説明

発光素子の駆動回路および発光装置

【課題】発光素子の点灯状態と消灯状態との切り替え速度をさらに向上する技術を提供する
【解決手段】入力信号に同期して発光素子の点灯状態と消灯状態とを切り替える駆動回路が提供される。この駆動回路は、制御端子を有し、制御端子の電位に依存して値が変化する駆動電流を発光素子へ供給する駆動電流供給部と、入力信号に同期して制御端子の電位を変化させることによって、発光素子の点灯状態と消灯状態とを切り替える制御部と、制御端子の電位の変化を促進する補助電流を制御端子へ供給する補助電流供給部とを備える。補助電流供給部はキャパシタを有し、入力信号に同期してキャパシタに印加される電圧が変化し、キャパシタの電圧変化によって補助電流が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子の駆動回路および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のレーザビームプリンタ等で用いられる発光装置では、200Mbps以上の速度で発光状態のスイッチングを行うこと、すなわち点灯状態と消灯状態とを切り替えることが要求されている。発光素子の状態の切り替えを高速化すべく、特許文献1は以下の構成を提案する。すなわち、レーザダイオードへ駆動電流を供給するカレントミラー回路を構成する2つのMOSトランジスタのうち、レーザダイオードに接続されたMOSトランジスタのゲートをスイッチ経由で接地へ接続する。そして、レーザダイオードの状態を切り替える場合に、スイッチをオン状態にして当該MOSトランジスタのゲートから接地へ電流を流すことにより、当該ゲートの電位の変化を高速化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-251886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成でも発光素子の状態の切り替えの高速化がある程度実現されるものの、十分とはいえない。そこで、本発明は、発光素子の点灯状態と消灯状態との切り替え速度をさらに向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、本発明の1つの側面では、入力信号に同期して発光素子の点灯状態と消灯状態とを切り替える駆動回路であって、制御端子を有し、前記制御端子の電位に依存して値が変化する駆動電流を前記発光素子へ供給する駆動電流供給部と、前記入力信号に同期して前記制御端子の電位を変化させることによって、前記発光素子の点灯状態と消灯状態とを切り替える制御部と、前記制御端子の電位の変化を促進する補助電流を前記制御端子へ供給する補助電流供給部とを備え、前記補助電流供給部はキャパシタを有し、前記入力信号に同期して前記キャパシタに印加される電圧が変化し、前記キャパシタの電圧変化によって前記補助電流が生成されることを特徴とする駆動回路が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記手段により、発光素子の点灯状態と消灯状態との切り替え速度をさらに向上する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る発光装置の例示の機能構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る発光装置の例示の回路構成図。
【図3】本発明の実施形態に係る発光装置の動作例を説明するタイミングチャート。
【図4】本発明の実施形態に係る発光装置の別の例の回路構成図。
【図5】本発明の実施形態に係る発光装置の別の例の回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態を以下に説明する。複数の図面にわたって共通する構成要素には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。以下の実施形態において、本発明は複写機、レーザビームプリンタなどにおいて画像形成のために用いられる発光装置の観点で説明される。しかしながら、本発明は発光素子の点灯状態と消灯状態とを切り替える駆動回路であれば、どのような用途に用いられてもよい。
【0009】
図1を用いて、本発明の1つの実施形態に係る発光装置の例示の機能構成図を説明する。発光装置110は発光素子と駆動回路100とを備えうる。以下の実施形態では発光素子の例としてカソードステム型のレーザダイオードLDを扱うが、電流で駆動されて点灯状態となればどのような発光素子でもかまわない。レーザダイオードLDのカソードは接地GNDに接続され、アノードは駆動回路100に接続される。駆動回路100はレーザダイオードLDを駆動して、レーザダイオードLDの点灯状態と消灯状態とを切り替える。本実施形態では、駆動回路100が発光素子LDへ所定の値以上の駆動電流Idを供給している間にレーザダイオードLDが点灯状態となり、駆動電流Idの値が所定の値を下回るとレーザダイオードLDが消灯状態となる。駆動電流Idの値がゼロの場合には、レーザダイオードLDへ電流が供給されない。
