説明

発光装置及びその製造方法

【目的】
位置精度が高く、光の損失が小さく、光結合効率及び光取り出し効率の高い発光装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
基板上に搭載された発光素子と、発光素子上に配された光透過層と、光透過層上に配された透光性プレートと、透光性プレート上に形成されたレンズと、を有している。上記光透過層は、透光性プレートの下面端部と発光素子の下面端部とを接続するように発光素子の側面を覆い、レンズの外縁は、レンズが接する透光性プレートの上面の外縁によって画定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及びその製造方法に関し、特に、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)に光学的に結合された光学素子を備えた発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオード(LED)などの発光素子上に蛍光体材料を含む樹脂層(すなわち波長変換層)を形成し、発光素子からの光と蛍光体からの光とを混合して放出する発光装置が知られている。また、当該混合放出光を集光するためのレンズを備えた発光装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、発光素子がガラスによって被覆されているガラス被覆発光素子が開示されている。より詳細には、半導体発光素子の電極が形成されていない上面にガラスを載せ、ガラスを軟化させ表面張力でガラスレンズが構成されている。ガラスレンズの表面が半球面よりも広い球面の一部を構成するようにされていることが開示されている。特許文献3には、発光素子の電極が形成された主面に対向するもう一方の発光素子の主面にレンズが配置され、当該対向面の外周端部とレンズの外周端部とが一致し、かつレンズの球面が上記外周端部より外側に膨らんで形成されている発光装置が開示されている。特許文献4には、発光素子に結合された透明光学素子(レンズ)を備えた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表WO2008−041771号公報
【特許文献2】特開2006−310375号公報
【特許文献3】特開2002−305328号公報
【特許文献4】特開2002−141556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の発光装置では、種々の問題がある。例えば特許文献1、2のガラス被覆発光素子では、ガラスレンズを形成する際、ガラスの軟化温度(例えば、600℃)まで昇温するため、発光素子に負荷がかかる。また、そのストレスによって不灯となる場合がある。また、特許文献3の発光装置では、発光素子の上面とレンズの外周端部とが一致するように形成されているため、レンズが多少の膨らみを形成していても、レンズのサイズは発光素子とそれ程変わらない。また、特許文献4の発光装置では、発光素子上面にレンズが配置されているため、発光素子側面からの発光を効率よく利用することができない。
【0006】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、その目的は、前述のような従来の発光装置の問題を解決し、位置精度が高く、光の吸収や損失が小さく、光結合効率及び光取り出し効率の高い発光装置を提供することにある。また、レンズが高精度に形成された、発光装置の色むらや個体間のばらつきの無い発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発光装置は、基板上に搭載された発光素子と、発光素子上に配された光透過層と、光透過層上に配された透光性プレートと、透光性プレート上に形成されたレンズと、を有し、
上記光透過層は、透光性プレートの下面端部と発光素子の下面端部とを接続するように発光素子の側面を覆い、レンズの外縁は、レンズが接する透光性プレートの上面の外縁によって画定されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の発光装置の製造方法は、基板上に発光素子をマウントするステップと、発光素子の側面を覆うように発光素子上に波長変換体含有材料を塗布するステップと、塗布した波長変換体含有材料上に透光性プレートを載置するステップと、透光性プレート上にレンズを形成するステップと、を有し、
