説明

画像記録装置及び方法

【課題】記録媒体の感度むらや感度変化による画質劣化を抑制する。
【解決手段】光透過層が設けられた記録媒体にレーザ光を照射した際、光透過層の光透過率はレーザ光の共振によりレーザ光の波長変化に対して(A)のように振動的に変化する。光透過層の層厚は製造公差の範囲内でばらついているので、記録媒体の各部分での光透過層の波長−光透過率特性は(B)のように変動し、これが記録媒体の各部分の感度のばらつきとして現れる。また温度変化に伴ってレーザ光の波長が変動した場合も記録媒体の各部分の感度の変化として現れる。このため、複数のレーザ光源からの射出レーザ光を合波して記録媒体に照射すると共に、各レーザ光源からの射出レーザ光の波長を、光透過層の光透過率が極大となる第1波長と、光透過層の光透過率が極小となりかつ第1波長との差が最小の第2波長の間に相当する共振最小波長範囲以上の範囲内に分布するように定める((A)参照)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像記録装置及び方法に係り、特に、複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波し、被照射体の上層に光透過層が設けられて成る記録媒体に前記合波したレーザ光を照射することで、記録媒体に画像を記録する画像記録装置、及び、該画像記録装置に適用可能な画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板(PWB:Print Wired Board)やフラットパネルディスプレイ(FPD)の基板等を作成する際の描画方式としては、従来、基板上に形成すべき配線パターンを一旦フィルムに露光することでマスクを作成した後に、このマスクを用いて前記配線パターンを基板に面露光により描画する方式(アナログ描画方式と称する)が一般的であったが、近年、マスクを作成することなく、配線パターンを表すデジタルデータ(描画用ラスタデータ)に基づき描画装置によって配線パターンを基板に直接描画する、所謂デジタル描画方式が用いられるようになってきている。
【0003】
この種のデジタル描画方式に適用可能な描画装置の一例として、特許文献1には、単一のレーザ光源から射出されたレーザ光を音響光学変調器等の変調器で変調し、ポリゴンミラーによって偏向させ印刷回路板上で走査させることで、印刷回路板上に配線パターン等を直接描画する構成の直接書込み式印刷回路板走査装置が開示されている。
【特許文献1】特表2002−520644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリント配線基板を搭載する各種機器の小型化や、フラットパネルディスプレイに表示する画像の高精細化のためには、基板上へ形成する配線パターンの高密度化が重要であり、これに伴い、描画装置による基板上への配線パターンの描画に対しても、15〜20μm程度の最小解像度で配線パターンを高精細に描画することが求められている。このため、描画装置による配線パターンの描画に用いられる基板には、PET(ポリエチレン・テレフタレート)から成り表面に光沢を有する支持体としての光透過層と、感光材料から成る感光層が積層されたレジストフィルムが、光透過層側が上層となるように貼着されており、レジストフィルムが貼着された基板に配線パターンを露光することで配線パターンの描画が行われる。
【0005】
しかしながら、上記のようにレジストフィルムが貼着された基板へレーザ光を照射して配線パターンを描画する場合、照射レーザ光に対する感度が基板上の各部分で一定しない、所謂感度むらが生ずるという問題がある。基板に描画した配線パターン中の個々の線の幅は、個々の線を描画した箇所における照射レーザ光に対する感度に応じて変化し、感度が低くなるに従って線幅が細くなる。このため、基板上の各部分における感度むらは、基板の各部分における線幅のばらつきや配線パターンの導通不良等の品質不良を引き起こすことになるので望ましくない。また、光源としてLD(レーザダイオード)等の半導体レーザを用いた場合、光源から射出されるレーザ光の波長は光源の温度変化に伴って若干変動するが、光源から射出されたレーザ光の波長が僅かにずれただけで、基板上の各部分での照射レーザ光に対する感度が変化するという問題もあった。
【0006】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、記録媒体の感度むらや感度変化による画質劣化が抑制されるように画像を記録できる画像記録装置及び画像記録方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、基板上の各部分において照射レーザ光に対する感度むらが生じたり、照射レーザ光の波長の僅かなずれに伴って基板上の各部分での照射レーザ光に対する感度が変化する現象は、基板に貼着したレジストフィルムのうちの光透過層におけるレーザ光の共振が関係しているのではないかと推定し、照射光の波長の変化に対する光透過層の光透過率の変化を測定する実験を行った。この実験では、光透過層として実際に用いている公称の膜厚が13μm(実際の膜厚が13.155μm)のPET製のフィルム(図1では"13μm品"と表記)及び公称の膜厚が18μm(実際の膜厚が18.6μm)のPET製のフィルム(図1では"18μm品"と表記)を用い、各PETフィルムに光を照射すると共に、各PETフィルムの透過光量(光透過率)を分光器によって各波長毎に測定した。なお、各PETフィルムの屈折率nは何れも1.63である。実験結果を図1に示す。
【0008】
図1より明らかなように、上記実験により、何れのPETフィルムにおいても照射光の波長の変化に対して光透過率が略一定の周期で振動的に変化していることが確認された。なお、公称膜厚が13μmのPETフィルムにおいて、400〜410nmの波長範囲で光透過率が極大となっている波長は400.8nm、404.6nm、408.4nm、光透過率が極小となっている波長は402.7nm、406.5nmであり、公称膜厚が18μmのPETフィルムにおいて、400〜410nmの波長範囲で光透過率が極大となっている波長は401.6nm、404.2nm、407nmである。
【0009】
例として図2に示すように、平行に配置した一対の半透明平面鏡#1,#2に対し、コヒーレントな光波である空間ビームを半透明平面鏡#1側から垂直に入射させた場合、入射させた空間ビームは半透明平面鏡#1で一部が反射されて残りが半透明平面鏡#2に到達するが、このうちの一部は半透明平面鏡#2で反射されて半透明平面鏡#1,#2の間を往復する。そして、半透明平面鏡#1,#2の間隔Lが空間ビームの波長/2の整数倍の場合には定在波が生じて共振が起こり、半透明平面鏡#1,#2の光透過率(電力透過率)は極大値を示す。図2に示す共振器はファブリーペロー共振器(Fabry-Perot resonator)と称するが、この共振器における電力透過率Tは、半透明平面鏡#1,#2の間の媒質の屈折率をn、各反射における電力反射率をRとすると次の(1)式で表される。
【0010】
【数1】

【0011】
また、(1)式におけるkにk=2π/λを代入すれば、空間ビームの波長λの変化に対する電力透過率T(光透過率)の変化を表す透過率特性を求めることができる。
【0012】
ここで、上記の(1)式に、公称膜厚13μmのPETフィルムに対する測定条件(屈折率n=1.63、間隔L=13.155μm、電力反射率R=0.05(PETの反射率))を代入すると共に、k=2π/λを代入し、波長範囲400〜412nm内における電力透過率T(光透過率)の変化を演算したところ、光透過率が極大になる波長として実験結果と同一の波長(400.8nm、404.6nm、408.4nm)が導出されると共に、光透過率が極小になる波長についても実験結果と同一の波長(402.7nm、406.5nm)が導出された。従って、図1に示すような波長変化に対する光透過率の振動的な変化は、レジストフィルムの光透過層におけるレーザ光の共振に起因するものであると判断できる。
【0013】
