説明

発光素子アレイおよび発光素子ヘッド

【課題】 発光素子アレイのボンディング部を樹脂などによってコーティングした場合であっても、樹脂などが発光素子の発光面に流れ出すことを抑制し、発光強度の低下を抑制できる発光素子アレイを提供する。
【解決手段】 基板2に、複数の発光素子3と、複数の電極パッド5とを有する発光素子アレイ1であって、複数の発光素子3は、基板2の一方主面に列状に配置され、複数の電極パッド5は、発光素子アレイ1の一方主面に、発光素子3の配列方向に沿って列状に配置され、複数の発光素子3の列と複数の電極パッド5の列との間における基板2の一方主面に、配列方向に沿った第1の凹部6aを少なくとも1列有し、第1の凹部6aの両端は、複数の発光素子3の列および複数の電極パッド5の列における両端よりも外側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子アレイおよび発光素子ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種露光装置等の光源に用いられる光学素子として、発光素子が複数配列された発光素子アレイが採用されている。例えば、特許文献1に記載の発光素子アレイは、発光部を有する半導体層に電極が接続されており、電極に接続される電極パッドと外部の電子部品などがワイヤボンディングにより接続されている。そして、発光素子の配列密度が高くなるにつれ、発光素子アレイ側のボンディングには2次側ボンディング、つまりステッチボンディングが行なわれる。このような発光素子アレイでは、2次側ボンディングの接合面積が小さくなるため接合強度が低下する傾向にあり、発光素子アレイの使用などによって、発光素子アレイ側のワイヤボンディングが剥がれて電気的な接続を維持できないという問題があった。そこで、本発明者は、発光素子アレイ側のワイヤボンディングが剥がれることのないように、ボンディング部を樹脂などでコーティングすることを検討した。
【0003】
しかしながら、配列密度の高い発光素子アレイの多くは、小型化のため発光素子の発光面と電極パッドとの距離も短く形成されていることから、コーティングした樹脂が流れ出したり、樹脂の溶剤成分が滲み出したりすることによって、発光素子の発光面を汚染し、発光強度を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−184805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、発光素子アレイのボンディング部を樹脂などによってコーティングした場合であっても、コーティングした樹脂などが発光素子の発光面に流れ出すことを抑制し、発光強度の低下を抑制することができる発光素子アレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光素子アレイは、長方形状の半導体基板に、複数の発光素子と、該発光素子に金属線を介して電気的に接続されるとともに外部の電子部品にボンディングワイヤを介して電気的に接続される複数の電極パッドとを有する発光素子アレイであって、前記複数の発光素子は、前記半導体基板の一方主面に列状に配置され、前記複数の電極パッドは、前記発光素子アレイの一方主面に、前記発光素子の配列方向に沿って列状に配置され、前記複数の発光素子の列と前記複数の電極パッドの列との間における前記半導体基板の一方主面に、配列方向に沿った第1の凹部を少なくとも1列有し、前記第1の凹部の両端は、前記複数の発光素子の列および前記複数の電極パッドの列における両端よりも外側に位置することを特徴とする。
【0007】
また、上記構成において、前記第1の凹部を複数列有しており、該複数列の第1の凹部の深さは、前記発光素子と前記電極パッドとの間において該電極パッドから遠ざかるにつれて浅くなっていることを特徴とする。
【0008】
さらに、上記構成において、前記第1の凹部を複数列有しており、該複数列の第1の凹
部の幅は、前記発光素子と前記電極パッドとの間において該電極パッドに近づくにつれて広くなっていることを特徴とする。
【0009】
また、上記構成において、前記第1の凹部は、波状またはジグザク状であることを特徴とする。
【0010】
さらに、上記構成において、前記第1の凹部の両端の各々から、前記複数の電極パッド側に位置する前記半導体基板の長辺に向かって伸びる第2の凹部をさらに有することを特徴とする。
【0011】
