説明

画像形成装置、および画像処理方法

【課題】画質の低下を抑制できる条件にて色成分を削減し、画像形成材料の節減を図る。
【解決手段】画像形成材料を節減する節減モードを有する画像形成装置であって、画像形成すべき画像データを入力する画像入力装置11と、入力された画像データを出力色空間へ変換する画像処理装置12と、この画像処理装置12によって変換処理された画像データに基づき画像形成材料を用いて画像を形成する画像出力装置13とを備え、この画像処理装置12は、変換される画像データの中で支配的なn次色(nは1以上の整数)に対して支配的ではないn+m次色(n、mは1以上の整数)の色成分を削減するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像処理方法に係り、より詳しくは、画像形成材料を節減させる画像形成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種画像形成装置において、トナーやインクなどの画像形成材料の消費量を削減したいとする要望が非常に高くなっている。例えばトナーを用いる画像処理装置では、一般的に記録媒体上に描画する画素を間引くことによりトナーの消費量を削減していた。
【0003】
また、公報記載の従来技術として、画像データの所定ビット(8ビット時は下位4ビット)を切り捨てすることで画質の低下を防ぎつつ、トナーセーブ効果を発揮するものが存在している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
尚、出願人は、出力色に混在する少量の色成分を除去し、高品質の出力を得る技術を先に提案している(特許文献2参照。)。ここでは、除去する色成分とその除去量を処理対象の画像データの彩度に応じて予め設定しておき、Lで表現されるLab空間の画像データをYMCK色空間に変換する変換部にて、出力されるY、M、C、Kの各成分から比較的高彩度の部分の低量の色成分を除去している。
【0005】
【特許文献1】特開平9−325653号公報
【特許文献2】特開2003−143423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トナーの消費を節減するために、従来の画素を間引く方法を採用した場合には、解像度の低下を招き画質が著しく低下してしまう。
また、上記特許文献1の技術によれば、画素を間引く方法を採用せずにトナーの消費を節減することから、一定の画質維持を図ることが可能となる。しかしながら、例えば、全8ビットの画素データの下位4ビットを切り捨てることにより、ある色に対する実質の階調は256階調から16階調に低下してしまう。そのために、この特許文献1に記載の技術では、例えば大幅な階調ジャンプ(例えばグラテーションなどで段差が生じる現象等)が発生してしまい、トナーセーブによる著しい画質低下が生じていた。
【0007】
また、上記特許文献2では、ガミュートの圧縮により、ガミュートの外郭上に混色が生じ易いことに鑑み、比較的彩度の高い部分にのみ混色除去のための処理を行うように構成している。かかる技術は、画質の向上については非常に優れているが、トナーの消費を節減するといった課題については更なる対応が望まれている。
【0008】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、画質の低下を抑制できる条件にて色成分を削減し、画像形成材料の節減を図ることにある。
また他の目的は、使用する画像形成材料の特徴を活かした色変換処理を行う画像形成装置を提供することにある。
更に他の目的は、特に色トナーに対して大幅な節約を図ることにある。
また更に他の目的は、例えば文字品質を維持した状態で、全体として画像形成材料の節減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明が適用される画像形成装置は、画像形成材料を節減する節減モードを有する画像形成装置であって、画像形成すべき画像データを出力色空間へ変換する画像処理手段と、この画像処理手段によって変換処理された画像データに基づき画像形成材料を用いて画像を形成する画像形成手段とを備え、この画像処理手段は、変換される画像データの中で支配的なn次色(nは1以上の整数)に対して支配的ではないn+m次色(n、mは1以上の整数)の色成分を削減する(0にする、または0に近付ける)ことを特徴としている。
【0010】
ここで、画像データを入力する入力手段を更に備え、画像処理手段は、この入力手段により入力された入力色空間からなる画像データを均等色空間に変換する第1の色変換部と、この均等色空間に変換された画像データを出力色空間に変換する第2の色変換部とを備え、この色成分を削減する処理は、第2の色変換部により出力色空間に変換した後、または出力色空間に変換する際に実行されることを特徴とすることができる。
【0011】