本願発明者等は、上述した実験結果に基づき、基板上の各部分において照射レーザ光に対する感度むらが生じるのは、基板上の各部分におけるレジストフィルムの光透過層の層厚が製造公差内でばらついているために、基板上の各部分において光透過層の光透過率が極大となる波長(共振波長)がばらついており、これに伴って基板上の各部分における一定波長のレーザ光に対する光透過層の光透過率もばらついていることが原因である(光透過層を透過した一定波長の照射レーザ光の光量が基板上の各部分でばらつくことが、基板上の各部分における見掛け上の感度のばらつきとして現れる)ことに想到した。また本願発明者等は、照射レーザ光の波長の僅かな変化に伴って基板上の各部分での照射レーザ光に対する感度が変化する現象についても、波長変化前の照射レーザ光に対する光透過層の光透過率と波長変化後の照射レーザ光に対する光透過層の光透過率が基板上の各部分で各々相違していることが原因である(照射レーザ光の波長の変化に伴い、基板上の各部分において照射レーザ光に対する光透過層の光透過率が各々変化し、基板上の各部分において光透過層を透過した照射レーザ光の光量が波長変化前と各々変化するために、基板上の各部分における感度が各々変化したように見える)ことに想到した。
【0014】
上記に基づき請求項1記載の発明に係る画像記録装置は、複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波し、感光層と該感光層の上層に設けられた光透過層を含む記録媒体に前記合波したレーザ光を照射することで、前記記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、前記複数のレーザ光源は、各々の射出レーザ光の波長が、前記光透過層の光透過率が極大となる第1の波長と、前記光透過層の光透過率が極小となりかつ前記第1の波長との差が最小の第2の波長の間に相当する共振最小波長範囲以上の所定波長範囲内に分布するように定められていることを特徴としている。
【0015】
請求項1記載の発明に係る画像記録装置は、感光層と該感光層の上層に設けられた光透過層を含む記録媒体に、複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波して照射することで、記録媒体に画像を記録する。ここで、記録媒体上の各部分における光透過層の層厚が製造公差内でばらついている場合、記録媒体上の各部分における光透過層の共振波長もばらつくことになり、この共振波長のばらつきが記録媒体の各部分における感度のばらつきとして現れ、この感度のばらつきが記録媒体に記録した画像の画質劣化を引き起こす。また、レーザ光源の周囲温度の変化等によりレーザ光源から射出されるレーザ光の波長が変化した場合にも、照射レーザ光に対する光透過層の光透過率が記録媒体上の各部分で変化し、この光透過率の変化が記録媒体の各部分における感度の変化として現れ、この感度の変化が記録媒体に記録した画像の画質劣化を引き起こす。
【0016】
これに対して請求項1記載の発明では、複数のレーザ光源の各々の射出レーザ光の波長が、例として図3(A)に示すように、光透過層の光透過率が極大となる第1の波長と、光透過層の光透過率が極小となりかつ第1の波長との差が最小の第2の波長の間に相当する共振最小波長範囲以上の所定波長範囲内に分布するように定められている。これにより、記録媒体に照射されるレーザ光の波長も上記の共振最小波長範囲以上の所定波長範囲内に分布することになるので、記録媒体上の各部分における光透過層を透過するレーザ光の光量のばらつきや、レーザ光源の発光波長の変動に起因する記録媒体上の各部分におけるレーザ光の光透過層透過光量のばらつきや変化が抑制される。
【0017】
一例として、レーザ光源の数が2個で、図3(B)にレーザ光A,Bとして示すように、個々のレーザ光源から射出されるレーザ光の波長が共振最小波長範囲内に分布している場合を考える。記録媒体上の各部分における光透過層の波長−光透過率特性は、記録媒体上の各部分における光透過層の層厚のばらつきにより、図3(B)に「光透過層の層厚のばらつきに起因する変動」と表記して示すように波長軸に沿ってシフトする。また、レーザ光源から射出されるレーザ光の波長自体も、レーザ光源の周囲温度の変動に伴い、図3(B)に「レーザ光源の周囲温度の変動に起因する変動」と表記して示すように波長軸に沿ってシフトする。このため、単一のレーザ光源から射出されたレーザ光の光透過層透過光量は、記録媒体上の各部分における光透過層の層厚のばらつきやレーザ光源の周囲温度の変動の影響により、記録媒体上の各部分において、光透過層の波長−光透過率特性の最大光透過率(共振波長(第1の波長)での光透過率)と最小光透過率(第2の波長での光透過率)の差に応じた光量差で変動する。
【0018】
これに対し、2個のレーザ光源から射出されたレーザ光A,Bを合波して記録媒体上の各部分に照射する場合、記録媒体上の各部分のうち、レーザ光Aの波長が共振波長(第1の波長)に一致しておりレーザ光Aの光透過層透過光量が最大値を示す部分では、レーザ光Bの波長が第1の波長とは一致しないことでレーザ光Bの光透過層透過光量が最大値よりも小さくなるので、当該部分における照射レーザ光(レーザ光A,Bを合波したレーザ光)の光透過層透過光量は最大値よりも小さくなる。また同様に、記録媒体上の各部分のうち、レーザ光Aの波長が第2の波長に一致しておりレーザ光Aの光透過層透過光量が最小値を示す部分では、レーザ光Bの波長が第2の波長とは一致しないことでレーザ光Bの光透過層透過光量が最小値よりも大きくなるので、当該部分における照射レーザ光(レーザ光A,Bを合波したレーザ光)の光透過層透過光量は最小値よりも小さくなる。従って、記録媒体上の各部分における照射レーザ光全体の光透過層透過光量の変動幅は、単一のレーザ光源から射出されたレーザ光を用いる場合よりも小さくなる。
【0019】
上述した例は2個のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波して記録媒体上の各部分に照射する場合であるが、3個以上のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波して記録媒体上の各部分に照射する場合であっても、各レーザ光源から射出されるレーザ光の波長が共振最小波長範囲以上の波長範囲内に分布していれば、上記と同様に記録媒体上の各部分における照射レーザ光の光透過層透過光量の変動幅が小さくなる。そして、記録媒体上の各部分における照射レーザ光の光透過層透過光量の変動幅が小さくなることに伴い、記録媒体の各部分における感度のばらつきが小さくなると共に、レーザ光源の周囲温度の変化等によりレーザ光源から射出されるレーザ光の波長が変化した場合の記録媒体の各部分における感度の変化も小さくなる。従って、請求項1記載の発明によれば、記録媒体の感度むらや感度変化による画質劣化が抑制されるように画像を記録することができる。
【0020】
なお、請求項1記載の発明における所定波長範囲としては、例えば請求項2に記載したように共振最小波長範囲の2倍以上の波長範囲であってもよいし、請求項3に記載したように共振最小波長範囲の4倍以上の波長範囲であってもよい。上記のように、複数個のレーザ光源から射出されるレーザ光の波長をより広い周波数範囲に(望ましくは当該周波数範囲内でなるべく一様に)分布させた方が、記録媒体の各部分における照射レーザ光の光透過層透過光量をより均一化することができる。但し、感光層の感度が照射レーザ光の波長変化に対して一定でない場合、記録媒体の各部分における照射レーザ光の光透過層透過光量が均一になったとしても、感光層の感度自体が記録媒体の各部分でばらつく可能性があるので、請求項1記載の発明における所定波長範囲の広さは、照射レーザ光の波長変化に伴う感光層の感度の変化も勘案して上限を設けることが望ましい。
【0021】
また、請求項1乃至請求項3の何れかの発明において、複数のレーザ光源は、例えば請求項4に記載したように、各々の射出レーザ光の波長が、所定波長範囲内に分布しかつ光透過層の光透過率が互いに相違する波長となるように定められていることが好ましい。これにより、記録媒体上の各部分における照射レーザ光の光透過層透過光量の変動をより精度良く抑制することができ、記録媒体の感度むらや感度変化による画質劣化をより精度良く抑制することができる。
【0022】
また、請求項1乃至請求項3の何れかの発明において、画像記録装置は、例えば請求項5に記載したように、複数の変調領域が設けられた変調面に入射された光束の射出方向を、個々の変調領域に入射された部分光束の各々を単位として独立に制御可能な面変調素子を備え、複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波したレーザ光束を面変調素子の変調面に入射させると共に、当該入射させたレーザ光束のうち面変調素子によって所定方向へ射出された複数本の部分レーザ光束を、記録媒体上の各部分に面変調素子の互いに異なる変調領域から射出された部分レーザ光束が各々少なくとも一部は重複照射されるように案内することで、記録媒体に画像を記録する構成であることが好ましい。