また、電子部品が搭載された基板上に、複数の上記いずれかの構成の発光素子アレイが列状に配置され、前記複数の電極パッドが、それぞれ前記ボンディングワイヤが接続されているとともに樹脂で覆われていることを特徴とする発光素子ヘッドを併せて提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光素子アレイによれば、基板に、複数の発光素子と、複数の電極パッドとを有する発光素子アレイであって、前記複数の発光素子は、前記基板の一方主面に列状に配置され、前記複数の電極パッドは、前記発光素子アレイの一方主面に、前記発光素子の配列方向に沿って列状に配置され、前記複数の発光素子の列と前記複数の電極パッドの列との間における前記基板の一方主面に、配列方向に沿った凹部を少なくとも1列有し、前記凹部の両端は、前記複数の発光素子の列および前記複数の電極パッドの列における両端よりも外側に位置することから、発光素子アレイが外部の電子部品とワイヤボンディングを介して電極パッドで接続され、ワイヤボンディング部の接続信頼性を確保するために、電極パッドをエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの樹脂でコーティングされたときに、樹脂が流れ出し、または樹脂の成分である溶剤が滲み出すことにより、発光素子の発光面を覆うことによって発光強度が低下することを防止できるため、ボンディング部の接続信頼性が高く、発光強度の低下を抑制することができる発光素子アレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光素子アレイの平面図である。
【図2】図1に示した発光素子アレイの1I−1I線に沿った断面図である。
【図3】図1に示す発光素子アレイを用いた発光素子ヘッドの平面図である。
【図4】図1に示す発光素子アレイの第1変形例を示す平面図である。
【図5】(a)、(b)は凹部の変形例を説明する断面図であり、(c)、(d)は凹部の変形例を説明する平面図である。
【図6】図1に示す発光素子アレイの第2変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発光素子アレイ)
以下、本発明の発光素子アレイ、発光素子ヘッドについて、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の例は本発明の実施の形態を例示するものであって、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
図1に示す発光素子アレイ1は、ページプリンター等の電子写真装置に組み込まれる光学素子ヘッド等の露光装置における光源として機能する。
【0016】
発光素子アレイ1は、ベース基板2と、複数の発光素子3と、発光素子3のそれぞれに金属線4を介して接続される複数の電極パッド5と、第1の凹部6aとを有している。
【0017】
ベース基板2は、たとえば、シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、ガリウム燐(GaP)、窒化ガリウム(GaN)、サファイア(Al)などの単結晶で形成されており、複数の発光素子3の支持体として機能する。なお、本実施形態のベース基板2は、長方形状のガリウム砒素(GaAs)の単結晶で形成されている。そして、シリコン(Si)などの一導電型半導体不純物を1×1016〜1019atoms/cm程度含有し、一導電型半導体としても機能する。ベース基板2の下面には、発光素子3に電力を供給するための裏面電極7が形成されている。
【0018】
発光素子3は、一導電型半導体層30と逆導電型半導体層31とを順次積層した半導体層で形成されており、発光素子アレイ1の光源として機能する。複数の発光素子3は、ベース基板2の上面に列状に配置されている。なお、本実施形態の発光素子3は一列に配列されているが、複数列に配列されていてもよい。
【0019】
本実施形態の一導電型半導体層30は、電子の注入層30aで構成されている。電子の注入層30aは、たとえば、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)で形成され、シリコン(Si)などの一導電型半導体不純物を1×1016〜1019atoms/cm程度含有し、厚みが0.2〜0.4μm程度とされている。なお、電子の注入層30bのアルミニウム(Al)の組成比は0.24〜0.5程度とされている。
【0020】
本実施形態の一導電型半導体層30は、ベース基板2が一導電型半導体層30の一部として機能するため、電子の注入層30aのみで構成されているが、ベース基板2がサファイア(Al)などの非導電性基板の場合には、ベース基板2の上面には一導電型半導体層と外部の電子部品との電気的接続を行なうためにオーミックコンタクト層が形成される。
【0021】
一方、逆導電型半導体層31は、発光層31a、クラッド層31bおよびオーミックコンタクト層31cで構成されている。発光層31aおよびクラッド層31bは、電子の閉じ込め効果と光の取り出し効果とを考慮して、混晶比を異ならせた、たとえば、アルミニウム砒素(AlAs)およびガリウム砒素(GaAs)で形成されており、亜鉛(Zn)などの逆導電型半導体不純物を1×1016〜1018atoms/cm程度含有し、厚みが0.2〜0.4μm程度とされている。オーミックコンタクト層31cは、たとえば、ガリウム砒素(GaAs)で形成されており、亜鉛(Zn)などの逆導電型半導体不純物を1×1019〜1020atoms/cm程度含有し、その厚みが0.01〜0.1μm程度とされている。
【0022】
