説明

画像読取ユニットおよび原稿読取装置ならびに画像形成装置

【課題】簡易な構成を維持しつつ、レンズなどの結像光学系の光路内に迷光が入りこまないようにした画像読取ユニットを提供する。
【解決手段】光電変換素子のCCD4とレンズ3との間の光路中に、中央部に光透過部である円形の通孔21が形成された板状の遮光部材22を配設し、さらに、通孔21の内形状を、レンズ3の鏡筒23の外形状よりも小さく設定する。このため、遮光部材22によって、光軸と平行に入射する迷光がCCD4の受光面に入射することを防ぐことができ、光ノイズによる読取画像の劣化,S/N比の低下,MTFの劣化、色再現性の劣化などが抑制され、良好な画像読取が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取対象からの反射光をレンズを介して光電変換素子に集光させて画像情報を読み取る画像読取ユニット、および、その画像読取ユニットを搭載する原稿読取装置ならびに画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル複写機を始めとして、ファクシミリ装置や電子ファイリング装置などの画像入力手段として、光源より原稿を反射して得た画像データを含む反射光を複数のミラーで偏向させた後、レンズからなる結像光学系を介して光電変換素子(CCD:Charge Coupled Device,CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)に導く構成の画像読取装置が主流になってきている。
【0003】
図9は従来の原稿読取装置の一例を示す概略構成図であり、原稿を照明するための光源として円筒形状のキセノンランプ1を備え、キセノンランプ1から出射された照射光をコンタクトガラス2上に載置された原稿に照射し、原稿からの拡散反射光をレンズ3を介してCCD4に集光し、CCD4で電気信号に変換して原稿画像情報を得ている。
【0004】
図9に示す原稿読取装置では、原稿からの反射光を偏向する第1ミラー5とキセノンランプ1とを備えた第一走行体6と、第1ミラー5からの光を受けてレンズ3方向へ偏向する第2ミラー7および第3ミラー8を備えた第二走行体9とが移動可能に設けられ、第一走行体6および第二走行体9がコンタクトガラス2に沿って走行することにより、原稿を走査するようになっている。
【0005】
また、前記レンズ3とCCD4、およびCCD4を実装する基板10からなる画像読取ユニットでは、基板10から発する電磁波などの外部放出を防ぐために、レンズ3およびCCD4を覆うインナーカバー11が設けられており、インナーカバー11のレンズ3における原稿反射光の光路上流には、該原稿反射光をレンズ3に入射させるための開口11aが形成されている。
【0006】
また、前記従来の原稿読取装置では、原稿面に光を照射した際に得られる光学像をレンズ3を介してCCD4の受光面に結像させているが、レンズ3を通らない迷光がCCD4の受光面に侵入することがあり、これによって光ノイズによる読取画像の劣化、S/N比の低下、MTF(Modulation Transfer Function)の劣化、色再現性の劣化などの不具合が発生していた。
【0007】
このため前記画像読取ユニットの光学系には、特許文献1に示すように、レンズの周囲の不要光を遮るための遮光部材が設けられ、この遮光部材によって、光学系を通過することなく、CCDに直接到る光を遮断するようにしている。
【特許文献1】特開2004−194018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記従来の技術では、図10に示す画像読取ユニットにおける迷光入射を説明するための平面一部断面図のように、レンズ3とCCD4の間に設置された箱状の遮光部材12を設置することにより、レンズ3の光軸に対して斜めに入射する迷光を遮光部材12で遮光することができるが、レンズ3の光軸に平行に入射する迷光を防ぐことはできない。
【0009】
また、これに対応するために、遮光部材12の開口部12aを円状にする構造が考えられるが、レンズ3との間のクリアランスを完全になくすことはできないため、スポンジなどのクリアランスを埋めるための別部材を追加設置する必要がある。
