説明

発光装置及びそれを用いた靴、自転車用ペダル

【課題】視認性の高い発光装置、視認性および安全性を高めた靴及び自転車ペダルを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、圧力変化に応じて発電するひとつの圧電素子と、前記圧電素子で発生した電気エネルギーで発光する複数の発光ダイオードと、電気回路とを備え、前記電気回路に整流回路を有さず、前記圧電素子の両電極に、該複数の発光ダイオードのうち、アノードとカソードが逆向きに接続されている2種類のものを含むことを特徴とする発光装置、該発光装置を備えた靴、該発光装置を備えた自転車ペダルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置及びそれを用いた靴、安全自転車用ペダルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光装置およびそれを用いた靴、安全自転車用ペダルについては、多くの発明がなされ、夜間の歩行・走行、ジョギングに際して、利用者の視認性や安全性をたかめる目的で使用されている。短冊状の圧電素子の電極面に発光素子を短尺のリード線で直付けし、該圧電素子に足によって加えられる外圧で得た電気エネルギーでの発光素子を発光させるものがある。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、単一または、複数の発光素子を同時に発光させることとなるため、そこに人がいることの視認性や安全性をたかめる目的が充分機能しているとはいい難い面があった。
【特許文献1】特開平6−209807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、視認性の高い発光装置、視認性および安全性を高めた靴及び自転車ペダルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点によれば、圧力変化に応じて発電する圧電素子と、前記圧電素子で発生した電気エネルギーで発光する複数の発光ダイオードと、電気回路とを備え、前記電気回路に整流回路を有さず、前記圧電素子の両電極に、該複数の発光ダイオードのうち、そのアノードとカソードが逆向きに接続されている2種類のものを含むことを特徴とする発光装置、が提供される。
【0006】
人的運動によって起因して生ずる圧力変化に応じて発電する圧電素子と、前記圧電素子で発生した電気エネルギーで発光する複数の発光ダイオードと、電気回路を含むことにより構成されることを特徴とする発光装置を図1に例示する。さらに、可視光線発光ダイオードから発光される可視光線を所定位置へ導くための導波部材(例えば、光ファイバ、ガラスビーズ等)をさらに具備し、この導波部材によって、発光素子から離れた場所で可視光線が外部から観察可能に放射される構成とすることも好ましい。また、発光ダイオード発光部からの可視光が外部観察可能に、その一部または、全部が、可撓性合成樹脂によって封止されていることが好ましい。なお、可視光発光素子としては発光ダイオード、例えば、超高輝度LEDが好適に用いられる。
【0007】
本発明の第2の観点によれば、前記発光装置を発光部分が観察可能に装着された靴が、提供される。
【0008】
本発明の第3の観点によれば、前記発光装置を発光部分が観察可能に装着された自転車用ペダル、が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、極めて軽量、コンパクトで、耐久性にすぐれた発光装置を実現し、靴及び自転車ペダルに装着可能な発光装置、該発光素子を装着させた靴、自転車用ペダルを提供することができる。本発明の発光装置は、少なくとも2個の発光ダイオードを備え、人的運動により、その運動リズムに対応して、交互の点灯を繰り返し、複数の発光ダイオードが、同時点灯されず、ペダル等の利用者のいることを遠くからも視認できるという機能がある。また、本発明に係る発光装置は、電池または、充電器も必要とせず、定期的な電池交換等の保守は全く不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1に発光ダイオードを2個、1個の圧電素子を配した本発明の発光装置の基本的な回路図を例示する。図2に発光装置を組み込んだ靴の断面図を示す。図3に人的運動によって生ずる圧力変化及びそれに対応する圧電素子に生ずる起電力の変化を模式的に示す。また、図4は、図1の回路を組み込んだ発光装置の平面図と側面図を示す。更に、図5等は、自転車ペダル及び発光装置を組み込んだペダルの概略図を示す。