また、画像形成材料を節減する節減モードが設定されたことを認識する認識手段を更に備え、この画像処理手段は、節減モードの設定が認識された際に色成分を削減する処理を実行し、画像形成手段は、この画像処理手段による色成分を削減する処理により画像形成材料の総使用量を節減することを特徴とすれば、選択的に節減モードを利用することが可能となる。
【0012】
尚、例えばLUTを用いて節減を実行する場合には、LUTの傾き(パラメータ)を調整することにより、節減状況を調整することも可能である。
また、画像形成装置特有の色材の色に合わせて色変換パラメータを求めることも可能である。かかる機能を採用した場合には、その画像形成装置に特化した精度の高い色変換処理を行うことができる。特に、色材の色によって色味にはかなり差があることから、画質を維持するレベルを揃えた場合であっても、画像形成材料(トナー)を節減できる量には違いが出る。
【0013】
他の観点から捉えると、本発明が適用される画像形成装置は、画像形成材料を節減する節減モードが設定されたことを認識する認識手段と、この認識手段により節減モードの設定が認識された場合に、画像形成すべき画像データのN色(Nは2以上の整数)の色材から生成される色を、N−1色以下1色以上の色材から生成される色に変換処理する画像処理手段と、この画像処理手段により変換された画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段とを含む。
【0014】
ここで、この画像処理手段は、画像形成すべき画像データのグレイ色付近(グレイ軸から所定範囲)に位置する画素の彩度を低下させ、出力色空間であるYMCの各色成分を等量に近付けることを特徴とすれば、グレイ(L)軸近傍の微妙な色合いは失われても、それと引き替えに画像形成材料(トナー)の節約が可能となる。
【0015】
そして、この「所定範囲」を調整することにより、画質とトナー節約とのトレードの割合を可変とすることができる。例えば、補正範囲を狭くした場合には、色合い保持性は高いがトナーの節約度合いは小さくなる。一方、補正範囲を広くした場合には、色合い保持性は低いが、トナーの節約度合いは高くすることができる。
【0016】
また、この画像処理手段は、等量に近付けられたYMCの各色成分のうち、YMC等量の墨成分は全てK色に変換することを特徴とすることができる。
更に、この画像処理手段は、画素の彩度を低下させた画像データの中で支配的なn次色(nは1以上の整数)に対して支配的ではないn+m次色(n、mは1以上の整数)の色成分を削減することを特徴とすることができる。
【0017】
また更に像域を分離する像域分離手段を備え、画像処理手段は、節減モードの設定が認識された場合であっても、像域分離手段によって黒文字部および/または色文字部と認識された領域に対しては色材の減算を行わないことを特徴とすることができる。
【0018】
一方、本発明は、画像形成材料を節減する節減モードの処理を行う画像処理方法であって、画像データを入力し、入力された画像データを出力色空間へ変換する際、または出力色空間へ変換した後、画像データの中で支配的なn次色(nは1以上の整数)に対して支配的ではないn+m次色(n、mは1以上の整数)の色成分を削減し、このn+m次色の色成分が削減された出力色空間の画像データを出力することを特徴とすることができる。
【0019】
ここで、入力された画像データを出力色空間へ変換する前にて、画像データのグレイ軸から所定範囲に位置する画素の彩度を低下させることを特徴とすることができる。
また、この彩度を低下させた画像データについて、出力色空間へ変換する際、または出力色空間へ変換した後、出力色空間であるYMC等量の墨成分をK色に変換することを特徴とすることができる。
【0020】
更に他の観点から捉えると、本発明は、画像形成材料を節減する節減モードの処理を行う画像処理方法であって、画像形成すべき画像データについて出力色空間であるYMCKへ変換する前に、この画像データのグレイ軸から所定範囲に位置する画素の彩度を低下させ、出力色空間への色変換にて、彩度が低下されたことにより等量に近づいたYMC各色成分に対して、YMC等量の墨成分をK色に変換し、出力色空間への色変換後のYMCK画像データに対して出力補正を行うことを特徴とすることができる。
【0021】
ここで、この出力補正は、L軸を中心に予め定められた規定彩度までの範囲では、混入色を削減すること特徴とすることができる。また、像域分離信号を参照し、節減モードを施す領域を決定することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように構成された本発明によれば、画像形成材料の節減を図った場合であっても画質の低下を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置の構成を示すブロック図である。この図1に示す画像形成装置は、画像入力装置11、画像処理装置12、および画像出力装置13を具備して構成される。この画像入力装置11は、原稿を読み取ってRGBの色空間で表現される画像データを出力する。画像処理装置12は、画像入力装置11から入力された画像データに対して各種の画像処理を施し、YMCKの色空間に変換された画像データを画像出力装置13に出力する。画像出力装置13は、画像処理装置12から入力された画像データに基づいて、トナーなどの画像形成材料を用いて用紙上に画像を形成する。
