説明

画像形成装置

【課題】像担持体にトナーを供給し、現像装置や像担持体表面をリフレッシュするリフレッシュ工程に続いて、複数の色によるカラー印刷を行う場合でも、色ずれの発生を防止することができ、高品質な画像形成を遂行することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、用紙Pへの非転写期間内に、感光体ドラム21にトナーを供給して現像装置60のリフレッシュ工程を実行するに際し、トナー像の一次転写時とは異なる極性のバイアス電圧を一次転写部30に印加することで、感光体ドラム21に供給したトナーを、中間転写ベルト8に転写することなく一次転写部30を通過させた後、バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替え、所定時間経過後、画像形成動作を開始する。これにより、リフレッシュ工程時、感光体ドラム21に引き寄せられるような形になった中間転写ベルト8のテンションを、正常に回復させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタに代表される電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体として感光体ドラムが広く用いられている。感光体ドラムを用いた一般的な画像形成動作は以下のようである。感光体ドラムの表面は帯電装置により所定電位で一様に帯電せしめられ、そこに露光装置のLED光等を照射することにより部分的に電位が光減衰して原稿画像の静電潜像が形成される。そして、この静電潜像を現像装置で現像することによってトナー像が形成される。用紙へのトナー像の転写後、感光体ドラムの表面においては、残留したトナーがクリーニング装置によりクリーニングされ、次回の画像形成動作に備えて除電装置により除電光が照射されて帯電電荷の除去が行われる。
【0003】
ここで、画像形成装置において、連続して低濃度印刷を行うと、現像装置に収められたトナーの帯電量が異常に高くなることがある。これにより、トナーは、現像装置の現像ローラから離れ難くなり、感光体ドラムに移動する量が減少してしまう恐れがある。そして、そのまま印刷を行うと画像濃度が低下するといった画像不良の問題が発生する。
【0004】
このような問題を解決し、現像装置の性能維持を図るべく、用紙への非転写期間に、現像装置から感光体ドラムにトナーを供給して現像装置をリフレッシュする手法が提案され、その例を特許文献1、及び特許文献2に見ることができる。特許文献1、及び特許文献2に記載された画像形成装置では、用紙表面に対するトナー占有率(印字密度)が低くなること等を条件として、現像装置からトナーを強制排出し、現像装置のリフレッシュ工程を実行するようにしている。
【0005】
一方、感光体としてアモルファスシリコン感光体を用いた場合には、その感光体表面に、帯電装置の放電によって放電生成物が付着し易いことが知られている。この放電生成物が水分を吸収すると、感光体表面の電気抵抗が低下して、静電潜像を乱す像流れという不具合が発生することがある。このため、トナーに微量の研磨剤を混入したり、トナー粒子自体が研磨効果の高い形状であるのものを利用したりして、回転部材である研磨ローラとクリーニングブレードとを併用して感光体表面に付着した残留トナーを除去するとともに、トナーを研磨ローラ表面に保持させ、このトナーによって感光体表面に付着した放電生成物を研磨するようにしてクリーニングする方法が知られている。
【0006】
このように、研磨ローラを用いて感光体ドラム表面に付着した放電生成物の除去を行うクリーニング方法の一例を、特許文献3に見ることができる。特許文献3に記載された画像形成装置は、用紙への非転写期間に、現像装置から感光体ドラムにトナーを供給し、感光体表面を研磨してリフレッシュするリフレッシュ工程を実行する。
【特許文献1】特開2000−310909号公報(第3−7頁、図1−3)
【特許文献2】特開2005−55842号公報(第12−14頁、図5)