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、簡易な構成を維持しつつ、レンズなどの結像光学系の光路内に迷光が入り込まないようにした画像読取ユニット、および、その画像読取ユニットを搭載した原稿読取装置ならびに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、読取対象を照明し、該読取対象からの反射光をレンズを介して光電変換素子に集光させて画像情報を読み取る画像読取ユニットにおいて、前記レンズと前記光電変素子との間の光路に光透過部を有する遮光部材を設け、前記光透過部の内形状を、前記レンズの鏡筒外形よりも小さく設定したことを特徴とし、この構成によって、レンズと光電変換素子の間に遮光部材を設け、遮光部材にレンズ鏡筒より小さい光透過部を形成したため、光軸と平行に入射する迷光が光電変換素子に入射することを防ぐことができ、光ノイズによる読取画像の劣化,S/N比の低下,MTFの劣化、色再現性の劣化などがなく、良好に画像を読み取ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の画像読取ユニットにおいて、光透過部の内形状を、レンズから出射した反射光の光透過部における光束より大きく設定したことを特徴とし、この構成によって、光電変換素子に入射する前に、遮光部材によって原稿反射光の結像光が光学的に蹴られることがないため、良好な画像を得ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の画像読取ユニットにおいて、遮光部材の遮光部を、当該画像読取ユニットを覆うカバー部材の開口部からレンズを通らずに光電変換素子方向へ入射する光を遮光する部位に配設したことを特徴とし、この構成によって、カバー部材の開口から入射する迷光が光電変換素子に入射しないため、光軸と平行に入射する迷光だけでなく、光軸に対して角度を持った迷光も光電変換素子に入射しないため、光ノイズによる読取画像の劣化,S/N比の低下,MTFの劣化,色再現性の劣化などのない、良好な画像を得ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3いずれか1項記載の画像読取ユニットにおいて、遮光部材をレンズの鏡筒に突き当てることにより位置決めしたことを特徴とし、この構成によって、遮光部材をレンズの鏡筒に突き当てることにより、レンズと遮光部材の間から入射する、光軸に対して角度をもった迷光の入射がなく、より良好な画像を得ることができ、また、遮光部材の位置決めが容易になる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の画像読取ユニットにおいて、遮光部材を当該画像読取ユニットのハウジングの一部に形成したことを特徴とし、この構成によって、画像読取ユニットのハウジングを利用して遮光部材を設けることにより、別途部材を設ける必要なく、低コストで前記各作用効果を得ることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、原稿を照明し、該原稿からの反射光をレンズを介して光電変換素子に集光させて原稿画像を読み取る原稿読取部を備えた原稿読取装置において、前記原稿読取部として請求項1〜5いずれか1項記載の画像読取ユニットを搭載したことを特徴とし、この構成によって、原稿読取部において読取画像の劣化,S/N比の低下,MTFの劣化、色再現性の劣化などが抑制されるため、良好な原稿画像の読み取りが行われる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、画像読取部と、該画像読取部から画像情報を受けて画像形成を行う画像形成部とを具備する画像形成装置において、前記画像読取部として請求項6記載の画像読取装置を搭載したことを特徴とし、この構成によって、画像読取部において読取画像の劣化,S/N比の低下,MTFの劣化、色再現性の劣化などが抑制されるため、良好な画像形成が行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る画像読取ユニットによれば、レンズと光電変換素子の間に遮光部材を設け、遮光部材にレンズ鏡筒より小さい光透過部を形成したため、光軸と平行に入射する迷光が光電変換素子に入射することを防ぐことができ、光ノイズによる読取画像の劣化,S/N比の低下,MTFの劣化、色再現性の劣化などがなく、良好に画像を読み取ることができる。
【0019】
本発明に係る画像読取ユニットを具備する原稿読取装置および画像形成装置によれば、光電変換素子における光ノズルを抑制することができるため、良好な原稿読取あるいは画像形成が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