【0023】
本発明のように、複数のレーザ光源から射出されるレーザ光の波長を或る波長範囲内に分布させる場合、当該複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波したとしても、合波したレーザ光(レーザ光束)の分布波長範囲がレーザ光束の各部分で均一とは限らない(全体として上記のレーザ光束を形成する複数の部分レーザ光束の各々における部分波長範囲が相違している可能性がある)。これに対して請求項5記載の発明では、複数の変調領域が設けられた変調面に入射された光束の射出方向を、個々の変調領域に入射された部分光束の各々を単位として独立に制御可能な面変調素子を備え、複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波したレーザ光束を面変調素子の変調面に入射させると共に、当該入射させたレーザ光束のうち面変調素子によって所定方向へ射出された複数本の部分レーザ光束を記録媒体に照射させることで、記録媒体に画像を記録する構成において、記録媒体上の各部分に、面変調素子の互いに異なる変調領域から射出された部分レーザ光束を各々少なくとも一部は重複照射させるので、面変調素子の個々の変調領域に入射される部分レーザ光束の分布波長範囲が相違していたとしても、記録媒体上の各部分に、分布波長範囲の異なる部分レーザ光束が各々少なくとも一部は重複照射されることで、記録媒体上の各部分への露光量(レーザ光の照射光量の積算値)を均一化することができ、記録画像の画質を向上させることができる。
【0024】
請求項6記載の発明に係る画像記録方法は、感光層と該感光層の上層に設けられた光透過層を含む記録媒体に、複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波して照射することで、前記記録媒体に画像を記録する画像記録方法であって、前記複数のレーザ光源の各々の射出レーザ光の波長が、前記光透過層の光透過率が極大となる第1の波長と、前記光透過層の光透過率が極小となりかつ前記第1の波長との差が最小の第2の波長の間に相当する共振最小波長範囲以上の所定波長範囲内に分布するように定めることを特徴としているので、請求項1記載の発明と同様に、記録媒体の感度むらや感度変化による画質劣化が抑制されるように画像を記録することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明は、複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を、感光層と該感光層の上層に設けられた光透過層を含む記録媒体に照射して画像を記録するにあたり、複数のレーザ光源の各々の射出レーザ光の波長を、光透過層の光透過率が極大となる第1の波長と、光透過層の光透過率が極小となりかつ第1の波長との差が最小の第2の波長の間に相当する共振最小波長範囲以上の所定波長範囲内に分布するように定めたので、記録媒体の感度むらや感度変化による画質劣化が抑制されるように画像を記録できる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0027】
〔画像露光装置の構成〕
図4には本実施形態に係る画像露光装置100の外観が示されている。画像露光装置100は本発明に係る画像記録装置に対応しており、シート状の記録媒体150を表面に吸着して保持する平板状の移動ステージ152を備えている。4本の脚部154に支持された厚い板状の設置台156の上面には、ステージ移動方向に沿って延びた2本のガイド158が設置されており、移動ステージ152は、その長手方向がガイド158の長手方向(ステージ移動方向/副走査方向)と平行となるように配置されると共に、ガイド158によって往復移動可能に支持されている。移動ステージ152はステージ駆動装置304(図20参照、詳細は後述)によりガイド158に沿って移動される。
【0028】
設置台156の中央部には、移動ステージ152の移動経路を跨ぐようにコ字状のゲート160が設けられている。ゲート160の両端部は設置台156の両側面に各々固定されている。移動ステージ152の移動経路の上方には、ゲート160を挟んで一方の側にスキャナ162が配設され、反対側には記録媒体150の先端及び後端を検知する複数(例えば2個)のセンサ164が配設されている。スキャナ162及びセンサ164はゲート160の側面に各々取り付けられている。スキャナ162及びセンサ164は、これらを制御する図示しないコントローラに接続されている。
【0029】
なお、画像露光装置100は、入力された画像データ(描画用ラスタデータ)が表す配線パターンをデジタル描画方式により基板(記録媒体150)に直接描画する機能を備えた装置であり、電気・電子回路の部品を搭載するためのプリント配線基板や、フラットパネルディスプレイ用のカラーフィルタ基板を製造する際に使用される。例えばプリント配線基板を製造する場合には、例えば図5(C)に示すような記録媒体150が移動ステージ152上にセットされる。この記録媒体150は以下のようにして作製される。
【0030】
すなわち、プリント配線基板の製造に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシから成り厚さが200μm程度の平板状の基材104Aの表裏面に、銅から成り厚さが18μm程度の導電層104Bが形成された基板104が用いられるが、この基板104と別に、図5(A)に示すレジストフィルム106が用意される。レジストフィルム106は、感光材料から成り厚さが15〜30μm程度の感光層108が、PETから成り厚さが公称13μm(実際の厚さが13.15μm)又は公称18μm(実際の厚さが18.6μm)の光透過層110と、ポリエチレンやポリプロピレン等から成り厚さが20〜25μm程度のバック層112によって挟み込まれて構成されている。なお、レジストフィルム106の光透過層110は支持体として機能すると共に、画像露光装置100が15〜20μm程度の最小解像度で高精細に記録媒体150へ配線パターンを描画することを可能とするために表面に光沢を有している。
【0031】
レジストフィルム106はロール状に巻回されているが、記録媒体150の作製時にはロールから引き出され、図5(B)に示すようにバック層112が剥離された後に、図5(C)に示すように、光透過層110側が上層となるように(感光層108が基板104と接するように)基板104と重ね合わされる。そしてレジストフィルム106は、感光層108が基板104と密着している状態で、図示しないラミネータによってラミネート処理されることで基板104に貼着される。これにより記録媒体150が作製される。なお、カラーフィルタ基板を製造する際に用いられる記録媒体150は、上記のレジストフィルム106を、上記の基板104に代えてガラス基板に貼着することで作製される。
【0032】
一方、図6及び図7(B)に示すように、画像露光装置100のスキャナ162はm行n列(例えば3行5列)の略マトリックス状に配列された複数(例えば14個)の露光ヘッド166を備えている。なお図6及び図7(B)は、記録媒体150の幅との関係で3行目に4個の露光ヘッド166を配置した例を示している。なお、以下ではm行目n列目の露光ヘッド166を露光ヘッド166mnと表記する。図7(B)に示すように、個々の露光ヘッド166による露光エリア168は、副走査方向を短辺とする矩形状とされている。従って、移動ステージ152の移動に伴い、記録媒体150上には個々の露光ヘッド166毎に、帯状の露光済み領域170(図7(A)参照)が形成される。なお、以下ではm行目n列目の露光ヘッド166による露光エリアを露光エリア168mnと表記する。
【0033】
また図7(B)に示すように、同一行の露光ヘッド166は主走査方向(副走査方向と直交する方向)に沿って配列されているが、同一列の個々の露光ヘッド166は、帯状の露光済み領域170が主走査方向に沿って記録媒体150上に隙間無く並ぶように(図7(A)参照)、同一列の隣り合う露光ヘッド166に対し、主走査方向に沿って所定距離(例えば露光エリア168の長辺の長さに等しい距離)ずつずれた位置に配置されている。このため、1行目1列目の露光ヘッド16611の露光エリア16811と1行目2列目の露光ヘッド16612の露光エリア16812の間隙は、2行目1列目の露光ヘッド16621の露光エリア16821と3行目1列目の露光ヘッド16631の露光エリア16831によって露光されることになる。
