説明

画像形成装置

【課題】 厚紙にトナー像を定着させる場合の生産性の低下を抑制しつつ、加熱体が異常昇温した場合にはこの加熱体への電力供給を遮断させることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 ヒータ305の温度を検知するサーミスタ606と、ヒータ305への電力供給を制御するCPU605と、ヒータ305によって60[℃]以上に加熱された状態が500[msec]続く場合に、このヒータ305への電力供給をオフするサーモスイッチ607と、ヒータ305によって50[℃]以上に加熱された状態が2[sec]続く場合に、このヒータ305への電力供給をオフし、その後49[℃]以下となると、このヒータ305への電力供給をオンするサーモスイッチ602とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置における定着装置の異常昇温を防止する制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した画像形成装置は、原画像に応じた静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像することでトナー像を形成する。このトナー像は紙などの記録材に転写され、定着器で熱と圧力が加えられることで記録材に定着される。
【0003】
定着器の熱源として使用されるハロゲンヒータやセラミックヒータなどの加熱体は、定着器に設けられた温度検知部の検知結果が所定の温度となるように、この加熱体への電力供給が制御されている。さらに、従来から、加熱体の温度が昇温し続けた場合には、この加熱体への電力供給を遮断することができる安全装置が設けられている。例えば、加熱体の温度が閾値を越えると電源と加熱体とをつなぐ電気接点を開放し、加熱体への電力供給を遮断するサーモスイッチが定着器に設けられている(例えば、特許文献1)。このサーモスイッチは、加熱体によって加熱される感熱部と、熱膨張率の異なる2枚の金属片が固着されたバイメタルと、電源とヒータとをつなぐ電力線に設けられた電気接点と、この電気接点を開閉するためのピンと、これらを収容するケースとから構成されている。サーモスイッチは、加熱体の熱が感熱部を介してバイメタルに伝わることで、このバイメタルが熱膨張率の差から反り返り、その作用によってピンが押し上げられ、電源と加熱体とをつなぐ電気接点を開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−102010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の画像形成装置は、従来のコピー用紙よりも坪量の大きい厚紙にも画像形成するニーズが高まっている。厚紙にトナー像を定着させる場合、定着器は、定着時温度を上昇させるか、又は、定着時温度が普通紙と同じままで、普通紙よりも遅い速度で厚紙を定着ニップ部に通過させる方法がある。
【0006】
前者の方法を用いる場合、サーモスイッチ自体が高温となってしまうため、このサーモスイッチの耐熱性を上げる必要がある。具体的には、サーモスイッチの感熱部と加熱体との間に熱容量の大きい部材を介在させて、このサーモスイッチに伝わる熱量を抑制する方法が考えられる。しかしながら、この構成とした場合、サーモスイッチの熱応答性が悪くなってしまう。そのため、加熱体が異常昇温した場合、熱容量の大きい部材を介在させたサーモスイッチでは、加熱体への電力供給を遮断するまでに時間を要してしまうという問題があった。
【0007】
また、後者の方法を用いる場合、トナー像を定着させる際の搬送速度を低下させているため、生産性が低下してしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明では、厚紙にトナー像を定着させる場合の生産性の低下を抑制しつつ、加熱体が異常昇温した場合にはこの加熱体への電力供給を遮断させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の画像形成装置は、トナー像を形成する像形成手段と、前記像形成手段により形成されるトナー像を記録材に定着させるためのヒータと、前記ヒータの温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の検知結果に基づき、前記ヒータの温度が所定温度となるように制御する制御手段と、前記ヒータへ電力を供給する電力線に