なお、本実施形態の画像読取ユニットは、図9に示す画像読取装置に搭載されるものであり、以下の説明において、図9にて説明した部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0022】
図1は本発明に係る画像読取ユニットの実施形態1の構成を示す斜視図、図2は実施形態1の平面一部断面図である。
【0023】
図1において、光電変換素子のCCD4とレンズ3との間の光路中に、中央部に光透過部である円形の通孔21が形成されている板状の遮光部材22を配設し、さらに、通孔21の内形状(内径)を、レンズ3の鏡筒23の外形状(外径)よりも小さく設定している。
【0024】
このため、図2に示すように、遮光部材22の通孔21の内径Aと、鏡筒23の外径LとがA<Lとの関係になって、光軸と平行に入射する迷光がCCD4の受光面に入射することを防ぐことができ、光ノイズとして読取画像の劣化,S/N比の低下,MTFの劣化、色再現性の劣化などが抑制され、良好なる画像読取が行われる。
【0025】
図3は本実施形態における原稿反射光の結像光の光路を示す平面一部断面図であり、一点鎖線はレンズ3から出射する原稿反射光の結像光の光路を示し、遮光部材22の通孔21の内径Aが、レンズ3から出射する原稿反射光の通孔21における光束径Bよりも大きく設定している。このため、レンズ3によってCCD4上に結像する光を光学的に蹴ることがなくなる。
【0026】
図4は図9に示す従来の原稿読取装置に前記遮光部材を設置した場合の説明図であって、従来の原稿読取装置において画像読取ユニットを覆うカバー部材であるインナーカバー11は、レンズ3あるいはCCD4に入射する迷光を防ぐだけでなく、CCD4を実装する基板10から発生する電磁波などが外部に放出されることを遮断する機能を有する。
【0027】
ここで、図4に示すように、遮光部材22の光軸方向の設置位置によっては、インナーカバー11の開口11aから入射する光線が迷光としてCCD4に入射する場合がある。
【0028】
そこで、図5に示す本発明に係る実施形態2の構成を示す平面一部断面図のように、遮光部材22をレンズ3に近づけ、インナーカバー11の開口11aから入射する光が遮光部材22によって遮光される位置に、遮光部材22および通孔21を配置すれば、光軸に対して角度をもった迷光を遮光することができる。
【0029】
図6は本発明に係る画像読取ユニットの実施形態3の構成を示す平面一部断面図であり、遮光部材22をレンズ3の鏡筒23端部に突き当てることによって位置決めしている。
【0030】
このように構成したことによって、光軸に対して角度をもった迷光を遮光することができると共に、遮光部材22の位置決めを容易に行うことができる。この場合、遮光部材22に光軸に対して平行に移動させるための機構を備えれば、容易に鏡筒23への位置決め設定を行うことができる。
【0031】
図7は本発明に係る画像読取ユニットの実施形態4の構成を示す斜視図であり、当該画像読取ユニットの構成部材を保持するためのハウジング25の一部に、前記遮光部材22および通孔21に相当する部分を設けており、ハウジング25を利用して前記遮光部材22と同一機能を備えさせることにより、別途部材を設ける必要なく、低コストで前記各実施形態の作用効果を得ることができる。
【0032】
図8は本発明に係る画像読取ユニットを搭載した画像形成装置の実施形態であるレーザプリンタの構成図であり、なお、図9にて説明した原稿読取装置の構成部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0033】
本レーザプリンタの画像形成部30は基本的に公知の構成であって、感光体31、帯電ローラ32、現像装置33、転写ローラ34、クリーニング装置35、定着装置36、光走査装置37、給紙カセット38、レジストローラ対39、給紙コロ40、用紙搬送路41、排紙ローラ42、排紙トレイ43などから構成されているものである。
【0034】
また、画像読取部45は、図9にて説明した原稿読取装置の構成と同様なものであって、前記各実施形態の構成のように本発明による画像読取ユニットの改良構造を採用したものである。
【0035】
画像読取部45では、第一走行体6と第二走行体9を移動させ、コンタクトガラス2上の原稿(図示せず)を走査し、原稿からの反射光像をCCD4に結像させる。CCD4において原稿の反射光像を光電変換してアナログ画像信号とし、原稿の読み取りが行われる。そして原稿の読取終了後に、第一走行体6と第二走行体9はホームポジション位置に復帰する。
【0036】
