し、圃場面に植え付ける作動が行われる。
【0022】
この苗植付装置Bでは、伝動ケース16の下側で後方に延出した支持アーム19の端部に対して横向き姿勢の軸芯Xを中心にして整地フロート14の後端側が揺動自在に支持されている。複数の整地フロート14の1つが感知フロートとして構成され、回転型のポテンショメータで構成される感知センサRの感知軸に連結する感知リンク20を、整地フロート14の前部位置に連結する縦向き姿勢の縦リンク21の上端に枢支連結し、感知リンク20に対して下方に向けて付勢力を作用させる感知バネ22を備えている。
【0023】
この構成から、昇降シリンダ12に作動油を給排する制御バルブ(図示せず)を、感知センサRからの信号に基づいて操作するように制御系を構成すると共に、感知センサRの感知リンク20の揺動姿勢を目標とする姿勢に維持する制御を行うことで、苗植付装置Bの対圃場面高さを目標とする高さに維持する昇降制御が実現する。
【0024】
また、感知バネ22の付勢力が整地フロート14(感知フロート)の前部を下方に押し下げる付勢力を作用させている。このような構成から、整地フロート14(感知フロート)の目標姿勢を水平姿勢から少し上向きに設定することで接地面積が小さくなると同時に感知バネ22から整地フロート14に作用する付勢力が上昇するため昇降制御感度が低下する(鈍感となる)。これとは逆に、整地フロート14(感知フロート)の目標姿勢を水平姿勢から少し下向きに設定することで接地面積が大きくなると同時に感知バネ22から整地フロート14に作用する付勢力が上昇するため昇降制御感度が高まる(敏感となる)。
【0025】
この苗植付装置Bで植付け作業を行う際には、苗植付装置Bを下降させて整地フロート14の底面を圃場面に接触させる状態で、植付クラッチDを入り状態に設定する。これにより、走行機体Aの走行に伴い複数の整地フロート14が苗植付け箇所の圃場面を整地する一方で、外部出力軸6から伝えられる駆動力により苗載台15を左右方向に一定ストロークで往復作動させる。この往復作動時に苗載台15に載置されているマット状苗Wの下端から植付アーム18の植付爪18Aが苗を所定量ずつ切り出して圃場面に植え付ける植え付け作動が行われる。
【0026】
また、図1及び図6に示すように、苗植付装置Bの両側部位置には、マーカーアーム45の先端に回転型のマーカー46を備えた指標形成機構を備えている。この指標形成機構は、マーカー46を圃場面から離間させるようにマーカーアーム45を起立させる格納姿勢と、マーカー46を圃場面に接触させて圃場面に指標を形成する作用姿勢とに切換自在に構成されている。このマーカー46を作用姿勢に設定することで走行機体Aの走行に伴い、圃場面に追従して回転し、この回転により外周の突出部が圃場面に連続した指標を形成する。この後には、走行機体Aが畦際に達し、走行方向を反転して走行する場合に、圃場面に形成された指標に沿って走行機体Aを走行させることにより、既植苗と平行な領域に対する苗の植付が実現する。
【0027】
施肥装置Cは、運転座席3の後方に配備された肥料ホッパー24と、肥料ホッパー24に貯留された粒状肥料を所定量ずつ繰り出す繰出機構25と、繰出された肥料を風力搬送するための電動ブロワ26と、風力搬送される肥料を送る施肥ホース27と、この施肥ホース27で肥料が供給される作溝器28とを備えている。繰出機構25と施肥ホース27と作溝器と28は、苗の植付条数と等しい数を備えており、作溝器28は整地フロート14に備えられている。
【0028】
繰出機構25は、苗植付装置Bの作動と同期(走行速度と同期)して駆動され、苗植付装置Bによる苗の植付タイミングと同期したタイミングで肥料を繰出し、施肥ホース27を介して作溝器28に送り、この作溝器28により各条の植付け苗の横側近くに形成した施肥溝に肥料を送り込んで圃場面下に肥料を供給できるように構成されている。
【0029】
〔存否センサ〕
苗植付装置Bは、植付爪18Aでマット状苗Wの下端から苗を切り出して植付を行うため、マット状苗Wは下端から消費され、上下方向の寸法が短くなる。このマット状苗Wの存否を判別するため苗載台15の上部位置に上部存否センサS1を備え、下部位置に下部存否センサS2を備えている。
【0030】
下部存否センサS2はマット状苗Wの残量が低下した際に対応する警報ランプ43を発光させる制御を行うために用いられるため、苗載台15の下部でマット状苗Wが載置される複数条の全てに備えられる。また、上部存否センサS1は苗載台15に載置されたマット状苗Wの枚数を計測するために使用されるため、苗載台15の上部位置で設定条にだけ備えられている(苗載置面の全てに備えても良い)。