【0011】
図1に、圧電素子21としては、矩形状の圧電セラミックス板23の表裏面に電極24a・24bが形成された構造のものを示しているが、圧電素子21はこれに限定されるものではなく、例えば、円形や四角形の圧電セラミックス板、このような圧電セラミックス板と金属板等の補強板とを貼り合わせた構造を有するもの(例えば、圧電スピーカに用いられている圧電音響素子や、ユニモルフ素子、バイモルフ素子)を用いることができる。バイモルフ素子にあっては、分極方向が同一のパラレルタイプまたは、逆向きのシリーズタイプの両タイプを好適に用いることができる。圧電素子の材質は、特に問わないが、チタン酸バリウム、ジルコン酸鉛等のセラミックスを用いることができ、有機ポリマーの圧電材料、たとえば、ポリビリニデンジフルオライド、ポリフッ化ビニリデンを用いることもできる。なお、圧電セラミックス板は、いわゆる積層構造(積層コンデンサ型の電極構造)を有していてもよい。積層構造を有する圧電素子では、小さな変位で十分な起電力をうることが可能である。例えば、豊田合成社超高輝度LED(E1L5−3GΦA6−Φ2)を用いると、5mm程度の変位で図1の発光ダイオードを直列に繋いで2個、並列に3個の発光が可能である。ひとつの圧電素子21は、これを、直列接続或いは並列接続として複数を用いて発光装置のることができる。
【0012】
発光ダイオード22は、例えば、所定の電圧が印加されると所定波長の可視光線を発生するもので、例えば、約360〜830nmの波長域の可視光線を放射するものを用いることができる。図1において、発光ダイオード22aはカソードが24bに接続され、アノードが24aに接続されている。一方、発光ダイオード22bはカソードが24aに接続され、アノードが24bに接続されている。上述の通り、両種の発光ダイオードは、圧電素子に、並列に追加して増設可能である。また、直列付加も可能である。なお、圧電素子21の発電特性に応じて、別の回路を設けてもよいが、整流回路(整流ブリッジ回路)は、設けない。従来、整流回路を用いて2個のダイオ−ドを、印加電圧の正負に関わらず同時点灯する回路も考えられるが、点滅効果が小さく、視認性の劣るものとなる。また、基板上にチップを用いて形成する整流器または、ユニットタイプの整流器は、コンパクトなものが得にくいうえ、人的運動等による圧力変化をうけると破損しやすく、圧電素子、回路、その他の構成物との配置が限定される等の困難があった。
【0013】
図2には靴を履いた際にかかとの後方に向けて該光線が放射されるようにバイモルフ型圧電素子を有する発光装置が装着された靴の例を示す。靴の靴底部には、圧電素子21と複数の発光ダイオード(LED)22が配設されている。圧電素子21の下部には、空隙11が設けられるとより大きな変位と起電力が得られる。なお、可視光発光ダイオード22の配設位置はこれに限定されるものではなく、例えば、側足部外側等の光線の視認に好適な部位に配置してもよい。
【0014】
人が靴10を履いて歩行・運動(例えば、走る、足踏みする、ジャンプする等の靴を履いた状態で一般的に行われる動作という。)すると、踵から靴底部に加わる力(押圧力)が変化する。圧電素子21はこの押圧力によって変形し、発電する。こうして圧電素子21で発生した電気エネルギーが図1に例示される発光ダイオード22a,22bに給電され、可視光線を放射する。
【0015】
図3は、上記歩行・運動によって、圧電素子に加えられる変位と起電力の一例を示す概念図である。靴が接地した瞬間をスタートにとり、所定速度で運動すると、変位は、かかとが地面を離れる直前で最大となり、その後、変位ゼロ付近までもどり、足が空中にある間は、無負荷となるので、変位はほとんどゼロで推移する。再び、靴が設置すると前述のサイクルを繰り返す。例えば、図1で、圧電セラミックスの分極方向がパラレルで上向きの場合は、24a面が正極である。起電力が正のとき、22aが点灯し、22bは、点灯しない。また、起電力が負のときは、22bは、点灯し、22aが点灯しないことになる。2種類の接続様式からなる発光ダイオード22aと22bは、それぞれ、圧力変化に応じた変位を反映する起電力の大きさに比例した輝度の可視光を発することとなる。この結果、歩行・運動サイクルにともなってリズミカルに両発光ダイオードが点滅を繰り返し、視認性を増加させる。発光ダイオードの発光色を選択し、2種類の発光ダイオードの配置をデザインすることで、靴のファッション性もたかめることができる。靴10では、こうして可視光線発光ダイオード22から放射される可視光線によって、夜間でも遠くから靴を履いた人のいることが視認でき、その安全を確保することができる。
