癌治療感作物質
【課題】感作癌治療のための組成物及び方法に関する。
【解決手段】SPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドを包む組成物および、SPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む組換え細胞を提供する。該組成物及び方法は、癌治療抵抗性のインビトロ試験においてのみならず、癌のエキソビボ及びインビボ治療において有用である。
【解決手段】SPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドを包む組成物および、SPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む組換え細胞を提供する。該組成物及び方法は、癌治療抵抗性のインビトロ試験においてのみならず、癌のエキソビボ及びインビボ治療において有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療感作組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法または放射線療法による導入後の癌治療の失敗の理由はいまだ明らかではない。多剤耐性ファミリー(MDR)のp−糖タンパク質からの排出ポンプの上方調節など、多くの因子が治療抵抗性に関係付けられており、また他の非古典的MDRタンパク質(多剤耐性関連タンパク質、MRP;肺抵抗性タンパク質、LRP)が様々な癌において記述されている(Lehnert,M.Anticancer Res 1998;18:2225−2226;Ringborg,U.及びPlatz,A.Acta Oncol 1996;5:76−80;Shea,T.C.,Kelley,S.L.,及びHenner,W.D.Cancer Res 1998;48:527−533)。残念なことに、消化器系悪性疾患などの内因的に化学療法抵抗性である多くの腫瘍は、MDR遺伝子の比較的低い発現レベルを有する。例えば、原発性結腸直腸腫瘍の23%だけがMRPを発現し、65%がp−糖タンパク質を発現する(Filipits M,Suchomel RW,Dekan G,Stigilbauer W,Haider K,Depisch D,Pirker R.Br.J Cancer 1997;75:208−212)。従って、治療薬に対する耐性は、単に公知のMDR遺伝子の活性化と上方調節だけに基づいて説明することはできない。試験はまた、腫瘍発生の原因となる遺伝子突然変異も薬剤耐性に寄与しうることを示した。例えば、遺伝性非腺腫性大腸癌(HNPCC)において認められるDNAミスマッチ修復遺伝子の喪失は、より速やかな臨床的薬剤耐性の出現に関連付けられてきた(de las Alas MM,S Aebi,D Fink,SB Howell,G Los.J Natl Cane Inst 1997;89:1537−41;Lin X,Howell SB(1999).Mol Pharmacol 56:390−5)。腺腫様ポリープ及び腺癌の約40%で検出される、K−ras遺伝子における突然変異は、増大した再発率、死亡率、及び化学療法応答の不良に結びつく(Arber N,1.Shapira,J.Ratanら,Gastroenterology 2000;118:1045−1050)。p21及びp27などの、細胞周期調節に関与する遺伝子は、様々な抗癌剤によって誘発される進行中のアポトーシスから腫瘍を保護することが示された(Waldman T,Lengauer C,Kinzler KW,Vogelstein B.Nature 1996,381:713−716;St.Croix B,Florenes VA,Rak JW,Flanagan M,Bhattacharya N,slingerl及びJM,Kerbel RS.Nature Med 1996,2:1204−1210)。加えて、E−カドヘリンなどの細胞接着分子は、化学療法剤に曝露されたとき細胞に耐性を付与する(Skoudy A,Llosas MD,Garcia de Herreros A.Biochem J 1996)。
【0003】
治療抵抗性に関与する機構は従って、非常に複雑であると思われる。最近の証拠は、これまでに薬剤によって治癒された比較的数少ない腫瘍についての化学療法の選択性は、種として、それらが容易にアポトーシスを受ける、すなわち自らを死滅させる感受性に依存することを示唆している(Makin G,Expert Opin Ther Targets.2002 6(1):73−84;Johnstone RW,Ruefli AA,Lowe SW,Cell.2002 108(2):153−64;Kamesaki H,hit J Hemato.1998 68(1):29−43)。
【0004】
酸性高システイン分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cystein)(SPARC)は、マトリセルラータンパク質と呼ばれる細胞外タンパク質のファミリーに属する。その特定とクローニング以来、SPARCの機能的役割は不明のままである。その高い進化的保存は、このタンパク質についての重要な生理的役割を示唆する(Iruela−Arispe ML,Lane TF,Redmond D,Reilly M,Bolender RP,Kavanagh TJ,Sage EH.Mol Biol Cell.1995 Mar;6(3):327−43)。初期試験は、SPARCが骨の鉱化作用において重要であることを示した(Termine JD,Kleinman HK,Whitson SW,Conn KM,McGarvey ML,Martin GR.Cell.1981 Oct;26(1 Pt 1):99−105)。SPARCは骨組織において高いレベルで発現されるが、他の組織や細胞型にも広く分布する(Maillard,C.,ら,Bone,13:257−264(1992))。その役割は、組織のリモデリング(Latvala T,Puolakkainen P,Vesaluoma M,Tervo T.Exp Eye Res.1996 Nov;63(5):579−84;Kelm RJ Jr,Swords NA,Orfeo T,Mann KG.J Biol Chem.1994 Dec 2;269(48):30147−53);内皮細胞移動(Hasselaar P,Sage EH.J Cell Biochem.1992 Ju1;49(3):272−83)、形態形成(Mason IJ,Murphy D,Munke M,Francke U,Elliott RW,Hogan BL.EMBO J.1986 Aug;5(8):1831−7;Strandjord TP,Sage EH,Clark JG.Am J Respir Cell Mol Biol.1995 Sep;13(3):279−87)、及び血管新生(Kupprion C,Motamed K,Sage EH.J Biol Chem.1998 Nov 6;273(45):29635−40;Lane TF,Iruela−Arispe ML,Johnson RS,Sage EH.J Cell Biol.1994 May;125(4):929−43)を含むように拡大された。SPARCはまた、内皮細胞、血管間膜細胞、線維芽細胞及び平滑筋細胞への抗増殖作用を有することが示された(Sage EH.Biochem Cell Biol.1992 Jul;70(7):579−92)。
【0005】
インビトロでの実験はまた、腫瘍におけるSPARCも特定した(Schulz,A.,ら,Am.J.Pathol.,132:233−238(1988);Porter,P.L.,ら,J.Histochem.Cytochem.,43:791−800(1995))。SPARCは、黒色腫での試験によって示唆されたように(Ledda MF,Adris S,Bravo AT,Kairiyama C,Bover L,Chernajovsky Y,Mordoh J,Podhajcer OL.Nat Med.1997 Feb;3(2):171−6)癌遺伝子として、あるいはvJun−ml及びv−Src−形質転換ニワトリ胚線維芽細胞における増殖のその強力な阻害によって明らかにされたように(Vial E,Castellazzi M.Oncogene.2000 Mar 30;19(14):1772−82)腫瘍抑制因子として機能することができるという相反する証拠が存在する。SPARCの増殖阻害特性は主として内皮細胞、線維芽細胞、血管間膜細胞及び平滑筋細胞などの一次細胞において示されているが、これはまた、腫瘍発生におけるSPARCの役割にも寄与しうる。SPARCはまた、腫瘍侵襲特性を有することが示されている。様々な癌において一定しないSPARC発現が認められている。乳癌(Bellahcene A,Castronovo V.Am J Pathol.1995 Jan;146(1):95−100)、食道癌(Porte H,Triboulet JP,Kotelevets L,Carrat F,Prevot S,Nordlinger B,DiGioia Y,Wurtz A,Comoglio P,Gespach C,Chastre E.Clin Cancer Res.1998 Jun;4(6):1375−82)、肝細胞癌 (Le Bail B,Faouzi S,Boussarie L,Guirouilh J,Blanc JF,Carles J,Bioulac−Sage P,Balabaud C,Rosenbaum J.J Pathol.1999 Sep;189(1):46−52)、及び前立腺癌(Thomas R,True LD,Bassuk JA,Lange PH,Vessella RL.Clin Cancer Res 2000;6:1140−1149)においてより高いレベルの発現が検出された。しかし、卵巣癌(Brown TJ,Shaw PA,Karp X,Huynh MH,Begley,Ringuette MJ.Gynecol Oncol 1999;75:25−33;Paley PJ,Goff BA,Gown AM,Greer BE,Sage EH.Gynecol Oncol 2000;78:336−341;Yiu GK,Chan WY,Ng SW,Chan PS,Cheung KK,Berkowitz RS,Mok SC.Am J Pathol 2001;159:609−622)、及び結腸直腸癌(Porte H,Chastre E,Prevot 5,Nordlinger B,Empereur S,Basset P,Chambon P,Gespach C.Int J Cancer 1995;64:70−75;Lussier C,Sodek J,Beaulieu JF.J Cell Biochem.2001;81(3):463−76)に関しては相反する結果が認められた。
【0006】
最近、SPARCが卵巣癌細胞のアポトーシスを誘導することに関与することが示唆された(Yiu GK,Chan WY,Ng SW,Chan PS,Cheung KK,Berkowitz RS,Mok SC.Am J Pathol 2001;159:609−622)。Yiuら(2001、前出)は、悪性転換後にSPARC発現の下方調節が存在すること、及び正常卵巣細胞と癌細胞の両方に対するSPARCの抗増殖特性が存在することを指名した。Yiuら(2001、前出)はさらに、SPARC単独への外因性曝露が卵巣癌細胞においてアポトーシスを誘導できることの付加的な証拠を提供した。しかし、高いSPARC発現レベルを有する腫瘍のヒト病理標本は、より高い数のアポトーシス細胞を有することを示さなかった。
【0007】
国際公開第0202771号は、新規hSPARC−h1ポリペプチド及び組織リモデリング、組織修復及び様々な増殖因子活性の全般的調節におけるその潜在的適用を開示する。
【0008】
米国特許第6,387,664号は、神経生物学における基礎研究のため及び/または様々な神経病理を治療するために使用できる、SPARCをチオレドキシンに融合することによって得られるSPARC融合タンパク質を提供する。
【0009】
米国特許第6,239,326号は、創傷治癒を促進するまたは遅延させること及び白内障、糖尿病または骨粗鬆症を治療するまたは予防することに関して薬剤を試験するためのSPARC欠損トランスジェニックマウスモデルを提供する。
【0010】
特許、特許出願を含む、上記及び本明細書全体を通じて引用するすべての参考文献は、それらの全体が参照してここに組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、SPARCが癌治療を感作するという発見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、癌治療処置を感作するための組成物及び方法を提供する。
【0013】
本発明は、SPARCファミリーポリペプチド及び化学療法剤を含む組成物を提供する。
【0014】
本発明は、SPARCファミリーポリペプチド及び化学療法抵抗性細胞を含む組成物を提供する。
【0015】
本発明は、組換えSPARCファミリーポリヌクレオチドを含む化学療法抵抗性細胞を提供する。
【0016】
本発明は、SPARCファミリーポリヌクレオチドに作動可能に連結された異種転写制御領域を含む組換え細胞を提供する。
【0017】
もう1つの態様では、本発明は、癌と診断された哺乳動物に、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有効量を投与することを含む、哺乳動物を治療処置に対してインビボで感作するための方法を提供する。
【0018】
本発明は、哺乳動物にSPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞の有効量を投与することを含み、前記細胞は増大した量の前記SPARCポリペプチドを生産する、癌と診断された哺乳動物を治療処置に対してエキソビボで感作するための方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、(1)哺乳動物から癌試料を得ること;(2)前記癌試料を、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量と接触させること;及び(3)(2)の接触後に癌試料を哺乳動物に戻すこと、を含む、癌と診断された哺乳動物を治療処置に対してエキソビボで感作するための方法を提供する。
【0020】
本発明はさらに、癌試料を、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量と接触させることを含む、癌試料を治療処置に対して感作するための方法を提供する。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、癌試料は細胞または組織試料である。
【0022】
本発明のもう1つの実施形態では、癌試料を(e)−(f)のポリヌクレオチドで形質移入するまたは感染させる。
【0023】
本発明は、(a)第一癌細胞におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;及び(b)(a)で得た発現レベルまたは細胞外レベルを、治療処置に対して抵抗性を示さない第二癌細胞における前記SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルと比較して、(a)におけるより低いレベルの発現または細胞レベルが、前記第一癌細胞が前記治療処置に対して抵抗性であることを示すことを含む、第一癌細胞を治療処置に対するその抵抗性に関して評価するための方法を提供する。
【0024】
本発明は、(a)第一癌試料におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(b)治療処置に対して抵抗性を示さない第二癌試料におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(c)(a)と(b)で得られた発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(a)におけるより低いレベルの発現または細胞レベルが、第一癌細胞が前記治療処置に対して抵抗性であることを示すこと、を含む、第一癌細胞を治療処置に対するその抵抗性に関して評価するための方法を提供する。
【0025】
1つの実施形態では、第一試料は第一哺乳動物に由来し、そして(a)におけるより低いレベルの発現または細胞外レベルは、第一哺乳動物が治療処置に対して抵抗性であることをさらに示す。
【0026】
もう1つの実施形態では、第二癌試料は、第一癌試料を提供する第一哺乳動物に由来する。
【0027】
さらにもう1つの実施形態では、第二癌試料は、前記第一癌細胞を提供する第一哺乳動物とは異なる第二哺乳動物に由来する。
【0028】
好ましくは、第一哺乳動物と第二哺乳動物は同じ癌を有すると診断される。
【0029】
1つの実施形態では、SPARCファミリーmRNAの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応、DNAマイクロアレイまたはノーザンブロット法によって測定される。
【0030】
1つの実施形態では、SPARCファミリーポリペプチドの発現または細胞外レベルは、免疫ブロット法または酵素結合イムノソルベント検定法(Elisa)によって測定される。
【0031】
本発明は、(a)試料中のSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(b)候補物質を前記試料と接触させること;(c)(b)の前記接触後、(b)の試料中のSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現または細胞外レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(d)(a)と(c)における発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(a)と(c)における異なるレベルの発現または細胞外レベルが、前記候補物質がSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を調節する物質であることを示すこと、を含む、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を調節する物質を特定するための方法を提供する。
【0032】
本発明はまた、(a)癌試料におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(b)候補物質を前記癌試料と接触させること;(c)(b)の前記接触後、(b)の癌試料におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(d)(a)と(c)で得た発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(c)における発現または細胞外レベルの増大したレベルが、前記候補物質が癌試料を治療処置に対して感作する物質であることを示すこと、を含む、癌試料を治療処置に対して感作する物質を特定するための方法を提供する。
【0033】
1つの実施形態では、前記方法の癌試料は、癌と診断された哺乳動物に由来し、そして発現または細胞外レベルの増大したレベルは、候補物質が前記哺乳動物を治療処置に対して感作する物質であることをさらに示す。
【0034】
本発明は、(a)第一哺乳動物からの第一試料において、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルが、治療処置に対して抵抗性を示さない第二試料よりも低いかどうかを判定すること;及び (b)(a)が明確である場合、治療処置に対する応答を高めるために第一哺乳動物への治療処置の強度を高めること、を含む、癌と診断された第一哺乳動物のための治療処置プロトコルを決定するための方法を提供する。
【0035】
好ましくは、前記組成物及び方法の(e)または(f)のポリヌクレオチドは、発現ベクターである。
【0036】
より好ましくは、前記発現ベクターはプラスミドまたはウイルスベクターである。
【0037】
1つの実施形態では、前記プラスミドベクターはpcDNA3.1である。
【0038】
本発明のSPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、(a)配列番号1−17から成る群より選択されるSPARCポリペプチド;(b)(a)のSPARCファミリーポリペプチドに少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド;(c)少なくとも50アミノ酸の長さである、(a)−(b)のポリペプチドフラグメント;(d)(a)、(b)または(c)のポリペプチドを含む融合ポリペプチド;(e)(a)、(b)、(c)のポリペプチドまたは(d)の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(f)ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で(e)のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0039】
好ましくは、本発明のSPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、SMOC−1、SPARC、hevin、SC1、QR−1、フォリスタチン様タンパク質(TSC−36)、testicanから選択される。
【0040】
好ましくは、前記組成物及び方法の治療薬は、化学療法剤または放射線療法剤である。
【0041】
より好ましくは、前記治療薬は、表1に列挙する物質から成る群より選択される。
【0042】
1つの実施形態では、前記方法の哺乳動物は、治療処置に対して抵抗性を示す。
【0043】
1つの実施形態では、前記治療処置は化学療法または放射線療法である。
【0044】
1つの実施形態では、前記方法の癌試料は、細胞または組織試料である。
【0045】
好ましくは、前記細胞または組織試料を、SPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えばmRNA)の発現または細胞外レベルの測定の前に溶解する。
【0046】
より好ましくは、SPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えばmRNA)の発現または細胞外レベルの測定の前に、前記死亡または組織試料からポリヌクレオチドまたはポリペプチド抽出物を得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、ヒトSPARCのモジュール構造及び合成ペプチドの位置と機能である。3つのドメインとそれらの残基番号を、YanとSage,1999,J.Histochem.&Cytochem.47(12):1495−1505に述べられているように示している。
【図2】図2は、様々なSPARCファミリータンパク質のドメイン機構である。FSはフォリスタチン様ドメイン、TYはサイログロブリン様ドメイン、ECは、Vannahmeら,2002,J.Biol.Chem.277(41):37977−37986に述べられている細胞外カルシウム結合ドメインを表す。他のタンパク質と相同性がないタンパク質は空白の枠として示している。シグナルペプチドは示していない。
【図3】図3は、本発明の1つの実施形態に従って化学療法感受性及び抵抗性細胞のコロニー形成アッセイを示す写真である。
【図4】図4は、本発明の1つの実施形態に従って化学療法感受性及び抵抗性細胞のTUNELアッセイを示す写真である。
【図5】図5(5A、B)は、本発明の1つの実施形態による、化学療法抵抗性細胞系統におけるSPARCポリペプチドのレベル低下を示す写真である。
【図6】図6は、本発明の1つの実施形態による、抵抗性表現型を逆転させることに関する、外因性SPARCに対する抵抗性MIP101細胞の応答を示すTunelアッセイである。
【図7】図7は、本発明の1つの実施形態による、SPARCポリペプチドを発現する組換え細胞を示す免疫ブロットアッセイである。
【図8】図8は、本発明の1つの実施形態による、化学療法剤への曝露後にアポトーシスを受けるように誘導された細胞個体群を示すFACS分析である。
【図9】図9は、本発明の1つの実施形態による、化学療法剤への曝露後の細胞のアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の1つの実施形態による、化学療法剤に対するSPARC形質転換体の応答を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明の1つの実施形態による、2匹の動物における6サイクルの化学療法後にSPARC形質転換体を移植した動物での完全な腫瘍の後退を示すグラフ表示である。
【図12】図12(12、12−1〜12−106)は、本発明の1つの実施形態による、SPARCファミリー成員のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を含む図である。
【図13】図13(13、13−1〜13−71)は、本発明の1つの実施形態による、種々のSPARCファミリーポリペプチド及びポリヌクレオチドの間での配列アラインメントを示す図である。
【図14】図14は、本発明の1つの実施形態による、SPARC過剰発現細胞の腫瘍異種移植への化学療法の作用を示す。
【図15】図15は、本発明の1つの実施形態による、SPARC過剰発現細胞の腫瘍異種移植への放射線療法の作用を示す。
【図16】図16は、本発明の1つの実施形態による、腹腔内経路でのSPARCとの併用療法によるMIP 101腫瘍異種移植の治療を示す。
【図17】図17は、本発明の1つの実施形態による、皮下経路でのSPARCとの併用療法によるMIP 101腫瘍異種移植の治療を示す。
【図18】図18は、本発明の1つの実施形態による、SPARCとの併用療法によるMIP/5FU腫瘍異種移植の治療を示す。
【図19】図19(19A〜19C)は、本発明の1つの実施形態による、化学療法に感受性及び抵抗性である結腸直腸癌細胞系統におけるヒトSPARCmRNA及びタンパク質レベルを示す。
【図20】図20(20A〜20D)は、本発明の1つの実施形態による、ヒト結腸上皮におけるSPARCタンパク質発現を示す。
【図21】図21(21A〜21C)は、本発明の1つの実施形態による、化学療法に対する細胞の感受性に影響を及ぼすSPARCの作用の評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の上記の特徴は、添付の図面を照合しながら、以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解される。
【0049】
本発明は、SPARCファミリー及び癌治療に対する感作に基づく。
【0050】
(定義)
ここで使用する、「SPARCファミリーポリペプチド」は、細胞外タンパク質のファミリーのポリペプチド(そのフラグメントまたは変異体を含む)を指す。この細胞外タンパク質のファミリーは、SPARC、及びSMOC−1、hevin、SC1、QR−1、フォリスタチン様タンパク質(TSC−36)及びtesticanなどのファミリーの他の成員を含む(例えば、参照してここに組み込まれる、Vannahmeら,(2002),J.Biol.Chem.277(41):37977−37986;Johnston,I.G.,Paladino,T.,Gurd,J.W.,及びBrown,1.R.(1990)Neuron 2,165−176;Guermah,M.,Crisanti,P.,Laugier,D.,Dezelee,P.,Bidou,L.,Pessac,B.,及びCalothy,G.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88,4503−4507;Shibanuma,M.,Mashimo,J.,Mita,A.,Kuroki,T.,及びNose,K.(1993)Eur.J.Biochem.217,13−19;Alliel,P.M.,Perin,J.P.,Jolles,P.,及びBonnet,F.J.(1993)Eur.J.Biochem.214,347−350参照)。SPARCファミリーポリペプチドは、典型的には3つの独立した折りたたみドメインから成る(参照してここに組み込まれる、YanとSage,1999,J.Histochem.&Cytochem.,47(12):1495−1505)。N−末端ドメイン(例えばSPARC内の2個の隣接するN末端Glu3及びGlu4)は負に荷電しており、2番目のドメイン(例えばSPARC内の残基53−137)は、典型的パターンでは10個のシステインを有するフォリスタチン(FS)1に相同であり、C末端細胞外カルシウム結合(EC)ドメイン(例えばSPARC内の残基138−286)は、各々がX線構造で結合カルシウムイオンを備える、2つのEFハンドカルシウム結合モチーフを有する(Maurer,P.,Hohenadl,C.,Hohenester,E.,Goring,W.,Timpl,R.,及びEngel,J.(1995)J.Mol.Biol.253,347−357;Hohenester,E.,Maurer,P.,Hohenadl,C.,Timpl,R.,Jansonius,J.N.,及びEngel,J.(1996)Nat.Struct.Biol.3,67−73)。
【0051】
「SPARCファミリーポリペプチド」という用語は、本発明によれば、完全長ポリペプチドまたはそのフラグメント、野生型ポリペプチドまたはその何らかの変異体を包含する。「SPARCファミリーポリヌクレオチド」は、SPARCポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えばDNAまたはmRNA)分子、またはそのフラグメントである。(a)配列番号1−17から成る群より選択されるSPARCファミリーポリペプチドまたは遺伝子;(b)(a)のSPARCファミリーポリペプチドに少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは少なくとも60%の相同性を有するポリペプチドをコードする遺伝子;(c)少なくとも50アミノ酸の長さである、(a)−(b)のポリペプチドフラグメント;(d)(a)、(b)または(c)のポリペプチドを含む融合ポリペプチド;(e)(a)、(b)、(c)のポリペプチドまたは(d)の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(f)ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で(e)のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【0052】
「SPARC」ポリペプチドという用語は、配列番号1−17を指し、「SPARC遺伝子」という用語は、配列番号1−17の対応するヌクレオチド配列、配列番号18−34を指す。SPARCの生物活性を保持するこれらの配列の変形は、これらの配列の等価物であるとみなされる。SPARC遺伝子の生物活性は、それが化学療法抵抗性細胞において下方調節されることである。この遺伝子はまた、化学療法に感受性である細胞では過剰発現されうる。SPARCポリペプチドの生物活性は、化学療法抵抗性細胞を化学療法に対して感作することである。
【0053】
SPARCファミリーポリペプチドの成員に関して、ファミリー成員の生物活性を保持するそれらの配列の変形は、これらの配列の等価物であるとみなされる。SPARC遺伝子ファミリー成員の生物活性は、その遺伝子が化学療法抵抗性細胞において下方調節されること、すなわち化学療法感受性細胞に比べて、少なくとも25%、例えば30%、40%、50%、75%、100%(1倍)、2倍、4倍または5倍またはそれ以上低い発現である。この遺伝子はまた、化学療法に感受性である細胞では過剰発現されうる。SPARCファミリーポリペプチド成員の生物活性は、化学療法抵抗性細胞を化学療法に対して感作すること、すなわちSPARCファミリーポリペプチドの不在下での治療感受性に比べて、少なくとも25%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍またはそれ以上、化学療法に対する応答を上昇させることである。
【0054】
ここで定義する「組織」は、生物において特定機能を実施する細胞の集合体である。ここで使用する「組織」という用語は、特定の生理学的領域からの細胞物質を指す。特定組織中の細胞は、いくつかの異なる細胞型を含みうる。これの非制限的な例は、ニューロン及びグリア細胞をさらに含む脳細胞、並びに毛細血管内皮細胞及び血液細胞である。
【0055】
「細胞型」または「組織型」という用語は、例えばそこから腫瘍が発現する起源の組織を指す。そのような組織(細胞型)は、例えば、限定を伴わずに、血液、結腸直腸、乳房、食道、肝細胞、前立腺、卵巣、甲状腺、膵臓、子宮、精巣、下垂体、腎臓、胃、食道及び直腸を含む。
【0056】
ここで使用する、「癌」という用語は、正常な増殖制御に対する感受性を喪失した細胞の増殖によって引き起こされるまたは前記増殖を特徴とする増殖障害疾患を指す。本明細書において使用する「癌」という用語は、腫瘍及び他のいかなる増殖性疾患も包含する。同じ組織型の癌は同じ組織に生じ、それらの生物学的特徴に基づいて種々のサブタイプに分類されうる。癌は、黒色腫、白血病、星状細胞種、グリア芽細胞種、リンパ腫、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び膵臓、乳房、甲状腺、卵巣、子宮、精巣、下垂体、腎臓、胃、食道及び直腸の癌から成る群からの1以上より選択されうる。
【0057】
ここで使用する、「感作すること」という用語は、治療処置に対して応答する癌試料または哺乳動物の感受性を増大させることまたは抵抗性を低減させることを指す。治療処置に対する感受性上昇または感受性低下は、個々の治療についての当技術分野で公知の方法及び、細胞増殖アッセイ(Tanigawa N,Kern DH,Kikasa Y,Morton DL,Cancer Res 1982;42:2159−2164)、細胞死アッセイ(Weisenthal LM,Shoemaker RH,Marsden JA,Dill PL,Baker JA,Moran EM,Cancer Res 1984;94:161−173;Weisenthal LM,Lippman ME,Cancer Treat Rep 1985;69:615−632;Weisenthal LM,In:Kaspers GJL,Pieters R,Twentyman PR,Weisenthal LM,Veerman AJP,編,白血病とリンパ腫の薬物耐性(Drug Resistance in Leukemia and Lymphoma.)Langhorne,PA:Harwood Academic Publishers,1993:415−432;Weisenthal LM,Contrib Gynecol Obstet 1994;19:82−90)を含むが、これらに限定されない、ここで以下に述べる方法に従って測定される。感受性または抵抗性はまた、一定期間、例えばヒトに関しては6ヶ月間及びマウスに関しては4−6週間にわたって腫瘍サイズの減少を測定することにより、動物において測定しうる。ある組成物または方法は、治療感受性の上昇または抵抗性の低下が、そのような組成物または方法の不在下での治療感受性または抵抗性に比べて、25%またはそれ以上、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%以上、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍またはそれ以上である場合、治療処置に対する応答を感作する。治療処置に対する感受性または抵抗性の判定は当技術分野において慣例的であり、通常の臨床医の技術範囲内である。
【0058】
ここで使用する、「投与する」または「投与すること」という用語は、疾患または状態(例えば癌)を予防するまたは治療するために、何らかの手段によって組成物(例えば治療薬)を哺乳動物の体内に導入することを指す。
【0059】
ここで使用する、「治療すること」、「治療」、「療法」及び「治療処置」という用語は、治療的療法または予防的療法(prophylactic therapy or preventative therapy)を指す。「予防的療法」の一例は、標的疾患(例えば癌)またはそれに関連する状態の予防または軽減である。治療を必要とする対象は、既に疾患または状態を有する対象ならびに予防すべき疾患または状態に罹患しやすい対象を包含する。ここで使用する「治療すること」、「治療」、「療法」及び「治療処置」という用語はまた、疾患または関連状態に対抗するための哺乳動物の管理及び看護を表し、疾患または状態の症状、副作用または他の合併症を緩和するための組成物の投与を包含する。癌のための治療処置は、手術、化学療法、放射線療法、遺伝子治療及び免疫療法を含むが、これらに限定されない。
【0060】
「治療上有効な量」とは、哺乳動物において疾患または状態の1以上の症状を軽減する(熟達した医師が判断して、ある程度まで)量を意味する。加えて、「治療上有効な量」とは、疾患または状態に関連するもしくはその原因となる生理的または生化学的パラメータを、部分的にまたは完全に、正常に戻す量を意味する。当技術分野における熟達した臨床医は、特定疾患状態または障害を治療するまたは予防するために組成物を静脈内、皮下、腹腔内、経口などの経路でまたは吸入を通して投与するとき、組成物の治療上有効な量を決定することができる。治療上有効であるために必要な組成物の正確な量は、多くの患者特有の配慮に加えて、例えば活性物質の比活性、用いる送達装置、薬剤の物理的特徴、投与の目的などの数多くの因子に依存する。治療上有効であるために投与しなければならない組成物の量の決定は、当技術分野において慣例的であり、通常の臨床医の技術範囲内である。
【0061】
ここで使用する、「物質(agent)」または「薬剤」または「治療薬」という用語は、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生体高分子、または治療特性を有すると考えられる細菌、植物、真菌または動物(特に哺乳動物)細胞または組織などの生体物質から作製される抽出物を指す。前記物質または薬剤は、精製、実質的に精製または部分的に精製されうる。本発明に従った「物質」はまた、放射線療法剤を包含する。
【0062】
ここで使用する、「調節」または「調節すること」は、所望/選択応答が、ある物質の存在下でその物質の不在下よりも効率よく(例えば少なくとも10%、20%、40%、60%またはそれ以上)、より迅速に(例えば少なくとも10%、20%、40%、60%またはそれ以上)、及び/またはより容易に(例えば少なくとも10%、20%、40%、60%またはそれ以上)誘導されることを意味する。
【0063】
ここで使用する、「治療処置に対する抵抗性」という用語は、治療に対する癌試料または哺乳動物の獲得または自然抵抗性、すなわち治療処置に対して非応答性であるかもしくは低いまたは限られた応答を有すること、例えば治療処置に対して25%またはそれ以上、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍またはそれ以上の応答低下を有することを指す。応答の低下は、抵抗性を獲得する前の同じ癌試料または哺乳動物と比較することによって、もしくはその治療処置に対して抵抗性を有さないことが知られている、異なる癌試料または哺乳動物と比較することによって、測定される。化学療法剤に対する典型的な獲得抵抗性は「多剤耐性」と呼ばれる。多剤耐性は、P−糖タンパク質によって媒介されうるまたは他の機構によって媒介されうるか、もしくは哺乳動物が多剤耐性微生物または微生物の組合せに感染したときに起こりうる。治療処置に対する応答性の判定は当技術分野において慣例的であり、通常の臨床医の技術範囲内であって、例えば「感作すること」の項で前述したような細胞増殖アッセイ及び細胞死アッセイによって測定することができる。
【0064】
ここで使用する、「化学療法」という用語は、癌細胞(白血病及びリンパ腫を含む)を破壊するための薬剤の使用を指す。50以上の異なる化学療法剤が存在し、一部はそれら自体で投与されるが、しばしばいくつかの薬剤を組み合わせることがある(併用化学療法として知られる)。化学療法は、一部のタイプの癌を治療するために単独で使用しうる。時には、手術、放射線療法、免疫療法またはそれらの組合せのような他の種類の治療と共に使用することができる。
【0065】
ここで使用する、「radiation therapy」とも呼ばれる「放射線療法(radiotherapy)」は、電離放射線による癌及び他の疾患の治療を指す。電離放射線は、治療する領域(「標的組織」)内の細胞を、それらの遺伝物質を損傷して、これらの細胞が増殖し続けることを不可能にすることによって損傷するまたは破壊するエネルギーを付与する。放射線は癌細胞と正常細胞の両方を損傷するが、後者は自ら修復し、正しく機能することができる。放射線療法は、皮膚、舌、喉頭、脳、乳房または子宮頸などの限局性固形腫瘍を治療するために使用しうる。また、白血病及びリンパ腫(それぞれ血液形成細胞及びリンパ系の癌)を治療するために使用できる。
【0066】
ここで使用する、「治療プロトコル」という用語は、疾患の治療ために下す決定を通知する過程を指す。ここで使用するとき、治療プロトコルは、治療アプローチ及び結果を含む患者情報が入手可能な哺乳動物からの複数の正常及び疾患組織試料中の同じポリペプチドのレベルに対する、患者の組織試料中の1以上の細胞増殖関連ポリペプチドの比較レベルに基づく。
【0067】
ここで使用する、「生物学的特徴」という用語は、細胞型、及び/またはその細胞が得られた組織型、細胞/組織の形態学的特徴、及び細胞/組織内での生体分子の発現を含みうる、1以上の細胞または組織の表現型及び/または遺伝子型を指す。
【0068】
ここで使用する、「試料」という用語は、血液、血清、血漿、尿、乳頭吸引液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、骨、骨髄、精巣または卵巣、脳、結腸及び肺を含むがこれらに限定されない、哺乳動物の身体に由来する物質を指す。本発明における「試料」はまた、培養細胞及び組織でもよい。
【0069】
ここで使用する、「癌試料」は、癌、すなわち異なるまたは異常な組織の新生長物から生じる試料を指す。「癌試料」は、細胞または組織資料でありうる。癌細胞は、癌組織の一部として存在しうるか、またはそれらが生じる癌組織から分離した浮遊細胞として存在しうる。癌試料は、本発明によれば、インビトロまたはエキソビボでの癌の試験のために使用しうる。
【0070】
ここで使用する、「非癌試料」は、正常組織から得られる細胞または組織試料を指す。試料は、形態学及び他の診断試験に基づき、当技術分野の技術の1つによって非腫瘍試料と判断されうる。
【0071】
ここで使用する、「哺乳類」という用語は、ヒト、あるいは家畜または実験動物(例えばモルモットまたはマウス)などの他の動物を指す。
【0072】
ここで使用する、「特異的ハイブリダイゼーション」または「選択的ハイブリダイゼーション」または「ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーション」は、2つのポリヌクレオチド配列が実質的に相補的であるとき、すなわち配列間に少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約80%または90%の同一性が存在し、同一性の領域が少なくとも10ヌクレオチドを含むときに起こるハイブリダイゼーションを指す。1つの実施形態では、前記配列は、42℃で一晩配列をインキュベートし、次いでストリンジェント洗浄(65℃で0.2XSSC)した後にストリンジェント条件下でハイブリダイズする。典型的には、ストリンジェント条件は、塩濃度がpH7.0−8.3で少なくとも約0.01−1.0M Naイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば約6−50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃である条件である。ストリンジェント条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても達成しうる。一般に、ストリンジェント条件は、当技術分野で慣例的な方法を用いて算定される、規定イオン強度及びpHでの特定配列についての融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。
【0073】
ここで使用する、「相同性」という用語は、コンピュータを使用したアルゴリズムの履行によって実施しうる、配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸のいずれか)の最適アラインメントを指す。例えばポリヌクレオチドに関する「相同性」は、デフォルトパラメータを使用したBLASTNバージョン2.0での分析によって決定しうる。ポリペプチド(すなわちアミノ酸)に関する「相同性」は、比較するポリペプチドまたはフラグメントを整列し、それらの間のアミノ酸同一性または類似性の程度を判定する、デフォルトパラメータを使用したBLASTPバージョン2.2.2などのプログラムを用いて決定しうる。アミノ酸「相同性」は、保存的置換、すなわちポリペプチド内の所与のアミノ酸を同様の特徴を有するさらに別のアミノ酸によって置換するものを包含する。保存的置換として典型的に見られるのは以下の置換である:Ala、Val、Leu及びIleなどの脂肪族アミノ酸のさらに別の脂肪族アミノ酸による置換;SerのThrによる置換またはその逆の置換;AspまたはGluなどの酸性残基のさらに別の酸性残基による置換;AsnまたはGlnなどのアミド基を担持する残基のアミド基を担持するさらに別の残基による置換;LysまたはArgなどの塩基性残基のさらに別の塩基性残基との交換;及びPheまたはTyrなどの芳香族残基のさらに別の芳香族残基による置換。「60%以上の相同性」は、2個以上のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間での例えば60%。70%、75%、80%、85%、90%、95%及び100%(同一)までの同一性を包含する。
【0074】
ここで使用する、「ポリヌクレオチド」という用語は、当業者には容易に認識されるように、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成形態及び混合ポリマー、センス及びアンチセンス鎖の両方を包含し、化学的または生化学的に修飾されていてもよく、もしくは非天然または誘導体化ヌクレオチド塩基を含んでいてもよい。そのような修飾は、例えば標識、メチル化、1以上の天然に生じるヌクレオチドの類似体による置換、非電荷結合(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)、電荷結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)、突出(pendent)成分(例えばポリペプチド)、及び修飾結合(例えばαアノマーポリヌクレオチド等)などのヌクレオチド間修飾を包含する。また、水素結合及び他の化学的相互作用を通して指定配列に結合する能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子も包含される。
【0075】
ここで使用する、「突然変異」という用語は、野生型と比較した遺伝子内のまたは遺伝子外の調節配列内の、ヌクレオチド配列の変化を指す。その変化は、欠失、置換、点突然変異、多数のヌクレオチドの突然変異、転位、逆位、フレームシフト、ナンセンス突然変異、あるいは当該ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列を、発現及び機能性が正常に起こる範囲内である機能性細胞において正常に発現される遺伝子のものと区別する他の形態の異常でありうる。
【0076】
「ポリペプチド」と「タンパク質」は、ここではアミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に使用される。「組換えタンパク質」という用語は、タンパク質のアミノ酸配列をコードする組換えDNAの発現によって生産されるタンパク質を指す。ポリヌクレオチド及び組換え生産されたポリペプチド、及びそれらのフラグメントまたは類似体は、当技術分野で公知であり、参照してここに組み込まれる、Maniatisら,分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第二版,(1989),Cold Spring Harbor,N.Y.,及びBergerとKimmel,酵素学における手法(Methods in Enzymology),Volume 152,分子クローニング技術への手引き(Guide to Molecular Cloning Techniques)(1987),Academic Press,Inc.,San Diego,カリフォルニア州、に述べられている方法に従って作製しうる。
【0077】
ここで使用する、ポリペプチドに言及するとき(「所与のタンパク質のフラグメント」におけるように)の「フラグメント」という用語は、そのポリペプチドのより短い部分を指す。フラグメントは、4アミノ酸残基から、全体のアミノ酸配列から1個のアミノ酸を減じたものまでのサイズ範囲をとりうる。1つの実施形態では、本発明は、ポリペプチドの「機能性フラグメント」を考慮する。そのようなフラグメントは、本発明によれば、おそらく完全長ポリペプチドに関して認められるよりも低い感作作用を有するが、治療処置に対して癌試料または癌哺乳動物を感作する能力を保持しているという点で「機能性」である。ポリペプチドのそのような「フラグメント」は、好ましくは10アミノ酸以上の長さ、より好ましくは50アミノ酸以上の長さ、さらに一層好ましくは100アミノ酸以上の長さである。SPARCファミリーポリペプチドの「フラグメント」は、本発明によれば、SPARCファミリー成員の3つの保存されたドメイン、すなわち酸性N末端ドメイン、フォリスタチン様ドメイン及び細胞外カルシウム結合ECドメインの1つ以上を含みうる。
【0078】
ここで使用する、特定ポリペプチドの「変異体」は、その特定ペプチド全体またはそのフラグメントのいずれかに実質的に類似のポリペプチドを指す。「実質的に類似」とは、変異体が、所望機能、すなわち、おそらく変異体の感作作用は野生型ポリペプチドに関して認められるものよりも低いが、治療処置に対して癌試料または哺乳動物を感作する機能を有する最終構築物に達するように作製されていることを意味する。そのような変異体は、例えば特定ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基の欠失、挿入または置換を含む。加えて、「変異体」はまた、SPARCファミリーポリペプチドと第二のポリペプチドの間の融合ポリペプチドでもよい。欠失、挿入、置換及び融合のいかなる組合せも作製しうる。
【0079】
ここで使用する、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関して使用するときの「単離」または「精製」は、天然に生じるヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、その正常な細胞環境から取り出されていることまたは非天然環境で合成される(例えば人工的に合成される)ことを意味する。従って、単離」または「精製」配列は、無細胞溶液中に存在するかまたは異なる細胞環境に位置しうる。「精製」という用語は、そのヌクレオチドまたはアミノ酸配列が存在する唯一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドであることを意味するのではなく、天然でそれに結合している非ポリヌクレオチドまたはポリペプチド物質を基本的に含まない(約90−95%、99−100%まで純粋)ことを意味する。
【0080】
ここで使用する、「コードする」という用語は、ヌクレオチド(すなわちrRNA、tRNA、他のRNA分子)またはアミノ酸の規定配列を有する、生物学的過程において他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型として働く、染色体またはmRNA内の遺伝子のような、ポリヌクレオチド内のヌクレオチドの特定配列の固有の特性及びそれから生じる生物学的特性を指す。従って、その遺伝子によって生産されるmRNAの転写及び翻訳が細胞または他の生体系においてタンパク質を生産する場合、遺伝子はタンパク質をコードする。mRNA配列と同一であり、通常は配列表において提供されるコード鎖、及び遺伝子またはcDNAの、転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、タンパク質またはその遺伝子またはcDNAの他の産物をコードすると称されうる。タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、遺伝子暗号の縮重のために、異なるヌクレオチド配列を有するが、タンパク質の同じアミノ酸配列をコードするいかなるポリヌクレオチドも包含する。タンパク質をコードするポリヌクレオチド及びヌクレオチド配列は、イントロンを含んでもよく、またゲノムDNAであってもよい。
【0081】
ここで使用する、「ベクター」という用語は、外来性または内在性ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するために使用されるポリヌクレオチド化合物を指す。ベクターは、1以上のポリペプチド分子をコードしうるヌクレオチド配列を含む。天然の状態または組換え操作を受けた、プラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージは、少なくとも1つの所望単離ポリヌクレオチド分子を含む組換えベクターを提供するために一般的に使用されるベクターの非制限的な例である。
【0082】
ここで使用する、「形質転換」という用語または「形質移入」という用語は、外来性ポリヌクレオチド(例えばDNA)を細胞に導入するための様々な当技術分野で認識されている手法を指す。外来性DNAが細胞膜の内部に導入されたとき、細胞は「形質転換」または「形質移入」される。「形質転換」または「形質移入」という用語及び各々に由来する用語は、交換可能に使用される。
【0083】
ここで使用する、「発現ベクター」は、細胞によって転写されうるまたは翻訳されうるポリペプチド(すなわちタンパク質)をコードするポリヌクレオチドを有する組換え発現カセットを指す。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスまたはポリヌクレオチドフラグメントでありうる。
【0084】
「発現」という用語は、細胞におけるまたは無細胞系におけるタンパク質またはヌクレオチド配列の生産を指し、mRNA産物への転写、転写後修飾及び/またはその産物をコードするDNAからのタンパク質産物またはポリペプチドへの翻訳、並びに場合により翻訳後修飾を包含する。
【0085】
ここで使用する、「発現レベルを比較すること」という用語は、2以上の試料においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドの差異発現を比較することを指す。
【0086】
ここで使用する、「差異発現」という用語は、2つ以上の試料における、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド発現パターンの定量的並びに定性的な相違を指す。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その発現が、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド検出のための公知の方法(例えば電気泳動)によって、1つの試料では検出可能であるがさらに別の試料では検出不能である場合、「差異的に発現される」と表される。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドはまた、2つの試料の間でのその発現の定量的な差異(すなわちμg、μmolまたはコピー数で測定した、上昇または低下)が、約20%、約30%、約50%、約70%、約90%から約100%(約2倍)またはそれ以上、約1.2倍、2.5倍、5倍、10倍、20倍、50倍またはそれ以上までを含む。「差異的に発現される」遺伝子転写産物は、2つ以上の試料間で異なるコピー数で認められるmRNA転写産物を意味する。