そして、基板2の発光素子3側の上面と、オーミックコンタクト層31cの上面の一部を除いた発光素子3とを覆うように絶縁層8が形成されている。絶縁層8は、たとえば、窒化シリコン(SiN)で形成され、厚みが3000〜50000Å程度に形成されている。
【0023】
絶縁層8の上面には、発光素子3のそれぞれに対応した複数の電極パッド5と、複数の発光素子3を複数の電極パッド5にそれぞれ接続する複数の金属線4とが形成されており、絶縁層8は、複数の電極パッド5および複数の金属線4と、基板2または発光素子3のオーミックコンタクト層31c以外の半導体層との電気的絶縁を確保する機能を有している。
【0024】
発光素子3と電極パッド5との電気的な接続は、発光素子3の上面に形成されるオーミックコンタクト層31cの絶縁層8が被覆されていない部分と電極パッド5とが金属線4で接続されることによって行なわれる。
【0025】
金属線4および複数の電極パッド5は、金(Au)、アルミニウム(Al)または銅(Cu)などの金属材料で形成されている。
【0026】
複数の発光素子3の列と複数の電極パッド5の列との間に位置する基板2の上面に、発光素子3の列または電極パッド5の列の配列方向に沿った第1の凹部6aが形成されている。上述の絶縁層8および金属線4は、第1の凹部6aの上面に形成されている。
【0027】
第1の凹部6aは、たとえば、深さが50〜100μm、発光素子3から電極パッド5に向かう方向の幅が50〜100μmで形成されており、第1の凹部6aの両端は、発光素子3の列および電極パッド5の列における両端よりも外側に位置している。
【0028】
このような第1の凹部6aを有することにより、発光素子アレイ1が外部の電子部品とワイヤボンディングを介して電極パッド5で接続され、ワイヤボンディング部の接続信頼性を確保するために電極パッド5をエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの樹脂でコーティングしたときに、樹脂が流れ出し、または樹脂の成分である溶剤が滲み出すことにより、発光素子3の発光面を覆うことによって発光強度が低下することを防止できる。ここで発光面とは、発光素子3の発光層30aに対応する上面のことであり、発光素子3の上面から発光層30aを透視したときの領域に相当する。
【0029】
次に、上述の発光素子アレイ1の製造方法を説明する。
【0030】
まず、基板2の上面に、一導電型半導体層30と逆導電型半導体層31とをMOCVD(有機金属化学気相成長:Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法、またはMB
E(分子線エピタキシャル成長:Molecular Beam Epitaxy)法などによって順次積層して形成する。
【0031】
これらの一導電型半導体層30および逆導電型半導体層31は、基板2の温度を700〜900℃として、TMG((CHGa)、TEG((CGa、アルシン(AsH)、TMA((CHAl)、TEA((CAl)などを原料ガスとして形成される。導電型を制御するためのガスとしては、シラン(SiH)、セレン化水素(HSe)、TMZ((CHZn)などが用いられ、キャリアガスとしては、水素(H)などが用いられる。
【0032】
次に、隣接する発光素子3同士が電気的に分離されるように、一導電型半導体層30、逆導電型半導体層31が島状にパターニングされる。パターニングは従来周知のフォトリソグラフィ法によって行なわれ、エッチングは硫酸過酸化水素水系のエッチング液を用いたウェットエッチングやCClガスを用いたドライエッチングなどによって行なわれる。
【0033】
次に、基板2の上面において、後に形成される複数の発光素子3の列と、複数の電極パッド5の列との間に対応する位置に、第1の凹部6aをCOレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザーなどにより形成する。第1の凹部6aの両端は、後に形成される複数の発光素子3の列の両端および複数の電極パッド5の列の両端よりも外側に位置するように形成される。本実施形態では、第1の凹部6aをレーザー加工によって形成したが、上述の硫酸過酸化水素水系のエッチング液を用いたウェットエッチングやCClガスを用いたドライエッチングなどによって行なってもよい。なお、エッチングによって第1の凹部6aを形成する場合には、上述の隣接する発光素子3同士を電気的に分離する工程と同時に行なってもよい。
【0034】
次に、プラズマCVD法によって、シランガス(SiH)とアンモニアガス(NH
)とを用いて窒化シリコン(SiN)からなる絶縁層8を、基板2と基板2の上面に形成された発光素子3とを覆うように形成する。このとき、発光素子3の表面に形成されるオーミックコンタクト層31cの一部には絶縁層8を形成せず、後に形成する金属線4との電気的接続が可能なようにする。
【0035】
次に、金(Au)、アルミニウム(Al)または銅(Cu)などを蒸着法やスパッタリング法によって、絶縁層8の上面に、発光素子3のそれぞれに対応する複数の電極パッド5と、発光素子3の上面に露出しているオーミックコンタクト層31cと、発光素子3に対応する電極パッド5とをそれぞれ接続する複数の金属線4を形成する。同様に、ベース基板2の発光素子3が搭載された面の反対側に位置する下面に、裏面電極7を形成する。電極パッド5、金属線4および裏面電極7は同時に形成してもよい。
