説明

画像読取装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】温度変化があっても、イメージセンサの位置精度を確保するとともに、煩雑な部品組立をなくして生産性を向上させることを可能にした画像読取装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像読取装置80は、イメージセンサ74を備えた回路基板81と、この回路基板81とは熱膨張係数の異なる材料からなり回路基板81を保持する保持部材85と、イメージセンサ74上に光学像を結像させる結像レンズ73を備え、保持部材85は、ネジ86が弾性ワッシャ87を介して長孔81dに挿入されネジ孔85hに螺合されることにより、回路基板81を光軸Zと垂直な方向に変位可能に保持する基板保持部85gと、弾性部90a、91bによりイメージセンサ74を光軸と垂直な方向に当接させるセンサ当接部85e、85fとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を光学的に読み取る画像読取装置及びそれを備える複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やイメージスキャナのように原稿を光学的に読み取る画像読取装置においては、照明ランプによって得られる原稿からの反射光を、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を有するイメージセンサにより電気信号に変換して、原稿を読み取るようになっている。このイメージセンサを画像読取装置に実装する方法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、まず、イメージセンサを板状の回路基板に実装し、この回路基板をブラケット等の保持部材にネジ等の締結部材で固着することにより、画像読取装置内に実装する方法が主流となっている。
【0003】
ところで、画像読取装置においては、イメージセンサや回路基板上の実装部品等の発熱、周囲の環境の温度変化によって、内部の温度に変化が生じる。このように装置内部に温度変化が生じた場合、特許文献1に記載されているように、イメージセンサを実装した回路基板が保持部材に固着されていると、基板の回路層や基板の素材自身が収縮または膨張し、部材間の熱膨張係数の相違により回路基板に変形や撓みが生じてしまう。回路基板に変形や撓みが生じると、この変形や撓みに伴い、回路基板に実装されているイメージセンサがレンズの光軸方向に移動する。具体的には、回路基板上の実装部品等の発熱により温度が上昇すると、イメージセンサがレンズから離れる方向に回路基板が変形し、温度が低下すると、イメージセンサがレンズに近づく方向に回路基板が変形する傾向がある。このように回路基板が変形し、イメージセンサの位置が変化してしまうと、原稿からの反射光が正確にイメージセンサ上に結像せず、画質が劣化してしまうという問題が生じてしまう。
【0004】
そこで、特許文献2では、このような回路基板の変形により、イメージセンサがレンズの光軸方向に移動することを防ぐために、イメージセンサを備えた回路基板が、その長手方向の一端側においてネジにより保持部材に固定され、その他端側においてネジと長孔により変位可能に保持部材に保持されている。このことにより、温度変化が生じた際に、回路基板が膨張、収縮すると、この膨張、収縮に伴い長孔が長手方向へ移動し、回路基板が撓むのを抑えることを可能しているので、イメージセンサがレンズの光軸方向へ移動するのを防いでいる。
【0005】
しかしながら、近年、画像読取装置の小型化と画像読取の高精細化が必要になり、これらに伴い、イメージセンサを小型にして、イメージセンサの撮像素子を高画素していかなくてはならない。上述した従来技術では、温度変化による回路基板の膨張、収縮に対して、回路基板の長孔が長手方向へ移動するようにしているが、回路基板に設けたイメージセンサも長手方向に移動することになり、イメージセンサがレンズに対して結像面上で位置ズレを起こして、小型、高精細のイメージセンサでは、撮像素子の各画素から出力される読取画像に乱れが生じるという問題があった。
【0006】
また、特許文献3では、イメージセンサや回路基板上の実装部品等の発熱、周囲の環境の温度変化に伴う膨張、収縮により、イメージセンサのレンズ光軸方向への移動を防ぐために、回路基板を保持部材に固定保持させて、保持部材の、その固定保持させた反対側の面で、弾性部材によりイメージセンサを光軸方向に付勢し押圧保持する構成としている。
【0007】