【0087】
ここで使用する、「増大した量のSPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチド」は、対照細胞と比較して、細胞における少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上、または2倍、3倍、4倍、5倍またはそれ以上高いレベルの発現を指す。SPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドを発現する細胞は、その発現が、化学療法抵抗性細胞と比較したとき前記で定義したとおりである場合、高い量のそのようなポリペプチドまたはポリヌクレオチドを有すると表される。
【0088】
「分泌タンパク質」という用語は、細胞外にある少なくとも一部分を有するタンパク質を指し、完全に細胞外にある(すなわち細胞に結合していない)タンパク質を包含する。「分泌のレベル」は、細胞外画分における分泌タンパク質のレベル(すなわち量)を指す。
【0089】
ここで使用する、「増殖」という用語は、細胞分裂の速度及び細胞が分裂し続ける能力を指す。1つの完全な細胞分裂過程を「周期」と称する。「細胞増殖の上昇」とは、細胞が、その細胞型の正常細胞に比べてより速い速度の細胞分裂を有するように細胞分裂速度を上昇させること、もしくは各々の細胞分裂の速度は変化させずに細胞分裂がより多いサイクル、例えば10%またはそれ以上(例えば20%、30%、40%、50%、2倍、5倍、10倍またはそれ以上までの上昇)にわたって継続するのを可能にすることを意味する。「細胞増殖の低下」とは、細胞が、その細胞型の正常細胞に比べてより低い速度の細胞分裂を有するように細胞分裂速度を低下させること、もしくは各々の細胞分裂の速度は変化させずに細胞分裂のサイクル数を減少させること、例えば10%またはそれ以上(例えば20%、30%、40%、50%、2倍、5倍、10倍またはそれ以上までの低下)を意味する。
【0090】
本発明は、癌治療処置を感作するための組成物及び方法を提供する。そのような感作組成物及び方法は、治療に抵抗性である患者の応答を増強する上で特に有用である。それらはまた、例えばより小さな強度(すなわち用量)の治療に対する患者の応答を増強することによって、癌治療の副作用を低減する上でも有用である。本発明の組成物は、治療処置物質の用量を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%及び60%まで低下させうる。
【0091】
(SPARCファミリーポリペプチド及びポリヌクレオチド)
1つの実施形態では、本発明は、(a)配列番号1−17から成る群より選択されるSPARCファミリーポリペプチド;(b)(a)の前記SPARCファミリーポリペプチドに少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド;(c)少なくとも50アミノ酸の長さである、(a)−(b)のポリペプチドフラグメント;及び(d)(a)−(c)のポリペプチドを含む融合ポリペプチドを提供する。
【0092】
本発明によって提供されるSPARCファミリーポリペプチドは、野生型ポリペプチドまたはその変異体でありえ、完全長ポリペプチドまたはそのフラグメントでありうる。SPARCファミリーポリペプチドは、野生型または完全長ポリペプチドと比較したとき変異体またはフラグメントポリペプチドに関してはより低い活性が存在しうるが、癌試料または患者を治療処置に対して感作する機能を保持する限り、本発明の範囲内である。
【0093】
配列相同性に基づき、SMOC−1(Vannahmeら,2002,J.Biol.Chem.277(41):37977−37986)、hevin(Bendik I,Schraml P,Ludwig CU,Cancer Res.1998;58(4):626−9)、SC1(Johnston IG,Paladino T,Gurd JW,Brown IR,Neuron.1990 4(1):165−76)、QR−1、フォリスタチン様タンパク質(TSC−36)(Shibanuma,M.,Mashimo,J.,Mita,A.,Kuroki,T.及びNose,K,1993,Eur.J.Biochem.217(1)13−19)及びtestican(Alliel,P.M.,Perin,J.P.,Jolles,P.及びBonnet,F.J,1993,Eur.J.Biochem.214(1),347−350)などの、SPARCファミリーのいくつかの成員が特定された。本発明のSPARCファミリーポリペプチドは、SPARC及び当技術分野で公知のまたはここで述べられているような、その特定されたファミリー成員のいずれかを含むが、それらに限定されない。
【0094】
様々なポリヌクレオチド配列のアラインメントは、当業者が、タンパク質の保存された部分(すなわち2つ以上の配列の間で共通する部分)並びに非保存部分(すなわち2つ以上の配列にユニークな部分)を選択することを可能にする。1つの実施形態では、本発明は、10アミノ酸以上の長さ、より典型的には50アミノ酸以上の長さの保存されたフラグメントを考慮する。好ましくは、本発明のSPARCファミリーポリペプチドは、SPARCファミリー成員の間で保存された、1または2または3ドメイン(すなわち酸性N末端ドメイン、フォリスタチン様ドメイン及び/またはECドメイン)を含む。
【0095】
野生型SPARCファミリータンパク質の治療感作フラグメントまたは変異体は、欠失突然変異、点突然変異、ここで以下に述べるような及び参照してここに組み込まれる、J.Sambrook,E.F.Fritsch,及びT.Maniatis、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第二版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク,1989,及びAusubelら,分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),1994に述べられているような融合を含むがこれらに限定されない、当業者に既知の慣例的配列操作によって作製されうる。
【0096】
変異体ポリペプチドをコードするDNAにおける突然変異は、読み枠を変化させてはならず、好ましくは二次mRNA構造を生成しうる相補的領域を創造しない。遺伝子レベルでは、これらの変異体は、ペプチド分子をコードするDNA内のヌクレオチドの部位指定突然変異誘発、それにより変異体をコードするDNAを生産すること、及びその後組換え細胞培養においてそのDNAを発現することによって作製される。
【0097】
(SPARCファミリーポリペプチドのインビトロ生産及び精製)
本発明によって提供されるSPARCファミリーポリペプチドは、何らかの公知の方法、例えば組換えDNA手法を用いて原核または真核細胞において生産しうる。組換え宿主細胞法は、ここで以下に述べるように、または例えば、その開示が参照してここに組み込まれる、T.Maniatisら,「分子クローニング(Molecular Cloning)」第二版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.T.(1989);日本生化学界(Biochemical Society of Japan)編,「続生化学実験講座 1,遺伝子研究法II(Lectures on Biochemical Experiments(Second Series;1),Methods for Gene Study II)」,東京科学同人,日本(1986);日本生化学界(Biochemical Society of Japan)編,「新生化学実験講座2、核酸III(組換えDNA技術)(New Lectures on Biochemical Experiments 2,Nucleic Acids III(Recombinant DNA Technique))」,東京科学同人,日本(1992);R.Wu(編),「酵素学における手法(Methods in Enzymology)」Vol.68,Academic Press,ニューヨーク(1980);R.Wuら(編),「酵素学における手法」,Vols.100および101,Academic Press,ニューヨーク(1983);R.Wuら(編),,「酵素学における手法」,Vols.153,154および155,Academic Press,ニューヨーク(1987)等に開示されている方法によって、並びにここで引用する参考文献の中で開示されている手法によって、実施しうる。そのような手法及び手段はまた、本発明の目的に応じて従来の手法から個別に修正/改善されたものでありうる。
【0098】
SPARCファミリーポリペプチドは、組換え宿主細胞から発現され、精製されうる。組換え宿主細胞は、大腸菌などの細菌、酵母などの真菌細胞、ショウジョウバエ及びカイコ由来の細胞系統を含むがこれらに限定されない昆虫細胞、及び哺乳動物細胞及び細胞系統を含むがこれらに限定されない、原核または真核細胞でありうる。
【0099】
一部の実施形態では、本発明のSPARCファミリーポリペプチドを発現し、精製するとき、封入体(不溶性分画である)の形成を防ぐためにタンパク質の溶解度を改善するための手法を使用し、これにより大量のポリペプチドが得られる。封入体に蓄積されるSPARCは、その生理的活性を保持しない不活性型SPARCである。
【0100】
精製SPARCファミリーポリペプチドの溶解度は、当技術分野で公知であり、ここで以下に述べるような方法によって改善されうる。
【0101】
例えば溶解度はまた、完全長SPARCファミリーポリペプチドではなく、機能的フラグメントを発現することによって改善されうる。発現されるフラグメントは、活性は完全長ポリペプチドの活性より低くてもよいが、ここで述べる感作活性を保持すべきである。
【0102】
1つの実施形態では、SPARCファミリー成員の3つの保存されたドメインのうちの1または2または3ドメインを含むフラグメントを発現する。
【0103】
加えて、発現されるタンパク質(例えば大腸菌において)の溶解度を高めるために、増殖温度を低下させること、より弱いプロモーターを使用すること、より低いコピー数のプラスミドを使用すること、誘導物質濃度を低下させること、Georgiou,G.およびValax,P.(1996,Current Opinion Biotechnol.7,190−197)の中で述べられているように増殖培地を変えることにより、タンパク質合成の速度を低下させることができる。これはタンパク質合成の速度を低下させ、通常、より可溶性のタンパク質が得られる。また、適切な折りたたみまたはタンパク質安定性のために不可欠な補欠分子族または補因子を添加するか、もしくは増殖の間の培地のpH変動を制御するための緩衝液を添加するか、もしくは大部分の富栄養培地(LB、2xYTなど)中に存在するラクトースによるlacプロモーターの誘導を抑制するために1%グルコースを添加することができる。ポリオル(例えばソルビトール)及びスクロースも培地に添加しうる。これらの添加によって引き起こされる浸透圧の上昇が、天然タンパク質構造を安定化する、細胞中の浸透圧保護物質(osmoprotectant)の蓄積を導くからである。エタノール、低分子量チオール及びジスルフィド、及びNaClを添加してもよい。加えて、シャペロン及び/またはフォルダーゼを所望ポリペプチドと共発現させてもよい。分子シャペロンは、折りたたみ中間体と一過性に相互作用することによって適切な異性化及び細胞ターゲティングを促進する。最も良く特性決定されている大腸菌シャペロン系は、GroES−GroEL、DnaK−DnaJ−GrpE、ClpBである。フォルダーゼは、折りたたみ経路に沿った速度制限工程を促進する。3種類のフォルダーゼが重要な役割を果たす:ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPI)、ジスルフィドオキシドレダクターゼ(DsbA)及びジスルフィドイソメラーゼ(DsbC)、タンパク質システインの酸化及びジスルフィド結合の異性化の両方を触媒する真核生物タンパク質であるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)。これらのタンパク質の1以上と標的タンパク質の共発現は、より高いレベルの可溶性タンパク質を導きうる。
【0104】
本発明のSPARCファミリーポリペプチドは、その溶解度と生産を改善するために融合タンパク質として生産しうる。融合タンパク質は、SPARCファミリーポリペプチド及びインフレームで融合した第二ポリペプチドを含む。第二ポリペプチドは、それが融合するポリペプチドの溶解度を改善するための当技術分野で公知の融合パートナー、例えばNusA、バクテリオフェリチン(BFR)、GrpE、チオレドキシン(TRX)及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)でありうる。Madison,Wis.based Novagen Inc.は、NusA−標的融合体の形成を可能にするpET43.1ベクターシリーズを提供している。DsbA及びDsbCはまた、融合パートナーとして使用したとき発現レベルにプラスの作用を示し、これにより、より高い溶解度を達成するためにSPARCポリペプチドと融合するのに使用できる。
【0105】
1つの実施形態では、SPARCファミリーポリペプチドを、その全体が参照してここに組み込まれる、米国特許第6,387,664号に述べられているように、SPARCファミリーポリペプチドと融合パートナーであるチオレドキシンを含む融合ポリペプチドとして生産する。チオレドキシン−SPARC融合体は、大腸菌において、SPARCの生理的活性を失わずに製剤しやすい可溶性タンパク質として大量に生産することができる。米国特許第6,387,664号は、チオレドキシンのC末端に融合したSPARCを有する融合SPARCタンパク質を提供するが、本発明に関しては、SPARCファミリーポリペプチドは、その感作機能が保持される限り、第二ポリペプチドのN末端またはC末端のいずれに融合してもよい。
【0106】
溶解度を高めることに加えて、SPARCファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質は、細胞におけるSPARCファミリーポリペプチドの発現の検出を容易にするように構築しうる。1つの実施形態では、SPARCファミリーポリペプチドに融合する第二ポリペプチドはレポーターポリペプチドである。レポーターポリペプチドは、そのような検出目的に使用するとき、SPARCファミリーポリペプチドと融合している必要はない。SPARCファミリーポリペプチドも同時にコードする同じポリヌクレオチド(例えばベクター)によってコードされ、標的細胞に同時導入されて、共発現されうる。
【0107】
好ましくは、本発明において使用するレポーターポリペプチドは自己蛍光タンパク質(例えばGFP、EGFP)である。自己蛍光タンパク質は、対象とするポリヌクレオチド(及びポリペプチド産物)の発現の特定のための迅速なアッセイを提供する。フローソーターを用いてレポーターポリペプチドの活性(及び推論によりその発現レベル)を定量的に観測することができるので、多くの独立した形質転換体を連続的にまたはバルク個体群として検定することは簡単である。その後、最良発現を有する細胞をスクリーニングまたは個体群から選択することができる。これは、本発明に従って治療を感作するためのSPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む組換え細胞を選択するときに有用である。平均蛍光強度などの定量的パラメータ及び分散を、細胞個体群の蛍光強度から判定することができる(Shapiro,H.,1995,Practical Flow Cytometry,217−228)。本発明において有用なレポーター分子の非制限的な例は、ルシフェラーゼ(ホタルまたは他の種から)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)及びdsRedを含む。
【0108】
SPARCポリペプチド(単独または融合タンパク質として)の発現はまた、ELISA(酵素結合イムノソルベント検定法)(例えば米国特許第5,962,320号;同第6,187,307号;同第6,194,205号参照)、ウエスタンブロット法、または当技術分野で慣例的な他の方法によって直接測定することができる。SPARCファミリーポリペプチドの発現は、このタンパク質の転写産物を検出することによって(例えばノーザンブロット法またはDNAマイクロアレイなどのハイブリダイゼーション分析によって、もしくはPCRによって)間接的に検出することができる。
【0109】
1つの実施形態では、第二ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、リンカーポリペプチドをコードする介在リンカー配列を通してSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに融合する。
【0110】
もう1つの実施形態では、前記リンカーポリペプチドは、プロテアーゼによって加水分解されうるペプチド結合を含むプロテアーゼ切断部位を含む。結果として、SPARCファミリーポリペプチドは、発現後にタンパク質分解によって第二ポリペプチドから分離することができる。リンカーは、プロテアーゼの触媒部位も同時に結合している前記結合のいずれかの側に1以上の付加的なアミノ酸を含みうる(例えばSchecterとBerger,1967,Biochem.Biophys.Res.Commun.27,157−62参照)。あるいは、リンカーの切断部位をプロテアーゼの認識部位から分離することができ、2つの切断部位と認識部位を1個以上(例えば2−4個)のアミノ酸によって分離することができる。1つの態様では、リンカーは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50またはそれ以上のアミノ酸を含む。より好ましくは、リンカーは5−25アミノ酸の長さであり、最も好ましくは、リンカーは8−15アミノ酸の長さである。
【0111】
本発明に従って有用な一部のプロテアーゼが以下の参考文献において論じられている:V.Y.H.Hook,Proteolytic and cellular mechanisms in prohormone and proprotein processing,RG Landes Company,Austin,Texas,USA(1998);N.M.Hooperら,1997,Biochem.J.321:265−279;Werb,1997,Cell91:439−442;Wolfsbergら,1995,J.Cell Biol.131:275−278;MurakamiとEtlinger,1987,Biochem.Biophys.Res.Comm.146:1249−1259;Bergら,1995,Biochem.J.307:313−326;SmythとTrapani,1995,Immunology Today 16:202−206;Talanianら,1997,J.Biol.Chem.272:9677−9682;及びThornberryら,1997,J.Biol.Chem.272:17907−17911。適切なプロテアーゼは、以下の表に列挙されているものを含むが、これらに限定されない。
【表1】
【0112】
付加的なリンカーポリペプチドは、プロオピオメラノコルチン変換酵素(PCE);クロマフィン顆粒アスパラギン酸プロテアーゼ(CGAP);プロホルモンチオールプロテアーゼ;カルボキシペプチダーゼ(例えばカルボキシペプチダーゼE/H、カルボキシペプチダーゼD及びカルボキシペプチダーゼZ);プロリルエンドペプチダーゼ;及び高分子量プロテアーゼについての基質から入手できる。
【0113】
細胞表面プロテアーゼも本発明に従った切断性リンカーと共に使用することができ、アミノペプチダーゼN;ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ;アンギオテンシン変換酵素;ピログルタミルペプチダーゼII;ジペプチジルペプチダーゼIV;N−アルギニン二塩基性コンベルターゼ;エンドペプチダーゼ24.15;エンドペプチダーゼ24.16;アミロイド前駆体タンパク質セクレターゼα、β及びγ;アンギオテンシン変換酵素セクレターゼ;TGFαセクレターゼ;TNFαセクレターゼ;FASリガンドセクレターゼ;TNF受容体I及びIIセクレターゼ;CD30セクレターゼ;KL1及びKL2セクレターゼ;IL6受容体セクレターゼ;CD43、CD44セクレターゼ;CD16−I及びCD16−IIセクレターゼ;L−セレクチンセクレターゼ;葉酸受容体セクレターゼ;MMP1、2、3、7、8、9、10、11、12、13、14及び15;ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子;組織プラスミノーゲン活性化因子;プラスミン;トロンビン;BMP−1(プロコラーゲンC−ペプチダーゼ);ADAM1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11;及びグランザイムA、B、C、D、E、F、G及びHを含むが、これらに限定されない。
【0114】
細胞関連プロテアーゼに基づくことの代替策は、自己切断リンカーを使用することである。例えば口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aプロテアーゼがリンカーとして使用しうる。これは、FMVDのポリタンパク質を2A/2B接合部で切断する17アミノ酸の短いポリペプチドである。FMDV 2Aポリペプチドの配列は、NFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号77)である。切断は、最終グリシン−プロリンアミノ酸対のペプチドのC末端で起こり、他のFMDV配列の存在とは無関係であり、異種配列の存在下でさえも切断する。
【0115】
2つのタンパク質コード領域の間に(すなわち本発明に従った融合タンパク質のSPARCファミリーポリペプチドと第二ポリペプチドの間に)この配列を挿入することは、それ自体で、そのN末端に2AプロテアーゼのC末端プロリンを担持するC末端フラグメントと、そのC末端に2Aプロテアーゼペプチドの残部を担持するN末端フラグメントに切断する、自己切断キメラの形成をもたらす(例えばP.deFelipeら,Gene Therapy 6:198−208(1999)参照)。自己切断リンカー及び付加的なプロテアーゼ−リンカーの組合せは、その全体が参照してここに組み込まれる、国際公開第0120989号の中でさらに記述されている。
【0116】
前述したリンカー配列をコードするポリヌクレオチドは、適切なプロテアーゼの天然基質をコードする配列からクローニングすることができ、または当技術分野で慣例的な方法を用いて化学合成することができる。
【0117】
例えばインビトロまたはインビボで、ヒト細胞においてSPARCファミリーポリペプチドを発現するとき、SPARCファミリーポリペプチドをコードするそのようなポリヌクレオチドについて選択するコドンは、好ましくは、以下の表2に列挙されているような、ヒトにおいて最も頻繁に使用されるものである。表4に示す例示的なポリヌクレオチド配列は、ヒトにおいて最も頻繁に使用されるコドンに基づく。
【表2】
【0118】
一番上のコドンは、ヒト遺伝子における使用のために最も好ましいものである。下線を付したコドンは、ヒト遺伝子ではほぼ全く使用されず、従って好ましくない。
【0119】
もう1つの実施形態では、本発明は、(a)SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドを含む融合ポリペプチドのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び(b)ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で(a)のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド、を提供する。
【0120】
本発明の上記実施形態を実施するためのポリヌクレオチド操作についての手法は当技術分野において周知である(例えばSambrookら,1989;Ausubelら、1987,及びin Annual Reviews of Biochemistry,1992,61:131−156参照)。制限酵素等のような、そのような手法を適用する上で有用な試薬は、当技術分野で広く知られており、多くの販売元から市販されている。
【0121】
本発明における使用のためのポリヌクレオチドはまた、化学合成によって、例えばBeaucageら,1981,Tetra.Letts.,22:1859−1862によって述べられているホスホルアミダイト法、または市販の自動オリゴヌクレオチドシンセイサイザーで実施しうるトリエステル法(Matteucciら,1981,J.Am.Chem.Soc.,103:3185)によって、部分的または全面的に生産しうる。二本鎖フラグメントは、相補鎖を合成し、その鎖を適切な条件下で共にアニーリングすることによって、もしくはDNAポリメラーゼを適切なプライマー配列と共に使用して相補鎖を合成することによって、化学合成の一本鎖産物から入手しうる。
【0122】
1つの実施形態では、本発明によって提供されるSPARCファミリーポリヌクレオチドは、ベクターとして、好ましくは発現ベクターとして存在する。
【0123】
(発現ベクター)
SPARCファミリーポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドは、治療を感作するための本発明のSPARCファミリーポリペプチドを生産するために、原核または真核細胞に導入されて、複製することができるベクターに組み込みうるか、もしくは細胞または組織を形質移入または感染して、SPARCファミリーポリペプチドを発現することによって直接感作機能を達成するために使用できる。ベクターは、形質移入細胞または感染細胞のゲノム内に組み込まれてもよくまたは組み込まれなくてもよい。
【0124】
本発明のSPARCファミリーポリペプチドをコードする有用なポリヌクレオチド分子を発現ベクターにクローニングした後、それらを適切な細胞に導入し、細胞で継代して、これらのポリヌクレオチドの使用可能な量を生成しうる。
【0125】
本発明のための適切なベクターは、プラスミドまたはウイルスベクターでありうる。プラスミド発現ベクターは、pBR322、pUC、pcDNA3.1またはBluescript(商標)を含むプラスミドを含むが、これらに限定されない。ウイルスベクターは、バキュロウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)及びMMLVベースの複製インコンピテントベクターpMV−7(Kirschmeierら,1988,DNA,7:219−225)などのレトロウイルスベクター(Priceら,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:156−160)、並びにヒト及び酵母修飾染色体(HAC及びYAC)を含むが、これらに限定されない。
【0126】
発現ベクターは、上流または下流のポリヌクレオチドの発現を駆動する及び/または増強するために1以上の調節エレメントを含みうる。これらの調節配列は、導入及び/または発現のために使用される細胞に基づいて選択され、発現されるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結される。「調節エレメント」という用語は、プロモーター、エンハンサー及び他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を含むことが意図されている。そのような調節エレメントは、例えばGoeddel;1990,Gene Expression Technology:Methods in Eiizyniology 185,Academic Press,San Diego,CAにおいて記述されている。
【0127】
調節エレメントは、多くの型の対象細胞においてヌクレオチド配列の発現を指令するもの並びに一定の対象細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指令するもの(例えば組織特異的調節配列)を包含する。
【0128】
調節エレメントはまた、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの構成的発現を指令するもの及びポリヌクレオチド配列の誘導的発現を指令するものを包含する。
【0129】
好ましくは、適切なプロモーターを使用しうる。例えばそのようなプロモーターは、大腸菌を宿主として使用するプラスミドの場合はトリプトファン(trp)プロモーター、ラクトース(lac)プロモーター、トリプトファン−ラクトース(tac)プロモーター、リポタンパク質(lpp)プロモーター、λファージPLプロモーター等;及び酵母を宿主として使用するプラスミドの場合はGAL1、GA10プロモーター等を含みうる。
【0130】
一部の真核生物プロモーター及びエンハンサーは、それらが転写を活性化する及び/または調節することができる広い範囲の細胞を有するが、また別の一部は、限られたサブセットの細胞型だけにおいて機能性である(例えばVossら,1986,Trends Biochem.Sci.,11:287;及び総説についてはManiatisら,前出参照)。例えばSV40初期遺伝子エンハンサーは、哺乳動物からの極めて多様な細胞型において非常に活性であり、哺乳動物細胞におけるタンパク質の発現のために広く使用されてきた(Dijkemaら,1985,EMBO J.4:761)。広範囲の哺乳動物細胞型において活性なプロモーター/エンハンサーエレメントの2つの他の例は、ヒト伸長因子1α遺伝子(Uetsukiら,1989,J.Biol.Chem.,264:5791;Kimら,1990,Gene,91:217;及びMizushima,ら,1990,Nagata,Nuc.Acids.Res.,18:5322)、及びラウス肉腫ウイルス(Gormanら,1982,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:6777)及びヒトサイトメガロウイルスのロングターミナルリピートからのものである(Boshartら,1985,Cell,41:521)。
【0131】
真核細胞発現のための適切なプロモーターは、TRAPプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーターなどのアデノウイルスプロモーター;サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター;RSウイルス(RSV)プロモーター;MMTプロモーターなどの誘導性プロモーター;メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーター;アルブミンプロモーター;アポAIプロモーター;ヒトグロブリンプロモーター;単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーターなどのウイルスチミジンキナーゼプロモーター;レトロウイルスLTR;ITR;β−アクチンプロモーター;及びヒト成長ホルモンプロモーターを含むが、これらに限定されない。プロモーターはまた、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを制御する天然プロモーターでもよく、天然プロモーターの配列は当技術分野で見出しうる(例えばAgrawalら,2000,J.Hematother.Stem Cell Res.,795−812;Cournoyerら,1993,Annu.Rev.Immunol.,11:297−329;van de Stolpeら,1996,J.Mol.Med.,74:13−33;Hermann,1995,J.Mol.Med.,73:157−63)。
【0132】
以下のものを含むがこれらに限定されない、様々なエンハンサー配列が本発明において使用できる:免疫グロブリン重鎖エンハンサー;免疫グロブリン軽鎖エンハンサー;T細胞受容体エンハンサー;HLA DQα及びDQβエンハンサー;β−インターフェロンエンハンサー;インターロイキン−2エンハンサー;インターロイキン−2受容体エンハンサー;MHCクラスII 5akエンハンサー;MHCクラスII HLA−DRαエンハンサー;β−アクチンエンハンサー;筋クレアチンキナーゼエンハンサー;プレアルブミン(トランスサイレチン)エンハンサー;エラスターゼIエンハンサー;メタロチオネインエンハンサー;コラゲナーゼエンハンサー;アルブミン遺伝子エンハンサー;α−フェトプロテインエンハンサー;β−グロビンエンハンサー;c−fosエンハンサー;c−HA−rasエンハンサー;インスリンエンハンサー;神経細胞接着分子(NCAM)エンハンサー;α1−抗トリプシンエンハンサー;H2B(TH2B)ヒストンエンハンサー;マウスまたはI型コラーゲンエンハンサー;グルコース調節タンパク質(GRP94及びGRP78)エンハンサー;ラット成長ホルモンエンハンサー;ヒト血清アミロイドA(SAA)エンハンサー;トロポニンI(TN I)エンハンサー;血小板由来増殖因子エンハンサー;デュシェーヌ筋ジストロフィーエンハンサー;SV40ポリオーマエンハンサー;レトロウイルスエンハンサー;乳頭腫ウイルスエンハンサー;B型肝炎ウイルスエンハンサー;ヒト免疫不全エンハンサー;サイトメガロウイルスエンハンサー;及びテナガザル白血病ウイルスエンハンサー。
【0133】
例示的な誘導性プロモーター/エンハンサー配列及びそれらの誘導物質を以下に列挙する。
【表3】
【0134】
付加的な真核生物調節配列は、ポリヌクレオチドの発現を駆動するためにも使用できる、真核生物プロモーターデータベース(Eukaryotic Promoter Data Base、EPDB)から入手できる。
【0135】
本発明の一部の実施形態では、細胞内へのベクターの送達は、ここで前述したような発現構築物に選択マーカーを含めることによってインビトロまたはインビボで特定しうる。マーカーは、発現の容易な特定を可能にする、修飾細胞への特定可能な変化を生じさせる。通常、薬剤選択マーカーを含むことは、クローニング及び形質転換体の選択を助ける。真核細胞における選択マーカーとして使用できる遺伝子は当技術分野において公知であり、優性選択マーカーの例は、哺乳動物細胞において薬剤G418に対する耐性を付与する細菌アミノグリコシド3’ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo遺伝子とも称される)、抗生物質ヒグロマイシンに対する耐性を付与する細菌ヒグロマイシンGホスホトランスフェラーゼ(hyg)遺伝子及びミコフェノール酸の存在下で増殖する能力を付与する細菌キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt遺伝子とも称される)を含む。他の選択マーカーは、関連酵素活性を欠く細胞系統と共に使用しなければならないという意味で優性ではない。非優性選択マーカーの例は、tk−細胞系統と共に使用されるチミジンキナーゼ(tk)遺伝子、CAD欠損細胞と共に使用されるCAD遺伝子及びhprt−細胞系統と共に使用される哺乳動物ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)遺伝子を含む。哺乳動物細胞系統における選択マーカーの使用の総説は、Sambrook,J.ら,1989,分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第二版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク、pp.16.9−16.15に述べられている。
【0136】
あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)(真核生物)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)(原核生物)などの酵素をコードする遺伝子が、選択マーカーを提供するために使用しうる。免疫原性マーカーも使用できる。使用する選択マーカーの正確な種類は、それが対象ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと同時に発現されうる限り、重要ではないと考えられる。選択マーカーのさらなる例は当業者に周知である。
【0137】
本発明のSPARCファミリーポリペプチドを発現するためにcDNA挿入物を使用する場合、典型的には、ポリヌクレオチド転写産物の正しいポリアデニル化を生じさせるためにポリアデニル化シグナルを含むことが望ましい。ポリアデニル化シグナルの性質は本発明の実施の成功にとって決定的ではないと考えられ、そのようないかなる配列も使用しうる。これらのエレメントは、メッセージのレベルを高めるため及び発現カセットから他の配列への読み過しを最小限に抑えるために役立ちうる。
【0138】
(組換え細胞生産:SPARCファミリーポリヌクレオチドを発現及び/または感作のために細胞に導入すること)
前述したように、精製のためにSPARCファミリーポリペプチドを発現するためもしくは発現して本発明の感作作用を達成するために、当技術分野で周知の方法、例えば分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),Ausubel,F.M.ら(編),1989,Greene Publishing Associates,Section 9.1、及び分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第2版,Sambrookら,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressにおける方法に従って本発明のSPARCファミリーポリヌクレオチドを細胞に導入しうる。
【0139】
培養哺乳動物細胞へのベクターの移入のためのいくつかの非ウイルス法が本発明によって考慮される。これらは、リン酸カルシウム沈殿(Graham,ら,1973;Chen,ら,1987;Rippe,ら,1990)、DEAE−デキストラン(Gopal,1985)、電気穿孔(Tur−Kaspaら,1986;Potterら,1984)、直接微量注入(Harland,ら,1985)、DNA充填リポソーム(Nicolau,ら,1982;Fraleyら,1979)及びリポフェクタミン−DNA複合体、細胞超音波処理(Fechheimerら,1987)、高速マイクロプロジェクタイルを使用する遺伝子パーティクルガン(Yangら,1990)及び受容体媒介形質移入(Wu,ら,1987;Wu,ら,1988)を含む。これらの手法のいくつかは、インビボまたはエキソビボでの使用に成功裏に適合させうる。
【0140】
ひとたびベクターが細胞内に送達されれば、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは種々の部位に位置づけられ、発現されうる。一部の実施形態では、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは細胞のゲノム内に安定に組み込まれうる。この組込みは、相同的組換え(遺伝子置換)によってであるか、もしくはランダムな非特異的位置に組み込まれうる(遺伝子増加)。Holmes−Sonら,2001,Adv.Genet.43:33−69参照。さらなる実施形態では、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、別個のDNAのエピソームセグメントとして細胞内に安定に維持されうる。そのようなポリヌクレオチドセグメントまたは「エピソーム」は、対象細胞の周期とは独立したまたは細胞周期と同調した維持及び複製を可能にするのに十分な配列をコードする。いかにして発現構築物を細胞に送達するか及びポリヌクレオチドが細胞内のどこに残存するかは当技術分野において周知であり、用いる細胞構築物のタイプに依存する。
【0141】
SPARCファミリーポリヌクレオチドの形質移入及び感染のため及び組換えポリペプチドの発現及び精製のために適切と考えられる、哺乳動物種に由来する細胞系統は、市販のものを入手しうる。これらの細胞系統は、CV−1(ATCC CCL 70)、COS−1(ATCC CRL 1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、HeLa(ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)、MRC−5(ATCC CCL 171)、L細胞、HEK−293(ATCC CRL1573)、NSO(ECACC85110503)及びHT1080を含むが、これらに限定されない。
【0142】
細胞培養は、インビトロでの遺伝子移入のために様々な様式で調製しうる。細胞が、インビトロで発現構築物と接触しながら生存可能であり続けるためには、細胞が、正しい比率の酸素と二酸化炭素及び栄養素との接触を維持するが、微生物汚染から保護されることを確保する必要がある。
【0143】
構築物の移入は、当技術分野で公知であり、ここで以下に述べる方法によって実施しうる。一部の方法は、特にインビトロでの移入に適用しうるが、同様にインビボでの使用にも適用しうる。
【0144】
(CaPO4によって媒介される形質移入)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドとリン酸カルシウムを含む沈殿物を形成することによって細胞に導入することができる。例えばHEPES緩衝食塩水を、塩化カルシウム及びポリヌクレオチドを含む溶液と混合して沈殿物を形成することができ、その後前記沈殿物を細胞と共にインキュベートする。一定の細胞によって取り込まれるポリヌクレオチドの量を高めるためにグリセロールまたはジメチルスルホキシドショック工程を付加することができる。CaPO4媒介形質移入は、細胞を安定に(または一過性に)形質移入するために使用でき、細胞にインビトロ修飾にのみ適用できる。CaPO4媒介形質移入についてのプロトコルは、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),Ausubel,F.M.ら(編),1989,Greene Publishing Associates,Section 9.1及び分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第2版,Sambrookら,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Sections 16.32−16.40または他の標準実験室マニュアルに認められる。
【0145】
Dubenskyら(1984)は、CaPO4沈殿物の形態のポリオーマウイルスDNAを成体及び新生児マウスの肝臓と脾臓に注入することに成功し、能動的ウイルス複製と急性感染を明らかにした。BenvenistyとNeshif(1986)も、CaPO4沈殿プラスミドの直接腹腔内注入が形質移入された遺伝子の発現を生じさせることを明らかにした。従って、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、前述したように所望SPARCファミリーポリペプチドを発現するためにインビボでも同様に移入しうる。
【0146】
(DEAE−デキストランによって媒介される形質移入)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドとDEAE−デキストランの混合物を形成し、その混合物を細胞と共にインキュベートすることによって細胞に導入することができる。ポリヌクレオチド取込みの量を高めるためにジメチルスルホキシドまたはクロロキンショック工程を付加することができる。DEAE−デキストラン媒介形質移入についてのプロトコルは、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),Ausubel,F.M.ら(編),1989,Greene Publishing Associates,Section 9.1、及び分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第2版,Sambrookら,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Sections 16.41−16.46または他の標準実験室マニュアルに見出される。
【0147】
(電気穿孔)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、適切な緩衝液中で細胞とポリヌクレオチドを一緒にインキュベートし、細胞を高圧電気パルスに供することによって細胞に導入することができる。電気穿孔によってポリヌクレオチドが細胞に導入される効率は、適用される電界の強さ、電気パルスの長さ、温度、ポリヌクレオチドの立体配座と濃度及び媒質のイオン組成によって影響される。電気穿孔は幅広い細胞型を安定に(または一過性に)形質移入するために使用できる。細胞を電気穿孔するためのプロトコルは、Ausubel,F.M.ら(編)、前出、Section 9.3及びSambrookら,前出、Sections 16.54−16.55または他の標準実験室マニュアルに認められる。
【0148】
(リポソームを介した形質移入(「リポフェクション」))
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、カチオン脂質を含むリポソーム懸濁液とポリヌクレオチドを混合することによって細胞に導入することができる。次にポリヌクレオチド/リポソーム複合体を細胞と共にインキュベートする。リポソームを介した形質移入は、インビトロで培養中の細胞を安定に(または一過性に)形質移入するために使用できる。プロトコルは、Ausubel,F.M.ら(編)、前出、Section 9.4及び他の標準実験室マニュアルに認められる。加えて、リポソームを使用してインビボでの遺伝子送達が達成された。例えばNicolauら,1987,Mets.Enz.,149:157−176;Wang,ら,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7851−7855;Brighamら,1989,Am.J:Med.Sci.,298:278;及びGould−Fogeriteら,1989,Gene,84:429−438参照。
【0149】
(直接注入)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドを細胞に直接注入することによって細胞に導入することができる。細胞のインビトロ培養のために、微量注入によってポリヌクレオチドを導入することができる。各々の細胞を個別に微量注入するので、多数の細胞を修飾するときにはこのアプローチは非常に労力を要する。しかし、微量注入が選択方法である状況は、トランスジェニック動物の作製においてである(以下でより詳細に論じる)。この状況では、ポリヌクレオチドを受精卵母細胞に安定に導入し、次にそれを動物へと成長させる。生じた動物は、卵母細胞に導入されたポリヌクレオチドを担持する細胞を含む。直接注入は、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをインビボで細胞に導入するために使用しうる(例えばAcsadiら,1991,Nature,332:815−818;Wolffら,l990,Science,247:1465−1468参照)。インビボでDNAを細胞に注入するための送達装置(例えば「遺伝子ガン」)が使用できる。そのような装置は市販されている(例えばBioRadから)。
【0150】
(受容体を介したDNA取込み)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、ポリヌクレオチドをポリリシンなどのカチオンと複合体形成し、それを細胞表面受容体についてのリガンドに結合することによって細胞に導入することができる(Wu,ら,1988,J.Biol.Chem.,263:14621;Wilsonら,1992,J.Biol.Chem.,267:963−967;及び米国特許第5,166,320号参照)。ポリヌクレオチド−リガンド複合体の受容体への結合は、受容体を介したエンドサイトーシスによるポリヌクレオチドの取込みを促進する。ポリヌクレオチド−リガンド複合体が標的する受容体は、トランスフェリン受容体及びアシアロ糖タンパク質受容体を含む。天然でエンドソームを破壊し、それによって細胞質内に物質を放出するアデノウイルスカプシドに結合したポリヌクレオチド−リガンド複合体は、細胞内リソソームによる複合体の分解を回避するために使用できる(例えばCurielら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8850;Cristianoら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2122−2126参照)。受容体を介したポリヌクレオチド取込みは、インビトロまたはインビボでSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入するために使用でき、加えて、対象とする標的細胞上で選択的に発現される受容体に結合するリガンドの使用により、ポリヌクレオチドが特定細胞型を選択的に標的することができるという付加的な特徴を有する。
【0151】
(ウイルスを介した遺伝子導入)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入するためのもう1つのアプローチは、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターの使用によるものである。ウイルスベクターによる細胞の感染は、大きな割合の細胞がポリヌクレオチドを受け取るという利点を有しており、これは、ポリヌクレオチドを受け入れた細胞を選択する必要性を回避することができる。加えて、例えばウイルスベクター内に含まれるcDNAによって、ウイルスベクター内にコードされる分子は、ウイルスベクターポリヌクレオチドを取り込んだ細胞において効率よく発現され、またウイルスベクター系はインビトロまたはインビボで使用することができる。
【0152】
それらを、カプシド形成を可能にする相補的遺伝子情報を欠く細胞へのポリヌクレオチド導入のための有用なベクターにする、感染性であるが複製欠損であるウイルス粒子を生産するパッケージング細胞系統において、非複製ウイルスベクターを生産することができる(Mannら,1983,cell,33:153;MillerとButtimore,Mol.Cell.Biol.,1986,6:2895(PA317,ATCC CRL9078)。ヒト及び他の種の細胞を形質転換することができる両種指向性パッケージング遺伝子を含むパッケージング細胞系統が好ましい。
【0153】
(レトロウイルス)
レトロウイルスは、逆転写の工程により、感染細胞においてそれらのRNAを二本鎖DNAに変換する能力によって特徴付けられる一本鎖RNAウイルスの群である(Coffin,1990,in Fieldsら,Ceds,Virology,Raven Press,ニューヨーク,pp.1437−1500)。生じたDNAは、その後、プロウイルスとして細胞染色体に安定に組み込まれ、ウイルスタンパク質の合成を指令する。組込みは、レシピエント細胞及びその子孫におけるウイルス遺伝子配列の維持をもたらす。レトロウイルスゲノムは、それぞれカプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素及びエンベロープ成分をコードする3つの遺伝子、gag、pol及びenvを含む。gag遺伝子から上流に認められる配列は、ビリオンへのゲノムのパッケージングのためのシグナルとして機能する。2つのロングターミナルリピート(LTR)配列がウイルスゲノムの5’及び3’末端に存在する。これらは強力なプロモーター及びエンハンサー配列を含み、対象細胞ゲノムへの組込みのためにも必要である(Coffin、前出)。
【0154】
欠損レトロウイルスは、遺伝子治療のための遺伝子導入における使用に関して十分に特徴付けられている(総説についてはMiller,1990,Blood 76:271参照)。
【0155】
組換えレトロウイルスを生産し、細胞をインビトロまたはインビボでそのようなウイルスに感染させるためのプロトコルは、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),Ausubel,F.M.ら(編),1989,Greene Publishing Associates,Section 9.10−9.14及び他の標準実験室マニュアルに認められる。適切なレトロウイルスの例は、当業者に周知のpLJ、pZIP、pWE及びpEMを含む。適切なパッケージングウイルス系統の例は、Crip、Cre、2及びAmを含む。レトロウイルスは、インビトロ及び/またはインビボで、上皮細胞、内皮細胞、リンパ球、筋芽細胞、肝細胞、骨髄細胞を含む多くの異なる細胞型に様々な遺伝子を導入するために使用されてきた(例えばEglitis,ら,1985,Science,230:1395−1398;Danos,ら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:6460−6464;Wilsonら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:3014−3018;Armentanoら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6141−6145;Huberら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8039−8043;Ferryら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8377−8381;Chowdhuryら,1991,Science,254:1802−1805;van Beusechemら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:7640−7644;Kayら,1992,Human Gene Therapy,3:641−647;Daiら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10892−10895;Hwuら,1993,J.Immunol.,150:4104−4115;米国特許第4,868,116号;米国特許第4,980,286号;国際公開第89/07136号;国際公開第89/02468号;国際公開第89/05345号;及び国際公開第92/07573号参照)。レトロウイルスベクターは、対象ゲノム内に組み込まれるレトロウイルスゲノム(及びその中に挿入された外来ポリヌクレオチド)がポリヌクレオチドを細胞に安定に導入するために、標的細胞分裂を必要とする。従って、標的細胞の複製を刺激する必要があると考えられる。
【0156】
(アデノウイルス)
36kBの線状二本鎖DNAウイルスであるアデノウイルスの遺伝子機構についての知識は、アデノウイルスDNAの大きな断片を7kBまでの外来配列で置換することを可能にする(Grunhaus,ら,1992,Seminar in Virology,3:237−252)。レトロウイルスと異なり、アデノウイルスDNAは潜在的な遺伝毒性を伴わずにエピソーム様式で複製することができるので、対象細胞へのアデノウイルスDNAの感染は染色体組込みを生じさせない。また、アデノウイルスは構造的に安定であり、広汎な増幅後もゲノム再編成は検出されていない。アデノウイルスは、細胞周期段階に関わりなく実質的にすべての上皮細胞に感染しうる。
【0157】