【0036】
このようにして構成された発光素子アレイ1は、電極パッド5と裏面電極7との間に電力を供給することにより、所望の発光素子3を発光させることができる。
【0037】
(発光素子ヘッド)
次に、図2に示す発光素子ヘッド100について説明する。
【0038】
発光素子ヘッド100は、上述の複数の発光素子アレイ1が、基板110の上面に接着剤120を介して列状に配列されており、ページプリンター等の電子写真装置に組み込まれる露光装置として機能する。
【0039】
基板110は、セラミック基板や、ガラスエポキシ樹脂などからなる有機基板で形成され、図示はしないが、上面に発光素子アレイ1や外部との電気的な接続を行なうための電気配線や接続パッドが設けられている。基板110は、複数の発光素子3を支持する支持体として、また、発光素子3と外部の電子部品とを電気的に接続する回路基板として機能する。
【0040】
発光素子アレイ1の電極パッド5は、ワイヤボンディングを行なうことにより、基板110の上面に形成された接続パッド(不図示)とワイヤ130で接続される。そして、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などのコーティング樹脂140を、電極パッド5および電極パッド5に接続されたワイヤ130の接続部に塗布することによって発光素子アレイ1側のワイヤボンディング部をコーティングする。コーティング樹脂の塗布にはディスペンサーなどを用いればよい。
【0041】
発光素子アレイ1側のワイヤボンディング部を樹脂によってコーティングする理由は、発光素子3の配列密度が高くなるにつれて、電極パッド5はワイヤボンディングの2次側となり、ステッチボンディングが行なわれるため、ワイヤ130の接続面積が小さくなることから、ワイヤ130が電極パッド5から剥がれたりすることがないように樹脂で補強するためである。
【0042】
本実施形態の発光素子ヘッド100が有する発光素子アレイ1によれば、複数の発光素子3の列と複数の電極パッド5の列との間に位置する基板2の上面に、発光素子3の列または電極パッド5の列の配列方向に沿った第1の凹部6aが形成されており、その両端が発光素子3の列および電極パッド5の列の両端よりも外側に位置しているため、発光素子3と電極パッド5との距離が短くても、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂を電極パッド5の上に塗布した際に、塗布した樹脂が発光素子3の発光面に流れ出したり樹脂に含まれる溶剤成分が滲み出したりすることによって、発光素子3の発光面を汚染することがなく、発光素子3の発光強度の低下を抑制して、比較的高く維持することが可能となる。発光素子3の発光面を汚染することが抑制されるのは、流れ出した樹脂や、樹脂から滲み出した溶
剤成分が第1の凹部6aに溜まることによって、これらが発光面側へ移動することを防止できるためである。
【0043】
なお、本実施形態では発光素子3は基板110の電極パッドに接続されているが、基板110の上面に発光素子3を駆動させるための駆動ICをさらに配置して、発光素子3の電極パッドと駆動ICの電極パッドとを接続してもよい。
【0044】
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0045】
たとえば、本実施形態における第1の凹部6aは、1列で形成されているが、図4に示す本実施形態の第1変形例のように、複数列で形成されていてもよい。第1の凹部6を複数列とすることにより、流れ出した樹脂や、樹脂から滲み出した溶剤成分を最も電極パッド5側に位置する第1の凹部6aで収容しきれなかった場合に、その次の第1の凹部6aが流れ出した樹脂や、樹脂から滲み出した溶剤成分を収容することにより、発光素子3の発光面に移動することを防止できるからである。
【0046】
また、上述のように、複数の第1の凹部6aの列を有する場合には、図5(a)に示すように、電極パッド5から発光素子3の方向に向かうにつれて、第1の凹部6aの深さを浅くしてもよい。このような構造とすることで、流れ出した樹脂や、樹脂から滲み出した溶剤成分の堰止め効果を高めることができる。また、第1の凹部6aには絶縁層8および金属線4が形成されるが、絶縁層8および金属線4は、プラズマCVD法、蒸着法またはスパッタリング法などによって形成されるため、第1の凹部6aへの形成しやすさを考慮すると、第1の凹部6aの深さは浅い方が有利であることから、樹脂の流れ出しや、樹脂からの溶剤成分の滲み出しが比較的抑制されている発光素子3側で第1の凹部6を浅くすることによって、発光素子3の発光面の汚染を防止しつつ、発光素子3への金属線4の接続信頼性を高めることができる。
【0047】
