説明

画像処理装置

【課題】離隔した撮像部と表示部とを無線通信で接続すると共に無線通信による接続で生じうる通信エラーや復号エラーに対応できる顕微鏡や画像処理装置を提供する。
【解決手段】被写体を撮像して画像データを無線通信で出力する撮像ユニット2と、撮像ユニット2から無線通信によって画像データを受信して、該画像データを表示する表示ユニット3を備え、撮像ユニット2は、被写体を拡大して撮像可能な撮像部4と、画像データを無線通信によって送信する送信部6と、を有し、表示ユニット3は、送信部6が無線通信によって送信する画像データを受信する受信部11と、受信部11が受信した画像データを表示する表示部10と、を備え、撮像ユニット2と表示ユニット3とは、所定距離内で離隔して用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子基板、電子機器、ペットや人体などの被写体を拡大して視認するために用いられ、撮像ユニットと表示ユニットとが無線通信で接続される画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子基板や電子機器の良否検査や、ペットのダニやノミ取りなどに、被写体を拡大して使用するルーペや顕微鏡が使われる。また、レンズを通じて直接視認しにくい場所(家具の裏側や家屋の床下など)に存在する被写体を拡大して視認したい場合には、ルーペや顕微鏡では不向きである。このような場合には、撮像部と表示部とが分離して有線で接続された顕微鏡が用いられることがある。通常の顕微鏡やルーペでは、使用者が入れない場所では使えないからである。
【0003】
このような撮像部と表示部とが分離している顕微鏡により、使用者が入れない場所に位置する被写体を撮像しつつ、使用者は被写体や撮像部と別の位置にある表示部を用いて拡大された被写体を視認できる。
【0004】
特に、電子基板や電子機器の良否検査や、商品の傷の検査などにおいては、使用者が被写体と同一軸で顕微鏡を使用しながら観察することは、使用者への負担が大きく、良否を見逃す恐れがある。使用者は、顕微鏡のレンズ部分を常に除きながら被写体との焦点や位置合わせを行なわなければならないからである。
【0005】
これらを考慮すると、電子基板や電子機器の良否検査や、ペットや人体の観察、商品の良否検査などにおいては、被写体を拡大して撮像する撮像部と、撮像された画像を表示する表示部とは、離隔した状態にあって、使用者は表示部を視認しながら撮像部を動かして焦点や位置合わせを行なうことが好ましい。
【0006】
このような状況において、被写体を拡大して撮像する撮像部と撮像された画像を表示する表示部とが離隔した状態であり、画像データの送受信のために、撮像部と表示部とが有線通信で接続されている。
【0007】
しかしながら、撮像部と表示部とが有線通信で接続されている場合には、有線通信用のコードが引っかかったり、被写体に重なったりして、使用において邪魔であり、精度の高い画像を表示できない問題があった。このような中、有線通信を用いる問題を解決する顕微鏡や顕微鏡の機能を有する画像処理装置の開発が求められていた。
【0008】
このような中で手術用の顕微鏡の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−297060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1は、撮像部と表示部とが離隔した手術用の顕微鏡の技術を開示する。また、特許文献1は、撮像部と表示部とを無線通信で接続することを開示する。
【0011】
しかしながら、特許文献1は、無線通信での具体的な接続構成を開示しておらず、撮像部と表示部とを無線通信で接続することを実現させることは困難である。
【0012】
また、有線通信を無線通信に置き換えることで、通信時の通信エラーや画像の復号エラーなどが発生する問題があるが、特許文献1は、これらの問題への解決を示唆していない。すなわち、従来技術では、撮像部と表示部とを無線通信で接続する技術を実現できていない問題がある。
【0013】
加えて、従来技術では、無線通信で接続する場合に生じる通信エラーや画像の復号エラーに対する問題を、解決できない。手術用の顕微鏡であれば、画像の復号エラーが生じたとしても、実際の被写体である人体を目視で確認することで対処できるが、電子基板や電子機器の良否検査や商品の良否検査は、目視を併用することができない。このため、通信エラーや復号エラーに対する対応が重要となる。
【0014】
また、電子基板や電子機器の良否検査や、種々の商品の良否検査を行なう場合には、撮像部と表示部との離隔距離は大きくない。これは、一人の使用者が、表示部の画像を確認しつつ撮像部を操作するからである。これに対して、特許文献1は、眼球検査のように、顕微鏡における撮像部は、患者の眼球に対して固定され、使用者である医師は、表示部を見ながら表示部を遠隔操作すればよい。このため、撮像部と表示部との距離は、近くても遠くても関係なく、無線通信での接続における技術的問題点が生じにくい。一方で、撮像部と表示部とを近距離で作業する必要のある良否検査では、無線通信での技術的問題への考慮が必要である。
【0015】
すなわち、従来技術では、商品等の良否検査に用いられる画像処理装置であって、撮像部と表示部とを無線通信で接続する画像処理装置を実現することが困難であった。
【0016】
以上のように、離隔した撮像部と表示部とを無線通信で接続すると共に無線通信による接続で生じうる通信エラーや復号エラーに対応できる顕微鏡や画像処理装置の開発が求められていた。
【0017】
本発明は、上記課題を解決し、離隔した撮像部と表示部とを無線通信で接続すると共に無線通信による接続で生じうる通信エラーや復号エラーに対応できる顕微鏡や画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題に鑑み、本発明の画像処理装置は、被写体を撮像して画像データを無線通信で出力する撮像ユニットと、撮像ユニットから無線通信によって画像データを受信して、該画像データを表示する表示ユニットを備え、撮像ユニットは、被写体を拡大して撮像可能な撮像部と、画像データを無線通信によって送信する送信部と、を有し、表示ユニットは、送信部が無線通信によって送信する画像データを受信する受信部と、受信部が受信した画像データを表示する表示部と、を備え、撮像ユニットと表示ユニットとは、所定距離内で離隔して用いられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の画像処理装置は、撮像ユニットと表示ユニットが所定距離において離隔して使用されるのに加えて、それぞれが無線通信で接続されているので、有線コード等が邪魔にならず、容易に使用できる。また、使用者は表示ユニットで表示される画像を見ながら、撮像ユニットを動かして、被写体との焦点や位置合わせを行なえるので、使用が容易となる。
【0020】