アデノウイルスは、その中間サイズのゲノム、操作の容易さ、高い力価、広い標的細胞範囲及び高い感染性の故に、遺伝子導入ベクターとしての使用に特に適する。ウイルスゲノムの両末端は、ウイルスDNAの複製及びパッケージングのために必要なシスエレメントである、100−200塩基対(bp)の逆方向末端反復配列(ITR)を含む。ゲノムの初期(E)及び後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の開始によって分けられる異なる転写単位を含む。E1領域(E1A及びE1B)は、ウイルスゲノム及び少数の細胞遺伝子の転写の調節の役割を担うタンパク質をコードする。E2領域(E2A及びE2B)の発現は、ウイルスDNA複製のためのタンパク質の合成をもたらす。これらのタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現及び宿主細胞のシャットオフに関与する(Renan,1990)。ウイルスカプシドタンパク質の大部分を含む後期遺伝子の産物は、主要後期プロモーター(MLP)によって生じる単一一次転写産物の有意のプロセシング後にのみ発現される。MLLPは感染の後期に特に有効であり、このプロモーターから生じるすべてのmRNAが、それらを翻訳のための好ましいmRNAとする5’トリパータイトリーダー(tripartite leader)(TL)配列を有する。
【0158】
アデノウイルスのゲノムは、対象とする遺伝子産物をコードし、発現するように操作することができるが、正常な溶菌化ウイルス生活環において複製するその能力に関しては不活性化される。例えばBerkner,ら,1988,BioTechniques,6:616;Rosenfeld,ら,1991,Science,252:431−434;及びRosenfeld,ら,1992,Cell,68:143−155参照。アデノウイルス株Ad 5型dl324またはアデノウイルスの他の株(例えばAd2、Ad3、Ad7等)に由来する適切なアデノウイルスベクターは当業者に周知である。組換えアデノウイルスは、有効な遺伝子送達ビヒクルであるために分裂細胞を必要とせず、また気道上皮(Rosenfeld,ら,1992,前出)、内皮細胞(Lemarchand,ら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:6482−6486)、肝細胞(Herz,ら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2812−2816)及び筋細胞(Quantin,ら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:2581−2584)を含む幅広い細胞型に感染するために使用できるという点で有利である。加えて、導入されたアデノウイルスポリヌクレオチド(及びその中に含まれる外来DNA)は対象細胞のゲノムには組み込まれず、エピソームのままであり、それによって導入されたポリヌクレオチドが対象ゲノム(例えばレトロウイルスDNA)に組み込まれる状況での挿入突然変異誘発の結果として起こりうる潜在的な問題を回避する。さらに、外来性DNAについてのアデノウイルスゲノムの担持能力は他の遺伝子送達ベクターに比べて大きい(8キロベースまで)(Berkner,ら前出;Haj−Ahmand,ら,1986,J.Virol.,57:267)。現在使用されている大部分の複製欠損アデノウイルスベクターは、ウイルスのE1及びE3遺伝子の全部または一部を欠失しているが、アデノウイルス遺伝物質の80%を保持している。
【0159】
組換えアデノウイルスは、例えば参照してここに組み込まれる、米国特許第6,194,191号に述べられているような、当技術分野で公知の方法によって作製しうる。
【0160】
複製欠損であるアデノウイルスベクターの作製及び増殖は、Ad5 DNAフラグメントによってヒト胚腎細胞から形質転換された、E1タンパク質を構成的に発現する、293と称されるユニークヘルパー細胞系統に依存する(Graham,ら,1977)。E3領域はアデノウイルスゲノムに不可欠ではないので(Jones,ら,1978)、現在のアデノウイルスベクターは、293細胞の助けを得て、E1、E3のいずれかまたは両方の領域内に外来性DNAを担持する(Graham,ら,1991)。天然では、アデノウイルスは野生型ゲノムの約105%をパッケージングすることができ(Ghosh−Choudhury,ら,1987)、約2kBの余分なDNAの収容力を提供する。E1及びE3領域内の置換可能な約5.5kBのDNAと合わせると、現在のアデノウイルスベクターの最大収容能力は7.5kB以下またはベクターの全体の長さの約15%である。アデノウイルスゲノムの80%以上はベクター骨格内にあり、ベクターが担う細胞毒性のソースである。また、E1欠失ウイルスの複製欠損は不完全である。例えば現在使用可能なアデノウイルスベクターに関して、ウイルス遺伝子発現の漏出が高い感染多重度で認められている(Mulligan,1993)。
【0161】
ヘルパー細胞系は、ヒト胚腎細胞、筋細胞、造血細胞もしくは他のヒト胚間葉または上皮細胞などのヒト細胞から誘導しうる。あるいは、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスに関して許容される他の哺乳動物種の細胞から誘導しうる。そのような細胞は、例えばベロ細胞または他のサル胚間葉または上皮細胞を含む。前述したように、好ましいヘルパー細胞系は293である。
【0162】
アデノウイルスベクターが複製欠損であるまたは少なくとも条件的に複製欠損であるという必要条件以外には、アデノウイルスベクターの性質は本発明の実施の成功にとって決定的に重要ではないと考えられる。アデノウイルスは、42の異なる公知の血清型またはA−Fのサブグループのいずれであってもよい。サブグループCのアデノウイルス5型は、本発明の方法における使用のための条件的複製欠損アデノウイルスベクターを得るための好ましい出発物質である。これは、アデノウイルス5型が、多大の生化学及び遺伝情報が公知であるヒトアデノウイルスであり、アデノウイルスをベクターとして用いる大部分の構築物のために歴史的に使用されてきたからである。
【0163】
前述したように、本発明に従った典型的なベクターは、複製欠損であり、アデノウイルスE1領域を持たない。従って、対象とするポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、E1コード配列が除去された位置に導入することが最も好都合である。しかし、アデノウイルス配列内の選択ポリヌクレオチドのコード領域の挿入位置は本発明にとって決定的に重要ではない。
【0164】
アデノウイルスは増殖及び操作が容易であり、インビトロ及びインビボで広い対象範囲を示す。このウイルス群は高い力価で、例えば109−1011プラーク形成単位(PFU)/mlで入手でき、高度に感染性である。アデノウイルスの生活環は、対象細胞ゲノム内への組込みを必要としない。
【0165】
アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Levrero,ら,1991,Gene,101:195−202;Gomez−Foix,ら,1992,J.Biol.Chem.,267:25129−25134)及びワクチン開発(Grunhaus,ら,1992,Seminar in Virology,3:237−252;Graham,ら,1992,Biotechnology,20:363−390)において使用されてきた。動物試験は、組換えアデノウイルスが遺伝子治療のために使用できることを示唆した(Stratford−Perricaudet,ら,1991,in:Human Gene Transfer,O.Cohen−Haguenauer,Ceds),John Libbey Eurotext,France;Stratford−Perricaudet,ら,1990,Hum.Gene Ther.,1:241−256;Rich,ら,1993,Nature,361:647−650)。組換えアデノウイルスを種々の組織に投与した実験は、気管点滴注入(Rosenfeld,ら,1991,Science,252:431−434;Rosenfeld,ら,1992,Cell,68:143−155)、筋注射(Ragot,ら,1993,Nature,361:647−650)、末梢静脈内注射(Herz,ら,1993,Proc.Nat’1.Acad.Sci.USA 90:2812−2816)、及び脳への定位的接種(Le Gal La Salleら,1993,Science,259:988−990)を含む。
【0166】
(発現ベクターとしての他のウイルスベクター)
本発明における発現構築物として他のウイルスベクターも使用しうる。ワクシニアウイルス(Ridgeway,1988,in:Rodriguez R L,Denhardt D T,編,ベクター:分子クローニングベクターおよびその使用の調査(Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses).Stoneham:Butterworth,pp.467−492;Baichwalら,1986。Kucherlapati R.編,遺伝子導入(Gene Transfer)、ニューヨーク:Plenum Press,pp.117−148;Coupar,ら,1988,Gene,68:1−10,中)、アデノ関連ウイルス(AAV)(Baichwal,ら,1986,前出;Hermonat,ら,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466−6470)及びヘルペスウイルスなどのウイルスから誘導されるベクターが使用しうる。それらは、様々な哺乳動物の細胞のためにいくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann,1989,Science,244:1275−1281;Baichwal,ら,1986,前出;Coupar,ら,1988,前出;Horwich,ら,1990,J.Virol.,64:642−650)。
【0167】
アデノ関連ウイルス:アデノ関連ウイルス(AVV)は、効率的な複製及び増殖生活環のためのヘルパーウイルスとして、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどのさらに別のウイルスを必要とする、天然に生じる欠損ウイルスである(総説については、Muzyczkaら,1992,Curr.Topics in Micro.and Immunol.,158:97−129)。また、そのDNAを非分裂細胞に組み込むことができ、高頻度の安定な組込みを示す数少ないウイルスの1つである(例えばFlotteら,1992,Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.,7:349−356;Samulskiら,1989,J.Virol.,63:3822−3828;及びMcLaughlinら,1989,J.Virol.,62:1963−1973参照)。わずかに300塩基対のAAVを含むベクターは、パッケージングされて、組み込まれうる。外来性ポリヌクレオチドのための空隙は約4.5kbに限定される。Tratschinら,1985,Mol.Cell.Biol.,5:3251−3260に述べられているようなAAVベクターは、ポリヌクレオチドを細胞に導入するために使用できる。様々なポリヌクレオチドがAVVベクターを使用して種々の細胞型に導入されてきた(例えばHermonat,ら,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466−6470;Tratschin,ら,1985,Mol.Cell.Biol.,4:2072−2081;Wondisford,ら,1988,Mol.Endoclinol.,2:32−39;Tratschin,ら,1984,J.Virol.,51:611−619;及びFlotte,ら,1993,J.Biol.Chem.,268:3781−3790参照)。
【0168】
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞への導入後、それらの細胞を選択し、本発明に従った感作治療のために使用しうる。特定発現ベクター系の効力及びポリヌクレオチドを細胞に導入する方法は、当技術分野で慣例的に使用される標準アプローチによって評価することができる。例えば、細胞に導入されたポリヌクレオチドはフィルターハイブリダイゼーション手法(例えばサザンブロット法)によって検出することができ、導入されたポリヌクレオチドの転写によって生産されるRNAは、例えばノーザンブロット法、RNアーゼプロテクション法または逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって検出できる。遺伝子産物は適切なアッセイによって、例えば特異抗体などによる生産されたタンパク質の免疫学的検出によって、または酵素活性などの遺伝子産物の機能的活性を検出する機能アッセイによって、検出することができる。あるいは、最初に、調節エレメントに連結されたレポーター遺伝子及びここで前述したように使用するベクターを用いて発現系を最適化することができる。レポーター遺伝子は、容易に検出可能な別個の遺伝子産物をコードし、従って、系の効力を評価するために使用できる。
【0169】
SPARCファミリーポリペプチドは分泌タンパク質であるので、免疫ブロット法またはElisaなどの当技術分野で公知の方法を使用してその細胞外レベルを検出し、その発現を測定しうる。
【0170】
細胞におけるSPARCポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を高めるもう1つの方法は、内因性遺伝子の活性化、すなわち細胞のゲノム内の天然SPARCファミリー遺伝子配列の前に強力なプロモーターを挿入することによる。内因性遺伝子活性化は、ゲノムDNAとの相同的組換えによって、通常は内因性遺伝子に機能的に連結されておらず、及び(1)内因性遺伝子の位置またはその近くで宿主ゲノムに挿入されたとき、内因性遺伝子の発現を変化させる(例えば活性化する)働きをし、そしてさらに(2)活性化された内因性遺伝子が増幅される細胞の選択を可能にする、DNA配列(例えば強力なプロモーター)を導入する方法である。内因性遺伝子活性化によるタンパク質の発現は当技術分野において周知であり、例えば各々の内容が全体として参照してここに組み込まれる、米国特許第5,733,761号、同第5,641,670号及び同第5,733,746号、及び国際公開第93/09222号、同第94/12650号、同第95/31560号、同第90/11354号、同第91/06667号及び同第91/09955号に開示されている。
【0171】
1つの実施形態では、その発現を制御するためにテトラサイクリン誘導性テトラサイクリンプロモーター/オペレーターを挿入することによって内因性SPARCファミリー遺伝子発現を活性化する(例えば上昇させる)。
【0172】
ポリヌクレオチドを細胞に導入するため及び本発明の組換え細胞を作製するための前述した方法は、単に例示を目的とするものであり、使用しうる方法の典型である。しかし、当技術分野で理解されるように、細胞においてSPARCファミリーポリペプチドの発現を得るために他の手順も使用しうる。
【0173】
(癌治療)
癌は、典型的には手術、化学療法または放射線療法によって治療される。免疫療法及び遺伝子療法などの生物学的療法も開発されつつある。他の療法は、温熱療法、光線力学的療法等を含む(国立癌研究所のホームページ、world wide web nci.nih.gov参照)。
【0174】
(化学療法)
化学療法は、癌細胞を破壊するための抗癌(細胞傷害性)薬剤の使用である。50以上の異なる化学療法剤が存在し、一部はそれらだけで投与されるが、しばしばいくつかの薬剤が併用される(これは併用化学療法として知られる)。World wide web cancerbacup.org.uk/info/actinomycin.htmに記述されている、化学療法剤の例示リストは、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、CPT−11、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、fosfamide、イリノテカン、リポソームドキソルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトザントロン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ステロイド類、ストレプトゾシン、タキソール、タキソテール、タキソテール−TACTトライアル、Tamozolomide、チオグアニン、チオテパ、トムデックス、トポテカン、トレオサルファン、UFT(ウラシル−テガフール)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンを含む。
【0175】
癌細胞は正常細胞よりも迅速に増殖し、分裂しうるので、多くの抗癌薬は増殖細胞を死滅させるように作られている。しかし一部の正常で健康な細胞も急速に増殖し、化学療法はこれらの細胞にも影響を及ぼしうる。この正常細胞への損傷が副作用を引き起こす。最も影響を受ける可能性が高い、迅速に増殖する正常細胞は、骨髄で生じる血液細胞及び消化管(口、胃、腸、食道)、生殖系(生殖器官)及び毛嚢における細胞である。一部の抗癌薬は、心臓、腎臓、膀胱、肺及び神経系などの重要器官の細胞に影響しうる。
【0176】
被る副作用の種類及びそれらの重症度は、受ける化学療法の種類と用量及びその身体がいかに反応するかに依存する。化学療法の副作用は、疲労、吐気及び嘔吐、疼痛、脱毛、貧血、中枢神経系障害、感染、血液凝固障害、口腔、歯肉及び咽喉の問題、下痢、便秘、神経及び筋作用、皮膚及び爪への作用、放射線リコール、腎臓及び膀胱作用、インフルエンザ様症状、及び体液貯留を含む。
【0177】
(放射線療法)
一般的に使用される放射線療法の1つのタイプは、エネルギーの「パケット」である光子を含む。X線は癌を治療するために使用される光子放射線の最初の形態であった。放射線は、それらが有するエネルギーの量に依存して、身体の表面上またはより深部の癌細胞を破壊するために使用できる。X線束のエネルギーが高いほど、X線は標的組織のより深部に進むことができる。線形加速器及びベータトロンは、漸次より大きなエネルギーのX線を発生する機器である。癌部位に放射線(X線など)を集中するための機器の使用は外部照射治療と呼ばれる。
【0178】
γ線は放射線療法において使用される光子のもう1つの形態である。γ線は、ある種の元素(ラジウム、ウラニウム及びコバルト60など)が分解または崩壊するときに放射線を放出するのと同時に発生する。各々の元素は特定の速度で崩壊し、γ線及び他の粒子の形態でエネルギーを発する。X線とγ線は癌細胞に同じ作用を及ぼす。
【0179】
癌細胞に放射線を送達するためのもう1つの手法は、放射性インプラントを直接腫瘍または体腔に設置することである。これは内部放射線療法と呼ばれる。(近接照射療法、組織内照射、及び腔内照射は内部放射線療法の種類である。)この治療では、放射線の線量は小さな領域に集中され、患者は数日間病院に入院する。内部放射線療法は、舌、子宮及び頸部の癌のためにしばしば使用される。
【0180】
放射線療法へのいくつかの新しいアプローチが、癌を治療する上でのそれらの有効性を判定するために評価されている。1つのそのような手法が術中照射であり、手術の間に高い線量の外部放射線を腫瘍とその周囲の組織に照射する。
【0181】
もう1つの試験的アプローチは粒子線治療である。このタイプの治療は、限局性癌を治療するために高速移動亜原子粒子の使用を含むという点で光子放射線療法と異なる。この手法のための必要な粒子を生成し、加速するには洗練された機器が必要とされる。一部の粒子(中性子、パイオン及び重イオン)は、組織を通過するときの飛跡に沿ってX線またはγ線よりも多くのエネルギーを与え、従ってそれらがぶつかる細胞により大きな損傷を生じさせる。このタイプの放射線は、しばしば高線エネルギー付与(高LET)放射線と称される。
【0182】
2種類の治験薬が、放射線を受ける細胞へのそれらの作用に関して検討されている。放射線増感剤は腫瘍細胞をより損傷しやすくし、放射線防護剤は正常組織を放射線の作用から保護する。熱の使用、すなわち温熱療法も、組織を放射線に対して感作する上での有効性に関して検討されつつある。
【0183】
放射性シードインプラントは、初期疾患を有する適切な患者に対して前立腺の腺癌のための単独治療様式として使用することができる。2つの最も一般的なソースはヨウ素−125及びパラジウム−103であり、一方が他方よりも優れているという説得力のある臨床データはない。放射性シードインプラントは、周囲の正常構造への線量を最小限に抑えながら、前立腺への線量を最大化するために患者の前立腺に合わせて個別に作製することができる。前立腺近接照射療法は、前立腺の腺癌に対して最も高いレベルの原体照射治療を提供する。トーマス・ジェファーソン大学の前立腺近接照射療法チームは前立腺近接照射療法に広汎な経験を有し、国内及び国際的なフォーラムでその研究を発表している。
【0184】
前立腺近接照射療法または放射性シードインプラントは、多数の小さな放射性シードを直接前立腺の内部に埋め込むことによって放射線エネルギーを送達し、「徹底的に(from the inside−out)」治療を有効に送達する、高度の技術を必要とする操作者依存性の方法である。これは、1回処置として、全身麻酔下に処置室で実施される。これらのシードは、前立腺の周囲の正常で健康な組織をほとんど損なわずに、高い線量の放射線を直接腫瘍に送達することができる。これは、一部の状況では三次元原体放射線療法と組み合わせてもよい。
【0185】
他の最近の放射線療法の研究は、放射線の線量を癌部位に直接送達するための放射性標識抗体の使用に集中してきた(放射免疫療法)。抗体は、抗原(免疫系によって異物として認識される物質)の存在に応答して身体によって産生される高度特異的タンパク質である。一部の腫瘍細胞は、腫瘍特異抗体の産生の引き金となる特異性抗原を含む。これらの抗体を実験室で大量に生産し、放射性物質に結合することができる(放射性同位元素標識として知られる工程)。ひとたび体内に注入されると、抗体は積極的癌細胞を探索し、放射線の細胞死滅(細胞傷害性)作用によってそれらを破壊する。このアプローチは健常細胞への放射線損傷の危険性を最小限に抑えることができる。この手法の成功は、適切な放射性物質の特定及びこの方法で送達できる放射線の安全且つ有効な線量の決定の両方に依存する。
【0186】
放射線療法は、単独でもしくは化学療法または手術と組み合わせて使用しうる。すべての形態の癌治療と同様に、放射線療法は副作用を有しうる。放射線による治療の起こりうる副作用は、治療領域における一時的または永続的な脱毛、皮膚刺激、治療領域の皮膚の色の一時的な変化及び疲労を含む。他の副作用は主として治療する身体の部分に依存する。
【0187】
(温熱療法)
身体組織を高温(106°Fまで)に曝露する手法である温熱療法は、癌の治療におけるその有効性を評価するための試験が進行中である。熱は、細胞を損傷するまたは生存に必要な物質を欠乏させることによって腫瘍を縮小するのを助けうる。温熱療法は、外部及び内部加熱装置を使用する、局所(local)、領域(regional)及び全身温熱療法でありうる。温熱療法は、それらの有効性を高める試みとしてほとんど常に他の形態の治療(放射線療法、化学療法及び生物学的療法)と共に使用される。
【0188】
局所(local)温熱療法は、腫瘍などの非常に小さな領域に適用される熱を指す。身体の外部の装置から腫瘍を目標として高周波で前記領域を外的に加熱しうる。内部加熱を達成するためには、細い加熱ワイヤまたは温水を満たした中空チューブ;移植マイクロ波アンテナ;及び高周波電極を含む、いくつかのタイプの無菌プローブの1つを使用しうる。
【0189】
領域(regional)温熱療法では、器官または四肢を加熱する。高エネルギーを発生する磁石と装置を加熱する部位の上に設置する。灌流と呼ばれるもう1つのアプローチでは、患者の血液の一部を取り出し、加熱して、その後内的に加熱する部位に送り込む(灌流する)。
【0190】
全身加熱は、身体全体に広がった転移性癌を治療するために使用される。これは、温水ブランケット、高温ワックス、誘導コイル(電気毛布におけるもののような)、またはサーマルチャンバー(大きなインキュベーターに類似する)を用いて達成できる。
【0191】
温熱療法は、放射線副作用または合併症の著明な上昇を引き起こさない。皮膚に直接適用される熱は、しかしながら、治療される患者の約半数に不快な、またさらには重大な局所痛を引き起こしうる。また水疱を生じさせることもあるが、一般には迅速に治癒する。あまり一般的ではないが、熱傷を引き起こすこともある。
【0192】
(光線力学的療法)
光線力学的療法(PDT、光放射線療法、光線療法または光線化学療法とも呼ばれる)は一部の種類の癌のための治療である。これは、光感作物質として知られるある種の化学物質は、単細胞生物を特定の種類の光線に曝露したとき、その生物を死滅させることができるという発見に基づく。PDTは、光感作物質と組み合わせた固定周波数レーザー光の使用を通して癌細胞を破壊する。
【0193】
PDTでは、光感作物質を血流に注入し、身体全体の細胞によって吸収させる。前記物質は、正常細胞よりも長い時間癌細胞中にとどまる。処置した癌細胞をレーザー光に曝露したとき、光感作物質が光を吸収して、処置した癌細胞を破壊する活性形態の酸素を生産する。光曝露は、光感作物質の大部分が健常細胞にはもはや存在しないが癌細胞にはまだとどまっているときに起こるように慎重に時間設定しなければならない。
【0194】
PDTで使用するレーザー光は、光ファイバー(非常に細いガラス繊維)を通して送達することができる。光ファイバーを癌の近くに設置し、適切な量の光線を送達する。肺癌の治療のために気管支鏡を通して、もしくは食道癌の治療のために食道への内視鏡を通して、光ファイバーを送達することができる。
【0195】
PDTの利点は、健常組織に最小限の損傷しか生じさせないことである。しかし、現在使用されているレーザー光は約3cm以上の組織(1と1/8インチより少し大きい)を通過することができないので、PDTは主として、皮膚上または皮膚のすぐ下の腫瘍もしくは内臓の内壁の腫瘍を治療するために使用される。
【0196】
光線力学的療法は、治療後6週間以上、皮膚と眼を光感受性にする。患者は少なくとも6週間は直射日光及び明るい屋内光を避けるように勧められる。患者が屋外に出なければならない場合は、サングラスを含む保護衣を着用する必要がある。PDTの他の一時的な副作用は、特定領域の治療に関連し、咳、嚥下障害、腹痛、及び呼吸に伴う痛みまたは短呼吸を含みうる。
【0197】
1995年12月に、米国食品医薬品局(FDA)は、閉塞を引き起こしている食道癌の症状を緩和するため及びレーザー単独では十分に治療できない食道癌に関して、ポルフィマーナトリウムまたはPhotofrin(登録商標)と呼ばれる光感作物質を承認した。1998年1月には、FDAは、肺癌のための通常治療が適切でない患者における初期非小細胞肺癌の治療に関してポリフィマーナトリウムを承認した。国立癌研究所及び他の施設は、膀胱、脳、喉頭及び口腔の癌を含むいくつかの種類の癌についての光線力学的療法の使用を評価する臨床試験(研究試験)を援助している。
【0198】
(レーザー療法)
レーザー療法は、癌細胞を破壊するための高輝度光線の使用を含む。この手法はしばしば出血または閉塞などの癌の症状を緩和するため、特に癌が他の処置では治療できないときに使用される。また、腫瘍を縮小または破壊することによって癌を治療するためにも使用しうる。
【0199】
「レーザー」という用語は、輻射の誘導放出による光の増幅を表す。電球からのような通常の光は多数の波長を有し、すべての方向に広がる。レーザー光は、他方で、特定波長を有し、狭いビームに集中される。この種の高輝度光は大きなエネルギーを含む。レーザーは非常に強力であり、鋼を貫通するためまたはダイアモンドを成形するために使用しうる。レーザーはまた、眼の損傷した網膜の修復または組織の切開(メスの代わりに)などの非常に精密な手術作業のためにも使用できる。
【0200】
いくつかの異なる種類のレーザーが存在するが、医学においては3種類だけが広く使用されている:
【0201】
・二酸化炭素(CO2)レーザー―この種のレーザーは、深層に貫入することなく皮膚表面から薄層を除去することができる。この手法は、皮膚深くに広がっていない腫瘍及びある種の前癌状態を治療する上で特に有用である。伝統的なメス手術の代替法として、CO2レーザーは皮膚を切除することができる。レーザーはこのようにして皮膚癌を除去するために使用される。
【0202】
・ネオジミウム:イットリウム−アルミニウム−ガーネット(Nd:YAG)―レーザー:このレーザーからの光は他の種類のレーザーからの光よりも組織内により深く貫入し、血液を迅速に凝固させることができる。光ファイバーを通して身体のアクセスしにくい部分に送達することができる。この種のレーザーは、時として咽喉癌を治療するために使用される。
【0203】
・アルゴンレーザー―このレーザーは組織の表在層だけを通過することができ、従って皮膚科学及び眼手術において有用である。また光線力学的療法(PDT)として知られる手技において腫瘍を治療するために光感受性染料と共に使用される。
【0204】
レーザーは、標準手術ツールと比べて以下を含むいくつかの利点を有する:
【0205】
・レーザーはメスよりも精密である。周囲の皮膚または他の組織とはほとんど接触しないので、切開近くの組織が保護される。
【0206】
・レーザーによって生じる熱は手術部位を滅菌し、従って感染の危険性を低下させる。
【0207】
・レーザーの精密さはより小さな切開を可能にするので、より短い手術時間を必要とすると考えられる。
【0208】
・治癒時間がしばしば短縮される;レーザーの熱が血管を密封するので、出血、腫脹または瘢痕化がより少ない。
【0209】
・レーザー手術はより複雑でないと考えられる。例えば、光ファイバーによって、大きな切開を行わずにレーザー光を身体の部分に送達することができる。
【0210】
・より多くの手技を外来患者ベースで行うことができる。
【0211】
レーザー手術には難点もある:
【0212】
・レーザー手術に熟達した外科医が比較的少ない。
【0213】
・レーザー装置は、メスのような通常の手術ツールと比べて高価でかさばる。
【0214】
・手術室では厳密な安全性対策が遵守されねばならない。(例えば、手術チームと患者は眼の保護具を使用しなければならない)。
【0215】
レーザーは、癌を治療するために2つの方法:熱で腫瘍を縮小または破壊することによって、もしくは癌細胞を破壊する化学物質―光感作物質として知られる―を活性化することによって、使用できる。PDTでは、光感作物質は癌細胞内にとどまって、光によって誘導されて癌細胞を死滅させる反応を引き起こすことができる。
【0216】
CO2及びNd:YAGレーザーは腫瘍を縮小するまたは破壊するために使用される。それらは、医師が膀胱などの身体の一定領域の内部を見ることを可能にする管である、内視鏡と共に使用しうる。一部のレーザーからの光は、光ファイバーに取り付けられたフレキシブル内視鏡を通して伝達されうる。これは、医師が、手術による以外は到達することができなかった身体の部分を見て、そこで作業することを可能にし、従ってレーザービームの非常に精密な照準合わせを可能にする。レーザーはまた、低倍率顕微鏡と共に使用してもよく、医師に治療する部位の明瞭な像を提供する。他の機器と共に使用すると、レーザーシステムは直径200ミクロンという小さな―非常に微細な糸の幅以下の―切開領域を作製することができる。
【0217】
レーザーは多くの種類の癌を治療するために使用される。レーザー手術は、一定の病期の声門(声帯)、頸部、皮膚、肺、膣、外陰及び陰茎の癌のための標準治療である。
【0218】
癌を破壊するための使用に加えて、レーザー手術はまた、癌によって引き起こされる症状を緩和するのを助けるためにも使用される(待機治療)。例えばレーザーは、患者の気管を遮断している腫瘍を縮小または破壊するために使用されて、呼吸を容易にすることができる。また時として、結腸直腸及び肛門癌における緩和のためにも使用される。
【0219】
レーザー誘起間質温熱療法(LITT)はレーザー治療における最も新しい開発の1つである。LITTは、温熱療法と呼ばれる癌治療と同じ概念を利用する。つまり熱は、細胞を損傷するまたは細胞が生存するために必要な物質を欠如させることによって腫瘍が縮小するのを助けうる。この治療では、レーザーは体内の間質領域(器官の間)に向けられる。次にレーザー光が腫瘍の温度を上昇させ、それが癌細胞を損傷または破壊する。
【0220】
(遺伝子治療)
遺伝子治療は、疾患と闘うために生体細胞の遺伝物質を修飾することを含む実験的医療介入である。遺伝子治療は多くの異なる種類の癌及び他の疾患のために臨床試験(ヒトに関する研究試験)において検討されている。
【0221】
遺伝子治療の目標の1つは、健常コピー数の欠落または変化した遺伝子を細胞に供給することである。患者に薬剤を投与する代わりに、医師は、患者の細胞の一部の遺伝子構造を変化させることによって問題を矯正しようとする。この方法で治療しうる疾患の例は、嚢胞性線維症及び血友病を含む。
【0222】
遺伝子治療はまた、例えば癌細胞を攻撃するように免疫系細胞を刺激することによって、細胞の機能の仕方を変化させる方法としても検討されている。
【0223】
一般に、遺伝子は「ベクター」を用いて細胞に送達される。遺伝子治療において使用される最も一般的なタイプのベクターはウイルスである。遺伝子治療においてベクターとして使用されるウイルスは遺伝的に不能化される、つまり自らを複製することができない。大部分の遺伝子治療臨床試験は、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ポックスウイルス及びヘルペスウイルスを含む。
【0224】
遺伝子治療はエキソビボ及びインビボの両方で実施することができる。ほとんどのエキソビボ遺伝子治療臨床試験では、患者の血液または骨髄からの細胞を取り出して、実験室で増殖させる。それらの細胞を、所望遺伝子を担持するウイルスに曝露する。ウイルスは細胞に入り込み、所望遺伝子は細胞のDNAの一部となる。細胞を実験室で増殖させ、その後静脈に注入することによって患者に戻す。インビボ遺伝子治療では、ベクターまたはリポソームを使用して所望遺伝子を患者の体内の細胞に送達する。
【0225】
(免疫療法)
免疫系が壊れるかまたは適切に機能していないとき、癌が発現しうる。免疫療法は、癌と戦うためまたは一部の癌治療によって引き起こされることがある副作用を軽減するために、直接または間接的に身体の免疫系を利用する。免疫療法は免疫系の応答を修復、刺激または増強するように設計される。
【0226】
免疫系細胞は以下を含む:リンパ球は、血液中及び身体の他の多くの部分で認められる白血球の一種である。リンパ球の種類は、B細胞、T細胞及びナチュラルキラー細胞を含む。B細胞(Bリンパ球)は、抗原として知られる異物を認識し、それに結合するタンパク質である抗体(免疫グロブリン)を分泌するプラスマ細胞へと成熟する。B細胞の各々の型が、1つの特異抗原を認識する1つの特異抗体を産生する。T細胞(Tリンパ球)は、感染、外来または癌性細胞を直接攻撃する。T細胞はまた、他の免疫系防御因子にシグナル伝達することによって免疫応答を調節する。T細胞は主として、リンホカインと呼ばれるタンパク質を生産することによって働く。ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、いかなる外来侵入体にも結合して死滅させる強力な化学物質を生産する。それらは、最初に特異抗原を認識する必要なしに攻撃する。単球は、食作用として知られる過程において顕微鏡的生物及び粒子を飲み込んで消化することができる白血球である。単球はまた、組織内を移動してマクロファージになることができる。
【0227】
免疫系の細胞は、2種類のタンパク質:抗体及びサイトカインを分泌する。抗体は、抗原に接着するまたは結合することによって抗原に応答する。特異抗体は特異抗原にマッチし、鍵が錠に適合するようにぴったり合う。サイトカインは、他の細胞と連絡するために一部の免疫系細胞によって生産される物質である。サイトカインの種類は、リンホカイン、インターフェロン、インターロイキン及びコロニー刺激因子を含む。細胞傷害性サイトカインは、細胞傷害性T細胞と呼ばれるT細胞の一種によって放出される。これらのサイトカインは癌細胞を直接攻撃する。
【0228】
非特異的免疫調節剤は、免疫系を刺激するまたは間接的に増強する物質である。しばしば、これらの物質は鍵となる免疫系細胞を標的し、サイトカイン及び免疫グロブリンの産生上昇などの二次応答を生じさせる。癌治療において使用される2つの非特異的免疫調節剤は、カルメット−ゲラン杆菌(BCG)及びレバミゾールである。結核ワクチンとして広く使用されてきたBCGは、手術後の表在性膀胱癌の治療において使用される。BCGは、炎症反応、場合によっては免疫応答を刺激することによって働きうる。BCGの溶液は、膀胱内に点滴注入されてそこに約2時間とどまり、その後患者は排尿によって膀胱を空にすることを許可される。この治療は通常、週に1回、6週間にわたって実施される。レバミゾールは、手術後のIII期(デュークス分類のC)結腸癌の治療においてフルオロウラシル(5−FU)化学療法と共に使用される。レバミゾールは低下した免疫機能を修復するように作用しうる。
【0229】
一部の抗体、サイトカイン及び他の免疫系物質は、癌治療における使用のために実験室で生産することができる。これらの物質はしばしば生物学的応答調節物質(BRM)と呼ばれる。それらは、身体の免疫防御と癌細胞の間の相互作用を、疾患と戦う身体の能力を上昇させる、指令するまたは修復するように変化させる。BRMは、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、モノクローナル抗体及びワクチンを含む。免疫療法は、癌の増殖を可能にする過程を停止する、制御するまたは抑制するため;癌細胞をより認識可能にし、従って免疫系による破壊に対してより感受性にするため;T細胞、NK細胞及びマクロファージなどの免疫系の殺傷力を上昇させるため;健常細胞のような行動を促進するように癌細胞の増殖作用を変化させるため;正常細胞または前癌細胞を癌性細胞に変化させる過程を遮断するまたは逆転させるため;化学療法または照射など他の形態の癌治療によって損傷または破壊された正常細胞を修復または置換する身体の能力を高めるため;及び癌細胞が身体の他の部分に広がるのを防ぐために使用しうる。
【0230】
一部のBRMは、ある種の癌のための治療の標準的な部分であり、また別のBRMは臨床試験において検討されている。BRMは単独でまたは互いに組み合わせて使用される。それらはまた、放射線療法及び化学療法などの他の治療と共に使用される。
【0231】
インターフェロン(IFN)は体内で自然に生じるタイプのサイトカインである。それらはBRMとしての使用のために実験室で生産された初めてのサイトカインであった。3つの主要な種類のインターフェロン:インターフェロンα、インターフェロンβ及びインターフェロンγがあり、インターフェロンαが癌治療において最も広く使用されている種類である。インターフェロンは、癌患者の免疫系が癌細胞に対して作用する方法を改善することができる。加えて、インターフェロンは、癌細胞の増殖を緩慢化するまたはより正常な行動を有する細胞への発達を促進することによって癌細胞に直接作用しうる。一部のインターフェロンはまた、NK細胞、T細胞及びマクロファージを刺激して、免疫系の抗癌機能を上昇させうる。米国食品医薬品局(FDA)は、毛様細胞性白血病、黒色腫、慢性骨髄性白血病及びAIDSに関連するカポジ肉腫を含む一部のタイプの癌の治療に関してインターフェロンαの使用を承認した。試験は、インターフェロンαが転移性腎臓癌及び非ホジキンリンパ腫などの他の癌を治療する上でも有効でありうることを示した。
【0232】
インターフェロンと同様に、インターロイキン(IL)は、体内で自然に生じるサイトカインであり、実験室で作製することができる。多くのインターロイキンが特定されている:インターロイキン−2(IL−2またはアルデスロイキン)は癌治療において最も広く検討されてきた。IL−2は、癌細胞を破壊することができる、リンパ球などの多くの免疫細胞の増殖と活性を刺激する。FDAは、転移性腎臓癌及び転移性黒色腫の治療に関してIL−2を承認した。
【0233】
コロニー刺激因子(CSF)(時として造血成長因子と呼ばれる)は通常、腫瘍細胞に直接には影響を及ぼさない。それらは骨髄幹細胞が白血球、血小板及び赤血球へと分裂し、発達するのを促進する。骨髄はすべての血球の供給源であるので、身体の免疫系にとって決定的に重要である。CSFによる免疫系の刺激は癌治療を受けている患者に有益でありうる。抗癌薬は白血球、赤血球及び血小板を製造する身体の能力を損なう可能性があるので、抗癌薬を摂取している患者は、感染の発症、貧血及びよりたやすく出血するという危険性が高まる。血球産生を刺激するためにCSFを使用することにより、医師は、感染の危険度を上昇させることなくまたは血液製剤の輸血を必要とせずに、抗癌薬の用量を増加することができる。CSFは、高用量化学療法と組み合わせたときに特に有用である。癌治療におけるCSF及びそれらの使用の一部の例は以下の通りである:G−CSF(フィルグラスチム)及びGM−CSF(サルグラモスチム)は白血球数を増加させることができ、それによって化学療法を受けている患者の感染の危険度を低下させる。G−CSF及びGM−CSFはまた、幹細胞または骨髄移植のための準備として幹細胞の産生を刺激することができる。エリスロポエチンは赤血球数を増加させ、化学療法を受けている患者において赤血球輸血の必要性を低下させることができる。そしてオプレルベキンは、化学療法を受けている患者において血小板輸血の必要性を低下させることができる。
【0234】
CSFは、一部のタイプの白血病、転移性結腸直腸癌、黒色腫、肺癌及び他の種類の癌を治療するために臨床試験において使用されている。
【0235】
モノクローナル抗体(MOAB)も癌治療において評価されつつある。これらの抗体は、単一細胞型によって生産され、1つの特定抗原に対して特異的である。治療されている癌細胞の表面上に認められる抗原に特異的なMOABが作製されている。
【0236】
MOABは、マウスの免疫系がヒト癌細胞に対する抗体を産生するように、ヒト癌細胞をマウスに注入することによって作られる。次に、抗体を産生するマウス細胞を取り出し、実験室で増殖させた細胞と融合して、ハイブリドーマと呼ばれる「雑種」細胞を創造する。ハイブリドーマは、大量のこれらの純粋な抗体またはMOABを無期限に生産することができる。MOABは癌治療において多くの方法で使用しうる:特定の型の癌と反応するMOABは、その癌に対する患者の免疫応答を増強しうる。MOABは細胞増殖因子に対して作用するようにプログラムすることができ、従って癌細胞の増殖に干渉しうる。MOABは、抗癌薬、放射性同位元素(放射性物質)、他のBRMまたは他の毒素に連結しうる。抗体が癌細胞に接着したとき、これらの毒を直接腫瘍に送達し、それを破壊するのを助ける。MOABは、骨髄移植の準備として患者から取り出した骨髄において癌細胞を破壊するのを助けうる。放射性同位元素を担持するMOABはまた、結腸直腸、卵巣及び前立腺などの一部の癌を診断する上で有用であることも証明されうる。
【0237】
Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)及びHerceptin(登録商標)(トラスツズマブ)はFDAによって承認されたモノクローナル抗体の例である。Rituxanは、改善期間後に再発したまたは化学療法に応答しなかったB細胞非ホジキンリンパ腫の治療のために使用される。Herceptinは、HER−2と呼ばれるタンパク質を過剰に生産する腫瘍を有する患者において転移性乳癌を治療するために使用される。(乳癌の約25%が過剰量のHER−2を生産する。)MOABは、リンパ腫、白血病、結腸直腸癌、肺癌、脳腫瘍、前立腺癌及び他の種類の癌を治療するための臨床試験において検討が始められている。
【0238】
癌ワクチンは、現在試験下にあるもう1つの形態の免疫療法である。麻疹、流行性耳下腺炎及び破傷風などの感染疾患のためのワクチンは、身体の免疫細胞を病原菌の表面に存在する弱毒化形態の抗原に曝露するので、有効である。この曝露は、免疫細胞に、抗体を産生するプラスマ細胞をより多く生産させる。病原菌を認識するT細胞も増加する。これらの活性化細胞はその後この曝露を記憶する。次回病原菌が体内に入ってきたときには、免疫系の細胞は既に感染に応答して停止させる準備が整っている。
【0239】
癌治療のために、研究者達は、患者の免疫系が癌細胞を認識するのを促進しうるワクチンを開発中である。これらのワクチンは、身体が腫瘍を拒絶し、癌の再発を防ぐのを助けうる。感染症に対するワクチンと異なって、癌ワクチンは、疾患が発現する前ではなく疾患が診断された後に注入されるように設計される。腫瘍が小さいときに投与される癌ワクチンは、癌を根絶することができる可能性がある。初期癌ワクチン臨床試験(複数の人達に関する研究試験)は主として黒色腫の患者を含んだ。現在、癌ワクチンは、リンパ腫及び腎臓、乳房、卵巣、前立腺、結腸及び直腸の癌を含む、他の多くの種類の癌の治療においても試験されている。研究者達はまた、癌ワクチンを他のBRMと組み合わせて使用できる方法も検討中である。
【0240】
他の形態の癌治療と同様に、生物学的療法は、患者によって大きく異なることがある、多くの副作用を引き起こしうる。発疹または腫脹が、BRMを注入した部位に発現することがある。インターフェロン及びインターロイキンを含むいくつかのBRMは、発熱、悪寒、吐気、嘔吐及び食欲不振を含むインフルエンザ様の症状を引き起こしうる。疲労はBRMのもう1つの一般的な副作用である。血圧も影響を受けることがある。IL−2の副作用は、投与する用量に依存して、しばしば重篤でありうる。治療の間は患者を厳重に監視する必要がある。CSFの副作用は、骨痛、疲労、発熱及び食欲不振を含みうる。MOABの副作用は様々であり、深刻なアレルギー反応が起こりうる。癌ワクチンは筋痛及び発熱を引き起こしうる。
【0241】
(感作組成物及び方法−用量、投与様式及び医薬製剤)
本発明は、SPARCファミリーポリペプチドまたはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド及び治療薬を含む組成物を提供する。SPARCポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、前記治療薬による治療に対して癌細胞または患者を感作するための治療上有効な量として提供される。
【0242】
前記治療薬は、ここで述べる及び当技術分野で公知である特定治療のための適切な薬剤でありうる。前記薬剤は、化学療法剤、すなわち薬剤、例えば5−フルオロウラシルでありえ、放射能標識抗体、放射性感作物質または放射性シードインプラントなどの放射性物質でありうる。治療薬はまた、ポルフィマーナトリウムなどの光感作物質または遺伝子治療薬(例えばベクター)であるか、もしくは免疫細胞、抗体またはサイトカインなどの免疫療法剤でありうる。
【0243】
本発明は、SPARCファミリーポリペプチド及び化学療法抵抗性細胞を含む組成物を提供する。
【0244】
本発明はまた、SPARCファミリーポリヌクレオチドに作動可能に連結された異種転写制御領域を含む組換え細胞を提供する。
【0245】
試料または哺乳動物を癌治療に対して感作することに加えて、本発明の前記組成物の使用は治療の用量を低下させることができ、従って癌治療によって引き起こされる副作用を減少させる。
【0246】
前記組成物は、製薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物でありうる。
【0247】
ここで使用する「担体」は、APCを適切なインビトロまたはインビボ作用部位に送達するための媒体として適する物質を指す。それ自体で、担体は、APCを含む治療または実験試薬の製剤のための賦形剤として働きうる。好ましい担体は、APCをT細胞と相互作用できる形態に維持することができる。そのような担体の例は、水、リン酸緩衝食塩水、食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス液及び他の水性生理的平衡液または細胞用培地を含むが、これらに限定されない。水性担体はまた、レシピエントの生理的条件に近づけるため、例えば化学的安定性と等張性の上昇に必要とされる適切な補助剤を含みうる。適切な補助剤は、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン及びリン酸緩衝液、トリス緩衝液及び重炭酸緩衝液を生成するために使用される他の物質を含む。
【0248】
SPARCファミリーポリペプチドと治療薬を含む組成物は、癌試料を有効量の精製SPARCファミリーポリペプチドと直接接触させることによってインビトロで癌を感作するために使用しうる。哺乳動物(例えば癌患者)にSPARCファミリーポリペプチドを含む組成物を投与して、インビボでの感作作用を達成することができる。加えて、細胞または組織のいずれかの癌試料を哺乳動物から入手し、SPARCファミリーポリペプチドをエキソビボで用いて感作した後、哺乳動物にもどしてもよい。
【0249】
本発明のSPARCファミリーポリヌクレオチドは、癌細胞の応答を感作するためにインビトロで癌細胞に導入してよく、または当技術分野で公知であり、ここで前述したような適切なベクターを通してインビボで哺乳動物に送達してもよい。加えて、前記ポリヌクレオチドは、その必要のある哺乳動物から得た癌細胞または組織にエキソビボで導入してもよく、その後それらの細胞または組織を前記哺乳動物に戻す。分泌タンパク質であるので、そのようなエキソビボで導入された細胞によって生産されるSPARCファミリーポリペプチドは、局所環境において修飾細胞だけでなく隣接する非修飾癌細胞も感作するように機能しうる。
【0250】
組換え細胞を含む組成物を感作治療のために哺乳動物に導入してもよい。
【0251】
対象用量サイズ、投与回数、投与頻度及び投与様式は、当技術分野で公知の方法を用いて決定し、最適化することができる(例えばHardmanら,Ceds 1995,グッドマンとギルマンの薬剤基礎治療学(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics),第9版,McGraw−Hill参照)。
【0252】
様々な患者を治療する時の各々の療法の用量は当技術分野において公知であり、熟達した医師によって決定されうる。例えば適切なSPARCポリペプチド用量は、1日につきレシピエントのキログラム体重当りSPARCポリペプチド0.01−100mgの範囲内、好ましくは1日につきキログラム体重当り0.2−10mgの範囲内でありうる。本発明のSPARCポリヌクレオチドは、1日につきレシピエントのキログラム体重当りポリヌクレオチド0.01−100mgの範囲内、好ましくは1日につきキログラム体重当り0.2−10mgの範囲内の適切な用量で投与しうる。組換えSPARCファミリーポリヌクレオチドを含む細胞は、レシピエントのキログラム体重当り104−1010個の範囲内、好ましくはレシピエントのキログラム体重当り106−108個の範囲内の用量で投与しうる。所望用量を好ましくは1日1回投与するが、1日を通して適切な間隔で2、3、4、5、6またはそれ以上の小分け用量として投与してもよい。これらの小分け用量は、例えば単位投与形態につきSPARCファミリーポリペプチド10−1500mg、好ましくは20−1000mg、最も好ましくは50−700mgを含む単位投与形態として投与してもよい。SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリヌクレオチド、もしくは本発明に従った有用な組換えSPARCファミリーポリペプチドを含む細胞の用量は、治療または予防する条件及び使用するSPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドの特性(identity)に依存して異なる。本発明に包含される個々の組成物についての有効用量及びインビボ半減期の評価は、ここで述べるマウスモデルのような動物モデルを使用したインビボ試験またはより大きな哺乳動物へのそのような方法の適合に基づいて行うことができる。
【0253】
(インビトロ/エキソビボ適用)
本発明によって提供される組成物は、当技術分野で公知の方法を用いて、及びここで前述したように、インビトロで癌細胞を感作するために使用しうる。従って、本発明は、癌試料を、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量に接触させることを含む、癌細胞を治療処置に対して感作するための方法を提供する。本発明はまた、(1)哺乳動物から癌試料を得ること;(2)前記癌試料を、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量に接触させること;及び(3)(2)の接触後に癌試料を哺乳動物に戻すこと、を含む、癌と診断された哺乳動物を治療処置に対してエキソビボで感作するための方法を提供する。
【0254】
エキソビボ遺伝子治療は、動物からの細胞の単離、インビトロでの前記細胞へのポリヌクレオチドの送達、及びその後修飾細胞を動物に戻すこと、を指す。これは、動物からの組織/器官の手術による切除または細胞及び組織の一次培養を含みうる。その全体が参照してここに組み込まれる、Andersonらの米国特許第5,399,346号は、エキソビボ治療法を開示している。SPARCファミリーポリペプチドは分泌ポリペプチドであるので、この方法が適用できる。修飾細胞を哺乳動物に戻すことは、SPARCファミリーポリペプチドの細胞外濃度を局所的に上昇させ、従って、修飾細胞に近接する非修飾癌細胞を感作しうる。
【0255】
エキソビボ適用のために組織試料を哺乳動物から採取する必要あるときは、脳、心臓、肺、リンパ節、眼、関節、皮膚及びこれらの器官に関連する新生物を含むがそれらに限定されない、患者の組織生検から細胞抽出物を調製しうる。「組織生検」はまた、血液、血漿、痰、尿、脳脊髄液、洗浄液及び白血球搬出法(leukophoresis)試料を含むがこれらに限定されない、生体液の収集を包含する。好ましい実施形態では、本発明に従った「組織生検」は、乳房、卵巣または前立腺の腫瘍から採取される。「組織生検」は、針吸引及び皮膚のパンチ生検を含む、当技術分野で周知の手法を用いて得られる。
【0256】
一般に、ポリヌクレオチドを培養中の細胞に導入するとき(例えば前述した形質移入手法の1つによって)、典型的には細胞の小さな分画だけが(105個のうちで約1個)形質移入されたポリヌクレオチドをそれらのゲノム内に組み込む(すなわちポリヌクレオチドはエピソームとして細胞内に維持される)。従って、外来性ポリヌクレオチドを取り込んだ細胞を特定するためには、ここで前述したように、選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを対象ポリヌクレオチド、すなわちSPARCファミリーポリヌクレオチドと共に細胞に形質移入することが好都合である。
【0257】
(インビボ適用)
本発明によって提供される組成物は、例えば治療処置を感作する方法において、哺乳動物に投与することができる。そこで本発明は、癌と診断された哺乳動物に、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量を投与することを含む、前記哺乳動物を治療処置に対してインビボで感作するための方法を提供する。
【0258】
本発明の組成物の投与の方法は、送達についての特定の目的、患者の全体的な健康及び状態、及び標的媒体を投与する医師または技術者の判断に依存しうる。本発明の組成物は、様々な方法を用いて動物に投与することができる。そのような送達方法は、非経口、局所、経口または皮内などの局所投与を含みうる。組成物は、投与方法に依存して様々な単位投与形態で投与できる。本発明の組成物のための好ましい送達方法は、静脈内投与、例えば注入、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射及び吸入による局所投与(例えば腫瘍内)を含む。特定送達様式のために、本発明の組成物を本発明の賦形剤中に製剤することができる。本発明の組成物はいかなる動物にも投与でき、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに投与できる。
【0259】