しかしながら、上述した従来技術では、保持部材を回路基板とイメージセンサとの間に設ける構成であるために、複雑な組立を行うことになる。つまり、イメージセンサを弾性部材により保持部材に押圧保持して、次に回路基板を保持部材に対面させて、イメージセンサから伸びている端子を回路基板の穴に差し込み、ビス等により回路基板を保持部材に固定して、その後、固定保持されている回路基板より突出しているイメージセンサの端子を導電性のある接着部材により固定している。この構成では、イメージセンサを回路基板に電気的に接続させるために、イメージセンサ、回路基板等の電気部品の中に保持部材を介在させて組み立てることになり、電気部品の実装と機械部品の組立の工程が混在するために、組立実装が複雑になり、また回路基板の回路パターンの配置が制約されるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平10−294827号公報(段落[0003]、図15)
【特許文献2】特開2005−176267号公報(段落[0023]、図1、図3)
【特許文献3】特開2002−171387号公報(段落[0021]−[0029]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、温度変化があっても、イメージセンサの位置精度を確保するとともに、煩雑な部品組立をなくして生産性を向上させることを可能にした画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、イメージセンサを備えた回路基板と、前記回路基板を保持する保持部材と、前記イメージセンサ上に光学像を結像させる結像レンズを備えた画像読取装置において、前記回路基板と前記保持部材を締め付ける締結部材と、前記結像レンズの光軸方向に付勢力を有する保持弾性部材と、光軸と垂直な方向に付勢力を有する第1弾性部材を備え、前記保持部材は、前記保持弾性部材と前記締結部材により前記回路基板を光軸と垂直な方向に変位可能に保持する基板保持部と、前記第1弾性部材により前記イメージセンサを光軸と垂直な方向に当接させるセンサ当接部とを備えることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、装置の温度環境が変化して、部材の膨張、収縮があっても、イメージセンサが保持部材のセンサ当接部に当接した状態を維持しているために、回路基板が保持部材に対して光軸と垂直な方向に変位するのみで、イメージセンサが結像面上で位置ズレを起こすおそれがない。
【0012】
また、この構成によれば、イメージセンサを実装した回路基板を締結部材と保持弾性部材により保持部材に保持させ、イメージセンサを保持部材に第1弾性部材を介して当接させるように組み立てるために、電気部品の実装と機械部品の組立を別工程で行うことになり、また、回路基板の回路パターンの配置が制約されるおそれがない。
【0013】
また、請求項2の発明において、前記イメージセンサは、長手方向に画素を配列する撮像素子を備えることを特徴としている。この構成によれば、装置の温度環境が変化すると、回路基板が長手方向に膨張、収縮する。
【0014】
また、請求項3の発明において、前記第1弾性部材は長手方向に付勢力を有して、前記センサ当接部は、前記第1弾性部材により前記イメージセンサを長手方向に当接させることを特徴としている。この構成によれば、温度変化により部材の膨張、収縮があっても、イメージセンサが保持部材のセンサ当接部に当接した状態を維持しているために、回路基板が保持部材に対して長手方向に変位するのみで、イメージセンサが長手方向で位置ズレを起こすおそれがない。
【0015】
また、請求項4の発明において、前記第1弾性部材は長手方向と垂直な方向に付勢力を有して、前記センサ当接部は、前記イメージセンサを前記第1弾性部材により長手方向と垂直な方向に当接させるとともに、光軸方向に付勢力を有する第2弾性部材を備え、前記第2弾性部材により光軸方向に当接させることを特徴としている。この構成によれば、温度変化により部材の膨張、収縮があっても、イメージセンサが保持部材のセンサ当接部に当接した状態を維持しているために、回路基板が保持部材に対して長手方向と垂直な方向に変位するのみで、イメージセンサが長手方向と垂直な方向に位置ズレを起こすおそれがない。また、部材の膨張、収縮により、回路基板が撓んでも、イメージセンサが保持部材のセンサ当接部に当接した状態を維持しているために、イメージセンサが光軸方向へ移動するおそれがない。
【0016】
また、請求項5の発明において、前記締結部材はネジであり、前記基板保持部はネジ孔を備え、前記回路基板は長手方向に延在する長孔を備え、前記ネジが前記保持弾性部材を介して前記長孔と前記ネジ孔に装着されることを特徴としている。この構成によれば、回路基板が保持部材に光軸と垂直な方向に変位可能に保持される。
【0017】
また、請求項6の発明において、前記保持部材と前記ネジ及び前記保持弾性部材は導電性を有する部材からなり、前記回路基板上の前記長孔の周りには回路パターンで形成されるグランド部が設けられていることを特徴としている。この構成によれば、グランド部が、弾性ワッシャ、ネジを介して、保持部材に電気的に接続される。