【0024】
この図1に示す画像形成装置では、画像処理装置12にて、画像形成材料の節減処理となるトナーセーブ処理を行う。画像処理装置12は、画像入力装置11から入力される画像データの色空間をRGBからL(以下、「Lab」と略す)に変換する前段色変換部21を備えている。また、Labの色空間で表現される画像データに対して各種の補正や変倍等の処理を施す画像処理部22を備えている。更に、Labの色空間で表現される画像データをYMCKの色空間で表現される画像データに変換する後段色変換部23を有している。また更に、支配的でない2次(または3次、または4次)色を除去することで余分なトナー量を削減する処理を行うトナーセーブ処理部24を備えている。この後段色変換部23とトナーセーブ処理部24とを含めて、1つの色空間変換として把握することも可能である。即ち、Labデータから、直接、トナーセーブを施したYMCKデータに変換するように構成することもできる。かかる場合には、色変換パラメータ内に事前にトナーセーブ機能を埋め込んでおく必要がある(後述)。
【0025】
本実施の形態では、例えば、後述するようなUI(User Interface)画面からユーザによってトナーセーブ設定がなされた場合など、トナーセーブ機能選択時に、画像形成材料を節減させる処理(トナーセーブ処理)を実行している。より詳しくは、入力色空間(RGBやLab)から出力色空間(YMCK)に変換する際に、主に、単色や支配的な2次(または3次)色で表される領域の画素について混色を防ぐように(支配的でない色を除く方向にて)色変換を施し、結果的に従来のトナー使用量に比べて少ない量で印字することを可能としている。例えば、YMCKの色空間で出力する画像形成装置では、Y、M、C、Kの色成分は支配的な一次色で表現され、R、G、Bの色成分は支配的な2次色で表現される。これらの支配的なn次色(nは1以上の整数)を用いて表現する際に、支配的ではないn+m次色(n、mは1以上の整数)が混入される場合がある。本実施の形態では、このn次色を表現する際に支配的ではないn+m次色(n、mは1以上の整数)を削減する(0または0に近付ける)ように色変換処理を施している。尚、YMCKなどの色空間にて、2つの色を使用するものが2次色、3つの色を使用するものが3次色、4つの色を使用するものが4次色である。また、このYMCKに加えて他の色材を加えて表現する場合には、5次色、6次色、…、が存在し得る。
【0026】
図2は、図1に示す画像形成装置にて実行される処理の流れを示した図である。ここでは、色空間との関係で処理の流れを示している。まず、画像入力装置11にて画像が読み出され、例えばRGBの色空間にて画像(画像データ、画像信号)が入力される(ステップ101)。入力された画像データは、例えば画像入力装置11にて、例えば強調フィルタによるMTF補正が施される(ステップ102)。その後、画像処理装置12の前段色変換部21にて、RGBの色空間からYMCKの色空間への色空間変換が行われる(ステップ103)。
【0027】
均等色空間であるLab信号に変換された画像データは、画像処理部22にて各種補正や変倍などの各種画像処理が施される(ステップ104)。その後、後段色変換部23にて、Labの色空間から出力色空間であるYMCKへの色空間変換が行われる(ステップ105)。ここで、画像処理装置12では、例えばUI画面からの設定など、トナーセーブの設定がなされているか否かを判断する(ステップ106)。この設定は、装置内部の機能によって自動的に設定されるような場合もある。これらの設定がなされている場合にはステップ107のトナーセーブ処理を実行する(ステップ107)。設定がなされていない場合には、ステップ107の処理を実行せずに、ステップ108以降の処理を実行する。
【0028】
ステップ108以降の処理では、例えば画像出力装置13側のコントローラにて、YMCKの画像データに階調補正が施され(ステップ108)、スクリーン処理が施される(ステップ109)。そして、これらの処理の後、画像出力装置13では、例えば電子写真方式によるY色トナー、M色トナー、C色トナー、K色トナーを用いた画像印刷を実行して(ステップ110)、処理が終了する。
【0029】
ここで、本実施の形態の特徴的な構成である、ステップ107のトナーセーブ処理について説明する。