特に、電子機器や電子基板の良否検査や、種々の商品の良否検査においては、一人の使用者が表示ユニットの画像の確認と、撮像ユニットの操作を行なうので、撮像ユニットと表示ユニットとの距離は所定距離内である。言い換えると余り離れていない。本発明の画像処理装置は、このように所定距離内で撮像ユニットと表示ユニットとを接続することを実現できる。
【0021】
また、無線通信における通信エラーや復号エラーが発生した場合に、使用者が容易に対処できる上、良否検査での見逃しを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における画像処理装置の模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1における顕微鏡の使用状態を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1における周波数帯域分割多重を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態2における顕微鏡の模式図である。
【図5】本発明の実施の形態2における撮像ユニット2と表示ユニット3とをあわせた機能を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態2における表示ユニットの模式図である。
【図7】本発明の実施の形態2における表示ユニットの模式図である。
【図8】本発明の実施の形態3における撮像ユニットの斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態3における画像処理システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の発明に係る画像処理装置は、被写体を撮像して画像データを無線通信で出力する撮像ユニットと、撮像ユニットから無線通信によって画像データを受信して、該画像データを表示する表示ユニットを備え、撮像ユニットは、被写体を拡大して撮像可能な撮像部と、画像データを無線通信によって送信する送信部と、を有し、表示ユニットは、送信部が無線通信によって送信する画像データを受信する受信部と、受信部が受信した画像データを表示する表示部と、を備え、撮像ユニットと表示ユニットとは、所定距離内で離隔して用いられる。
【0024】
この構成により、画像処理装置は、撮像ユニットと表示ユニットとを分離して操作させることができ、使用者は、自由に撮像ユニットを操作しながら表示ユニットによって画像を確認できる。
【0025】
本発明の第2の発明に係る画像処理装置では、第1の発明に加えて、画像処理装置は、顕微鏡である。
【0026】
この構成により、使用者は、被写体を拡大しつつ表示ユニットで表示して、被写体の詳細を観察できる。
【0027】
本発明の第3の発明に係る画像処理装置では、第1又は第2の発明に加えて、撮像ユニットと表示ユニットとは、10m以下の距離で離隔して使用される。
【0028】
この構成により、画像処理装置は、直進性の高い周波数帯域で、無線通信によって撮像画像を送信できる。また、現行の無線LANなどの周波数帯域をそのまま用いることができる。
【0029】
本発明の第4の発明に係る画像処理装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、送信部および受信部は、2GHz以上の周波数帯域で画像データを送受信する。
【0030】
この構成により、画像処理装置は、無線LANなどで家庭や事業所内で使用可能な周波数帯域を用いることができる。結果として、簡易な構成で、撮像画像を無線通信で送信できる。
【0031】
本発明の第5の発明に係る画像処理装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、送信部および受信部は、所定帯域を複数のチャネルに分割して画像データを送受信する。
【0032】
この構成により、画像処理装置は、同じ画像を異なるチャネルに重畳して送信したり、異なる画像を異なるチャネルに重畳して送信したりできる。
【0033】
本発明の第6の発明に係る画像処理装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、表示ユニットは、受信した画像データを復調する復調部を更に備え、復調部が所定値以上の復号エラーを検出する場合には、表示部は、画像を停止させて表示する。
【0034】
この構成により、復号エラーが生じた場合に、劣化した画像によって被写体の良否判断を誤るリスクが低減できる。
【0035】
本発明の第7の発明に係る画像処理装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、表示ユニットは、受信した画像データを復調する復調部を更に備え、復調部が所定値以上の復号エラーを検出する場合には、表示部は、警告画面を表示する。
【0036】
この構成により、復号エラーが生じた場合に、劣化した画像によって被写体の良否判断を誤るリスクが低減できる。
【0037】
本発明の第8の発明に係る画像処理装置では、第6又は第7の発明に加えて、復調部は、所定値以上の復号エラーを検出する場合には、警告を発する。
【0038】
この構成により、画像処理装置は、復号エラーが生じたことを、即座に使用者に通知できる。通知を受けた使用者は、表示されている画像による良否検査を省略するなどの対応をとることができる。
【0039】
本発明の第9の発明に係る画像処理装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、表示部が表示される画像の焦点が不適の場合には、撮像ユニットおよび表示ユニットの少なくとも一方は、警告を発する。
【0040】
この構成により、使用者は、ピンボケの画像を用いた良否検査を省略できる。
【0041】
本発明の第10の発明に係る画像処理装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、撮像ユニットは、被写体に焦点を合わせるレンズ部と、レンズ部を保護するレンズカバーを備え、レンズ部およびレンズカバーの少なくとも一部が、被写体に所定距離以下に近接する場合には、警告を発する
【0042】
この構成により、使用者は、被写体とレンズ等との接触や衝突を予め回避できる。特に、表示ユニットを観察しながら作業する場合に好適である。
【0043】
以下、図面を参照しながら説明する。
【0044】
(実施の形態1)
【0045】
まず、実施の形態1について説明する。
【0046】
画像処理装置の概要について説明する。なお、実施の形態1においては、顕微鏡を画像処理装置の一例として説明する。ただし、顕微鏡は画像処理装置の一例であり、顕微鏡以外であっても、被写体を拡大しつつ撮像し、撮像した画像を無線通信で表示ユニットに送信して表示させる装置であればいずれも含む。
【0047】
(全体概要)
顕微鏡1の概要を、図1を用いて説明する。
【0048】
図1は、本発明の実施の形態1における画像処理装置の模式図である。
【0049】
