説明

画像再現機能付き電子ボード、その再現画像生成方法及びそのプログラム

【課題】ボードに映し出された映像とそのボードに書き込まれた描画の両方をユーザが見たとおりに再現することが可能な画像再現機能付き電子ボード、その再現画像生成方法及びそのプログラムを提供すること。
【解決手段】映像信号入出力部24によって入力された映像信号とスキャナユニット22によって読み取られたボード20全体のスキャンデータとに基づいて、ボード20に映し出された映像とボード20に書き込まれた描画とがそれぞれのボード20における位置と大きさに見合った画像となるように、映像バッファ43bに記録された映像データとスキャナバッファ43aに記録されたスキャンデータとを合成して再現画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像再現機能付き電子ボード、その再現画像生成方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボードに投写する画像とボードの記入面に記入された文字等とを合成して記録紙に印刷する電子黒板式プロジェクタ装置が知られている。例えば、特許文献1の電子黒板式プロジェクタ装置は、入力される映像信号を静止画像として映像メモリに記録し、その静止画像をボードに投写したあと、その投射された画像に応じてボードの記入面に記入された文字等をCCD等でライン状に構成された画像センサにより読み取って画像メモリに記録する。その後、映像メモリのデータと画像メモリのデータとを合成して記録部に記録し、印刷部によって所要の印刷用紙等に印刷する。
【特許文献1】特開平6−127189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の電子黒板式プロジェクタ装置はボード上の静止画像の投写位置を認識可能なものではないため、ボードの記入面に記入された文字等及びボードに投写された静止画像のそれぞれの位置及び大きさの実状に見合っていない画像が生成される場合があった。
【0004】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、ボードに映し出された映像とそのボードに書き込まれた描画の両方をユーザが見たとおりに再現することが可能な画像再現機能付き電子ボード、その再現画像生成方法及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像再現機能付き電子ボード、その再現画像生成方法及びそのプログラムは、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の画像再現機能付き電子ボードは、
プロジェクタから投写された映像が映し出されると共にユーザによる描画が書き込まれるボードと、
映し出された前記映像の前記ボードにおける位置情報を認識する映像位置認識手段と、
ユーザによって前記ボードに書き込まれた描画の内容及び該描画の前記ボードにおける位置情報を認識する描画認識手段と、
前記映像の基となる映像信号を入力する映像信号入力手段と、
前記映像信号入力手段によって入力された映像信号と前記映像位置認識手段によって認識された前記映像の前記ボードにおける位置情報と前記描画認識手段によって認識された前記描画の内容及び該描画の前記ボードにおける位置情報とに基づいて、前記ボードに映し出された前記映像と前記ボードに書き込まれた前記描画とがそれぞれの前記ボード上での位置と大きさに見合った画像となるように再現画像を生成する再現画像生成手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この画像再現機能付き電子ボードでは、映像信号入力手段によって入力された映像信号と映像位置認識手段によって認識された映像のボードにおける位置情報と描画認識手段によって認識された描画の内容及び該描画のボードにおける位置情報とに基づいて、ボードに映し出された映像とボードに書き込まれた描画とがそれぞれのボード上での位置と大きさに見合った画像となるように再現画像を生成する。このため、ボードに映し出された映像とそのボードに書き込まれた描画の両方をユーザが見たとおりに再現することが可能となる。
【0008】
本発明の画像再現機能付き電子ボードにおいて、前記映像位置認識手段は、前記ボードに映し出された前記映像の外縁を規定するマーカーと、該マーカーの前記ボードにおける位置情報を認識するマーカー認識手段と、を備える手段であるとしてもよい。こうすれば、映し出された映像の外縁を容易に認識することができる。
【0009】
前記映像位置認識手段が前記マーカーと前記マーカー認識手段とを備える手段として構成された本発明の画像再現機能付き電子ボードにおいて、前記マーカーは、前記ボードに対して着脱可能に取り付けられるとしてもよい。こうすれば、マーカーの位置を容易に変更することができる。