【0018】
また、本発明は、上記の構成の画像読取装置が搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、装置の温度環境が変化して、部材の膨張、収縮があっても、イメージセンサが保持部材のセンサ当接部に当接した状態を維持しているために、回路基板が保持部材に対して光軸と垂直な方向に変位するのみで、イメージセンサが結像面上で位置ズレを起こすおそれがないので、イメージセンサの位置精度を確保することができる。
【0020】
また、請求項1に記載の発明によれば、イメージセンサを実装した回路基板を締結部材と保持弾性部材により保持部材に保持させ、イメージセンサを保持部材に第1弾性部材を介して当接させるように組み立てるために、電気部品の実装と機械部品の組立を別工程で行うことになり、複雑な組立工程になるおそれがない。また、回路基板の回路パターンの配置が制約されるおそれがない。
【0021】
また、請求項2に記載の発明によれば、装置の温度環境が変化すると、回路基板が長手方向に膨張、収縮するが、イメージセンサが長手方向で位置ズレを起こすおそれがない。
【0022】
また、請求項3に記載の発明によれば、温度変化により部材の膨張、収縮があっても、イメージセンサが保持部材のセンサ当接部に当接した状態を維持しているために、回路基板が保持部材に対して長手方向に変位するのみで、イメージセンサが長手方向で位置ズレを起こすおそれがないので、撮像素子の画素配列方向においてイメージセンサの位置精度を確保することができる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明によれば、温度変化により部材の膨張、収縮があっても、イメージセンサが保持部材のセンサ当接部に当接した状態を維持しているために、回路基板が保持部材に対して長手方向と垂直な方向に変位するのみで、イメージセンサが長手方向と垂直な方向に位置ズレを起こすおそれがなく、イメージセンサの位置精度を確保することができる。また、温度変化により部材の膨張、収縮により、回路基板が撓んでも、イメージセンサが保持部材のセンサ当接部に当接した状態を維持しているために、イメージセンサが光軸方向へ移動するおそれがないので、結像レンズの光学像が正確にイメージセンサ上に結像する。
【0024】
また、請求項5に記載の発明によれば、ネジが保持弾性部材を介して長孔とネジ孔に装着されることにより、簡単な構成により、回路基板を光軸と垂直な方向に変位可能に保持部材に保持するように簡単に組み立てることができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明によれば、グランド部が、弾性ワッシャ、ネジを介して、保持部材に電気的に接続され、回路基板から発生するノイズを低減させることができる。
【0026】
また、請求項7に記載の発明によると、画像形成装置において、上記の画像読取装置を備えるようにすれば、温度変化があっても、イメージセンサの位置精度を確保するとともに、煩雑な部品組立をなくして生産性を向上させることを可能にした画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。本発明の実施形態は発明の最も好ましい形態を示すものであり、また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明の実施形態である画像形成装置を示す断面図である。画像形成装置100は、装置本体の下部に配設された給紙部1と、この給紙部1の右方および上方に配設された用紙搬送部2と、この用紙搬送部2の上方に配設された画像形成部3と、この画像形成部3よりも用紙搬送方向下流側に配設された定着部4と、これらの画像形成部3および定着部4の上方に配設された画像読取部5と、この画像読取部5の上方に配設された原稿給送部6とを備えている。なお、画像読取部5は、本発明の画像読取装置の一例である。
【0029】
給紙部1は、装置本体に対して挿脱自在に装着された給紙カセット11に積層載置された用紙の束を、円弧外周部を有する給紙ローラ12の回転動作によって給紙カセット11の出口側(図1では右側)に送り出すとともに、各給紙カセット11の右端上部に設けられた捌き部13によって捌くことにより、最上位置の用紙から1枚ずつ確実に用紙搬送部2に給紙するようになっている。
【0030】
用紙搬送部2は、給紙部1から給紙された用紙を、搬送ローラ対21およびレジストローラ対22によって画像形成部3に向けて搬送し、さらに、画像形成部3から定着部4において画像形成が施された用紙を排出ローラ対23によって排出トレイ24上に排出するようになっている。
【0031】
画像形成部3は、電子写真プロセスによって、用紙に所定のトナー像を形成するものであり、回転可能に軸支された光導電性を有する感光体ドラム31と、この感光体ドラム31の周囲に配設される帯電ユニット32、露光ユニット33、現像ユニット34、転写ユニット35、クリーナ36および除電ユニット37とを備えている。
