説明

画像形成装置の音質評価方法、画像形成装置の製造方法、画像形成装置の改造方法および画像形成装置

【課題】 装置種類および装置モードに関わらず精度良く動作音の音質を評価できる音質評価方法を提供する。
【解決手段】 画像形成装置の発する音を採取して供試音を作成する。その供試音の音響物理量を測定し、音の不快さを予測する所定の音質評価式を導出する。そして、その音質評価式による音質評価が所定の条件を満たすよう、装置各部にどのような構成を採用するかを設計する(S1)。その設計内容にしたがって画像形成装置を製造する(S2:製造過程)。このような製造工程を経ることで、不快な騒音をほとんど発しない画像形成装置を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置、画像形成装置の製造方法、画像形成装置の改造方法および音質評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平9−193506号公報
【特許文献2】特開平10−232163号公報
【特許文献3】特開平10−253440号公報
【特許文献4】特開平10−253442号公報
【特許文献5】特開平10−267742号公報
【特許文献6】特開平10−267743号公報
【特許文献7】特開2001−336975号公報
【特許文献8】特開2002−128316号公報
【0003】
オフィス等においては、複写機、プリンタまたはファクシミリ装置などの画像形成装置が広く用いられている。この種の画像形成装置は多くの部品が機械的に連結されて構成されている。また、画像形成装置は、これらの機構等を駆動するためのモータを有しており、画像形成動作時には装置各部の動作音が発生し、この動作音がユーザに不快感を与え、騒音問題となる場合もある。かつては、これらの機器は便利であれさえすれば良かったが、オフィス内の環境改善が進むに連れて、OA機器に対しての騒音問題解決の要望が多くなった。そのため、画像形成装置の静音化が進められ、以前に比べれば相当の静音化が達成されている。
【0004】
画像形成装置における騒音問題を解決するための技術として、例えば、上記各特許文献1に記載のものがある。この発明は、レーザービームプリンタや複写機などの騒音マスキング装置に関するものであり、動作時に騒音の発生源となる駆動機構を有し、この騒音をマスキングするマスキング音を発生する発音体と、この発音体を制御し、前記騒音の主成分周波数を含む範囲の周波数のマスキング音を発生させるマスキング音制御手段とを有し、騒音の不快感を低減するものである。
【0005】
しかし、この発明は、発生している音を低減するものではなく、発生音(動作音)に更にマスキング音を加えることになり、騒音レベルが上昇することが考えられる。また、マスキング音を発生させるための発音体と、マスキングされる音の発生時間の間のみにマスキング音を発生させるための制御装置やスピーカーが必要となり、装置レイアウト上余分なスペースが必要となり、また大幅にコストが上がるという欠点がある。
【0006】
また、音質評価装置および音質評価方法に関するものとして、上記特許文献2〜7に記載のものがある。
特許文献2に記載のものは、画像形成装置の多くの音色の音によって構成されている騒音から、排気音などのエアフロー系にて発生する低周波ランダムノイズの重苦しい騒音である『ゴー』音のみの評価を可能とし、心理的なうるささとの対応を容易にする音質評価装置および音質評価方法および音質評価装置である。
【0007】
特許文献3に記載のものは、画像形成装置の多くの音色の音によって構成されている騒音から、耳障りな音として認識され、スキャナモータや帯電装置が発する持続性の純音である『キーン』音のみを抽出して評価を行う音質評価方法および音質評価装置である。
【0008】
特許文献4に記載のものは、画像形成装置の多くの音色の音によって構成されている騒音から、特に用紙のこすれによる高周波のランダムノイズである『シャー』音のみを評価を可能とした音質評価方法および音質評価装置である。
【0009】
特許文献5に記載のものは、画像形成装置の多くの音色の音によって構成されている騒音から、特に駆動系のうなりによる近接した複数の周波数にピークを持つ純音からなる『ウォンウォン』音のみを評価を可能とした音質評価方法および音質評価装置である。
【0010】
特許文献6に記載のものは、画像形成装置の多くの音色の音によって構成されている騒音において、純音やうなりがない、すなわち周波数波形で突出した成分がない方がなめらかだと感じる。よって、人が感じるうるささを総称してなめらかさと称し、音のなめらかさの評価を可能とした音質評価方法および音質評価装置である。
【0011】
特許文献7に記載のものは、事務機器等から生じる騒音などの音について、人の主観的な感覚に与える影響を考慮した総合的な音質の評価が可能な音質評価装置及び音質評価方法を提供することを課題とし、その解決手段として、評価すべき音のデジタル信号が音質指数演算部に入力されると、波形前処理部で各種の音響指数の演算に必要な前処理を行った後、音響指数演算部で複数の音響指数を演算する。このとき、大きさ指数演算部で音の大きさ指数を演算するだけでなく、騒音の主観的なうるささや不快さに及ぼす影響を考慮し、高周波純音指数、広帯域雑音指数をそれぞれ高周波純音指数演算部,広帯域雑音指数演算部において演算する。そして、得られた大きさ指数、高周波純音指数、広帯域雑音指数に基づいて、総合音質指数演算部で総合音質指数を演算し、演算結果表示部に表示するものである。
【0012】
しかしこれら特許文献2〜7に記載のものは、音質評価装置および音質評価方法であり、音質評価方法の提示だけで実際の製品の音質改善方法については触れられていない。
【0013】
そして、特許文献8に記載のものは本願出願人が別途提案したものであり、客観的な評価基準に基づいて、装置周辺の人間に対して、装置から発生する音に起因する心理的な不快感を緩和することができるようにすることを課題とし、その解決手段として、用紙に画像を形成する画像形成部を経由して用紙を所定の経路に案内する用紙案内路中で、搬送機構により用紙を搬送するようにした画像形成装置において、搬送機構による用紙の搬送に際して、装置本体から1m離間した位置で測定される装置本体から発生する稼動音のラウドネス値Aおよびシャープネス値Bに基づいて取得される稼動音の不快指数Sを、所定の範囲内に設定するように、紙搬送手段を改良して不快感を軽減したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、現在、画像形成装置における騒音を評価する方法として、一般的に音響パワーレベルや音圧レベル(ISO7779)が用いられている。しかしながら、これらは複写機やプリンタなどのオフィス機器から発生する音響エネルギーの値であるため、騒音に対する人間の主観的な不快感と相関があまり良くない場合がある。例えば、音圧レベル(等価騒音レベル Leq:測定時間全体についてエネルギー平均した値)の値が同じ音を比較して聞いた場合に、音の周波数分布の違いや衝撃音の有無で不快さに差があることがある。また、音圧レベルの値は小さくても、高周波成分や純音成分等が含まれていると不快に感じる場合がある。
【0015】
したがって、今後のオフィス環境改善のためにはOA機器の音響パワーレベルや音圧レベルでの評価と低減だけでなく、音質の評価と改善も同時に行っていく必要がある。音質の評価・改善のためには、現状把握のための音質の定量的な計測と、改善前後でどのくらい改善されたのか計測する必要がある。
【0016】
ところが、音質は物理量ではないため、定量的な測定を行なう事ができない。よって、目標値の設定も困難である。人間による音質評価の場合、「音質が少し改善された」、「かなり改善された」等、定性的な表現となる。さらに個人差があるために、人によって評価が異なったり、得られた結果が一般的に言えるのかどうか判定が難しい場合がある。
【0017】
音の質を物理的特性で定量的に表わさなければ対策が本当に効果があったのか、また、どのくらいの効果があったのか、客観的な評価は不可能である。このため、主観評価実験を行い、その結果について統計処理を行って音質の定量化を行う必要がある。
【0018】
ところで、音質を評価する物理量として、心理音響パラメータというものがある。代表的なものは以下の通りである(例えば、日本機械学会「第7回設計工学・システム部門講演会"21世紀に向けて設計、システムの革新的飛躍を目指す!"」'97年11月10日、11日「音・振動と設計、色と設計(1)」部門第089B『ダミーヘッドを用いた音質評価システム』を参照、なお、括弧内は単位)。
・ラウドネス(sone) :聞こえの大きさ
・シャープネス(acum) :高周波成分の相対的な分布量
・トーナリティ(tu) :調音性、純音成分の相対的な分布量
・ラフネス(asper) :音の粗さ感
・フラクチュエーション・ストレングス(vacil):変動強度,うなり感
また、これ以外に
インパルシブネス(iu) :衝撃性
という心理音響パラメータも計測可能な機器が出てきた。
【0019】
これらの心理音響パラメータは、どのパラメータも値が増すと、不快感が増す傾向にある。この中で、ラウドネスだけがISO532Bで規格化されている。他のパラメータについては、基本的な考え方や定義は同じであるが、計測器メーカーによる独自の研究によってプログラムや計算方法が異なるため、メーカーによって測定値が若干異なるのが普通である。また、インパルシブネスの様に、計測器メーカー独自で開発したオリジナルなパラメータもある。
【0020】
複写機やプリンタなどのOA機器から発生する騒音は、機構の複雑さから、多くの音色の騒音によって構成されており、たとえば低周波の重苦しい音,高周波の甲高い音,衝撃的に発生する音などが、モータ,紙,ソレノイド等の複数の音源から時間的に変化しながら発生する。人間はこれらの音を総合的に判断して不快かどうかの判定を行っているが、音のどの部分が特に不快と関係があるかの重み付けを行って判定していると考えられる。つまり、機械の音色によって不快に対して影響の大きい心理音響パラメータと、影響の小さい心理音響パラメータが存在する。
【0021】
ところで、画像形成装置と言っても様々なものがあり、デスク上に設置する小型低速機や、デスクサイドに設置する中型中速機、また、オフィスのフロアのデスクからやや離れた位置に設置される大型高速機がある。さらには1台の機械で画像の解像度やカラーあるいはモノクロ画像を変更したり,画像をアウトプットするシート部材の厚さや材質の違いによってモード設定できる場合がある。この場合は、1台の機械で画像形成速度や機械の稼働部分が異なる場合がある。
【0022】
これらはオフィスの規模やユーザーのニーズによって様々に使い分けられている。当然、それぞれの機械によって、構造体強度やメカ的な構成、画像形成のプロセス条件が異なり、機械によって稼働音の特徴が異なる。また、1台で複数モードを有する画像形成装置の場合は、選択したモードによって画像形成速度が複数あったり、画像形成装置内部で動作する部分が異なるために、モードによって複数の異なる稼働音が発生する場合がある。
【0023】
したがって、画像形成装置の種類によって稼働音の印象が異なり、不快に感じる音源が異なることが考えられる。また、1台の機械においても、画像形成のモードが変わると、駆動系の回転数が変化して発生周波数も変化し、衝撃音の単位時間あたりの発生回数が変化する。また、動作する部分が異なれば、発生する音も異なる。つまり、モードによって稼働音の印象が異なり、不快に感じる音源が異なることが考えられる。
【0024】
よって、画像形成装置の種類によって音質改善が必要な音源が異なる場合がある。さらに、画像形成装置のモードによっては音質改善が必要な音源が異なる場合がある。すなわち、画像形成装置の様々な機種や、複数の動作モードを有しそのモードによって異なる音が発生する画像形成装置の場合、音質改善を行なうためには単独の装置や、単独モードの音質評価だけでは不十分であり、装置やモードごとに音質評価を行なう必要がある。
【0025】
そこで本願発明者は、複数の画像形成装置と、複数の画像形成モードを有する画像形成装置の音質評価を装置やモード別に行ない、結果を総合的に分析して精度よい音質評価式を導出した。そして、その音質評価式を使用することにより、不快音源の改良を行なって心理音響パラメータ値を下げ、ユーザーに許容される音質評価値以下の画像形成装置を提供することが可能となる。上記音質評価式の導出は、精度よい音質の予測を行なうために、音の一対比較の結果を決定木と多重ロジスティック回帰分析を組み合わせて行なった。
【0026】
そして、各々の画像形成装置や、画像形成モードに対応する音質の許容値よりも低くなるように音質改善を行った装置を提供すれば、どの種類の装置を使用しても、さらにどのモードを使用しても画像形成装置における不快音の問題は解決されることになる。
【0027】
すなわち本発明は、従来の画像形成装置における不快音発生の問題を解決し、装置種類および装置モードに関わらず精度良く動作音の音質を評価できる音質評価方法を提供するとともに、不快音の発生を低減させた画像形成装置を提供することを課題とする。また、不快音の発生を低減させた画像形成装置の製造方法、および、画像形成装置の改造方法を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前記の課題は、本発明により、画像形成装置が画像形成時に発する音を評価する方法であって、画像形成装置が画像形成時に発する複数種類の音に対して任意の2音を取りだして一対比較法による評価を行い、該評価による2音の不快さの距離を目的変数とし、前記2音を一対比較した時の、2音の音響物理量の差の値に対して、主成分分析から因子分析した結果の複数の因子を説明変数として重回帰分析を行ない、因子の線形結合によって2音の不快さの距離を予測する式(A)を導出し、該式(A)より、一対比較実験に用いた全ての音(母集団)の音響物理量の平均値である音は、音質評価値α=0と定義することにより、単独の音の不快さを予測する音質評価式を導出し、該導出した音質評価式を用いて音質評価を行うことにより解決される。
【0029】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成装置の製造方法であって、画像形成装置が画像形成時に発する複数種類の音に対して任意の2音を取りだして一対比較法による評価を行い、該評価による2音の不快さの距離を目的変数とし、前記2音を一対比較した時の、2音の音響物理量の差の値に対して、主成分分析から因子分析した結果の複数の因子を説明変数として重回帰分析を行ない、因子の線形結合によって2音の不快さの距離を予測する式(A)を導出し、該式(A)より、一対比較実験に用いた全ての音(母集団)の音響物理量の平均値である音は、音質評価値α=0と定義することにより、単独の音の不快さを予測する音質評価式を導出し、該導出した音質評価式を用い、その音質評価式による音質評価が所定の条件を満たすよう装置各部を設計し、当該設計内容にしたがって画像形成装置を製造することを特徴とする画像形成装置の製造方法により解決される。
【0030】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成装置の改造方法であって、画像形成装置が画像形成時に発する複数種類の音に対して任意の2音を取りだして一対比較法による評価を行い、該評価による2音の不快さの距離を目的変数とし、前記2音を一対比較した時の、2音の音響物理量の差の値に対して、主成分分析から因子分析した結果の複数の因子を説明変数として重回帰分析を行ない、因子の線形結合によって2音の不快さの距離を予測する式(A)を導出し、該式(A)より、一対比較実験に用いた全ての音(母集団)の音響物理量の平均値である音は、音質評価値α=0と定義することにより、単独の音の不快さを予測する音質評価式を導出し、該導出した音質評価式を用いて改造対象となる画像形成装置の発する音の音質評価を行い、当該音質評価結果に基づいて改造対象となる前記画像形成装置の構成を改造することを特徴とする画像形成装置の改造方法により解決される。
【0031】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置であって、画像形成装置端面から略1m離れた収音位置で収音される前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、(a)式により算出される音質評価値Sが、条件(b)を満たすことを特徴とする画像形成装置により解決される。
【0032】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置であって、画像形成装置端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、(c)式により算出される音質評価値Sが、条件(b)を満たすことを特徴とする画像形成装置により解決される。
【0033】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置であって、画像形成装置端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、(a)式により算出される音質評価値Sが、(d)を満たすことを特徴とする画像形成装置により解決される。
【0034】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置であって、画像形成装置端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、(c)式により算出される音質評価値Sが、条件(d)を満たすことを特徴とする画像形成装置により解決される。
【0035】
また、複数の画像形成速度あるいは複数の動作モードを有し、前記画像形成速度あるいは動作モードに関わりなく、前記音質評価値Sが前記条件を満たすと好適である。
【0036】
また、前記収音位置は、ISO(International Organization For Standardization)7779に規定された近在者位置であり、少なくとも装置前面方向の音の収音結果から算出される前記音質評価値Sが前記条件を満たすと好適である。
【0037】
また、前記収音位置は、ISO(International Organization For Standardization)7779に規定された近在者位置であり、装置前後左右の4方向の音の収音結果の各々から算出される前記音質評価値Sの平均値が前記条件を満たすと好適である。
【0038】
また、前記収音位置は、ISO(International Organization For Standardization)7779に規定された近在者位置であり、少なくとも装置前後左右のいずれか1方向の音の収音結果から算出される前記音質評価値Sが前記条件を満たすと好適である。
【0039】
また、前記収音位置は、ISO(International Organization For Standardization)7779に規定された近在者位置であり、装置前後左右の4方向の音の収音結果の各々から算出されるすべての前記音質評価値Sが前記条件を満たすと好適である。
【0040】
また、前記画像形成対象シートへの画像形成時に当該装置が発する音を低減させる低減手段を具備すると好適である。
また、前記画像形成対象シートへの画像形成時に所定の部位を駆動するステッピングモータと、該ステッピングモータを保持するブラケット部材とをさらに具備し、前記低減手段は、前記ステッピングモータと前記ブラケット部材との間に介在配置される弾性体を有していると好適である。
【0041】
また、前記画像形成対象シートへの画像形成時に所定の部位を駆動するステッピングモータをさらに具備し、前記低減手段は、前記ステッピングモータをマイクロステップ駆動させる駆動制御手段を有していると好適である。
【0042】
また、前記画像形成対象シートへの画像形成時に所定の部位を駆動するモータをさらに具備し、前記低減手段は、前記モータ近傍に配置されるヘルムホルツ共鳴器を有していると好適である。
【0043】
また、中空部を有する円柱状の像担持体と、該像担持体の表面を帯電させる帯電手段とをさらに具備し、前記低減手段は、前記像担持体の中空部に当該像担持体の振動を抑制する制振部材を有すると好適である。
【0044】
また、前記画像形成対象シートを所定の搬送経路に沿って案内する可撓性シートからなる案内部材であって、搬送される前記画像形成対象シートに接する端部が前記可撓性シートの折り曲げ部分となっている案内部材をさらに具備すると好適である。
【0045】
また、前記画像形成対象シートへの画像形成に用いられるトナーがワックスを含むトナーであると好適である。
また、前記低減手段は、複数の給紙段を有する給紙搬送路それぞれに設けられた電磁クラッチの動作を、使用する給紙段以上の電磁クラッチとするように制御する給紙搬送制御手段でなると好適である。
【0046】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を製造する方法であって、製造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、(a)式により算出される音質評価値Sが、条件(b)を満たすよう装置各部を設計する設計ステップと、前記設計ステップによってなされた設計内容にしたがって画像形成装置を製造する製造ステップとを具備することを特徴とする画像形成装置の製造方法により解決される。
【0047】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を製造する方法であって、製造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、(c)式により算出される音質評価値Sが、条件(b)を満たすよう当該装置各部を設計する設計ステップと、前記設計ステップによってなされた設計内容にしたがって画像形成装置を製造する製造ステップとを具備することを特徴とする画像形成装置の製造方法により解決される。
【0048】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を製造する方法であって、製造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、(a)式により算出される音質評価値Sが、条件(d)を満たすよう当該装置各部を設計する設計ステップと、前記設計ステップによってなされた設計内容にしたがって画像形成装置を製造する製造ステップとを具備することを特徴とする画像形成装置の製造方法により解決される。
【0049】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を製造する方法であって、製造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、(c)式により算出される音質評価値Sが、条件(d)を満たすよう当該装置各部を設計する設計ステップと、前記設計ステップによってなされた設計内容にしたがって画像形成装置を製造する製造ステップとを具備することを特徴とする画像形成装置の製造方法により解決される。
【0050】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を改造する方法であって、改造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音を収音する収音ステップと、前記収音ステップでの収音結果から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、(a)式により算出される音質評価値Sが、条件(b)を満たすよう当該装置の構成を改造する改造ステップとを具備することを特徴とする画像形成装置の改造方法により解決される。
【0051】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を改造する方法であって、改造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音を収音する収音ステップと、前記収音ステップでの収音結果から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、(c)式により算出される音質評価値Sが、条件(b)を満たすよう当該装置の構成を改造する改造ステップとを具備することを特徴とする画像形成装置の改造方法により解決される。
【0052】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を改造する方法であって、改造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音を収音する収音ステップと、前記収音ステップでの収音結果から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、(a)式により算出される音質評価値Sが、条件(d)を満たすよう当該装置の構成を改造する改造ステップとを具備することを特徴とする画像形成装置の改造方法により解決される。
【0053】
また、前記の課題は、本発明により、画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を改造する方法であって、改造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音を収音する収音ステップと、前記収音ステップでの収音結果から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、(c)式により算出される音質評価値Sが、条件(d)を満たすよう当該装置の構成を改造する改造ステップとを具備することを特徴とする画像形成装置の改造方法により解決される。
【発明の効果】
【0054】
請求項1の音質評価方法によれば、一対比較法の結果と、因子分析および重回帰分析を組み合わせた分析において、2音の不快さの距離を予測するモデルを導出したあと、一対比較に用いた供試音の音響物理量の平均値を入力した場合、出力(音質評価値S)はS=0(中心値)をとる、と定義する事により、音の音響物理量と音の母集団の平均値の差を入力すると、音質評価値=0の音と比較した時の不快さの距離を出力可能な精度の高い音質評価式の導出することがでる。また評価を比較的多くの実験を行うことなく実施でき、結果として音質評価に関する作業が簡易となる。
【0055】
請求項2の画像形成装置の製造方法によれば、精度の高い音質評価式を用いた音質評価に基づいて装置を製造するので、不快な音をほとんど発しない画像形成装置を提供することができる。
【0056】
請求項3の画像形成装置の改造方法によれば、精度の高い音質評価式を用いた音質評価に基づいて装置を改造するので、不快な音をほとんど発しない画像形成装置を提供することができる。
【0057】
請求項4の画像形成装置は、音質評価式(a)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力数値に対応した条件(b)に合致するように構成されているので、画像形成装置の発する音がユーザに与える不快感を低減することができる。
【0058】
また、条件(b)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、複数の動作モード等を有しており、各モードで画像形成速度が変動するような装置であっても、その動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(a)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが速度に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成速度やモードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果も得られる。
【0059】
請求項5の画像形成装置は、音質評価式(c)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力数値に対応した条件(b)に合致するように構成されているので、画像形成装置の発する音がユーザに与える不快感を低減することができる。
【0060】
また、条件(b)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、複数の動作モード等を有しており、各モードで画像形成速度が変動するような装置であっても、その動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(c)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが速度に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成対象シートの出力値やモードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果も得られる。
【0061】
請求項6の画像形成装置は、音質評価式(a)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力数値に対応した条件(d)に合致するように構成されているので、画像形成装置の発する音がユーザに与える不快感を低減することができる。
【0062】
また、条件(d)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、複数の動作モード等を有しており、各モードで画像形成速度が変動するような装置であっても、その動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(a)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが速度に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成対象シートの出力値や、モードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果も得られる。
【0063】