図3は、色変換の対象となる領域を説明するための図であり、横軸をa、縦軸をbとしている。ここに示すa−bグラフには、RGBとCMYとの各色軸が表現されている。画像入力装置11から出力されるRGBの色空間は、「赤、緑、青」の3原色が均等に混じると最も明るい白色になる、いわゆる黒から白へ色を加えて変化させていく加法混色による表現形式である。一方、画像出力装置13へ入力するYMCKの色空間では、この加法混色の逆の方式として、「シアン、マゼンタ、イエロー」の色を均等に混ぜると黒色になる滅法減色であり、色の表現はインクの重ね合わせで色を表現する滅法混色が採用されている。そして、このYMCKの色空間では、Y、M、C、Kの一次色に対し、R、G、Bなどの2次色はY、M、C、Kの混合によって色が作り出されている。例えばR(赤)は支配的なYとMとの混合によって色が作り出され、G(緑)は支配的なYとCとの混合によって色が作り出され、B(青)は支配的なCとMとの混合によって色が作り出される。
【0030】
このようにしてY、M、C、Kの混合により色が作り出されるが、単色または2次色で表現できる色であっても、他のトナーが混在する場合がある。例えば単色で表現できる色であっても2次や3次色が混ざったり、2次色で表現できる色であっても3次色が混ざる場合があった。そこで、本実施の形態では、ある画素が入力されたとき、その画素が、その出力色空間(この場合はYMCK)においては単色(または2次色)の割合が非常に高くなる場合(ある一定以上に高くなる場合)には、それ以外の色がわずかに入っていたとしても(ある一定値以下であれば)、その他の色については通常の出力値に対して減算する処理を施すこととした。即ち、それほど影響のない色を落とすこととした。かかる処理によって、単色(または2次色)に混じるその他の色成分を除去(削減)することが可能となり、画質を大幅に劣化させることなく総トナー量を削減し、また、濁りの少ない画質を得ることが可能となる。
【0031】
より具体的には、図3に示すようなLab色空間において、各色軸(RGBCMY)の周りの薄い色空間にて、出力色空間(YMCK)への変換後に混ざっていた色成分を削減する。これは、RGBCMYの各色軸に近付けられる処理を行うこととなる。実際には、図3に示すような斜線部の領域を処理対象のエリア(単色で支配的な2次(3次、4次)色)であるか否かを判定し、この場合には、図4に示すような変換LUT(Look Up Table)に突き当て、その他の混じっている色成分の除去(削減)を行う。
【0032】
この図4に示す変換LUTは、図1に示すトナーセーブ処理部24にて用いられる。横軸は入力であり、YMCKの各色成分の量(値)を入力とした場合を示している。縦軸は出力であり、トナーセーブ処理を実行した後の各色成分の値が出力となっている。そして、これらの関係が実線で示されている。図4に示す例では、まず、各色成分毎に、階調の低い部分(0から「Start」まで)についての出力値を0として、混じっている色成分を除去している。また、「Start」から「End」までは、一定の割合で混じっている色成分を減少させる。
【0033】
図5は、図4に示した変換LUTによる色変換処理を説明するための表図である。図5に示すLabデータからYMCKデータIへの色空間変換は、図1に示す後段色変換部23にて実行される。また、図5に示すYMCKデータIからYMCKデータIIへのトナーセーブ処理は、トナーセーブ処理部24にて、図4に示した特性を有するトナーセーブLUTに突き当てられて導かれたものである。ここでは、LabデータからYMCKデータIに変換した後に、トナーセーブ処理(トナーセーブLUTの突き当て)を施し、余分なトナー量を削減している。図5にて、YMCKデータIとYMCKデータIIとで白黒を反転して表現した部分は、トナーセーブ処理にて、図4の0から「Start」に該当し、出力値が0になったものを示している。また、斜線で示した部分は、図4の「Start」から「End」の処理によって出力値が落とされたものを示している。この図5に示す例では、入力値が3以下のものが0に変換されている。また、入力値が例えば11.328のシアン(C)は、7.552と変換され、このときのYMCK総トナー量は、81.772から72.0052へと減少した。このように、YMCKデータIIによる総トナー量は、図の太枠に囲まれた部分で、YMCKデータIに示す通常のモードに比べ、トナー量を節減することができた。
【0034】
尚、図5に示す例では、処理の理解が容易となるように、Labデータ → YMCKデータI → YMCKデータIIと順に処理を行っているが、LabデータからYMCKデータIを経由せずに、YMCKデータIIに変換できるような色変換処理を行うことも可能である。その場合は、色変換パラメータ内に事前にトナーセーブ機能を埋め込んでおく必要がある。
【0035】
以上のように、本実施の形態では、例えばUI画面を介してユーザによるトナーセーブ機能の選択が認識された場合など、トナーセーブ機能に移行する際には、以下のような画像処理方法を採用可能としている。
(1)まず、単色に対して支配的ではない2次(3次、4次)色について、単色になるような色変換処理を施すことで、混ざっていた色成分を削減する。
(2)支配的な2次色に対して支配的ではない3次(4次)色について、2次色になるような色変換処理を施すことで、混ざっていた色成分を削減する。
