説明

畝成形機

【課題】ネギ等の作物を栽培して葉鞘を確実に白色化させ作物の品質を高めための高畝を成形(整形)するのに適した畝成形機について、成形板の駆動を伝達する押圧力伝達機構を小型にし、成形板の駆動の動力を無駄に使用することなく畝の法面の上部側の崩れを確実に防止する。
【解決手段】畝間の溝を耕耘して培土を畝の法面に跳揚げるロータ3と、跳揚げられた培土を含めて畝の法面を押圧する成形板5とを備えている。成形板5は、畝の法面の中途部から上部側に延びる長さを有して畝に対して起伏動するように下部が機体1にヒンジ9で支持されている。原動機7の動力取出軸11に連結されて成形板5に押圧力を加える押圧力伝達機構12は、動力取出軸11よりも上方に配設されて成形板5の上部に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネギ等の作物を栽培する高畝を成形(整形)するのに適した畝成形機に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ネギ(根深ネギ,関東ネギ等)の栽培では、成長に対応して葉鞘の周囲に培土を盛上げて葉鞘への日光の照射を遮断することで、葉鞘を白色化させることが行われる。従って、ネギが栽培される畝は、成長に伴って盛土の高さが相当に高くなる高畝となる。
【0003】
畝を維持管理する作業機(管理機)である畝成形機としては、畝間の溝をロータで耕耘して培土を畝の法面(側面)に跳揚げ、法面に跳揚げられた培土を成形板で押圧(打圧)するものがある。然しながら、この畝成形機を高畝に使用すると、高畝の法面の上部側への成形板の押圧が充分に行われないため、高畝の法面の上部側が崩れやすいという不具合が生じてしまう。このため、高畝の法面の上部側の崩れを確実に防止することのできる畝成形機の開発が要望されている。
【0004】
従来、高畝の法面の上部側の崩れを確実に防止することを指向した畝成形機としては、例えば、以下に記載のものが知られている。

【特許文献1】特許第3857886号公報 特許文献1には、畝間の溝を耕耘して培土を畝の法面に跳揚げるロータと、跳揚げられた培土を含めて畝の法面を押圧する成形板とを備え、成形板は畝の下部側から上部側まで届くように上下方向に長く延びて上下方向の2箇所で押圧力が加えられる畝成形機が記載されている。
【0005】
特許文献1に係る畝成形機は、成形板で畝の法面の上部側,下部側を均等に叩くようにして押圧することで、結果的に畝の法面の上部側を固めて崩れを確実に防止しようとするものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る畝成形機では、上下方向に長く延びた成形板に対して上下方向の2箇所で押圧力を加えるため、押圧力を伝達する押圧力伝達機構が大型化してしまうという問題点がある。また、畝の法面の相対的に固く締められている下部側をも上部側と均等に押圧するため、動力を無駄に使用してしまうことになるという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、成形板の駆動を伝達する押圧力伝達機構が小型で成形板の駆動動力を無駄に使用することなく畝の法面の上部側の崩れを確実に防止することのできる畝成形機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため、本発明に係る畝成形機は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0009】
即ち、請求項1では、畝間の溝を耕耘して培土を畝の法面に跳揚げるロータと、跳揚げられた培土を含めて畝の法面を押圧する成形板とを備えた畝成形機において、成形板は畝の法面の中途部から上部側に延びる長さを有して畝に対して起伏動するように下部が機体にヒンジで支持され、原動機の動力取出軸に連結されて成形板に押圧力を加える押圧力伝達機構は動力取出軸よりも上方に配設されて成形板の上部に連結されていることを特徴とする。
【0010】
この手段では、成形板を起伏動させて畝の法面の上部側のみを押圧することで、畝の法面の崩れやすい上部ほど押圧力を強く作用させることができる。また、押圧力伝達機構が原動機の動力取出軸よりも上方に配設されて成形板の上部に連結されることで、押圧力伝達機構の動作域が原動機の動力取出軸の上方にコンパクトに集合される。
【0011】
また、請求項2では、請求項1の畝成形機において、成形板の上部に畝の頂部を押圧する補助成形板が取付けられていることを特徴とする。
