説明

画像処理LSI、及び撮像装置

【課題】低照度下かつストロボが使用できない状況での撮影において、S/Nの低下、解像度の低下を軽減しつつ、最適な露出の静止画像が得られるようにする。
【解決手段】通常露光信号、及び混合露光信号を入力とし、通常露光信号及び混合露光信号に対して所定のプリプロセスをそれぞれ施して通常露光データ及び混合露光データを生成する露光データ生成回路220を設ける。また、通常露光データ及び混合露光データのうちの一方の露光データの画素を、他方の露光データと同サイズになるように、一方の露光データの画素を他方の露光データ上にマッピングする画素マッピング回路240を設ける。そして、マッピングされた他方の露光データの画素と、もう一方の露光データとに対して所定の合成係数により重み付け加算平均を画素合成回路270によって行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影画像の画質改善を行なう画像処理LSI、及び電子スチルカメラ等の撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、撮像素子を用いて静止画像を得る電子スチルカメラにおいて、低照度下かつストロボが使用できない状況での撮影は、撮像素子の露光時間を延ばすスローシャッター撮影か、撮像素子の感度を高める高感度撮影により実現される。
【0003】
スローシャッター撮影は、必要な露光量が得られるため撮影画像のS/Nは良好であるが、手ブレ等の影響を受けやすいために不鮮明になる可能性が高い。
【0004】
一方、高感度撮影は、必要な露光量が得られないという問題に対して、撮像素子からの出力信号をアナログ回路もしくはデジタル回路で増幅するか、あるいは、撮像素子の各画素の電荷を水平および垂直方向に数画素分加算して信号レベルを高める画素混合により解決している(例えば特許文献1を参照)。高感度撮影は、露光時間が延長されることがないため手ブレの影響は少ない。
【特許文献1】特開2000−324504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高感度撮影において撮像素子からの出力信号を増幅する場合は、ノイズ成分も合わせて増幅されるため、十分な露光量が得られる場合に比べてS/Nが低下する。また、画素混合を行う場合は、撮像素子の総画素数に対して撮影画像の画素数が著しく減少するため解像感が低下する。
【0006】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであり、低照度下かつストロボが使用できない状況での撮影において、S/Nの低下、解像度の低下を軽減しつつ、最適な露出の静止画像が得られるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、
撮影画像の画質改善を行なう画像処理LSIであって、
行列状に配した画素群からなる撮像素子から光電変換により蓄積された電荷を画素毎に独立して読み出す通常読出しによって得られた通常露光信号に基づいて生成された通常露光データ、及び前記電荷を垂直及び水平方向に混合して読み出す混合読出しによって得られた混合露光信号に基づいて生成された混合露光データのうちの、前記混合露光データを前記通常露光データ上に、前記通常露光データと同サイズになるようにマッピングする画素マッピング回路と、
前記画素マッピング回路がマッピングした一方の露光データの画素と他方の露光データの画素とに対して、所定の合成係数により重み付け加算平均を行う画素合成回路と、
を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低照度下かつストロボが使用できない状況での撮影において、S/Nの低下、解像度の低下を軽減しつつ、最適な露出の静止画像を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、一度説明した構成要素と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
《発明の実施形態1》
本発明に係る画像処理LSIが撮像装置100に適用された例を説明する。
【0011】
(撮像装置100の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る撮像装置100の構成を示すブロック図である。撮像装置100は、同図に示すように、撮像レンズ110、撮像素子120、駆動回路130、アナログ信号処理回路140、A/D変換器150、撮影条件入力部160、CPU170、外部メモリ180、LCD190(LCD:Liquid Crystal Display)、記録メディア200、及び画像処理LSI210を備えている。