(3)支配的な3次色に対して支配的ではない4次色について、3次色になるような色変換処理を施すことで、混ざっていた色成分を削減する。
この上記(1)〜(3)の処理を一般化して表現すると、変換される画像データの中で支配的なn次色(nは1以上の整数)に対して支配的ではないn+m次色(n、mは1以上の整数)の色成分を削減することとなる。そして、削減の結果、色材を減らすことができ、特定の色材が0に変換された場合には、N色(Nは2以上の整数)の色材から生成される色をN−1色以下1色以上の色材で表現することとなる。そして、これらの方法により、トナー量を削減した混色の少ない画像を生成している。
また、これらの画像処理方法を実現するに際して、トナーセーブ機能が選択された際、色変換パラメータを変更している。これによって、従来のトナーセーブ技術に比べ、画質を維持しつつ、総トナー量を削減することができ、同時に、濁りの少ない画質を得ることが可能となる。
【0036】
更に、本実施の形態の応用として、画像形成装置のエンジン(IOT:Image Output Terminal)に特有の各色材の色に合わせて色変換パラメータを求めることも可能である。即ち、各IOTでは、機種が異なると異なった色材が用いられる場合が多く、この色材の色によって色味にはかなりの差がある。そこで、そのIOTに特化した精度の高い色変換処理を行うことができる。即ち、使用するトナーの特徴(色相角、濃度など)を活かした色変換処理を行うことで、より高性能の色変換処理を行うことが可能となる。
【0037】
また更に、本実施の形態では、トナーセーブ処理部24にて用いられるLUTの傾き(パラメータ)を調整することで、トナーセーブ量(レベル)を制御することが可能である。
また、図4に示すようなLUTを用いる代わりに、y=ax+bなどの式に入力値を代入して、算術により出力値を求めることも可能である。
更に、上述の実施の形態では、Lab色空間からYMCKの色空間へ色変換する際にトナーセーブ処理を実行したが、これに限られるものではない。例えば、RGBの色空間から直接、YMCKの色空間へ色変換する際に、これらの処理を施すことも可能である。
【0038】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、LUTにより色変換処理に際してトナーセーブ処理を実行していた。 この実施の形態2では、LUTによりYMCKの色空間へ変換する前に、例えばLab信号に対して彩度補正操作を行うことで、特に色トナーに対して大幅なトナー量の節約を図っている。
尚、実施の形態1と同様の機能については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0039】
図6は、実施の形態2が適用される画像形成装置の構成を示すブロック図である。この図6に示す画像形成装置は、図1に示す画像処理装置12に代えて画像処理装置15が用いられている。この画像処理装置15では、画像処理部22と後段色変換部23との間に、前段トナーセーブ処理部25が設けられている。この前段トナーセーブ処理部25では、均等色空間であるLab信号に対して、グレイ軸に寄せる処理が行われる。即ち、L軸近傍の3カラーグレイ色などで印字される領域について、予め定められた基準の彩度範囲(グレイ軸から所定範囲)まで、前段トナーセーブ処理部25にて単色K(黒)への変換を施す。これによって、従来のトナー使用量に比べて少ない量で印字することが可能となる。また、この前段トナーセーブ処理部25に加え、実施の形態1で説明したトナーセーブ処理部24にて実行される処理を実行することで、より大きなトナー節減が期待できる。
【0040】
図7は、図6に示す画像形成装置にて実行される処理の流れを示した図である。ここでは、図2と同様に、色空間との関係で処理の流れを示している。まず、画像入力装置11にて画像が読み出され、例えばRGBの色空間にて画像データが入力される(ステップ201)。入力された画像データは、例えば画像入力装置11にて、例えば強調フィルタによるMTF補正が施される(ステップ202)。その後、画像処理装置15の前段色変換部21にて、RGBの色空間からYMCKの色空間への色空間変換が行われる(ステップ203)。
【0041】
均等色空間であるLab信号に変換された画像データは、画像処理部22にて各種画像処理が施される(ステップ204)。ここで、画像処理装置15では、例えばUI画面からのトナーセーブ設定など、トナーセーブの設定がなされているか否かを判断する(ステップ205)。設定がなされている場合には前段トナーセーブ処理部25にて、第1のトナーセーブ処理を実行する(ステップ206)。その後、後段色変換部23にて、Labの色空間から出力色空間であるYMCKへの色空間変換が行われる(ステップ207)。また、トナーセーブ処理部24にて、実施の形態1と同様な第2のトナーセーブ処理が実行される(ステップ208)。その後、例えば画像出力装置13側のコントローラにて、YMCKの画像データに階調補正が施され(ステップ209)、スクリーン処理が施される(ステップ210)。そして、これらの処理の後、画像出力装置13では、例えば電子写真方式によるY色トナー、M色トナー、C色トナー、K色トナーを用いた画像印刷を実行して(ステップ211)、処理が終了する。