注射:注射用途に適する医薬剤型は、無菌注射用溶液または分散液の即時調製のための無菌水溶液または分散及び無菌粉末を含む。すべての場合に剤型は無菌でなければならず、容易に注射器で使用できる程度に流体でなければならない。製造及び保存条件下で安定でなければならず、また細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されねばならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオル(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物及び植物油を含む溶媒または分散媒質でありうる。例えばレシチンなどの被覆物の使用によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって及び界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等、によって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期的な吸収は、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン、を組成物中で使用することによって達成できる。
【0260】
無菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を前記で列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒に組込み、その後必要に応じてろ過滅菌することによって調製される。一般に、分散は、様々な滅菌した有効成分を、基本分散媒質及び前記で列挙した中から必要な他の成分を含む滅菌媒体に組み込むことによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合は、調製のための好ましい方法は、あらかじめ無菌濾過したそれらの溶液から有効成分の粉末に加えての付加的な所望成分を生成する、真空乾燥及び凍結乾燥手法である。
【0261】
(経口投与):経口投与用の医薬組成物は、当技術分野で周知の製薬上許容される担体を経口投与に適した用量で使用して製剤される。そのような担体は、医薬組成物を、患者による摂取のための錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として製剤することを可能にする。
【0262】
経口投与用の医薬組成物は、固体賦形剤と活性化合物を組み合わせ、場合により生じた混合物を粉砕して、所望に応じて適切な補助剤を添加した後、錠剤または糖衣丸コアを得るために顆粒の混合物を加工することを通して入手される。適切な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類などの炭水化物またはタンパク質充填剤;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモまたは他の植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;及びアラビアゴム及びトラガカントゴムを含むゴム;及びゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質である。所望の場合は、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムのようなその塩などの、崩壊剤または可溶化剤を添加しうる。
【0263】
糖衣丸コアは、アラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール及び/または二酸化チタン、ラッカー溶液及び適切な有機溶媒または溶媒混合物を同時に含んでいてもよい、濃縮糖溶液などの適切な被覆物と共に提供される。製品の特定のためまたは活性化合物の量、すなわち用量を特徴付けるために、染料または色素を錠剤または糖衣丸被覆物に添加してもよい。
【0264】
経口で使用される医薬製剤は、ゼラチンで作られたプッシュ・フィットカプセル並びにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの被覆物でできた軟密封カプセルを含む。プッシュ・フィットカプセルは、ラクトースまたはデンプンなどの充填剤または結合剤、滑石またはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び場合により安定剤と混合した有効成分を含みうる。軟カプセルでは、活性化合物を、安定剤と共にまたは安定剤なしで、脂肪油、流動パラフィンまたは液状ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁しうる。
【0265】
(鼻投与):鼻投与のためには、透過すべき特定障壁に対して適切な浸透剤を製剤中で使用する。そのような浸透剤は一般に当技術分野で公知である。
【0266】
(皮下及び静脈内用途):皮下及び静脈内用途に関しては、本発明の組成物は、一般に緩衝液で適切なpH及び等張性に処理された、無菌水溶液または懸濁液中で提供される。適切な水性媒体は、リンガー液及び等張塩化ナトリウムを含む。本発明に従った水性懸濁液は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン及びトラガカントゴムなどの懸濁化剤、及びレシチンなどの湿潤剤を含みうる。水性懸濁液のための適切な防腐剤は、エチル及びn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートを含む。
【0267】
本発明に従った有用な組成物はまた、リポソーム製剤として提供されうる。
【0268】
本発明によって提供される組成物を使用した遺伝子治療は、例えば参照してここに組み込まれる、Friedmanにより「遺伝的疾患のための治療(Therapy for Genetic Disease)」T.Friedman編,Oxford University Press(1991),pp.105−121で述べられているような、一般に受け入れられている方法に従って実施しうる。
【0269】
本発明の医薬組成物は、当技術分野において公知の方法で、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸作製、浮揚化(levitating)、乳化、被包、捕獲または凍結乾燥工程によって製造しうる。
【0270】
適切な担体中に製剤した本発明の治療薬を含む医薬組成物を調製した後、それらを適切な容器に入れ、投与量、投与頻度及び投与方法を含む情報と共に治療適応症についてのラベルを貼付する。
【0271】
正確な用量は、治療する患者を考慮して個々の医師によって選択される。用量及び投与は、活性成分の十分なレベルを提供するようにまたは所望作用を維持するように調整される。考慮されうる付加的な因子は、疾患状態の重症度(例えば疾患の位置、患者の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬剤の組合せ、反応感受性、及び治療に対する忍容性/応答)を含む。長時間作用性医薬組成物は、個々の製剤の半減期及びクリアランス速度に依存して3−4日ごと、毎週、または2週間ごとに1回投与しうる。他の適用のための個々の用量及び送達の方法に関する一般的な手引きは文献において提供される(例えば参照してここに組み込まれる、米国特許第4,657,760号;同第5,206,344号;及び同第5,225,212号参照)。当業者は、典型的には、オリゴヌクレオチド及び遺伝子治療ベクターに関してはタンパク質またはそれらの阻害因子に関するものとは異なる製剤を用いる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、個々の細胞、状態、位置等に特異的である。
【0272】
本発明によって提供される組成物は、ペプチドまたはタンパク質と熱保護剤を含むガラス状基質相がその中に分散しており、前記ガラス状基質相がポリマーの融点よりも高いガラス転位温度を有する、生体適合性でバイオ腐食性のポリマーを含むペプチドまたはタンパク質の制御放出のための組成物を提供する、米国特許第6187330号(その全体が参照してここに組み込まれる)に述べられているように製剤しうる。ペプチドまたはタンパク質薬剤は組成物内で安定であるので、前記薬剤は、その溶融段階で、薬剤送達インプラントとして使用される適切に成形された装置、例えばロッド、薄膜、ビーズまたは他の所望形状の形態に好都合に形づくることができる。
【0273】
(治療処置に対する抵抗性または感受性の判定)
治療処置に応答する癌試料(例えば細胞または組織)の判定は、当技術分野で公知のいずれかの方法によって、例えば細胞培養薬剤耐性試験(CCDRT)によって実施できる。CCDRTは、実験室において、患者の癌を治療するために使用する薬剤に対して癌試料(例えば哺乳動物患者から採取した)を試験することを指す。この試験は、癌試料がどの薬剤に対して感受性であり、どの薬剤に対して耐性であるかを特定することができ、それは、患者においてどの薬剤がより作用する可能性が高いか及びどの薬剤が効きそうにないかを示す。癌試料(従って、患者)の感受性は、本発明によって提供される組成物での治療によって感作されうる。感作治療に関して再びCCDRTを実施し、本発明によって提供される感作組成物が特定治療に対する癌試料の応答を感作することができるか否かを判定することができる。CCDRTによって測定される応答が、感作組成物の不在下での応答に比べて少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、80%、100%(2倍)または3倍、4倍または5倍またはそれ以上まで増大した場合は、組成物は治療処置を感作すると言える。
【0274】
CCDRTは、典型的には細胞増殖アッセイ及び細胞死アッセイを含む。
【0275】
細胞増殖アッセイは細胞の増殖を測定する。これは、TanigawaとKern(前出)によって最初に記述された放射性チミジン取り込みアッセイによって実施することができる。固形腫瘍にのみ適用され、血液新生物には適用されないこのアッセイでは、軟アガロースニ懸濁舌腫瘍細胞を抗腫瘍薬の持続的存在下で4−6日間培養する。培養期間の終了時に、放射性チミジンを導入し、対照と薬剤処理培養物の間でDNAへの推定上のチミジン取り込みの差を比較する。KernとWeisenthalは、臨床相関データを解析し、「高度薬剤耐性(extreme drug resistance)」またはEDR[Kern DH,Weisenthal LM.J Natl Cancer List 1990;82:582−588]の概念を定義した。これは、比較データベースアッセイに関して中央値結果よりも1標準偏差だけ耐性であったアッセイ結果と定義された。このアッセイにおいてEDRを示す単一薬剤で治療された患者は、実質的に一度も部分的または完全な応答を示さなかった。KernとWeisenthalはまた、「低濃度薬剤耐性(low drug resistance)」(LDR)を中央値よりも低い耐性結果及び「中間薬剤耐性(intermediate drug resistance)」(IDR)を、中央値よりも耐性であるがEDRほどには耐性でない結果(言い換えると、中央値と中央値よりも1標準偏差耐性との間)と定義した。
【0276】
チミジン「EDR」アッセイに関する原理と臨床相関データは1992年に再検討された(Weisenthal LM,Kern DH.Oncology(USA)1992;5:93−103)。この時点以後は少数のフォローアップ試験しか公表されていない。そのような試験の1つは、2剤併用で使用した単一薬剤の1またはそれ以上に対するEDRは、見かけ上、虫垂及び結腸癌の腹腔内化学療法の背景において2剤併用に対する応答のより低い確率に結びつかないことを示した(Fernandez−Trigo V,Shamsa F,Vidal−Jove J,Kern DH,Sugarbaker PH.Am J Clin Oncol 1995;18:454−460)。しかし、腹腔内化学療法によって達成されうる高薬剤濃度に対する応答は、腫瘍細胞の内在性薬剤耐性よりも腫瘍への薬剤浸透とより密接に関連する可能性がある。また、パクリタキセルに対するEDRは、パクリタキセルプラス白金で治療された卵巣癌患者または原発性腹膜癌腫を有する患者においては予後因子ではないと思われることを示した(Eltabbakh GH,Piver MS,Hempling RE,ら,Gynecol Oncol 1998;70:392−397;Eltabbakh GH.J Surg Oncol 2000;73:148−152)。しかし、卵巣癌における白金に対するEDRは予後的意味を有しうることが最近報告された(Fruehauf,J.,ら,Proc ASCO,v.20,Abs 2529,2001)。また、LDR(前記で定義した)を示す腫瘍を有する、それまで治療を受けていない乳癌患者は、進行により長い時間を要し、IDRまたはEDRのいずれかを示す腫瘍を有する患者よりも良好な全体的生存率を有することが報告された(Mehta,R.S.,ら,Breast Cancer Res Treat 66:225−37,2001)。
【0277】
チミジン「EDR」アッセイは、不活性単一薬剤の特定に関して非常に高い特異性(>98%)を有するが、感受性が低い(<40%)。言い換えると、アッセイで定義された「EDR」を有する薬剤は、単一薬剤として不活性であるとほぼ確実に予測されるが(不活性薬剤と特定するための高い特異性)、「EDR」を有さない多くの薬剤もまた不活性である(不活性薬剤を特定するための低い感受性)。
【0278】
2番目の形態の細胞増殖アッセイは、特許の「細胞接着基質」上での細胞の単層増殖を比較することに基づく、接着腫瘍細胞培養系である(Ajani JA,Baker FL,Spitzer G,ら,J Clin Oncol 1987)。この公表文献において正の臨床相関も記述されている。
【0279】
一部の実施形態では、細胞増殖を測定するためにコロニー形成アッセイが使用される。この試験では、軟寒天(寒天をゲル化剤として含む組織培養用培地;半固体寒天とも称される)または例えばメチルセルロース、血漿ゲルまたはフィブリン血餅を含む他の高度粘性培地においてインビトロで試験細胞を増殖させる。これらの半固体培地は細胞の移動を低下させ、個々の細胞が単一コロニーとして特定される細胞クローンへと発達することを可能にする。これらのアッセイはまた、一般にクローン形成(クローン原性)アッセイとも称される。コロニー形成アッセイは当技術分野において周知であり、例えばRizzino,トランスフォーミング成長因子と分裂促進ペプチドのための軟寒天生長アッセイ(A Soft agar growth assays for transforming growth factors and mitogenic peptides).酵素学における手法(Methods in Enzymology)146:341−53(1987)参照。一部の実施形態では、当技術分野において周知であり、Science Onlineでのサポートオンライン資料として入手可能な「実験材料及び方法」に述べられている、ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼを介したdUTPニック末端標識(TUNEL)によってアポトーシスを測定する。
【0280】
細胞増殖を測定するのに対し、腫瘍細胞の個体群において起こる総細胞死滅、言い換えると細胞死の概念に基づくアッセイの密接に関連したファミリーが存在する(Weisenthal LM,Shoemaker RH,Marsden JA,Dill PL,Baker JA,Moran EM.Recent Results Cancer Res 1984;94:161−173;Weisenthal LM,Lippman ME.Cancer Treat Rep 1985;69:615−632;Weisenthal LM.腫瘍細胞死滅総量という概念に基づく血液新生物のための細胞培養アッセイ(Cell culture assays for hematologic neoplasms based on the concept of total tumor cell kill)。Kaspers GJL,Pieters R,Twentyman PR,Weisenthal LM,Veerman AJP,編,白血病とリンパ腫の薬物耐性(Drug Resistance in Leukemia and Lymphoma.)中。Langhorne,PA:Harwood Academic Publishers,1993:415−432;Weisenthal LM.Contrib Gynecol Obstet 1994;19:82−90)。細胞死アッセイの基礎となる概念は比較的単純であるが、技術的特徴及びデータの解釈は非常に複雑でありうる。
【0281】
基本的テクノロジーの概念は平易である。例えば、新鮮標本を生存新生物から入手する。標本はほとんどの場合生存固形腫瘍からの手術標本である。それより頻度は低いが、「腫瘍」細胞(固形または血液新生物のいずれかからの細胞を表すために使用される用語)を含む悪性滲出液、骨髄または末梢血標本である。これらの細胞を単離し、その後ほとんどの場合は3−7日間、薬剤の連続的存在または不在下で培養する。培養期間の終了時に、細胞死と直接相関する、細胞損傷の測定を行う。入手可能な抗癌薬の大半が、いわゆるプログラムされた細胞死、またはアポトーシスの引き金を引くのに十分な損傷を引き起こす機構を通して作用すると考えられる証拠が存在する(Hickman JA.Cancer Metastasis Rev 1992;11:121−139;Zunino F,Perego P,Pilotti S,Pratesi G,Supino R,Arcamone F.Pharmacol Ther 1997;76:177−185)。
【0282】
培養細胞に適用できる、アポトーシスを特異的に測定するための方法が存在するが、これらの方法を腫瘍細胞と正常細胞の混合した(及び塊状の)個体群に適用するには実際的な困難がある。そこで、細胞死のより一般的な測定が適用されてきた。これらは、(1)腫瘍及び正常細胞の混合個体群において腫瘍細胞に対する選択的薬剤作用を認識することを可能にする、DISCアッセイ法(Weisenthal LM,Kern DH.Oncology(USA)1992;5:93−103;Weisenthal LM,Marsden JA,Dill PL,Macaluso CK.Cancer Res 1983;43:749−757)での分別染色によって測定される、細胞膜完全性の遅延喪失(アポトーシスの有用な代用物であることが認められている)、(2)MTTアッセイ(Carmichael J,DeGraff WG,Gazdar AF,Minna JD,Mitchell JB.Cancer Res 1987;47:936−942)において測定される、ミトコンドリアのクレブス回路活性の喪失、(3)ATPアッセイ(Kangas L,Gronroos M,Nieminen AL.Med Biol 1984;62:338−343;Garewal HS,Ahmann FR,Schifman RB,Celniker A.J Natl Cancer Inst 1986;77:1039−1045;Sevin B−U,Peng ZL,Perras JP,Ganjei P,Penalver M,Averette HE.Gynecol Oncol 1988;31:191−204)において測定される、細胞ATPの喪失、及び(4)フルオレセインジアセテートアッセイ(Rotman B,Teplitz C,Dickinson K,Cozzolino JP.In vitro Cell Dev Biol 1988;24:1137−1138;Larsson R,Nygren P,Ekberg M,Slater L.Leukemia 1990;4:567−571;Nygren P,Kristensen J,Jonsson B,ら,Leukemia 1992;6:1121−1128)によって測定される、細胞膜エステラーゼ活性及び細胞膜完全性の喪失、を含む。
【0283】
一部の実施形態では、当技術分野において周知であり、例えばScience Onlineでのサポートオンライン資料として入手可能な「実験材料及び方法」に述べられている、ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼを介したdUTPニック末端標識(TUNEL)によってアポトーシスを測定する。
【0284】
加えて、治療に対する動物の感受性または抵抗性は、治療の前後及び/または治療の期間を通じて腫瘍サイズを測定することによって直接判定しうる。腫瘍サイズが治療によって50%、好ましくは75%、より好ましくは85%、最も好ましくは100%低下する場合、その動物は治療に対して感受性である(抵抗性でない)と言われる。さもなければ、動物は治療に対して抵抗性であるとみなされる。腫瘍サイズが、本発明の組成物の不在下での治療後の腫瘍と比較して、本発明の治療感作組成物の投与後に少なくとも25%、好ましくは50%、より好ましくは75%、最も好ましくは100%低下する場合、その組成物はその動物において治療を感作する上で有効であると言われる。ヒトでは、6ヶ月の治療期間のウインドウにわたって腫瘍サイズを比較し、他の動物ではこのウインドウは異なり、例えばマウスについては4−6週間のウインドウを使用しうる。腫瘍サイズを比較するための実際の期間ウインドウは、当技術分野における知識及び治療する特定腫瘍に応じて決定されうることは了解される。
【0285】
さらに、細胞が治療に抵抗性であるかどうかは、ここで前述したSPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を測定することによっても判定しうる。そこで本発明は、(a)第一癌試料において、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベルもしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(b)治療処置に対して抵抗性を示さない第二癌試料において、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベルもしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(c)(a)と(b)で得られた発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(a)におけるより低いレベルの発現または細胞外レベルが、第一癌試料がその治療処置に対して抵抗性であることを示すこと、を含む、第一癌試料を治療処置に対するその抵抗性に関して評価するための方法を提供する。
【0286】
本発明はさらに、(a)試料中のSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(b)候補物質を前記試料と接触させること;(c)(b)の前記接触後、(b)の前記試料中の前記SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現または細胞外レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(d)(a)と(c)における発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(a)と(c)における異なるレベルの発現または細胞外レベルが、前記候補物質がSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を調節する物質であることを示すこと、を含む、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を調節する物質を特定するための方法を提供する。
【0287】
SPARCポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現レベル及びSPARCポリペプチドの分泌レベルは、ここで前述したように及び当技術分野で公知のいずれかの方法によって測定することができる。
【0288】
SPARCファミリー成員の発現または分泌を促進する物質は、それ自体、本発明において述べるような治療感作物質として使用しうる。その物質は、化学物質または生物学的分子(例えばタンパク質またはポリヌクレオチド等)でありうる。
【0289】
(動物モデル)
本発明によって提供される組成物の治療効果は、様々な動物モデルにおいて試験しうる。これは、ここで前述したようにインビトロ、エキソビボまたはインビボで実施しうる。
【0290】
増殖性疾患についてのマウスモデルは当技術分野において公知であり、例えばworld wide web www.jax.orgのJackson laboratoryマウスデータベース及びThe Jackson Laboratoryカタログ−Jax−Mice−June 2001−May 2003またはJackson−Grusby L.2002,Oncogene.12;21(35):5504−14;Ghebranious N,Donehower LA.,1998,Oncogene.24;17(25):3385−400;Palapattu GS,Bao S,Kumar TR,Matzuk MM.1998,Cancer Detect Prev.22(1):75−86)に認められる。例えば腫瘍マウスモデルは、慢性骨髄性白血病(CML)、細胞接着分子の欠損、生長及び増殖を調節する遺伝子、増殖因子/受容体/サイトカイン、腫瘍発生率の上昇、癌遺伝子、毒物学及び腫瘍抑制遺伝子の試験のために使用されるものを包含する。
【0291】
実施例
本発明は、SPARCが化学療法抵抗性細胞において有意に過少発現されることが認められたこと、SPARCをコードするDNAは細胞を癌治療に対して感作すること、及びSPARC形質転換体細胞を移植した動物は、対照を移植した動物に比べて腫瘍増殖の劇的な低下を示すことの所見に基づく。
【0292】
(実施例1)実験材料及び方法
細胞培養―結腸直腸細胞系統MIP−101を、37℃及び5%CO2で、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Invitrogen)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)中に維持した。漸増濃度の5−フルオロウラシル(5−FU)、イリノテカン(CPT−11)、シスプラチン(CIS)及びエトポシド(ETO)と共に長期間培養した後、抵抗性MIP101細胞が発現した。SPARCで形質導入した安定なMIP101細胞(MIP/SP)を、37℃及び5%CO2で、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM中に維持した。
【0293】
分析的逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応―TRIZOL試薬(Invitrogen)を製造者のプロトコルに従って使用して、培養細胞(2×106細胞、75%集密)から全RNAを抽出した。全RNA 1μgを使用して、市販のキット(BD Biosciences)を製造者のプロトコルに従って用いてRT−PCRを実施した。SPARCを増幅するために使用した特異的プライマー:5’CGA AGA GGA GGT GGT GGC GGA AA−3’(センス)(配列番号78)及び5’GGT TGT TGT CCT CAT CCC TCT CAT AC−3’(アンチセンス)(配列番号79)。GAPDH:5’−CTC TCT GCT CCT CCT GTT CGA CAG−3’(センス)(配列番号80)及び5’−AGG GGT CTT ACT CCT TGG AGG CCA−3’(アンチセンス)(配列番号81)を内部対照として及び遺伝子発現レベルを規格化するために使用した。以下の設定を反応のために使用した:50℃×1時間、次いで94℃×1分間、65℃×1分間、72℃×2分間を37サイクル、次いで72℃×10分間及び4℃でのインキュベーション。PCR産物を、100Vで1時間の電気泳動により、TAE緩衝液中1%アガロースゲル上で分離して(エチジウムブロマイド0.5μg/mlで染色)、その後写真撮影した。
【0294】
アポトーシスの定量―TUNELアッセイのために、24時間後の誘導試験に先立って、6穴平板において250,000細胞/平板で一晩、細胞をカバーガラス上で平板培養した。外来性SPARC(Haematologic Technologies Inc)に続くアポトーシスの評価のために、細胞をSPARC 5μg/mlと共に24時間インキュベートし、次いで5−FU 1000μMに12時間曝露した。次に細胞を、製造者の指示に従ってアポトーシス検出キット(Promega)による標識のために処理した。アポトーシスの定量のために、細胞を6穴平板において250,000細胞/平板で一晩平板培養し、次に以下の化学療法剤:5−FU 1000μM、CPT−11 200μM、シスプラチン100μM及びエトポシド10μM、と共に12時間インキュベートした。非酵素的細胞解離剤(Sigma)を使用し、リン酸緩衝食塩水で洗浄して、その後アポトーシス検出キット(R&D Research)を製造者のプロトコルに従って使用してアネキシンV及びヨウ化プロピジウムに関して染色することによって細胞を収集した。アネキシンVとヨウ化プロピジウムで標識した細胞の比率をXLフローサイトメトリー分析器によって分析した。100,000事象からデータを収集した。
【0295】
クローンの形質移入と選択:SPARC cDNAをpcDNA3.1発現ベクターにクローニングした。形質移入は、Boussiffら(1995)のポリエチレンイミン法に重要でない修飾を加えて使用して、遺伝子/発現ベクター構築物2.0μgによって実施した。形質移入後、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄し、培地中に24時間維持して、その後1%ゼオシン(Zeocin)を含む適切な選択培地に変えた。ゼオシン耐性に基づいて細胞を選択し、次に、個々のコロニー及びこれらのコロニーからのクローンをさらなる確認のために増殖させた。安定に形質導入されたクローン(MIP/SP)を、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析によってSPARC mRNA発現に関してスクリーニングした。SPARC mRNA(RT−PCRによる)及びタンパク質(ウエスタンブロット法による)の最も高い発現を有するMIP/SPを、その後のインビトロ及びインビボ試験のために選択した。この試験のために使用した対照細胞系統は、pcDNA3.1空ベクターだけで安定に形質導入し(MIP/ゼオ)、ゼオシン耐性に基づいて選択したMIP101細胞を含んだ。
【0296】
ウエスタンブロット分析―CHAPS細胞溶解緩衝液を使用して10cm平板で培養した細胞系統から全タンパク質を抽出した。SDS−PAGEを用いて全タンパク質10−30μgを電気泳動し、PVDF膜に移した。5%脱脂乳溶液で遮断した後、膜を抗SPARC抗体(1:1000、Haematologic Technologies Inc)と共に4℃で一晩インキュベートした。その後、膜をウサギ抗マウスHRP複合二次抗体(1:2000)と共に室温で1時間インキュベートし、Extendi−Dura化学発光キット(Pierce)によって検出した。同じ膜を、ウエスタン・ブロット復元剥離緩衝液(Western Blot Restore Stripping Buffer)(Pierce)を用いて脱色し、その後、一次抗チューブリンマウス抗体(Sigma)及びウサギ抗マウスHRP複合二次抗体(1:2000)を内部対照として用いて、チューブリンに関して再プローブした。
【0297】
免疫組織化学―ヒト結腸直腸癌または正常結腸上皮のパラフィン切片は、Dr.Maximo Loda(Dana Farber Cancer Institute,Boston)の好意により提供した。染色の前に、前記切片を、0.1%トリトンX−100(Sigma)を含む0.1%トリス緩衝食塩水(TBS)で洗い、1%H2O2で30分間処理して、TBS/0.1%トリトン中、室温で30分間(×3)洗浄し、TBS/0.1%トリトン中3%BSAで1時間遮断した。次に切片をマウス抗SPARC抗体(1:50)(Haematologic Technologies Inc)と共に4℃で一晩インキュベートし、TBS/トリトンで数回洗って、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ(ABC)複合体溶液(Vecstain ABCキット、Vector Laboratories Inc,Burlingame,カリフォルニア州)で1時間対比染色し、その後DAB溶液中でインキュベートした。切片をパーマウント(Permount)を用いて封入した。
【0298】
コロニー形成アッセイ―クローン原性細胞生存率試験のために、MIP101親細胞とMIP/SP細胞を48穴平板に1,000細胞/平板で塗布し、漸増濃度の5−FU(0、10μM、100μM、1000μM)、CPT−11(0、1μM、10μM、100μM)またはエトポシド(0、10μM、100μM、1000μM)と共に4日間インキュベートした。その後細胞をPBSで洗い、適切な濃度の化学療法剤を含む新鮮培地中でさらに7日間インキュベートした。各々のウェルをクリスタルバイオレットで染色し、50以上の細胞を有するコロニーを計数した。処置群において形成されたコロニーの数を、対照未処置細胞から形成されたコロニーに基づいて算定した。
【0299】
濃縮SPARC含有上清[SPARC]―MIP/SP細胞を100cmフラスコにおいてDMEM(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、0.1%ゼオシン)中1×106細胞で24時間平板培養した。その後細胞をPBSで2回洗い、グルタミン4mM(Invitrogen)を添加した無血清VP−SFM培地中で72時間インキュベートした。4℃でCentricon Filterユニット(Millipore)を使用してこの培地を500mlから2mlに濃縮した。この方法によって収集し、処理したすべての培地をその後の動物試験のために使用した。
【0300】
動物試験―腫瘍進行へのSPARCの作用をインビボで評価するために腫瘍異種移植片動物モデルを使用した。左側腹部への2×106細胞の皮下注射後にNIHヌードマウス(6週齢、Taconic Laboratories)に移植した。ひとたび平均腫瘍サイズが50−75mm3の大きさになれば治療レジメンを開始した。試験完了時まで、手持ち式カリパス(Fisher)を使用して週に2回腫瘍測定を実施し、同時に体重測定を行った。化学療法を3週間サイクルのレジメンを用いて合計6サイクル実施した:5−FU 25mg/kgまたはCPT−11 25mg/kgの腹腔内注射を各々のサイクルの1週目に3回、その後2週間の治療なし期間。SPARCについての投与スケジュールは、SPARC100μLを化学療法サイクルの終了時まで週に3回であった。
【0301】
(実施例2)化学療法抵抗性細胞におけるSPARC発現
コロニー形成アッセイ(図3)及びTUNELアッセイ(図4)によって裏付けられた、2つの化学療法抵抗性クローン(MIP−5FUR及びMIP−ETOR)を、化学療法抵抗性細胞におけるSPARCの検出のために使用した。マイクロアレイ分析は、SPARCを含む、抵抗性細胞において過少発現される多くの遺伝子を特定した。
【0302】
遺伝子発現レベルでの過少発現はまた、化学療法抵抗性細胞系統におけるより低いレベルのSPARCタンパク質レベルへと翻訳された(図5A)。もう1つの広く確立された子宮肉腫細胞系統、MES−SAも、異なる化学療法剤、ドキソルビシンに耐性であるときSPARCの発現低下を示したので、この特徴は今回の試験のためだけに開発された耐性細胞系統にユニークではなかった(図5B)。さらに、正常なヒト病理学的試料では、SPARCタンパク質発現は絨毛において最も高く、結腸陰窩に向けて低下する勾配を有すると思われる。この可変性発現が悪性疾患では失われ、様々な病期の結腸直腸腺癌においてSPARCの発現が全般的に低下する。
【0303】
図19は、化学療法に感受性及び抵抗性の結腸直腸癌細胞系統におけるヒトSPARCmRNA及びタンパク質レベルを示す。(A)オリゴヌクレオチドマイクロアレイクラスター分析の図(左のパネル)は、化学療法に抵抗性の細胞系統ではSPARC遺伝子発現が有意に低いことを明らかにし、これは半定量的RT−PCRによって確認された(右のパネル)。(B)化学療法に感受性(MES−SA)及びドキソルビシンに耐性(MES−SA/DX5)の対合子宮肉腫細胞系統におけるSPARC発現レベルの検出は、耐性細胞系統における同様の発現低下を示す。乳癌細胞系統では、MDA435はMCF−7よりもわずかに高いSPARC発現レベルを有していた。膵癌細胞系統(CRL1420)、肺癌細胞系統(JMN 1B)、結腸直腸癌系統(RKO、CCL227、HT29)においては低いレベルの発現が検出された。正常結腸細胞系統(CRL1541)及び結腸癌細胞系統(HCT116)では高レベルのSPARC発現が検出された。(C)SPARCタンパク質発現は、正常親細胞系統(レーン5、MIP101)と比較して、MIP101抵抗性クローン(抵抗性細胞系統:MIP/5FU、MIP/CPT、MIP/ETO、MIPT/CIS)ではこのタンパク質の有意の低下が存在することを確認する。同様に、もう1つのセットの子宮肉腫起源の抵抗性細胞系統(MES−SA/DX5、ドキソルビシンに抵抗性の子宮肉腫)は、親感受性細胞系統(MES−SA、親子宮肉腫)と比較してSPARCの発現低下を示す。
【0304】
図20は、ヒト結腸上皮におけるSPARCタンパク質発現を示す。(A)正常結腸は、管腔の近位の表在細胞におけるSPARCタンパク質のより高いレベル及び陰窩に向かっての発現低下勾配というSPARCタンパク質発現の差異的なパターンを示す。(B)結腸の腺癌、(C)粘液腺癌及び(D)肝臓に転移した結腸の腺癌におけるSPARCタンパク質レベルは、悪性上皮内で広汎にSPARCタンパク質の低いレベルを示す。6μm切片、×20倍率。
【0305】
(実施例3)SPARCポリペプチドは抵抗性細胞を5−FU治療に対して感作する
この潜在的な役割をさらに正確にするために、我々は、抵抗性表現型を逆転させる上での外来性SPARCに対する抵抗性MIP101細胞の応答(図6)を評価した。初期実験で示されたように、5−FUに抵抗性のMIP101細胞(MIP−5FUR)は、500μMの濃度の5−FUによってアポトーシスの引き金を引かれなかったが、親感受性細胞系統からの有意の数の細胞が、同様の濃度の5−FUへの曝露後にアポトーシスを受けた。抵抗性細胞のSPARCとの外因性曝露に関して重要な所見が認められた:SPARCと抵抗性クローンの24時間のインキュベーション及びそれに続く化学療法剤への12時間曝露は、それまでは細胞死を刺激しなかった化学療法剤の濃度に曝露した細胞においてTUNELアッセイによって再びアポトーシスが検出されたので、抵抗性表現型を逆転させるのに十分であった。その後の化学療法への曝露を伴わない、外来性SPARCとのインキュベーション単独では、親MIP101または抵抗性細胞のいずれにおいてもアポトーシスを誘導しなかった。
【0306】
図21は、化学療法に対する細胞の感受性に影響を及ぼすSPARCの作用の評価を示す。(A)インビトロでの、5−FUと組み合わせた外来性SPARCへのMIP/5FR細胞の曝露の作用。TUNELアッセイによるアポトーシスの評価は、5−FU 1000μMに曝露した感受性MIP101細胞における陽性染色された細胞(a、TUNEL染色;b、DAPI染色)を示すが、同様の濃度の5−FUへの曝露後の抵抗性表現型(c、TUNEL染色;d、DAPI染色)ではアポトーシスは存在しない。しかし、SPARC(5μg/ml)への24時間の曝露後、5−FU抵抗性細胞は、TUNEL陽性染色細胞によって示されたように(e;f、DAPI染色)再び5−FU 1000μMに感受性となり、アポトーシス細胞の存在を示した。これは、SPARCへの外因性曝露が5−FU抵抗性細胞の抵抗性表現型を逆転させることの初めての指摘であり、SPARCが化学療法感作物質として機能しうることを示唆する。(B)漸増濃度の化学療法(5−FU、CPT−11及びエトポシド)に曝露した、SPARCを過剰発現する安定に形質導入されたMIP101細胞系統(MIP/SP)及び対照(MIP/ゼオ)は、より低い薬剤濃度に曝露したとき、MIP/ゼオ細胞よりも少ないMIP/SP細胞のコロニーを示し、比較的低い濃度の化学療法でより少ない細胞しか生存しなかったことから、SPARC過剰発現クローンの化学療法に対する感受性の上昇を指示した。(B)対照細胞(MIP/ゼオ)と比較して、より多くの数のSPARC過剰発現MIP101が、様々な化学療法剤(ETO=エトポシド、CIS=シスプラチン、5−FU=5−フルオロウラシル、CPT=CPT−11)への12時間の曝露後にアポトーシスを受けた(p<0.05)。フローサイトメトリーによるアネキシンV標識後のアポとシースの分析は、3回実施した3つの独立した試験の結果である。クローン形成アッセイ(B)の結果は、3回反復して同様の結果であった代表的実験である。
【0307】
(実施例4)SPARCポリヌクレオチドは組換え細胞を様々な化学療法処置に対して感作する
この仮説を調べるため、さらなるインビトロ試験用の過剰発現系を生成するためにMIP101細胞をSPARCで形質移入した。SPARCを過剰発現する2つのクローン(クローン4、5;図7)をその後の試験のために使用した。
【0308】
様々な化学療法剤に対するSPARC形質移入体の感受性をコロニー形成アッセイによって評価し、前記アッセイは、SPARCを過剰発現するクローンが、親細胞系統と比較して、より高い濃度の化学療法で腫瘍形成性コロニーを形成できないことを示した。同様に、化学療法剤への曝露後にアポトーシスを受けるように誘導した細胞個体群のFACS分析は、12時間の化学療法への曝露後にSPARC形質移入体において早期アポトーシスへの劇的なシフトを示した(図8D)。親細胞系統からの細胞のより小さな個体群は、化学療法だけによる誘導後にアポトーシスを受けた(図8C)。全体として、様々な化学療法剤への曝露後に、親MIP101細胞系統と比較してアポトーシスを受けるSPARC過剰発現細胞の個体群は少なくとも2倍に上昇すると思われた(図9)。図10は、化学療法剤へのSPARC形質移入体の応答を示す。
【0309】
(実施例5)SPARC感作がインビボで認められる
インビトロでの化学療法に対する感受性上昇はインビボモデル系に翻訳され、SPARC形質移入体を移植した動物では、6サイクルの化学療法後に4匹の動物のうち2匹が完全な腫瘍後退を示した(図11)。SPARC形質移入体を移植した残りの動物は、親MIP101を移植した動物と比較して腫瘍増殖速度に劇的な低下があった。すべての対照動物(化学療法で処置したMIP101の異種移植)は、化学療法処置の開始後50日目までに>400mm2の腫瘍を有していたが、完全な腫瘍後退を受けなかったSPARC形質移入体移植動物では、腫瘍は化学療法の開始後140日目まで<300mm2のままであった(結果は示さず)。
【0310】
(実施例6)SPARCポリペプチド発現を調節する物質をスクリーニングする方法
SPARCポリペプチド発現の調節因子のスクリーニングは、簡単な哺乳動物細胞に基づくスクリーニングとして実施できる。哺乳動物組織培養細胞系統、例えばHela細胞を、最初にランダムな候補低分子と共にプレインキュベートする。次に抗SPARCウエスタンブロット法またはELISAを用いて細胞クローンをスクリーニングする。あるいは、SPARC mRNA発現への調節を調べるためのRT−PCR反応を実施する。
【0311】
(実施例7)付加的な動物モデル治療
様々な動物モデル治療を実施し、その結果を図14に示している。
【0312】
図14において、種々の化学療法剤(5−FUまたはCPT−11)で治療した、MIP101またはMIP/SPのいずれかを移植した腫瘍を有する異種移植動物は、親MIP101細胞系統(MIP)の腫瘍異種移植と比較して、MIP/SPの腫瘍異種移植のより迅速な速度の腫瘍後退を示す。MIP/SP異種移植片を担持する4匹の動物のうち2匹は完全な腫瘍後退が起こり、残りの2匹は、同様の治療レジメンを実施したMIP101を担持する対照動物と比較してはるかに緩慢な速度の腫瘍増殖を生じた。2サイクルの5−FUで治療したMIP−SPARCの腫瘍異種移植を有する代表動物は、移植後23日目までに完全な後退が起こるか、もしくは親MIP101の異種移植片を移植した動物に比べて、2サイクルだけのCPT−11治療後に有意に小さい腫瘍を有していた。
【0313】
図15では、MIP/SP細胞の異種移植片を有するより多くの動物が、対照MIP/ゼオ細胞の異種移植片を有する動物に比べて、放射線治療後の期間中より早期に完全な腫瘍後退の証拠を示した。放射線治療後15週目までに、MIP/SP異種移植動物のいずれもが腫瘍の証拠を有しておらず、一方MIP/ゼオ異種移植動物の30%が引き続き腫瘍を有していた(n=10動物/群;総放射線量:100Gy)。
【0314】
図16において、SPARC(IP、腹腔内)と5−FUの併用治療は、治療の開始後51日までに、5−FU単独での治療よりも有意に大きい腫瘍後退をもたらした。(B)SPARC(IP)と5−FUのこの併用治療は、治療後84日目までに数匹の動物において完全な腫瘍後退をもたらしたが、これは5−FU単独で治療した動物では認められなかった(平均±SE、n=6動物/群)。
【0315】
図17では、SPARC(SC、皮下)と5−FUの併用治療は、治療期間全体を通じて5−FU単独での治療よりも有意に大きい腫瘍後退をもたらした。SPARC(SC)と5−FUのこの併用治療は、治療後42日目までに数匹の動物において完全な腫瘍後退をもたらしたが、これは5−FU単独で治療した動物では認められなかった(平均+SE、n=6動物/群)。
【0316】
図18では、MIP/5FU抵抗性細胞を移植した動物を5FU単独またはSPARCと5−FUの併用のいずれかで治療し、5−FU単独で治療された動物では急速な腫瘍増殖が続くことを示したが、併用療法で治療した動物では治療後28日目から劇的な腫瘍後退が認められた。SPARCと5FUの併用治療を受けた数匹の動物は、治療後117日目までに完全な腫瘍後退を示した(平均+SE、n=6動物/群)。
【0317】
ここで引用したすべての特許、特許出願及び公表文献は、それらの全体が参照してここに組み込まれる。本発明を、その好ましい実施形態を参照しながら特定して示し、説明したが、付属の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなくその中で形態及び詳細の様々な変更を加えうることは当業者に了解される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療感作組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法または放射線療法による導入後の癌治療の失敗の理由はいまだ明らかではない。多剤耐性ファミリー(MDR)のp−糖タンパク質からの排出ポンプの上方調節など、多くの因子が治療抵抗性に関係付けられており、また他の非古典的MDRタンパク質(多剤耐性関連タンパク質、MRP;肺抵抗性タンパク質、LRP)が様々な癌において記述されている(Lehnert,M.Anticancer Res 1998;18:2225−2226;Ringborg,U.及びPlatz,A.Acta Oncol 1996;5:76−80;Shea,T.C.,Kelley,S.L.,及びHenner,W.D.Cancer Res 1998;48:527−533)。残念なことに、消化器系悪性疾患などの内因的に化学療法抵抗性である多くの腫瘍は、MDR遺伝子の比較的低い発現レベルを有する。例えば、原発性結腸直腸腫瘍の23%だけがMRPを発現し、65%がp−糖タンパク質を発現する(Filipits M,Suchomel RW,Dekan G,Stigilbauer W,Haider K,Depisch D,Pirker R.Br.J Cancer 1997;75:208−212)。従って、治療薬に対する耐性は、単に公知のMDR遺伝子の活性化と上方調節だけに基づいて説明することはできない。試験はまた、腫瘍発生の原因となる遺伝子突然変異も薬剤耐性に寄与しうることを示した。例えば、遺伝性非腺腫性大腸癌(HNPCC)において認められるDNAミスマッチ修復遺伝子の喪失は、より速やかな臨床的薬剤耐性の出現に関連付けられてきた(de las Alas MM,S Aebi,D Fink,SB Howell,G Los.J Natl Cane Inst 1997;89:1537−41;Lin X,Howell SB(1999).Mol Pharmacol 56:390−5)。腺腫様ポリープ及び腺癌の約40%で検出される、K−ras遺伝子における突然変異は、増大した再発率、死亡率、及び化学療法応答の不良に結びつく(Arber N,1.Shapira,J.Ratanら,Gastroenterology 2000;118:1045−1050)。p21及びp27などの、細胞周期調節に関与する遺伝子は、様々な抗癌剤によって誘発される進行中のアポトーシスから腫瘍を保護することが示された(Waldman T,Lengauer C,Kinzler KW,Vogelstein B.Nature 1996,381:713−716;St.Croix B,Florenes VA,Rak JW,Flanagan M,Bhattacharya N,slingerl及びJM,Kerbel RS.Nature Med 1996,2:1204−1210)。加えて、E−カドヘリンなどの細胞接着分子は、化学療法剤に曝露されたとき細胞に耐性を付与する(Skoudy A,Llosas MD,Garcia de Herreros A.Biochem J 1996)。
【0003】
治療抵抗性に関与する機構は従って、非常に複雑であると思われる。最近の証拠は、これまでに薬剤によって治癒された比較的数少ない腫瘍についての化学療法の選択性は、種として、それらが容易にアポトーシスを受ける、すなわち自らを死滅させる感受性に依存することを示唆している(Makin G,Expert Opin Ther Targets.2002 6(1):73−84;Johnstone RW,Ruefli AA,Lowe SW,Cell.2002 108(2):153−64;Kamesaki H,hit J Hemato.1998 68(1):29−43)。
【0004】
酸性高システイン分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cystein)(SPARC)は、マトリセルラータンパク質と呼ばれる細胞外タンパク質のファミリーに属する。その特定とクローニング以来、SPARCの機能的役割は不明のままである。その高い進化的保存は、このタンパク質についての重要な生理的役割を示唆する(Iruela−Arispe ML,Lane TF,Redmond D,Reilly M,Bolender RP,Kavanagh TJ,Sage EH.Mol Biol Cell.1995 Mar;6(3):327−43)。初期試験は、SPARCが骨の鉱化作用において重要であることを示した(Termine JD,Kleinman HK,Whitson SW,Conn KM,McGarvey ML,Martin GR.Cell.1981 Oct;26(1 Pt 1):99−105)。SPARCは骨組織において高いレベルで発現されるが、他の組織や細胞型にも広く分布する(Maillard,C.,ら,Bone,13:257−264(1992))。その役割は、組織のリモデリング(Latvala T,Puolakkainen P,Vesaluoma M,Tervo T.Exp Eye Res.1996 Nov;63(5):579−84;Kelm RJ Jr,Swords NA,Orfeo T,Mann KG.J Biol Chem.1994 Dec 2;269(48):30147−53);内皮細胞移動(Hasselaar P,Sage EH.J Cell Biochem.1992 Ju1;49(3):272−83)、形態形成(Mason IJ,Murphy D,Munke M,Francke U,Elliott RW,Hogan BL.EMBO J.1986 Aug;5(8):1831−7;Strandjord TP,Sage EH,Clark JG.Am J Respir Cell Mol Biol.1995 Sep;13(3):279−87)、及び血管新生(Kupprion C,Motamed K,Sage EH.J Biol Chem.1998 Nov 6;273(45):29635−40;Lane TF,Iruela−Arispe ML,Johnson RS,Sage EH.J Cell Biol.1994 May;125(4):929−43)を含むように拡大された。SPARCはまた、内皮細胞、血管間膜細胞、線維芽細胞及び平滑筋細胞への抗増殖作用を有することが示された(Sage EH.Biochem Cell Biol.1992 Jul;70(7):579−92)。
【0005】
インビトロでの実験はまた、腫瘍におけるSPARCも特定した(Schulz,A.,ら,Am.J.Pathol.,132:233−238(1988);Porter,P.L.,ら,J.Histochem.Cytochem.,43:791−800(1995))。SPARCは、黒色腫での試験によって示唆されたように(Ledda MF,Adris S,Bravo AT,Kairiyama C,Bover L,Chernajovsky Y,Mordoh J,Podhajcer OL.Nat Med.1997 Feb;3(2):171−6)癌遺伝子として、あるいはvJun−ml及びv−Src−形質転換ニワトリ胚線維芽細胞における増殖のその強力な阻害によって明らかにされたように(Vial E,Castellazzi M.Oncogene.2000 Mar 30;19(14):1772−82)腫瘍抑制因子として機能することができるという相反する証拠が存在する。SPARCの増殖阻害特性は主として内皮細胞、線維芽細胞、血管間膜細胞及び平滑筋細胞などの一次細胞において示されているが、これはまた、腫瘍発生におけるSPARCの役割にも寄与しうる。SPARCはまた、腫瘍侵襲特性を有することが示されている。様々な癌において一定しないSPARC発現が認められている。乳癌(Bellahcene A,Castronovo V.Am J Pathol.1995 Jan;146(1):95−100)、食道癌(Porte H,Triboulet JP,Kotelevets L,Carrat F,Prevot S,Nordlinger B,DiGioia Y,Wurtz A,Comoglio P,Gespach C,Chastre E.Clin Cancer Res.1998 Jun;4(6):1375−82)、肝細胞癌 (Le Bail B,Faouzi S,Boussarie L,Guirouilh J,Blanc JF,Carles J,Bioulac−Sage P,Balabaud C,Rosenbaum J.J Pathol.1999 Sep;189(1):46−52)、及び前立腺癌(Thomas R,True LD,Bassuk JA,Lange PH,Vessella RL.Clin Cancer Res 2000;6:1140−1149)においてより高いレベルの発現が検出された。しかし、卵巣癌(Brown TJ,Shaw PA,Karp X,Huynh MH,Begley,Ringuette MJ.Gynecol Oncol 1999;75:25−33;Paley PJ,Goff BA,Gown AM,Greer BE,Sage EH.Gynecol Oncol 2000;78:336−341;Yiu GK,Chan WY,Ng SW,Chan PS,Cheung KK,Berkowitz RS,Mok SC.Am J Pathol 2001;159:609−622)、及び結腸直腸癌(Porte H,Chastre E,Prevot 5,Nordlinger B,Empereur S,Basset P,Chambon P,Gespach C.Int J Cancer 1995;64:70−75;Lussier C,Sodek J,Beaulieu JF.J Cell Biochem.2001;81(3):463−76)に関しては相反する結果が認められた。
【0006】