【0031】
上部存否センサS1と下部存否センサS2とは、図4及び図5に示すように光源部38と受光部39とを備え、光源部38からの光線を苗載台15のマット状苗Wが遮断したことを、受光部39で検出できる非接触型に構成されている。尚、本発明では、上部存否センサS1と下部存否センサS2としてマット状苗Wの重量により押圧部が変位し、この変位をリミットスイッチにより検出する接触式の構成のものを使用しても良い。
【0032】
〔苗消費量処理装置〕
この田植機では、運転座席3の前方位置のメータパネルPの上部位置に報知手段として液晶型のモニタ31が配置されている。また、作業時において設定面積に対するマット状苗Wの消費枚数を演算する苗消費量演算処理を行い、この処理結果等をモニタ31に表示する表示処理を行うと共に、設定面積に対するマット状苗Wの消費枚数を設定枚数に維持する取量調節制御を行い、施肥装置Cにおいて設定面積に対する肥料の消費量を目標量に維持する繰出量調節制御を行う制御装置30を走行機体Aに備えている。図7には制御装置30の入力系と出力系とを含む制御系の構成の概要を示しており、以下に制御系の構成と処理形態とを説明する。
【0033】
制御装置30は、走行車輪としての前車輪1と後車輪2との少なくとも一方の回転量を計測する車軸回転センサ32と、マーカー46の回転量を計測するマーカー回転センサ33と、植付クラッチDの状態を検知する植付クラッチセンサ35と、上部存否センサS1と、下部存否センサS2と、肥料ホッパー24の重量から肥料の残量を検知する肥料残量センサ36とからの信号が入力する。また、モニタ31の表示面に形成されたタッチパネル31Tからの情報も入力する。
【0034】
制御装置30は、前述するモニタ31に信号を出力すると共に、苗植付装置Bにおいて植付爪18Aがマット状苗Wから一度に切り出す苗の量を調節する取量調節機構41と、施肥装置Cにおいて繰出機構25が単位時間内の肥料の繰出量を調節する繰出量調節機構42と、メータパネルPの警報ランプ43とに信号を出力する。また、警報ランプ43は苗載台15においてマット状苗Wが載置される複数条の苗載面に対応する数だけメータパネルPに備えられている。
【0035】
取量調節機構41は、図3に示すように、電動モータ等のアクチュエータの駆動力により苗載台15を上下方向に移動させる機械的な作動系(作動系は図示せず)を有しており、この作動により、植付爪18Aの作動軌跡Mが苗載台15の下部を通過する面積を変更するため、植付アーム18の1度の作動時における苗の消費量(取量)の変更を実現している。尚、取量調節機構41に代えて、走行方向での苗の付け間隔を変更する株間調節機構を苗植付装置Bに備え、この株間調節機構による株間の調節により、単位走行距離あたりの苗の消費量を変更する構成を採用しても良い。
【0036】
繰出機構25は、外周に軸芯方向に沿う姿勢となる複数の溝を形成した繰出ロール(図示せず)を肥料ホッパー24の下側で植付条数と等しい数だけ回転自在に備え、走行機体Aが所定距離走行する毎に1往復作動する駆動系からの駆動力を夫々の繰出ロールに伝えることにより軸芯を中心にして設定方向に回転させ、肥料を繰り出す構成を有している。この構成から、繰出ロールの回転時に肥料ホッパー24からの肥料は繰出ロールの溝内に入り込み、繰出ロールの回転に伴い、自重により下方に脱落する形態での繰出が実現する。
【0037】
繰出量調節機構42は、繰出機構25の一度の作動時における肥料の繰出量を変更するため、前述した駆動系の1往復作動時における繰出ロールの回転量(回転角度)を変更するため機械的な連係関係を変更するように電動モータ等のアクチュエータと、機械的な操作系を備えている。この繰出量調節機構42により走行機体Aが単位距離走行した際における施肥装置Cの施肥量の変更を実現している。
【0038】
制御装置30は、マイクロプロセッサやDSPのように取得した情報を所定のルールに従って処理を行い、処理結果を出力する機能を有する処理系を有すると共に、情報の処理を実現する走行距離計測手段51と、スリップ率検出手段52と、走行距離補正手段53と、苗枚数カウント手段54と、苗消費率演算手段55と、苗消費率目標設定手段56と、苗取量制御手段57(調節機構制御手段の一例)と、肥料消費率演算手段58と、肥料消費率目標設定手段59と、繰出量制御手段60と、報知処理手段61とを備えている。