光透過層は、透光性プレートの下面端部と発光素子の下面端部とを接続するように発光素子の側面を覆い、レンズの外縁は、レンズが接する透光性プレートの上面の外縁によって画定されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は、実施例1の発光装置の上面図であり、(b),(c)は、それぞれ図1(a)のV−V線及びW−W線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【図2】実施例1の発光装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図3】は、発光装置の他の製造方法の例を模式的に示す断面図である。
【図4】(a)−(c)は、本実施例の発光装置に対する比較例1,2,3の発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】波長変換層の側面形状が外方向に凸の曲面である場合を模式的に示す、発光積層体の部分拡大図である。
【図6】複数の発光素子を用いた場合の発光装置のV−V線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下に説明する図において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1(a)は、本発明の実施例1の発光装置5の上面図を、図1(b),(c)は、それぞれ図1(a)のV−V線及びW−W線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0012】
図1(b),(c)に示すように、上面(素子搭載面)に配線(図示しない)が形成されたサブマウント基板10上に、複数のバンプ12を介して発光素子11が実装されている。バンプ12は例えば金(Au)からなり、発光素子11の電極とサブマウント基板10の配線とを接続する。
【0013】
なお、以下においては、発光素子11がバンプ12を介して基板上にマウントされている場合を例に説明するが、これに限らない。例えば、配線電極が形成された基板上に発光素子11がマウントされていてもよい。
【0014】
発光素子11の上面及び側面には光透過層13が形成されている。以下においては、光透過層13として波長変換層が形成されている場合(以下、波長変換層13)を例に説明するが、波長変換体を含有しない層であってもよい。そして、波長変換層13上には透明なプレート14が形成されている。発光素子11及び波長変換層13からの放出光は透明プレート(以下、単にプレートともいう。)14の上面を光取り出し面として取り出される。以下においては、発光素子11、波長変換層13及びプレート14からなる積層構造体を発光積層体15と称する。
【0015】
波長変換層13は、発光素子11の側面を覆うように形成されている。より詳細には、波長変換層13の側面は、プレート14の下面端部(端辺)と発光素子11の下面端部(端辺)とを接続する傾斜面形状を有し、波長変換層13は発光素子11の側面を覆うフィレット部13Fを形成している。また、波長変換層13の側面の外側は空気である。
【0016】
また、プレート14上には半球形状を有するレンズ21が設けられている。なお、図面の見易さ及び理解の容易さのため、レンズ21にはハッチングを施さずに示している。なお、発光積層体15及びレンズ21の詳細な構成については後に詳述する。
【0017】
[発光積層体の構成]
波長変換層13の基材には、蛍光体粒子13aが高濃度に分散され、さらにスペーサ13bが配されている。基材としては、発光素子11の発する光、及び発光素子11の発する光により励起された蛍光体粒子13aが発する蛍光に対して透明又は透光性の材料が用いられる。基材は、透明樹脂等の有機材料であっても、ガラス等の無機材料であっても構わない。例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を用いることができる。また、スペーサ13bの粒径よりも小さければ、フィラーや色素を基材に分散、混合することも可能である。
【0018】
波長変換層13に含有されるスペーサ13bは、発光素子11と透明プレート14との間に挟まれることにより、発光素子11の上面と透明プレート14との間隔を定め、これにより波長変換層13の層厚を規定(決定)している。スペーサ13bは、形成すべき波長変換層13の層厚に応じて、所望の粒径を有する粒子状のものであればよく、その形状は、多面体であっても球状であってもよい。例えば、10μm以上、100μm以下の粒径のスペーサ13bを好適に用いることができる。このような粒径のスペーサ13bは、発光素子11の発する可視光波長よりも一桁以上大きいため、光を散乱させる作用はほとんど生じない。
【0019】
スペーサ13bの上部及び下部はそれぞれ、透明プレート14及び発光素子11と直接接していてもよいし、スペーサ13bと透明プレート14との間、及び、スペーサ13bと発光素子11上面との間に、波長変換層13を構成する基材が挟まれていてもかまわない。硬化前の基材の粘度や、スペーサ13b表面の基材に対する濡れ性によって、スペーサ13bの周囲には基材との親和性が生じ、スペーサ13bとプレート14との間に基材が入り込むためである。ただし、すべてのスペーサ13bに対して同じ条件で基材との親和性が生じるため、スペーサ13bが波長変換層13の層厚を規定する作用を発揮することに変わりはない。