【0010】
駆動回路100は、駆動電流供給部101、補助電流供給部102、制御部103、および調整部104を備えうる。駆動電流供給部101はレーザダイオードLDへ駆動電流Idを供給する。制御部103は入力信号Dataに同期して、駆動電流供給部101がレーザダイオードLDへ供給する駆動電流Idの値を変化させる。例えば、制御部103は、駆動電流供給部101の制御端子の電位を変化させることによって、駆動電流供給部101により供給される駆動電流Idの値を制御することができ、これによってレーザダイオードLDの点灯状態と消灯状態とを切り替えることができる。本実施形態では、入力信号Dataがハイレベル(以下、「H」)とローレベル(以下、「L」)との2通りの値をとるパルス信号である場合を扱う。発光装置110が複写機、レーザビームプリンタなどに用いられる場合に、入力信号Dataは印刷する画像データの2値の画素値でありうる。
【0011】
補助電流供給部102は駆動電流供給部101へ補助電流Ixを供給する。補助電流はレーザダイオードLDの点灯状態と消灯状態との切り替えを高速化するための電流であり、その詳細は後述される。調整部104はレーザダイオードLDからのレーザ光の発光量を調整して駆動電流Idの値を調整する。
【0012】
続いて、図2を用いて、図1の駆動回路100の機能構成図を実現するための具体的な回路構成の一例を説明する。駆動電流供給部101はMOSトランジスタMP1(第1MOSトランジスタ)とMOSトランジスタMP2(第2MOSトランジスタ)とを有しうる。補助電流供給部102は可変キャパシタCvarとインバータINV2とを有しうる。制御部103は2つのスイッチSW1、SW2とインバータINV1とを有しうる。調整部104は調整回路105とフォトダイオードPD等の光電変換素子とを有しうる。
【0013】
MOSトランジスタMP1のソースは電源電圧VCCに接続され、そのドレインはレーザダイオードLDのアノードに接続され、そのゲートはスイッチSW1に接続される。MOSトランジスタMP2のソースは電源電圧VCCに接続され、そのドレインは調整回路105の出力端子Out1に接続され、そのゲートはスイッチSW1に接続される。すなわち、MOSトランジスタMP1のゲートとMOSトランジスタMP2のゲートとはスイッチSW1を介して接続される。また、MOSトランジスタMP1のゲートと電源電圧VCCとはスイッチSW2を介して接続される。さらに、MOSトランジスタMP2のゲートとドレインとは短絡される。図示していないが、MOSトランジスタMP1のバックゲートとMOSトランジスタMP2のバックゲートとはどちらも電源電圧VCCに接続される。
【0014】
スイッチSW1のオン・オフを制御する制御信号として、入力信号DataがインバータINV1を介して供給される。スイッチSW2のオン・オフを制御する制御信号として、入力信号Dataが供給される。可変キャパシタCvarの一方の電極(図面では上側の電極)はMOSトランジスタMP1のゲートへ接続され、他方の電極(図面では下側の電極)にはインバータINV2を介して入力信号Dataが印加される。可変キャパシタCvarの容量値は変更可能であり、調整回路105の出力端子Out2から印加される電圧Voによって調整される。本実施形態では、印加される電圧Voの値が大きいほど可変キャパシタCvarの容量値が大きいとする。
【0015】
フォトダイオードPDのカソードは調整回路105の入力端子In1に接続され、そのアノードは接地GNDに接続される。フォトダイオードPDはレーザダイオードLDが発光するレーザ光LBを受光可能な位置に配置され、レーザダイオードLDのレーザ光LBの発光量に応じたモニタ電流Imを発生させ、調整回路105の入力端子In1へ供給する。
【0016】
調整回路105は出力端子Out1から電流Ioを出力するとともに、出力端子Out2から電圧Voを出力する。調整回路105は電圧Voの値を電流Ioの値に対して正の相関を有するように調整する。すなわち、調整回路105は電流Ioの値が大きいほど電圧Voの値を大きくする。調整回路105の入力端子In2にはモード選択信号MODが入力され、この信号に応じて調整回路105は自身の動作状態を切り替える。調整回路105のモードごとの動作の詳細は後述する。
【0017】