最近、SPARCが卵巣癌細胞のアポトーシスを誘導することに関与することが示唆された(Yiu GK,Chan WY,Ng SW,Chan PS,Cheung KK,Berkowitz RS,Mok SC.Am J Pathol 2001;159:609−622)。Yiuら(2001、前出)は、悪性転換後にSPARC発現の下方調節が存在すること、及び正常卵巣細胞と癌細胞の両方に対するSPARCの抗増殖特性が存在することを指名した。Yiuら(2001、前出)はさらに、SPARC単独への外因性曝露が卵巣癌細胞においてアポトーシスを誘導できることの付加的な証拠を提供した。しかし、高いSPARC発現レベルを有する腫瘍のヒト病理標本は、より高い数のアポトーシス細胞を有することを示さなかった。
【0007】
国際公開第0202771号は、新規hSPARC−h1ポリペプチド及び組織リモデリング、組織修復及び様々な増殖因子活性の全般的調節におけるその潜在的適用を開示する。
【0008】
米国特許第6,387,664号は、神経生物学における基礎研究のため及び/または様々な神経病理を治療するために使用できる、SPARCをチオレドキシンに融合することによって得られるSPARC融合タンパク質を提供する。
【0009】
米国特許第6,239,326号は、創傷治癒を促進するまたは遅延させること及び白内障、糖尿病または骨粗鬆症を治療するまたは予防することに関して薬剤を試験するためのSPARC欠損トランスジェニックマウスモデルを提供する。
【0010】
特許、特許出願を含む、上記及び本明細書全体を通じて引用するすべての参考文献は、それらの全体が参照してここに組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、SPARCが癌治療を感作するという発見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、癌治療処置を感作するための組成物及び方法を提供する。
【0013】
本発明は、SPARCファミリーポリペプチド及び化学療法剤を含む組成物を提供する。
【0014】
本発明は、SPARCファミリーポリペプチド及び化学療法抵抗性細胞を含む組成物を提供する。
【0015】
本発明は、組換えSPARCファミリーポリヌクレオチドを含む化学療法抵抗性細胞を提供する。
【0016】
本発明は、SPARCファミリーポリヌクレオチドに作動可能に連結された異種転写制御領域を含む組換え細胞を提供する。
【0017】
もう1つの態様では、本発明は、癌と診断された哺乳動物に、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有効量を投与することを含む、哺乳動物を治療処置に対してインビボで感作するための方法を提供する。
【0018】
本発明は、哺乳動物にSPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞の有効量を投与することを含み、前記細胞は増大した量の前記SPARCポリペプチドを生産する、癌と診断された哺乳動物を治療処置に対してエキソビボで感作するための方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、(1)哺乳動物から癌試料を得ること;(2)前記癌試料を、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量と接触させること;及び(3)(2)の接触後に癌試料を哺乳動物に戻すこと、を含む、癌と診断された哺乳動物を治療処置に対してエキソビボで感作するための方法を提供する。
【0020】
本発明はさらに、癌試料を、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量と接触させることを含む、癌試料を治療処置に対して感作するための方法を提供する。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、癌試料は細胞または組織試料である。
【0022】
本発明のもう1つの実施形態では、癌試料を(e)−(f)のポリヌクレオチドで形質移入するまたは感染させる。
【0023】
本発明は、(a)第一癌細胞におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;及び(b)(a)で得た発現レベルまたは細胞外レベルを、治療処置に対して抵抗性を示さない第二癌細胞における前記SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルと比較して、(a)におけるより低いレベルの発現または細胞レベルが、前記第一癌細胞が前記治療処置に対して抵抗性であることを示すことを含む、第一癌細胞を治療処置に対するその抵抗性に関して評価するための方法を提供する。
【0024】
本発明は、(a)第一癌試料におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(b)治療処置に対して抵抗性を示さない第二癌試料におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(c)(a)と(b)で得られた発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(a)におけるより低いレベルの発現または細胞レベルが、第一癌細胞が前記治療処置に対して抵抗性であることを示すこと、を含む、第一癌細胞を治療処置に対するその抵抗性に関して評価するための方法を提供する。
【0025】
1つの実施形態では、第一試料は第一哺乳動物に由来し、そして(a)におけるより低いレベルの発現または細胞外レベルは、第一哺乳動物が治療処置に対して抵抗性であることをさらに示す。
【0026】
もう1つの実施形態では、第二癌試料は、第一癌試料を提供する第一哺乳動物に由来する。
【0027】
さらにもう1つの実施形態では、第二癌試料は、前記第一癌細胞を提供する第一哺乳動物とは異なる第二哺乳動物に由来する。
【0028】
好ましくは、第一哺乳動物と第二哺乳動物は同じ癌を有すると診断される。
【0029】
1つの実施形態では、SPARCファミリーmRNAの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応、DNAマイクロアレイまたはノーザンブロット法によって測定される。
【0030】
1つの実施形態では、SPARCファミリーポリペプチドの発現または細胞外レベルは、免疫ブロット法または酵素結合イムノソルベント検定法(Elisa)によって測定される。
【0031】
本発明は、(a)試料中のSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(b)候補物質を前記試料と接触させること;(c)(b)の前記接触後、(b)の試料中のSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現または細胞外レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(d)(a)と(c)における発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(a)と(c)における異なるレベルの発現または細胞外レベルが、前記候補物質がSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を調節する物質であることを示すこと、を含む、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を調節する物質を特定するための方法を提供する。
【0032】
本発明はまた、(a)癌試料におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(b)候補物質を前記癌試料と接触させること;(c)(b)の前記接触後、(b)の癌試料におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(d)(a)と(c)で得た発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(c)における発現または細胞外レベルの増大したレベルが、前記候補物質が癌試料を治療処置に対して感作する物質であることを示すこと、を含む、癌試料を治療処置に対して感作する物質を特定するための方法を提供する。
【0033】
1つの実施形態では、前記方法の癌試料は、癌と診断された哺乳動物に由来し、そして発現または細胞外レベルの増大したレベルは、候補物質が前記哺乳動物を治療処置に対して感作する物質であることをさらに示す。
【0034】
本発明は、(a)第一哺乳動物からの第一試料において、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルが、治療処置に対して抵抗性を示さない第二試料よりも低いかどうかを判定すること;及び (b)(a)が明確である場合、治療処置に対する応答を高めるために第一哺乳動物への治療処置の強度を高めること、を含む、癌と診断された第一哺乳動物のための治療処置プロトコルを決定するための方法を提供する。
【0035】
好ましくは、前記組成物及び方法の(e)または(f)のポリヌクレオチドは、発現ベクターである。
【0036】
より好ましくは、前記発現ベクターはプラスミドまたはウイルスベクターである。
【0037】
1つの実施形態では、前記プラスミドベクターはpcDNA3.1である。
【0038】
本発明のSPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、(a)配列番号1−17から成る群より選択されるSPARCポリペプチド;(b)(a)のSPARCファミリーポリペプチドに少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド;(c)少なくとも50アミノ酸の長さである、(a)−(b)のポリペプチドフラグメント;(d)(a)、(b)または(c)のポリペプチドを含む融合ポリペプチド;(e)(a)、(b)、(c)のポリペプチドまたは(d)の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(f)ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で(e)のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0039】
好ましくは、本発明のSPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、SMOC−1、SPARC、hevin、SC1、QR−1、フォリスタチン様タンパク質(TSC−36)、testicanから選択される。
【0040】
好ましくは、前記組成物及び方法の治療薬は、化学療法剤または放射線療法剤である。
【0041】
より好ましくは、前記治療薬は、表1に列挙する物質から成る群より選択される。
【0042】
1つの実施形態では、前記方法の哺乳動物は、治療処置に対して抵抗性を示す。
【0043】
1つの実施形態では、前記治療処置は化学療法または放射線療法である。
【0044】
1つの実施形態では、前記方法の癌試料は、細胞または組織試料である。
【0045】
好ましくは、前記細胞または組織試料を、SPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えばmRNA)の発現または細胞外レベルの測定の前に溶解する。
【0046】
より好ましくは、SPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えばmRNA)の発現または細胞外レベルの測定の前に、前記死亡または組織試料からポリヌクレオチドまたはポリペプチド抽出物を得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、ヒトSPARCのモジュール構造及び合成ペプチドの位置と機能である。3つのドメインとそれらの残基番号を、YanとSage,1999,J.Histochem.&Cytochem.47(12):1495−1505に述べられているように示している。
【図2】図2は、様々なSPARCファミリータンパク質のドメイン機構である。FSはフォリスタチン様ドメイン、TYはサイログロブリン様ドメイン、ECは、Vannahmeら,2002,J.Biol.Chem.277(41):37977−37986に述べられている細胞外カルシウム結合ドメインを表す。他のタンパク質と相同性がないタンパク質は空白の枠として示している。シグナルペプチドは示していない。
【図3】図3は、本発明の1つの実施形態に従って化学療法感受性及び抵抗性細胞のコロニー形成アッセイを示す写真である。
【図4】図4は、本発明の1つの実施形態に従って化学療法感受性及び抵抗性細胞のTUNELアッセイを示す写真である。
【図5】図5(5A、B)は、本発明の1つの実施形態による、化学療法抵抗性細胞系統におけるSPARCポリペプチドのレベル低下を示す写真である。
【図6】図6は、本発明の1つの実施形態による、抵抗性表現型を逆転させることに関する、外因性SPARCに対する抵抗性MIP101細胞の応答を示すTunelアッセイである。
【図7】図7は、本発明の1つの実施形態による、SPARCポリペプチドを発現する組換え細胞を示す免疫ブロットアッセイである。
【図8】図8は、本発明の1つの実施形態による、化学療法剤への曝露後にアポトーシスを受けるように誘導された細胞個体群を示すFACS分析である。
【図9】図9は、本発明の1つの実施形態による、化学療法剤への曝露後の細胞のアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の1つの実施形態による、化学療法剤に対するSPARC形質転換体の応答を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明の1つの実施形態による、2匹の動物における6サイクルの化学療法後にSPARC形質転換体を移植した動物での完全な腫瘍の後退を示すグラフ表示である。
【図12】図12(12、12−1〜12−106)は、本発明の1つの実施形態による、SPARCファミリー成員のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を含む図である。
【図13】図13(13、13−1〜13−71)は、本発明の1つの実施形態による、種々のSPARCファミリーポリペプチド及びポリヌクレオチドの間での配列アラインメントを示す図である。
【図14】図14は、本発明の1つの実施形態による、SPARC過剰発現細胞の腫瘍異種移植への化学療法の作用を示す。
【図15】図15は、本発明の1つの実施形態による、SPARC過剰発現細胞の腫瘍異種移植への放射線療法の作用を示す。
【図16】図16は、本発明の1つの実施形態による、腹腔内経路でのSPARCとの併用療法によるMIP 101腫瘍異種移植の治療を示す。
【図17】図17は、本発明の1つの実施形態による、皮下経路でのSPARCとの併用療法によるMIP 101腫瘍異種移植の治療を示す。
【図18】図18は、本発明の1つの実施形態による、SPARCとの併用療法によるMIP/5FU腫瘍異種移植の治療を示す。
【図19】図19(19A〜19C)は、本発明の1つの実施形態による、化学療法に感受性及び抵抗性である結腸直腸癌細胞系統におけるヒトSPARCmRNA及びタンパク質レベルを示す。
【図20】図20(20A〜20D)は、本発明の1つの実施形態による、ヒト結腸上皮におけるSPARCタンパク質発現を示す。
【図21】図21(21A〜21C)は、本発明の1つの実施形態による、化学療法に対する細胞の感受性に影響を及ぼすSPARCの作用の評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の上記の特徴は、添付の図面を照合しながら、以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解される。
【0049】
本発明は、SPARCファミリー及び癌治療に対する感作に基づく。
【0050】
(定義)
ここで使用する、「SPARCファミリーポリペプチド」は、細胞外タンパク質のファミリーのポリペプチド(そのフラグメントまたは変異体を含む)を指す。この細胞外タンパク質のファミリーは、SPARC、及びSMOC−1、hevin、SC1、QR−1、フォリスタチン様タンパク質(TSC−36)及びtesticanなどのファミリーの他の成員を含む(例えば、参照してここに組み込まれる、Vannahmeら,(2002),J.Biol.Chem.277(41):37977−37986;Johnston,I.G.,Paladino,T.,Gurd,J.W.,及びBrown,1.R.(1990)Neuron 2,165−176;Guermah,M.,Crisanti,P.,Laugier,D.,Dezelee,P.,Bidou,L.,Pessac,B.,及びCalothy,G.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88,4503−4507;Shibanuma,M.,Mashimo,J.,Mita,A.,Kuroki,T.,及びNose,K.(1993)Eur.J.Biochem.217,13−19;Alliel,P.M.,Perin,J.P.,Jolles,P.,及びBonnet,F.J.(1993)Eur.J.Biochem.214,347−350参照)。SPARCファミリーポリペプチドは、典型的には3つの独立した折りたたみドメインから成る(参照してここに組み込まれる、YanとSage,1999,J.Histochem.&Cytochem.,47(12):1495−1505)。N−末端ドメイン(例えばSPARC内の2個の隣接するN末端Glu3及びGlu4)は負に荷電しており、2番目のドメイン(例えばSPARC内の残基53−137)は、典型的パターンでは10個のシステインを有するフォリスタチン(FS)1に相同であり、C末端細胞外カルシウム結合(EC)ドメイン(例えばSPARC内の残基138−286)は、各々がX線構造で結合カルシウムイオンを備える、2つのEFハンドカルシウム結合モチーフを有する(Maurer,P.,Hohenadl,C.,Hohenester,E.,Goring,W.,Timpl,R.,及びEngel,J.(1995)J.Mol.Biol.253,347−357;Hohenester,E.,Maurer,P.,Hohenadl,C.,Timpl,R.,Jansonius,J.N.,及びEngel,J.(1996)Nat.Struct.Biol.3,67−73)。
【0051】
「SPARCファミリーポリペプチド」という用語は、本発明によれば、完全長ポリペプチドまたはそのフラグメント、野生型ポリペプチドまたはその何らかの変異体を包含する。「SPARCファミリーポリヌクレオチド」は、SPARCポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えばDNAまたはmRNA)分子、またはそのフラグメントである。(a)配列番号1−17から成る群より選択されるSPARCファミリーポリペプチドまたは遺伝子;(b)(a)のSPARCファミリーポリペプチドに少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは少なくとも60%の相同性を有するポリペプチドをコードする遺伝子;(c)少なくとも50アミノ酸の長さである、(a)−(b)のポリペプチドフラグメント;(d)(a)、(b)または(c)のポリペプチドを含む融合ポリペプチド;(e)(a)、(b)、(c)のポリペプチドまたは(d)の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(f)ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で(e)のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【0052】
「SPARC」ポリペプチドという用語は、配列番号1−17を指し、「SPARC遺伝子」という用語は、配列番号1−17の対応するヌクレオチド配列、配列番号18−34を指す。SPARCの生物活性を保持するこれらの配列の変形は、これらの配列の等価物であるとみなされる。SPARC遺伝子の生物活性は、それが化学療法抵抗性細胞において下方調節されることである。この遺伝子はまた、化学療法に感受性である細胞では過剰発現されうる。SPARCポリペプチドの生物活性は、化学療法抵抗性細胞を化学療法に対して感作することである。
【0053】
SPARCファミリーポリペプチドの成員に関して、ファミリー成員の生物活性を保持するそれらの配列の変形は、これらの配列の等価物であるとみなされる。SPARC遺伝子ファミリー成員の生物活性は、その遺伝子が化学療法抵抗性細胞において下方調節されること、すなわち化学療法感受性細胞に比べて、少なくとも25%、例えば30%、40%、50%、75%、100%(1倍)、2倍、4倍または5倍またはそれ以上低い発現である。この遺伝子はまた、化学療法に感受性である細胞では過剰発現されうる。SPARCファミリーポリペプチド成員の生物活性は、化学療法抵抗性細胞を化学療法に対して感作すること、すなわちSPARCファミリーポリペプチドの不在下での治療感受性に比べて、少なくとも25%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍またはそれ以上、化学療法に対する応答を上昇させることである。
【0054】
ここで定義する「組織」は、生物において特定機能を実施する細胞の集合体である。ここで使用する「組織」という用語は、特定の生理学的領域からの細胞物質を指す。特定組織中の細胞は、いくつかの異なる細胞型を含みうる。これの非制限的な例は、ニューロン及びグリア細胞をさらに含む脳細胞、並びに毛細血管内皮細胞及び血液細胞である。
【0055】
「細胞型」または「組織型」という用語は、例えばそこから腫瘍が発現する起源の組織を指す。そのような組織(細胞型)は、例えば、限定を伴わずに、血液、結腸直腸、乳房、食道、肝細胞、前立腺、卵巣、甲状腺、膵臓、子宮、精巣、下垂体、腎臓、胃、食道及び直腸を含む。
【0056】
ここで使用する、「癌」という用語は、正常な増殖制御に対する感受性を喪失した細胞の増殖によって引き起こされるまたは前記増殖を特徴とする増殖障害疾患を指す。本明細書において使用する「癌」という用語は、腫瘍及び他のいかなる増殖性疾患も包含する。同じ組織型の癌は同じ組織に生じ、それらの生物学的特徴に基づいて種々のサブタイプに分類されうる。癌は、黒色腫、白血病、星状細胞種、グリア芽細胞種、リンパ腫、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び膵臓、乳房、甲状腺、卵巣、子宮、精巣、下垂体、腎臓、胃、食道及び直腸の癌から成る群からの1以上より選択されうる。
【0057】
ここで使用する、「感作すること」という用語は、治療処置に対して応答する癌試料または哺乳動物の感受性を増大させることまたは抵抗性を低減させることを指す。治療処置に対する感受性上昇または感受性低下は、個々の治療についての当技術分野で公知の方法及び、細胞増殖アッセイ(Tanigawa N,Kern DH,Kikasa Y,Morton DL,Cancer Res 1982;42:2159−2164)、細胞死アッセイ(Weisenthal LM,Shoemaker RH,Marsden JA,Dill PL,Baker JA,Moran EM,Cancer Res 1984;94:161−173;Weisenthal LM,Lippman ME,Cancer Treat Rep 1985;69:615−632;Weisenthal LM,In:Kaspers GJL,Pieters R,Twentyman PR,Weisenthal LM,Veerman AJP,編,白血病とリンパ腫の薬物耐性(Drug Resistance in Leukemia and Lymphoma.)Langhorne,PA:Harwood Academic Publishers,1993:415−432;Weisenthal LM,Contrib Gynecol Obstet 1994;19:82−90)を含むが、これらに限定されない、ここで以下に述べる方法に従って測定される。感受性または抵抗性はまた、一定期間、例えばヒトに関しては6ヶ月間及びマウスに関しては4−6週間にわたって腫瘍サイズの減少を測定することにより、動物において測定しうる。ある組成物または方法は、治療感受性の上昇または抵抗性の低下が、そのような組成物または方法の不在下での治療感受性または抵抗性に比べて、25%またはそれ以上、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%以上、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍またはそれ以上である場合、治療処置に対する応答を感作する。治療処置に対する感受性または抵抗性の判定は当技術分野において慣例的であり、通常の臨床医の技術範囲内である。
【0058】
ここで使用する、「投与する」または「投与すること」という用語は、疾患または状態(例えば癌)を予防するまたは治療するために、何らかの手段によって組成物(例えば治療薬)を哺乳動物の体内に導入することを指す。
【0059】
ここで使用する、「治療すること」、「治療」、「療法」及び「治療処置」という用語は、治療的療法または予防的療法(prophylactic therapy or preventative therapy)を指す。「予防的療法」の一例は、標的疾患(例えば癌)またはそれに関連する状態の予防または軽減である。治療を必要とする対象は、既に疾患または状態を有する対象ならびに予防すべき疾患または状態に罹患しやすい対象を包含する。ここで使用する「治療すること」、「治療」、「療法」及び「治療処置」という用語はまた、疾患または関連状態に対抗するための哺乳動物の管理及び看護を表し、疾患または状態の症状、副作用または他の合併症を緩和するための組成物の投与を包含する。癌のための治療処置は、手術、化学療法、放射線療法、遺伝子治療及び免疫療法を含むが、これらに限定されない。
【0060】
「治療上有効な量」とは、哺乳動物において疾患または状態の1以上の症状を軽減する(熟達した医師が判断して、ある程度まで)量を意味する。加えて、「治療上有効な量」とは、疾患または状態に関連するもしくはその原因となる生理的または生化学的パラメータを、部分的にまたは完全に、正常に戻す量を意味する。当技術分野における熟達した臨床医は、特定疾患状態または障害を治療するまたは予防するために組成物を静脈内、皮下、腹腔内、経口などの経路でまたは吸入を通して投与するとき、組成物の治療上有効な量を決定することができる。治療上有効であるために必要な組成物の正確な量は、多くの患者特有の配慮に加えて、例えば活性物質の比活性、用いる送達装置、薬剤の物理的特徴、投与の目的などの数多くの因子に依存する。治療上有効であるために投与しなければならない組成物の量の決定は、当技術分野において慣例的であり、通常の臨床医の技術範囲内である。
【0061】
ここで使用する、「物質(agent)」または「薬剤」または「治療薬」という用語は、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生体高分子、または治療特性を有すると考えられる細菌、植物、真菌または動物(特に哺乳動物)細胞または組織などの生体物質から作製される抽出物を指す。前記物質または薬剤は、精製、実質的に精製または部分的に精製されうる。本発明に従った「物質」はまた、放射線療法剤を包含する。
【0062】
ここで使用する、「調節」または「調節すること」は、所望/選択応答が、ある物質の存在下でその物質の不在下よりも効率よく(例えば少なくとも10%、20%、40%、60%またはそれ以上)、より迅速に(例えば少なくとも10%、20%、40%、60%またはそれ以上)、及び/またはより容易に(例えば少なくとも10%、20%、40%、60%またはそれ以上)誘導されることを意味する。
【0063】
ここで使用する、「治療処置に対する抵抗性」という用語は、治療に対する癌試料または哺乳動物の獲得または自然抵抗性、すなわち治療処置に対して非応答性であるかもしくは低いまたは限られた応答を有すること、例えば治療処置に対して25%またはそれ以上、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍またはそれ以上の応答低下を有することを指す。応答の低下は、抵抗性を獲得する前の同じ癌試料または哺乳動物と比較することによって、もしくはその治療処置に対して抵抗性を有さないことが知られている、異なる癌試料または哺乳動物と比較することによって、測定される。化学療法剤に対する典型的な獲得抵抗性は「多剤耐性」と呼ばれる。多剤耐性は、P−糖タンパク質によって媒介されうるまたは他の機構によって媒介されうるか、もしくは哺乳動物が多剤耐性微生物または微生物の組合せに感染したときに起こりうる。治療処置に対する応答性の判定は当技術分野において慣例的であり、通常の臨床医の技術範囲内であって、例えば「感作すること」の項で前述したような細胞増殖アッセイ及び細胞死アッセイによって測定することができる。
【0064】
ここで使用する、「化学療法」という用語は、癌細胞(白血病及びリンパ腫を含む)を破壊するための薬剤の使用を指す。50以上の異なる化学療法剤が存在し、一部はそれら自体で投与されるが、しばしばいくつかの薬剤を組み合わせることがある(併用化学療法として知られる)。化学療法は、一部のタイプの癌を治療するために単独で使用しうる。時には、手術、放射線療法、免疫療法またはそれらの組合せのような他の種類の治療と共に使用することができる。
【0065】
ここで使用する、「radiation therapy」とも呼ばれる「放射線療法(radiotherapy)」は、電離放射線による癌及び他の疾患の治療を指す。電離放射線は、治療する領域(「標的組織」)内の細胞を、それらの遺伝物質を損傷して、これらの細胞が増殖し続けることを不可能にすることによって損傷するまたは破壊するエネルギーを付与する。放射線は癌細胞と正常細胞の両方を損傷するが、後者は自ら修復し、正しく機能することができる。放射線療法は、皮膚、舌、喉頭、脳、乳房または子宮頸などの限局性固形腫瘍を治療するために使用しうる。また、白血病及びリンパ腫(それぞれ血液形成細胞及びリンパ系の癌)を治療するために使用できる。
【0066】
ここで使用する、「治療プロトコル」という用語は、疾患の治療ために下す決定を通知する過程を指す。ここで使用するとき、治療プロトコルは、治療アプローチ及び結果を含む患者情報が入手可能な哺乳動物からの複数の正常及び疾患組織試料中の同じポリペプチドのレベルに対する、患者の組織試料中の1以上の細胞増殖関連ポリペプチドの比較レベルに基づく。
【0067】
ここで使用する、「生物学的特徴」という用語は、細胞型、及び/またはその細胞が得られた組織型、細胞/組織の形態学的特徴、及び細胞/組織内での生体分子の発現を含みうる、1以上の細胞または組織の表現型及び/または遺伝子型を指す。
【0068】
ここで使用する、「試料」という用語は、血液、血清、血漿、尿、乳頭吸引液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、骨、骨髄、精巣または卵巣、脳、結腸及び肺を含むがこれらに限定されない、哺乳動物の身体に由来する物質を指す。本発明における「試料」はまた、培養細胞及び組織でもよい。
【0069】
ここで使用する、「癌試料」は、癌、すなわち異なるまたは異常な組織の新生長物から生じる試料を指す。「癌試料」は、細胞または組織資料でありうる。癌細胞は、癌組織の一部として存在しうるか、またはそれらが生じる癌組織から分離した浮遊細胞として存在しうる。癌試料は、本発明によれば、インビトロまたはエキソビボでの癌の試験のために使用しうる。
【0070】
ここで使用する、「非癌試料」は、正常組織から得られる細胞または組織試料を指す。試料は、形態学及び他の診断試験に基づき、当技術分野の技術の1つによって非腫瘍試料と判断されうる。
【0071】
ここで使用する、「哺乳類」という用語は、ヒト、あるいは家畜または実験動物(例えばモルモットまたはマウス)などの他の動物を指す。
【0072】
ここで使用する、「特異的ハイブリダイゼーション」または「選択的ハイブリダイゼーション」または「ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーション」は、2つのポリヌクレオチド配列が実質的に相補的であるとき、すなわち配列間に少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約80%または90%の同一性が存在し、同一性の領域が少なくとも10ヌクレオチドを含むときに起こるハイブリダイゼーションを指す。1つの実施形態では、前記配列は、42℃で一晩配列をインキュベートし、次いでストリンジェント洗浄(65℃で0.2XSSC)した後にストリンジェント条件下でハイブリダイズする。典型的には、ストリンジェント条件は、塩濃度がpH7.0−8.3で少なくとも約0.01−1.0M Naイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば約6−50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃である条件である。ストリンジェント条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても達成しうる。一般に、ストリンジェント条件は、当技術分野で慣例的な方法を用いて算定される、規定イオン強度及びpHでの特定配列についての融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。
【0073】
ここで使用する、「相同性」という用語は、コンピュータを使用したアルゴリズムの履行によって実施しうる、配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸のいずれか)の最適アラインメントを指す。例えばポリヌクレオチドに関する「相同性」は、デフォルトパラメータを使用したBLASTNバージョン2.0での分析によって決定しうる。ポリペプチド(すなわちアミノ酸)に関する「相同性」は、比較するポリペプチドまたはフラグメントを整列し、それらの間のアミノ酸同一性または類似性の程度を判定する、デフォルトパラメータを使用したBLASTPバージョン2.2.2などのプログラムを用いて決定しうる。アミノ酸「相同性」は、保存的置換、すなわちポリペプチド内の所与のアミノ酸を同様の特徴を有するさらに別のアミノ酸によって置換するものを包含する。保存的置換として典型的に見られるのは以下の置換である:Ala、Val、Leu及びIleなどの脂肪族アミノ酸のさらに別の脂肪族アミノ酸による置換;SerのThrによる置換またはその逆の置換;AspまたはGluなどの酸性残基のさらに別の酸性残基による置換;AsnまたはGlnなどのアミド基を担持する残基のアミド基を担持するさらに別の残基による置換;LysまたはArgなどの塩基性残基のさらに別の塩基性残基との交換;及びPheまたはTyrなどの芳香族残基のさらに別の芳香族残基による置換。「60%以上の相同性」は、2個以上のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間での例えば60%。70%、75%、80%、85%、90%、95%及び100%(同一)までの同一性を包含する。
【0074】
ここで使用する、「ポリヌクレオチド」という用語は、当業者には容易に認識されるように、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成形態及び混合ポリマー、センス及びアンチセンス鎖の両方を包含し、化学的または生化学的に修飾されていてもよく、もしくは非天然または誘導体化ヌクレオチド塩基を含んでいてもよい。そのような修飾は、例えば標識、メチル化、1以上の天然に生じるヌクレオチドの類似体による置換、非電荷結合(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)、電荷結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)、突出(pendent)成分(例えばポリペプチド)、及び修飾結合(例えばαアノマーポリヌクレオチド等)などのヌクレオチド間修飾を包含する。また、水素結合及び他の化学的相互作用を通して指定配列に結合する能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子も包含される。
【0075】
ここで使用する、「突然変異」という用語は、野生型と比較した遺伝子内のまたは遺伝子外の調節配列内の、ヌクレオチド配列の変化を指す。その変化は、欠失、置換、点突然変異、多数のヌクレオチドの突然変異、転位、逆位、フレームシフト、ナンセンス突然変異、あるいは当該ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列を、発現及び機能性が正常に起こる範囲内である機能性細胞において正常に発現される遺伝子のものと区別する他の形態の異常でありうる。
【0076】
「ポリペプチド」と「タンパク質」は、ここではアミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に使用される。「組換えタンパク質」という用語は、タンパク質のアミノ酸配列をコードする組換えDNAの発現によって生産されるタンパク質を指す。ポリヌクレオチド及び組換え生産されたポリペプチド、及びそれらのフラグメントまたは類似体は、当技術分野で公知であり、参照してここに組み込まれる、Maniatisら,分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第二版,(1989),Cold Spring Harbor,N.Y.,及びBergerとKimmel,酵素学における手法(Methods in Enzymology),Volume 152,分子クローニング技術への手引き(Guide to Molecular Cloning Techniques)(1987),Academic Press,Inc.,San Diego,カリフォルニア州、に述べられている方法に従って作製しうる。
【0077】
ここで使用する、ポリペプチドに言及するとき(「所与のタンパク質のフラグメント」におけるように)の「フラグメント」という用語は、そのポリペプチドのより短い部分を指す。フラグメントは、4アミノ酸残基から、全体のアミノ酸配列から1個のアミノ酸を減じたものまでのサイズ範囲をとりうる。1つの実施形態では、本発明は、ポリペプチドの「機能性フラグメント」を考慮する。そのようなフラグメントは、本発明によれば、おそらく完全長ポリペプチドに関して認められるよりも低い感作作用を有するが、治療処置に対して癌試料または癌哺乳動物を感作する能力を保持しているという点で「機能性」である。ポリペプチドのそのような「フラグメント」は、好ましくは10アミノ酸以上の長さ、より好ましくは50アミノ酸以上の長さ、さらに一層好ましくは100アミノ酸以上の長さである。SPARCファミリーポリペプチドの「フラグメント」は、本発明によれば、SPARCファミリー成員の3つの保存されたドメイン、すなわち酸性N末端ドメイン、フォリスタチン様ドメイン及び細胞外カルシウム結合ECドメインの1つ以上を含みうる。
【0078】
ここで使用する、特定ポリペプチドの「変異体」は、その特定ペプチド全体またはそのフラグメントのいずれかに実質的に類似のポリペプチドを指す。「実質的に類似」とは、変異体が、所望機能、すなわち、おそらく変異体の感作作用は野生型ポリペプチドに関して認められるものよりも低いが、治療処置に対して癌試料または哺乳動物を感作する機能を有する最終構築物に達するように作製されていることを意味する。そのような変異体は、例えば特定ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基の欠失、挿入または置換を含む。加えて、「変異体」はまた、SPARCファミリーポリペプチドと第二のポリペプチドの間の融合ポリペプチドでもよい。欠失、挿入、置換及び融合のいかなる組合せも作製しうる。
【0079】
ここで使用する、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関して使用するときの「単離」または「精製」は、天然に生じるヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、その正常な細胞環境から取り出されていることまたは非天然環境で合成される(例えば人工的に合成される)ことを意味する。従って、単離」または「精製」配列は、無細胞溶液中に存在するかまたは異なる細胞環境に位置しうる。「精製」という用語は、そのヌクレオチドまたはアミノ酸配列が存在する唯一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドであることを意味するのではなく、天然でそれに結合している非ポリヌクレオチドまたはポリペプチド物質を基本的に含まない(約90−95%、99−100%まで純粋)ことを意味する。
【0080】
ここで使用する、「コードする」という用語は、ヌクレオチド(すなわちrRNA、tRNA、他のRNA分子)またはアミノ酸の規定配列を有する、生物学的過程において他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型として働く、染色体またはmRNA内の遺伝子のような、ポリヌクレオチド内のヌクレオチドの特定配列の固有の特性及びそれから生じる生物学的特性を指す。従って、その遺伝子によって生産されるmRNAの転写及び翻訳が細胞または他の生体系においてタンパク質を生産する場合、遺伝子はタンパク質をコードする。mRNA配列と同一であり、通常は配列表において提供されるコード鎖、及び遺伝子またはcDNAの、転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、タンパク質またはその遺伝子またはcDNAの他の産物をコードすると称されうる。タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、遺伝子暗号の縮重のために、異なるヌクレオチド配列を有するが、タンパク質の同じアミノ酸配列をコードするいかなるポリヌクレオチドも包含する。タンパク質をコードするポリヌクレオチド及びヌクレオチド配列は、イントロンを含んでもよく、またゲノムDNAであってもよい。
【0081】
ここで使用する、「ベクター」という用語は、外来性または内在性ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するために使用されるポリヌクレオチド化合物を指す。ベクターは、1以上のポリペプチド分子をコードしうるヌクレオチド配列を含む。天然の状態または組換え操作を受けた、プラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージは、少なくとも1つの所望単離ポリヌクレオチド分子を含む組換えベクターを提供するために一般的に使用されるベクターの非制限的な例である。
【0082】
ここで使用する、「形質転換」という用語または「形質移入」という用語は、外来性ポリヌクレオチド(例えばDNA)を細胞に導入するための様々な当技術分野で認識されている手法を指す。外来性DNAが細胞膜の内部に導入されたとき、細胞は「形質転換」または「形質移入」される。「形質転換」または「形質移入」という用語及び各々に由来する用語は、交換可能に使用される。
【0083】
ここで使用する、「発現ベクター」は、細胞によって転写されうるまたは翻訳されうるポリペプチド(すなわちタンパク質)をコードするポリヌクレオチドを有する組換え発現カセットを指す。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスまたはポリヌクレオチドフラグメントでありうる。
【0084】
「発現」という用語は、細胞におけるまたは無細胞系におけるタンパク質またはヌクレオチド配列の生産を指し、mRNA産物への転写、転写後修飾及び/またはその産物をコードするDNAからのタンパク質産物またはポリペプチドへの翻訳、並びに場合により翻訳後修飾を包含する。
【0085】
ここで使用する、「発現レベルを比較すること」という用語は、2以上の試料においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドの差異発現を比較することを指す。
【0086】
ここで使用する、「差異発現」という用語は、2つ以上の試料における、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド発現パターンの定量的並びに定性的な相違を指す。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その発現が、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド検出のための公知の方法(例えば電気泳動)によって、1つの試料では検出可能であるがさらに別の試料では検出不能である場合、「差異的に発現される」と表される。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドはまた、2つの試料の間でのその発現の定量的な差異(すなわちμg、μmolまたはコピー数で測定した、上昇または低下)が、約20%、約30%、約50%、約70%、約90%から約100%(約2倍)またはそれ以上、約1.2倍、2.5倍、5倍、10倍、20倍、50倍またはそれ以上までを含む。「差異的に発現される」遺伝子転写産物は、2つ以上の試料間で異なるコピー数で認められるmRNA転写産物を意味する。
【0087】
ここで使用する、「増大した量のSPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチド」は、対照細胞と比較して、細胞における少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上、または2倍、3倍、4倍、5倍またはそれ以上高いレベルの発現を指す。SPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドを発現する細胞は、その発現が、化学療法抵抗性細胞と比較したとき前記で定義したとおりである場合、高い量のそのようなポリペプチドまたはポリヌクレオチドを有すると表される。
【0088】
「分泌タンパク質」という用語は、細胞外にある少なくとも一部分を有するタンパク質を指し、完全に細胞外にある(すなわち細胞に結合していない)タンパク質を包含する。「分泌のレベル」は、細胞外画分における分泌タンパク質のレベル(すなわち量)を指す。
【0089】
ここで使用する、「増殖」という用語は、細胞分裂の速度及び細胞が分裂し続ける能力を指す。1つの完全な細胞分裂過程を「周期」と称する。「細胞増殖の上昇」とは、細胞が、その細胞型の正常細胞に比べてより速い速度の細胞分裂を有するように細胞分裂速度を上昇させること、もしくは各々の細胞分裂の速度は変化させずに細胞分裂がより多いサイクル、例えば10%またはそれ以上(例えば20%、30%、40%、50%、2倍、5倍、10倍またはそれ以上までの上昇)にわたって継続するのを可能にすることを意味する。「細胞増殖の低下」とは、細胞が、その細胞型の正常細胞に比べてより低い速度の細胞分裂を有するように細胞分裂速度を低下させること、もしくは各々の細胞分裂の速度は変化させずに細胞分裂のサイクル数を減少させること、例えば10%またはそれ以上(例えば20%、30%、40%、50%、2倍、5倍、10倍またはそれ以上までの低下)を意味する。
【0090】
本発明は、癌治療処置を感作するための組成物及び方法を提供する。そのような感作組成物及び方法は、治療に抵抗性である患者の応答を増強する上で特に有用である。それらはまた、例えばより小さな強度(すなわち用量)の治療に対する患者の応答を増強することによって、癌治療の副作用を低減する上でも有用である。本発明の組成物は、治療処置物質の用量を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%及び60%まで低下させうる。
【0091】
(SPARCファミリーポリペプチド及びポリヌクレオチド)
1つの実施形態では、本発明は、(a)配列番号1−17から成る群より選択されるSPARCファミリーポリペプチド;(b)(a)の前記SPARCファミリーポリペプチドに少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド;(c)少なくとも50アミノ酸の長さである、(a)−(b)のポリペプチドフラグメント;及び(d)(a)−(c)のポリペプチドを含む融合ポリペプチドを提供する。
【0092】
本発明によって提供されるSPARCファミリーポリペプチドは、野生型ポリペプチドまたはその変異体でありえ、完全長ポリペプチドまたはそのフラグメントでありうる。SPARCファミリーポリペプチドは、野生型または完全長ポリペプチドと比較したとき変異体またはフラグメントポリペプチドに関してはより低い活性が存在しうるが、癌試料または患者を治療処置に対して感作する機能を保持する限り、本発明の範囲内である。
【0093】
配列相同性に基づき、SMOC−1(Vannahmeら,2002,J.Biol.Chem.277(41):37977−37986)、hevin(Bendik I,Schraml P,Ludwig CU,Cancer Res.1998;58(4):626−9)、SC1(Johnston IG,Paladino T,Gurd JW,Brown IR,Neuron.1990 4(1):165−76)、QR−1、フォリスタチン様タンパク質(TSC−36)(Shibanuma,M.,Mashimo,J.,Mita,A.,Kuroki,T.及びNose,K,1993,Eur.J.Biochem.217(1)13−19)及びtestican(Alliel,P.M.,Perin,J.P.,Jolles,P.及びBonnet,F.J,1993,Eur.J.Biochem.214(1),347−350)などの、SPARCファミリーのいくつかの成員が特定された。本発明のSPARCファミリーポリペプチドは、SPARC及び当技術分野で公知のまたはここで述べられているような、その特定されたファミリー成員のいずれかを含むが、それらに限定されない。
【0094】
様々なポリヌクレオチド配列のアラインメントは、当業者が、タンパク質の保存された部分(すなわち2つ以上の配列の間で共通する部分)並びに非保存部分(すなわち2つ以上の配列にユニークな部分)を選択することを可能にする。1つの実施形態では、本発明は、10アミノ酸以上の長さ、より典型的には50アミノ酸以上の長さの保存されたフラグメントを考慮する。好ましくは、本発明のSPARCファミリーポリペプチドは、SPARCファミリー成員の間で保存された、1または2または3ドメイン(すなわち酸性N末端ドメイン、フォリスタチン様ドメイン及び/またはECドメイン)を含む。
【0095】
野生型SPARCファミリータンパク質の治療感作フラグメントまたは変異体は、欠失突然変異、点突然変異、ここで以下に述べるような及び参照してここに組み込まれる、J.Sambrook,E.F.Fritsch,及びT.Maniatis、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第二版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク,1989,及びAusubelら,分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),1994に述べられているような融合を含むがこれらに限定されない、当業者に既知の慣例的配列操作によって作製されうる。
【0096】
変異体ポリペプチドをコードするDNAにおける突然変異は、読み枠を変化させてはならず、好ましくは二次mRNA構造を生成しうる相補的領域を創造しない。遺伝子レベルでは、これらの変異体は、ペプチド分子をコードするDNA内のヌクレオチドの部位指定突然変異誘発、それにより変異体をコードするDNAを生産すること、及びその後組換え細胞培養においてそのDNAを発現することによって作製される。
【0097】
(SPARCファミリーポリペプチドのインビトロ生産及び精製)
本発明によって提供されるSPARCファミリーポリペプチドは、何らかの公知の方法、例えば組換えDNA手法を用いて原核または真核細胞において生産しうる。組換え宿主細胞法は、ここで以下に述べるように、または例えば、その開示が参照してここに組み込まれる、T.Maniatisら,「分子クローニング(Molecular Cloning)」第二版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.T.(1989);日本生化学界(Biochemical Society of Japan)編,「続生化学実験講座 1,遺伝子研究法II(Lectures on Biochemical Experiments(Second Series;1),Methods for Gene Study II)」,東京科学同人,日本(1986);日本生化学界(Biochemical Society of Japan)編,「新生化学実験講座2、核酸III(組換えDNA技術)(New Lectures on Biochemical Experiments 2,Nucleic Acids III(Recombinant DNA Technique))」,東京科学同人,日本(1992);R.Wu(編),「酵素学における手法(Methods in Enzymology)」Vol.68,Academic Press,ニューヨーク(1980);R.Wuら(編),「酵素学における手法」,Vols.100および101,Academic Press,ニューヨーク(1983);R.Wuら(編),,「酵素学における手法」,Vols.153,154および155,Academic Press,ニューヨーク(1987)等に開示されている方法によって、並びにここで引用する参考文献の中で開示されている手法によって、実施しうる。そのような手法及び手段はまた、本発明の目的に応じて従来の手法から個別に修正/改善されたものでありうる。
【0098】
SPARCファミリーポリペプチドは、組換え宿主細胞から発現され、精製されうる。組換え宿主細胞は、大腸菌などの細菌、酵母などの真菌細胞、ショウジョウバエ及びカイコ由来の細胞系統を含むがこれらに限定されない昆虫細胞、及び哺乳動物細胞及び細胞系統を含むがこれらに限定されない、原核または真核細胞でありうる。
【0099】
一部の実施形態では、本発明のSPARCファミリーポリペプチドを発現し、精製するとき、封入体(不溶性分画である)の形成を防ぐためにタンパク質の溶解度を改善するための手法を使用し、これにより大量のポリペプチドが得られる。封入体に蓄積されるSPARCは、その生理的活性を保持しない不活性型SPARCである。
【0100】
精製SPARCファミリーポリペプチドの溶解度は、当技術分野で公知であり、ここで以下に述べるような方法によって改善されうる。
【0101】
例えば溶解度はまた、完全長SPARCファミリーポリペプチドではなく、機能的フラグメントを発現することによって改善されうる。発現されるフラグメントは、活性は完全長ポリペプチドの活性より低くてもよいが、ここで述べる感作活性を保持すべきである。
【0102】
1つの実施形態では、SPARCファミリー成員の3つの保存されたドメインのうちの1または2または3ドメインを含むフラグメントを発現する。
【0103】