請求項7の画像形成装置は、音質評価式(c)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力数値に対応した条件(d)に合致するように構成されているので、画像形成装置の発する音がユーザに与える不快感を低減することができる。
【0064】
また、条件(d)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、複数の動作モード等を有しており、各モードで画像形成速度が変動するような装置であっても、その動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(c)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが速度に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成対象シートの出力値や、モードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果も得られる。
【0065】
請求項8の構成により、画像形成速度や動作モードに関わらず、装置動作音がユーザに与える不快感を低減できる。
請求項9の構成により、画像形成装置のユーザが通常位置する可能性が高い装置前面側の位置で収音した結果から得られた音質評価値Sが、上述した条件を満たすようになっているので、画像形成装置の動作音がユーザに与える不快感を低減できる。
【0066】
請求項10の構成により、画像形成装置の4方向で収音された音から音質評価値Sを導出し、その平均値が条件を満たしているので、どの方向にユーザがいてもその動作音がユーザに与える不快感を低減できる。
【0067】
請求項11の構成により、画像形成装置の少なくとも1方向側において収音した音から導出した音質評価値Sが条件を満たしているので、その方向側にいるユーザに対して、画像形成装置の動作音がユーザに与える不快感を低減できる。
【0068】
請求項12の構成により、画像形成装置の前後左右方向のすべての方向側で収音された音から導出される音質評価値Sが条件を満たしているので、ユーザはどの方向側にいても画像形成装置の動作音がユーザに与える不快感を低減できる。
【0069】
請求項13の構成により、低減手段により画像形成時に画像形成装置が発する音を低減することができ、これにより画像形成装置が発する音から導出される音質評価値Sが条件を満たし、画像形成装置の動作音がユーザに与える不快感を低減できる。
【0070】
請求項14の構成により、ステッピングモータ動作時の振動が直接ブラケット部材に伝達されず、弾性体によって吸収されるので、ブラケット部材に伝達される振動が低減され、この振動に起因して発生する音を低減できる。
【0071】
請求項15の構成により、ステッピングモータをマイクロステップ駆動することで、通常の機械的に定まるステッピングモータのステップ角よりも小さい角度のステップ角でステッピングモータを駆動することができる。これによりステッピングモータのロータ駆動が滑らかになり、振動の発生を抑制することができ、動作音を低減させることができる。
【0072】
請求項16の構成により、ヘルムホルツ共鳴器は、その形状寸法等から定まるヘルムホルツ共鳴周波数の音成分をその空洞内に閉じ込める、つまりその共鳴周波数の音成分を減衰させる機能を有する。したがって、モータが発する音の主な周波数成分に対応する共鳴周波数を有するヘルムホルツ共鳴器を近傍に設置することでモータの発生音が装置外部に漏れる量を低減できる。
【0073】
請求項17の構成により、像坦持体に帯電手段が帯電させる際には、その帯電作用によって像坦持体が振動し、これに起因して音が発生するが、その像担持体に生じる振動を制振部材によって抑制することができ、発生音を低減することができる。また、制振部材は像担持体の内部に配置されるため、新たな設置スペース等を用意する必要もないという効果が得られる。
【0074】
請求項18の構成により、案内部材における可撓性シートの折り曲げた部分が搬送される画像形成対象シートと接するようになっているので、当該接触により発生する音を低減することができる。すなわち、可撓性シートを所定の寸法にする場合、通常裁断されるが、可撓性シートの裁断部分にはバリ等があり、この部分が画像形成対象シートと接すると耳障りな音が発生する。これに対し、上記のように裁断部分ではなく折り曲げ部分が画像形成対象シートと接するようになっているので、耳障りな音の発生を低減することができる。
【0075】
請求項19の構成により、ワックスを含むトナーを用いることで、画像形成における定着過程の際に、定着部材と画像形成対象シートの乖離性を向上させるために定着部材に対してオイル塗布等の作業を行う必要がない。よって、かかるオイル塗布作業に伴って発生する音を低減することができるという効果が得られる。
【0076】
請求項20の構成により、使用する給紙段の電磁クラッチのみを動作させて金属衝撃音を低減することにより、インパルシブネス値が下がるため、耳障りな音の発生を低減することができる。
【0077】
請求項21の画像形成装置の製造方法によれば、音質評価式(a)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力数値に対応した条件(b)に合致するように装置各部を設計しており、かかる設計内容に基づいて画像形成装置を製造するので、動作音がユーザに与える不快感を低減した画像形成装置を製造してユーザに提供することができる。
【0078】
また、条件(b)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、画像形成速度や動作モードに関わらず、その動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(a)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが速度に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成速度や動作モードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果が得られる。
【0079】
請求項22の画像形成装置の製造方法によれば、音質評価式(c)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力数値に対応した条件(b)に合致するように装置各部を設計しており、かかる設計内容に基
づいて画像形成装置を製造するので、動作音がユーザに与える不快感を低減した画像形成装置を製造してユーザに提供することができる。
【0080】
また、条件(b)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、画像形成速度や動作モードに関わらず、その動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(c)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが速度に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成速度や動作モードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果が得られる。
【0081】
請求項23の画像形成装置の製造方法によれば、音質評価式(a)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力数値に対応した条件(d)に合致するように装置各部を設計しており、かかる設計内容に基づいて画像形成装置を製造ので、動作音がユーザに与える不快感を低減した画像形成装置を製造してユーザに提供することができる。
【0082】
また、条件(b)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、画像形成速度や動作モードに関わらず、その動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(a)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが速度に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成速度や動作モードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果が得られる。
【0083】
請求項24の画像形成装置の製造方法によれば、音質評価式(c)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力数値に対応した条件(d)に合致するように装置各部を設計しており、かかる設計内容に基づいて画像形成装置を製造するので、動作音がユーザに与える不快感を低減した画像形成装置を製造してユーザに提供することができる。
【0084】
また、条件(b)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、画像形成速度や動作モードに関わらず、その動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(c)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが速度に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成速度や動作モードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果が得られる。
【0085】
請求項25の画像形成装置の製造方法によれば、音質評価式(a)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力値に対応した条件(b)に合致するように装置各部の構成を改造しているので、動作音がユーザに与える不快感を低減した画像形成装置を提供することができる。
【0086】
また、条件(b)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、画像形成対象シートの出力値や動作モードに関わらず、改造後の装置動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(a)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが画像形成対象シートの出力値に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成対象シートの出力値や動作モードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果が得られる。
【0087】
請求項26の画像形成装置の製造方法によれば、音質評価式(c)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力値に対応した条件(b)に合致するように装置各部の構成を改造するので、動作音がユーザに与える不快感を低減した画像形成装置を提供することができる。
【0088】
また、条件(b)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、画像形成対象シートの出力値や動作モードに関わらず、改造後の装置動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(c)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが画像形成対象シートの出力値に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成対象シートの出力値や動作モードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果が得られる。
【0089】
請求項27の画像形成装置の製造方法によれば、音質評価式(a)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力値に対応した条件(d)に合致するように装置各部の構成を改造するので、動作音がユーザに与える不快感を低減した画像形成装置を提供することができる。
【0090】
また、条件(d)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、画像形成対象シートの出力値や動作モードに関わらず、改造後の装置動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(a)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが画像形成対象シートの出力値に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成対象シートの出力値や動作モードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果が得られる。
【0091】
請求項28の画像形成装置の製造方法によれば、音質評価式(c)によって導出される音質評価値Sが、1分あたりの画像形成対象シートの出力値に対応した条件(d)に合致するように装置各部の構成を改造するので、動作音がユーザに与える不快感を低減した画像形成装置を提供することができる。
【0092】
また、条件(d)が画像形成対象シートの出力値によって変動するので、画像形成対象シートの出力値や動作モードに関わらず、改造後の装置動作音から得られるパラメータ値を1つの音質評価式(c)を用いて音質評価値Sを求めることができるとともに、音質評価値Sが画像形成対象シートの出力値に応じて変動する条件を満たしているので、画像形成対象シートの出力値や動作モードに関わらず、動作音がユーザに与える不快感を低減できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0093】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の音質評価方法は、種々の画像形成装置が発する騒音を評価するものであって、以下に説明する音質評価式を用いて画像形成装置の音質評価を行い、その評価結果が所定の条件を満たすように画像形成装置を設計・製造し、あるいは改造することによって、不快な騒音をほとんど発しない画像形成装置を提供することができるものである。騒音評価に用いた画像形成装置については後述するとして、画像形成装置が画像形成時に発する騒音を評価する手法について先に説明する。
【0094】
[I.音質評価手法]
音質を評価する方法としては、シェッフェの一対比較法により得られた実験結果から、音響物理量を用いて音質を予測できる音質評価式を導出するというものが考えられる。
【0095】
一対比較法は、音、匂い、味のように、絶対的な評価が困難な刺激に対して、2つの刺激の対をつくる。そして、評価を行いたい刺激の全組み合わせで対をつくり、その評点の差を求め、刺激各々について相対的な平均評点を与えるというものである。この方法は、人間が1つの刺激に対して評価をするのは困難であるが、2つの刺激を比較してどちらがよいか悪いかを判断することは比較的容易になし得る点に着目したものである。
【0096】
例えば、3つの刺激A1、A2、A3がある場合、それぞれの刺激モデルを、y1=μ+α1、y2=μ+α2、y3=μ+α3とする。なお、簡略化のため、このモデルは総平均μと主効果αi(i=1,2,3)のみで構成されているものとする。また、実験計画法のパラメータ推定のために必要な一般的な制約と同様に、主効果の総和は0とする。
α1+α2+α3=0………式1
【0097】
絶対的な評価ができないということは、μの値についての見当がつかないということなので、直接にy1、y2、y3が測定できないということであるが、上述したように2つの刺激の差をとることでμが消えて、主効果のみの差で表せることになる。
y1−y2 =(μ+α1)−(μ+α2)=α1−α2………式2
y1−y3 =(μ+α1)−(μ+α3)=α1−α3………式3
y2−y3 =(μ+α2)−(μ+α3)=α2−α3………式4
【0098】
ここで、式2+式3は、
2y1−(y2+y3)=2α1−(α2+α3)
であるが、上記制約式1により
2y1−(y2+y3)=3α1
となる。つまり、各刺激の効果を取り出すことができる。そして、このときの各刺激の効果を、画像形成装置が持つ音響物理的特性の差によって、1次の関数で表すとすれば、
α1−α2=b(x1−x2)………式5
という関係が得られる。ここで、bは定数であり、xiは、i=1,2,3…nである。切片は2つの刺激の差をモデル化するので相殺される。
【0099】
次に、主成分分析(Principal Component Analysis)の説明を行なう。
主成分分析の目的は、変量のいくつかの線形結合を用い、変量間の相関構造を説明することである。整形結合による新たな評価指標の作成と好ましい解釈である。主成分分析を有効利用するためには、変量は多変量正規分布に従っていると仮定できることが望ましい。また、変量間には適当な大きさの相関が測定できることが必要である。主成分分析は多変量データを少数の直行した指標で説明したい場合に有効である。
【0100】
元の変数がn個あるとき、n個の主成分が形成される。
主成分とは、元の変数の一次結合によって得られる合成変数で、第1主成分は最大の分散を持ち、次に大きな分散を持つ第2主成分は第1主成分に直交(相関がない)する、というように決定されていく。どの主成分も、変数間の相関行列の固有ベクトルと、平均偏差化された元の変数を線形結合させて算出される。つまり、主成分分析を行なうためには初めに元の変量(ここでは音響物理量)の相関分析を行なう必要がある。
【0101】
主成分分析を行なうと以下のようなアウトプットがある。
固有値は主成分の分散、得られた主成分の情報量の大きさを表わす指標である。
固有ベクトルは元の変量の線形結合の係数である。主成分への重みになる。
【0102】
寄与率は元の変量の情報量をどれだけ説明できるかを表わす指標である。相関が高いほど寄与率も高くなる。
累積寄与率は大きい固有値を持つ方から寄与率を累積した指標である。
【0103】
因子負荷量は主成分と元の変量との相関関係である。主成分の解釈に使う。因子負荷量の絶対値が大きい場合が主成分との関連が強いことを表わす。
n個の主成分のすべてを採用すると、合計分散と構造が元の変数群と同じになる。1つ1つの主成分と前の主成分との間に相関が見られない(直交する)こと、という条件があるため、どの主成分も、分散が必ず前の主成分より小さくなる。また、最初のいくつかの主成分だけで標本の分散のほとんどが説明できる。
【0104】
主成分分析の例を図に示す。図1は、x、yで強い相関関係にある。変数を線形結合させ、点の散布を最も的確に表すものを計算すると、図のP1のようになる。P1が主軸になるようにプロットを回転および反転させると、図2のようになり、x、yの2次元の点の集まりが1次元でだいたい近似される。第2主成分であるP2は、P1に直交する形で分布している。
【0105】
高次のデータの場合も、最初の3つの主成分を回転軸としてプロットすれば、最適な角度の3次元表示になることが多い。
2つか3つの軸に元の変数を割り当てた状態で主成分分析を行うと、主成分は回転プロット上に中心からの線として表示される。これらの線は、P線(バイプロット線)と呼ばれ、主成分を軸上の変数の一次結合として近似したものを表す。変数が2つまたは3つしかない場合は、線が主成分そのものを表す。中心からの線の長さは、主成分の固有値または分散に該当する。第1主成分が分散のほとんどをカバーするため、P1線は他の線に比べるとずっと長くなる。また、分散が小さい主成分は影響が小さいので考慮する必要がない。考慮するかどうかは分散が1より小さいかどうかで判定する。変数が5あった場合、主成分の固有値の合計は5になる。固有値が1未満の場合、元の変量の情報量が1であるから、合成指標としてそれ以下の情報量しか持たない主成分は解釈しない場合が多い。ただし、主成分の解釈が困難な場合、バリマックス回転により単純構造化を試みるが、単純構造化により固有値が変更になる場合もあるので、試行錯誤を行なうことも必要である。
【0106】
因子分析(Factor-Analysis)は、主成分を回転させて、成分の方向を分析変数と見比べて、簡単に解釈できるようにすることである。回転によって解釈が簡単になるかどうかは、回転させる成分の数に大きく左右される。この回転法は、バリマックス回転法と呼ばれ、因子分析では従来から使われている(Kaiser,H.F.1958)。
【0107】
そこで、本発明では画像形成装置の発生する音について、評点の差(一対比較法実験により得られた一対の音の評点の差)を目的変数に、複数の因子成分を説明変数群とし、重回帰分析を行えば、評価の差を予測するモデルが得られることになる。また、因子成分は音響物理量で構成されるので、比較したい2つの音が有する物理的特性値を因子成分に入力すると、2つの音がどのくらい不快さが異なるかといった評価の差の予測が出力できるモデルが得られる。
【0108】
次に、実際に行った実験、分析等を元にその過程を詳細に説明することとする。
画像形成装置の音質評価実験と不快音源の特定および音質評価式導出の流れは以下のとおりである。
(1)画像形成装置の動作音の採取
(2)動作音の分析
(3)採取した動作音から供試音の作成
(4)供試音の音響物理量(心理音響パラメータ,音圧レベル)の測定
(5)機種またはモードごとの供試音による一対比較法実験(シェッフェの一対比較法 浦の変法)
(6)不快音源の特定
(7)差モデルの分析データの作成
(8)主成分分析
(9)因子分析
(10)『2音間の主観評価値の差』を『因子』で予測する差モデル式を層ごとに導出
(11)単独の音の不快さを予測する相対モデル式(音質評価式)の導出
(12)導出した音質評価式の検証
【0109】
以下、上記過程の詳細について説明する。
(1)画像形成装置の動作音の採取
画像形成装置の動作音の採取は、ヘッドアコースティックス社製ダミーヘッドHMS(Head Measurement System)IIIを用い、バイノーラル(両耳覚)録音を行った。このようにバイノーラル録音を行い、専用ヘッドフォンで再生することで、実際に人間が機械の発生する音を聞いたときの感覚で再現できるからである。
【0110】
また、被測定機器である画像形成装置は、後述する複数モードを持つ画像形成装置に対しては動作モードに応じて3種類の画像形成速度で画像形成動作を実行するものであり、これらの3つの動作モードごとに測定を行った。
【0111】
また、後述する卓上型(デスクトップ)画像形成装置、中速の画像形成装置、大型(コンソール型)画像形成装置はモノクロの単一モードしかないため、その動作について測定を行なった。
【0112】
測定条件は以下の通りである(図3参照)。
・録音環境‥‥半無響室
・ダミーヘッド503の耳の位置(収音位置)504:高さ1.2m、被測定機器501端面からの水平距離1m(1±0.03m)、幅方向は機器中央位置
・録音方向…前面(画像形成装置の操作部502がある面)、後面、左右面の4方向
・録音モード…FF(フリー・フィールド:無響室用)
・HPフィルタ…22Hz
【0113】
なお、ダミーヘッドの高さを1.2mとしたのは、最近の画像形成装置の利用の仕方として、ユーザが着席した状態でパーソナルコンピュータ等から指示を出すケースが多いことを考慮したものである。もちろん、人間が立っている状態を考慮して1.5mの高さにダミーヘッドを設置してもよい。
【0114】
ところで、画像形成装置が発する音は、方向ごとに異なるのが通常である。種々のモータの配置位置や、用紙の搬送経路、排紙口の位置などが装置中心にあるわけではなく、分散配置されているからである。よって、ある音源(モータ等)が発する音は右面側ではよく聞こえるが、左面側ではよく聞こえないといったように各方向ごとに採取される音も異なるものとなる。後述する実験に使用する供試音はどの方向で採取したものであってもよいが、一対比較実験を行う際にはいずれか1つの方向で採取したものに統一する必要がある。そこで、本実験では、前面側においてユーザが最も聞く機会が多いであろうと考えられる一方で、通常画像形成装置の後面側は壁にあわせて設置されるため、後面側の音を聞く機会がほとんどないと考えられるので、前面側で採取したものを供試音として利用することとした。
【0115】
(2)動作音の分析
次に、上述したように採取した画像形成装置の動作音の分析を行った。
まず、複数モードを持つ画像形成装置として後述するカラープリンタ100に対して、カラー28ppm時、つまり印刷速度が28ppmで動作したときの騒音を分析すると、図4に示すような分析結果が得られた。図4の上側は時間軸上において、採取した音を表現したものであり、図4の下側は周波数軸上において、採取した音を表現したものである。なお、本明細書において「ppm」は、A4横サイズの用紙の1分あたりの出力枚数である。
【0116】
この結果から、7つの主要な音源を抽出した。まず、時間軸上で定着ユニット50の定着オイル塗布衝撃音を抽出した。そして、周波数軸上では、カラー現像駆動系音、給紙ステッピングモータ音、帯電音、ドラム駆動ステッピングモータ音、ポリゴンミラーモータ音、用紙摺動音を抽出した。
【0117】
カラー14ppm時、つまり印刷速度が14ppmで動作したときの騒音を分析すると、図5に示すような分析結果が得られた。図5の上側は時間軸上において、採取した音を表現したものであり、図5の下側は周波数軸上において、採取した音を表現したものである。この結果から、主要な音源として、時間軸上では定着オイル塗布衝撃音を抽出し、周波数軸上では給紙ステッピングモータ音、帯電音、ドラム駆動モータ音、ポリゴンミラーモータ音、用紙摺動音を抽出した。
【0118】
モノクロ38ppm時、つまり印刷速度38ppmで動作したときの騒音を分析すると、図6に示すような分析結果が得られた。図6の上側は時間軸上において、採取した音を表したものであり、図6の下側は周波数軸上において、採取した音を表したものである。この結果から、主要な音源として、時間軸上では定着オイル塗布衝撃音を抽出し、周波数軸上では、現像駆動系音、帯電音、ドラム駆動ステッピングモータ音、用紙摺動音を抽出した。
【0119】
次に、卓上型(デスクトップ)画像形成装置として後述するモノクロプリンタ200(20ppm)が動作したときの騒音を分析すると、図7に示すような分析結果が得られた。図7の上側は時間軸上において、採取した音を表現したものであり、図7の下側は周波数軸上において、採取した音を表現したものである。この結果から、主要な音源として、時間軸上では金属(クラッチ・ソレノイド)衝撃音と紙衝撃音を抽出し、周波数軸上ではメインモータ音、AC帯電音を抽出した。
【0120】
次に、中速の画像形成装置として後述する胴内排紙型複写機300(27ppm)が動作したときの騒音を分析すると、図8に示すような分析結果が得られた。図8の上側は時間軸上において、採取した音を表現したものであり、図8の下側は周波数軸上において、採取した音を表現したものである。この結果から、主要な音源として、時間軸上では給紙音と金属(クラッチ・ソレノイド)衝撃音を抽出し、周波数軸上ではメインモータ音、給紙音、紙摺動音を抽出した。
【0121】
次に、大型(コンソール型)画像形成装置として後述するADF付複写機400(65ppm)が動作したときの騒音を分析すると、図9に示すような分析結果が得られた。図9の上側は時間軸上において、採取した音を表現したものであり、図9の下側は周波数軸上において、採取した音を表現したものである。この結果から、主要な音源として、時間軸上では紙衝撃音と金属(クラッチ・ソレノイド)衝撃音を抽出し、周波数軸上では紙衝撃音、バンクモータ音、現像モータ音、メインモータ音、紙摺動音を抽出した。
【0122】
(3)採取した動作音から供試音の作成
次に、上述したように機器前面側の位置で採取した音をヘッドアコースティックス社製の音質解析ソフトウェアである「ArtemiS」を利用し、採取した音の加工を行った。
【0123】
本実験において行った音の加工方法としては、採取した原音から印刷動作1サイクル期間中の音を切り出した。そして、1サイクル期間中の音のうち、上述したように抽出した主要音源に関する部分に対して周波数軸上または時間軸上でフィルタ処理を施し、これらの部分を減衰または強調する処理を行った。すなわち、1つのモードで抽出された音源の音につき3つの水準の音(強調・原音・減衰)を作成した。作成した供試音を被験者に提示する場合、1サイクルの音を聞かせたのでは時間が短すぎて判定が難しいので数サイクルの音にして提示を行なう。
【0124】
なお、上述したように画像形成装置の前後左右側で採取される音は各々異なるが、このような4方向の音から得られる心理音響パラメータ値の範囲よりも、本実験で作成した前面側で採取した音を強調、減衰して得られる3つの供試音から得られる心理音響パラメータ値の範囲の方が広いことが確認されている。すなわち、本実験のように前面側で採取した音を強調、減衰して得られる3つの音を用いて主観的評価実験を行うことで、4方向で採取した音から得られる音の特性をカバーする音質評価式が得られることになり、当該音質評価式により4方向における不快さを算出することもできる。
【0125】
以上のように前面側で採取した音を元に、画像形成装置ごとに抽出した主要音源の発する音から3つの水準の音(強調、原音、減衰)を作成すると、各画像形成時に発生する音について抽出した音源の水準が異なる組み合わせをL9直行表に基づいて9音作成した。シェッフェの一対比較法(浦の変法)では、供試音の総当りの組合わせで比較実験を行う必要があるので、9音の場合、比較順序を考慮し、かつ一人の被験者が一回ずつ72通りの比較を行なった。
【0126】
まず、複数モードを有する画像形成装置について説明する。表1,2,3,4は複数モードを有する画像形成装置(カラープリンタ100)のそれぞれのモード時に関する説明である。ここで、表1は複数モードを有する画像形成装置のカラー28ppm時、つまり印刷速度28ppmで動作したときに採取された音から抽出された主要音源(7つ)について作成した3水準の音を、L9直行表に基づいて割り付けて9つの供試音を作成した結果を示す。このように直行表に割り付けるとこで、各因子(音源の水準変化)間に相関がないため、他の因子の変化を無視して分析が可能となる。
【0127】
【表1】