【0012】
撮像レンズ110は、集光した光学情報を撮像素子120上に結像させる。
【0013】
撮像素子120は、後述するように駆動回路130が生成した撮像素子駆動用パルスを受けて、その画素(感光部)に入力された光学像を電気信号(撮像出力信号)に変換して出力する。撮像装置100では、撮像素子120からの電荷読出し方法として、通常の読み出し、及び画素混合による混合読出しとがある。混合読出しでは、例えば、一般的なベイヤー配列の撮像素子において混合単位が水平×垂直=3×3の9画素の場合には、撮像素子120は、図2のように画素Aを中心として周辺8画素の電荷を加算した結果を出力する。
【0014】
駆動回路130は、読み出し方法(通常の読み出し及び混合読出し)に応じた撮像素子駆動用パルスを生成する。
【0015】
アナログ信号処理回路140は、撮像素子120から撮像出力信号を読み出して所定のレベルまで増幅する。この際、アナログ信号処理回路140は、通常露光信号の信号レベルが混合露光信号の信号レベルと揃うように増幅する。これにより、低S/Nで高解像度の露光データが得られる。
【0016】
A/D変換器150は、アナログ信号処理回路140の出力をデジタル信号に変換して出力する。
【0017】
撮影条件入力部160は、撮影者により撮影条件が設定されるようになっている。
【0018】
CPU170は、ISO感度決定部171を有しており、ISO感度決定部171は、入力された測光情報(後述)と、撮影者が撮影条件入力部160に設定した撮影条件とを合わせてISO感度の決定を行う。詳しくは、ISO感度決定部171では、撮影条件入力部160のISO感度が固定されているならその固定値をISO感度として決定し、そうでないなら測光情報から適切な値を算出し出力する。
【0019】
外部メモリ180は、モニタ露光データ180a、通常露光データ180b、混合露光データ180cの露光データ(何れも後述)、表示用あるいは記録用の画像データ等を格納するメモリである。
【0020】
LCD190は、撮影者がフレーミングに用いる表示画像データ等を表示するための表示デバイスである。
【0021】
記録メディア200は、撮像した画像データを記録するためのメディアである。
【0022】
画像処理LSI210は、露光データ生成回路220、測光回路230、画素マッピング回路240、周波数成分算出回路250、輝度レベル算出回路260、画素合成回路270、合成係数生成回路280、及び画像処理回路290を備えている。
【0023】
露光データ生成回路220は、A/D変換器150が出力したデジタル信号に対して傷画素補正等のプリプロセスを施す。一般に画素混合を行うと、撮像素子120からの信号は撮像素子上の画素配列順とは異なる順序で出力されるため、露光データの並べ替え処理が必要になる。そのため、露光データ生成回路220では、並べ替え処理を行うものとする。なお、並べ替え処理の詳細については既存技術のため言及しない。
【0024】
ここで、撮像装置100における撮影のシーケンスには、モニタシーケンス、通常露光シーケンス、混合露光シーケンスがあり、露光データ生成回路220がモニタシーケンス、通常露光シーケンス、混合露光シーケンスにおいてそれぞれ出力したデータを、それぞれモニタ露光データ180a、通常露光データ180b、混合露光データ180cと呼ぶことにする。
【0025】
測光回路230は、測光情報を出力する。
【0026】
画素マッピング回路240は、外部メモリ180から読み出された混合露光データ180cの画素を画素数の異なる通常露光データ180b上にマッピングするため、拡大処理と並行移動を行う。なお、画素マッピング回路240は、読み出された混合露光データ180cを輝度レベル算出回路260に出力する。
【0027】
図3に画素マッピング回路240の構成例を示す。混合露光信号と通常露光信号の画素数比は画素混合の際の混合単位で一意に決定されるので、まず、拡大処理部241で混合露光信号の固定倍率による拡大処理を行なう。拡大処理については一般的なアルゴリズムでよく、特に限定しない。次に、拡大された混合露光信号は、位相ズレ検出部242に入力され、リファレンスとなる通常露光信号との位相差が算出される。そして、算出された位相差に基づいて、ズレ補正部243で混合露光信号の画素単位の平行移動を行なってズレを補正する。
【0028】