【特許文献3】特開平11−3014号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載された画像形成装置は、異なる色のトナー像を形成する4台の画像形成部と、中間転写ベルト(無端状ベルト)とを備えた、所謂タンデム方式の画像形成装置であって、前記リフレッシュ工程時、現像装置から強制排出し、感光体ドラムに供給したトナーは、中間転写ベルトに転写することなく感光体ドラム用のクリーニング装置によって回収される。ここで、特許文献2に記載されたような、中間転写ベルトを備えたタンデム式画像形成装置では、トナー像を感光体ドラムから中間転写ベルトに一次転写する時、トナーを中間転写ベルトへ移動させるための一次転写バイアスが一次転写部に印加される。そして、リフレッシュ工程時には、トナーを中間転写ベルトに移動させないので、一次転写バイアスとは異なる極性のバイアス電圧が一次転写部に印加される。
【0008】
リフレッシュ工程時、一次転写バイアスとは異なる極性のバイアス電圧を一次転写部に印加すると、トナーが感光体ドラムに引き寄せられる、すなわち中間転写ベルトが感光体ドラムに引き寄せられるような形になる(図6参照)。これにより、中間転写ベルトのテンションが変化してしまう可能性がある。したがって、現像装置や感光体ドラムのリフレッシュ工程に引き続いて通常の画像形成動作を実行する場合、中間転写ベルトの回転に不具合が生じたまま、トナー像の中間転写ベルトへの一次転写が行われる恐れがある。その結果、タンデム式画像形成装置で複数の色によるカラー印刷を行う時、中間転写ベルトの回転方向に色ずれが発生し、画像不良が発生するという問題が起こる。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、中間転写体に沿って一列にして配置された複数の画像形成部を備え、トナー像を、像担持体から中間転写体に一次転写し、中間転写体から用紙に二次転写する画像形成装置において、現像装置及び/または像担持体表面のリフレッシュ工程を実行する場合であっても、そのリフレッシュ工程に続いて複数の色によるカラー印刷を行う際、色ずれの発生を防止することができ、高品質な画像形成を遂行することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、中間転写体に沿って一列にして配置された複数の画像形成部を備え、各画像形成部の像担持体表面に形成したトナー像を、像担持体から中間転写体に一次転写し、中間転写体から用紙に二次転写するとともに、用紙への非転写期間内には、現像装置から前記像担持体にトナーを供給して、現像装置及び/または像担持体表面をリフレッシュするリフレッシュ工程を実行する画像形成装置において、前記トナー像の一次転写時とは異なる極性のバイアス電圧を一次転写部に印加することにより、前記リフレッシュ工程時に前記像担持体に供給したトナーを、前記中間転写体に転写することなく一次転写部を通過させた後、前記バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替え、所定時間経過後、画像形成動作を開始することとした。
【0011】
また、上記構成の画像形成装置において、前記所定時間は、前記リフレッシュ工程の後に、前記バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替えてから、切り替えた時のその一次転写部に位置する前記中間転写体の箇所が、前記複数の画像形成部のうち、中間転写体回転方向最下流の画像形成部の一次転写部を通過するまでの時間以上の時間であることとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、中間転写体に沿って一列にして配置された複数の画像形成部を備え、各画像形成部の像担持体表面に形成したトナー像を、像担持体から中間転写体に一次転写し、中間転写体から用紙に二次転写するとともに、用紙への非転写期間内には、現像装置から像担持体にトナーを供給して、現像装置及び/または像担持体表面をリフレッシュするリフレッシュ工程を実行する画像形成装置において、トナー像の一次転写時とは異なる極性のバイアス電圧を一次転写部に印加することにより、リフレッシュ工程時に像担持体に供給したトナーを、中間転写体に転写することなく一次転写部を通過させた後、前記バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替え、所定時間経過後、画像形成動作を開始することとしたので、リフレッシュ工程時、像担持体に引き寄せられるような形になった中間転写体のテンションを、正常に回復させた状態で、画像形成動作を開始することが可能である。これにより、現像装置及び/または像担持体表面のリフレッシュ工程に続いて複数の色によるカラー印刷を行う場合であっても、色ずれの発生を防止することができる。したがって、高品質な画像形成を遂行することが可能な画像形成装置を得ることができる。