直列に接続され、前記ヒータの加熱でもってオフすることにより前記ヒータへの電力供給を遮断する第1のスイッチ手段と、前記電力線に前記第1のスイッチ手段と直列に接続され、前記制御手段による前記ヒータの加熱でもってオフすることにより前記ヒータへの電力供給を遮断する第2のスイッチ手段と、を有し、前記第1のスイッチ手段は、前記ヒータが前記所定温度よりも高い温度まで異常昇温することにより、前記第1のスイッチ手段が第1の温度以上に加熱された状態で第1の時間続くとオフし、前記第2のスイッチ手段は、前記制御手段が前記ヒータを加熱させることにより、前記第2のスイッチ手段が前記第1の温度よりも低い第2の温度以上に加熱された状態で前記第1の時間よりも長い第2の時間続くとオフし、その後、第2の温度よりも低い第3の温度以下なるとオンする動作を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚紙にトナー像を定着させる場合の生産性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置を示す概略断面図
【図2】第1の実施形態の定着器を示す概略断面図
【図3】第1の実施形態の画像形成装置の制御ブロック図
【図4】第1の実施形態の定着器の制御回路を示す模式図
【図5】第1の実施形態のサーモスイッチを示す要部概略図
【図6】第1の実施形態のヒータのオンオフを切り替えるタイミングを示す図
【図7】第1の実施形態の画像形成処理を示すフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本実施形態の画像形成装置100の概略断面図である。本実施形態では、各色成分のトナー像を形成する4つの像形成部StY、StM、StC、StKが1列に配列された画像形成装置を用いる。
【0013】
各像形成部は、StYがイエローのトナー像を形成し、StMがマゼンタのトナー像を形成し、StCがシアンのトナー像を形成し、StKがブラックのトナー像を形成する。
【0014】
像形成部StYは、イエローの色成分のトナー像を担持する感光ドラム1Yと、この感光ドラム1Yを帯電する帯電器2Yと、感光ドラム1Yにイエローの色成分に対応した静電潜像を形成するため、感光ドラム1Yを露光する露光装置3Yを有している。さらに、像形成部StYは、感光ドラム1Y上に形成された静電潜像を、トナーを有する現像剤を用いてトナー像として顕像化する現像器4Yと、感光ドラム1Y上のトナー像を後述の中間転写ベルト6に転写する一次転写ローラ7Yを有している。また、像形成部StYは、トナー像を転写した後に感光ドラム1Y上に残留したトナーを除去するドラムクリーナ8Yも有している。なお、各像形成部StM、StC、StKはイエローのトナー像を形成する像形成部StYと同様の構成であるため、その構成の説明を省略する。
【0015】
前述の中間転写ベルト6は、トナー像が担持される像担持体であり、各像形成部StY、StM、StC、StKで形成された各色成分のトナー像を重ねて担持することでフルカラーのトナー像が形成される。
【0016】
また、中間転写ベルト6の周囲には、この中間転写ベルト6上のトナー像を紙などの記録材Pへ転写するための二次転写ローラ9、および、二次転写対向ローラ12が配設されている。さらに、中間転写ベルト6から記録材Pへと転写されずに残留したトナーを除去するベルトクリーナ11が配設されている。
【0017】
次に、本実施形態の画像形成装置100が、不図示の読取装置によって原稿を読み取ることにより生成する画像データや、PC等から入力される画像データに応じた画像を出力する画像形成動作について説明する。
【0018】
各像形成部StY、StM、StC、StKにおいて、先ず、帯電器2Y、2M、2C、2Kが感光ドラム1Y、1M、1C、1Kを一様に帯電する。次いで、露光装置3Y、3M、3C、3Kが各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに画像データの各色成分の濃度の値に応じた露光光を照射することで、この画像データの静電潜像が色成分毎に形成される。その後、感光ドラム1Y、1M、1C、1K上の静電潜像は現像器4Y、4M、4C、4Kによって各色成分のトナー像として顕像化される。
【0019】