顕微鏡1は、被写体を撮像して画像データを無線通信で出力する撮像ユニット2と、撮像ユニット2から無線通信によって画像データを受信して、画像データを表示する表示ユニット3を備える。撮像ユニット2と表示ユニット3とは、物理的に接続されておらず、物理的に離隔している。撮像ユニット2と表示ユニット3とは、無線通信によって接続される。
【0050】
図1では、被写体は電子基板8であり、撮像ユニット2は、電子部品9の実装された電子基板8を撮像している。このため、撮像ユニット2は、電子基板8に対して焦点を合わせ、所定の倍率で電子基板8を拡大して撮像する。
【0051】
撮像ユニット2は、電子基板8を拡大して撮像するための対物レンズ7、対物レンズ7が集光した光信号を電気信号に変換して画像を撮像する撮像部4、撮像部4が撮像した画像データを変調したり搬送波を乗じたりする変調部5、変調部5で変調された画像データを無線通信によって送信する送信部6を備える。
【0052】
撮像ユニット2は、このように対物レンズ7、撮像部4、変調部5、送信部6と、を備えることで、被写体である電子基板8を拡大して撮像し、撮像して得られる画像データを表示ユニット3に無線通信によって送信できる
【0053】
なお、撮像部4は、被写体の画像データを、デジタル信号として撮像しても良いし、アナログ信号として撮像しても良い。デジタル信号として撮像する場合には、撮像部4は、CCDを備えておくことが好ましい。このCCDによって、撮像部4は、対物レンズ7から集光された光を電気信号に変換すると共に、デジタル化して、電気信号を蓄積できる。撮像部4は、蓄積した電気信号を変調部5に出力する。
【0054】
変調部5は、デジタルデータである電気信号に対して、周波数変調、振幅変調、位相変調などの変調を実行する。無線通信によって表示ユニット3に送信するために、変調を必要とするからである。
【0055】
変調部5は、周波数変調、振幅変調、位相変調など様々な方式で変調を行なうが、デジタル信号の変調であるので、QPSK、PSK、Shift−PSK、QAM、16QAMなどの変調方式を用いることが適当である。これらの位相変調は、無線通信における通信エラーや受信側での復号エラーに対して強く、表示ユニット3での表示エラーを生じさせにくいメリットを有する。
【0056】
変調部5は、更に変調した信号に搬送波を乗じる。無線通信で送信するためである。搬送波を乗じることで、撮像ユニット2は、無線通信によって画像データを表示ユニット3に送信できる。なお、撮像ユニット2と表示ユニット3とは、離隔した状態で用いられるが、顕微鏡としての使用の特性から大きく離れた距離で用いられることは少ない。このため、搬送波としては、直進性の高い高周波帯域が用いられ、一例としては、2Ghz以上の帯域が用いられる。
【0057】
送信部6は、変調部5で変調された画像データを、無線通信によって表示ユニット3に送信する。送信部6は、予め撮像ユニット2に設けられていても良いし、USBポートに装着されたUSBユニットによって実現されても良い。また、変調部5と送信部6とは、別体の要素とみなしても良いし、一体の要素としてみなしても良い。
【0058】
送信部6は、無線通信によって、表示ユニット3に画像データを送信する。
【0059】
表示ユニット3は、送信部6が送信する画像データを受信する受信部11と、受信部11が受信した画像データを表示する表示部10と、を備える。受信部11は、送信部6と同じく、表示ユニット3が予め備えていても良いし、USBポートに装着されたUSBユニットによって実現されても良い。
【0060】
受信部11は、無線通信によって送信された画像データを受信できるように、送信帯域にチューニングされた帯域を受信できるようにしている。また、受信部11は、変調された画像データを復調する。受信部11は、復調した画像データを表示部10に出力する。
【0061】
表示部10は、画像データの表示を制御する制御機能と、液晶や有機ELを用いた画面に実際に撮像された被写体を表示する機能とを有する。すなわち、表示部10は、使用者の所望に合わせて表示を実行できる。
【0062】
このように、顕微鏡1は、相互に離隔した撮像ユニット2と表示ユニット3を備えて、それぞれを無線通信で接続することで、観察しにくい位置にある被写体を観察することができる。加えて、様々な角度や拡大率で撮像した画像を、表示画面のみで視認できるので、電子機器、電子基板、商品などの良否検査を容易に行なえることができる。
【0063】
次に、図2を用いて、顕微鏡1の使用状態を説明する。
【0064】
図2は、本発明の実施の形態1における顕微鏡の使用状態を示す模式図である。
【0065】
図2は、顕微鏡1を用いる際に、電子基板8を被写体として撮像ユニット2を操作しつつ、撮像ユニット2が画像データを無線通信で表示ユニット3に送信する状態を示している。また、表示ユニット3は、送信された被写体である電子基板8の画像を、表示部10に表示する。
【0066】
撮像ユニット2と表示ユニット3とは、所定距離内で離隔している。ここで、一般的には、一人の使用者が撮像ユニット2を操作しながら表示ユニット3で表示される画像を確認することが多いので、撮像ユニット2と表示ユニット3とは、およそ10m以下の距離をもって離隔していることが多い。図2は、この状態を示している。
【0067】
使用者は、被写体である電子基板8に対して、撮像ユニット2の対物レンズ7を近づける。対物レンズ7は、複数の焦点レンズを備えており、異なる倍率で電子基板8を撮像できる。対物レンズ7を通じて得られた画像は、撮像部4によって電気信号に変換される。変換された電気信号は変調部5で変調されて、変調された画像データは送信部6を通じて、無線通信によって、表示ユニット3へ送信される。
【0068】
使用者は、送信された画像データを、表示ユニット3を操作して表示する例えば、表示ユニット3は、表示用の操作盤を有しており、使用者はこの操作盤を操作することで表示ユニット3において画像を確認できる。
【0069】
撮像ユニット2は、電子基板8に実装された電子部品の実装状態を観察している。この電子部品は、例えば半導体集積回路(以下、「IC」という)である。図2に示されるように、表示部10は、このICの画像を表示している。表示されるICの画像は、電子基板8に実装されている本来のICよりも拡大されて表示される。
【0070】
使用者は、表示部10が、ICの画像を拡大して表示することで、ICの状態をより詳細に確認できる。例えば、ICの実装方向が間違っていたり、半田付けの状態が悪くなっていたりすることを把握できる。あるいは、ICの色味が悪くなっており、故障や不具合であることを早期に把握できる。また、使用者は、ICの画像を確認しながら、焦点を変更したり、拡大率を変更したり、対象とするICの位置を変更したりする。すなわち、使用者は、表示部10で表示される画像を見ながら、撮像ユニット2を動かしたり、撮像ユニット2が備える拡大率変更ボタンを操作したりして、所望の画像を得る。
【0071】