【0039】
この制御装置を構成する各手段は、ソフトウエアで構成されるものであるが、これらの手段をロジック等のハードウエアで構成することや、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせによって構成しても良い。
【0040】
走行距離計測手段51は、車軸回転センサ32からの回転量を積算することで走行機体Aの走行距離を計測する。スリップ率検出手段52は、走行機体Aの走行時に走行距離計測手段51での計測値と、この走行時におけるマーカー回転センサ33の回転量で計測される計測値との差からスリップ率を取得する処理を行う。走行距離補正手段53は走行距離計測手段51で計測した走行距離の値を、スリップ率で補正することで実走行距離(以下、走行距離情報と称する)を算出する。
【0041】
苗枚数カウント手段54は、上部存否センサS1でマット状苗Wを検出する毎にマット状苗Wの枚数を積算する処理を行う。苗消費率演算手段55は、植付け作業時に走行距離情報と、苗枚数カウント手段54で取得されている枚数とに基づいて単位面積あたりのマット状苗Wの消費枚数を示す苗消費率を演算する。苗消費率目標設定手段56は、タッチパネル31Tに入力画面を表示し、この入力画面を作業者が操作することにより単位面積あたりのマット状苗Wの消費枚数を消費目標値として取得し、これを苗消費目標として設定する。苗取量制御手段57は取量調節機構41を制御して1度の植付作動における苗の取量を調節する。
【0042】
肥料消費率演算手段58は、肥料残量センサ36で計測される肥料の重量と、施肥が行われる際の走行機体Aの走行距離に基づいて単位面積あたりの肥料の消費率を演算する。肥料消費率目標設定手段59は、タッチパネル31Tに入力画面を表示し、この入力画面を作業者が操作することにより単位面積あたりの肥料の消費率を肥料消費率目標情報として取得し、これを肥料消費率目標として設定する。繰出量制御手段60は、繰出量調節機構42を制御して駆動系の1往復作動に対する肥料の繰出量を調節する。
【0043】
〔苗消費量の制御形態〕
図8に示すように、走行距離計測手段51は、植付クラッチセンサ35からの信号により植付クラッチDが入り状態にある場合における車軸回転センサ32の信号を取得して計測値を出力する。スリップ率検出手段52はマーカー回転センサ33からの計測値と、走行距離計測手段51からの計測値との差に基づいてスリップ率を演算して出力する。尚、スリップ率検出手段52は、スリップ率を常に演算する必要はなく、例えば、マーカー46が圃場面に接触する状態で設定時間だけスリップ率を演算するように処理形態を設定しても良い。尚、走行距離計測手段51として、例えば、GPSを用いて走行機体Aの走行距離を計測しても良い。
【0044】
走行距離補正手段53は、走行距離計測手段51からの計測値をスリップ率で補正することで走行距離情報(実走行距離情報)を演算して出力する。苗枚数カウント手段54は上部存否センサS1でマット状苗Wを検出する毎にマット状苗Wの数を積算する処理を行い、枚数情報を出力する。苗消費率演算手段55は、走行距離情報と枚数情報とに基づいて苗消費率を演算し、苗消費率情報として出力する。苗消費率情報は、単位面積あたりのマット状苗Wの消費枚数を示す数値としてモニタ31に表示されると共に、苗取量制御手段57に出力される。
【0045】
苗消費率目標設定手段56は、モニタ31に設定画面情報を表示し、この表示に基づいて作業者が入力した値を苗消費目標情報として出力する。苗取量制御手段57は苗消費率情報と苗消費率目標情報との偏差に基づいて、苗消費率情報を苗消費率目標情報に合致させるように取量調節機構41を制御して取量を調節する。
【0046】
この制御では、走行機体Aが予め設定された距離を走行する毎(設定インターバルでも良い)に走行距離(実質的な苗植付面積・設定面積)に対する苗消費率情報が苗消費率演算手段55での演算により求められる。この苗消費率情報と、苗消費率目標設定手段56で設定された苗消費率目標情報とはモニタ31に数値として常時表示される。苗消費率目標情報と苗消費率情報とは苗取量制御手段57で比較され、偏差が設定値を超える場合には、取量調節機構41を制御して植付アーム18が1度に切出す苗の量が調節される。その結果として、マット状苗Wの消費率が調整される。また、偏差が設定値を超えない場合には取量調節機構41は制御されず設定状態での植付け作業が継続的に行われる。特に、偏差が設定値を越えない場合にはマット状苗Wの消費率が適正であるので、適正であることを認識させる情報をメッセージやアイコン等でモニタ31に表示することや、適正であることを認識させる音声を出力するように制御形態を設定しても良い。