感光ドラム1Y、1M、1C、1K上の各色成分のトナー像は、一次転写ローラ7Y、7M、7C、7Kの作用により中間転写ベルト6上に順次重ねて転写される。これにより、中間転写ベルト6上にはフルカラーのトナー像が形成される。また、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに残留したトナーは、ドラムクリーナ8Y、8M、8C、8Kによって除去される。
【0020】
中間転写ベルト6に転写されたトナー像は、二次転写ローラ9の作用により記録材Pに転写される。トナー像を担持した記録材Pは定着器10へと搬送され、このトナー像が熱と圧力によって定着される。また、二次転写ニップ部で記録材Pに転写されずに中間転写ベルト6に残留したトナーは、ベルトクリーナ11によって除去される。
【0021】
次に、前述の定着器10を図2の概略断面図に基づき説明する。定着器10は、定着フィルム301、加圧部材302、ヒータ305、加圧ローラ307を有している。加圧部材302は、定着フィルム301を介してヒータ305を加圧ローラ307に当接している。また、定着フィルム301が加圧ローラ307に当接することにより定着ニップ部が形成される。トナー像を担持した記録材Pは定着ニップ部を通過することによって、この定着ニップ部に作用する圧力と、ヒータ305が発する熱とによって、トナー像が定着される。なお、加圧ローラ307が矢印C方向へ回転駆動されることにより、定着フィルム301が矢印B方向へ従動回転する。また、矢印A方向は記録材Pが搬送される方向である。
【0022】
図3は、本実施形態の画像形成装置の制御ブロック図である。
図3において、CPU605は画像形成装置全体を制御する制御回路である。ROM810には、画像形成装置で実行する各種処理を制御するための制御プログラムが格納されている。また、RAM820は、CPU605が処理のために使用するシステムワークメモリである。
【0023】
ローラモータ306は、CPU605からの信号に応じて加圧ローラ307を駆動するためのモータである。
【0024】
サイリスタ600は、CPU605からの信号に応じてヒータ305への電力供給を制御する電力制御素子であり、CPU605からの信号に応じて通電比率が制御される。これにより、ヒータ305は、供給される電力に応じた熱量で発熱する。
【0025】
サーミスタ606は、ヒータ305の温度に応じた電圧を出力する。この出力電圧は、CPU605に入力されることによりヒータ305の温度に変換される。つまり、サーミスタ606は、ヒータ305の温度を検知する温度検知手段として機能する。なお、サーミスタ606はヒータ305の温度を精度良く検知するため、熱応答性が良いもの、つまり熱容量が小さい物が選択される。
【0026】
CPU605は、ROM810、又は、RAM820に格納された画像形成条件に基づいて、像形成部StY、StM、StC、StKに各色成分のトナー像を中間転写ベルト6上に形成させる。ここで、画像形成条件とは、図1の帯電器2Y、2M、2C、2Kの帯電電圧、図1の露光装置3Y、3M、3C、3Kの露光光量や露光時間、図1の現像器4Y、4M、4C、4Kの現像バイアスなどである。これら画像形成条件を変化させることにより、形成されるトナー像の濃度が変化する。
【0027】
表示部900は、画像形成装置の異常などを報知する液晶画面を有する。表示部900は、CPU605から異常を報知する信号が入力されることにより、液晶画面に異常の内容を表示する構成となっている。
【0028】
図4は、本実施形態の定着器10の制御回路を示す模式図である。
ヒータ305は、前述の加圧ローラ307(図2)の母線方向が長手方向となるセラミック基板の上に、この長手方向へ複数の発熱体が並んで形成された構成となっている。電源603がヒータ305の電極403にコネクタ601を介して接続されている。サーミスタ606は、ヒータ305の長手方向のほぼ中央に設けられ、このヒータ305の温度を検知する。CPU605は、サーミスタ606からの出力電圧をヒータ305の温度に変換し、この結果が目標温度となるように、サイリスタ600によってヒータ305への電力供給を制御する。また、本実施形態では、ヒータ305の過剰な温度上昇を防ぐために、2つのサーモスイッチ602、607が設けられている。サーモスイッチ602、607は、ヒータ305が加熱することによって被加熱部材604、608が温められると、その温度が伝わる構造となっている。また、サーモスイッチ602、607は、ヒータ305の電極403からコネクタ601を介して電源603に接続されている電力線に直列に設けられている。サーモスイッチ602、607は、被加熱部材604、608を介して、ヒータ305により加熱され、所定温度以上の状態が所定時間続くと、電源603とヒータ305とをつなぐ電力線を開放し、ヒータ305への電力供給を遮断させる。