【0128】
上記表1(以下の表も同様)において、「−1」は音をほぼ聞こえなくなるまで減衰して作成した音であり、「0」は原音そのままのレベルの音であり、「1」は原音と比較してレベルの違いがはっきりとわかるまで強調した音である。例えば、表1における供試音「カラー28ppm(9)」は、すべての音源について「0」がついているので、すべてが原音のままであることを示す。
【0129】
なお、表1〜表8においては、シェッフェの一対比較法(浦の変法)により得られた各供試音の主観評価値(評点)を併記している。なお、表1〜表8の主観評価値の合計(9音の合計)はそれぞれの表の中で0になる様に設定されている。
【0130】
次に、表2はカラー14ppm時、つまり印刷速度14ppmで動作したときに採取された音から抽出された主要音源(6つ)について作成した3水準の音を、L9直行表に基づいて割り付けた結果を示す。ただし、帯電音、ドラム駆動ステッピングモータ音、ポリゴンミラーモータ音は、同じトーナリティ成分の音であるため、各々の供試音について同水準のレベルとした。給紙ステッピングモータ音もトーナリティ成分であるが、これについては間欠的に発生する音であるため、上記のモータ音とは個別に水準を振ることとした。
【0131】
【表2】

【0132】
また、表3はモノクロ38ppm時、つまり印刷速度38ppmで動作したときに採取された音から抽出された主要音源(5つ)について作成した3水準の音を、L9直行表に基づいて割り付けた結果を示す。ただし、帯電音およびドラム駆動ステッピングモータ音は同じトーナリティ成分の音であるため、各々の供試音について同水準のレベルとした。
【0133】
【表3】

【0134】
また、本実験においては、上記3つのモードを混合したときに前面で採取された音から得られる、心理音響パラメータであるラウドネス値、シャープネス値、トーナリティ値およびインパルシブネス値から3つの水準の音(強調、原音、減衰)を作成し、これらの音をL9直行表に基づいて割り付けて供試音を作成した。その結果を表4に示す。
【0135】
【表4】

【0136】
なお、ラウドネス値の割り付けについては、モノクロ38ppmについては強調したものを、カラー28ppmについては中間のものを、カラー14ppmについては減衰したものをそれぞれ割り付けることとした。すなわち、印刷速度に応じてラウドネスの各水準値を割り付けた。また、表中のかっこ内の数値は、各々のパラメータ値を示している。本実験では印刷速度(ppm)がどのような影響を与えるか、つまり印刷速度の効果についても確認を行うため、印刷速度とラウドネス値が完全に比例して変化するようではその効果を分析できない。したがって、表4に示すように、ラウドネス値は同じ水準であっても1(sone)程度の差をつけ、聞こえの大きさの違いがでるようにした。
【0137】
同様に、他の速度の画像形成装置においても同様の作業を行なった。
表5はモノクロ20ppmで動作したときに採取された音から抽出された主要音源(3つ)について作成した3水準の音を、L9直行表に基づいて割り付けた結果を示す。
【0138】
【表5】

【0139】
表6はモノクロ27ppmで動作したときに採取された音から抽出された主要音源(4つ)について作成した3水準の音を、L9直行表に基づいて割り付けた結果を示す。
【0140】
【表6】

【0141】
表7はモノクロ65ppmで動作したときに採取された音から抽出された主要音源(6つ)について作成した3水準の音を、L9直行表に基づいて割り付けた結果を示す。
【0142】
【表7】

【0143】
また、本実験においては、上記モノクロ機の3つの速度を混合したときに前面で採取された音から得られる、心理音響パラメータであるラウドネス値、シャープネス値、トーナリティ値およびインパルシブネス値から3つの水準の音(強調、原音、減衰)を作成し、これらの音をL9直行表に基づいて割り付けて供試音を作成した。その結果を表8に示す。
【0144】
【表8】

【0145】
さらには、複数モード(カラー14ppm,カラー28ppm,モノクロ38ppm)を持つ画像形成装置に関係する6音と、モノクロの単独モードを持つ画像形成装置の6音とを比較した。その12音を表9に示す。
【0146】
【表9】

【0147】
以上が採取した動作音から供試音を作成し、実験を組む過程の詳細である。
【0148】
(4)供試音の心理音響パラメータの測定
次に、上述したように作成した供試音について、上記ヘッドアコースティックス社製の音質解析ソフトウェア「ArtemiS」を用い心理音響パラメータを求めた。この音質解析ソフトウェアでは、心理音響パラメータを求める際に、様々な設定を選択することができるのであるが、今回の実験ではデフォルトの設定を採用した。
【0149】
例えば、ラウドネスについては「Caluculation method」として「FFT/ISO0532」,「Filter/ISO0532」及び「FFT/HEAD」が選択できるが、デフォルトの「FFT/ISO0532」を採用し、「Spectrum Size」はデフォルトの「4096」で行った。シャープネスについては、「Caluculation method」はデフォルトの「FFT/ISO532」を採用し、「Sharpness method」は、「Aures」,「von Bismarck」のうち、デフォルトの「Aures」を採用した。「Spectrum Size」はデフォルトの「4096」で行なった。他の心理音響パラメータはラウドネスと相関があり、ラウドネスの設定によって自動的に変化する。
【0150】
以上のように設定した音質解析ソフトウェアを用い、上記(3)の過程で作成した供試音の心理音響パラメータ値を求めた。その結果を表10に示す。なお、表10の結果は、PPM値は小数点以下第一位で、それ以外は小数点以下第二位で四捨五入した結果である。
【0151】
【表10】

【0152】
(5)機種またはモードごとの供試音による一対比較法実験(シェッフェの一対比較法 浦の変法)
次に、上記のように作成した供試音を評価してもらう被験者を集め、被験者に各機種またはモード(表1〜9)ごとに作成した供試音(1)〜(9)(表9のみ供試音(1)〜(12))を一対比較してどちらが不快であるかを判定させた。
【0153】
かかる比較実験の際、9つの供試音から2つの供試音のすべての組み合わせを抽出し、N人の被験者が組み合わせのすべてを比較する。すなわち、1つのモードで9つの供試音があるわけであるから、72通りの組み合わせがあり、これらについて被験者に比較をさせる。したがって、供試音(1)と供試音(2)という組み合わせについての評価と、供試音(2)と供試音(1)という組み合わせについての評価は別であり、このように聞く順序が異なる組み合わせについても実験対象となる。
【0154】
そして、この比較では、例えば供試音(1)と供試音(2)とを比較し、その被験者が供試音(1)を不快と評価した場合には「1点」、供試音(2)が不快であった場合には「−1点」とし、結果を集計して統計処理を行った結果、9つの供試音に対して−1〜1の範囲で相対的な主観評価値を得た。なお、かかる主観評価値は表1〜表4に併記している。上記のような評価を行っているので、この主観評価値は大きい方が不快であることを意味する。
【0155】
表9の組合わせについては、12音の総当りの一対比較を行なうと実験規模が大きくなるので、この実験では複数モードを持つ画像形成装置の音同士、モノクロ単独モードの画像形成装置の音同士については、他の実験で行なっているので行なわなかった(下記の表の群Iと群III,群IIと群IVの比較は実施せず)。
【0156】
つまり、(1)群Iと群II,(2)群Iと群IV,(3)群IIと群III,(4)群IIIと群IVの比較だけを実施した。比較順序を考慮し、かつ一人の被験者が一回ずつ72通りの比較を行なった。総当りの一対比較ではないので12音の相対的な評点の算出はできないが、2音の不快さの差データは得られる。
【0157】
(6)不快音源の特定
次に、不快音源の特定を、「カラー28ppm」,「カラー14ppm」及び「モノクロ38ppm」,「モノクロ20ppm」,「モノクロ27ppm」,「モノクロ65ppm」の6 つの稼働音について実施した実験結果ごとに行った。ここで、図10〜図24は、表1〜表3に示される各音源の水準(強調、原音、減衰)と、主観評価値との関係をグラフに示したものである。
【0158】
また、図25〜28は表5について、図29〜32は表6について、図33〜図38は表7について示されている各音源の水準(強調、原音、減衰)と、主観評価値との関係をグラフに示したものである。
【0159】
これらのグラフにおいては、縦軸は主観評価値αであり、上にいくほど不快であることを意味する。グラフの横軸は音源の水準、つまり音圧レベル水準であり、「−1」は音源を減衰、「0」は原音のまま、「+1」は音源を強調したものである。
【0160】
また、各図中の「R」は寄与率であり、「R」は相関関数である。ここで、寄与率とは、不快さに対してその音源が何パーセント寄与しているかを示すものである。図10に示す結果の場合、定着オイル塗布衝撃音が不快さに51%寄与していることを示す。すなわち、音源のレベル変化と、主観評価値(不快さ)の変化の相関が高ければ、寄与率は大きくなるのである。なお、1つのモードにおける各音源の寄与率の合計は100%になるが、四捨五入等の関係で正確に100%になっていないものもある。
【0161】
まず、複数モードを有する画像形成装置(カラープリンタ100)の不快音源を調べる。
図10〜図16に示される「カラー28ppm」の各音源の寄与率を参照すると、カラー現像駆動音系、給紙ステッピングモータ音、帯電音、ポリゴンミラーモータ音はほとんど不快さに寄与していないことがわかる。しかし、後の分析により、給紙ステッピングモータ音、帯電音、ポリゴンミラーモータ音の3音源はトーナリティ(純音)成分と関係が強く、実際には不快だが、純音の周波数が近い場合は同時に対策しないとあまり不快さが改善されないことがわかった。
【0162】
したがって、他のモードでは、これらの音源については各供試音で同一水準とすることにした(上記(3)の過程および表2、表3参照)。このため、音源のうち、カラー現像駆動音のみが不快さにほとんど寄与していないので騒音対策の必要がないと考えられる。ただし、音響パワーレベルによる評価では改善が必要な場合もある。
【0163】
一方、「カラー28ppm」において最も不快さに寄与しているのは、定着オイル塗布衝撃音であり、その次に寄与しているのは用紙摺動音である。
【0164】
図17〜図20に示される「カラー14ppm」の不快音源分析結果によると、定着オイル塗布衝撃音43%、用紙摺動音35%、給紙ステッピングモータ音17%、帯電音、ポリゴンミラーモータ音およびドラム駆動モータ音の3 音源の合計が3%であった。
【0165】
図21〜図24に示される「モノクロ38ppm」の不快音源分析結果によると、定着オイル塗布衝撃音43%、用紙摺動音35%、帯電音とドラム駆動モータ音の合計が10%、現像駆動音系は3%であった。
【0166】
以上のような分析結果からは、複数モードを有する画像形成装置においては、現像駆動系の音以外の音源は不快さに寄与しており、これらの音源について騒音対策を施せば不快さを軽減できることがわかる。
【0167】
次に、卓上型(デスクトップ)画像形成装置(モノクロプリンタ200)の不快音源を調べる。
本装置については目立つ音源が少ないため、水準を振る因子の一つをラウドネスで代用して行なった。図25〜図28に示される「モノクロ20ppm」の各音源の寄与率を参照すると、ラウドネスの影響が大きく、各音源の不快さについては正確には分からなかった。全体的な聞こえの大きさを小さくすることが不快さの低減につながる事が分かった。
【0168】
次に、中速の画像形成装置(胴内排紙型複写機300)の不快音源を調べる。
図29〜図32に示される「モノクロ27ppm」の各音源の寄与率を参照すると、給紙音9%、紙摺動音61%、金属衝撃音13%、モータ駆動系音1%であった。中速の画像形成装置においては、紙摺動音、金属衝撃音は不快さに寄与しており、これらの音源について騒音対策を施せば不快さを軽減させることができることがわかる。
【0169】
次に、大型(コンソール型)画像形成装置(ADF付複写機400)の不快音源を調べる。
図33〜図38に示される「モノクロ65ppm」の各音源の寄与率を参照すると、金属衝撃音29%、紙摺動音42%、紙衝撃音0%、バンクモータ音3%、現像モータ音10%、メインモータ音1%であった。大型(コンソール型)画像形成装置においては、金属衝撃音、紙摺動音は不快さに寄与しており、これらの音源について騒音対策を施せば不快さを軽減させることができることがわかる。
【0170】
(7)差モデルの分析データ作成
次に、上記(5)の過程における一対比較法実験により取得した実験結果を用い、2音の主観評価値(評点)の差を算出した。差のデータの作成手法は以下のとおりである。
【0171】
一対比較法実験における被験者が36人である場合、供試音(1)と供試音(2)を比較し、供試音(1)が不快であった場合に「1点」、供試音(2)が不快であった場合を「−1点」といったように計算するとする。この場合、供試音(1)を不快とした人が30人、供試音(2)を不快とした人が6人であったとすると、評点の合計は、30−6=24となる。この値を被験者の数「36」で割った値が主観評価値(評点)の差「0.667」である。このようにして各組合せに対して主観評価値(評点)の差を算出する。また、一方で供試音(1)と供試音(2)の音響物理量の差の値を計算する。この様にして各組合せごとに主観評価値(評点)の差と、音響物理量の差の値を計算する。
【0172】
(8)主成分分析
さらに、音響物理量の差について、主成分分析を行なう。
主成分分析は、市販されている種々の表計算ソフトウェアや統計解析ソフトウェアを利用して行うことができる。例えば、統計解析ソフト「JMP(SAS Institute Inc の登録商標)」または「SPSS(SPSS Inc の登録商標)」を使用することができる。本発明においてはJMPを使用した。
【0173】
まず、JMPにより、5つの音響物理量(音圧レベル,ラウドネス,シャープネス,トーナリティ,インパルシブネス)の差データについて、関係を散布図と相関係数行列により調べた。図39は相関図行列、表11は相関係数行列である。音圧レベルとラウドネスには強い正の相関があり、ラウドネスとインパルシブネス,トーナリティとインパルシブネスには弱い負の相関が見られる。その他の関係は無相関に近い。また、プロットには大きな外れ値は無いように見える。
【0174】
【表11】