【0010】
前記映像位置認識手段が前記マーカーと前記マーカー認識手段とを備える手段として構成された本発明の画像再現機能付き電子ボードにおいて、前記描画認識手段及び前記マーカー認識手段は一つのスキャナとして構成され、該スキャナは、前記ボードの全体を走査することにより、前記ボードに書き込まれた前記描画の内容及び該描画の前記ボードにおける位置情報を認識すると共に、前記マーカーの前記ボードにおける位置情報を認識するとしてもよい。こうすれば、映像位置認識手段とマーカー認識手段とを別々に設ける必要がないため、構成を簡素化することができる。
【0011】
本発明の画像再現機能付き電子ボードにおいて、前記再現画像生成手段は、前記映像位置認識手段によって認識された前記映像の前記ボードにおける位置情報に基づいて前記映像の投写面積を導出し、該投写面積が大きいほど彩度が低くなる傾向を示すように前記映像信号を補正して再現画像を生成するとしてもよい。こうすれば、投写面積が大きくなって彩度が低下した映像を的確に再現することができる。
【0012】
本発明の画像再現機能付き電子ボードにおいて、前記再現画像生成手段は、前記映像位置認識手段によって認識された前記映像の前記ボードにおける位置情報に基づいて前記映像の投写面積を導出し、該投写面積が大きいほど明度が低くなる傾向を示すように前記映像信号を補正して再現画像を生成するとしてもよい。こうすれば、投写面積が大きくなって明度が低下した映像を的確に再現することができる。
【0013】
本発明の画像再現機能付き電子ボードにおいて、前記再現画像生成手段は、前記映像位置認識手段によって認識された前記映像の前記ボードにおける位置情報が示す映し出された映像の外縁の形状と前記映像信号入力手段によって入力された前記映像信号が表す画像の形状とが一致するように前記映像信号を補正して再現画像を生成するとしてもよい。こうすれば、映し出された映像の外縁の形状と映像の基となる映像信号が表す画像の形状とが異なる場合であっても映し出された映像を的確に再現することができる。
【0014】
本発明の画像再現機能付きの電子ボードの制御方法は、プロジェクタから投写された映像が映し出されると共にユーザによる描画が書き込まれるボードと、映し出された前記映像の前記ボードにおける位置情報を認識する映像位置認識手段と、ユーザによって前記ボードに書き込まれた描画の内容及び該描画の前記ボードにおける位置情報を認識する描画認識手段と、前記映像の基となる映像信号を入力する映像信号入力手段と、を備えた画像再現機能付き電子ボードの再現画像生成方法であって、
前記映像信号入力手段によって入力された映像信号と前記映像位置認識手段によって認識された前記映像の前記ボードにおける位置情報と前記描画認識手段によって認識された前記描画の内容及び該描画の前記ボードにおける位置情報とに基づいて、前記ボードに映し出された前記映像と前記ボードに書き込まれた前記描画とがそれぞれの前記ボード上での位置と大きさに見合った画像となるように再現画像を生成することを要旨とする。
【0015】
この画像印刷装置の制御方法では、映像信号入力手段によって入力された映像信号と映像位置認識手段によって認識された映像のボードにおける位置情報と描画認識手段によって認識された描画の内容及び該描画のボードにおける位置情報とに基づいて、ボードに映し出された映像とボードに書き込まれた描画とがそれぞれのボード上での位置と大きさに見合った画像となるように再現画像を生成する。このため、ボードに映し出された映像とそのボードに書き込まれた描画の両方をユーザが見たとおりに再現することが可能となる。なお、上述した本発明の画像再現機能付き電子ボードが備える各種の構成によって奏される作用・機能を実現するためのステップを追加してもよい。
【0016】
本発明のプログラムは、上述した画像再現機能付き電子ボードの再現画像生成方法の各ステップを1又は複数のコンピュータに実行させるためのものである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピュータに実行させるか複数のコンピュータに分散して実行させれば、上述した画像再現機能付き電子ボードの再現画像生成方法の各ステップが実行されるため、上述した画像再現機能付き電子ボードの再現画像生成方法と同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の画像再現機能付き電子ボードの一実施形態である電子黒板10の概略構成を示す外観図であり、図2は、電子黒板10の概略構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施形態の電子黒板10は、図1に示すように、映像が映し出されたり文字・図形・記号等の描画が書き込まれたりするボード20と、ボード20に貼り付けることが可能なように内部に磁石を備えたマーカー21と、ボード20に書き込まれた描画やマーカー21の位置等を読み出すスキャナユニット22と、スキャナユニット22をボード20の一方の端から他方の端まで移動させるスキャナユニット搬送部23と、ボード20に映し出される映像を入力すると共に外部のプロジェクタ61へ映像信号を出力する映像信号入出力部24と、印刷媒体である用紙に画像を印刷するプリンタユニット25と、ユーザからの指示の入力を行う操作パネル26と、装置全体の制御を司るコントローラ40とを備えている。