【0032】
帯電ユニット32は、高電圧が印加される帯電ワイヤを備え、この帯電ワイヤからのコロナ放電によって感光体ドラム31の表面に所定電位を与えるものである。露光ユニット33は、後述する画像読取部5によって読み取られた原稿の画像データに基づいてレーザ発光器から出力されるレーザ光を、ポリゴンミラーおよび反射鏡を介して感光体ドラム31に照射することにより、感光体ドラム31表面の電位を選択的に減衰させて、この感光体ドラム31の表面に静電潜像を形成するものである。現像ユニット34は、上記静電潜像をトナーにより現像して、感光体ドラム31の表面にトナー像を形成するものである。転写ユニット35は、感光体ドラム31の表面のトナー像を用紙に転写するものである。クリーナ36は、転写後の感光体ドラム31の表面に残留しているトナーを除去するものである。除電ユニット37は、感光体ドラム31の表面の残留電荷を除去するものである。
【0033】
定着部4は、画像形成部3においてトナー像が転写された用紙を、加熱ローラ41と加圧ローラ42とによって挟んで加熱し、用紙上にトナー像を定着させるものである。
【0034】
原稿給送部6は、コピー(複写)開始の指示入力などに応答して、原稿トレイ61上に載置された原稿を自動的に1枚ずつ搬送するとともに、原稿の露光走査後に原稿排出トレイ(図示略)上へ排出させる、いわゆるシートスルータイプの原稿読み取りを行うものである。
【0035】
画像読取部5は、原稿給送部6によって移送される原稿やコンタクトガラス上に載置された原稿に光を照射して、その反射光を電気信号に変換することにより原稿の画像情報を読み取るとともに、その原稿画像に対応する画像データを生成するものである。
【0036】
図2は、画像形成装置の画像読取部を示す概略断面図である。画像読取部5は、原稿Pを載置させるコンタクトガラス8と、原稿Pの画像情報を読み取り、読み取った原稿Pの画像から画像データを生成するスキャナ部7等で構成される。
【0037】
スキャナ部7は、このスキャナ部7の上部に配設された第1移動キャリッジ71と、第1移動キャリッジ71の左方に配設された第2移動キャリッジ72と、スキャナ部7の下部の適所に配設された撮像ユニット80等で構成される。
【0038】
第1移動キャリッジ71および第2移動キャリッジ72は、走査機構部(図示略)に接続されており、この走査機構部が所定の速度で図2示す矢印方向(左右方向)に移動することにより、コンタクトガラス8上に載置された原稿Pの全面を走査し、原稿全面の画像情報を読み取ることが可能なようになっている。
【0039】
第1移動キャリッジ71は、走査機構部に接続された枠体75と、コンタクトガラス8上に載置された原稿Pに光を照射する露光ランプ等の光源76と、コンタクトガラス8からの光を第2移動キャリッジ72に向けて反射する反射ミラー78とを含んでいる。
【0040】
第2移動キャリッジ72は、上下方向に対向して配設された一対の反射ミラー72a、72bを備えており、第1移動キャリッジ71の反射ミラー78からの光を反射ミラー72a、72bで順次反射させて撮像ユニット80へと導く。
【0041】
撮像ユニット80は、結像レンズ73と、結像レンズ73の右方に配設されたイメージセンサ74等で構成される。
【0042】
結像レンズ73は、第2移動キャリッジ72の反射ミラー72bを介して入射した原稿Pからの反射光を結像させるために、複数のレンズを有しており、撮像ユニット80の所定の位置に固定される。
【0043】
イメージセンサ74は、結像レンズ73の光軸Z上に長手方向(図2では紙面奥行き方向)に配列されたCCD等の撮像素子を有し、結像レンズ73により撮像素子上に結像された原稿Pの光学像を電気信号に変換する。
【0044】
以上のように構成された画像読取部5では、光源76によって光がコンタクトガラス8に照射され、コンタクトガラス8上の原稿Pからの反射光が第1移動キャリッジ71の反射ミラー78で反射され、その反射光が第2移動キャリッジ72の反射ミラー72a、72bで順次反射され、結像レンズ73を介して原稿Pの光学像がイメージセンサ74上に結像される。これにより、原稿Pの一部が読み取られる。そして、第1移動キャリッジ71および第2移動キャリッジ72が所定の速度で移動することにより、原稿Pの全面を走査し、原稿P全面が読み取られて、読取画像が形成される。
【0045】
次に、撮像ユニット80を詳細に説明する。図3は、撮像ユニットを示す斜視図である。
【0046】
図3に示すように、撮像ユニット80は、原稿Pからの反射光を結像させる結像レンズ73と、原稿Pの画像を読み取るイメージセンサ74と、イメージセンサ74を実装した回路基板81と、イメージセンサ74と回路基板81とを保持する保持部材85と、保持部材85を保持するブラケット78を備えている。
【0047】