【0175】
ここで主成分分析を行なった。表12にその結果を示す。
【表12】

【0176】
表12より、主成分の解釈を行なう。
第1主成分の固有値は約1.9であり、最も大きい。寄与率も約38%である。音圧レベルとラウドネスの固有ベクトルが大きく、音量を表わすと考えられる。
第2主成分の固有値は約1.3である。寄与率は約27%である。固有ベクトルの符号からトーナリティとインパルシブネスの対立概念と考えられる。トーナリティは純音の含有量でインパルシブネスは衝撃性である。
第3主成分の固有値は約1.0である。寄与率は約20%である。固有ベクトルの大きさからシャープネス(高周波音)の成分と考えられる。
第4主成分の固有値は約0.7である。寄与率は約13%である。固有値が1以下なので、残差の可能性が高いが、あえて分析を行なうと、固有ベクトルの大きさからトーナリティとインパルシブネスの成分と考えられる。
第5主成分は固有値が0.1未満であり、寄与率も1.5%しかないことから残差として扱う。
【0177】
(9)因子分析
主成分分析の解釈を行なう場合、対立概念にスマートなキャッチフレーズを付けるのは難しい。バリマックス回転という方法を用いて主成分の回転を行なう。回転により得られた新たな成分は因子と呼ばれ、個別能力−変量分類が引き出されて構造が単純化される。つまり、主成分の回転により対立概念を消すことが可能となり、因子の解釈が容易になる。この様な方法は因子分析(Factor Analysis)と呼ばれている。
【0178】
ここで、主成分分析を基に因子分析を行なう。とりあえず回転させたい主成分を4までと設定して因子分析を行なった。その結果、表13〜表17の結果が得られた。
表13は分散,寄与率,累積寄与率
表14は回転因子のパターンである。
表15は回転行列である。
表16は共通性である。
表17は標準得点係数である。
【0179】
表13の分散,寄与率,累積寄与率より、各因子の分散(=固有値)が全て1を越えいる。つまり、主成分の回転によって、4つの因子の分散が全て1を越えたということであり、全て有効な成分となった。また、主成分の表12の第4成分までの累積寄与率と、表13の第4因子までの累積寄与率を比較すると一致している。これは、回転によって情報量は変化しないことを意味している。
【0180】
【表13】

【0181】
表14は回転因子のパターンである。
第1因子,第2因子,第3因子,第4因子と、元の変量(音響物理量)との相関係数(因子負荷量)を示している。
【0182】
元の変量の音圧レベルとラウドネスは第1因子との相関が大きく、他の因子との相関が小さい。また、インパルシブネスは第2因子と相関が高く、他の因子との相関が小さい。シャープネスは第3因子との相関が大きく、他の因子との相関が小さい。トーナリティは第4因子との相関が大きく、他の因子との相関が小さい。
【0183】
バリマックス回転によって、各因子がゼロに近いいくつかの因子負荷量と、絶対値で1に近いいくつかの因子負荷量が、存在しやすいような方向へ成分が変換されていることがわかる。
【0184】
変量と因子の因子負荷量の絶対値が1に近ければ明解な関係が存在すると解釈できるし、0に近ければ無関係なものとして処理できる。そこで第1因子は音圧レベルとラウドネスという音量を表わす因子と考えられる。第2因子は音の衝撃性,第3因子は音の高周波成分の含有量、第4因子は、純音成分の含有量を表わすと考えられる。これで累積寄与率は98%を越えているので、MFP機(複合機)、プリンタ等はほとんどこれらの因子で表現できると言うことになる。
【0185】
【表14】

【0186】
次に、因子と主成分を比較する。表15の回転行列の値は、第1因子〜第4因子と、第1主成分〜第4主成分の相関関係を表わしたものであり、原点を中心に第1主成分,第2主成分,第3主成分,第4主成分からの回転量を示している。バリマックス回転によって、162.9度(cosθ=−0.95581より)回転していることが分かる。
【0187】
【表15】

【0188】
表16は共通性を表わし、第1因子〜第4因子で元の変量を説明できる割合である。5つの変量ともに96%以上の説明力がある。
【表16】

【0189】
表17は、標準得点係数であり、因子得点を求めるための係数で、分散が1になるように標準化されている。これらの値は,元の変数に掛けるべき値で,こうして求めた因子得点の分散が1に,平均が0になるという意味である。
因子得点=Σ(標準得点係数*(変数-平均)/変数の標準偏差
【0190】
【表17】

【0191】
JMPにより、これらの因子を元の変数から算出するための係数と切片を求めると以下の表18になる。
【表18】

【0192】
(10)『2音間の主観評価値の差』を『因子』で予測する差モデル式を導出
統計解析ソフトJMPでは、因子を計算してくれるので、これを基に不快さの予測を行なう。つまり『2音間の主観評価値の差』を目的変数に、第1因子,第2因子,第3因子,第4因子を説明変数に設定し、重回帰分析を行なう。
【0193】
以上のように算出した評点の差と音響物理量の差、因子分析結果(差モデルの分析データ)の一部を表19に示す。表19は「カラー28ppm(1)〜(9)」の供試音についての結果の一部である。
【0194】
【表19】

【0195】
一対比較を行った623のデータを用い、2音間の主観評価値の差を目的変数に、因子を説明変数群にして重回帰分析を行った。
データは、一対比較時に一方を全員が不快と判定したものは、人間の感覚をスケールオーバーしたとして、分析対象から外した。また、評点の差のモデルであるので、切片を0にして重回帰分析を行なった。分散分析表は以下の通りである。
【0196】
【表20】

【0197】
ここで、
寄与率=回帰による平方和/全平方和=181.8/235.4=0.772
よって、差モデル式において、不快さに対して、4つの因子の合計が77.2%寄与している事がわかった。変数として選択した4つの因子の偏回帰係数(重回帰分析時の回帰係数)を表21に示す。差データの分析なので切片は0に固定して分析した。
【0198】
【表21】

【0199】
また、偏回帰係数が95%の信頼性をもつ上限値と下限値を併記してある。この上限と下限の値は、回帰係数の推定値に、それぞれ対応する標準誤差の約2倍の値(2σ)を±したものである。差のモデルを式にすると以下の式(A)の様になる。
【0200】
[式(A)]
αi−αj=-0.462623×第1因子
+0.1649484×第2因子
-0.217222×第3因子
+0.0623665×第4因子
αn(n=1,2,・・・i,・・,j,・・,n):音の不快さに対する主観表価値(評点)
第1因子=-0.137615532×(音圧レベルi−音圧レベルj)
-0.250138895×(ラウドネスi−ラウドネスj)
+0.0482463×(シャープネスi−シャープネスj)
-0.198127191×(トーナリティi−トーナリティj)
-0.336676968×(インパルシブネスi−インパルシブネスj)
+0.006868023
第2因子=+0.055367659×(音圧レベルi−音圧レベルj)
-0.076387277×(ラウドネスi−ラウドネスj)
+0.093894443×(シャープネスi−シャープネスj)
+2.82214291×(トーナリティi−トーナリティj)
+5.016501215×(インパルシブネスi−インパルシブネスj)
-0.005558113
第3因子=+0.018654275×(音圧レベルi−音圧レベルj)
-0.022574832×(ラウドネスi−ラウドネスj)
-1.808975756×(シャープネスi−シャープネスj)
-1.201786255×(トーナリティi−トーナリティj)
-0.226269754×(インパルシブネスi−インパルシブネスj)
+0.017818196
第4因子=+0.026081471×(音圧レベルi−音圧レベルj)
-0.048289133×(ラウドネスi−ラウドネスj)
+0.140321797×(シャープネスi−シャープネスj)
+17.9461075×(トーナリティi−トーナリティj)
+0.756312336×(インパルシブネスi−インパルシブネスj)
-0.004379473
【0201】
以上より、2つの音の音響物理量を代入することにより、不快さの差を算出できる線形式が導出できた。
【0202】
評点の差の実測値と式(A)による予測値の散布図を図40に示す。
評点の差は、一対比較の結果、全員が一方を不快だと判定した場合最大でも、−1か1であるために−1〜1の範囲しか取れないが、予測値は−2から2程度の範囲を取り、少し膨張していることが分かる。
【0203】
(11)単独の音の不快さを予測する相対モデル式(音質評価式)の導出
差モデルでは 、2音を比較した場合しか使用できないので使い勝手が悪い。目指すのは、単独の音の評価である。よって、差のモデルから、相対モデルへの変更を考える。
【0204】
式(A)に、各音響物理量の値に対して、実験に使った供試音の平均値の時の音の不快さを、α=0と定義して式を変換する。
つまり、重心の座標の効果αを0、その時の,音圧レベル,ラウドネス,シャープネス,トーナリティ,インパルシブネスの平均値を代入する。平均値は表10の計算結果を使用する。
【0205】
αi−α0=−0.462623×第1因子
+0.1649484×第2因子
−0.217222×第3因子
+0.0623665×第4因子
αn(n=1,2,・・・i,・・,j,・・,n):音の不快さに対する主観表価値(評点)
【0206】
つまり、
αi=−0.462623×第1因子
+0.1649484×第2因子
−0.217222×第3因子
+0.0623665×第4因子
【0207】
これを使用しやすくするために、αiを予測音質評価値Sと定義すると、以下の式(c)の様になる。
[式(c)]
S=−0.462623×第1因子
+0.1649484×第2因子
−0.217222×第3因子
+0.0623665×第4因子
第1因子=-0.137615532×(音圧レベルi−音圧レベル平均値)
-0.250138895×(ラウドネスi−ラウドネス平均値)
+0.0482463×(シャープネスi−シャープネス平均値)
-0.198127191×(トーナリティi−トーナリティ平均値)
-0.336676968×(インパルシブネスi−インパルシブネス平均値)
+0.006868023
第2因子=+0.055367659×(音圧レベルi−音圧レベル平均値)
-0.076387277×(ラウドネスi−ラウドネス平均値)
+0.093894443×(シャープネスi−シャープネス平均値)
+2.82214291×(トーナリティi−トーナリティ平均値)
+5.016501215×(インパルシブネスi−インパルシブネス平均値)
-0.005558113
第3因子=+0.018654275×(音圧レベルi−音圧レベル平均値)
-0.022574832×(ラウドネスi−ラウドネス平均値)
-1.808975756×(シャープネスi−シャープネス平均値)
-1.201786255×(トーナリティi−トーナリティ平均値)
-0.226269754×(インパルシブネスi−インパルシブネス平均値)
+0.017818196
第4因子=+0.026081471×(音圧レベルi−音圧レベル平均値)
-0.048289133×(ラウドネスi−ラウドネスj)
+0.140321797×(シャープネスi−シャープネス平均値)
+17.9461075×(トーナリティi−トーナリティj)
+0.756312336×(インパルシブネスi−インパルシブネス平均値)
-0.004379473
【0208】
この様に式を変換することで、平均値の音と比較した場合の音の評点を算出することができる。これを相対モデル式と呼ぶ。
【0209】
なお、回帰係数は表21のように、95%の信頼区間をとる。
これを用いたのが次の式(a)である。
【0210】
[式(a)]
S= A×(第1因子)+B×(第2因子)+C×(第3因子)+D×(第4因子)
各パラメータの帰係数の範囲
-0.485785≦ A ≦ -0.439461
【0211】
0.141786≦ B ≦ 0.1881104
-0.240384≦ C ≦ -0.19406
0.0392045≦ D ≦ 0.0855286
第1因子=-0.137615532×(音圧レベル−音圧レベル平均値)
-0.250138895×(ラウドネス−ラウドネス平均値)
+0.0482463×(シャープネス−シャープネス平均値)
-0.198127191×(トーナリティ−トーナリティ平均値)
-0.336676968×(インパルシブネス−インパルシブネス平均値)
+0.006868023
第2因子=+0.055367659×(音圧レベル−音圧レベル平均値)
-0.076387277×(ラウドネス−ラウドネス平均値)
+0.093894443×(シャープネス−シャープネス平均値)
+2.82214291×(トーナリティ−トーナリティ平均値)
+5.016501215×(インパルシブネス−インパルシブネス平均値)
-0.005558113
第3因子=+0.018654275×(音圧レベル−音圧レベル平均値)
-0.022574832×(ラウドネス−ラウドネス平均値)
-1.808975756×(シャープネス−シャープネス平均値)
-1.201786255×(トーナリティ−トーナリティ平均値)
-0.226269754×(インパルシブネス−インパルシブネス平均値)
+0.017818196
第4因子=+0.026081471×(音圧レベル−音圧レベル平均値)
-0.048289133×(ラウドネス−ラウドネスj)
+0.140321797×(シャープネス−シャープネス平均値)
+17.9461075×(トーナリティ−トーナリティj)
+0.756312336×(インパルシブネス−インパルシブネス平均値)
-0.004379473
【0212】
(12)導出した音質評価式の検証
次に、上記のように導出した予測音質評価値Sの予測式(音質評価式)の予測精度を検証することとした。
【0213】
この検証としては、主観評価値(評点)の実測値と、上記音質評価式(c)を用いて導出した予測音質評価値Sとを比較することにより行った。主観評価値(評点)の実測値は、上記8つの実験(「カラー28ppm」,「カラー14ppm」,「モノクロ38ppm」,「モードMix」,「モノクロ20ppm」,「モノクロ27ppm」,「モノクロ65ppm」,「モノクロMix」)の結果から主観評価値(評点)の実測値を求めるとともに、これらに対応する予測音質評価値Sを音質評価式を用いて導出することとした。
【0214】
主観評価値(評点)の実測値は、上記8つの実験ごとにもとめたシェッフェの一対比較法の結果を用いた。
ただし、この実測値は、8つの実験ごとに、9音の供試音に対して総当りの一対比較実験を行なった結果であり、各実験内において主観評価値(評点)の実測値の和を0とする制約を設けて計算しているために、各実験内の9音の中で相対比較をした場合に成り立つ結果である。
【0215】
そこで、予測値の方では、式(c)を利用し、例えば、カラー28ppm(1)の音質評価値を予測する場合は、「カラー28ppm(1)の音響物理量」と、「母集団の中における音響物理量の平均値」を使用するのではなく、「カラー28ppm(1)の音響物理量」と、「カラー28ppm(1)〜(9)の音響物理量の平均値(実験における音響物理量の平均値)」との差の値を用いて、予測音質評価値Sの計算を行なう。
【0216】
なお、この様な調整を行なうのは一対比較法の実測結果と音質評価式による予測結果とを比較したいためであり、通常、音の不快さを予測する場合には、母集団の中における音響物理量の平均値を用いればよい。
【0217】
以上のような手順で8つの実験のそれぞれの供試音ごとに音質評価の実測値を求めるとともに、音の物理量(心理音響パラメータ)と、各実験ごとの音響物理量の平均値を上記音質評価式(c)に代入することで予測値を得る。このようにして、各モードの各供試音についての実測評価値と予測評価値とを求めることができ、その結果を表22に示す。
【0218】
【表22】

【0219】
図41〜48は、8つの実験(「モノクロ20ppm」,「モノクロ27ppm」,「モノクロ65ppm」,「モノクロMix」,「カラー28ppm」,「カラー14ppm」,「モノクロ38ppm」,「モードMix」)ごとに、上記式(c)を用いて予測した値(横軸)と、実測値(縦軸)とを比較プロットしたグラフである。
【0220】
差モデルの散布図では、1と−1近傍の精度が悪くなっていたが、相対モデルにして音単独の音質を予測する場合には改善された。これは差モデルのプロットのポイント数N=623(623通りの一対比較結果)が、相対モデルではポイント数N=72(72音)に平均化されてバラツキが軽減したためと考えられる。これらの図に示すように、各実験で寄与率は全て90%を越えており、不快さの予測精度が高い。
【0221】
図49は、これら全結果をまとめたものである。
表9に示す、複数モード(カラー14ppm,カラー28ppm,モノクロ38ppm)を持つ画像形成装置に関係する6音と、モノクロの単独モードを持つ画像形成装置に関係する6音の比較の実験は、総当り組合わせの比較ではないため、12音の相対的な不快指数の算出ができない。このため、グラフにはプロットすることができなかった。
【0222】
図49に示すように、このグラフの総合的な傾きは0.9であり、総合的な寄与率も92%である。したがって、8つの実験のいずれであっても実験上記式(a)によって導出される評点の予測値の精度が高いと考えられる。
【0223】
さて、上述したように導出した式(a)によって求められる予測値(評価)の精度が高いと考えられるが、このように得られた評価である不快指数Sがどのくらいの値になると人が不快と感じなくなるかが重要である。
【0224】
そこで、これを確認するため次のような実験を行った。カラ−14ppm,カラー28ppm,モノクロ38ppm,モノクロ65ppmの供試音を対象に、被験者に対して速度実験別に供試音(1)〜(9)をランダムにすべて聞いてもらった後、再び1音づつ聞いてもらい、各々の供試音について不快さを3段階評価するという実験を行なった。
【0225】
なお、モノクロ65ppmの供試音は供試音(1)と供試音(5)の間が他の音の間隔に比較して大きかったため、供試音(1)と(5)の間に予め作成しておいた未評価供試音(10),(11)を用意した。
【0226】
その結果、表23〜表26に示す結果を得た。供試音(10),(11)の物理量は表27に示す。
【0227】
【表23】

【0228】
【表24】

【0229】
【表25】

【0230】
【表26】

【0231】
【表27】

【0232】
なお、表中の評価“A”は許容できる音、評価“C”は許容できない音、評価“B”はその中間ぐらいの音という評価である。そして、“A”と評価された音の音質評価値(式(A)によって算出された値)のうち、最も大きな値を許容値とすると、各実験のppmおよび画像形成速度(mm/s)ごとの許容値は表28に示すようになる。
【0233】
【表28】