加えて、発現されるタンパク質(例えば大腸菌において)の溶解度を高めるために、増殖温度を低下させること、より弱いプロモーターを使用すること、より低いコピー数のプラスミドを使用すること、誘導物質濃度を低下させること、Georgiou,G.およびValax,P.(1996,Current Opinion Biotechnol.7,190−197)の中で述べられているように増殖培地を変えることにより、タンパク質合成の速度を低下させることができる。これはタンパク質合成の速度を低下させ、通常、より可溶性のタンパク質が得られる。また、適切な折りたたみまたはタンパク質安定性のために不可欠な補欠分子族または補因子を添加するか、もしくは増殖の間の培地のpH変動を制御するための緩衝液を添加するか、もしくは大部分の富栄養培地(LB、2xYTなど)中に存在するラクトースによるlacプロモーターの誘導を抑制するために1%グルコースを添加することができる。ポリオル(例えばソルビトール)及びスクロースも培地に添加しうる。これらの添加によって引き起こされる浸透圧の上昇が、天然タンパク質構造を安定化する、細胞中の浸透圧保護物質(osmoprotectant)の蓄積を導くからである。エタノール、低分子量チオール及びジスルフィド、及びNaClを添加してもよい。加えて、シャペロン及び/またはフォルダーゼを所望ポリペプチドと共発現させてもよい。分子シャペロンは、折りたたみ中間体と一過性に相互作用することによって適切な異性化及び細胞ターゲティングを促進する。最も良く特性決定されている大腸菌シャペロン系は、GroES−GroEL、DnaK−DnaJ−GrpE、ClpBである。フォルダーゼは、折りたたみ経路に沿った速度制限工程を促進する。3種類のフォルダーゼが重要な役割を果たす:ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPI)、ジスルフィドオキシドレダクターゼ(DsbA)及びジスルフィドイソメラーゼ(DsbC)、タンパク質システインの酸化及びジスルフィド結合の異性化の両方を触媒する真核生物タンパク質であるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)。これらのタンパク質の1以上と標的タンパク質の共発現は、より高いレベルの可溶性タンパク質を導きうる。
【0104】
本発明のSPARCファミリーポリペプチドは、その溶解度と生産を改善するために融合タンパク質として生産しうる。融合タンパク質は、SPARCファミリーポリペプチド及びインフレームで融合した第二ポリペプチドを含む。第二ポリペプチドは、それが融合するポリペプチドの溶解度を改善するための当技術分野で公知の融合パートナー、例えばNusA、バクテリオフェリチン(BFR)、GrpE、チオレドキシン(TRX)及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)でありうる。Madison,Wis.based Novagen Inc.は、NusA−標的融合体の形成を可能にするpET43.1ベクターシリーズを提供している。DsbA及びDsbCはまた、融合パートナーとして使用したとき発現レベルにプラスの作用を示し、これにより、より高い溶解度を達成するためにSPARCポリペプチドと融合するのに使用できる。
【0105】
1つの実施形態では、SPARCファミリーポリペプチドを、その全体が参照してここに組み込まれる、米国特許第6,387,664号に述べられているように、SPARCファミリーポリペプチドと融合パートナーであるチオレドキシンを含む融合ポリペプチドとして生産する。チオレドキシン−SPARC融合体は、大腸菌において、SPARCの生理的活性を失わずに製剤しやすい可溶性タンパク質として大量に生産することができる。米国特許第6,387,664号は、チオレドキシンのC末端に融合したSPARCを有する融合SPARCタンパク質を提供するが、本発明に関しては、SPARCファミリーポリペプチドは、その感作機能が保持される限り、第二ポリペプチドのN末端またはC末端のいずれに融合してもよい。
【0106】
溶解度を高めることに加えて、SPARCファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質は、細胞におけるSPARCファミリーポリペプチドの発現の検出を容易にするように構築しうる。1つの実施形態では、SPARCファミリーポリペプチドに融合する第二ポリペプチドはレポーターポリペプチドである。レポーターポリペプチドは、そのような検出目的に使用するとき、SPARCファミリーポリペプチドと融合している必要はない。SPARCファミリーポリペプチドも同時にコードする同じポリヌクレオチド(例えばベクター)によってコードされ、標的細胞に同時導入されて、共発現されうる。
【0107】
好ましくは、本発明において使用するレポーターポリペプチドは自己蛍光タンパク質(例えばGFP、EGFP)である。自己蛍光タンパク質は、対象とするポリヌクレオチド(及びポリペプチド産物)の発現の特定のための迅速なアッセイを提供する。フローソーターを用いてレポーターポリペプチドの活性(及び推論によりその発現レベル)を定量的に観測することができるので、多くの独立した形質転換体を連続的にまたはバルク個体群として検定することは簡単である。その後、最良発現を有する細胞をスクリーニングまたは個体群から選択することができる。これは、本発明に従って治療を感作するためのSPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む組換え細胞を選択するときに有用である。平均蛍光強度などの定量的パラメータ及び分散を、細胞個体群の蛍光強度から判定することができる(Shapiro,H.,1995,Practical Flow Cytometry,217−228)。本発明において有用なレポーター分子の非制限的な例は、ルシフェラーゼ(ホタルまたは他の種から)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)及びdsRedを含む。
【0108】
SPARCポリペプチド(単独または融合タンパク質として)の発現はまた、ELISA(酵素結合イムノソルベント検定法)(例えば米国特許第5,962,320号;同第6,187,307号;同第6,194,205号参照)、ウエスタンブロット法、または当技術分野で慣例的な他の方法によって直接測定することができる。SPARCファミリーポリペプチドの発現は、このタンパク質の転写産物を検出することによって(例えばノーザンブロット法またはDNAマイクロアレイなどのハイブリダイゼーション分析によって、もしくはPCRによって)間接的に検出することができる。
【0109】
1つの実施形態では、第二ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、リンカーポリペプチドをコードする介在リンカー配列を通してSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに融合する。
【0110】
もう1つの実施形態では、前記リンカーポリペプチドは、プロテアーゼによって加水分解されうるペプチド結合を含むプロテアーゼ切断部位を含む。結果として、SPARCファミリーポリペプチドは、発現後にタンパク質分解によって第二ポリペプチドから分離することができる。リンカーは、プロテアーゼの触媒部位も同時に結合している前記結合のいずれかの側に1以上の付加的なアミノ酸を含みうる(例えばSchecterとBerger,1967,Biochem.Biophys.Res.Commun.27,157−62参照)。あるいは、リンカーの切断部位をプロテアーゼの認識部位から分離することができ、2つの切断部位と認識部位を1個以上(例えば2−4個)のアミノ酸によって分離することができる。1つの態様では、リンカーは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50またはそれ以上のアミノ酸を含む。より好ましくは、リンカーは5−25アミノ酸の長さであり、最も好ましくは、リンカーは8−15アミノ酸の長さである。
【0111】
本発明に従って有用な一部のプロテアーゼが以下の参考文献において論じられている:V.Y.H.Hook,Proteolytic and cellular mechanisms in prohormone and proprotein processing,RG Landes Company,Austin,Texas,USA(1998);N.M.Hooperら,1997,Biochem.J.321:265−279;Werb,1997,Cell91:439−442;Wolfsbergら,1995,J.Cell Biol.131:275−278;MurakamiとEtlinger,1987,Biochem.Biophys.Res.Comm.146:1249−1259;Bergら,1995,Biochem.J.307:313−326;SmythとTrapani,1995,Immunology Today 16:202−206;Talanianら,1997,J.Biol.Chem.272:9677−9682;及びThornberryら,1997,J.Biol.Chem.272:17907−17911。適切なプロテアーゼは、以下の表に列挙されているものを含むが、これらに限定されない。
【表1】
【0112】
付加的なリンカーポリペプチドは、プロオピオメラノコルチン変換酵素(PCE);クロマフィン顆粒アスパラギン酸プロテアーゼ(CGAP);プロホルモンチオールプロテアーゼ;カルボキシペプチダーゼ(例えばカルボキシペプチダーゼE/H、カルボキシペプチダーゼD及びカルボキシペプチダーゼZ);プロリルエンドペプチダーゼ;及び高分子量プロテアーゼについての基質から入手できる。
【0113】
細胞表面プロテアーゼも本発明に従った切断性リンカーと共に使用することができ、アミノペプチダーゼN;ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ;アンギオテンシン変換酵素;ピログルタミルペプチダーゼII;ジペプチジルペプチダーゼIV;N−アルギニン二塩基性コンベルターゼ;エンドペプチダーゼ24.15;エンドペプチダーゼ24.16;アミロイド前駆体タンパク質セクレターゼα、β及びγ;アンギオテンシン変換酵素セクレターゼ;TGFαセクレターゼ;TNFαセクレターゼ;FASリガンドセクレターゼ;TNF受容体I及びIIセクレターゼ;CD30セクレターゼ;KL1及びKL2セクレターゼ;IL6受容体セクレターゼ;CD43、CD44セクレターゼ;CD16−I及びCD16−IIセクレターゼ;L−セレクチンセクレターゼ;葉酸受容体セクレターゼ;MMP1、2、3、7、8、9、10、11、12、13、14及び15;ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子;組織プラスミノーゲン活性化因子;プラスミン;トロンビン;BMP−1(プロコラーゲンC−ペプチダーゼ);ADAM1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11;及びグランザイムA、B、C、D、E、F、G及びHを含むが、これらに限定されない。
【0114】
細胞関連プロテアーゼに基づくことの代替策は、自己切断リンカーを使用することである。例えば口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aプロテアーゼがリンカーとして使用しうる。これは、FMVDのポリタンパク質を2A/2B接合部で切断する17アミノ酸の短いポリペプチドである。FMDV 2Aポリペプチドの配列は、NFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号77)である。切断は、最終グリシン−プロリンアミノ酸対のペプチドのC末端で起こり、他のFMDV配列の存在とは無関係であり、異種配列の存在下でさえも切断する。
【0115】
2つのタンパク質コード領域の間に(すなわち本発明に従った融合タンパク質のSPARCファミリーポリペプチドと第二ポリペプチドの間に)この配列を挿入することは、それ自体で、そのN末端に2AプロテアーゼのC末端プロリンを担持するC末端フラグメントと、そのC末端に2Aプロテアーゼペプチドの残部を担持するN末端フラグメントに切断する、自己切断キメラの形成をもたらす(例えばP.deFelipeら,Gene Therapy 6:198−208(1999)参照)。自己切断リンカー及び付加的なプロテアーゼ−リンカーの組合せは、その全体が参照してここに組み込まれる、国際公開第0120989号の中でさらに記述されている。
【0116】
前述したリンカー配列をコードするポリヌクレオチドは、適切なプロテアーゼの天然基質をコードする配列からクローニングすることができ、または当技術分野で慣例的な方法を用いて化学合成することができる。
【0117】
例えばインビトロまたはインビボで、ヒト細胞においてSPARCファミリーポリペプチドを発現するとき、SPARCファミリーポリペプチドをコードするそのようなポリヌクレオチドについて選択するコドンは、好ましくは、以下の表2に列挙されているような、ヒトにおいて最も頻繁に使用されるものである。表4に示す例示的なポリヌクレオチド配列は、ヒトにおいて最も頻繁に使用されるコドンに基づく。
【表2】
【0118】
一番上のコドンは、ヒト遺伝子における使用のために最も好ましいものである。下線を付したコドンは、ヒト遺伝子ではほぼ全く使用されず、従って好ましくない。
【0119】
もう1つの実施形態では、本発明は、(a)SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドを含む融合ポリペプチドのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び(b)ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で(a)のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド、を提供する。
【0120】
本発明の上記実施形態を実施するためのポリヌクレオチド操作についての手法は当技術分野において周知である(例えばSambrookら,1989;Ausubelら、1987,及びin Annual Reviews of Biochemistry,1992,61:131−156参照)。制限酵素等のような、そのような手法を適用する上で有用な試薬は、当技術分野で広く知られており、多くの販売元から市販されている。
【0121】
本発明における使用のためのポリヌクレオチドはまた、化学合成によって、例えばBeaucageら,1981,Tetra.Letts.,22:1859−1862によって述べられているホスホルアミダイト法、または市販の自動オリゴヌクレオチドシンセイサイザーで実施しうるトリエステル法(Matteucciら,1981,J.Am.Chem.Soc.,103:3185)によって、部分的または全面的に生産しうる。二本鎖フラグメントは、相補鎖を合成し、その鎖を適切な条件下で共にアニーリングすることによって、もしくはDNAポリメラーゼを適切なプライマー配列と共に使用して相補鎖を合成することによって、化学合成の一本鎖産物から入手しうる。
【0122】
1つの実施形態では、本発明によって提供されるSPARCファミリーポリヌクレオチドは、ベクターとして、好ましくは発現ベクターとして存在する。
【0123】
(発現ベクター)
SPARCファミリーポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドは、治療を感作するための本発明のSPARCファミリーポリペプチドを生産するために、原核または真核細胞に導入されて、複製することができるベクターに組み込みうるか、もしくは細胞または組織を形質移入または感染して、SPARCファミリーポリペプチドを発現することによって直接感作機能を達成するために使用できる。ベクターは、形質移入細胞または感染細胞のゲノム内に組み込まれてもよくまたは組み込まれなくてもよい。
【0124】
本発明のSPARCファミリーポリペプチドをコードする有用なポリヌクレオチド分子を発現ベクターにクローニングした後、それらを適切な細胞に導入し、細胞で継代して、これらのポリヌクレオチドの使用可能な量を生成しうる。
【0125】
本発明のための適切なベクターは、プラスミドまたはウイルスベクターでありうる。プラスミド発現ベクターは、pBR322、pUC、pcDNA3.1またはBluescript(商標)を含むプラスミドを含むが、これらに限定されない。ウイルスベクターは、バキュロウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)及びMMLVベースの複製インコンピテントベクターpMV−7(Kirschmeierら,1988,DNA,7:219−225)などのレトロウイルスベクター(Priceら,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:156−160)、並びにヒト及び酵母修飾染色体(HAC及びYAC)を含むが、これらに限定されない。
【0126】
発現ベクターは、上流または下流のポリヌクレオチドの発現を駆動する及び/または増強するために1以上の調節エレメントを含みうる。これらの調節配列は、導入及び/または発現のために使用される細胞に基づいて選択され、発現されるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結される。「調節エレメント」という用語は、プロモーター、エンハンサー及び他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を含むことが意図されている。そのような調節エレメントは、例えばGoeddel;1990,Gene Expression Technology:Methods in Eiizyniology 185,Academic Press,San Diego,CAにおいて記述されている。
【0127】
調節エレメントは、多くの型の対象細胞においてヌクレオチド配列の発現を指令するもの並びに一定の対象細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指令するもの(例えば組織特異的調節配列)を包含する。
【0128】
調節エレメントはまた、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの構成的発現を指令するもの及びポリヌクレオチド配列の誘導的発現を指令するものを包含する。
【0129】
好ましくは、適切なプロモーターを使用しうる。例えばそのようなプロモーターは、大腸菌を宿主として使用するプラスミドの場合はトリプトファン(trp)プロモーター、ラクトース(lac)プロモーター、トリプトファン−ラクトース(tac)プロモーター、リポタンパク質(lpp)プロモーター、λファージPLプロモーター等;及び酵母を宿主として使用するプラスミドの場合はGAL1、GA10プロモーター等を含みうる。
【0130】
一部の真核生物プロモーター及びエンハンサーは、それらが転写を活性化する及び/または調節することができる広い範囲の細胞を有するが、また別の一部は、限られたサブセットの細胞型だけにおいて機能性である(例えばVossら,1986,Trends Biochem.Sci.,11:287;及び総説についてはManiatisら,前出参照)。例えばSV40初期遺伝子エンハンサーは、哺乳動物からの極めて多様な細胞型において非常に活性であり、哺乳動物細胞におけるタンパク質の発現のために広く使用されてきた(Dijkemaら,1985,EMBO J.4:761)。広範囲の哺乳動物細胞型において活性なプロモーター/エンハンサーエレメントの2つの他の例は、ヒト伸長因子1α遺伝子(Uetsukiら,1989,J.Biol.Chem.,264:5791;Kimら,1990,Gene,91:217;及びMizushima,ら,1990,Nagata,Nuc.Acids.Res.,18:5322)、及びラウス肉腫ウイルス(Gormanら,1982,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:6777)及びヒトサイトメガロウイルスのロングターミナルリピートからのものである(Boshartら,1985,Cell,41:521)。
【0131】
真核細胞発現のための適切なプロモーターは、TRAPプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーターなどのアデノウイルスプロモーター;サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター;RSウイルス(RSV)プロモーター;MMTプロモーターなどの誘導性プロモーター;メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーター;アルブミンプロモーター;アポAIプロモーター;ヒトグロブリンプロモーター;単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーターなどのウイルスチミジンキナーゼプロモーター;レトロウイルスLTR;ITR;β−アクチンプロモーター;及びヒト成長ホルモンプロモーターを含むが、これらに限定されない。プロモーターはまた、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを制御する天然プロモーターでもよく、天然プロモーターの配列は当技術分野で見出しうる(例えばAgrawalら,2000,J.Hematother.Stem Cell Res.,795−812;Cournoyerら,1993,Annu.Rev.Immunol.,11:297−329;van de Stolpeら,1996,J.Mol.Med.,74:13−33;Hermann,1995,J.Mol.Med.,73:157−63)。
【0132】
以下のものを含むがこれらに限定されない、様々なエンハンサー配列が本発明において使用できる:免疫グロブリン重鎖エンハンサー;免疫グロブリン軽鎖エンハンサー;T細胞受容体エンハンサー;HLA DQα及びDQβエンハンサー;β−インターフェロンエンハンサー;インターロイキン−2エンハンサー;インターロイキン−2受容体エンハンサー;MHCクラスII 5akエンハンサー;MHCクラスII HLA−DRαエンハンサー;β−アクチンエンハンサー;筋クレアチンキナーゼエンハンサー;プレアルブミン(トランスサイレチン)エンハンサー;エラスターゼIエンハンサー;メタロチオネインエンハンサー;コラゲナーゼエンハンサー;アルブミン遺伝子エンハンサー;α−フェトプロテインエンハンサー;β−グロビンエンハンサー;c−fosエンハンサー;c−HA−rasエンハンサー;インスリンエンハンサー;神経細胞接着分子(NCAM)エンハンサー;α1−抗トリプシンエンハンサー;H2B(TH2B)ヒストンエンハンサー;マウスまたはI型コラーゲンエンハンサー;グルコース調節タンパク質(GRP94及びGRP78)エンハンサー;ラット成長ホルモンエンハンサー;ヒト血清アミロイドA(SAA)エンハンサー;トロポニンI(TN I)エンハンサー;血小板由来増殖因子エンハンサー;デュシェーヌ筋ジストロフィーエンハンサー;SV40ポリオーマエンハンサー;レトロウイルスエンハンサー;乳頭腫ウイルスエンハンサー;B型肝炎ウイルスエンハンサー;ヒト免疫不全エンハンサー;サイトメガロウイルスエンハンサー;及びテナガザル白血病ウイルスエンハンサー。
【0133】
例示的な誘導性プロモーター/エンハンサー配列及びそれらの誘導物質を以下に列挙する。
【表3】
【0134】
付加的な真核生物調節配列は、ポリヌクレオチドの発現を駆動するためにも使用できる、真核生物プロモーターデータベース(Eukaryotic Promoter Data Base、EPDB)から入手できる。
【0135】
本発明の一部の実施形態では、細胞内へのベクターの送達は、ここで前述したような発現構築物に選択マーカーを含めることによってインビトロまたはインビボで特定しうる。マーカーは、発現の容易な特定を可能にする、修飾細胞への特定可能な変化を生じさせる。通常、薬剤選択マーカーを含むことは、クローニング及び形質転換体の選択を助ける。真核細胞における選択マーカーとして使用できる遺伝子は当技術分野において公知であり、優性選択マーカーの例は、哺乳動物細胞において薬剤G418に対する耐性を付与する細菌アミノグリコシド3’ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo遺伝子とも称される)、抗生物質ヒグロマイシンに対する耐性を付与する細菌ヒグロマイシンGホスホトランスフェラーゼ(hyg)遺伝子及びミコフェノール酸の存在下で増殖する能力を付与する細菌キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt遺伝子とも称される)を含む。他の選択マーカーは、関連酵素活性を欠く細胞系統と共に使用しなければならないという意味で優性ではない。非優性選択マーカーの例は、tk−細胞系統と共に使用されるチミジンキナーゼ(tk)遺伝子、CAD欠損細胞と共に使用されるCAD遺伝子及びhprt−細胞系統と共に使用される哺乳動物ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)遺伝子を含む。哺乳動物細胞系統における選択マーカーの使用の総説は、Sambrook,J.ら,1989,分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第二版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク、pp.16.9−16.15に述べられている。
【0136】
あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)(真核生物)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)(原核生物)などの酵素をコードする遺伝子が、選択マーカーを提供するために使用しうる。免疫原性マーカーも使用できる。使用する選択マーカーの正確な種類は、それが対象ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと同時に発現されうる限り、重要ではないと考えられる。選択マーカーのさらなる例は当業者に周知である。
【0137】
本発明のSPARCファミリーポリペプチドを発現するためにcDNA挿入物を使用する場合、典型的には、ポリヌクレオチド転写産物の正しいポリアデニル化を生じさせるためにポリアデニル化シグナルを含むことが望ましい。ポリアデニル化シグナルの性質は本発明の実施の成功にとって決定的ではないと考えられ、そのようないかなる配列も使用しうる。これらのエレメントは、メッセージのレベルを高めるため及び発現カセットから他の配列への読み過しを最小限に抑えるために役立ちうる。
【0138】
(組換え細胞生産:SPARCファミリーポリヌクレオチドを発現及び/または感作のために細胞に導入すること)
前述したように、精製のためにSPARCファミリーポリペプチドを発現するためもしくは発現して本発明の感作作用を達成するために、当技術分野で周知の方法、例えば分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),Ausubel,F.M.ら(編),1989,Greene Publishing Associates,Section 9.1、及び分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第2版,Sambrookら,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressにおける方法に従って本発明のSPARCファミリーポリヌクレオチドを細胞に導入しうる。
【0139】
培養哺乳動物細胞へのベクターの移入のためのいくつかの非ウイルス法が本発明によって考慮される。これらは、リン酸カルシウム沈殿(Graham,ら,1973;Chen,ら,1987;Rippe,ら,1990)、DEAE−デキストラン(Gopal,1985)、電気穿孔(Tur−Kaspaら,1986;Potterら,1984)、直接微量注入(Harland,ら,1985)、DNA充填リポソーム(Nicolau,ら,1982;Fraleyら,1979)及びリポフェクタミン−DNA複合体、細胞超音波処理(Fechheimerら,1987)、高速マイクロプロジェクタイルを使用する遺伝子パーティクルガン(Yangら,1990)及び受容体媒介形質移入(Wu,ら,1987;Wu,ら,1988)を含む。これらの手法のいくつかは、インビボまたはエキソビボでの使用に成功裏に適合させうる。
【0140】
ひとたびベクターが細胞内に送達されれば、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは種々の部位に位置づけられ、発現されうる。一部の実施形態では、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは細胞のゲノム内に安定に組み込まれうる。この組込みは、相同的組換え(遺伝子置換)によってであるか、もしくはランダムな非特異的位置に組み込まれうる(遺伝子増加)。Holmes−Sonら,2001,Adv.Genet.43:33−69参照。さらなる実施形態では、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、別個のDNAのエピソームセグメントとして細胞内に安定に維持されうる。そのようなポリヌクレオチドセグメントまたは「エピソーム」は、対象細胞の周期とは独立したまたは細胞周期と同調した維持及び複製を可能にするのに十分な配列をコードする。いかにして発現構築物を細胞に送達するか及びポリヌクレオチドが細胞内のどこに残存するかは当技術分野において周知であり、用いる細胞構築物のタイプに依存する。
【0141】
SPARCファミリーポリヌクレオチドの形質移入及び感染のため及び組換えポリペプチドの発現及び精製のために適切と考えられる、哺乳動物種に由来する細胞系統は、市販のものを入手しうる。これらの細胞系統は、CV−1(ATCC CCL 70)、COS−1(ATCC CRL 1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、HeLa(ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)、MRC−5(ATCC CCL 171)、L細胞、HEK−293(ATCC CRL1573)、NSO(ECACC85110503)及びHT1080を含むが、これらに限定されない。
【0142】
細胞培養は、インビトロでの遺伝子移入のために様々な様式で調製しうる。細胞が、インビトロで発現構築物と接触しながら生存可能であり続けるためには、細胞が、正しい比率の酸素と二酸化炭素及び栄養素との接触を維持するが、微生物汚染から保護されることを確保する必要がある。
【0143】
構築物の移入は、当技術分野で公知であり、ここで以下に述べる方法によって実施しうる。一部の方法は、特にインビトロでの移入に適用しうるが、同様にインビボでの使用にも適用しうる。
【0144】
(CaPO4によって媒介される形質移入)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドとリン酸カルシウムを含む沈殿物を形成することによって細胞に導入することができる。例えばHEPES緩衝食塩水を、塩化カルシウム及びポリヌクレオチドを含む溶液と混合して沈殿物を形成することができ、その後前記沈殿物を細胞と共にインキュベートする。一定の細胞によって取り込まれるポリヌクレオチドの量を高めるためにグリセロールまたはジメチルスルホキシドショック工程を付加することができる。CaPO4媒介形質移入は、細胞を安定に(または一過性に)形質移入するために使用でき、細胞にインビトロ修飾にのみ適用できる。CaPO4媒介形質移入についてのプロトコルは、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),Ausubel,F.M.ら(編),1989,Greene Publishing Associates,Section 9.1及び分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第2版,Sambrookら,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Sections 16.32−16.40または他の標準実験室マニュアルに認められる。
【0145】
Dubenskyら(1984)は、CaPO4沈殿物の形態のポリオーマウイルスDNAを成体及び新生児マウスの肝臓と脾臓に注入することに成功し、能動的ウイルス複製と急性感染を明らかにした。BenvenistyとNeshif(1986)も、CaPO4沈殿プラスミドの直接腹腔内注入が形質移入された遺伝子の発現を生じさせることを明らかにした。従って、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、前述したように所望SPARCファミリーポリペプチドを発現するためにインビボでも同様に移入しうる。
【0146】
(DEAE−デキストランによって媒介される形質移入)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドとDEAE−デキストランの混合物を形成し、その混合物を細胞と共にインキュベートすることによって細胞に導入することができる。ポリヌクレオチド取込みの量を高めるためにジメチルスルホキシドまたはクロロキンショック工程を付加することができる。DEAE−デキストラン媒介形質移入についてのプロトコルは、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),Ausubel,F.M.ら(編),1989,Greene Publishing Associates,Section 9.1、及び分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第2版,Sambrookら,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Sections 16.41−16.46または他の標準実験室マニュアルに見出される。
【0147】
(電気穿孔)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、適切な緩衝液中で細胞とポリヌクレオチドを一緒にインキュベートし、細胞を高圧電気パルスに供することによって細胞に導入することができる。電気穿孔によってポリヌクレオチドが細胞に導入される効率は、適用される電界の強さ、電気パルスの長さ、温度、ポリヌクレオチドの立体配座と濃度及び媒質のイオン組成によって影響される。電気穿孔は幅広い細胞型を安定に(または一過性に)形質移入するために使用できる。細胞を電気穿孔するためのプロトコルは、Ausubel,F.M.ら(編)、前出、Section 9.3及びSambrookら,前出、Sections 16.54−16.55または他の標準実験室マニュアルに認められる。
【0148】
(リポソームを介した形質移入(「リポフェクション」))
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、カチオン脂質を含むリポソーム懸濁液とポリヌクレオチドを混合することによって細胞に導入することができる。次にポリヌクレオチド/リポソーム複合体を細胞と共にインキュベートする。リポソームを介した形質移入は、インビトロで培養中の細胞を安定に(または一過性に)形質移入するために使用できる。プロトコルは、Ausubel,F.M.ら(編)、前出、Section 9.4及び他の標準実験室マニュアルに認められる。加えて、リポソームを使用してインビボでの遺伝子送達が達成された。例えばNicolauら,1987,Mets.Enz.,149:157−176;Wang,ら,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7851−7855;Brighamら,1989,Am.J:Med.Sci.,298:278;及びGould−Fogeriteら,1989,Gene,84:429−438参照。
【0149】
(直接注入)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドを細胞に直接注入することによって細胞に導入することができる。細胞のインビトロ培養のために、微量注入によってポリヌクレオチドを導入することができる。各々の細胞を個別に微量注入するので、多数の細胞を修飾するときにはこのアプローチは非常に労力を要する。しかし、微量注入が選択方法である状況は、トランスジェニック動物の作製においてである(以下でより詳細に論じる)。この状況では、ポリヌクレオチドを受精卵母細胞に安定に導入し、次にそれを動物へと成長させる。生じた動物は、卵母細胞に導入されたポリヌクレオチドを担持する細胞を含む。直接注入は、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをインビボで細胞に導入するために使用しうる(例えばAcsadiら,1991,Nature,332:815−818;Wolffら,l990,Science,247:1465−1468参照)。インビボでDNAを細胞に注入するための送達装置(例えば「遺伝子ガン」)が使用できる。そのような装置は市販されている(例えばBioRadから)。
【0150】
(受容体を介したDNA取込み)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、ポリヌクレオチドをポリリシンなどのカチオンと複合体形成し、それを細胞表面受容体についてのリガンドに結合することによって細胞に導入することができる(Wu,ら,1988,J.Biol.Chem.,263:14621;Wilsonら,1992,J.Biol.Chem.,267:963−967;及び米国特許第5,166,320号参照)。ポリヌクレオチド−リガンド複合体の受容体への結合は、受容体を介したエンドサイトーシスによるポリヌクレオチドの取込みを促進する。ポリヌクレオチド−リガンド複合体が標的する受容体は、トランスフェリン受容体及びアシアロ糖タンパク質受容体を含む。天然でエンドソームを破壊し、それによって細胞質内に物質を放出するアデノウイルスカプシドに結合したポリヌクレオチド−リガンド複合体は、細胞内リソソームによる複合体の分解を回避するために使用できる(例えばCurielら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8850;Cristianoら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2122−2126参照)。受容体を介したポリヌクレオチド取込みは、インビトロまたはインビボでSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入するために使用でき、加えて、対象とする標的細胞上で選択的に発現される受容体に結合するリガンドの使用により、ポリヌクレオチドが特定細胞型を選択的に標的することができるという付加的な特徴を有する。
【0151】
(ウイルスを介した遺伝子導入)
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入するためのもう1つのアプローチは、SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターの使用によるものである。ウイルスベクターによる細胞の感染は、大きな割合の細胞がポリヌクレオチドを受け取るという利点を有しており、これは、ポリヌクレオチドを受け入れた細胞を選択する必要性を回避することができる。加えて、例えばウイルスベクター内に含まれるcDNAによって、ウイルスベクター内にコードされる分子は、ウイルスベクターポリヌクレオチドを取り込んだ細胞において効率よく発現され、またウイルスベクター系はインビトロまたはインビボで使用することができる。
【0152】
それらを、カプシド形成を可能にする相補的遺伝子情報を欠く細胞へのポリヌクレオチド導入のための有用なベクターにする、感染性であるが複製欠損であるウイルス粒子を生産するパッケージング細胞系統において、非複製ウイルスベクターを生産することができる(Mannら,1983,cell,33:153;MillerとButtimore,Mol.Cell.Biol.,1986,6:2895(PA317,ATCC CRL9078)。ヒト及び他の種の細胞を形質転換することができる両種指向性パッケージング遺伝子を含むパッケージング細胞系統が好ましい。
【0153】
(レトロウイルス)
レトロウイルスは、逆転写の工程により、感染細胞においてそれらのRNAを二本鎖DNAに変換する能力によって特徴付けられる一本鎖RNAウイルスの群である(Coffin,1990,in Fieldsら,Ceds,Virology,Raven Press,ニューヨーク,pp.1437−1500)。生じたDNAは、その後、プロウイルスとして細胞染色体に安定に組み込まれ、ウイルスタンパク質の合成を指令する。組込みは、レシピエント細胞及びその子孫におけるウイルス遺伝子配列の維持をもたらす。レトロウイルスゲノムは、それぞれカプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素及びエンベロープ成分をコードする3つの遺伝子、gag、pol及びenvを含む。gag遺伝子から上流に認められる配列は、ビリオンへのゲノムのパッケージングのためのシグナルとして機能する。2つのロングターミナルリピート(LTR)配列がウイルスゲノムの5’及び3’末端に存在する。これらは強力なプロモーター及びエンハンサー配列を含み、対象細胞ゲノムへの組込みのためにも必要である(Coffin、前出)。
【0154】
欠損レトロウイルスは、遺伝子治療のための遺伝子導入における使用に関して十分に特徴付けられている(総説についてはMiller,1990,Blood 76:271参照)。
【0155】
組換えレトロウイルスを生産し、細胞をインビトロまたはインビボでそのようなウイルスに感染させるためのプロトコルは、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),Ausubel,F.M.ら(編),1989,Greene Publishing Associates,Section 9.10−9.14及び他の標準実験室マニュアルに認められる。適切なレトロウイルスの例は、当業者に周知のpLJ、pZIP、pWE及びpEMを含む。適切なパッケージングウイルス系統の例は、Crip、Cre、2及びAmを含む。レトロウイルスは、インビトロ及び/またはインビボで、上皮細胞、内皮細胞、リンパ球、筋芽細胞、肝細胞、骨髄細胞を含む多くの異なる細胞型に様々な遺伝子を導入するために使用されてきた(例えばEglitis,ら,1985,Science,230:1395−1398;Danos,ら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:6460−6464;Wilsonら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:3014−3018;Armentanoら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6141−6145;Huberら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8039−8043;Ferryら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8377−8381;Chowdhuryら,1991,Science,254:1802−1805;van Beusechemら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:7640−7644;Kayら,1992,Human Gene Therapy,3:641−647;Daiら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10892−10895;Hwuら,1993,J.Immunol.,150:4104−4115;米国特許第4,868,116号;米国特許第4,980,286号;国際公開第89/07136号;国際公開第89/02468号;国際公開第89/05345号;及び国際公開第92/07573号参照)。レトロウイルスベクターは、対象ゲノム内に組み込まれるレトロウイルスゲノム(及びその中に挿入された外来ポリヌクレオチド)がポリヌクレオチドを細胞に安定に導入するために、標的細胞分裂を必要とする。従って、標的細胞の複製を刺激する必要があると考えられる。
【0156】
(アデノウイルス)
36kBの線状二本鎖DNAウイルスであるアデノウイルスの遺伝子機構についての知識は、アデノウイルスDNAの大きな断片を7kBまでの外来配列で置換することを可能にする(Grunhaus,ら,1992,Seminar in Virology,3:237−252)。レトロウイルスと異なり、アデノウイルスDNAは潜在的な遺伝毒性を伴わずにエピソーム様式で複製することができるので、対象細胞へのアデノウイルスDNAの感染は染色体組込みを生じさせない。また、アデノウイルスは構造的に安定であり、広汎な増幅後もゲノム再編成は検出されていない。アデノウイルスは、細胞周期段階に関わりなく実質的にすべての上皮細胞に感染しうる。
【0157】
アデノウイルスは、その中間サイズのゲノム、操作の容易さ、高い力価、広い標的細胞範囲及び高い感染性の故に、遺伝子導入ベクターとしての使用に特に適する。ウイルスゲノムの両末端は、ウイルスDNAの複製及びパッケージングのために必要なシスエレメントである、100−200塩基対(bp)の逆方向末端反復配列(ITR)を含む。ゲノムの初期(E)及び後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の開始によって分けられる異なる転写単位を含む。E1領域(E1A及びE1B)は、ウイルスゲノム及び少数の細胞遺伝子の転写の調節の役割を担うタンパク質をコードする。E2領域(E2A及びE2B)の発現は、ウイルスDNA複製のためのタンパク質の合成をもたらす。これらのタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現及び宿主細胞のシャットオフに関与する(Renan,1990)。ウイルスカプシドタンパク質の大部分を含む後期遺伝子の産物は、主要後期プロモーター(MLP)によって生じる単一一次転写産物の有意のプロセシング後にのみ発現される。MLLPは感染の後期に特に有効であり、このプロモーターから生じるすべてのmRNAが、それらを翻訳のための好ましいmRNAとする5’トリパータイトリーダー(tripartite leader)(TL)配列を有する。
【0158】
アデノウイルスのゲノムは、対象とする遺伝子産物をコードし、発現するように操作することができるが、正常な溶菌化ウイルス生活環において複製するその能力に関しては不活性化される。例えばBerkner,ら,1988,BioTechniques,6:616;Rosenfeld,ら,1991,Science,252:431−434;及びRosenfeld,ら,1992,Cell,68:143−155参照。アデノウイルス株Ad 5型dl324またはアデノウイルスの他の株(例えばAd2、Ad3、Ad7等)に由来する適切なアデノウイルスベクターは当業者に周知である。組換えアデノウイルスは、有効な遺伝子送達ビヒクルであるために分裂細胞を必要とせず、また気道上皮(Rosenfeld,ら,1992,前出)、内皮細胞(Lemarchand,ら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:6482−6486)、肝細胞(Herz,ら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2812−2816)及び筋細胞(Quantin,ら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:2581−2584)を含む幅広い細胞型に感染するために使用できるという点で有利である。加えて、導入されたアデノウイルスポリヌクレオチド(及びその中に含まれる外来DNA)は対象細胞のゲノムには組み込まれず、エピソームのままであり、それによって導入されたポリヌクレオチドが対象ゲノム(例えばレトロウイルスDNA)に組み込まれる状況での挿入突然変異誘発の結果として起こりうる潜在的な問題を回避する。さらに、外来性DNAについてのアデノウイルスゲノムの担持能力は他の遺伝子送達ベクターに比べて大きい(8キロベースまで)(Berkner,ら前出;Haj−Ahmand,ら,1986,J.Virol.,57:267)。現在使用されている大部分の複製欠損アデノウイルスベクターは、ウイルスのE1及びE3遺伝子の全部または一部を欠失しているが、アデノウイルス遺伝物質の80%を保持している。
【0159】
組換えアデノウイルスは、例えば参照してここに組み込まれる、米国特許第6,194,191号に述べられているような、当技術分野で公知の方法によって作製しうる。
【0160】
複製欠損であるアデノウイルスベクターの作製及び増殖は、Ad5 DNAフラグメントによってヒト胚腎細胞から形質転換された、E1タンパク質を構成的に発現する、293と称されるユニークヘルパー細胞系統に依存する(Graham,ら,1977)。E3領域はアデノウイルスゲノムに不可欠ではないので(Jones,ら,1978)、現在のアデノウイルスベクターは、293細胞の助けを得て、E1、E3のいずれかまたは両方の領域内に外来性DNAを担持する(Graham,ら,1991)。天然では、アデノウイルスは野生型ゲノムの約105%をパッケージングすることができ(Ghosh−Choudhury,ら,1987)、約2kBの余分なDNAの収容力を提供する。E1及びE3領域内の置換可能な約5.5kBのDNAと合わせると、現在のアデノウイルスベクターの最大収容能力は7.5kB以下またはベクターの全体の長さの約15%である。アデノウイルスゲノムの80%以上はベクター骨格内にあり、ベクターが担う細胞毒性のソースである。また、E1欠失ウイルスの複製欠損は不完全である。例えば現在使用可能なアデノウイルスベクターに関して、ウイルス遺伝子発現の漏出が高い感染多重度で認められている(Mulligan,1993)。
【0161】
ヘルパー細胞系は、ヒト胚腎細胞、筋細胞、造血細胞もしくは他のヒト胚間葉または上皮細胞などのヒト細胞から誘導しうる。あるいは、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスに関して許容される他の哺乳動物種の細胞から誘導しうる。そのような細胞は、例えばベロ細胞または他のサル胚間葉または上皮細胞を含む。前述したように、好ましいヘルパー細胞系は293である。
【0162】
アデノウイルスベクターが複製欠損であるまたは少なくとも条件的に複製欠損であるという必要条件以外には、アデノウイルスベクターの性質は本発明の実施の成功にとって決定的に重要ではないと考えられる。アデノウイルスは、42の異なる公知の血清型またはA−Fのサブグループのいずれであってもよい。サブグループCのアデノウイルス5型は、本発明の方法における使用のための条件的複製欠損アデノウイルスベクターを得るための好ましい出発物質である。これは、アデノウイルス5型が、多大の生化学及び遺伝情報が公知であるヒトアデノウイルスであり、アデノウイルスをベクターとして用いる大部分の構築物のために歴史的に使用されてきたからである。
【0163】
前述したように、本発明に従った典型的なベクターは、複製欠損であり、アデノウイルスE1領域を持たない。従って、対象とするポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、E1コード配列が除去された位置に導入することが最も好都合である。しかし、アデノウイルス配列内の選択ポリヌクレオチドのコード領域の挿入位置は本発明にとって決定的に重要ではない。
【0164】
アデノウイルスは増殖及び操作が容易であり、インビトロ及びインビボで広い対象範囲を示す。このウイルス群は高い力価で、例えば109−1011プラーク形成単位(PFU)/mlで入手でき、高度に感染性である。アデノウイルスの生活環は、対象細胞ゲノム内への組込みを必要としない。
【0165】
アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Levrero,ら,1991,Gene,101:195−202;Gomez−Foix,ら,1992,J.Biol.Chem.,267:25129−25134)及びワクチン開発(Grunhaus,ら,1992,Seminar in Virology,3:237−252;Graham,ら,1992,Biotechnology,20:363−390)において使用されてきた。動物試験は、組換えアデノウイルスが遺伝子治療のために使用できることを示唆した(Stratford−Perricaudet,ら,1991,in:Human Gene Transfer,O.Cohen−Haguenauer,Ceds),John Libbey Eurotext,France;Stratford−Perricaudet,ら,1990,Hum.Gene Ther.,1:241−256;Rich,ら,1993,Nature,361:647−650)。組換えアデノウイルスを種々の組織に投与した実験は、気管点滴注入(Rosenfeld,ら,1991,Science,252:431−434;Rosenfeld,ら,1992,Cell,68:143−155)、筋注射(Ragot,ら,1993,Nature,361:647−650)、末梢静脈内注射(Herz,ら,1993,Proc.Nat’1.Acad.Sci.USA 90:2812−2816)、及び脳への定位的接種(Le Gal La Salleら,1993,Science,259:988−990)を含む。
【0166】
(発現ベクターとしての他のウイルスベクター)
本発明における発現構築物として他のウイルスベクターも使用しうる。ワクシニアウイルス(Ridgeway,1988,in:Rodriguez R L,Denhardt D T,編,ベクター:分子クローニングベクターおよびその使用の調査(Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses).Stoneham:Butterworth,pp.467−492;Baichwalら,1986。Kucherlapati R.編,遺伝子導入(Gene Transfer)、ニューヨーク:Plenum Press,pp.117−148;Coupar,ら,1988,Gene,68:1−10,中)、アデノ関連ウイルス(AAV)(Baichwal,ら,1986,前出;Hermonat,ら,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466−6470)及びヘルペスウイルスなどのウイルスから誘導されるベクターが使用しうる。それらは、様々な哺乳動物の細胞のためにいくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann,1989,Science,244:1275−1281;Baichwal,ら,1986,前出;Coupar,ら,1988,前出;Horwich,ら,1990,J.Virol.,64:642−650)。
【0167】
アデノ関連ウイルス:アデノ関連ウイルス(AVV)は、効率的な複製及び増殖生活環のためのヘルパーウイルスとして、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどのさらに別のウイルスを必要とする、天然に生じる欠損ウイルスである(総説については、Muzyczkaら,1992,Curr.Topics in Micro.and Immunol.,158:97−129)。また、そのDNAを非分裂細胞に組み込むことができ、高頻度の安定な組込みを示す数少ないウイルスの1つである(例えばFlotteら,1992,Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.,7:349−356;Samulskiら,1989,J.Virol.,63:3822−3828;及びMcLaughlinら,1989,J.Virol.,62:1963−1973参照)。わずかに300塩基対のAAVを含むベクターは、パッケージングされて、組み込まれうる。外来性ポリヌクレオチドのための空隙は約4.5kbに限定される。Tratschinら,1985,Mol.Cell.Biol.,5:3251−3260に述べられているようなAAVベクターは、ポリヌクレオチドを細胞に導入するために使用できる。様々なポリヌクレオチドがAVVベクターを使用して種々の細胞型に導入されてきた(例えばHermonat,ら,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466−6470;Tratschin,ら,1985,Mol.Cell.Biol.,4:2072−2081;Wondisford,ら,1988,Mol.Endoclinol.,2:32−39;Tratschin,ら,1984,J.Virol.,51:611−619;及びFlotte,ら,1993,J.Biol.Chem.,268:3781−3790参照)。