使用者は、表示部10が表示する画像を見ながら撮像ユニット2を操作するので、例えば左手で撮像ユニット2を把持しながら、右手で表示ユニット3を操作する。このため、撮像ユニット2と表示ユニット3との離隔距離は10m以下くらいが通常である。
【0072】
また、被写体が電子機器である場合には、表示部10は、電子機器の外観を表示する。あるいは、被写体が一般的な商品である場合には、表示部10は、商品の外観や内面を表示する。もちろん、被写体がペットや人体であれば、表示部10は、これらの被写体に応じて撮像された画像を表示する。特に、表示ユニット3は、モニター機能を有する必要があるので所定の大きさを必要とする。このため、表示ユニット3を移動させることは難しく、表示ユニット3は、所定位置に据え置かれることが多い。
【0073】
これに対して、撮像ユニット2は、有線コードによる束縛も無いので、自由に移動させることができる。使用者は、表示部10の画像を見ながら、撮像したい被写体に対する撮像ユニット2の位置や方向を自由に変更できる。
【0074】
また、撮像ユニット2を操作する使用者と、表示ユニット3での表示を確認する使用者とが別である場合には、表示ユニット3から離れた位置にある被写体を容易に撮像できる。この場合には、撮像ユニット2と表示ユニット3とは、10m以上の離隔距離をもっていても良い。撮像ユニット2と表示ユニット3とが、10m以下の離隔距離を有することは一例であり、本発明を特に限定するものではない。
【0075】
以上のように、実施の形態1における顕微鏡1を始めとする画像処理装置は、撮像ユニット2と表示ユニット3とが無線通信で結ばれるので、相互に束縛を受けずに、使用者が様々な位置の画像を撮像しつつ確認できる。
【0076】
次に各部の詳細について説明する。
【0077】
(対物レンズ)
対物レンズ7は、被写体を実際に撮像する際に、被写体に対して焦点を合わせて光を集光する。対物レンズ7は、撮像ユニット2の先端に設けられており、被写体との距離によって被写体との焦点を合わせる。対物レンズ7は、口径と焦点距離によって拡大率を決定し、対物レンズ7と対向する焦点レンズとの焦点の比によって拡大率が決定される。
【0078】
対物レンズ7は、種々の光学レンズが用いられ、顕微鏡1の仕様に合致するレンズが用いられれば良い。一般的に流通している光学レンズが用いられれば良いものである。
【0079】
また、対物レンズ7の拡大率を変更できるように、撮像ユニット2は、異なる口径や焦点を有する複数の焦点レンズを備えており、複数の焦点レンズの切り替えによって、対物レンズ7による撮像時の拡大率を変更できる。あるいは、撮像ユニット2は、異なる口径や焦点を有する複数の対物レンズを備えていることも好適である。あるいは、対物レンズ7と焦点レンズとの間に、拡大率を変更するための複数のレンズを備えており、この複数のレンズの切り替えによって対物レンズ7の拡大率を変更できる。
【0080】
対物レンズ7による撮像時の拡大率(あるいは縮小率)の変更には、公知である種々の技術が用いられれば良く、自動焦点合わせ(オートフォーカス)技術が用いられることも好適である。
【0081】
対物レンズ7は、集光した光を撮像部4に出力する。
【0082】
(撮像部)
撮像部4は、対物レンズ7よりえられた光信号を電気信号に変換して、被写体を実際に撮像する。
【0083】
撮像部4は、光信号をアナログ信号である電気信号に変換しても良いし、デジタル信号である電気信号に変換しても良い。ここで、デジタル信号である電気信号に変換する場合には、撮像部4は、CCDを備えていることが好適である。CCDを備えることで、光信号を容易に電気信号に変換できるからである。
【0084】
CCDを用いてデジタル信号である電気信号に光信号を変換した撮像部4は、撮像した画像データを変調部5に出力する。
【0085】
撮像部4は、公知である種々の技術を用いて実現されれば良い。
【0086】
また、CCDを用いて電気信号を得る場合には、CCDの素子数によって撮像する画像の解像度を決定する。このため、顕微鏡1の仕様に応じて撮像部4は、必要なCCDを備える。
【0087】
撮像部4は、被写体を動画として撮像しても良いし、静止画として撮像しても良い。動画として撮像したり静止画として撮像したりする場合には、必要に応じて画像信号を圧縮する。圧縮技術としては、MPEG1、MPEG2、MPEG4、H.263、H.264、JPEGなどの種々の規格によって定まる技術を用いて、撮像した画像を圧縮する。
【0088】
もちろん、顕微鏡1の仕様によっては、撮像部4は、撮像した画像を圧縮せずに、そのまま画素データとして変調部5に出力する。あるいは周波数変換した状態にして、変調部5に出力する。また、表示部10で表示される1枚の画像(動画の場合には、1ピクチャもしくは1フィールド)単位で、撮像部4は、画像データを変調部5に出力しても良い。あるいは、フレームメモリを備えておくことで、撮像部4は、複数の画像単位で、画像データを変調部5に出力しても良い。
【0089】
これらの撮像部4における機能は、公知技術である画像撮像機能が用いられれば良い。
【0090】
なお、撮像部4は、対物レンズ7を包含する概念としての要素で捉えても良い。
【0091】
また、撮像部4は、対象となる被写体の種類によって、色味の解像度を変更しながら撮像することも好適である。撮像部4が、フレキシビリティを備えることで、撮像ユニット2は、種々の画像を、使用者の所望に応じて撮像できる。
【0092】
このフレキシビリティの実現のために、対物レンズ7の拡大率切り替えや撮像部4での撮像方法切り替えのための動作スイッチや動作ボタンが、撮像ユニット2の筐体に設けられていることも好適である。使用者は、これら動作スイッチや動作ボタンを操作することで、撮像における拡大率や撮像する画像の種類(動画と静止画の切り替え、解像度、その他)を、簡単に切り替えることができる。
【0093】
なお、動作スイッチや動作ボタンは、変調方式や送信におけるチャネル帯域の切り替えに用いられても良い。
【0094】
(変調部)
次に変調部5について説明する。
【0095】
変調部5は、撮像部4から出力された画像を、無線通信で送信できるように変調する。
【0096】
変調においては、振幅変調、周波数変調、位相変調など種々の手段が用いられる。但し、変調能力や復調での精度向上のために位相変調を用いるのが好適である。例えば、QPSK、BPSK、QAM、16QAM、64QAMなど、公知技術である種々の変調方式が用いられる。
【0097】
また、変調部5は、無線通信で送信可能なように、搬送波を乗じる。
【0098】
搬送波は、変調部5において乗じられても良いし、送信部6において乗じられても良い。搬送波は、周波数帯域の使用許可などによって定められれば良いが、顕微鏡1の使用状況によって定められる。画像処理装置が顕微鏡1である場合には、使用される状況としては、撮像ユニット2と表示ユニット3との距離が短い場合が多い。また、遮蔽物などが存在する可能性も低い。これらのことから、搬送波としては高周波帯域がその直進性から好ましく、例えば2GHz以上の帯域が用いられる。