【0234】
図50は表28に示される結果に基づき、ppm値と許容値との関係を近似させたグラフである。近似式は、
S ≦ 0.4646Ln(ppm) - 1.8426・・・・・・(b)
14≦ppm≦65
である。
【0235】
また、図51は表28に示される結果に基づき、画像形成速度v(mm/s)と許容値との関係を近似させたグラフである。近似式は、
S ≦ 0.4101Ln(v) - 2.2997・・・・・・(d)
62.5≦v≦362
である。
【0236】
図50,51に示すように、各速度(ppmまたは画像形成速度mm/s)で動作するときに発する音から算出される音質評価値が許容値以下(グラフの線より下の領域)であれば、ほとんど不快さを感じないものとなる。
【0237】
以上のように上記式(c)または式(a)を利用することで、実際に主観的な評価実験を行うことなく、音の物理量から取得できる心理音響パラメータ値等を取得するだけで不快さの評価である音質評価値Sを求めることができる。そして、上述した条件(b),(d)により、画像形成速度(mm/sやppm)が異なる複数の動作モードを有する機器や、画像形成速度が異なる画像形成装置であっても、各実験ごとごとに求めた音質評価値Sがどのような値であれば不快さを感じさせないかを判断することができる。
【0238】
以上が画像形成装置が発する音の質を評価する方法、および当該音質評価に用いる音質評価式の導出方法である。
【0239】
[II.発明の適用]
本発明は、上記のようにして導出した音質評価式を用い、画像形成装置の音質評価を行い、かかる評価結果(音質評価値S)が所定の条件を満たすような画像形成装置を提供できるようにするものである。したがって、本発明は、図52に示すように、新製品の開発・製造の際に適用することができる。
【0240】
具体的には、図52のフローチャートに示すように、上記音質評価式による音質評価(音質評価値S)が所定の条件を満たすよう、画像形成装置の装置各部にどのような構成を採用するかを設計する(S1:設計過程)。そして、画像形成装置の発する音から得られる音質評価値Sが所定の条件を満たすようになされた設計内容にしたがって画像形成装置を製造する(S2:製造過程)。このような製造工程を経ることで、不快な騒音をほとんど発しない画像形成装置を製造することができ、かかる画像形成装置をユーザに提供することができる。
【0241】
[III.画像形成装置の構成]
次に、上記音質評価に用いた4例の画像形成装置について説明する。
図53は、複数モードを有する画像形成装置の一例であるタンデム型カラープリンタの概略を示す断面構成図である。この図に示すカラープリンタ100は、書込み光学ユニット1と、感光体ユニット3と、現像ユニット4と、転写ユニット5と、定着ユニット46と、給紙部11とを備えている。
【0242】
画像形成時には、当該画像形成装置の最下部に配置された給紙部11に収容された画像形成対象シート(印刷用紙やOHPシート等も含むが、以下用紙とする)が図の右下側から左斜め上側へ上がる所定の搬送経路に沿って搬送させられる。このように搬送される用紙は、給紙部11から繰り出されて、給紙部11の上方側に図の右下から左上側への斜め方向の搬送経路に沿って搬送される。この間、用紙は同様に搬送経路に沿って並んで配置される4つの感光体ユニット3および現像ユニット4と転写ユニット5との間を通過させられ、所定の画像が転写される。かかる画像転写がなされた用紙は、感光体ユニット3、現像ユニット4および転写ユニット5のさらに左斜め上側に配置される定着ユニット46へ搬送され、定着ユニット46によって転写画像が定着させられる。
【0243】
図54に示すように、光学ユニット1は、図54の右下から左上方向といった斜め方向である用紙搬送路に沿って延在するユニットであって、その方向に沿って配置されるハウジング12を有している。ハウジング12の上部には、4つの色毎のレーザダイオード(LD)17(Bk:ブラック),18(C:シアン),19(M:マゼンダ),20(Y:イエロー)が取り付けられている。
【0244】
また、ハウジング12には、主操作ライン操作のためのポリゴンミラーモータ2、ドット位置補正のための2層fθレンズ21,22、面倒れ補正を行うための長尺WTLレンズ23,24,25,26、図示せぬレーザビーム径補正のためのシリンダレンズ等が取り付けられている。
【0245】
ポリゴンミラーモータ2には、上下2枚の6面ミラー27が一体となって形成されており、このポリゴンミラー27にLD17,18,19,20が発したレーザ光が照射される。
【0246】
各色に対応するLD17,18,19,20は、用紙の搬送タイミングにあわせて発光し、その光(図中太線で示す)がシリンダレンズ、ポリゴンミラー27、2層fθレンズ21,22、長尺WTLレンズ23,24,25,26を経由して各色の感光体ドラム28に照射される。
【0247】
なお、ブラックに対応するLDユニット17については、2ビーム方式のものを採用することが好ましい。すなわち、2ビーム方式のLDを採用することで、モノクロ画像形成時に2ビームを同時に書き込むことができ、ポリゴンミラーモータ2の回転数を抑えながら、かつ迅速な書き込みを行うことができるからである。このようにポリゴンミラーモータ2の回転数を低減することで、騒音が抑制されるといった効果や、モータの寿命が延びるといった効果も得られる。例えば、カラーモードで印刷する場合にポリゴンミラー27の回転数が29528rpm(revolutions per minute)で印刷速度28ppm(pages per minute)であるが、モノクロ印刷時にはポリゴンミラー27の回転数が21850rpmと回転速度が小さいにもかかわらず、印刷速度38ppmとなるといった具合である。
【0248】
図53に戻り、この画像形成装置における感光体ユニット3、現像ユニット4および転写ユニット5の構成について説明する。同図に示すように、この画像形成装置は、4連ドラムのタンデム作像方式を採用した装置であり、この方式を採用することでフルカラー印刷モードおよびモノクロ印刷モードの印刷速度を向上させている。また、上述したように感光体ユニット3、現像ユニット4および転写ユニット5を斜めに配置することで設置スペースを小さくし、これにより装置全体を小型にしている。
【0249】
感光体ユニット3、現像ユニット4は、それぞれ各色で独立したユニットとなっている。つまり、マゼンダ(M)用の感光体ユニット3および現像ユニット4、シアン(C)用の感光体ユニット3および現像ユニット4、イエロー(Y)用の感光体ユニット3および現像ユニット4、ブラック(Bk)用の感光体ユニット3および現像ユニット4があり、これらが図53の右下側から左上側に上記順序で並んで配置されている。なお、Bk用を除いたM用、C用、Y用の感光体ユニット3は全く同一の構成であるため、新しいユニットであればどの色用(M、C、Y)に用いるようにしてもよい。
【0250】
転写ユニット5は、上述した順序で斜め方向に配置される感光体ユニット3および現像ユニット4の下方側に、当該斜め方向に沿って延在するユニットであり、その斜め方向に沿うよう配置されている。転写ユニット5は、複数のローラと、当該ローラに巻き掛けられたエンドレスの転写ベルト29とを有している。図示せぬモータによってローラが回転させられることにより転写ベルト29が図中半時計回りに回転させられ、給紙部110から送り出された用紙はかかる転写ベルト29に載って図の右下側から左上側に搬送させられる。また、転写ユニット5の搬送方向の下流側(図の左上側)には、Pセンサ6が配置されており、かかるPセンサ6が転写ベルト29上に形成されたPセンサパターンの濃度を検知し、かかる検知結果が制御に利用される。
【0251】
ここで図55に、ある色に対応する感光体ユニット3および現像ユニット4の断面図を示す。同図に示すように、感光体ユニット3は、感光体ドラム28(例えばφ30)を有している。感光体ドラム28は中空円柱状であり、後述する駆動機構によって図中時計回りに回転させられるようになっている。
【0252】
感光体ドラム28の上方側には帯電ローラ36(例えば、φ11)が配置されている。帯電ローラ36は、その表面が感光体ドラム28の表面から0.05mm程度離間した位置に配置されている。そして、帯電ローラ36は、感光体ドラム28と逆方向、つまり図中半時計周りに回転させられ、感光体ドラム28の面上に均一な電荷を印加している。
【0253】
また、帯電ローラ36の上方側にはクリーニングブラシ37が配置されている。感光体ドラム28の左斜め上側にはクリーニングブラシ39およびカウンターブレード38が配置され、これらによって感光体ドラム28のクリーニングがなされる。
【0254】
また、クリーニングブラシ39の左側には、廃トナー回収コイル40が配置されており、かかる廃トナー回収コイル40によって回収された廃トナーは、図53に示す廃トナーボルト16に搬送されるようになっている。
【0255】
現像ユニット4は、乾式2成分磁気ブラシ現像方式を採用したものであり、現像ローラ30と、現像ドクタ31と、搬送スクリュー左32と、搬送スクリュー右33と、トナー濃度センサ34と、剤カートリッジ35とを備える。
【0256】
次に、図56を参照しながら感光体ユニット3の駆動機構について説明する。感光体ユニット3は、各色毎に設けられており、4つのユニットがあるが、M用、C用、Y用(カラー用)の3つの感光体ユニット3と、Bk用の感光体ユニット3とは別々の駆動機構によって駆動されるようになっている。すなわち、カラー用の感光体ユニット3の駆動は、カラードラム駆動モータ41を駆動源とし、この駆動力を伝達するギヤ43,44、ジョイント45とによって行われる。
【0257】
一方、ブラック用の感光体ユニット3の駆動は、別の黒ドラム駆動モータ42を駆動源とし、この駆動力を伝達する別のギヤ44、ジョイント45によって行われる。したがって、カラーモード印刷時には、カラードラム駆動モータ41のみが動作し、黒ドラム駆動モータ42は停止している。一方、モノクロモード印刷時には、黒ドラム駆動モータ42のみが動作し、カラードラム駆動モータ41は停止している。なお、カラードラム駆動モータ41および黒ドラム駆動モータ42はステッピングモータである。
【0258】
図57および図58に示すように、この定着ユニット46は、ベルト定着方式を採用したものであり、ベルトは定着ローラと比べて熱容量が小さいことから、この方式を採用することで、定着ローラを用いる方式よりもウォームアップ時間の短縮、待機時のローラ設定温度を低下できる等のメリットがある。
【0259】
この定着ユニット46は、画像が転写された用紙を加熱・加圧し、用紙上にトナー像を定着させるものであり、定着ベルト13と、オイル塗布ユニット47とを有している。オイル塗布ユニット47内には、ジェルがオイルから染み出し、これが塗布フェルト48から塗布ローラ49に供給される。そして、塗布ローラ49が回転しながら定着ベルト13に微量のシリコーンオイルを塗布している。このように定着ベルト13にオイルを塗布することで、定着ベルト13と用紙とが剥離しやすくなるようにしている。なお、かかるオイル塗布ユニット47による塗布動作は、用紙が1枚搬送される毎になされるようになっており、図示せぬソレノイドやスプリングを有する機構によって、用紙1枚が搬送される都度オイル塗布ユニット47が駆動され、定着ベルト13と接触させられる。一方、用紙1枚が通過すると、上記機構によってオイル塗布ユニット47が定着ベルト13から離間させられるようになっている。
【0260】
また、図57に示すように、定着ベルト13の用紙搬送方向上流側には、クリーニングローラ50が設けられており、かかるクリーニングローラ50が定着ベルト13上の汚れを吸着し、これによりベルトクリーニングがなされる。
【0261】
以上が定着ユニット46の構成であり、かかる定着ユニット46を通過した用紙は、搬送ローラによって図53に示す本体トレー15に搬送される。
【0262】
次に、図59を参照しながら給紙部11の構成について説明する。かかる給紙部11は、第1トレー9と、第2トレー10と、手差し給紙トレー8といった3つのトレーを有している。これらの各トレーは、トレーに収容された用紙を送り出す方式として、FRR給紙方式を採用している。FRR給紙方式による送り出し機構は、給紙トレー内に積層された用紙束中から送り出された用紙を一枚づつに分離する為に、給紙方向に回転駆動される給紙コロに対して逆転コロを当接させた構成となっている。
【0263】
この構成の下、逆転コロは、給紙コロとは逆方向へ向かう弱いトルクがトルクリミッタを介して付与されているため、給紙コロと接触している状態、或は一枚の用紙が両コロ間に進入した状態では給紙コロに連れ回りする一方で、給紙コロと離間した状態、或は2枚以上の用紙が両コロ間に進入した状態では逆回転する。このため、重送用紙の進入時には逆転コロに接する側の用紙は給紙方向下流側へ戻されて、重送が防止されることとなる。
【0264】
第1トレー9に収容された用紙は、第1給紙ユニット51によって1枚分離されて第1トレー9から送り出される。そして、送り出された用紙は、中継ローラ53によって搬送され、搬送ローラ55に到達する。ここで、用紙は搬送ローラ55によってターンさせられながら、左斜め上方側のレジストローラ7に向けて搬送される。
【0265】
搬送された用紙は、停止しているレジストローラ7に突き当たり、これにより用紙の斜行が補正される。そして、感光体ユニット3等による画像形成工程とのタイミング調整を行い、所定のタイミングで図示せぬレジストクラッチがつながれてレジストローラ7が駆動され、用紙が転写ユニットへ向けて搬送される。以降用紙は、上述したように転写ベルト29によって搬送され、所定の画像転写等の処理がなされる。
【0266】
なお、第2トレー10に収容された用紙の送り出しは、第2給紙ユニット52、中継ローラ54によって搬送ローラ55に向けて用紙が搬送され、その後は第1トレー9に収容された用紙と同様である。また、手差しトレー8にセットされた用紙は、給紙ユニット56によってレジストローラ7に向けて搬送され、以降は上記第1トレー9からの用紙搬送と同様である。
【0267】
次に、上述したように第1トレー9および第2トレー10から用紙を送り出す第1給紙ユニット51および第2給紙ユニットを駆動する構成について説明する。図60に示すように、これらの両ユニットは、1つのステッピングモータ56によって駆動されており、各々のユニットへの駆動力伝達は第1給紙クラッチ57および第2給紙クラッチ58を介して行われる。すなわち、第1トレー9から用紙を送り出すときは第1給紙クラッチ57のみがつながれた状態となり、第2トレー10から用紙を送り出すときは第2給紙クラッチ58のみがつながれた状態となる。 この画像形成装置は、上述したようにカラー用感光体ユニット3等を有しており、モノクロ印刷のみならず、カラー印刷もできるようになっている。より具体的には、表29に示すように、「モノクロモード」、「カラーモード(1)」、「カラーモード(2)」、「OHP/厚紙モード」といった4つの印刷モードを有しており、ユーザが操作部等を操作してモードを選択した場合、その選択にしたがって図示せぬ当該画像形成装置の制御部(動作制御手段)が装置各部を制御し、その動作モードで各部を動作させる。この画像形成装置では、制御部がユーザに選択されたモードによって画像形成速度を3種類(182.5mm/s=38ppm(pages per minute)、125.0mm/s=28ppm、62.5mm/s=14ppm)に切り替えるようになっている。すなわち、選択された動作モードによってステッピングモータ56、黒ドラム駆動モータ42、カラードラム駆動モータ41といったモータの回転速度を変化させるよう制御しているのである。
【0268】
【表29】