【0016】
また、発光ダイオード発光部分あるいは、これより光ファイバー等で導かれた発光部分を除いて、可撓性合成樹脂によって封止することが耐久性の点で望ましい。可撓性合成樹脂には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。これら樹脂の液状のものに圧電素子、発光ダイオードの一部または、全部を浸漬したのち、引き上げ、乾燥硬化または、熱硬化、化学変化による硬化等させるディッピングによってコートし、封止すると湿気から回路を守り、外部圧力に対して、該樹脂の可撓性を発揮することとなり、繰り返される外部圧力に対する耐久性を増すのに役立つ。透明な樹脂であれば、素子部・電気回路部・発光ダイオード部全体をコートすることができる。こうして、発光装置は、その一部である発光ダイオード22a、22bからの可視光線が靴の外部空間に向けて放射されるように配置することができる。図4に封止された発光装置の平面図および側面図を示す。発光ダイオードの発光部位のみを除いてエポキシ樹脂で封止した本発明例である。平面図では、上部のエポキシ樹脂部は、図示されていない。
【0017】
図6に該発光装置を備えたペダルを装着した自転車ペダルを有する自転車の概略斜視図等を示す。該自転車の側面図である図7において、発光装置は、圧電素子部分および発光ダイオード部分のみを図示し、他は省略している。また、発光装置を更に外部シム板31に固定した例である。外部シム板31は、足からの圧力を伝達するとともに、圧力無負荷時の復元力を補強し、さらに、発光装置を保護するカバーの役割を果たしている。31aは、外部シム板のペダルへの固定端を、31bは、外部シム板の自由端を示す。31bは、ペダルに沿って圧電セラミックス板素子23を適切に屈曲させる位置までスライドする。外部シム板上には、更に図示されない塵埃防止カバーが装着されている。また、外部シム板31は、弾性率の大きいゴムを用いた彎曲板として、外部シム板周辺部を、ペダルに接着し固定してもよい。こうすると、塵埃防止カバーを省略可能である。このような発光装置装着ペダルにおいて、人がペダル30をこいで運転すると、土踏まず等からペダル上部に加わる押圧力に応じて圧電素子21が発電し、発生した電気エネルギーが可視部発光ダイオード22に給電されて、ペダルに印加された圧力に応じて交互に点滅する可視光線が発生する。その発光原理は、上述のものと同様である。ペダル上部に加わる押圧力は、歩行・運動の発光の場合と相違して、平坦部走行の場合、そのサイクルが長周期に亘るものとすることもできる。こうして、ペダルに加わる押圧力の変化によって、複数の発光ダイオードの点滅が生起するという効果が得られる。発生した可視光線を自動車の運転者等が視認することにより、遠くから走行自転車への注意喚起が可能となる。
【0018】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定される
ものではない。例えば、発光装置を装着した靴において、圧電素子21を配設位置は、図2に示すように、踵の真上部分に限定されるものではない。例えば、足の「土踏まず」の下側等の靴のほぼ中央部に、その長手方向に平行にバイモルフ素子等の屈曲変位型圧電素子を配置することもできる。この靴では、人の歩行・運動等によって靴底部に生ずる擁みを利用して、屈曲変位型圧電素子を屈曲させ、発電させることができる。
【0019】
また、靴において、発光ダイオード22は靴の外部空間に露出した形態で配設されなければならないものではない。発光ダイオード22で発光した可視光線を、光ファイバ等の導波部材を用いて靴の側部に分散させて、靴の外部空間に放射されるように構成することもできる。この靴では、発光ダイオード22は、例えば、かかと部分等に埋設することができる。このような構成によれば、2個の発光ダイオードで靴外周部の任意の位置で点滅する多数の発光部位を設けることができる。その点滅効果は、より多くの発光ダイオードを用いたものと同程度である。また、発光ダイオード22の数を少なくすることができ、コストダウンを図ることもできる。
【0020】
なお、光ファイバの先端(放出端)には、拡散レンズ等を設けることも好ましい。また、光ファイバに代えて、ガラスビーズ等を用いることもできる。
【0021】