【0099】
2GHz以上の帯域とは、無線LANの帯域でもあり、送信部6としてUSBユニットが用いられる場合には、無線LAN用のUSBユニットを流用できる点で、2.4GHzの帯域も適当である。
【0100】
もちろん、2GHz以下の帯域が、搬送波として用いられても良い。
【0101】
変調部5は、画像データを変調し、搬送波を乗じた状態の送信データを、送信部6に出力する。この結果、送信部6を通じて、変調された画像データが、無線通信によって表示ユニット3に送信される。
【0102】
また、変調部5は、撮像部4と独立した別体の要素であっても良いし、一体の要素であっても良い。更に、変調部5は、後述の送信部6と共にUSBユニットの中に設けられ、撮像ユニット2とは取り外し可能な機能であっても良い。
【0103】
(送信部)
送信部6は、変調された画像データを、無線通信によって、表示ユニット3に送信する。すなわち、送信部6は、撮像ユニット2で撮像された画像データを、無線通信によって表示ユニット3に送信する機能を発揮する。この機能によって、撮像ユニット2と表示ユニット3とは、相互に物理的な束縛を受けず、使用者は、自由に撮像ユニット2を操作しながら被写体を撮像できるようになる。
【0104】
送信部6は、搬送波が乗じられた画像データを送信する。送信部6は、無線LANなどに用いられる無線機能を備えたUSBユニットを利用して実現されても良い。すなわち、無線LANなどに用いられるUSBユニットは、変調部5によって変調された画像データに搬送波を乗じて送信する機能を有する。このため、送信部6は、この無線LANなどに用いられるUSBユニットを利用して実現することができる。
【0105】
撮像ユニット2が備える撮像部4が出力する画像データを受け取ったUSBユニットが、無線通信によって、画像データを表示ユニット3に送信する。あるいは、撮像ユニット2が備える撮像部4が出力する画像データに変調部5が変調を施した画像データを受け取って、USBユニットが、無線通信によって、画像データを表示ユニット3に送信する。USBユニットが備える通信機能に合致したビット幅やデータ種類となる画像データ(変調済みでも変調前でも良い)を、撮像部4が生成してUSBユニットに出力することで、USBユニットを利用した送信部6が実現できる。
【0106】
このように、無線LANなどに用いられるUSBユニットを利用することで、撮像ユニット2は、容易に無線通信によって画像データを送信できる。
【0107】
言い換えると、撮像ユニット2は、撮像部4に係る要素だけを備えており、着脱可能なUSBユニットによって、無線通信機能をさらに備えることも好適である。このように、USBユニットの着脱によって、事後的に送信機能を備えることで、撮像ユニット2は、容易に無線通信機能をも備えることができる。ユーザーにとっても使い勝手が良くなるメリットがある。
【0108】
また、送信部6は、周波数帯域において分割された複数のチャネルを用いて、画像データを送信することも好適である。
【0109】
図3は、本発明の実施の形態1における周波数帯域分割多重を示す模式図である。図3では、横軸が周波数を示しており、縦軸はゲインを示している。
【0110】
また、図3では、周波数帯域が4つのチャネルに分割されている、いわゆる周波数分割多重(FDM)を示している。もちろん、4つ以外のチャネル数に分割されても良いし、各チャネル同士は、離隔した状態で分割されても良い。チャネル間干渉を防止するためである。
【0111】
送信部6は、所定の搬送波における周波数帯域で画像データを送信する。このとき、当該周波数帯域であっても、通信状態の良い帯域と通信状態の悪い帯域が存在することがある。このような場合に、図3に示されるように、送信部6は、複数のチャネルに分割して画像データを送信することで、受信する表示ユニット3は、これらのチャネルの内でもっとも通信状態の良いチャネルを受信することができる。
【0112】
あるいは、画像データの種類によって、送信部6は、異なるチャネルを利用することも良い。
【0113】
例えば、図3では、Ch1、Ch2,Ch3、Ch4の4つのチャネルを備えている。Ch1には、静止画のデータが割り当てられ、Ch2〜CH4のそれぞれには、異なる変調方式で変調された動画データが割り当てられている。このように、異なるフォーマットによる画像データのそれぞれが、複数のチャネルのそれぞれに割り当てられることで、使用者が所望する画像のみを、好みに応じて取り出すことができる。
【0114】
このように、送信部6は、周波数帯域を複数のチャネルに分割した上で、フレキシビリティの高い送信を行なうことができる。
【0115】
もちろん、周波数分割多重のみではなく、直行周波数分割多重(OFDM)、時間分割多重(TDMA)を利用して、送信部6は、異なる画像データを同時に送信できる。
【0116】
以上のように、撮像ユニット2は、撮像した画像を変調し、無線通信によって送信できる。
【0117】
(受信部)
次に、受信部11について説明する。
【0118】
受信部11は、表示ユニット3に備えられる。受信部11は、送信部6が送信する画像データを受信する。受信する画像データは、送信部6によって送信されるので、搬送波が乗じられており、所定の周波数帯域において無線通信される。
【0119】
受信部11は、送信部6が使用する周波数帯域に合わせたチューニングによって送信される無線信号を受信できる。また、必要に応じて受信信号のゲインを高めるために、オート・ゲイン・コントロール(以下、「AGC」という)を用いることも好適である。
【0120】
受信部11は、送信部6と同じように、無線LANなどに用いられるUSBユニットを利用することもよい。無線LANに用いられるUSBユニットは、受信した無線信号を復調して、必要なデータを取り出す機能を備えるからである。この機能を利用して、受信部11は、受信した無線信号から画像データを取り出すことができる。
【0121】
受信部11が、USBユニットを利用する場合には、表示ユニット3は、USBユニットを着脱可能なポートを備えており、USBユニットが装着されることで、受信機能を発揮できる。
【0122】
あるいは、表示ユニット3が備える専用の機器や要素であってもよい。例えば、受信部11は、専用のアンテナと電子素子から構成されてもよい。これらの電子素子に加えて、プロセッサを備え、プロセッサが動作させるソフトウェアプログラムをも活用して、受信部11は、送信されるデータを受信しても良い。
【0123】
受信部11は、受信した無線信号から画像データを取り出して、画像データを表示部10に出力する。
【0124】
(表示部)
表示部10は、受信して復調された画像データを、表示画面上に表示する。
【0125】
このため、表示部10は、表示における制御と実際に表示する表示画面とを包含した要素である。
【0126】
表示画面としては、CRT,液晶画面、有機EL画面、プラズマディスプレイ画面など、種々の画面を含む。もちろん、これ等以外の画面であっても、画像を表示できる機能を有するものであればなんでもよい。