【0012】
この手段では、成形板の上部に補助成形板を取付けることで、畝の法面の上部側と畝の頂部とを同時に押圧することができる。
【0013】
また、請求項3では、請求項1または2の畝成形機において、成形板を支持するヒンジは畝間方向への位置調整を可能にする位置調整機構が設けられていることを特徴とする。
【0014】
この手段では、成形板の起伏動の支点となるヒンジに位置調整機構が設けられることで、畝間距離に対応して成形板を配置することができる。
【0015】
また、請求項4では、請求項1〜3のいずれかの畝成形機において、押圧力伝達機構は原動機の動力取出軸に連結されるアーム部と成形板に連結されるアーム部とに長さ調整を可能にする長さ調整機構が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この手段では、押圧力伝達機構のアーム部に長さ調整機構が設けられることで、押圧力伝達機構の動作域を可変して成形板の起伏動の角度を調整することができる。
【0017】
また、請求項5では、請求項1〜4のいずれかの畝成形機において、成形板よりも前方に突出するように機体に支持されて畝に植生して畝間に垂れている作物を押上げるデバイダを備えていることを特徴とする。
【0018】
この手段では、畝に植生して畝間に垂れている作物を押上げるデバイダを成形板よりも前方に突出するように備えることで、法面の上部側に跳上げられた培土が作物が邪魔になって落下したり、成形板による畝の法面の上部側の押圧の際に作物を法面の上部側に押付けたりするのを避けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る畝成形機は、成形板を起伏動させて畝の法面の上部側のみを押圧することで、畝の法面の崩れやすい上部ほど押圧力を強く作用させることができるため、成形板の駆動の動力を無駄に使用することなく畝の法面の上部側の崩れを確実に防止することができる効果がある。また、押圧力伝達機構が原動機の動力取出軸よりも上方に配設されて成形板の上部に連結されることで、成形板の駆動を伝達する押圧力伝達機構の動作域が原動機の動力取出軸の上方に集合されるため、押圧力伝達機構が小型となる効果がある。
【0020】
さらに、請求項2として、成形板の上部に補助成形板を取付けることで、畝の法面の上部側と畝の頂部とを同時に押圧することができるため、2方向からの押圧で畝の成形を確実に実行して、畝の法面の上部側の崩れをより確実に防止することができる効果がある。
【0021】
さらに、請求項3として、成形板の起伏動の支点となるヒンジに位置調整機構が設けられることで、畝間距離に対応して成形板を配置することができるため、法面の上部側の傾斜に対応しない成形板の起伏動で畝の法面の上部側を損壊してしまうようなことを避けることができる効果がある。
【0022】
さらに、請求項4として、押圧力伝達機構のアーム部に長さ調整機構が設けられることで、押圧力伝達機構の動作域を可変して成形板の起伏動の角度を調整することができるため、畝の法面の上部側の傾斜角度に対応して成形板の起伏動の角度を調整して、法面の上部側の傾斜に対応しない成形板の起伏動で畝の法面の上部側を損壊してしまうようなことを避けることができる効果がある。
【0023】
さらに、請求項5として、畝に植生して畝間に垂れている作物を押上げるデバイダを成形板よりも前方に突出するように備えることで、法面の上部側に跳上げられた培土が作物が邪魔になって落下したり、成形板による畝の法面の上部側の押圧の際に作物を法面の上部側に押付けたりするのを避けることができるため、畝の成形を確実に実行して、畝の法面の上部側の崩れをより確実に防止することができるとともに、作物を無用に損傷することがない効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る畝成形機を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
この形態では、ネギを栽培する高畝を成形するのに適した非乗用タイプのものを示してある。
【0026】
この形態は、図1に示すように、機体1に前方側から補助走行輪(尾輪)2,ロータ3,走行輪4が配置され、ロータ3,走行輪4の間の上方に成形板5が配置された構成になっている。
【0027】
補助走行輪2は、走行方向を案内するとともに耕深のゲージ機能をも奏するもので、機体1に支持されて耕深を調整するハンドル6の下端部に回転可能に支持されている。