本発明は、革靴、ウォーキングシューズ等の各種運動靴、スニーカー、ゴム長靴、ブーツ等各種の靴に適用されることは言うまでもない。
【0022】
例えば、自転車ペダルにおいて、圧電素子21の配設位置は、図5におけるように、直方体型ペダル30の踏み込み面である上平面端部分に限定されるものではない。例えば、直方体型ペダルの上平面全体に、その長手方向に平行にバイモルフ素子等の屈曲変位型圧電素子を配置することもできる。このペダルでは、人の自転車運転によってペダル全体に生ずる擁みを利用して、屈曲変位型圧電素子を屈曲させ、発電させることができる。
【0023】
また、自転車ペダルにおいて、発光ダイオード22は自転車ペダルの外部空間に露出した形態で配設されなければならないものではない。発光ダイオード22で発光した可視光線を、光ファイバ等の導波部材を用いて安全ペダルの外部空間に配置させることが可能である。このような構成によれば、より少ない数の発光ダイオードでペダル外部の任意の位置に多数の発光部位を設けることができる。また、発光ダイオード22の数を少なくすることができ、コストダウンを図ることもできる。
【0024】
なお、光ファイバの先端(放出端)には、拡散レンズ等を設けることも好ましい。また、光ファイバに代えて、ガラスビーズ等を用いることもできるのは、靴の場合と同様である。
【0025】
なお、圧電素子とともに各種の電池(例えば、ボタン型の一次電池や二次電池)と、発光ダイオードに対して、給電する回路とを用いても、これらの視認効果を補強することができる。例えば、靴を履いて歩行等するときに靴に掛かる加速度をモニターして、人が停止しているとき、電池からの給電をオンにするスイッチを設けると、人の歩行等の運動がなくても、一定時間、靴が発光するようにすることができ安全の確保に役立つ。更に、例えば、自転車のペダル回転の加速度をモニターして、ペダルが動かないとき、電池からの給電をオンにするスイッチを設けると、人のペダルこぎの運動がなくても、一定時間、該発光装置が発光するようにすることができ安全の確保に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る発光装置の概略回路図。
【図2】本発明に係る靴の概略断面図。
【図3】人的運動による圧力の時間変化及び圧電素子の起電力変化図。
【図4】発光装置の概略図(平面図、側面図)。
【図5】本発明に係る自転車のペダル側面図。
【図6】本発明に係る自転車のペダル斜視図。
【図7】本発明に係る自転車のペダルの後方からの側面図。
【符号の説明】
【0027】
10;靴
11;靴底部の空隙
20:発光装置
21;圧電素子
22;発光ダイオード
22a;発光ダイオード
22b;圧電素子の電極にアノードとカソードが22aと逆向きに接続された発光ダイオード
23;圧電セラミックス板
24a・24b;電極
25; 内部シム板
26;封止材
27;接合部
30;ペダル
31;外部シム板
31a;外部シム板固定端
31b;外部シム板自由端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力変化に応じて発電する圧電素子と、前記圧電素子で発生した電気エネルギーで発光する複数の発光ダイオードと、電気回路とを備え、前記電気回路が整流回路を有さず、前記圧電素子の両電極に、該複数の発光ダイオードのアノードとカソードが逆向きに接続されている2種類の接続を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
発光ダイオード発光部分からの可視光が外部観察可能なように、可撓性合成樹脂によって封止されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の前記発光装置が、その発光部分からの可視光が外部観察可能に装着されることを特徴とする靴。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の前記発光装置が、その発光部分からの可視光が外部観察可能に装着されることを特徴とする自転車用ペダル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−107859(P2006−107859A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291095(P2004−291095)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】