【0047】
〔苗残量低下時の処理形態〕
図9に示すように報知処理手段61は、複数の下部存否センサS2からの信号を取得して、その情報をモニタ31に表示する。この表示では苗載台15の各条にマット状苗Wが存在することを下部存否センサS2で検知する場合には警報ランプ43を消灯状態に維持すると共に、モニタ31にマット状苗Wが存在することを示す情報を表示する。
【0048】
そして、下部存否センサS2で検知できない場合にはマット状苗Wを検出できない条に対応する警報ランプ43を点灯し(点滅でも良い)、マット状苗Wを補給する必要があることを示す情報を表示する。また、下部存否センサS2でマット状苗Wを検出できない場合には警報ランプ43の点灯と共にブザー等の警報音を発生させるように構成しても良い。モニタ31に表示される情報は苗の存否を表すアイコンやイメージであるが、苗が消費された条を特定するメッセージと、苗補給を必要とするメッセージとを含むものであっても良い。
【0049】
〔肥料消費量の制御形態〕
図10に示すように、肥料消費率演算手段58は、走行距離情報と、肥料残量センサ36とからの情報に基づいて肥料消費率情報を演算して出力する。肥料消費率目標設定手段59は、モニタ31に設定画面情報を表示し、この表示に基づいて作業者が入力した値を肥料消費率目標情報として出力する。繰出量制御手段60は、肥料消費率情報と肥料消費率目標情報との偏差に基づいて、肥料消費率情報を肥料消費率目標に合致されるように繰出量調節機構42を制御して繰出量を調節する。
【0050】
この制御では、走行機体Aが予め設定された距離を走行する毎(設定インターバルでも良い)に走行距離(実質的な苗植付面積・設定面積)に対する肥料消費率情報が肥料消費率演算手段58で演算される。この肥料消費率情報と、肥料消費率目標設定手段59で設定された肥料消費率目標情報とはモニタ31に数値として常時表示される。肥料消費率目標情報と肥料消費率情報とは繰出量制御手段60で比較され、偏差が設定値を超える場合には、繰出量調節機構42を制御して、駆動系の1往復作動に対する繰出機構25での肥料の繰出量が調節される。その結果として、肥料の消費率が調整される。また、偏差が設定値を超えない場合には繰出量調節機構42は制御されずに設定状態での施肥が継続的に行われる。
【0051】
〔実施形態の作用・効果〕
このように本発明の田植機では、苗の植付けを行う際に、作業者がモニタ31のタッチパネル31Tに指を接触させる等簡単な操作により、圃場の単位面積あたりのマット状苗Wの消費枚数(苗消費率目標情報)と、単位面積あたりの肥料の消費量(重量・肥料消費率目標情報)との設定が可能である。この設定の後にはモニタ31に対してマット状苗Wの消費率(苗消費率情報)と目標とする消費率(消費率目標情報)とが数値として表示されるため、マット状苗Wの消費状況を視覚により確認できる。
【0052】
また、植付け作業では、自動的に取量調節機構41と繰出量調節機構42とが制御されることにより圃場の単位面積あたりのマット状苗Wの消費枚数が目標とした値に維持され、これと同様に、圃場の単位面積あたりの肥料の消費量が目標とした値に維持される。これによりマット状苗Wに過不足を招くことなく作業を行え、これと同様に肥料に過不足を招くことのない作業を行える。
【0053】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0054】
(a)図11に示すように、燃料タンクTの燃料の残量を計測する燃料残量センサ71を備え、この燃料残量センサ71の計測値と、走行距離情報とに基づいて作業可能な面積を演算する燃料消費率演算手段72を備え、この演算に基づく燃料の残量情報と作業可能面積情報とをモニタ31に数値やインジケータとして表示するように構成する。
【0055】
この構成により、植付け作業を継続して行う場合に燃料タンクTに対して燃料の補給が必要であるか否かの判断を容易に行える。
【0056】
(b)図12に示すように、走行速度情報を取得する昇降制御感度調節手段74を備え、この昇降制御感度調節手段74から目標制御感度情報を取得して苗植付装置Bの昇降制御感度を調節する感度調節機構75を備える。この感度調節機構75は、感知バネ22(図3を参照)の付勢力が作用する整地フロート14(感知フロート)の目標姿勢を変更することで制御感度の変更を実現する。