結像レンズ73は、複数のレンズと、それらのレンズを固定保持する鏡枠を備え、L字状の金属板で形成されたレンズブラケット78aに固着される。このレンズブラケット78aは、基台78bの所定の位置に固定され、レンズブラケット78aの立壁部には開口が設けられて(図示略)、結像レンズ73からの光がイメージセンサ74で受光されるようになっている。
【0048】
保持部材85は、逆L字状の金属板で形成され、イメージセンサ74を実装した回路基板81を保持する。また、保持部材85は、その上方で2個のネジ91により、金属板で形成されたセンサブラケット78cに固定保持されている。このセンサブラケット78cは、結像レンズ73とイメージセンサ74が結像関係になるように、基台78bの所定の位置に固定される。なお、センサブラケット78cには、イメージセンサ74より大きい矩形の開口78c1が設けられて、結像レンズ73からの光がイメージセンサ74で受光されるようになっている。
【0049】
図4は、イメージセンサが実装される回路基板を結像レンズ側から見た斜視図である。回路基板81は、例えば板状の樹脂材料で形成されている。回路基板81上には、銅箔を用いて形成された回路パターンが設けられており、イメージセンサ74がこの回路基板81の略中央で回路パターン上に実装され、またイメージセンサ74を駆動するための電子部品(図示略)がこの回路パターン上に実装されている。この回路基板81には、ネジ等の締結部材により回路基板81を保持部材85に保持するための2個の長孔81dが設けられている。2個の長孔81dは、図4に示す長手方向Xに長い孔となっており、2個の長孔81dの長手方向Xとイメージセンサ74の長手方向Xが一致するように設けられ、またイメージセンサ74の長手方向Xの両側に並列して設けられている。なお、2個の長孔81dの形状は図4に示した形状に限定されるものではなく、例えば矩形であってもよい。
【0050】
イメージセンサ74は、結像レンズ73からの光を受光するCCD等の撮像素子の画素が長手方向Xに配設されたラインセンサを備えており、撮像素子以外の部分は、例えば、セラミック材または合成樹脂からなるパッケージにより覆われている。また、イメージセンサ74には、電気信号を出力し、CCDを駆動するための駆動信号を受取るための端子74aが設けられており、この端子74aを回路基板81に半田付けすることにより、回路基板81に実装される。
【0051】
図5は、回路基板を保持部材に取り付けた状態を示す結像レンズ側から見た斜視図である。保持部材85は、金属板に略逆L字形状に曲げ加工等の板金加工を施して形成された部材である。この保持部材85には、ネジ等の締結部材を用いて回路基板81を保持するために、保持部材85の長手方向Xの両端部近傍には、2個のネジ孔85hが設けられている。また、保持部材85には、イメージセンサ74を導く開口85bが保持部材85の略中央に設けられ、その開口85bの長手方向Xの両側近傍には、2個の開口85cが設
けられている。
【0052】
保持部材85の、開口85bと2個の開口85cとの間の2箇所の面が、それぞれセンサ当接面85dを形成して、各センサ当接面85dが光軸Z方向の受光面側にてイメージセンサ74のパッケージに当接する。一方の開口85c(図5では右の開口)には、折り曲げ部が設けられ、この折り曲げ部の端面においてセンサ当接部85eが形成される。このセンサ当接部85eが長手方向Xにてイメージセンサ74のパッケージに当接する。また、開口85bの上側には、センサ当接部85fとしての2個の突出部が設けられ、この各センサ当接部85fがイメージセンサ74のパッケージに当接する。
【0053】
保持部材85には、板バネ89、90が各開口85cの近傍に設けられ、板バネ91が開口85bの下方に設けられ、各板バネ89〜91が位置決めピンとネジ等により保持部材85に固定保持される。
【0054】
板バネ89には、光軸Z方向に付勢力を有する2個の弾性部89cが形成され、各弾性部89cは、開口85cから保持部材85の裏側(図5では紙面奥行き側)に延び、その付勢力により、イメージセンサ74のパッケージを当接面85dに弾性的に当接させている。図6は、その当接状態を示す斜視図であり、イメージセンサ74の端子74aが回路基板81に電気的に接続されるときに、イメージセンサ74と回路基板81との間に隙間を形成しておき、各弾性部89cは、その隙間に配されてイメージセンサ74のパッケージに当接している。
【0055】
図5に示すように、板バネ90には、光軸Z方向に付勢力を有する2個の弾性部90cと、2個の弾性部90cの間に長手方向Xに付勢力を有する弾性部90aが形成される。2個の弾性部90cは、開口85cから保持部材85の裏側(図5では紙面奥行き側)に延び、その付勢力により、イメージセンサ74のパッケージを当接面85dに弾性的に当接させている。弾性部90aは、その付勢力により、イメージセンサ74のパッケージを当接面85eに弾性的に当接させている。図7は、その当接状態を示す斜視図であり、各弾性部90cは、イメージセンサ74と回路基板81との間に形成される隙間に配され、イメージセンサ74のパッケージに当接して、弾性部90cはイメージセンサ74のパッケージ側面に当接している。