続いて、図3のタイミングチャートを参照しつつ、図2に示した発光装置110の動作例を説明する。本実施形態に係る発光装置110はAPC(Auto Power Control:自動光量調整)モードとデータ処理モードとの2つのモードで動作しうる。APCモードは、駆動回路100がレーザダイオードLDを必要な光量で発光させるために駆動電流Idの値を調整するモードである。データ処理モードは駆動回路100が入力信号Dataに同期してレーザダイオードLDの点灯状態と消灯状態とを切り替えるモードである。本実施形態では、モード選択信号MODがHである間に発光装置110がAPCモードとなり、これがLである間に発光装置110がデータ処理モードとなるとする。発光装置110のユーザは定期的に発光装置110をAPCモードに切り替えることで、レーザダイオードLDの経年劣化等による電流光変換特性の変化を調整できる。
【0018】
まず、発光装置110がAPCモードである期間(以下、APC期間)の動作を説明する。前述の通り、APC期間において、モード選択信号MODはHに保たれる。また、APC期間において、駆動回路100は入力信号DataをHに保つ。その結果として、スイッチSW1の制御信号はLとなり、スイッチSW1はオン状態(導通状態)となる。一方、スイッチSW2の制御信号はHとなり、スイッチSW2はオフ状態(切断状態)となる。これにより、MOSトランジスタMP1とMOSトランジスタMP2とがカレントミラー回路を構成する。このカレントミラー回路は調整回路105から供給された電流Ioを所定の比率で増幅し、駆動電流IdとしてMOSトランジスタMP1を通じてレーザダイオードLDへ供給する。
【0019】
また、APC期間が開始されると、調整回路105はMOSトランジスタMP2へ供給する電流Ioの値を徐々に大きくする。それに応じて、レーザダイオードLDへ供給される駆動電流Idの値も徐々に大きくなる。レーザダイオードLDは駆動電流Idの値に応じた発光量でレーザ光LBを発光する。フォトダイオードPDはこのレーザ光LBを受光し、発光量に応じた電流Imを調整回路105へ供給する。この電流Imも値も電流Ioに依存して徐々に大きくなる。調整回路105は電流Imの値に基づいて発光量を測定し、電流Imの値が所定の値になった時点の電流Ioの値を記憶し、APC期間終了後もこの値の電流Ioを出力し続ける。これとともに、調整回路105は電流Ioの値に対して正の相関を有する値の電圧Voを出力端子Out2から出力する。例えば、電圧Voの値は電流Ioの値に比例してもよい。
【0020】
続いて、発光装置110がデータ処理モードである期間(以下、データ処理期間)の動作を説明する。前述の通り、データ処理期間において、モード選択信号MODはLに保たれる。また、データ処理期間において、駆動回路100へ入力信号Dataが入力される。本実施形態において駆動回路100は、入力信号DataがHである場合にレーザダイオードLDを点灯状態にし、これがLである場合にレーザダイオードLDを消灯状態にする。
【0021】
まず、入力信号DataがLからHへ変化した場合の発光装置110の動作を説明する。入力信号DataがLからHへ変化すると、前述と同様に、スイッチSW1はオン状態となり、スイッチSW2はオフ状態となる。これにより、MOSトランジスタMP1のゲートとMOSトランジスタMP2のゲートとが接続されるとともに、MOSトランジスタMP1のゲートとソースとが開放される。その結果、MOSトランジスタMP1とMOSトランジスタMP2とがカレントミラー回路を構成する。カレントミラー回路が構成されると、MOSトランジスタMP1のゲート電位の値が変化し、この変化に応じてMOSトランジスタMP1からレーザダイオードLDへ供給される駆動電流Idの値が変化する。すなわち、MOSトランジスタMP1のゲートが駆動電流供給部101の制御端子として機能する。
【0022】
また、入力信号DataがLからHへ変化すると、可変キャパシタの一方の電極(図面では下側の電極)に印加される電圧がHからLへ変化する。この際の可変キャパシタCvarの電圧をVxとすると、電圧Vxの時間微分に可変キャパシタの容量値Cを乗じた値の補助電流Ixが生成され、MOSトランジスタMP1のゲートへ供給される。すわなち、可変キャパシタの電圧変化によって、Ix=C×(dVx/dt)を満たす補助電流Ixが生成され、MOSトランジスタMP1のゲートへ供給される。
【0023】
入力信号DataがLからHへ変化した直後のMOSトランジスタMP1のゲートの電位は電源電圧VCCに等しく、この電位が所定の値まで低下することで駆動電流Idの値が所定の値を上回り、レーザダイオードLDは点灯状態になる。MOSトランジスタMP1のゲートへ供給される補助電流Ixはこのゲートの電位を引き下げる方向へ流れ、ゲート電位の変化が促進される。さらに、補助電流Ixは電圧Vxの時間微分に依存するため、図3の波形に示すように、入力信号DataがLからHへ変化した直後は非常に大きな値をとり、その後にゼロになる。そのため、図3に示される従来技術による駆動電流と比較して、レーザダイオードLDの駆動電流Idの立ち上がりが急峻になり、立ち上がり時間が短縮される。ここで、立ち上がり時間とは入力信号DataがLからHに変化してからレーザダイオードLDが点灯状態に変化するまでの時間を指す。MOSトランジスタMP1のゲートの電位がMOSトランジスタMP2のゲートの電位に等しくなると、調整回路105から出力された電流Ioの値に比例した値の駆動電流IdがレーザダイオードLDへ供給され続け、レーザダイオードLDは点灯状態を維持する。