映像信号入出力部24,プリンタユニット25,操作パネル26,コントローラ40は収納ボックス27に収められ、該収納ボックス27はフレーム70に取り付けられている。また、スキャナユニット22,スキャナユニット搬送部23,映像信号入出力部24,プリンタユニット25,操作パネル26,コントローラ40はバス50を介して各種制御信号やデータのやり取りができるよう構成されている。
【0019】
ボード20は、フレーム70に取り付けられ、床面に対して略垂直に設置される。このボード20の表面は、フェルトペンによって文字等を書き込むことが可能で、かつ、外部のプロジェクタ61により投写された映像が映し出されるよう適切に光を散乱させるような材質で作られている。また、磁石を内部に備えたマーカー21を貼り付けることが可能な金属を内部に備え、マーカー21をボード20上の任意の位置に貼り付けることが可能となっている。
【0020】
マーカー21は、図3に示すようにL字状の形状をなしており、その内部に磁石を備えている。このマーカー21は、表面が予めマーカーであることを表す色(ここでは紫色とする)に着色されており、L字に曲がっているその屈曲部の内側部分A(図3参照)をボードに映し出された映像の外縁の4つの頂点に当たる部分に一致させるようにユーザによってボード20に貼り付けられる。なお、マーカーであることを表す色は、ボード20に描画を書き込むときには使用しないものとする。
【0021】
スキャナユニット22は、図2に示すように、スキャナエンジン30とスキャナASIC31とバッファメモリ32とを備えている。このスキャナユニット22は、ボード20の一つの辺と平行な方向(図1中の矢印aの方向)に往復動可能なようにフレーム70に取り付けられ、フレーム70の内部に搭載されたスキャナユニット搬送部23により図1中の矢印aの方向に移動する。スキャナエンジン30は、垂直方向(図1中の矢印bの方向)に一列に並ぶように配置されたラインイメージセンサ30aを備えている。スキャナASIC31は、スキャナエンジン30がボード20に書き込まれた描画やマーカー21を読み取るよう制御する。なお、本実施形態のラインイメージセンサ30aは、ボード20に向かって発光したあとの反射光をレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色に分解してスキャンデータとする周知のカラーイメージセンサである。
【0022】
スキャナユニット搬送部23は、図1に示すように、フレーム70の一端と他端との間に掛け渡された無端状のベルトであり、図示しないモータによって駆動される。
【0023】
映像信号入出力部24は、図1に示すように、収納ボックス27の外部に露出するように設けられた入力コネクタ24aと出力コネクタ24bとを有し、入力コネクタ24aに接続された外部の映像機器60(例えばPC)からの映像信号を入力することが可能であると共に入力した映像信号を出力コネクタ24bに接続したプロジェクタ61へ出力することが可能である。ここで入出力される映像信号は、例えば、1秒間におおよそ30画面分のデータが含まれる動画に対応した信号や時間と共に変化しない静止画に対応した信号などである。
【0024】
プリンタユニット25は、図2に示すように、プリンタエンジン33とプリンタASIC34とを備えている。プリンタエンジン33は、印刷ヘッドから用紙へインクを吐出することにより印刷を行う周知のインクジェット方式のカラープリンタ機構として構成されている。プリンタASIC34は、コントローラ40のフラッシュメモリ44に記録されたビットマップデータが印刷されるようプリンタエンジン33を制御する。なお、フラッシュメモリ44に記録されるビットマップデータは、後述する画像合成処理ルーチンを実行した後に生成される再現画像のビットマップデータである。
【0025】
操作パネル26は、図1に示すように、ユーザの画像合成開始の指示を入力可能な合成開始ボタン26aや電源ボタン26bを備えている。
【0026】