図4に位相ズレ検出部242の構成例を示す。混合露光信号、及び通常露光信号は、それぞれ、ハイパスフィルタ242aで輪郭抽出が行なわれた後、2値化フィルタ242bで2値化され、ブロックメモリ242cに格納される。そして、パターンマッチング回路242dは、ブロックメモリ242c上の2値化データを、位相をずらしながら比較し、最もマッチングした(差分が少ない)時の位相差を出力する。なお、ブロックメモリ242cの入力は、2値化データではなく直接露光信号を入力してもよい。ただし、その際は回路が複雑になる可能性が高い。また、撮像装置が手ブレ検出回路を別途備えている場合は、パターンマッチング回路242dに手ブレ検出回路から手ブレ情報を入力することにより、マッチング精度及び速度の向上が期待できる。
【0029】
周波数成分算出回路250は、入力データ上の小領域における周波数スペクトルを求め、合成係数生成回路280に出力する。なお、合成係数生成回路280が必要とする情報は、露光データ上の小領域が輝度エッジを多く含んでいるか否かである。そのため、周波数成分算出回路250はFFT等の複雑な回路である必要はなく、例えば図5に示すように単純なハイパスフィルタであってもよい。図5に示す回路では、入力信号を垂直3ライン分(入力信号がベイヤー配列の場合は1ライン飛ばし)のデータをラインメモリ251に格納し、後段のフィルタ部252で信号をライン毎にフリップフロップで遅延させ、水平方向(入力信号がベイヤー配列の場合は1画素飛ばし)の加算を行った後に、各ラインの出力を加算しフィルタ中心の信号から減算することでハイパス信号を得ている。
【0030】
輝度レベル算出回路260は、画素マッピング回路240を介して入力された混合露光データ180cの小領域から平均輝度レベルを求め、合成係数生成回路280に出力する。平均輝度レベルは、図6のように、小領域における露光信号S01を、カラーチャンネル毎に重み付け加算することで得られる(図中A〜DはR,Gr,Gb,B画素の分光特性と加算画素数に基づく定数)。なお、平均輝度の代わりにR,Gr,Gb,Bの各信号の平均レベルを合成係数生成回路280に出力してもよい。
【0031】
画素合成回路270は、画素マッピング回路240の出力と通常露光データ180bとを合成して出力する。画素合成回路270の構成としては、図7に示すように混合露光信号に合成係数(後述)、通常露光信号に合成係数の補数をそれぞれ乗算し、加算するだけの単純な回路でよい。
【0032】
合成係数生成回路280は、物理的及び視覚的にノイズが顕著かつ解像度劣化が視認されにくい、露光データの平坦部及び低輝度部ほど、高S/Nで低解像度である混合露光データの混合比が大きくなるように、画素合成回路270で使用する合成係数を生成する。これにより、画素合成回路270の出力信号は、視覚的に高S/Nで高解像となり、高画質な記録用画像データが得られる。
【0033】
合成係数生成回路280は、入力された平均輝度レベル、ハイパス信号(あるいは周波数スペクトル)、ISO感度から混合露光データの通常露光データに対する合成比率を生成する。図8に合成係数生成回路280の構成例を示す。平均輝度レベル、ハイパス信号(あるいは周波数スペクトル)、ISO感度は、それぞれ合成比率関数A,B,Cに入力し、あらかじめ設定された関数テーブルにより一意の出力を得る。最終的な混合露光データの合成係数は、各合成比率関数の出力の積で決定される。
【0034】
なお、合成比率関数Cの出力は露光データ全体に対して一律に決定するため、合成比率関数Cの出力が1.0あるいは0.0となった場合は、通常露光データ、あるいは混合露光データが不要になる。その際は、不要になる方の露光データを生成する露光シーケンスを行わないことで撮影時間の短縮を図ることが可能になる。
【0035】
画像処理回路290は、モニタ露光データ180aからLCD190の表示用データである表示画像データへの変換、及び画素合成回路270の出力から記録メディア200のための記録用画像データへの変換を行なって、それぞれを外部メモリ180に出力する。
【0036】
(撮像装置100の動作)
撮像装置100における処理は図9に示すように、モニタシーケンス、混合露光シーケンス、通常露光シーケンス、画素合成・記録シーケンスから構成されている。
【0037】
モニタシーケンスは、静止画撮影前に撮影者がフレーミングを行う状態であり、モニタシーケンスは1フレーム(一般に1/60sec)間隔で繰り返し開始される。以下、モニタシーケンスにおける動作を説明する。
【0038】