【0029】
次に、サーモスイッチ602、607の構成について図5に基づき説明する。
図5(a)と図5(b)は、サーモスイッチ602の要部断面図を示したものである。図5(a)は電力線506と電力線507が電気接点504を介して接続されている様子を示している。サーモスイッチ602は、被加熱部材604(図4)と接触している感熱部500を介して、ケース501と、このケース501に内蔵されたバイメタル502が温められる。ここで、バイメタル502とは熱膨張率の異なる2枚の金属片を固着させたものである。バイメタル502は熱膨張率の違いによって所定の温度が所定時間続くと、図5(a)から図5(b)のように一方側へ反り返る。このバイメタル502の反り返りによってピン503が押し上げられ、電気接点504が開放される。なお、バイメタル502が反り返る温度と反り返るまでに要する時間とは、バイメタル502を構成する金属片の性質によって決まる。また、バイメタル502は、金属片の材料を選択することにより、図5(b)から図5(a)のように、バイメタル502が反り返った状態から元の状態へ復帰する温度を選択することもできる。
【0030】
ここで、本実施形態では、ヒータ305への電力供給が制御され、このヒータ305によって定着ニップ部が記録材にトナー像を定着させる温度となるまで加熱される。なお、記録材にトナー像を定着させる温度とは、240[℃]以上250[℃]以下の範囲であり、以降、この範囲を定着温度域と呼ぶ。サーモスイッチ602は、ヒータ305の加熱によって、定着ニップ部の温度が250[℃](定着温度域の上限値)となると、50[℃]以上の温度まで昇温する。また、サーモスイッチ602は、250[℃]まで加熱されたヒータ305への電力供給が遮断された後、このヒータ305の温度が240[℃](定着温度域の下限値)を下回る前に、サーモスイッチ602の温度が49[℃]以下まで低下する。
【0031】
そのため、本実施形態のサーモスイッチ602は、50[℃]以上の状態が2[sec]続くことにより電気接点を開放し、49[℃]以下となると、開放した電気接点を再び導通可能な状態へ復帰させるようにバイメタル502が選択されている。すなわち、サーモスイッチ602は、その温度に応じてヒータ305への電力供給をオンオフさせる復帰型のサーモスイッチといえる。
【0032】
一方、本実施形態では、ヒータ305が異常昇温した場合、このヒータ305によって定着ニップ部の温度が急激に上昇する。サーモスイッチ607は、ヒータ305が異常昇温することによって、定着ニップ部の温度が270[℃]となると、60[℃]以上の温度まで昇温する。このとき、前述の復帰型のサーモスイッチ602の温度は、急激な温度上昇に対応できず、50[℃]未満となっている。
【0033】
そのため、本実施形態のサーモスイッチ607は、60[℃]以上の状態が500[msec]続くことにより電気接点を開放し、−200[℃]以下となると、開放した電気接点を再び導通可能な状態へ復帰させるようにバイメタルが選択されている。なお、サーモスイッチ607は、画像形成装置が通常使用される状況において、その温度が−200[℃]まで低下することが無いため、一度開放した電気接点を再び導通可能な状態へ復帰させることが無い。すなわち、サーモスイッチ607は、通常使用される状況において、ヒータ305への電力供給をオフさせるだけの非復帰型のサーモスイッチといえる。
【0034】
なお、非復帰型のサーモスイッチ607の構成は、復帰型のサーモスイッチ602と同様の構成であるため、その構成の説明を省略する。以降、復帰型のサーモスイッチ602の電気接点には符号aを付して電気接点504aと称し、非復帰型のサーモスイッチ607の電気接点には符号bを付して電気接点504bと称する。
【0035】
次に、本実施形態のヒータ305の温度変化を図4と図6とに基づいて説明する。図6(a)は、サイリスタ600が正常に動作する場合のヒータ305のオンオフ動作と、サーミスタ606が検出したヒータ305の温度を示した図である。図6(a)において、Teは、サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度であり、Tsは、サーモスイッチ602、607の温度である。なお、サーモスイッチ602、607は、被加熱部材604、608が挿入されているため、ヒータ305により加熱されても、その温度上昇がヒータ305の温度上昇よりも緩やかとなっている。