【0024】
次に、入力信号DataがHからLへ変化した場合の発光装置110の動作を説明する。入力信号DataがHからLへ変化すると、スイッチSW1はオフ状態となり、スイッチSW2はオン状態となる。これにより、MOSトランジスタMP1のゲートとMOSトランジスタMP2のゲートとが開放されるとともに、MOSトランジスタMP1のゲートとソースとが接続される。その結果、MOSトランジスタMP1とMOSトランジスタMP2とで構成されたカレントミラー回路は解除される。
【0025】
また、入力信号DataがHからLへ変化すると、可変キャパシタの一方の電極(図面では下側の電極)に印加される電圧がLからHへ変化する。この場合も、先程と同様に、Ix=C×(dVx/dt)を満たす補助電流Ixが生成され、MOSトランジスタMP1のゲートへ供給される。
【0026】
入力信号DataがHからLへ変化した直後のMOSトランジスタMP1のゲートの電位はMOSトランジスタMP2のゲートの電位に等しく、この電位が所定の値まで増加することで駆動電流Idの値は所定の値を下回り、レーザダイオードLDは消灯状態になる。MOSトランジスタMP1のゲートへ供給される補助電流Ixはこのゲートの電位を引き上げる方向へ流れ、ゲート電位の変化が促進される。さらに、補助電流Ixは電圧Vxの時間微分に依存するため、図3の波形に示すように、入力信号DataがHからLへ変化した直後は非常に大きな値をとり、その後にゼロになる。そのため、図3に示される従来技術による駆動電流と比較して、レーザダイオードLDの駆動電流Idの立ち下がりが急峻になり、立ち下がり時間が短縮される。ここで、立ち上がり時間とは入力信号DataがHからLに変化してからレーザダイオードLDが消灯状態に変化するまでの時間を指す。MOSトランジスタMP1のゲートの電位が電源電圧VCCに等しくなると、駆動電流Idの値はゼロになり、レーザダイオードLDは消灯状態を維持する。
【0027】
本実施形態では、調整回路105が電流Ioの値に対して正の相関を有するように可変キャパシタCvarの容量値を調整する。駆動電流Idの値は電流Ioの値に比例し、補助電流Ixの値は可変キャパシタCvarの容量値に比例するため、駆動電流Idに対して補助電流Ixが正の相関を有すると表現してもよい。すなわち、本実施形態の駆動回路100では駆動電流Idの値が大きいほど、補助電流Ixの値も大きくなる。このように、駆動電流Idの大きさに依存して補助電流Ixの大きさを調整することによって、駆動電流Idの値が小さい場合のパルス電流にオーバーシュートが発生することを防止できる。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、レーザダイオードLDの駆動電流の任意の値に対して、レーザダイオードLDの点灯状態と消灯状態との切り替えを高速化できる。特に、発光素子としてカソードステム型レーザダイオードを用いる場合には、MOSトランジスタとして応答性の悪いPMOSトランジスタを使用することになるので、本発明の効果は一層顕著に現われる。また、APCに対応した発光装置では、レーザダイオードの経年劣化時の光量を補償するために大きな駆動電流を流す必要があり、レーザダイオードを駆動するMOSトランジスタのサイズをあらかじめ大きく設計する必要がある。このようにMOSトランジスタのサイズを大きく設定した場合に、駆動電流が小さい間はトランジスタのゲートを充放電する時間が長くなり、レーザダイオードの状態を高速に切り替えることができなかった。本発明は電圧の微分値に依存する電流を補助電流として用いるので、APCに対応した発光装置においてもレーザダイオードLDの点灯状態と消灯状態との切り替えを高速化できる。
【0029】
続いて、図4を用いて、図1の駆動回路100の機能構成図を実現するための具体的な回路構成の別の例を説明する。図2の回路構成との相違点は補助電流供給部102及び制御部103であり、他の構成要素は同様であるため、以下では図2の回路構成との相違点を説明する。
【0030】
図4の実施形態において、補助電流供給部102は選択回路107、複数のMOSトランジスタMP4(第4MOSトランジスタ)、および選択回路107とMOSトランジスタMP4とを接続する複数のNAND回路とを有しうる。制御部103は、図2のスイッチSW1として機能するMOSトランジスタMP3(第3MOSトランジスタ)と、図2のスイッチSW2として機能するMOSトランジスタMP5(第5MOSトランジスタ)とを有しうる。MOSトランジスタMP4は例えばPMOSトランジスタであるが、半導体基板から絶縁されたバックゲートを有するNMOSトランジスタであってもよい。