撮像レンズ110により集光された光学情報は、撮像素子120上に結像される。駆動回路130が生成した撮像素子駆動用パルスが撮像素子120に入力されると、撮像素子120は、その画素(感光部)に入力された光学像を電気信号に変換して出力する。その際、高フレームレートを維持するために画素からの電荷読出し方法として画素混合による混合読出しを行う。
【0039】
アナログ信号処理回路140は、撮像素子120から読み出した撮像出力信号を所定のレベルまで増幅し、A/D変換器150は、アナログ信号処理回路140の出力をデジタル信号に変換する。そして、露光データ生成回路220は、A/D変換器150が出力したデジタル信号に対してプリプロセスを施した後に測光回路230に出力するとともに、モニタ露光データ180aとして外部メモリ180に格納する。なお、一般に画素混合を行うと、撮像素子120からの信号は撮像素子上の画素配列順とは異なる順序で出力されるので、露光データ生成回路220は、露光データの並べ替え処理を行う。
【0040】
画像処理回路290は、モニタ露光データ180aを読み出して表示画像データ180dに変換した後に、外部メモリ180に格納する。この表示画像データ180dは、LCD190等の表示デバイスに出力され、撮影者がフレーミングに用いる。
【0041】
一方、測光回路230は測光情報をCPU170に出力し、CPU170は、測光回路230から入力された測光情報と、撮影者により撮影条件入力部160に設定された撮影条件とを合わせて、ISO感度決定部171でISO感度の決定を行う。ISO感度決定部171が決定したISO感度に基づいて、CPU170は、画素混合による感度上昇を加味しつつ、アナログ信号処理回路140の信号増幅率を設定する。
【0042】
モニタシーケンス中(例えば、図9のAのタイミング)に撮影指示が下ると、次の露光可能タイミング(すなわち電荷読出し動作が終了した時点)から、混合露光シーケンスが開始される。混合露光シーケンスでは、モニタ動作時と同様に、撮像レンズ110、撮像素子120、アナログ信号処理回路140、A/D変換器150、露光データ生成回路220を経て得られた混合露光信号が、混合露光データ180cとして外部メモリ180に格納され、混合露光シーケンスが終了する。
【0043】
なお、混合露光シーケンスにおけるアナログ信号処理回路140の信号増幅率は、直前のモニタシーケンスの値を継続して設定する。また、混合露光シーケンスにおける画素混合の混合単位は任意であり、またモニタシーケンスにおける画素混合の混合単位と異なってもかまわない。
【0044】
混合露光シーケンスの開始後、次の露光可能タイミングから通常露光シーケンスが行われる。通常露光シーケンスでは、モニタ動作時と同様に、撮像レンズ110、撮像素子120、アナログ信号処理回路140、A/D変換器150、及び露光データ生成回路220を経て得られた信号が、通常露光データ180bとして外部メモリ180に格納される。通常露光シーケンスにおけるアナログ信号処理回路140の信号増幅率は、直前のモニタシーケンスの測光情報をホールドしておき、CPU170が混合露光データ180cと通常露光データ180bの平均画素レベルが同等になるように設定する。
【0045】
なお、原理的に混合露光シーケンスの方が通常露光シーケンスよりも要する時間が短いため、それぞれの露光開始タイミングが近くなるよう混合露光シーケンスを先に開始しているが、通常露光シーケンスを先に行ってもかまわない。また、混合露光シーケンス及び通常露光シーケンスが共に終了するまでは、直前のモニタシーケンスで生成した表示画像データ180dをLCD190に継続して表示することで、表示がブラックアウトすることを回避するとよい。
【0046】
混合露光シーケンス、通常露光シーケンスが共に終了すると、画素合成・記録シーケンスが開始する。画素合成・記録シーケンスでは、まず、通常露光データ180bが外部メモリ180から読み出され、周波数成分算出回路250に入力される。周波数成分算出回路250では、入力データ上の小領域における周波数スペクトルを求め、合成係数生成回路280に出力する。
【0047】
周波数成分算出回路250の動作と並行して、混合露光データ180cは、画素マッピング回路240を通して輝度レベル算出回路260に入力される。ここで、画素マッピング回路240は、混合露光データ180cの画素を画素数の異なる通常露光データ180b上にマッピングするため拡大処理と並行移動を行う。
【0048】
輝度レベル算出回路260は、入力されたデータの小領域から平均輝度レベルを求め、合成係数生成回路280に出力する。
【0049】