【0013】
また、前記所定時間は、リフレッシュ工程の後に、バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替えてから、切り替えた時のその一次転写部に位置する中間転写体の箇所が、複数の画像形成部のうち、中間転写体回転方向最下流の画像形成部の一次転写部を通過するまでの時間以上の時間であることとしたので、リフレッシュ工程時、像担持体に引き寄せられるような形になった中間転写体のテンションを正常に回復させ、且つリフレッシュ工程に掛かる時間をできるだけ短時間に収めることができる。これにより、現像装置のリフレッシュ工程に続いて複数の色によるカラー印刷を行う際、色ずれの発生を防止することに加えて、画像形成装置の高速印刷性能の低下を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図1〜図7に基づき説明する。
【0015】
最初に、本発明の実施形態に係る画像形成装置について、図1、及び図2を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は画像形成装置の模型的垂直断面正面図、図2は図1の画像形成装置の画像形成部の配置を示す模型的部分拡大図である。この画像形成装置は、中間転写ベルトを用いてトナー像を用紙に転写するカラー印刷タイプのものである。
【0016】
図1に示すように、画像形成装置1の本体2の内部下方には、用紙カセット3が配置されている。用紙カセット3は、その内部に、印刷前のカットペーパー等の用紙Pを積載して収容している。そして、この用紙Pは、図1において用紙カセット3の左上方に向けて、1枚ずつ分離されて送り出される。用紙カセット3は、本体2の前面側から水平に引き出すことが可能である。
【0017】
本体2の内部であって、用紙カセット3の左方には、第1用紙搬送部4が備えられている。第1用紙搬送部4は、本体2の左側面に沿って略垂直に形設されている。そして、第1用紙搬送部4は、用紙カセット3から送り出された用紙Pを受け取り、本体2の左側面に沿って垂直上方に二次転写部40まで搬送する。
【0018】
用紙カセット3の上方であって、第1用紙搬送部4が形設された本体2の左側面とは反対側の側面である右側面の箇所には、手差し給紙部5が備えられている。手差し給紙部5には、用紙カセット3に入っていないサイズの用紙Pや、厚紙、OHPシートのように1枚ずつ送り込みたいものが載置される。
【0019】
手差し給紙部5の左方には、第2用紙搬送部6が備えられている。第2用紙搬送部6は、用紙カセット3のすぐ上方にあって、手差し給紙部5から第1用紙搬送部4まで略水平に延び、第1用紙搬送部4に合流している。そして、第2用紙搬送部6は、手差し給紙部5から送り出された用紙P等を受け取り、略水平に第1用紙搬送部4まで搬送する。
【0020】
一方、画像形成装置1は、外部コンピュータ(図示せず)から原稿画像データを受信する。この画像データの情報は、第2用紙搬送部6の上方に配置された露光手段であるレーザ照射部7に送られる。レーザ照射部7により、画像データに基づいて制御されたレーザ光Lが、画像形成部20に向かって照射される。
【0021】
レーザ照射部7の上方には計4台の画像形成部20が、さらにそれら各画像形成部20の上方には中間転写体を無端ベルトの形で用いた中間転写ベルト8が備えられている。中間転写ベルト8は、複数のローラに巻き掛けられて支持され、図示しない駆動装置により図1において時計方向に回転する。
【0022】
4台の画像形成部20は、図1に示すように、中間転写ベルト8の回転方向に沿って、回転方向上流側から下流側に向けて一列にして配置された所謂タンデム方式である。4台の画像形成部20とは、上流側から順に、マゼンタ用の画像形成部20M、シアン用の画像形成部20C、イエロー用の画像形成部20Y、及びブラック用の画像形成部20Bである。4台の画像形成部20は、図2に示すように、互いに90mmの間隔で配置されている。これらの画像形成部20には、各色に対応する現像剤供給容器及び搬送手段(図示せず)により、現像剤(トナー)が補給される。なお、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、「M」「C」「Y」「B」の識別記号は省略するものとする。
【0023】