【0056】
図5に示すように、板バネ91は、イメージセンサ74の上下方向に付勢力を有する弾性部91bが形成され、弾性部91bは、その付勢力により、イメージセンサ74のパッケージを2個の当接面85fに弾性的に当接させている。なお、弾性部90a、91bが第1弾性部材を構成し、弾性部89c、90cが第2弾性部材を構成する。
【0057】
図8は、回路基板を締結部材により保持部材に保持する構成を示す断面図である。回路基板81は、図5に示す紙面奥行き側から装着される締結部材86により、保持部材85に弾性的に保持される。
【0058】
締結部材としてのネジ86は、ネジ山が切られているネジ部86aと、ネジ部86aより外径が大きい段部86bと、ドライバー用のすりわりを有する頭部86cを備える。ネジ部86aは、保持部材85のネジ孔85hに螺合して、回路基板81が保持部材85に保持される。段部86bは、その外径が回路基板81の長孔81d内で、温度変化により部材の膨張、収縮があっても、回路基板81と保持部材85との間で長手方向Xに変位可
能な大きさであり、その高さ(図8では上下方向)が回路基板81の厚みより大きくなっていて、弾性ワッシャ87と座金88を回路基板81と頭部86cとの間に挟むことが可能になっている。なお、長手方向Xと垂直な方向では、長孔81dの幅が段部86bの外
径より大きくされ、長孔81dと段部86bとの間には隙間が設けられているために、温度変化により部材の膨張、収縮がっても、回路基板81と保持部材85との間で長手方向Xと垂直な方向に変位可能になっている。
【0059】
弾性ワッシャ87は、その断面が波型形状をして、回路基板81に接触した座金88とネジ86の頭部86cとの間で段部86bに嵌め込まれて、ネジ86が保持部材85のネジ孔85hに螺合されると、光軸Z方向に付勢力を作用させる。この付勢力により、回路基板81は、保持部材85の回路基板81と接する基板保持部85gに弾性的に保持される。そして、この付勢力は、ネジ86の段部86bの高さと弾性ワッシャ87の弾性力より所定の強さに設定されているために、温度変化により部材の膨張、収縮があっても、回路基板81と保持部材85との間で、光軸Zと垂直な方向に変位可能となる。なお、弾性ワッシャ87は、保持弾性部材を構成し、その断面が波型形状に替えて、皿形、円弧形等、光軸Z方向に付勢力を作用させるものであればよい。また、座金88は弾性ワッシャ87によりネジ締め付け力が安定する場合には、省くこともできる。
【0060】
回路基板81上には、グランド部81aが、長孔81dの周りに銅箔を用いて形成され、グランド部81aがイメージセンサ74、及びその駆動電子部品等を実装した回路パターンと接続される。このグランド部81aは、ネジ86により回路基板81と金属材で形成される座金88とに圧接される部分に設けられるために、グランド部81aが、座金88、弾性ワッシャ87、ネジ86を介して、保持部材85に電気的に接続され、回路基板81から発生するノイズが低減される。
【0061】
イメージセンサ74を実装した回路基板81を保持部材85に取り付ける際には、図5に示すように、まず、イメージセンサ74を保持部材85の開口85bに合わせてから、回路基板81を保持部材85に対面させて当てつけると、各長孔81dが各ネジ孔85hに対向する。
【0062】
次に、図8に示すように、各長孔81dが各ネジ孔85hに対向した状態で、回路基板81上の長孔81dに座金88、弾性ワッシャ87を置いて、ネジ86の段部86bを長孔81dに挿入し、段部86bが保持部材85の基板保持部85gに当接するまで、ネジ部86aを保持部材85のネジ孔85hに螺合させると、弾性ワッシャ87の付勢力により、回路基板81は、保持部材85の基板保持部85gに弾性的に保持される。
【0063】
次に、図5に示すように、板バネ90をネジ等により保持部材85に取り付けると、イメージセンサ74は、弾性部90aの付勢力によりセンサ当接部85eに弾性的に当接するとともに、弾性部90cの付勢力により左方のセンサ当接部85dに弾性的に当接する。次に、板バネ89をネジ等により保持部材85に取り付けると、イメージセンサ74は、弾性部89cの付勢力により右方のセンサ当接部85dに弾性的に当接する。これにより、イメージセンセ74は、保持部材85に長手方向Xに弾性的に当接し、また光軸Z方向に弾性的に当接することになる。次に、板バネ91をネジ等により保持部材85に取り付けると、イメージセンサ74は、弾性部91bの付勢力により各センサ当接部85fに弾性的に当接する。これにより、イメージセンセ74は、保持部材85にその上下方向に弾性的に当接することになる。