【0057】
昇降制御感度調節手段74は、走行機体Aの走行速度が高速であるほど、感知バネ22の付勢力を高めて昇降制御感度を低減する制御を実行する。このような制御を行うため、高速での走行時に圃場面の土塊に整地フロート14(感知フロート)が乗り上げた場合にも整地フロート14(感知フロート)の揺動を抑制して苗植付装置Bの急激な上昇を抑制する。尚、感度調節機構75として、感知バネ22の付勢力を調節するように電動モータ等のアクチュエータと機械的な作動系とを備え構成しても良い。
【0058】
(c)図13に示すように、植付クラッチレバー9の操作位置を示す植付クラッチレバー操作情報と、走行速度情報とを取得する植付クラッチ制御手段77を備え、この植付クラッチ制御手段77からクラッチ操作情報を取得して電動モータ等のアクチュエータの作動により植付クラッチDの断続を行うクラッチ操作機構78を備える。植付クラッチ制御手段77は走行機体Aが設定速度未満で走行する場合に植付クラッチDの入り操作を許し、設定速度以上で走行する場合に植付クラッチDの入り操作を阻止するクラッチ操作情報を出力し、クラッチ操作機構78は現在の植付クラッチDの位置情報を植付クラッチ制御手段77にフィードバックする。
【0059】
この構成から、走行機体Aが設定速度を超えて走行している状態で、植付クラッチDを入り操作する位置に植付クラッチレバー9が操作された場合でも、走行速度が設定値を越える場合には植付クラッチDの入り操作が阻止され、走行速度が設定値未満まで低下した場合に自動的に植付クラッチDが入り操作される。
【0060】
(d)図14に示すように、植付クラッチレバー9の操作により苗植付装置Bを下降させる下降制御情報を取得する下降制御手段80を備え、下降制御情報を取得する旋回判定手段81を備え、この旋回判定手段81からの制御信号により苗植付装置Bの下降を行わせるように制御バルブを操作する下降制御機構82を備え、旋回判定手段81からの制御信号により作動するブザーやランプ等の警報装置84を備える。
【0061】
下降制御機構82は、左車輪の回転速度情報と右車輪の回転速度情報との速度差から走行機体Aの旋回の可否の判定を行うと共に、下降制御手段80から下降制御情報を取得している状況において、旋回中であることを判定した場合には、警報装置84を制御して警報を行わせ、下降制御機構82による苗植付装置Bの下降を阻止する作動を実現する。つまり、走行機体Aの旋回が継続している場合には左右の車輪には速度差を生じていることから、この速度差から旋回状態の判定を行っている。
【0062】
これにより、例えば、植付作業時に走行機体Aが畦際に達し、苗植付装置Bを上昇させて走行機体Aの旋回を行い、この旋回が終了する以前に苗植付装置Bを下降させるために植付クラッチレバー9を操作した場合でも、旋回判定手段81において旋回が終了していないと判定した場合には、警報装置84で警報が発生すると共に苗植付装置Bは下降せず、旋回が終了した後に苗植付装置Bの下降が実現する。
【0063】
(e)上部存否センサS1を苗載台15においてマット状苗Wが載置される全ての複数の苗載面の全てに備える。このように構成した場合には、複数の上部存否センサS1で検知されるマット状苗Wの枚数に多少の誤差を生ずるものであるが、例えば、平均値に基づいて処理を行うことで誤差を小さくすることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、マット状苗から植付アームで苗を切り出して圃場に植え付ける作動を行う田植機全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1,2 走行車輪(前車輪,後車輪)
15 苗載台
31 報知手段(モニタ)
41 調節機構(取量調節機構)
51 走行距離計測手段
52 スリップ率検出手段
53 補正手段(走行距離補正手段)
55 苗消費率演算手段
56 目標設定手段(苗消費率目標設定手段)
57 調節機構制御手段(苗取量制御手段)
61 報知処理手段
A 走行機体
Bp 植付機構
S1 上部存否センサ
S2 下部存否センサ
W マット状苗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の走行に同期して苗載台に載置されたマット状苗の下端から苗を切り出して圃場面に植付ける植付機構を備え、植付け作業時において設定面積あたりのマット状苗の消費率を演算する苗消費率演算手段を備えている田植機であって、