【0127】
表示部10は、受信部11より出力された画像データを、必要に応じて復調する。復調された画像データは、表示画面上に表示できる。加えて、表示部10は、表示画面上に画像を表示するための、種々の制御信号を生成し、制御信号によって表示画面上に画像を表示することを制御する。例えば、画像の同期信号などを出力する。
【0128】
また、表示ユニット3は、その筐体に使用者が操作できる動作スイッチや動作ボタンを備えており、使用者からの操作に従って、画像のピントを合わせたり、画像の表示における拡大・縮小を実行したりする。
【0129】
また、受信部11が、着脱可能な要素である場合には、表示部10が、表示画面と共に表示ユニット3が予め備える最小限の要素となる。
【0130】
なお、表示ユニット3は、汎用のモニター、汎用のパーソナルコンピュータなどの機器が用いられても良い。これらの機器は予め表示機能を有しており、後付のUSBユニットが装着されることで、撮像ユニット2から送信される画像データを受信して表示できる。これら汎用の機器が備える表示画面に、画像が表示される。このとき、表示部10が備える表示制御機能も、これら汎用の機器が予め備えていることが多く、表示ユニット3は、これら汎用の機器を適切に活用できる。
【0131】
以上のように、実施の形態1における画像処理装置は、顕微鏡1を例として明らかな通り、撮像しにくい被写体であっても、使用者は自由に撮像しつつ被写体の状態を確認できる。結果として、電子機器、電子基板、各種商品の良否検査を容易に実行できると共に、ペットや人体のチェックも行なうことができる。
【0132】
(実施の形態2)
【0133】
次に、実施の形態2について説明する。
【0134】
実施の形態2では、復調の劣化状況に応じて、使用者への最適な表示を行なう画像処理装置を説明する。
【0135】
なお、実施の形態2においても、画像処理装置の例として顕微鏡を用いて説明する。
【0136】
図4は、本発明の実施の形態2における顕微鏡の模式図である。
【0137】
顕微鏡1は、実施の形態1で説明したのと同様に、撮像ユニット2と表示ユニット3とを備える。また撮像ユニット2と表示ユニット3とは、無線通信によって接続される。すなわち、撮像ユニット2は、撮像した画像データを無線通信によって表示ユニット3に送信する。
【0138】
表示ユニット3は、送信される無線信号を受信する受信部11と、受信された画像データを表示する表示部10を備える。更に、表示ユニット3は、受信された画像データを復調する復調部20を更に備える。復調部20は、変調されている画像データを復調すると共に、必要に応じて、表示に可能となる画素データに変換する。
【0139】
復調部20は、変調部5が施した変調方式と対応する復調方式によって、画像データを復調する。
【0140】
ここで、復調部20は、受信した無線信号に基づいて画像データを復調する。
【0141】
図5は、本発明の実施の形態2における撮像ユニット2と表示ユニット3とをあわせた機能を示すブロック図である。
【0142】
復調部20は、受信部11より出力されるデータを受けて、当該データに対して必要な復調処理を行う。この復調処理によって、復調部20は、撮像ユニット2で撮像された画像データを復調でき、復調された画像データを、表示部10に出力する。
【0143】
表示部10は、復調部20から出力される画像データを用いて、表示画面に画像を表示できる。表示部10が受け取る画像データは、復調がなされているので、受け取った画像データをそのまま表示画面上に表示できる。このため、表示部10における処理負担が少なくなるメリットがある。
【0144】
なお、復調部20は、表示部10と独立した別体の要素でも良いし、一体化した要素であっても良い。
【0145】
ここで、図4に示されるように、無線通信の途中で、通信障害が発生すると、送信される無線信号には、欠落があったりノイズが生じていたりする。このような欠落やノイズを含む無線信号を復調する場合には、復調部20は、復号エラーを検出することになりうる。
【0146】
復号エラーは、例えば、復調時に計測されるビットエラーレート(以下、「BER」という)や、エラー訂正機能を有する場合には、エラー訂正機能が検出する信頼性値などを含む。これらの値によって、復調部20は、復号エラーの発生や、復号エラーのレベルを判定できる。
【0147】
復調部20は、この復号エラーを検出することで、復号エラーが所定値以上であるか所定値未満であるかを判定できる。
【0148】
復調部20が、所定値以上の復号エラーを検出する場合には、表示部10が表示する画面には、画像の欠落が生じたりノイズが生じたりする状態である。デジタルテレビなどの画像処理装置であれば、エラー訂正機能を盛り込むことで対応ができるが、顕微鏡などではそれらの機能まで盛り込むことはコスト的に適さないことがある。ビタビ復号やリードソロモンなどのエラー訂正機能は、回路規模やソフトウェアの規模を要し、コストを増大させる。
【0149】
あるいは、コスト問題を無視してエラー訂正機能を盛り込んだとしても、復号エラーが所定値以上である場合には、表示部10が表示する画像に乱れが生じうる。
【0150】
デジタルテレビなどであれば、表示する画像に乱れが生じても、視聴者が不快になる程度で済む。しかし、顕微鏡の場合には、電子機器や商品などの良否検査を行なうこともあるので、画像の乱れが良否検査の精度に影響を及ぼすことがある。画像が乱れることで、使用者が商品の欠陥を見逃したり、あるいは欠陥でないものを欠陥と判断したりする。特に、商品等の良否検査を、自動検査で行なっている場合には、自動検査装置が、欠陥を見逃したり、誤って欠陥とみなしたりする問題がある。
【0151】
このように考えると、顕微鏡においては、所定値以上の復号エラーが検出される場合には、表示部10は、画像の更新を継続するよりも、画像を停止させて表示することが好適である。画像が停止して更新されなければ、使用者や自動検査装置は、復号エラーがあったものとして、本来とは異なる良否検査を行なう心配が無いからである。
【0152】
あるいは、表示部10は、画面を停止させるだけでなく、画像表示をやめて、ブラックアウトにしてしまうこともよい。表示部10が、画像を停止させるとは、このブラックアウトにすることも含む。
【0153】
ブラックアウトになったり、画像が更新されないままに表示が停止したりすることによって、使用者や自動検査装置は、復号エラーを把握して、良否検査を一時停止にすることができる。
【0154】
あるいは、所定値以上の復号エラーが検出される場合に、表示部10は、警告画面を表示することも好適である。
【0155】
警告画面としては、表示画面に「復号エラーが生じています」などの表示を行なうことがある。図6は、この警告画面を表示画面21が表示している状態を示している。図6は、本発明の実施の形態2における表示ユニットの模式図である。
【0156】
表示部10は、備えられているメモリに予め警告画面の画像データを記憶しておき、所定値以上の復号エラーを検出する場合には(検出するのは、復調部20であっても表示部10であっても他の要素であっても良い)、この記憶している警告画面の画像データを読み出して、表示画面21に表示する。