合成係数生成回路280は、入力された平均輝度レベル、ハイパス信号(あるいは周波数スペクトル)、ISO感度から混合露光データの通常露光データに対する合成比率を生成する。
【0050】
合成係数生成回路280が生成した合成係数は画素合成回路270に入力される。これにより画素合成回路270からは、合成後の露光信号が出力される。合成後の露光信号は、画像処理回路290で記録用画像データ180eに変換されて外部メモリ180に格納される。また、記録用画像データ180eは、最終的に記録メディア200に書き込まれる。
【0051】
本実施形態において、例えば、スローシャッター撮影における露光時間をte、露光データを外部メモリに格納するのに要する時間をttとして、混合読出し時の混合単位が9画素とすると、混合露光シーケンスの露光時間te1、露光データを外部メモリに格納するのに要する時間tt1は、それぞれte/9、tt/9である。また、通常露光シーケンスの露光時間te2、露光データを外部メモリに格納するのに要する時間tt2は、それぞれ、te/9、ttである。
【0052】
ここで、te2がtt1の直後から開始するとすれば、総露光時間はte’=te1+tt1+te2=2te/9+tt/9>te(一般にte>>tt)となり、スローシャッター撮影における露光時間よりも十分短い。
【0053】
また、露光開始から外部メモリに露光データが格納されるまでの時間もte’+tt’=te1+tt1+te2+tt2=(2te/9+10tt/9)>(te+tt),(一般にte>>tt)となり、スローシャッター撮影よりも短くなる。
【0054】
さらに、通常露光のみを行う撮影方法と比べてメモリ使用量増加も少ない。例えば、混合単位が9画素の場合、通常露光データの1/9だけのメモリ使用量増加で済む。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、低照度下かつストロボが使用できない状況での撮影において、S/Nの低下、解像度の低下を軽減しつつ、最適な露出の静止画像が得られる。
【0056】
また、スローシャッター撮影と比べ露光時間が短く手ブレの影響も少ない。さらに、露光データの転送量の増加も少ないので総撮影時間も短くなる。
【0057】
《発明の実施形態2》
図10は、本発明の実施形態2に係る撮像装置300の構成を示すブロック図である。撮像装置300は、実施形態1の撮像装置に対して撮像素子などを追加し、2つの撮像素子の同時露光に対応するようにしたものである。
【0058】
撮像装置300は、同図に示すように、撮像レンズ110、撮像素子120、駆動回路130、アナログ信号処理回路140、及びA/D変換器150を、それぞれ2系統ずつ備えている。なお、各系統の構成要素は、例えば撮像レンズ110−1、撮像レンズ110−2のように、符号の後に枝番をつけて互いを識別する。
【0059】
本実施形態では、撮像レンズ110−1の系統が混合露光、撮像レンズ110−2の系統が通常露光を行う構成となっている。この撮像素子と露光の対応は逆にしてもかまわない。
【0060】
撮像レンズ110等を2系統にしたことに伴い、画像処理LSI210には、入力信号選択回路310が追加されている。入力信号選択回路310は、A/D変換器150−1、150−2から入力された信号を時分割で選択し、露光データ生成回路220に出力する。
【0061】
なお、図10における回路ブロック320は、図1における測光回路230、周波数成分算出回路250、画素マッピング回路240、輝度レベル算出回路260、画素合成回路270、合成係数生成回路280、及び画像処理回路290に相当する回路である。
【0062】
(撮像装置300の動作)
撮像レンズ110−1、110−2によりそれぞれ集光された光学情報は、撮像素子120−1、120−2上にそれぞれ結像される。そして、駆動回路130−1、130−2から出力された撮像素子駆動用パルスがそれぞれ入力されることにより、撮像素子120−1、120−2は、結像された光学像を電気信号としてアナログ信号処理回路140−1、140−2にそれぞれ出力する。
【0063】
アナログ信号処理回路140−1、140−2は、入力された信号をCPU170により指示された増幅率で増幅して、A/D変換器150−1、150−2にそれぞれ出力する。A/D変換器150−1、150−2は、入力された信号をデジタル信号に変換して画像処理LSI210に出力する。
【0064】
入力信号選択回路310は、A/D変換器150−1、150−2から入力された信号を時分割で選択し、露光データ生成回路220に出力する。露光データ生成回路220は、時分割で入力された信号に対して露光データ(モニタ露光データ、通常露光データ、混合露光データ)の生成を行い、生成したそれぞれの露光データを個別に外部メモリ180に格納する。