各画像形成部20では、露光手段であるレーザ照射部7によって照射されたレーザ光Lにより原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。トナー像は、各画像形成部20の上方に備えられた一次転写部30で、中間転写ベルト8表面に一次転写される。そして、中間転写ベルト8の回転とともに、所定のタイミングで各画像形成部20のトナー像が中間転写ベルト8に転写されることにより、中間転写ベルト8表面にはマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
【0024】
中間転写ベルト8が用紙搬送路に懸かる箇所には、二次転写ローラ41を備えた二次転写部40が配置されている。中間転写ベルト8表面のカラートナー像は、第1用紙搬送部4によって同期をとって送られてきた用紙Pに、中間転写ベルト8と二次転写ローラ41とが圧接して形成される二次転写ニップ部にて転写される。
【0025】
二次転写後、中間転写ベルト8表面に残留するトナーは、中間転写ベルト8に対してマゼンタ用の画像形成部20Mの回転方向上流側に設けられた中間転写ベルト8用のクリーニング装置9によってクリーニング、回収される。
【0026】
二次転写部40の上方には、定着部10が備えられている。二次転写部40にて未定着トナー像を担持した用紙Pは、定着部10へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0027】
定着部10の上方には、分岐部11が備えられている。定着部10から排出された用紙Pは、両面印刷を行わない場合、分岐部11から画像形成装置1の上部に設けられた用紙排出部12に排出される。
【0028】
分岐部11から用紙排出部12に向かって用紙Pが排出されるその排出口部分は、スイッチバック部13としての機能を果たす。両面印刷を行う場合には、このスイッチバック部13において、定着部10から排出された用紙Pの搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、分岐部11、定着部10の左方、及び二次転写部40の左方を通って下方に送られ、再度第1用紙搬送部4を経て二次転写部40へと送られる。
【0029】
続いて、画像形成装置1の画像形成部20周辺の詳細な構成について、図3を用いて説明する。図3は、画像形成部周辺を示す垂直断面部分拡大図である。なお、4色の各画像形成部20は構造が共通するので、前述のように「M」「C」「Y」「B」の識別記号は省略するものとする。
【0030】
図3に示すように、画像形成部20には、その中心に像担持体である感光体ドラム21が備えられている。そして、感光体ドラム21の近傍には、その回転方向に沿って順に、帯電装置50、現像装置60、除電装置70、及びドラム用のクリーニング装置80が配置されている。一次転写部30は、感光体ドラム21の回転方向に沿って、現像装置60と除電装置70との間に設けられている。
【0031】
感光体ドラム21は、画像形成装置1内の用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向、すなわち図3の紙面奥行き方向に延び、その軸線方向を水平にして配置されている。感光体ドラム21は、アルミニウム等により構成される導電性ローラ状基体の外側に、真空蒸着等によって無機光導電性材料であるアモルファスシリコンの感光層を設けた無機感光体のドラムで、直径が30mmである。好適な状態の静電潜像を形成して現像性能を向上させるため、感光層の厚さを25μm以下、さらに20μm以下にすることがより一層好ましい。そして、感光体ドラム21は、図示しない駆動装置によって、その周速度が用紙搬送速度(150mm/s)とほぼ同じになるように回転せしめられている。
【0032】
帯電装置50は、そのハウジング51の内側に、感光体ドラム21に接触する帯電ローラ52を備えている。帯電ローラ52は、所定の圧力で感光体ドラム21に圧接し、感光体ドラム21の回転に従って回転する。この帯電ローラ52により、感光体ドラム21の表面が所定の極性及び電位で一様に帯電せしめられる。なお、ハウジング51内には、感光体ドラム21に対して帯電ローラ52を隔てた位置にクリーニングブラシ53が備えられている。
【0033】
現像装置60は、ハウジング61の内側に、攪拌スクリュー62、供給スクリュー63、磁気ローラ64、穂切りブレード65、及び現像ローラ66を備えている。この現像装置60では、トナーと磁性キャリアとで構成される二成分現像剤が使用される。
【0034】