【0168】
SPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞への導入後、それらの細胞を選択し、本発明に従った感作治療のために使用しうる。特定発現ベクター系の効力及びポリヌクレオチドを細胞に導入する方法は、当技術分野で慣例的に使用される標準アプローチによって評価することができる。例えば、細胞に導入されたポリヌクレオチドはフィルターハイブリダイゼーション手法(例えばサザンブロット法)によって検出することができ、導入されたポリヌクレオチドの転写によって生産されるRNAは、例えばノーザンブロット法、RNアーゼプロテクション法または逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって検出できる。遺伝子産物は適切なアッセイによって、例えば特異抗体などによる生産されたタンパク質の免疫学的検出によって、または酵素活性などの遺伝子産物の機能的活性を検出する機能アッセイによって、検出することができる。あるいは、最初に、調節エレメントに連結されたレポーター遺伝子及びここで前述したように使用するベクターを用いて発現系を最適化することができる。レポーター遺伝子は、容易に検出可能な別個の遺伝子産物をコードし、従って、系の効力を評価するために使用できる。
【0169】
SPARCファミリーポリペプチドは分泌タンパク質であるので、免疫ブロット法またはElisaなどの当技術分野で公知の方法を使用してその細胞外レベルを検出し、その発現を測定しうる。
【0170】
細胞におけるSPARCポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を高めるもう1つの方法は、内因性遺伝子の活性化、すなわち細胞のゲノム内の天然SPARCファミリー遺伝子配列の前に強力なプロモーターを挿入することによる。内因性遺伝子活性化は、ゲノムDNAとの相同的組換えによって、通常は内因性遺伝子に機能的に連結されておらず、及び(1)内因性遺伝子の位置またはその近くで宿主ゲノムに挿入されたとき、内因性遺伝子の発現を変化させる(例えば活性化する)働きをし、そしてさらに(2)活性化された内因性遺伝子が増幅される細胞の選択を可能にする、DNA配列(例えば強力なプロモーター)を導入する方法である。内因性遺伝子活性化によるタンパク質の発現は当技術分野において周知であり、例えば各々の内容が全体として参照してここに組み込まれる、米国特許第5,733,761号、同第5,641,670号及び同第5,733,746号、及び国際公開第93/09222号、同第94/12650号、同第95/31560号、同第90/11354号、同第91/06667号及び同第91/09955号に開示されている。
【0171】
1つの実施形態では、その発現を制御するためにテトラサイクリン誘導性テトラサイクリンプロモーター/オペレーターを挿入することによって内因性SPARCファミリー遺伝子発現を活性化する(例えば上昇させる)。
【0172】
ポリヌクレオチドを細胞に導入するため及び本発明の組換え細胞を作製するための前述した方法は、単に例示を目的とするものであり、使用しうる方法の典型である。しかし、当技術分野で理解されるように、細胞においてSPARCファミリーポリペプチドの発現を得るために他の手順も使用しうる。
【0173】
(癌治療)
癌は、典型的には手術、化学療法または放射線療法によって治療される。免疫療法及び遺伝子療法などの生物学的療法も開発されつつある。他の療法は、温熱療法、光線力学的療法等を含む(国立癌研究所のホームページ、world wide web nci.nih.gov参照)。
【0174】
(化学療法)
化学療法は、癌細胞を破壊するための抗癌(細胞傷害性)薬剤の使用である。50以上の異なる化学療法剤が存在し、一部はそれらだけで投与されるが、しばしばいくつかの薬剤が併用される(これは併用化学療法として知られる)。World wide web cancerbacup.org.uk/info/actinomycin.htmに記述されている、化学療法剤の例示リストは、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、CPT−11、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、fosfamide、イリノテカン、リポソームドキソルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトザントロン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ステロイド類、ストレプトゾシン、タキソール、タキソテール、タキソテール−TACTトライアル、Tamozolomide、チオグアニン、チオテパ、トムデックス、トポテカン、トレオサルファン、UFT(ウラシル−テガフール)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンを含む。
【0175】
癌細胞は正常細胞よりも迅速に増殖し、分裂しうるので、多くの抗癌薬は増殖細胞を死滅させるように作られている。しかし一部の正常で健康な細胞も急速に増殖し、化学療法はこれらの細胞にも影響を及ぼしうる。この正常細胞への損傷が副作用を引き起こす。最も影響を受ける可能性が高い、迅速に増殖する正常細胞は、骨髄で生じる血液細胞及び消化管(口、胃、腸、食道)、生殖系(生殖器官)及び毛嚢における細胞である。一部の抗癌薬は、心臓、腎臓、膀胱、肺及び神経系などの重要器官の細胞に影響しうる。
【0176】
被る副作用の種類及びそれらの重症度は、受ける化学療法の種類と用量及びその身体がいかに反応するかに依存する。化学療法の副作用は、疲労、吐気及び嘔吐、疼痛、脱毛、貧血、中枢神経系障害、感染、血液凝固障害、口腔、歯肉及び咽喉の問題、下痢、便秘、神経及び筋作用、皮膚及び爪への作用、放射線リコール、腎臓及び膀胱作用、インフルエンザ様症状、及び体液貯留を含む。
【0177】
(放射線療法)
一般的に使用される放射線療法の1つのタイプは、エネルギーの「パケット」である光子を含む。X線は癌を治療するために使用される光子放射線の最初の形態であった。放射線は、それらが有するエネルギーの量に依存して、身体の表面上またはより深部の癌細胞を破壊するために使用できる。X線束のエネルギーが高いほど、X線は標的組織のより深部に進むことができる。線形加速器及びベータトロンは、漸次より大きなエネルギーのX線を発生する機器である。癌部位に放射線(X線など)を集中するための機器の使用は外部照射治療と呼ばれる。
【0178】
γ線は放射線療法において使用される光子のもう1つの形態である。γ線は、ある種の元素(ラジウム、ウラニウム及びコバルト60など)が分解または崩壊するときに放射線を放出するのと同時に発生する。各々の元素は特定の速度で崩壊し、γ線及び他の粒子の形態でエネルギーを発する。X線とγ線は癌細胞に同じ作用を及ぼす。
【0179】
癌細胞に放射線を送達するためのもう1つの手法は、放射性インプラントを直接腫瘍または体腔に設置することである。これは内部放射線療法と呼ばれる。(近接照射療法、組織内照射、及び腔内照射は内部放射線療法の種類である。)この治療では、放射線の線量は小さな領域に集中され、患者は数日間病院に入院する。内部放射線療法は、舌、子宮及び頸部の癌のためにしばしば使用される。
【0180】
放射線療法へのいくつかの新しいアプローチが、癌を治療する上でのそれらの有効性を判定するために評価されている。1つのそのような手法が術中照射であり、手術の間に高い線量の外部放射線を腫瘍とその周囲の組織に照射する。
【0181】
もう1つの試験的アプローチは粒子線治療である。このタイプの治療は、限局性癌を治療するために高速移動亜原子粒子の使用を含むという点で光子放射線療法と異なる。この手法のための必要な粒子を生成し、加速するには洗練された機器が必要とされる。一部の粒子(中性子、パイオン及び重イオン)は、組織を通過するときの飛跡に沿ってX線またはγ線よりも多くのエネルギーを与え、従ってそれらがぶつかる細胞により大きな損傷を生じさせる。このタイプの放射線は、しばしば高線エネルギー付与(高LET)放射線と称される。
【0182】
2種類の治験薬が、放射線を受ける細胞へのそれらの作用に関して検討されている。放射線増感剤は腫瘍細胞をより損傷しやすくし、放射線防護剤は正常組織を放射線の作用から保護する。熱の使用、すなわち温熱療法も、組織を放射線に対して感作する上での有効性に関して検討されつつある。
【0183】
放射性シードインプラントは、初期疾患を有する適切な患者に対して前立腺の腺癌のための単独治療様式として使用することができる。2つの最も一般的なソースはヨウ素−125及びパラジウム−103であり、一方が他方よりも優れているという説得力のある臨床データはない。放射性シードインプラントは、周囲の正常構造への線量を最小限に抑えながら、前立腺への線量を最大化するために患者の前立腺に合わせて個別に作製することができる。前立腺近接照射療法は、前立腺の腺癌に対して最も高いレベルの原体照射治療を提供する。トーマス・ジェファーソン大学の前立腺近接照射療法チームは前立腺近接照射療法に広汎な経験を有し、国内及び国際的なフォーラムでその研究を発表している。
【0184】
前立腺近接照射療法または放射性シードインプラントは、多数の小さな放射性シードを直接前立腺の内部に埋め込むことによって放射線エネルギーを送達し、「徹底的に(from the inside−out)」治療を有効に送達する、高度の技術を必要とする操作者依存性の方法である。これは、1回処置として、全身麻酔下に処置室で実施される。これらのシードは、前立腺の周囲の正常で健康な組織をほとんど損なわずに、高い線量の放射線を直接腫瘍に送達することができる。これは、一部の状況では三次元原体放射線療法と組み合わせてもよい。
【0185】
他の最近の放射線療法の研究は、放射線の線量を癌部位に直接送達するための放射性標識抗体の使用に集中してきた(放射免疫療法)。抗体は、抗原(免疫系によって異物として認識される物質)の存在に応答して身体によって産生される高度特異的タンパク質である。一部の腫瘍細胞は、腫瘍特異抗体の産生の引き金となる特異性抗原を含む。これらの抗体を実験室で大量に生産し、放射性物質に結合することができる(放射性同位元素標識として知られる工程)。ひとたび体内に注入されると、抗体は積極的癌細胞を探索し、放射線の細胞死滅(細胞傷害性)作用によってそれらを破壊する。このアプローチは健常細胞への放射線損傷の危険性を最小限に抑えることができる。この手法の成功は、適切な放射性物質の特定及びこの方法で送達できる放射線の安全且つ有効な線量の決定の両方に依存する。
【0186】
放射線療法は、単独でもしくは化学療法または手術と組み合わせて使用しうる。すべての形態の癌治療と同様に、放射線療法は副作用を有しうる。放射線による治療の起こりうる副作用は、治療領域における一時的または永続的な脱毛、皮膚刺激、治療領域の皮膚の色の一時的な変化及び疲労を含む。他の副作用は主として治療する身体の部分に依存する。
【0187】
(温熱療法)
身体組織を高温(106°Fまで)に曝露する手法である温熱療法は、癌の治療におけるその有効性を評価するための試験が進行中である。熱は、細胞を損傷するまたは生存に必要な物質を欠乏させることによって腫瘍を縮小するのを助けうる。温熱療法は、外部及び内部加熱装置を使用する、局所(local)、領域(regional)及び全身温熱療法でありうる。温熱療法は、それらの有効性を高める試みとしてほとんど常に他の形態の治療(放射線療法、化学療法及び生物学的療法)と共に使用される。
【0188】
局所(local)温熱療法は、腫瘍などの非常に小さな領域に適用される熱を指す。身体の外部の装置から腫瘍を目標として高周波で前記領域を外的に加熱しうる。内部加熱を達成するためには、細い加熱ワイヤまたは温水を満たした中空チューブ;移植マイクロ波アンテナ;及び高周波電極を含む、いくつかのタイプの無菌プローブの1つを使用しうる。
【0189】
領域(regional)温熱療法では、器官または四肢を加熱する。高エネルギーを発生する磁石と装置を加熱する部位の上に設置する。灌流と呼ばれるもう1つのアプローチでは、患者の血液の一部を取り出し、加熱して、その後内的に加熱する部位に送り込む(灌流する)。
【0190】
全身加熱は、身体全体に広がった転移性癌を治療するために使用される。これは、温水ブランケット、高温ワックス、誘導コイル(電気毛布におけるもののような)、またはサーマルチャンバー(大きなインキュベーターに類似する)を用いて達成できる。
【0191】
温熱療法は、放射線副作用または合併症の著明な上昇を引き起こさない。皮膚に直接適用される熱は、しかしながら、治療される患者の約半数に不快な、またさらには重大な局所痛を引き起こしうる。また水疱を生じさせることもあるが、一般には迅速に治癒する。あまり一般的ではないが、熱傷を引き起こすこともある。
【0192】
(光線力学的療法)
光線力学的療法(PDT、光放射線療法、光線療法または光線化学療法とも呼ばれる)は一部の種類の癌のための治療である。これは、光感作物質として知られるある種の化学物質は、単細胞生物を特定の種類の光線に曝露したとき、その生物を死滅させることができるという発見に基づく。PDTは、光感作物質と組み合わせた固定周波数レーザー光の使用を通して癌細胞を破壊する。
【0193】
PDTでは、光感作物質を血流に注入し、身体全体の細胞によって吸収させる。前記物質は、正常細胞よりも長い時間癌細胞中にとどまる。処置した癌細胞をレーザー光に曝露したとき、光感作物質が光を吸収して、処置した癌細胞を破壊する活性形態の酸素を生産する。光曝露は、光感作物質の大部分が健常細胞にはもはや存在しないが癌細胞にはまだとどまっているときに起こるように慎重に時間設定しなければならない。
【0194】
PDTで使用するレーザー光は、光ファイバー(非常に細いガラス繊維)を通して送達することができる。光ファイバーを癌の近くに設置し、適切な量の光線を送達する。肺癌の治療のために気管支鏡を通して、もしくは食道癌の治療のために食道への内視鏡を通して、光ファイバーを送達することができる。
【0195】
PDTの利点は、健常組織に最小限の損傷しか生じさせないことである。しかし、現在使用されているレーザー光は約3cm以上の組織(1と1/8インチより少し大きい)を通過することができないので、PDTは主として、皮膚上または皮膚のすぐ下の腫瘍もしくは内臓の内壁の腫瘍を治療するために使用される。
【0196】
光線力学的療法は、治療後6週間以上、皮膚と眼を光感受性にする。患者は少なくとも6週間は直射日光及び明るい屋内光を避けるように勧められる。患者が屋外に出なければならない場合は、サングラスを含む保護衣を着用する必要がある。PDTの他の一時的な副作用は、特定領域の治療に関連し、咳、嚥下障害、腹痛、及び呼吸に伴う痛みまたは短呼吸を含みうる。
【0197】
1995年12月に、米国食品医薬品局(FDA)は、閉塞を引き起こしている食道癌の症状を緩和するため及びレーザー単独では十分に治療できない食道癌に関して、ポルフィマーナトリウムまたはPhotofrin(登録商標)と呼ばれる光感作物質を承認した。1998年1月には、FDAは、肺癌のための通常治療が適切でない患者における初期非小細胞肺癌の治療に関してポリフィマーナトリウムを承認した。国立癌研究所及び他の施設は、膀胱、脳、喉頭及び口腔の癌を含むいくつかの種類の癌についての光線力学的療法の使用を評価する臨床試験(研究試験)を援助している。
【0198】
(レーザー療法)
レーザー療法は、癌細胞を破壊するための高輝度光線の使用を含む。この手法はしばしば出血または閉塞などの癌の症状を緩和するため、特に癌が他の処置では治療できないときに使用される。また、腫瘍を縮小または破壊することによって癌を治療するためにも使用しうる。
【0199】
「レーザー」という用語は、輻射の誘導放出による光の増幅を表す。電球からのような通常の光は多数の波長を有し、すべての方向に広がる。レーザー光は、他方で、特定波長を有し、狭いビームに集中される。この種の高輝度光は大きなエネルギーを含む。レーザーは非常に強力であり、鋼を貫通するためまたはダイアモンドを成形するために使用しうる。レーザーはまた、眼の損傷した網膜の修復または組織の切開(メスの代わりに)などの非常に精密な手術作業のためにも使用できる。
【0200】
いくつかの異なる種類のレーザーが存在するが、医学においては3種類だけが広く使用されている:
【0201】
・二酸化炭素(CO2)レーザー―この種のレーザーは、深層に貫入することなく皮膚表面から薄層を除去することができる。この手法は、皮膚深くに広がっていない腫瘍及びある種の前癌状態を治療する上で特に有用である。伝統的なメス手術の代替法として、CO2レーザーは皮膚を切除することができる。レーザーはこのようにして皮膚癌を除去するために使用される。
【0202】
・ネオジミウム:イットリウム−アルミニウム−ガーネット(Nd:YAG)―レーザー:このレーザーからの光は他の種類のレーザーからの光よりも組織内により深く貫入し、血液を迅速に凝固させることができる。光ファイバーを通して身体のアクセスしにくい部分に送達することができる。この種のレーザーは、時として咽喉癌を治療するために使用される。
【0203】
・アルゴンレーザー―このレーザーは組織の表在層だけを通過することができ、従って皮膚科学及び眼手術において有用である。また光線力学的療法(PDT)として知られる手技において腫瘍を治療するために光感受性染料と共に使用される。
【0204】
レーザーは、標準手術ツールと比べて以下を含むいくつかの利点を有する:
【0205】
・レーザーはメスよりも精密である。周囲の皮膚または他の組織とはほとんど接触しないので、切開近くの組織が保護される。
【0206】
・レーザーによって生じる熱は手術部位を滅菌し、従って感染の危険性を低下させる。
【0207】
・レーザーの精密さはより小さな切開を可能にするので、より短い手術時間を必要とすると考えられる。
【0208】
・治癒時間がしばしば短縮される;レーザーの熱が血管を密封するので、出血、腫脹または瘢痕化がより少ない。
【0209】
・レーザー手術はより複雑でないと考えられる。例えば、光ファイバーによって、大きな切開を行わずにレーザー光を身体の部分に送達することができる。
【0210】
・より多くの手技を外来患者ベースで行うことができる。
【0211】
レーザー手術には難点もある:
【0212】
・レーザー手術に熟達した外科医が比較的少ない。
【0213】
・レーザー装置は、メスのような通常の手術ツールと比べて高価でかさばる。
【0214】
・手術室では厳密な安全性対策が遵守されねばならない。(例えば、手術チームと患者は眼の保護具を使用しなければならない)。
【0215】
レーザーは、癌を治療するために2つの方法:熱で腫瘍を縮小または破壊することによって、もしくは癌細胞を破壊する化学物質―光感作物質として知られる―を活性化することによって、使用できる。PDTでは、光感作物質は癌細胞内にとどまって、光によって誘導されて癌細胞を死滅させる反応を引き起こすことができる。
【0216】
CO2及びNd:YAGレーザーは腫瘍を縮小するまたは破壊するために使用される。それらは、医師が膀胱などの身体の一定領域の内部を見ることを可能にする管である、内視鏡と共に使用しうる。一部のレーザーからの光は、光ファイバーに取り付けられたフレキシブル内視鏡を通して伝達されうる。これは、医師が、手術による以外は到達することができなかった身体の部分を見て、そこで作業することを可能にし、従ってレーザービームの非常に精密な照準合わせを可能にする。レーザーはまた、低倍率顕微鏡と共に使用してもよく、医師に治療する部位の明瞭な像を提供する。他の機器と共に使用すると、レーザーシステムは直径200ミクロンという小さな―非常に微細な糸の幅以下の―切開領域を作製することができる。
【0217】
レーザーは多くの種類の癌を治療するために使用される。レーザー手術は、一定の病期の声門(声帯)、頸部、皮膚、肺、膣、外陰及び陰茎の癌のための標準治療である。
【0218】
癌を破壊するための使用に加えて、レーザー手術はまた、癌によって引き起こされる症状を緩和するのを助けるためにも使用される(待機治療)。例えばレーザーは、患者の気管を遮断している腫瘍を縮小または破壊するために使用されて、呼吸を容易にすることができる。また時として、結腸直腸及び肛門癌における緩和のためにも使用される。
【0219】
レーザー誘起間質温熱療法(LITT)はレーザー治療における最も新しい開発の1つである。LITTは、温熱療法と呼ばれる癌治療と同じ概念を利用する。つまり熱は、細胞を損傷するまたは細胞が生存するために必要な物質を欠如させることによって腫瘍が縮小するのを助けうる。この治療では、レーザーは体内の間質領域(器官の間)に向けられる。次にレーザー光が腫瘍の温度を上昇させ、それが癌細胞を損傷または破壊する。
【0220】
(遺伝子治療)
遺伝子治療は、疾患と闘うために生体細胞の遺伝物質を修飾することを含む実験的医療介入である。遺伝子治療は多くの異なる種類の癌及び他の疾患のために臨床試験(ヒトに関する研究試験)において検討されている。
【0221】
遺伝子治療の目標の1つは、健常コピー数の欠落または変化した遺伝子を細胞に供給することである。患者に薬剤を投与する代わりに、医師は、患者の細胞の一部の遺伝子構造を変化させることによって問題を矯正しようとする。この方法で治療しうる疾患の例は、嚢胞性線維症及び血友病を含む。
【0222】
遺伝子治療はまた、例えば癌細胞を攻撃するように免疫系細胞を刺激することによって、細胞の機能の仕方を変化させる方法としても検討されている。
【0223】
一般に、遺伝子は「ベクター」を用いて細胞に送達される。遺伝子治療において使用される最も一般的なタイプのベクターはウイルスである。遺伝子治療においてベクターとして使用されるウイルスは遺伝的に不能化される、つまり自らを複製することができない。大部分の遺伝子治療臨床試験は、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ポックスウイルス及びヘルペスウイルスを含む。
【0224】
遺伝子治療はエキソビボ及びインビボの両方で実施することができる。ほとんどのエキソビボ遺伝子治療臨床試験では、患者の血液または骨髄からの細胞を取り出して、実験室で増殖させる。それらの細胞を、所望遺伝子を担持するウイルスに曝露する。ウイルスは細胞に入り込み、所望遺伝子は細胞のDNAの一部となる。細胞を実験室で増殖させ、その後静脈に注入することによって患者に戻す。インビボ遺伝子治療では、ベクターまたはリポソームを使用して所望遺伝子を患者の体内の細胞に送達する。
【0225】
(免疫療法)
免疫系が壊れるかまたは適切に機能していないとき、癌が発現しうる。免疫療法は、癌と戦うためまたは一部の癌治療によって引き起こされることがある副作用を軽減するために、直接または間接的に身体の免疫系を利用する。免疫療法は免疫系の応答を修復、刺激または増強するように設計される。
【0226】
免疫系細胞は以下を含む:リンパ球は、血液中及び身体の他の多くの部分で認められる白血球の一種である。リンパ球の種類は、B細胞、T細胞及びナチュラルキラー細胞を含む。B細胞(Bリンパ球)は、抗原として知られる異物を認識し、それに結合するタンパク質である抗体(免疫グロブリン)を分泌するプラスマ細胞へと成熟する。B細胞の各々の型が、1つの特異抗原を認識する1つの特異抗体を産生する。T細胞(Tリンパ球)は、感染、外来または癌性細胞を直接攻撃する。T細胞はまた、他の免疫系防御因子にシグナル伝達することによって免疫応答を調節する。T細胞は主として、リンホカインと呼ばれるタンパク質を生産することによって働く。ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、いかなる外来侵入体にも結合して死滅させる強力な化学物質を生産する。それらは、最初に特異抗原を認識する必要なしに攻撃する。単球は、食作用として知られる過程において顕微鏡的生物及び粒子を飲み込んで消化することができる白血球である。単球はまた、組織内を移動してマクロファージになることができる。
【0227】
免疫系の細胞は、2種類のタンパク質:抗体及びサイトカインを分泌する。抗体は、抗原に接着するまたは結合することによって抗原に応答する。特異抗体は特異抗原にマッチし、鍵が錠に適合するようにぴったり合う。サイトカインは、他の細胞と連絡するために一部の免疫系細胞によって生産される物質である。サイトカインの種類は、リンホカイン、インターフェロン、インターロイキン及びコロニー刺激因子を含む。細胞傷害性サイトカインは、細胞傷害性T細胞と呼ばれるT細胞の一種によって放出される。これらのサイトカインは癌細胞を直接攻撃する。
【0228】
非特異的免疫調節剤は、免疫系を刺激するまたは間接的に増強する物質である。しばしば、これらの物質は鍵となる免疫系細胞を標的し、サイトカイン及び免疫グロブリンの産生上昇などの二次応答を生じさせる。癌治療において使用される2つの非特異的免疫調節剤は、カルメット−ゲラン杆菌(BCG)及びレバミゾールである。結核ワクチンとして広く使用されてきたBCGは、手術後の表在性膀胱癌の治療において使用される。BCGは、炎症反応、場合によっては免疫応答を刺激することによって働きうる。BCGの溶液は、膀胱内に点滴注入されてそこに約2時間とどまり、その後患者は排尿によって膀胱を空にすることを許可される。この治療は通常、週に1回、6週間にわたって実施される。レバミゾールは、手術後のIII期(デュークス分類のC)結腸癌の治療においてフルオロウラシル(5−FU)化学療法と共に使用される。レバミゾールは低下した免疫機能を修復するように作用しうる。
【0229】
一部の抗体、サイトカイン及び他の免疫系物質は、癌治療における使用のために実験室で生産することができる。これらの物質はしばしば生物学的応答調節物質(BRM)と呼ばれる。それらは、身体の免疫防御と癌細胞の間の相互作用を、疾患と戦う身体の能力を上昇させる、指令するまたは修復するように変化させる。BRMは、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、モノクローナル抗体及びワクチンを含む。免疫療法は、癌の増殖を可能にする過程を停止する、制御するまたは抑制するため;癌細胞をより認識可能にし、従って免疫系による破壊に対してより感受性にするため;T細胞、NK細胞及びマクロファージなどの免疫系の殺傷力を上昇させるため;健常細胞のような行動を促進するように癌細胞の増殖作用を変化させるため;正常細胞または前癌細胞を癌性細胞に変化させる過程を遮断するまたは逆転させるため;化学療法または照射など他の形態の癌治療によって損傷または破壊された正常細胞を修復または置換する身体の能力を高めるため;及び癌細胞が身体の他の部分に広がるのを防ぐために使用しうる。
【0230】
一部のBRMは、ある種の癌のための治療の標準的な部分であり、また別のBRMは臨床試験において検討されている。BRMは単独でまたは互いに組み合わせて使用される。それらはまた、放射線療法及び化学療法などの他の治療と共に使用される。
【0231】
インターフェロン(IFN)は体内で自然に生じるタイプのサイトカインである。それらはBRMとしての使用のために実験室で生産された初めてのサイトカインであった。3つの主要な種類のインターフェロン:インターフェロンα、インターフェロンβ及びインターフェロンγがあり、インターフェロンαが癌治療において最も広く使用されている種類である。インターフェロンは、癌患者の免疫系が癌細胞に対して作用する方法を改善することができる。加えて、インターフェロンは、癌細胞の増殖を緩慢化するまたはより正常な行動を有する細胞への発達を促進することによって癌細胞に直接作用しうる。一部のインターフェロンはまた、NK細胞、T細胞及びマクロファージを刺激して、免疫系の抗癌機能を上昇させうる。米国食品医薬品局(FDA)は、毛様細胞性白血病、黒色腫、慢性骨髄性白血病及びAIDSに関連するカポジ肉腫を含む一部のタイプの癌の治療に関してインターフェロンαの使用を承認した。試験は、インターフェロンαが転移性腎臓癌及び非ホジキンリンパ腫などの他の癌を治療する上でも有効でありうることを示した。
【0232】
インターフェロンと同様に、インターロイキン(IL)は、体内で自然に生じるサイトカインであり、実験室で作製することができる。多くのインターロイキンが特定されている:インターロイキン−2(IL−2またはアルデスロイキン)は癌治療において最も広く検討されてきた。IL−2は、癌細胞を破壊することができる、リンパ球などの多くの免疫細胞の増殖と活性を刺激する。FDAは、転移性腎臓癌及び転移性黒色腫の治療に関してIL−2を承認した。
【0233】
コロニー刺激因子(CSF)(時として造血成長因子と呼ばれる)は通常、腫瘍細胞に直接には影響を及ぼさない。それらは骨髄幹細胞が白血球、血小板及び赤血球へと分裂し、発達するのを促進する。骨髄はすべての血球の供給源であるので、身体の免疫系にとって決定的に重要である。CSFによる免疫系の刺激は癌治療を受けている患者に有益でありうる。抗癌薬は白血球、赤血球及び血小板を製造する身体の能力を損なう可能性があるので、抗癌薬を摂取している患者は、感染の発症、貧血及びよりたやすく出血するという危険性が高まる。血球産生を刺激するためにCSFを使用することにより、医師は、感染の危険度を上昇させることなくまたは血液製剤の輸血を必要とせずに、抗癌薬の用量を増加することができる。CSFは、高用量化学療法と組み合わせたときに特に有用である。癌治療におけるCSF及びそれらの使用の一部の例は以下の通りである:G−CSF(フィルグラスチム)及びGM−CSF(サルグラモスチム)は白血球数を増加させることができ、それによって化学療法を受けている患者の感染の危険度を低下させる。G−CSF及びGM−CSFはまた、幹細胞または骨髄移植のための準備として幹細胞の産生を刺激することができる。エリスロポエチンは赤血球数を増加させ、化学療法を受けている患者において赤血球輸血の必要性を低下させることができる。そしてオプレルベキンは、化学療法を受けている患者において血小板輸血の必要性を低下させることができる。
【0234】
CSFは、一部のタイプの白血病、転移性結腸直腸癌、黒色腫、肺癌及び他の種類の癌を治療するために臨床試験において使用されている。
【0235】
モノクローナル抗体(MOAB)も癌治療において評価されつつある。これらの抗体は、単一細胞型によって生産され、1つの特定抗原に対して特異的である。治療されている癌細胞の表面上に認められる抗原に特異的なMOABが作製されている。
【0236】
MOABは、マウスの免疫系がヒト癌細胞に対する抗体を産生するように、ヒト癌細胞をマウスに注入することによって作られる。次に、抗体を産生するマウス細胞を取り出し、実験室で増殖させた細胞と融合して、ハイブリドーマと呼ばれる「雑種」細胞を創造する。ハイブリドーマは、大量のこれらの純粋な抗体またはMOABを無期限に生産することができる。MOABは癌治療において多くの方法で使用しうる:特定の型の癌と反応するMOABは、その癌に対する患者の免疫応答を増強しうる。MOABは細胞増殖因子に対して作用するようにプログラムすることができ、従って癌細胞の増殖に干渉しうる。MOABは、抗癌薬、放射性同位元素(放射性物質)、他のBRMまたは他の毒素に連結しうる。抗体が癌細胞に接着したとき、これらの毒を直接腫瘍に送達し、それを破壊するのを助ける。MOABは、骨髄移植の準備として患者から取り出した骨髄において癌細胞を破壊するのを助けうる。放射性同位元素を担持するMOABはまた、結腸直腸、卵巣及び前立腺などの一部の癌を診断する上で有用であることも証明されうる。
【0237】
Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)及びHerceptin(登録商標)(トラスツズマブ)はFDAによって承認されたモノクローナル抗体の例である。Rituxanは、改善期間後に再発したまたは化学療法に応答しなかったB細胞非ホジキンリンパ腫の治療のために使用される。Herceptinは、HER−2と呼ばれるタンパク質を過剰に生産する腫瘍を有する患者において転移性乳癌を治療するために使用される。(乳癌の約25%が過剰量のHER−2を生産する。)MOABは、リンパ腫、白血病、結腸直腸癌、肺癌、脳腫瘍、前立腺癌及び他の種類の癌を治療するための臨床試験において検討が始められている。
【0238】
癌ワクチンは、現在試験下にあるもう1つの形態の免疫療法である。麻疹、流行性耳下腺炎及び破傷風などの感染疾患のためのワクチンは、身体の免疫細胞を病原菌の表面に存在する弱毒化形態の抗原に曝露するので、有効である。この曝露は、免疫細胞に、抗体を産生するプラスマ細胞をより多く生産させる。病原菌を認識するT細胞も増加する。これらの活性化細胞はその後この曝露を記憶する。次回病原菌が体内に入ってきたときには、免疫系の細胞は既に感染に応答して停止させる準備が整っている。
【0239】
癌治療のために、研究者達は、患者の免疫系が癌細胞を認識するのを促進しうるワクチンを開発中である。これらのワクチンは、身体が腫瘍を拒絶し、癌の再発を防ぐのを助けうる。感染症に対するワクチンと異なって、癌ワクチンは、疾患が発現する前ではなく疾患が診断された後に注入されるように設計される。腫瘍が小さいときに投与される癌ワクチンは、癌を根絶することができる可能性がある。初期癌ワクチン臨床試験(複数の人達に関する研究試験)は主として黒色腫の患者を含んだ。現在、癌ワクチンは、リンパ腫及び腎臓、乳房、卵巣、前立腺、結腸及び直腸の癌を含む、他の多くの種類の癌の治療においても試験されている。研究者達はまた、癌ワクチンを他のBRMと組み合わせて使用できる方法も検討中である。
【0240】
他の形態の癌治療と同様に、生物学的療法は、患者によって大きく異なることがある、多くの副作用を引き起こしうる。発疹または腫脹が、BRMを注入した部位に発現することがある。インターフェロン及びインターロイキンを含むいくつかのBRMは、発熱、悪寒、吐気、嘔吐及び食欲不振を含むインフルエンザ様の症状を引き起こしうる。疲労はBRMのもう1つの一般的な副作用である。血圧も影響を受けることがある。IL−2の副作用は、投与する用量に依存して、しばしば重篤でありうる。治療の間は患者を厳重に監視する必要がある。CSFの副作用は、骨痛、疲労、発熱及び食欲不振を含みうる。MOABの副作用は様々であり、深刻なアレルギー反応が起こりうる。癌ワクチンは筋痛及び発熱を引き起こしうる。
【0241】
(感作組成物及び方法−用量、投与様式及び医薬製剤)
本発明は、SPARCファミリーポリペプチドまたはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド及び治療薬を含む組成物を提供する。SPARCポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、前記治療薬による治療に対して癌細胞または患者を感作するための治療上有効な量として提供される。
【0242】
前記治療薬は、ここで述べる及び当技術分野で公知である特定治療のための適切な薬剤でありうる。前記薬剤は、化学療法剤、すなわち薬剤、例えば5−フルオロウラシルでありえ、放射能標識抗体、放射性感作物質または放射性シードインプラントなどの放射性物質でありうる。治療薬はまた、ポルフィマーナトリウムなどの光感作物質または遺伝子治療薬(例えばベクター)であるか、もしくは免疫細胞、抗体またはサイトカインなどの免疫療法剤でありうる。
【0243】
本発明は、SPARCファミリーポリペプチド及び化学療法抵抗性細胞を含む組成物を提供する。
【0244】
本発明はまた、SPARCファミリーポリヌクレオチドに作動可能に連結された異種転写制御領域を含む組換え細胞を提供する。
【0245】
試料または哺乳動物を癌治療に対して感作することに加えて、本発明の前記組成物の使用は治療の用量を低下させることができ、従って癌治療によって引き起こされる副作用を減少させる。
【0246】
前記組成物は、製薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物でありうる。
【0247】
ここで使用する「担体」は、APCを適切なインビトロまたはインビボ作用部位に送達するための媒体として適する物質を指す。それ自体で、担体は、APCを含む治療または実験試薬の製剤のための賦形剤として働きうる。好ましい担体は、APCをT細胞と相互作用できる形態に維持することができる。そのような担体の例は、水、リン酸緩衝食塩水、食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス液及び他の水性生理的平衡液または細胞用培地を含むが、これらに限定されない。水性担体はまた、レシピエントの生理的条件に近づけるため、例えば化学的安定性と等張性の上昇に必要とされる適切な補助剤を含みうる。適切な補助剤は、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン及びリン酸緩衝液、トリス緩衝液及び重炭酸緩衝液を生成するために使用される他の物質を含む。
【0248】
SPARCファミリーポリペプチドと治療薬を含む組成物は、癌試料を有効量の精製SPARCファミリーポリペプチドと直接接触させることによってインビトロで癌を感作するために使用しうる。哺乳動物(例えば癌患者)にSPARCファミリーポリペプチドを含む組成物を投与して、インビボでの感作作用を達成することができる。加えて、細胞または組織のいずれかの癌試料を哺乳動物から入手し、SPARCファミリーポリペプチドをエキソビボで用いて感作した後、哺乳動物にもどしてもよい。
【0249】
本発明のSPARCファミリーポリヌクレオチドは、癌細胞の応答を感作するためにインビトロで癌細胞に導入してよく、または当技術分野で公知であり、ここで前述したような適切なベクターを通してインビボで哺乳動物に送達してもよい。加えて、前記ポリヌクレオチドは、その必要のある哺乳動物から得た癌細胞または組織にエキソビボで導入してもよく、その後それらの細胞または組織を前記哺乳動物に戻す。分泌タンパク質であるので、そのようなエキソビボで導入された細胞によって生産されるSPARCファミリーポリペプチドは、局所環境において修飾細胞だけでなく隣接する非修飾癌細胞も感作するように機能しうる。
【0250】
組換え細胞を含む組成物を感作治療のために哺乳動物に導入してもよい。
【0251】
対象用量サイズ、投与回数、投与頻度及び投与様式は、当技術分野で公知の方法を用いて決定し、最適化することができる(例えばHardmanら,Ceds 1995,グッドマンとギルマンの薬剤基礎治療学(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics),第9版,McGraw−Hill参照)。
【0252】
様々な患者を治療する時の各々の療法の用量は当技術分野において公知であり、熟達した医師によって決定されうる。例えば適切なSPARCポリペプチド用量は、1日につきレシピエントのキログラム体重当りSPARCポリペプチド0.01−100mgの範囲内、好ましくは1日につきキログラム体重当り0.2−10mgの範囲内でありうる。本発明のSPARCポリヌクレオチドは、1日につきレシピエントのキログラム体重当りポリヌクレオチド0.01−100mgの範囲内、好ましくは1日につきキログラム体重当り0.2−10mgの範囲内の適切な用量で投与しうる。組換えSPARCファミリーポリヌクレオチドを含む細胞は、レシピエントのキログラム体重当り104−1010個の範囲内、好ましくはレシピエントのキログラム体重当り106−108個の範囲内の用量で投与しうる。所望用量を好ましくは1日1回投与するが、1日を通して適切な間隔で2、3、4、5、6またはそれ以上の小分け用量として投与してもよい。これらの小分け用量は、例えば単位投与形態につきSPARCファミリーポリペプチド10−1500mg、好ましくは20−1000mg、最も好ましくは50−700mgを含む単位投与形態として投与してもよい。SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリヌクレオチド、もしくは本発明に従った有用な組換えSPARCファミリーポリペプチドを含む細胞の用量は、治療または予防する条件及び使用するSPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドの特性(identity)に依存して異なる。本発明に包含される個々の組成物についての有効用量及びインビボ半減期の評価は、ここで述べるマウスモデルのような動物モデルを使用したインビボ試験またはより大きな哺乳動物へのそのような方法の適合に基づいて行うことができる。
【0253】
(インビトロ/エキソビボ適用)
本発明によって提供される組成物は、当技術分野で公知の方法を用いて、及びここで前述したように、インビトロで癌細胞を感作するために使用しうる。従って、本発明は、癌試料を、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量に接触させることを含む、癌細胞を治療処置に対して感作するための方法を提供する。本発明はまた、(1)哺乳動物から癌試料を得ること;(2)前記癌試料を、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量に接触させること;及び(3)(2)の接触後に癌試料を哺乳動物に戻すこと、を含む、癌と診断された哺乳動物を治療処置に対してエキソビボで感作するための方法を提供する。
【0254】
エキソビボ遺伝子治療は、動物からの細胞の単離、インビトロでの前記細胞へのポリヌクレオチドの送達、及びその後修飾細胞を動物に戻すこと、を指す。これは、動物からの組織/器官の手術による切除または細胞及び組織の一次培養を含みうる。その全体が参照してここに組み込まれる、Andersonらの米国特許第5,399,346号は、エキソビボ治療法を開示している。SPARCファミリーポリペプチドは分泌ポリペプチドであるので、この方法が適用できる。修飾細胞を哺乳動物に戻すことは、SPARCファミリーポリペプチドの細胞外濃度を局所的に上昇させ、従って、修飾細胞に近接する非修飾癌細胞を感作しうる。
【0255】
エキソビボ適用のために組織試料を哺乳動物から採取する必要あるときは、脳、心臓、肺、リンパ節、眼、関節、皮膚及びこれらの器官に関連する新生物を含むがそれらに限定されない、患者の組織生検から細胞抽出物を調製しうる。「組織生検」はまた、血液、血漿、痰、尿、脳脊髄液、洗浄液及び白血球搬出法(leukophoresis)試料を含むがこれらに限定されない、生体液の収集を包含する。好ましい実施形態では、本発明に従った「組織生検」は、乳房、卵巣または前立腺の腫瘍から採取される。「組織生検」は、針吸引及び皮膚のパンチ生検を含む、当技術分野で周知の手法を用いて得られる。
【0256】
一般に、ポリヌクレオチドを培養中の細胞に導入するとき(例えば前述した形質移入手法の1つによって)、典型的には細胞の小さな分画だけが(105個のうちで約1個)形質移入されたポリヌクレオチドをそれらのゲノム内に組み込む(すなわちポリヌクレオチドはエピソームとして細胞内に維持される)。従って、外来性ポリヌクレオチドを取り込んだ細胞を特定するためには、ここで前述したように、選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを対象ポリヌクレオチド、すなわちSPARCファミリーポリヌクレオチドと共に細胞に形質移入することが好都合である。
【0257】
(インビボ適用)
本発明によって提供される組成物は、例えば治療処置を感作する方法において、哺乳動物に投与することができる。そこで本発明は、癌と診断された哺乳動物に、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量を投与することを含む、前記哺乳動物を治療処置に対してインビボで感作するための方法を提供する。
【0258】
本発明の組成物の投与の方法は、送達についての特定の目的、患者の全体的な健康及び状態、及び標的媒体を投与する医師または技術者の判断に依存しうる。本発明の組成物は、様々な方法を用いて動物に投与することができる。そのような送達方法は、非経口、局所、経口または皮内などの局所投与を含みうる。組成物は、投与方法に依存して様々な単位投与形態で投与できる。本発明の組成物のための好ましい送達方法は、静脈内投与、例えば注入、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射及び吸入による局所投与(例えば腫瘍内)を含む。特定送達様式のために、本発明の組成物を本発明の賦形剤中に製剤することができる。本発明の組成物はいかなる動物にも投与でき、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに投与できる。
【0259】
注射:注射用途に適する医薬剤型は、無菌注射用溶液または分散液の即時調製のための無菌水溶液または分散及び無菌粉末を含む。すべての場合に剤型は無菌でなければならず、容易に注射器で使用できる程度に流体でなければならない。製造及び保存条件下で安定でなければならず、また細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されねばならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオル(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物及び植物油を含む溶媒または分散媒質でありうる。例えばレシチンなどの被覆物の使用によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって及び界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等、によって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期的な吸収は、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン、を組成物中で使用することによって達成できる。
【0260】
無菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を前記で列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒に組込み、その後必要に応じてろ過滅菌することによって調製される。一般に、分散は、様々な滅菌した有効成分を、基本分散媒質及び前記で列挙した中から必要な他の成分を含む滅菌媒体に組み込むことによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合は、調製のための好ましい方法は、あらかじめ無菌濾過したそれらの溶液から有効成分の粉末に加えての付加的な所望成分を生成する、真空乾燥及び凍結乾燥手法である。
【0261】
(経口投与):経口投与用の医薬組成物は、当技術分野で周知の製薬上許容される担体を経口投与に適した用量で使用して製剤される。そのような担体は、医薬組成物を、患者による摂取のための錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として製剤することを可能にする。
【0262】
経口投与用の医薬組成物は、固体賦形剤と活性化合物を組み合わせ、場合により生じた混合物を粉砕して、所望に応じて適切な補助剤を添加した後、錠剤または糖衣丸コアを得るために顆粒の混合物を加工することを通して入手される。適切な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類などの炭水化物またはタンパク質充填剤;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモまたは他の植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;及びアラビアゴム及びトラガカントゴムを含むゴム;及びゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質である。所望の場合は、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムのようなその塩などの、崩壊剤または可溶化剤を添加しうる。
【0263】
糖衣丸コアは、アラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール及び/または二酸化チタン、ラッカー溶液及び適切な有機溶媒または溶媒混合物を同時に含んでいてもよい、濃縮糖溶液などの適切な被覆物と共に提供される。製品の特定のためまたは活性化合物の量、すなわち用量を特徴付けるために、染料または色素を錠剤または糖衣丸被覆物に添加してもよい。
【0264】
経口で使用される医薬製剤は、ゼラチンで作られたプッシュ・フィットカプセル並びにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの被覆物でできた軟密封カプセルを含む。プッシュ・フィットカプセルは、ラクトースまたはデンプンなどの充填剤または結合剤、滑石またはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び場合により安定剤と混合した有効成分を含みうる。軟カプセルでは、活性化合物を、安定剤と共にまたは安定剤なしで、脂肪油、流動パラフィンまたは液状ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁しうる。
【0265】
(鼻投与):鼻投与のためには、透過すべき特定障壁に対して適切な浸透剤を製剤中で使用する。そのような浸透剤は一般に当技術分野で公知である。
【0266】
(皮下及び静脈内用途):皮下及び静脈内用途に関しては、本発明の組成物は、一般に緩衝液で適切なpH及び等張性に処理された、無菌水溶液または懸濁液中で提供される。適切な水性媒体は、リンガー液及び等張塩化ナトリウムを含む。本発明に従った水性懸濁液は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン及びトラガカントゴムなどの懸濁化剤、及びレシチンなどの湿潤剤を含みうる。水性懸濁液のための適切な防腐剤は、エチル及びn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートを含む。
【0267】
本発明に従った有用な組成物はまた、リポソーム製剤として提供されうる。
【0268】
本発明によって提供される組成物を使用した遺伝子治療は、例えば参照してここに組み込まれる、Friedmanにより「遺伝的疾患のための治療(Therapy for Genetic Disease)」T.Friedman編,Oxford University Press(1991),pp.105−121で述べられているような、一般に受け入れられている方法に従って実施しうる。
【0269】
本発明の医薬組成物は、当技術分野において公知の方法で、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸作製、浮揚化(levitating)、乳化、被包、捕獲または凍結乾燥工程によって製造しうる。
【0270】
適切な担体中に製剤した本発明の治療薬を含む医薬組成物を調製した後、それらを適切な容器に入れ、投与量、投与頻度及び投与方法を含む情報と共に治療適応症についてのラベルを貼付する。
【0271】
正確な用量は、治療する患者を考慮して個々の医師によって選択される。用量及び投与は、活性成分の十分なレベルを提供するようにまたは所望作用を維持するように調整される。考慮されうる付加的な因子は、疾患状態の重症度(例えば疾患の位置、患者の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬剤の組合せ、反応感受性、及び治療に対する忍容性/応答)を含む。長時間作用性医薬組成物は、個々の製剤の半減期及びクリアランス速度に依存して3−4日ごと、毎週、または2週間ごとに1回投与しうる。他の適用のための個々の用量及び送達の方法に関する一般的な手引きは文献において提供される(例えば参照してここに組み込まれる、米国特許第4,657,760号;同第5,206,344号;及び同第5,225,212号参照)。当業者は、典型的には、オリゴヌクレオチド及び遺伝子治療ベクターに関してはタンパク質またはそれらの阻害因子に関するものとは異なる製剤を用いる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、個々の細胞、状態、位置等に特異的である。
【0272】
本発明によって提供される組成物は、ペプチドまたはタンパク質と熱保護剤を含むガラス状基質相がその中に分散しており、前記ガラス状基質相がポリマーの融点よりも高いガラス転位温度を有する、生体適合性でバイオ腐食性のポリマーを含むペプチドまたはタンパク質の制御放出のための組成物を提供する、米国特許第6187330号(その全体が参照してここに組み込まれる)に述べられているように製剤しうる。ペプチドまたはタンパク質薬剤は組成物内で安定であるので、前記薬剤は、その溶融段階で、薬剤送達インプラントとして使用される適切に成形された装置、例えばロッド、薄膜、ビーズまたは他の所望形状の形態に好都合に形づくることができる。
【0273】
(治療処置に対する抵抗性または感受性の判定)
治療処置に応答する癌試料(例えば細胞または組織)の判定は、当技術分野で公知のいずれかの方法によって、例えば細胞培養薬剤耐性試験(CCDRT)によって実施できる。CCDRTは、実験室において、患者の癌を治療するために使用する薬剤に対して癌試料(例えば哺乳動物患者から採取した)を試験することを指す。この試験は、癌試料がどの薬剤に対して感受性であり、どの薬剤に対して耐性であるかを特定することができ、それは、患者においてどの薬剤がより作用する可能性が高いか及びどの薬剤が効きそうにないかを示す。癌試料(従って、患者)の感受性は、本発明によって提供される組成物での治療によって感作されうる。感作治療に関して再びCCDRTを実施し、本発明によって提供される感作組成物が特定治療に対する癌試料の応答を感作することができるか否かを判定することができる。CCDRTによって測定される応答が、感作組成物の不在下での応答に比べて少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、80%、100%(2倍)または3倍、4倍または5倍またはそれ以上まで増大した場合は、組成物は治療処置を感作すると言える。
【0274】
CCDRTは、典型的には細胞増殖アッセイ及び細胞死アッセイを含む。
【0275】
細胞増殖アッセイは細胞の増殖を測定する。これは、TanigawaとKern(前出)によって最初に記述された放射性チミジン取り込みアッセイによって実施することができる。固形腫瘍にのみ適用され、血液新生物には適用されないこのアッセイでは、軟アガロースニ懸濁舌腫瘍細胞を抗腫瘍薬の持続的存在下で4−6日間培養する。培養期間の終了時に、放射性チミジンを導入し、対照と薬剤処理培養物の間でDNAへの推定上のチミジン取り込みの差を比較する。KernとWeisenthalは、臨床相関データを解析し、「高度薬剤耐性(extreme drug resistance)」またはEDR[Kern DH,Weisenthal LM.J Natl Cancer List 1990;82:582−588]の概念を定義した。これは、比較データベースアッセイに関して中央値結果よりも1標準偏差だけ耐性であったアッセイ結果と定義された。このアッセイにおいてEDRを示す単一薬剤で治療された患者は、実質的に一度も部分的または完全な応答を示さなかった。KernとWeisenthalはまた、「低濃度薬剤耐性(low drug resistance)」(LDR)を中央値よりも低い耐性結果及び「中間薬剤耐性(intermediate drug resistance)」(IDR)を、中央値よりも耐性であるがEDRほどには耐性でない結果(言い換えると、中央値と中央値よりも1標準偏差耐性との間)と定義した。
【0276】