コントローラ40は、図2に示すように、CPU41を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムを記憶するROM42と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM43と、電気的に書き換え可能で電源を切ってもデータは保持されるフラッシュメモリ44などを備えている。このコントローラ40は、バス50を介してプリンタASIC34やスキャナASIC31、スキャナユニット搬送部23、映像信号入出力部24、操作パネル26と電気的に接続されている。また、RAM43は、既述のスキャナバッファ43aや映像バッファ43bを備えている。
【0027】
こうして構成された本実施形態の電子黒板10は、スキャナバッファ43aに記録されたスキャンデータのうち、プロジェクタ61によってボード20に映し出された映像の外縁を規定する色として予め設定された色を識別し、その色の描かれた位置をボード20における位置として把握することによって、ボード20に映し出された映像の外縁を特定する機能を有する。
【0028】
次に、こうして構成された本実施形態の電子黒板10の動作について説明する。図4は、ユーザが操作パネル26の合成開始ボタン26aを押下することによって画像合成処理開始の指示を入力した時に、電子黒板10のコントローラ40のCPU41により実行される画像合成処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。この画像合成処理ルーチンが実行されるとコントローラ40のCPU41は、まず、入力コネクタ24aを介して入力されている映像信号の一画面分に相当する映像データをビットマップデータに変換してコントローラ40に出力するよう映像信号入出力部24を制御し、入力されたビットマップデータをRAM43の映像バッファ43aに記録する(ステップS100)。なお、ユーザは、通常、プロジェクタ61から投写されてボード20に映し出される映像が時間と共に変化しないように映像機器60を操作(例えば、スライドモードへの変更や一時停止など)したあとで、ボード20に描画を書き込み、その後、操作パネル26の合成開始ボタン26aを押下して再現画像の作成開始を指示する。従って、ステップS100の処理を実行するときには、映像信号入出力部24の入力コネクタ24aを介して入力される映像信号は、ボード20に映し出される映像が時間と共に変化しないような静止画に対応した信号となる。
【0029】
続いて、コントローラ40のCPU41は、スキャナASIC31に対し、スキャンデータ送信指令を出力する(ステップS110)。この指令を受信したスキャナASIC31は、スキャナユニット22が初期位置(ボード20の一端)から水平方向の解像度に相当する所定移動量ずつ移動するようスキャナユニット搬送部23を制御すると共に、スキャナユニット22が所定移動量だけ移動するごとにラインイメージセンサ30aによる1ライン分の読み取りを行い該読み取った1ライン分のデータをバッファメモリ32に記録するようスキャナエンジン30を制御する。そして、スキャナユニット22がボード20の一端から他端に至ったとき、その間にバッファメモリ32に記録された複数の1ライン分のデータを今回のスキャンデータとしてコントローラ40へ送信する。
【0030】
続いて、コントローラ40のCPU41は、スキャナASIC31からスキャンデータを入力したか否かを判定し(ステップS120)、スキャンデータを入力していないときにはそのまま待機する。一方、スキャンデータを入力したときには、RAM43に設けられたスキャナバッファ43aにそのスキャンデータをビットマップデータとして記録し(ステップS130)、そのスキャンデータのうち、ボード20の地色やマーカー21の色とは実質的に異なる色と判断される画素の位置に対応するボード20における位置を描画が書き込まれた位置として特定する(ステップS140)。また、ステップS130においてスキャナバッファ43aに記録されたスキャンデータの中から予めマーカーを表す色として設定された色を検索し、その位置を特定する(ステップS150)。次に、その検索結果に基づいて、マーカー21のL字に曲がっているその屈曲部の内側部分A(図3参照)の位置つまりボード20に映し出された映像の外縁の4つの頂点の位置をパターンマッチングなどの適切な画像処理手法を利用して特定したあと、特定された4つの頂点の位置を結んで四角形を作成し、該四角形に合わせてRAM43の映像バッファ43bに記録されたビットマップデータを変形する(ステップS160)。ここでは、ボード20の全体をボード20の左下隅をゼロ点とするXY平面座標とし、描画の位置や4つの頂点の位置を座標として特定するものとする。なお、RAM43の映像バッファ43bに記録されたビットマップデータを変形する際、対応するデータがない画素については適宜補間するものとした。
【0031】