攪拌スクリュー62、及び供給スクリュー63は、図3において現像装置60の下部に配置されている。現像剤は、現像剤供給容器(図示せず)に収容され、現像装置60の箇所まで搬送されて、攪拌スクリュー62の箇所に補給される。攪拌スクリュー62は、トナーと磁性キャリアとで構成される現像剤を撹拌し、所定のレベルにまで帯電させる。そして、供給ローラ63が、帯電した現像剤を、その上方に設けられた磁気ローラ64に供給する。
【0035】
磁気ローラ64は、供給ローラ63のすぐ上方に配置されている。供給ローラ63から受け取り、磁気ローラ64表面に付着した現像剤は、その表面で磁気ブラシを構成する。磁気ブラシは、磁気ローラ64の回転に従って、磁気ローラ64の近傍に設けられた穂切りブレード65により、所定の半径方向長さに設定される。磁気ローラ64は、この磁気ブラシにより、現像ローラ66に対して、現像剤のうちトナーのみを供給するとともに、現像に使用されなかったトナーを回収する。現像後、現像ローラ66表面に残留したトナーを残すことなく確実に回収するため、磁気ローラ64の軸線方向長さは、現像ローラ66のそれより長くなっている。
【0036】
現像ローラ66は、磁気ローラ64のすぐ上方であって、磁気ローラ64に対して所定の間隙を設けて対面配置されている。現像ローラ66は、また、感光体ドラム21に対しても所定の間隙を設けて対面配置されている。現像ローラ66には、磁気ローラ64表面の現像剤で構成された磁気ブラシにより、トナーのみがその表面に供給される。そして、現像ローラ66の表面に、適正な厚さのトナー薄層が形成される。
【0037】
なお、現像ローラ66、及び磁気ローラ64には、所定のバイアス電圧が印加される。現像ローラ66には磁気ローラ64よりも低いバイアス電圧が印加されるので、その電位差により、トナーのみの薄層が現像ローラ66表面に形成される。電位差は、100〜350Vが適切である。現像ローラ66は、その表面のトナー薄層でもって、感光体ドラム21表面に形成された静電潜像を現像する。この時、現像ローラ66と感光体ドラム21との間では、直流と交流とを重畳させたバイアス電圧を印加する。トナーの飛散を防止するため、交流電圧は現像の直前に印加する。バイアス電圧の直流成分は150V以下、交流成分は500〜2000V、周波数1〜4kHzである。
【0038】
現像に使用されず、現像ローラ66表面に残留したトナーは、磁気ローラ64と対面する箇所において磁気ローラ64に回収される。
【0039】
ここで、トナーの入れ替えを効率的に推進する方法として、現像ローラ66と磁気ローラ64との間に周速度差を設けている。この周速度差は、1.0倍〜2.0倍に設定することにより、適正なトナー濃度が得られる均一なトナー層が得られるとともに、円滑にトナーを回収することが可能となる。
【0040】
また、現像剤に含有されるキャリアとしては、体積固有抵抗1010Ωcm、飽和磁化65emu/g、平均粒径45μmのコーティングフェライトキャリアを使用した。現像剤には、トナーの供給と回収の役割を有する、106Ωcm〜1013Ωcmの抵抗のキャリアを用いる。そしてこのキャリアにより、現像ローラ66と磁気ローラ64との間で、現像に必要なトナーを現像ローラ66に供給するとともに、現像後、現像ローラ66に強固に静電的に付着したトナーを磁気ブラシで引き剥がす必要がある。またこの時、トナーとの接点を増やすため、50μm以下の小径のキャリアを用いることが好ましい。
【0041】
一次転写部30には、中間転写ベルト8を介して感光体ドラム21に接触する一次転写ローラ31が設けられている。一次転写ローラ31は、駆動装置を有することなく、中間転写ベルト8に接触することによって、中間転写ベルト8の回転に従って回転する。また、一次転写ローラ31には、必要に応じて、感光体ドラム21やトナーの帯電極性とは異なる極性であって、マイナス500〜マイナス1000Vの一次転写バイアスが印加される。
【0042】
なお、中間転写ベルト8は、図1に示すように、複数のローラに巻き掛けられ、支持されている。中間転写ベルト8は、合成樹脂からなる基層表面にゴム層を積層した弾性ベルトで構成される。材質としては、基層にポリフッ化ビニリデン(PVDF)とクロロプレンゴム(CR)、コーティングにシリコンとウレタン、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とウレタンを使用している。
【0043】