【0034】
図8及び図9に示すように、露光ヘッド16611〜166mnは、入射された光ビームを画像データに応じて各画素毎に変調する空間光変調素子として、米国テキサス・インスツルメンツ社製のデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)50を各々備えている。DMD50は、データ処理部とミラー駆動制御部を備えたコントローラ302(図20参照、詳細は後述)に接続されている。コントローラ302のデータ処理部では、入力された画像データに基づいて、個々の露光ヘッド166毎にDMD50のうち制御すべき領域内の各マイクロミラーを駆動制御する制御信号を生成する。なお、制御すべき領域については後述する。またミラー駆動制御部は、画像データ処理部で生成された制御信号に基づいて、個々の露光ヘッド166毎にDMD50の各マイクロミラーの反射面の角度を制御する。なお、反射面の角度の制御については後述する。
【0035】
DMD50の光入射側には、複数本の光ファイバの出射端部(発光点)が全体として露光エリア168と同様に矩形状を成し、かつその長辺方向が露光エリア168の長辺方向に対応する方向に一致するように配列されたレーザ出射部を備えたファイバアレイ光源66、ファイバアレイ光源66から出射されたレーザ光を補正してDMD上に集光させるレンズ系67、レンズ系67を透過したレーザ光をDMD50に向けて反射するミラー69が順に配置されている。
【0036】
レンズ系67は、図8では概略的に示しているが、図9に示すように、ファイバアレイ光源66から射出されたレーザ光Bを集光する集光レンズ71、集光レンズ71を透過したレーザ光Bの光路に挿入されたロッド状オプティカルインテグレータ(以下、ロッドインテグレータという)72、及び、ロッドインテグレータ72のレーザ光射出側に配置された結像レンズ74から構成されている。ロッドインテグレータ72は例えば四角柱状に形成された透光性ロッドであり、ロッドインテグレータ72に入射されたレーザ光Bは、その内部を全反射しながら進行するうちにビーム断面内強度分布が均一化される。なお、ロッドインテグレータ72の入射端面、出射端面には光透過率向上のために反射防止膜が形成されている。ファイバアレイ光源66から射出されたレーザ光は、レンズ系67の集光レンズ71、ロッドインテグレータ72及び結像レンズ74により、平行光に近くかつビーム断面内強度が均一化された光束とされた後に、レンズ系67のレーザ光射出側に配置されたミラー69で反射され、TIR(全反射)プリズム70を介してDMD50に照射される。なお、図8ではTIRプリズム70の図示を省略している。
【0037】
また、DMD50のレーザ光射出側には、DMD50で反射されたレーザ光Bを、記録媒体150上に結像する結像光学系51が配置されている。結像光学系51は、図8では概略的に示しているが、図9に示すように、レンズ系52,54から成る第1結像光学系と、レンズ系57,58から成る第2結像光学系と、これらの結像光学系の間に挿入されたマイクロレンズアレイ55及びアパーチャアレイ59で構成されている。
【0038】
マイクロレンズアレイ55は、DMD50の各画素に対応する多数のマイクロレンズ55aが2次元状に配列されて構成されている。本実施形態では、後述するようにDMD50の1024個×768列のマイクロミラーのうち1024個×256列だけが駆動されるので、それに対応してマイクロレンズ55aは1024個×256列配置されている。またマイクロレンズ55aの配置ピッチは縦方向、横方向とも41μmである。このマイクロレンズ55aは、一例として焦点距離が0.19mm、NA(開口数)が0.11で、光学ガラスBK7から形成されている。なお各マイクロレンズ55aの位置におけるレーザ光Bのビーム径は、41μmである。またアパーチャアレイ59は、マイクロレンズアレイ55の各マイクロレンズ55aに対応する多数のアパーチャ(開口)59aが形成されて構成されている。本実施形態において、アパーチャ59aの径は10μmである。
【0039】
第1結像光学系は、DMD50による像を3倍に拡大してマイクロレンズアレイ55上に結像する。そして第2結像光学系は、マイクロレンズアレイ55を経た像を1.6倍に拡大して記録媒体150上に結像、投影する。従って全体では、DMD50による像が4.8倍に拡大されて記録媒体150上に結像・投影されることになる。なお本実施形態では、第2結像光学系と記録媒体150との間にプリズムペア73が配設されされており、このプリズムペア73を図9における上下方向に移動させることで、記録媒体150上における像のピントを調節可能とされている。なお、記録媒体150は図9の矢印F方向(副走査方向)へ搬送される。
【0040】
図10に示すように、DMD50はSRAMセル(メモリセル)60上に、各々画素(ピクセル)を構成する多数(例えば1024個×768個)の微小ミラー(マイクロミラー)62が格子状に配列されてなるミラーデバイスである。各ピクセルにおいて、最上部には支柱に支えられたマイクロミラー62が設けられており、マイクロミラー62の表面にはアルミニウム等の反射率の高い材料が蒸着されている。なお、マイクロミラー62の反射率は90%以上であり、その配列ピッチは縦方向、横方向共に例えば13.7μmである。また、マイクロミラー62の直下には、ヒンジ及びヨークを含む支柱を介して通常の半導体メモリの製造ラインで製造されるシリコンゲートのCMOSのSRAMセル60が配置されており、全体はモノリシックに構成されている。
【0041】
DMD50は、SRAMセル60にデジタル信号が書き込まれると、支柱に支えられたマイクロミラー62が、対角線を中心としてDMD50が配置された基板側に対して±α度(例えば±12度)の範囲で傾斜される。図11(A)は、マイクロミラー62がオン状態である+α度傾斜された状態を示し、図11(B)は、マイクロミラー62がオフ状態である−α度傾斜された状態を示す。従って、画像信号に応じて、DMD50の各ピクセルにおけるマイクロミラー62の傾きを、図10に示すように制御することによって、DMD50に入射したレーザ光Bはそれぞれのマイクロミラー62の傾き方向へ反射される。なお図10は、DMD50の一部を拡大し、マイクロミラー62が+α度又は−α度に制御されている状態の一例を示している。それぞれのマイクロミラー62のオンオフ制御は、DMD50に接続されたコントローラ302によって行われる。また、オフ状態のマイクロミラー62で反射されたレーザ光Bの射出方向には光吸収体(図示せず)が配置されている。
【0042】
またDMD50は、その短辺が副走査方向と所定角度θ(例えば0.1°〜5°)を成すように僅かに傾斜させて配置することが好ましい。図12(A)はDMD50を傾斜させない場合の各マイクロミラーによる反射光像(露光ビーム)53の走査軌跡を示し、図12(B)はDMD50を傾斜させた場合の露光ビーム53の走査軌跡を示している。DMD50には、長手方向にマイクロミラーが多数個(例えば1024個)配列されたマイクロミラー列が、短手方向に多数組(例えば756組)配列されているが、図12(B)に示すように、DMD50を傾斜させることで、各マイクロミラーによる露光ビーム53の走査軌跡(走査線)のピッチPが、DMD50を傾斜させない場合の走査線のピッチPより狭くなるので、解像度を大幅に向上させることができる。一方、DMD50の傾斜角は微小であるので、DMD50を傾斜させた場合の走査幅Wと、DMD50を傾斜させない場合の走査幅Wとは略同一である。
【0043】
また、DMD50を傾斜させることで、異なるマイクロミラー列により同じ走査線上が重ねて露光(多重露光)されることになる。このように、同一走査線を多重露光することで、アライメントマークに対する露光位置の微少量をコントロールすることができ、高精細な露光を実現することができる。また、主走査方向に配列された複数の露光ヘッドの間の繋ぎ目を微少量の露光位置制御により段差無く繋ぐことができる。なお、DMD50を傾斜させる代わりに、各マイクロミラー列を千鳥状に配置しても同様の効果を得ることができる。
【0044】