そして、さきほどの四角形の面積を、ボード20に映し出された映像の投写面積として算出し(ステップS170)、該映像の投写面積に基づいて、図5に示すマップにしたがって、RAM43の映像バッファ43bのビットマップデータを補正する(ステップS180)。ここで、映像の投写面積が大きくなるほど彩度が低くなる傾向を示すように補正するのは、実際にボード20に投写される映像の彩度がその投写面積が大きくなるほど低下する現象を再現するためである。
【0032】
補正が終了すると補正後のビットマップデータに、RAM43のスキャナバッファ43aに記録されたビットマップデータのうちステップS130で特定されたボード20における描画が書き込まれた位置に対応する位置の画素のデータを上書きするように合成して、フラッシュメモリ44に記録する(ステップS190)。そして、フラッシュメモリ44に記録されたビットマップデータをプリンタエンジン33によって用紙のサイズに合わせて印刷するようプリンタASIC34に指令を出し(ステップS200)、本ルーチンを終了する。この指令を受け取ったプリンタASIC34はフラッシュメモリ44に記録されたビットマップデータを印刷するようプリンタエンジン33を制御する。
【0033】
ここで、再現画像を生成する具体例を図6を用いて説明する。ユーザにより画像合成処理開始の指示が入力されたとき、ユーザが実際に見ているボード20には、図6(a)に示すように、映像が映し出され、その映像の4つの頂点にマーカー21が貼り付けられて、更に文字や矢印が書き込まれているとする。最初に、入力されている映像信号の1画面分の映像データを映像バッファ43bに記録する。次に、ボード20に書き込まれた描画(文字や矢印)やマーカー21をスキャナユニット22によって読み取ると、図6(b)に示すようなスキャンデータが得られ、このスキャンデータをスキャナバッファ43aに記録する。そして、このスキャンデータのうち描画の位置をその色情報によって特定し、描画のボード20における位置を特定する。また、そのスキャンデータのうちマーカー21を読み取った部分Bの位置をその色情報によって特定し、マーカー21のL字に曲がっているその屈曲部の内側部分A(図3参照)の位置を画像処理によって求めてボード20に映し出された映像の外縁の4つの頂点を特定する。続いて、それらの4つの頂点の位置を結んで四角形を生成したあと、該四角形に合わせて映像バッファ43bに記録した映像データを変形する。そして、その四角形の面積に応じた彩度の補正がなされると、映像バッファ43bに記録されている映像データは図6(c)のようになる。ここで、ボード20の外縁に対応するデータ部分Dとボード20における映像の投写領域の外縁に対応するデータ部分Eとの間の領域は、ボード20の地色を表すデータで埋められるものとした。そして、図6(b)に示すスキャンデータのうち、描画の位置に対応する位置の画素のデータのみを、補正後の映像データ(図6(c))に上書きするように合成すると、図6(a)に示したようなユーザが実際に見ているボード20を再現した再現画像(図6(d))が生成される。なお、映像の外縁の4つの頂点のボード20における位置や描画のボード20における位置は、ボード20の全体をXY平面とする座標によって取り扱うものとした。また、マーカー21を読み取った部分Bが再現されるよう合成してもよい。
【0034】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のボード20が本発明のボードに相当し、本実施形態のスキャナユニット22が本発明の映像位置認識手段及び描画認識手段に相当し、本実施形態の映像信号入出力部24が本発明の映像信号入力手段に相当し、本実施形態のコントローラ40が本発明の再現画像生成手段に相当する。なお、本実施形態では、電子黒板10の動作を説明することにより本発明の画像再現機能付き電子ボードの制御方法の一例も明らかにしている。
【0035】
以上詳述した本実施形態の電子黒板10によれば、映像信号入出力部24によって入力された映像信号とスキャナユニット22によって読み取られたボード20全体のスキャンデータとに基づいて、ボード20に映し出された映像とボード20に書き込まれた描画とがそれぞれのボード20における位置と大きさに見合った画像となるように、映像バッファ43bに記録された映像データとスキャナバッファ43aに記録されたスキャンデータとを合成して再現画像を生成する。このため、ボード20に映し出された映像とそのボード20に書き込まれた描画の両方をユーザが見たとおりに再現することが可能となる。
【0036】
また、ボード20に映し出された映像の外縁を規定するマーカー21とマーカー21のボード20における位置を認識するスキャナユニット22を備えているため、映し出された映像の外縁を容易に認識することができる。
【0037】
更に、マーカー21はボード20に対して着脱が可能であるから、映像の外縁が変更された場合でも、ユーザはマーカー21の位置を容易に変更することができる。
【0038】