【0042】
ステップ205にてトナーセーブの設定がなされていない場合には、ステップ206の第1のトナーセーブ処理を行わずに、ステップ207と同様なLabからYMCKへの色空間変換を実行する(ステップ213)。その後、ステップ208の第2のトナーセーブ処理を行わずに、ステップ209以降の処理へと移行する。
このように、図7に示す処理では、均等色空間であるLab信号に対して第1のトナーセーブ処理を施し、更に、YMCKへの色変換に際して第2のトナーセーブ処理を施している。
【0043】
次に、前段トナーセーブ処理部25(図6参照)にて実行される、ステップ206に示す第1のトナーセーブ処理について説明する。
図8および図9は、第1のトナーセーブ処理を説明するための図である。この図8では、横軸をa、縦軸をbとするa−bグラフが示され、彩度補正の規制範囲が示されている。本実施の形態では、入力Lab色空間に彩度補正の規制範囲を設ける。図8に示す例では、この彩度補正の規制範囲(グレイ軸から所定範囲)として、aおよびb共に、±40に設定されている。即ち、図8では、彩度補正の規制範囲が点線の円で示されている。トナーセーブ実施時は、彩度補正LUTの効果にて、この補正範囲内のみ彩度が低下する。また、補正範囲外では入力彩度が保たれる。この作用により、グレイ軸近傍の画素は、さらにグレイ軸側に寄っていくように変換が行われる。
【0044】
図9(a),(b)は、前段トナーセーブ処理部25にて用いられる彩度補正LUTの処理を示している。図9(a)は、彩度補正LUTへのaLUT入力に対するaLUT出力の特性を示しており、横軸にaLUT入力、縦軸にaLUT出力を示している。また、図9(b)は、彩度補正LUTへのbLUT入力に対するbLUT出力の特性を示しており、横軸にbLUT入力、縦軸にbLUT出力を示している。この図9(a)および図9(b)では、共に、入力値が0に近い部分では出力値が0に寄せられる。また、±40よりも入力値が低い部分では、点線で示す通常の特性に比べて出力値が0に近付けられる。
このように、前段トナーセーブ処理部25では、入力された均等色空間上の画素は、彩度補正LUTにより、彩度の補正が行われる。そして、この彩度補正LUTの作用により、グレイ軸近傍の画素は、さらにグレイ軸に寄っていくことになる。
【0045】
その後、後段色変換部23およびトナーセーブ処理部24では、実施の形態1で示した処理と同様な処理によって、第2のトナーセーブ処理が実行される。即ち、Y、M、Cの各色に対して、低濃度部カット用のLUTを突き当てる。この低濃度部カット用のLUTは、図4に示すような変換LUTの特性を備えている。このLUTの作用により、グレイ軸近傍でYMCK分解された画素のうち、僅かに残る色成分が削除され、もしくは減少される。尚、LUT突き当ての範囲は、第1のトナーセーブ処理で規定した彩度範囲だけとすることもできる。
【0046】
このように、次工程の色変換空間にて行われるYMCK色変換では、グレイ軸に近いほどYMC各色の配合量が等量に近くなり、墨成分としてのK色置き換え量が多くなる。その結果、画像形成材料であるトナーの使用量を減らすことが可能となる。特に、色トナーに対して大幅な節約効果が期待できる。即ち、これらの処理よって、画像形成すべき画像データのN色(Nは2以上の整数)の色材から生成される色を、N−1色以下1色以上の色材から生成される色に変換でき、これによってトナーの総消費量を減らすことが可能となる。
【0047】
尚、彩度補正操作する範囲を調整することにより、グレイ軸に寄せる程度を可変に設定することが可能である。例えば、補正範囲を狭くした場合には、色合い保持性は高いが、画像形成材料の節約度合いは小さくなる。一方、補正範囲を広くした場合には、色合い保持性は低いが、画像形成材料の節約度合いは高くなる。例えば、後述するようなUI等を利用して、これらの補正範囲の設定を変えることが好ましい。例えば、トナーを5%削減する場合には、補正範囲を狭くして画質を維持し、例えばトナーを50%削減する場合には、補正範囲を広くして色合い保持性よりも画像形成材料の節約度を優先する等である。
【0048】
更には、例えば像域分離信号を参照することにより、文字品質を維持した状態で画像形成材料の節約を行うことも有効である。例えば、公知の像域分離信号を参照し、例えば文字部と絵柄部とで彩度補正操作を切り替えることも好ましい。例えば、トナーの節約モードが選択された場合であっても、黒文字部や色文字部などでは色材の減算を行わずに文字品質を保ち、絵柄部分で彩度補正操作を実行する等である。尚、これらの処理は、第2のトナーセーブ処理との組み合わせで実行することもできる。
【0049】