【0157】
この警告画面を見た使用者や自動検査装置は、良否検査を一時停止することができ、精度の低い良否検査を行なってしまう問題を回避できる。
【0158】
また、復調部20が所定値以上の復号エラーを検出する場合には、表示部10および復調部20の少なくとも一方は、使用者に警告を発することも好適である。
【0159】
例えば、音声、振動および画像の一つ若しくは組み合わせによって、使用者に警告を発する。
【0160】
このような警告によっても、使用者は、復号エラーによる良否検査の失敗を回避できる。もちろん、自動検査装置が用いられる場合には、この警告が自動的かつ直接的に、自動検査装置の動作を停止させることも好適である。
【0161】
また、この警告は、表示ユニット3によって発せられることでも良いが、図7に示されるように、表示ユニット3と別体である警告発生器によって発せられても良い。
【0162】
図7は、本発明の実施の形態2における表示ユニットの模式図である。
【0163】
図7は、表示ユニット3の外部に、警告発生器30が備えられている状態を示している。
【0164】
警告発生器30は、表示ユニット3と電気的に接続しており(なお、図7では有線接続しているが無線接続していても良い)、表示ユニット3が備える復調部20および表示部10の少なくとも一方からの信号を受ける。復調部20および受信部10の少なくとも一方の要素は、所定値以上の復号エラーを検出する。これ等の要素は、所定値以上の復号エラーを検出する場合には、その検出結果を警告発生器30に出力する。
【0165】
警告発生器30は、音声、振動および画像の少なくとも一つもしくはこれらの組み合わせを用いて、使用者に復号エラーが発生し、表示される画像の信頼性が低いことを警告する。警告発生器30が警告を発することで、使用者は所定値以上の復号エラーによって、表示される画像の信頼性が低く、良否検査などには適さないことを知ることができる。もちろん、表示画面21に表示される画像と合わせて認知することもできる。
【0166】
また、実施の形態2で説明した、表示部10による表示画像の制御、警告の発生および警告発生器30による処理のそれぞれは、適宜組み合わせて用いられればよい。
【0167】
以上のように、実施の形態2における画像処理装置は、復号エラーの発生によって、表示される画像によるミスリードを防止できる。
【0168】
(実施の形態3)
【0169】
次に、実施の形態3について説明する。
【0170】
実施の形態3では、撮像ユニット2に起因する問題が発生する場合に、使用者に対して警告を発する画像処理装置について説明する。
【0171】
撮像ユニット2は、使用者の操作によって、被写体を撮像する。撮像においては、対物レンズ7が被写体に焦点を合わせて撮像する。
【0172】
ここで、使用者は、表示ユニット3が表示する画像を見ながら、撮像ユニット2を操作する。撮像ユニット2は、表示ユニット3と別体であるので、自由に操作することができるが、表示ユニット3を注視した状態では、使用者は撮像ユニット2を見る時間は相対的に少なくなる。一方で、被写体を撮像する際には、対物レンズ7と被写体との距離によって、撮像される画像の焦点が決定される。
【0173】
このため、対物レンズ7と被写体との距離が不適当な場合には、被写体の画像がピンボケ状態で表示ユニット3に表示されることになってしまう。
【0174】
画像処理装置が、デジタルテレビなどのような動画を表示し、視聴者に動画を見せるだけの機能であればピンボケ画面が若干混ざったとしても問題はない。
【0175】
しかしながら、画像処理装置が顕微鏡であって、表示される画像をチェックすることによって、被写体である電子機器や商品の良否検査を行なう場合には、ピンボケ画像は、良否判定の精度を著しく悪化させ、欠陥を見逃すことにもなりかねない。
【0176】
一方で、撮像ユニット2がオートフォーカス機能を有していたり、広い範囲にわたって焦点を合わせる機能を有していたりしても、撮像ユニット2を操作する最中に、ピンボケが生じる可能性は否定できない。このようなピンボケ画像が混じってしまうと、良否検査などに悪影響が生じうる。
【0177】
このため、表示部10は、表示する画像が所定値以上の焦点合致不足である状態を検出する。表示部10が、表示する画像の焦点が不適切であることを検出する場合には、撮像ユニット2および表示ユニット3の少なくとも一方は、使用者に警告を出力する。
【0178】
警告は、音声、振動および画像の少なくとも一つかもしくはこれらの組み合わせであり、使用者に焦点不具合が生じていることを通知できれば良い。使用者は、商品等の良否検査において、長時間表示ユニット3を観察する必要があるので、注意力が散漫になりがちである。このような状態で、表示される画像がピンボケになっても、すぐには気づかない。
【0179】
一方で、警告が発せられれば、再び画像に注視するようになるし、ピンボケ画像を見逃して、誤った良否判定をするリスクを低減できる。
【0180】
表示部10は、表示する画像の周波数値や画素値を解析することで、ピンボケ状態を検出できる。あるいは、撮像部4は、撮像して電気信号に変換する画像の周波数値や画素値を解析することで、ピンボケ状態を検出できる。前者のように、表示部10が、表示する画像のピンボケ状態を検出する場合には、表示ユニット3が警告を発し、後者のように、撮像部4がピンボケ状態を検出する場合には、撮像ユニット2が警告を発する。
【0181】
いずれのユニットが警告を発する場合でも、使用者は、画像がピンボケ状態であることを即座に認識でき、良否検査などにおいて欠陥や不良を見逃すことがなくなる。
【0182】
また、撮像ユニット2は、対物レンズ7を保護するレンズカバーを備えることがある。レンズカバーは、フィルターや集光性能を向上させる役割も有する。
【0183】
図8は、本発明の実施の形態3における撮像ユニットの斜視図である。
【0184】
図8は、撮像ユニット2の対物レンズ7の周囲に、対物レンズ7(レンズ部といして把握しても良い)を保護するレンズカバー40が設けられている状態を示している。
【0185】
このレンズカバー40は、対物レンズ7を保護するために設けられる。しかしながら、使用者が撮像ユニット2を操作する際に、レンズカバー40が被写体に接触したり衝突したりする可能性がある。レンズカバー40は、樹脂、金属、紙など種々の素材で形成されており、これらの素材で形成されているレンズカバー40が、被写体に接触すると問題を生じさせる。例えば、被写体が電子基板や精密部品である場合には、これらを損傷させる可能性がある。医療現場で人体やペットが被写体である場合には、人体やペットを傷つける恐れもある。
【0186】
このように、レンズカバー40は、対物レンズ7の保護には適しているが、被写体との接触や衝突に注意する必要がある。
【0187】