除電装置70は、感光体ドラム21の回転方向に沿って、一次転写部30のさらに下流側に配置されている。除電装置70は、LED(発光ダイオード)71と、反射板72とで構成されている。LED71は、クリーニング装置80のハウジング81の上面に取り付けられている。LED71の代わりに、EL(エレクトロルミネッセンス)光源、蛍光灯等を用いることもできる。反射板72は、LED71の上方に、LED71をカバーするように設けられている。除電装置70は、LED71の除電光を感光体ドラム21に照射することにより、その表面の帯電電荷を除去する。
【0044】
クリーニング装置80は、そのハウジング81の内部に、クリーニング部材であるクリーニングローラ82、クリーニングブレード83、スクレーパ84、及び排出スクリュー85を備えている。
【0045】
クリーニングローラ82、及びクリーニングブレード83は、感光体ドラム21とほぼ同じ軸線方向長さを有し、感光体ドラム21に接触するように設けられている。感光体ドラム21表面のトナー像が中間転写ベルト8に一次転写された後、クリーニングローラ82とクリーニングブレード83とが感光体ドラム21表面に残留したトナー等の付着物を除去してクリーニングする。スクレーパ84は、図2においてクリーニングローラ82に上方から接触させて設けてられ、クリーニングローラ82表面に付着したトナーのうち余分なものを除去して、トナー層を均一にする。このトナー層により、クリーニングローラ82は感光体ドラム21表面を研磨する。感光体ドラム21表面から除去されたトナーは、重力の作用や、クリーニングローラ82の回転に従って排出スクリュー85の方へと送られ、排出スクリュー85によりハウジング81の外部へと搬送される。
【0046】
上記のような画像形成装置1は、現像装置60の性能維持のため、用紙Pへの非転写期間内で、現像装置60から感光体ドラム21に適量のトナーを供給して現像装置60をリフレッシュするリフレッシュ工程を実行する。また同様に、画像形成装置1は、感光体ドラム21表面に付着する放電生成物等の付着物をクリーニングするため、用紙Pへの非転写期間内で、現像装置60から感光体ドラム21に適量のトナーを供給して感光体ドラム21表面をリフレッシュするリフレッシュ工程を実行する。これらのリフレッシュ工程では、現像装置60から感光体ドラム21表面に、ドラム軸線方向に延びる所定幅、すなわちドラム回転方向に100mmの線状にトナーが供給される。
【0047】
続いて、これら現像装置60や感光体ドラム21表面のリフレッシュ工程時の動作について、図3に加えて、図4〜図6を参照しつつ説明する。図4はリフレッシュ工程時の動作を示すフローチャート、図5は感光体ドラムと一次転写部の制御チャート、図6はリフレッシュ工程時の一次転写部の状態を示す模型的正面図である。なおここでは、現像装置60のリフレッシュ工程を例に掲げて説明するものとするが、感光体ドラム21表面のリフレッシュ工程でも同様の動作が実行される。
【0048】
画像形成装置1は、通常運転中、用紙表面に対するトナー占有率(印字密度)が低くなること等を条件として、用紙Pへの非転写期間内で、図4に示すように、現像装置のリフレッシュ工程を開始する(ステップ#101)。現像装置のリフレッシュ工程を開始すると、図5に示すように感光体ドラム21を回転駆動するドラムモータの電源がONとなり、感光体ドラム21の回転が開始される。
【0049】
図4に示すステップ#102では、現像装置リフレッシュ用のトナーが、感光体ドラム21に供給される。そして、ステップ#103に進み、一次転写部30では、図5に示すように、リフレッシュ用のバイアス電圧が印加される。これは、トナー像の一次転写時とは異なる極性であって、感光体ドラム21やトナーの帯電極性と同じ極性である、プラス500Vのバイアス電圧である。これにより、現像装置リフレッシュ用のトナーは、中間転写ベルト8に転写されることなく、感光体ドラム21表面に付着したまま一次転写部30を通過する。この時、一次転写部30では、図6に示すように、中間転写ベルト8が感光体ドラム21に引き寄せられるような形になる。
【0050】
その後、ステップ#104へ進み、現像装置リフレッシュ用のトナーは、クリーニング装置80のクリーニングローラ82、及びクリーニングブレード83によって回収される。ステップ#104による現像装置リフレッシュ用のトナーの回収を終えると、ステップ#105において、図5に示すように一次転写部30のバイアス電圧印加をOFF(0V)にして、現像装置60のリフレッシュ工程を終了する。
【0051】