このように、実施の形態2では、LabからYMCKへのDLUT(Direct - Look Up Table)による色変換前のLab画像データに対して彩度補正操作を行っている。また、L軸近傍のグレイ色付近に位置する画素の彩度を低下させて、YMC各色成分をできるだけ等量に近づけている。更には、DLUTによる色変換にて、YMC等量の墨成分は全てK色に変換されるように構成した。これによって、グレイ(L)軸近傍の微妙な色合いは失われるが、それと引き替えに、画像形成材料の節約が可能となる。特に、色トナーに対して大幅な節約効果を期待することが可能である。
更に、実施の形態2では、実施の形態1で説明した、DLUT色変換後のYMCK画像データに対して出力補正を行うことで、L軸を中心に規定彩度までの範囲では、LUT操作にて少量の混入色をカットすることができる。
【0050】
以上のように、実施の形態1および実施の形態2によれば、画質の低下を極力、抑えた状態にて、トナーなどの画像形成材料の使用量を大幅に削減することが可能となる。
尚、上記実施の形態1および実施の形態2では、画像形成材料としてはトナーを例に挙げて説明したが、インク等の他の画像形成材料にも適用することが可能である。
【0051】
ここで、実施の形態1および実施の形態2において利用されるUIについて説明する。
図10は、ユーザに対してトナーセーブモード(節減モード)を選択させるためのUI画面の例を示した図である。図10に示すトナーセーブモードの設定画面では、ユーザが「トナーセーブ」ボタンを選択すると、トナーセーブレベルを選択する画面(図の右側)が表示される。このトナーセーブレベル選択画面では、トナーセーブのレベルがレベル1からレベル3まで、3段階で選定できる。例えばレベル1では画質は「ほとんど劣化なし」であり、レベル2では「原稿によっては少し目立つ」レベルである。また、レベル3では画質は「文字は多少劣化し、全体的に薄くなる」レベルとなる。
【0052】
例えば、このレベル1が選択された場合には、例えば、図4に示す「Start」と「End」の位置を、入力レベルの低階調方向に下げ、変化が少なくするようにLUTの傾き(パラメータ)を調整することで、トナーセーブ量(レベル)が低くなるように制御する。また、レベル2が選択された場合には、例えば、実施の形態2の図8に示す「彩度補正の規制範囲」を±40よりも低い値まで下げると共に、像域分離処理を行い、文字部に対しては実施の形態2の処理を施さないように制御する。更に、レベル3が選択された場合には、例えば、上記実施の形態1および実施の形態2を全て利用し、トナーセーブ量を高くするように制御する。ここに記載したものは一例であって、画質の維持と総トナー量の削減レベルに応じて、トナーセーブの調整は任意に行い、その調整量を決定することが可能である。また、使用する画像形成材料の特徴(位相角、濃度など)を考慮し、これらを活かした状態で各レベルに応じた調整を行うことで、より高性能の色変換処理を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す画像形成装置にて実行される処理の流れを示した図である。
【図3】色変換の対象となる領域を説明するための図である。
【図4】トナーセーブ処理部にて用いられる変換LUTを示した図である。
【図5】変換LUTによる色変換処理を説明するための表図である。
【図6】実施の形態2が適用される画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図7】画像形成装置にて実行される処理の流れを示した図である。
【図8】第1のトナーセーブ処理を説明するための図である。
【図9】(a),(b)は、前段トナーセーブ処理部にて用いられる彩度補正LUTの処理を示している。
【図10】ユーザに対してトナーセーブモード(節減モード)を選択させるためのUI画面の例を示した図である。
【符号の説明】
【0054】
11…画像入力装置、12…画像処理装置、13…画像出力装置、15…画像処理装置、21…前段色変換部、22…画像処理部、23…後段色変換部、24…トナーセーブ処理部、25…前段トナーセーブ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成材料を節減する節減モードを有する画像形成装置であって、
画像形成すべき画像データを出力色空間へ変換する画像処理手段と、
前記画像処理手段によって変換処理された画像データに基づき画像形成材料を用いて画像を形成する画像形成手段と、を備え、
前記画像処理手段は、変換される画像データの中で支配的なn次色(nは1以上の整数)に対して支配的ではないn+m次色(n、mは1以上の整数)の色成分を削減することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像データを入力する入力手段を更に備え、