上記に基づき本実施形態では、図21に示すように、露光エリア168が、副走査方向に対して傾斜角θ=±tan−1 (n/L)だけ傾斜するように、DMD50が傾斜されて配置されている。なお図21では、単一のDMD50によって得られる露光エリア168が副走査方向に沿ってL行×M列の領域毎にK個の領域(分割領域168D)に分割されており、nはLに対し互いに素な自然数、又はLと等しい数である。図21ではn=1としており、走査線L1から見て時計回り方向を傾斜方向の+方向としている。また、一例として図21では、L=4、M=32、K=5としているが、実際には、より多数の露光ビーム53によって単一の露光エリア168が構成される。
【0045】
上記のように露光エリア168を傾斜させることで、各マイクロミラーによる露光ビーム53の走査軌跡(走査線)のピッチが露光エリア168を傾斜させない場合よりも狭くなり、解像度を向上させることができる。また、副走査方向に対する露光エリア168の傾斜角θをθ=±tan−1 (n/L)としたので、個々の走査線が個々の分割領域168Dの反射光像(露光ビーム)53によって各々走査され、結果的に、DMD50のうち互いに異なるマイクロミラー62によって反射された露光ビーム53によって個々の走査線が各々多重に(K回)露光されることになる。例えば図21に示す走査線L1に着目すると、この走査線L1上を、各分割領域168Dの単一の露光ビーム53(図21に「●」で示す露光ビーム53を参照)が各々走査し、結果的に5回露光される。このように、多重露光を行うことで、画像濃度のばらつきを解消し均一な濃度の画像を得ることができる。
【0046】
すなわち、露光エリア168を構成する個々の露光ビーム53(請求項5に記載の部分レーザ光束に相当)には、僅かな光量のばらつきが生じていることがあり、また分布波長範囲も均一でない。このため、個々の走査線上を単一の露光ビーム53のみが走査するように構成すると、露光ビーム53の光量のばらつき及び分布波長範囲の不均一性(に起因する光透過層110の光透過率の変動)が、対応する走査線上での画像濃度のばらつきとして現れ、記録媒体150に露光記録する画像に濃度にばらつきが生じる。これに対して本実施形態では、個々の走査線上を複数の露光ビーム53によって走査させる多重露光を行っているので、記録媒体150の各部分への露光ビーム53の露光量(露光ビーム53の照射光量の積算値)を均一化することができ、記録媒体150に露光記録する画像の濃度を均一にすることができる。
【0047】
なお、DMD50は請求項5に記載の面変調素子に対応しており、DMD50のうちマイクロミラー62が設けられた面(レーザ光が入射される面)は請求項5に記載の変調面に、レーザ光入射面のうち当該レーザ光入射面に設けられた個々のマイクロミラー62に対応する領域は請求項5に記載の変調領域に各々対応している。
【0048】
図13に示すように、ファイバアレイ光源66は複数(例えば14個)のレーザモジュール64を備えており、各レーザモジュール64には、マルチモード光ファイバ30の一端が結合されている。マルチモード光ファイバ30の他端には、コア径がマルチモード光ファイバ30と同一でかつクラッド径がマルチモード光ファイバ30より小さい光ファイバ31が結合されている。図14に詳しく示すように、マルチモード光ファイバ31の光ファイバ30と反対側の端部は副走査方向と直交する主走査方向に沿って7個並べられ、それが2列に配列されてレーザ出射部68が構成されている。マルチモード光ファイバ31の端部で構成されるレーザ出射部68は、図14に示すように、表面が平坦な2枚の支持板65に挟み込まれて固定されている。また、マルチモード光ファイバ31の光出射端面には、その保護のために、ガラス等の透明な保護板が配置されるのが望ましい。マルチモード光ファイバ31の光出射端面は、光密度が高いため集塵し易く劣化し易いが、上記のような保護板を配置することにより、端面への塵埃の付着を防止し、また劣化を遅らせることができる。
【0049】
図15に示すように、本実施形態ではクラッド径が大きいマルチモード光ファイバ30のレーザ光出射側の先端部分に、長さ1〜30cm程度のクラッド径が小さい光ファイバ31が同軸的に結合されている。これらの光ファイバ30,31は、それぞれのコア軸が一致する状態で光ファイバ31の入射端面を光ファイバ30の出射端面に融着することにより結合されている。マルチモード光ファイバ30及び光ファイバ31としては、ステップインデックス型光ファイバ、グレーデッドインデックス型光ファイバ、及び複合型光ファイバの何れも適用可能である。例えば、三菱電線工業株式会社製のステップインデックス型光ファイバを用いることができる。本実施形態において、マルチモード光ファイバ30及び光ファイバ31はステップインデックス型光ファイバであり、マルチモード光ファイバ30は、クラッド径=125μm、コア径=50μm、NA=0.2、入射端面コートの透過率=99.5%以上であり、光ファイバ31は、クラッド径=60μm、コア径=50μm、NA=0.2である。
【0050】
レーザモジュール64は、図16に示す合波レーザ光源(ファイバ光源)で構成されている。この合波レーザ光源は、ヒートブロック10上に配列固定された複数(例えば7個)のチップ状の横マルチモード又はシングルモードのGaN系半導体レーザLD1,LD2,LD3,LD4,LD5,LD6及びLD7と、半導体レーザLD1〜LD7の各々に対応して設けられたコリメータレンズ11,12,13,14,15,16及び17と、単一の集光レンズ20と、1本のマルチモード光ファイバ30で構成されている。なお、半導体レーザLDの個数は7個に限定されるものではなく、他の個数であってもよい。また、7個のコリメータレンズ11〜17に代えて、これらのレンズが一体化されて成るコリメータレンズアレイを用いることもできる。半導体レーザLD1〜LD7は最大出力が総て共通(例えばマルチモードレーザでは100mW、シングルモードレーザでは50mW程度)とされている。なお、半導体レーザLDの発振波長については以下のように定められている。
【0051】
すなわち、単一の露光ヘッド166には複数のレーザモジュール64が設けられ、個々のレーザモジュール64には各々複数の半導体レーザLDが設けられているので、単一の露光ヘッド166はレーザ光源としての半導体レーザLDを多数個設けられている(単一の露光ヘッド166に設けられているレーザモジュール64の数が14個、個々のレーザモジュール64に設けられている半導体レーザLDの数が7個であるとすると、単一の露光ヘッド166に設けられている半導体レーザLDの総数は98個となる)が、本実施形態では、単一の露光ヘッド166に設けられている全ての半導体レーザLDの発振波長が、400〜410nm(405±5nm)の波長範囲内におよそ一様に分布するように定められている。
【0052】
上記の合波レーザ光源は、図17及び図18に示すように、他の光学要素と共に、上方が開口した箱状のパッケージ40内に収納されている。パッケージ40は、その開口を閉じるように作成されたパッケージ蓋41を備えており、脱気処理後に封止ガスを導入し、パッケージ40の開口をパッケージ蓋41で閉じることにより、それらによって形成される閉空間(封止空間)内に上記合波レーザ光源が気密封止されている。パッケージ40の底面にはベース板42が固定されており、このベース板42の上面には、前記ヒートブロック10と、集光レンズ20を保持する集光レンズホルダ45と、マルチモード光ファイバ30の入射端部を保持するファイバホルダ46とが取り付けられている。マルチモード光ファイバ30の出射端部は、パッケージ40の壁面に形成された開口からパッケージ外に引き出されている。
【0053】
また、ヒートブロック10の側面にはコリメータレンズホルダ44が取り付けられており、コリメータレンズホルダ44にはコリメータレンズ11〜17が保持されている。パッケージ40の横壁面には開口が形成され、この開口を通して半導体レーザLD1〜LD7に駆動電流を供給する配線47がパッケージ外に引き出されている。なお図18では、図面の錯綜を回避するため、複数の半導体レーザのうち半導体レーザLD7の符号のみを示すと共に、複数のコリメータレンズのうちコリメータレンズ17の符号のみを示している。
【0054】
図19に示すように、コリメータレンズ11〜17の各々は、非球面を備えた円形レンズの光軸を含む領域を平行な平面で細長く切り取った形状に形成されている。この細長形状のコリメータレンズは、例えば、樹脂又は光学ガラスをモールド成形することによって形成することができる。コリメータレンズ11〜17は、長さ方向が半導体レーザLD1〜LD7の発光点の配列方向(図19の左右方向)と直交するように、上記発光点の配列方向に密接配置されている。一方、半導体レーザLD1〜LD7としては、発光幅が2μmの活性層を備え、活性層と平行な方向、直角な方向の拡がり角が例えば各々10°、30°のレーザ光B1〜B7を発するレーザが用いられている。これらの半導体レーザLD1〜LD7は、活性層と平行な方向に発光点が1列に並ぶように配置されている。