続いてステップ#106に進むと、次回の通常の画像形成動作の開始に備えて、一次転写部30では、図5に示すように、バイアス電圧が一次転写時と同じ極性に切り替えて印加される。一次転写バイアスは、前述のように、マイナス500〜マイナス1000Vである。そして、ステップ#107に進み、画像形成部20は待機状態となる。待機期間は、図4のステップ#107及び図5に示すように、1.8秒である。この待機期間の設定根拠については、後に詳述する。
【0052】
1.8秒経過した後、ステップ#108に進み、画像形成部20は、次回の画像形成動作を開始し、通常の運転状態に入る。
【0053】
次に、上記現像装置60のリフレッシュ工程において、工程終了後、一次転写部30の転写バイアスを一次転写時と同じ極性に切り替えてから、画像形成動作を開始するまでの間の経過時間の設定について、図7を用いて説明する。図7は、バイアス電圧切り替え後の経過時間と最大色ずれ量との関係を示すグラフである。
【0054】
バイアス電圧切り替え後の経過時間に関して、リフレッシュ工程では、現像装置60から感光体ドラム21表面に、ドラム軸線方向に延びる所定幅、すなわちドラム回転方向に100mmの線状にトナーを供給した。そして、バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替えた後、図7に示すように、経過時間を0〜3.5秒の間で変化させ、4台の画像形成部20で所定の画像を形成した後の最大色ずれ量を計測した。
【0055】
図7によると、経過時間が1.7秒までは、最大色ずれ量が3ドット以上であることが分かる。そして、経過時間が1.8秒以上になると最大色ずれ量が1ドット、もしくは2ドットとなり、色ずれ量が低く抑えられていることが分かる。
【0056】
続いて、この1.8秒について考察すると、まず、図2に示すように、各画像形成部20の間隔は90mmであって、最も上流にあるマゼンタ用の一次転写部30Mから、最も下流にあるブラック用の一次転写部30Bまでの距離は、270mmである。
【0057】
用紙搬送速度、すなわち中間転写ベルト8の周速度は、前述のように150mm/sであるので、マゼンタ用の一次転写部30Mからブラック用の一次転写部30Bまでの、中間転写ベルト8の通過時間は1.8秒となる(=270/150)。したがって、バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替えてから、切り替えた時のそのマゼンタ用の一次転写部30Mに位置する中間転写ベルト8の箇所が、4台の画像形成部のうち、ベルト回転方向の最も下流にあるブラック用画像形成部20Bの一次転写部30Bを通過するまでの時間である1.8秒を、所定の経過時間とした。
【0058】
このようにして、中間転写ベルト8に沿って一列にして配置された複数の画像形成部20を備え、各画像形成部20の像担持体である感光体ドラム21表面に形成したトナー像を、感光体ドラム21から中間転写ベルト8に一次転写し、中間転写ベルト8から用紙Pに二次転写するとともに、用紙Pへの非転写期間内には、現像装置60から感光体ドラム21にトナーを供給して、現像装置60及び/または感光体ドラム21表面をリフレッシュするリフレッシュ工程を実行する画像形成装置1において、トナー像の一次転写時とは異なる極性のバイアス電圧を一次転写部30に印加することにより、リフレッシュ工程時に感光体ドラム21に供給したトナーを、中間転写ベルト8に転写することなく一次転写部30を通過させた後、前記バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替え、所定時間経過後、画像形成動作を開始するので、リフレッシュ工程時、感光体ドラム21に引き寄せられるような形になった中間転写ベルト8のテンションを、正常に回復させた状態で、画像形成動作を開始することが可能である。これにより、現像装置60及び/または感光体ドラム21表面のリフレッシュ工程に続いて複数の色によるカラー印刷を行う場合であっても、色ずれの発生を防止することができる。したがって、高品質な画像形成を遂行することが可能な画像形成装置1を得ることができる。
【0059】