ここで、レンズカバー40が接触センサーや距離センサーを備えることで、撮像ユニット2は、レンズカバー40と被写体のとの距離を測定できる。この測定において、レンズカバー40(あるいは対物レンズ7)が所定距離以下に近接する場合には、撮像ユニット2は、使用者に対して警告を発する。
【0188】
使用者は、この警告を受けて、対物レンズ7やレンズカバー40による被写体への衝突などを未然防止できる。この結果、良否検査などの対象となる被写体を損傷させることもなくなる。
【0189】
このように、レンズカバー40を備えることでのメリットを享受しつつデメリットを低減できる。
【0190】
また、実施の形態1〜3で説明した顕微鏡1を、顕微鏡1を例とする画像処理装置と、撮像ユニット2および表示ユニット3の少なくとも一方を制御する制御装置と、撮像ユニット2および表示ユニット3の少なくとも一方に電力を供給する供給部とを備える画像処理システムに展開することも好適である。
【0191】
図9は、本発明の実施の形態3における画像処理システムのブロック図である。
【0192】
図9より明らかな通り、画像処理システム50は、撮像ユニット2および表示ユニット3の少なくとも一方を制御する制御装置51と、撮像ユニット2および表示ユニット3の少なくとも一方に電力を供給する供給部52とを備える。制御装置51と供給部52のそれぞれは、表示ユニット3を構成する機器に組み込まれていてもよく、撮像ユニット2に対しては無線通信で電力や制御信号を供給しても良い。
【0193】
制御装置51は、撮像ユニット2や表示ユニット3を制御するが、例えば汎用のコンピュータなどが用いられても良い。
【0194】
また、画像処理システム50が備える撮像ユニット2と表示ユニット3とは、実施の形態1〜3で説明した機能を備える。
【0195】
以上のように、画像処理システム50に展開されることで、顕微鏡を始めとする画像処理装置を、被写体の検査など、様々な用途に容易に適用することが可能となる。
【0196】
以上、実施の形態3における画像処理装置は、使用において問題となりうる様々な状況に対応し、使用者に適切に警告を発することで、使用上の問題を回避できる。なお、警告を発するのに合わせて、撮像を停止したり表示を停止したりするなどの自動的な対応を行なうことも好適である。
【0197】
なお、実施の形態1〜3で説明された画像処理装置や画像処理システムは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0198】
1 顕微鏡
2 撮像ユニット
3 表示ユニット
4 撮像部
5 変調部
6 送信部
7 対物レンズ
8 電子基板
9 電子部品
10 表示部
11 受信部
20 復調部
21 表示画面
30 警告発生器
40 レンズカバー
50 画像処理システム
51 制御装置
52 供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像データを無線通信で出力する撮像ユニットと、
前記撮像ユニットから無線通信によって前記画像データを受信して、該画像データを表示する表示ユニットを備え、
前記撮像ユニットは、
前記被写体を拡大して撮像可能な撮像部と、
前記画像データを無線通信によって送信する送信部と、を有し、
前記表示ユニットは、
前記送信部が無線通信によって送信する前記画像データを受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記画像データを表示する表示部と、を備え、
前記撮像ユニットと前記表示ユニットとは、所定距離内で離隔して用いられる、画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理装置は、顕微鏡である請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記撮像ユニットと前記表示ユニットとは、10m以下の距離で離隔して使用される請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記送信部および前記受信部は、2GHz以上の周波数帯域で画像データを送受信する請求項1から3のいずれか記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記送信部および前記受信部は、所定帯域を複数のチャネルに分割して前記画像データを送受信する請求項1から4のいずれか記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記表示ユニットは、受信した画像データを復調する復調部を更に備え、
前記復調部が所定値以上の復号エラーを検出する場合には、前記表示部は、画像を停止させて表示する請求項1から5のいずれか記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記表示ユニットは、受信した画像データを復調する復調部を更に備え、
前記復調部が所定値以上の復号エラーを検出する場合には、前記表示部は、警告画面を表示する請求項1から5のいずれか記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記復調部は、所定値以上の復号エラーを検出する場合には、警告を発する請求項6又は7記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記表示部が表示される画像の焦点が不適の場合には、前記撮像ユニットおよび前記表示ユニットの少なくとも一方は、警告を発する請求項1から8のいずれか記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記撮像ユニットは、被写体に焦点を合わせるレンズ部と、前記レンズ部を保護するレンズカバーを備え、
前記レンズ部およびレンズカバーの少なくとも一部が、被写体に所定距離以下に近接する場合には、警告を発する請求項1から9のいずれか記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記被写体は、電子基板、電子機器、精密機器、ペットおよび患者の少なくとも一つである請求項1から10記載の画像処理装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか記載の画像処理装置と、
前記撮像ユニットおよび前記表示ユニットの少なくとも一方を制御する制御装置と、
前記撮像ユニットおよび前記表示ユニットの少なくとも一方に電力を供給する供給部と、を備える画像処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−211662(P2011−211662A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79940(P2010−79940)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(301048080)スリー・アールシステム株式会社 (1)
【Fターム(参考)】