【0055】
従って、各発光点から発せられたレーザ光B1〜B7は、上述のように細長形状の各コリメータレンズ11〜17に対して、拡がり角度が大きい方向が長さ方向と一致し、拡がり角度が小さい方向が幅方向(長さ方向と直交する方向)と一致する状態で入射することになる。また集光レンズ20は、非球面を備えた円形レンズの光軸を含む領域を平行な平面で細長く切り取った扁平な形状とされており、扁平な形状の長手方向がコリメータレンズ11〜17の配列方向、すなわち水平方向に沿うように配置されている。コリメータレンズ11〜17を透過したレーザ光B1〜B7は集光レンズ20によって集光され、マルチモード光ファイバ30の入射端部へ各々入射される。
【0056】
図20に示すように、画像露光装置100は画像露光装置100全体の動作を制御する全体制御部300を備えており、この全体制御部300には変調回路301が接続されており、変調回路301にはDMD50を制御するコントローラ302が接続されている。また全体制御部300には、レーザモジュール64を駆動するLD駆動回路303と、移動ステージ152を駆動するステージ駆動装置304が各々接続されている。
【0057】
〔画像露光装置の動作〕
次に本実施形態の作用として画像露光装置100の動作を説明する。記録媒体150に配線パターン等の画像を露光記録する場合、全体制御部300はLD駆動回路303を介してスキャナ162の各露光ヘッド166の各レーザモジュール64に設けられている半導体レーザLD1〜LD7を各々発光させる。これにより、各露光ヘッド166の各レーザモジュール64に設けられている半導体レーザLD1〜LD7からはレーザ光B1,B2,B3,B4,B5,B6及びB7が発散光として各々射出され、これらのレーザ光B1〜B7は、対応するコリメータレンズ11〜17によっての各々平行光化される。平行光化されたレーザ光B1〜B7は、集光レンズ20によって集光され、マルチモード光ファイバ30のコア30aの入射端面上で収束する。
【0058】
本実施形態では、コリメータレンズ11〜17及び集光レンズ20によって集光光学系が構成されると共に、この集光光学系とマルチモード光ファイバ30によって合波光学系が構成されており、集光レンズ20によって集光されたレーザ光B1〜B7は、マルチモード光ファイバ30のコア30aに入射して光ファイバ内を伝搬し、1本のレーザ光Bに合波されてマルチモード光ファイバ30の出射端部に結合された光ファイバ31から射出される。なお、各レーザモジュール64において、例えばレーザ光B1〜B7のマルチモード光ファイバ30への結合効率が0.9で、半導体レーザLD1〜LD7の各出力が50mWである場合には、個々のレーザモジュール64(アレイ状に配列された光ファイバ31の各々)から出力315mW(=50mW×0.9×7)の合波レーザ光Bを得ることができる。従って、14本のマルチモード光ファイバ31全体では、4.4W(=0.315W×14)の出力のレーザ光Bが得られる。
【0059】
また、記録媒体150への配線パターン等の画像の露光記録に際しては、露光記録する画像を表す画像データ(描画用ラスタデータ)が変調回路301からコントローラ302に入力され、入力された画像データはコントローラ302が内蔵するフレームメモリに一旦記憶される。この画像データは、画像を構成する各画素の濃度を2値(ドットの記録の有無)で表すデータである。また、記録媒体150への画像の露光記録時には、記録媒体150を表面に吸着した移動ステージ152が、ステージ駆動装置304により、ガイド158に沿ってゲート160の上流側から下流側に一定速度で移動される。
【0060】
移動ステージ152がゲート160の直下を通過する際に、ゲート160に取り付けられたセンサ164により記録媒体150の先端が検出されると、コントローラ302のフレームメモリに記憶された画像データがコントローラ302のデータ処理部によって複数ライン分ずつ順次読み出され、データ処理部は読み出した画像データに基づいて各露光ヘッド166毎に制御信号を生成する。また、コントローラ302のミラー駆動制御部は、データ処理部によって生成された制御信号に基づいて、各露光ヘッド166毎にDMD50のマイクロミラーの各々がオン状態又はオフ状態に切り替わるように制御する。
【0061】
個々の露光ヘッド166において、ファイバアレイ光源66からDMD50にレーザ光Bが照射されると、DMD50の各マイクロミラーのうちオン状態のマイクロミラーによって反射されたレーザ光は、レンズ系54、58を透過して記録媒体150上に結像される。これにより、ファイバアレイ光源66から射出されたレーザ光が画素毎にオンオフ変調されて、記録媒体150がDMD50の使用画素数(オンオフ制御しているマイクロミラーの数)と略同数の画素単位(露光エリア168)で露光される。また、記録媒体150が移動ステージ152と共に一定速度で移動されることにより、スキャナ162に対して記録媒体150がステージ移動方向と反対の方向へ移動する副走査が成され、記録媒体150上に各露光ヘッド166に対応する帯状の露光済み領域170が形成され、記録媒体150に画像が露光記録される。
【0062】
ここで、記録媒体150への画像の露光記録は、記録媒体150に照射されたレーザ光がレジストフィルム106の光透過層110を透過して感光層108へ到達することで成される。しかし、記録媒体150の各部分におけるレジストフィルム106の光透過層110の厚さは製造公差の範囲内でばらついているので、光透過層110の共振周波数も記録媒体150の各部分で相違しており、記録媒体150に照射されたレーザ光が単一波長のレーザ光であるとすると、光透過層110を透過して感光層108へ到達するレーザ光の光量(光透過層透過光量)が記録媒体150の各部分でばらつくことになり、この光透過層透過光量のばらつきが、記録媒体150の各部分における感光層108の見掛け上の感度のむらとして現れ、これに伴い記録媒体150に露光記録した配線パターン中の個々の線の幅が記録媒体150の各部分でばらつくことになる。特に、記録媒体150は光透過層110が光沢を有しているので、これに伴って光透過層110を透過するレーザ光の振幅が大きくなり、光透過層110の共振周波数が記録媒体150の各部分で相違していることが、記録媒体150の各部分における光透過層透過光量のばらつきとしてより顕著に現れる。
【0063】
これに対して本実施形態に係る画像露光装置100では、前述のように、単一の露光ヘッド166にレーザ光源としての半導体レーザLDが多数個設けられているが、単一の露光ヘッド166に設けられている全ての半導体レーザLDの発振波長が、400〜410nm(405±5nm)の波長範囲内におよそ一様に分布するように定められている。図1からも明らかなように、上記の波長範囲400〜410nmは、公称の膜厚が13μm(実際の膜厚が13.15μm)の光透過層110(PETフィルム)の共振最小波長範囲よりも広く(詳しくは前記共振最小波長範囲の4倍以上)、かつ、公称の膜厚が18μm(実際の膜厚が18.6μm)の光透過層110(PETフィルム)の共振最小波長範囲よりも広い(詳しくは前記共振最小波長範囲の4倍以上)。
【0064】
そして、単一の露光ヘッド166に設けられている多数個の半導体レーザLDから射出されたレーザ光は、同一のレーザモジュール64に設けられた複数個の半導体レーザLDを単位として、同一のマルチモード光ファイバ30へ各々集光・合波されて伝播された後に、レンズ系67によって全て合波されることで、平行光に近くビーム断面内強度が均一化されると共に、上記波長範囲内の各波長のレーザ光が合成されたレーザ光としてDMD50に照射され、DMD50によって変調された後に、記録媒体150のうち露光ヘッド166に対応する領域に露光レーザ光として照射される。
【0065】