【0064】
上記のように回路基板81が保持部材85に取り付けられると、装置の温度環境が変化して、部材の膨張、収縮があっても、イメージセンサ74が保持部材85の各センサ当接部85e、85fに当接した状態を維持しているために、回路基板81が保持部材85に対して、長手方向Xまたは回路基板81の上下方向等の光軸Zと垂直な方向に変位するのみで、イメージセンサ74が結像面上で位置ズレを起こすおそれがない。また、温度変化により部材の膨張、収縮により、回路基板81が撓んでも、イメージセンサ74が保持部材85の各センサ当接部85dに当接した状態を維持しているために、イメージセンサ74が光軸Z方向へ移動するおそれがない。
【0065】
上記実施形態によれば、画像読取装置80は、イメージセンサ74を備えた回路基板81と、この回路基板81とは熱膨張係数の異なる材料からなり回路基板81を保持する保持部材85と、イメージセンサ74上に光学像を結像させる結像レンズ73を備える。また、画像読取装置80は、回路基板81と保持部材85を締め付けるネジ86と、結像レンズ73の光軸Z方向に付勢力を有する弾性ワッシャ87と、光軸Zと垂直な方向に付勢力を有する弾性部90a、91bを備え、保持部材85は、ネジ86が弾性ワッシャ87を介して長孔81dに挿入されネジ孔85hに螺合されることにより、回路基板81を光軸Zと垂直な方向に変位可能に保持する基板保持部85gと、弾性部90a、91bによりイメージセンサ74を光軸Zと垂直な方向に当接させるセンサ当接部85e、85fとを備える。
【0066】
この構成によれば、装置の温度環境が変化して、部材の膨張、収縮があっても、イメージセンサ74が保持部材85の各センサ当接部85e、85fに当接した状態を維持しているために、回路基板81が保持部材85に対して、長手方向Xまたは長手方向Xと垂直な方向等の光軸Zと垂直な方向に変位するのみで、イメージセンサ74が結像面上で位置ズレを起こすおそれがないので、イメージセンサ74の位置精度を確保することができる。
【0067】
また、この構成によれば、イメージセンサ74を実装した回路基板81をネジ86と弾性ワッシャ87により保持部材85に保持させ、イメージセンサ74を保持部材85に各弾性部90a、91bを有する各板バネ90、91を介して当接させるように組み立てるために、電気部品の実装と機械部品の組立を別工程で行うことになり、複雑な組立工程になるおそれがない。また、回路基板81の回路パターンの配置が制約されるおそれがない。
【0068】
また、この構成によれば、ネジ86が弾性ワッシャ87を介して長孔81dとネジ孔85hに装着されることにより、簡単な構成により、回路基板81を保持部材85に光軸Zと垂直な方向に変位可能に保持するように簡単に組み立てることができる。
【0069】
また、上記実施形態によれば、イメージセンサ74は、長手方向Xに画素を配列する撮像素子を備え、弾性部90cは長手方向Xに付勢力を有して、センサ当接部85eは、弾性部90cによりイメージセンサ74を長手方向Xに当接させることによって、温度変化により部材の膨張、収縮があっても、イメージセンサ74が保持部材85のセンサ当接部85eに当接した状態を維持している。このために、回路基板81が保持部材85に対して、長手方向Xに変位するのみで、イメージセンサ74が長手方向Xで位置ズレを起こすおそれがないので、撮像素子の画素配列方向において、イメージセンサ74の位置精度を確保することができる。
【0070】
また、上記実施形態によれば、光軸Z方向に付勢力を有する弾性部90cを備え、弾性部91bは長手方向Xと垂直な方向に付勢力を有して、センサ当接部85fはイメージセンサ74を弾性部91bにより長手方向Xと垂直な方向に当接させるとともに、センサ当接部85dは弾性部90cにより光軸Z方向に当接させている。このことによって、温度変化により部材の膨張、収縮があっても、イメージセンサ74が保持部材85のセンサ当接部85fに当接した状態を維持しているために、回路基板81が保持部材85に対して、長手方向Xと垂直な方向に変位するのみで、イメージセンサ74が長手方向Xと垂直な方向に位置ズレを起こすおそれがなく、イメージセンサ74の位置精度を確保することができる。また、部材の膨張、収縮により、回路基板81が撓んでも、イメージセンサ74が保持部材85のセンサ当接部85dに当接した状態を維持しているために、イメージセンサ74が光軸Z方向へ移動するおそれがないので、結像レンズ73の光学像が正確にイメージセンサ74上に結像する。
【0071】
また、上記実施形態によれば、保持部材85とネジ86及び弾性ワッシャ87は、導電性を有する部材からなり、回路基板81上の長孔81dの周りには回路パターンで形成されるグランド部81aが設けられていることによって、グランド部81aが、弾性ワッシャ87、ネジ86を介して、保持部材85に電気的に接続され、回路基板81から発生するノイズを低減させることができる。