【0036】
本実施形態のヒータ305は、先ず、サイリスタ600によって電源603から、通電比率100[%]で電力が供給される。ここで通電比率100[%]で供給される電力を最大電力とする。このとき、加圧ローラ307はサーミスタ606により検知される温度が70[℃]以上となるまで回転駆動されない。これは、ヒータ305の加熱によりローラモータ306のグリスを温めて加圧ローラ307を滑らかに回転駆動させるためである。次いで、サーミスタ606により検知される温度が70[℃]以上となり、加圧ローラ307が回転駆動されると、ヒータ305は、サイリスタ600によって最大電力の70[%]が供給される。次いで、ヒータ305の加熱により、サーモスイッチ602、607の温度Tsが50[℃]以上となる。更に、サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度Teが上昇し続け、240[℃](定着温度域の下限値)を超えると、定着器10はトナー像を記録材Pに定着可能な温度となる。
【0037】
次いで、ヒータ305が加熱し続け、サーミスタ606の検知結果が250[℃](定着温度域の上限値)となる。このタイミングで、復帰型のサーモスイッチ602は50[℃]以上の状態が2[sec]続いたことにより電気接点504aを開放する。これにより、ヒータ305は、電源603からヒータ305への電力供給が停止され、加熱が停止される。このとき、非復帰型のサーモスイッチ607はまだ60[℃]以上には加熱されていない。
【0038】
次いで、ヒータ305の加熱が停止されたことで、サーモスイッチ602、607の温度も低下し始める。復帰型のサーモスイッチ602の温度が49[℃]以下となると、このサーモスイッチ602が電気接点504aを導通可能な状態に復帰させ、電源603からヒータ305への電力供給が復帰される。
【0039】
次いで、ヒータ305は、非復帰型のサーモスイッチ607によって電源603からヒータ305への電力供給が遮断されていないため、サーミスタ606により検知される温度が250[℃]となるまで、最大電力の70[%]が供給される。これにより、サーモスイッチ602、607は再び温度上昇を開始する。次いで、サーミスタ606の検知する温度が250[℃]となると、ヒータ305は、サーミスタ606により検知される温度が250[℃]で安定するように、サイリスタ600によって電力供給が制御される。
【0040】
次いで、復帰型のサーモスイッチ602は、再び50[℃]以上の状態が2[sec]続いた場合、電気接点504aを開放し、ヒータ305への電力供給を停止させる。以下、同様にして、復帰型のサーモスイッチ602が電気接点504aを開放したり、導通可能な状態に復帰させることによって、ヒータ305の温度Teを、定着温度域の上限値を超えないように制御する。
【0041】
ここで、復帰型のサーモスイッチ602は、第2の温度以上(50[℃]以上)の状態が第2の時間続いた(2[sec]続いた)場合、ヒータ305への電力供給を停止する。また、復帰型のサーモスイッチ602は、ヒータ305への電力供給がオフされた後、第3の温度以下(49[℃]以下)となると、ヒータ305への電力供給をオンする。本実施形態では、復帰型のサーモスイッチ602が第2のスイッチ手段として機能する。
【0042】
次に、ヒータ305が異常昇温した場合について図6(b)に基づいて説明する。図6(b)において、Teは、サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度であり、Tsは、サーモスイッチ602、607の温度である。
【0043】
図6(b)は、サイリスタ600が故障しており、ヒータ305が異常昇温した場合のヒータのオンオフ動作と、サーミスタ606が検出したヒータ305の温度を示した図である。サイリスタ600が故障したことによって、ヒータ305には最大電力が供給され続け、定着器10の温度が昇温し続けてしまう。
【0044】
ヒータ305は、最大電力が供給され続けることで加熱し続け、サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度Teが250[℃]以上となっても、加熱を停止しない。このとき、復帰型のサーモスイッチ602の温度Tsは50[℃]以上まで加熱される。しかしながら、ヒータ305の異常昇温が、復帰型のサーモスイッチ602が50[℃]以上の状態で2[sec]経過するまで続いた場合、画像形成装置100の定着器10以外のユニットをも故障させる虞がある。そのため、本実施形態では、迅速にヒータ305への電力供給を遮断させる必要がある。