【0020】
スペーサ13bの材質は、高精度に所定の粒径を実現できるものであればガラス等の無機材料であっても樹脂等の有機材料であってもかまわない。スペーサ13bは、発光素子11の発する光及び蛍光体の蛍光に対して、半透明又は透明であることが望ましく、より好ましくは透明なものを用いる。また、スペーサ13bの内部に蛍光体を分散させることも可能である。分散させる蛍光体は、蛍光体粒子13aと同様のものを用いることができる。
【0021】
スペーサ13bは、透明プレート14を発光素子11の上面に対して平行に支持するために、発光素子11の上面に最低で3個配置されていることが好ましい。特に、発光素子11の上面の四隅に1個ずつ配置されていることが好ましい。
【0022】
スペーサ13bは、粒径が大きいため、粒子間の引力・斥力により相互位置を変化させる作用は生じず、基材及び蛍光体粒子13aに混練された時点の分散状態を維持して発光素子11上に展開される。
【0023】
蛍光体粒子13aは、粒径がスペーサ13bよりも小さいものを用いる。具体的には、スペーサ13bの粒径よりもわずかでも小さければよいが、10%以上小さいものが好ましい。蛍光体粒子13aとしては、発光素子11の発する光により励起され、所望の波長の蛍光を発する蛍光体を用いる。例えば、白色光を発する発光装置を構成する場合、青色光を発する発光素子11を用い、青色光を励起光として黄色蛍光を発する蛍光体(例えばYAG蛍光体)を用いることができる。
【0024】
透明プレート14は、平坦な下面を備え、この下面がスペーサ13bにより支持されることにより、発光素子11の上面と距離が一定の空間(波長変換層13)が形成できる部材であればよい。透明プレート14の平坦な下面は、巨視的に平坦であればよく、微視的には光を拡散・配向等させるための微細な凹凸が形成されていてもよい。凹凸を形成する場合には、スペーサ13bや蛍光体粒子の作用に影響を与えないために、凹凸のサイズは5μm以下であることが好ましい。また、透明プレート14の上面側に、光拡散・配向用の凹凸を設けることも可能である。
【0025】
また、透明プレート14の上面は、光取り出し面となるため、光の取り出し効率を向上させるために表面処理を施し加工していてもよい。また、透明プレート14の上面は必ずしも平面である必要はなく、散乱・集光・配向を目的とした形状、球面形状や非球面形状、フレネルレンズ形状を有していてもよい。または、凹凸面が形成されていてもよく、あるいは、粗面化がなされていてもよい。
【0026】
ここでは、プレート14は、発光素子11の発する光、及び、蛍光体粒子13aの発する蛍光に対して透明なものを用いているが、透光性のプレート又は所望の光学特性を有するものであっても構わない。例えば、所定の波長をカットする板状フィルタをプレート14として用いることも可能である。また、発光素子11からの光を所望の波長光に変換する蛍光体成分を含有する蛍光ガラスプレートや、蛍光体原料を焼結して作製した蛍光セラミックスのプレート(例えばYAGプレート)を用いることも可能である。
【0027】
なお、波長変換層13及びプレート14との間の界面での反射を抑制するために、波長変換層13及びプレート14の屈折率は同じであることが好ましい。また、プレート14の表面は研磨面でも良いが、粗面であることが、樹脂等との界面での反射を抑制し、取り出し効率を向上する上で好ましい。また、樹脂等の濡れ性、密着性の点でもプレート14の表面は粗面であること好ましい。
【0028】
サブマウント基板10としては、例えば金(Au)等の配線がなされた窒化アルミニウムセラミックスやアルミナセラミックス製の基板が用いられる。バンプ12としては、例えば金(Au)バンプが用いられる。
【0029】
[プレート及びレンズの構成]
まず、発光素子11は、フリップチップ型のLEDであり、発光面(主面)を上面としてマウントされている。例えば、発光素子11は、厚さが100μmであり、発光面は大きさが1mm×1mmである。また、前述のように、発光素子11上には波長変換層13が形成され、波長変換層13の主面上には透明なプレート14が形成されている。
【0030】
プレート14は、発光素子11よりも大きなサイズを有する。そして、前述のように、波長変換層13は発光素子11の側面を覆い、波長変換層13の側面は、プレート14の下面端部(端辺)と発光素子11の下面端部(端辺)とを接続する傾斜面形状を有している。本実施例において、プレート14は主面(上面)が一辺の長さ2.3mmの正方形形状を有し、厚さが100μmである。ここで、プレート14及び発光素子11の各辺が互いに平行であるように配されていることが好ましい。また、波長変換層13及び発光素子11の対称中心(すなわち、対角線の交点)は積層方向においてアライメント(一致)されて配されていることが好ましい。