【0065】
外部メモリ180に格納された露光データは、回路ブロック320により読み出されて処理され、LCD190への表示、及び記録メディア200への記録が行われる。
【0066】
すなわち、図11に示すように、撮像素子を2つ使用し、露光及び電荷読出しを両撮像素子で並行させることで、混合露光シーケンスと通常露光シーケンスを時間的にオーバーラップさせることが可能になる。
【0067】
上記のように本実施形態によれば、実施形態1の撮像装置よりも撮影時間の短縮が図れる。ただし、露光データのトラフィックが増加するため、撮影時間の短縮を実現するには露光データ生成回路220の動作周波数を向上させるか、あるいは搭載数を増やして時分割処理を廃止する等の対策が必要となる。
【0068】
なお、図1や図10の例では、CPU170は画像処理LSI210の外部に接続されているが、画像処理LSI210内部にコアとして搭載してもよい。
【0069】
また、モニタシーケンスにおいては、必ずしも画素混合を行う必要はない。例えば、画素混合の代わりに一般的に使用されている画素間引きを用いて読み出してもよい。
【0070】
また、各実施形態では、混合露光信号と通常露光信号の周波数特性とS/Nの観点から、周波数成分算出回路250に通常露光信号、輝度レベル算出回路260に混合露光信号を入力しているが、入力する信号を入れ替えても良い。
【0071】
また、記録用画像データ180eにはサムネイル画像も含まれるが、サムネイル画像は合成後の露光データから作成してもよいし(即ち、図9のタイミングCで作成)、混合露光データから作成しても良い(即ち、図9のタイミングBで作成)。混合露光データから作成する方が撮影時間を短縮できる。サムネイル画像は、解像度が極端に低いため、合成後の露光データから作成した物と比較しても判別は困難であるので問題はない。さらに、あらかじめ画素数が削減されている混合露光データから作成する方が、縮小処理に使用する回路の規模(フィルタのタップ数)を削減できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る撮像装置は、低照度下かつストロボが使用できない状況での撮影において、S/Nの低下、解像度の低下を軽減しつつ、最適な露出の静止画像を得ることが可能になるという効果を有し、撮影画像の画質改善を行なう画像処理LSI、及び電子スチルカメラ等の撮像装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施形態1に係る撮像装置100の構成を示すブロック図である。
【図2】混合読出しを説明する図である。
【図3】画素マッピング回路240の構成例を示す図である。
【図4】位相ズレ検出部242の構成例を示す図である。
【図5】周波数成分算出回路250の構成例を示す図である。
【図6】平均輝度レベルの求め方を説明する図である。
【図7】画素合成回路270の構成を示す図である。
【図8】合成係数生成回路280の構成例を示す図である。
【図9】撮像装置100における処理の流れを説明する図である。
【図10】実施形態2に係る撮像装置300の構成を示すブロック図である。
【図11】撮像装置300における処理の流れを説明する図である。
【符号の説明】
【0074】
100 撮像装置
110 撮像レンズ
120 撮像素子
130 駆動回路
140 アナログ信号処理回路
150 A/D変換器
160 撮影条件入力部
170 CPU
171 ISO感度決定部
180 外部メモリ
180a モニタ露光データ
180b 通常露光データ
180c 混合露光データ
180d 表示画像データ
180e 記録用画像データ
190 LCD
200 記録メディア
210 画像処理LSI
220 露光データ生成回路
230 測光回路
240 画素マッピング回路
241 拡大処理部
242 位相ズレ検出部
242a ハイパスフィルタ
242b 2値化フィルタ
242c ブロックメモリ
242d パターンマッチング回路
243 ズレ補正部
250 周波数成分算出回路
251 ラインメモリ
252 フィルタ部
260 輝度レベル算出回路
270 画素合成回路
280 合成係数生成回路
290 画像処理回路
300 撮像装置
310 入力信号選択回路
320 回路ブロック
S01 露光信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影画像の画質改善を行なう画像処理LSIであって、