【0045】
ヒータ305が異常昇温した場合、非復帰型のサーモスイッチ607の温度Tsは60[℃]以上となる。非復帰型のサーモスイッチ607は、60[℃]以上の状態が500[msec]続いた場合、電気接点504bを開放させることにより、電源603からヒータ305への電力供給を停止させ、ヒータ305の異常昇温を防止する構成となっている。即ち、ヒータ305が異常昇温した場合、復帰型のサーモスイッチ602がヒータ305への電力供給を停止するよりも早く、非復帰型のサーモスイッチ607がヒータ305への電力供給を停止する。この構成では、非復帰型のサーモスイッチ607によりヒータ305への電力供給を遮断させる温度が、復帰型のサーモスイッチ602によりヒータ305への電力供給を停止させる温度よりも高い。且つ、非復帰型のサーモスイッチ607がヒータ305への電力供給を遮断するまでの時間は、復帰型のサーモスイッチ602がヒータ305への電力供給を停止するまでの時間よりも短い。本実施形態において、非復帰型のサーモスイッチ607は、第1の温度以上(60[℃]以上)の状態が第1の時間続いた(500[msec]続いた)場合、ヒータ305への電力供給を停止する第1のスイッチ手段として機能する。なお、非復帰型のサーモスイッチ607は、その温度がJISZ8703により規定されている常温(20[℃]±15[℃])となってもヒータ305への電力供給をオンすることがない。
【0046】
次に、画像形成時の定着器の制御を図7のフローチャートに基づいて説明する。なお、このフローチャートの処理は、CPU605がROM810に格納されたプログラムを読み出すことにより実行される。
【0047】
先ず、CPU605は、画像形成を開始する信号が入力されるまで待機し(S100)、画像形成を開始する信号が入力されると、サイリスタ600を制御し、ヒータ305に最大電力を供給する(S101)。次いで、CPU605は、サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度Teが70[℃]以上となるまで、サイリスタ600の通電比率を100[%]として、ヒータ305に最大電力を供給し続ける(S102)。
【0048】
サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度Teが70[℃]以上となると、CPU605は、サイリスタ600を制御してヒータ305への電力供給を、最大電力の70[%]に減少させる(S103)。次いで、CPU605は、サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度Teが245[℃]以上となると(S104)、サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度Teが250[℃]以下であるか否かを判定する(S105)。サーミスタ606による検知結果が250[℃]以下である場合、CPU605は画像形成を行い(S107)、画像形成を開始させる信号が入力された際に転送される画像データに対応する全ての画像を形成したか否かを判定する(S108)。ステップS108において、画像データに対応する全ての画像を形成している場合、CPU605はサイリスタ600によってヒータ305への電力供給を停止し(S109)、ステップS100へ移行する。
【0049】
一方、ステップS105において、サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度Teが250[℃]より高い場合、CPU605は、サイリスタ600によってヒータ305への電力供給を減少させ(S106)、ステップS105へ移行する。ステップS106において、CPU605は、例えば、ヒータ305に供給する電力を現在供給している電力の40[%]に減少させればよい。ステップS105において、CPU605は、ヒータ305の温度を所定温度とするため、サーミスタ606の検知結果に基づいて、ヒータ305への電力供給を制御する。なお、本実施形態において、所定温度とは245[℃]に相当する。
【0050】