【0269】
ここで、高解像度の「カラーモード(2)」や「OHP/厚紙モード」では、印刷速度(画像形成速度)が14ppmであるのに対し、「モノクロモード」では印刷速度が38ppmであり、3倍近い速度差がある。このような大きな速度差を1つのモータで実現するため、この画像形成装置では用紙搬送機構系等の駆動源としてステッピングモータを採用している。
【0270】
図61は、卓上型(デスクトップ)画像形成装置の一例であるモノクロプリンタ200の概略を示す断面構成図である。本例の画像形成装置は、電子写真方式を採用したディジタルプリンタであり、単一モード(モノクロプリントのみ)の動作を行なうものである。
【0271】
図61において、符号201は静電潜像およびトナー像が形成される感光体ドラム、符号202は感光体ドラム201上に形成されたトナー像を記録紙に転写するための転写ローラ、符号203は感光体ドラム201上にトナー像を形成するためのプロセスカートリッジ、符号204は記録紙を1枚ずつ繰り出す本体給紙トレイ、符号205は本体給紙トレイ204と同様に記録紙を1枚ずつ繰り出すバンク給紙トレイ、符号206は記録紙を1枚差し込むことで給紙を行なうための手差しトレイ、符号207は記録紙に転写されたトナー像を熱・圧力の作用で定着する定着ユニット、符号208は感光体ドラム201上に画像を書き込むための書き込みユニット、符号209は定着後の記録紙を排紙する排紙トレイ、符号210は記録紙を繰り出す給紙ローラ、符号211は感光体ドラム201上のトナー像と位置合わせを行なうように起動/停止するレジストローラ、符号212は記録紙を排紙トレイ209に搬送する排紙ローラ、符号213は搬送ローラを示している。
【0272】
図61に示す画像形成装置では、本体給紙トレイ204、バンク給紙トレイ205、手差しトレイ206、給紙ローラ210、レジストローラ211などの給紙搬送系が配設されている、記録紙は、給紙搬送系からプロセスカートリッジ203の作像側を通って画像が転写された後、定着ユニット207、排紙ローラ212を経て排紙トレイ209 に排紙される。画像形成速度は90mm/sである。
【0273】
また、プロセスカートリッジ203の上方には、LDユニット、ポリゴンミラー、fθレンズ(いずれも不図示)などから構成される書き込みユニット208が配設されている。この他に図示しないが、感光体ドラム201や各ローラの回転駆動を行なうための駆動モータ、ソレノイド、クラッチ(メカクラッチ、電磁クラッチ)を含む駆動伝達系が設けられている。このように構成された画像形成装置では、画像形成時に、上記駆動モータと駆動伝達系の駆動音、ソレノイド・クラッチの動作音、記録紙の給紙搬送音、帯電音などが放射される。
【0274】
図62は、図61におけるプロセスカートリッジ203の構成例を示す断面図である。このプロセスカートリッジ203は、帯電手段としての帯電ローラ221と、現像手段としての現像ローラ222と、クリーニング手段としてのクリーニングブレード223と、トナー224を攪拌し現像ローラ222に送り出すアジテータ225と、攪拌軸226と、現像ブレード227と、を備えている。帯電ローラ221は、芯金部221a、帯電部221bと、から構成される。
【0275】
像担持体としての感光体ドラム201の周りには、帯電ローラ221、現像ローラ222、クリーニングブレード223が所定の条件で配置されている。そして、プロセスカートリッジ203内のトナー224は、アジテータ225 、攪拌軸226によって攪拌され、現像ローラ222まで運ばれる。現像ローラ222内の磁力によってローラ表面に付着したトナー224は、現像ブレード227を通過するとき、摩擦帯電によってマイナスに帯電する。マイナスに帯電したトナーは、バイアス電圧によって感光体ドラム201に移動し、静電潜像に付着する。
【0276】
レジストローラ211により送られた記録紙が感光体ドラム201と転写ローラ202の間を通過するとき、転写ローラ202からのプラス電荷により、感光体ドラム201上のトナーが記録紙に転写する。感光体ドラム201上に残ったトナーは、クリーニングブレード223によって掻き取られ、クリーニングブレード223の上方にあるタンク内に廃トナーとして回収される。転写ローラ202以外はプロセスカートリッジ203として一体化されており、ユーザが交換できるようになっている。
【0277】
図63は、図62における帯電ローラ221の構成を示す説明図である。図62及び図63に示すように、帯電ローラ221は、感光体ドラム201に常に所定圧で接触しながら、摩擦力による従動回転を行なって感光体ドラム201の表面を一様に一次帯電する帯電部材である。この帯電ローラ221は、図62に示すように、回転軸となる芯金部221aと、芯金部221aの周りに同心状に形成される帯電部221bと、から構成されている。
【0278】
そして、この帯電ローラ221には、帯電処理を行なうにあたり、高圧電源から電極端子231、帯電ローラ加圧スプリング232、導電性軸受233を介し、その芯金部221aに、直流電圧に交流電圧が重畳されたバイアス電圧が印加され、この帯電ローラ221は、感光体ドラム201を、バイアス電圧の直流成分と同一電圧に一様に帯電させる。バイアス電圧の交流成分は、感光体ドラム201を、帯電ローラ221によってむらなく一様に帯電させる働きをしている。
【0279】
ところで、帯電ローラ221によって感光体ドラム201を接触帯電させる場合、バイアス電圧の交流成分に起因して、帯電ローラ221と感光体ドラム201の表面間に引力と斥力が交互に作用し、帯電ローラ221に振動を生じさせる。そして、帯電ローラ221のこの振動は、帯電ローラ221自身に周波数の高い耳障りな振動音(帯電音)を生じさせると共に、感光体ドラム201側にも伝わり、感光体ドラム201を振動させ騒音を発生させる。
【0280】
図64は、中速の画像形成装置の一例である胴内排紙型のデジタル複写機300の概略を示す断面構成図である。
図64において、画像形成装置は、本体301と、2段給紙が可能な給紙バンクユニット302を主体に構成されている。本体301には2段給紙トレーが付いているので、給紙バンクユニット302がなくても、本体301だけで画像形成装置の機能を発揮できる。また、給紙バンクユニット302の代わりに、同じ外形で安価なサプライ収納テーブル(図示せず)を取り付けることも可能である。図において実線の矢印で示すルートは本体301の1段目トレー310から給紙した場合の画像形成時の紙搬送ルートである。本体301の2段目トレー311、給紙バンクユニット302の1段目トレー312、2段目トレー313から給紙する場合は、破線で示す紙搬送ルートであり、どのトレーを使用しても最終的には本体301の1段目トレー310と同じルートに合流する。
【0281】
本体301の内部には、ドラム状の感光体306を中心として、その周りに配置された帯電ローラ307、書き込み系光学ユニット304、現像ローラ308、転写ローラ309などが配置され、さらに、読み取り系光学ユニット303、レジストローラ対316、トナーボトル321、定着装置317、排紙ローラ対319などが配置されている。
【0282】
上記のように構成された複写機300の動作について簡単に説明する。まず、読み取り系光学ユニット303で原稿のデータを読み取り、デジタル電気信号に変換する。このデジタル電気信号は、画像処理され、書き込み系光学ユニット304に送られる。書き込み系光学ユニット304からは、上記デジタル信号に基づく光ビーム305を発し、感光体306上に照射される。感光体306は図64の反時計方向に回転駆動され、帯電ローラ307によって表面を一様に帯電され、その帯電面に上述の如く書き込み系光学ユニット304によって原稿画像が書き込まれる。これによって感光体306上に静電潜像が形成され、この潜像は現像ローラ308によってトナー像として可視像化される。トナーはトナーボトル321から上記現像ローラ308を含む現像ユニットに供給される。
【0283】
一方、用紙の供給動作を本体301の1段目トレー310から給紙する場合の例で説明する。用紙が重ねて収容されている1段目トレー310から給紙ローラ314によって1枚だけ用紙を分離する。分離された1枚の用紙は、搬送補助ローラ315に補助をされながらきつくターンして上方に向かい、レジストローラ対316に突き当てられてレジスト調整とタイミング調整をされたあと、作像部に向かう。
【0284】
感光体306上にトナーによって形成されている画像は、用紙が感光体306と転写ローラ309の間を通過するときに用紙に転写される。その後、定着装置317に搬送され、定着装置317の定着ローラ対318によってトナーが用紙に定着され、排紙ローラ対319によって排紙トレー320に排出される。本例における画像形成速度は、例えば122mm/s程度であり、1分間に27枚の画像形成が可能である。
【0285】
図65は、大型(コンソール型)画像形成装置の一例であるADF付複写機400の概略を示す断面構成図である。本例のADF付複写機400は床面に設置して使用されるように全高が高く設計され、上部ユニットであるADF(自動原稿搬送装置)410、スキャナ420,書き込みユニット430,作像エンジン440等からなる装置本体、下部ユニットであるバンク給紙ユニット570とから構成されるコンソール型のデジタルMFP(マルチ・ファンクション・プリンタ)である。つまり、通常のコピー機能、パソコンからの指示によるプリンタ機能、さらにはファクシミリ機能を備える場合もある。このようなタイプの画像形成装置は一般的に高速機である。
【0286】
装置本体部は、筐体内に光学要素(スキャナ420、書き込みユニット430)を収容した光学ユニット421と、その下方に位置する作像エンジン440と、を有しており、筐体上部にADF410を配置している。
【0287】
図65において、符号401は静電潜像が形成される像担持体としての感光体ドラム、符号402は帯電チャージャ、符号403は現像ユニット、符号404は転写・分離チャージャ、符号405はクリーニングユニット、符号406は定着ユニット、符号407はレジストローラ、符号411は原稿台、符号412はコンタクトガラス、符号413は露光ランプ、符号414は第1ミラー、符号415は第2ミラー、符号416は第3ミラー、符号417は結像レンズ、符号418はCCD、符号419はミラー、符号490はロック機能付きのキャスターである。
【0288】
すなわち、スキャナ420は、原稿を載置するコンタクトガラス412と走査光学系で構成されている。走査光学系は、露光ランプ413と第1ミラー414を搭載した第1キャリッジと、第2ミラー415と第3ミラー416を保持する第2キャリッジと、結像レンズ417と、CCD418と、を備えている。なお、原稿読み取り時にはステッピングモータにより駆動されて一定の速度で移動する第1キャリッジと、第1キャリッジの1/2の速度で駆動される第2キャリッジとを備えている。
【0289】
この第1キャリッジ、第2キャリッジによりコンタクトガラス412上の原稿(不図示)が光学的に走査され、そこで得られた反射光は、露光ランプ413、第1ミラー414、第2ミラー415、第3ミラー416、結像レンズ417を介してCCD419上に結像され光電変換される。
【0290】
書き込みユニット430は、レーザ出力ユニット、fθレンズ、ミラー(いずれも不図示)などを備えている。レーザ出力ユニットの内部には、レーザ光源であるレーザダイオードやポリゴンミラーが備わっている。
【0291】
画像処理部から出力された画像信号は、書き込みユニット430により、この画像信号に対応した強度を有するレーザ光に変換され、コリメートレンズ、アパーチャー、シリンダレンズにより一定形状の光束に整形されてポリゴンミラーに照射され、出力される。書き込みユニット430 から出力されたレーザ光は、ミラー419を介して感光体ドラム401に照射される。また、fθレンズを通過したレーザ光は、画像領域外に配置された主走査同期検知信号を発生するビームセンサー(不図示)に照射される。
【0292】
ADF410は、原稿台411にセットされた原稿を1枚ずつコンタクトガラス412へ搬送し、読み取り後に排紙する。すなわち、原稿は原稿台411にセットされ、サイドガイドにより幅方向が揃えられる。原稿台411上の原稿は、一番下の原稿から給紙ローラにより1枚づつ給紙され、搬送ベルト453により、コンタクトガラス401上に送られる。コンタクトガラス412上の原稿は読み取り終了後、搬送ベルトおよび排紙ローラにより排紙トレイ上に排紙される。
【0293】
バンク給紙ユニット470の、第1トレイ471、第2トレイ472、第3トレイ473、第4トレイ474に積載された記録紙は、それぞれ第1給紙装置475、第2給紙装置476、第3給紙装置477、第4給紙装置478によって給紙され、さらにバンク縦搬送ユニット479、本体縦搬送ユニット480によって搬送される。この記録紙の先端がレジストセンサー(不図示)で検出されると一定時間搬送された後、レジストローラ407のニップ部分で一旦停止して待機状態となる。
【0294】
上記待機した記録紙は、画像有効信号のタイミングに合わせて感光体ドラム401側に送出され、転写・分離チャージャ404の転写オンにより感光体ドラム401に密着し、画像が転写される。さらに感光体ドラム401から分離オンにより記録紙を感光体ドラム401から分離する。このトナー像が転写された記録紙は、搬送装置により搬送され、定着ローラおよび加圧ローラでなる定着ユニット406の熱・加圧作用により定着され、排紙ローラ481によって機外に排紙される。本例における画像形成速度は、例えば362mm/s程度である。
【0295】
このように、感光体ドラム401への画像形成は、帯電チャージャ402によって感光体ドラム401上に帯電された電荷をレーザ光を照射することにより静電潜像を形成し、現像ユニット403によって感光体ドラム401上に画像を形成する。
【0296】
両面ユニット485を使用して両面印刷を行なう場合には、定着後の記録紙を、切り換え爪428によって両面搬送路486に導き、フィードローラ432、分離コロ433を通過して両面トレイに集積する。トレイに集積された記録紙は、トレイが上昇することによりフィードローラと接触し、フィードローラが回転することにより本体縦搬送ユニット480に送られ、レジストローラ407へ再給紙された後に裏面に対して印刷が行なわれる。
【0297】
反転排紙を行なう場合には、切り替え爪467によって記録紙を反転専用トレイ464方向に導き、さらに記録紙の後端が反転検知センサー468を通過すると、搬送コロ469が逆転し、排紙トレイ方向に導き、あらかじめ設定したトレイに排紙する。
【0298】
[IV.画像形成装置の改造方法]
ところで、本発明の音質評価方法は、既に製造したあるいは既に販売等がされた画像形成装置の騒音対策にも適用できるものである。すなわち、すでに販売等がされた画像形成装置が発する音を上記のように測定し、その測定結果から上記音質評価式を用いて音質評価値Sを導出する。そして、算出した音質評価値Sが所定の条件を満たすか否かを検討し、満たしている場合には不快な騒音をほとんど発していないと考えられるので改造は不要であると判断する。一方、算出された音質評価値Sが所定の条件を満たさない場合には、音質評価値Sが所定の条件を満たすよう、画像形成装置の各部に対し種々の改造を施すことにより、不快な騒音をほとんど発しない画像形成装置を提供することができる。
【0299】
以下、画像形成装置を改造し、画像形成装置が発する音が人に不快感を与えることを低減するための対策の具体例について、上記説明した4例の画像形成装置の場合を例に挙げて説明する。
【0300】
まず、画像形成装置が発する音を評価するため、上述した音質評価手法の(1)と同様の手法で画像形成装置が発する音を採取する。ここで、採取位置は、ISO7779に規定されている近在者位置であり、基準箱の水平面の投影から1.00±0.03mの距離で、高さは床上1.2±0.03mまたは1.50±0.03mの位置である。
【0301】
また、図3に示すように、操作部のある前面、左右面および後面といった4面側すべてについて音の採取を行い、各々の収音結果から音響物理量を取得して音質評価値Sを上記音質評価式により求め、各面ごとの音質評価値Sが許容値内か否かを判定するようにしてもよいし、前面のみ、あるいはいずれか1の面側のみで採取した収音結果から音質評価値Sを求めて判定を行うようにしてもよい。
【0302】
また、4面側で採取した音から得られた心理音響パラメータ値の平均値を導出し、かかる平均値から求めた音質評価値Sが許容値内か否かを判定するようにしてもよい。
【0303】
なお、4面側のいずれに位置する人も不快さを感じないようにさせるためには4面側すべての位置で音を採取することが好ましいが、1面のみ、特に最も人が位置する可能性が高い前面側での音を採取することでも十分な評価ができる。
【0304】
以上のようにして求めた音質評価値Sが上述した許容値を超える場合には、人が不快であると感じているおそれが非常に高いので、かかる音質評価値Sが許容値以下となるよう装置各部に種々の改造を施す。一方、音質評価値Sが許容値以下である場合には、人が不快に感じるおそれは少なく、特に騒音対策を施す必要はないと判断することができる。
【0305】
上述したように音質評価値Sは、第1因子(音量)、第2因子(衝撃性)、第3因子(高周波成分)、第4因子(純音成分)をそれぞれ小さくすることで、人に与える不快さを低減できることになる。よって、以下においては、上記の因子を低減させるための具体的な対策例について説明する。
【0306】
(1)第4因子(純音成分)の低減対策
複数モードを有する画像形成装置(カラープリンタ100)について
(1-1)ドラム駆動ステッピングモータ音の低減
【0307】
まず、第4因子(純音成分)の低減対策例について説明する。第4因子(純音成分)の低減対策としては、ドラム駆動ステッピングモータ音を低減する方法がある。図4,図5及び図6に示すように、いずれの動作モードにおいてもドラム駆動モータの音が発生している。そして、この音はステッピングモータへの入力パルスの周波数成分を多く含むものである。
【0308】
図66及び図67は改造前のカラードラム駆動モータ41と黒ドラム駆動モータ42とを含むドラム駆動機構を示す図である。これらの図に示すように、カラードラム駆動モータ41、黒ドラム駆動モータ42、ギヤ43,44はモータブラケット59によって保持されている。
【0309】
モータブラケット59は、板金を絞り加工等で強度を持たせた部材である。そして、曲げ加工により当該画像形成装置の筐体取り付け部(ねじ穴等)が形成されており、モータブラケット59はこの取り付け部において筐体に固定されている。
【0310】
モータブラケット59には、並んで配置される4つのギヤ44が回転可能に保持されている。これらのギヤ44のうち、図66の最も右側のギヤ44と黒ドラム駆動モータ42のモータ軸に取り付けられたギヤ61とが歯合されている。これにより黒ドラム駆動モータ42によってギヤ44が回転させられ、これに伴ってモノクロ画像形成用の感光体ドラム28(図55参照)が回転させられるようになっている。
【0311】
また、上記のギヤ44以外の3つのギヤ44のうち図66の左側の2つのギヤ44は、カラードラム駆動モータ41のモータ軸62によって回転させられる。
また、左から2番目のギヤ44と3番目のギヤ44とはともに中継ギヤ43に歯合されており、これにより2番目のギヤ44の回転に伴って3番目のギヤ44が回転させられる。つまり、カラードラム駆動モータ41の回転に伴って3つのギヤ44が回転させられ、これによりC用、M用、Y用の感光体ドラム28(図55参照)が同時に回転させられるようになっている。
【0312】
以上のような感光体ドラムを駆動するためのギヤはモジュール0.5でギヤの軸間距離を設計値に正確にあわせることができるよう、モータの取り付けに対して特殊な防振構造等を採用していない。つまり、黒ドラム駆動モータ42およびカラードラム駆動モータ41は直接モータブラケット59に取り付けられて固定されている。
【0313】
このようにモータをモータブラケット59に直接取り付けることによって動作時のモータの振動がモータブラケット59に固体伝搬し、増幅されて放射される。これに起因して発せられる音は、ドラム駆動モータであるステッピングモータの駆動周波数成分を多く含む音である。
【0314】
このようなステッピングモータの駆動周波数成分が顕著な音の発生を低減するため、図68に示すように、カラードラム駆動モータ41および黒ドラム駆動モータ42を防振ゴムマウント60を介してモータブラケット65に取り付けるようにする。すなわち、この防振ゴムマウント60は、上記のように発生する音を低減させる低減手段となる。
【0315】
防振ゴムマウント60としては、例えば株式会社NOK製のステッピングモータマウントを使用することができ、後述する騒音対策による効果を試す試験においては当該ステッピングモータマウントを使用している。
【0316】
モータブラケット65とドラム駆動モータとの間に防振ゴムマウント60を介在させたドラム駆動機構について図69および図70を参照しながら説明する。
防振ゴムマウント60をドラム駆動モータとモータブラケット65の間に介在させると、各ギヤの軸間距離の精度が悪化する。このため、このドラム駆動機構では、モータ軸を直接ギヤに歯合させるのではなく、モータ軸からタイミングベルト機構を介してギヤ44等に駆動力を伝達する構成とした。
【0317】
より具体的には、カラードラム駆動モータ41および黒ドラム駆動モータ42のモータ軸にはそれぞれタイミングプーリ66,67を取り付け、かかるタイミングプーリ66,67に巻きかけられたタイミングベルト70によって2段ギヤ/プーリ63,64にモータの駆動力を伝達する。つまり、モータ軸の回転に伴って2段ギヤ/プーリ63,64を回転させる。
【0318】
かかる2段ギヤ/プーリのギヤは上述したドラム駆動用のギヤ44に歯合されている。これにより上記改造前の構成と同様、ドラム駆動モータの回転に伴ってギヤ44を回転させることができ、感光体ドラム28(図55参照)を回転させることができる。
【0319】
モータブラケット65は、モータを保持する部分(図70の下側の部分)がその上の部分よりもモータと反対側に突出するよう曲げ加工がなされている。かかる突出部分にできた空間に防振ゴムマウント60がモータブラケット65と接するよう配置され、防振ゴムマウント60のモータブラケット65と反対側にモータ(41,42)がそのモータ軸がモータブラケット65の反対側(図70の左側)の面に突出するよう配置される。このようにモータブラケット65とモータとを直接保持する構造とせず、防振ゴムマウント60を介在させて保持する構造としている。
【0320】
本構成では、2段ギヤ/プーリ63,64がモータブラケット65の図70の左側(ギヤ44が配置される側)に配置されるので、モータ軸はその分だけ図70の左側の位置まで突出させる必要がある。しかしながら、上記のようにモータブラケット65に突出部分を作ることで、モータの配置位置そのものを図70の左側にすることでき、これによりモータ軸を長くする必要がなくなる。よって、モータ軸を長くすることで生じるおそれのあるモータ軸の偏心やそれに起因した騒音発生等を抑制することができる。
【0321】
なお、本構成においては、2段ギヤ/プーリ63,64を取り付けるためのスタッド69の強度を大きくすることが好ましい。スタッド69の強度が不足している場合には、ギヤ44と2段ギヤ/プーリとが偏心しながら噛み合うこととなり、ベアリング70を介してドラム軸68も偏心することになる。ドラム軸68の偏心は用紙に形成される画像に影響を与えることがあり、かかる不具合を起こさないため、スタッド69の強度を大きくする必要があるからである。
【0322】
また、上述した防振ゴムマウント以外にも、モータの振動をある程度吸収することができる弾性体を用いるようにしてもよい。
以上がドラム駆動ステッピングモータ音の低減対策である。
【0323】
(1-2)給紙用ステッピングモータ音の低減
次に、給紙用のステッピングモータ音の低減対策について説明する。上述したように上記画像形成装置の給紙用のモータは、ステッピングモータ83であり(図60参照)、かかるステッピングモータの駆動を制御することでトレーからの用紙搬送を行うようになっている。このモータ音の低減対策としては、ステッピングモータ56の駆動制御内容を以下のようにする方法があり、以下その制御内容について説明する。
【0324】
図71は、ステップ角θ0で駆動されるステッピングモータのロータの動きを説明するための図である。ステッピングモータのステップ角は機械構造的に決められるものであり、通常はかかるステップ角θづつロータが一度に移動するのでかかるステップ角θが大きい場合にはその動きが滑らかではなく、振動等が生じこれが騒音の原因となる。
【0325】