【0031】
図4の駆動回路100は3つのMOSトランジスタMP4を含んでいるが、この個数は1つ以上であればいくつでもかまわない。3つのMOSトランジスタMP4はそれぞれ同様の構成を有するので、そのうちの1つの構成を以下に説明する。MOSトランジスタMP4のソース、ドレイン、およびバックゲートの少なくとも1つがMOSトランジスタMP1のゲートに接続される。以下の例では、MOSトランジスタMP4のソース、ドレイン、およびバックゲートのすべてがMOSトランジスタMP1のゲートに接続される場合を扱う。MOSトランジスタMP4のゲートは対応するNAND回路の出力端子に接続される。NAND回路の一方の入力端子には入力信号Dataが供給され、他方の入力端子は選択回路107に接続される。選択回路107には調整回路105から電圧Voが供給される。
【0032】
MOSトランジスタMP3のゲートにはインバータINV1を介して入力信号Dataが供給される。MOSトランジスタMP3のソースはMOSトランジスタMP2のゲートに接続され、このドレインはMOSトランジスタMP1のゲートに接続され、このバックゲートは電源電圧VCCに接続される。MOSトランジスタMP5のゲートには入力信号Dataが供給され、このドレインはMOSトランジスタMP1のゲートに接続され、このソースおよびバックゲートは電源電圧VCCに接続される。
【0033】
次に、図4の発光装置110の動作例を説明する。基本的な動作は図3のタイミングチャートを用いて説明した動作と同様であり、以下では相違点であるデータ処理モード中の補助電流供給部102の動作を説明する。データ処理モードが開始されると、選択回路107は調整回路105から供給された電圧Voの値に応じて、選択回路107に接続された複数のNAND回路のうちの1つ以上へHを供給し、残りへLを供給する。選択回路107からHが供給されたNAND回路に対してHの入力信号Dataが供給されると、NAND回路の出力がLからHに変化する。それに応じてNAND回路に接続されたMOSトランジスタMP4のゲートの電位も変化し、MOSトランジスタMP4のゲートと、ソース、ドレイン、およびバックゲートとの間の容量値に応じた補助電流IxがMOSトランジスタMP1のゲートへ供給される。入力信号DataがHからLに変化した場合も選択回路107からHが供給されたNAND回路に接続されたMOSトランジスタMP4からMOSトランジスタのMP1のゲートへ駆動電流Ixが供給される。入力信号Dataが何れの方向に変化した場合でも、補助電流IxはMOSトランジスタMP4のゲートと他の電極との間の電圧の微分値に依存し、MOSトランジスタMP1のゲート電位の変化を促進する方向に流れるので、図2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0034】
選択回路107は電圧Voの値に対して正の相関を有する個数のNAND回路へHを供給する。例えば、電圧Voの取り得る範囲を3分割する。1番小さな範囲に電圧Voが含まれる場合に、選択回路107は1つのNAND回路のみにHを供給する。2番目の範囲に電圧Voが含まれる場合に、選択回路107は2つのNAND回路のみにHを供給する。1番大きな範囲に電圧Voが含まれる場合に選択回路107はすべてのNAND回路にHを供給する。これにより、駆動電流Idの値に段階的に依存する補助電流IxがMOSトランジスタMP1のゲートへ供給される。選択回路107は複数の基準電圧と複数のコンパレータとで構成されてもよいし、アナログデジタル変換器(A/Dコンバータ)で構成されてもよい。
【0035】
続いて、図5を用いて、図1の駆動回路100の機能構成図を実現するための具体的な回路構成の別の例を説明する。図4の回路構成との相違点は補助電流供給部102及び制御部103であり、他の構成要素は同様であるため、以下では図4の回路構成との相違点を説明する。
【0036】
図4の実施形態において、MOSトランジスタMP4のソースおよびバックゲートは何れもMOSトランジスタMP1のゲートに接続され、そのドレインはMOSトランジスタMP2のゲートに接続される。MOSトランジスタMP4のゲートは対応するNAND回路の出力端子に接続される。MOSトランジスタMP3のゲートにはインバータINV1を介して入力信号Dataが供給され、このソースおよびバックゲートはMOSトランジスタMP1のゲートに接続され、このドレインはMOSトランジスタMP2のゲートに接続される。
【0037】
図5の発光装置110の図4の発光装置110と同様に動作し、同様の効果が得られる。図5の発光装置110では、MOSトランジスタMP3のバックゲートがMOSトランジスタMP1のゲートに接続されている。そのため、MOSトランジスタMP3のゲート‐バックゲート間の電圧の微分値にゲート‐バックゲート間の容量を乗じた電流もMOSトランジスタMP1のゲートへ供給される。従って、カレントミラー回路を構成する2つのMOSトランジスタMP1、MP2のゲート同士を接続させるためのスイッチとして機能するMOSトランジスタMP3が補助電流を供給することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に同期して発光素子の点灯状態と消灯状態とを切り替える駆動回路であって、