また、ステップS108において、画像データに対応する全ての画像を形成していない場合、CPU605は時間カウンタtに0を設定し(S110)、サーミスタ606による検知結果が245[℃]よりも低いか否かを判定する(S111)。サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度Teが245[℃]以上である場合、CPU605は、ステップS105へ移行する。
【0051】
一方、ステップS111において、サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度Teが245[℃]よりも低い場合、CPU605は、サイリスタ600によってヒータ305に最大電力の70[%]を供給する(S112)。次いで、CPU605は、時間カウンタtの値が1000であるか否かを判定し、時間カウンタtが1000でない場合、時間カウンタtの値を1増加させ(S114)、ステップS111に移行する。
【0052】
一方、ステップS113において、時間カウンタtの値が1000である場合、CPU605は、画像形成動作の実行を禁止し(S115)、定着器10の故障を報知するための信号を表示部900へ出力し(S116)、画像形成処理を終了する。これにより、CPU605は、画像形成装置100による画像形成動作の実行を禁止する。また、表示部900は、CPU605から定着器10の故障を報知するための信号が入力されると、液晶画面に、定着器10が故障しており、交換する必要がある旨のメッセージを表示する。ここで、CPU605は、画像形成動作の実行を禁止する禁止手段として機能する。また、表示部900は、定着器10の故障を報知するための報知手段として機能する。
【0053】
ステップS111からステップS114にかけて、CPU605は、サーミスタ606の検知結果が245[℃]以上となるまで、ヒータ305を発熱させる信号を出力し続けている。ところが、図6(b)で説明したように、サイリスタ600の故障によってヒータ305が異常昇温し続けた場合、非復帰型のサーモスイッチ607がヒータ305への電力供給を遮断する。非復帰型のサーモスイッチ607がヒータ305への電力供給を遮断してしまうと、このヒータ305は発熱することができない。つまり、サイリスタ600が故障し、サーミスタ606により検知されるヒータ305の温度Teが245[℃]よりも低くなってしまうと、CPU605がヒータ305に電力を供給しても、サーミスタ606による検知結果は245[℃]以上とならない。そのため、CPU605は、サーミスタ606の検知結果が245[℃]よりも低い状態が所定時間続く場合、サイリスタ600の故障によって非復帰型のサーモスイッチ607がヒータ305への電力供給を遮断したと判定することができる。なお、本実施形態では、時間カウンタtが1000となるまで、サーミスタ606によりヒータ305の温度Teを検知し続けている。ここで、時間カウンタtが1000となるまでの時間が所定時間に相当する。
【0054】
また、本実施形態では、サイリスタ600が正常に動作している場合、CPU605と復帰型のサーモスイッチ602により、ヒータ305に供給される電力が制御される。即ち、サイリスタ600とCPU605は制御手段として機能する。また、サイリスタ600が故障したことによって、ヒータ305に最大電力が供給され続ける異常を発生した場合であっても、非復帰型のサーモスイッチ607が、ヒータ305への電力供給を遮断することで、ヒータ305の異常昇温を防止している。また、ヒータ305が異常昇温した場合には、非復帰型のサーモスイッチ607が復帰型のサーモスイッチ602よりも早く、ヒータ305への電力供給を遮断する。そのため、本実施形態では、非復帰型のサーモスイッチ607がヒータ305への電力供給を遮断し、ヒータ305の加熱が停止された場合、復帰型のサーモスイッチ602の温度が49[℃]以下に低下しても、ヒータ305への電力供給が復帰しない。
【0055】
本実施形態では、復帰型のサーモスイッチ602と非復帰型のサーモスイッチ607とを用いる構成としたが、第1のスイッチ手段として温度ヒューズを用い、第2のスイッチ手段として復帰型のサーモスイッチを用いる構成としてもよい。この構成とする場合、ヒータ305が異常昇温した場合に、復帰型のサーモスイッチ602よりも先に温度ヒューズが、電源603からヒータ305への電力供給を遮断させる構成とすればよい。
【0056】