そこで、本構成では、図示のように電子回路による制御によって機械的構造によってきめられているステップ角θよりも小さいステップ角でステッピングモータを駆動する、いわゆるマイクロステップ駆動を行うようにする。すなわち、励磁相の1相に供給する電流値を徐々に増加させる一方で、他の1相へ供給する電流値を徐々に低下させるといった電流供給制御を行うことで(図71の(1)〜(5)参照)、ステップ角θよりも小さいステップ角での駆動を可能とし、その動きを滑らかにして騒音を低減しようというのである。
【0326】
また、図72は、ステッピングモータのマイクロステップ駆動の1つである1−2相励磁のシーケンスを示す図である。1−2相励磁は、コイルを1相づつ励磁する1相励磁とコイルを2相づつ励磁する2相励磁を交互に繰り返す励磁方式であり、この励磁方式を用いてステッピングモータを駆動した場合、モータのステップ角が1/2となり、通常の駆動を行うよりもロータの動きが滑らかになり、振動を低減することができる。
【0327】
(1-3)ポリゴンミラーモータ音の低減
次に、ポリゴンミラーモータが発する音を低減するための対策について図73を参照しながら説明する。同図に示すように、この対策では、ポリゴンミラーモータ2の近傍にヘルムホルツ共鳴器71を取り付けている。より具体的には、ポリゴンミラーモータ2を保持するハウジング12の上部にヘルムホルツ共鳴器71を取り付けている。
【0328】
ヘルムホルツ共鳴器71は、体積V1の空洞72を形成するための空洞形成部材72aを有している。空洞形成部材72aはハウジング12と一体になって形成されており、そのポリゴンミラーモータに対向する位置にある部分には空洞72に通じる開口穴73(断面積Sb)が形成されている。ここで、開口穴73が形成された部分の板厚がTbであるとすると、かかる開口穴73は一般的なヘルムホルツ共鳴器における、長さTb、開口面積Sbの短管に相当することになり、この構造体はヘルムホルツ共鳴器71として機能するのである。
【0329】
この構成の下、ポリゴンミラーモータ2が駆動され、その振動によって開口穴73の入り口に音圧が作用すると、開口穴73(短管)内の空気(媒質)が一体運動を行い、空洞72内の空気に圧力変化を生じさせる。このような現象は、開口穴73(短管)内の空気を質点、空洞72内の空気の体積変化による圧力変化をバネと仮定すると、力学系の質点−バネモデルと等価となり、後述する周波数(ヘルムホルツ共鳴周波数)に対して共振(共鳴)が生じることとなる。つまり、このヘルムホルツ共鳴周波数の音響エネルギーが空洞72に閉じ込められるので外部空間にとっては音が低減されることになるのである。
【0330】
ここで、ヘルムホルツ共鳴周波数Fh (Hz )は次式により算出される。
Fh=C/2π(Sb/(V1・Tb))1/2
C:音速
【0331】
すなわち、開口穴73の開口面積Sb、長さTb(つまりハウジング11の開口穴73が設けられる部分の板厚)、空洞形成部材72aによって形成される空洞72の体積V1を変化させることによって共鳴周波数Fh、つまり低減させたい音の周波数を変化させることができる。そこで、ポリゴンミラーモータ2を駆動したときに発生する音のうち最もレベルが大きくなる周波数に合致するよう上記各部の寸法等の設計を行うようにすれば、ポリゴンミラーモータ2の発する音を効果的に低減させることができる。
【0332】
なお、上述した騒音測定結果からは(図4〜図6参照)、カラーモード時にはポリゴンミラーモータ音が騒音として抽出されるものの、モノクロモード時には当該音はあまり騒音としては目立ったものとなっていない。このような場合には上記のようにカラーモード時にポリゴンミラーモータが発する音のうち、最もレベルが大きくなる周波数にヘルムホルツ共鳴周波数が合致するよう各部の寸法等を決定すればよい。一方、モノクロモード時に他の周波数のレベルが大きいような場合には、この周波数が共鳴周波数となるようなヘルムホルツ共鳴器を別途設けるようにすればよい。
【0333】
また、上記のように対応する周波数ごとにヘルムホルツ共鳴器を併設するようにしてもよいが、カラーモード時とモノクロモード時で開口穴73の開口面積Sbを変化させる機構を設けるようにしてもよい。例えば、開口穴73をある程度ふさぐ位置とふさがない位置との間で移動可能なふた部材等を設け、かかるふた部材をモードに応じて移動させることで、各々のモード時における共鳴周波数を各々のモード時にレベルが大きくなる周波数と合致するよう可変させるようにしてもよい。
【0334】
(1-4)帯電音の低減
次に、帯電音の低減対策について説明する。帯電音とは、以下のようにして発生する音である。すなわち、帯電ローラ36が感光体ドラム28を帯電する際には(図55参照)、一般にバイアス電圧の交流成分に起因して帯電ローラ36の表面と感光体ドラム28の表面との間に引力と斥力が交互に作用し、両者の間に振動を生じさせる。この振動によって感光体ドラム28が放射する音が帯電音であり、当該音は周杷数の高い耳障りな純音であり、一般的に交流成分の周波数とその整数倍の周波数成分(高調波成分)からなる。
【0335】
このような帯電音の低減対策について図74および図75を参照しながら説明する。図74に示すように、帯電音対策がなされた感光体ドラム28の中空部分には、制振部材74が配置されている。制振部材74は、感光体ドラム28の軸方向に延びる中空円筒状の基部75と、当該基部75から放射状に突出する複数の羽根部76とを有しており、基部75の中心軸が感光体ドラム28の中心軸と略一致するよう配置される。
【0336】
制振部材の各羽根部76の先端が感光体ドラム28の内面に圧接しており、これにより制振部材74が感光体ドラム28内において保持されている。ここで、羽根部76は、ゴム、樹脂またはこれらを含む材料、例えばウレタンゴムを含む材料、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂材料等の弾性材料によって構成されていることが好ましい。羽根部76として弾性材料を用いることによって、羽根部76の先端がその弾性力によって感光体ドラム28に圧接され、保持される。したがって、接着剤等による接着作業や位置だし作業が不要であるので、取り付け作業および取り出し作業が容易となるからである。
【0337】
上記のように感光体ドラム28の内面側に羽根部76が圧接するよう制振部材74を配置することで、かかる制振部材74が感光体ドラム28の振動を抑制するよう作用する。したがって、上述した帯電ローラ36による帯電の際に生じる感光体ドラム28の振動を抑制することができる。また、このように感光体ドラム28の振動を抑制するための部材が感光体ドラム28の内部に設置されているので、新たに制振部材を設置するスペースをとる等の対策を施す必要がない。
【0338】
なお、感光体ドラム28の振動を抑制して騒音を低減する手段としては、上記構成の制振部材74に限らず、感光体ドラム28の中空部分に金属柱を嵌合するといった対策を施すようにしてもよく、市販されている制振材(例えば、横浜ゴム株式会社製ハマダンパーなど)を貼り付ける等するようにしてもよい。
【0339】
卓上型(デスクトップ)画像形成装置について
図7に示す通り、卓上型(デスクトップ)画像形成装置であるモノクロプリンタ200においてもAC帯電音が発生している。これについても、上記カラープリンタ100の場合と同様の手段によってAC帯電音の発生を抑えることができる。
【0340】
(2)第3因子(高周波成分)の低減対策
複数モードを有する画像形成装置(モノクロプリンタ200)について
(2-1)用紙摺動音の低減
【0341】
次に、シャープネス(高周波成分)の低減対策について説明する。シャープネスの低減対策としては、用紙摺動音を低減する方法がある。なお、用紙摺動音とは、搬送される用紙が部材等と摺動することによって生じる音である。
【0342】
上述したように、複数モードを有する画像形成装置の第1トレー9または第2トレー10に収容された用紙は、第1給紙ユニット51または第2給紙ユニット52によって各トレーから繰り出され、中継ローラ53および搬送ローラ55によってレジストローラ7の位置まで搬送される(図59参照)。
【0343】
ここで、図76は、第1トレー9または第2トレー10に収容された用紙を搬送して画像形成を行うとき(通常のプリント時)と、用紙を搬送せずにプリントを行うとき(フリーラン時)とで画像形成装置が発する騒音を測定して周波数分析(1/3オクターブバンド分析)した結果を示す。図77は、この分析結果に示される通常のプリント時とフリーラン時の騒音から得られる各周波数帯域の音圧レベル差を示すグラフである。
【0344】
すなわち、図77に示す周波数帯域ごとの音圧レベルは、用紙を第1トレー9または第2トレー10から送り出して搬送するか否かに起因する、画像形成装置が発する騒音内容の差であり、用紙を搬送することによって図77に示すように各周波数帯域で音圧レベルが増加していることを意味する。
【0345】
図77に示すグラフから、通常のプリント時とフリーラン時とで3(dB)以上の差があるのは、200〜250Hzを中心とした帯域と、3.15kHz以上の帯域の2つである。なお、3dB以上の差は、音響エネルギーが2倍以上の差があることになる。
【0346】
以上の分析結果を検討すると、200〜250Hzを中心とした帯域の成分は、用紙とレジストローラ7が衝突する際に発生する音に起因するものであることがわかった。一方、3.15kHz以上の周波数帯域の成分は、用紙搬送時に用紙が部材等に摺動することで発生する音に起因するものであることがわかった。
【0347】
また、12.5kHz〜16kHzを中心とした帯域では、7(dB)以上の差があり、またこの帯域はシャープネス値に与える影響が大きい。このことから、用紙摺動音の低減を図ることが騒音対策として効果的であることがわかる。
【0348】
以下、給紙ユニット、中継ローラ53および搬送ローラ55によって搬送される用紙の摺動音を低減するための対策について図78を参照しながら説明する。
同図に示すように、搬送ローラ55は、複数のコロを軸に通したローラであり、用紙搬送路を挟んで対向配置されるローラ55aとローラ55bとを有している。そして、搬送路Aに沿って搬送される用紙(第1トレー9から繰り出された用紙)、または搬送路Bに沿って搬送される用紙(第2トレー10 から繰り出された用紙)はかかるローラ55a、55b間に案内され、ローラ55a、55bによってレジストローラ7に向けて搬送される。
【0349】
搬送ローラ55の近傍には、用紙を所定の経路に沿って搬送するためのガイド部材80,81,82が配置されている。
ガイド部材80は、ローラ55aとともに搬送路Aに沿って搬送される用紙をローラ55a、55b間に案内する空間を形成する。また、ガイド部材80は、ガイド部材81とともに搬送路Bに沿って搬送される用紙をローラ55a、55b間に向けて案内する空間を形成する。
【0350】
ガイド部材80の搬送方向下流側(図78の上側)の部分には、用紙搬送方向(図の上下方向)に延びる可踏性シート(例えばマイラーシート)からなる案内部材77が取り付けられている。この案内部材77は搬送路A,Bから搬送される用紙をローラ55a、55b間に向けて案内する。
【0351】
図79に示すように、案内部材77の先端部分における、ローラ55aと交錯しないようローラ55aが配置される位置には、切り欠き部分77aが裁断等することで形成されており、これにより用紙をその先端部分に接触させて確実にローラ55a、55b間に向けて案内する。
【0352】
したがって、図80に示すように搬送路Aからの用紙は、案内部材77の先端部分に摺動しながら搬送されることになる。従来の一般的な案内部材77は、可撓性シートを所定形状にせん断することによって作製されており、その先端部分(せん断部分)にはバリが出ているのが通常である。このようなバリを1枚づつ取り除くのは非常に困難な作業であり、コストと時間を要することになる。したがって、通常はこのような作業は行われず、バリがある先端部分と用紙が摺動することで耳障りな騒音を発生してしまう。
【0353】
そこで、本構成では、図81に示す構成の案内部材78を採用することで、上記のような用紙と案内部材78の先端部分が摺動することに起因する耳障りな騒音を低減することができる。
【0354】
図82に示すように、従来の可撓性シートからなる案内部材は、所定の形状にせん断した厚さtの可撓性シートをそのまま案内部材77としているものであり、用紙が摺動する先端部分はせん断部分となっている。これに対し、図81に示す構成では、厚さt/2の可撓性シートを折り曲げて2枚重ねとしその折り曲げ部分が案内部材78の先端部分となるようにしている。このような構成の案内部材78を採用することで、上記のように搬送される用紙が摺動する先端部分は折り曲げ部分であり、せん断加工がなされていない部分であり、かつ滑らかなR形状となる。よって、上記のようなせん断加工部分にみられるバリに起因する耳障りな騒音の発生を低減することができるのである。また、2枚重ねとした厚みも従来の案内部材77と同様の厚みとなるため、必要とされる弾性力を発揮することもでき、案内部材としての機能に支障をきたすこともない。
【0355】
大型(コンソール型)画像形成装置について
大型(コンソール型)画像形成装置であるADF付複写機400について用紙摺動音の低減の実施例を示す。
【0356】
まず、紙摺動音の音源である搬送路の構成および発生原因について述べる。図83は、図65に示した画像形成装置における本体縦搬送ユニット480のコロおよびガイド板の詳細構成を示す説明図である。すなわち、給紙トレイからの搬送と両面複写のための中間トレイからの搬送を、レジストローラ方向に案内する搬送部分の断面図である。また、図84は、騒音未対策時における記録紙と可撓性シート459との関係を示す説明図である。
【0357】
図83において、符号450、451は複数のコロを団子状に軸に設けたローラである。ローラ450とローラ451を対にして記録紙を搬送する第1の搬送ローラ対とし、給紙トレイから搬送してきた記録紙を図示するA方向へ搬送するように回転する。また、符号452、453、454は複数のコロを団子状に軸に設けたローラである。ローラ452とローラ453を対にして記録紙を搬送する第2の搬送ローラ対を形成し、中間トレイから搬送される記録紙を図示するB方向へ搬送するように回転する。また、ローラ452とローラ454を対にして記録紙を搬送する第3の搬送ローラ対を形成し、図中のC方向、すなわちレジストローラ方向へ搬送するように回転する。
【0358】
矢印A方向へ搬送するように回転される第1の搬送ローラ対の搬送路には、ガイド板455、456が設けてあり、これらのガイド板455、456にはローラ450、451のコロの部分を逃げるように穴があけてある。同様に、矢印B方向へ搬送するように回転する第2の搬送ローラ対の搬送路には、ガイド板457、458が設けてあり、これらのガイド板457、458には、ローラ452、453のコロの部分を逃げるような穴があいている。また、矢印C方向に搬送するように回転する第3の搬送ローラ対の搬送路には、ガイド板456、457の延長部があり、これらには、ローラ452、454のコロの部分を逃げるように穴があいている。すなわち、搬送ローラ対による搬送力とガイド板による搬送性を確保した構成となっている。
【0359】
ガイド板455の下流側の端部には、記録紙の搬送方向に延びる可撓性シート459が取りつけられており、記録紙を案内するように設けられている。そして、A方向から搬送させてきた記録紙も、共にC方向へ搬送されるように搬送路が形成されている。
【0360】
ここで、中間トレイからB方向に搬送されてくる記録紙は、下向きカールがついている場合が多く、折れやジャム(紙詰まり)の発生を防止するために、可撓性シート(具体的にはポリエステルフィルム、製品名:マイラー)459は図中右方向に折り曲げてある。したがって、給紙トレイからA方向に搬送されてきた記録紙は、可撓性シート459の先端を迂回してローラ452、454間へ進入する。
【0361】
このとき、図84に示すような未対策の可撓性シート459の場合、記録紙が可撓性シート459の先端を摺動しながら搬送する。ところが、記録紙の表面は繊維の凹凸があり、さらに、可撓性シート459はせん断加工により端面はバリがでているため、記録紙表面の繊維に凹凸が進行することにより、可撓性シート459のエッジ部のバリと記録紙が振動して大きな音を発生して騒音となる。なお、可撓性シート459のエッジ部分のバリを1枚ずつ取るのは非常にコストと時間がかかる。そこで、以下に示すように可撓性シート59の工夫による紙摺動音の低減対策を行なった。
【0362】
本発明の実施の形態にかかる可撓性シートの例を図85、図86に示す。なお、行なうことは複数モードを有する画像形成装置の場合と同じである。
この図85,86において、ガイド板555に取りつけた可撓性シート459Bの先端は、図83の矢印A方向から搬送されてきた記録紙をひっかくように摺動するときに発生する摺動音(紙の表面はある程度の表面粗さがあり、エッジを摺動させると高周波成分を多く含む音を発生する)を低減させるために、屈曲部459aを形成する。可撓性シート459Bの表面は極めて平滑であり、屈曲部459aを設けてもその平滑性は失われない。
【0363】
(3)第2因子(衝撃性)の低減対策
複数モードを有する画像形成装置について
上記構成の画像形成装置(カラープリンタ100)においては、インパルシブネスの発生はほとんど定着オイル塗布音に起因するものである(図4〜図6参照)。定着オイル塗布音は、上述した構成の画像形成装置では、オイル消費量の増加を抑制するため、用紙が搬送されると、その都度オイル塗布ユニット47を駆動して定着ベルト13と接触させる構成を採用している(図58参照)。このような用紙が搬送されるごとになされる接触・離間の音が衝撃的に発生するので不快感を与えることになる。
【0364】
このような定着オイル塗布音による騒音問題は、画像形成のために用いるトナーとして、オイルレストナーを使用することで解消することができる。すなわち、かかるオイルレストナーはトナーにワックスが包含されているので、上述したようにオイル塗布作業を行わなくても、定着ベルトと用紙との乖離性がよい。このため、オイル塗布ユニット47を利用する必要がなく、上述したオイル塗布ユニット47と定着ベルト13との接離に起因する衝撃音の発生を防止することができる。なお、オイルレストナーを使用するにあたっては、感光体ユニット3等の作像プロセス構成をオイルレストナーに適するよう修正する必要がある。
【0365】
大型(コンソール型)画像形成装置について
図87は、図65におけるバンク給紙ユニット470の給紙・駆動系の構成を示す説明図である。この実施の形態における画像形成装置は図65で示したように、4段給紙が可能に構成されており、上の段ほど搬送経路が短くなるので画像形成が速くなる。したがって、1段目(1番上の段)にはよく使用されるA4サイズの記録紙がセットされ、3、4段目(下の段)には一般的に使用頻度の少ないB4やA3サイズの記録紙がセットされることが多い。
【0366】
図87において、4段それぞれの給紙装置には、グリップローラ467が配設され、各給紙装置から給紙された記録紙は、グリップローラ467を介して上方に向かう。グリップローラ467にはそれぞれ従動コロ469が対向して設けられ、加圧スプリング470で加圧されている。これらグリップローラ467や用紙分離機構(不図示)はバンクモータ461で駆動され、上部400に記録紙を搬送する。
【0367】
グリップローラ467の各軸には、上から、中間クラッチ462、中間クラッチ463、中間クラッチ464、中間クラッチ465が設けられている。これらの中間クラッチ462〜465は電磁クラッチで構成され、タイミングベルト、ギヤ列を介して電磁クラッチのギヤに伝達されているバンクモータ451を駆動源とする駆動力を、電流のオン/オフでグリップローラ467を回転したり、非回転するものである。この駆動機構は、画像形成中に記録紙を送って記録紙間を最小限に制御し、処理効率を上げるために設けられている。中継センサ466は、画像書き込みのタイミングをとるため、およびジャム(紙詰まり)検知として用いられる。
【0368】
ところで、画像形成装置における金属衝撃音の主な要因は、バンク給紙ユニット570の中間クラッチの動作音(クラッチON動作において、円盤どうしが電磁石の力で吸い付く金属性の衝突音)であることが分かっている。これらの4つの中間クラッチは、記録紙を1枚給紙するたびに動作する。制御を簡単にするためにバンク給紙ユニット470のどの段から給紙しても動作するように構成されている。このため、バンク給紙ユニット470の1段目から給紙しても、駆動の必要のない2〜4段目のグリップローラ467も駆動する。なお、4段目(1番下)から給紙した場合は、すべてのグリップローラ467が動作しないと記録紙は上方に搬送されないので、中間クラッチ462〜中間クラッチ465はすべて動作する必要がある。
【0369】
ただし、前述したように使用頻度の高いのはバンク給紙ユニット470の最上段または2番目のトレイからの給紙である。3、4段目は使用頻度の低いサイズの記録紙をセットしてあるので使用頻度が少ない。
【0370】
金属衝撃音は、バンク給紙ユニット470の中間クラッチ462〜465が同時に動作することによって衝撃音が大きく発生するので、バンク1段目を使用するときは中間クラッチ462だけを動作するようにすれば、金属衝撃音のエネルギー発生は1/4に抑えることができる。このように、給紙に使用しているバンクの上の段の中間クラッチだけを動作するように制御することで、騒音も電気エネルギーの消費も抑制することができる。
【0371】
図88は、バンク給紙ユニット470の中間クラッチの制御例を示すフローチャートである。まず、1段目給紙であるか否かを判断し(ステップS11)、1段目給紙である場合、中間クラッチ462を動作させる(ステップS12)。ステップS11において、1段目給紙ではない場合にはさらに2段目給紙であるか否かを判断し(ステップS13)、2段目給紙である場合には中間クラッチ462,463を動作する(ステップS14)。ステップS13において、2段目給紙ではない場合さらに3段目給紙であるか否かを判断し(ステップS15)、3段目給紙であれば、中間クラッチ462〜464を動作させ(ステップS16)、3段目給紙でない、すなわち4段目給紙(最下位のトレイからの給紙)の場合には中間クラッチ462〜465を動作させる(ステップS17)。
【0372】
このように、必要部分だけの中間クラッチをオンさせる制御を行ない、使用頻度の少ない下段の中間クラッチは動作させないことにより、金属衝撃音の発生を抑制することができ
る。
【0373】
図89は、中間クラッチの制御の改良前と改善後における金属衝撃音の変化を示すグラフである。改良前とは、4つの中間クラッチを同時に動作させたものである。金属衝撃音改善は、1段目の中間クラッチ462だけを動作させたものである。これによると、クラッチの衝撃音は約1k〜20kHzの高周波の広帯域ノイズであり、インパルシブネスだけでなく、シャープネスやラウドネスに寄与する。このように、衝撃音の音源を抑えることにより、不快音を低減させることができる。
【0374】
これらの音源を低減することで、第1因子(音量)も自動的に低減できる。
以上が音質評価値Sを低減するための対策の具体例である。
【0375】
本願発明者は、上記のような対策を施した画像形成装置が発する音を、対策前の画像形成装置が発する音を測定した際と同様の条件で測定し、その測定結果から対策の効果を確認した。なお、以下において比較する測定結果は、各々画像形成装置をカラー28ppmで動作させたときに画像形成装置の前面側で音を採取することで得られたものである。
【0376】
図90に、カラー28ppm機の前面対策後の騒音の分析結果を示す。上側が時間軸の音圧の変化、下側が周波数軸の音圧レベルを示している。同図に示す対策後の分析結果と、対策前の分析結果(図4参照)を比較すると、周波数軸の比較より、給紙ステッピングモータ音は10(dB)程度低減され、帯電音は約5(dB)、ドラム駆動モータ音は約8(dB)低減され、ポリゴンミラーモータ音も10(dB )程度低減されている。
【0377】
また、時間軸の音圧の比較より、定着オイル塗布音もなくなった。以上のことから、上記対策を施すことによって各音源の発する音を低減させることができることがわかる。
【0378】
図91〜図94は、さらに、カラー28ppm機の前後左右4方向別の周波数分布を対策前後で比較したものである。各方向とも純音成分が低減している。また、4方向で原因は不明だが400Hzが上昇した。
【0379】
また、対策前の測定結果から得られた音響物理量および上記音質評価式(c)による音質評価値Sの比較結果を表30に示す。そして、対策後の測定結果から得られた音響物理量および上記音質評価式(c)による音質評価値Sの比較結果を表31に示す。
【0380】
【表30】