さらに、上述のように、複数の第1の凹部6aの列を有する場合には、図5(b)に示すように、発光素子3から電極パッド5の方向に向かうにつれて第1の凹部6aの幅を広くしてもよい。これは、流れ出した樹脂を電極パッド5に近い側の幅の広い第1の凹部6aに収容し、この樹脂から滲み出した溶剤成分の量は比較的少ないため、その次の幅の狭い第1の凹部6aで収容するようするものである。発光素子3の列と電極パッド5の列との距離は短いため、電極パッド5に近づくにつれて第1の凹部6aの幅を広くすることにより、樹脂の流れ出し防止と、樹脂からの溶剤成分の滲み出し防止とを効率的に行なう構造である。
【0048】
当然のことながら、上述の第1の凹部6aの深さと幅の関係を組み合わせることも可能である。
【0049】
また、第1の凹部6aは、本実施形態では一直線状となっているが、図5(c)に示すように、波状であってもよいし、図5(d)に示すように、ジグザグ状であってもよい。ここでいう波状およびジグザク状は、基板2の平面視における第1の凹部6aの形状のことを表している。第1の凹部6を波状やジグザグ状にすることにより、流れ出した樹脂や樹脂から滲み出した溶剤成分を収容する第1の凹部6aの体積が増えるため、流れ出し防止および滲み出し防止の効果がより高くなるためである。
【0050】
さらに、図6に示す本実施形態の第2変形例のように、発光素子3の列に沿った第1の凹部6aの両端から電極パッド5側に位置する半導体基板2の長辺方向に向かって伸びる第2の凹部6bをさらに有していてもよい。このような構成とすることにより、流れ出し
た樹脂が隣接する発光素子アレイ1との間隙に流れ込むのを防止することができ、よって発光素子アレイ1の搭載精度を高くすることが可能になる。なぜなら、発光素子アレイ1同士の間隙にコーティング樹脂140が流れ込んだ場合には、コーティング樹脂140の硬化に伴う膨張によって、発光素子アレイ1同士の間隙を広げるような応力が発生するため、発光素子アレイ1の位置精度が悪くなるからである。
【符号の説明】
【0051】
1 発光素子アレイ
2 ベース基板
3 発光素子
4 金属線
5 電極パッド
6a 第1の凹部
6b 第2の凹部
7 裏面電極
8 絶縁層
30 一導電型半導体層
30a 電子の注入層
31 逆導電型半導体層
31a 発光層
31b クラッド層
31c オーミックコンタクト層
100 発光素子ヘッド
110 基板
120 接着剤
130 ワイヤ
140 コーティング樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形状の半導体基板に、複数の発光素子と、該発光素子に金属線を介して電気的に接続されるとともに外部の電子部品にボンディングワイヤを介して電気的に接続される複数の電極パッドとを有する発光素子アレイであって、
前記複数の発光素子は、前記半導体基板の一方主面に列状に配置され、
前記複数の電極パッドは、前記発光素子アレイの一方主面に、前記発光素子の配列方向に沿って列状に配置され、
前記複数の発光素子の列と前記複数の電極パッドの列との間における前記半導体基板の一方主面に、配列方向に沿った第1の凹部を少なくとも1列有し、
前記第1の凹部の両端は、前記複数の発光素子の列および前記複数の電極パッドの列における両端よりも外側に位置することを特徴とする発光素子アレイ。
【請求項2】
前記第1の凹部を複数列有しており、該複数列の第1の凹部の深さは、前記発光素子と前記電極パッドとの間において該電極パッドから遠ざかるにつれて浅くなっていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子アレイ。
【請求項3】
前記第1の凹部を複数列有しており、該複数列の第1の凹部の幅は、前記発光素子と前記電極パッドとの間において該電極パッドに近づくにつれて広くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の発光素子アレイ。
【請求項4】
前記第1の凹部は、波状またはジグザク状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光素子アレイ。
【請求項5】
前記第1の凹部の両端の各々から、前記複数の電極パッド側に位置する前記半導体基板の長辺に向かって伸びる第2の凹部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光素子アレイ。
【請求項6】
電子部品が搭載された基板上に、複数の請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光素子アレイが列状に配置され、前記複数の電極パッドが、それぞれ前記ボンディングワイヤが接続されているとともに樹脂で覆われていることを特徴とする発光素子ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115246(P2013−115246A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260304(P2011−260304)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】