前記画像処理手段は、前記入力手段により入力された入力色空間からなる画像データを均等色空間に変換する第1の色変換部と、当該均等色空間に変換された画像データを前記出力色空間に変換する第2の色変換部とを備え、前記色成分を削減する処理は、当該第2の色変換部により当該出力色空間に変換した後、または当該出力色空間に変換する際に実行されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
画像形成材料を節減する節減モードが設定されたことを認識する認識手段を更に備え、
前記画像処理手段は、前記節減モードの設定が認識された際に前記色成分を削減する処理を実行し、
前記画像形成手段は、前記画像処理手段による前記色成分を削減する処理により前記画像形成材料の総使用量を節減することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像形成材料を節減する節減モードが設定されたことを認識する認識手段と、
前記認識手段により前記節減モードの設定が認識された場合に、画像形成すべき画像データのN色(Nは2以上の整数)の色材から生成される色を、N−1色以下1色以上の色材から生成される色に変換処理する画像処理手段と、
前記画像処理手段により変換された画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と
を含む画像形成装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、画像形成すべき画像データのグレイ軸から所定範囲に位置する画素の彩度を低下させ、出力色空間であるYMCの各色成分を等量に近付けることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、前記等量に近付けられたYMCの各色成分のうち、YMC等量の墨成分は全てK色に変換することを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像処理手段は、前記画素の彩度を低下させた画像データの中で支配的なn次色(nは1以上の整数)に対して支配的ではないn+m次色(n、mは1以上の整数)の色成分を削減することを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項8】
像域を分離する像域分離手段を更に備え、
前記画像処理手段は、前記節減モードの設定が認識された場合であっても、前記像域分離手段によって黒文字部および/または色文字部と認識された領域に対しては色材の減算を行わないことを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項9】
画像形成材料を節減する節減モードの処理を行う画像処理方法であって、
画像データを入力し、
入力された画像データを出力色空間へ変換する際、または当該出力色空間へ変換した後、画像データの中で支配的なn次色(nは1以上の整数)に対して支配的ではないn+m次色(n、mは1以上の整数)の色成分を削減し、
前記n+m次色の色成分が削減された前記出力色空間の画像データを出力することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
入力された前記画像データを前記出力色空間へ変換する前にて、当該画像データのグレイ軸から所定範囲に位置する画素の彩度を低下させることを特徴とする請求項9記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記彩度を低下させた画像データについて、前記出力色空間へ変換する際、または当該出力色空間へ変換した後、当該出力色空間であるYMC等量の墨成分をK色に変換することを特徴とする請求項10記載の画像処理方法。
【請求項12】
画像形成材料を節減する節減モードの処理を行う画像処理方法であって、
画像形成すべき画像データについて出力色空間であるYMCKへ変換する前に、当該画像データのグレイ軸から所定範囲に位置する画素の彩度を低下させ、
前記出力色空間への色変換にて、彩度が低下されたことにより等量に近づいたYMC各色成分に対して、YMC等量の墨成分をK色に変換し、
前記出力色空間への色変換後のYMCK画像データに対して出力補正を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
前記出力補正は、L軸を中心に予め定められた規定彩度までの範囲では、混入色を削減すること特徴とする請求項12記載の画像処理方法。
【請求項14】
像域分離信号を参照し、前記節減モードを施す領域を決定することを特徴とする請求項12記載の画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−243376(P2007−243376A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60548(P2006−60548)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】