【0028】
ロータ3は、畝間の溝底や法面Sの下部側Saの下隅部分を耕耘して培土を主に法面Sの上部側Sbにまで跳揚げるもので、回転軸3aと回転軸3aに放射状に連結された複数本のなた刃3bとからなる。
【0029】
走行輪4は、原動機7等の重量を支えて走行するもので、原動機7から適当な経路でロータ3等とともに回転駆動される。
【0030】
成形板5は、機体1の両側面に位置することになる畝の法面Sに対面するように配置され、畝の法面Sの中途部(下部側Saとの境目当たり)から上部側Sbに延びる長さを有し、金属板5aの外面(畝側)に培土の付着を防止する合成樹脂板5bが積層され、金属板5aの上部に後述の押圧力伝達機構12が連結される軸受5cが固定されている。
【0031】
この成形板5は、下部が機体1に取付けられた支持枠8にヒンジ9で支持され、畝の法面Sの上部側Sbに対して起伏動されるようになっている。
【0032】
支持枠8は、走行輪4の上部またはこれより高い位置で機体1に固定され畝間方向へ突出された固定片8aと、く字形に形成されて固定片8aの下面に当接され外側斜め下方に突出された可動片8bと、固定片8aに可動片8bを固定するボルト,ナット等の締付具8cと、固定片8aに畝間方向へ延びるスリット,長孔として開口されて締付具8cが挿通される締付具位置調整孔8dとからなる。ヒンジ9は、支持枠8の可動片8bの下端外側面に取付けられている。従って、支持枠8は、図4に示すように、締付具位置調整孔8dの長さaの範囲内で締付具8cの締付け位置(可動片8bの固定片8aへの当接位置)を調整することを可能にして、ヒンジ9の畝間方向への位置調整を可能にする位置調整機構を構成していることになる。ヒンジ9の位置調整機構は、畝間距離に対応して成形板5の起伏動の支点を移動させて配置することができ、法面Sの上部側Sbの傾斜に対応しない成形板5の起伏動で畝の法S面の上部側Sbを損壊してしまうようなことを避けることができる。
【0033】
また、成形板5の上部には、補助成形板10が取付けられている。
【0034】
補助成形板10は、成形板5の金属板5aに支持されて成形板5の上縁を跨ぐように外側に突出された支持アーム10aと、支持アーム10aの先端部に取付けられたく字形の押圧部10bとからなる。押圧部10bは、成形板5が起伏動して法面Sの上部側Sbを押圧する際に畝の頂部Tを押圧するように位置設定されている。従って、補助成形板10は、畝の法面Sの上部側Sbと畝の頂部Tとを同時に押圧することを可能にして、2方向からの押圧で畝の成形を確実に実行して、畝の法面Sの上部側Sbの崩れをより確実に防止することができるようにする。
【0035】
また、成形板5と原動機7の動力取出軸11との間の動力取出軸11の上方の空間には、押圧力伝達機構12が配設されている。
【0036】
押圧力伝達機構12は、原動機7の動力取出軸11に取付けられた回転軸受12aと、一端部が第1の連結軸12bを介して回転軸受12aに連結された他端部が第2の連結軸12cを介してV字形クランク12dの一方の板片に連結された第1のアーム部12eと、一端部が第3の連結軸12fを介してV字形クランク12dの他方の板片に連結され他端部が第4の連結軸12gを介して成形板5の軸受5cに連結された第2のアーム部12hとからなる。なお、V字形クランク12dの両板片の交点に位置する基軸12iは、成形板5の前方に成形板5と直交するように配置された泥除カバーの機能を奏する前板13に支持されている。第1のアーム部12e,第2のアーム部12hは、ネジ棒12ea,12haとネジ棒12ea,12haが螺合挿通されるナット付パイプ12eb,12hbとからなる。従って、第1のアーム部12e,第2のアーム部12hは、図5に示すように、ナット付パイプ12eb,12hbの回転によって長さb,c,dが調整される長さ調整機構を構成している。第1のアーム部12e,第2のアーム部12hの長さ調整機構は、押圧力伝達機構12の動作域を可変して成形板5の起伏動の角度を調整することができ、畝の法面Sの上部側Sbの傾斜角度に対応して成形板5の起伏動の角度を調整して、法面Sの上部側Sbの傾斜に対応しない成形板5の起伏動で畝の法S面の上部側Sbを損壊してしまうようなことを避けることができる。
【0037】
さらに、この形態では、ハンドル6にデバイダ14が支持されている。
【0038】