制御端子を有し、前記制御端子の電位に依存して値が変化する駆動電流を前記発光素子へ供給する駆動電流供給部と、
前記入力信号に同期して前記制御端子の電位を変化させることによって、前記発光素子の点灯状態と消灯状態とを切り替える制御部と、
前記制御端子の電位の変化を促進する補助電流を前記制御端子へ供給する補助電流供給部と
を備え、
前記補助電流供給部はキャパシタを有し、前記入力信号に同期して前記キャパシタに印加される電圧が変化し、前記キャパシタの電圧変化によって前記補助電流が生成される
ことを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
前記駆動電流供給部は第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタを有し、前記第1MOSトランジスタのゲートが前記制御端子として機能し、
前記制御部は、前記第1MOSトランジスタのゲートと前記第2MOSトランジスタのゲートとを接続するための第3MOSトランジスタを有し、前記発光素子を点灯状態にする場合に、前記第1MOSトランジスタのゲートと前記第2MOSトランジスタのゲートとを接続してカレントミラー回路を構成し、前記発光素子を消灯状態にする場合に、前記第1MOSトランジスタのゲートと前記第2MOSトランジスタのゲートとを切断して前記カレントミラー回路を解除し、
前記駆動電流供給部は、前記カレントミラー回路が構成された場合に、前記第2MOSトランジスタへ供給されている電流に依存する電流を前記第1MOSトランジスタから前記駆動電流として前記発光素子へ供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記第3MOSトランジスタのバックゲートは前記第1MOSトランジスタのゲートに接続され、
前記第3MOSトランジスタのゲート電位は前記入力信号に同期して変化する
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記補助電流供給部は前記キャパシタとして機能する第4MOSトランジスタを有し、
前記第4MOSトランジスタのゲート電位は前記入力信号に同期して変化し、当該ゲート電位が変化することにより前記第4MOSトランジスタのソース、ドレイン及びバックゲートの少なくとも何れかから前記補助電流が前記制御端子へ供給される
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記駆動電流による前記発光素子の発光量を測定する光電変換素子と、前記駆動電流供給部が供給する前記駆動電流の値を調整して、前記測定された発光量を所定の値にする調整回路とを有する調整部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記キャパシタは、前記調整回路により容量値が変更可能な可変キャパシタであり、
前記調整回路は、前記測定された発光量を所定の値にするための前記駆動電流の値が大きいほど前記可変キャパシタの容量値を大きくすることを特徴とする請求項5に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記補助電流供給部は、選択回路と、前記キャパシタとして機能する複数の第4MOSトランジスタとを有し、
前記選択回路は、前記複数の第4MOSトランジスタのうちの1つ以上の第4MOSトランジスタのゲート電位を前記入力信号に同期して変化させ、当該ゲート電位が変化することにより前記第4MOSトランジスタのソース、ドレイン及びバックゲートの少なくとも何れかから前記補助電流が前記制御端子へ供給され、
前記選択回路は、前記測定された発光量を所定の値にするための前記駆動電流の値が大きいほど多くの個数の前記第4MOSトランジスタのゲート電位を変化させる
ことを特徴とする請求項5に記載の駆動回路。
【請求項8】
発光素子と、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の駆動回路と
を備えることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110282(P2013−110282A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254458(P2011−254458)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】