【0031】
なお、プレート14及び発光素子11の形状及びサイズはこれらには限定されないが、以下においては、プレート14及び発光素子11が正方形形状及び上記サイズを有する場合を例に説明する。
【0032】
前述のように、プレート14上にはレンズ21が形成されている。図1(a)−(c)に示すように、レンズ21は略半球形状を有するレンズであるが、プレート14の近傍においては、形状が半球形状からずれている。
【0033】
より詳細には、図1(b)はプレート14の光取り出し面(上面)の一辺と平行な方向(図1(a)、V−V線)に沿った断面を、図1(c)はプレート14の対角方向(図1(a)、W−W線)に沿った断面を示している。レンズ21は、当該平行方向の断面において半球形状を有しているが(図1(b))、当該対角方向においては半球形状から裾の広がった形状を有している(図1(c))。すなわち、レンズ21は、プレート14の上面端部を超えずかつプレート14の上面全面を覆うように形成されている。換言すれば、レンズ21は、半球形状のレンズ部21Sと、レンズ樹脂の表面張力(後述する)によってプレート14上面の四辺に裾の広がったレンズ・フィレット部21Fとを有する半球形状レンズである。換言すれば、レンズ21の底面(すなわち、プレート14に接する面)の外縁は、プレート14上面の四辺(外縁)によって画定されている。
【0034】
[発光装置の製造方法]
次に、本実施例の発光装置5の製造方法について図2(a)〜(d)を参照して説明する。なお、図1(a)のV−V線に沿った断面図と同様な断面を示す。まず、図2(a)に示すように、サブマウント基板10上の配線と、発光素子11の素子電極とをバンプ12を用いて電気的に接続し、発光素子11をマウントする。波長変換層13の未硬化の基材を用意し、蛍光体粒子13a及びスペーサ13bを予め定めた濃度で添加し、混練することにより基材中に一様に分散させ、未硬化のペースト13’を得る。このペースト13’を図2(b)に示すように、発光素子11の上面に所定量塗布(又は滴下)し、発光素子11の上面より若干大きい透明プレート14を搭載する。透明プレート14の自重、若しくは、必要に応じて透明プレート14の上面に荷重をかけ、ペースト13’中のスペーサ13bによって透明プレート14が発光素子11の上面に支持され、発光素子11の上面と透明プレート14との間隔がスペーサ13bによって定まるようにする。
【0035】
これにより、図2(c)に示すように、未硬化のペースト13’はスペーサ13bの粒径相当、もしくは、スペーサ13bの周囲を覆う基材層の厚さを粒径に加えたものに相当する層厚のペースト13’の層が形成される。このとき、ペースト13’は発光素子11の側面を覆いつつ表面張力を保つことによって、発光素子11の側面と透明プレート14の下面を接続する傾斜面を有するフィレット部13Fが形成される。
【0036】
次に、図2(d)に示すように、ディスペンサ25を用い、レンズ21の材料である透明又は透光性のシリコン樹脂(レンズ樹脂)を透明プレート14の上部に所定量吐出(滴下)する。滴下された樹脂が樹脂の表面張力によって半球形状となるようにすることができる。また、樹脂の表面張力によって、透明プレート14の上面上に精度よく、すなわち透明プレート14の上面の中心と半球形状のレンズ21の中心とが一致(アライメント)するようにレンズ21を形成することができる。従って、発光積層体15とレンズ21との光結合効率は高い。前述のように、レンズ21の底面の外縁は、透明プレート14上面の四辺(外縁)によって画定され、半球形状レンズ部21Sと、レンズ樹脂の表面張力によって透明プレート14上面の四辺に裾の広がったフィレット部21Fとを有する半球形状のレンズ21を形成することができる。なお、レンズ21のレンズ径は、シリコン樹脂の滴下量を変えて調整することができる。シリコン樹脂の滴下後に、例えば150℃の環境下にて4時間放置し、波長変換層13及びレンズ21の樹脂の硬化を行い、図1(a)−(c)に示す発光装置5が完成する。
【0037】
以上、発光素子11、波長変換層13及びプレート14からなる発光積層体15を形成した後に、プレート14上にレンズ21を形成する場合について説明したが、これに限らない。例えば、図3に示すように、基板10上に発光素子11をマウントした後、蛍光体粒子13a及びスペーサ13bを含む波長変換層13の未硬化樹脂を発光素子11上に塗布したものを用意し、この上に、予めレンズ21を形成しておいたプレート14を搭載して図1(a)−(c)に示す発光装置5を形成してもよい。
【0038】
[発光装置の光取り出し効率]