【0072】
また、上記実施形態によると、画像形成装置100において、上記の画像読取装置80を備えるようにすれば、温度変化があっても、イメージセンサ74の位置精度を確保するとともに、煩雑な部品組立をなくして生産性を向上させることを可能にした画像形成装置100を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、原稿を光学的に読み取る画像読取装置及びそれを備える複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】は、本発明の実施形態である画像形成装置を示す断面図である。
【図2】は、本発明の実施形態である画像形成装置の画像読取部を示す概略断面図である。
【図3】は、本発明の実施形態である画像読取部の撮像ユニットを示す斜視図である。
【図4】は、本発明の実施形態である画像読取部の回路基板を示す斜視図である。
【図5】は、本発明の実施形態である画像読取部の保持部材に回路基板を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】は、本発明の実施形態である画像読取部のイメージセンサに第1弾性部材を当接させる状態を示す斜視図である。
【図7】は、本発明の実施形態である画像読取部のイメージセンサに第1及び第2弾性部材を当接させる状態を示す斜視図である。
【図8】は、本発明の実施形態である画像読取部の締結部材により回路基板を保持部材に保持する状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0075】
5 画像読取部(画像読取装置)
73 結像レンズ
74 イメージセンサ
78 ブラケット
80 撮像ユニット
81 回路基板
81a グランド部
81d 長孔
85 保持部材
85b、85c 開口
85d、85e、85f センサ当接部
85g 基板保持部
85h ネジ孔
86 ネジ(締結部材)
87 弾性ワッシャ(保持弾性部材)
88 座金
89、90、91 板バネ
89c、90c 弾性部(第2弾性部材)
90a、91b 弾性部(第1弾性部材)
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージセンサを備えた回路基板と、前記回路基板を保持する保持部材と、前記イメージセンサ上に光学像を結像させる結像レンズを備えた画像読取装置において、
前記回路基板と前記保持部材を締め付ける締結部材と、前記結像レンズの光軸方向に付勢力を有する保持弾性部材と、光軸と垂直な方向に付勢力を有する第1弾性部材を備え、前記保持部材は、前記保持弾性部材と前記締結部材により前記回路基板を光軸と垂直な方向に変位可能に保持する基板保持部と、前記第1弾性部材により前記イメージセンサを光軸と垂直な方向に当接させるセンサ当接部とを備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記イメージセンサは、長手方向に画素を配列する撮像素子を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第1弾性部材は長手方向に付勢力を有して、前記センサ当接部は、前記第1弾性部材により前記イメージセンサを長手方向に当接させることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記第1弾性部材は長手方向と垂直な方向に付勢力を有して、前記センサ当接部は、前記イメージセンサを前記第1弾性部材により長手方向と垂直な方向に当接させるとともに、光軸方向に付勢力を有する第2弾性部材を備え、前記第2弾性部材により光軸方向に当接させることを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記締結部材はネジであり、前記保持部材はネジ孔を備え、前記回路基板は長手方向に延在する長孔を備え、前記ネジが前記保持弾性部材を介して前記長孔と前記ネジ孔に装着されることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記保持部材と前記ネジ及び前記保持弾性部材は導電性を有する部材からなり、前記回路基板上の前記長孔の周りには回路パターンで形成されるグランド部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の画像読取装置が搭載された画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−93061(P2009−93061A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265531(P2007−265531)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】