デバイダ14は、成形板5よりも前方に突出されたパイプ材からなるもので、畝に植生して畝間に垂れている作物Pを押上げるものである。このデバイダ14は、法面Sの上部側Sbに跳上げられた培土が作物Pが邪魔になって落下したり、成形板5による畝の法面Sの上部側Sbの押圧の際に作物Pを法面Sの上部側Sbに押付けたりするのを避けることができ、畝の成形を確実に実行して、畝の法面Sの上部側Sbの崩れをより確実に防止することができるとともに、作物Pを無用に損傷することをなくすことができる。
【0039】
この形態によると、成形板5を均等な叩き動作ではなく起伏動させて畝の法面Sの上部側Sbのみを押圧することで、畝の法面Sの崩れやすい上部ほど押圧力を強く作用させることができる。従って、動力が効率的に押圧力に変換され、動力を無駄に使用することなく畝の法面の上部側の崩れを確実に防止することができる。この結果、畝を維持管理のコストが低減されるとともに、作物Pの葉鞘を確実に白色化させて作物Pの品質を高めることができる。
【0040】
また、押圧力伝達機構12が原動機7の動力取出軸11よりも上方に配設されて成形板5の上部に連結されている。従って、押圧力伝達機構12の動作域がヒンジ9で支持枠8に支持されて余裕空間のない原動機7の動力取出軸11の下方を避けて上方にコンパクトに集合されるため、押圧力伝達機構12が小型となる。この結果、狭い畝間での作業が容易になる。
【0041】
以上、図示した形態の外に、押圧力伝達機構12を他のクランク構造とすることも可能である。
【0042】
さらに、乗用タイプに適用することも可能である。
【0043】
さらに、支持枠8に高さ調整機能を備えて、ヒンジ9の高さを調整するようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る畝成形機は、ネギのみならずホワイトアスパラガス等が栽培される高畝を維持管理する場合にも使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る畝成形機を実施するための最良の形態の正面である。
【図2】図1の要部の拡大された側面図である。
【図3】図1の要部の拡大図である。
【図4】図3の要部の拡大図である。
【図5】図3の他の要部の拡大図である。
【符号の説明】
【0046】
1 機体
2 補助走行輪(尾輪)
3 ロータ
4 走行輪
5 成形板
7 原動機
8 支持枠(位置調整機構)
9 ヒンジ
10 補助成形板
11 動力取出軸
12 押圧力伝達機構
12e 第1のアーム部(長さ調整機構)
12h 第2のアーム部(長さ調整機構)
S 法面
Sb 上部側
T 頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畝間の溝を耕耘して培土を畝の法面に跳揚げるロータと、跳揚げられた培土を含めて畝の法面を押圧する成形板とを備えた畝成形機において、成形板は畝の法面の中途部から上部側に延びる長さを有して畝に対して起伏動するように下部が機体にヒンジで支持され、原動機の動力取出軸に連結されて成形板に押圧力を加える押圧力伝達機構は動力取出軸よりも上方に配設されて成形板の上部に連結されていることを特徴とする畝成形機。
【請求項2】
請求項1の畝成形機において、成形板の上部に畝の頂部を押圧する補助成形板が取付けられていることを特徴とする畝成形機。
【請求項3】
請求項1または2の畝成形機において、成形板を支持するヒンジは畝間方向への位置調整を可能にする位置調整機構が設けられていることを特徴とする畝成形機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの畝成形機において、押圧力伝達機構は原動機の動力取出軸に連結されるアーム部と成形板に連結されるアーム部とに長さ調整を可能にする長さ調整機構が設けられていることを特徴とする畝成形機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの畝成形機において、成形板よりも前方に突出するように機体に支持されて畝に植生して畝間に垂れている作物を押上げるデバイダを備えていることを特徴とする畝成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−22337(P2010−22337A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191256(P2008−191256)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000157153)関東農機株式会社 (13)
【Fターム(参考)】