これにより、記録媒体150上の各部分のうち、露光レーザ光に含まれる特定波長のレーザ光の光透過層透過光量が最小値を示す部分において、露光レーザ光に含まれる他の波長のレーザ光の光透過層透過光量が最小値よりも大きい値を示すことで、前記部分における露光レーザ光全体としての光透過層透過光量の低下が抑制されると共に、記録媒体150上の各部分のうち、露光レーザ光に含まれる特定波長のレーザ光の光透過層透過光量が最大値を示す部分においても、露光レーザ光に含まれる他の波長のレーザ光の光透過層透過光量が最大値よりも小さい値を示すことで、前記部分における露光レーザ光全体としての光透過層透過光量の増大が抑制される。従って、記録媒体150上の各部分における露光レーザ光全体の光透過層透過光量のばらつきを小さくすることができ、記録媒体150の各部分における感光層108の見掛け上の感度のむらを抑制することができ、これに伴い、記録媒体150に露光記録した配線パターン中の個々の線の幅が記録媒体150の各部分でばらつくことを抑制することができる。
【0066】
また、露光ヘッド166の内部温度(半導体レーザLDの周囲温度)の変動等により、露光ヘッド166の各半導体レーザLDから射出されるレーザ光の波長が変化した場合にも、記録媒体150上の各部分において、露光レーザ光の中に光透過層透過光量が波長変化前よりも減少するレーザ光が生ずる一方で、露光レーザ光の中に光透過層透過光量が波長変化前よりも増大するレーザ光も生ずるので、記録媒体150上の各部分における露光レーザ光全体としての光透過層透過光量の変動が抑制される。これにより、半導体レーザLDの周囲温度の変動等に伴うレーザ光の波長の変動により、記録媒体150の各部分における感光層108の見掛け上の感度が変化することも抑制することができ、記録媒体150に露光記録した配線パターン中の個々の線の幅が変化することを抑制することができる。従って、記録媒体150の各部分における光透過層110の厚さのばらつきや、半導体レーザLDの周囲温度の変動等に伴うレーザ光の波長の変動が、記録媒体150に露光記録する画像の画質に悪影響を及ぼすことを回避することができ、記録媒体150に高画質・高精細に画像を露光記録することができる。
【0067】
なお、上記では単一の露光ヘッド166に設けられている全ての半導体レーザLDの発振波長を、400〜410nm(405±5nm)の波長範囲内におよそ一様に分布するように定めることで、射出レーザ光が合波されて記録媒体150に照射される半導体レーザLDの発振波長を、記録媒体150の光透過層110(詳しくは公称の膜厚が13μm又は18μm(実際の膜厚が13.15μm又は18.6μm)のPETフィルム)の共振最小波長範囲の4倍以上の波長範囲内におよそ一様に分布させた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、射出レーザ光が合波されて記録媒体150に照射される半導体レーザLDの発振波長を、記録媒体150の光透過層110の共振最小波長範囲の2倍以上の波長範囲内に分布させてもよいし、記録媒体150の光透過層110の共振最小波長範囲以上の波長範囲内に分布させてもよく、この場合も記録媒体の感度むらや感度変化による画質劣化を抑制する効果が得られる。
【0068】
また、上記では射出レーザ光が合波されて記録媒体150に照射される半導体レーザLDの発振波長を、記録媒体150の光透過層110の共振最小波長範囲以上の波長範囲内におよそ「一様に」分布させた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものでもなく、レーザ光源の発振波長を上記波長範囲内におよそ「一様に」分布させることが望ましいものの、レーザ光源の発振波長を上記波長範囲内に単に分布させたとしても(上記波長範囲内における発振波長の分布に多少の偏倚があったとしても)、単一の波長のレーザ光を記録媒体に照射する場合と比較して、記録媒体の感度むらや感度変化による画質劣化を抑制する効果を得ることができる。
【0069】
また、上記では多数の半導体レーザLDから射出されたレーザ光を合波して記録媒体150に照射する構成(単一の露光ヘッド166に設けられているレーザモジュール64の数が14個、個々のレーザモジュール64に設けられている半導体レーザLDの数が7個である場合、単一の露光ヘッド166に設けられている半導体レーザLDの総数(射出レーザ光が合波されて記録媒体150に照射される半導体レーザLDの総数)は98個となる)を例に説明したが、合波するレーザ光の数(半導体レーザLDの数)は上記数値に限られるものではなく複数であればよい。図3を用いて先に説明したように、射出レーザ光を合波するレーザ光源の数が2個であっても、個々のレーザ光源から射出されるレーザ光の波長を共振最小波長範囲内に分布させれば、単一の波長のレーザ光を記録媒体に照射する場合と比較して、記録媒体の感度むらや感度変化による画質劣化を抑制する効果を得ることができる。
【0070】
更に、上記では本発明に係る記録媒体として、光透過層110が設けられていると共に感光層108が1層のみ設けられたレジストフィルム106が、ガラスエポキシ製の基材104Aの表裏面に銅製の導電層104Bが形成された基板104に貼着されて成る記録媒体150を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上記のレジストフィルムをガラス基板に貼着した構成の記録媒体に本発明を適用することも可能である。この種の記録媒体はフラットパネルディスプレイ等に用いるカラーフィルタ基板を製造する際に使用される。なお、上記のカラーフィルタ基板は、ガラス基板にレジストフィルムを貼着して記録媒体を形成し、当該記録媒体にR,G,Bのうちの特定色のフィルタのパターンを露光記録し、現像等の工程を経てガラス基板上に特定色のフィルタのパターンを形成することを、R,G,B各色について繰り返すことによって作製される。また、レジストフィルムについても、図5に示すように感光層が1層のみ設けられた構成に限られるものではなく、複数の感光層が積層されると共にレーザ光入射側に光透過層が設けられた構成のレジストフィルムを用い、当該レジストフィルムを基板に貼着することで作製した記録媒体に本発明を適用することも可能である。
【0071】
また、上記では本発明に係る記録媒体として、光透過層及び感光層が設けられたレジストフィルムを基板等に貼着することで作製される記録媒体を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものでもなく、感光層を備えると共にその上層に光透過層が設けられた記録媒体であれば本発明を適用可能である。そして、本発明に係る画像記録装置についても、上記で説明した画像露光装置100の構成に限定されるものではなく、感光層を備えると共にその上層に光透過層が設けられた任意の記録媒体に画像を記録する任意の構成の画像記録装置に本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0072】
次に、本発明の効果を確認するために本願発明者等が実施した解析検討の結果について説明する。この解析検討では、公称膜厚13μmのPET製フィルムから成る光透過層に対して照射光の波長の変化に対する光透過層の光透過率の変化を測定した実験の結果(図1参照)に基づき、照射光の波長範囲の変動に伴う光透過層の光透過率の変動の度合が、照射光の波長の分布範囲の広さによってどのように変化するのかを演算によって確認した。まず上記実験の結果を次の表1に数値で示す。
【0073】
【表1】

【0074】
本願発明者等は上記実験の結果に基づき、まず比較例として、波長範囲の広さが共振最小波長範囲K未満となるように設定した401.0〜402.2(nm)の波長範囲(比較例1)、402.0〜403.2(nm)の波長範囲(比較例2)、402.8〜404.2(nm)の波長範囲 (比較例3)、403.8〜405.2(nm)の波長範囲(比較例4)について、光透過層の光透過率の平均値を各々演算すると共に、比較例1〜4の波長範囲毎に求めた光透過率の平均値の最大値と最小値の差、総平均値を各々演算し、更に「(最大値−最小値)/総平均値」も演算した。なお、比較例1〜4の波長範囲を図22に矢印で各々示す。
【0075】
また本願発明者等は、実施例1として、波長範囲の広さが共振最小波長範囲K以上かつ2K(共振最小波長範囲Kの2倍)未満となるように設定した400.6〜402.8(nm)の波長範囲(実施例1-1)、401.6〜403.8(nm)の波長範囲(実施例1-2)、402.4〜404.8(nm)の波長範囲 (実施例1-3)、403.4〜405.6(nm)の波長範囲(実施例1-4)について、光透過層の光透過率の平均値を各々演算すると共に、実施例1-1〜1-4の波長範囲毎に求めた光透過率の平均値の最大値と最小値の差、総平均値を各々演算し、更に「(最大値−最小値)/総平均値」も演算した。なお、実施例1-1〜1-4の波長範囲を図23(A)に矢印で各々示す。