なお、CCD4から出力されたアナログ画像信号は、図示しないアナログ/デジタル変換器によりデジタル画像信号に変換され、画像処理回路を搭載した回路基板において、各々の画像処理(2値化,多値化,階調処理,変倍処理,編集処理など)が施される。
【0037】
画像処理信号は光走査装置37へ出力され、光走査装置37による感光体31に対する光走査にて感光体31の表面に潜像が形成される。感光体31の潜像は現像装置33でトナー現像され、このトナー像が転写ローラ34により用紙に転写される。転写後の用紙は、定着装置36による定着処理を受けた後、排紙ローラ42によって排紙トレイ43へ排出される。
【0038】
このように、本画像形成装置において、前記各実施形態における画像読取ユニットの改良構造を採用することにより、原稿読取部において読取画像の劣化,S/N比の低下,MTFの劣化、色再現性の劣化などが抑制されるため、良好で高品位の画像形成が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、複写機,ファクシミリ,スキャナなど画像形成装置における原稿を照明する画像読取ユニット、あるいは画像読取装置として適用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る画像読取ユニットの実施形態1の構成を示す斜視図
【図2】実施形態1の平面一部断面図
【図3】本実施形態における原稿反射光の結像光の光路を示す平面一部断面図
【図4】図9に示す従来の原稿読取装置に遮光部材を設置した場合の説明図
【図5】本発明に係る実施形態2の構成を示す平面一部断面図
【図6】本発明に係る画像読取ユニットの実施形態3の構成を示す平面一部断面図
【図7】本発明に係る画像読取ユニットの実施形態4の構成を示す斜視図
【図8】本発明に係る画像読取ユニットを搭載した画像形成装置の実施形態であるレーザプリンタの構成図
【図9】従来の原稿読取装置の一例を示す概略構成図
【図10】従来の画像読取ユニットにおける迷光入射を説明するための平面一部断面図
【符号の説明】
【0041】
3 レンズ
4 CCD
11 インナーカバー
11a インナーカバーの開口
21 遮光部材の通孔(光透過部)
22 遮光部材
23 鏡筒
25 ハウジング
30 画像形成部
45 画像読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象を照明し、該読取対象からの反射光をレンズを介して光電変換素子に集光させて画像情報を読み取る画像読取ユニットにおいて、
前記レンズと前記光電変素子との間の光路に光透過部を有する遮光部材を設け、前記光透過部の内形状を、前記レンズの鏡筒外形よりも小さく設定したことを特徴とする画像読取ユニット。
【請求項2】
前記光透過部の内形状を、前記レンズから出射した反射光の前記光透過部における光束より大きく設定したことを特徴とする請求項1記載の画像読取ユニット。
【請求項3】
前記遮光部材の遮光部を、当該画像読取ユニットを覆うカバー部材の開口部から前記レンズを通らずに前記光電変換素子方向へ入射する光を遮光する部位に配設したことを特徴とする請求項1または2記載の画像読取ユニット。
【請求項4】
前記遮光部材を前記レンズの鏡筒に突き当てることにより位置決めしたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の画像読取ユニット。
【請求項5】
前記遮光部材を当該画像読取ユニットのハウジングの一部に形成したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の画像読取ユニット。
【請求項6】
原稿を照明し、該原稿からの反射光をレンズを介して光電変換素子に集光させて原稿画像を読み取る原稿読取部を備えた原稿読取装置において、
前記原稿読取部として請求項1〜5いずれか1項記載の画像読取ユニットを搭載したことを特徴とする原稿読取装置。
【請求項7】
画像読取部と、該画像読取部から画像情報を受けて画像形成を行う画像形成部とを具備する画像形成装置において、
前記画像読取部として請求項6記載の画像読取装置を搭載したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−86594(P2009−86594A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259776(P2007−259776)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】