行列状に配した画素群からなる撮像素子から光電変換により蓄積された電荷を画素毎に独立して読み出す通常読出しによって得られた通常露光信号に基づいて生成された通常露光データ、及び前記電荷を垂直及び水平方向に混合して読み出す混合読出しによって得られた混合露光信号に基づいて生成された混合露光データのうちの、前記混合露光データを前記通常露光データ上に、前記通常露光データと同サイズになるようにマッピングする画素マッピング回路と、
前記画素マッピング回路がマッピングした一方の露光データの画素と他方の露光データの画素とに対して、所定の合成係数により重み付け加算平均を行う画素合成回路と、
を備えていることを特徴とする画像処理LSI。
【請求項2】
請求項1の画像処理LSIであって、
前記画素マッピング回路は、前記混合露光データと前記通常露光データの位相ズレを検出する位相ズレ検出部と、前記位相ズレを補正するズレ補正部と、を備えていることを特徴とする画像処理LSI。
【請求項3】
請求項1の画像処理LSIであって、
撮影条件又は露光データの物理的特長に基づき前記合成係数を生成し、前記画素合成回路に与える合成係数生成回路をさらに備えていることを特徴とする画像処理LSI。
【請求項4】
請求項3の画像処理LSIであって、
前記合成係数生成回路の出力は、前記画像処理LSIの外部から入力されたISO感度に基づいて変化させられることを特徴とする画像処理LSI。
【請求項5】
請求項3の画像処理LSIであって、
前記通常露光データの小領域又は前記混合露光データの小領域において輝度レベルを求める輝度レベル算出回路をさらに備え、
前記合成係数生成回路は、前記輝度レベルに基づいて合成係数を生成することを特徴とする画像処理LSI。
【請求項6】
請求項3の画像処理LSIであって、
前記通常露光データの小領域又は前記混合露光データの小領域において、周波数成分を求める周波数成分算出回路をさらに備え、
前記合成係数生成回路は、前記周波数成分に基づいて合成係数を生成することを特徴とする画像処理LSI。
【請求項7】
請求項1の画像処理LSIと、
1つの撮像素子と、
を備え、
前記混合読出し及び前記混合露光データの生成を行った後、次の露光可能タイミングに前記通常読出し及び前記通常露光データの生成を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項1の画像処理LSIと、
1つの撮像素子と、
を備え、
前記通常読出し及び前記通常露光データの生成を行った後、次の露光可能タイミングに前記混合読出し及び前記混合露光データの生成を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項1の画像処理LSIと、
2つ以上の撮像素子と、
を備え、
前記通常読出し及び前記通常露光データの生成と、前記混合読出し及び前記混合露光データの生成とを並列して行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項4の画像処理LSIと、
1つの撮像素子と、
を備え、
前記通常露光データと前記混合露光データの合成比率が1:0、もしくは0:1となる場合は、撮影時には画素の合成に不要となる方の露光信号の読み出し及び露光データの生成を行なわないことを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項7から請求項10のうちの何れか1項の撮像装置であって、
サムネイル画像を混合露光データから生成することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項7から請求項10のうちの何れか1項の撮像装置であって、さらに、
前記撮像素子に入射光を集光する撮像レンズと、
前記撮像素子を駆動する駆動回路と、
前記撮像素子からの出力信号を所定のレベルまで増幅するアナログ信号処理回路と、
前記アナログ信号処理回路の出力をデジタル信号に変換して出力するA/D変換器と、
前記アナログ信号処理回路、及び前記A/D変換器を制御するISO感度決定部と、
画像データを格納するための外部メモリと、
を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−301389(P2008−301389A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147761(P2007−147761)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】