更にまた、スキャナユニット22がボード20の全体を走査することにより、ボード20に書き込まれた描画の内容及び該描画のボード20における位置情報を認識すると共に、マーカー21のボード20における位置情報を認識するから、それぞれの機能を持ったユニットを別々に設ける場合に比べて構成が簡素化されている。
【0039】
そしてまた、スキャナユニット22によって認識された映像のボード20における位置情報に基づいて映像の投写面積を導出し、該投写面積が大きいほど彩度が低くなる傾向を示すように映像バッファ43bに記録されたビットマップデータを補正して再現画像を生成するから、投写面積が大きくなって彩度が低下した映像を的確に再現することができる。特に、ボード20における映像の投写領域にフェルトペンを用いて描画を書き込んだ場合には、映像バッファ43bに記録されたビットマップデータを彩度の補正をせずにスキャナバッファ43aに記録されたビットマップデータと合成して再現画像を生成すると、映像バッファ43bに記録されたビットマップデータの彩度が実際にボード20に投写されている映像の彩度よりも高いために、ボード20に書き込まれた描画を認識できないという事態が発生する場合がある。彩度を補正することによって、このような事態を回避することができる。この点は明度についても同様である。
【0040】
そして更に、ボード20に映し出された映像の外縁の形状と映像の基となる映像信号が映像信号入出力手段24によってメインコントローラ40に出力され映像バッファ43bに記録されたビットマップデータが表す画像の形状とが異なる場合であっても映し出された映像を的確に再現することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0042】
例えば、上述した実施形態では、投写面積が大きいほど彩度が低くなる傾向を示すように映像バッファ43bのビットマップデータを補正するとしたが、投写面積が大きいほど明度が低くなる傾向を示すように映像バッファ43bのビットマップデータを補正するとしてもよいし、投写面積が大きいほど彩度と明度が共に低くなる傾向を示すように映像バッファ43bのビットマップデータを補正するとしてもよい。こうすれば、投写面積が大きくなって明度が低下した映像や投写面積が大きくなって彩度と明度が低下した映像を的確に再現することができる。このとき、明度の補正に関しては、図7に示すようなマップによって、投写面積が大きくなるに従って明度の低下割合が大きくなる傾向を示すように補正するものとしてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、スキャナユニット22がボード20の一方の端から他方の端まで移動しながらボード20に書き込まれた描画を読み取るものとしたが、該描画とスキャナユニット22が相対的に移動して該描画を読み取るものであれば如何なるものでもよく、例えば、固定されたスキャナユニット22に対して描画が書き込まれた媒体が移動し該描画が読み取られるものとしてもよい。具体的には、上述した実施形態のボード20とスキャナユニット22,スキャナユニット搬送部23,フレーム70の構成の代わりに、例えば、図8に示すような構成としてもよい。図8において、ボード81及びスキャナユニット84はフレーム80に固定される。ボード81の前面には、その表面が、フェルトペンによって文字等を書き込むことが可能で、かつ、投写された映像が映し出されるよう適切に光を散乱させるような材質で作られたスクリーン82が設置される。このスクリーン82は、ボード81の両端に立設された回転軸83a,83bに無端状に架け渡され、これらの回転軸83a,83bが同方向(図8中の矢印cの方向)に回転することにより、図8中の矢印dの方向に移送される。そして、スキャナユニット84のラインイメージセンサ85により、スクリーン82に書き込まれた描画が読み取られるような構成となっている。スクリーン82の描画が書き込まれた領域は、ラインイメージセンサ85によって描画が読み込まれたあとボード81の背面に移送される。
【0044】
上述した実施形態では、映し出された映像の4つの頂点にマーカー21を貼り付けるとしたが、マーカー21を貼り付ける箇所は何カ所でも構わない。このとき、スキャナユニット22によって認識されたマーカー21が2つであった場合は、その2つのマーカー21はボード20上に長方形に映し出された映像の対角をなす2カ所の頂点に貼り付けられたものとみなすものとしてもよい。また、スキャナユニット22によって認識されたマーカー21が3つであった場合は、ボード20上に長方形に映し出された映像の4つの頂点のうち3つの頂点に貼り付けられたものとみなすものとしてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、マーカー21に着色された予め設定された色をスキャナユニット22により読み取って映し出された映像の外縁を認識するものとしたが、該外縁を認識可能なものであれば如何なるものを用いるものとしてもよい。