上記構成を有する本実施例の発光装置5の光取り出し効率について、比較例1−3と比較して以下に説明する。本実施例の発光装置5においては、発光素子11から放出された光は波長変換層13に入射し、一部が蛍光体によって所定の波長の光に変換され、発光素子11からの放出光と混合されて透明プレート14から出射される。また、特に、発光素子11の側部から放出された光、及び波長変換層13によって変換された光は、波長変換層13の側面、すなわちフィレット部13Fの傾斜面(側面)によって反射され、当該反射光は透明プレート14に向けられる。透明プレート14に入射し、透明プレート14の上面から出射された光は、レンズ21の作用によって集光され、発光装置5の外部に放出される。
【0039】
図4(a)−(c)は、本実施例の発光装置5に対する比較例の発光装置の構造を模式的に示す断面図である。より具体的には、図4(a)は、比較例1の発光装置であって、基板81上にバンプ等の電極82を介して発光素子81をマウントし、樹脂をポッティングして凸形状のレンズ83を形成した構造の発光装置を示している。また、図4(b)は、比較例2の発光装置であって、同様に、フランジ84Aを有する中空の半球体内部に樹脂85を充填した半球状レンズ84を形成した構造の発光装置を示している。図4(c)は、比較例3の発光装置であって、樹脂でダム86を形成し、その内側に樹脂をポッティングして半球状レンズ87を形成した構造の発光装置を示している。
【0040】
これらの比較例における発光装置のサイズと、光取り出し効率(すなわち樹脂封止前における発光素子からの光出力に対する樹脂封止後の発光装置からの光出力の比)について以下に説明する。比較例1のレンズ83の直径は約1mmφで光取り出し効率は10%程度であった。比較例2のレンズ84の直径は約2mmφで光取り出し効率は18%程度であった。また、比較例3のレンズ87の直径は約3mmφで光取り出し効率は27%程度であった。レンズの半径が大きくなるほど光取り出し効率は大きくなり、これらの比較例の発光装置において光取り出し効率をさらに大きく、例えば30%以上にするには、レンズ径をさらに大きくする必要がある。しかし、発光装置の平面方向のサイズも増大するため、小型化の障害となる。
【0041】
本実施例の発光装置5においては、レンズ21の直径は約2mmφであり、光取り出し効率は37%が得られた。このように高い光取り出し効率が得られるのは、発光素子11の側部から放出された光及び波長変換層13によって変換された光が、波長変換層13の側面、すなわちフィレット部13Fの傾斜面によって反射され、透明プレート14に向けられるからである。なお、図5の部分拡大図に示すように、波長変換層13からの光を効率的に反射し、取り出し効率を向上する上で、波長変換層13のフィレット部13Fの側面形状は波長変換層13の外方向に凸の曲面であることが好ましい。特に、球面形状を有していることが好ましい。なお、波長変換層13の側面形状は、プレート14や発光素子11のサイズ、レンズ21の材料(樹脂等)の量や粘度によって調整することができる。
【0042】
また、本実施例においては、波長変換層13の樹脂、透明プレート14及びレンズ21は同じ屈折率(n=1.4)のものを用いたが、波長変換層13からレンズ21に向けて屈折率が低減するように屈折率(波長変換層13の屈折率>透明プレート14の屈折率>レンズ21の屈折率)を設定することにより、更に光取り出し効率を向上することができる。
【0043】
また、本実施例においては、1つの発光素子11を用いた発光装置5について説明したが、複数の発光素子を用い、当該複数の発光素子上に波長変換層及びプレートを設け、プレート上にレンズを形成した構造であってもよい。図6は、図1における1つの発光素子11に代わり、複数の発光素子を用いた場合の発光装置5のV−V線に沿った断面図を示している。すなわち、複数の発光素子11上及び複数の発光素子11の側面を覆うように波長変換層13が形成され、その上に波長変換層13プレート14が配されている。このような場合であっても、上記実施例と同様、図6に示すように、波長変換層13は複数の発光素子11の全体の外縁を覆い、波長変換層13の側面がプレート14の下面端部と複数の発光素子11の下面端部とを接続する傾斜面を有し、フィレット13Fを形成するように形成される。また、波長変換層13からの光を効率的に反射する点において、波長変換層13のフィレット部13Fの側面(当該傾斜面)の形状は波長変換層13の外方向に凸の曲面形状を有することが好ましい。さらに、複数の発光素子11の間の領域における波長変換層13の底面13Gは、取り出し効率を向上する上で、波長変換層13の内方向に凸(外方向に凹)の曲面形状を有することが好ましい。
【0044】