また、本実施形態では、復帰型のサーモスイッチ602の熱容量と非復帰型のサーモスイッチ607の熱容量とを同じとしたが、この構成に限定されない。この構成とする場合、非復帰型のサーモスイッチ607の熱容量が、復帰型のサーモスイッチ602の熱容量よりも小さい値としてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、ヒータ305とサーモスイッチ602、607との間に被加熱部材604、608を挿入する構成としたが、感熱部500の熱容量が小さければ、被加熱部材604、608を挿入しない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
StY 像形成部
StM 像形成部
StC 像形成部
StK 像形成部
305 定着ヒータ
602 復帰型のサーモスイッチ
605 CPU
606 サーミスタ
607 非復帰型のサーモスイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成する像形成手段と、
前記像形成手段により形成されるトナー像を記録材に定着させるためのヒータと、
前記ヒータの温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段の検知結果に基づき、前記ヒータの温度が所定温度となるように制御する制御手段と、
前記ヒータへ電力を供給する電力線に直列に接続され、前記ヒータの加熱でもってオフすることにより前記ヒータへの電力供給を遮断する第1のスイッチ手段と、
前記電力線に前記第1のスイッチ手段と直列に接続され、前記制御手段による前記ヒータの加熱でもってオフすることにより前記ヒータへの電力供給を遮断する第2のスイッチ手段と、を有し、
前記第1のスイッチ手段は、前記ヒータが前記所定温度よりも高い温度まで異常昇温することにより、前記第1のスイッチ手段が第1の温度以上に加熱された状態で第1の時間続くとオフし、
前記第2のスイッチ手段は、前記制御手段が前記ヒータを加熱させることにより、前記第2のスイッチ手段が前記第1の温度よりも低い第2の温度以上に加熱された状態で前記第1の時間よりも長い第2の時間続くとオフし、その後、第2の温度よりも低い第3の温度以下なるとオンする動作を繰り返すことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1のスイッチ手段は、オフになった後、前記第1のスイッチ手段の温度が常温に戻ってもオンしないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ヒータへ供給する電力を制御する電力制御素子を有し、
前記制御手段は、前記温度検知手段の検知結果に基づき、前記ヒータの温度が所定温度となるように、前記電力制御素子による前記ヒータに供給する電力を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像形成装置はさらに、前記第1のスイッチ手段が前記ヒータによって前記第1の温度以上に加熱された状態が前記第1の時間続いた場合、前記像形成手段による画像形成動作の実行を禁止する禁止手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成装置はさらに、前記制御手段が前記ヒータを加熱させるように制御しても、前記温度検知手段により検知される前記ヒータの温度が所定温度よりも低い状態で所定時間続いた場合、前記像形成手段による画像形成動作の実行を禁止する禁止手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置はさらに、前記第1のスイッチ手段が前記ヒータによって前記第1の温度以上に加熱された状態が前記第1の時間続いた場合、前記ヒータが故障したことを報知する報知手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置はさらに、前記制御手段が前記ヒータを加熱させるように制御しても、前記温度検知手段により検知される前記ヒータの温度が所定温度よりも低い状態で所定時間続いた場合、前記ヒータが故障したことを報知する報知手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189700(P2012−189700A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51786(P2011−51786)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】