例えば、マーカー21の表面に金属光沢を持たせ、スキャナユニット22によって反射率の違いを認識するものとしてもよいし、マーカー21の内部に備えられた磁石の磁場を感知可能なセンサをスキャナユニット22に搭載して磁場の変化を検出するものとしてもよいし、予め設定したバーコードをマーカー21に付して、そのバーコードをスキャナユニット22で読み取った後で認識するものとしてもよいし、マーカー21がICタグを備え、かつ、スキャナユニット22がそのICタグを検知可能なICタグリーダを備えるか又はICタグリーダを搭載したスキャナユニット22と同様の移動をするマーカー読み取りユニットをスキャナユニット22の横に並列に設けるものとしてもよいし、マーカー21をボード20に貼り付ける代わりにボード20に予め設定された色のフェルトペンを用いて映像の4つの頂点に印を付け、その色をスキャナユニット22によって認識するものとしてもよい。なお、図8に示した構成の場合には、予め設定された色のフェルトペンを用いて映像の4つの頂点に印を付け、その色をスキャナユニット84によって認識するものとするのが好ましい。
【0046】
上述した実施形態では、ボード20に貼り付けられたマーカー21を使用してボード20に投写される映像の外縁が認識されるものとしたが、ボード20に映し出される映像の外縁がマーカーを使用せずに認識されるものとしてもよい。例えば、スキャナユニット22の背面(ラインイメージセンサ30aとは逆の面)に光の強度を検出可能なセンサをスキャナユニット22の移動方向と垂直な方向(図1中の矢印bの方向)に一列に配置したセンサによって、スキャナユニット22がボード20の一方の端から他方の端まで移動してボード20に書き込まれた描画を読み取る際に、合わせてプロジェクタ61から投写される映像の光の強度をスキャナユニット22の背面に配置したセンサによって検出し、該光の強度の違いによって、ボード20に映し出された映像の外縁を認識するものとしてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、再現画像が作成されてフラッシュメモリ44に記録されたあとプリンタユニット25によって印刷されるものとしたが、印刷されるものでなくてもかまわない。例えば、フラッシュメモリ44に記録されたビットマップデータを予め設定されたユーザに電子メールによって送信するものとしてもよいし、外部記憶媒体にコピーするものとしてもよい。このとき、それぞれの機能を実現するためのユニットを搭載することとなる。
【0048】
上述した実施形態では、ボード20に描画が書き込まれたあと、スキャナユニット22により該描画を読み取るものとしたが、描画を読み取ることが可能であれば、如何なる方法を用いるものとしてもよい。例えば、ボード20に書き込まれるペンの色と位置を常に認識することが可能なユニットとそれに対応したペンを備えるものとしてもよい。このとき、ボード20に映し出された映像の4つの頂点に予め設定された色のペンを用いて印をつけ、その色の位置を認識することによって映像の4つの頂点のボード20における位置を特定し、その位置に基づいて映像バッファ43bに記録されているビットマップデータを補正したあと、その補正後のビットマップデータにボード20に書き込まれた描画を常に上書きすることによって再現画像を生成するものとしてもよい。
【0049】
上述した実施形態では、本発明を電子黒板10について適用することについて説明したが、本発明は、映し出される映像の投写領域が不確定な電子ボードであれば如何なるものに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】電子黒板10の概略構成を示す外観図。
【図2】電子黒板10の概略構成を示すブロック図。
【図3】マーカー21の正面図。
【図4】画像合成処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図5】彩度を補正するときに使用する投写面積に対する彩度を示すマップ。
【図6】再現画像を生成する具体例の説明図。
【図7】明度を補正するときに使用する投写面積に対する明度を示すマップ。
【図8】他の構成例を示す外観図。
【符号の説明】
【0051】