なお、上記した実施例においては、正方形形状のプレート14を用いた場合を例に説明したが、プレート14は長方形形状、円形形状であってもよい。また、プレート14上のレンズ21が半球状である場合を例に説明したが、少なくとも一部に球面を有するレンズであればよい。例えば、半楕円球状、シリンドリカル形状、ドーム形状のレンズであってもよい。例えば、複数の発光素子をライン状に並べ、長方形形状のプレートを用いた場合などでは、プレート上にレンズ材料をポッティング塗布し、シリンドリカル形状(半円柱形状)のレンズを形成してもよい。
【0045】
上記したように、本発明の発光装置によれば、発光素子11及び波長変換層13からの放出光は波長変換層13の側面によって効率的に反射され、レンズ21内に効率よく誘導され、集光されて外部に放出されるため、取り出し効率を向上することができる。また、レンズ21と、プレート14、すなわち発光積層体15とを精度良くアライメントすることができるため、発光積層体15とレンズ21との結合効率も高い。
【0046】
従って、光取り出し効率の高い発光装置を提供することができる。また、これに加え、上述したように、発光積層体との高精度な光軸アライメントがなされたレンズを容易に形成することができるので、結合効率が高く、発光装置の色むらや個体間のばらつきの無い発光装置を提供することができる。さらに、高精度で結合効率の高い発光装置を容易に製造可能である。
【0047】
なお、上記した実施例は適宜組み合わせ、又は改変して適用することができる。また、上記した材料、数値等は例示に過ぎない。
【符号の説明】
【0048】
10 基板
11 発光素子
13 波長変換層
13F 波長変換層のフィレット部
14 プレート
15 発光積層体
21 レンズ
21F レンズ・フィレット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に搭載された発光素子と、
前記発光素子上に配された光透過層と、
前記光透過層上に配された透光性プレートと、
前記透光性プレート上に形成されたレンズと、を有し、
前記光透過層は、前記透光性プレートの下面端部と前記発光素子の下面端部とを接続するように前記発光素子の側面を覆い、
前記レンズの外縁は、前記レンズが接する前記透光性プレートの上面の外縁によって画定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記光透過層は波長変換体を含有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記光透過層の側面は、前記光透過層の外方向に凸の曲面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記透光性プレートは四角形状を有し、前記レンズは前記透光性プレートの上面の四辺に裾の広がったフィレット部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
基板上に発光素子をマウントするステップと、
前記発光素子の側面を覆うように前記発光素子上に光透過性材料を塗布するステップと、
塗布した前記光透過性材料上に透光性プレートを載置するステップと、
前記透光性プレート上にレンズを形成するステップと、を有し、
前記光透過性材料から構成された光透過層は、前記透光性プレートの下面端部と前記発光素子の下面端部とを接続するように前記発光素子の側面を覆い、
前記レンズの外縁は、前記レンズが接する前記透光性プレートの上面の外縁によって画定されていることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記光透過性材料上に前記透光性プレートを載置するステップは、前記透光性プレート上にレンズを形成するステップの実行の後に実行されることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記光透過性材料は波長変換体を含有することを特徴とする請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記レンズを形成するステップは、
前記透光性プレート上に未硬化の樹脂材料を提供するステップと、
前記透光性プレート上の樹脂材料を硬化するステップと、を含むことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記光透過層の側面は前記光透過層の外方向に凸の曲面を有することを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−80833(P2013−80833A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220207(P2011−220207)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】