【0076】
また本願発明者等は、実施例2として、波長範囲の広さが2K(共振最小波長範囲Kの2倍)以上かつ4K(共振最小波長範囲Kの4倍)未満となるように設定した400.6〜404.8(nm)の波長範囲(実施例2-1)、401.6〜405.6(nm)の波長範囲(実施例2-2)、402.4〜406.6(nm)の波長範囲 (実施例2-3)、403.4〜407.6(nm)の波長範囲(実施例2-4)について、光透過層の光透過率の平均値を各々演算すると共に、実施例2-1〜2-4の波長範囲毎に求めた光透過率の平均値の最大値と最小値の差、総平均値を各々演算し、更に「(最大値−最小値)/総平均値」も演算した。なお、実施例2-1〜2-4の波長範囲を図23(B)に矢印で各々示す。
【0077】
更に本願発明者等は、実施例3として、波長範囲の広さが4K(共振最小波長範囲Kの4倍)以上となるように設定した400.6〜408.6(nm)の波長範囲(実施例3-1)、401.6〜409.6(nm)の波長範囲(実施例3-2)、402.4〜410.6(nm)の波長範囲 (実施例3-3)、403.4〜411.6(nm)の波長範囲(実施例3-4)について、光透過層の光透過率の平均値を各々演算すると共に、実施例3-1〜3-4の波長範囲毎に求めた光透過率の平均値の最大値と最小値の差、総平均値を各々演算し、更に「(最大値−最小値)/総平均値」も演算した。なお、実施例3-1〜3-4の波長範囲を図23(C)に矢印で各々示す。上記演算の結果を次の表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
上記の解析検討で求めた (最大値−最小値)/総平均値は、光透過層に照射する照射光の波長範囲が温度変化等に伴ってシフトした場合の光透過層の光透過率の変動割合に相当する。本願発明者等による解析検討の結果によれば、上記の表2にも示すように、比較例→実施例3と波長範囲が広くなるに従って (最大値−最小値)/総平均値の値が明らかに小さくなっている。以上の結果より、複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波し、感光層と該感光層の上層に設けられた光透過層を含む記録媒体に合波したレーザ光を照射することで、記録媒体に画像を記録するに際し、複数のレーザ光源から射出されるレーザ光の波長の分布範囲を、少なくとも共振最小波長範囲以上、好ましくは共振最小波長範囲の2倍以上、より好ましくは共振最小波長範囲の4倍以上とすれば、温度変化等に伴って複数のレーザ光源から射出されるレーザ光の波長の分布範囲がシフトした場合の光透過層の光透過率の変動割合を小さく抑制することができ、記録画像の画質の変動を抑制できることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】PETフィルムの波長−光透過率特性を示す線図である。
【図2】ファブリーペロー共振器の概略構成図である。
【図3】(A)は共振最小波長範囲、(B)は2個のレーザ光源を用いた場合を例に本発明の作用を説明するための、光透過層の波長−光透過率特性を示す線図である。
【図4】本実施形態に係る画像露光装置の外観を示す斜視図である。
【図5】記録媒体の一例を示す概略図である。
【図6】画像露光装置のスキャナの概略を示す斜視図である。
【図7】(A)は記録媒体上に形成される露光済み領域を示す平面図、(B)は各露光ヘッドの露光エリアの配列を示す平面図である。
【図8】露光ヘッドの光学系の概略構成を示す斜視図である。
【図9】露光ヘッドの光学系の詳細を示す構成図である。
【図10】DMDを部分的に拡大して示す斜視図である。
【図11】DMDのマイクロミラーの、(A)はオン状態、(B)はオフ状態を各々示す斜視図である。
【図12】DMDを、(A)は傾斜配置しない場合、(B)は傾斜配置した場合の、露光ビームの配置及び走査線を各々示す平面図である。
【図13】ファイバアレイ光源を示す斜視図である。
【図14】ファイバアレイ光源のレーザ出射部における発光点の配列を示す正面図である。
【図15】マルチモード光ファイバの結合部を示す側面図である。
【図16】合波レーザ光源の構成を示す平面図である。
【図17】レーザモジュールの構成を示す平面図である。
【図18】レーザモジュールの構成を示す側面図である。
【図19】レーザモジュールのコリメータレンズを示す正面図である。
【図20】画像露光装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図21】傾斜配置されたDMDによる露光ビームの位置を示す露光エリアの説明図である。
【図22】本願発明者等が実施した解析検討における比較例の波長範囲を示す線図である。
【図23】本願発明者等が実施した解析検討における実施例の波長範囲を示す線図である。
【符号の説明】
【0081】
20 集光レンズ
30,31 光ファイバ
50 DMD
71 集光レンズ
72 ロッドインテグレータ
100 画像露光装置
104 基板
106 レジストフィルム
108 感光層
110 光透過層
150 記録媒体
166 露光ヘッド
LD 半導体レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波し、感光層と該感光層の上層に設けられた光透過層を含む記録媒体に前記合波したレーザ光を照射することで、前記記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、
前記複数のレーザ光源は、各々の射出レーザ光の波長が、前記光透過層の光透過率が極大となる第1の波長と、前記光透過層の光透過率が極小となりかつ前記第1の波長との差が最小の第2の波長の間に相当する共振最小波長範囲以上の所定波長範囲内に分布するように定められていることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記所定波長範囲は、前記共振最小波長範囲の2倍以上の波長範囲であることを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記所定波長範囲は、前記共振最小波長範囲の4倍以上の波長範囲であることを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記複数のレーザ光源は、各々の射出レーザ光の波長が、前記所定波長範囲内に分布しかつ前記光透過層の光透過率が互いに相違する波長となるように定められていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記画像記録装置は、複数の変調領域が設けられた変調面に入射された光束の射出方向を、個々の変調領域に入射された部分光束の各々を単位として独立に制御可能な面変調素子を備え、前記複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波したレーザ光束を前記面変調素子の前記変調面へ入射させると共に、当該入射させたレーザ光束のうち前記面変調素子によって所定方向へ射出された複数本の部分レーザ光束を、前記記録媒体上の各部分に前記面変調素子の互いに異なる変調領域から射出された部分レーザ光束が各々少なくとも一部は重複照射されるように案内することで、前記記録媒体に画像を記録する構成であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の画像記録装置。
【請求項6】
感光層と該感光層の上層に設けられた光透過層を含む記録媒体に、複数のレーザ光源から射出されたレーザ光を合波して照射することで、前記記録媒体に画像を記録する画像記録方法であって、
前記複数のレーザ光源の各々の射出レーザ光の波長が、前記光透過層の光透過率が極大となる第1の波長と、前記光透過層の光透過率が極小となりかつ前記第1の波長との差が最小の第2の波長の間に相当する共振最小波長範囲以上の所定波長範囲内に分布するように定めることを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−58196(P2007−58196A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202323(P2006−202323)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】