チミジン「EDR」アッセイに関する原理と臨床相関データは1992年に再検討された(Weisenthal LM,Kern DH.Oncology(USA)1992;5:93−103)。この時点以後は少数のフォローアップ試験しか公表されていない。そのような試験の1つは、2剤併用で使用した単一薬剤の1またはそれ以上に対するEDRは、見かけ上、虫垂及び結腸癌の腹腔内化学療法の背景において2剤併用に対する応答のより低い確率に結びつかないことを示した(Fernandez−Trigo V,Shamsa F,Vidal−Jove J,Kern DH,Sugarbaker PH.Am J Clin Oncol 1995;18:454−460)。しかし、腹腔内化学療法によって達成されうる高薬剤濃度に対する応答は、腫瘍細胞の内在性薬剤耐性よりも腫瘍への薬剤浸透とより密接に関連する可能性がある。また、パクリタキセルに対するEDRは、パクリタキセルプラス白金で治療された卵巣癌患者または原発性腹膜癌腫を有する患者においては予後因子ではないと思われることを示した(Eltabbakh GH,Piver MS,Hempling RE,ら,Gynecol Oncol 1998;70:392−397;Eltabbakh GH.J Surg Oncol 2000;73:148−152)。しかし、卵巣癌における白金に対するEDRは予後的意味を有しうることが最近報告された(Fruehauf,J.,ら,Proc ASCO,v.20,Abs 2529,2001)。また、LDR(前記で定義した)を示す腫瘍を有する、それまで治療を受けていない乳癌患者は、進行により長い時間を要し、IDRまたはEDRのいずれかを示す腫瘍を有する患者よりも良好な全体的生存率を有することが報告された(Mehta,R.S.,ら,Breast Cancer Res Treat 66:225−37,2001)。
【0277】
チミジン「EDR」アッセイは、不活性単一薬剤の特定に関して非常に高い特異性(>98%)を有するが、感受性が低い(<40%)。言い換えると、アッセイで定義された「EDR」を有する薬剤は、単一薬剤として不活性であるとほぼ確実に予測されるが(不活性薬剤と特定するための高い特異性)、「EDR」を有さない多くの薬剤もまた不活性である(不活性薬剤を特定するための低い感受性)。
【0278】
2番目の形態の細胞増殖アッセイは、特許の「細胞接着基質」上での細胞の単層増殖を比較することに基づく、接着腫瘍細胞培養系である(Ajani JA,Baker FL,Spitzer G,ら,J Clin Oncol 1987)。この公表文献において正の臨床相関も記述されている。
【0279】
一部の実施形態では、細胞増殖を測定するためにコロニー形成アッセイが使用される。この試験では、軟寒天(寒天をゲル化剤として含む組織培養用培地;半固体寒天とも称される)または例えばメチルセルロース、血漿ゲルまたはフィブリン血餅を含む他の高度粘性培地においてインビトロで試験細胞を増殖させる。これらの半固体培地は細胞の移動を低下させ、個々の細胞が単一コロニーとして特定される細胞クローンへと発達することを可能にする。これらのアッセイはまた、一般にクローン形成(クローン原性)アッセイとも称される。コロニー形成アッセイは当技術分野において周知であり、例えばRizzino,トランスフォーミング成長因子と分裂促進ペプチドのための軟寒天生長アッセイ(A Soft agar growth assays for transforming growth factors and mitogenic peptides).酵素学における手法(Methods in Enzymology)146:341−53(1987)参照。一部の実施形態では、当技術分野において周知であり、Science Onlineでのサポートオンライン資料として入手可能な「実験材料及び方法」に述べられている、ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼを介したdUTPニック末端標識(TUNEL)によってアポトーシスを測定する。
【0280】
細胞増殖を測定するのに対し、腫瘍細胞の個体群において起こる総細胞死滅、言い換えると細胞死の概念に基づくアッセイの密接に関連したファミリーが存在する(Weisenthal LM,Shoemaker RH,Marsden JA,Dill PL,Baker JA,Moran EM.Recent Results Cancer Res 1984;94:161−173;Weisenthal LM,Lippman ME.Cancer Treat Rep 1985;69:615−632;Weisenthal LM.腫瘍細胞死滅総量という概念に基づく血液新生物のための細胞培養アッセイ(Cell culture assays for hematologic neoplasms based on the concept of total tumor cell kill)。Kaspers GJL,Pieters R,Twentyman PR,Weisenthal LM,Veerman AJP,編,白血病とリンパ腫の薬物耐性(Drug Resistance in Leukemia and Lymphoma.)中。Langhorne,PA:Harwood Academic Publishers,1993:415−432;Weisenthal LM.Contrib Gynecol Obstet 1994;19:82−90)。細胞死アッセイの基礎となる概念は比較的単純であるが、技術的特徴及びデータの解釈は非常に複雑でありうる。
【0281】
基本的テクノロジーの概念は平易である。例えば、新鮮標本を生存新生物から入手する。標本はほとんどの場合生存固形腫瘍からの手術標本である。それより頻度は低いが、「腫瘍」細胞(固形または血液新生物のいずれかからの細胞を表すために使用される用語)を含む悪性滲出液、骨髄または末梢血標本である。これらの細胞を単離し、その後ほとんどの場合は3−7日間、薬剤の連続的存在または不在下で培養する。培養期間の終了時に、細胞死と直接相関する、細胞損傷の測定を行う。入手可能な抗癌薬の大半が、いわゆるプログラムされた細胞死、またはアポトーシスの引き金を引くのに十分な損傷を引き起こす機構を通して作用すると考えられる証拠が存在する(Hickman JA.Cancer Metastasis Rev 1992;11:121−139;Zunino F,Perego P,Pilotti S,Pratesi G,Supino R,Arcamone F.Pharmacol Ther 1997;76:177−185)。
【0282】
培養細胞に適用できる、アポトーシスを特異的に測定するための方法が存在するが、これらの方法を腫瘍細胞と正常細胞の混合した(及び塊状の)個体群に適用するには実際的な困難がある。そこで、細胞死のより一般的な測定が適用されてきた。これらは、(1)腫瘍及び正常細胞の混合個体群において腫瘍細胞に対する選択的薬剤作用を認識することを可能にする、DISCアッセイ法(Weisenthal LM,Kern DH.Oncology(USA)1992;5:93−103;Weisenthal LM,Marsden JA,Dill PL,Macaluso CK.Cancer Res 1983;43:749−757)での分別染色によって測定される、細胞膜完全性の遅延喪失(アポトーシスの有用な代用物であることが認められている)、(2)MTTアッセイ(Carmichael J,DeGraff WG,Gazdar AF,Minna JD,Mitchell JB.Cancer Res 1987;47:936−942)において測定される、ミトコンドリアのクレブス回路活性の喪失、(3)ATPアッセイ(Kangas L,Gronroos M,Nieminen AL.Med Biol 1984;62:338−343;Garewal HS,Ahmann FR,Schifman RB,Celniker A.J Natl Cancer Inst 1986;77:1039−1045;Sevin B−U,Peng ZL,Perras JP,Ganjei P,Penalver M,Averette HE.Gynecol Oncol 1988;31:191−204)において測定される、細胞ATPの喪失、及び(4)フルオレセインジアセテートアッセイ(Rotman B,Teplitz C,Dickinson K,Cozzolino JP.In vitro Cell Dev Biol 1988;24:1137−1138;Larsson R,Nygren P,Ekberg M,Slater L.Leukemia 1990;4:567−571;Nygren P,Kristensen J,Jonsson B,ら,Leukemia 1992;6:1121−1128)によって測定される、細胞膜エステラーゼ活性及び細胞膜完全性の喪失、を含む。
【0283】
一部の実施形態では、当技術分野において周知であり、例えばScience Onlineでのサポートオンライン資料として入手可能な「実験材料及び方法」に述べられている、ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼを介したdUTPニック末端標識(TUNEL)によってアポトーシスを測定する。
【0284】
加えて、治療に対する動物の感受性または抵抗性は、治療の前後及び/または治療の期間を通じて腫瘍サイズを測定することによって直接判定しうる。腫瘍サイズが治療によって50%、好ましくは75%、より好ましくは85%、最も好ましくは100%低下する場合、その動物は治療に対して感受性である(抵抗性でない)と言われる。さもなければ、動物は治療に対して抵抗性であるとみなされる。腫瘍サイズが、本発明の組成物の不在下での治療後の腫瘍と比較して、本発明の治療感作組成物の投与後に少なくとも25%、好ましくは50%、より好ましくは75%、最も好ましくは100%低下する場合、その組成物はその動物において治療を感作する上で有効であると言われる。ヒトでは、6ヶ月の治療期間のウインドウにわたって腫瘍サイズを比較し、他の動物ではこのウインドウは異なり、例えばマウスについては4−6週間のウインドウを使用しうる。腫瘍サイズを比較するための実際の期間ウインドウは、当技術分野における知識及び治療する特定腫瘍に応じて決定されうることは了解される。
【0285】
さらに、細胞が治療に抵抗性であるかどうかは、ここで前述したSPARCファミリーポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を測定することによっても判定しうる。そこで本発明は、(a)第一癌試料において、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベルもしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(b)治療処置に対して抵抗性を示さない第二癌試料において、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベルもしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(c)(a)と(b)で得られた発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(a)におけるより低いレベルの発現または細胞外レベルが、第一癌試料がその治療処置に対して抵抗性であることを示すこと、を含む、第一癌試料を治療処置に対するその抵抗性に関して評価するための方法を提供する。
【0286】
本発明はさらに、(a)試料中のSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(b)候補物質を前記試料と接触させること;(c)(b)の前記接触後、(b)の前記試料中の前記SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現または細胞外レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;(d)(a)と(c)における発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(a)と(c)における異なるレベルの発現または細胞外レベルが、前記候補物質がSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を調節する物質であることを示すこと、を含む、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を調節する物質を特定するための方法を提供する。
【0287】
SPARCポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現レベル及びSPARCポリペプチドの分泌レベルは、ここで前述したように及び当技術分野で公知のいずれかの方法によって測定することができる。
【0288】
SPARCファミリー成員の発現または分泌を促進する物質は、それ自体、本発明において述べるような治療感作物質として使用しうる。その物質は、化学物質または生物学的分子(例えばタンパク質またはポリヌクレオチド等)でありうる。
【0289】
(動物モデル)
本発明によって提供される組成物の治療効果は、様々な動物モデルにおいて試験しうる。これは、ここで前述したようにインビトロ、エキソビボまたはインビボで実施しうる。
【0290】
増殖性疾患についてのマウスモデルは当技術分野において公知であり、例えばworld wide web www.jax.orgのJackson laboratoryマウスデータベース及びThe Jackson Laboratoryカタログ−Jax−Mice−June 2001−May 2003またはJackson−Grusby L.2002,Oncogene.12;21(35):5504−14;Ghebranious N,Donehower LA.,1998,Oncogene.24;17(25):3385−400;Palapattu GS,Bao S,Kumar TR,Matzuk MM.1998,Cancer Detect Prev.22(1):75−86)に認められる。例えば腫瘍マウスモデルは、慢性骨髄性白血病(CML)、細胞接着分子の欠損、生長及び増殖を調節する遺伝子、増殖因子/受容体/サイトカイン、腫瘍発生率の上昇、癌遺伝子、毒物学及び腫瘍抑制遺伝子の試験のために使用されるものを包含する。
【0291】
実施例
本発明は、SPARCが化学療法抵抗性細胞において有意に過少発現されることが認められたこと、SPARCをコードするDNAは細胞を癌治療に対して感作すること、及びSPARC形質転換体細胞を移植した動物は、対照を移植した動物に比べて腫瘍増殖の劇的な低下を示すことの所見に基づく。
【0292】
(実施例1)実験材料及び方法
細胞培養―結腸直腸細胞系統MIP−101を、37℃及び5%CO2で、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Invitrogen)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)中に維持した。漸増濃度の5−フルオロウラシル(5−FU)、イリノテカン(CPT−11)、シスプラチン(CIS)及びエトポシド(ETO)と共に長期間培養した後、抵抗性MIP101細胞が発現した。SPARCで形質導入した安定なMIP101細胞(MIP/SP)を、37℃及び5%CO2で、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM中に維持した。
【0293】
分析的逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応―TRIZOL試薬(Invitrogen)を製造者のプロトコルに従って使用して、培養細胞(2×106細胞、75%集密)から全RNAを抽出した。全RNA 1μgを使用して、市販のキット(BD Biosciences)を製造者のプロトコルに従って用いてRT−PCRを実施した。SPARCを増幅するために使用した特異的プライマー:5’CGA AGA GGA GGT GGT GGC GGA AA−3’(センス)(配列番号78)及び5’GGT TGT TGT CCT CAT CCC TCT CAT AC−3’(アンチセンス)(配列番号79)。GAPDH:5’−CTC TCT GCT CCT CCT GTT CGA CAG−3’(センス)(配列番号80)及び5’−AGG GGT CTT ACT CCT TGG AGG CCA−3’(アンチセンス)(配列番号81)を内部対照として及び遺伝子発現レベルを規格化するために使用した。以下の設定を反応のために使用した:50℃×1時間、次いで94℃×1分間、65℃×1分間、72℃×2分間を37サイクル、次いで72℃×10分間及び4℃でのインキュベーション。PCR産物を、100Vで1時間の電気泳動により、TAE緩衝液中1%アガロースゲル上で分離して(エチジウムブロマイド0.5μg/mlで染色)、その後写真撮影した。
【0294】
アポトーシスの定量―TUNELアッセイのために、24時間後の誘導試験に先立って、6穴平板において250,000細胞/平板で一晩、細胞をカバーガラス上で平板培養した。外来性SPARC(Haematologic Technologies Inc)に続くアポトーシスの評価のために、細胞をSPARC 5μg/mlと共に24時間インキュベートし、次いで5−FU 1000μMに12時間曝露した。次に細胞を、製造者の指示に従ってアポトーシス検出キット(Promega)による標識のために処理した。アポトーシスの定量のために、細胞を6穴平板において250,000細胞/平板で一晩平板培養し、次に以下の化学療法剤:5−FU 1000μM、CPT−11 200μM、シスプラチン100μM及びエトポシド10μM、と共に12時間インキュベートした。非酵素的細胞解離剤(Sigma)を使用し、リン酸緩衝食塩水で洗浄して、その後アポトーシス検出キット(R&D Research)を製造者のプロトコルに従って使用してアネキシンV及びヨウ化プロピジウムに関して染色することによって細胞を収集した。アネキシンVとヨウ化プロピジウムで標識した細胞の比率をXLフローサイトメトリー分析器によって分析した。100,000事象からデータを収集した。
【0295】
クローンの形質移入と選択:SPARC cDNAをpcDNA3.1発現ベクターにクローニングした。形質移入は、Boussiffら(1995)のポリエチレンイミン法に重要でない修飾を加えて使用して、遺伝子/発現ベクター構築物2.0μgによって実施した。形質移入後、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄し、培地中に24時間維持して、その後1%ゼオシン(Zeocin)を含む適切な選択培地に変えた。ゼオシン耐性に基づいて細胞を選択し、次に、個々のコロニー及びこれらのコロニーからのクローンをさらなる確認のために増殖させた。安定に形質導入されたクローン(MIP/SP)を、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析によってSPARC mRNA発現に関してスクリーニングした。SPARC mRNA(RT−PCRによる)及びタンパク質(ウエスタンブロット法による)の最も高い発現を有するMIP/SPを、その後のインビトロ及びインビボ試験のために選択した。この試験のために使用した対照細胞系統は、pcDNA3.1空ベクターだけで安定に形質導入し(MIP/ゼオ)、ゼオシン耐性に基づいて選択したMIP101細胞を含んだ。
【0296】
ウエスタンブロット分析―CHAPS細胞溶解緩衝液を使用して10cm平板で培養した細胞系統から全タンパク質を抽出した。SDS−PAGEを用いて全タンパク質10−30μgを電気泳動し、PVDF膜に移した。5%脱脂乳溶液で遮断した後、膜を抗SPARC抗体(1:1000、Haematologic Technologies Inc)と共に4℃で一晩インキュベートした。その後、膜をウサギ抗マウスHRP複合二次抗体(1:2000)と共に室温で1時間インキュベートし、Extendi−Dura化学発光キット(Pierce)によって検出した。同じ膜を、ウエスタン・ブロット復元剥離緩衝液(Western Blot Restore Stripping Buffer)(Pierce)を用いて脱色し、その後、一次抗チューブリンマウス抗体(Sigma)及びウサギ抗マウスHRP複合二次抗体(1:2000)を内部対照として用いて、チューブリンに関して再プローブした。
【0297】
免疫組織化学―ヒト結腸直腸癌または正常結腸上皮のパラフィン切片は、Dr.Maximo Loda(Dana Farber Cancer Institute,Boston)の好意により提供した。染色の前に、前記切片を、0.1%トリトンX−100(Sigma)を含む0.1%トリス緩衝食塩水(TBS)で洗い、1%H2O2で30分間処理して、TBS/0.1%トリトン中、室温で30分間(×3)洗浄し、TBS/0.1%トリトン中3%BSAで1時間遮断した。次に切片をマウス抗SPARC抗体(1:50)(Haematologic Technologies Inc)と共に4℃で一晩インキュベートし、TBS/トリトンで数回洗って、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ(ABC)複合体溶液(Vecstain ABCキット、Vector Laboratories Inc,Burlingame,カリフォルニア州)で1時間対比染色し、その後DAB溶液中でインキュベートした。切片をパーマウント(Permount)を用いて封入した。
【0298】
コロニー形成アッセイ―クローン原性細胞生存率試験のために、MIP101親細胞とMIP/SP細胞を48穴平板に1,000細胞/平板で塗布し、漸増濃度の5−FU(0、10μM、100μM、1000μM)、CPT−11(0、1μM、10μM、100μM)またはエトポシド(0、10μM、100μM、1000μM)と共に4日間インキュベートした。その後細胞をPBSで洗い、適切な濃度の化学療法剤を含む新鮮培地中でさらに7日間インキュベートした。各々のウェルをクリスタルバイオレットで染色し、50以上の細胞を有するコロニーを計数した。処置群において形成されたコロニーの数を、対照未処置細胞から形成されたコロニーに基づいて算定した。
【0299】
濃縮SPARC含有上清[SPARC]―MIP/SP細胞を100cmフラスコにおいてDMEM(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、0.1%ゼオシン)中1×106細胞で24時間平板培養した。その後細胞をPBSで2回洗い、グルタミン4mM(Invitrogen)を添加した無血清VP−SFM培地中で72時間インキュベートした。4℃でCentricon Filterユニット(Millipore)を使用してこの培地を500mlから2mlに濃縮した。この方法によって収集し、処理したすべての培地をその後の動物試験のために使用した。
【0300】
動物試験―腫瘍進行へのSPARCの作用をインビボで評価するために腫瘍異種移植片動物モデルを使用した。左側腹部への2×106細胞の皮下注射後にNIHヌードマウス(6週齢、Taconic Laboratories)に移植した。ひとたび平均腫瘍サイズが50−75mm3の大きさになれば治療レジメンを開始した。試験完了時まで、手持ち式カリパス(Fisher)を使用して週に2回腫瘍測定を実施し、同時に体重測定を行った。化学療法を3週間サイクルのレジメンを用いて合計6サイクル実施した:5−FU 25mg/kgまたはCPT−11 25mg/kgの腹腔内注射を各々のサイクルの1週目に3回、その後2週間の治療なし期間。SPARCについての投与スケジュールは、SPARC100μLを化学療法サイクルの終了時まで週に3回であった。
【0301】
(実施例2)化学療法抵抗性細胞におけるSPARC発現
コロニー形成アッセイ(図3)及びTUNELアッセイ(図4)によって裏付けられた、2つの化学療法抵抗性クローン(MIP−5FUR及びMIP−ETOR)を、化学療法抵抗性細胞におけるSPARCの検出のために使用した。マイクロアレイ分析は、SPARCを含む、抵抗性細胞において過少発現される多くの遺伝子を特定した。
【0302】
遺伝子発現レベルでの過少発現はまた、化学療法抵抗性細胞系統におけるより低いレベルのSPARCタンパク質レベルへと翻訳された(図5A)。もう1つの広く確立された子宮肉腫細胞系統、MES−SAも、異なる化学療法剤、ドキソルビシンに耐性であるときSPARCの発現低下を示したので、この特徴は今回の試験のためだけに開発された耐性細胞系統にユニークではなかった(図5B)。さらに、正常なヒト病理学的試料では、SPARCタンパク質発現は絨毛において最も高く、結腸陰窩に向けて低下する勾配を有すると思われる。この可変性発現が悪性疾患では失われ、様々な病期の結腸直腸腺癌においてSPARCの発現が全般的に低下する。
【0303】
図19は、化学療法に感受性及び抵抗性の結腸直腸癌細胞系統におけるヒトSPARCmRNA及びタンパク質レベルを示す。(A)オリゴヌクレオチドマイクロアレイクラスター分析の図(左のパネル)は、化学療法に抵抗性の細胞系統ではSPARC遺伝子発現が有意に低いことを明らかにし、これは半定量的RT−PCRによって確認された(右のパネル)。(B)化学療法に感受性(MES−SA)及びドキソルビシンに耐性(MES−SA/DX5)の対合子宮肉腫細胞系統におけるSPARC発現レベルの検出は、耐性細胞系統における同様の発現低下を示す。乳癌細胞系統では、MDA435はMCF−7よりもわずかに高いSPARC発現レベルを有していた。膵癌細胞系統(CRL1420)、肺癌細胞系統(JMN 1B)、結腸直腸癌系統(RKO、CCL227、HT29)においては低いレベルの発現が検出された。正常結腸細胞系統(CRL1541)及び結腸癌細胞系統(HCT116)では高レベルのSPARC発現が検出された。(C)SPARCタンパク質発現は、正常親細胞系統(レーン5、MIP101)と比較して、MIP101抵抗性クローン(抵抗性細胞系統:MIP/5FU、MIP/CPT、MIP/ETO、MIPT/CIS)ではこのタンパク質の有意の低下が存在することを確認する。同様に、もう1つのセットの子宮肉腫起源の抵抗性細胞系統(MES−SA/DX5、ドキソルビシンに抵抗性の子宮肉腫)は、親感受性細胞系統(MES−SA、親子宮肉腫)と比較してSPARCの発現低下を示す。
【0304】
図20は、ヒト結腸上皮におけるSPARCタンパク質発現を示す。(A)正常結腸は、管腔の近位の表在細胞におけるSPARCタンパク質のより高いレベル及び陰窩に向かっての発現低下勾配というSPARCタンパク質発現の差異的なパターンを示す。(B)結腸の腺癌、(C)粘液腺癌及び(D)肝臓に転移した結腸の腺癌におけるSPARCタンパク質レベルは、悪性上皮内で広汎にSPARCタンパク質の低いレベルを示す。6μm切片、×20倍率。
【0305】
(実施例3)SPARCポリペプチドは抵抗性細胞を5−FU治療に対して感作する
この潜在的な役割をさらに正確にするために、我々は、抵抗性表現型を逆転させる上での外来性SPARCに対する抵抗性MIP101細胞の応答(図6)を評価した。初期実験で示されたように、5−FUに抵抗性のMIP101細胞(MIP−5FUR)は、500μMの濃度の5−FUによってアポトーシスの引き金を引かれなかったが、親感受性細胞系統からの有意の数の細胞が、同様の濃度の5−FUへの曝露後にアポトーシスを受けた。抵抗性細胞のSPARCとの外因性曝露に関して重要な所見が認められた:SPARCと抵抗性クローンの24時間のインキュベーション及びそれに続く化学療法剤への12時間曝露は、それまでは細胞死を刺激しなかった化学療法剤の濃度に曝露した細胞においてTUNELアッセイによって再びアポトーシスが検出されたので、抵抗性表現型を逆転させるのに十分であった。その後の化学療法への曝露を伴わない、外来性SPARCとのインキュベーション単独では、親MIP101または抵抗性細胞のいずれにおいてもアポトーシスを誘導しなかった。
【0306】
図21は、化学療法に対する細胞の感受性に影響を及ぼすSPARCの作用の評価を示す。(A)インビトロでの、5−FUと組み合わせた外来性SPARCへのMIP/5FR細胞の曝露の作用。TUNELアッセイによるアポトーシスの評価は、5−FU 1000μMに曝露した感受性MIP101細胞における陽性染色された細胞(a、TUNEL染色;b、DAPI染色)を示すが、同様の濃度の5−FUへの曝露後の抵抗性表現型(c、TUNEL染色;d、DAPI染色)ではアポトーシスは存在しない。しかし、SPARC(5μg/ml)への24時間の曝露後、5−FU抵抗性細胞は、TUNEL陽性染色細胞によって示されたように(e;f、DAPI染色)再び5−FU 1000μMに感受性となり、アポトーシス細胞の存在を示した。これは、SPARCへの外因性曝露が5−FU抵抗性細胞の抵抗性表現型を逆転させることの初めての指摘であり、SPARCが化学療法感作物質として機能しうることを示唆する。(B)漸増濃度の化学療法(5−FU、CPT−11及びエトポシド)に曝露した、SPARCを過剰発現する安定に形質導入されたMIP101細胞系統(MIP/SP)及び対照(MIP/ゼオ)は、より低い薬剤濃度に曝露したとき、MIP/ゼオ細胞よりも少ないMIP/SP細胞のコロニーを示し、比較的低い濃度の化学療法でより少ない細胞しか生存しなかったことから、SPARC過剰発現クローンの化学療法に対する感受性の上昇を指示した。(B)対照細胞(MIP/ゼオ)と比較して、より多くの数のSPARC過剰発現MIP101が、様々な化学療法剤(ETO=エトポシド、CIS=シスプラチン、5−FU=5−フルオロウラシル、CPT=CPT−11)への12時間の曝露後にアポトーシスを受けた(p<0.05)。フローサイトメトリーによるアネキシンV標識後のアポとシースの分析は、3回実施した3つの独立した試験の結果である。クローン形成アッセイ(B)の結果は、3回反復して同様の結果であった代表的実験である。
【0307】
(実施例4)SPARCポリヌクレオチドは組換え細胞を様々な化学療法処置に対して感作する
この仮説を調べるため、さらなるインビトロ試験用の過剰発現系を生成するためにMIP101細胞をSPARCで形質移入した。SPARCを過剰発現する2つのクローン(クローン4、5;図7)をその後の試験のために使用した。
【0308】
様々な化学療法剤に対するSPARC形質移入体の感受性をコロニー形成アッセイによって評価し、前記アッセイは、SPARCを過剰発現するクローンが、親細胞系統と比較して、より高い濃度の化学療法で腫瘍形成性コロニーを形成できないことを示した。同様に、化学療法剤への曝露後にアポトーシスを受けるように誘導した細胞個体群のFACS分析は、12時間の化学療法への曝露後にSPARC形質移入体において早期アポトーシスへの劇的なシフトを示した(図8D)。親細胞系統からの細胞のより小さな個体群は、化学療法だけによる誘導後にアポトーシスを受けた(図8C)。全体として、様々な化学療法剤への曝露後に、親MIP101細胞系統と比較してアポトーシスを受けるSPARC過剰発現細胞の個体群は少なくとも2倍に上昇すると思われた(図9)。図10は、化学療法剤へのSPARC形質移入体の応答を示す。
【0309】
(実施例5)SPARC感作がインビボで認められる
インビトロでの化学療法に対する感受性上昇はインビボモデル系に翻訳され、SPARC形質移入体を移植した動物では、6サイクルの化学療法後に4匹の動物のうち2匹が完全な腫瘍後退を示した(図11)。SPARC形質移入体を移植した残りの動物は、親MIP101を移植した動物と比較して腫瘍増殖速度に劇的な低下があった。すべての対照動物(化学療法で処置したMIP101の異種移植)は、化学療法処置の開始後50日目までに>400mm2の腫瘍を有していたが、完全な腫瘍後退を受けなかったSPARC形質移入体移植動物では、腫瘍は化学療法の開始後140日目まで<300mm2のままであった(結果は示さず)。
【0310】
(実施例6)SPARCポリペプチド発現を調節する物質をスクリーニングする方法
SPARCポリペプチド発現の調節因子のスクリーニングは、簡単な哺乳動物細胞に基づくスクリーニングとして実施できる。哺乳動物組織培養細胞系統、例えばHela細胞を、最初にランダムな候補低分子と共にプレインキュベートする。次に抗SPARCウエスタンブロット法またはELISAを用いて細胞クローンをスクリーニングする。あるいは、SPARC mRNA発現への調節を調べるためのRT−PCR反応を実施する。
【0311】
(実施例7)付加的な動物モデル治療
様々な動物モデル治療を実施し、その結果を図14に示している。
【0312】
図14において、種々の化学療法剤(5−FUまたはCPT−11)で治療した、MIP101またはMIP/SPのいずれかを移植した腫瘍を有する異種移植動物は、親MIP101細胞系統(MIP)の腫瘍異種移植と比較して、MIP/SPの腫瘍異種移植のより迅速な速度の腫瘍後退を示す。MIP/SP異種移植片を担持する4匹の動物のうち2匹は完全な腫瘍後退が起こり、残りの2匹は、同様の治療レジメンを実施したMIP101を担持する対照動物と比較してはるかに緩慢な速度の腫瘍増殖を生じた。2サイクルの5−FUで治療したMIP−SPARCの腫瘍異種移植を有する代表動物は、移植後23日目までに完全な後退が起こるか、もしくは親MIP101の異種移植片を移植した動物に比べて、2サイクルだけのCPT−11治療後に有意に小さい腫瘍を有していた。
【0313】
図15では、MIP/SP細胞の異種移植片を有するより多くの動物が、対照MIP/ゼオ細胞の異種移植片を有する動物に比べて、放射線治療後の期間中より早期に完全な腫瘍後退の証拠を示した。放射線治療後15週目までに、MIP/SP異種移植動物のいずれもが腫瘍の証拠を有しておらず、一方MIP/ゼオ異種移植動物の30%が引き続き腫瘍を有していた(n=10動物/群;総放射線量:100Gy)。
【0314】
図16において、SPARC(IP、腹腔内)と5−FUの併用治療は、治療の開始後51日までに、5−FU単独での治療よりも有意に大きい腫瘍後退をもたらした。(B)SPARC(IP)と5−FUのこの併用治療は、治療後84日目までに数匹の動物において完全な腫瘍後退をもたらしたが、これは5−FU単独で治療した動物では認められなかった(平均±SE、n=6動物/群)。
【0315】
図17では、SPARC(SC、皮下)と5−FUの併用治療は、治療期間全体を通じて5−FU単独での治療よりも有意に大きい腫瘍後退をもたらした。SPARC(SC)と5−FUのこの併用治療は、治療後42日目までに数匹の動物において完全な腫瘍後退をもたらしたが、これは5−FU単独で治療した動物では認められなかった(平均+SE、n=6動物/群)。
【0316】
図18では、MIP/5FU抵抗性細胞を移植した動物を5FU単独またはSPARCと5−FUの併用のいずれかで治療し、5−FU単独で治療された動物では急速な腫瘍増殖が続くことを示したが、併用療法で治療した動物では治療後28日目から劇的な腫瘍後退が認められた。SPARCと5FUの併用治療を受けた数匹の動物は、治療後117日目までに完全な腫瘍後退を示した(平均+SE、n=6動物/群)。
【0317】
ここで引用したすべての特許、特許出願及び公表文献は、それらの全体が参照してここに組み込まれる。本発明を、その好ましい実施形態を参照しながら特定して示し、説明したが、付属の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなくその中で形態及び詳細の様々な変更を加えうることは当業者に了解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPARCファミリーポリペプチド及び化学療法剤を包む組成物。
【請求項2】
SPARCファミリーポリペプチド及び化学療法抵抗性細胞を包む組成物。
【請求項3】
SPARCファミリーポリヌクレオチドに作動可能に連結された異種転写制御領域を含む組換え細胞。
【請求項4】
前記細胞が化学療法抵抗性細胞である、請求項3の細胞。
【請求項5】
組換えSPARCファミリーポリヌクレオチドを包む、単離された化学療法抵抗性細胞。
【請求項6】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項3または5の細胞。
【請求項7】
前記SPARCファミリーポリペプチドまたは遺伝子が、SMOC−1、SPARC、hevin、SC1、QR−1、フォリスタチン様タンパク質(TSC−36)、testicanから選択される、請求項1及び2の組成物、もしくは請求項3または5の細胞。
【請求項8】
癌と診断された哺乳動物に、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有効量を投与することを包む、前記哺乳動物を治療処置に対してインビボで感作するための方法。
【請求項9】
哺乳動物にSPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包む細胞であって、前記SPARCポリペプチドの増加量を生産する細胞の、有効量を投与することを包む、癌と診断された哺乳動物を治療処置に対しエキソビボで感作するための方法。
【請求項10】
前記哺乳動物が前記治療処置に対して抵抗性を示す、請求項8または9の方法。
【請求項11】
前記治療処置が化学療法である、請求項8または9の方法。
【請求項12】
癌細胞を、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包む組成物の有効量に接触させることを包む、前記癌細胞を治療処置に対して感作するための方法。
【請求項13】
前記癌細胞が前記治療処置に対して抵抗性を示す、請求項12の方法。
【請求項14】
前記癌細胞に、(e)−(f)の前記ポリヌクレオチドを形質移入するかまたは感染させることをさらに包含する、請求項12の方法。
【請求項15】
(a)第一癌細胞におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;及び
(b)(a)で得た発現レベルまたは細胞外レベルを、治療処置に対して抵抗性を示さない第二癌細胞における前記SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルと比較して、(a)におけるより低いレベルの発現または細胞レベルが、前記第一癌細胞が前記治療処置に対して抵抗性であることを示すこと
を含む、第一癌細胞を治療処置に対するその抵抗性について、評価するための方法。
【請求項16】
前記第一試料が第一哺乳動物に由来し、(a)におけるより低いレベルの発現または細胞外レベルが、第一哺乳動物が前記治療処置に対して抵抗性であることをさらに示す、請求項15の方法。
【請求項17】
前記第二癌細胞が、前記第一癌細胞を提供する第一哺乳動物に由来する、請求項15の方法。
【請求項18】
前記第二癌細胞が、前記第一癌細胞を提供する第一哺乳動物とは異なる第二哺乳動物に由来する、請求項15の方法。
【請求項19】
前記第一哺乳動物及び前記第二哺乳動物が同じ癌を有すると診断される、請求項18の方法。
【請求項20】
(a)試料中のSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;
(b)候補物質を前記試料と接触させること;
(c)(b)の前記接触後、(b)の前記試料中の前記SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現または細胞外レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;
(d)(a)と(c)における発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(a)と(c)における異なるレベルの発現または細胞外レベルが、前記候補物質がSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を調節する物質であることを示すこと
を包む、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を、調節する物質を特定するための方法。
【請求項21】
(a)癌細胞におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;
(b)候補物質を前記癌細胞と接触させること;
(c)(b)の前記接触後、(b)の前記癌細胞における前記SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;
(d)(a)と(c)で得た発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(c)における発現または細胞外レベルのレベル上昇が、前記候補物質が癌細胞を治療処置に対して感作する物質であることを示すこと
を包む、癌細胞を治療処置に対し感作する物質を特定するための方法。
【請求項22】
前記癌細胞が癌と診断された哺乳動物に由来し、前記発現または細胞外レベルのレベル上昇が、前記候補物質が前記哺乳動物を治療処置に対して感作する物質であることをさらに示す、請求項21の方法。
【請求項23】
(a)第一哺乳動物からの第一試料において、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルが、治療処置に対して抵抗性を示さない第二試料よりも低いかどうかを判定すること;及び
(b)(a)が明確である場合、前記治療処置に対する応答を高めるために前記第一哺乳動物への前記治療処置の強度を高めること
を包む、癌と診断された第一哺乳動物のための治療処置プロトコルを決定するための方法。
【請求項1】
SPARCファミリーポリペプチド及び化学療法剤を包む組成物。
【請求項2】
SPARCファミリーポリペプチド及び化学療法抵抗性細胞を包む組成物。
【請求項3】
SPARCファミリーポリヌクレオチドに作動可能に連結された異種転写制御領域を含む組換え細胞。
【請求項4】
前記細胞が化学療法抵抗性細胞である、請求項3の細胞。
【請求項5】
組換えSPARCファミリーポリヌクレオチドを包む、単離された化学療法抵抗性細胞。
【請求項6】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項3または5の細胞。
【請求項7】
前記SPARCファミリーポリペプチドまたは遺伝子が、SMOC−1、SPARC、hevin、SC1、QR−1、フォリスタチン様タンパク質(TSC−36)、testicanから選択される、請求項1及び2の組成物、もしくは請求項3または5の細胞。
【請求項8】
癌と診断された哺乳動物に、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有効量を投与することを包む、前記哺乳動物を治療処置に対してインビボで感作するための方法。
【請求項9】
哺乳動物にSPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包む細胞であって、前記SPARCポリペプチドの増加量を生産する細胞の、有効量を投与することを包む、癌と診断された哺乳動物を治療処置に対しエキソビボで感作するための方法。
【請求項10】
前記哺乳動物が前記治療処置に対して抵抗性を示す、請求項8または9の方法。
【請求項11】
前記治療処置が化学療法である、請求項8または9の方法。
【請求項12】
癌細胞を、SPARCファミリーポリペプチドまたはSPARCファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包む組成物の有効量に接触させることを包む、前記癌細胞を治療処置に対して感作するための方法。
【請求項13】
前記癌細胞が前記治療処置に対して抵抗性を示す、請求項12の方法。
【請求項14】
前記癌細胞に、(e)−(f)の前記ポリヌクレオチドを形質移入するかまたは感染させることをさらに包含する、請求項12の方法。
【請求項15】
(a)第一癌細胞におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;及び
(b)(a)で得た発現レベルまたは細胞外レベルを、治療処置に対して抵抗性を示さない第二癌細胞における前記SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルと比較して、(a)におけるより低いレベルの発現または細胞レベルが、前記第一癌細胞が前記治療処置に対して抵抗性であることを示すこと
を含む、第一癌細胞を治療処置に対するその抵抗性について、評価するための方法。
【請求項16】
前記第一試料が第一哺乳動物に由来し、(a)におけるより低いレベルの発現または細胞外レベルが、第一哺乳動物が前記治療処置に対して抵抗性であることをさらに示す、請求項15の方法。
【請求項17】
前記第二癌細胞が、前記第一癌細胞を提供する第一哺乳動物に由来する、請求項15の方法。
【請求項18】
前記第二癌細胞が、前記第一癌細胞を提供する第一哺乳動物とは異なる第二哺乳動物に由来する、請求項15の方法。
【請求項19】
前記第一哺乳動物及び前記第二哺乳動物が同じ癌を有すると診断される、請求項18の方法。
【請求項20】
(a)試料中のSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;
(b)候補物質を前記試料と接触させること;
(c)(b)の前記接触後、(b)の前記試料中の前記SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現または細胞外レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;
(d)(a)と(c)における発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(a)と(c)における異なるレベルの発現または細胞外レベルが、前記候補物質がSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を調節する物質であることを示すこと
を包む、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの分泌を、調節する物質を特定するための方法。
【請求項21】
(a)癌細胞におけるSPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;
(b)候補物質を前記癌細胞と接触させること;
(c)(b)の前記接触後、(b)の前記癌細胞における前記SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現レベル、もしくは前記SPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルを測定すること;
(d)(a)と(c)で得た発現レベルまたは細胞外レベルを比較して、(c)における発現または細胞外レベルのレベル上昇が、前記候補物質が癌細胞を治療処置に対して感作する物質であることを示すこと
を包む、癌細胞を治療処置に対し感作する物質を特定するための方法。
【請求項22】
前記癌細胞が癌と診断された哺乳動物に由来し、前記発現または細胞外レベルのレベル上昇が、前記候補物質が前記哺乳動物を治療処置に対して感作する物質であることをさらに示す、請求項21の方法。
【請求項23】
(a)第一哺乳動物からの第一試料において、SPARCファミリーmRNAまたはポリペプチドの発現もしくはSPARCファミリーポリペプチドの細胞外レベルが、治療処置に対して抵抗性を示さない第二試料よりも低いかどうかを判定すること;及び
(b)(a)が明確である場合、前記治療処置に対する応答を高めるために前記第一哺乳動物への前記治療処置の強度を高めること
を包む、癌と診断された第一哺乳動物のための治療処置プロトコルを決定するための方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図12−4】
【図12−5】
【図12−6】
【図12−7】
【図12−8】
【図12−9】
【図12−10】
【図12−11】
【図12−12】
【図12−13】
【図12−14】
【図12−15】
【図12−16】
【図12−17】
【図12−18】
【図12−19】
【図12−20】
【図12−21】
【図12−22】
【図12−23】
【図12−24】
【図12−25】
【図12−26】
【図12−27】
【図12−28】
【図12−29】
【図12−30】
【図12−31】
【図12−32】
【図12−33】
【図12−34】
【図12−35】
【図12−36】
【図12−37】
【図12−38】
【図12−39】
【図12−40】
【図12−41】
【図12−42】
【図12−43】
【図12−44】
【図12−45】
【図12−46】
【図12−47】
【図12−48】
【図12−49】
【図12−50】
【図12−51】
【図12−52】
【図12−53】
【図12−54】
【図12−55】
【図12−56】
【図12−57】
【図12−58】
【図12−59】
【図12−60】
【図12−61】
【図12−62】
【図12−63】
【図12−64】
【図12−65】
【図12−66】
【図12−67】
【図12−68】
【図12−69】
【図12−70】
【図12−71】
【図12−72】
【図12−73】
【図12−74】
【図12−75】
【図12−76】
【図12−77】
【図12−78】
【図12−79】
【図12−80】
【図12−81】
【図12−82】
【図12−83】
【図12−84】
【図12−85】
【図12−86】
【図12−87】
【図12−88】
【図12−89】
【図12−90】
【図12−91】
【図12−92】
【図12−93】
【図12−94】
【図12−95】
【図12−96】
【図12−97】
【図12−98】
【図12−99】
【図12−100】
【図12−101】
【図12−102】
【図12−103】
【図12−104】
【図12−105】
【図12−106】
【図13】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図13−4】
【図13−5】
【図13−6】
【図13−7】
【図13−8】
【図13−9】
【図13−10】
【図13−11】
【図13−12】
【図13−13】
【図13−14】
【図13−15】
【図13−16】
【図13−17】
【図13−18】
【図13−19】
【図13−20】
【図13−21】
【図13−22】
【図13−23】
【図13−24】
【図13−25】
【図13−26】
【図13−27】
【図13−28】
【図13−29】
【図13−30】
【図13−31】
【図13−32】
【図13−33】
【図13−34】
【図13−35】
【図13−36】
【図13−37】
【図13−38】
【図13−39】
【図13−40】
【図13−41】
【図13−42】
【図13−43】
【図13−44】
【図13−45】
【図13−46】
【図13−47】
【図13−48】
【図13−49】
【図13−50】
【図13−51】
【図13−52】
【図13−53】
【図13−54】
【図13−55】
【図13−56】
【図13−57】
【図13−58】
【図13−59】
【図13−60】
【図13−61】
【図13−62】
【図13−63】
【図13−64】
【図13−65】
【図13−66】
【図13−67】
【図13−68】
【図13−69】
【図13−70】
【図13−71】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図12−4】
【図12−5】
【図12−6】
【図12−7】
【図12−8】
【図12−9】
【図12−10】
【図12−11】
【図12−12】
【図12−13】
【図12−14】
【図12−15】
【図12−16】
【図12−17】
【図12−18】
【図12−19】
【図12−20】
【図12−21】
【図12−22】
【図12−23】
【図12−24】
【図12−25】
【図12−26】
【図12−27】
【図12−28】
【図12−29】
【図12−30】
【図12−31】
【図12−32】
【図12−33】
【図12−34】
【図12−35】
【図12−36】
【図12−37】
【図12−38】
【図12−39】
【図12−40】
【図12−41】
【図12−42】
【図12−43】
【図12−44】
【図12−45】
【図12−46】
【図12−47】
【図12−48】
【図12−49】
【図12−50】
【図12−51】
【図12−52】
【図12−53】
【図12−54】
【図12−55】
【図12−56】
【図12−57】
【図12−58】
【図12−59】
【図12−60】
【図12−61】
【図12−62】
【図12−63】
【図12−64】
【図12−65】
【図12−66】
【図12−67】
【図12−68】
【図12−69】
【図12−70】
【図12−71】
【図12−72】
【図12−73】
【図12−74】
【図12−75】
【図12−76】
【図12−77】
【図12−78】
【図12−79】
【図12−80】
【図12−81】
【図12−82】
【図12−83】
【図12−84】
【図12−85】
【図12−86】
【図12−87】
【図12−88】
【図12−89】
【図12−90】
【図12−91】
【図12−92】
【図12−93】
【図12−94】
【図12−95】
【図12−96】
【図12−97】
【図12−98】
【図12−99】
【図12−100】
【図12−101】
【図12−102】
【図12−103】
【図12−104】
【図12−105】
【図12−106】
【図13】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図13−4】
【図13−5】
【図13−6】
【図13−7】
【図13−8】
【図13−9】
【図13−10】
【図13−11】
【図13−12】
【図13−13】
【図13−14】
【図13−15】
【図13−16】
【図13−17】
【図13−18】
【図13−19】
【図13−20】
【図13−21】
【図13−22】
【図13−23】
【図13−24】
【図13−25】
【図13−26】
【図13−27】
【図13−28】
【図13−29】
【図13−30】
【図13−31】
【図13−32】
【図13−33】
【図13−34】
【図13−35】
【図13−36】
【図13−37】
【図13−38】
【図13−39】
【図13−40】
【図13−41】
【図13−42】
【図13−43】
【図13−44】
【図13−45】
【図13−46】
【図13−47】
【図13−48】
【図13−49】
【図13−50】
【図13−51】
【図13−52】
【図13−53】
【図13−54】
【図13−55】
【図13−56】
【図13−57】
【図13−58】
【図13−59】
【図13−60】
【図13−61】
【図13−62】
【図13−63】
【図13−64】
【図13−65】
【図13−66】
【図13−67】
【図13−68】
【図13−69】
【図13−70】
【図13−71】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【公開番号】特開2012−197294(P2012−197294A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−128544(P2012−128544)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2006−500948(P2006−500948)の分割
【原出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【出願人】(399052796)デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128544(P2012−128544)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2006−500948(P2006−500948)の分割
【原出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【出願人】(399052796)デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (36)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]