10 電子黒板、20 ボード、21 マーカー、22 スキャナユニット、23 スキャナユニット搬送部、24 映像信号入出力部、24a 入力コネクタ、24b 出力コネクタ、25 プリンタユニット、26 操作パネル、26a 合成開始ボタン、26b 電源ボタン、27 収納ボックス、30 スキャナエンジン、30a ラインイメージセンサ、31 スキャナASIC、32 バッファメモリ、33 プリンタエンジン、34 プリンタASIC、40 コントローラ、41 CPU、42 ROM、43 RAM、43a スキャナバッファ、43b 映像バッファ、44 フラッシュメモリ、50 バス、60 映像機器、61 プロジェクタ、70 フレーム、80 フレーム、81 ボード、82 スクリーン、83a,83b 回転軸、84 スキャナユニット、85 ラインイメージセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタから投写された映像が映し出されると共にユーザによる描画が書き込まれるボードと、
映し出された前記映像の前記ボードにおける位置情報を認識する映像位置認識手段と、
ユーザによって前記ボードに書き込まれた描画の内容及び該描画の前記ボードにおける位置情報を認識する描画認識手段と、
前記映像の基となる映像信号を入力する映像信号入力手段と、
前記映像信号入力手段によって入力された映像信号と前記映像位置認識手段によって認識された前記映像の前記ボードにおける位置情報と前記描画認識手段によって認識された前記描画の内容及び該描画の前記ボードにおける位置情報とに基づいて、前記ボードに映し出された前記映像と前記ボードに書き込まれた前記描画とがそれぞれの前記ボード上での位置と大きさに見合った画像となるように再現画像を生成する再現画像生成手段と、
を備えた画像再現機能付き電子ボード。
【請求項2】
前記映像位置認識手段は、前記ボードに映し出された前記映像の外縁を規定するマーカーと、該マーカーの前記ボードにおける位置情報を認識するマーカー認識手段と、を備える手段である、
請求項1に記載の画像再現機能付き電子ボード。
【請求項3】
前記マーカーは、前記ボードに対して着脱可能に取り付けられる、
請求項2に記載の画像再現機能付き電子ボード。
【請求項4】
前記描画認識手段及び前記マーカー認識手段は一つのスキャナとして構成され、
該スキャナは、前記ボードの全体を走査することにより、前記ボードに書き込まれた前記描画の内容及び該描画の前記ボードにおける位置情報を認識すると共に、前記マーカーの前記ボードにおける位置情報を認識する、
請求項2又は3に記載の画像再現機能付き電子ボード。
【請求項5】
前記再現画像生成手段は、前記映像位置認識手段によって認識された前記映像の前記ボードにおける位置情報に基づいて前記映像の投写面積を導出し、該投写面積が大きいほど彩度が低くなる傾向を示すように前記映像信号を補正して再現画像を生成する、
請求項1〜4のいずれかに記載の画像再現機能付き電子ボード。
【請求項6】
前記再現画像生成手段は、前記映像位置認識手段によって認識された前記映像の前記ボードにおける位置情報に基づいて前記映像の投写面積を導出し、該投写面積が大きいほど明度が低くなる傾向を示すように前記映像信号を補正して再現画像を生成する、
請求項1〜5のいずれかに記載の画像再現機能付き電子ボード。
【請求項7】
前記再現画像生成手段は、前記映像位置認識手段によって認識された前記映像の前記ボードにおける位置情報が示す映し出された映像の外縁の形状と前記映像信号入力手段によって入力された前記映像信号が表す画像の形状とが一致するように前記映像信号を補正して再現画像を生成する、
請求項1〜6のいずれかに記載の画像再現機能付き電子ボード。
【請求項8】
プロジェクタから投写された映像が映し出されると共にユーザによる描画が書き込まれるボードと、映し出された前記映像の前記ボードにおける位置情報を認識する映像位置認識手段と、ユーザによって前記ボードに書き込まれた描画の内容及び該描画の前記ボードにおける位置情報を認識する描画認識手段と、前記映像の基となる映像信号を入力する映像信号入力手段と、を備えた画像再現機能付き電子ボードの再現画像生成方法であって、
前記映像信号入力手段によって入力された映像信号と前記映像位置認識手段によって認識された前記映像の前記ボードにおける位置情報と前記描画認識手段によって認識された前記描画の内容及び該描画の前記ボードにおける位置情報とに基づいて、前記ボードに映し出された前記映像と前記ボードに書き込まれた前記描画とがそれぞれの前記ボード上での位置と大きさに見合った画像となるように再現画像を生成する、
画像再現機能付き電子ボードの再現画像生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の画像再現機能付き電子ボードの再現画像生成方法の各ステップを1又は複数のコンピュータに実現させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−17274(P2008−17274A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187851(P2006−187851)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】