前記苗載台の上部位置の前記マット状苗の存否を判別する上部存否センサと、前記苗載台の下部位置の前記マット状苗の存否を判別する下部存否センサと、前記走行機体の走行距離を計測する走行距離計測手段とを備え、
前記苗消費率演算手段が、前記走行距離計測手段の計測結果と、前記上部存否センサの検知に基づくカウントにより得られたマット状苗の枚数とに基づいて演算を行い、演算結果を報知手段に出力する出力処理を行うように構成され、
前記下部存否センサでマット状苗を検出しない場合に報知を行う報知処理手段を備えている田植機。
【請求項2】
前記上部存否センサが、前記苗載台に1枚のマット状苗を載置した場合に、このマット状苗を検出しない位置に配置され、前記下部存否センサが、前記苗載台に1枚のマット状苗を載置した場合に、このマット状苗を検出する位置に配置されている請求項1記載の田植機。
【請求項3】
前記植付機構の植付作動時におけるマット状苗の消費率を、アクチュエータの作動により調節する調節機構を備え、植付け作業時における設定面積に対するマット状苗の消費率を設定する目標設定手段を備え、前記苗消費率演算手段の演算結果に基づいて、前記目標設定手段で設定された消費率で前記マット状苗を消費するように前記調節機構を制御する調節機構制御手段を備えている請求項1又は2記載の田植機。
【請求項4】
前記走行距離計測手段が、前記走行機体に備えた走行車輪の回転量から走行距離を計測するように処理形態が設定され、前記走行車輪のスリップ率を検出するスリップ率検出手段を備え、このスリップ率検出手段で検出されたスリップ率に基づいて前記走行距離計測手段で計測した走行距離を補正する補正手段を備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載の田植機。
【請求項1】
走行機体の走行に同期して苗載台に載置されたマット状苗の下端から苗を切り出して圃場面に植付ける植付機構を備え、植付け作業時において設定面積あたりのマット状苗の消費率を演算する苗消費率演算手段を備えている田植機であって、
前記苗載台の上部位置の前記マット状苗の存否を判別する上部存否センサと、前記苗載台の下部位置の前記マット状苗の存否を判別する下部存否センサと、前記走行機体の走行距離を計測する走行距離計測手段とを備え、
前記苗消費率演算手段が、前記走行距離計測手段の計測結果と、前記上部存否センサの検知に基づくカウントにより得られたマット状苗の枚数とに基づいて演算を行い、演算結果を報知手段に出力する出力処理を行うように構成され、
前記下部存否センサでマット状苗を検出しない場合に報知を行う報知処理手段を備えている田植機。
【請求項2】
前記上部存否センサが、前記苗載台に1枚のマット状苗を載置した場合に、このマット状苗を検出しない位置に配置され、前記下部存否センサが、前記苗載台に1枚のマット状苗を載置した場合に、このマット状苗を検出する位置に配置されている請求項1記載の田植機。
【請求項3】
前記植付機構の植付作動時におけるマット状苗の消費率を、アクチュエータの作動により調節する調節機構を備え、植付け作業時における設定面積に対するマット状苗の消費率を設定する目標設定手段を備え、前記苗消費率演算手段の演算結果に基づいて、前記目標設定手段で設定された消費率で前記マット状苗を消費するように前記調節機構を制御する調節機構制御手段を備えている請求項1又は2記載の田植機。
【請求項4】
前記走行距離計測手段が、前記走行機体に備えた走行車輪の回転量から走行距離を計測するように処理形態が設定され、前記走行車輪のスリップ率を検出するスリップ率検出手段を備え、このスリップ率検出手段で検出されたスリップ率に基づいて前記走行距離計測手段で計測した走行距離を補正する補正手段を備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載の田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−5748(P2013−5748A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139872(P2011−139872)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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