また、前記所定時間は、リフレッシュ工程の後に、バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替えてから、切り替えた時のその一次転写部に位置する中間転写ベルト8の箇所が、複数の画像形成部20のうち、ベルト回転方向最下流のブラック用画像形成部20Bの一次転写部30Bを通過するまでの時間以上の時間であるので、リフレッシュ工程時、感光体ドラム21に引き寄せられるような形になった中間転写ベルト8のテンションを正常に回復させ、且つリフレッシュ工程に掛かる時間をできるだけ短時間に収めることができる。これにより、現像装置60のリフレッシュ工程に続いて複数の色によるカラー印刷を行う際、色ずれの発生を防止することに加えて、画像形成装置1の高速印刷性能の低下を防止することが可能になる。
【0060】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0061】
例えば、上記実施形態では、現像装置60に、感光体ドラム21に対面配置した現像ローラ66と、この現像ローラ66に対面配置した磁気ローラ64とを用い、二成分現像剤により磁気ローラ64の表面に磁気ブラシを形成し、次いでこの磁気ブラシにより現像ローラ66の表面にトナーの薄層を形成した後、このトナーの薄層により感光体ドラム21表面に形成した静電潜像をトナー像に現像する現像方式を採用しているが、現像方式はこれに限られるわけではなく、一成分現像剤による現像方式等、他の現像方式であっても構わない。
【0062】
また、上記実施形態において、隣接する画像形成部20の間隔や現像装置リフレッシュ用のトナーの供給長さ(ドラム軸線方向に延びる線の幅)として用いた数値は、一実施形態であってこれに限定されるわけではなく、他の長さであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、中間転写体と、この中間転写体に沿って一列にして配置された複数の画像形成部とを備え、現像装置及び/または像担持体表面のリフレッシュ工程を実行する画像形成装置において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】図1の画像形成部の配置を示す模型的部分拡大図である。
【図3】図1の画像形成部周辺を示す垂直断面部分拡大図である。
【図4】現像装置のリフレッシュ工程時の動作を示すフローチャートである。
【図5】感光体ドラムと一次転写部の制御チャートである。
【図6】リフレッシュ工程時の一次転写部の状態を示す模型的正面図である。
【図7】バイアス電圧切り替え後の経過時間と最大色ずれ量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成装置
8 中間転写ベルト(中間転写体)
20 画像形成部
21 感光体ドラム(像担持体)
30 一次転写部
31 一次転写ローラ
60 現像装置
64 磁気ローラ
66 現像ローラ
80 クリーニング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写体に沿って一列にして配置された複数の画像形成部を備え、各画像形成部の像担持体表面に形成したトナー像を、像担持体から中間転写体に一次転写し、中間転写体から用紙に二次転写するとともに、用紙への非転写期間内には、現像装置から前記像担持体にトナーを供給して、現像装置及び/または像担持体表面をリフレッシュするリフレッシュ工程を実行する画像形成装置において、
前記トナー像の一次転写時とは異なる極性のバイアス電圧を一次転写部に印加することにより、前記リフレッシュ工程時に前記像担持体に供給したトナーを、前記中間転写体に転写することなく一次転写部を通過させた後、前記バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替え、所定時間経過後、画像形成動作を開始することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定時間は、前記リフレッシュ工程の後に、前記バイアス電圧を一次転写時と同じ極性に切り替えてから、切り替えた時のその一次転写部に位置する前記中間転写体の箇所が、前記複数の画像形成部のうち、中間転写体回転方向最下流の画像形成部の一次転写部を通過するまでの時間以上の時間であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−3477(P2008−3477A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175314(P2006−175314)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】