【0381】
【表31】

【0382】
この表からわかるように、各方向、4方向の平均値とも対策後の方が音質評価値Sの値が下がっている。
また、
S ≦ 0.4646Ln(ppm) - 1.8426・・・・・・(b)
あるいは
S ≦ 0.4101Ln(v) - 2.2997・・・・・・(d)
より、28ppm(125mm/s)時の不快さの許容値は、式(b)の場合、−0.29であり、式(c)の場合は−0.32である。
【0383】
左面だけが音質評価値S=−0.11で許容値を超えているが、その他の面と、4方向の平均値は許容値よりも小さかった。
したがって、上記の対策によって右面以外はほとんど不快感を与えることがないよう画像形成装置の改造がなされ、4方向の平均値を考えると、ほとんど不快さを感じない画像形成装置となったといえる。また、図91〜図94の結果より、原因不明の400Hz音を低減することでさらに音質改善が期待でき、右側面も許容値以下にする事が可能である。
【0384】
以上、本発明を説明したが、本発明は上記例に限定されるものではない。
例えば、本発明による音質評価方法は、画像形成装置以外のOA機器全般、印刷機、家電機器等の出す騒音(音質)の評価に用いることができ、それらの機器の製造あるいは改造に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0385】
【図1】音質評価における主成分分析例を示すグラフである。
【図2】図1におけるP1成分が主軸になるようにプロットを回転および反転させたグラフである。
【図3】画像形成装置の動作音を採取する様子を示す模式図である。
【図4】カラー28ppm時に採取した音を示すグラフである。
【図5】カラー14ppm時に採取した音を示すグラフである。
【図6】モノクロ38ppm時に採取した音を示すグラフである。
【図7】卓上型画像形成装置(20ppm)動作音の分析結果を示すグラフである。
【図8】中速の画像形成装置(27ppm)動作音の分析結果を示すグラフである。
【図9】大型の画像形成装置(65ppm)動作音の分析結果を示すグラフである。
【図10】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図11】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図12】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図13】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図14】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図15】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図16】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図17】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図18】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図19】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図20】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図21】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図22】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図23】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図24】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図25】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図26】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図27】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図28】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図29】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図30】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図31】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図32】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図33】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図34】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図35】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図36】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図37】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図38】測定した音源の水準と主観評価値との関係を示すグラフである。
【図39】5つの音響物理量に関する相関図である。
【図40】音の不快さに関わる予測値の散布図である。
【図41】装置動作モードの音質評価予測値と実測値とを比較プロットしたグラフである。
【図42】装置動作モードの音質評価予測値と実測値とを比較プロットしたグラフである。
【図43】装置動作モードの音質評価予測値と実測値とを比較プロットしたグラフである。
【図44】装置動作モードの音質評価予測値と実測値とを比較プロットしたグラフである。
【図45】装置動作モードの音質評価予測値と実測値とを比較プロットしたグラフである。
【図46】装置動作モードの音質評価予測値と実測値とを比較プロットしたグラフである。
【図47】装置動作モードの音質評価予測値と実測値とを比較プロットしたグラフである。
【図48】装置動作モードの音質評価予測値と実測値とを比較プロットしたグラフである。
【図49】図41〜48の比較プロットをまとめたグラフである。
【図50】音質評価におけるppm値と許容値との関係を近似させたグラフである。
【図51】音質評価における画像形成速度と許容値との関係を近似させたグラフである。
【図52】新製品の開発・製造に本発明の音質評価方法を適用するフローチャートである。
【図53】音質評価に用いたタンデム型カラープリンタの概略を示す断面構成図である。
【図54】そのカラープリンタの光学ユニットを示す断面構成図である。
【図55】そのカラープリンタの感光体ユニットおよび現像ユニットの断面図である。
【図56】そのカラープリンタの感光体ユニットの駆動機構を示す斜視図である。
【図57】そのカラープリンタの定着ユニットを示す透視斜視図である。
【図58】定着ユニットの一部の断面図である。
【図59】そのカラープリンタの給紙部の構成を示す断面図である。
【図60】給紙ユニットを駆動する構成を示す斜視図である。
【図61】音質評価に用いた卓上型画像形成装置の概略を示す断面構成図である。
【図62】その画像形成装置のプロセスカートリッジの構成例を示す断面図である。
【図63】帯電ローラの構成を示す説明図である。
【図64】音質評価に用いた中速の画像形成装置の概略を示す断面構成図である。
【図65】音質評価に用いた大型画像形成装置の概略を示す断面構成図である。
【図66】騒音対策を施す前のドラム駆動機構の斜視図である。
【図67】そのドラム駆動機構のモータ取り付け部を説明するための模式図である。
【図68】ドラム駆動機構のモータ取り付け部に施す騒音対策を示す模式図である。
【図69】騒音対策を施したドラム駆動機構の斜視図である。
【図70】そのモータ取り付け部を示す平面図である。
【図71】給紙用のステッピングモータのロータの動きを説明するための図である。
【図72】ステッピングモータのマイクロステップ駆動の1つである1−2相励磁のシーケンスを示す図である。
【図73】ポリゴンミラーモータが発する音を説明するための部分断面図である。
【図74】帯電音対策がなされた感光体ユニットの断面図である。
【図75】感光体ドラム内に配置される制振部材を示す斜視図である。
【図76】通常のプリント時とフリーラン時の騒音を測定して周波数分析した結果を示すグラフである。
【図77】その分析結果から得られる各周波数帯域の音圧レベル差を示すグラフである。
【図78】用紙摺動音低減対策について説明するための用紙搬送部の側面図である。
【図79】用紙搬送部に配置されたガイド部材を示す正面図である。
【図80】用紙が搬送される様子を示す用紙搬送部の側面図である。
【図81】騒音対策を施した案内部材を示す側面図である。
【図82】従来の案内部材を示す側面図である。
【図83】図65の画像形成装置における用紙搬送部の詳細構成を示す側面図である。
【図84】騒音未対策時における記録紙と可撓性シートとの関係を示す説明図である。
【図85】騒音対策を施した可撓性シートを取り付けた用紙搬送路の部分側面図である。
【図86】その正面図である。
【図87】図65の画像形成装置における給紙・駆動系の構成を示す説明図である。
【図88】その給紙・駆動系の制御例を示すフローチャートである。
【図89】中間クラッチ制御の改良前後における金属衝撃音の変化を示すグラフである。
【図90】カラー28ppm機の前面対策後の騒音の分析結果を示すグラフである。
【図91】カラー28ppm機の前側面の周波数分布を対策前後で比較したグラフである。
【図92】カラー28ppm機の後側面の周波数分布を対策前後で比較したグラフである。
【図93】カラー28ppm機の左側面の周波数分布を対策前後で比較したグラフである。
【図94】カラー28ppm機の右側面の周波数分布を対策前後で比較したグラフである。
【符号の説明】
【0386】
60 防振ゴムマウント
65 モータブラケット
42 ドラム駆動モータ
74 制振部材
78 用紙案内部材
100 カラープリンタ(複数モードを有する画像形成装置)
200 モノクロプリンタ(卓上型画像形成装置)
300 胴内排紙型複写機(中速の画像形成装置)
400 ADF付複写機(大型画像形成装置)
501 被測定機器
503 ダミーヘッド
504 耳の位置(収音位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置が画像形成時に発する音を評価する方法であって、
画像形成装置が画像形成時に発する複数種類の音に対して任意の2音を取りだして一対比較法による評価を行い、
該評価による2音の不快さの距離を目的変数とし、
前記2音を一対比較した時の、2音の音響物理量の差の値に対して、主成分分析から因子分析した結果の複数の因子を説明変数として重回帰分析を行ない、因子の線形結合によって2音の不快さの距離を予測する下記の式(A)を導出し、
【数1】

該式(A)より、一対比較実験に用いた全ての音(母集団)の音響物理量の平均値である音は、音質評価値α=0と定義することにより、
単独の音の不快さを予測する音質評価式を導出し、
該導出した音質評価式を用いて音質評価を行う
ことを特徴とする音質評価方法。
【請求項2】
画像形成装置の製造方法であって、
画像形成装置が画像形成時に発する複数種類の音に対して任意の2音を取りだして一対比較法による評価を行い、
該評価による2音の不快さの距離を目的変数とし、
前記2音を一対比較した時の、2音の音響物理量の差の値に対して、主成分分析から因子分析した結果の複数の因子を説明変数として重回帰分析を行ない、因子の線形結合によって2音の不快さの距離を予測する下記の式(A)を導出し、
【数1】

該式(A)より、一対比較実験に用いた全ての音(母集団)の音響物理量の平均値である音は、音質評価値α=0と定義することにより、
単独の音の不快さを予測する音質評価式を導出し、
該導出した音質評価式を用い、その音質評価式による音質評価が所定の条件を満たすよう装置各部を設計し、
当該設計内容にしたがって画像形成装置を製造する
ことを特徴とする画像形成装置の製造方法。
【請求項3】
画像形成装置の改造方法であって、
画像形成装置が画像形成時に発する複数種類の音に対して任意の2音を取りだして一対比較法による評価を行い、
該評価による2音の不快さの距離を目的変数とし、
前記2音を一対比較した時の、2音の音響物理量の差の値に対して、主成分分析から因子分析した結果の複数の因子を説明変数として重回帰分析を行ない、因子の線形結合によって2音の不快さの距離を予測する下記の式(A)を導出し、
【数1】

該式(A)より、一対比較実験に用いた全ての音(母集団)の音響物理量の平均値である音は、音質評価値α=0と定義することにより、
単独の音の不快さを予測する音質評価式を導出し、
該導出した音質評価式を用いて改造対象となる画像形成装置の発する音の音質評価を行い、
当該音質評価結果に基づいて改造対象となる前記画像形成装置の構成を改造する
ことを特徴とする画像形成装置の改造方法。
【請求項4】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置であって、
画像形成装置端面から略1m離れた収音位置で収音される前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、
以下の(a)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(b)を満たす
【数2】

【数3】

ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置であって、
画像形成装置端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、
以下の(c)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(b)を満たす
【数4】

【数3】

ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置であって、
画像形成装置端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、
以下の(a)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(d)を満たす
【数2】

【数5】

ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置であって、
画像形成装置端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、
以下の(c)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(d)を満たす
【数4】

【数5】

ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
複数の画像形成速度あるいは複数の動作モードを有し、
前記画像形成速度あるいは動作モードに関わりなく、前記音質評価値Sが前記条件を満たすことを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記収音位置は、ISO(International Organization For Standardization)7779に規定された近在者位置であり、少なくとも装置前面方向の音の収音結果から算出される前記音質評価値Sが前記条件を満たすことを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記収音位置は、ISO(International Organization For Standardization)7779に規定された近在者位置であり、装置前後左右の4方向の音の収音結果の各々から算出される前記音質評価値Sの平均値が前記条件を満たすことを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記収音位置は、ISO(International Organization For Standardization)7779に規定された近在者位置であり、少なくとも装置前後左右のいずれか1方向の音の収音結果から算出される前記音質評価値Sが前記条件を満たすことを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記収音位置は、ISO(International Organization For Standardization)7779に規定された近在者位置であり、装置前後左右の4方向の音の収音結果の各々から算出されるすべての前記音質評価値Sが前記条件を満たすことを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記画像形成対象シートへの画像形成時に当該装置が発する音を低減させる低減手段を具備することを特徴とする、請求項4〜11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記画像形成対象シートへの画像形成時に所定の部位を駆動するステッピングモータと、該ステッピングモータを保持するブラケット部材とをさらに具備し、
前記低減手段は、前記ステッピングモータと前記ブラケット部材との間に介在配置される弾性体を有していることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記画像形成対象シートへの画像形成時に所定の部位を駆動するステッピングモータをさらに具備し、
前記低減手段は、前記ステッピングモータをマイクロステップ駆動させる駆動制御手段を有していることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記画像形成対象シートへの画像形成時に所定の部位を駆動するモータをさらに具備し、
前記低減手段は、前記モータ近傍に配置されるヘルムホルツ共鳴器を有していることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項17】
中空部を有する円柱状の像担持体と、該像担持体の表面を帯電させる帯電手段とをさらに具備し、
前記低減手段は、前記像担持体の中空部に当該像担持体の振動を抑制する制振部材を有することを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記画像形成対象シートを所定の搬送経路に沿って案内する可撓性シートからなる案内部材であって、搬送される前記画像形成対象シートに接する端部が前記可撓性シートの折り曲げ部分となっている案内部材をさらに具備することを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記画像形成対象シートへの画像形成に用いられるトナーがワックスを含むトナーであることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記低減手段は、複数の給紙段を有する給紙搬送路それぞれに設けられた電磁クラッチの動作を、使用する給紙段以上の電磁クラッチとするように制御する給紙搬送制御手段でなることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項21】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を製造する方法であって、
製造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、
以下の(a)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(b)を満たすよう装置各部を設計する設計ステップと、
【数2】

【数3】

前記設計ステップによってなされた設計内容にしたがって画像形成装置を製造する製造ステップと
を具備することを特徴とする画像形成装置の製造方法。
【請求項22】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を製造する方法であって、
製造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、
以下の(c)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(b)を満たすよう当該装置各部を設計する設計ステップと、
【数4】

【数3】

前記設計ステップによってなされた設計内容にしたがって画像形成装置を製造する製造ステップと
を具備することを特徴とする画像形成装置の製造方法。
【請求項23】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を製造する方法であって、
製造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、
以下の(a)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(d)を満たすよう当該装置各部を設計する設計ステップと、
【数2】

【数5】

前記設計ステップによってなされた設計内容にしたがって画像形成装置を製造する製造ステップと
を具備することを特徴とする画像形成装置の製造方法。
【請求項24】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を製造する方法であって、
製造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で収音される、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、
以下の(c)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(d)を満たすよう当該装置各部を設計する設計ステップと、
【数4】

【数5】

前記設計ステップによってなされた設計内容にしたがって画像形成装置を製造する製造ステップと
を具備することを特徴とする画像形成装置の製造方法。
【請求項25】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を改造する方法であって、
改造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音を収音する収音ステップと、
前記収音ステップでの収音結果から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、
以下の(a)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(b)を満たすよう当該装置の構成を改造する改造ステップと
【数2】

【数3】

を具備することを特徴とする画像形成装置の改造方法。
【請求項26】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を改造する方法であって、
改造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音を収音する収音ステップと、
前記収音ステップでの収音結果から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
1分間あたりの前記画像形成対象シート(A4サイズ横方向)の出力数値(ppm)とを用い、
以下の(c)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(b)を満たすよう当該装置の構成を改造する改造ステップと
【数4】

【数3】

を具備することを特徴とする画像形成装置の改造方法。
【請求項27】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を改造する方法であって、
改造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音を収音する収音ステップと、
前記収音ステップでの収音結果から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、
以下の(a)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(d)を満たすよう当該装置の構成を改造する改造ステップと
【数2】

【数5】

を具備することを特徴とする画像形成装置の改造方法。
【請求項28】
画像形成対象シートに対して画像を形成する画像形成装置を改造する方法であって、
改造対象となる画像形成装置の端面から略1m離れた収音位置で、前記画像形成対象シートに対して画像形成を行うときに当該画像形成装置が発する音を収音する収音ステップと、
前記収音ステップでの収音結果から得られる音響物理量の音圧レベル値,ラウドネス値,シャープネス値,トーナリティ値,インパルシブネス値と、
画像形成装置の音の一対比較結果から得られる不快さの因子成分と、
前記一対比較実験に用いた全供試音の音響物理量の平均値である、音圧レベル平均値,ラウドネス平均値,シャープネス平均値,トーナリティ平均値,インパルシブネス平均値と、
前記画像形成対象シートに対する画像形成速度(v:mm/s)とを用い、
以下の(c)式により算出される音質評価値Sが、以下の条件(d)を満たすよう当該装置の構成を改造する改造ステップと
【数4】

【数5】

を具備することを特徴とする画像形成装置の改造方法。


【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【図84】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図88】
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【図89】
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【図90】
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【図91】
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【図92】
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【図93】
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【図94】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−177682(P2006−177682A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368518(P2004−368518)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】